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特表2022-549429染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび/または染色された混合繊維織物を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(54)【発明の名称】染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび/または染色された混合繊維織物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 3/87 20060101AFI20221117BHJP
【FI】
D06P3/87 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022518226
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020076006
(87)【国際公開番号】W WO2021053085
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】19198566.2
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ハブラーケン,ガイスブレヒト ヤコブス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ショイアーマン,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レッフラー,アヒム
【テーマコード(参考)】
4H157
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA04
4H157BA08
4H157DA01
4H157DA17
4H157DA24
4H157GA07
4H157GA09
4H157HA01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法に関する。少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)、0.5~20質量%の少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)および0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)を含み、ここで質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対するものである。さらに本発明は、この方法により得られる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程a)~d)
a)80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)と、 0.5~20質量%の、少なくとも以下のモノマー、すなわち
(m1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、
(m2)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物、および
(m3)少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物
の重合により得ることができる少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)と、
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)と、
を含む、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を用意する工程(ここで質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量を基準とする)と、
b)少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)とは異なる少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を用意する工程と、
c)少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を処理して、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を得る工程(ここで混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む)と、
d)混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させて、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を得る工程と、
を含む、
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法。
【請求項2】
少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)がアニオン、カチオン、建染および分散染料から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)がブタン-1,4-ジオールである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)が、コハク酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)が、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が、ポリアミド繊維、綿繊維、羊毛繊維およびビスコース繊維からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ビスコース繊維、綿繊維および羊毛繊維がステープル繊維である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
それぞれ少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)、および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して、工程a)で1~99質量%の少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)が、工程b)で1~99質量%の少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が用意される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<110℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<100℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)において、染料(D1)が少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を染色し、染料(D2)が少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を染色する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
成分(C)が潤滑剤、核生成剤、相溶化剤、難燃剤、補強材、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、無機充填剤および顔料からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程が、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも1回、浴に浸漬することにより行なわれ、当該浴は水および少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法により得られる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法に関する。少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)、0.5~20質量%の少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)および0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)を含み、ここで質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対するものである。さらに本発明は、この方法により得られる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは一般にその主鎖内にエステル官能基-[-CO-O-]-を有するポリマーである。それらは通例ラクトンの開環重合またはヒドロキシカルボン酸またはジオールおよびジカルボン酸/ジカルボン酸誘導体の重縮合により製造される。繊維産業においてポリエステル繊維の形態で使用される芳香族ポリエステルが特に重要である。
【0003】
ポリエステル繊維、これにより作製されるヤーンおよび織物は通例、例えば、直接染料に比べて比較的高価な分散染料で染色される。染色は通常、分散染料が繊維中に拡散して行く排気プロセス(exhaust process)またはサーモゾルプロセスによって行なわれる。排気プロセスにおいては、ポリエステル繊維(またはそれから作製されたヤーンおよび織物)を、分散染料を含み、通常130℃以上の温度を有する浴と接触させる。サーモゾルプロセスでは、ポリエステル繊維(またはそれから作製されたヤーンおよび織物)は通常、分散染料を含む分散液に含浸させる。含浸後、ポリエステル繊維(またはそれから作製されたヤーンおよび織物)は100℃の温度でインタードライされ(inter-dried)、次いで180~200℃の温度の熱風による熱処理に30~60秒間付される。
【0004】
しかしながら、ポリエステル繊維(またはそれから作製されたヤーンおよび織物)が混合繊維(または混合繊維ヤーンもしくは混合繊維織物)の形態である場合、すなわちポリエステル繊維とは異なるさらなる繊維も含むことを意味するが、高圧および130℃を超える高温が主要な問題となる。その理由は、さらなる繊維はかかる高い圧力および温度で損なわれる可能性があるからである。例えば、130℃の温度で、羊毛繊維およびアクリル繊維は熱分解する。したがって、繊維の破壊を回避するために、異なる繊維は通例少なくとも2つの別々の工程で染色し、その後初めて混合し、さらに加工処理して、混合繊維ヤーンまたは混合繊維織物にすることができる。
【0005】
また、すべての繊維を分散染料で染色することも可能ではない。例えば羊毛繊維、綿繊維またはビスコース繊維は直接染料でのみ染色可能である。したがって、ポリエステル繊維とさらなる繊維の両方を染色するのであれば、異なる繊維は少なくとも2つの別々の工程で染色されるか、またはすでに混合された繊維(または混合繊維ヤーンもしくは混合繊維織物)が少なくとも2つの異なる浴で染色される。これは、ポリエステル繊維をさらなる繊維の色と異なる色に染色する場合も同じである。
【0006】
