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特表2022-550151電気自動車におけるカルボン酸エステルを有する潤滑剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電気自動車におけるカルボン酸エステルを有する潤滑剤の使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/32 20060101AFI20221122BHJP
   C10M 105/34 20060101ALI20221122BHJP
   C10M 105/36 20060101ALI20221122BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20221122BHJP
   C10M 105/40 20060101ALI20221122BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20221122BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20221122BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20221122BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20221122BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20221122BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C10M105/32 ZAB
C10M105/34 ZHV
C10M105/36
C10M105/38
C10M105/40
C10N20:00 Z
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N30:10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519708
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2020076476
(87)【国際公開番号】W WO2021063759
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19200459.6
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェラー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ストリットマッター,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ヨッヘン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB35A
4H104BB41A
4H104BH03A
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104EA01A
4H104EA14A
4H104LA02
4H104LA04
4H104LA05
4H104LA06
4H104LA20
(57)【要約】
本発明は、電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用に関する。本発明はさらに、カルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用。
【請求項2】
電気自動車が、回転電気機械、及び回転電気機械を駆動するために使用される電力を貯蔵するように構成された電力貯蔵デバイスを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
潤滑剤が、電気自動車の回転電気機械の内部に存在する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
潤滑剤が、電気自動車の回転電気機械の近距離の外部に存在する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
潤滑剤が、回転電気機械の外部に、回転電気機械と直接接触して、又は最大50cmの距離の範囲内に存在する、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
カルボン酸エステルが、0.1~100000pS/m、1~50000pS/m、1~10000pS/m、10~5000pS/m、10~1000pS/m、10~500pS/m又は30~300pS/mの電気伝導率を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
カルボン酸エステルが、少なくとも0.120、0.125、0.130、0.131、0.132、0.133、0.135、0.137、0.139、0.141、0.143、0.145又は0.147W/mKの熱伝導率を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
カルボン酸エステルが、高圧示差走査熱量測定によって決定される、少なくとも130、150、170、180又は190℃の開始温度の熱酸化安定性を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
カルボン酸エステルが、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、複合エステル又はこれらの混合物である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
カルボン酸エステルが、
(i)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「モノエステル」とも呼ばれる)、又は
(ii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「ジエステル」とも呼ばれる)、又は
(iii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと(「ポリエステル」とも呼ばれる)、又は
(iv)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールを含む混合物(「複合エステル」とも呼ばれる)
を反応させることによって得られる、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
カルボン酸エステルが、
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸、ジグリコール酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び2,6-デカヒドロ-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C12ジカルボン酸と、
- ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、イソ-ペンタノール、イソ-ヘキサノール、イソ-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-プロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-4,4-ジメチルペンタノール、2-エチル-2,4-ジメチルヘキサノール、2-エチル-2-メチル-ヘプタノール、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサノール、2-イソプロピル-ヘプタノール、2-ブチル-1-オクタノール及び2-ペンチル-1-ノナノールからなる群から選択される少なくとも1種の分枝状C5~C14モノアルコールと
を反応させることによって得られるジエステルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸と、
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと
を反応させることによって得られるポリエステルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸、及び
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C10ジカルボン酸、並びに
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる複合エステルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
