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特表2022-550538マーキングを用いた光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】マーキングを用いた光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 11/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B29D11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519519
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2020011958
(87)【国際公開番号】W WO2021060739
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120073
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120074
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095885
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・キョ・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チョル・クォン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AH73
4F213AR07
4F213AR12
4F213WA37
4F213WA38
4F213WA55
4F213WA72
4F213WB02
(57)【要約】
本発明は、延伸処理された光学フィルムの軸方向に沿って物性を異にする点を考慮して最適なマーキング形成および巻取時の蛇行を防止できるようにした光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムを第1方向に供給する供給部と、
前記供給部と離隔配置され、前記供給部から供給される前記光学フィルムを巻取る受取部と、
前記供給部と前記受取部との間に配置され、前記光学フィルムを光源で照射してマーキングを形成するマーキング部と、を含む光学フィルムの製造装置。
【請求項2】
前記マーキング部と連結されて、前記マーキング部を移動させる駆動部をさらに含み、
前記マーキング部が移動するにつれて、前記マーキングは、第1方向と所定の角度をなすように形成される、請求項1に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項3】
前記光学フィルムには、前記マーキングの両側に沿って突出部がそれぞれ形成される、請求項2に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記マーキングの両側にそれぞれ形成される前記突出部は、突出方向への高さが異なって形成される、請求項3に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記光学フィルムはマーキング領域と有効領域とを含み、前記マーキングは、前記マーキング領域の所定の区間で形成される、請求項2に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記有効領域は、前記光学フィルムの長手方向に沿って中央部に形成され、
前記マーキング領域は、前記有効領域の両側に配置されるように前記光学フィルムの周縁に形成される、請求項5に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項7】
前記マーキング部は、前記マーキング領域に複数備えられる、請求項6に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項8】
前記マーキングは、前記第1方向と0゜~180゜をなす、請求項2に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項9】
前記供給部と前記受取部との間に、前記光学フィルムの一面にコーティング層を形成するコーティング部をさらに含み、
前記マーキング部は、前記光学フィルムを挟んで前記コーティング部と離隔配置され、前記光学フィルムの他面にマーキングを形成する、請求項1に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項10】
前記コーティング層は、前記光学フィルムの一面に形成される第1領域に形成され、
前記マーキングは、前記コーティング層が形成される前記光学フィルムの一面に対向する他面に形成される第2領域に形成され、
前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1方向に垂直な方向に重ならない、請求項9に記載の光学フィルムの製造装置。
【請求項11】
供給部から第1方向に沿って光学フィルムを供給するステップと、
前記光学フィルムの外側に配置されるマーキング部を調節してマーキングの形成経路を決定するステップと、
前記マーキング部から前記光学フィルムに光源で照射してマーキングを形成するステップと、
前記供給部と離隔配置される受取部によって前記マーキングが形成された光学フィルムを巻取るステップと、を含む光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記マーキングは、第1方向と予め設定された角度をなすように形成される、請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記光学フィルムには、前記マーキングの両側に沿って突出部がそれぞれ形成される、請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記マーキングの両側にそれぞれ形成される前記突出部は、突出方向への高さが異なって形成される、請求項13に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記供給部から第1方向に沿って光学フィルムを供給するステップの後に、前記光学フィルムの一面上にコーティング層を形成するステップをさらに含む請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記マーキングは、一面にコーティング層が形成される前記光学フィルムの他面上に形成される、請求項15に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記コーティング層は、前記光学フィルムの一面に形成される第1領域に形成され、