結果として、混合繊維、混合繊維ヤーンおよび混合繊維織物の染色プロセスは非常にエネルギーと時間がかかり、その結果として極めてコスト集約的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、良好な機械的性質および高い耐光性および洗濯堅牢度を示す染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび染色された混合繊維織物を製造するための改良された安価な方法に対するニーズが存在する。
【0008】
したがって、好ましくは130℃未満の温度で実施することができる、染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび染色された混合繊維織物を製造するための改良された方法を提供することが本発明の目的である。こうして得られる染色された混合繊維、ヤーンおよび織物は良好な機械的な性質ならびに高い耐光性および洗濯堅牢度を示すはずである。本発明の方法、および本発明の方法により得られる染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび染色された混合繊維織物は、従来技術に記載されている方法とこれにより得ることができる染色された混合繊維、染色された混合繊維ヤーンおよび染色された混合繊維織物の不利益をあるとしても低下した程度でのみ有することになる。本発明の方法は簡単であり、失敗の可能性が最小であり、安価に実行することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の工程a)~d)
a)80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)と、 0.5~20質量%の、少なくとも以下のモノマー、すなわち
(m1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、
(m2)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物、および
(m3)少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物
の重合により得ることができる少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)と、
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)と、
を含む、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を用意する工程(ここで質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量を基準とする)と、
b)少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)とは異なる少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を用意する工程と、
c)少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を処理して、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を得る工程(ここで混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む)と、
d)混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させて、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を得る工程と、
を含む、
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法、によって達成される。
【0010】
驚くべきことに、本発明の方法により、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)を温度T<130℃、好ましくは温度T<110℃、より好ましくは温度T<100℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に1工程で染色することができることが判明した。
【0011】
本発明の方法は、例えば少なくとも1種の羊毛または少なくとも1種のアクリル繊維をさらなる繊維(FF)として含む混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)を、それらを損なうことなく染色することを可能にする。本発明の方法はまた、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の色と異なる色に同時に1つの工程のみを使用することによって染色することも可能にする。
【0012】
要約すると、本発明の方法によって、エネルギーおよび時間の消費の低減により運転コストおよび環境負荷が低下する。
【0013】
驚くべきことに、本発明の方法により得られる染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および染色された混合繊維織物(D-MT)も高い耐光性および洗濯堅牢度を示す。さらに、本発明の方法は混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)に対して優しい。得られる染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および染色された混合繊維織物(D-MT)は染色前と同程度にしなやかで滑らかである。
【0014】
さらに、本発明の方法により得られる染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および染色された混合繊維織物(D-MT)は高い伸びおよび高い弾性係数のような良好な機械的性質を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に記載する。
【0016】
工程a)
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法の工程a)においては、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を用意する。
【0017】
用語「少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)」、「ポリエステル繊維(PF)」および「ポリエステル繊維」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。また、本発明との関連で、用語「少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)」は正確に1種のポリエステル繊維(PF)および2種以上のポリエステル繊維(PF)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、2種以上のポリエステル繊維(PF)の混合物が本発明の方法で使用される。
【0018】
1つの実施形態において、工程a)では、各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、最も好ましくは少なくとも10質量%、殊に好ましくは少なくとも20質量%の少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)が用意される。
【0019】
さらなる実施形態において、工程a)では、各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して最大で99質量%、より好ましくは最大で95質量%、最も好ましくは最大で90質量%、殊に好ましくは最大で80質量%の少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を用意する。
【0020】
好ましくは、工程a)において、各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して1~99質量%、より好ましくは5~95質量%、最も好ましくは10~90質量%、殊に好ましくは20~80質量%の少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を用意する。
【0021】
ポリエステル繊維(PF)
少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は、
80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)、
0.5~20質量%の、少なくとも以下のモノマー:
(m1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、
(m2)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物、および
(m3)少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物
の重合により得ることができる少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)、ならびに
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)
を含み、
ここで、質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対し、好ましくは少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の総質量に対するものである。
【0022】
成分(A)
成分(A)は少なくとも1種のテレフタレートポリエステルである。
【0023】
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)の量は一般に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対して、好ましくは少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の総質量に対して80~99.5質量%の範囲、好ましくは85~95質量%の範囲である。
【0024】
用語「少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)」、「テレフタレートポリエステル(A)」、「テレフタレートポリエステル」および「成分(A)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。また、本発明との関連で、用語「少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)」は正確に1種のテレフタレートポリエステル(A)および2種以上のテレフタレートポリエステル(A)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、正確に1種のテレフタレートポリエステル(A)が本発明の方法で使用される。
【0025】
テレフタレートポリエステル(A)は、当業者に公知のあらゆる方法によって製造することができる。好ましい実施形態において、テレフタレートポリエステル(A)はジオール、テレフタル酸化合物および任意にイソフタル酸化合物の重縮合によって製造される。テレフタレートポリエステル(A)および脂肪族-芳香族ポリエステル(B)は異なる化合物である。テレフタレートポリエステル(A)の製造には一般に、脂肪族-芳香族ポリエステル(B)の製造と比較して、より低い量の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物が使用される。好ましい実施形態においてテレフタレートポリエステル(A)の製造では脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物を使用しない。
