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特表2022-550588フィルターに基づく細胞外小胞核酸単離法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】フィルターに基づく細胞外小胞核酸単離法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221125BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20221125BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N15/10 120Z
C12N15/10 110Z
C12Q1/6806 Z ZNA
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520581
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 US2020053526
(87)【国際公開番号】W WO2021067422
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,658
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515062832
【氏名又は名称】ショウワ デンコウ マテリアルズ(アメリカ),インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムラカミ,タク
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR90
4B063QS14
(57)【要約】
本開示は、サンプルから目的の剤を高い効率で捕捉するシステム、装置及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の小胞由来の核酸を単離する方法であって、前記方法は、
前記サンプルを含む第1の溶液の少なくとも一部を捕捉材料に通過させることであって、前記捕捉材料は、二酸化ケイ素、金属酸化物、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含み、前記サンプル由来の小胞は、前記捕捉材料上又は前記捕捉材料中に捕捉されるものである、前記通過させること
カオトロピック剤及びアルコールを含む第2の溶液を前記捕捉材料に添加すること、
アルコールを含む第3の溶液で前記捕捉材料をすすぐこと、及び
第4の溶液を前記捕捉材料に通過させて前記捕捉材料から前記第4の溶液にRNAを溶出することを含む、
方法。
【請求項2】
前記通過させることの前に、
前記サンプルの塩濃度を300mM~4000mMの間に調整すること、及び/又は
前記サンプルのpHをpH4~pH10のpHに調整することをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カオトロピック剤は、イソチオシアン酸グアニジニウム(GITC)を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の溶液中のGITCの濃度は、0M~6Mである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶液中のGITCの濃度は0.4M~4Mである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記RNAは、25ヌクレオチドより長いRNAを含み、そして前記第2の溶液中の前記アルコールは、エタノールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の溶液中のエタノールの濃度は、20%~80%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の溶液中のエタノールの濃度は、40%~70%である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記RNAは、25ヌクレオチド以下であるRNAを含み、そして前記第2の溶液中の前記アルコールは、前記第2の溶液の50%~99.9%の濃度のエタノールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記RNAは、25ヌクレオチド以下であるRNAを含み、そして前記第2の溶液中の前記アルコールは、前記第2の溶液の70%~95%の濃度のエタノールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の溶液中のアルコールは、前記第3の溶液の30%~99.9%の濃度のエタノールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の溶液中のアルコールは、前記第3の溶液の40%~95%の濃度のエタノールを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第4の溶液は、
水、又は
100mM未満の塩及び20%未満のアルコールを含むバッファーを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第4の溶液は、
水、又は
100mM未満の塩及び20%未満のアルコールを含むバッファーから成る、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルは、尿、血漿、又は血清サンプルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルは、ヒト由来である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記RNAは、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、環状RNA(circRNA)、及び長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)からなる群から選択される少なくとも1つのRNAを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記RNAは、マイクロRNA(miRNA)、環状RNA(circRNA)、及び長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)からなる群から選択される少なくとも1つのRNAを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、3時間未満で実行される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、500×g~5,000×gの遠心分離を用いる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記捕捉材料は、フィルター、ビーズ、繊維又はコーティングを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又は酸化ジルコニウムを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記小胞は、50~100nmの直径を有するエキソソームを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記捕捉材料は、少なくとも2層を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも2層のうち上部の層は、98%の粒子保持効率で0.8μm~1.3μmの粒子保持率を有し、
