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特表2022-548976pH5~12を有する配合物のためのマンナナーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】pH5~12を有する配合物のためのマンナナーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/56 20060101AFI20221115BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221115BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20221115BHJP
   C11D 7/42 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12N15/56 ZNA
C12N15/63 Z
C12N9/26
C11D7/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022518232
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076358
(87)【国際公開番号】W WO2021058452
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199043.1
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレシ,アスフィア
(72)【発明者】
【氏名】ローグ,アマンダ,ラエ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,シンディー
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ジェスパー
【テーマコード(参考)】
4B050
4H003
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050EE10
4B050LL01
4B050LL04
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC08
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EC01
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
(57)【要約】
配列番号1と少なくとも85%同一のマンナナーゼ、マンナナーゼをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現構築物、及びポリヌクレオチド又は発現構築物を含む宿主細胞。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも85%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも85%同一のマンナナーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチド、好ましくは配列番号2と少なくとも85%同一のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む発現構築物。
【請求項4】
請求項2に記載のポリヌクレオチド又は請求項3に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項5】
液体酵素調製物であって、配列番号1と少なくとも85%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも85%同一のマンナナーゼ、液体酵素調製物自体を安定化させる少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の溶媒、及び場合により少なくとも1種の酵素安定剤を含む、液体酵素調製物。
【請求項6】
配列番号1による29~324位による配列と少なくとも85%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む配合物、好ましくは液体配合物、より好ましくは液体洗剤配合物であって、好ましくは5~12の範囲のpHを有する、配合物。
【請求項7】
洗剤配合物を提供する方法であって、1つ以上のステップで、
(a)配列番号1による29~324位による配列と少なくとも85%同一の少なくとも1種のマンナナーゼであって、好ましくは請求項5に記載の酵素調製物内に提供される、マンナナーゼと、
(b)界面活性剤、ビルダー及びヒドロトロープから選択される少なくとも1つの成分であって、全て、清浄に有効な量及び/又は洗剤の物理的特性を維持するのに有効な量である成分と
を混合するステップを含む、方法。
【請求項8】
洗浄又は清浄の方法であって、
(a)少なくとも1つのマンナンを含む染みを用意するステップ、
(b)請求項6に記載の配合物を用意するステップ、
(c)マンナンを含む染み(a)を(b)の配合物と、好ましくは5~60℃の範囲の洗浄又は清浄温度で接触させるステップ
を含む、方法。
【請求項9】
マンナンを含む染みがテキスタイル(a)上に形成されており、洗剤(b)に含まれるポリペプチドが、マンナンを含む染みをテキスタイル(a)から除去する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マンナンを含む染みに対する洗剤配合物の洗浄性能を、好ましくは5~60℃の範囲の洗浄又は清浄温度において増大させるための、配列番号1と少なくとも85%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも85%同一のマンナナーゼの使用。
【請求項11】
少なくとも1つのマンナンを含む染みが、少なくとも1種のガラクトマンナン、好ましくはローカストビーンガム及び/又はグアーガムを含む、請求項10に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンナナーゼ、マンナナーゼをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現構築物、及びポリヌクレオチド又は発現構築物を含む宿主細胞に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘミセルロース及びガラクトマンナンの主な役割は、構造多糖類及び/又は予備エネルギーとして機能することである。植物における最も広範に存在する貯蔵多糖類であるアミロース及びアミロペクチンに加えて、多様な群のマンナンをベースとする多糖類が、種々の植物の種子、根、鱗茎及び塊茎に存在する。これらは、マンナン、ガラクトマンナン及びグルコマンナンを含む。
【0003】
マンナンは、β-1,4連結されたD-マンノピラノシル残基の主鎖を有する多糖類である。ほとんどの場合、マンナンは水に非常に不溶性である。非置換マンナンとは異なり、ガラクトマンナンは水溶性である。植物細胞壁の構造組成は複雑であるため、腐りかけの植物材料上に繁殖する微生物は、これらの高重合性でほとんど不溶性の材料を加水分解できるいくつかの異なる酵素を保持しなければならない。ヘミセルロースの分解に関与する2つの主要なエンド作用酵素は、ベータ-マンナナーゼ及びベータ-キシラナーゼである。加えて、ガラクトグルコマンナンの完全な分解には、エキソ作用酵素であるベータ-マンノシダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ及びベータ-グルコシダーゼが必要である。
【0004】
マンナン主鎖の分解に関与する主な酵素タイプは、マンナン主鎖中の内部グリコシド結合を加水分解するエンド-1,4-ベータ-マンナナーゼ(EC 3.2.1.78)である。エンド-1,4-β-マンナナーゼ(EC 3.2.1.78)は、マンナン分解酵素であり、本明細書中ではエンド-β-1,4-D-マンナナーゼ、β-マンナナーゼ又はマンナナーゼとも称する。エンド-1,4-ベータ-マンナナーゼ(EC 3.2.1.78)はマンナン主鎖を分解するので、マンナン分解は、マンナン、ガラクトマンナン及び/又はグルコマンナンの分解を含む。
【0005】
マンナナーゼ酵素の使用は、食品及び飼料用途、洗剤並びに紙及びパルプ産業において広範にわたる:
・ 家禽及びブタのような単胃動物の場合、マンナンは反栄養因子として作用するほとんど消化できない飼料成分であるので、飼料添加剤としてのマンナナーゼ酵素の使用はいくつかの有益な効果を提供することが示されている。
・ 食品産業において、マンナナーゼ酵素はインスタントコーヒーの製造における使用に関して記載されており、この酵素はコーヒーマンナンの加水分解によりコーヒー抽出物の粘度を低下させる。さらに、マンナナーゼは、機能性食品成分として注目されている特定のマンノオリゴマー、例えば、プレバイオティクス機能を有するマンノオリゴマーを製造するために使用される。このような用途においては、植物由来のマンノポリマーがマンナナーゼによる加水分解に供される。
・ 洗剤使用: マンナナーゼは、安定剤、乳化剤及び増稠剤のようなマンナン含有添加剤を含むことが多い食品及び化粧品由来の染み/汚れの除去を容易にする。より具体的な清浄用途では、マンナナーゼは、製薬設備のような、微生物を含まないことが求められる表面又は管からバイオフィルムを除去するために適用される。この用途では、マンナナーゼは、洗剤並びにカルボヒドラーゼ及びプロテアーゼのような他の酵素と組み合わせてよく使用される。
・ パルプ及び紙: マンナナーゼは、製紙用パルプの酵素補助漂白に使用される。マンナナーゼはキシラナーゼ(xylananse)の作用を補完すると言われている。
・ マンナナーゼは、水圧破砕による油及びガス井刺激のプロセスにおいて適用される。マンナナーゼは、このプロセスにおいて適用されるグアー溶液の粘度を低下させる。
・ マンナナーゼは、架橋ガラクトマンナンから構成されるマトリックスからの薬物又は他の材料の制御放出に使用される。
【0006】
適用条件下での活性は、多くの工業的に適用される酵素にとって重要なパラメーターである。なぜなら、これらの酵素は多くの場合、適用条件下で活性が不十分である傾向があるからである。
【発明の概要】
【0007】
洗剤配合物の過酷な環境において機能する酵素が引き続き必要とされている。種々のクラスの酵素、例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リアーゼ及びヌクレアーゼが洗剤配合物において有用であることは公知である。マンナナーゼはヘミセルロースを含む染みの一部を除去するので、マンナナーゼは洗浄用及び/又は清浄用配合物の有用な成分である。これらのタイプの染みの除去が不十分であると、通常、ファブリックが灰色化する。
【0008】
本明細書中において、マンナンを含む染みは、少なくとも1種のマンナン、少なくとも1種のガラクトマンナン及び/又は少なくとも1種のグルコマンナン、並びに一実施形態においては、さらなる構成要素、例えば、セルロース及び/又はヘミセルロースを含む。さらに、このような染みは、タンパク質性材料、デンプン及び/又は糖を含むことがある。ガラクトマンナンは通常、ガラクトース側基を有するマンノース主鎖からなる。本明細書中において、ガラクトマンナンは、以下のマンノース対ガラクトース比を有するガラクトマンナン:フェヌグリークガム(約1:1)、グアーガム(約2:1)、タラガム(約3:1)、ローカストビーンガム又はカロブガム(約4:1)、カシアガム(約5:1)を含み、前記比はマンノース:ガラクトースである。ガラクトマンナンは、液体製品の粘度を増大させるために食品及び化粧品製品によく使用される。