【0026】
好ましい実施形態において少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)は少なくとも次のモノマー:
(n1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、および
(n2)少なくとも1種のテレフタル酸(terephthalate acid)化合物
の重合によって得ることができる。
【0027】
さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)は次のモノマー:
(n1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、
(n2)少なくとも1種のテレフタル酸化合物、および
(n3)任意に少なくとも1種のイソフタル酸化合物
の重合によって得ることができる。
【0028】
成分(n1)は少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオールである。
【0029】
用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(n1)」、「脂肪族1,ω-ジオール(n1)」、「脂肪族1,ω-ジオール」および「成分(n1)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(n1)」は正確に1種の脂肪族1,ω-ジオール(n1)および2種以上の脂肪族1,ω-ジオール(n1)の混合物であると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では正確に1種の脂肪族1,ω-ジオール(n1)が使用される。
【0030】
脂肪族1,ω-ジオール(n1)は線状、分岐または環状であることができる。さらに、脂肪族1,ω-ジオール(n1)は単結合で連結された飽和(アルカン)、または不飽和で二重結合(アルケン)もしくは三重結合(アルキン)を有することができる。さらに脂肪族1,ω-ジオール(n1)は炭素骨格の1以上の炭素原子を置換する酸素またはイオウのようなヘテロ原子を含有することができる。
【0031】
本発明との関連で、脂肪族1,ω-ジオール(n1)は好ましくは2~12個、好ましくは2~6個、より好ましくは2~4個の炭素原子を有する脂肪族1,ω-ジオールである。
【0032】
脂肪族1,ω-ジオール(n1)の例はエチレングリコール(エタン-1,2-ジオール)、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-2-プロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-イソブチルプロパン-1,3-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールまたは2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジオールである。
【0033】
特に好ましい脂肪族1,ω-ジオール(n1)はエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオールまたはブタン-1,4-ジオール、最も好ましくはエチレングリコールである。好ましくはテレフタレートポリエステル(A)の製造に使用される成分(n1)は少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%の、エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールからなる群から選択されるジオールならびに0~5質量%、好ましくは0~2質量%の、環状脂肪族ジオールおよびジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種のさらなるジオールからなる。
【0034】
成分(n2)は少なくとも1種のテレフタル酸化合物である。
【0035】
用語「少なくとも1種のテレフタル(terephtalic)酸化合物(n2)」、「テレフタル酸化合物(n2)」、「テレフタル酸化合物」および「成分(n2)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種のテレフタル酸化合物(n2)」は正確に1種のテレフタル酸化合物(n2)および2種以上のテレフタル酸化合物(n2)の混合物であると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種のテレフタル酸化合物(n2)が使用される。任意のイソフタル(isophtalic)酸化合物(n3)についてもそれぞれ同様である。
【0036】
本発明との関連で、テレフタル酸化合物(n2)はテレフタル酸自体およびテレフタル酸エステルのようなテレフタル酸の誘導体を意味すると理解される。ここで有用なテレフタル酸エステルには、テレフタル酸のジ-C-C-アルキルエステル、例えばテレフタル酸のジメチル、ジエチル、ジ-n-プロピル、ジイソプロピル、ジ-n-ブチル、ジイソブチル、ジ-t-ブチル、ジ-n-ペンチル、ジイソペンチルまたはジ-n-ヘキシルエステルがある。任意のイソフタル酸化合物(n3)についてもそれぞれ同様である。
【0037】
テレフタル酸またはその誘導体は単独で、またはその2種以上の混合物として使用され得る。成分(n2)に関してテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルを使用するのが特に好ましい。
【0038】
任意に使用される成分(n3)に関してイソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、5-スルホイソフタル酸一ナトリウム塩または5-スルホイソフタル酸ジメチル一ナトリウム塩を使用するのが特に好ましい。
【0039】
好ましい実施形態において少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルである。
【0040】
したがって本発明は、少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルである方法も提供する。
【0041】
本発明との関連でPETは、好ましい実施形態において、上で定義されたテレフタル酸化合物(n2)およびエチレングリコール(n1)に由来する繰返し単位を少なくとも95モル%含有するポリエステルを意味すると理解され、ここでポリエステルは任意にポリエステルに含有される繰返し単位の総モル数に対して0~5モル%のさらなる繰返し単位を含有していてもよい。PETに含有されるさらなる繰返し単位は上で定義された成分(n3)およびエチレングリコールとは異なる上述の成分(n1)から誘導され得る。
【0042】
本発明との関連でPTTは、好ましい実施形態において、上で定義されたテレフタル酸化合物(n2)およびプロパン-1,3-ジオール(n1)に由来する繰返し単位を少なくとも65モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、最も好ましくは少なくとも95モル%含有するポリエステルを意味すると理解され、ここでポリエステルは任意にポリエステルに含有される繰返し単位の総モル数に対して0~35モル%、好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%、最も好ましくは0~5モル%のさらなる繰返し単位を含有していてもよい。PTTに含有されるさらなる繰返し単位は上で定義された成分(n3)およびプロパン-1,3-ジオールとは異なる上述の成分(n1)から誘導され得る。
【0043】
本発明との関連でPBTは、好ましい実施形態において、上で定義されたテレフタル酸化合物(n2)およびブタン-1,4-ジオール(n1)に由来する繰返し単位を少なくとも65モル%、好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、最も好ましくは少なくとも95モル%含有するポリエステルを意味すると理解され、ここでポリエステルは任意にポリエステルに含有される繰返し単位の総モル数に対して0~35モル%、好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%、最も好ましくは0~5モル%のさらなる繰返し単位を含有していてもよい。PBTに含有されるさらなる繰返し単位は上で定義された成分(n3)およびブタン-1,4-ジオールとは異なる上述の成分(n1)から誘導され得る。
【0044】
適切なポリエチレンテレフタレート(PET)は例えば製造業者Indorama venturesから商品名RAMAPETとして入手可能である。さらに、例えばプラスチックボトル(ボトルグレードPET)のリサイクル由来または、例えば使用済繊維および脱工業化繊維くず由来の再生利用ポリエチレンテレフタレート(PET)が適している。
【0045】
適切なポリトリメチレンテレフタレート(PTT)は例えば製造業者DuPontから商品名Soronaとして入手可能である。さらに、例えば使用済繊維および脱工業化繊維くず由来の再生利用ポリトリメチレン(poltrimethylene)テレフタレート(PTT)が適している。
【0046】
適切なポリブチレンテレフタレート(PBT)は例えば製造業者BASF SEから商品名Ultradur(登録商標)B 2550として入手可能である。さらに、例えば脱工業化繊維由来の再生利用ポリブチレンテレフタレート(PBT)が適している。
【0047】
本発明に従ってテレフタレートポリエステル(A)として殊に好ましいポリエチレンテレフタレート(PET)は一般に示差動的熱量測定(示差走査熱量測定;DSC)により10℃/minの加熱および冷却速度で決定して220~280℃の範囲、好ましくは230~270℃の範囲の溶融温度(T)を有する。
【0048】
本発明に従ってテレフタレートポリエステル(A)として殊に好ましいポリトリメチレンテレフタレート(PTT)は一般に示差動的熱量測定(示差走査熱量測定;DSC)により10℃/minの加熱および冷却速度で決定して205~255℃の範囲、好ましくは215~250℃の範囲の溶融温度(T)を有する。
【0049】
本発明に従ってテレフタレートポリエステル(A)として好ましいポリブチレンテレフタレート(PBT)は一般に示差動的熱量測定(示差走査熱量測定;DSC)により10℃/minの加熱および冷却速度で決定して180~250℃の範囲、好ましくは210~240℃の範囲の溶融温度(T)を有する。
【0050】
好ましくはテレフタレートポリエステル(A)はポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリトリメチレンテレフタレート(PTT)から選択されるポリエステルである。特に好ましいテレフタレートポリエステル(A)はポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0051】
本発明に従って使用される少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)の製造に関して、典型的な反応条件および触媒は原則として当業者に公知である。
【0052】
成分(B)
成分(B)は少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステルである。
【0053】
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)の量は一般に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対して、好ましくは少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の総質量に対して0.5~20質量%の範囲、好ましくは5~15質量%の範囲である。
