(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】粒子形成が減少した膜
(51)【国際特許分類】
B01D 69/00 20060101AFI20221125BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20221125BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20221125BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20221125BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20221125BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20221125BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20221125BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/10
B01D71/34
B01D71/48
B01D71/64
B01D71/68
B01D69/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520010
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020051809
(87)【国際公開番号】W WO2021067058
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボンヤディ,シーナ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA21
4D006MA23
4D006MA24
4D006MA25
4D006MB20
4D006MC29
4D006MC48
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63X
4D006NA05
4D006NA10
4D006NA16
4D006NA45
4D006PA01
4D006PC01
(57)【要約】
本明細書において、第1の表面と、第1の表面と反対の第2の表面と、第1の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を有するスキンと、孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配とを有する膜が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面;
第1の表面と反対の第2の表面;
第1の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を有するスキン;及び
孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配
を含む、膜。
【請求項2】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
第2の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔がないスキンを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の膜。
【請求項4】
ASTM F316-03(2011)の試験方法Bに従って、湿潤流体としてエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用し、第1の表面から第2の表面に湿潤流体を流して測定した場合、約40psi~約75psiの範囲の平均バブルポイントを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
ASTM F316-03(2011)の試験方法Bに従って、湿潤流体としてエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用し、第2の表面から第1の表面に湿潤流体を流して測定した場合、約75psi~約150psiの範囲の平均バブルポイントを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
膜の厚さが、約40ミクロン~約150ミクロンの範囲にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
第1の表面のスキンの厚さが、0より大きく約2ミクロンまでの範囲にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
第1の表面のスキンが約15%以下の多孔率を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
第2の表面が約10%~約60%の範囲の多孔率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
第2の表面が、第1の表面のスキンより大きな多孔率を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の膜を含むフィルタ。
【請求項12】
フィルタを粒子脱落試験にかけると、膜が60分基準で300未満の粒子を脱落させる、請求項11に記載のフィルタ。
【請求項13】
フィルタを粒子脱落試験にかけると、膜が60分基準で200未満の粒子を脱落させる、請求項11に記載のフィルタ。
【請求項14】
フィルタを粒子脱落試験にかけると、膜が60分基準で100未満の粒子を脱落させる、請求項11に記載のフィルタ。
【請求項15】
膜を形成する方法であって、
親水性支持体にポリマー溶液を注型して膜を形成すること
を含み、ここで、膜は、
第1の表面;