【0009】
したがって、5~12の範囲の、好ましくは6~11の範囲の、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5の範囲から選択されるpHを有する配合物において触媒的に活性なマンナン分解酵素を見出すことが目的であった。好ましくは、マンナン分解酵素は、洗剤配合物内に提供された場合に洗浄性能を示す。
【0010】
一態様において、本発明は、5~12又は6~11の範囲のpH、より好ましくは6~10又は7~9又は7~12又は8~12又は8~10の範囲のpH、最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpHにおいて、マンナン分解活性を有する及び/又は洗浄性能を示すマンナナーゼを提供する。マンナナーゼは、配列番号1と少なくとも75%同一であり、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一である。
【0011】
一態様において、本発明は、本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する。本発明は、本発明のマンナナーゼを作製する方法であって、本発明のポリヌクレオチドを用意するステップ、ポリヌクレオチドを発現宿主に形質転換するステップ、本発明のマンナナーゼの発現を可能にする好適な条件下で発現宿主を培養するステップ、及び本発明のマンナナーゼを単離及び精製するステップを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の一態様において、本発明のマンナナーゼは、1種類の酵素又は酵素の混合物を含む液体洗剤配合物又は清浄用配合物への柔軟な配合を可能とする酵素調製物内に提供される。「~に配合する」とは、酵素調製物を液体配合物に添加することを意味する。
【0013】
一態様において、本発明は、一方で、本発明のマンナナーゼを含む、5~12の範囲、好ましくは6~11の範囲、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを好ましくは有する配合物を提供する。好ましくは、この配合物は、液体配合物の物理的特性を維持するのに有効な及び/又は清浄に有効な量で存在する、界面活性剤、ビルダー及びヒドロトロープから選択される少なくとも1つの成分を含む液体配合物である。一実施形態において、配合物は洗剤配合物であり、マンナナーゼは、洗剤配合物内に提供された場合に洗浄性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明:
一般に、「酵素」は、基質に作用して基質を産物に変換する、触媒的に活性なタンパク質又はポリペプチドである。この反応は、本明細書中において酵素変換とも称し、典型的には、酵素の「活性部位」において行われる。酵素変換を行う酵素は、酵素的に活性である又は酵素活性を有する。本明細書中において「酵素」と称するポリペプチドはいずれも、触媒的に活性であるポリペプチドを意味する。
【0015】
本発明によるマンナナーゼは、マンナン分解活性を有し、酵素クラスEC 3.2.1.78のものである。一実施形態において、マンナン分解活性とは、少なくとも1種のガラクトマンナンの分解を意味する。好ましくは、少なくとも1種のガラクトマンナンは、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1及び/又は5:1のマンノース:ガラクトース比を特徴とする。
【0016】
マンナン分解活性又はマンナナーゼ活性は、当技術分野において公知の標準的な試験手順に従って試験することができる。例えば、試験しようとするマンナナーゼを、0.2%のAZCLガラクトマンナン(カロブ)、すなわち、エンド-1,4-ベータ-D-マンナナーゼのアッセイ用の基質を含む寒天プレートに開けられた直径4mmの孔に適用することができる。カロブは、例えば、Megazyme社からI-AZGMAとして入手可能である。マンナン分解活性は、McCleary, B. V. (1978). Carbohydrate Research, 67(1), 213-221に開示されたようにして、液体アッセイにおいて、レマゾールブリリアントブルーで染色されたカロブガラクトマンナンを使用して試験することができる。マンナン分解活性を試験する別の方法は、基質、例えば、グアーガム又はローカストビーンガムと一緒にインキュベートする場合の還元糖の検出を使用する-参考のため、Miller, G. L. Use of Dinitrosalicylic Acid Reagent for Determination of Reducing Sugars. Analytical Chemistry 1959; 31: 426-428を参照のこと。
【0017】
酵素は、通常、ポリペプチド配列(本明細書中では、アミノ酸配列とも称する)によって特定されるポリペプチドである。ポリペプチド配列は通常、配列番号によって特定される。世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)に従って、本明細書中におけるアミノ酸は、最初の文字を大文字とする3文字のコード又は対応する1文字を使用して表される。
【0018】
一態様において、ポリペプチドはポリヌクレオチドによりコードされる。ポリヌクレオチドは通常、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)に従って、ポリヌクレオチド配列によって及び配列番号によって特定される。
【0019】
「親」ポリペプチドアミノ酸配列は、配列に突然変異の導入(例えば、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、欠失又はそれらの組合せを導入することによる)して親ポリペプチドアミノ酸配列の「バリアント」をもたらすための開始配列である。親としては、(さらなる)変化の導入のための開始配列として使用される、野生型ポリペプチドアミノ酸配列又は合成的に生成されたポリペプチドアミノ酸配列が挙げられる。
【0020】
本発明のマンナナーゼの親ポリペプチドは配列番号1によるポリペプチド配列を有する。本発明の一態様において、親ポリペプチドは、配列番号1の29~324位による配列を有する。
【0021】
「バリアントポリペプチド」とは、アミノ酸配列がその親とは異なる酵素を指す。
【0022】
一実施形態におけるバリアントポリペプチド配列は、親配列と比較した場合のそれらの「配列同一性」によって定義される。「配列番号Xと少なくともx%同一の」酵素又はポリペプチドとは、配列番号Xによるポリペプチド配列と比較した場合にx%同一であるポリペプチド配列を有する酵素又はポリペプチドを意味する。
【0023】
一実施形態において、バリアントポリペプチド配列は、特定のポリヌクレオチド(配列)によってコードされるものと定義される。一態様において、ポリヌクレオチド配列は1つのポリヌクレオチド配列として示される。「配列番号Yと少なくともy%同一の」ポリヌクレオチドとは、配列番号Yによるポリヌクレオチド配列と比較した場合にy%同一であるポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを意味する。
【0024】
配列同一性は通常、「配列同一性%」又は「同一性%」として示される。配列同一性の算出のためには、第1のステップで配列アラインメントを作成する必要がある。
【0025】
本発明によれば、アラインメントは、Needleman及びWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. (1979) 48, p. 443-45)を使用することによって作成する。好ましくは、プログラム「NEEDLE」(The European Molecular Biology Open Software Suite (EMBOSS))を、プログラムのデフォルトパラメーター(ポリヌクレオチド:gap open=10.0、gap extend=0.5及びmatrix=EDNAFULL;ポリペプチド:gap open=10.0、gap extend=0.5及びmatrix=EBLOSUM62)を使用して、本発明の目的のために使用する。
【0026】
2つの配列のアラインメント後、第2のステップにおいて、作成したアラインメントから同一性値を決定する。
【0027】
本明細書中において、同一性%は、同一残基の数を、2つのアラインされた配列をその完全長にわたって示しているアラインメント領域の長さで除し、100を乗ずることによって算出する: 同一性%=(同一残基/2つのアラインされた配列をその完全長にわたって示しているアラインメント領域の長さ)×100。
【0028】
本発明のマンナナーゼは、好ましくは配列番号1の完全長アミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。本発明の一態様において、本発明のマンナナーゼは、好ましくは配列番号1の29~324位の完全長アミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0029】
マンナナーゼは、1つ以上の保存的置換をさらに含んでいてもよく、これは1つのアミノ酸が類似のアミノ酸で置換されていることを意味する。本発明による類似のアミノ酸は、以下のように定義する:アミノ酸Aはアミノ酸Sと類似している;アミノ酸Dはアミノ酸E及びNと類似している;アミノ酸Eはアミノ酸D、K及びQと類似している;アミノ酸Fはアミノ酸W及びYと類似している;アミノ酸Hはアミノ酸N及びYと類似している;アミノ酸Iはアミノ酸L、M及びVと類似している;アミノ酸Kはアミノ酸E、Q及びRと類似している;アミノ酸Lはアミノ酸I、M及びVと類似している;アミノ酸Mはアミノ酸I、L及びVと類似している;アミノ酸Nはアミノ酸D、H及びSと類似している;アミノ酸Qはアミノ酸E、K及びRと類似している;アミノ酸Rはアミノ酸K及びQと類似している;アミノ酸Sはアミノ酸A、N及びTと類似している;アミノ酸Tはアミノ酸Sと類似している;アミノ酸Vはアミノ酸I、L及びMと類似している;アミノ酸Wはアミノ酸F及びYと類似している;アミノ酸Yはアミノ酸F、H及びWと類似している。
【0030】
本発明のマンナナーゼは、「成熟ポリペプチド」であり、これは、あらゆる翻訳後修飾、グリコシル化、リン酸化、トランケーション、N-末端修飾、C-末端修飾、シグナル配列欠失を含む最終形態の酵素を意味する。成熟ポリペプチドは、発現系、ベクター、プロモーター及び/又は産生プロセスによって異なり得る。本発明の成熟マンナナーゼは、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一である。
【0031】
本発明によるマンナナーゼは、5~12の範囲、好ましくは6~11の範囲、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHにおいてマンナン分解活性を有する。一実施形態において、本発明によるマンナナーゼは、5~12の範囲、好ましくは6~11の範囲、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを有する洗剤配合物内においてマンナン分解活性を有する。
【0032】
本発明によるマンナナーゼは、60℃以下、40℃以下及び25℃以下から選択される温度においてマンナン分解活性を有する。好ましくは、温度は洗浄又は清浄温度である。
【0033】