前記少なくとも2層のうち下部の層は、98%の粒子保持効率で約0.6μm~約1.2μmの粒子保持率を有する、請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、サンプルから目的の剤を高い効率で捕捉するシステム、装置及び方法に関する。
【0002】
サンプルは、いくつかの実施形態においては、生体液サンプルであってよいが、他の実施形態においては、非生体サンプルが用いられる。例えば、いくつかの実施形態において、例えば、ミネラルの含有量、汚染レベル、化学物質又は毒物の含有量、病原体の存在などを評価するために、環境水サンプルを本明細書中に開示される装置に通過させる。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
サンプルから特定の成分を抽出することが望まれることがたびたびある。例えば、多くの医療検査では、患者から得られる液体サンプル(例えば、血液、尿など)を含む、サンプル中のバイオマーカーを分析する。診断又は予後は、健康な患者には存在しないか以前に取得した患者のサンプルから変化したバイオマーカー又は生化学的パターンの同定から導き出すことができる。
【0004】
バイオマーカーを単離又は検出するために体液を用いると、このバイオマーカーが著しく希釈されることが多い。さらに、大抵のバイオマーカーは、組織及び体液中に少量又は中程度の量しか産生されない。目的の化合物が低濃度で存在すると、診断又は予後はあまり正確でない可能性がある。
【0005】
目的の標的化合物が生物学的サンプル中に低濃度で存在すると正確な診断が妨害される可能性がある(又は不可能でさえある)ことを考えると、標的バイオマーカーの濃度を過度に低下させずに患者のサンプルから目的のバイオマーカー及び他の成分を抽出する装置及び方法が必要となる。目的の成分を抽出することは、ろ過、精製、単離及び濃縮を含むが、これらに限定されない、多くの状況において有益である。
【0006】
したがって、装置及び方法のいくつかの実施形態では、液体から標的成分を抽出することができる。特に、本明細書中に開示される装置及び方法は、生体液から核酸、エキソソーム、小胞、並びに他の循環膜結合核酸及び/又はタンパク質含有構造を捕捉するのに有用である。しかしながら、本明細書中に開示される装置及び方法は、有機化合物及び非有機化合物を抽出することができるので、本明細書中に開示される装置及び方法は、生物由来又は非生物由来の液体サンプルに適用できる。
【0007】
従来の小胞単離方法では、生体サンプル中の他の物質から小胞を分離するために超遠心分離法を含むことが多い。超遠心分離法は、高価で潜在的に危険性のある設備の使用により実現される。そのうえ、超遠心分離法では、サンプルを複数のチューブに収集することが多い。その結果、超遠心分離法は、多くの研究所/臨床検査所にとって非実用的な手法又は不可能な手法であることが時々ある。小胞を生体液から単離した後、RNA、DNA、タンパク質などの小胞の中に包まれた又は小胞と結合したバイオマーカーを、小胞を溶解し、そして有機溶媒抽出などの従来の生体分子の単離法によりバイオマーカーを精製することにより単離する。これらの方法は、フェノール及びクロロホルムなどの有毒な有機溶媒並びに手間/時間のかかるプロトコルを必要とするので、有機溶媒抽出を用いる従来の小胞バイオマーカー単離法も、実用的ではない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、1つの態様において、本明細書中に提供されるのは、細胞から生体液中に放出されるエキソソーム、小胞、並びに他の循環膜結合核酸及び/又はタンパク質含有構造を捕捉する装置並びに方法、並びに同じ装置を用いるこれらの小胞と関連する生体バイオマーカーの単離である。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される装置及び方法は、超遠心分離法及び有機溶媒抽出などの小胞に関連するバイオマーカーの従来の単離法に勝る利点を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される装置及び方法を用いると、体積の大きいサンプル中に低濃度で存在する小胞に関連するバイオマーカーを効率的に単離することができる。装置に複数のサンプルアリコートを適用することにより、小胞を装置上に濃縮する。いくつかの実施形態において、サンプルアリコートのろ液を装置に再び通すことにより、小胞収量が増加する。装置中に捕捉された小胞を装置中で溶解し、小胞に関連するバイオマーカーを、溶解溶液中の低濃度のバイオマーカーを希釈することなく、同じ装置を用いて単離する。サンプルから他の物質を除去した後、純粋な小胞に関連するバイオマーカーを小体積の溶出溶液中に放出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例示的な細胞外小胞(EV)RNA単離プロトコルの模式図を示す。第1のステップは、小胞を含有する生体サンプルを捕捉装置に添加することである(ステップ1)。小胞は、このサンプルを遠心分離によりフィルター材料でろ過することにより、サイズ排除/静電気的相互作用によってフィルター材料により捕捉される(ステップ2)。小胞の捕捉後に、小胞を捕捉したフィルターに溶解/結合溶液を添加することにより、小胞を溶解し、そして小胞関連RNAを放出する(ステップ3)。この溶解/結合溶液は、RNAとこのフィルター材料との間で結合できるよう構成されるので、小胞から放出されたRNAは、小胞が溶解した後直ちにフィルター材料に捕捉される。小胞が溶解し、RNAが捕捉された後、残った溶解/結合溶液をろ過により除去する(ステップ4)。フィルター材料を洗浄溶液により洗浄すると、下流の酵素的/非酵素的処理を阻害するおそれがある混入物が取り除かれる(ステップ5、ステップ6)。洗浄ステップは、所望の純度のRNAを取得するために数回繰り返してもよい。フィルターからのRNAの溶出は、溶出溶液を添加することによりなされてよい(ステップ7、ステップ8)。
図2図2は、例示的なフィルター材料を比較した結果を示す。
図3図3は、さらなる例示的なフィルター材料を比較した結果を示す。
図4図4は、尿中EV mRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図5図5は、血漿中EV mRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図6図6は、尿中EV mRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図7図7は、尿中EV miRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図8図8は、血漿中EV miRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図9図9は、尿中EV mRNA抽出用の溶解/結合溶液の比較を示す。