潤滑剤が、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95重量%のカルボン酸エステルを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のカルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用に関する。本発明はさらに、カルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法に関する。好ましい実施形態と他の好ましい実施形態との組合せは、本発明の範囲内にある。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の潤滑における大きな課題は、摩耗保護、酸化安定性、付着物制御及び腐食防止の要求事項を満たしながら、潤滑剤の寿命全体にわたって潤滑剤の電気伝導率を制御することである。同時に、電気自動車及びハイブリッド自動車においては、電気部品の高い表面温度に曝露されるにもかかわらず、油由来の潤滑特性が維持されなければならない。高い熱伝導率を有する基油が望ましく、高温表面の熱を運び去ることができることになる。同時に、潤滑剤の電気伝導率及び熱伝導率は、潤滑剤の安定性、並びに多くの他の潤滑剤の特性、例えば、低い粘性と均衡しているべきであり、良好なギア保護を達成するべきである。
【0003】
潤滑剤の電気伝導率は、ある特定の範囲内にあるべきである。これが高すぎる場合、電気自動車の電化システムにおけるエネルギー貯蔵デバイス、例えばバッテリの電荷漏れ及びドレインダウンが起こり得る。電気伝導率が低すぎる場合、パーツの静電的負荷上昇(electrostatic uploading)が起こり得る。潤滑剤の基油の伝導率を調整するための様々な潤滑剤添加剤が公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い温度範囲にわたる熱伝導率、摩耗保護、酸化安定性、付着物制御、腐食防止、並びに電気自動車の機械的部品及び電気部品と材料との適合性を組み合わせて、潤滑剤の寿命全体にわたって所望の潤滑剤の電気伝導率を有する自動車用潤滑剤が必要とされている。さらなる目的は、電気伝導率を調整するための添加剤をあまり又はまったく必要としない基油を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用によって達成された。
【0006】
この目的はまた、カルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましくは、カルボン酸エステルは、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、複合エステル又はこれらの混合物である。カルボン酸エステルは、より好ましくは、ジエステル、ポリエステル又は複合エステルである。カルボン酸エステルは、異なるカルボン酸エステル同士の混合物を含んでもよい。
【0008】
カルボン酸エステルは、脂肪族、芳香族、又は脂肪族及び芳香族の混合物であるアルコール及び/又は酸を含んでもよい。一形態では、カルボン酸エステルは、脂肪族アルコール及び脂肪族酸からなる。別の形態では、カルボン酸エステルは、脂肪族アルコール、並びに脂肪族酸及び/又は芳香族酸とからなる。
【0009】
カルボン酸エステルは、飽和、不飽和、又は飽和及び不飽和の混合物であるアルコール及び/又は酸を含んでもよい。一形態では、カルボン酸エステルは、飽和アルコール及び飽和酸を含んでもよい。一形態では、カルボン酸エステルは、飽和脂肪族アルコール及び飽和脂肪族酸を含んでもよい。
【0010】
好適なカルボン酸エステルは、
(i)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「モノエステル」とも呼ばれる)、又は
(ii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「ジエステル」とも呼ばれる)、又は
(iii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと(「ポリエステル」とも呼ばれる)、又は
(iv)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールを含む混合物(「複合エステル」とも呼ばれる)、又は
(v)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと、又は
(vi)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールを含む混合物、又は
(vii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオール、及び少なくとも1種のC1~C20モノアルコールを含む混合物
を反応させることによって得られる。
【0011】
より好ましい実施形態では、カルボン酸エステルは、
(i)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「モノエステル」とも呼ばれる)、又は
(ii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「ジエステル」とも呼ばれる)、又は
(iii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと(「ポリエステル」とも呼ばれる)、又は
(iv)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールを含む混合物(「複合エステル」とも呼ばれる)
を反応させることによって得られる。
【0012】
一形態では、カルボン酸エステルは、
- ペンタン酸、イソ-ペンタン酸、ヘキサン酸、イソ-ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソ-ヘプタン酸、オクタン酸、イソ-オクタン酸、ノナン酸、イソ-ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C20モノカルボン酸と、
- メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、1-オクタノール、3-メチル-1-ブタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、イソ-プロパノール、イソ-ブタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、イソ-ノナノール、イソ-デカノール、イソ-ウンデカノール、イソ-ドデカノール イソ-トリデカノール、イソ-テトラデカノール、イソ-ペンタデカノール、イソ-ヘキサデカノール、イソ-ヘプタデカノール、イソ-オクタデカノール、ネオ-ペンタノール、t-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、3-エチル-3-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-2-ペンタノール、2,3-ジメチル-3-ペンタノール、2,3,4-トリ-メチル-3-ペンタノール、2-メチル-2-ヘキサノール及び3-メチル-3-ヘキサノールからなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C1~C18モノアルコールと
を反応させることによって得られるモノエステルである。
【0013】
別の形態では、モノエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C12~C20モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C6~C16モノアルコールとを反応させることによって得られる。別の形態では、モノエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C14~C18モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C6~C12モノアルコールとを反応させることによって得られる。
【0014】
モノエステルについての例は、オレイン酸2-エチルヘキシル、ヤシ脂肪酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル及び牛脂脂肪酸2-エチルヘキシルである。
【0015】
別の形態では、カルボン酸エステルは、
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸(brassilic acid)、ドデカン二酸(docdecanedioic acid)、ジグリコール酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び2,6-デカヒドロ-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C12ジカルボン酸と、
- ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、イソ-ペンタノール、イソ-ヘキサノール、イソ-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-プロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-4,4-ジメチルペンタノール、2-エチル-2,4-ジメチルヘキサノール、2-エチル-2-メチル-ヘプタノール、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサノール、2-イソ-プロピル-ヘプタノール、2-ブチル-1-オクタノール及び2-ペンチル-1-ノナノールからなる群から選択される少なくとも1種の分枝状C5~C14モノアルコールと
を反応させることによって得られるジエステルである。
【0016】
一形態では、ジエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C4~C8ジカルボン酸と、少なくとも1種の分枝状C6~C16モノアルコールとを反応させることによって得られる。一形態では、ジエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C6~C8ジカルボン酸と、少なくとも1種の分枝状C6~C14モノアルコールとを反応させることによって得られる。ジエステルについての例は、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジイソトリデシル、アジピン酸ジ-(イソプロピルヘプチル)(DPHA)及びアジピン酸ジイソノニル(DNA)である。
【0017】
アジピン酸、フタル酸、ピメリン酸(pimilic acid)、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸、並びにこれらの混合物からなるリストから選択されるジカルボン酸と、次の式(I)
【0018】
【化1】
[式中、q、r及びsは、q+r=4~9、s=0~5、q=1~8及びr=1~6である]
によって定義される分枝状脂肪族アルコールR-OHとから形成されるジカルボン酸エステル成分も、ジエステルとして好適である。
【0019】
好ましくは、式(I)による分枝状脂肪族アルコールR-OHは、第一級C7~C12アルコールであってもよく、ここでアルキル側鎖はC1~C6アルキル(s=0~5)である。アルキル側鎖は、直鎖又は分枝状アルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基がアルキル側鎖として好ましい。
【0020】
したがって、主な残基Rにおけるアルキル鎖はC6~C11である。したがって、式(I)のR-OHにおける残基Rとしては、メチルヘキシル、エチルヘキシル、プロピルヘキシル、ブチルヘキシル、ペンチルヘキシル及びヘキシルヘキシル、メチルヘプチル、エチルヘプチル、プロピルヘプチル、ブチルヘプチル及びペンチルヘプチル、メチルオクチル、エチルオクチル、プロピルオクチル及びブチルオクチル、メチルノニル、エチルノニル及びプロピルノニル、メチルデシル及びエチルデシル、並びにメチルウンデシルが挙げられる。上のリストのとりわけ好ましいアルコールR-OHとしては、残基Rがエチルヘキシル、メチルオクチル、プロピルヘプチル及びブチルオクチルであるものが挙げられる。最も好ましくは、上の潤滑剤組成物中のR-OHにおける残基Rは、次の通りのq、r及びsによって定義されるエチルヘキシル、メチルオクチル、プロピルヘプチル、ブチルオクチル及びこれらの混合物から選択される。
【0021】
【表1】
【0022】
q+r=4~9、r=1及びq=3~8を有するアルコール、すなわち、直鎖(こちらが好ましい)又は分枝状アルキル側鎖C1~C6アルキル(s=0~5)が第一級アルコールの2位に位置する、第一級脂肪族C7~C12アルコールがとりわけ好ましい。このようなアルコールは、典型的には、ゲルベアルコールと称される。好ましい一実施形態では、ゲルベアルコールは、少なくとも部分的には、2-ヘキシルデカノール、2-ヘキシルドデカノール、2-オクチルデカノール及び/又は2-オクチルドデカノールから誘導される。
【0023】
ジカルボン酸エステルは、好ましくは、ジカルボン酸と脂肪族アルコールとの反応から誘導される。好ましいジカルボン酸は、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸、並びにこれらの混合物である。ジカルボン酸エステル成分は、好ましくはこのようなジカルボン酸から、中サイズ脂肪族アルコールとのエステル化反応によって形成され、中サイズ脂肪族アルコールは、直鎖又は分枝状の、好ましくはC5~C20アルコール、より好ましくはC9~C15脂肪族アルコール、最も好ましくはノナノール、イソデカノール、イソトリデカノール及び2-プロピルヘプタノールであり得る。
【0024】
別の形態では、カルボン酸エステルは、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸と、
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと
を反応させることによって得られるポリエステルである。
【0025】
別の形態では、ポリエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C8~C18モノカルボン酸と、少なくとも1種の、3~6個のヒドロキシル基を有するC3~C16ポリオールとを反応させることによって得られる。別の形態では、ポリエステルは、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C14~C18モノカルボン酸と、少なくとも1種の、3~5個のヒドロキシル基を有するC4~C12ポリオールとを反応させることによって得られる。
【0026】
ポリエステルについての例は、トリメチロールプロパン型エステルであり、好ましくはTMPとC5~C18脂肪族一酸とから形成され、例えば、カプリル酸トリメチロールプロパン(TMTC)及びトリオレイン酸トリメチロールプロパンである。ポリエステルについてのさらなる例は、ペンタエリトリット(pentaerythrit)型エステルであり、好ましくはペンタエリトリットとC5~C18脂肪族一酸とから形成される。
【0027】
別の形態では、カルボン酸エステルは、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸、及び
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸(octananedioic acid)、ノナン二酸、デカン二酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C10ジカルボン酸、並びに
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる複合エステルである。
【0028】
別の形態では、複合エステルは、
- 少なくとも1種の直鎖又は分枝状C6~C18モノカルボン酸、及び
- 少なくとも1種の直鎖又は分枝状C4~C10ジカルボン酸、並びに
- 少なくとも1種の、2~6個のヒドロキシル基を有するC2~C14ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる。
【0029】
別の形態では、複合エステルは、
- 少なくとも1種の直鎖又は分枝状C12~C18モノカルボン酸、及び
- 少なくとも1種の直鎖又は分枝状C6~C8ジカルボン酸、並びに
- 少なくとも1種の、3~5個のヒドロキシル基を有するC3~C10ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる。
【0030】
好適な電気自動車は、完全電気自動車及びハイブリッド電気自動車である。電気自動車は通常、回転電気機械、及び回転電気機械を駆動するために使用される電力を貯蔵するように構成された電力貯蔵デバイスを含む。ハイブリッド電気自動車は通常、回転電気機械及び燃焼機関の出力を使用することによって移動する。
【0031】
好適なハイブリッド電気自動車は、フルハイブリッド(ストロングハイブリッドとも呼ばれる)、プラグインハイブリッド(PHEVとも呼ばれる)電気自動車又はレンジエクステンデッド電気自動車(REEVとも呼ばれる)である。フルハイブリッド電気自動車は、典型的には、燃焼機関においてのみ、電気モータにおいてのみ、又は両者の組合せにおいて走行することができる自動車である。プラグインハイブリッド電気自動車は、典型的には、外部の電力供給源にプラグを接続することによって、満充電まで回復させることができる充電式バッテリを有するハイブリッド電気自動車である。
【0032】
