(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラー
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221115BHJP
G02B 7/185 20210101ALI20221115BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
G02B7/185
G02B7/198
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517978
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020076137
(87)【国際公開番号】W WO2021053164
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】102019214269.9
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】ウィリー アンデレル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ケルナー
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト ホルデラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ホルツ
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ストンペ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ザイツ
【テーマコード(参考)】
2H043
2H197
【Fターム(参考)】
2H043BB05
2H043BC01
2H043BC08
2H043CA01
2H043CD04
2H043CE00
2H197AA05
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA10
2H197GA12
2H197HA03
(57)【要約】
投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーは、ファセット本体(35)及びそこに設けられた反射面(36)を有する複数の変位可能な個別ファセット(8
i)を備え、個別ファセット(8
i)の少なくともいくつかは、1つ又は複数の変位位置で当接面(38)と接触するような変位範囲を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影露光装置(1)の照明光学ユニット(1a)のファセットミラー(7、20)であって、
1.1. 複数の変位可能な個別ファセット(8
i、21
i)であり、
1.1.1. ファット本体(35)と、
1.1.2. 該ファセット本体(35)に設けられた反射面(36)と
を有する個別ファセット(8
i、21
i)
を備えたファセットミラー(7、20)において、
1.2. 前記個別ファセット(8
i、21
i)は、隣接する個別ファセット(8
i、21
i)が相互に、但し前記ファセット本体(35)に形成された当接面の領域及び/又は前記ファセット本体(35)に配置又は形成された当接要素(38)の領域のみで、接触することが可能であるように形成されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項2】
投影露光装置(1)の照明光学ユニット(1a)のファセットミラー(7、20)であって、
2.1. 複数の変位可能な個別ファセット(8
i、21
i)であり、
2.1.1. ファット本体(35)と、
2.1.2. 該ファセット本体(35)に設けられた反射面(36)と
を有する個別ファセット(8
i、21
i)
を備えたファセットミラー(7、20)において、
2.2. 前記個別ファセット(8
i、21
i)の少なくともいくつかは、1つ又は複数の変位位置で当接面と接触するような変位範囲を有するファセットミラー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファセットミラー(7、20)において、全ての個別ファセット(8
i、21
i)は、それぞれのホーム位置及び/又は能動変位位置で全ての当接面から離れて配置されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記個別ファセット(8
i、21
i)のいくつかは、隣接する個別ファセット(8
i、8
i+1、21
i、21
i+1)が1つ又は複数の変位位置で接触するような変位範囲を有することを特徴とするファセットミラー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記個別ファセット(8
i、21
i)の少なくともいくつかは、隣接する個別ファセット(8
i、8
i+1、21
i、21
i+1)が所定の当接面の領域で接触できるように形成されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記当接面は、個別ファセット(8
i、21
i)の前記ファセット本体(35)に形成されるか又は別個の当接要素(38)により形成されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記ファセット本体(35)は、2つの隣接する個別ファセット(8
i、8
i+1、21
i、21
i+1)の前記ファセット本体(35)間の距離が前記反射面(36)間の距離より小さいように形成されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、1つ又は複数の当接要素(38)が前記ファセット本体(35)にそれぞれ設けられることを特徴とするファセットミラー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のファセットミラー(7、20)において、前記当接要素(38)は、前記反射面(36)と平行な方向の大きさが該方向の前記反射面(36)の大きさより大きく、且つ/又は前記ファセット本体(35)の前記反射面(36)とは反対側で前記ファセット本体(35)より突出することを特徴とするファセットミラー。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記当接要素(38)は、それらの外側包絡線が該外側包絡線により囲まれた前記反射面(36)の部分領域に対する垂直投影で少なくとも1つの方向に前記反射面(36)より突出するように前記ファセット本体(35)に対で配置されることを特徴とするファセットミラー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のファセットミラー(7、20)において、前記個別ファセット(8
i、21
i)の前記変位範囲を制限する1つ又は複数の手段を特徴とするファセットミラー。
【請求項12】
投影露光装置(1)の照明光学ユニット(1a)のファセットミラー(7、20)の個別ファセット(8、21)であって、
12.1. ファット本体(35)と、
12.2. 該ファセット本体(35)に設けられた反射面(36)と
を有する個別ファセット(8、21)において、
12.3. 前記反射面の面法線の方向の投影で、前記面法線に対して垂直な少なくとも1つの方向に前記反射面(36)より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素(38)が、前記ファセット本体(35)に設けられることを特徴とする個別ファセット。
【請求項13】