【0054】
用語「少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)」、「脂肪族-芳香族ポリエステル(B)」、「脂肪族-芳香族ポリエステル」および「成分(B)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。また、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)」は正確に1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)および2種以上の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)が使用される。
【0055】
少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)は、少なくとも以下のモノマー:
(m1)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール、
(m2)少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物、および
(m3)少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物
の重合により得ることができる。
【0056】
成分(m1)
成分(m1)は少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオールである。
【0057】
用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)」、「脂肪族1,ω-ジオール(m1)」、「脂肪族1,ω-ジオール」および「成分(m1)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)」は正確に1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)および2種以上の脂肪族1,ω-ジオール(m1)の混合物であると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)が使用される。
【0058】
脂肪族1,ω-ジオールは原則として当業者に公知である。
【0059】
脂肪族1,ω-ジオール(m1)の例はエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-ブチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチル-2-イソブチルプロパン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、CAS no. 147853-32-5のC36-ジオールまたは2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジオールである。
【0060】
本発明との関連で、脂肪族1,ω-ジオール(m1)は好ましくは2~12個、好ましくは4~6個の炭素原子を有する脂肪族1,ω-ジオールである。脂肪族1,ω-ジオール(m1)は線状でも分岐でもよい。
【0061】
特に好ましい脂肪族1,ω-ジオール(m1)はエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオールまたはブタン-1,4-ジオール、最も好ましくはブタン-1,4-ジオールである。
【0062】
したがって本発明は少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジオール(m1)がブタン-1,4-ジオールである方法も提供する。
【0063】
成分(m2)
成分(m2)は少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物である。
【0064】
用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)」、「脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)」、「脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物」および「成分(m2)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)」は正確に1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)および2種以上の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)が使用される。
【0065】
脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物は原則として当業者に公知である。
【0066】
本発明との関連で、脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)は脂肪族1,ω-ジカルボン酸自体および1,ω-ジカルボン酸の誘導体、例えば1,ω-ジカルボン酸エステルを意味すると理解される。ここで有用な1,ω-ジカルボン酸エステルには1,ω-ジカルボン酸のジ-C-C-アルキルエステル、例えば1,ω-ジカルボン酸のジメチル、ジエチル、ジ-n-プロピル、ジイソプロピル、ジ-n-ブチル、ジイソブチル、ジ-t-ブチル、ジ-n-ペンチル、ジイソペンチルまたはジ-n-ヘキシルエステルがある。
【0067】
本発明との関連で、脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)は好ましくは2~40個、好ましくは4~17個の炭素原子を有する脂肪族1,ω-ジカルボン酸である。脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)は線状、分岐または環状であり得る。
【0068】
脂肪族1,ω-ジカルボン酸(m2)の例はマロン酸、コハク酸、2-メチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、フマル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、二量体脂肪酸(例えばCognisのEMPOL(登録商標)1061)、シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸またはノルボルネン-2,5-ジカルボン酸である。
【0069】
特に好ましい脂肪族1,ω-ジカルボン酸m2)はコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸またはブラシル酸、最も好ましくはコハク酸、アジピン酸またはセバシン酸である。
【0070】
したがって本発明はまた、少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸化合物(m2)が、コハク酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選択される方法も提供する。
【0071】
脂肪族1,ω-ジカルボン酸(m2)のエステルの例は好ましくは上述の1,ω-ジカルボン酸(m2)のジメチルエステルである。
【0072】
この場合、上述の脂肪族1,ω-ジカルボン酸のエステルは単独で、または脂肪族1,ω-ジカルボン酸の2種以上のエステルの混合物として使用され得る。
【0073】
加えて、少なくとも1種の脂肪族1,ω-ジカルボン酸と脂肪族1,ω-ジカルボン酸の少なくとも1種のエステルとの混合物を使用することも可能である。
【0074】
成分(m3)
成分(m3)は少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物である。
【0075】
用語「少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)」、「芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)」、「芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物」および「成分(m3)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)」は正確に1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)および2種以上の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)が使用される。
【0076】
本発明との関連で芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)は芳香族1,ω-ジカルボン酸自体および芳香族1,ω-ジカルボン酸の誘導体、例えば芳香族1,ω-ジカルボン酸エステルを意味すると理解される。ここで有用な芳香族1,ω-ジカルボン酸のエステルには芳香族1,ω-ジカルボン酸のジ-C-C-アルキルエステル、例えば芳香族1,ω-ジカルボン酸のジメチル、ジエチル、ジ-n-プロピル、ジイソプロピル、ジ-n-ブチル、ジイソブチル、ジ-t-ブチル、ジ-n-ペンチル、ジイソペンチルまたはジ-n-ヘキシルエステルがある。
【0077】
芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)の例はテレフタル酸、フランジカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフトエ酸または1,5-ナフトエ酸である。
【0078】
本発明との関連で、芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)は好ましくは6~12個、好ましくは6~8個の炭素原子、より好ましくは8個の炭素原子を有する芳香族1,ω-ジカルボン酸である。本発明の好ましい実施形態において、芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)はテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルである。
【0079】
したがって本発明はまた、少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸化合物(m3)が、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルである方法も提供する。
【0080】
上述の芳香族1,ω-ジカルボン酸のエステルを成分(m3)として使用することも可能であることは明らかになる。この場合、上述の芳香族1,ω-ジカルボン酸のエステルを単独で、または芳香族1,ω-ジカルボン酸の2種以上のエステルの混合物として使用することが可能である。
【0081】
加えて、少なくとも1種の芳香族1,ω-ジカルボン酸と芳香族1,ω-ジカルボン酸の少なくとも1種のエステルとの混合物を使用することも可能である。
【0082】
少なくともモノマーm((m1)、(m2)、(m3))の重合で脂肪族-芳香族ポリエステル(B)を得るために、少なくとも1種の鎖延長剤(CE)が任意に使用される。
【0083】
成分(CE)
用語「少なくとも1種の鎖延長剤(CE)」、「鎖延長剤(CE)」、「鎖延長剤」および「成分(CE)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の鎖延長剤(CE)」は正確に1種の鎖延長剤(CE)および2種以上の鎖延長剤(CE)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、本発明の方法では、正確に1種の鎖延長剤(CE)が使用される。