本発明は、配列番号1と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明の一態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一のマンナナーゼをコードする。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号2と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一の配列を有する。
【0034】
本発明は、本明細書での本発明のマンナナーゼを作製する方法であって、本明細書中に記載したポリペプチドをコードする核酸配列を用意するステップ、核酸配列を宿主細胞に形質転換するステップ、宿主細胞を培養してマンナナーゼを産生させるステップ、場合によりマンナナーゼを宿主細胞から単離するステップ、及び場合によりマンナナーゼを精製するステップを含む、方法に言及する。
【0035】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは「発現させる」ことができる。「発現」又は「遺伝子発現」という用語は、1つ以上の特定の遺伝子又は特定の核酸構築物の転写を意味する。「発現」又は「遺伝子発現」という用語は特に、構造RNA(例えば、rRNA、tRNA)又はmRNAへの1つ以上の遺伝子又は遺伝子構築物の転写を意味し、タンパク質への後者のその後の翻訳を伴う又は伴わない。このプロセスは、DNAの転写及び結果として生じるmRNA産物のプロセシングを含む。
【0036】
本明細書中において、核酸構築物とは、天然に存在する遺伝子から単離された、又はそうでなければ自然界には存在しない様式で核酸のセグメントを含むように改変された、又は合成由来である、一本鎖又は二本鎖のいずれかの核酸分子であって、1以上の制御配列を含むものを意味する。「制御配列」という用語は、本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。各制御配列は、バリアントをコードするポリヌクレオチドにとってネイティブであっても外来性であってもよく、又は互いにネイティブであっても外来性であってもよい。このような制御配列としては、これらに限定するものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列及び転写ターミネーターが挙げられる。最低でも、制御配列はプロモーター並びに転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、バリアントをコードするポリヌクレオチドのコード領域との制御配列のライゲーションを容易にする特定の制限部位を導入する目的で、リンカーを備えていてもよい。
【0037】
酵素の工業生産は通常、発現系を使用することによって行われる。本明細書中において、「発現系」とは、宿主微生物、発現宿主、宿主細胞、産生生物又は産生株を意味し、これらの用語はそれぞれ、互換的に使用できる。一実施形態において、発現宿主は、細菌発現系、酵母発現系、真菌発現系及び合成発現系からなる群から選択される。発現宿主は野生型細胞又は組換え細胞を含み、好ましくは組換え細胞である。本明細書中において、「野生型細胞」とは、ある特定の改変前の細胞を意味する。「組換え(宿主)細胞」(本明細書中では「遺伝子改変細胞」とも称する)という用語は、それが由来する野生型細胞と比較して、変更された、改変された又は異なる遺伝子型を示すように、遺伝的に変更、改変又は操作された細胞を指す。「組換え(宿主)細胞」は、ある特定のタンパク質又は酵素をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、したがって好ましくは前記タンパク質又は酵素を発現する。
【0038】
一実施形態において、本発明は、本明細書中に記載したマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞を対象とする。宿主細胞は、原核生物及び真核生物を含むバリアントの組換え産生において有用な任意の細胞であり得る。
【0039】
さらに別の実施形態において、本発明は、ポリヌクレオチドを発現させる方法であって、(a)本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物を宿主細胞に導入することによって、本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む異種核酸構築物を含む宿主細胞を提供するステップ、(b)ポリヌクレオチドの発現に対して伝導性の条件下でステップ(a)の組換え宿主細胞を培養するステップ、及び(c)場合により、ポリヌクレオチドによってコードされる目的のタンパク質を回収するステップを含む、方法を対象とする。
【0040】
発現宿主の例としては、これらに限定するものではないが、以下が挙げられる:アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス属(Bacillus)、好ましくは枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)又はバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、好ましくはシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)としても公知である)、ミセリオフソラ・サーモフィラ(Myceliopthora thermophila)(C1)、サーモセロミセス・サーモフィラス(Themothelomyces thermophilus)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、トリコデルマ属(Trichoderma)、好ましくはトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)及びサッカロミセス属(Saccharomyces)、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)。本発明のマンナナーゼは、上に列挙した微生物に由来する宿主細胞を使用して産生させ得る。
【0041】
一実施形態において、細菌発現系は、大腸菌(E. coli)、バチルス属、シュードモナス属及びストレプトミセス属(Streptomyces)から選択される。一実施形態において、酵母発現系は、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)から選択される。一実施形態において、真菌発現系は、ペニシリウム属(Penicillium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フサリウム属(Fusarium)、ミセリオフソラ属(Myceliopthora)、リゾムコール属(Rhizomucor)、リゾプス属(Rhizopus)、サーモミセス属(Thermomyces)及びトリコデルマ属のから選択される。
【0042】
好ましくは、本発明の組換え宿主細胞は、以下を含むがこれらに限定されない、グラム陽性細菌である:バチルス属、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)及びストレプトミセス属。より好ましくは、宿主細胞はバチルス属細胞であり、より好ましくは以下の群から選択されるものである:バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophius)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ロータス(Bacillus Jautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、枯草菌及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)。最も好ましくは、バチルス属細胞は、枯草菌、バチルス・プミルス、バチルス・リケニフォルミス及びバチルス・レンタスから選択される。一実施形態において、バチルス属細胞は、枯草菌細胞である。
【0043】
本発明は、発酵産物を産生する発酵方法であって、
a)本発明による組換え宿主細胞を用意するステップ、及び
b)本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で組換え宿主細胞を培養するステップ
を含む、方法を提供する。
【0044】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドの文脈における「異種」(又は外因性若しくは外来性若しくは組換え)という用語は、本明細書中では以下のように定義する:
(a)宿主細胞にとってネイティブでない;又は
(b)宿主細胞にとってネイティブであるが、構造改変、例えば、欠失、置換及び/又は挿入が、組換えDNA技術によって宿主細胞のDNAを操作してネイティブ配列を変更した結果として含まれる。
【0045】
一実施形態において、本発明は、本発明のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子構築物を対象とする。本明細書中で使用する「遺伝子構築物」又は「発現カセット」又は「発現構築物」は、発現させる本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド配列から構成されるDNA分子であって、本明細書中に記載した1つ以上の制御配列に(少なくともプロモーターに)操作可能に連結されているものである。典型的には、発現カセットは、3つのエレメント:プロモーター配列、オープンリーディングフレーム、及び真核生物では通常、ポリアデニル化部位を含む3'非翻訳領域を含む。さらなる調節エレメントとしては、転写及び翻訳エンハンサーが挙げられる。また、イントロン配列を5'非翻訳領域(UTR)に又はコード配列中に付加して、サイトゾル中に蓄積する成熟メッセージの量を増大させてもよい。発現カセットはベクターの一部であり、又は宿主細胞のゲノムに組み込まれており、その宿主細胞のゲノムと一緒に複製される。発現カセットは通常、発現を増大又は減少させることができる。
【0046】
細菌宿主細胞における本発明の核酸構築物の転写を指示するのに好適なプロモーターの例は、バチルス・アミロリケファシエンスのアルファ-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バチルス・リケニフォルミスのアルファ-アミラーゼ遺伝子(amyl)、バチルス・リケニフォルミスのペニシリラーゼ遺伝子(penP)、バチルス・ステアロサーモフィルスのマルトジェニックアミラーゼ遺伝子(amyM)、枯草菌のレバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、枯草菌のxylA及びxylB遺伝子、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thurigiensis)のcryIIIA遺伝子(Agaisse and Lereclus, 1994, Molecular Biology 13: 97-107)、大腸菌のlacオペロン、大腸菌のtrcプロモーター(Egon et at 1988, Gene 69: 301-315)、ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)のアガロース遺伝子(dagA)、及び原核生物のベータ-ラクタマーゼ遺伝子(Villa-Kamaroff et al 1978, Proc. Natl. Acad. Sci USA 75: 3727-3731)から得られるプロモーター、並びにtacプロモーター(DaBoer et al 1983, Proc. Natl. Acad. Sci USA 80: 21-25)である。さらなる有用なプロモーターは、「Useful proteins from recombinant bacteria」、Gilbert et al 1980, Scientific American 242: 74-94及びSambrook, J. et al. 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されている。