請求項12に記載の個別ファセット(8、21)において、該個別ファセット(8、21)は、前記反射面の面法線の方向の投影で、前記面法線に対して垂直な少なくとも1つの方向及び反対方向の両方に前記反射面(36)より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素(38)を有することを特徴とする個別ファセット。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の個別ファセット(8、21)において、該個別ファセット(8、21)は、前記反射面の面法線の方向の投影で、前記反射面(36)の周方向全域に前記反射面(36)より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素(38)を有することを特徴とする個別ファセット。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記投影は平行投影であることを特徴とする個別ファセット。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記投影は直交投影であることを特徴とする個別ファセット。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記ファセット本体(35)及び/又は前記当接要素(38)の少なくともいくつかは、前記反射面(36)と平行な方向の大きさが該方向の前記反射面(36)の大きさより大きいことを特徴とする個別ファセット。
【請求項18】
請求項12~17のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記当接要素(38)の少なくともいくつかは、前記ファセット本体(35)の前記反射面(36)とは反対側で少なくとも1つの方向に前記ファセット本体(35)より突出することを特徴とする個別ファセット。
【請求項19】
請求項12~18のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記当接要素(38)の少なくともいくつかは、それらの外側包絡線が該外側包絡線により囲まれた前記反射面(36)の部分領域に対する垂直投影で少なくとも1つの方向に前記反射面(36)より突出するように前記ファセット本体(35)に対で配置されることを特徴とする個別ファセット。
【請求項20】
請求項12~19のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記ファセット本体(35)は、少なくとも1つの自由端を有し、前記ファセット本体(35)の断面は、前記自由端に向かって減少することを特徴とすることを特徴とする個別ファセット。
【請求項21】
請求項12~20のいずれか1項に記載の個別ファセット(8、21)において、前記ファセット本体(35)は、慣性モーメント(I)を減らす手段及び/又は剛性を高める手段を有することを特徴とする個別ファセット。
【請求項22】
投影露光装置(1)の照明光学ユニット(1a)のファセットミラー(7、20)の個別ファセット(8、21)であって、
22.1. ファット本体(35)と、
22.2. 該ファセット本体(35)に設けられた反射面(36)と
を有する個別ファセット(8、21)において、
22.3. 前記ファセット本体(35)は、慣性モーメント(I)を減らす手段及び/又は剛性を高める手段を有することを特徴とする個別ファセット。
【請求項23】
照明光学ユニット(1a)であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の少なくとも1つのファセットミラー(7、20)を備えた照明光学ユニット。
【請求項24】
照明系(1c)であって、
24.1. 請求項23に記載の照明光学ユニット(1a)と、
24.2. 照明放射線(4)を生成する放射源(5)と
を備えた照明系。
【請求項25】
光学系であって、
25.1. 請求項23に記載の照明光学ユニット(1a)と、
25.2. 物体視野(2)を像視野に投影する投影光学ユニット(1b)と
を備えた光学系。
【請求項26】
投影露光装置(1)であって、
26.1. 照明放射線(4)を生成する放射源(5)と、
26.2. 請求項23に記載の照明光学ユニット(1a)と、
26.3. 物体視野(2)を像視野に投影する投影光学ユニット(1b)と
を備えた投影露光装置。
【請求項27】
微細構造又はナノ構造コンポーネントを製造する方法であって、
請求項26に記載の投影露光装置を用意するステップと、
結像対象構造を有するレチクルを用意するステップと、
放射線感応コーティングを有するウェーハを用意するステップと、
前記投影露光装置(1)を用いて前記レチクルの前記結像対象構造を前記ウェーハに結像するステップと
を含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法により製造されたコンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、独国特許出願第10 2019 214 269.9号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーに関する。本発明はさらに、投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーの個別ファセットに関する。本発明は、照明光学ユニット、照明系、光学系、及び上記ファセットミラーを有する投影露光装置にも関する。最後に、本発明は、微細構造又はナノ構造コンポーネントを製造する方法及び当該方法により製造されたコンポーネントにも関する。
【背景技術】
【0003】
多数の変位可能な個別ファセットを有する投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーが、従来技術から既知である。この場合、個別ファセットは、変位が制御されている場合には相互に妨げ合わないように形成される。特に、ファセットは、変位中に相互に接触しないように形成される。
【0004】
特に輸送中にファセットミラーのファセットを望ましくない移動から保護する機構が、従来技術から既知である。しかしながら、この機構はファセットミラーの通常動作中にはファセットを保護しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴により達成される。
【0007】
本発明の本質は、1つ又は複数の変位位置で当接面と接触するようにファセットミラーの個別ファセットを形成することである。ファセットミラーの個別ファセットは、可逆的に調整可能な変位位置で当接面と接触するように特に形成され得る。かかる可逆的に調整可能な変位位置は、能動的又は作動可能な変位位置とも称する。特に、個別ファセットは、1つ又は複数の離散的な変位位置を有し得る。個別ファセットは、不所望の撓みの場合、特に寄生運動の場合、特に輸送及び/又は地震の場合にのみ当接面と接触するようにも形成され得る。かかる撓みは、受動変位位置とも称する。不明な場合、変位位置は、能動的に可能な変位位置及び受動的に可能な変位位置の両方を含む。
【0008】
この場合、ファセットは、その本体それぞれの当接面又は本体に配置された当接要素と接触する。この場合、個別ファセットの反射面が非接触であることが好ましい。
【0009】
当接面は、特に規定の、特に所定の当接面である。当接面は、特に2つの隣接するファセットが相互に突き当たる当接面である。当接面は、特に各個別ファセットの反射面から離れている。特に、当接面及び個別ファセットの反射面は不連続な領域を形成する。
【0010】
当接面は、特にファセット本体にそれぞれ形成される。当接面は、個別ファセットの反射面の面法線の方向の投影で、特に個別ファセットの反射面の重心を通る面法線の方向の投影で、ファセット本体の投影の外側境界を形成するか又は面法線に対して垂直な少なくとも1つの方向に上記境界より突出するように、ファセット本体に形成又は配置され得る。
【0011】
投影は、特に平行投影、特に直交投影である。
【0012】
投影は特に、面法線に対して特に垂直な投影平面への投影である。
【0013】
本発明によれば、これによりファセットが相互に非制御下でぶつかり合うのを防止することができると認識された。非制御下でのぶつかり合いは、非制御の、特に不所望の領域でファセットが相互にぶつかり合うことを意味するとここでは理解される。特に、個別ファセットの反射面が相互にぶつかり合うのを防止することが可能である。これにより、反射面の損傷を防止することができる。
【0014】
個別ファセットは、作動及び設定可能な変位位置でのみ当接面と接触するように特に形成され得る。特に、個別ファセットに対する不所望又は予測不可能な外部効果は、当接面との接触の前提条件ではない。
【0015】
個別ファセットは、不所望又は予測不可能な外的影響の場合に、特に不所望又は予測不可能な外的影響の場合にのみ、当接面と接触するようにも形成され得る。
【0016】
本発明の一態様によれば、個別ファセットの少なくともいくつか、特に個別ファセットの全てが、隣接する個別ファセットが1つ又は複数の変位位置で接触するような変位範囲を有する。個別ファセットは、特に受動変位位置で相互に接触し得る。