【0084】
少なくとも1種の鎖延長剤(CE)は好ましくはエステル形成が可能な少なくとも3つの基を含む化合物(CE1)および少なくとも2つのイソシアネート基を含む化合物(CE2)からなる群から選択される。
【0085】
化合物(CE1)は好ましくはエステル結合を形成することができる3~10個の官能基を含む。特に好ましい化合物(CE1)は分子内にこの種の官能基を3~6個、殊に3~6個のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を有する。
【0086】
化合物(CE1)の例は酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルトリオール、グリセロール、トリメシン酸、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物またはヒドロキシイソフタル酸である。
【0087】
一般に、化合物(CE1)は成分(m2)および(m3)のモル量の合計に対して0.01~15モル%、好ましくは0.05~10モル%、より好ましくは0.1~4モル%の量で使用される。
【0088】
化合物(CE2)は好ましくはジイソシアネートまたは異なるジイソシアネートの混合物を含む。芳香族または脂肪族のジイソシアネートを使用することが可能である。しかしより高い官能性のイソシアネートを使用することも可能である。
【0089】
本発明との関連で、「芳香族ジイソシアネート」は、特に、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、ジフェニル-メタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートを意味すると理解される。
【0090】
本発明との関連で、好ましい芳香族ジイソシアネートはジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートであり、これらのジフェニルメタンジイソシアネートを混合物として使用するのが特に好ましい。
【0091】
好ましくは、化合物(CE2)は化合物(CE2)の総質量に対して5質量%までのウレチオン(urethione)基を含む。これらは、例えばイソシアネート基をキャッピングする役目をする。
【0092】
化合物(CE2)はまた三環式の芳香族ジイソシアネートを含んでもよい。三環式の芳香族イソシアネートの一例はトリ(4-イソシアノフェニル)メタンである。多環式の芳香族ジイソシアネートは、例えば、単または二環式の芳香族ジイソシアネートの製造の際に得られる。
【0093】
本発明との関連で「脂肪族ジイソシアネート」は、特に、2~20個の炭素原子、好ましくは3~12個の炭素原子を有する線状または分岐のアルキレンジイソシアネートまたはシクロアルキレンジイソシアネート、例えばヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートまたはメチレンビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)を意味すると理解される。特に好ましい脂肪族ジイソシアネートはヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートである。
【0094】
しかしn-ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく脂肪族ジイソシアネート、例えばn-ヘキサメチレンジイソシアネートの環状三量体、五量体またはより高級のオリゴマーを使用することも可能である。
【0095】
化合物(CE2)を成分m1)、m2)およびm3)のモル量の合計に対して0.01~5モル%の量、好ましくは0.05~4モル%の量、より好ましくは0.1~4モル%の量で使用するのが好ましい。
【0096】
本発明に従って使用される少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)の製造に関して、典型的な反応条件および触媒は原則として当業者に公知である。
【0097】
少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)は通例一般にガラス転移温度Tを有する。少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)のガラス転移温度Tは通例DSCで決定して-50~0℃の範囲、好ましくは-45~-10℃の範囲、殊に好ましくは-40~-20℃の範囲である。
【0098】
少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)の質量平均分子量(Mw)は通例ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))によって決定して50000~300000g/molの範囲、好ましくは50000~150000g/molの範囲である。使用した溶媒は狭い分布のポリメチルメタクリレート(PMMA)標準に対する1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールであった。
【0099】
少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)は一般に動的示差熱量測定(示差走査熱量測定;DSC)により決定して90~150℃の範囲、好ましくは100~140℃の範囲の溶融温度(T)を有する。
【0100】
成分(C)
成分(C)は少なくとも1種の添加剤である。
【0101】
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる少なくとも1種の添加剤(C)の量は一般に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)に含まれる成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量に対して、好ましくは少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の総質量に対して0~5質量%の範囲、好ましくは0~1.5質量%の範囲である。
【0102】
用語「少なくとも1種の添加剤(C)」、「添加剤(C)」、「添加剤」および「成分(C)」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。加えて、本発明との関連で、用語「少なくとも1種の添加剤(C)」は正確に1種の添加剤(C)および2種以上の添加剤(C)の混合物を意味すると理解される。
【0103】
適切な添加剤(C)は当業者に公知である。
【0104】
添加剤(C)の例は潤滑剤、核生成剤、相溶化剤、難燃剤、強化材、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、無機充填剤および顔料である。
【0105】
したがって本発明はまた、成分(C)が潤滑剤、核生成剤、相溶化剤、難燃剤、強化材、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、無機充填剤および顔料からなる群から選択される方法も提供する。
【0106】
本発明との関連で、潤滑剤、核生成剤および/または相溶化剤を使用するのが好ましい。
【0107】
有用な潤滑剤または離型剤は殊に炭化水素、脂肪アルコール、高級カルボン酸、高級カルボン酸の金属塩、例えばステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸亜鉛、脂肪酸アミド、例えばエルカ酸アミド、およびワックスタイプ、例えばパラフィンワックス、蜜ろうまたはモンタンワックスであることが見出された。好ましい潤滑剤はエルカ酸アミドおよび/またはワックスタイプ、より好ましくはこれらの潤滑剤の組合せである。好ましいワックスタイプは蜜ろうおよびエステルワックス、殊にモノステアリン酸グリセロールまたはジメチルシロキサンもしくはポリジメチルシロキサン、例えばWagaのBelzilおよびDM(登録商標)である。鎖延長に先立つ潤滑剤の添加のおかげで、潤滑剤を部分的にポリマー鎖に結合することが可能である。このようにして、完成したポリマー化合物からの潤滑剤の早過ぎる滲出を効果的に防ぐことが可能である。
【0108】
有用な核生成剤は一般にタルク、チョーク、雲母、酸化ケイ素または硫酸バリウムのような無機化合物を含む。本発明の染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)の製造において、特に芳香族ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートおよび殊にポリブチレンテレフタレートが有利であることが見出された。
【0109】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は、
(i)80~99.5質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)、
0.5~20質量%の少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)、および
0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)
を含む紡糸可能な組成物(sC)を用意する工程であり、
ここで、質量%は各々の場合に成分(A)、(B)および任意に(C)の総質量、好ましくは紡糸可能な組成物(sC)の総質量に対するものである、工程と、
(ii)紡糸可能な組成物(sC)を少なくとも1個の紡糸口金に通して押し出して少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を得る工程と
を含む方法により製造される。
【0110】
工程(i)
工程(i)において紡糸可能な組成物(sC)が用意される。
【0111】
好ましい実施形態において、本発明に従う少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の製造方法は、少なくとも1個の混合セグメントおよび少なくとも1個の搬送セグメントを含む押出機で行なわれる。混合セグメントは一般に少なくとも1個の混合エレメントを含み、搬送セグメントは一般に少なくとも1個の搬送エレメントを含む。加えて、本発明の方法で好ましく使用される押出機は少なくとも1個の紡糸口金を含む。
【0112】
適切な紡糸口金、搬送エレメントおよび混合エレメントは当業者に公知である。スクリューの長さおよびタイプ、押出機内の温度および滞留時間によって均一な混合を達成することができるので単軸押出機、二軸押出機静的ミキサーまたはメルトポンプを使用するのが好ましい。押出機は、少なくとも1個の混合セグメント、少なくとも1個の搬送セグメントおよび少なくとも1個の紡糸口金ならびに、バックアップゾーンおよびベントゾーンを有し得る。本発明の方法で好ましく使用される押出機はしたがって少なくとも1個の混合セグメント、続いて少なくとも1個の搬送セグメントを含み、少なくとも1個の搬送セグメントに続いて少なくとも1個の紡糸口金を含む。
【0113】
工程(i)においては紡糸可能な組成物(sC)が一般に押出機で用意される。1つの実施形態において用意ができた混合された紡糸可能な組成物(sC)が押出機に供給される。したがって、成分(A)、(B)および任意に(C)は外部の混合装置で混合して紡糸可能な組成物(sC)を得ることができ、これはその後押出機に供給されることができる。
【0114】
好ましい実施形態において、工程(i)は押出機で、好ましくは押出機の少なくとも1個の混合セグメントで行なわれる。言い換えると紡糸可能な組成物(sC)の製造プロセスは押出機で、好ましくは押出機の少なくとも1個の混合セグメントで行なわれる。
