(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】レーザー添加剤
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20221109BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20221109BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09C3/06
C09D7/62
C09D201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517153
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020075678
(87)【国際公開番号】W WO2021052919
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ペトリー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,アデリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ハンペル,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA04
4J037AA10
4J037CA02
4J037DD05
4J037DD07
4J037DD10
4J038HA026
4J038HA066
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、コア/シェル粒子を含むレーザー添加剤、このタイプのレーザー添加剤の調製プロセス、およびとりわけプラスチックおよび物品上のプラスチック含有コーティングにおけるレーザー吸収剤としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/シェル粒子を含むレーザー添加剤であって、該コア/シェル粒子が、各場合において、アルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有するおよびOH基がその上に位置する表面を有する均質な組成の粒子状コアを有し、シェルが炭素からなることを特徴とする、前記レーザー添加剤。
【請求項2】
アルカリ土類イオンが、Ca
2+、Mg
2+およびBa
2+からなる群から選択される少なくとも1種のイオンであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザー添加剤。
【請求項3】
粒子状コアが、≦0.5g/cm
3のかさ密度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザー添加剤。
【請求項4】
粒子状コアが、≧5m
2/g(BET)の比表面積を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項5】
粒子状コアが、不規則な粒子形状またはフレーク形状を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項6】
粒子状コアが0.1~100μmの範囲の粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項7】
粒子状コアが、Ca
5(OH)(PO
4)
3、Mg
3Si
4O
10(OH)
2あるいはBa
2+-またはMg
2+-改変Ca
5(OH)(PO
4)
3からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項8】
シェルが、70:30~90:10の比率の重量部のナノ結晶性炭素およびアモルファス炭素の混合物からなることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項9】
シェルが、各場合において、粒子状コアを連続層で完全に囲み、および粒子状コアに化学的に結合していることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項10】
シェルが、1nm~20nmの範囲の幾何学的厚さを有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のレーザー添加剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレーザー添加剤の調製プロセスであって、アルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、およびOH基がその上に位置する表面を有する均質な組成のコア粒子を、反応器中、
a)固体炭素含有前駆体化合物との混合物において、
または
b)キャリアガスの流れ中に炭素含有前駆体化合物を供給して、
反応させ、
ここで、炭素含有前駆体化合物は、炭素が炭素含有前駆体化合物から最外の連続層としてコア粒子の表面に堆積し、およびシェルが夫々のコア粒子の周りに形成される温度まで不活性ガス下で加熱される、前記プロセス。
【請求項12】
シェルが、1~20nmの範囲の幾何学的厚さを有することを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