前記マーキングは、前記コーティング層が形成される前記光学フィルムの一面に対向する他面に形成される第2領域に形成され、
前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1方向と垂直な方向に重ならない、請求項16に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法により製造された光学フィルム。
【請求項19】
前記マーキングは、溝形状に形成され、
前記マーキングの溝深さは、前記光学フィルムの全厚を10とした時、0.5~5の比率で形成されている、請求項18に記載の光学フィルム。
【請求項20】
前記マーキングの両側に形成される突出部の高さは、前記光学フィルムの全厚を10とした時、0.5~10の比率で形成されている、請求項18に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マーキングを用いた光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光学フィルムは、延伸処理、表面処理、スリッティング(slitting)などの製造工程を経る。このような光学フィルムの製造工程は、主にロールツーロール(roll to roll、R2R)方式で行われる。
【0003】
光学フィルムの表面処理工程の場合、光学フィルムの巻出、表面処理、硬化、巻取の順に行われる。前記巻取工程は光学フィルム生産工程の最終段階で、欠陥が発生する場合、これを解決することが容易でなく、製品の品質を低下させる要因になる。
【0004】
R2R工程後に光学フィルムを正常に巻取るには、フィルムに加えられる巻取張力分布、フィルムの厚さ偏差、フィルムのスリップ抵抗性、フィルム表面の粗さ、巻取ったフィルムの密度など多様な要因を考慮しなければならない。
【0005】
フィルムの巻取の不良ケースとしては、巻取中におけるフィルムの走行方向と垂直方向の蛇行、巻芯固定テープによる押圧不良がある。この場合、蛇行不良を抑制するためには、巻取張力を高めるかフィルムのスリップ抵抗力を高め、巻取時に積層されるフィルムの間に引き込まれる空気の量を最小化しなければならない。押圧不良を防止するためには、巻取張力を低下させ、巻取時にフィルムの間に引き込まれる空気の量を増加させなければならない。
【0006】
しかし、従来のようなフィルムの巻取張力を調節する方式だけでは、フィルムを巻取る過程で蛇行と押圧不良をすべて解決しにくい問題点がある。
【0007】
また、従来の光学フィルムの表面に表面処理をすれば、添加剤がコーティング液に含まれる。これにより、単一の光学フィルムに比べて表面エネルギーが低く、スリップ抵抗性が低くてフィルムの走行方向と垂直方向の蛇行が発生する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を改善するためになされたものであって、延伸処理された光学フィルムの軸方向に沿って物性を異にする点を考慮して最適なマーキング形成および巻取時の蛇行を防止できるようにした光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による光学フィルムの製造装置は、光学フィルムを第1方向に供給する供給部と、前記供給部と離隔配置され、前記供給部から供給される前記光学フィルムを巻取る受取部と、前記供給部と前記受取部との間に配置され、前記光学フィルムを光源で照射してマーキングを形成するマーキング部と、を含むことができる。
【0010】
また、前記マーキング部と連結されて、前記マーキング部を移動させる駆動部をさらに含み、前記マーキング部が移動するにつれて、前記マーキングは、第1方向と所定の角度をなすように形成される。
【0011】
また、前記光学フィルムには、前記マーキングの両側に沿って突出部がそれぞれ形成されることができる。
【0012】
また、前記マーキングの両側に形成されるそれぞれの前記突出部は、突出方向への高さが異なって形成されることができる。
【0013】
また、前記光学フィルムは、マーキング領域と、有効領域とを含み、前記マーキングは、前記マーキング領域の所定の区間で形成されることができる。
【0014】
また、前記有効領域は、前記光学フィルムの長手方向に沿って中央部に形成され、前記マーキング領域は、前記有効領域の両側に配置されるように前記光学フィルムの周縁に形成されることができる。
【0015】
また、前記マーキング部は、前記マーキング領域に複数備えられることができる。
【0016】
また、前記マーキングは、前記第1方向と0゜~180゜をなすことができる。
【0017】
また、前記供給部と前記受取部との間には、前記光学フィルムの一面にコーティング層を形成するコーティング部、をさらに含み、前記マーキング部は、前記光学フィルムを挟んで前記コーティング部と離隔配置され、前記光学フィルムの他面にマーキングを形成することができる。
【0018】
また、前記コーティング層は、前記光学フィルムの一面に形成される第1領域に形成され、前記マーキングは、前記コーティング層が形成される前記光学フィルムの一面に対向する他面に形成される第2領域に形成され、前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1方向と垂直な方向に重ならないことができる。
【0019】
本発明による光学フィルムの製造方法は、供給部から第1方向に沿って光学フィルムを供給するステップと、前記光学フィルムの外側に配置されるマーキング部を調節してマーキングの形成経路を決定するステップと、前記マーキング部から前記光学フィルムを光源で照射してマーキングを形成するステップと、前記供給部と離隔配置される受取部によって前記マーキングが形成された光学フィルムを巻取るステップと、を含むことができる。
【0020】
また、前記マーキングは、第1方向と所定の角度をなすように形成することができる。
【0021】
また、前記光学フィルムには、前記マーキングの両側に沿って突出部がそれぞれ形成されることができる。
【0022】
また、前記マーキングの両側に形成されるそれぞれの突出部は、突出方向への高さが異なって形成されることができる。
【0023】
また、前記供給部から第1方向に沿って光学フィルムを供給するステップの後に、前記光学フィルムの一面上にコーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0024】
また、前記マーキングは、一面にコーティング層が形成される前記光学フィルムの他面上に形成される。
【0025】
