(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(54)【発明の名称】光硬化性(メタ)アクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20221116BHJP
【FI】
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517986
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020051652
(87)【国際公開番号】W WO2021055869
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ジン、 シュファ
(72)【発明者】
【氏名】チュヨン、 チー-ミン
【テーマコード(参考)】
4J127
【Fターム(参考)】
4J127AA03
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4J127FA08
(57)【要約】
【解決手段】
膜の表面、特に、膜フィルターのような浸透及び逆浸透用途で使用される膜の表面に特徴を形成するための光硬化性(メタ)アクリレート組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、
b)(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)光開始剤、
を含む、光硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にd)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化した反応生成物はまた、水性条件に浸漬する前の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示す、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化した反応生成物が、約30以上のショアD硬度を有する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化性組成物が、約10,000~約100,000cpsの粘度を有する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
前記硬化性組成物が、約1.5~約10のチキソトロピー指数を有する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約60重量%の量で存在する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分がポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマー又はポリエステルウレタンアクリレートである、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約40重量%の量で存在する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
前記(メタ)アクリレートモノマーがポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、約1,000cps未満の粘度を有する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項11】
前記イソシアネート官能化接着促進剤が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約5重量%~約60重量%の量で存在する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項12】
前記イソシアネート官能化接着促進剤が、(メタ)アクリレート官能性も含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項13】
前記イソシアネート官能化接着促進剤が、イソシアネート末端ウレタンアクリレート、イソシアネート末端脂肪族プレポリマー、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項14】
前記光開始剤が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約0.2重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項15】
前記光開始剤が、UV光又は可視光範囲の放射線によって励起される少なくとも1つの発色団が付着しているポリマー構造である、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項16】
フィラーを更に含む、請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項17】
a)少なくとも1つの表面を含む膜、及び
b)前記膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置された、請求項1に記載の光硬化性組成物の硬化した反応生成物、
を含む、複合膜構造。
【請求項18】
前記硬化した反応生成物が、前記膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に接着結合されている、請求項17に記載の複合膜構造。
【請求項19】
前記硬化した反応生成物が、前記膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に、予め決められたパターンで配置される、請求項17に記載の複合膜構造。
【請求項20】
前記予め決められたパターンが、ストライプ、波、円、楕円、弧、正方形、長方形、ダイヤモンド、五角形、六角形、星、山形、ランダムなパターン、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項19に記載の複合膜構造。