好適な電気自動車は、バッテリ式電気自動車(BEVとも呼ばれる)又は燃料電池電気自動車である。BEVは、典型的には、充電式バッテリパックに貯蔵した化学エネルギーを使用し、推進のために、内燃機関の代わりに電気モータ及びモータコントローラを使用する電気自動車の型である。燃料電池電気自動車(FCEV)は、典型的には、燃料電池をバッテリの代わりに、又はバッテリ若しくはスーパーキャパシタと組み合わせて使用して、搭載された回転電気機械に電力を供給する電気自動車の型である。自動車における燃料電池は、一般には、空気からの酸素及び圧縮水素を使用して、モータに電力を供給するための電気を発生させる。
【0033】
「自動車」という用語は、任意の移動式又は固定式プラットフォームを指し、移動式プラットフォームが好ましい。特に、自動車は、乗用車、軽荷重若しくは重荷重トラック、多目的自動車、農業用自動車、産業用若しくは倉庫用自動車、又は娯楽用オフロード自動車から選択される。
【0034】
電気自動車の潤滑とは、パワートレイン、動力伝達系統、トランスミッション、差動装置、ギア、ギアトレイン、ギアセット、ギアボックス、ベアリング、ブッシング、軸、タービン、コンプレッサ、ポンプ、液圧系、バッテリ、キャパシタ、電気モータ、駆動モータ、発電機、AC/DCコンバータ、交流発電機、変圧器、運動エネルギーコンバータ、運動エネルギー回生システムの潤滑を指し得る。単一の潤滑剤又は2種以上の潤滑剤を電気自動車に使用してもよく、例えば、1種の潤滑剤組成物をトランスミッションに、別の潤滑剤組成物を自動車システムの別の部品に使用してもよい。
【0035】
潤滑剤は、電気自動車の様々な表面を潤滑し得るが、例えば、以下のものが挙げられる:金属、合金、非金属、非金属合金、混合炭素-金属複合体及び合金、混合炭素-非金属複合体及び合金、鉄金属、鉄複合体及び合金、非鉄金属、非鉄複合体及び合金、チタン、チタン複合体及び合金、アルミニウム、アルミニウム複合体及び合金、マグネシウム、マグネシウム複合体及び合金、イオン注入金属及び合金、プラズマ改質表面;表面改質材料;コーティング;単層、多層及び傾斜層コーティング(gradient layered coatings);ホーニング表面(honed surfaces);研磨表面;エッチング表面;テクスチャ表面;テクスチャ表面のマイクロ及びナノ構造;超仕上げ表面(super-finished surface);ダイヤモンド状炭素(DLC)、高水素含有量を有するDLC、中水素含有量を有するDLC、低水素含有量を有するDLC、ゼロ付近の水素含有量を有するDLC、DLC複合体、DLC-金属組成物及び複合体、DLC-非金属組成物及び複合体;セラミックス、酸化物セラミック、窒化物セラミック、FeN、CrN、炭化物セラミック、混合セラミック組成物、サーメット等;ポリマー、熱可塑性ポリマー、エンジニアードポリマー、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、ポリマー複合体;例えば、グラファイト、カーボン、モリブデン、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリペルフルオロプロピレン(polyperfiuoropropylene)、ポリペルフルオロアルキルエーテル(polyperfluoroalkylethers)等を含む、乾燥潤滑剤を含有する材料組成物及び複合体;超疎水性表面;超親水性表面;自己回復表面;製造物として付加的に使用され得る、又は印刷後表面仕上げ若しくは印刷後表面コーティングとともに使用され得る、3D印刷又は付加製造技法に由来する表面。
【0036】
一形態では、潤滑剤は、電気自動車の回転電気機械の内部に存在する。
【0037】
別の形態では、潤滑剤は、電気自動車の回転電気機械の近距離の外部に存在し、通常、電気自動車に搭載されている。好ましくは、潤滑剤は、回転電気機械の外部において、回転電気機械に直接接触して、又は最大300、250、200、150、100、50、40、30、20若しくは10cmの距離の範囲内に存在する。回転電気機械の外部に存在する潤滑剤についての例は、パワートレイン、動力伝達系統、トランスミッション、差動装置、ギア、ギアトレイン、ギアセット、ギアボックス、ベアリング、ブッシング、軸、タービン、コンプレッサ、ポンプ、液圧系、バッテリ、キャパシタ、発電機、AC/DCコンバータ、交流発電機、変圧器、運動エネルギーコンバータ又は運動エネルギー回生システムに存在する潤滑剤である。
【0038】
カルボン酸エステルの熱伝導率(好ましくは90℃における)は、少なくとも0.120、0.125、0.130、0.131、0.132、0.133、0.135、0.137、0.139、0.141、0.143、0.145又は0.147W/mKであり得る。
【0039】
カルボン酸エステルの熱伝導率(好ましくは90℃における)は、最大0.3、0.2、0.17又は0.15W/mKであり得る。
【0040】
熱伝導率は、固定シリンダーギャップ法(stationary cylinder gap method)を用いて決定され得る。すなわち、1ミリメートルのギャップを有する球形端部を有する2つの円筒形金属体の間に、基油が位置する。外側の円筒は、測定デバイスの温度を一定に保つサーモスタット流体によって包囲されている。内側の円筒及び外側の円筒の両方の温度を測定する。一定温度における熱平衡に達した後、規定の出力によって内側の円筒を最大0.5Kだけ加熱する。したがって、外側及び内側の円筒の間の温度差は、流体の熱伝導率及び火力のみに依存する。2つの異なる火力レベルにおいて、この温度差を2回測定する。3つの異なる温度において、30~90℃の温度範囲内の基油の熱伝導率の測定を行った。
【0041】
熱伝導率はまた、ASTM D7896-19「Standard Test Method for Thermal Conductivity, Thermal Diffusivity, and Volumetric Heat Capacity of Engine Coolants and Related Fluids by Transient Hot Wire Liquid Thermal Conductivity Method」によって決定してもよい。
【0042】
カルボン酸エステルの熱酸化安定性は、高圧示差走査熱量測定(HP-DSC)によって決定され得る。HP-DSCとは、酸化安定性試験を加速するために使用される技法である。空気又は酸素の存在下では、潤滑剤は酸化を通じて劣化する。周囲温度及び大気圧では、酸化は、ほとんど測定できないほど遅いが、酸化の速度は温度によって強力に上昇する。
【0043】
HP-DCSは次のように試験され得る:約1mgの試料を、10barの純粋酸素雰囲気下で開放アルミニウムポットにおいて、5K/分で30~400℃に加熱した。HP-DCSは、開始温度又はピーク温度(好ましくは開始温度)の摂氏度で示され、値が高いほど熱酸化安定性が良好である。
【0044】
HP-DSCによるカルボン酸エステルの熱酸化安定性は、少なくとも130、150、170、180又は190℃の開始温度であり得る。HP-DSCによる熱酸化安定性は、最大300、280、260又は240℃の開始温度であり得る。
【0045】
HP-DSCによるカルボン酸エステルの熱酸化安定性は、少なくとも130、150、170、180、190、200、210又は220℃のピーク温度であり得る。HP-DSCによる熱酸化安定性は、最大300、280、260又は240℃のピーク温度であり得る。
【0046】
熱酸化安定性はまた、タービン油酸化安定性試験(TOST)としても知られる、ASTM D943 (「Standard Test Method for OxidationCharacteristics of Inhibited Mineral Oils」)によって決定してもよい。カルボン酸エステルについてのTOSTは、水の不存在下で決定され得る。カルボン酸エステルについてのTOST値は通常、少なくとも4000、6000、7000、8000、9000又は10000時間である。酸価の上昇は通常、少なくとも2mgKOH/gである。
【0047】
カルボン酸エステルの電気伝導率は、少なくとも0.01、0.1、0.5、1、5、10、30、50又は100pS/mであり得る。
【0048】
カルボン酸エステルの電気伝導率は、最大100000、50000、10000、5000、1000又は500pS/mであり得る。
【0049】
カルボン酸エステルの電気伝導率は、0.1~100000pS/m、1~50000pS/m、1~10000pS/m、10~5000pS/m、10~1000pS/m、10~500pS/m又は30~300pS/mの範囲内であり得る。
【0050】
電気伝導率は、好ましくはASTM D2624「Standard Test Methods for Electrical Conductivity of Aviation and Distillate Fuels」によって、典型的には25℃で決定され得る。別の形態では、電気伝導率は、ASTM D4308「Standard Test Method for Electrical Conductivity of Liquid Hydrocarbons by Precision Meter」によって、典型的には25℃で決定され得る。
【0051】