図10図10は、尿中EV mRNA抽出用の洗浄バッファーの比較を示す。
図11図11は、尿中EV mRNA抽出用の溶出の比較を示す。
図12図12は、尿中EV mRNA抽出用の遺伝子発現プロファイル法の比較を示す。
図13図13は、尿中EV miRNA抽出用の遺伝子発現プロファイル法の比較を示す。
図14図14は、EV RNAプロファイル分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
細胞外環境における核酸分解速度が速いので、従来の理解では、核酸が検出用のテンプレートとして利用できる前に分解してしまうので、多くの組織は診断標的として適した核酸を提供することができないことが示唆される。しかしながら、細胞外RNA(及び本明細書中に開示される他のバイオマーカー)は、1つ又は複数のいろいろな種類の膜粒子(
50~80nmの範囲の大きさ)、エキソソーム(50~100nmの範囲の大きさ)、エキソソーム様小胞(20~50nmの範囲の大きさ)、及び微小胞(100~1000nmの範囲の大きさ)と結合することが多い。ナノ小胞、小胞、デキソソーム、ブレブ、プロスタソーム、微粒子、腔内小胞、エンドソーム様小胞、又はエキソサイトーシスによって放出された小胞を含むが、限定されない、他の種類の小胞を捕捉することもできる。本明細書中で用いる場合、用語「エキソソーム」、「小胞」及び「細胞外小胞(EV)」は、この分野におけるそれぞれの通常の意味と一致して用いられ、また細胞膜か内部の膜のいずれかに由来する全ての脱落膜結合粒子を含むと判断されるものとする。明確にするために、各種種類の小胞を記述する用語は概して、別段の明示がない限り、小胞又はエキソソームを指すものとする。エキソソームはまた、細胞膜の一部の脱出性膨出(herniated evagination)(ブレブ形成など)分離と封着(sealing)との両方又はエキソソーム内腔に含まれる、腫瘍由来マイクロRNA又は細胞内タンパク質を含むが限定されない、分子とともに腫瘍由来タンパク質に選択的に結合するホスト循環由来の表面結合分子を含む、腫瘍起源の各種膜結合タンパク質を含有する任意の細胞内膜結合小胞構造から生じる脂質二重層膜によって結合された細胞由来の構造を含んでよい。エキソソームはまた、膜の断片を含んでよい。本明細書中参照するとおり、循環腫瘍由来エキソソーム(CTE)は、腫瘍細胞から循環又は体液へと放出されるエキソソームである。CTEは典型的には、起始細胞(cell-of-origin)特異的エキソソームと同様に、体液から非常に特異的に単離できる特有のバイオマーカーを有する。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される小胞の直径は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900nm又はそれ以上であってよい。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される小胞の直径は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200nm又はそれ未満であってよい。全ての数値に関して本明細書中で用いる場合、用語「約」とは、プラスマイナス30、20、10又は5%を示す値を意味する。
【0011】
1つの態様において、本開示は、サンプル中の小胞から核酸を単離する方法に関する。本明細書中に開示されるいくつかの実施形態によって実現されるように、このような種類の小胞のいずれかを選択的に単離すると、多数の疾患の診断、予後及び監視に役立つことができる、RNA(メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ノンコーディングRNA(ncRNA)、及び環状RNA(circRNA)など)及びDNA(ゲノムDNA(gDNA)、セルフリーDNA(cfDNA)、循環腫瘍DNA(ctDNA)など)を含む結合する核酸並びにその断片の単離及び分析が可能となる。したがって、エキソソーム及び微小胞は、疾患用のバイオマーカーを提供することができる(例えば、腎臓病を評価するための尿からの小胞の単離を含むが、これに限定されない)。本明細書中に開示される装置及び方法を用いて抽出することができる標的化合物としては、タンパク質、脂質、抗体、ビタミン、ミネラル、ステロイド、ホルモン、コレステロール、アミノ酸、小胞、エキソソーム、及び核酸が挙げられる。
【0012】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるサンプルは、生体液サンプルである。いくつかの実施形態において、生体液サンプルは処理される。本明細書中で用いる場合、「体液」とは、通常の意味を示すものであり、例えば、血液、血漿、血清、尿、痰、髄液、胸水、乳頭吸引液、リンパ液、気道、腸管及び泌尿生殖器の液体、涙液、唾液、母乳、リンパ系由来の液体、精液、脳脊髄液、臓器系内部の液体、腹水、腫瘍嚢胞液、羊
水並びにこれらの組み合わせを含むが、限定されない、対象の身体から収集した液体のサンプルも指すものとする。いくつかの実施形態において、サンプルは、ヒト、イヌ、ブタ、マウス、哺乳類などから取得することができる。
【0013】
1つの態様において、本明細書中に記載される核酸の単離方法は、このサンプルを含む第1の溶液の少なくとも一部を捕捉材料に通過させることを含む。このサンプルは、標的小胞を含む。いくつかの実施形態において、対象から取得されたサンプルを、このサンプルを全く希釈することなくこの捕捉材料に適用してよい。さらなる実施形態において、対象から取得されたサンプルを、この捕捉材料に適用する前に、溶液に希釈してよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、小胞及び核酸を捕捉する捕捉材料は(「捕捉材料」)、サンプルから抽出される標的小胞及び小胞の中に包まれた又は小胞と結合した標的核酸を保持することができる任意の適した材料から作製される。いくつかの実施形態において、捕捉材料用に用いられる材料を、材料が標的成分を誘引する性質と材料が適切な条件下標的成分を放出することができる能力との間のバランスをとるよう最適化される。
【0015】