【請求項21】
前記膜の少なくとも1つの表面が、ポリアミドから構築される、及び/又は反応性ヒドロキシル官能化部分を含む、請求項17に記載の複合膜構造。
【請求項22】
a)i)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、
ii)(メタ)アクリレートモノマー、及び
iii)光開始剤、
を含む硬化性組成物を提供する工程、
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にiv)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
b)前記硬化性組成物をUV又は可視光源に曝して、硬化した反応生成物を形成する工程、
を含む、硬化した反応生成物を製造する方法であって、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である、方法。
【請求項23】
前記硬化した反応生成物はまた、水性条件に浸漬する前の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記硬化した反応生成物が、約30以上のショアD硬度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分が、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約60重量%の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分が、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマー又はポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、前記硬化性組成物の総重量に基づいて約10重量%~約50重量%の量で存在する、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート官能性化合物を含む硬化性(メタ)アクリレート組成物、並びにこうした組成物の製造方法及び使用方法に関する。より具体的には、本発明は、膜、特に膜フィルターのような浸透及び逆浸透用途で使用される膜の表面上に、特徴を形成するための光硬化性(メタ)アクリレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、いくつか例を挙げると、シーリング、接着、コーティング、及びポッティングの用途に広く使用されてきた。骨格及び硬化性基の種類は、一般に、特定の最終用途とそれが使用されることが意図される環境を参照して選択される。様々な程度の不飽和基及び他の機能的に架橋する基を有するポリマーが使用されてきた。
【0003】
逆浸透(RO)膜の結合及び間隔(spacing)のために、一般的に使用される接着剤(すなわち、硬化性組成物)は、2部構成の室温硬化ポリウレタン又はエポキシである。ゲル化時に先立って2つの部分を混合及び適用してパーツを形成しなければならず、これは、いくつかの用途にとって望ましくない。(メタ)アクリレート末端ポリブタジエンを含有する光硬化性アクリレートは、膜の折り畳みの保護(membrane fold protection)用として開示されているが、膜への結合は報告されていない。ポリブタンジエンアクリレートオリゴマーは、一般に多くの基材への接着性が低い。ポリエーテルウレタンアクリレート樹脂を含有する光硬化性アクリレートは、優れた加水分解安定性を有することが知られているが、RO膜への結合はアルカリ性溶液中では困難である。
【0004】
接着促進剤は、有機接着剤と有機/無機基材との間の界面で作用し、2つの材料間の接着を強化する。しばしば2つの材料は、例えば、相溶性、化学反応性、表面特性、及び熱膨張係数が異なり、それらの間に強力な接着結合を形成することが困難である。接着促進剤は、これらの異なる材料を化学的及び物理的に結合して強力な凝集結合構造にするように作用する。接着促進剤は、環境や、接着部位に作用して接着強度を破損することが多い熱及び湿気等の他の破損力に対する耐性を付与することができる。
【0005】
接着促進剤は、分子の両端に反応性官能基を持つ分子であることが多い。表面へのポリマーの接着を高めることが知られている官能基としては、リン酸及びカルボン酸(金属接着)並びにシリルエーテル(ガラス/シリル接着)が挙げられ、これらは加水分解して反応性Si-OH結合を与える。酸、アミン及びヒドロキシル等の官能基を有するモノマーは、多くの基材にポリマー接着性を与えることができる。ガラス、プラスチック及び金属等の基材への接着を改善するために様々な接着促進剤が使用されてきたが、濾過膜への接着のための接着促進剤の使用は知られていない。イソシアネート及びアクリレート末端基を有する二重硬化組成物は、ホットメルトコーティング及びコンフォーマルコーティングに使用されてきたが、膜への接着を強化するためには使用されていない。
【0006】
さらに、硬化性組成物と膜表面との間の適切な接着が当初は達成されたとしても、硬化後並びに膜の使用及び維持管理中に膜への良好な接着を維持するためには、膜表面に接着される材料、例えばスペーサー特徴が必要である。例えば、RO膜の使用及び維持管理には、膜表面とそれに接着する特徴/スペーサーを水性環境にさらす必要がある。特に、膜の洗浄には、しばしば膜を酸性及び塩基性の水溶液にさらす必要がある。特に酸性及びアルカリ性溶液下で、水と接触すると、硬化した組成物によって形成された特徴は劣化し、使用中及び維持管理中に質量、機械的強度、及び膜への接着が失われる場合がある。
【0007】