また、前記コーティング層は、前記光学フィルムの一面に形成される第1領域に形成され、前記マーキングは、前記コーティング層が形成される前記光学フィルムの一面に対向する他面に形成される第2領域に形成され、前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1方向と垂直な方向に重ならないことができる。
【0026】
本発明による光学フィルムは、上記いずれかの光学フィルムの製造方法により製造されることができる。
【0027】
また、前記マーキングは、溝形状に形成され、前記マーキングの溝深さは、前記光学フィルムの全厚を10とした時、0.5~5の比率で形成されることができる。
【0028】
また、前記マーキングの両側に形成される突出部の高さは、前記光学フィルムの全厚を10とした時、0.5~10の比率で形成されたことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によるマーキングを用いた光学フィルム、光学フィルムの製造装置および製造方法には、軸方向と予め設定された所定の角度をなすようにマーキングを形成して突出部の高さを異なって形成し、延伸処理された光学フィルムの軸方向に沿って物性を異にする点に対応して最適なマーキングを形成することができる効果というがある。
【0030】
また、マーキングの両側に形成される突出部によって表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、フィルムの巻取時に蛇行が発生するのを防止することができるという効果がある。
【0031】
さらに、巻取時に積層される複数のフィルムの間に空気が引き込まれることにより、巻芯固定テープによる押圧不良を解消できるという効果がある。
【0032】
また、本発明による光学フィルムの製造装置および製造方法により製造されるフィルムの一面にはコーティング層が形成され、前記一面に対向する他面にマーキングが形成されることにより、表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、巻取時に蛇行が発生するのを防止することができるという効果がある。
【0033】
なお、コーティング層とマーキングとがフィルムの長手方向に垂直な方向に重ならないことにより、フィルムの巻取時の破断の蓋然性を低減させることができるという効果がある。
【0034】
勿論、このような効果により本発明の範囲が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す側面図である。
図3図2のA部分を拡大した図である。
図4図2のA部分を拡大した図である。
図5】本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置を部分的に示す平面図である。
図6A】第1方向と予め設定された所定の角度をなすように形成されるマーキングを示す図である。
図6B】第1方向と予め設定された所定の角度をなすように形成されるマーキングを示す図である。
図6C】第1方向と予め設定された所定の角度をなすように形成されるマーキングを示す図である。
図7】マーキングの形成角度による各突出部の高さを示すグラフである。
図8】本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す側面図である。
図11図10のA部分を拡大した図である。
図12】本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造装置を示す平面図である。
図13】本発明の第2実施形態による光学フィルムを示す側面図である。
図14】本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
図15A】熱処理温度による水接触角を示すグラフである。
図15B】熱処理温度による表面エネルギーを示すグラフである。
図16A】本発明の第2実施形態による光学フィルムの熱処理温度による摩擦係数(Coefficient of Friction、COF)を示すグラフである。
図16B】表面処理が施されていない光学フィルムの熱処理温度による摩擦係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付した図面を参照して、本発明の具体的な実施形態に関する構成および作用を詳細に説明する。
【0037】
ここで、各図面の構成要素に対して参照符号を付すにあたり、同一の構成要素に限っては、たとえ他の図面上に表示されてもできるだけ同一の符号で表記されていることに留意されたい。
【0038】
図1は、本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す斜視図であり、図2は、本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置を概略的に示す側面図である。
【0039】
図1および図2を参照すれば、本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造装置1は、供給部100と、受取部200と、マーキング部300と、駆動部400とを含むことができる。
【0040】
具体的には、本発明の第1実施形態による供給部100は、光学フィルム10(以下、「フィルム」という)を第1方向(図2基準で左側から右側方向)に沿って供給するもので、外部から動力を受けて、時計方向または反時計方向に回転可能である。
【0041】
この場合、供給部100は、時計方向(図2基準)に回転し、巻かれていたフィルム10が広がり、供給部100と離隔して配置される受取部200側に移動する。
【0042】
供給部100から受取部200側に移動するフィルム10は、受取部200が外部から動力を受けて時計方向に回転するとともに巻取られる。
【0043】
本発明の第1実施形態による受取部200は、供給部100と離隔配置されるもので、供給部100から供給されるフィルム10を巻取ることができる。
【0044】
受取部200は、外部から動力を受けて時計方向または反時計方向に回転し、図2を基準として時計方向に回転しながら供給部100から供給されるフィルム10を巻取ることができる。
【0045】
フィルム10は、供給部100から受取部200に第1方向に沿って移動するが、後に説明するマーキング部300によってフィルム10の一面(図2基準で上面)が光源Lで照射され、溝、グルーブ(groove)の形状を有するマーキング16が形成される。
【0046】
マーキング部300は、供給部100と受取部200との間に配置されるもので、フィルム10を光源Lで照射してマーキング16を形成することができる。
【0047】