用いられる炭素含有前駆体化合物が、アセトン、アセチレン、p-キシレン、トルエン、2-メチル-3-ブチノール-2または糖類であることを特徴とする、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
コア粒子が反応器中で動き続けることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
反応が、500~850℃の範囲の温度で、および20~480分の範囲の持続時間で実施されることを特徴とする、請求項11~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
各コア粒子が連続層のシェルによって完全に囲まれ、およびコア粒子とシェルが互いに化学的に結合していることを特徴とする、請求項11~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
プラスチックまたは物品上のプラスチックコーティングにおけるレーザー添加剤としての請求項1~10のいずれか一項に記載のレーザー添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/シェル粒子を含むレーザー添加剤、このタイプのレーザー添加剤の調製プロセス、およびとりわけプラスチックおよび物品上のプラスチック含有コーティングにおけるレーザー吸収剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの白色、灰色または黒色のレーザーマークは、プラスチック中の様々な反応によって生成される。よって、プラスチックの有機マトリックス自体または代替的に添加されたレーザー添加物のいずれかがレーザー放射を吸収することができ、それによってエネルギーがプラスチックに放出され、プラスチックの炭化または発泡につながる。加えて、プラスチック中に存在するレーザー添加剤は、レーザー放射に本質的に反応すること、および、入射レーザーエネルギーの影響下で、例えば暗色化または漂白することにより、それらの色を変えること、または代替的に、それら自身の蒸発または霧化に起因してプラスチックにマークを生成することもできる。
【0003】
暗色または黒色のプラスチックに薄いマークを作成するために、レーザーの作用に起因して脱色すると同時にプラスチック中で発泡を生成する黒い添加剤が、一般にプラスチックに添加される。発泡中にプラスチック中に形成された細孔は、入射光の散乱につながり、観察者によってプラスチック中の薄いマークとして視覚的に知覚される。
【0004】
一般的に用いられる黒色添加剤は、カーボンブラック、例えば、1nm~100nmの範囲の粒子サイズを有する工業用ブラックまたは顔料ブラックであり、これらは、なかでも、Printex(登録商標)、Monarch(登録商標)またはDerussol(登録商標)の商品名下で入手可能である。これらは伝統的にプラスチックを黒く着色するために用いられ、同時にレーザー放射の効率的な吸収剤となり、そのため、プラスチックにおけるそれらの使用は、レーザーの作用による薄いマークを得ることを可能にする。しかしながら、経験によれば、このように生成された薄いマークが頻繁に強い灰褐色の着色を有することが示されており、これは黒色着色されたプラスチックとのコントラストを低減する。ここで考えられる原因は、カーボンブラック粒子の不完全な脱色およびその結果としてのプラスチックマトリックスとの望ましくない反応である。レーザーの作用によって生成されたマークが、なかでも装飾目的にも役立つことを意図している場合、マークの色むら(miscolouration)はもちろん不利である。
【0005】
DE10 2010 004 743 A1は、白いコアおよび被覆からなる粒子の形状のレーザー添加剤、ここで被覆は元素状炭素を含む、を開示してる。ここで白いコアは、指向性のある高エネルギー放射線の作用に対して化学的に安定している。元素状炭素の他にも、被覆は、好ましくは、指向性のある高エネルギー放射線によって炭化されない有機ポリマーを含む。レーザーの作用は、それを含有するレーザー吸収体被覆における炭素を脱色し、プラスチック中で発泡が起こることなく白いコアを露出させると主張されている。得られ得る薄いマークは、機械的に安定していると記載されている。
【0006】
これらのレーザー添加剤の被覆に存在するアモルファスカーボンブラック粒子は、プラスチックマトリックスに存在するカーボンブラック粒子と同様に動作し、レーザーの作用下で不完全に脱色するだけである。加えて、白いコア粒子の散乱能力に悪影響を及ぼさないために、被覆中のコア粒子を囲む有機ポリマーは完全に無色でなければならない。これは当てはまっておらず、加えてプラスチックマトリックスの発泡は起こらないため、DE10 2010 004 743 A1に記載されているレーザー添加剤で得られるレーザーマークも同様に低下した白色度、およびよって黒色着色されたプラスチックとのコントラスト欠損を有する。この方法で生成されたレーザーマークは、装飾用途への適合性が限られている。
【0007】