【0115】
好ましくは少なくとも1個の混合セグメントにおいて、成分(A)、(B)および任意に(C)を次いで混合して紡糸可能な組成物(sC)を得る。紡糸可能な組成物(sC)は、好ましい実施形態において、少なくとも1個の混合セグメントから少なくとも1個の搬送セグメント(これについては、以下の工程(ii)も参照のこと)へ通過する。
【0116】
1つの実施形態において工程(i)では、少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)、少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)および任意に少なくとも1種の添加剤(C)を、好ましくは対応する計量装置を用いて、例えば顆粒状またはすでに溶融した形態で計量して押出機に入れる。成分(A)、(B)および任意に(C)は一緒に計量して押出機に入れることができ、または成分(A)を最初に計量して押出機に入れることができ、次いで成分(B)および任意に成分(C)を計量することができる。
【0117】
押出機の混合セグメントにおいて、成分(A)、(B)および任意に(C)は好ましくは、任意にメルトが得られるまで加熱することにより、互いに混合される。工程(i)の温度は当業者により選ばれ、成分(A)、(B)および任意に(C)の種類により左右される。
【0118】
少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)および少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)は一方では混合および搬送が可能であるほど充分な程度に柔らかくなるべきである。他方、流動し過ぎるようになってはならない。そうでないと、充分な剪断エネルギーを導入することが可能でなくなってしまうし、状況によっては熱劣化の危険性もある。
【0119】
工程(i)の温度は一般に使用する成分(A)に依存する。好ましくは工程(i)は230~290℃の温度、好ましくは270~280℃の温度で行われる。好ましい実施形態において、工程(i)の温度は混合セグメントを包囲する押出機の壁で測定される。
【0120】
工程(ii)
工程(ii)において、工程(i)で得られた、好ましくはメルトの形態の紡糸可能な組成物(cS)を少なくとも1個の紡糸口金に通して押し出して少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を得る。
【0121】
好ましい実施形態において、工程(i)で得られた紡糸可能な組成物(cS)は押出機の少なくとも1個の混合セグメントから押出機の少なくとも1個の搬送セグメントに通過する。少なくとも1個の搬送セグメントから、紡糸可能な組成物(cS)は次いで引き続いて好ましくは少なくとも1個の紡糸口金に通過し、そこを通って押し出される。好ましくは、得られた紡糸可能な組成物(cS)を複数の紡糸口金に通して押し出して少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を得る。
【0122】
好ましくは、工程(ii)は工程(i)と同じ押出機で行なわれる。
【0123】
当業者は原則として、少なくとも1個の紡糸口金を通す押出がどのように行なわれるか知っている。少なくとも1個の紡糸口金は好ましくは穴あきダイ、例えば通常の篩いを備えた24穴ダイである。紡糸口金は繊維の種類ならびに目標とする単一フィラメント繊維直径および形状に応じて変化し得る。
【0124】
繊維は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を部分的に配向する速さで少なくとも1個の紡糸口金から引き出すことができる。任意に、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は熱が加えられるとき追加の引き出し工程で少なくとも1個の紡糸口金から完全に引き出すことができる。少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は、例えばスプール上に集めることができる。1つの好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)は切断前にテキスチャー化する(texturize)ことができる。
【0125】
本発明に従って少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)の製造方法に関する上述の好ましい実施形態および優先度は好ましくは成分(A)~(C)に関する上述の記載および優先度と組み合わせられる。
【0126】
工程b)
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法の工程b)において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)とは異なる少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が用意される。
【0127】
用語「少なくとも1種のさらなる繊維(FF)」、「さらなる繊維(FF)」および「さらなる繊維」は本発明との関連で同意語として使用され、同じ意味を有する。また、本発明との関連で、用語「少なくとも1種のさらなる繊維(FF)」は正確に1種のさらなる繊維(FF)および2種以上のさらなる繊維(FF)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、2種以上のさらなる繊維(FF)の混合物が本発明の方法で使用される。
【0128】
1つの実施形態において、工程b)では各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、最も好ましくは少なくとも10質量%、殊に好ましくは少なくとも20質量%の少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を用意する。
【0129】
さらなる実施形態において、工程b)では各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して最大で99質量%、より好ましくは最大で95質量%、最も好ましくは最大で90質量%、殊に好ましくは最大で80質量%の少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を用意する。
【0130】
好ましくは、工程b)で各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対して1~99質量%、より好ましくは5~95質量%、最も好ましくは10~90質量%、殊に好ましくは20~80質量%の少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が用意される。
【0131】
したがって本発明はまた、工程a)において1~99質量%の少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)が、工程b)において1~99質量%の少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が用意される方法も提供し、質量%は各々の場合に少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)の総質量に対する。
【0132】
さらなる繊維(FF)
少なくとも1種のさらなる繊維(FF)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)と異なり、天然繊維でも合成繊維でもよい。
【0133】
適切な天然繊維の例は絹、羊毛および綿繊維であり、適切な合成繊維の例はポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、ビスコース繊維および純粋なポリエステル繊維である。
【0134】
本発明との関連で、用語「純粋なポリエステル繊維」は混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)に含まれる少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)とは異なるポリエステル繊維を意味すると理解される。「純粋なポリエステル繊維」は少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)および任意に少なくとも1種の添加剤(C)を含み、少なくとも1種の脂肪族-芳香族ポリエステル(B)を含まない。好ましい実施形態において、「純粋なポリエステル繊維」は純粋なポリエステル繊維の総質量に対して95~100質量%の少なくとも1種のテレフタレートポリエステル(A)および0~5質量%の少なくとも1種の添加剤(C)を含有する。
【0135】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなる繊維(FF)はポリアミド繊維、綿繊維、羊毛繊維およびビスコース繊維からなる群から選択される。
【0136】
したがって本発明はまた少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が、ポリアミド繊維、綿繊維、羊毛繊維およびビスコース繊維からなる群から選択される方法も提供する。
【0137】
綿繊維および羊毛繊維のような天然繊維は通例ステープル繊維である。
【0138】
本発明との関連で、用語「ステープル繊維」はある有限長の繊維を意味すると理解される。通例、ステープルは20~80mmの範囲の長さを有する。
【0139】
ポリアミド繊維、アクリル繊維およびポリウレタン繊維のような合成繊維は好ましくはフィラメントである。
【0140】
本発明との関連で、用語「フィラメント」は無限の長さの繊維を意味すると理解される。フィラメントはまた連続繊維ともいわれる。
【0141】
しかしながら、天然繊維がフィラメントであることも可能である。例えば、絹がフィラメントである。逆に、ビスコース繊維のような合成繊維がステープル繊維であることも可能である。この場合、(合成)フィラメントは合成ステープル繊維を得るために有限長の繊維に切断される。
【0142】
本発明の好ましい実施形態において、ビスコース繊維、綿繊維および羊毛繊維がステープル繊維である。
【0143】
したがって本発明はまた、ビスコース繊維、綿繊維および羊毛繊維がステープル繊維である方法も提供する。
【0144】
工程c)
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法の工程c)において、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)が混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を得るために処理され、ここで混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および混合繊維織物(MT)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む。
【0145】
用語「ヤーン」は本発明との関連で1種または複数の繊維から作製された長く細い構造体を意味すると理解される。
【0146】
用語「織物」は本発明との関連で繊維製品の製造チェーンを通じてあらゆる材料、例えばあらゆる種類の織物最終製品、例えばあらゆる種類の衣料、家庭用繊維製品、例えばカーペット、カーテン、家具のカバーもしくはピース、または工業もしくは商業目的の産業織物、または家庭用繊維製品、例えば清掃用の布もしくは布巾を包含する。上記用語は加えて出発材料および半完成品または中間製品、例えばウィーブ(weave)、ループドローンニット(loop-drawn knit)、ループフォームドニット(loop-formed knit)、不織またはフリースも含む。また繊維製品例えばクッションまたはぬいぐるみ用の詰め物および綿くずが本発明により包含される。