【0047】
本明細書中で使用する「ベクター」という用語は、別の細胞への移入のために又は所与の細胞内での安定発現又は一過性発現のために外来性ポリヌクレオチド配列を運搬するのに好適なあらゆる種類の構築物を含む。本明細書中で使用する「ベクター」という用語は、あらゆる種類のクローニングビヒクル、例えば、これらに限定されないが、プラスミド、ファージミド、ウイルスベクター(例えば、ファージ)、バクテリオファージ、バキュロウイルス、コスミド、フォスミド、人工染色体、又は目的の特定の宿主に特異的なあらゆる他のベクターを包含する。低コピー数又は高コピー数ベクターも含まれる。外来性ポリヌクレオチド配列は通常、本明細書中で「目的の遺伝子」と称されるコード配列を含む。目的の遺伝子は、宿主細胞の起源の種類又は目的地の種類に応じて、イントロン及びエキソンを含み得る。
【0048】
本明細書中で使用するベクターは、宿主細胞又は宿主細胞オルガネラへの形質転換時に外来性ポリヌクレオチドの転写及び翻訳のためのセグメントを提供する。このような追加的なセグメントとしては、調節ヌクレオチド配列、特定の細胞型におけるその維持及び/又は複製に必要な1つ以上の複製起点、1種以上の選択可能なマーカー、ポリアデニル化シグナル、外来性コード配列の挿入に好適な部位、例えば、多重クローニング部位などが挙げられる。一例は、ベクターがエピソーム遺伝因子(例えば、プラスミド又はコスミド分子)として細菌細胞内に維持される必要がある場合である。好適な複製起点の非限定的な例としては、f1-ori及びcolE1が挙げられる。ベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、例えば、細菌宿主細胞中でプラスミドとして複製し、又はそのDNAの一部若しくは全てを宿主細胞のゲノムに組み込み、その結果としてそのDNAの複製及び発現を引き起こす。
【0049】
外来性核酸は、クローニングによってベクターに導入し得る。クローニングとは、好適な手段及び方法(例えば、制限酵素)によるベクター(例えば、多重クローニング部位内)及び外来性ポリヌクレオチドの切断によって、前記外来性核酸とベクターとの制御された融合を可能にする個々の核酸内の適合する構造が通常創出されることを意味する。ベクターに導入されると、コード配列を含む外来性核酸は、宿主細胞又は宿主細胞オルガネラに導入(形質転換、形質導入、トランスフェクトなど)される。クローニングベクターは、好ましくは、宿主細胞又は宿主細胞オルガネラにおける外来性ポリヌクレオチド配列の発現に好適である。
【0050】
本明細書中で言及する「導入」又は「形質転換」という用語は、移入に使用される方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチドの宿主細胞への移入を包含する。すなわち、本明細書中で使用する「形質転換」という用語は、ベクター、シャトルシステム又は宿主細胞から独立しており、当技術分野で公知の形質転換のポリヌクレオチド移入方法(例えば、Sambrook, J. et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと)に関するだけでなく、あらゆるさらなる種類のポリヌクレオチド移入方法、例えば、これらに限定するものではないが、形質導入又はトランスフェクションを包含する。器官形成又は胚形成のいずれによるとしても、その後のクローン繁殖が可能な植物組織は、遺伝子構築物で形質転換され、植物全体がそこから再生され得る。選択される特定の組織は、形質転換される特定の種に利用可能である及びそれに最も適したクローン繁殖系によって異なる。本発明の一実施形態において、ベクターは、宿主細胞の形質転換に使用される。
【0051】
本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞、好ましくはバチルス属に一過性に又は安定に導入することができ、組み込まれない状態で、例えば、プラスミドとして、維持することができる。「安定な形質転換」とは、形質転換された細胞又は細胞オルガネラが、外来性コード配列を含む核酸を次の世代の細胞又は細胞オルガネラに引き継ぐことを意味する。通常、安定な形質転換は、外来性コード配列を含む核酸が染色体に又はエピソーム(核DNAの別個の要素)として組み込まれることによる。「一過性形質転換」とは、いったん形質転換された細胞又は細胞オルガネラが、ある一定期間にわたって-大抵1つの世代内で外来性核酸配列を発現することを意味する。通常、一過性形質転換は、外来性核酸配列を含む核酸が染色体に又はエピソームとして組み込まれないことによる。或いは、それは宿主ゲノムに組み込まれる。
【0052】
酵素は通常、発酵ブロスに由来することが多い液体濃縮物として産生される。本明細書中において、「液体酵素濃縮物」とは、少なくとも1種の酵素を含む、あらゆる、液体酵素を含む産物を意味する。酵素濃縮物の文脈において、「液体」は20℃及び101.3kPaにおける物理的外観に関連する。
【0053】
液体酵素濃縮物は、溶媒への固体酵素の溶解によって生じ得る。溶媒は水及び有機溶媒から選択され得る。溶媒への固体酵素の溶解によって生じる液体酵素濃縮物は、飽和濃度までの量の酵素を含む。
【0054】
本明細書中において、溶解とは、固体化合物が少なくとも1種の溶媒との接触によって液化されることを意味する。溶解は、指定された溶媒中で飽和濃度が達成されるまでの、相分離が起こらない、固体化合物の完全な溶解を意味する。
【0055】
本発明の一態様において、酵素濃縮物は水を含まなくてもよく、このことは有意な量の水が存在しないことを意味する。本明細書中において、有意でない量の水とは、酵素濃縮物が、全て酵素濃縮物の総重量に対して、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、7%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2重量%未満の水を含む又は水を全く含まないことを意味する。一実施形態において、水を含まない酵素濃縮物とは、酵素濃縮物が有意な量の水を含まず、全て酵素濃縮物の総重量に対して、約10重量%~90重量%、20重量%~85重量%、30~80重量%、40重量%~75重量%、50重量%~70重量%の量で有機溶媒を含むことを意味する。
【0056】
水を含む液体酵素濃縮物は、「水性酵素濃縮物」と称することもある。一実施形態において、水性酵素濃縮物は、固体酵素産物が水に溶解された、酵素を含む溶液である。一実施形態において、「水性酵素濃縮物」とは、発酵による酵素産生によって生じる、酵素を含む産物を意味する。
【0057】
発酵とは、所望の酵素を発現する組換え細胞を、組換え宿主細胞が増殖し及び所望のタンパク質を発現することを可能にする好適な栄養培地中で培養するプロセスを意味する。発酵の終わりに、発酵ブロスは通常収集され、さらに処理され、発酵ブロスは液体画分及び固体画分を含む。酵素が液体画分中に分泌されているか否かによって、所望のタンパク質又は酵素は、発酵ブロスの液体画分から又は細胞溶解物から回収される。所望の酵素の回収は、当業者に公知の方法を使用する。発酵ブロスからタンパク質又は酵素を回収するための好適な方法としては、収集、遠心分離、濾過、抽出及び沈殿が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0058】
液体酵素濃縮物は、全て酵素濃縮物の総重量に対して、0.1重量%~40重量%、又は0.5重量%~30重量%、又は1重量%~25重量%、又は3重量%~25重量%、又は5重量%~25重量%の範囲の量の酵素を含む。一実施形態において、液体酵素濃縮物は、発酵によって生じ、水性である。
【0059】
発酵によって生じる水性酵素濃縮物は、全て酵素濃縮物の総重量に対して、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超又は約80重量%超の量で水を含む。一実施形態において、発酵によって生じる水性酵素濃縮物は、全て酵素濃縮物の総重量に対して、約50重量%~80重量%又は約60重量%~70重量%の範囲の量で水を含む。発酵によって生じる水性酵素濃縮物は、残留成分、例えば、発酵培地に由来する塩、産生宿主細胞に由来する細胞片、産生宿主細胞によって発酵中に産生される代謝産物を含み得る。一実施形態において、残留成分は、全て水性酵素濃縮物の総重量に対して、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満又は5重量%未満の量で液体酵素濃縮物中に含まれる。
【0060】
酵素は、水性環境に残存していると酵素活性を喪失する傾向があり、したがって、環境を無水の形態に変換することが従来のやり方である:水性濃縮物は、例えば、担体材料の存在下で、凍結乾燥又は噴霧乾燥させて、凝集物を形成してもよい。通常、固体酵素産物は、使用前に「溶解させる」必要がある。液体産物中の酵素を安定化させるために、通常、酵素阻害剤、好ましくは可逆的酵素阻害剤を利用して、酵素阻害剤が遊離されるまで酵素活性を一時的に阻害する。
【0061】
本発明の酵素調製物は好ましくは液体である。酵素調製物の文脈において、「液体」は20℃及び101.3kPaにおける物理的外観に関連する。
【0062】
本発明の酵素調製物は、本発明の少なくとも1種のマンナナーゼを含む液体酵素濃縮物を含む。本発明の酵素調製物は、酵素調製物又は酵素調製物に含まれる酵素を安定化させるのに有効な成分、例えば、少なくとも1種の酵素安定剤、液体酵素調製物自体を安定化させる少なくとも1種の化合物及び少なくとも1種の溶媒から選択される成分のみを含む。
【0063】
一態様において、本発明は、液体酵素調製物であって、配列番号1と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、液体酵素調製物自体を安定化させる少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の溶媒、及び場合により少なくとも1種の酵素安定剤を含む、液体酵素調製物を提供する。
【0064】
本発明の液体酵素調製物は好ましくは界面活性剤を含まない。界面活性剤を含まないとは、液体酵素調製物の総重量に対して、約10重量%未満、約7重量%未満、約5重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満又は約1重量%未満しか界面活性剤が液体酵素調製物中に含まれないことを意味する。
【0065】
本発明の液体酵素調製物は好ましくは錯化剤を含まない。錯化剤を含まないとは、液体酵素調製物の総重量に対して、約10重量%未満、約7重量%未満、約5重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満又は約1重量%未満しか錯化剤、好ましくはアミノカルボキシレートが液体酵素調製物中に含まれないことを意味する。
【0066】
一実施形態において、本発明の液体酵素調製物は、界面活性剤を含まず、錯化剤を含まない。
【0067】
液体酵素調製物自体を安定化させる化合物
液体酵素調製物自体を安定化させる化合物とは、貯蔵安定性を保証にするのに有効な量で液体調製物の貯蔵安定性を確立するのに必要とされる酵素安定剤以外の任意の化合物を意味する。