【0017】
個別ファセットは、基本又は中立位置において非接触で配置される、特に相互に離れて配置されることが好ましい。特に、個別ファセットは、少なくとも1つの能動変位位置で、特に全ての能動変位位置で全ての当接面から離れて配置され得る。
【0018】
概して、本発明による概念は、複数の変位可能な光学素子を有する光学モジュールに関する。
【0019】
本発明の一態様によれば、隣接する個別ファセットは、基本又は中立位置でギャップにより相互に離れてそれぞれ配置される。対応するギャップが、所定の切替位置に、特に任意の所望の切替位置にもあり得る。特に、個別ファセットの反射面は、基本又は中立位置で相互に離れてそれぞれ配置されることが好ましい。
【0020】
基本又は中立位置では、個別ファセットは、特にギャップにより全ての当接面からも離れて配置される。
【0021】
ギャップは、個別ファセットを変位範囲で変位させるのに十分な大きさである。他方では、ギャップは、個別ファセットの密集を可能にするためにできる限り狭い。隣接する個別ファセット間のギャップの幅は、特に1mm未満、特に0.5mm未満であり得る。ギャップの幅は、個別ファセットの、特にその本体又はその面の対応する方向の大きさの特に50%以下、特に30%以下、特に20%以下、特に15%以下、特に10%以下、特に5以下、特に3%以下、特に2%以下、特に1%以下である。
【0022】
特に、ファセットを作動可能に変位させることができる範囲を個別ファセットの変位と称する。この範囲は、能動変位範囲とも称する。さらに、特にファセットミラーの輸送中に、外部効果、例えば振動の結果として個別ファセットが変位する可能性があり得る。ここで起こり得る範囲を受動変位範囲と称する。特に、これは能動変位範囲より大きくてもよい。別段の記載のない限り、ファセットの変位範囲は、能動変位範囲及び受動変位範囲それぞれの最大変位範囲、特にそれぞれの大きい方を意味すると理解される。
【0023】
本発明の一態様によれば、隣接する個別ファセット間のギャップの総面積は、ファセットミラー又はファセットミラーの全ての個別ファセットの反射面の合計の総面積の特に50%以下、特に30%以下、特に20%以下、特に15%以下、特に10%以下、特に5%以下、特に3%以下、特に2%以下、特に1%以下である。
【0024】
特に、個別ファセットは、1つ、2つ、又は3つ以上の変位自由度を有する。特に、個別ファセットは2つの傾斜自由度を有する。特に、個別ファセットは、特に相互に対して垂直に延びる2つの傾斜軸周りに傾斜可能であり得る。個別ファセットは、特に反射面の中心点における面法線と平行な方向に直線変位可能でもあり得る。
【0025】
個別ファセット、特にそのファセット本体はそれぞれモノリシックに形成され得る。
【0026】
この場合、反射が設けられる個別ファセットの構成要素をファセット本体と称する。特に、ファセット本体は、反射面に本質的に対応する断面を有する。ファセット本体の断面は、各ファセットの反射面の寸法と特に30%以下、特に20%以下、特に10%以下異なる。
【0027】
特に投影の場合、特に平行投影の場合、特に直交投影の場合、ファセット本体は、反射面の面法線の方向で、特に各個別ファセットの反射面の面法線に対して垂直な方向の当接面の1つの領域及び/又は当接要素の1つの領域に、各ファセットの反射面の寸法と30%以下、特に20%以下、特に10%以下異なる断面を有する。これは特に、四角形の特に細長い断面であり得る。断面は直線状又は曲線状の境界を有し得る。ファセット本体のこの断面のアスペクト比は、特に上記最大差内の各個別ファセットの反射面のアスペクト比に対応する。この点で、以下の説明を参照されたい。
【0028】
個別ファセットは、他の構成要素、例えば各ファセット及び/又はファセットを支持する要素を変位させるアクチュエータデバイスの要素も有し得る。断面が反射面と大きく、特に50%以上異なる該当する要素は、ファセット本体の構成要素とみなされない。
【0029】
個別ファセット、特にその反射面は、細長いことが好ましい。これらは、3:1以上、特に5:1以上、特に8:1以上、特に10:1以上、特に12:1以上のアスペクト比(長手方向の最大の大きさ:それに対して垂直な、すなわち横方向の最大の大きさ)を有することが好ましい。アスペクト比は、100:1以下、特に50:1以下、特に30:1以下、特に20:1以下であることが好ましい。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、個別ファセットと特定の変位位置で接触する当接面は、別の個別ファセット、特にその本体、特に本体の所定の領域により、又は別個の当接要素により形成される。
【0031】
ファセットミラーは、作動可能でない自由度が励起された場合にのみ2つの隣接する個別ファセットが接触できるように特に形成され得る。個別ファセットのかかる撓みは、例えば地震又は輸送荷重の場合に起こり得る。
【0032】
別個の当接要素との接触は、特に地震又は輸送荷重の場合に作動できない自由度の励起にも制限され得る。
【0033】
本発明のさらに別の態様によれば、個別ファセットのファセット本体は、ファセット本体の所定の領域での特定の撓み又は変位位置で隣接する個別ファセットが接触するようにそれぞれ形成される。
【0034】
特に、個別ファセットの目的の変位範囲及びファセット本体の幾何学的形態に基づき、隣接する個別ファセットとの接触が起こり得るその領域を予め決定することが可能である。これにより、生じ得る衝突にこの目的を特に適合させることが可能である。
【0035】
接触が起こり得るファセット本体の領域は、各個別ファセットの反射面から、特にそれらの縁から離れていることが好ましい。これにより、隣接する個別ファセット間の衝突に起因した反射面の、特にその縁の損傷の危険が減る。これは、例えばファセットミラーの輸送時及び/又は地震の場合に起こり得るような予期せぬ、特に予測不可能な衝突にも特に当てはまる。
【0036】
ファセット本体の所定の領域は、特に当接面を形成する。
【0037】
本発明のさらに別の態様によれば、ファセット本体は、2つの隣接する個別ファセットのファセット本体間の距離がそれらの反射面間の距離より小さいように形成される。
【0038】
この特性は、個別ファセットの基本位置について特に言える。これは、個別ファセットの変位位置に関係なく一般的に当てはまることが好ましい。ファセット本体の対応する形態を以下でより詳細に説明する。
【0039】
本発明のさらに別の態様によれば、1つ又は複数の当接要素がファセット本体にそれぞれ設けられる。
【0040】
当接要素はバッファとして働く。ある意味では、これらはバンパとして働く。当接要素は、隣接する個別ファセットが相互に接触できる領域を目標通りに指定することを可能にし、特に、当接面を目標通りに指定することを可能にする。
【0041】
当接要素は、別個の要素として形成してファセット本体にそれぞれ接続することができる。特に、当接要素は、ファセット本体に形状嵌合で接続することができる。
【0042】
本発明の一態様によれば、当接要素は、接着、はんだ付け、溶接、螺着、挟着、焼嵌め、又は被嵌によりファセット本体に接続される。原理上、当接要素をファセット本体に接続するために考えられる全ての接続技法が可能である。
【0043】
特に、当接要素は交換可能であり得る。当接要素は、ファセット本体と一体に形成することもできる。これにより、特に単純で安定した製造が可能である。当接要素は、所定の位置に、特にファセット本体の頂上、角、縁、又は他の所定の位置の領域に配置されることが好ましい。
【0044】
当接要素は、ファセット本体の全幅及び/又は全長に延び得る。特に、当接要素は、ファセット本体の全周に延び得る。この代替として、より小さな大きさをそれぞれ有する複数の当接要素を設けることが可能である。これにより軽量化が可能である。これは、個別ファセットの機械的特性に好影響を及ぼす。
【0045】
1つ又は複数の当接要素をファセット本体の端に、特に長手方向のその端の領域にそれぞれ配置することが特に想定され得る。1つ又は複数の当接要素をファセット本体の中央領域に、特に長手方向に関して中央領域に配置することも可能である。これは、湾曲したファセットの場合に特に有利であり得る。
【0046】
当接要素は、衝突が起こる可能性が最も高い領域にそれぞれ特に設けられ得る。特に、当接要素は、各ファセット本体と隣接するファセット本体との間の距離が最小である領域に配置され得る。本記載は、中立、すなわち撓みのない基本状態のファセット本体の位置に、且つ/又は相互間の距離が最小である隣接するファセット本体の変位位置に関するものであり得る。