いくつかの実施形態において、捕捉材料は任意選択的に、捕捉材料によって保持される標的成分のプロファイルを目的に合わせるよう修正される。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、帯電し(例えば、静電気的に帯電し)、親水性又は疎水性材料によりコーティングされ、化学的に修飾され、及び/又は生物学的に修飾される。いくつかの実施形態において、捕捉材料のゼータ電位を材料修飾(例えば、静電気的帯電)の基礎として用いる。いくつかの実施形態において、捕捉材料は(ゼータ電位に基づくと)、修飾を必要としない。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、捕捉材料の面に核酸配列を結合することにより修飾される。いくつかの実施形態においては、捕捉材料の面にタンパク質を結合する。いくつかの実施形態においては、捕捉材料の面にビオチン又はストレプトアビジンを結合する。いくつかの実施形態においては、捕捉材料に抗体又は抗体断片を結合する。このような実施形態のいずれも、標的の捕捉効率を有利に上昇させるために利用することができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、小胞と捕捉材料との相互作用及び小胞関連核酸と捕捉材料との相互作用は、静電気的相互作用、疎水的相互作用、ファンデルワールス力、又はこれらの相互作用の組み合わせに基づく。したがって、小胞を含むサンプルの生化学的構成によって、これらの力は変化し、場合によっては捕捉効率を著しく損なう可能性がある。
【0017】
いくつかの実施形態において、捕捉装置は、液体サンプルを保持する容器並びに捕捉材料により小胞及び小胞関連核酸を捕捉する捕捉材料を備える。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、液体サンプルを捕捉材料によりろ過するためのフィルター、ビーズ及び繊維などの多孔構造を有する。捕捉材料を容器の底部に配置することができ、したがって液体サンプルを容器に配置し、その後陽圧、陰圧、遠心力、真空又は重力流の適用により底部の捕捉材料によりろ過することができる。標準的な分子生物学の手法により複数の液体サンプルを同時に処理するために、捕捉装置は、例えば、8-ウェル、12-ウェル、24-ウェル、96-ウェル、384-ウェル及び1536-ウェルのマイクロプレート型式のフィルタープレートなどの、捕捉材料を各容器の底部に配置した複数の容器を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書中の捕捉材料は、単層のフィルター材料を含む。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、複数層のフィルター材料を含む。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、少なくとも第1の層及び第2の層のフィルター材料を含み、このうち第1の層は第2の層の上にあるか又は第2の層の上流の面に配置される。いくつかの実施形態において、サンプルを第1の層のフィルター材料に通過させて液体サ
ンプル中の直径約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm、約1.0μm、約2.0μm、約3.0μm又はそれ以上の成分を捕捉する。フィルター材料の第1の層中の大きな成分を除去することにより、液体サンプルの迅速ろ過を実現し、フィルター材料の詰まりを回避する。いくつかの実施形態において、第1の層のフィルター材料の粒子保持率は、98%の粒子保持効率で約0.8μm~約3.0μmである。いくつかの実施形態において、第1の層のフィルター材料の粒子保持率は、98%の粒子保持効率で約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0又は3.0μm~約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0又は3.5μmである。いくつかの実施形態において、第2の層のフィルター材料の粒子保持率は、98%の粒子保持効率で約0.6μm~約1.2μmである。いくつかの実施形態において、第2の層のフィルター材料の粒子保持率は、第1の層のフィルター材料の粒子保持率より小さいか同一である。いくつかの実施形態において、第2の層のフィルター材料の粒子保持率は、98%の粒子保持効率で約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、又は1.2μm~約0.9、1.0、1.1、1.2又は1.3μmである。いくつかの実施形態において、サンプルを、直径が約1nm~約1000nm、約2nm~約500nm、約3nm~約300nm、約4nm~約200nm、約5nm~約100nmの範囲の大きさの小胞(例えば、エキソソーム、微小胞及び他の小胞)を捕捉するよう本明細書中に記載した第1の層及び/又は第2の層の捕捉材料に通過させる。さらなる実施形態において、サンプルを、約1、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は110nm~約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、又は3000nmの直径を有する小胞(例えば、エキソソーム、微小胞及び他の小胞)を捕捉するよう本明細書中に記載した第1の層及び/又は第2の層の捕捉材料に通過させる。
【0019】
いくつかの実施形態において、捕捉材料は、ガラス様材料又はガラス様材料及び非ガラス様材料の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、捕捉材料は、ガラス様材料を含み、このガラス様材料は、原子スケールで無秩序である、すなわち、「アモルファス」な構造を有する。捕捉材料は、シート、フィルター、ビーズ、繊維、コーティング、又は他の構成を含むが、これに限定されない構成を含んでよい。本明細書中の捕捉材料は、二酸化ケイ素、金属酸化物、混合金属酸化物、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでよい。捕捉材料は、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、他の類似ポリマー、ナノ金属繊維、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル、他のコポリマー、天然繊維(例えばシルク)、アルギン酸繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含んでよいが、これに限定されない。
【0020】
いくつかの実施形態において、小胞は、小胞が捕捉材料の空間を通過するのを妨げる物理的寸法を有する(例えば、大きさに基づく物理的保持)小胞により捕捉材料上又は捕捉材料中に保持される。いくつかの実施形態において、小胞は、小胞と捕捉材料との間の結合力により捕捉材料によって保持される。いくつかの実施形態において、小胞は、捕捉材料と抗原-抗体結合を形成する。いくつかの実施形態において、小胞は、捕捉材料と水素結合を形成する。いくつかの実施形態において、小胞と捕捉材料との間にファンデルワールス力が形成される。いくつかの実施形態において、小胞の核酸配列は、捕捉材料に付着した核酸配列と結合する。
【0021】
いくつかの実施形態において、タンパク質マーカーの表面発現及びそのマーカーを同定する小胞捕捉材料上の相補的な剤(特定の小胞上の抗原を認識する抗体など)に基づいて、小胞の特異的捕捉を実現する。いくつかの実施形態において、このマーカーは、特有の小胞タンパク質又はペプチドである。いくつかの疾患状態においては、このマーカーはまた特定の小胞の修飾を含んでよく、いくつかの実施形態においては、特定の小胞を単離す