本発明において、光源Lはレーザ(laser)であり、光源Lでフィルム10を照射することにより、予め設定される所定の区間で溝形状を有するマーキング16が形成され、マーキング16が形成される区間でマーキング16の両側に沿って外側方向(図3基準上側)に突出部17が突出形成される。
【0048】
突出部17の高さは、マーキング16の溝に相当する底面より相対的に高く形成され、マーキング16が形成される前のフィルム10の一面(図3基準上側)より上側に突出形成される。
【0049】
図3を参照すれば、前記突出部17は、フィルム10の上面(図3基準)を基準として一定の高さを有することができる。
【0050】
突出部17は、フィルム10が受取部200に受取られる過程で一方に傾かないように、ガイドの役割を果たすことができる。
【0051】
図示しないが、フィルム10の上面(図2基準)に突出部17が形成され、受取部200によって巻取られながら受取部200の中心を基準として遠心方向にフィルム10が積層される。この時、突出部17は、突出部17の外側に積層されるフィルム10の下面と接触し、面圧が増加しながらスリップ抵抗性が増加する。
【0052】
また、突出部17によって表面エネルギーが増加し、巻取時にスリップによる蛇行が起こるのを防止することができるという効果がある。
【0053】
これに加えて、フィルム10が層をなして受取部200に積層時に各層の間隔を一定に維持できるという効果がある。
【0054】
また、フィルム10の製造工程で予期せぬ異物が投入される場合に、上側に配置されるフィルム10の押圧圧力によってフィルム10が損傷、破損するのを防止することができるという効果がある。突出部17が高くなるにつれて、巻芯方向への面圧を増加させることができるという効果がある。
【0055】
前記突出部17は、溝、グルーブの形状を有するマーキング16を基準として両側にそれぞれ形成されるが、図3のように、両側に形成される突出部17の高さh1、h2が等しく形成される。
【0056】
これとは異なり、後に説明する駆動部400から動力を受けて、マーキング部300は、光源Lで照射する経路、角度を調節することができ、この時、マーキング16の両側に形成される突出部17の高さh1、h2が異なって形成される。これに関しては後で詳しく説明する。
【0057】
具体的には、前記マーキング16の溝深さdは、光学フィルム10の全厚tを10とした時、0.5~5の比率で形成されることが好ましい。
【0058】
すなわち、マーキング16の溝深さdが0.5以下の比率で形成される場合、突出部17が適正高さに形成されない問題がある。すなわち、溝深さdと突出部17の高さとは比例して増加するが、溝深さdが浅くて突出部17の高さが低く形成される場合、スリップ抵抗の増加効果がわずかになりうる。
【0059】
逆に、マーキング16の溝深さdが5以上の比率で形成される場合、光学フィルム10の破断の危険が急激に増加しうる問題がある。
【0060】
これとともに、前記マーキング16の両側に形成される突出部17の高さは、光学フィルム10の全厚tを10とした時、0.5~10の比率で形成されることが好ましい。
【0061】
すなわち、突出部17の高さh1、h2が0.5以下の比率で形成される場合、スリップ抵抗の増加効果がわずかになりうる問題がある。
【0062】
逆に、突出部17の高さh1、h2が10以上の比率で形成される場合、溝深さdが過度に増加して、光学フィルム10の破断の危険が急激に増加しうる問題がある。
【0063】
レーザ出力を増加させたりマーキング16のパターン角度を変えて突出部17の高さh1、h2および溝深さdを増加させる場合、突出部17の高さ比率10以上では、突出部17の高さがそれ以上大きく増加せずに飽和状態(saturation)になるが、溝深さdは増加し続ける。突出部17の高さ比率が10程度になった時、溝深さdの比率が5程度になるので、これを基準比率値として選定することが好ましい。
【0064】
この場合、前記光学フィルム10の表面および裏面のいずれか1つ、または前記光学フィルム10の表面および裏面の両方ともには、所定厚さのコーティング層(図示せず)が積層できる。そして、光学フィルム10の表面にコーティング層が形成された場合、前記マーキング16は、光学フィルム10のコーティング層上に形成される。
【0065】
前記コーティング層は、反射防止(Anti‐reflection)、防眩(Anti‐glare)、散乱防止(Anti‐scattering)、光学フィルム保護(Protective)など多様な機能性の役割を付与する。
【0066】
この場合、本発明で用いたコーティングはASG(Anti‐semi‐glare)コーティングである。コーティング層は、一般的にフィルムに比べて硬い物質からなっていて、破断に敏感で表面エネルギーが低い(PETフィルム45mN/m>ASG_PETフィルム30mN/m)。表面エネルギーが低くなるにつれて、光学フィルム10の巻取工程時にスリップが起こりやすい。これにより、光学フィルム10の周縁にレーザマーキングにより突出部17を作る。この場合、レーザマーキング16をコーティング層が形成された光学フィルム10の表面に形成する場合、破断の危険が増加しうる。したがって、前記レーザマーキング16は、コーティング層が形成されない光学フィルム10の裏面に形成することが好ましい。
【0067】
図5を参照すれば、前記マーキング部300は、フィルム10の長手方向を基準として中央部に形成される有効領域11の両側周縁であるマーキング領域15に光源Lで照射してマーキング16を形成することができる。
【0068】
フィルム10は、有効領域11と、マーキング領域15とからなり、本明細書において、有効領域11は、フィルム10の一面中にディスプレイパネルに付着する領域を意味する。有効領域11は、フィルム10上に第1方向(図5基準上下方向)に沿って形成される。
【0069】
有効領域11は、フィルム10の長手方向の中心を基準として予め設定された所定の幅を有するように形成される。すなわち、フィルム10の幅方向の中央部に形成される領域である。
【0070】
本明細書において、「マーキング領域15」は、フィルム10の一面中にディスプレイパネルに付着する領域である有効領域11を除いた領域で、フィルム10上に第1方向(図5基準上下方向)に沿って形成される。
【0071】
マーキング領域15は、フィルム10の長手方向(図5基準上下方向)の中心を基準として有効領域11の両側、すなわちフィルム10の周縁に形成される。
【0072】
本発明の第1実施形態によるマーキング部300は、マーキング領域15の上側(図2基準)に配置され、後に説明する駆動部400から動力を受けてマーキング16の形成経路、光源Lの照射角度が調節可能である。
【0073】
また、マーキング部300は、複数備えられて、有効領域11の両側に形成されるマーキング領域15にそれぞれ配置される。