「潤滑剤」という用語は通常、表面(好ましくは金属表面)、例えば機械的デバイスの表面同士の間の摩擦を低減することができる組成物を指す。機械的デバイスは、機械的原理において動作するデバイスからなる機構であり得る。潤滑剤は通常、潤滑液体、潤滑油又は潤滑グリースである。
【0052】
潤滑剤は通常、カルボン酸エステルから選択される基油に加えて、
- 鉱物油、ポリアルファオレフィン、重合及び共重合(interpolymerized)オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステルから選択されるさらなる基油、並びに/又は
- 潤滑剤添加剤
をさらに含む。
【0053】
さらなる基油は、鉱物油(グループI、II又はIIIの油)、ポリアルファオレフィン(グループIVの油)、重合及び共重合オレフィン、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油、リン酸エステル(グループVの油)からなる群から選択され得る。好ましくは、さらなる基油は、APIの定義によるグループI、グループII、グループIIIの基油又はこれらの混合物から選択される。基油についての定義は、American Petroleum Institute(API)刊行物「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、第14版、1996年12月、補遺1、1998年12月に見出されるものと同じである。前記刊行物は、基油を次のように分類している。
【0054】
a)グループI基油は、90パーセント未満の飽和物(saturates)(ASTM D 2007)及び/又は0.03パーセント超の硫黄(ASTM D 2622)を含有し、80以上120未満の粘度指数(ASTM D 2270)を有する。
b)グループII基油は、90パーセント以上の飽和物及び/又は0.03パーセント以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。
c)グループIII基油は、90パーセント以上の飽和物及び/又は0.03パーセント以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。
d)グループIV基油は、ポリアルファオレフィンを含有する。ポリアルファオレフィン(PAO)としては、典型的には、比較的低分子量のアルファオレフィンの水素化ポリマー又はオリゴマーを含む公知のPAO材料が挙げられ、限定するものではないが、C2~約C32アルファオレフィンが挙げられ、C8~約C16アルファオレフィン、例えば1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が好ましい。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン及びポリ-1-ドデセンである。
e)グループV基油は、グループI~IVによって記載されていない任意の基油を含有する。グループV基油の例としては、アルキルナフタレン、アルキレンオキシドポリマー、シリコーン油及びリン酸エステルが挙げられる。
【0055】
合成基油としては、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びにアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにこれらの誘導体、アナログ及びホモログが挙げられる。
【0056】
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー、並びにこれらの誘導体は、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって修飾されている場合、公知合成基油の別のクラスを構成する。これらは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるポリオキシアルキレンポリマー、並びにポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、1000の分子量を有するメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル、又は1000~1500の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);並びにこれらのモノ及びポリカルボン酸エステル、例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C3~C8脂肪酸エステル、及びC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0057】
ケイ素系油、例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシシリコーン油及びシリケート油は、合成基油の別の有用なクラスを含み、このような基油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチル-ヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成基油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びポリマー性テトラヒドロフランが挙げられる。
【0058】
好適な潤滑剤添加剤は、粘度指数向上剤、ポリマー性増稠剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、染料、摩耗保護添加剤、極圧添加剤(EP添加剤)、耐摩耗添加剤(AW添加剤)、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤から選択され得る。
【0059】
粘度指数向上剤としては、低温におけるよりも高温において、油の相対粘度を上昇させる高分子量ポリマーが挙げられる。粘度指数向上剤としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アルキルメタクリレート、ビニルピロリドン/メタ-アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー若しくはスチレン-ブタジエンコポリマー、又はポリアルケン、例えばPIB、スチレン/アクリレートコポリマー及びポリエーテル、並びにこれらの組合せが挙げられる。最も一般的なVI向上剤は、メタクリレートポリマー及びコポリマー、アクリレートポリマー、オレフィンポリマー及びコポリマー、並びにスチレンブタジエンコポリマーである。粘度指数向上剤の他の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、アルファオレフィンポリマー、アルファオレフィンコポリマー(例えばエチレンプロピレンコポリマー)、ポリアルキルスチレン、フェノール縮合体、ナフタレン縮合体、スチレンブタジエンコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、10000~300000の数平均分子量を有するポリメタクリレート、及び1000~30000の数平均分子量を有するアルファオレフィンポリマー又はアルファオレフィンコポリマー、特に1000~10000の数平均分子量を有するエチレン-アルファオレフィンコポリマーが好ましい。粘度指数上昇剤は、好都合にはベースストックの重量に対して、0.05以上~20.0重量%以下の範囲内の量で、個々に又は混合物の形態で加えて使用することができる。
【0060】
好適な(ポリマー性)増稠剤としては、限定するものではないが、ポリイソブテン(PIB)、オリゴマー性コポリマー(OCP)、ポリメタクリレート(PMA)、スチレン及びブタジエンのコポリマー又は高粘度エステル(複合エステル)が挙げられる。
【0061】
腐食防止剤としては、様々な酸素、窒素、硫黄及びリン含有材料を挙げることができ、金属含有化合物(塩、有機金属等)及び非金属含有又は無灰材料を挙げることができる。腐食防止剤としては、限定するものではないが、添加剤型、例えば、ヒドロカルビル、アリール、アルキル、アリールアルキル及びアルキルアリールバージョンの洗浄剤(中性、過塩基性)、スルホネート、フェネート、サリチレート、アルコラート、カルボキシレート、サリキサレート(salixarate)、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、アミン、アミン塩、アミンリン酸塩、アミンスルホン酸塩、アルコキシル化アミン、エーテルアミン、ポリエーテルアミン、アミド、イミド、アゾール、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアドール(benzothiadoles)、メルカプトベンゾチアゾール、トリルトリアゾール(TTZ型)、複素環式アミン、複素環式硫化物、チアゾール、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、ジメルカプトチアジアゾール(DMTD型)、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ジチオベンズイミダゾール、イミダゾリン、オキサゾリン、マンニッヒ反応生成物、グリシジルエーテル、無水物、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ポリグリコール等又はこれらの混合物が挙げることができる。