【0047】
当接要素は、ファセット本体と同じ材料から形成され得る。特に、これらは、銅又は銅合金から形成され得る。これらは、他の材料から製造されるか又は他の材料からなることもできる。当接要素に考えられる他の材料は、例えばZerodur、ULE、アルミニウム、セラミック、石英、及びシリコンである。
【0048】
当接要素には、コーティング、特に耐水性コーティングが設けられ得る。結果として、粒子摩耗を低減、特に防止することができる。
【0049】
本発明のさらに別の態様によれば、当接要素は、反射面より側方に突出する。当接要素は、特に上から見た場合に反射面より側方に突出する。当接要素は、特に横方向に反射面より側方に突出する。
【0050】
当接要素は特に、反射面と平行な方向の大きさがこの方向の反射面の大きさより大きい。当接要素は特に、反射面の幅と平行な方向の大きさが反射面の幅より大きい。
【0051】
このようにして、衝突の場合の反射面の損傷を効果的且つ確実に防止することができる。
【0052】
本発明のさらに別の態様によれば、当接要素は、反射面の面法線とは反対の方向にファセット本体より突出する。当接要素は、特にファセット本体の反射面とは反対側でファセット本体より突出する。
【0053】
当接要素は、反射面の面法線と平行な方向の大きさがこの方向のファセット本体の大きさより小さくてもよい。
【0054】
本発明のさらに別の態様によれば、ファセットミラーの個別ファセットの全てが、同一の当接要素及び/又は本質的に同一の位置の当接要素をそれぞれ有する。
【0055】
これにより、個別ファセットの製造及びファセット輪郭のプログラミングが簡略化される。
【0056】
この代替として、異なる個別ファセットは異なる当接要素及び/又は異なる位置の当接要素を有し得る。個別ファセットのそれぞれに1つ又は複数の当接要素を個別に設けることが特に可能である。これにより、ファセットの計画の柔軟性が高まる。
【0057】
当接要素の相似及び/又は相違は、ここでは各個別ファセットの形状及び/又は配置にそれぞれ関係し得る。
【0058】
本発明のさらに別の態様によれば、当接要素は、個別ファセットの全長に延びる大きさを有する。当接要素は、特に個別ファセットの全周に延び得る。
【0059】
結果として、個別ファセットは特に確実に保護される。
【0060】
本発明のさらに別の態様によれば、個別ファセット、特にその本体は、軽量化手段及び/又は軽量化形態を有する。
【0061】
特に、ボア、クリアランス、ポケット、薄肉部、又はベベルが軽量化手段として働き得る。
【0062】
本発明のさらに別の態様によれば、ファセットミラーは、個別ファセットの変位範囲を制限する1つ又は複数の手段を有する。ファセットミラーは、不所望の撓みを制限する、特に個別ファセットの寄生運動を制限する1つ又は複数の手段を特に有し得る。
【0063】
この場合、変位範囲を制限する手段、特に個別ファセットの不所望の寄生運動を制限する手段は、当接面を形成し得る。
【0064】
個別ファセットの変位範囲を制限する手段は、スナバ、フォーク、ポケット、又はUプロファイルとも称するピンとして形成され得る。
【0065】
各当接面の遊びは、隣接する個別ファセットに関するファセットギャップより小さいことが好ましい。
【0066】
本発明によるさらに別の態様によれば、個別ファセットの変位範囲を制限する手段の自由端は、回転軸の領域に配置される。結果として、個別ファセットの変位範囲を制限する手段の周りの個別ファセットの遊びを減らすことができる。特に、これは、回転軸周りの個別ファセットの作動の結果として個別ファセットの利用可能な遊びを減らさない。
【0067】
遊びをさらに減らすために、個別ファセットの変位範囲を制限する手段を調整することが想定され得る。
【0068】
個別ファセット間のギャップを測定し、且つ/又は特殊スペーサを決定してそれらをファセットに配置し、且つ/又は当接部を調整可能又は設定可能にすることが特に想定され得る。
【0069】
本発明のさらに別の目的は、特に前述の説明による投影露光装置の照明光学ユニットのファセットミラーの個別ファセットを改良することである。
【0070】
この目的は、ファセット本体及びそこに設けられた反射面と、ファセット本体に設けられた1つ又は複数の当接要素とを有する個別ファセットにより達成される。
【0071】
利点は既に記載したものから明らかである。
【0072】
一態様によれば、反射面の面法線の方向の投影でこの面法線に対して垂直な少なくとも1つの方向に反射面より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素が、ファセット本体に設けられる。
【0073】
ここで、面法線は、特に反射面の重心を通る面法線である。
【0074】
一態様によれば、個別ファセットは、反射面の面法線の方向の投影でこの面法線に対して垂直な少なくとも1つの方向及び反対方向の両方に反射面より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素を有する。
【0075】
一態様によれば、個別ファセットは、反射面の面法線の方向の投影で反射面の周方向全域で反射面より突出する1つ又は複数の当接面及び/又は当接要素を有する。
【0076】
当接要素は、ファセット本体の特殊形態、特にその厚肉部であり得る。本体は、個別ファセットの反射面より少なくとも部分的に広いことが好ましい。
【0077】
当接要素は、ファセット本体に接続された別個のコンポーネントでもあり得る。
【0078】
個別ファセットの反射面は平坦であり得る。反射面は正又は負の屈折力も有し得る。反射面は円環状でもあり得る。
【0079】
個別ファセットの反射面は、特に矩形、台形、又は湾曲状、特に円形リングのセグメントの形態であり得る。
【0080】
本発明のさらに別の態様によれば、ファセット本体は、少なくとも1つの自由端、特に2つの自由端を有し、その断面が自由端に向かって減少するように形成される。
【0081】
ファセット本体の断面は、取付け領域から自由端に向かって特に少なくとも部分的に減少する。
【0082】
断面は、自由端に向かって特に連続的に、特に単調に減少し得る。これにより、質量慣性モーメントを減らすことができる。ファセット本体の断面は、ファセット本体の剛性の増加にも寄与し得る。
【0083】
断面は、自由端の領域の外縁部で再度大きくもなり得る。自由端の領域に、ファセット本体は特に当接要素を有し得る。
【0084】
本発明のさらに別の態様によれば、ファセット本体は、その質量慣性モーメントを減らす手段及び/又はその剛性を高める手段を有する。
【0085】
ファセット本体のクリアランス、ボア、又は概して軽量化形態が、ファセット本体の質量慣性モーメントを減らす手段として働き得る。
【0086】
その異形形態が、ファセット本体の剛性を高める手段として働き得る。ファセット本体は、少なくとも部分的にT字形、U字形、又はH字形の断面を特に有し得る。ファセット本体は付加製造もされ得る。特に、ファセット本体は中空構造を有し得る。これにより、ファセット本体の質量慣性モーメントを特に効果的に減らすことができる。
【0087】
本発明のさらに他の目的は、投影露光装置の照明光学ユニット、投影露光装置の照明系、投影露光装置の光学系、及び投影露光装置を改良することである。これらの目的は、前述の説明によるファセットミラーを有する照明光学ユニット、照明系、光学系、及び投影露光装置により達成される。
【0088】
本発明による実施形態は、輸送中及び地震荷重の場合に、特に光学面の特に高い保護をもたらす。
【0089】
利点はファセットミラーのものから分かる。
【0090】
本発明のさらに他の目的は、微細構造又はナノ構造コンポーネントを製造する方法及び対応して製造されたコンポーネントを改良することである。
【0091】
これらの目的は、前述の説明による投影露光装置を提供することにより達成される。
【0092】
利点はさらにファセットミラーのものから分かり、これを参照されたい。
【0093】
本発明のさらなる利点及び詳細は、図を参照して例示的な実施形態の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】投影露光装置の構成要素及びビーム経路を概略的に示す。
【
図2】視野ファセットミラーの視野ファセットの例示的な配置を概略的に示す。
【