【0147】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を製造する方法は原則として当業者に公知である。
【0148】
好ましい実施形態において、混合繊維(MF)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)のステープル繊維をより合わせることにより製作される。より合わせる前に、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および/または少なくとも1種のさらなる繊維(FF)がフィラメントである場合、フィラメントをある有限長の繊維に切断してステープル繊維を得ることは当業者に明らかである。
【0149】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1種のさらなる繊維(FF)も合成繊維である場合、混合繊維(MF)はそれぞれの繊維の製造プロセス中に製作される。この場合、少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)はそれぞれの紡糸口金から出て来るときに溶融状態で混合紡糸される。
【0150】
混合繊維ヤーン(MY)は好ましくは、混合繊維(MF)を引っ張り、ボビン上に集めることにより製作される。
【0151】
混合繊維織物(MT)は例えば織ることにより製作され、ここで少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)および少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を織ってもよいし、混合繊維ヤーン(MY)を織ってもよいし、または少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を含むヤーンおよび少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含むヤーンを織ってもよい。さらに、混合繊維織物(MT)は少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を含む半完成品または中間物品を、少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を含む半完成品または中間物品と組み合わせることにより製作することができる。(混合)繊維および/または(混合)ヤーンから半完成品または中間物品を製造する方法も当業者に公知である。
【0152】
工程d)
染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)を製造する方法の工程d)において、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる。
【0153】
本発明との関連で、用語「同時の接触」および「同時に接触させる」は、混合繊維(MF)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させること、および/または混合繊維ヤーン(MY)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させること、および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させることを意味すると理解される。
【0154】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程は、好ましくは混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を浴に浸漬することによって行なわれる。好ましい実施形態において、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程は、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも1回浴に浸漬することによって行なわれる。
【0155】
本発明との関連で、用語「少なくとも1回」は正確に1回ならびに2回以上を意味すると理解される。
【0156】
浴は好ましくは水ならびに少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)を含む。
【0157】
したがって本発明はまた、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程が、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも1回浴中に浸漬することによって行なわれ、ここで浴は水ならびに少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)を含む、方法も提供する。
【0158】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程は、温度T<130℃、好ましくは温度T<110℃、より好ましくは温度T<100℃で行なわれる。好ましい実施形態において、好ましくは混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)が浸漬される浴は温度T<130℃、好ましくは温度T<110℃、より好ましくは温度T<100℃を有する。
【0159】
したがって本発明はまた、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<110℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる方法を提供する。
【0160】
さらに、本発明はしたがって、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を温度T<100℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる方法も提供する。
【0161】
好ましくは、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程は、1~4.5バールの圧力、より好ましくは1~3バールの圧力、最も好ましくは1~2.8バールの圧力で行なわれる。
【0162】
好ましい実施形態において、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)を少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる工程は、温度T<130℃および2.7バールの圧力で行なわれる。
【0163】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)は少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と10~120分の期間同時に接触され得る。
【0164】
少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)は好ましくは直接、建染および分散染料から選択される。
【0165】
本発明との関連で、用語「直接染料」は、染色プロセス中分子レベルで物理的な力により繊維に引き付けられる有色の極性水溶性化合物を意味すると理解される。直接染料は一般に負または正の電荷をもち、したがってカチオンまたはアニオン染料ともいわれる。直接染料は好ましくは綿、ビスコース、ポリアミドおよび羊毛繊維に適用できる。
【0166】
直接染料の例はアゾ染料、ジオキサジン染料、硫化染料および非アゾ金属錯塩染料である。本発明の方法に適切な直接染料は例えばダイレクトレッド80である。
【0167】
本発明との関連で、用語「建染染料」は、染色プロセス中還元され、水溶性になり、したがって繊維により吸収されることができる有色の水不溶性化合物を意味すると理解される。建染染料は一般に繊維と反応するかまたは酸化により再び水不溶性になる。建染染料は好ましくは綿繊維に適用できる。
【0168】
建染染料の例はアントラキノイド染料および硫化染料のインジゴイド化合物およびロイコ化合物である。本発明の方法に適切な建染染料は例えばインジゴである。
【0169】
本発明との関連で、用語「分散染料」は非常に低い水溶性を有する有色の非極性化合物を意味すると理解される。染色プロセス中分散染料は一般に繊維内に拡散し、そこで固溶体を形成する。分散染料は好ましくはポリエステル繊維に適用できる。
【0170】
分散染料の例はニトロ、アミン、およびヒドロキシル基を有するアゾベンゼンまたはアントラキノン分子である。本発明の方法に適切な分散染料は例えばディスパースブルー139である。
【0171】
したがって本発明はまた、少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)がアニオン、カチオン、建染および分散染料から選択される方法を提供する。
【0172】
好ましくは、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)において、染料(D1)が少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を染色し、染料(D2)が少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を染色する。
【0173】
したがって本発明はまた、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)において、染料(D1)が少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を染色し、染料(D2)が少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を染色する方法も提供する。
【0174】
好ましくは少なくとも1種のポリエステル繊維(PF)を染色する染料(D1)は好ましくは分散染料である。好ましくは少なくとも1種のさらなる繊維(FF)を染色する染料(D2)は好ましくは直接または建染染料である。
【0175】
混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)はまたさらなる成分と同時に接触させることもできる。さらなる成分の例は分散剤およびアフターソーピング剤(aftersoaping agent)である。
【0176】
適切な分散剤は例えば商品名Avolan(登録商標)ISおよびLevegal(登録商標)DLPとして入手可能である。
【0177】
適切なアフターソーピング剤はForyl 197およびCotoblanc LNSである。
【0178】
場合により、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)をさらなる成分と同時に接触させ、混合繊維(MF)をさらなる成分ならびに少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させ、および/または混合繊維ヤーン(MY)をさらなる成分ならびに少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させ、および/または混合繊維織物(MT)をさらなる成分ならびに少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)と同時に接触させる。
【0179】
好ましい実施形態において、さらなる成分もまた、混合繊維(MF)、混合繊維ヤーン(MY)および/または混合繊維織物(MT)が浸漬される浴に含まれる。
【0180】