るためにこれを用いる。このような実施形態においては、小胞捕捉材料が小胞の修飾を特異的に認識できるように構成してよい。小胞の修飾はまた、脂質、炭水化物、及び例えば、アシル化、ホルミル化、リポイル化(lipoylated)、ミリストリル化(myristolylated)、パルミトイル化、アルキル化、メチル化、イソプレニル化、プレニル化、アミド化、グリコシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、アデニル化、リン酸化、硫酸化、セレノイル化、及びユビキチン化などのその他の分子の添加を含んでよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、小胞捕捉材料は、例えば脂質、炭水化物、核酸、RNA、mRNA、siRNA、microRNA、DNAなどの非タンパク質を含む小胞マーカーを認識するよう構成される。
【0022】
いくつかの実施形態において、小胞が捕捉材料上/中を通過するときに曝される捕捉条件の標的範囲は、約10mM、約50mM、約100mM、約200mM、約300mM、約400mM、約500mM、約600mM、約700mM、約800mM、約900mM、又は、約1000mM(及びこの間の全ての濃度)の低濃度並びに約1000mM、約2000mM、約3000mM、約4000mM又は約5000mM(及びこの間の全ての濃度)を含む高濃度を有する範囲を含む、約1mM~約5000mMの間の一価カチオン(例えば、ナトリウム及び/又はカリウム)を含む。したがって、いくつかの実施形態において、濃度範囲は、約300mM~約4000mM、400mM~約3000mM、500mM~約2000mM、600mM~約1000mM、及びこれらの重なる範囲である。これらの条件と組み合わせて、pHをいくつかの実施形態において、約4、約5、又は約6~約9又は約10(又は列挙したものの間のpH値)に調整する。したがって、実施形態に応じて、pHの範囲には、約4~約10、約5~約9、及び約6~約9が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態において、サンプルを本明細書中に記載した捕捉材料に適用する前に、生体サンプルの生化学的特性を上の好ましい範囲(例えば、塩濃度、pHなど)に調整することは有益である。いくつかの実施形態において、リン酸緩衝食塩水(PBS)又はHEPESバッファーなどのバッファー溶液をサンプルに添加してよい。いくつかの実施形態において、このようなバッファーのpHは、pH約6、7又は8~約7、8又は9の範囲である。いくつかの実施形態において、バッファー中のナトリウム及びカリウムなどの一価カチオンの濃度は、実施形態に応じて、約100mM超、約500mM超、約1000mM超、約2000mM超、約3000mM超であり、時にはずっと高い濃度を必要としてよい。いくつかの実施形態において、捕捉材料に適用される最終溶液(すなわち、尿とバッファー溶液との混合物)は、約600mM~約1000mMのナトリウム及びカリウムなどの一価カチオン、及び約pH4、5、6、7、又は8~約pH5、6、7、8、9又は10を有する。
【0024】
1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、カオトロピック剤及びアルコールを含む第2の溶液をこの捕捉材料に添加することを含む。第2の溶液は、溶解及び/又は結合(「溶解/結合」)溶液であってよい。一度小胞が捕捉材料によって捕捉されると、この捕捉材料に溶解/結合溶液を適用すると小胞の膜を破壊し、小胞から小胞関連核酸を放出することができる。放出された核酸は自発的に、核酸と捕捉材料との間の相互作用力により捕捉材料と結合することができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される捕捉材料は、溶解/結合溶液と約0、10、20、又は30分間~10、20、30又は40分間の期間、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10℃~20、25、30、35、又は40℃の温度でインキュベートしてよい。いくつかの実施形態において、捕捉材料の理想的な構成は、核酸が捕捉材料と結合する代わりに溶液相に放出されるのを回避するよう、表面積対体積比が高いフィルター、メッシュ、繊維、多孔質構造、又は任意の他の面であってよい。捕捉材料により核酸を結合した後、捕捉材料を溶解/結合溶液から除去する。例えば、陽圧、陰圧、遠心力、真空又は重力流の適用により溶
解/結合溶液を捕捉材料に通過させる。
【0025】
いくつかの実施形態において、捕捉材料による核酸の効率的な捕捉に適した溶解/結合溶液は、(i)イソチオシアン酸グアニジニウム(GITC)及び尿素などのカオトロピック剤、並びに(ii)エタノール及びイソプロピルアルコールなどのアルコールを含んでよい。GITCの濃度は、溶解/結合溶液中で約1.0、2.0、3.0、4.0、4.5、5.0若しくは5.5~約3.0、4.0、5.5、6.0若しくは6.5M、約5.0M~6.0M、又は0.4M~4Mであってよい。アルコール(例えば、エタノール)の濃度は、溶解/結合溶液中で約10、20、30、40、50、60、70、80%~20、30、40、50、60、70、80、90又は99%であってよい。25ヌクレオチドより長い核酸を有する長鎖核酸の単離用のアルコール(例えば、エタノール)の濃度は、約20%~約80%、又は約40%~約70%であってよい。25ヌクレオチド以下の核酸を有する短鎖核酸の単離用のアルコール(例えば、エタノール)の含有量は、50%~99.9%、最も好ましくは70%~95%であってよい。溶解/結合溶液のpH範囲は、pH5~pH9.4、pH6~pH9、pH7~pH8.6であってよい。
【0026】
1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、第3の溶液で上述した捕捉材料をすすぐことを含んでよい。捕捉材料により小胞関連核酸を捕捉した後、捕捉材料を洗浄溶液で少なくとも1回すすいで小胞の残屑、非核酸小胞成分及び溶解/結合溶液成分を除去することができる。本方法に適した洗浄溶液は、エタノールなどのアルコールを含んでよく、及び任意選択的にイソチオシアン酸グアニジニウム(GITC)などのカオトロピック剤を含む。洗浄溶液中のアルコール(エタノールなど)の濃度は、30%~99.9%、より好ましくは40%~95%であってよい。いくつかの実施形態において、洗浄溶液中のアルコールの濃度は、約20、30、40、50、60、70、80、90、95又は98%~約30、40、50、60、70、80、90、95、又は99.9%であってよい。GITCの濃度は、0M~2Mであってよい。GITCの濃度は、約0、0.5、1.0、1.5、2.0M~約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5Mであってよい。いくつかの実施形態において、GITCの濃度は、本明細書中に記載される溶解/結合溶液のGITC濃度より低くても同一であってもよい。1種類を超える洗浄溶液を用いてさらに混入物を除去することもあり、例えば、第1の洗浄溶液は、生体混入物を効率的に除去するためにアルコールとカオトロピック剤との両方を含み、そして第2の洗浄溶液は、溶解/結合溶液及び第1の洗浄溶液からカオトロピック剤を除去するためにアルコールのみを含む。各洗浄ステップについて、洗浄溶液を、陽圧、陰圧、遠心力、真空又は重力流の適用により捕捉材料に通過させてよい。任意選択的に、残留アルコールを蒸発させるために0℃~40℃で0~30分間、環境条件又は真空条件で捕捉材料を乾燥させる。