図3】2つの独立した傾斜軸周りに視野ファセットを変位させるアクチュエータデバイスを概略的に示す。
【
図4】2つの独立した傾斜軸周りに視野ファセットを変位させるアクチュエータデバイスを概略的に示す。
【
図5】視野ファセットの反射面に対する視野ファセットの傾斜軸の相対位置を明確にするためのさらなる詳細を概略的に示す。
【
図6】2つの隣接するファセットの面法線と平行な軸回りの回転中のそれらの衝突を例として概略的に示す。
【
図8】ファセットを保護する当接要素の断面を例として示す。
【
図9】2つの当接要素が端に配置された
図7に示すファセットの側面図を例として示す。
【
図10】ファセットが当接要素により保護されている、
図6に示す図を概略的に示す。
【
図11】2つの隣接するファセットの異なる傾斜状況を示す概略図を示す。
【
図12】2つの隣接するファセットの異なる傾斜状況を示す概略図を示す。
【
図13】2つの隣接するファセットの異なる傾斜状況を示す概略図を示す。
【
図14】ファセットの当接要素の配置を概略的に示す。
【
図15】ファセットの当接要素の別の配置を概略的に示す。
【
図16】構造最適化されたファセットの斜視図を例として示す。
【
図17】質量慣性モーメントを減らす手段及び剛性を高める手段を有する本体を有するファセットの部分斜視図を概略的に示す。
【
図18】平衡要素を有するファセットの斜視図を概略的に示す。
【
図19】ファセットの本体上の例示的な当接要素の配置の詳細図を例として示す。
【
図23】ファセットの変位範囲を制限するための別個の当接要素を有するファセットの図を概略的に示す。
【
図24】
図23に示す当接要素を有する隣接するファセットの断面を概略的に示す。
【
図25】ファセットの傾斜軸に対する
図23に示す当接要素の好ましい配置を示すための、ファセットの長手方向断面を概略的に示す。
【
図26】当接要素が別個の側方当接部として形成された変形形態を例として概略的に示す。
【
図27】ファセットを保護する当接要素のさらに別の断面を例として示す。
【
図28】3つの当接要素を有するファセットの斜視図を例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
以下では、最初に
図1を参照して投影露光装置1の全体構造及びビーム経路を説明する。
【0096】
投影露光装置1は、物体面3の物体視野2を照明放射線4で照明する照明光学ユニット1aを備える。投影露光装置1は、
図1に示さないレチクルを結像する投影光学ユニット1bも備え、レチクルは、物体面3の領域に配置され、同じく
図1に示さず像面31に配置されたウェーハに結像される構造を有する。詳細は従来技術から広く知られている。
【0097】
照明放射線4は、特にEUV放射線、特に30nm以下、特に13.5nm以下の波長を有する照明放射線であり得る。
【0098】
照明放射線4は、放射源5により生成される。プラズマ源又は自由電極レーザ(FEL)が放射源5として働き得る。詳細については、従来技術を再度参照されたい。
【0099】
照明光学ユニット1a及び放射源5の組合せを照明系1cとも称する。
【0100】
放射源5が発した照明放射線4は、コレクタ6により集光される。コレクタ6は、照明放射線4を反射して照明光学ユニット1aの後続のコンポーネントへ導く。
【0101】
コレクタ6の後のビーム経路において、照明放射線4は、視野ファセットミラーとも称する第1ファセットミラー7の形態の第1光学素子に入射する。第1ファセットミラー7は、照明系1cで二次光源を生成する働きをする。
【0102】
照明放射線4の作用を受ける第1ファセットミラー7の全反射面は、視野ファセットとも称する複数の第1ファセット8
iに分割される。
図1及び
図2に、4つの第1ファセット8
1~8
4を概略的に示す。
【0103】
照明放射線4の部分束12
i、特に図示の4つの第1ファセット8
1~8
4に割り当てられた照明放射線4の部分束12
1~12
4を、同様に
図1に例として概略的に示す。
【0104】
第1ファセットは通常は細長形態である。第1ファセットは矩形であり得る。第1ファセットは、湾曲状、特に円形リングのセグメントの形態でもあり得る。
【0105】
第1ファセットは全てが同一の寸法を有し得る。異なる寸法の第1ファセットを有する第1ファセットミラー7を形成することも可能である。
【0106】
第1ファセットは、特に5:1以上、特に8:1以上、特に12:1以上、特に13:1以上のアスペクト比を有し得る。第1ファセットのアスペクト比は、特に100:1以下、特に50:1以下である。
【0107】
第1ファセットの形状は、特に物体視野2の形状に適合され得る。これは特に、物体視野2の形状と幾何学的に同様であり得る。第1ファセットの形状は特に、投影露光装置1の動作中に、第1ファセットで反射した照明放射線4が物体視野2又はその所定の部分領域をできる限り正確に照明するようなものである。
【0108】
第1ファセットのそれぞれを変位、特に傾斜させて、異なる照明設定を設定することができる。第1ファセットは、特に相互に対して垂直な2つの軸周りに傾斜させることができる。
【0109】
以下ではデカルト(x,y,z)座標系を用いて、位置関係を説明する。この座標系では、第1ファセットはx方向に延びる傾斜軸及びy方向に延びる傾斜軸周りにそれぞれ傾斜させることができる。z軸は、特に各ファセットの面法線と平行又は略平行である。
【0110】
第1ファセットを変位させるためにアクチュエータがそれぞれ設けられ、そのうちの1つ、アクチュエータ16を
図1に代表的に示す。アクチュエータ16は、制御ライン18により中央制御デバイス19に接続される。制御デバイス19は、
図1に示さない対応する制御ラインにより、第1ファセットに割り当てられた他の全てのアクチュエータに接続される。
【0111】
第1ファセットのさらなる詳細については、完全に参照される米国特許出願公開第2003/0086524号、特に
図7~
図14を参照されたい。
【0112】
第2ファセットミラー20の形態の第2光学素子が、第1ファセットミラーにより生成された第2光源の場所に、すなわち放射源5に対する像平面に配置される。第2ファセットミラー20は、瞳ファセットミラーとも称する。瞳ファセットミラーには、第1ファセットミラー7を介して照明放射線4が入射する。
【0113】
入射を受けることができる第2ファセットミラー20の表面は、複数の第2ファセット21
iに分割され、そのうちの4つの第2ファセット21
1~21
4を
図1に例として示す。第2ファセット21
1~21
4は、第1ファセット8~11の1つにそれぞれ割り当てられるので、それぞれ入射を受けた第2ファセット21
1~21
4の場所でそれぞれ第2光源が生成される。
【0114】
図1に概略的に示すように、第2ファセットはアクチュエータにより傾斜可能でもあり得る。この例として、第2ファセット21に割り当てられたアクチュエータ25を
図1に示す。アクチュエータ25は、ビームライン18を介して制御デバイス19と信号接続される。
【0115】
さらなるミラー28、29を有する透過光学ユニット27が、第2ファセットミラー20の後のビーム経路に配置される。この場合、ミラー28には照明放射線4が小さな入射角で、例えば30°未満の入射角で入射することができる。ミラー29は、斜入射で、例えば60°を超える入射角で入射を受けることができる。
【0116】
投影露光装置1の前述の説明は、例として理解されるべきである。照明系1cの他の実施形態も、従来技術から既知のように可能である。
【0117】
ファセットのさらなる詳細を以下に記載する。以下の説明及び図が第1ファセットミラー7のファセットに関係する場合でも、記載の態様は、第2ファセットミラー20のファセットについても等しく可能であり有利である。
【0118】
図2に、第1ファセットミラー7の表面からの詳細の平面図を例として示す。
【0119】
図2に例として示すように、ファセットミラー7に相互に隣接して配置された多くのファセット8
iがある。ここで、隣接するファセット8
i、8
i+1は、ギャップ32により相互にそれぞれ分離される。
図2に示す変形形態において、ギャップ32はx方向又はy方向と平行に延びる。
【0120】
反射損失をできる限り小さく保つために、ギャップ32はできる限り狭い。ギャップ幅は特に1mm以下である。ギャップ幅は、対応する方向のファセット8iの大きさの特に50%以下、特に30%以下、特に20%以下、特に15%以下、特に10%以下、特に5%以下、特に3%以下、特に2%以下、特に1%以下である。