工程d)において、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)が得られる。
【0181】
したがって本発明はまた、この方法により得られる、染色された混合繊維(D-MF)、染色された混合繊維ヤーン(D-MY)および/または染色された混合繊維織物(D-MT)も提供する。
【0182】
以下実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれに制限されない。
【実施例
【0183】
さらなる繊維(FF)として綿繊維を含む混合繊維織物(MT)
[本発明の実施例E1]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴1に浸漬した。
繊維1
93質量%のポリエチレンテレフタレート(成分(A))および7質量%の脂肪族-芳香族ポリエステル(成分(B))(50質量%のブタン-1,4-ジオール(成分(m1))、26質量%のアジピン酸(成分(m2))および24質量%のテレフタル酸(成分(m3))の重合により得られた)を含むポリエステル繊維(PF)
繊維2
綿繊維(さらなる繊維(FF))
【0184】
繊維1および繊維2の混合繊維織物(MT)は、繊維1の織物および繊維2の織物の総質量に対して50wt%の繊維1の織物および50wt%の繊維2の織物を合わせることにより製作した。
【0185】
染色浴1は水、1wt%のDisperse dye Blue 139(染料(D1)、ポリエステル繊維(PF)を染色する)および1wt%のSirius Red F3B(染料(D2)、直接染料、綿繊維を染色する)を含む、さらに、染色浴1は2g/Lのアフターソーピング剤および0.5g/LのAvolan ISを含む。混合された織物(MT)の浴に対する質量比は1:50であった。
【0186】
混合繊維織物(MT)を、100℃<T<130℃の温度Tに加熱した染色浴1に浸漬し、1時間保ち、100℃に冷却した。次いでNaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を水で3回、すなわち、1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0187】
[本発明の実施例E2]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴1に浸漬した。
繊維1および
繊維2
はE1に記載した通り。繊維1および繊維2の混合繊維織物(MT)もE1に記載した通りにして製作した。染色浴1もE1に記載したものと同じである。混合された織物(MT)の浴に対する質量比は1:50であった。
【0188】
混合繊維織物(MT)をT<100℃の温度Tに加熱した染色浴1に浸漬し、1時間保った。次いでNaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を水で3回、すなわち1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0189】
[本発明の実施例E3]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴2に浸漬した。
繊維1および
繊維2
はE1に記載した通り。繊維1および繊維2の混合繊維織物(MT)もE1に記載した通りにして製作した。
【0190】
染色浴2は水および1wt%のDisperse dye Blue 139(染料(D1))を含み、さらに2g/Lのアフターソーピング剤および0.5g/LのAvolan ISを含む。混合された織物(MT)の浴に対する質量比は1:50であった。
【0191】
混合繊維織物(MT)をT<100℃の温度Tに加熱した染色浴2に浸漬し、1時間保った。その後、1wt%のSirius Red F3B(染料(D2)、直接染料)を染色浴2に加え、染色を20分続けた。次いで、NaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を水で3回、すなわち1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0192】
[比較実施例(C4)]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴1に浸漬した。
繊維2
綿繊維(さらなる繊維(FF))
繊維3
純粋なポリエチレンテレフタレート(PET)繊維
【0193】
繊維2および繊維3の混合繊維織物(MT)は、繊維3の織物および繊維2の織物の総質量に対して50wt%の繊維3の織物および50wt%の繊維2の織物を合わせることにより製作した。
【0194】
染色浴1はE1に記載したのと同じである。混合された織物(MT)の浴に対する質量比は1:50であった。
【0195】
混合繊維織物(MT)を100℃<T<130℃の温度Tに加熱した染色浴1に浸漬し、1時間保ち、100℃に冷却した。次いでNaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を冷たい水で3回、1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0196】
混合繊維織物(MT)を染料と接触させた後、繊維織物を空気乾燥した後、色深度(K/S)を分析した。結果を表1に掲げる。
【0197】
色深度(K/S)はクベルカムンク理論に従って決定した。これらは、特定波長λでの色彩強度をBlancoサンプルと比較して示す。Blancoサンプルは染色浴に浸漬されてないそれぞれの繊維織物である。Disperse dye Blue 139に対する特定波長λは620nmであり、Sirius Red F3Bに対する特定波長λは360nmである。
【0198】
混合繊維織物(MT)は染色浴から取り出した直後に分析した。染色浴から取り出した「直後」とは、混合繊維織物(MT)を水で3回、すなわち1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含有する冷たい水で洗浄したことを意味する。サンプルはその後空気乾燥した。
【0199】
【表1】
【0200】
表1から、殊に本発明の実施例E1およびE2から、本発明の方法により、ポリエステル繊維(PF)およびさらなる繊維(FF)としての綿繊維を含む混合繊維織物(MT)を、温度T<130℃で少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)により1工程で同時に染色することができることが明らかに見ることができる。
【0201】
また、温度T<100℃で綿繊維は100℃<T<130℃(K/S=1.4501)の温度Tより高い染着量(dye uptake)(K/S=1.6453)を示すことを見ることができる。加えて、本発明の実施例E2を本発明の実施例E3と比較することにより、混合繊維織物(MT)を染料(D1)および(D2)と1工程で同時に接触させることによって、混合繊維織物(MT)を最初に染料(D1)と接触させ、続いて染料(D1)および(D2)と接触させるより染着量がより高いことが明白である。
【0202】
比較実施例C4を本発明の実施例E1~E3と比較することにより、純粋なポリエチレンテレフタレート(PET)繊維をポリエステル繊維(PF)の代わりに混合繊維織物(MT)内に使用することによって、殊にポリエチレンテレフタレート(PET)繊維に対してより低い染着量が観察されることを見ることができる。
【0203】
ISO 105 C06 C1Sに従って60℃での洗浄に対する染色堅牢度も試験した。結果を表2に要約する。評価は1~5の目盛りで表され、値が大きければ大きいほど標準試料内の織物の染色の度合いが低い。これから、試験した特定の混合繊維織物(MT)の染色堅牢度に関する推論を引き出すことができる。
【0204】
特定の混合繊維織物(MT)を綿の織物片と未染色の繊維1、2または3の織物片との間に保つ。様々な繊維の染色を目視検査により評価した。青色と赤色の繊維の染色を別々に試験した。
【0205】
【表2】
【0206】
表2から全く明白なように、本発明に従ってより低い温度で染色された繊維製品は130℃で染色された純粋なPETを含む繊維製品と同様な染色堅牢度特性を示す。
【0207】
さらなる繊維(FF)として羊毛繊維を含む混合繊維織物(MT)
[本発明の実施例E5]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴3に浸漬した。
繊維1
93質量%のポリエチレンテレフタレート(成分(A))および
7質量%の脂肪族-芳香族ポリエステル(成分(B))(50質量%のブタン-1,4-ジオール(成分(m1))、26質量%のアジピン酸(成分(m2))および24質量%のテレフタル酸(成分(m3))の重合により得られる)
を含むポリエステル繊維(PF)
繊維4
羊毛繊維(さらなる繊維(FF))
【0208】
繊維1および繊維4の混合繊維織物(MT)は繊維1の織物および繊維4の織物の総質量に対して50wt%の繊維1の織物および50wt%の繊維4の織物を合わせることにより製作した。
【0209】
染色浴3は1wt%のDisperse dye Blue 139 (染料(D1)、ポリエステル繊維(PF)を染色する)、1.55wt%のNylosan Red N-2RBL(染料(D2)、直接染料、羊毛繊維を染色する)、5wt%の硫酸ナトリウム、0.3wt%の付着改善剤(pick up improver)、1wt%のポリアクリルアミド誘導体および0.25wt%のアルコールポリグリコールエーテルを含み、100%までの残部は水である。さらに、染色浴3は0.5g/LのAvolan IS、2g/Lのアフターソーピング剤、0.16g/LのLevegal THE、0.5g/LのNaHPOおよび1g/Lの酢酸ナトリウムを含む。繊維製品対浴の質量比は1:50であった。
【0210】
混合繊維織物(MT)を温度T=90℃に加熱した染色浴3に浸漬し、1時間保った。次いでNaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を冷たい水で3回、1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0211】
[比較実施例C6]
以下のタイプの繊維の混合繊維織物(MT)を染色浴3に浸漬した。
繊維3
純粋なポリエチレンテレフタレート(PET)繊維
繊維4
羊毛繊維(さらなる繊維(FF))
【0212】
繊維3および繊維4の混合繊維織物(MT)は、繊維3の織物および繊維4の織物の総質量に対して50wt%の繊維3の織物および50wt%の繊維4の織物を合わせることにより製作した。繊維製品対浴の質量比は1:50であった。
【0213】
繊維織物(MT)を温度T=90℃に加熱した染色浴3に浸漬し、1時間保った。次いでNaSOを加え、染色を30分続けた。その後、混合繊維織物(MT)を冷たい水で3回、1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で濯いだ。
【0214】
(混合)繊維織物を染料と接触させた後、染色浴から取り出した直後にそれらの色深度(K/S)を分析した。結果を表3に掲げる。
【0215】
染色浴から取り出した「直後」とは、混合繊維織物(MT)を水で3回、すなわち1回は温かい水で、1回は冷たい水で、最後に1mL/Lの酢酸(80%)を含む冷たい水で洗浄したことを意味する。サンプルはその後空気乾燥した。
【0216】
色深度(K/S)は上に記載したようにして決定した。Nylosan Red N-2RBLに対する特定波長λは520nmである。
【0217】
【表3】
【0218】
表2から、本発明の方法により、ポリエステル繊維(PF)およびさらなる繊維(FF)として羊毛繊維を含む繊維織物(MT)が温度T<100℃において少なくとも2種の異なる染料(D1)および(D2)により1工程で同時に染色することができることを明らかに見ることができる。
【国際調査報告】