【0068】
当業者にとっての液体調製物の文脈における貯蔵安定性は通常、産物の外観及び投与量の均一性の側面を含む。
【0069】
産物の外観は、産物のpH及び化合物、例えば、保存剤、酸化防止剤、粘度調整剤、乳化剤などの存在によって影響される。
【0070】
投与量の均一性は通常、産物の均質性に関係している。
【0071】
本発明の酵素調製物はアルカリ性であってもよく、又は中性若しくは弱酸性のpH値を示してもよい。酵素調製物は、5~12の範囲、好ましくは6~11の範囲、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを有する。
【0072】
一実施形態において、本発明の液体酵素調製物は少なくとも1種の保存剤を含む。保存剤は、液体酵素調製物、好ましくは水性酵素調製物の微生物汚染を防止するのに有効な量で添加する。
【0073】
好適な保存剤の非限定的な例としては、(第四級)アンモニウム化合物、イソチアゾリノン類、有機酸及びホルムアルデヒド放出剤が挙げられる。好適な(第四級)アンモニウム化合物の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)及びN-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン(Diamine)が挙げられる。好適なイソチアゾリノン類の非限定的な例としては、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(MIT)、5-クロロ-2-メチル-2H-イソチアゾール-3-オン(CIT)、2-オクチル-2H-イソチアゾール-3-オン(OIT)及び2-ブチル-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン(BBIT)が挙げられる。好適な有機酸の非限定的な例としては、安息香酸、ソルビン酸、L-(+)乳酸、ギ酸及びサリチル酸が挙げられる。好適なホルムアルデヒド放出剤の非限定的な例としては、N,N'-メチレンビスモルホリン(MBM)、2,2',2"-(ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリイル)トリエタノール(HHT)、(エチレンジオキシ)ジメタノール、α,α',α"-トリメチル-1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリエタノール(HPT)、3,3'-メチレンビス[5-メチルオキサゾリジン](MBO)及びcis-1-(3-クロロアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンクロリド(CTAC)が挙げられる。
【0074】
さらなる有用な保存剤としては、ヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC)、ハロゲン放出化合物、例えば、ジクロロ-ジメチル-ヒダントイン(DCDMH)、ブロモ-クロロ-ジメチル-ヒダントイン(BCDMH)及びジブロモ-ジメチル-ヒダントイン(DBDMH);ブロモニトロ化合物、例えば、ブロノポール(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、2,2-ジブロモ-2-シアノアセトアミド(DBNPA);アルデヒド、例えば、グルタルアルデヒド;フェノキシエタノール;ビフェニル-2-オール;及びピリチオン亜鉛又はナトリウムが挙げられる。
【0075】
本発明の液体酵素調製物は、好ましくは、2-フェノキシエタノール、グルタルアルデヒド、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール及び酸形態の又はその塩としてのギ酸並びに4,4'-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の保存剤を含む。通常、本発明の液体酵素調製物は少なくとも1種の保存剤を、液体酵素調製物の総重量に対して2ppm~5重量%の範囲の量で含む。より好ましくは、液体酵素調製物は保存剤を含まず、これは、保存剤が1ppm未満の量しか含まれないことを意味する。
【0076】
溶媒
一実施形態において、本発明の酵素調製物は水性であり、全て酵素調製物の総重量に対して、5重量%~95重量%の範囲の、5重量%~30重量%の範囲の、5重量%~25重量%の範囲の、30重量%~80重量%の範囲の又は20重量%~70重量%の範囲の量で水を含む。
【0077】
一実施形態において、本発明の酵素調製物は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロール、ジグリコール、プロピルジグリコール、ブチルジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル及びフェノキシエタノールから選択される少なくとも1種の有機溶媒を含み、エタノール、イソプロパノール又はプロピレングリコールが好ましい。さらに、本発明の酵素調製物は、2-ブトキシエタノール、イソプロピルアルコール及びd-リモネンなどの化合物から選択される少なくとも1種の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0078】
好ましい一実施形態において、本発明の酵素調製物は、少なくとも1種の水混和性有機溶媒を含む。この文脈における水混和性とは、全ての割合で水中に混ざって均質な溶液を形成する有機溶媒の性質を意味する。好ましくは、少なくとも1種の水混和性溶媒は、エタノール、イソプロパノール又は1,2-プロピレングリコールから選択される。
【0079】
一実施形態において、酵素調製物は、
(a)約20%~50%の範囲の量の水、及び
(b)全て酵素調製物の総重量に対して、30重量%~60重量%の範囲の量又は45重量%~55重量%の範囲の量の少なくとも1種の有機溶媒
を含む。
【0080】
一実施形態において、酵素調製物は、酵素調製物の総重量に対して0重量%~20重量%の範囲の量で有機溶媒を含む。好ましくは、酵素調製物は、全て酵素調製物の総重量に対して、約30重量%~80重量%の範囲の量の水及び10重量%未満、5重量%未満又は1重量%未満の量の少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0081】
一実施形態において、酵素調製物は、全て酵素調製物の総重量に対して、5重量%~15重量%の範囲の量の水を含み、有意な量の有機溶媒を含まず、例えば、1重量%以下の有機溶媒を含む。
【0082】
酵素安定剤
酵素の安定化は、時間の経過における安定性(例えば、貯蔵安定性)、熱安定性、pH安定性及び化学的安定性に関する。本明細書中において、「酵素安定性」という用語は、好ましくは、例えば貯蔵又は操作中における、時間の関数としての酵素活性の保持に関する。酵素安定剤は液体、好ましくは水性環境中で酵素を安定化させ、これは、酵素が時間の経過における酵素活性の喪失を低減する又は回避することを意味する。
【0083】
一実施形態において、少なくとも1種の酵素、好ましくは本発明の少なくとも1種のマンナナーゼは、酵素調製物中にカルシウム及び/又はマグネシウムイオンの水溶性供給源が存在することによって安定化される。一実施形態において、少なくとも1種の酵素安定剤は、ポリオール又は水溶性塩から選択される。
【0084】
ポリオールとしては、2~6個のヒドロキシル基を含むポリオールが挙げられる。好適な例としては、グリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール(erythriol)、グルコース、フルクトース及びラクトースが挙げられる。
【0085】
一実施形態において、水溶性塩は、NaCl又はKClのような塩並びに乳酸及びギ酸のアルカリ塩から選択される。
【0086】
本発明の一実施形態において、少なくとも1種の水溶性塩は、酵素に亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマグネシウム(II)イオンを提供する完成組成物中の亜鉛(II)、カルシウム(II)及び/又はマグネシウム(II)イオンの水溶性供給源、並びに他の金属イオン(例えば、バリウム(II)、スカンジウム(II)、鉄(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、錫(II)、コバルト(II)、銅(II)、ニッケル(II)及びオキソバナジウム(IV))の水溶性供給源から選択される。好ましくは、水溶性塩はCaCl2及びMgCl2から選択される。
【0087】
本発明の一態様において、酵素調製物は、プロテアーゼ、好ましくはセリンプロテアーゼ(EC 3.4.21)、より好ましくはサブチリシンEC 3.4.21.62及び/又はリパーゼ、好ましくはトリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)、より好ましくはサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginose)リパーゼをさらに含む。この文脈において、酵素安定剤はホウ素含有化合物、ポリオール、ペプチドアルデヒド、他の安定剤及びそれらの混合物から選択され得る。
【0088】
ホウ素含有化合物は、ホウ酸又はその誘導体、及びボロン酸又はその誘導体、例えば、アリールボロン酸又はその誘導体、それらの塩並びにそれらの混合物から選択される。本明細書中において、ホウ酸はオルトホウ酸とも称する。
【0089】
一実施形態において、少なくとも1種のホウ素含有化合物は、アリールボロン酸及びその誘導体からなる群から選択される。一実施形態において、ホウ素含有化合物は、フェニルボロン酸(PBA)とも称するベンゼンボロン酸(BBA)、その誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0090】
一実施形態において、フェニルボロン酸誘導体は、4-ホルミルフェニルボロン酸(4-FPBA)、4-カルボキシフェニルボロン酸(4-CPBA)、4-(ヒドロキシメチル)フェニルボロン酸(4-HMPBA)及びp-トリルボロン酸(p-TBA)からなる群から選択される。
【0091】
他の好適な誘導体としては以下が挙げられる:2-チエニルボロン酸、3-チエニルボロン酸、(2-アセトアミドフェニル)ボロン酸、2-ベンゾフラニルボロン酸、1-ナフチルボロン酸、2-ナフチルボロン酸、2-FPBA、3-FBPA、1-チアントレニルボロン酸、4-ジベンゾフランボロン酸、5-メチル-2-チエニルボロン酸、1-ベンゾチオフェン-2-ボロン酸、2-フラニルボロン酸、3-フラニルボロン酸、4,4-ビフェニル-ジボロン酸、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンボロン酸、4-(メチルチオ)フェニルボロン酸、4-(トリメチルシリル)フェニルボロン酸、3-ブロモチオフェンボロン酸、4-メチルチオフェンボロン酸、2-ナフチルボロン酸、5-ブロモチオフェンボロン酸、5-クロロチオフェンボロン酸、ジメチルチオフェンボロン酸、2-ブロモフェニルボロン酸、3-クロロフェニルボロン酸、3-メトキシ-2-チオフェンボロン酸、p-メチル-フェニルエチルボロン酸、2-チアントレニルボロン酸、ジベンゾチオフェンボロン酸、9-アントラセンボロン酸、3,5-ジクロロフェニルボロン酸、ジフェニルボロン酸無水物、o-クロロフェニルボロン酸、p-クロロフェニルボロン酸、m-ブロモフェニルボロン酸、p-ブロモフェニルボロン酸、p-フルオロフェニルボロン酸、オクチルボロン酸、1,3,5-トリメチルフェニルボロン酸、3-クロロ-4-フルオロフェニルボロン酸、3-アミノフェニルボロン酸、3,5-ビス-(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、2,4-ジクロロフェニルボロン酸、4-メトキシフェニルボロン酸及びそれらの混合物。