【0121】
概して、第1ファセットミラー7の総面積の好ましくは50%以下、特に30%以下、特に20%以下、特に15%以下、特に10%以下、特に5%以下、特に3%以下、特に2%以下、特に1%以下がギャップ32で占められる。照明放射線4は、ギャップ32で反射できない。よって、ギャップ32は透過損失につながる。
【0122】
他方では、ギャップ32はファセット8iの特定の作動範囲を可能にするために必要である。
【0123】
図3及び
図4は、ファセット8
iを変位させるためのアクチュエータ16の詳細を概略的に例として示す。作動はレバー33により行われる。これは磁気力により行うことができる。磁石は、特にレバー33の下側に位置付けられる。その下には通電コイルが設けられ、これらがレバーを撓ませる結果としてファセット8
iを傾斜させることができる。アクチュエータ16は、例えば板ばね34の形態の1つ又は複数の復元要素も有し得る。
【0124】
ファセット8iは、ファセット本体35及び反射面36をそれぞれ有する。反射面36は、周辺に縁40を有する。
【0125】
ファセット8iは、共通のフレーム又は共通のプレートに取り付けられ得る。ファセット8iをモジュラプレート上に群毎に取り付けることも可能である。
【0126】
概して光学面とも称する反射面36は平坦であり得る。しかしながら、これは曲面状でもあり得る。これは、特に凹面状又は凸面状に特に形成され得る。これは円環状でもあり得るか又は任意の他の形状も有し得る。
【0127】
図5に例として示すように、傾斜軸37は、反射面36の領域にあり得る(
図5の左側)。傾斜軸37は、反射面36の下、すなわち後方にもあり得る(
図5の中央)。傾斜軸37は、反射面36の上、すなわち前方にもあり得る(
図5の右側)。反射面36に対する傾斜軸37の位置は、隣接するファセット8
i、8
i+1に指定の傾斜角範囲(傾斜範囲)での衝突がないことを確実にするために、ギャップ32の所要幅に影響を及ぼす。
【0128】
ファセット本体35は、反射面36に対して垂直な方向に減少する断面、例えば台形断面を少なくとも部分的に有し得ることが好ましい。側面角度bは、特に最大設定傾斜角と同程度であり得る。これはより大きい場合もある。ファセット本体35の寸法、特にその質量慣性モーメントは、ファセット本体35の側面角度bを大きくする、特にベベルをより大きくすることにより減らすことができる。
【0129】
取付け方法に応じて、個別ファセット8iは、例えば輸送中又は地震等の不測の衝撃の場合に励起される低い固有振動数を有し得る。これは、隣接するファセット8i、8i+1間の衝突につながり得る。
【0130】
図6は、反射面36の中心点上の面法線と平行に延びるz軸周りの回転中の2つの隣接するファセット間の衝突を例として示す。かかる衝突は、反射面36の光学縁、すなわち周辺領域の凹みにつながり得る。
【0131】
ファセット8i、8i+1はコントローラによりx軸及びy軸周りに傾斜させることができるが、z軸周りの回転は投影露光装置1の通常動作において望ましくない。しかしながら、このようなz軸周りの回転は、輸送及び地震の場合に励起され得る。これはファセット8i、8i+1の損傷につながり、好ましくは回避すべきである。
【0132】
隣接するファセット8i、8i+1の衝突を回避、特に防止するための異なる概念が従来技術から既知である。このような概念は通常は複雑である。それらの有効性が多くの場合に不十分であることも分かっている。
【0133】
本発明によれば、これらの問題は、光学コンポーネント、特にファセット8iの衝突の制御を可能にすることにより解決される。ここで、本発明によれば、衝突の場合に反射面36が損傷を受けないようにファセット本体35及び反射面36をそれぞれ形成することが想定される。これは、各ファセット8iの反射面36から離れて配置されてその領域で接触が起こり得る規定の当接面を、ファセット本体35に設けることにより特に達成することができる。以下でより詳細に説明するように、ファセット本体35が突き当たり得る別個の当接要素が当接面として働くこともできる。
【0134】
当接面は、隣接するファセットの所定の領域又は付加的な機械的コンポーネントにより特に形成され得る。
【0135】
ファセット本体と各関連の当接面との間の距離は、特に対応する方向のギャップ32の幅より小さい。ファセット本体35と関連の当接面との間の距離は、特に反射面36と当接面又は隣接するファセットの反射面36との間の距離より小さい。これにより、衝突の場合に、衝突するのが光学縁、すなわち反射面36の縁ではなく所望の当接領域であることが確実となる。
【0136】
【0137】
図7に示す変形形態において、当接要素38がファセット本体35の端に設けられる。
図7に示すファセットの側面図を
図9に例として示す。
【0138】
図8は、当接要素38の断面を詳細に示す。当接要素38は、特に当接縁39を有する。当接縁39は、傾斜軸37に対して垂直な方向に反射面36の縁40に対して外方にオフセットしている。
【0139】
当接要素38の変形形態の断面を
図27に示す。
図27による当接要素38は、反射面36の両側にショルダ48を有する。ショルダ48は、特にファセットの幅と平行な方向に延びる。これは、反射面36、特にその縁40の保護の改善につながる。
【0140】
図27に示す当接要素38の形態と
図7に示す実施形態との間の中間段階も同様に可能である。ショルダ48は、垂直方向49に対して特に90°~150°の範囲、特に90°~135°の範囲、好ましくは100°以上の角度cに向き得る。ここで、垂直方向49は、特に反射面36の中心点51を通る面法線50と平行に延びる。
【0141】
当接縁39はアール状であり得るか又は面取りされ得る。
【0142】
図9に例として示すように、当接要素38は、ファセット本体35、すなわちファセット本体35の反射面36とは反対側より下方に突出する。この垂直オーバーハングは、ファセット8
iの所望の傾斜範囲に基づき決定され得る。ファセット8
iの傾斜範囲は、例えば100mrad以下であり得る。
【0143】
当接要素38は板状であり得る。当接要素38は、これらをファセット本体35に嵌めることを可能にするスリーブ状に形成することもできる。
【0144】
当接要素38は、長手方向のファセット本体35の自由端にそれぞれ配置され得る。
【0145】
当接要素38は、長手方向に自由なファセット本体35の端を三方で囲むこともできる。対応する形態を
図10に例として示す。当接要素38のこのような形態は、特にz軸周りの回転に起因した衝突の場合にも、ファセット8
i、8
i+1、特にその反射面36を保護する。
【0146】
当接要素38は、ファセット8iの任意の傾斜位置で、特に任意の動作切替位置で、例えばz軸周りにもある任意の特に不測の励起により衝突が起こるとしても当接要素38の領域程度であり、反射面36の縁40の領域では起こらないようにファセット本体36に形成且つ/又は配置されることが好ましい。
【0147】
図28に例として示すように、当接要素38は、ファセット本体35の中央領域にも配置され得る。これは、特に湾曲したファセット8
iの場合に有利であり得る。
【0148】
当接要素38は、各ファセット本体35と隣接するファセット本体35又は隣接する当接要素38との間の距離が最小である1つ又は複数の領域に配置されることが好ましい。当接要素38は、特にファセット本体35のうち衝突が起こる可能性が最も高い領域に配置される。
【0149】
図28に例として示すように、ファセット本体35の自由端の領域に配置された当接要素38は、ファセット本体35の端に完全に配置される必要もない。
【0150】
図28に例として示すように、異なる当接要素38は異なる幾何学的形態を有し得る。特に、ファセット本体35の中央領域に配置された当接要素38を、さらに端寄りに配置された当接要素38とは異なるように形成することが可能である。特に、ファセット本体35の中央領域に配置された当接要素38を、反射面36に対して垂直な方向の大きさがこの方向のファセット本体35の大きさより小さいように形成することが可能である。
【0151】
特に、ファセット本体35の中央領域に配置された当接要素38は、ファセット本体35の厚肉部として形成され得る。
【0152】
ファセット本体35の中央領域に配置された当接要素38は、ファセット本体35の片側にのみ配置され得る。対応する当接要素38を2つの側に、特にファセット本体35の両側に配置することも可能である。
【0153】