DE 10 2014 018 276 A1は、各場合において、1以上の干渉層を含むコーティングを有し、支持粒子の最外層が炭素からなるフレーク状の支持粒子を有する、導電性の着色された干渉顔料を記載している。このタイプの干渉顔料は、レーザー吸収体としても用いることができる。強い干渉色を生成できるようにするために、フレーク状の支持粒子は、散乱の中心がほとんどない、可能な限り滑らかな表面を有していなければならない。加えて、支持粒子を1以上の干渉層で覆うことにより、個々の層の平坦な表面、よって干渉色の生成のための入射光の反射の改善が確実になる。しかしながら、これらの干渉顔料の小さな表面積は、レーザー吸収剤として使用すると、顔料を囲むプラスチックと外側炭素層との限られた接触面積をもたらし、よって、プラスチックの発泡をほとんどもたらさない。これは次に、入射光の散乱をほとんど引き起こさず、したがって、レーザービームの影響に起因してむしろコントラストの低いマークをもたらす。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、レーザービームにさらされたときに、暗いまたは黒いプラスチックに装飾的で、極めて薄い、高コントラストで鋭いエッジのマークをもたらす好適なレーザー吸収剤を見出すことにあり、これはレーザーの広い動作範囲で高品質のマークをもたらし、加えて、非動物起源の純粋な無機の出発化合物から調製することができ、環境に有害な汚染物質が含まれていない。
【0009】
本発明のさらなる目的は、このタイプのレーザー吸収剤の調製プロセスを提供することにある。
加えて、本発明の追加の目的はまた、前記レーザー吸収剤の使用を示すことにある。
【0010】
本発明の目的は、コア/シェル粒子を含むレーザー添加剤によって達成され、コア/シェル粒子は、各場合において、均質な組成の粒子状コア、これはアルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、およびOH基がその上に位置する表面を有する、を有し、ここでシェルは炭素からなる。
【0011】
本発明の目的は、同様に、アルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、およびOH基がその上に位置する表面を有する、均質な組成のコア粒子を、反応器中、
a)固体炭素含有前駆体化合物との混合物において、
または
b)キャリアガスの流れ中に炭素含有前駆体化合物を供給して、
反応させ、
ここで、炭素含有前駆体化合物は、炭素が炭素含有前駆体化合物から最外の連続層としてコア粒子の表面に堆積し、シェルが夫々のコア粒子の周りに形成される温度まで不活性ガス下で加熱される、
レーザー添加剤の調製プロセスによって達成される。
【0012】
加えて、本発明の目的はまた、プラスチック中のレーザー吸収剤または物品上のプラスチック含有コーティングとして記載されているレーザー添加剤の使用によっても達成される。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、材料の観点から最適である使用されるレーザー吸収剤の組成の他に、これらのレーザー吸収剤の大きな表面積を確保することも可能である場合に、レーザービームにさらされる、入射光の高い散乱能力を有するポリマーの最適な発泡を達成できることを見出した。
【0014】
したがって、大きな比表面積を有するコア粒子を有するコア/シェル粒子であって、コアおよびシェルが、レーザーによって入力されたエネルギーの最適な相互伝達がコアとシェルの間でおこるように、使用時に、適切な程度にレーザービームにさらされたときに、入射光の最適な散乱、およびその結果として生成されるレーザーマークの高い白色度を実現するために、レーザー添加剤の粒子を囲むプラスチック発泡体が微細な細孔を形成するように、互いに密接に接続されている、前記コア/シェル粒子が見出された。
【0015】
本発明の目的のために、レーザーマークは、プラスチックおよび物品上のプラスチック含有コーティングの任意のタイプのラベリングを意味すると解釈され、これはレーザービームの作用を介して、プラスチック中に、刻まれた文字(inscription)、コード、ラベル、装飾または類似の可視の光学的変化の形態で生成することができる。
【0016】
好適なプラスチックは、すべて既知のアモルファスおよび部分的に結晶性の熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックであり、とりわけ、レーザーにさらされたときに本質的に視覚的変化を示さないプラスチックである。
【0017】
好適なレーザー添加剤は、とりわけ、シェルの材料およびコア粒子の一部もまた導入されたレーザーエネルギーを吸収するコア/シェル粒子であることが証明された。コア粒子は、導入されたレーザーエネルギーによってわずかに改変されるだけであり、色は変化しないが、一方シェルの材料は脱色される。レーザーエネルギー入力はシェルおよびまた部分的にコア粒子の両方へおこり、2つは互いに密接に接続されているため、コア粒子によって蓄積されたエネルギーはシェルの材料に直接放出され、そこで起こる脱色反応を効果的にサポートすることができる。
【0018】
本発明に従うレーザー吸収剤の粒子状コアは、材料の観点で均質な組成を有し、アルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、およびOH基が同様に位置する表面を有する。
【0019】
好適なアルカリ土類イオンは、Ca2+、Mg2+およびBa2+であり、これらは個々に、または2以上の形態のいずれかでコア粒子に存在する。OH基はコア粒子の表面に存在する。これらのOH基のいくつかは、コア/シェル粒子のシェルを構成する炭素を化学的に結合するのに役立つ。さらにOH基は表面の近くにあり、およびコア粒子の内部に存在する。