親水性支持体に接触し、第1の表面と反対の第2の表面;
10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を第1の表面に有するスキン;及び
孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配
を含む、方法。
【請求項16】
親水性支持体がポリエステルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
親水性支持体が二軸配向ポリエチレンテレフタレートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水浴中のポリマー溶液に親水性支持体を浸漬することをさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
水浴が約0℃~約40℃の範囲の温度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
膜が約10重量%~約30重量%の範囲のポリマー含有量を有する、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、形成中に支持体に面する表面での粒子形成が減少した膜に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業は、ウエハを製造するために湿式エッチング及び清浄な工程に依存している。湿式エッチング及び清浄な工程に使用される液体は、濾過されて液体からミクロ夾雑物が除去される。幾つかの実施形態において、これらの湿式エッチング及び清浄な応用分野は、10リットル/分の最小流速の濾過された媒体を搬送することができる膜を有するフィルタを必要とする。そのような高流速は、2,000LMH/バール((リットル/メートル2/時間)/バール)の範囲の最小流束を必要とする。流速及び流束要件を満たす適切な膜としては、浸漬注型したポリマー膜、例えばポリスルホン型膜を含む。しかしながら、浸漬注型工程は、膜の開放側に粒子又はビーズの形成を引き起こし得る。粒子が、膜/フィルタの浄化中に必ずしも除去されるとは限らず、粒子は膜を組み込んだフィルタの使用中に脱落し、それによってフィルタの有効性が低下することがあり得る。粒子形成が減少し、それに従って可能性として粒子脱落が減少する膜に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、膜は、第1の表面;第1の表面と反対の第2の表面;第1の表面に、10,000倍で見た場合に目に見える孔を有するスキン;及び孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配を含む。
【0004】
第1の態様による第2の態様:膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される。
【0005】
先の態様のいずれかによる第3の態様:膜は、第2の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔がないスキンを有する。
【0006】
先の態様のいずれかによる第4の態様:膜は、ASTM F316-03(2011)の試験方法Bに従って、湿潤流体としてエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用し、第1の表面から第2の表面に湿潤流体を流して測定した場合、約40psi~約75psiの範囲の平均バブルポイントを有する。
【0007】
先の態様のいずれかによる第5の態様:膜は、ASTM F316-03(2011)の試験方法Bに従って、湿潤流体としてエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用し、第2の表面から第1の表面に湿潤流体を流して測定した場合、約75psi~約150psiの範囲の平均バブルポイントを有する。
【0008】
先の態様のいずれかによる第6の態様:膜の厚さは約40ミクロン~約150ミクロンの範囲である。
【0009】
先の態様のいずれかによる第7の態様:第1の表面のスキンの厚さは、0より大きく約2ミクロンまでの範囲である。
【0010】
先の態様のいずれかによる第8の態様:第1の表面のスキンは約15%以下の多孔率を有する。
【0011】
先の態様のいずれかによる第9の態様:第2の表面は約10%~約60%の範囲の多孔率を有する。
【0012】
先の態様のいずれかによる第10の態様:第2の表面は第1の表面のスキンより大きな多孔率を有する。
【0013】
第11の態様において、フィルタは、先の態様のいずれかの膜を含む。
【0014】
第11の態様による第12の態様:フィルタは、粒子脱落試験にかけた場合、膜は60分基準で300未満の粒子を脱落させる。
【0015】
第11の態様による第13の態様:フィルタは、粒子脱落試験にかけた場合、膜は60分基準で200未満の粒子を脱落させる。
【0016】
第11の態様による第14の態様:フィルタを粒子脱落試験にかけた場合、膜は60分基準で100未満の粒子を脱落させる。
【0017】
第15の態様において、膜を形成する方法は、親水性支持体にポリマー溶液を注型して膜を形成することを含み、ここで、膜は、第1の表面;親水性支持体に接触し、第1の表面と反対の第2の表面;第1の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を有するスキン;及び孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配を含む。
【0018】
第15の態様による第16の態様:親水性支持体はポリエステルである。
【0019】
第16の態様による第17の態様:親水性支持体は二軸配向ポリエチレンテレフタレートである。
【0020】
第15から第17の態様のいずれかによる第18の態様:水浴中のポリマー溶液に親水性支持体を浸漬することをさらに含む。
【0021】