光硬化性(メタ)アクリレート組成物、及びこうした組成物を使用して膜表面に特徴を形成し、これにより、硬化した組成物の膜表面への良好な接着、並びに膜の後続する使用中及び維持管理中の硬化した組成物の良好な接着、質量、及び機械的強度の維持が可能になる方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、b)(メタ)アクリレートモノマー、及びc)光開始剤を含む、光硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にd)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である、光硬化性組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の態様では、a)少なくとも1つの表面を含む膜、及びb)前記膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置された、上記の光硬化性組成物の硬化した反応生成物を含む、複合膜構造を提供する。
【0010】
本発明の更なる態様では、a)i)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、ii)(メタ)アクリレートモノマー、及びiii)光開始剤を含む硬化性組成物を提供する工程、前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にiv)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
b)前記硬化性組成物をUV又は可視光源に曝して、硬化した反応生成物を形成する工程、を含む、硬化した反応生成物を製造する方法であって、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、a)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、b)(メタ)アクリレートモノマー、及びc)光開始剤を含む、光硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にd)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である、光硬化性組成物を対象とする。
【0012】
本発明の1つの態様では、硬化性組成物は、約10,000~約100,000、又は約20,000~約80,000センチポアズ(25℃、10s-1)の粘度を有する。
【0013】
本発明の1つの態様では、硬化性組成物は、堆積を容易にするのに十分なチキソトロピーを可能にする一方で、堆積後及び硬化前にその物理的構造を維持するように効果的にバランスがとられた、最適化されたレオロジーを有する。本明細書で使用される場合、「チキソトロピー」とは、応力(例えば、混合及び振とう)が加えられると物質の粘性が低くなり、こうした応力がないと(例えば、静止状態)粘性が高くなることを意味する。
【0014】
本発明の更なる態様では、硬化性組成物は、約1.5~約10、又は約2~約8のチキソトロピー指数を有する。本明細書で使用される場合、「チキソトロピー指数」とは、1s-1の速度での硬化性組成物の粘度(センチポアズ)と10s-1の速度での硬化性組成物の粘度(センチポアズ)との比(1s-1での粘度/10s-1での粘度)を意味する。粘度は、既知の方法、例えば、コーンプレートレオメーター、平行プレートレオメーター、又はブルックフィールド粘度計等の回転粘度計を使用して決定してよい。
【0015】
本発明の1つの態様では、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン成分は、ポリエーテルウレタンアクリレートオリゴマーである。本発明の態様では、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン成分は、ジイソシアネートをポリエーテルポリオールと反応させて、イソシアネート末端ウレタンを生成することによって合成されてよい。次に、イソシアネート末端ウレタンをヒドロキシ末端アクリレートと反応させて、オリゴマーの末端にアクリレート基を提供する。末端イソシアネートがヒドロキシアクリレートと完全に反応しない場合、イソシアネートは、アクリレート末端基に加えて反応性基として構造内に残る。
【0016】
適切なウレタンアクリレートオリゴマーの例としては、これらに限定されないが、脂肪族ウレタンアクリレートが挙げられる。適切なウレタンアクリレートオリゴマーの例としては、エベクリル230、264、265、270、1258、1290、4100、4200、4265、4666、4738、4740、4827、4858、4858、4859、5129、8210、8301、8415、8620、8604、8605、8702、8807、8800-20R(全てオルネクスから)、BR582E8、BR-930D、BR-3042、BR3471(全てダイマックスから)、ジェノマー4297、4302、4312、4316、4425、4622、4230、4217、4267(全てラーンから)、フォトマー6891、4184、6008、6230、6645、6692(全てIGMから)、CN9002、9004、9178、940、989、996、9011、980、991(全てサートマーから)、及びこれらの組合せが挙げられる。本発明の態様では、ウレタンアクリレートオリゴマーは、エベクリル880-20R(オルネクス)、エベクリル8807(オルネクス)、BR582E8(ダイマックス)、又はこれらの組合せである。
【0017】
本発明の更なる態様では、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン成分は、硬化性組成物の総重量に基づいて約20重量%~約60重量%、又は約30重量%~約50重量%の量で存在する。
【0018】
本発明の別の態様では、(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン成分は、イソシアネート官能性を更に包含する。イソシアネート官能性を包含する適切な(メタ)アクリレート官能化ポリエーテルウレタン成分としては、これらに限定されないが、エベクリル4141、4250、4396、4397、4510及び4765(全てオルネクスから)、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0019】