【0020】
使用時に、本発明によるレーザー吸収剤と後者を囲むプラスチックマトリックスとの間の大きな接触面積を達成するために、コア粒子は、比較的大きな比表面積および低い固体密度、とりわけ低いかさ密度を有する必要がある。これは、高度に多孔性であるか、または表面の不規則性の大部分-例えば、エッジ、コーナーなど、を有するコア粒子によって最も良好に達成することができる。
【0021】
したがって、コーティングされていないコア粒子からなる粉末は、≦0.5g/cm3、好ましくは≦0.3g/cm3のかさ密度を有する。本発明に従って用いられるコア粒子のかさ密度は、標準化された漏斗および定義された100mlビーカーからなるCeastからのかさ密度測定器(モデル番号16258)を使用して、DIN 53468またはDIN ISO 697に従って決定する。ビーカーを、標準化された充填の前後に計量し、かさ密度は、差分計量から得られた値とベッドの定義された体積から決定する。+/-0.1gの精密天びんが必要である。
【0022】
加えて、コーティングされていないコア粒子は、≧5m2/g(BET)、とりわけ10m2/g(BET)の比表面積を有する。粒子状コア(コア粒子)の形状は、不規則な粒子形状またはフレーク形状のいずれかであり、不規則な顆粒が好ましい。
【0023】
粒子状コアは0.1~100μmの範囲の粒子サイズを有し、これらの値は、レーザー回折法によって決定された体積平均d10(0.1μm)またはd90(100μm)値に関する。好ましくは、d10値は≧0.5μmであり、およびd90値は≦20μmである。
【0024】
レーザー回折法は一般によく知られており、実際の粒子サイズの他に、粒子サイズ分布を決定することも可能であるという他の方法に勝る利点を有する。本発明に従って用いられるコア粒子について、粒子サイズは、Malvern Mastersizer 3000、APA 300(Malvern Instru-ments, Ltd., UKからの製品)を使用して決定された。
【0025】
Ca5(OH)(PO4)3、Mg3Si4O10(OH)2あるいはBa2+-またはMg2+-改変Ca5(OH)(PO4)3などの材料が、本発明によるコア/シェル粒子の粒子状コアとしての使用に特に好適であることが証明された。対応する粒子状材料は、ヒドロキシアパタイト(Ca5(OH)(PO4)3)あるいはBa2+-またはMg2+-改変ヒドロキシアパタイトあるいはタルク(Mg3Si4O10(OH)2)として、対応する粒子サイズで様々な会社から市販されている。
【0026】
ヒドロキシアパタイトは、例えば、Sigma-Aldrich(現在はMillipore-Sigma)から入手可能であり、および好適なタルクは、Mondo Minerals B.V.(NL)から入手可能である。Mondo Minerals B.V.からのPlustalc(登録商標)H10は、本発明に従って好ましく用いられる。しかしながら、Sigma-Aldrichからの未改変ヒドロキシアパタイト(p.a.)またはMillipore-Sigmaからの対応する製品が極めて特に好ましく用いられる。両方の材料は、材料組成、粒子サイズ、かさ密度および特定の表面積に関する前提条件を満たしている。コア粒子は、とりわけNIR領域で、レーザー放射を吸収するが、レーザー放射の作用下で可視の化学変化なしで残る。加えて、それらは、事実上、380nm~780nmの範囲のスペクトル波長の光を吸収せず、すなわち、固有の色がないか、またはわずかである。
【0027】
本発明によるコア/シェル粒子のシェルは、炭素からなる。炭素は、ナノ結晶性炭素およびアモルファスの炭素の混合物の形態であり、ナノ結晶性炭素およびアモルファスの炭素の重量部は、70:30~90:10の比率、および好ましくは80:20~90:10の比率に及ぶ。結晶部分は、グラファイト炭素と呼ばれることがあり、各場合において数ナノメートルの領域で横方向の寸法を有する。これは、アモルファス部分と炭素ナノ結晶の統計的分布を有する混合物である。
【0028】
コア粒子の各々は、炭素からなるシェルの連続層で完全に覆われている。シェルは酸素ブリッジを介してコア粒子に結合され、これはコア/シェル粒子に高い機械的強度を与える。シェルは、複数の炭素層からなり、それらは、1nm~20nmの範囲、好ましくは2nm~10nmの範囲の総幾何学的厚さを有する。シェルの厚さは、断面の評価を介して通常の方法で確立できるであろう。
【0029】
本発明によるレーザー添加剤は、コア粒子の表面に直接炭素を化学蒸着することによって調製される。プロセスを以下に詳細に記載する。炭素は、好適な炭素含有前駆体化合物から生成される。コーティングプロセスの開始時に、炭素含有フラグメントは、上昇温度の作用によって炭素含有前駆体化合物から生成され、酸素ブリッジを介してコア粒子の表面上の遊離OH基に部分的に結合する。これは、コア粒子とシェルとの間に機械的に強い接続を提供し、同時にコア粒子とシェルの間の最適なエネルギー伝達を確実にする。レーザー放射の作用下で、とりわけNIR領域において、本発明によるレーザー添加剤の外側炭素層で、極めて高い温度が短時間局所的に発生する、例えば、パルスレーザーの場合においてピーク出力は、数キロワットの領域にある。導入されたエネルギーの夫々のコア粒子へのさらなる伝達に起因して、コア粒子の表面および表面近くのOH基がガス状の水を切断し、これは表面に結合した炭素と極めて効率的に反応し、CO2を形成する。