【0074】
これにより、フィルム10の有効領域11の両側周縁に形成されるマーキング領域15にそれぞれマーキング16が形成される。これに加えて、マーキング領域15に形成される各マーキング16間の間隔によって有効領域11の幅が決定可能である。
【0075】
駆動部400は、マーキング部300と連結されるもので、マーキング部300を移動させることができる。このような駆動部400は、マーキング部300に動力を伝達してマーキング部300を移動させ、マーキング部300が移動するにつれて、マーキング16は、第1方向と予め設定された所定の角度をなして形成される。
【0076】
この場合、駆動部400は、供給部100と受取部200との間に配置され、供給部100と受取部200との間で移動するフィルム10の上側に配置される。駆動部400は、マーキング部300と電気的に連結され、マーキング部300に動力を伝達してマーキング部300の照射経路、角度を制御することができる。
【0077】
この場合、本発明では、マーキング部300を駆動部400によって移動させる場合(Gun type laser)の一例を挙げて図示および説明したが、これに限定されない。すなわち、前記マーキング部300は、それ自体で光学的な方式(Scanner type laser)によりレーザビームを所望の角度に照射してマーキング16を形成する方式に変更適用可能である。
【0078】
図6A図6Cを参照すれば、前記フィルム10の移動方向は、第1方向、すなわち下側から上側方向(図6A基準)であり、マーキング部300から照射する光源Lによって形成されるマーキング16は、第1方向と予め設定された所定の角度をなして形成される。
【0079】
具体的には、図6Aにて、マーキング16は、フィルム10の移動方向(machine direction、MD)と同一の方向に形成され、マーキング16の形成経路と第1方向とは0゜をなすように形成される。
【0080】
この場合、マーキング16の形成経路と第1方向とが0゜をなすことにより、マーキング16の両側に形成される左側突出部17の高さh1と右側突出部17の高さh2とが等しく形成される。
【0081】
前記マーキング16は、フィルム10の移動方向である第1方向(図6B基準上下方向)と所定角度θ1をなし、具体的には、第1方向と15゜をなすように形成される。
【0082】
図6Bを参照すれば、マーキング16の形成経路と第1方向とが15゜をなすことにより、マーキング16の両側に形成される左側突出部17の高さh1より右側突出部17の高さh2が相対的に高く形成される。
【0083】
図6Cにて、マーキング16は、フィルム10の移動方向である第1方向(図6C基準上下方向)と所定角度θ2をなし、具体的には、第1方向と30゜をなすように形成される。
【0084】
この場合、前記マーキング16の形成経路と第1方向とが30゜をなすことにより、マーキング16の両側に形成される左側突出部17の高さh1より右側突出部17の高さh2が相対的に高く形成される。
【0085】
図6Cにおける右側突出部17の高さh2は、図6Bにおける右側突出部17の高さh2よりも高く形成され、左側突出部17の高さh1は、図6Bにおける左側突出部17の高さよりも低く形成される。
【0086】
ディスプレイの材料として用いられる光学フィルム10の場合、一般的に延伸して用いられるので、軸方向、具体的には、第1方向に沿って引張強度(tensile strength)、伸び率(elongation)、熱吸収/伝導、体積膨張などの程度が異なって発生することがある。
【0087】
したがって、フィルム10の物性に応じて突出部17の高さを調節しなければならず、マーキング16の形成経路をフィルム10の供給方向である第1方向と予め設定された所定の角度をなすようにする必要がある。
【0088】
前記駆動部400は、マーキング部300に動力を伝達してマーキング部300が第1方向と予め設定された所定の角度、具体的には0゜~180゜をなすように形成される。
【0089】
駆動部400は、マーキング部300と連結され、マーキング部300が駆動部400上で移動し、光源Lの照射経路、角度が調節可能である。
【0090】
前記マーキング部300は、駆動部400上で予め設定された所定の方向(図2基準で左右方向)に移動可能である。しかし、これに限定するものではなく、図5を基準として左右方向にも移動可能であるなど多様な変形実施が可能である。
【0091】
図示しないが、マーキング部300からの光源Lの照射がフィルム10の一面(図2基準で上面)に入射する角度も調節可能である。
【0092】
これにより、マーキング部300からの光源Lの照射がフィルム10のマーキング領域15上にマーキング16を形成し、この時、マーキング16の両側に形成される左側突出部17の高さh1と右側突出部17の高さh2とが等しい(0゜、180゜の場合)か、互いに異なる(0゜超過180゜未満の場合)ように形成される。
【0093】
図7を参照すれば、マーキング16と第1方向(図6A基準上下方向)とのなす角度による突出部17の高さを示すグラフで、角度によって左側突出部17の高さh1、右側突出部17の高さh2が等しいか、異なるように形成される。
【0094】
したがって、フィルム10の物性に応じて同一のレーザ光源Lの出力において最適な突出部17の高さを有するマーキング16の形成角度が異なって形成されるので、駆動部400でマーキング部300の駆動を制御してマーキング16の形成経路および第1方向との角度を設定することができる。
【0095】
これにより、フィルム10の物性に対応するように第1方向と予め設定された所定の角度をなすマーキング16の形成経路を調節することができ、最適な突出部17の高さにおいてフィルム10の厚さ偏差による面圧分布を増加させ、巻取時にフィルム10間の界面が完全に密着するのを防止して、空気を引き込ませてスリップ抵抗性を増加させることができる。
【0096】
スリップ抵抗性が増加することにより、巻取時に蛇行が起こるのを防止することができ、積層されるフィルム10の界面の間に空気が引き込まれるので、これによって巻取時に発生する押圧不良を抑制できるという効果がある。
【0097】
以下、本発明の第1実施形態によるマーキングを用いた光学フィルムの製造装置の作動原理および光学フィルムの製造方法に関して説明する。図8は、本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【0098】
図8を参照すれば、本発明の第1実施形態による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムを供給するステップS10と、角度を調節してマーキングの形成経路を決定するステップS20と、光源で照射してマーキングを形成するステップS30と、光学フィルムを巻取るステップS40とを含むことができる。