第18の態様による第19の態様:水浴は約0℃~約40℃の範囲の温度を有する。
【0022】
第15から第19の態様のいずれかによる第20の態様:膜は約10重量%~約30重量%の範囲のポリマー含有量を有する。
【0023】
第20の態様による第21の態様:膜は約10重量%~約15重量%の範囲のポリマー含有量を有する。
【0024】
第20の態様による第22の態様:膜は約15重量%~約30重量%の範囲のポリマー含有量を有する。
【0025】
第15から第22の態様のいずれかによる第23の態様:ポリマー溶液はポリマー、溶媒及び非溶媒を含む。
【0026】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例証となる実施形態の以下の説明を考慮してより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】SEM(走査電子顕微鏡)を用いて2,500の倍率で得られた、本明細書において開示される膜の例示的断面図である。
【
図2】SEMを用いて5,000の倍率で得られた膜の開放側表面の写真である。
【
図3A】SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを含む、実施例2における例示的膜の開放側表面の写真である。
【
図3B】SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを示す、実施例2における例示的膜の開放側の断面写真である。
【
図3C】SEMを用いて10,000の倍率で得られた、実施例2における例示的膜の緻密側表面の写真である。
【
図3D】SEMを用いて10,000の倍率で得られた、実施例2における例示的膜の緻密側の断面写真である。
【
図4A】SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを含む、実施例3における例示的膜の開放側表面の写真である。
【
図4B】SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを示す、実施例3における例示的膜の開放側の断面写真である。
【
図4C】SEMを用いて10,000の倍率で得られた、実施例3における例示的膜の緻密側表面の写真である。
【
図4D】SEMを用いて10,000の倍率で得られた、実施例3における例示的膜の緻密側の断面写真である。
【
図5】実施例4において試験した膜について、y軸に粒子脱落の数及びx軸に時間(分)を示すプロットである。
【
図6A】SEMを用いて5,000の倍率で得られた、実施例5のスキンを有する膜の開放側表面の写真である。
【
図6B】SEMを用いて5,000の倍率で得られた、実施例2のスキンを有する膜の開放側表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、様々な修正や変更を加えた形態とすることが容易に可能であるが、その特質を例示の形で図面に示し、詳細に説明する。しかしながら、本開示の態様を、記載される特定の例証となる実施形態に限定する意図がないことは理解されたい。反対に、意図は、本開示の趣旨及び範囲内にある修正、等価物及び代替物をすべてカバーすることである。
【0029】
本明細書及び添付された特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明瞭に別様に指定しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付された特許請求の範囲において使用される場合、「又は」という用語は、文脈が明瞭に別様に指定しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0030】
「約」という用語は、一般に、記述された値と等価と考えられる(例えば、同一の機能又は結果を有する)数の範囲を指す。多くの事例において、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸めた数を含んでもよい。
【0031】
終点を使用して表現される数の範囲は、その範囲内に包括された数をすべて含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0032】
以下の詳細な説明は、異なる図面において同様の要素に同じ番号を付けた図面を参照して読まれるべきである。詳細な説明及び図面は、必ずしも縮尺通りではなく、例証となる実施形態を描き、本発明の範囲を限定するようには意図されない。描かれた例証となる実施形態は、例示としてのみ意図される。任意の例証となる実施形態の選択された特色は、相反する記載が明言されていない限り、追加の実施形態に組み込むことができる。
【0033】
本明細書において第1の表面及び第1の表面と反対の第2の表面を有する膜が開示される。また膜は、膜断面中に孔径の勾配を有し、膜中の孔径は、第2の表面から第1の表面で形成されたスキンにかけて増加する。第2の表面は、本明細書において「緻密側」と称される。径がより大きい孔を覆うスキンを有する第1の表面は、本明細書において「開放側」と称される。開放側のスキンは、本明細書において「不完全なスキン」とも称され、膜の隣接した部分より比較的少数の孔を有する部分であるが、走査電子顕微鏡(SEM)の下では10,000の倍率で見える、幾つかの孔をなお有する。膜の開放側のスキンの存在は、膜開放側の粒子形成を減少させ、可能性として使用中の膜からの粒子脱落を少量にすると考えられる。
【0034】
図1は、第1の表面102、及び第1の表面102と反対の第2の表面104を有する例示的膜100の断面図を示す。スキン106は第1の表面102に形成される。膜100の厚さの全体にわたって孔がある。幾つかの実施形態において、