適切な(メタ)アクリレートモノマーとしては、これらに限定されないが、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-へプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸-エチレンオキシド付加物、トリフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-トリフルオロメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル-2-ペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロメチル(メタ)アクリレート、ジペルフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロメチル-2-ペルフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ペルフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、及び2-ペルフルオロヘキサデシルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明の1つの態様では、(メタ)アクリレートモノマーは、SR259(サートマーからのポリエチレングリコール(200)ジアクリレート)等のポリエチレングリコールジアクリレートである。適切な多官能性(メタ)アクリレートとしては、これらに限定されないが、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、望ましくはトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール-A(メタ)アクリレート(「EBIPA」又は「EBIPMA」)等のビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート、及びテトラヒドロフラン(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート、シトロネリルアクリレート及びシトロネリルメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(「HDDA」又は「HDDMA」)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(「ETTA」)、トリエチレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)が挙げられる。
【0020】
本発明の1つの態様では、(メタ)アクリレートモノマーは、硬化性組成物の総重量に基づいて約10重量%~約50重量%、又は約20重量%~約40重量%の量で存在する。
【0021】
本発明の更なる態様では、(メタ)アクリレートモノマーは、約1,000cps未満又は約500cps未満の粘度を有する。
【0022】
本発明の1つの態様では、イソシアネート官能化接着促進剤は、イソシアネート末端ウレタンアクリレート、イソシアネート末端脂肪族プレポリマー、又はこれらの組合せである。適切なイソシアネート末端ウレタンアクリレートとしては、これらに限定されないが、エベクリル4141、4250、4396、4397、4510及び4765(全てオルネクス)、及びこれらの組合せが挙げられる。適切なイソシアネート末端脂肪族プレポリマーとしては、これらに限定されないが、デスモジュールXP2599(コベストロ)、デスモジュールVPLS2371(コベストロ)、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0023】
本発明の態様では、イソシアネート官能化接着促進剤は、硬化性組成物の総重量に基づいて約5重量%~約60重量%の量、又は約10重量%~約30重量%の量で存在する。
【0024】
本発明の態様では、硬化性組成物は、光硬化性(photocurable)又は光硬化性(light curable)組成物であり、すなわち、可視光又は紫外線(UV)のような光を使用して硬化可能である。本発明の態様では、硬化性組成物は、可視光又はUV光を生成する電球又はLED等の光源を使用して硬化させてよい。
【0025】
本発明の更なる態様では、光開始剤は、UV開始剤、可視開始剤、又はUV開始剤と可視開始剤の組合せであってよい。本発明の1つの態様では、光開始剤は、UV光又は可視光範囲の放射線によって励起される少なくとも1つの発色団が付着しているポリマー構造である。
【0026】
様々なUV開始剤を使用してよい。UV開始剤は、一般に200~400nmの範囲で、特に不可視光に隣接するスペクトルの部分及びこれをわずかに超える可視部分、例えば>200nm~約390nmで、有効である。
【0027】
本発明において有用である、UV放射に応答し、(メタ)アクリル官能化硬化性成分の硬化を開始及び誘導する開始剤としては、これらに限定されないが、ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、アセトフェノン及び置換アセトフェノン、ベンゾイン及びそのアルキルエステル、キサントン及び置換キサントン、ホスフィンオキシド、ジエトキシ-アセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオ-キサントン、N-メチルジエタノール-アミン-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