【0092】
一実施形態において、少なくとも1種の酵素安定剤は、ペプチドアルデヒドから選択される。ペプチドアルデヒドは、ジ、トリ又はテトラペプチドアルデヒド及びアルデヒド類似体(B1-BO-R[式中、RはH、CH3、CX3、CHX2又はCH2X(X=ハロゲン)であり、BOは単一アミノ酸残基(一実施形態において、場合により置換されている脂肪族又は芳香族側鎖を有する)であり、B1は1つ以上のアミノ酸残基(一実施形態において、1つ、2つ又は3つ)からなる]の形態であって、場合によりN-末端保護基を含む形態のもの、若しくはWO09/118375及びWO98/13459に記載されているもの、又はタンパク質型のプロテアーゼ阻害剤、例えば、RASI、BASI、WASI(イネ、オオムギ及びコムギの二官能性アルファ-アミラーゼ/サブチリシン阻害剤)又はCI2若しくはSSIのいずれかから選択される。好ましくは、ペプチドアルデヒドはトリペプチドアルデヒドである。
【0093】
マンナナーゼの用途
一態様において、本発明は、配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む、好ましくは配列番号1の29~324位と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む、5~12の範囲のpHを好ましくは有する配合物に関する。
【0094】
一態様において、本発明は、洗剤配合物、例えば、洗濯及び硬質表面清浄のためのI&I及びホームケア配合物に配合するための、本発明の液体酵素調製物の使用であって、成分(a)及び(b)を特定の順序でなく1つ以上のステップで1つ以上の洗剤成分と混合する、使用に関する。
【0095】
一実施形態において、配合物は、6~11の範囲の、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを有する。一実施形態において、配合物は洗剤配合物、好ましくは液体洗剤配合物である。
【0096】
本発明による洗剤配合物は、1つ以上の洗剤成分を含む。選択される成分は、洗剤配合物の、所望の洗浄若しくは清浄用途及び/又は物理的形態によって決まる。
【0097】
「洗剤成分」という用語は、本明細書中においては、洗剤配合物に好適な任意のタイプの成分、例えば、界面活性剤、ビルディング剤(building agent)、ポリマー、漂白系を意味するように定義される。公知の特性を認める当技術分野において公知の任意の成分は、本発明による好適な洗剤成分である。一実施形態において、洗剤成分とは、有効量で存在する場合に洗浄若しくは清浄性能を提供する成分又は処理を有効に助ける成分(処理、貯蔵及び使用中に物理的特性を維持する;例えば、レオロジー調整剤、ヒドロトロープ、乾燥剤)を意味する。
【0098】
通常、洗剤配合物は、3つ以上の洗剤成分の複合配合物である。
【0099】
洗剤成分は、洗剤配合物の最終用途において1つより多くの機能を有し得るため、本明細書中において特定の機能という文脈において言及されるいずれの洗剤成分もまた、洗剤配合物の最終用途において別の機能を有し得る。洗剤配合物の最終用途における特定の洗剤成分の機能は通常、洗剤配合物内におけるその量、すなわち、洗剤成分の有効量によって決まる。
【0100】
「有効量」という用語は、有効な染みの除去及び有効な清浄条件(例えば、pH、泡立ちの量)を提供する個々の成分の量、光学的利益(例えば、光学的増白、染料移動抑制)を有効に提供するある特定の成分の量、及び処理を有効に助けるある特定の成分(処理、貯蔵及び使用中に物理的特性を維持する;例えば、レオロジー調整剤、ヒドロトロープ、乾燥剤)の量を含む。
【0101】
一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、3つ以上の洗剤成分の配合物であって、少なくとも1つの成分が染みの除去に有効であり、少なくとも1つの成分が最適の清浄条件を提供するのに有効であり、少なくとも1つの成分が洗剤の物理的特性を維持するのに有効である、配合物である。
【0102】
個々の洗剤成分及び洗剤配合物中における使用法は、当業者に公知である。好適な洗剤成分は、とりわけ、界面活性剤、ビルダー、ポリマー、アルカリ性漂白系、蛍光増白剤、泡抑制剤及び安定剤、ヒドロトロープ及び腐食抑制剤を含む。さらなる例は、例えば、「complete Technology Book on Detergents with Formulations (Detergent Cake, Dishwashing Detergents, Liquid & Paste Detergents, Enzyme Detergents, Cleaning Powder & Spray Dried Washing Powder)」, Engineers India Research Institute (EIRI), 6th edition (2015)に記載されている。当業者のための別の参考図書は、"Detergent Formulations Encyclopedia", Solverchem Publications, 2016であり得る。
【0103】
洗剤成分は、所望の用途、例えば、白色のテキスタイル、有色のテキスタイル及びウールの洗濯に応じて、種類及び/又は洗剤配合物中の量が異なる。選択される成分はさらに、洗剤配合物の物理的形態(パウチ又はタブレットで提供される液体、固体、ゲルなど)によって決まる。例えば洗濯用配合物のために選択される成分はさらに、使用される洗浄温度のような側面にそれ自体が関連する地域的な慣習、洗濯機の機構(縦軸型洗濯機であるか横軸型洗濯機であるか)、洗浄サイクルあたりの水消費量など及び水の平均硬度のような地理的特性によって決まる。
【0104】
例えば、洗剤濃度が低い系としては、洗浄水中に約800ppm未満の洗剤成分が存在する洗濯用配合物が挙げられる。洗剤濃度が中程度のものとしては、洗浄水中に約800ppm~約2,000ppmの洗剤成分が存在する洗濯用配合物が挙げられる。洗剤濃度が高いものとしては、洗浄水中に約2,000ppm超の洗剤成分が存在する洗濯用配合物が挙げられる。
【0105】
個々の洗剤成分について列挙した数値範囲は、洗剤配合物中に含まれる量を示している。このような範囲は、その範囲を定義する数字を含み、定義された範囲内の各整数を含むものと理解しなければならない。
【0106】
特に記載しなければ、「重量%」又は「%w/w」は、全洗剤配合物に関連することを意味する。この場合、「重量%」又は「%w/w」は以下のようにして算出する:(その物質の重量としての物質の濃度)÷(配合物の総重量)×100。
【0107】
一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、1種以上の界面活性剤を含む。「界面活性剤」(本明細書中で「表面活性剤」と同義で使用する)とは、液体に添加された場合に界面におけるその液体の性質を変化させる有機化学物質を意味する。そのイオン電荷に応じて、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤又は両性界面活性剤と称される。
【0108】
界面活性剤の非限定的な例は、McCutcheon's 2016 Detergents and Emulsifiers及びMcCutcheon's 2016 Functional Materials(いずれも、North American and International Edition, MC Publishing Co, 2016 edition)に開示されている。さらなる有用な例は、当業者に公知の同じ出版物の以前の版に開示されている。
【0109】
一実施形態において、本発明による洗剤は、全て洗剤配合物の総重量に対して、1重量%~30重量%の範囲、3重量%~25重量%の範囲、5重量%~20重量%の範囲又は8重量%~15重量%の範囲の総量のアニオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、洗剤配合物の総重量に対して約11重量%の総量のアニオン性界面活性剤を含む。
【0110】
一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、一般式(I):
【0111】
【化1】
の化合物から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含む。
【0112】
一般式(I)中の可変要素は、以下のように定義する。
【0113】
R1はC1~C23-アルキル(例えば、1-、2-、3-、4-C1~C23-アルキル)及びC2~C23-アルケニルから選択され、アルキル及び/又はアルケニルは直鎖又は分枝鎖であり、2-、3-、又は4-アルキル;例はn-C7H15、n-C9H19、n-C11H23、n-C13H27、n-C15H31、n-C17H35、i-C9H19、i-C12H25である。
【0114】
R2はH、C1~C20-アルキル及びC2~C20-アルケニルから選択され、アルキル及び/又はアルケニルは直鎖又は分枝鎖である。
【0115】
R3及びR4はそれぞれ独立して、C1~C16-アルキルから選択され、アルキルは直鎖又は分枝鎖であり、例はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシルである。
【0116】
A-は-RCOO-、-SO3 -及びRSO3 -から選択され、Rは、直鎖又は分枝鎖C1~C8-アルキル及びC1~C4-ヒドロキシアルキルから選択され、アルキルは。化合物は、A-がSO3 -である場合は(脂肪)アルコール/アルキル(エトキシ/エーテル)スルフェート[(F)A(E)S]と、A-が-RCOO-である場合には(脂肪)アルコール/アルキル(エトキシ/エーテル)カルボキシレート[(F)A(E)C]と称することもある。
【0117】
M+はH及び塩を形成するカチオンから選択される。塩を形成するカチオンは一価であっても多価であってもよく、したがって、M+は1/v Mv+に等しい。例としては、これらに限定するものではないが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム並びにモノ、ジ及びトリエタノールアミンのアンモニウム塩が挙げられる。
【0118】
一般式(I)の整数は以下のように定義する。
【0119】
mは、0~200、好ましくは1~80、より好ましくは3~20の範囲であり;n及びoはそれぞれ独立して、0~100の範囲であり;nは、好ましくは1~10の範囲、より好ましくは1~6の範囲であり;oは、好ましくは1~50、より好ましくは4~25の範囲である。m、n及びoの和は少なくとも1であり、好ましくはm、n及びoの和は5~100、より好ましくは9~50の範囲である。
【0120】
一般式(I)のアニオン性界面活性剤は、任意の構造のもの、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであり得る。
【0121】
さらなる好適なアニオン性界面活性剤としては、C12~C18-スルホ脂肪酸アルキルエステル(例えば、C12~C18-スルホ脂肪酸メチルエステル)、C10~C18-アルキルアリールスルホン酸(例えば、n-C10~C18-アルキルベンゼンスルホン酸)及びC10~C18-アルキルアルコキシカルボキシレートの塩(M+)が挙げられる。
【0122】