【0027】
1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、第4の溶液を上述した捕捉材料に通過させてこの捕捉材料からこの第4の溶液にRNAを溶出することを含んでよい。捕捉材料によって捕捉された核酸を小さい容積の溶出溶液に収集してよい。本方法に適した溶出溶液は、100mM未満の塩及び20%未満のアルコールを含む、ヌクレアーゼを含まない水又はバッファーであってよい。溶出溶液は、約100、90、80、70、60、50、40、30、又は20mM未満の塩、及び/又は約30、20、10、9、8、7、6、5又は1%未満のアルコールを含むバッファーであってよい。0.01%~0.5%Tween20などの、低濃度の緩やかな洗浄剤を含む溶出溶液は、捕捉材料を自発的に濡らして小胞関連核酸を溶出溶液に迅速に放出させるために有用であってよい。任意選択的に、捕捉材料を約0、10、20、30、37又は40℃~約10、20、30、37又は40℃の温度で約0、10、20、又は30分間~約10、20又は30分間の期間溶出溶液でインキュベートすることができる。溶出溶液中の核酸を、陽圧、陰圧、遠心力、真空又は重力流の適用により捕捉材料に通過させることにより収集してよい。いく
つかの実施形態において、捕捉材料から溶出されるRNAは、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、環状RNA(circRNA)、及び長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)からなる群から選択される少なくとも1つのRNAを含む。いくつかの実施形態において、このRNAは、マイクロRNA(miRNA)、環状RNA(circRNA)、及び長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)からなる群から選択される少なくとも1つのRNAを含む。
【0028】
1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、4時間、3時間、2時間、又は1時間未満で実行される。1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、3時間未満で実行される。1つの態様において、本明細書中に記載される方法は、2時間未満で実行される。別の態様において、この方法では、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000又は5000×g~約1000、2000、3000、4000、5,000、6000、7000又は8000×gの遠心分離が用いられる。別の態様において、この方法では、500×g~5、000×g、100×g~4000×g、1000×g~3000×g、又は800×g~3500×gの遠心分離が用いられる。
【実施例
【0029】
実施例1:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
少量の尿を健康なボランティアから取得した。800×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。尿の上清を1/4体積の25×リン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4と混合し、混合物の12.5mLの各々を3500×gで2分間の遠心分離により各種ガラス繊維フィルター材料A~F及びその組み合わせ(表1)を備えるガラス繊維フィルターチューブを用いてろ過した。溶解/結合溶液を、等体積の4M イソチオシアン酸グアニジニウム(GITC)、50mM Tris-HCl、pH7.5、25mM EDTA溶液及び100%エタノール溶液を混合することにより調製した。1×10コピーの合成Fluc mRNA(Integrated DNA technologies (IDT)、IA)でスパイクした500μLの各溶解/結合溶液をフィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを1mLの各溶解/結合溶液で1回、そして2.5mLの70%エタノールで2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、80μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。
【0030】
mRNAを、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)により定量化した。125μMのdNTPの各々、10μMのランダムヘキサマー、2.6U/μLのMMLV逆転写酵素(Promega、WI)及び0.13U/μLのリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega、WI)を含む20μLの逆転写反応液中で4μLのRNAを、以下の温度プロトコル、25℃で5分間、37℃で60分間、及び85℃で5分間、で用いた。SsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-rad、CA)及び500nMセンス及びアンチセンスプライマーを用いる5μLのリアルタイムPCR反応液中で2μLのcDNAを、以下の温度プロトコル、95℃で10分間、95℃で30秒間及び65℃で60秒間を40サイクルで用い、その後融解曲線解析を行った。4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、ALDOB、Fluc)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。
【0031】
4個の遺伝子全てを首尾よく検出し、ガラス繊維フィルターA、B、C、D、F及びAとBとの組み合わせにより、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図2図3)。
【0032】
実施例2:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
少量の尿を健康なボランティアから取得した。800×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。尿の上清を1/4体積の25×PBS、pH7.4と混合し、混合物の600μLの各々を3500×gで2分間の遠心分離によりガラス繊維フィルターの組み合わせ(A/A/B)(表1)を備える8ウェルフィルターストリップを用いてろ過した。いくつかの種類の溶解/結合溶液を、4M GITC、50mM Tris-HCl、pH7.5、25mM EDTA溶液及び100%エタノール溶液を4M