後者は、夫々のレーザー添加剤の直接の環境でのプラスチックマトリックスの発泡を確実にし、それにより、シェルの炭素と周囲のプラスチックマトリックスとの望ましくない副反応を最小限に抑える。これにより、プラスチックマトリックスの不利な変色を実質的に防ぐことができる。加えて、この反応は、コア粒子の高い多孔性または多数の表面の不規則性の存在によってサポートされる。炭素からなるシェルがコア粒子の各々を連続層として囲んでいるため、得られたコア/シェル粒子もまた、大きな比表面積または高い表面不規則性を有する。レーザー添加剤と周囲のプラスチックマトリックスとの接触面積は、したがって極めて大きく、プラスチックマトリックスへの最適なエネルギー伝達と、粒子の近くで細かく分割されたCO2形成の両方を確実にし、これらは、一緒にプラスチックの発泡をサポートし、およびプラスチック泡の最適な散乱を引き起こし、これは高い白色度のマークの結果を有する。加えて、これらのプロセスは、コア粒子の表面および表面近くに存在するOH-基によるNIR波長の固有の倍音吸収(対応するタイプのレーザーの使用時)によって追加的にサポートされ、これはレーザーの作用下でコア粒子への追加のエネルギーの導入をもたらす。
【0030】
本発明はまた、記載したレーザー添加剤の調製プロセスに関し、ここでアルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、その上にOH基が位置する表面を有する均質な組成のコア粒子を、反応器中で反応させ、ここで、コア粒子は固体の炭素含有前駆体化合物と混合されるか、または代替的にキャリアガスの流れ中の炭素含有前駆体化合物がコア粒子に供給され、ここで炭素含有前駆体化合物は、不活性ガス下で、コア粒子の表面上の最も外側の連続層として炭素がそれから堆積し、および夫々のコア粒子の周りにシェルが形成される温度まで、加熱される。
【0031】
好適なコア粒子は、粒子中にアルカリ土類金属イオンおよびOH基を含有し、OH基が位置する表面を有する、すでに上で記載した均質な組成の粒子である。アルカリ土類イオンは、Ca2+、Mg2+およびBa2+からなる群から選択され、Ca2+およびMg2+が特に好ましい。
【0032】
コア粒子は、不規則な粒状形状を有し、および大きな比表面積で表される高い多孔性を有するか、または多くの散乱中心を有する不規則なフレーク形状を有するかのいずれかである。この点における詳細は、すでに上で記載したとおりである。
【0033】
特に好ましい好適なコア材料は、Ca5(OH)(PO4)3、Mg3Si4O10(OH)2あるいはBa2+-またはMg2+-改変Ca5(OH)(PO4)3であり、未改変Ca5(OH)(PO4)3は特に好ましく用いられる。
【0034】
コーティングされていないコア粒子の粒子サイズは0.1μm~100μmの範囲であり、ここでレーザー回折法による最初の値は体積平均決定のd10値を表し、2番目の値は体積平均決定のd90値を表す。
前記粒子サイズの対応するコア粒子は、様々な供給業者から市販されている。
次に、夫々の粒子状コアを反応器に導入する。
【0035】
好適な反応器は、ロータリーチューブ炉と流動床反応器の両方である。シェルの炭素によるコーティングプロセスは、キャリアガスの流れの中で実施する。用いられるキャリアガスは、不活性ガス、合成空気、またはフォーミングガスである。不活性ガスの例は、窒素またはアルゴンであり、窒素が好ましく用いられる。
【0036】
流動床反応器において、炭素の他に水素のみ、場合によっては酸素を含有する、容易に揮発する炭化水素からなることが好ましい炭素含有前駆体化合物がキャリアガスに供給される。アセトン、p-キシレン、アセチレン、トルエンおよび2-メチル-3-ブチノール-2をここで一例として言及することができ、アセトン、p-キシレンおよびトルエンが好ましく用いられる。
【0037】
ロータリーチューブ炉におけるプロセスは、流動床反応器について記載したように同様に実施することができる。加えて、ここで用いられる炭素源は、固体の粉状炭素含有化合物であることができ、これらはコア粒子と事前に混合され、コア粒子との固相反応で、-同様に、不活性ガスの流れおよび炉の連続回転によって動き続け-、後者を完全に囲むコンパクトな炭素シェルを形成する。これらの粉状炭素含有化合物は、単糖類、二糖類および三糖類からなる群から選択される。これらは、好ましくは、フルクトース、グルコース(=デキストロース)、ガラクトース、キシロース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、またはそれらの2以上の混合物である。特に好ましい態様において、極めて細かく粉砕されたスクロースが用いられる。
【0038】
粒子状コアとシェルの炭素とのコーティング反応の間、コア粒子のそれぞれが、コア/シェル粒子のシェルを形成する連続炭素層によって均一に囲まれることができるように、コア粒子が動き続けることがプロセスの成功にとって特に重要である。コア粒子の対応する最適化された流動化は、流動床反応器において、キャリアガス流自体を介して、またはこれが十分でない場合は、好適な流動化装置、振動デバイスまたは振とうデバイスを介して達成することができる。ロータリーチューブ炉において、流動化は一般に回転プロセスおよびガス流を介して行われる。
【0039】