図1中の矢によって示されるように孔が、第2の表面104からスキン106にかけて大きさを増す、膜断面中に孔径の勾配がある。孔径の勾配を有する膜はまた非対称とも称される。第1の表面102は開放側であり、第2の表面104は緻密側である。スキン106は、SEMを用いて10,000の倍率で見える孔があるという点で不完全なスキンである。幾つかの実施形態において、スキンは、SEMを用いて10,000の倍率で目に見える孔がないことを意味する「完全な」スキンである第2の表面に形成されてもよい。幾つかの実施形態において、第2の表面は、SEMを用いて10,000の倍率で見た場合、大きさが1ミクロン未満である孔を有するスキンを有することができる。
【0035】
幾つかの実施形態において、膜100はポリマーである。幾つかの実施形態において、膜に使用されるポリマーは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、及びポリフッ化ビニリデンを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、膜100は、約10重量%~約30重量%、約10重量%~約27重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%、約12重量%~約30重量%、約12重量%~約27重量%、約12重量%~約25重量%、約12重量%~約20重量%、約12重量%~約15重量%、約15重量%~約30重量%、約15重量%~約27重量%、約15重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約27重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約30重量%又は約25重量%~約27重量%の範囲、その中のすべての範囲及び下位範囲のポリマー含有量を有する溶液から製造される。以下の実施例4において、また
図5を参照して検討されるように、膜中のポリマーの量を増加させると、膜の開放側の粒子形成の量が減少すると考えられる。
【0036】
幾つかの実施形態において、開放側スキン106は、0より大きく約2ミクロン、0より大きく約1.5ミクロン、0より大きく約1ミクロン、約0.5ミクロン~約2ミクロン、約0.5ミクロン~約1.5ミクロン、約1ミクロン~約2ミクロン、約1ミクロン~約1.5ミクロンの範囲、その中のすべての範囲及び下位範囲の厚さを有する。幾つかの実施形態において、膜100は、約40ミクロン~約150ミクロン、約40ミクロン~約125ミクロン、約40ミクロン~約100ミクロン、約60ミクロン~約150ミクロン、約60ミクロン~約125ミクロン、約60ミクロン~約100ミクロン、約75ミクロン~約150ミクロン、約75ミクロン~約125ミクロン又は約75ミクロン~約100ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0037】
幾つかの実施形態において、開放側スキン106は、SEMの下10,000の倍率で開放側スキンの表面を見て評価して約15%以下、約10%以下又は約5%以下の多孔率を有する。幾つかの実施形態において、第2の表面104は、SEMの下10,000の倍率で第2の表面104の表面を見て評価して約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約15%~約60%、約15%~約50%、約15%~約40%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%の多孔率を有する。幾つかの実施形態において、第2の表面104は、SEMの下10,000の倍率で表面を見て評価して開放側スキン106より大きな多孔率を有する。
【0038】
膜の平均バブルポイント(また平均流動孔圧とも称される)は、バブルポイント及び平均流動孔試験による膜フィルタの孔径特性についての標準試験法と題する、湿潤流体として3Mから入手可能なエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用するように修正された試験法Bを使用するASTM F316-03(2011)に従って測定されてもよい。幾つかの実施形態において、膜は、開放側から緻密側に流動する湿潤流体を用いて測定した場合、約40psi~約75psiの範囲の平均バブルポイントを有する。幾つかの実施形態において、膜は、緻密側から開放側に流動する湿潤流体を用いて測定した場合、約75psi~約150psiの範囲の平均バブルポイントを有する。
【0039】
幾つかの実施形態において、本明細書において開示される膜は、浸漬注型プロセスによって製造される。プロセスは、ポリマー、1種又は複数の溶媒、及び1種又は複数の非溶媒を含む溶液を作成することを含む。上記のように、膜用のポリマーとしては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリイミド及びポリアミドイミドを含むがこれらに限定されない。
【0040】
幾つかの実施形態において、溶液は、約10重量%~約30重量%、約10重量%~約27重量%、約10重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%、約12重量%~約30重量%、約12重量%~約27重量%、約12重量%~約25重量%、約12重量%~約20重量%、約12重量%~約15重量%、約15重量%~約30重量%、約15重量%~約27重量%、約15重量%~約25重量%、約15重量%~約20重量%、約20重量%~約30重量%、約20重量%~約27重量%、約20重量%~約25重量%、約25重量%~約30重量%又は約25重量%~約27重量%の範囲、並びにその中のすべての範囲及び下位範囲のポリマー含有量を有する。
【0041】