M+は、いずれの場合にも、塩を形成するカチオンから選択される。塩を形成するカチオンは一価であっても多価であってもよく、したがって、M+は1/v Mv+に等しい。例としては、これらに限定するものではないが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム並びにモノ、ジ及びトリエタノールアミンのアンモニウム塩が挙げられる。
【0123】
一実施形態において、洗剤配合物は一般式(I)の化合物から選択される少なくとも2種のアニオン性界面活性剤を含み、前記アニオン性界面活性剤のうち1種は、R1がC11、R2がH、mが2、n及びo=0、A-がSO3 -、M+がNa+であることを特徴とし、他の界面活性剤はR1がC13、R2がH、mが2、n及びo=0、A-がSO3 -、M+がNa+であることを特徴とする。
【0124】
一実施形態において、洗剤配合物は、一般式(II):
【0125】
【化2】
[式(II)中、R1はC10~C13-アルキルである]
の化合物から選択される少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、洗剤配合物は、式(II)の化合物から選択される少なくとも2種のアニオン性界面活性剤を含み、前記アニオン性界面活性剤のうち1種は、R1がC10であることを特徴とし、他の界面活性剤はR1がC13であることを特徴とする。このような化合物は、本明細書中ではLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホネート)とも称する。
【0126】
本発明の洗剤配合物は、全て洗剤配合物の総重量に対して、約1重量%~約15重量%の範囲、約3重量%~約12重量%の範囲又は約4重量%~約8重量%の範囲の総量の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、洗剤配合物の総重量に対して約5.5重量%の総量の非イオン性界面活性剤を含む。
【0127】
一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、一般式(III):
【0128】
【化3】
の少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含む。
【0129】
一般式(III)の可変要素は以下のように定義する。
【0130】
R1はC1~C23-アルキル及びC2~C23-アルケニルから選択され、アルキル及び/又はアルケニルは直鎖又は分枝鎖であり;例はn-C7H15、n-C9H19、n-C11H23、n-C13H27、n-C15H31、n-C17H35、i-C9H19、i-C12H25である。
【0131】
R2はH、C1~C20-アルキル及びC2~C20-アルケニルから選択され、アルキル及び/又はアルケニルは直鎖又は分枝鎖である。
【0132】
R3及びR4はそれぞれ独立して、C1~C16アルキルから選択され、アルキルは直鎖又は分枝鎖であり;例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、イソアミル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシルである。
【0133】
R5はH及びC1~C18アルキルから選択され、アルキルは直鎖又は分枝鎖である。
【0134】
一般式(III)の整数は以下のように定義する。
【0135】
mは、0~200、好ましくは1~80、より好ましくは3~20の範囲であり;n及びoはそれぞれ独立して0~100の範囲であり;nは、好ましくは1~10、より好ましくは1~6の範囲であり;oは、好ましくは1~50、より好ましくは4~25の範囲である。m、n及びoの和は少なくとも1であり、好ましくはm、n及びoの和は5~100、より好ましくは9~50の範囲である。
【0136】
一般式(III)の非イオン性界面活性剤は、任意の構造のものであり、ブロック又はランダム構造であり、表示した式(III)の配列に限定するものではない。
【0137】
式(III)による化合物は、本明細書中ではアルキルポリエチレングリコールエーテル(AEO)とも称する。
【0138】
一実施形態において、洗剤配合物は、一般式(III)[式中、mは3~11の範囲、好ましくは7以下であり;n及びoは0であり、R1はC12~C14であり、R5はHである]から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含む。一実施形態において、洗剤配合物は一般式(III)の化合物から選択される少なくとも2種の非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤のうち1種は、R1がC12、R5がH、mが7、n及びo=0であることを特徴とし、他の界面活性剤はR1がC14、R5がH、mが7、n及びo=0であることを特徴とする。
【0139】
一実施形態において、本発明による洗剤配合物は、錯化剤(キレート剤、金属イオン封鎖剤(sequestrating agent))、沈殿剤、並びにカルシウム及びマグネシウムと水溶性錯体を形成するイオン交換化合物から選択される1種以上の化合物を含む。このような化合物は、本明細書中において「ビルダー」又は「ビルディング剤」とも称するが、このような化合物を洗剤配合物の最終用途におけるこの機能に限定することを意味するものではない。一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、非リン酸塩系ビルダー、例えば、グルコン酸ナトリウム、クエン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、ホスホン酸塩、アミノカルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリスルホン酸塩及びポリホスホン酸塩から選択される少なくとも1種のビルダーを含む。
【0140】
一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、クエン酸のモノ及びジアルカリ金属塩、特にモノアルカリ金属塩、好ましくは三ナトリウム塩、クエン酸のアンモニウム塩又は置換アンモニウム塩、並びにクエン酸自体から選択される少なくとも1種の「シトレート」を含む。シトレートは、無水化合物として又は水和物、例えばクエン酸ナトリウム二水和物として使用できる。シトレートは、全て洗剤配合物の総重量に対して、0重量%~約20重量%の範囲、約0.5重量%~約10重量%の範囲又は1~5重量%の範囲の総量で含まれる。一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、洗剤配合物の総重量に対して約1~3%の範囲の総量のシトレートを含む。
【0141】
本発明の洗剤配合物は1種以上のヒドロトロープを含んでいてもよい。一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、有機溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、及び通常の条件下で水混和性である、当技術分野において公知のさらなる有機溶媒から選択されるがこれらに限定されない、1種以上のヒドロトロープを含む。一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、全て洗剤配合物の総重量に対して、5~10重量%の範囲の、好ましくは約6重量%の総量で1,2-プロピレングリコールを含む。
【0142】
一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、本発明によるマンナナーゼ以外のさらなる酵素を含まない。
【0143】
一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、本発明のマンナナーゼの他に、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、マンナナーゼ及び洗剤配合物中で有用であることが当技術分野において公知の任意の他の酵素から選択される少なくとも1種のさらなる酵素を含む。
【0144】
マンナナーゼに加えて本発明の洗剤配合物に含まれる少なくとも1種の酵素自体は、酵素安定剤によって安定化されてもよい。少なくとも1種の酵素安定剤は、ホウ素を含む化合物、例えば、ホウ酸又はその誘導体及びボロン酸又はその誘導体、それらの塩並びにそれらの混合物から選択され、これらは全て本明細書中に開示した通りである。少なくとも1種の酵素安定剤は、本明細書中に開示したペプチドアルデヒドから選択され得る。
【0145】
一実施形態において、少なくとも1種の酵素安定剤は、プロテアーゼを安定化させる、2~6個のヒドロキシル基を含むポリオールから選択される。好適な例としては、グリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール(erythriol)、グルコース、フルクトース及びラクトースが挙げられる。
【0146】
一実施形態において、本発明の洗剤配合物は、洗濯用洗剤である。
【0147】
「洗濯」という用語は、家庭用の洗濯と工業用の洗濯の両方に関し、本発明の洗剤配合物を含む溶液でテキスタイルを処理するプロセスを意味する。一実施形態において、洗濯プロセスは技術的デバイス、例えば、家庭用又は工業用洗浄機を使用することによって実施し得る。洗浄機は、本明細書中では洗濯機とも称する。或いは、洗濯プロセスは手動で行ってもよい。
【0148】
「テキスタイル」という用語は、ヤーン(編む又は織るために使用される天然又は合成繊維製のスレッド)、ヤーン中間体、繊維、不織材料、天然材料、合成材料、並びにこれらの材料から作られるファブリック(繊維を織る、編む又はフェルト成形することによって作られるテキスタイル)、例えば、衣類(テキスタイルで作られるあらゆる衣料品)、布及び他の物品を含むあらゆるテキスタイル材料を意味する。
【0149】
「繊維」という用語は、天然繊維、合成繊維及びそれらの混合物を含む。天然繊維の例は、植物由来のもの(例えば、亜麻、黄麻及び綿)、又はコラーゲン、ケラチン及びフィブロインなどのタンパク質を含む動物由来のもの(例えば、シルク、羊毛、アンゴラ、モヘア、カシミア)である。合成由来の繊維の例は、ポリウレタン繊維、例えば、Spandex(登録商標)若しくはLycra(登録商標)、ポリエステル繊維、ポリオレフィン、例えば、エラストフィン(elastofin)、又はポリアミド繊維、例えば、ナイロンである。繊維とは、単繊維又はテキスタイル、例えば、ニットウェア、織布若しくは不織布の一部分を意味する。
【0150】
本発明は、液体のマンナナーゼを含む配合物、好ましくは液体洗剤配合物、より好ましくは液体洗濯用洗剤配合物を提供する方法であって、1つ以上のステップで、
(a)配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼと、
(b)清浄に有効な量で及び/又は洗剤の物理的特性を維持するのに有効な量で存在する、界面活性剤、ビルダー及びヒドロトロープから選択される少なくとも1つの洗剤成分と
を混合するステップを含む、方法に関する。
【0151】
一実施形態において、本発明は、液体のマンナナーゼを含む配合物を提供する方法であって、1つ以上のステップで任意の順序で、
(a)配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む本発明の酵素調製物と、
(b)清浄に有効な量で及び/又は洗剤の物理的特性を維持するのに有効な量で存在する、界面活性剤、ビルダー及びヒドロトロープから選択される少なくとも1つの洗剤成分と
を混合するステップを含む、方法に関する。