コア粒子の十分な流動化が達成されたとき、プロセスで形成された炭素が最も外側の連続層としてコア粒子の表面に堆積する程度まで、炭素含有前駆体化合物を分解するのに十分な温度が反応器内に確立される。すでに上で記載したとおり、前駆体化合物の炭素含有フラグメントは、分解プロセスの初期段階で形成され、および酸素ブリッジを介してコア粒子の表面のOH基に強く結合し、その結果、コア/シェル粒子のシェルを形成する炭素層を含む後続の層構造は、コア粒子への機械的に強い化学結合を形成する。
【0040】
コーティングプロセス中の反応器内の温度は500~850℃の範囲であり、具体的に設定される温度は、炭素含有前駆体化合物のタイプおよび反応器の選択によって決定される。例えば、アセトンの使用の場合において、600~700℃の温度範囲が好ましい一方で、p-キシレンまたはトルエンの使用時には、700~800℃の温度範囲が有利に設定される。ロータリーチューブ炉内の固体の炭素含有前駆体化合物の場合において、好ましい温度は600~800℃の範囲である。
【0041】
容易に揮発する炭素含有前駆体化合物が使用される場合、これは、好ましくは、反応温度に達した後にキャリアガスに供給される。炭素含有前駆体化合物の量は、化合物の温度または蒸気圧を介してここで制御することができる。コア粒子上で反応時間に応じて成長する炭素シェルの所望の層厚が達成されると、炭素源がオフになる。
【0042】
反応時間の持続時間は、容易に揮発する炭素含有前駆体化合物の使用時には、60~480分、好ましくは100~240分であるが、ロータリーチューブ炉内の固体の炭素含有前駆体化合物の使用の際には、20~240分の範囲、とりわけ30~90分の範囲である。この反応時間内におよび直接依存して、個々の粒子を完全に取り囲む連続したコンパクトな炭素シェルがコア粒子上で成長する。このシェルは、ナノ結晶性炭素およびアモルファス炭素の混合物の形態である複数の炭素の層からなり、ここでナノ結晶性炭素およびアモルファス炭素の重量部は70:30~90:10の比率であり、好ましくは、80:20~90:10の比率である。結晶部分はグラファイト炭素と呼ばれることがあり、各場合において数ナノメートルの領域で横方向の寸法を有する。これは、アモルファス部分と炭素ナノ結晶の統計的分布を有する混合物である。
【0043】
本発明に従って、炭素シェルの幾何学的層厚は、1~20nmの範囲、好ましくは1~15nmの範囲、および特に好ましくは2~10nmの範囲である。シェルの層厚が薄いほど、CO2の形成が不十分になり、使用時にプラスチックマトリックスをわずかに発泡させるだけである。コア/シェル粒子の炭素シェルの層厚が20nmを超えると、逆にシェルとコア粒子との間でレーザーによって導入されるエネルギーの交換を難しくし、場合によりシェルの炭素と周囲のプラスチックマトリックスの望ましくない副反応をもたらし、場合によりプラスチックマトリックスの色むらを引き起こし得る。
【0044】
反応器での熱処理後、得られたコア/シェル粒子を冷却し、任意に分類する。
本発明はまた、プラスチックおよび物品上のプラスチック含有コーティングにおけるレーザー吸収剤としての上に記載のコア/シェル粒子の使用に関する。
【0045】
用いることができるプラスチックは、従来のアモルファスまたは部分的に結晶性の熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチックのすべてである。とりわけ、レーザー放射の入力に対してまだ変色を伴う本質的な反応をせず、代わりにレーザーマーク可能であるために添加剤の添加に依存する、プラスチックにおける本発明によるレーザー添加剤の使用が示される。ここで言及し得る例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル-エステル、ポリエーテル-エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルケトンであり、それらのコポリマー、混合物またはポリマーブレンドを包含する。しかしながら、このリストは単なる例示と見なされるべきであり、完全ではない。
【0046】
本発明によるレーザー添加剤は、ポリマー顆粒、塗料、または印刷インクをレーザー添加剤と混合することによって、マーキングされるプラスチック、好ましくはプラスチック本体またはプラスチックフィルム、またはコーティング、例えば、塗料、紙コーティングまたはパウダーコーティング、自動車用塗料または印刷インクに組み込まれ、および必要に応じて熱の作用下で成形される。レーザー添加剤は、プラスチック材料に同時にまたは連続して添加することができる。レーザー添加剤の組み込み中に、作業条件下で温度安定性のある接着促進剤、有機溶媒、安定剤および/または界面活性剤を、任意にプラスチック材料、好ましくはプラスチック顆粒に添加することができる。
【0047】
レーザー添加剤が添加されたプラスチック顆粒は、一般に、プラスチック顆粒を好適なミキサーに導入し、それらを任意の添加剤で湿らせ、次にレーザー添加剤を添加することおよび組み込むことによって調製される。プラスチックの色素沈着は大抵、カラーコンセントレート(マスターバッチ)またはコンパウンドを介して行われる。このようにして得られた混合物は、次いで押出機または射出成形機で直接加工することができる。このタイプの加工の場合に得られた成形品は、レーザー添加剤の極めて均質な分布を示す。得られた成形品、フィルム、または物品上のコーティングは、続いて、好適なレーザーを使用して従来のマーキングにかけることができる。