【0099】
光学フィルムを供給するステップS10では、供給部100から光学フィルム10を第1方向(図2基準左側から右側方向)に供給する。
【0100】
供給部100は、外部から動力を受けて時計方向または反時計方向に回転可能であり、図2を参照すれば、時計方向に回転してフィルム10を右側方向(図2基準)に移動させることができる。
【0101】
マーキングの形成経路を決定するステップS20では、光学フィルム10の上側に配置されるマーキング部300を調節してマーキング16の形成経路を決定することができる。
【0102】
マーキング部300は、供給部100と受取部200との間に配置され、フィルム10の上側(図2基準)に配置される駆動部400から動力を受けてマーキング16の形成経路を決定することができる。
【0103】
ここで、マーキング16の形成経路とは、マーキング16だけでなく、溝、グルーブ形状に形成されるマーキング16の両側に沿ってともに形成される突出部17の形成経路も併せて意味するものである。
【0104】
すなわち、マーキング16が形成されると、マーキング16の長手方向に沿ってマーキング16の左側、右側にそれぞれ予め設定された所定の高さh1、h2を有する突出部17が形成されるのである。
【0105】
駆動部400は、マーキング部300を移動、回転させてマーキング16の形成経路を決定することができる(図1参照)。
【0106】
具体的には、図6A図6Cを参照すれば、フィルム10の供給方向である第1方向(図6A基準上下方向)とマーキング16とが予め設定された所定の角度を有するように、マーキング部300を移動、回転させることができる。
【0107】
図示しないが、駆動部400、マーキング部300と電気的に連結されて、駆動部400から電気的信号を受けてマーキング部300の駆動を制御する制御部(図示せず)を含むことができる。
【0108】
図6Aは、第1方向とマーキング16の形成経路とが0゜をなすものであり、図6Bは、第1方向とマーキング16の形成経路とが15゜をなすものであり、図6Cは、第1方向とマーキング16の形成経路とが30゜をなす状態を示す図である。
【0109】
しかし、これに限定するものではなく、マーキング16の形成経路は、第1方向(図6A基準上下方向)と0゜~180゜の範囲内で予め設定された所定の角度をなして形成されてもよいなど多様な変形実施が可能である。
【0110】
マーキングを形成するステップS30では、マーキング部300から光学フィルム10に向かって光源Lで照射してマーキング16を形成する。マーキングを形成するステップS30では、マーキングの形成経路を決定するステップS20で決定された経路に沿って光源Lで照射することができる。
【0111】
図6A図6Cを参照すれば、フィルム10の供給方向(図6A基準上下方向)に対して予め設定された所定の角度をなしてマーキング16が形成される。
【0112】
図4図6B図6Cを参照すれば、マーキング16が第1方向と予め設定された所定の角度をなして形成されながらマーキング16の両側に突出形成される左側、右側突出部17の高さh1、h2が異なって形成される。
【0113】
これにより、延伸処理されたフィルム10の軸方向(図5基準上下方向)に沿って引張強度、熱吸収/伝導、体積膨張などの物性が異なって形成され、面圧、スリップ抵抗性を増加させることができる最適な突出部17の高さが異なる点を考慮する時、フィルム10によって突出部17の高さを異なって形成することができる効果がある。
【0114】
光学フィルムを巻取るステップS40では、供給部100と離隔配置される受取部200が外部から動力を受けて時計方向(図2基準)に回転し、フィルム10の供給方向である第1方向(図6A基準上下方向)と予め設定された所定の角度をなすマーキング16が形成されたフィルム10が巻取られる。
【0115】
この場合、フィルム10上のマーキング領域15に形成されるマーキング16の両側の突出部17によって表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、フィルム10の巻取時に蛇行が発生するのを防止することができるという効果がある。
【0116】
これに加えて、巻取時に積層される複数のフィルム10の間に空気が引き込まれることにより、巻芯固定テープによる押圧不良を解消できるといおう効果がある。
【0117】
これに加えて、マーキング16とフィルム10の供給方向である第1方向とが予め設定された所定の角度をなすことにより、マーキング16の両側に形成される突出部17、具体的には、左側突出部17の高さh1と右側突出部17の高さh2とが異なって形成され、一般的に延伸処理されたフィルム10の軸方向(図5基準上下方向)に沿って物性が異なる点を考慮する時、これを反映して最適なマーキング16、突出部17の形成が可能という効果がある。
【0118】
一方、図9および図10を参照すれば、本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造装置1’は、供給部100と、受取部200と、コーティング部500と、マーキング部300とを含むことができる。
【0119】
本発明の第2実施形態による供給部100と受取部200は、第1実施形態による光学フィルムの製造装置1と同一に構成される。
【0120】
光学フィルム10は、供給部100から受取部200に第1方向に沿って移動するが、後に説明するコーティング部500によってフィルム10の一面(図10基準上面)がコーティング処理されるか、コーティング処理されるフィルム10の一面に対向する他面(図10基準下面)でマーキング部300によってマーキング16が形成される。
【0121】
前記コーティング部500は、供給部100と受取部200との間に配置されるもので、光学フィルム10の一面(図10基準上面)にコーティング層CLを形成することができる。
【0122】
具体的には、前記コーティング部500は、第1方向に沿って移動する光学フィルム10の上面に溶液コーティング→硬化→乾燥工程を経てコーティング層CLを形成することができる。
【0123】
コーティング部500からコーティング液がフィルム10上に流出して表面処理が行われる。具体的には、フィルム10は、PET(polyethylene terephthalate)で形成される。
【0124】
前記コーティング層CLはASG(Anti‐Semi‐Glare)コーティング層CLで、具体的には、マイクロ粒子、UV硬化した樹脂、フッ素(fluorine)ベースの添加剤で形成される。
【0125】