GITC/0%エタノール、3.6M GITC/10%エタノール、3.2M GITC/20%エタノール、2.8M GITC/30%エタノール、2.4M GITC/40%エタノール、2M GITC/50%エタノール、1.6M GITC/60%エタノール、1.2M GITC/70%エタノール、0.8M GITC/80%エタノール、0.4M GITC/90%エタノール、及び0M GITC/100%エタノールなどの各種割合で混合することにより調製した。60μLの各溶解/結合溶液をフィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを300μLの各溶解/結合溶液で1回、そして300μLの70%エタノールで2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、60μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。
【0033】
mRNAを、RT-PCRにより定量化した。qScript XLT cDNA SuperMix(Quantabio、MA)を用いる20μLの逆転写反応液中で8μLのRNAを、以下の温度プロトコル、25℃で5分間、42℃で60分間、及び85℃で5分間、で用いた。SsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-rad、CA)及び500nMセンス及びアンチセンスプライマーを用いる5μLのリアルタイムPCR反応液中で2μLのcDNAを以下の温度プロトコル、95℃で10分間、95℃で30秒間及び65℃で60秒間を40サイクルで用い、その後融解曲線解析を行った。4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、ALDOB、RPLP0)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。
【0034】
4個の遺伝子全てを首尾よく検出し、0.8M~3.2MのGITC/20%~70%のエタノールを含む溶解/結合溶液により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図4)。
【0035】
実施例3:血漿中細胞外小胞mRNAアッセイ
EDTA血漿を健康なボランティアから取得した。3500×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。上清を1/4体積の25×PBS、pH7.4と混合し、混合物の200μLの各々を3500×gで2分間の遠心分離によりガラス繊維フィルターの組み合わせA/A/B(表1)を備える8ウェルフィルターストリップを用いてろ過した。いくつかの種類の溶解/結合溶液を、4M GITC、50mM Tris-HCl、pH7.5、25mM EDTA溶液及び100%エタノール溶液を4M GITC/0%エタノール、3.6M GITC/10%エタノール、3.2M GITC/20%エタノール、2.8M GITC/30%エタノール、2.4M GITC/40%エタノール、2M GITC/50%エタノール、1.6M GITC/60%エタノール、1.2M GITC/70%エタノール、0.8M GITC/80%エタノール、0.4M GITC/90%エタノール、及び0M GITC/100%エタノールなどの各種割合で混合することにより調製した。100μLの各溶解/結合溶液をフィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを500μLの各溶解/結合溶液で1回、300μLの70%エタノールで2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、60μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分
離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。
【0036】
mRNAを、実施例2に記載したように、リアルタイムRT-PCRにより定量化した。8個の遺伝子(ACTB、GAPDH、B2M、FTH1、FTL、MTRNR2L1、HBB、S100A9)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。8個の遺伝子全てを首尾よく検出し、1.2M~2.8MのGITC/30%~70%のエタノールを含む溶解/結合溶液により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか最大RNA収率を取得した(図5)。
【0037】
実施例4:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
少量の尿を健康なボランティアから取得した。800×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。尿の上清を1/4体積の25×PBS、pH7.4と混合し、混合物の600μLの各々を3500×gで2分間の遠心分離によりガラス繊維フィルターの組み合わせA/A/B(表1)を備える8ウェルフィルターストリップを用いてろ過した。いくつかの種類の溶解/結合溶液を、等体積の4M GITC、50mM Tris-HCl、pH7.5、25mM EDTA溶液及び100%エタノール溶液を混合することにより調製し、pH4、pH5、pH6、pH6.5、pH7.5、pH8.5及びpH9.5に調整した。60μLの各溶解/結合溶液をフィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを300μLの各溶解/結合溶液で1回、そして300μLの70%エタノールで2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、60μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。
【0038】
mRNAを、実施例2に記載したように、リアルタイムRT-PCRにより定量化した。4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、ALDOB、RPLP0)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。
【0039】
4個の遺伝子全てを首尾よく検出し、溶解/結合溶液pH6~pH8.5により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図6)。
【0040】
実施例5:細胞外小胞miRNAアッセイ
実施例2及び実施例3に記載された手順に従って尿又はEDTA血漿から細胞外小胞RNAを単離した。ポリアデニル化/RT-qPCR法を用いてmiRNAを定量化した。
【0041】
25.6U MMLV逆転写酵素(Promega、WI)、1.28U RNasin Ribonuclease Inhibitor(Promega)、1U E. coli Poly(A) Polymerase(New England Biolabs、 MA)、1×E. coli Poly(A) Polymerase Reaction Buffer、1mM ATP、1mM dNTP、0.1μM CAGGTCCAGTTTTTTTTTTTTTTTVN(V:A、G、orC、N:A、G、T又はC)を含む10μLのmiRNA逆転写反応液中で4μLのRNAを、以下の温度プロトコル、5分間、37℃で60分間及び85℃で5分間、で用いた。SsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix(Bio-rad、CA)及び100nMセンス及びアンチセンスプライマーを用いる5μLのリアルタイムPCR反応液中で1μLのcDNAを以下の温度プロトコル、95℃で10分間、95℃で30秒間及び60℃で60秒間を40サイクルで用い、その後融解曲線解析を行った。