ギャップ32の幅が特に小さい、特に最小である領域に当接要素38を配置することで、当接要素38を特に薄く、したがって特に軽く形成することが可能となる。
【0154】
当接要素38は、ファセット8iが変位すると、且つ/又はファセット8iの不測の励起により、ファセット8iが反射面36から離れて配置された所定の領域で当接面と接触するような当接面との接触が起こることができるように特に形成される。
【0155】
図11~
図13は、隣接するファセット8
i、8
i+1の傾斜時の異なる配置の例を示す。
【0156】
ファセット8
i、8
i+1が相互から離れて傾斜する場合(
図11)、隣接する縁40に危険は及ばないか又は少なくとも危険が少ない。
【0157】
逆の場合、すなわち隣接するファセット8i、8i+1が相互に向かって傾斜する場合、原理上は衝突が起こり得る。しかしながら、本発明によれば、一方の当接要素38の当接縁39が他方の当接要素38と接触するように当接要素38を形成することが想定される。原理上、当接要素38、特にその当接縁39は、隣接するファセット8iのファセット本体35の別の領域に突き当たることもできる。
【0158】
しかしながら、ファセット8iの接触(衝突)が起こり得る領域が各ファセット8iの反射面36から離れて配置されることを確実にすべきである。
【0159】
幾何学的条件から容易に推定できるように、当接縁39が反射面36より側方に突出するオーバーハングeは、当接要素38の図示の形態では、当接縁39を通る平面より上の反射面36の高さhに対する比が、側面角度bの3倍の正接と少なくとも同じ大きさでなければならない:e:h≧tan(3b)。側面角度bが40mradである場合、以下が特に当てはまる:e:h≧120μm/mm。当接要素38がこのような形態であれば、反射面36の縁40はファセット8iの考えられる全ての傾斜位置で衝突から保護される。
【0160】
図13に例として示すように、これは、第2傾斜軸周りの付加的な作動の場合にも当てはまる。この場合、これは主に、z方向の2つのファセット8
i、8
i+1の相対変位につながる。これにより、他方のファセット8
iにはそれぞれ危険が及び得る。しかしながら、当接要素38の図示の形態では、特にファセット8
iの反射面36の縁40が衝突できないように、これも当接要素により保護される。
【0161】
図13からも例として明らかなように、z方向の当接要素38の大きさは、y軸周りの最大傾斜範囲に応じて変わる。z方向の当接要素38の十分な大きさにより、y軸周りの傾斜位置に関係なく、当接要素38が反射面36の縁を衝突から保護するために当接面を提供することを確実にすることができる。
【0162】
反射面46を超えた、特に反射面36と平行又は各傾斜軸に対して垂直な方向の当接縁39のオーバーハングeの好ましい値については、以下の因子が考慮され得ることが好ましい。
【0163】
ファセット本体35の製造の製造公差は、通常は10μm~50μmの範囲にある。
【0164】
当接要素35は、ファセット8iの寿命を通して摩耗し得る。衝突の場合、数μm以下の範囲の当接縁39の最大凹みがあり得る。これは特に、当接要素38の材料及び/又は衝突の場合の衝突角に応じて変わる。以下でより詳細に説明するように、アール状に当接縁39を形成することが想定され得る。これにより、衝突の場合のヘルツ圧力を減らすことができる。
【0165】
オーバーハングeは、特にファセット8iの変位範囲(作動範囲)に応じて変わる。さらに、オーバーハングeの絶対値は、当接縁39と保護すべき反射面36の縁40との間の距離、特に高さhに応じて変わる。この距離又は高さhが小さいほど、選択できるオーバーハングeは小さくなる。
【0166】
20μm~100μmの範囲のオーバーハングeが特に有用であると分かっている。
【0167】
隣接する反射面36間の距離をできる限り小さく保つために、より小さなオーバーハングeが有利である。ファセット8i、8i+1の中立位置での隣接するファセット本体35間の距離、特に相互に最も近い隣接するファセット8i、8i+1の当接縁39間の距離は、100μm未満、特に50μm以下であることが好ましい。これらの記載は、特にファセット8i、8i+1の中立位置の、又は特に面法線が相互に平行に延びる位置の、2つの隣接する反射面36間の距離に当てはまることが好ましい。
【0168】
図14及び
図15を参照して本発明のさらに別の態様を説明する。
【0169】
この態様は、ファセット本体35上の当接要素38の配置に関する。本発明によれば、狭窄部、すなわち2つの隣接するファセット8i、8i+1間の最小距離の点は、それらの自由端の領域にあるとは限らないことが認識されている。さらに、隣接するファセット8i、8i+1間のギャップ32の公称幅は、ファセット8i、8i+1の長さにわたって変わり得る。
【0170】
したがって、本発明によれば、狭窄部の位置に応じて当接要素38をファセット本体35に配置することが想定され得る。当接要素38は、特にファセット本体35の端に配置され得るだけではない。これを、ファセット8
1、8
2について
図14に例として示す。しかしながら、当接要素38は、ファセット本体35の中央にも配置され得る。これを、ファセット8
2、8
3について
図14に例として示す。
【0171】
この代替として、オーバーハングeの量を様々に選択することができる。これを
図15に例として示す。ここで、ファセット8
2と8
3との間の当接要素38のオーバーハングeは、ファセット8
1と8
2との間のオーバーハングeの量より大きく選択される。これは、ファセット8
2、8
3の中央領域の小さなギャップ幅が考慮され得ることも意味する。
【0172】
換言すれば、必要に応じて当接要素38の配置の位置を柔軟に選択することが可能である。この代替として、当接要素38をファセット本体35上の所定の位置にそれぞれ配置することが可能である。この場合は特に、オーバーハングeの量をギャップ幅に柔軟に適合させることができる。
【0173】
全てのファセット8iで同じである、ファセット本体35上の当接要素38の配置の所定の位置には、ファセットのフィーチャの種類が減るという利点がある。これにより、ファセット輪郭のプログラミングが容易になる。
【0174】
さらに別の変形形態によれば、当接縁39をファセット8iの全長に形成することが想定される。当接縁39は、特にファセット本体35の周方向全域に形成され得る。当接縁39は、ここでは連続的に形成され得る。これは断続的に形成することもできる。これにより軽量化が可能である。
【0175】
特に、軽量化の理由から、当接要素38をファセット本体35の重要な領域のみに配置することが有利であり得る。特に比較的大きな傾斜範囲、特に40mradを超える傾斜範囲の場合、当接要素38をファセット8iの自由端の領域にのみ配置することが有利であり得る。
【0176】
当接要素38は、特にファセット本体35の長手方向で離散的な場所にのみ配置され得る。特に、最大10個、特に最大8個、特に最大6個、特に最大4個、特に最大2個の当接要素38がファセット本体35に配置され得る。当接要素38は、ファセット本体35の長手方向でファセット本体35の長さの10%以下、特に5%以下、特に3%以下、特に2%以下の大きさをそれぞれ有し得る。
【0177】
概して、当接要素38は、ファセット本体35の質量慣性モーメントの増加が当接要素38の配置により10%以下、特に5%以下、特に3%以下であるようにファセット本体35に形成され配置され得る。
【0178】
本発明のさらに別の態様は、ファセット本体35の有利な構成に関する。できる限り軽量のファセットが動的理由から有利であることが分かっている。一方では、これにより励起の場合に振幅が低く保たれ、他方では、衝突の場合に衝撃エネルギーが減る。本発明によれば、当接面とのファセット8iの接触が許される場合、こうした衝突が弊害をもたらさない、特にファセット8iの損傷を引き起こさない又は粒子形成につながらないことを確実にするよう留意しなければならない。
【0179】
最低限の重量の、特に動的に重要な軸、特に傾斜軸に関して特に最低限の質量慣性モーメントのファセット8iを形成するために、ファセット本体35は、構造最適化して形成され得る。
【0180】
ファセット本体35は、特に軽量化する手段、特に質量慣性モーメントを減らす手段を有し得る。ファセット本体35を軽量化し且つその質量慣性モーメントを減らす手段として、自由端に向かって減少する断面を有するファセット本体35を形成することが例えば想定され得る。特に、ファセット本体35の高さをファセットの端に向かって減らすことが可能である。対応する形態を