【0062】
洗浄剤には、汚れ粒子に付着して、汚れ粒子が重要表面に結合することを防止する清浄剤が含まれる。洗浄剤はまた、金属表面自体に付着して、これを清浄に保ち、腐食の発生を防止してもよい。洗浄剤としては、アルキルサリチル酸カルシウム、アルキル石炭酸カルシウム及びアルカリルスルホン酸カルシウムが挙げられ、代替金属イオン、例えば、マグネシウム、バリウム又はナトリウムが使用される。使用することができる清浄剤及び分散剤の例としては、金属系洗浄剤、例えば、中性及び塩基性アルカリ土類金属スルホン酸塩、アルカリ土類金属石炭酸塩及びアルカリ土類金属サリチル酸塩、アルケニルスクシンイミド及びアルケニルスクシンイミドエステル、並びにこれらの水素化ホウ素塩、石炭酸塩、サリエニウス(salienius)複合洗浄剤並びに硫黄化合物によって修飾されている無灰分散剤が挙げられる。これらの薬剤は、好都合にはベースストックの重量に対して0.01重量%以上~1.0重量%以下の範囲内の量で、個々に又は混合物の形態で加えて使用することができ、これらは、高全塩基価(TBN)、低TBN、又は高/低TBNの混合物とすることもできる。
【0063】
分散剤とは、スラッジ、ワニス及び他の付着物が重要表面に形成されることの防止を支援する潤滑剤添加剤である。分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えば、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、マンニッヒ分散剤、エステル含有分散剤、脂肪ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミン若しくはアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル-アミン分散剤、ポリエーテル分散剤又はポリエーテルアミン分散剤であり得る。一実施形態では、スクシンイミド分散剤としては、ポリイソブチレン置換スクシンイミドが挙げられ、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、約400~約5000又は約950~約1600の数平均分子量を有し得る。一実施形態では、分散剤はホウ酸化分散剤(borated dispersant)を含む。典型的には、ホウ酸化分散剤としては、ポリイソブチレンスクシンイミドを含めたスクシンイミド分散剤が挙げられ、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、約400~約5000の数平均分子量を有し得る。ホウ酸化分散剤は、上の極圧添加剤の記載中により詳細に記載される。
【0064】
消泡剤は、シリコーン、ポリアクリレート等から選択され得る。本明細書に記載する潤滑剤組成物中の消泡剤の量は、配合物の総重量を基準として、0.001重量%以上~0.1重量%以下の範囲内であり得る。さらなる例として、消泡剤は、約0.004重量%~約0.008重量%の量で存在してもよい。
【0065】
好適な極圧添加剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、ポリスルフィド又はこれらの混合物であり得る。硫化オレフィンの例としては、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導される硫化オレフィン;ベンジルジスルフィドを含めた有機スルフィド及び/若しくはポリスルフィド;ビス-(クロロベンジル)ジスルフィド;ジブチルテトラスルフィド;ジ-第三級(tertiary)-ブチルポリスルフィド;並びにオレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールスアルダー付加体、アルキルスルフェニルN'N-ジアルキルジチオカルバメート;又はこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、硫化オレフィンとしては、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導される硫化オレフィン又はこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、極圧添加剤である硫黄含有化合物としては、ジメルカプトチアジアゾール若しくは誘導体、又はこれらの混合物が挙げられる。ジメルカプトチアジアゾールの例としては、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール若しくはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールなどの化合物、又はこれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール単位同士の間に硫黄-硫黄結合を形成して、2つ以上の前記チアジアゾール単位の誘導体又はオリゴマーを形成することによって形成する。好適な2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導化合物としては、例えば、2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール又は2-tert-ノニルジチオ-5-メルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールのヒドロカルビル置換基上の炭素原子の数としては、典型的には、1~30、又は2~20、又は3~16が挙げられる。極圧添加剤としては、ホウ素及び/又は硫黄及び/又はリンを含有する化合物が挙げられる。極圧添加剤は、潤滑剤組成物の0重量%~約20重量%、又は約0.05重量%~約10.0重量%、又は約0.1重量%~約8重量%において、潤滑剤組成物中に存在し得る。
【0066】
耐摩耗添加剤の例としては、オルガノボレート、オルガノホスファイト、例えば亜リン酸ジドデシル、有機硫黄含有化合物、例えば硫化マッコウクジラ油又は硫化テルペン、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛、ホスホ硫化炭化水素及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0067】
摩擦調整剤としては、金属含有化合物若しくは材料、及び無灰化合物若しくは無灰材料、又はこれらの混合物を挙げることができる。金属含有摩擦調整剤としては、金属塩又は金属配位子錯体が挙げられ、金属としてはアルカリ、アルカリ土類又は遷移族金属(transition group metals)を挙げることができる。このような金属含有摩擦調整剤はまた、低灰分という特徴を有し得る。遷移金属としては、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Zn及び他のものを挙げることができる。配位子としては、アルコール、ポリオール、グリセロール、部分エステルグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾール及び有効量のO、N、S又はPを個々に又は組み合わせて含有する、他の極性分子官能基のヒドロカルビル誘導体を挙げることができる。特に、Mo含有化合物、例えば、Mo-ジチオカルバメート、Mo(DTC)、Mo-ジチオホスフェート、Mo(DTP)、Mo-アミン、Mo(Am)、Mo-アルコラート、Mo-アルコール-アミド等は特に有効であり得る。
【0068】
無灰摩擦調整剤はまた、有効量の極性基を含有する潤滑剤材料、例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル基油、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体等を含み得る。摩擦調整剤中の極性基としては、有効量のO、N、S又はPを、個々に又は組み合わせて含有するヒドロカルビル基を挙げることができる。特に有効であり得る他の摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸の塩(灰含有及び無灰誘導体の両方)、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪酸エステル、ヒドロキシル基含有カルボキシレート、及び同等の合成長鎖ヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレート等が挙げられる。いくつかの例では、脂肪有機酸、脂肪アミン及び硫化脂肪酸が、好適な摩擦調整剤として使用され得る。摩擦調整剤の例としては、脂肪酸エステル及びアミド、オルガノモリブデン化合物、モリブデンジアルキルチオカルバメート並びにモリブデンジアルキルジチオホスフェートが挙げられる。