【0042】
尿中EV RNAに関して、6個の遺伝子(let7a、miR20a、miR192、miR21、miR23a、miR1246)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。遺伝子全てを首尾よく検出した。70%~90%のエタノールを含む溶解/結合溶液により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図7)。
【0043】
血漿中EV RNAに関して、8個の遺伝子(let7a、miR20a、miR21、miR23a、miR320c、miR1246、miR122、miR150)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。遺伝子全てを首尾よく検出した。70%~90%のエタノールを含む溶解/結合溶液により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図8)。
【0044】
実施例6:細胞外小胞mRNAアッセイ
フィルター上で小胞溶解/RNA結合中に37℃で30分間の長期間インキュベートを用いた以外は、実施例2に記載された手順に従って尿から細胞外小胞RNAを単離した。10分間インキュベートした実施例2に記載された方法と比較して、4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、ALDOB、RPLP0)をアッセイした。10分間のインキュベートと30分間のインキュベートとの間には統計的有意性は観察されず、小胞の溶解及びRNAの結合には10分間のインキュベートで充分だと分かった(図9)。
【0045】
実施例7:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
少量の尿を健康なボランティアから取得した。800×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。10mLの尿の上清を1/4体積の25×PBS、pH7.4と混合し、混合物を3500×gで5分間ガラス繊維フィルターの組み合わせA/B(表1)を備えるフィルターチューブを用いてろ過した。500μLの溶解/結合溶液(2M GITC、25mM Tris-HCl、pH7.5、12.5mM EDTA、50%エタノール)を、フィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを1mLの溶解/結合溶液で1回、そして30%~70%エタノールを含む各種洗浄溶液で2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、80μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。
【0046】
mRNAを、実施例2に記載したように、リアルタイムRT-PCRにより定量化した。4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、UMOD、RPLP0)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。各種洗浄バッファーを用いて4個の遺伝子全てを首尾よく検出した。70%エタノールを含む洗浄バッファーにより、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取得した(図10)。
【0047】
実施例8:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
健康なドナー由来の10mLの尿の上清から、実施例7に記載したようにガラス繊維フィルターチューブによりEV RNAを捕捉した。このフィルターをすすいで、乾燥させた後、フィルターに40~200μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。溶出ステップを2回繰り返した。
【0048】
mRNAを、実施例2に記載したように、リアルタイムRT-PCRにより定量化した。4個の遺伝子(ACTB、GAPDH、UMOD、RPLP0)を表2に列挙したプライマー対で定量化した。4個の遺伝子全てを首尾よく検出した。第1の溶出で80μLの水により、これらの遺伝子の閾値サイクル値が最小になるか、または最大RNA収率を取
得した(図11)。第2及び第3の溶出では、RNAの含量は第1の溶出よりも少なく、RNAが第1の溶出で効率的に溶出されたことが示された(図11)。
【0049】
実施例9:尿中細胞外小胞mRNAアッセイ
少量の尿を健康なボランティアから取得した。800×gで15分間の遠心分離により細胞及び大きな粒子を除去した。40mLの尿の上清を1/4体積の25×PBS、pH7.4と混合し、混合物を3500×gで5分間ガラス繊維フィルターチューブを用いてろ過した。500μLの溶解/結合溶液A(2M GITC、25mM Tris-HCl、pH7.5、12.5mM EDTA、50%エタノール)又は溶解/結合溶液(1.2M GITC、15mM Tris-HCl、pH7.5、7.5mM EDTA、70%エタノール)を、フィルターに添加し、37℃で10分間インキュベートし、ついで3500×gで2分間の遠心分離によりろ過した。フィルターを1mLの溶解/結合溶液A又はBで1回、そして2.5mLの70%エタノールで2回すすいだ。フィルターを室温で5分間、真空下で乾燥させ、80μLのRNase/DNaseを含まない水を加えた。3500×gで2分間の遠心分離により、ろ液中に小胞RNAを取得した。参考までに、EV RNAをオリゴ(dT)固定化マイクロプレートに対するハイブリダイゼーションにより又は製造者のプロトコルにしたがってRNeasy Mini Kit(Qiagen、MD)により単離した。
【0050】
16個のmRNA及び8個のmiRNAを、実施例2及び実施例4にそれぞれ記載したように、リアルタイムRT-PCRにより定量化した。本明細書中に記載されたフィルター法により取得されたmRNA及びmiRNAの遺伝子発現プロファイルからは、参照方法より低い閾値サイクル又は高いRNA回収率が得られたにもかかわらず、参照方法により取得されたものと高い相関性が示された(図12図13、表3)。バイオアナライザ(Agilent、CA)及びRiboGreen RNA assay(Life Technologies、CA)によるRNAプロファイルからはまた、本明細書中に記載されたフィルター法を用いて取得されたRNAの収量は、参照方法と比較して大量であることが示された(図14、表4)。
【0051】
表及び図面
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022550588000001.app
【国際調査報告】