図16に例として示す。ファセット本体35の裏側とその表側との間の設定角Wは、特に2°~10°の範囲、特に4°~6°の範囲にある。ファセット本体35の端が薄い形態により、その質量慣性モーメントは、構造最適化されていない形態に比べて約10%減り得る。同時に、ファセット本体35の剛性を高めることができる。ファセット本体35の剛性は、特にファセットの支点に向かって断面積を増加させることにより高めることができる。断面が自由端に向かって減少するので、ファセット本体35の総質量は増加するが、質量慣性モーメントは減少する。したがって、質量慣性モーメントはファセット本体35の全長にわたって減少し、剛性は高まる。例えば、ファセット本体35の断面積を端に向かって減少させることにより、ファセット本体35の死荷重によるサグを2倍を超えて、特に3倍を超えて改善することができる。これらの記載は、例として長さ120mm、幅6.6mm、及び平均高さ14mmのファセットに関する。
【0181】
さらに、必要な剛性をアクチュエータ軸に向かって変位させることができる。
【0182】
ファセット本体35を軽量化する、特にその質量慣性モーメントを減らす別の手段を
図17に例として示す。この変形形態によれば、ボアがファセット本体35に設けられる。ボアも同様に軽量化につながる。この代替として又は追加として、特にファセット本体35の裏側から又はその側面からポケットを設けることもできる。さらに、断面の漸減も他の方法で、例えば両側のベベルにより可能である。
【0183】
ファセット本体35を最適化するさらに別の手段を
図18に示す。この変形形態によれば、ファセット本体35は、極めて非対称に取り付けられる。平衡要素41がここでは短い方の自由端の領域に設けられる。
【0184】
特にRx周りのファセット本体35の質量慣性モーメントを、上述の手段により最大30%減らすことができる。
【0185】
当接要素38は、x方向の、すなわちファセット本体35の長手方向の大きさが小さいことが好ましい。当接要素38は、x方向に1mm~3mmの範囲の大きさを特に有し得る。例えば、例として上述のファセット8iは、特にマニピュレータの他の移動質量と合わせて、約180000g・mm2の総慣性モーメントIyyを有する。当接要素38による追加の総慣性モーメントIyyは、5000m・mm2、すなわち総慣性モーメントIyyの3%未満である。
【0186】
さらに別の変形形態によれば、当接要素38が追加でもたらす重量、したがって慣性モーメントは、クリアランス、例えばボア又はポケットによりさらに減らすことができる。こうした軽量化は、当接要素38に、特にx方向の端面に導入することができる。結果として、ファセット8iの総慣性モーメントIyy中の当接要素38の質量慣性モーメントの相対的比率は2%未満に減らすことができる。
【0187】
当接要素38は、不測の励起及び/又は衝撃の場合に特にファセット8iを保護する、特にその反射面36を保護するよう働く。当接要素38は、励起された振動振幅が設けられたギャップ32の幅の倍数であり得る地震荷重の場合にも、特にファセットを保護する。
【0188】
本発明のさらに他の態様を以下で説明する。
【0189】
当接要素38は、別個のコンポーネントとして形成され得る。特に、当接要素38はファセット本体35に配置され得る。当接要素38は、概してファセット本体35に接続される。本質的に考えられる全ての接続技法がここでは可能である。当接要素38は、特にファセット本体35に接着、はんだ付け、溶接、螺着、挟着若しくは焼嵌め、又は被嵌され得る。
【0190】
別個のコンポーネントとしての当接要素38の形態には、当接要素38をファセット本体35とは異なる材料から製造することができるという利点がある。これらは同じ材料から製造することもできる。特に、これらは銅又は銅合金から製造され得る。これは、特に粒子形成に関して有利である。さらに、銅又は銅合金を用いて当接要素38を製造することには、銅の硬さが比較的低い結果として、衝突の場合に、障害とならない点に僅かな凹みができるという利点がある。粒子の形成は概ね防止される。
【0191】
当接要素をファセット本体35にモノリシックに組み込むことも可能である。特に、当接要素は、ファセット本体35と一体に形成され得る。この場合、当接要素38は、特に幾何学的な細部、特にファセット本体35の形状により形成され得る。これにより、特に単純でロバストな製造が可能である。
【0192】
図20~
図22に例として示すように、当接要素38、特にその当接縁39の形態は、鋭利(
図20)、非鋭利、特にテーパ状平坦(
図21)、又はアール状(
図22)であり得る。アール状の、好ましくは面取り形態により、ヘルツ圧力を減らすことが可能である。これは好ましい実施形態を表す。
【0193】
衝突試験によれば、通常の衝撃エネルギーでの数百回の衝突後に、極僅かな摩耗、特に2μm以下の接触領域の凹みしかなかった。
【0194】
さらに別の変形形態によれば、反射面36がその面法線の方向に当接要素38の当接縁39を通る平面からオフセットする高さhは、0に近くすることもできる。これは、ファセット8iの使用光学面がその幾何学的周辺まで達しない、特にファセット本体35の周辺まで達しない場合に対応する。このような形態には、衝突の場合に反射面36が衝突しないという効果もある。しかしながら、この場合、反射面36は、照明放射線4の反射に用いられない周辺領域により囲まれる。結果として、ファセットミラー7の充填度、したがって透過に関する効率が低下する。
【0195】
図23~
図25を参照してさらに別の例示的な実施形態を以下で説明する。一般的な詳細については、先の実施形態を参照されたい。
【0196】
この例示的な実施形態において、当接面は、ファセット8iの変位範囲を制限する手段により形成される。図示の変形形態によれば、スナバとも称するピン42がこのような手段として働く。ピン42は、ファセット本体35の裏側のポケット43に入る。進入深さは、全傾斜範囲に対応するのに十分な大きさである。原理上、ピン42は、ファセット本体35と共に傾斜することもできる。
【0197】
ピン42及び
図23のみに示すファセット8
iのマウンティング46は、共通のベースプレート47に配置される。
【0198】
ピン42の、特にポケット43に入るその自由端の正確な位置は調整可能であり得ることが有利である。
【0199】
ピン42とポケット43の内側の当接面44との間の遊びは、隣接するファセット8i、8i+1間の距離より小さく、特に2つの隣接するファセット8i、8i+1間のギャップ32の幅より小さい。ピン42と当接面44との間の遊びは、特にT0公差に利用可能なギャップ32の部分より小さい。これにより、反射面36の縁40の保護効果がこの変形形態でも確保されることが確実となる。
【0200】
ピン42の周りの遊びを減らすために、ピン42をその自由端が傾斜軸37(図示の場合のx軸)の領域に延びるように形成且つ/又は配置することが有利である。
【0201】
遊びをさらに減らすために、ピン42を調整することができる。ピン42は、特に調整可能に形成され得る。
【0202】
ピン24は、特にその自由端を球状に構成され得る。これにより、ファセットの傾斜を妨げることが回避される。
【0203】
例として示す実施形態において、スナバをピン42として示す。スナバをフォークとして、すなわちファセットを包囲する複数の自由端で形成することも考えられる。
【0204】
図25に例として示すさらに別の変形形態によれば、側方当接部45がピン42の代わりに設けられる。
【0205】
概して、ファセット8i、特にそのファセット本体35は、特定の変位位置で当接面と接触するような変位範囲を有することに留意されたい。変位位置は、可逆的に作動可能な変位位置であり得る。変位位置は、輸送の場合又は地震の場合に起こり得る、特に輸送又は地震の場合のみに起こり得るが制御下での配設の場合には起こり得ない不所望の撓み位置でもあり得る。
【0206】
当接面は、さらに別の光学素子、特にさらに別のファセット本体35又はそこに配置された当接要素38の表面によりここでは形成され得る。これは、別個の機械的細部、例えばピン又は側方当接部45によっても形成され得る。
【0207】
全ての当接面が耐水性材料でできていることが好ましい。当接面は、耐水性コーティングも有し得る。これは、衝突の場合の粒子の発生を防止することができる。それでも発生した粒子は、回収容器又は隣接するコンポーネントにより形成されたポケットに回収され得る。
【国際調査報告】