こうしたUV開始剤の例としては、「オムニラッド」(以前の「イルガキュア」)及び「ダロキュア」、商品名、特に、「オムニラッド」184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン)、369(2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン)、500(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組合せ)、651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)、1700(ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンとの組合せ)、及び819[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]、並びに「ダロキュア」1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン)及び4265(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンとの組合せ)、並びに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社からルシリンTPOとして市販されている)としてIGMレジンから市販されている開始剤が挙げられる。もちろん、これらの材料の組合せも本明細書で使用してよい。もちろん、本明細書でUV光開始剤として分類されるこれらの光開始剤のいくつかは、可視範囲へのテーリング吸収を有し、UV光硬化開始剤と可視光硬化開始剤との境界線にまたがるが、それにもかかわらず、本発明の一部として本明細書に含まれることが理解される。
【0029】
可視光に応答して硬化を開始及び誘導する本発明で使用するのに適切な開始剤としては、カンファーキノンペルオキシエステル開始剤、9-フルオレンカルボン酸ペルオキシエステル、可視光[青]光開始剤、d1-カンファーキノン、「イルガキュア」784DC(置換チタノセンに基づく光開始剤)、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0030】
他の適切な光開始剤系としては、以下の特許又は刊行物のそれぞれに開示されているものが挙げられ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に参照により組み込まれる田本らの米国特許第4,505,793号は、3-ケト置換クマリン化合物と活性ハロゲン化合物との組合せを包含する光重合開始剤を開示している。いくつかの例示的な化合物が開示されている。こうした光重合開始剤は、約180nm~600nmの範囲の波長を有する光への曝露によって硬化する。本明細書に参照により組み込まれる永島らの米国特許第4,258,123号は、化学線を照射するとフリーラジカルを生成する開始剤成分を包含する感光性樹脂組成物を開示している。こうした成分としては、本明細書でより完全に記載されているように、様々なトリアジン化合物が挙げられる。
【0031】
追加の有用な成分は、参照により本明細書に組み込まれる以下の文書に開示されている。欧州特許公開番号EP0369645A1は、トリハロメチル置換-s-トリアジン、約300~1000nmの範囲の放射線を吸収することができる増感化合物、及び電子供与体を包含する3部構成の光開始剤系を開示している。ケトン、クマリン染料、キサンテン染料、3H-キサンテン-3-オン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、メタン及びポリメチン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料を包含する例示的な増感化合物が開示されている。アミン、アミド、エーテル、尿素、フェロセン、スルフィン酸とその塩、フェロシアン化物の塩、アスコルビン酸とその塩、ジチオカルバミン酸とその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、及びテトラフェニルボロン酸の塩を含む例示的な供与体も開示されている。こうした開始剤は、UV光及び可視光の両方に感受性がある。
【0032】
追加の有用な成分は、参照により本明細書に組み込まれる以下の文書に開示されている。欧州特許公開番号EP0563925A1は、約250~1000nmの範囲の放射線を吸収できる増感化合物及び2-アリール-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンを包含する光重合開始剤を開示している。開示される例示的な増感化合物としては、シアニン染料、メロシアニン染料、クマリン染料、ケトクマリン染料、(チオ)キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、スクアリリウム染料、ピリジニウム染料、(チア)ピリリウム染料、ポルフィリン染料、トリアリールメタン染料、(ポリ)メタン染料、アミノスチリル化合物及び芳香族多環式炭化水素が挙げられる。これらの光重合開始剤は、UV及び可視光に感受性がある。
【0033】
参照により本明細書に組み込まれるネッカーズらの米国特許第5,395,862号は、可視光に感受性のあるフルオロン光開始剤を開示している。こうしたフルオロン開始剤系には、励起されたフルオロン種からの電子を受け入れることができる共開始剤も包含される。オニウム塩、ニトロハロメタン及びジアゾスルホンを包含する例示的な共開始剤が開示されている。参照により本明細書に組み込まれるネッカーズらの米国特許第5,451,343号は、350nmを超える波長の光を吸収する開始剤としてフルオロン及びピロニン-Y誘導体を開示している。参照により本明細書に組み込まれる、パラゾットらの米国特許第5,454,676号は、UV光又は可視光下で硬化する3部構成の光開始剤系を開示している。3部構成系には、アリーリドニウム塩、増感化合物、及び電子供与体が包含される。例示的なヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩が挙げられる。3部構成系で使用するための例示的な増感剤及び電子供与体も開示されている。さらに、増感剤は約300~約1000nmの範囲の光を吸収することができる。
【0034】
本発明の更なる態様では、光開始剤は、硬化性組成物の総重量に基づいて約0.2重量%~約5重量%、又は約1重量%~約3重量%の量で存在する。
【0035】