【0048】
本発明によるレーザー添加剤は、レーザーマーキング用を意図したプラスチックに、各場合において、マークするプラスチックの重量に基づいて、0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、および極めて特に好ましくは1~10重量%の割合で添加される。
【0049】
プラスチックまたは物品上のプラスチック含有コーティングのレーザーマーキングに高度に好適なレーザーは、波長534nm(緑色レーザー)および1064nmまたは1062nm(NIRレーザー;NIR=近赤外線)の固体レーザーまたはファイバーレーザーである。
【0050】
波長1064nmまたは1062nmのパルス固体またはファイバーレーザー、例えば、Nd:YAGまたはNd:バナジン酸イットリウム単結晶からなる1064nmの発光波長を有する固体レーザーまたはファイバーレーザーデュアルコアコンセプトに従って1064/1062nmの発光波長を有し、Ge、AlまたはPおよび希土類イオン(たとえば、Nd3+、Er3+、またはYb3+)でドープされた、高純度アクティブクォーツコアからなり、低屈折率のポンプコアによって囲まれたファイバーレーザーは、特に好適であることが証明された。
【0051】
生成されたレーザーマークは、耐摩耗性があり、極めて薄く、鋭いエッジのマークが暗いまたは黒いプラスチックに生成されるすべての場合に使用できる。したがって、全く網羅的ではない使用例は、自動車および航空機産業における、電気工学/電子工学ならびに機械および器械建設における、コントロールパネル;例えば、洗濯機、コーヒーメーカー、スマートフォンまたはテレビセットなどの機器、器械および消費者物品の刻まれた文字またはマーク;全てのタイプの機器のための、容器、おもちゃまたは工具のための、ロゴ、モデル指定、または個別のマーク、および特に広告部門の装飾ラベルである。
【0052】
用いられるコア粒子の材料および粒子特性、ならびに耐摩耗性の様式でそれに結合した炭素シェルに起因して、本発明によるレーザー添加剤は、レーザー吸収剤として使用すると、レーザー添加剤の周囲環境における微細孔隙CO2の形成のために、導入されたレーザーを最適に利用する相乗反応を示し、およびプラスチックマトリックスの発泡に起因して、対応するプラスチックに極めて薄いレーザーマークがもたらされ、それは望ましくない色むらが実際上なく、したがって装飾目的にも適用できる。加えて、得られ得るレーザーマークは、良好なエッジシャープネスを有し、およびレーザーパラメーターの広い範囲に渡って得ることができ、これはマーキングプロセス中の高い柔軟性をもたらす。さらにまた、本発明によるレーザー添加剤は、非動物起源の純粋な無機化合物からなり、有害物質を含有しない、これは倫理的または宗教的に敏感な地域での用途にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、例1に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図2】
図2は、例2に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図3】
図3は、例3に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図4】
図4は、比較例1に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図5】
図5は、比較例2に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図6】
図6は、比較例3に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図7】
図7は、比較例4に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図8】
図8は、比較例5に従ってレーザー添加剤を有するレーザー刻印試験片を示す。
【
図9】
図9は、例1に従うコア粒子のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図10】
図10は、例2に従うコア粒子のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図11】
図11は、比較例1に従うコア粒子のSEM顕微鏡写真を示す。
【
図12】
図12は、例1に従うレーザー添加剤のTEM顕微鏡写真を拡大した詳細とともに示す。
【
図13】
図13は、例2に従うレーザー添加剤のTEM顕微鏡写真を拡大した詳細とともに示す。
【0054】
例を参照して本発明を以下に説明することを意図しているが、これらに限定されない。
実施例:
例1:
化学気相堆積を介した流動層でのヒドロキシアパタイトコア粒子のコーティング
0.26g/cm
3のかさ密度を有するSigma-Aldrich(Article 21223)からの500gのヒドロキシアパタイトを、一定の不活性N
2雰囲気下で100mmの内径を有するN
2-フラッシュ流動床反応器で750℃の温度に加熱する。窒素の体積流量は、反応器内で最小限の流動化が行われるように設定し、よって、出発物質の最適な混合および最適なエネルギー伝達が確実になる。反応温度に達したとき、炭素含有前駆体化合物を、窒素の流れによって反応器に導入する。用いる炭素含有前駆体化合物は、p-キシレンである。前駆体化合物は反応器内で熱分解され、1~10nmの範囲の総厚さを有する炭素層がコア粒子上に120分の反応時間にわたって成長する。