幾つかの実施形態において、溶液は、約20重量%~約90重量%、約20重量%~約80重量%、約20重量%~約70重量%、約20重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約20重量%~約40重量%、約30重量%~約90重量%、約30重量%~約80重量%、約30重量%~約70重量%、約30重量%~約60重量%、約30重量%~約50重量%、約40重量%~約90重量%、約40重量%~約80重量%、約40重量%~約70重量%、約40重量%~約60重量%、約50重量%~約90重量%、約50重量%~約80重量%、約50重量%~約70重量%、約60重量%~約90重量%、約60重量%~約80重量%、約70重量%~約90重量%の範囲、並びにすべての範囲及びその中の下位範囲の溶媒含有量を有する。適切な溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラメチル尿素、テトラクロロエタン及びその混合物を含むがこれらに限定されない。
【0042】
幾つかの実施形態において、溶液は、0重量%~約70重量%、約0重量%~約60重量%、0重量%~約50重量%、0重量%~約40重量%、0重量%~約30重量%、0重量%~約20重量%、約10重量%~約70重量%、約10重量%~約60重量%、約10重量%~約50重量%、約10重量%~約40重量%、約10重量%~約30重量%、約20重量%~約70重量%、約20重量%~約60重量%、約20重量%~約50重量%、約20重量%~約40重量%、約20重量%~約30重量%、約40重量%~約70重量%、約40重量%~約60重量%、約50重量%~約70重量%、約60重量%~約70重量%の範囲、並びにすべての範囲及びその中の下位範囲の非溶媒含有量を有する。適切な非溶媒は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール又はトリエチレングリコール)、アルカン(例えば、プロパン、ヘキサン、ヘプタン又はオクタン)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトン)、ニトロプロパン、エーテル(例えば、ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)又はトリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM))、酢酸エチル、酢酸アミル、水、酸(例えば、プロピオン酸、又は塩基及びその混合物を含むがこれらに限定されない。
【0043】
プロセスはまた、親水性支持体フィルムで覆われた移動ベルト又は回転ドラムに溶液を注型すること、及び水浴中で注型溶液に浸漬して膜を形成することを含む。幾つかの実施形態において、親水性フィルムは、ポリエステルフィルム、例えばMylar(登録商標)などの二軸配向したポリエチレンテレフタレートフィルムである。幾つかの実施形態において、親水性フィルムは、ポリエステルフィルム、例えばMelinex(登録商標)462などの片面又は両面に親水性被膜を有する二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであってもよい。幾つかの実施形態において、水浴は、約0℃~約40℃、約0℃~約35℃、約0℃~約30℃、約0℃~約25℃、約0℃~約20℃、約0℃~約15℃、約0℃~約10℃、約5℃~約40℃、約5℃~約35℃、約5℃~約30℃、約5℃~約25℃、約5℃~約20℃、約5℃~約15℃、約5℃~約10℃、約10℃~約40℃、約10℃~約35℃、約10℃~約30℃、約10℃~約25℃、約10℃~約20℃、約10℃~約15℃、約15℃~約40℃、約15℃~約35℃、約15℃~約30℃、約15℃~約25℃、約15℃~約20℃、約20℃~約40℃、約20℃~約35℃、約20℃~約30℃、約20℃~約25℃、約25℃~約40℃、約25℃~約35℃、約25℃~約30℃の範囲、並びにその中の任意の範囲又は下位範囲の温度に維持される。以下の実施例5において検討されるように、水浴の温度を低下させると、スキン中の孔径が小さくなり、膜の開放側の粒子形成の量は減少すると考えられる。
【0044】
本明細書において開示される方法により、不完全な開放側スキンの結果として開放側の粒子がより少なくなり、それによって粒子脱落がより少なくなるものと考えられる。
【0045】
本明細書において開示される膜は、平坦なシート、波形シート又は中空繊維を含むがこれらに限定されない任意の好都合な幾何学図形を有することができる。幾つかの実施形態において、本明細書において開示される膜はフィルタハウジング内部に膜を入れることによりフィルタへ組み込まれる。
【実施例】
【0046】
実施例1
ポリエーテルスルホン膜を、13.9重量%のポリエーテルスルホン、45.5重量%のn-メチルピロリドン、及び40.6重量%のプロピオン酸を有する溶液の作成により形成した。溶液を、疎水性フィルムMylar(登録商標)Aで覆われた移動ベルトに注型した。約25℃の温度を有する浸漬水浴に溶液を通した。形成された膜は非対称であり、疎水性Mylar(登録商標)Aフィルムに面していない緻密側、及び疎水性Mylar(登録商標)Aフィルムと接触する開放側を有していた。
図2は、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて5,000の倍率で得られた膜の開放側表面の写真である。
【0047】
実施例2
親水性のMelinex(登録商標)462フィルムで覆われた移動ベルトに溶液を注型したという点を除いて、実施例1と同じプロセスを使用してポリエーテルスルホン膜を形成した。形成された膜は非対称であり、親水性フィルムに面していない緻密側、及び親水性フィルムと接触する開放側を有していた。予想外にも、膜の開放側は、厚さがおよそ0.5ミクロンである不完全なスキンを有していた。
図3Aは、SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを有する膜の開放側表面の写真である。見てわかるように、スキンは表面に孔を有する。
図3Bは、SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを示す膜の開放側の断面写真である。写真の下方にスキンを示す。
図3Cは、SEMを用いて10,000の倍率で得られた膜の緻密側表面の写真である。