本発明の更なる態様では、硬化性組成物は更にフィラーを含んでよい。適切なフィラーとしては有機及び無機のものが挙げられる。無機フィラーとしては、シリカ、ケイ酸塩、アルミナ、アスベスト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、カーボンブラック、粘土、珪藻土、長石、強磁性体、フライアッシュ、ガラス繊維、石膏、ジュート繊維、カオリン、リンノセルロース、水酸化マグネシウム、雲母、微結晶性セルロース、粉末金属、石英、スターチ、タルク、二酸化チタン、木粉、木繊維、及びこれらの組合せが挙げられる。有機フィラーとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、ナイロン繊維等の熱可塑性ポリマーが挙げられる。
【0036】
本発明の1つの態様では、フィラーは、硬化性組成物の総重量に基づいて約2重量%~約40重量%又は約5重量%~約30重量%の量で存在する。
【0037】
これらに限定されないが、共開始剤、安定剤、レオロジー調整剤、消泡剤、阻害剤、脱酸素剤、染料、着色剤、顔料、接着促進剤、可塑剤、強化剤、補強剤、蛍光剤、湿潤剤、酸化防止剤、及びこれらの組合せのような任意の添加剤もまた、本発明の組成物に包含されてよい。
【0038】
本発明の複合膜構造は、a)少なくとも1つの表面を含む膜、及びb)前記膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置された、上記の光硬化性組成物の硬化した反応生成物を包含する。
【0039】
本発明の硬化した反応生成物を製造する方法は、a)i)(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分、ii)(メタ)アクリレートモノマー、及びiii)光開始剤を含む硬化性組成物を提供する工程、
前記(メタ)アクリレート官能化ウレタン成分はイソシアネート官能性を含む、及び/又は前記光硬化性組成物は更にiv)イソシアネート官能化接着促進剤を含み、
b)前記硬化性組成物をUV又は可視光源に曝して、硬化した反応生成物を形成する工程を含み、
前記硬化性組成物は、基材のポリアミド表面に堆積されてUV光又は可視光に曝されると、前記基材のポリアミド表面上に硬化した反応生成物を形成し、
前記硬化した反応生成物は、
1)酸性の水性(pH=1.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
2)塩基性の水性(pH=12.5)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損、及び/又は
3)中性の水性(pH=7.0)条件に約50℃の温度で約1週間浸漬後の基材破損を特徴とする基材のポリアミド表面への接着を示し、
前記基材は、ポリアミド表面を備えた逆浸透膜である。
【0040】
本発明の態様では、硬化した反応生成物は、約30以上、好ましくは約30~約80又は約35~約70のショアD硬度を有する。
【0041】
本発明の複合膜構造の別の態様では、硬化した反応生成物は、膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に接着結合する。
【0042】
本発明の複合膜構造の別の態様では、硬化した反応生成物は、膜の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に、予め決められたパターンで配置される。本発明の複合膜構造の実施形態では、予め決められたパターンは、ストライプ、波、円、楕円、弧、正方形、長方形、ダイヤモンド、五角形、六角形、星、山形、ランダムなパターン、及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0043】
本発明の1つの態様では、パターンは、硬化性組成物の膜表面への印刷又は堆積とそれに続く硬化性組成物の硬化のような既知の方法によって膜表面に形成される。本発明の方法によって膜表面に形成されたパターンは、典型的には、硬化した反応生成物から形成された多数の特徴から構成される。一般に、これらの特徴は、膜のオーバーレイ層間の間隔を提供するのに適した物理的特性を有する。例えば、これらの特徴は、これらの特徴を有する膜を採用する逆浸透膜要素の操作、洗浄、及び寿命を最適化するために、スパイラル逆浸透濾過膜の層間に適切な間隔を提供してよい。本発明の1つの態様では、特徴のパターンは、適切な膜間隔を維持し、膜の効率的な操作を確実にするために十分な膜表面を露出させるのに十分なサイズ及び形状を有してよい。
【0044】
一般に、接着剤(例えば、硬化組成物)の基材への接着強度は、接着剤に増加する力を加えて基材から分離するときに、接着剤又は基材のどちらが機能しなくなるかを決定することによって説明されてよい。接着剤がその完全性を維持し、基材が機械的に破損する場合、これは基材破損(SF)と見なされる。基材が無傷のままで、接着剤が機械的に破損する場合、これは接着剤破損(AF)と見なされる。
【0045】
本明細書で使用する場合、「基材破損」とは、以下に説明するように本発明の硬化性組成物が基材としての逆浸透膜のポリアミド表面上で硬化され、基材(又は膜)への接着について試験される場合、力が加えられたときに、接着剤とは対照的に基材が破損することを意味する。本発明の別の態様では、膜への接着(すなわち、基材破損が起こるかどうか)を決定するために使用される基材は、Fフィルムテック(登録商標)フラットシートBW30LEのようなポリアミド表面を有する逆浸透膜である。
【0046】
本発明の硬化性組成物に関して、基材(又は膜)への接着は、1)硬化性組成物を硬化させて、膜表面に接着した硬化生成物のビーズを形成し、これらのビーズを膜表面から強制的に除去することを包含する。膜が破れた場合、基材破損(SF)と見なされる。膜が無傷のままである場合、接着剤破損(AF)と見なされる。この試験方法の例の詳細な説明は、実施例に記載されている。
【0047】
硬化性組成物が堆積される表面は、硬化性組成物の適用に適した任意の膜の表面を包含してよい。本発明の1つの態様では、硬化性組成物が堆積される表面は、膜表面である。本明細書で使用される場合、「膜」とは、一部の物質の通過を許可するが、他の物質の通過を防止する選択的な障壁を意味する。本発明の1つの態様では、膜はフィルター膜、すなわち、水等の液体担体から物質を濾過するための膜である。フィルター膜としては、逆浸透膜、正浸透膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、及びナノろ過膜が挙げられる。硬化した組成物からなる特徴は、膜の活性表面、若しくは膜の非活性表面、又はその両方に堆積されてよい。