図9は、用いたヒドロキシアパタイトコア粒子のSEM顕微鏡写真を示す。
【0055】
例2:
化学気相堆積を介した流動床でのMondo Minerals B.V.からのPlustalc 10(登録商標)を含むコア粒子のコーティング
プロセスは、500gのコア粒子を使用して例1と同様に実施する。用いたコア粒子のSEM顕微鏡写真を
図10に示す。生成物は0.24g/cm
3のかさ密度を有する。炭素層の厚さは2~10nmの範囲である。
【0056】
例3:
粉末状糖の形態で極めて細かく粉砕されたスクロースとの固相反応を介したロータリーチューブ炉でのヒドロキシアパタイトコア粒子のコーティング
0.26g/cm3のかさ密度を有するSigma-Aldrich(Article 21223)からの500gのヒドロキシアパタイトを、Willy A. Bachofen AGからのTurbular T2F 3D振とうミキサーで188gの粉末状糖と密接に混合し、および続いてNabertherm RSRCロータリーチューブ炉で不活性雰囲気下でか焼する。この目的のために、ステンレス鋼管を700℃に加熱し、毎秒1回転の速度で回転させる。粉末混合物をフィーダーに移し、炉に均一に計量し、これを搬送スクリューを介して200l/hの窒素でフラッシュする。炉内での滞留時間は45分である。8.5重量%の炭素比率が達成される。
【0057】
比較例:
比較例1:
化学気相堆積を介した流動床での窒化ホウ素を含むコア粒子のコーティング
500gの3MからのS1-SF(登録商標)フレーク状窒化ホウ素をコア粒子として用いる。出発材料は、規則的な形状、滑らかな表面およびいくつかの散乱中心を有するフレークからなる。
図11は、出発物質のSEM顕微鏡写真を示す。プロセスは、例1と同様に実施する。炭素シェルは、2~10nmの範囲の厚さを有する。
【0058】
比較例2:
化学気相堆積を介した流動層での表面近くのOH基のないリン酸カルシウムCa3(PO4)2を含むコア粒子のコーティング
500gのリン酸カルシウムCa3(PO4)2(VWRからのArticle 22147)をコア粒子として用いる。出発物質はアルカリ土類イオンを含有しているが、コア中にも粒子の表面にもOH基を有しない。プロセスは、例1と同様に実施する。炭素シェルは、2~10nmの範囲の厚さを有する。
【0059】
プラスチック試験片およびレーザーマークの産生:
例1~3または比較例1および2から得られた顔料粉末を、ミキサー内で、ポリエチレン顆粒および総重量に基づいて1重量%の濃度の湿潤添加剤と混合し、続いて押し出す。得られたコンパウンドを、射出成形機を使用して、6×9cmのサイズを有するテストプレートに変換する。
【0060】
さらなる比較のために、同じテストプレート(比較例3および4)を既知のレーザー添加剤(Monarch(登録商標)280カーボンブラック、Printex(登録商標)60カーボンブラック)で製造し、例1および2ならびに比較例1および2と比較して同様の炭素含有量を達成するために、これらのレーザー添加剤は総重量に基づいて0.2重量%の量で添加する。
【0061】
加えて、比較例5については以下の手順に従う:
0.26g/cm3のかさ密度を有するSigma-Aldrich(Article 04238)からの18gのヒドロキシアパタイトを2gのカーボンブラック(Printex(登録商標)60、Degussa)と混合し、および実験用ミル(Severin KM 3868コーヒーミル)で3分間粉砕することによって均質化する。混合物を、ミキサー内で、ポリエチレン顆粒および総重量に基づいて1重量%の濃度の湿潤添加剤と混合し、続いて押し出す。得られたコンパウンドを、射出成形機を使用して、6×9cmのサイズを有するテストプレートに変換する。
【0062】
テストプレートは、ファイバーレーザーを使用して刻印される。パルスモードで以下のパフォーマンスパラメータをカバーするテストグリッドを使用する:
KBAファイバーレーザー(F-9050, UHS):
波長:1062nm
出力電力:50W
テストグリッドの電力:出力電力の100%
周波数:20-100kHz
速度:1-15m/s
【0063】
同等のレーザーマーキング結果は、プラスチック部品のマーキング用の他の慣習的なレーザーでも達成することができ、例えば、以下の条件下でバナジン酸塩レーザーを使用する:
Trumpf vanadate laser (Vectormark 5):
波長:1064nm
出力電力:10.5W
テストグリッドの電力:出力電力の100%
周波数:20-100kHz
速度:500-4000mm/s
【0064】
試料の材料特性ならびにコーティングプロセスおよびレーザー刻印の詳細を表1にまとめる。
【表1】
【0065】
テストグリッドのレーザー刻印の結果を
図1~8に示す。試料は、例1、2および3(
図1~3)の刻印が、実質的にテスト全体にわたって極めて薄いマークを生じさせる一方、比較例1~5(
図4~8)は、極めて不明瞭または茶色がかった変色したマークしかもたらさないことを明確に示している。この結果は、とりわけ比較例5について注目に値する。
図12および13は、例1(
図12)および例2(
図13)に従うレーザー添加剤のTEM顕微鏡写真を示す。炭素シェルは拡大された詳細とともに示されている。
【国際調査報告】