前記コーティング部500によってフィルム10上にコーティング層CLが形成され、コーティング層CLが形成されないフィルム10に比べて硬度が増加できる。
【0126】
前記コーティング部500は、フィルム10の長手方向と垂直をなす方向(図12基準左右方向)にわたって配置される。
【0127】
図12を参照すれば、フィルム10は、有効領域11と、マーキング領域15とからなり、本明細書において、「有効領域11」は、フィルム10の一面中にディスプレイパネルに付着する領域を意味する。有効領域11は、フィルム10上に第1方向(図12基準で上下方向)に沿って形成される。
【0128】
有効領域11は、フィルム10の長手方向(上下方向)の中心を基準として予め設定された所定の幅を有するように形成される。すなわち、フィルム10の幅方向の中央部に形成される領域である。
【0129】
本明細書において、「マーキング領域15」は、フィルム10の一面中にディスプレイパネルに付着する領域である有効領域11を除いた領域で、フィルム10上に第1方向に沿って形成される。
【0130】
前記マーキング領域15は、フィルム10の長手方向(上下方向)の中心を基準として有効領域11の両側、すなわちフィルム10の周縁に形成される。
【0131】
フィルム10、具体的には、マーキング領域15の下側には後に説明するマーキング部300が配置され、上側にはコーティング部500が配置される。コーティング部500は、フィルム10の有効領域11の予め設定された所定の領域にコーティング層CLを形成することができる。
【0132】
マーキング部300は、コーティング部500が位置したフィルム10の一側(図9基準上側)に対向する他側(図9基準下側)に配置され、フィルム10に光源Lで照射してマーキング16を形成することができる。
【0133】
図13を参照すれば、コーティング部500は、マーキング部300と第1方向に垂直な方向に重ならないように配置される。
【0134】
すなわち、フィルム10の予め設定された所定の区間において一面(図9基準で上面)にはASGコーティング層CLが形成され、垂直方向(図10基準で上下方向)への対応する他面(図9基準で下面)にはマーキング16が形成されない。
【0135】
ASGコーティング層CLとマーキング16とがフィルム10の第1方向と垂直な方向に重なる領域に配置されないことにより、重なるものに比べて、フィルム10の巻取時に破断するのを防止することができる。
【0136】
つまり、フィルム10にASGコーティング層CLが形成される過程でUV硬化によって高い硬度を有し、これに対応する他面上にマーキング部300が光源Lで照射してマーキング16が形成されると、マーキング16の溝(またはグルーブ(groove))が形成される。
【0137】
マーキング16の溝の深さによってフィルム10の破断の危険性が増加するが、第1方向と垂直な方向にマーキング16とコーティング層CLとが重ならないことによって破断の危険性を低減させることができる。
【0138】
これに加えて、マーキング16の両側に形成される突出部17によって表面エネルギーが増加し、スリップ抵抗性が向上して、フィルム10の巻取時の蛇行が防止できるという効果がある。
【0139】
前記マーキング部300は、光学フィルム10を挟んでコーティング部500と離隔配置され、コーティング層CLが形成される光学フィルム10の一面に対向する他面上に光源Lで照射してマーキング16を形成することができる。
【0140】
本発明において、光源Lはレーザ(laser)であり、光源Lでフィルム10を照射することにより、予め設定される所定の区間で溝形状を有するマーキング16が形成され、マーキング16が形成される区間でマーキング16の両側に沿って外側方向(図11基準下側)に沿って突出部17が形成される。
【0141】
前記突出部17は、フィルム10の下部面を基準として下側方向に突出して一定の高さを有することができる。図11を参照すれば、突出部17は、フィルム10が受取部200に受取られる過程で一方に傾かないように、ガイドの役割を果たすことができる。
【0142】
図示しないが、フィルム10の下面に突出部17が形成され、受取部200によって巻取られながら受取部200の中心を基準として遠心方向にフィルム10が積層される。この時、突出部17は、突出部17の内側にすでに巻取られたフィルム10の上面と接触し、面圧が増加しながらスリップ抵抗性が増加する。
【0143】
これに加えて、フィルム10が層をなして受取部200に積層時に各層の間隔を一定に維持できるという効果がある。
【0144】
また、光学フィルム10の製造工程で予期せぬ異物が投入される場合に、上側に配置されるフィルム10の押圧圧力によってフィルム10が損傷、破損するのを防止することができるという効果がある。突出部17が高くなるにつれて、巻芯方向の面圧を増加させることができるという効果がある。
【0145】
図11および図12を参照すれば、前記マーキング部300によってフィルム10、具体的には、マーキング領域15に形成される突出部17によってフィルム10の表面エネルギーが増加し、スリップ抵抗性が増加し、巻取時にスリップによる蛇行が起こるのを防止することができるという効果がある。
【0146】
前記マーキング部300は、フィルム10の長手方向を基準として中央部に形成される有効領域11の両側周縁であるマーキング領域15にマーキング16を形成することができる。
【0147】
マーキング16は、コーティング層CLが形成されるフィルム10の上面に対向する他面に形成され、フィルム10の長手方向に垂直をなす方向で重ならないように形成される。
【0148】
これにより、マーキング16が溝形状に形成されても、コーティング層CLの位置に対応しないので、UV硬化したコーティング層CLによって硬度が高くなった領域に対応する他面に突出部17が形成されるものに比べて、巻取時のフィルム10の破断の可能性を低減させ、突出部17によって表面エネルギーおよびスリップ抵抗性を増加させて、巻取時の蛇行の発生を低減させることができる。
【0149】
図12を参照すれば、前記マーキング部300は、複数備えられて、有効領域11の両側に形成されるマーキング領域15に配置される。これにより、フィルム10の有効領域11の両側周縁に形成されるマーキング領域15にそれぞれマーキング16が形成される。
【0150】
マーキング領域15に形成される各マーキング16間の間隔によって有効領域11の幅が決定可能であり、これにより、コーティング層CLが形成される領域も増加できる。
【0151】
以下、本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造装置の作動原理および光学フィルムの製造方法に関して説明する。図14は、本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【0152】