【0048】
さらに、膜の細孔開口部を維持するために、グリセロール等の親水性材料を膜に添加してよい。加えて、ポリエチレングリコール等の防汚剤を膜に採用してよい。
【0049】
本発明の光硬化性(メタ)アクリレート組成物のイソシアネート官能基は、ポリアミド及び/又は膜上の反応性ヒドロキシル官能化部分と結合して、ウレタン化学結合を形成する。これらの結合は、イソシアネート官能基を欠く組成物の機械的ロック又は水素結合形成よりも強力である。
【0050】
本発明の態様では、膜表面はポリアミドで構成されている、及び/又は反応性ヒドロキシル官能化部分を包含する。
【0051】
本発明の態様では、本発明の複合膜構造は、高温の水性条件に長期間浸漬後の基材破損を示す。本明細書で使用される場合、「長期間」とは、約0.5週間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、又は約6週間を意味する。本明細書で使用される場合、「高温」とは、約30℃以上、約35℃以上、約40℃以上、約45℃以上、約50℃以上、約55℃以上、約60℃以上、又は約70℃以上を意味する。
【0052】
本発明の態様では、水性条件には、酸性の水性条件、塩基性の水性条件、及び中性の水性条件が包含されてよい。本明細書で使用される場合、「酸性の水性条件」とは、pHが約3以下、約2.5以下、約2以下、約1.5以下、又は約1以下の水性条件を意味する。本明細書で使用される場合、「塩基性の水性条件」とは、pHが約11以上、約11.5以上、約12以上、約12.5以上、又は約13以上の水性条件を意味する。本明細書で使用される場合、「中性の水性条件」とは、pHが約6~約8又はpHが約7の水性条件を意味する。
【実施例】
【0053】
下記の実施例では、以下の成分を使用した。
【0054】
【0055】
[試験方法]
下記の実施例では、以下の試験方法を採用した。
【0056】
(粘度及びチキソトロピー指数)
コーンアンドプレートレオメーター(アントンパール社)を使用して、せん断速度1s-1及び10s-1で粘度を測定した。1s-1及び10s-1の粘度の比としてチキソトロピー指数を計算した。
【0057】
(膜への接着)
硬化性組成物をRO膜(フィルムテック(登録商標)フラットシートBW30LE)に適用して、直径が約20ミル、高さが約20ミルのビーズを形成した。膜上のビーズは、1.5W/cm2の強度の405nmLEDライトを使用して10秒間ですぐに硬化した。
【0058】
硬化した反応生成物の堆積したビーズを有する膜を、50℃の温度で様々な時間、異なるpHの水溶液に浸漬した。25gの37%塩酸溶液を975gの蒸留水と混合することにより、pH1.5の溶液を調製した。炭酸水素ナトリウム0.084g、塩化カルシウム0.111g、及び5%次亜塩素酸ナトリウム0.045gを蒸留水1000gに添加することにより、pH8の溶液を調製した。2グラムの水酸化ナトリウムを1000グラムの蒸留水に添加することにより、pH12.5の溶液を調製した。
【0059】
スパチュラを使用してビーズを膜から手作業で除去することにより、硬化した反応生成物の膜への接着を、浸漬の前後に検査した。膜が破れた場合、基材破損(SF)と見なす。膜が無傷のままである場合、接着剤破損(AF)と見なす。
【0060】
(ショアD硬度)
ASTM D2240に従ってショアD硬度を測定した。試験した材料を2枚のPEフィルムの間に置き、2枚のガラス板で覆って1mmの厚さのシートを形成し、次にガラス板の両面に1.5W/cm2の強度のLEDライトを使用して硬化した。次に、硬化したシートを4つに切断し、積み重ねてショア硬度計で測定した。
【0061】
比較例1-イソシアネート官能化接着促進剤を含まない硬化性組成物
イソシアネート樹脂又はイソシアネート官能化接着促進剤を添加しない様々な光硬化性配合物を以下の表2に示すように配合した。
【0062】
【0063】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表3に示す。
【0064】
【0065】
水溶液への浸漬前に、全ての処方について膜への接着は基材破損(SF)を示した。1週間の浸漬後、比較組成物1.1~1.4は、pH1.5及びpH8の溶液でSF接着を維持した。比較組成物1.5は、接着力を失い、3つの溶液全てでAFを示した。pH12.5溶液に浸漬後に、全ての組成物は接着力を失い、AFを示した。
【0066】
比較例2-従来の接着促進剤を含む硬化性組成物
一般的に使用される接着促進剤を含む様々な光硬化性配合物を以下の表4に示すように配合した。この比較例での全ての組成物においては、比較組成物1.2で使用されたウレタンアクリレートオリゴマーであるエベクリル8807を使用した。一般的に使用される接着促進剤は、フォトマー4967、ダイナシランDAMO T、KBM5103、カヤマ-PM2、NNDMA、及びHPAであった。比較のために比較組成物1.2(接着促進剤を含まない)を包含した。
【0067】
【0068】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表5に示す。
【0069】
【0070】
水溶液への浸漬前に、全ての処方についての膜への接着は、基材破損(SF)を示した。pH12.5溶液に1週間浸漬後、全ての組成物は接着力を失い、AFを示した。比較組成物2.2、2.3、及び2.4は、pH1.5及びpH8の溶液に浸漬後もSFを維持した。しかしながら、比較組成物2.5は、pH8及びpH12.5の溶液に浸漬後に接着力を失い、AFを示した。比較組成物2.1は、全ての溶液に浸漬後に接着力を失い、AFを示した。要約すると、比較組成物1.2(接着促進剤を含まない)と比較して、これらの一般的に使用される接着促進剤を添加しても、膜への接着に改善も悪影響も及ぼさなかった。
【0071】
発明実施例1-イソシアネート末端ウレタンアクリレートを含む硬化性組成物(イソシアネート官能化接着促進剤)