【0069】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、例えば、4-又は5-アルキルベンゾトリアゾール(例えば、トリアゾール)及びこれらの誘導体、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾトリアゾール及び5,5'-メチレンビスベンゾトリアゾール;ベンゾトリアゾール又はトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば、1-[ビス(2-エチル-ヘキシル)アミノメチル]トリアゾール及び1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール;並びにアルコキシ-アルキルベンゾトリアゾール、例えば、1-(ノニルオキシメチル)ベンゾトリアゾール、1-(1-ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール及び1-(1-シクロヘキシルオキシブチル)トリアゾール、並びにこれらの組合せが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤の追加の非限定例としては、1,2,4-トリアゾール及びその誘導体、例えば、3-アルキル(又はアリール)-1,2,4-トリアゾール及び1,2,4-トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば1-[ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル(aminomethy1)-1,2,4-トリアゾール;アルコキシアルキル(alkoxyalky1)-1,2,4-トリアゾール、例えば1-(1-ブトキシエチル)-1,2,4-トリアゾール;並びにアシル化3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば、4,4'-メチレンビス(2-ウンデシル-5-メチルイミダゾール)及びビス[(N-メチル)イミダゾール-2-イル]-カルビノールオクチルエーテル、並びにこれらの組合せが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤のさらなる非限定例としては、硫黄含有複素環式化合物、例えば、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チア-ジアゾール及びこれらの誘導体;並びに3,5-ビス[ジ(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-1,3,4-チアジアゾリン-2-オン、並びにこれらの組合せが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤のいっそうさらなる非限定例としては、アミノ化合物、例えば、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノグアニジン及びその塩、並びにこれらの組合せが挙げられる。1種以上の金属不活性化剤は、組成物中の量において特に限定されないが、典型的には、組成物の重量を基準として、約0.01~約0.1、約0
.05~約0.01又は約0.07~約0.1重量%の量で存在する。あるいは、1種以上の金属不活性化剤は、組成物の重量を基準として、約0.1重量%未満、約0.7重量%未満又は約0.5重量%未満の量で存在してもよい。
【0070】
流動点降下剤(PPD)としては、ポリメタクリレート、アルキル化ナフタレン誘導体及びこれらの組合せが挙げられる。一般に使用される添加剤、例えば、アルキル芳香族ポリマー及びポリメタクリレートも、この目的のために有用である。典型的には、処理率(treat rates)は、ベースストックの重量に対して、0.001重量%以上~1.0重量%以下の範囲にわたる。
【0071】
解乳化剤としては、リン酸トリアルキル、並びにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの混合物の様々なポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0072】
潤滑剤は、例えば基油として、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95重量%のカルボン酸エステルを含み得る。
【0073】
潤滑剤は、例えば基油として、最大10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100重量%のカルボン酸エステルを含み得る。
【0074】
一形態では、潤滑剤は、カルボン酸エステルの他にさらなる基油を含まない。
【0075】
潤滑剤は、カルボン酸エステルから選択される基油、及び場合によりさらなる基油、及び場合により潤滑剤添加剤を接触させることによって調製することができる。接触させることは、所望の量において混合、撹拌、注入することによって達成することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用。
【請求項2】
電気自動車が、回転電気機械、及び回転電気機械を駆動するために使用される電力を貯蔵するように構成された電力貯蔵デバイスを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
潤滑剤が、電気自動車の回転電気機械の内部に存在する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
潤滑剤が、回転電気機械の外部に、回転電気機械と直接接触して、又は最大50cmの距離の範囲内に存在する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
カルボン酸エステルが、0.1~100000pS/m、1~50000pS/m、1~10000pS/m、10~5000pS/m、10~1000pS/m、10~500pS/m又は30~300pS/mの電気伝導率を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
カルボン酸エステルが、少なくとも0.120、0.125、0.130、0.131、0.132、0.133、0.135、0.137、0.139、0.141、0.143、0.145又は0.147W/mKの熱伝導率を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
カルボン酸エステルが、高圧示差走査熱量測定によって決定される、少なくとも130、150、170、180又は190℃の開始温度の熱酸化安定性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
カルボン酸エステルが、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、複合エステル又はこれらの混合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
カルボン酸エステルが、
(i)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「モノエステル」とも呼ばれる)、又は
(ii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C1~C20モノアルコールと(「ジエステル」とも呼ばれる)、又は
(iii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと(「ポリエステル」とも呼ばれる)、又は
(iv)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C24モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C2~C20ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールを含む混合物(「複合エステル」とも呼ばれる)
を反応させることによって得られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
カルボン酸エステルが、
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸、ジグリコール酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び2,6-デカヒドロ-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C12ジカルボン酸と、
- ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、イソ-ペンタノール、イソ-ヘキサノール、イソ-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-プロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-4,4-ジメチルペンタノール、2-エチル-2,4-ジメチルヘキサノール、2-エチル-2-メチル-ヘプタノール、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサノール、2-イソプロピル-ヘプタノール、2-ブチル-1-オクタノール及び2-ペンチル-1-ノナノールからなる群から選択される少なくとも1種の分枝状C5~C14モノアルコールと
を反応させることによって得られるジエステルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸と、
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオールと
を反応させることによって得られるポリエステルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C5~C18モノカルボン酸、及び
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C3~C10ジカルボン酸、並びに
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC2~C20ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる複合エステルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
潤滑剤が、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95重量%のカルボン酸エステルを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のカルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
潤滑剤は、カルボン酸エステルから選択される基油、及び場合によりさらなる基油、及び場合により潤滑剤添加剤を接触させることによって調製することができる。接触させることは、所望の量において混合、撹拌、注入することによって達成することができる。
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
電気自動車における、カルボン酸エステルから選択される基油を含む潤滑剤の使用。
[項2]
電気自動車が、回転電気機械、及び回転電気機械を駆動するために使用される電力を貯蔵するように構成された電力貯蔵デバイスを含む、項1に記載の使用。
[項3]
潤滑剤が、電気自動車の回転電気機械の内部に存在する、項1又は2に記載の使用。
[項4]
潤滑剤が、電気自動車の回転電気機械の近距離の外部に存在する、項1又は2に記載の使用。
[項5]
潤滑剤が、回転電気機械の外部に、回転電気機械と直接接触して、又は最大50cmの距離の範囲内に存在する、項3に記載の使用。
[項6]
カルボン酸エステルが、0.1~100000pS/m、1~50000pS/m、1~10000pS/m、10~5000pS/m、10~1000pS/m、10~500pS/m又は30~300pS/mの電気伝導率を有する、項1から5のいずれか一項に記載の使用。
[項7]
カルボン酸エステルが、少なくとも0.120、0.125、0.130、0.131、0.132、0.133、0.135、0.137、0.139、0.141、0.143、0.145又は0.147W/mKの熱伝導率を有する、項1から6のいずれか一項に記載の使用。
[項8]
カルボン酸エステルが、高圧示差走査熱量測定によって決定される、少なくとも130、150、170、180又は190℃の開始温度の熱酸化安定性を有する、項1から7のいずれか一項に記載の使用。
[項9]
カルボン酸エステルが、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、複合エステル又はこれらの混合物である、項1から8のいずれか一項に記載の使用。
[項10]
カルボン酸エステルが、
(i)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 2 ~C 24 モノカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 1 ~C 20 モノアルコールと(「モノエステル」とも呼ばれる)、又は
(ii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 2 ~C 20 ジカルボン酸と、少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 1 ~C 20 モノアルコールと(「ジエステル」とも呼ばれる)、又は
(iii)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 2 ~C 24 モノカルボン酸と、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC 2 ~C 20 ポリオールと(「ポリエステル」とも呼ばれる)、又は
(iv)少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 2 ~C 24 モノカルボン酸、及び少なくとも1種の直鎖若しくは分枝状C 2 ~C 20 ジカルボン酸、並びに少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC 2 ~C 20 ポリオールを含む混合物(「複合エステル」とも呼ばれる)
を反応させることによって得られる、項1から9のいずれか一項に記載の使用。
[項11]
カルボン酸エステルが、
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン二酸、ジグリコール酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸及び2,6-デカヒドロ-ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C 3 ~C 12 ジカルボン酸と、
- ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、イソ-ペンタノール、イソ-ヘキサノール、イソ-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-プロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-4-メチル-ヘキサノール、2-イソプロピル-5-メチル-ヘキサノール、2-プロピル-4,4-ジメチルペンタノール、2-エチル-2,4-ジメチルヘキサノール、2-エチル-2-メチル-ヘプタノール、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサノール、2-イソプロピル-ヘプタノール、2-ブチル-1-オクタノール及び2-ペンチル-1-ノナノールからなる群から選択される少なくとも1種の分枝状C 5 ~C 14 モノアルコールと
を反応させることによって得られるジエステルである、項1から10のいずれか一項に記載の使用。
[項12]
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C 5 ~C 18 モノカルボン酸と、
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC 2 ~C 20 ポリオールと
を反応させることによって得られるポリエステルである、項1から10のいずれか一項に記載の使用。
[項13]
カルボン酸エステルが、
- ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C 5 ~C 18 モノカルボン酸、及び
- マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸からなる群から選択される、少なくとも1種の直鎖又は分枝状C 3 ~C 10 ジカルボン酸、並びに
- エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びジペンタエリスリトールからなる群から選択される、少なくとも1種の、2~10個のヒドロキシル基を有するC 2 ~C 20 ポリオール
を含む混合物を反応させることによって得られる複合エステルである、項1から10のいずれか一項に記載の使用。
[項14]
潤滑剤が、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は95重量%のカルボン酸エステルを含む、項1から13のいずれか一項に記載の使用。
[項15]
項1から13のいずれか一項に記載のカルボン酸エステルを含む潤滑剤を用いて電気自動車を潤滑にする方法。
【国際調査報告】