図3Dは、SEMを用いて10,000の倍率で得られた膜の緻密側の断面写真である。
【0048】
実施例3
親水性のMelinex(登録商標)462フィルムで覆われた回転ドラムに、15.5重量%のポリエーテルスルホン、44.4重量%のn-メチルピロリドン及び40.1重量%のプロピオン酸である溶液を注型したという点を除いて、実施例2と同じプロセスを使用して、ポリエーテルスルホン膜を形成した。形成された膜は非対称であり、親水性フィルムに面していない緻密側、及び親水性フィルムと接触する開放側を有していた。予想外にも、膜の開放側は、およそ0.5ミクロンの厚さを有するスキンを有していた。
図4Aに示すのは、SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを有する膜の開放側表面の写真である。見てわかるように、スキンは表面に孔を有する。
図4Bは、SEMを用いて10,000の倍率で得られたスキンを示す膜の開放側の断面写真である。写真の下方にスキンを示す。
図4Cは、SEMを用いて10,000の倍率で得られた膜の緻密側表面の写真である。
図4Dは、SEMを用いて10,000の倍率で得られた膜の緻密側の断面写真である。
【0049】
実施例4
KS-18FX(40nm)Rion粉塵計を使用して粒子脱落が60分間カウントされる粒子脱落試験に、実施例1-3の膜をかけた。
図5に、x軸に経過時間(分)、及びy軸に脱落した粒子の数を用いて結果を示す。データは、疎水性フィルムの代わりに親水性フィルムを使用する場合、粒子脱落が減少することを示す。データはまた15.5重量%のポリマーを有する実施例3の膜が、13.9重量%のポリマーを有する実施例2の膜より粒子脱落が少ないことを示し、膜中のポリマー濃度の増加が粒子脱落量の低下をもたらすように見えることを示す。
【0050】
粒子脱落試験の手順は、フィルタに膜を入れることを含む。水酸化アンモニウム(NH4OH)をガードフィルタに、次いで試験フィルタに、そしてKS-18FX(40nm)Rion粉塵計に通した。試料ラインに目に見える気泡がなくなり、次いで、粉塵計を通る流動が10-20cc/分の間の範囲に低下するまで水酸化アンモニウムを粉塵計に流した。試験フィルタを通る流速は毎分およそ3リットルであった。粉塵計は、60分間試験フィルタ中の膜から脱落した粒子をカウントした。このように、幾つかの実施形態において、本明細書において開示される膜を含むフィルタを粒子脱落試験にかけ、膜は60分基準で300未満の粒子、60分基準で200未満の粒子又は100未満の粒子を脱落し得る。
【0051】
実施例5
水浴が17℃の温度を有する以外は、実施例2に概説した同じ手順を使用して、ポリエーテルスルホン膜を形成した。
図6Aは、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて5,000の倍率で得られたスキンを有する膜の開放側表面の写真である。それに比べて、
図6Bは、SEMを用いて5,000の倍率で得られた実施例2のスキンを有する膜の開放側表面の写真である。写真を比較すれば見てわかるように、より低温の水浴を使用して製造された膜は、開放側スキン中、より小さな孔を有していた。
【0052】
このように本開示のいくつかの例証となる実施形態を記載したが、本明細書に添付された特許請求の範囲内でまだ他の実施形態が可能であり使用することができることを当業者は容易に認識するであろう。この文書によってカバーされた本開示の多数の利点は前述の説明において述べられている。しかしながら、本開示が多くの点で、例証のみであることは理解されよう。変更が、本開示の範囲を超えることなく、詳細に、特に部品の形状、大きさ及び構成の問題において行なわれてもよい。当然ながら、本開示の範囲は、添付された特許請求の範囲が表明される言語において定義される。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面;
第1の表面と反対の第2の表面;
第1の表面に、10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を有するスキン;及び
孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配
を含む、膜。
【請求項2】
ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
ASTM F316-03(2011)の試験方法Bに従って、湿潤流体としてエトキシノナフルオロブタン(HFE-7200)を使用し、第1の表面から第2の表面に湿潤流体を流して測定した場合、約40psi~約75psiの範囲の平均バブルポイントを有する、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
第1の表面のスキンが約15%以下の多孔率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
第2の表面が約10%~約60%の範囲の多孔率を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の膜を含むフィルタ。
【請求項7】
フィルタを粒子脱落試験にかけると、膜が60分基準で300未満の粒子を脱落させる、請求項6に記載のフィルタ。
【請求項8】
膜を形成する方法であって、
親水性支持体にポリマー溶液を注型して膜を形成すること
を含み、ここで、膜は、
第1の表面;
親水性支持体に接触し、第1の表面と反対の第2の表面;
10,000の倍率で見た場合に目に見える孔を第1の表面に有するスキン;及び
孔径の勾配であって、孔径が第2の表面からスキンにかけて増加する、勾配
を含む、方法。
【請求項9】
親水性支持体がポリエステルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
膜が約10重量%~約30重量%の範囲のポリマー含有量を有する、請求項8又は9に記載の方法。
【国際調査報告】