アクリレート官能性が1でイソシアネート官能性が2.2のイソシアネート末端ウレタンアクリレート(すなわち、イソシアネート官能化接着促進剤)(すなわち、エベクリル4396)を添加する様々な光硬化性配合物を、以下の表6に示すように配合した。
【0072】
【0073】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表7に示す。また表7には、各処方中のエベクリル4396の量、及びエベクリル4396中のNCO%に基づいて計算された、各処方のイソシアネートNCO重量%も報告されている。
【0074】
【0075】
全ての処方について膜への接着は、水溶液への浸漬前に基材破損(SF)を示した。ポリエーテルウレタン含有配合物(発明組成物1.1、1.2、及び1.3)は全て、3つの溶液全てで膜接着を維持した(SF)。したがって、エベクリル4396を添加すると、類似の比較組成物1.1、1.2、及び1.4と比較して、それぞれpH12.5溶液に浸漬後の膜接着が改善した。しかしながら、エベクリル4396を添加すると、ショアD硬度が低下した。
【0076】
発明組成物1.5(ポリブチルアクリレートオリゴマーを含有する)は、pH1.5及びpH8の両方に浸漬後、基材破損(SF)を有した。これは、類似の比較組成物1.6(エベクリル4396を含まない)のAF膜接着に対する改善である。発明組成物1.4(ポリブタンジエンジメタシレートオリゴマーを含有する)は、類似の比較組成物1.5(エベクリル4396を含まない)と比較して、非常に類似した接着破損モードを有していた。
【0077】
発明実施例2-様々な量のイソシアネート末端ウレタンアクリレート(イソシアネート官能化接着促進剤)を含む硬化性組成物
ポリエーテルウレタンアクリレートBR582を用い、異なる量のイソシアネート末端アクリレートアクリレートエベクリル4396(すなわち、イソシアネート官能化接着促進剤)を添加した様々な光硬化性配合物を、以下の表8に示すように配合した。エベクリル4396の量は0~30重量%の範囲であり、エベクリル4396が0%である組成物は比較組成物1.4である。
【0078】
【0079】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表9に示す。また表9には、各処方中のエベクリル4396の量、及びエベクリル4396中のNCO%に基づいて計算された、各処方のイソシアネートNCO重量%も報告されている。
【0080】
【0081】
水溶液への浸漬前、全ての処方について、膜への接着は基材破損(SF)を示した。3つの溶液への1週間の浸漬後、全ての組成物(発明組成物2.5を除く)は、良好な膜接着を示した(SF)。pH12.5の溶液への浸漬後、発明組成物2.5は、接着を失った(AF)。
【0082】
ポリエーテルウレタン含有配合物(発明組成物1.1、1.2、及び1.3)は全て、3つの溶液全てにおいて、膜接着を維持した(SF)。したがって、エベクリル4396を添加すると、類似の比較組成物1.1、1.2、及び1.4と比較して、それぞれpH12.5溶液に浸漬後の膜接着を改善した。しかしながら、エベクリル4396を添加すると、ショアD硬度は低下した。
【0083】
pH1.5及びpH8の両方に浸漬後、発明組成物1.5(ポリブチルアクリレートオリゴマーを含有する)は、基材破損(SF)を有した。これは、類似の比較組成物1.6(エベクリル4396を含まない)のAF膜接着に対する改善である。発明組成物1.4(ポリブタンジエンジメタシレートオリゴマーを含有する)は、類似の比較組成物1.5(エベクリル4396を含まない)と比較して、非常に類似した接着破損モードを有していた。
【0084】
発明実施例3-異なるイソシアネート官能化接着促進剤を含む硬化性組成物
ポリエーテルウレタンアクリレートBR582E8及び異なるイソシアネート官能化接着促進剤を用いた様々な光硬化性配合物を、以下の表10に示すように配合した。比較のために比較組成物1.4(接着促進剤を含まない)を包含した。エベクリル4250及びエベクリル4396は、アクリレート官能性を有するイソシアネート官能化接着促進剤である。エベクリル4250のアクリレート官能性は3.4、イソシアネート官能性は1.4、平均NC含有量は5%である。デスモジュールXP2599及びデスモジュールVPLS2371は、アクリレート官能性がないイソシアネート官能化接着促進剤である。デスモジュールXP2599の平均NCO%は5%であり、デスモジュールVPLS2371の平均NCO%は3.7%である。
【0085】
【0086】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表11に示す。また表11には、各処方中のイソシアネート官能化接着促進剤の量、及びイソシアネート官能化接着促進剤中のNCO%に基づいて計算された、各処方のイソシアネートNCO重量%も報告されている。
【0087】
【0088】
水溶液への浸漬前、全ての処方について膜への接着は基材破損(SF)を示した。3つ全ての溶液に1週間浸漬後、全ての組成物(比較組成物1.4を除く)は、全ての溶液において基材破損(SF)を示した。アクリレート官能性がないイソシアネート官能化接着促進剤(すなわち、デスモジュールXP2599及びデスモジュールVPLS2371)を含む組成物では、ショアD硬度は40未満であった。
【0089】
発明実施例4-イソシアネート官能化ウレタンアクリレートのみを含む硬化性組成物
他のアクリレートオリゴマー又はモノマーを添加せずに、イソシアネート官能化ウレタンアクリレートを配合した。エベクリル4396、エベクリル4250、及びこれら2つの組合せを含む硬化性組成物を以下の表12に示す。
【0090】
【0091】
これらの配合物を硬化し、ショア硬度及び膜への接着について試験した。結果を表13に示す。また表13には、各処方中のイソシアネート官能化接着促進剤の量、及びイソシアネート官能化接着促進剤中のNCO%に基づいて計算された、各処方のイソシアネートNCO重量%も報告されている。
【0092】
【0093】
水溶液への浸漬前、全ての処方について、膜への接着は基材破損(SF)を示した。3つ全ての溶液に1週間浸漬後、全ての組成物は全ての溶液で基材破損(SF)を示した。
【国際調査報告】