図9図14を参照すれば、本発明の第2実施形態による光学フィルムの製造方法は、光学フィルムを供給するステップS10と、コーティング層を形成するステップS20と、マーキングを形成するステップS30と、光学フィルムを巻取るステップS40とを含むことができる。
【0153】
光学フィルムを供給するステップS10では、供給部100から光学フィルム10を第1方向(図10基準左側から右側方向)に供給する。供給部100は、外部から動力を受けて時計方向または反時計方向に回転可能であり、時計方向に回転してフィルム10を右側方向(図10基準)に移動させることができる。
【0154】
コーティング層を形成するステップS20では、光学フィルム10の一面上にコーティング層CLを形成するもので、ASGコーティング層CLが形成されるが、これに限定するものではなく、多様な機能性コーティング層が形成されてもよいことはもちろんである。
【0155】
図12図13を参照すれば、前記コーティング層CLは、フィルム10の一面(図13基準上面)に形成され、フィルム10の有効領域11上に形成される。
【0156】
コーティング層CLは、後に説明するマーキングを形成するステップS30で形成されるマーキング16とフィルム10の第1方向と垂直な方向で重ならないように形成される。
【0157】
すなわち、コーティング層CLが形成されるフィルム10の上面に対応するフィルム10の下面にはマーキング16が形成されず、マーキング16が形成されるフィルム10の下面に対応するフィルム10の上面にはコーティング層CLが形成されないのである。
【0158】
図15A図15Bを参照すれば、コーティング層が形成されたフィルムCLとコーティング層が形成されないフィルムNCLをガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)、溶融温度(melting temperature、Tm)付近で熱処理した後、表面エネルギーの結果を測定したものであるが、常温でコーティング層が形成されないフィルムNCLに比べて、コーティング層が形成されたフィルムCLの表面エネルギーが非常に低いことが分かる。コーティング後に、フィルム10の表面エネルギーが減少することにより、スリップ抵抗性が低下し、巻取時に蛇行が発生する可能性が増加する問題点がある。
【0159】
これに対し、溶融温度付近で熱処理後にはコーティング層が形成されないフィルムNCLの表面エネルギーが常温に比べて増加するが、これにより、レーザ光源で照射されてフィルム10の表面が溶融する場合に、スリップ抵抗性が増大し、蛇行発生の可能性を抑制することができる。
【0160】
図16A図16Bを参照すれば、コーティング層が形成されたフィルムをガラス転移温度(Tg)、溶融温度(Tm)付近で熱処理した後、摩擦係数(Coefficient of Friction、COF)を測定したもので、図16Aは、コーティング層が形成されたフィルムCLの摩擦係数を測定したものであり、図16Bは、コーティング層が形成されないフィルムNCLの摩擦係数を測定したものである。
【0161】
具体的には、図16A図16Bを参照すれば、摩擦係数測定装置をもって荷重200g(Case1)、700g(Case2)でフィルム表面間の界面摩擦力を測定したもので、荷重が低いCase1の場合、溶融温度(Tm)で熱処理した後にも、コーティング層が形成されないフィルムNCLに比べて表面摩擦力が非常に低いことが分かる。
【0162】
表面摩擦力が低いというのは、スリップ抵抗に弱いということであり、巻取時に蛇行が発生する可能性が高いことを意味する。
【0163】
マーキングを形成するステップS30では、光学フィルム10の外側(図10基準下側)に配置されるマーキング部300から光学フィルム10に光源Lで照射してマーキング16を形成することができる。
【0164】
マーキング部300は、フィルム10の長手方向である第1方向に垂直な方向に沿ってフィルム10の上面にコーティング層CLが形成されない領域に対応するフィルム10の下面に光源L、すなわちレーザで照射してマーキング16を形成することができる。
【0165】
マーキング16が溝形状に形成されることにより、マーキング16の両側に突出部17が突出形成され、突出部17が形成されることにより、表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、巻取時に蛇行が発生するのを防止することができる効果がある。
【0166】
これに加えて、マーキング16が形成される領域の上側にコーティング層CLが形成されず、コーティング層CLとマーキング16とが重ならないことにより、ASGコーティング層CLが形成される過程で、UV硬化による表面エネルギーの減少に加えて、溝形状のマーキング16の深さによる破断の危険性が増加するのを防止することができる。
【0167】
光学フィルムを巻取るステップS40では、供給部100と離隔配置される受取部200が外部から動力を受けて時計方向に回転し、コーティング層CLが形成され、マーキング16が形成されたフィルム10が巻取られる。
【0168】
マーキングを形成するステップS30において、フィルム10上のマーキング領域15に形成されるマーキング16の両側の突出部17によって表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、フィルム10の巻取時に蛇行が発生するのを防止することができるという効果がある。
【0169】
本発明による光学フィルムの製造装置1および製造方法により製造されるフィルム10の一面にはコーティング層CLが形成され、前記一面に対向する他面にマーキング16が形成されることにより、表面エネルギー、摩擦系数、スリップ抵抗性が増加し、巻取時に蛇行が発生するのを防止することができるという効果がある。
【0170】
また、コーティング層CLとマーキング16とがフィルム10の長手方向に垂直な方向に重ならないことにより、フィルム10の巻取時の破断の可能性を低減させることができるという効果がある。
【0171】
以上、本発明を特定の具体的な実施形態を挙げて図示および説明したが、勿論、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な変更と修正が可能である。
【符号の説明】
【0172】
1:光学フィルムの製造装置
L:光源
10:光学フィルム
11:有効領域
15:マーキング領域
16:マーキング
17:突出部
100:供給部
200:受取部
300:マーキング部
400:駆動部
500:コーティング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
【国際調査報告】