【0152】
一実施形態において、配合物は、5~12又は6~11の範囲の、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを有する。一実施形態において、配合物は洗剤配合物、好ましくは液体洗剤配合物、より好ましくは液体洗濯用洗剤配合物である。
【0153】
本発明の洗濯用洗剤配合物は、関連する洗浄条件下で評価される洗浄性能を発揮する。本明細書中において、「関連する洗浄/清浄条件」という用語は、実際に洗濯機において又は手動洗浄プロセスにおいて使用される条件、特に温度、時間、清浄機構、泡濃度、洗剤のタイプ及び水の硬度を指す。一実施形態において、ここでの洗浄性能は、マンナンを含む染みの除去に対して関連し;好ましくはマンナンを含む染みは、ガラクトマンナン及びグルコマンナンを含むものから選択される。一実施形態において、洗浄性能は、ローカストビーンガム及び/又はグアーガムを含む染みの除去に関する。
【0154】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのマンナンを含む染みを、配列番号1と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼと接触させるステップによって、マンナンを含む染みを除去する方法を提供する。マンナナーゼは、5~12又は6~11の範囲のpH、より好ましくは6~10又は7~9又は7~12又は8~12又は8~10の範囲のpH、最も好ましくは7.5~8.5の範囲のpHにおいてマンナン分解活性を有する。前記pHにおいて、マンナナーゼは、マンナンを含む染みに対して洗浄性能を示す。好ましくは、この方法は、60℃以下、好ましくは約5~60℃の範囲、好ましくは約5~40℃の範囲、より好ましくは約10~40℃の範囲の温度においてマンナンを含む染みを除去する方法である。
【0155】
一態様において、本発明は、以下のステップ:
(a)配列番号1と少なくとも80%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む液体配合物を用意するステップ、
(b)マンナンを含む染みを(a)の液体配合物と接触させるステップ、
(c)約10~90分、好ましくは20~80分、より好ましくは30~70分又はさらにより好ましくは40~60分の範囲の時間にわたって、酵素に、染みに対するその触媒活性を発揮させるステップ
によって、60℃以下、好ましくは約5~60℃の範囲、好ましくは約5~40℃の範囲、より好ましくは約10~40℃の範囲の温度においてマンナンを含む染みを除去する方法に関する。
【0156】
一実施形態において、マンナンを含む染みを除去する方法は、好ましくは洗濯機中で機械的撹拌下に行われる洗浄方法であることを特徴とする。液体配合物は好ましくは液体洗剤配合物である。
【0157】
本発明は、マンナンを含む染み、好ましくはローカストビーンガム及び/又はグアーガムを含む染みに対する洗剤配合物の洗浄又は清浄性能を増大させるための、配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼの使用に関する。
【0158】
一実施形態において、洗剤配合物は、5~12又は6~11の範囲の、より好ましくは6~10、7~9、7~12、8~12、8~10及び7.5~8.5から選択される範囲のpHを有する。一実施形態において、配合物は液体洗剤配合物、好ましくは液体洗濯用洗剤配合物である。
【0159】
一態様において、本発明は、配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一のマンナナーゼを含む、5~12の範囲のpHを好ましくは有する配合物であって、マンナンを含む染み、好ましくはローカストビーンガム及び/又はグアーガムを含む染みに対して増大した洗浄又は清浄性能を有する、配合物に関する。マンナンを含む染みに対して増大した洗浄又は清浄性能とは、本発明のマンナナーゼを欠いている配合物と比較した場合の又はいかなるマンナナーゼも欠いている配合物と比較した場合の増大した洗浄又は清浄性能を意味する。
【0160】
一実施形態において、洗浄又は清浄性能は、60℃以下、好ましくは約5~60℃の範囲、好ましくは約5~40℃の範囲、より好ましくは約10~40℃の範囲の洗浄又は清浄温度において増大される。
【0161】
一態様において、本発明は、洗浄(washing)又は清浄(cleaning)の方法であって、
(a)少なくとも1つのマンナンを含む染みを用意するステップ、
(b)本発明による洗剤配合物を用意するステップ、
(c)マンナンを含む染みを(b)の洗剤と接触させるステップ
を含む、方法に関する。
【0162】
一実施形態において、ステップ(a)で、テキスタイル、マンナンを含む染みを含むテキスタイルを用意する。
【0163】
一実施形態において、本発明による洗剤に含まれるマンナナーゼは、(c)マンナンを含む染みを(b)の洗剤と接触させるステップによって、マンナンを含む染みをテキスタイル(a)から除去する。
【0164】
一態様において、本発明は、
(a)本発明による洗剤配合物を用意するステップ、
(b)マンナンを含む染みを含むテキスタイルを、約10~40℃の範囲の洗浄温度において(a)の洗剤と接触させるステップ、
(c)好ましくは洗浄機中において機械的撹拌下で行うステップ
を含む、洗浄方法に関する。
【0165】
本発明は、以下の実施形態に関する。
【0166】
1. 配列番号1と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一のマンナナーゼ。
【0167】
2. 実施形態1に記載のマンナナーゼをコードするポリヌクレオチド、好ましくは配列番号2と少なくとも75%同一のポリヌクレオチド。
【0168】
3. 実施形態2に記載のポリヌクレオチドを含む発現構築物。
【0169】
4. 実施形態2に記載のポリヌクレオチド又は実施形態3に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【0170】
5. 液体酵素調製物であって、配列番号1と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一のマンナナーゼ、液体酵素調製物自体を安定化させる少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の溶媒、及び場合により少なくとも1種の酵素安定剤を含む、液体酵素調製物。
【0171】
6. 配列番号1による29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼを含む配合物、好ましくは液体配合物であって、好ましくは5~12の範囲のpHを有する、配合物。
【0172】
7. 洗剤配合物を提供する方法であって、1つ以上のステップで、
(a)配列番号1による29~324位による配列と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼであって、好ましくは実施形態5に記載の酵素調製物内に提供される、マンナナーゼと、
(b)界面活性剤、ビルダー及びヒドロトロープから選択される少なくとも1つの成分であって、全て、清浄に有効な量及び/又は洗剤の物理的特性を維持するのに有効な量である成分と
を混合するステップを含む、方法。
【0173】
8. 洗浄又は清浄の方法であって、
(a)少なくとも1つのマンナンを含む染みを用意するステップ、
(b)実施形態6に記載の配合物を用意するステップ、
(c)マンナンを含む染み(a)を(b)の配合物と、好ましくは5~60℃の範囲の洗浄又は清浄温度で接触させるステップ
を含む、方法。
【0174】
9. マンナンを含む染みがテキスタイル(a)上に形成されており、洗剤(b)に含まれるポリペプチドが、マンナンを含む染みをテキスタイル(a)から除去する、実施形態8に記載の方法。
【0175】
10. マンナンを含む染みに対する洗剤配合物の洗浄性能を、好ましくは5~60℃の範囲の洗浄又は清浄温度において増大させるための、配列番号1と少なくとも75%同一の少なくとも1種のマンナナーゼ、好ましくは配列番号1の29~324位による配列と少なくとも75%同一のマンナナーゼの使用。
【0176】
11. 少なくとも1つのマンナンを含む染みが、ローカストビーンガム及び/又はグアーガムを含む、実施形態10に記載の使用。
【実施例
【0177】
[実施例1]
マンナナーゼの発現
マンナナーゼ遺伝子を、Geneiousソフトウェアを使用してin silicoで設計した。遺伝子は、GenScript(New Jersey、USA)によって合成され、バチルス属発現ベクターにクローニングされた。構築物を、配列が確認されたプラスミドDNAとしてGenScriptから受け取り、枯草菌に形質転換した。5μLのプラスミドDNA(20~200ng/μL)を500μLの新たに調製した枯草菌コンピテント細胞に添加し、37℃で3.5時間インキュベートした。続いて、細胞をLB+50ug/mLカナマイシン寒天プレートにプレーティングし、37℃で終夜増殖させた。枯草菌中のマンナナーゼを確認するために、得られたコロニーをコロニーPCR及びシークエンシングによってスクリーニングした。PCRの前に、各コロニーを、20mM DTT及び0.5mg/mLプロテイナーゼKを含有する緩衝液中で55℃で5分間、続いて95℃で6分間にわたって溶解させた。1μLの溶解細胞及びTaKara Ex Taq(TaKaRa Cat#RR001)ポリメラーゼを使用した20μLのPCRの反応を以下のように実施した:98℃で3分間の初回の変性、30サイクルの、それぞれ95℃で10秒間、55℃において30秒間及び72℃で2.5分間の変性、アニーリング及び伸長。72℃で5分間の最後の伸長により、PCR反応を完了させた。マンナナーゼの発現は、96ディープウェルプレートフォーマットで行った。発酵は、30℃において、フラットブレードインペラーよって提供された1000rpmの撹拌下で、20~28時間実施した。最終発酵ブロスを4℃において2500×gで15分間遠心分離して、無細胞の上清を得た。マンナナーゼ酵素を、SDS-PAGE又はキャピラリー電気泳動のいずれかによって定量化し、洗浄性能について試験した。
【0178】
[実施例2]
Rotawash中におけるマンナナーゼの評価
モデル配合物、例えば、ES1_C又は市販の洗剤配合物、例えば、Persil non-Bio中での洗浄性能について、マンナナーゼ酵素を試験することができる。
【0179】
【表1】
【0180】
以下のマンナナーゼ:
Man01: 配列番号1の29~324位による配列
Man02: 配列番号3によるマンナナーゼ
を、Persil non-Bio(pH7.2)洗剤で、40℃の洗浄温度で試験した。
【0181】
CFT C-S-43/グアーガム染みモニター又はCFT C-S-73/ローカストビーンガム染みモニター(CFT、Vlaardingen、NL)を、Rotawash(Rotawash M228、SDL Atlas Inc.、USA)中で以下の洗浄条件下において、Persil non-Bioを使用する洗浄液中で綿バラストファブリック及び鋼球と一緒に洗浄した。
【0182】
【表2】
【0183】
洗浄後、ファブリックをすすぎ、空気中で乾燥させた。単一の染みについての洗浄性能は、汚れたファブリックの、洗浄後の平均色強度をEPSON製のフラットベッドカラーイメージスキャナー(Expression 11000XL)を用いて測定することによって決定した。一般に、平均強度値が高いほど、性能は良好である。また、結果を、以下の表Ex2に概説する。
【0184】
【表3】
【0185】
【表4】
【配列表】
2022548976000001.app
【国際調査報告】