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特表2022-550837プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにおけるモノクローナル抗体の溶離
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(54)【発明の名称】プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにおけるモノクローナル抗体の溶離
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20221128BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221128BHJP
【FI】
C07K1/22
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520365
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2020077445
(87)【国際公開番号】W WO2021064066
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19201486.8
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コルプス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハーフィッツ,シュプリヤーディ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、モノクローナル抗体が結合されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからモノクローナル抗体を溶離するための方法であって、以下
a)アフィニティークロマトグラフィーカラムをポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む溶離バッファーと接触させること;
b)ステップ(a)により得られたモノクローナル抗体を含有する1以上の画分を収集すること
c)ステップ(b)により得られた画分を1つにして、溶離産物プールを形成すること、
を含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノクローナル抗体が結合されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムから、低減した体積の溶離液の使用によりモノクローナル抗体を分離する方法であって、以下:
a)ロードされたアフィニティークロマトグラフィーカラムをポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む溶離バッファーと接触させて、および鋭く、狭い溶離ピークを誘導するステップ、
b)ステップ(a)により得られたモノクローナル抗体を含有する溶離された画分の1以上を収集するステップ、
c)ステップ(b)により得られた画分を潜在的に1つにして、溶離産物プールを形成するステップ、
を含み、それによって
所望のモノクローナル抗体の改善された純度が達成され、および約9%かまたはそれ以上のHCPが分離され、および4%超の収率の増大が達成される、前記方法。
【請求項2】
溶離バッファーが、約2重量%から15重量%までのポリ(エチレングリコール)ポリマー濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶離バッファーが、約5重量%から10重量%までのポリ(エチレングリコール)ポリマー濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリ(エチレングリコール)ポリマーが、1,000g/molから10,000g/molまでの平均分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリ(エチレングリコール)ポリマーが、3,000g/molから6,000g/molまでの平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
溶離バッファーが、クエン酸塩バッファーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
溶離ステップ(a)が、アフィニティークロマトグラフィーカラムをpH5.5からpH2.75までの溶離バッファーの勾配を使用した溶離バッファーと接触させることを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
溶離産物プールが、約3.9から約4.2までの範囲のpHを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
要求される溶離液が、少なくとも約11%低減されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、モノクローナル抗体(mAb)が結合されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからモノクローナル抗体を溶離させる改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
モノクローナル抗体(mAbs)についての治療への応用は、今日の医療ニーズにおいて増大する役割を担う。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、モノクローナル抗体を精製するために周知かつ広く使用されるツールである。mAbのFc領域と固定化されたプロテインAとの間で起こる、抗体とのその特異的な相互作用および高い導電率を許容するその能力に起因して、プロテインAクロマトグラフィーは、採取された細胞培養液(HCCF)の直接的なローディングを可能にし、および抗体プールを濃縮する間の不純物に関するプロセスおよび産物の大多数の除去を可能とする(Vunnum et al., 2009. Protein-A based affinity chromatography. In: Gottschalk U, editor. Process scale purification of antibodies. Hoboken, NJ: John Wiley BT & Sons, Inc. p 79-102)。
【0003】
バイオテクノロジーによって生産されたモノクローナル抗体の下流のプロセシングは、典型的には、少なくとも2つのクロマトグラフィーのステップを含む:例として、プロテインAを使用して、採取された細胞培養液(HCCF)から非抗体分子を除去する第1のアフィニティークロマトグラフィーのステップ、これに続くイオン交換クロマトグラフィーのステップなどの1以上のさらなるステップ。クロマトグラフィーカラムからのモノクローナル抗体の溶離は、分離の選択性および産物を含有するプール体積を決定するプロセス性能において不可欠なステップである(Angelo, J.M., Lenhoff, A.M. 2016. Determinants of protein elution rates from preparative ion-exchange adsorbents, J Chromatogr A; 1440; 94-104)。医薬製剤に関してのみならず下流のプロセシングにおける中間体に関しても、経済的な操作のための低体積を達成するために、濃縮された溶液が要求される。したがって、大きなプール体積およびゆっくりとした溶離速度は、プロテインAクロマトグラフィーなどの親和性をベースとした分離については望ましくない。ゆえに、下流のプロセスにおいて、特により高い収容能力および低減されたプロセシング時間に関しての改善において著しい関心がある。
【0004】
本発明の概要
驚くべきことに、モノクローナル抗体のプロテインAクロマトグラフィーにおいて溶離バッファーにポリ(エチレングリコール)ポリマーを添加することが、賦形剤を添加しない対照条件、またはタンパク質を安定化させ、および凝集を防ぐ製剤化用途のために一般的に使用される選択される二糖類またはポリオールを添加した対照条件と比較して、同等の収率を維持しながら、増強された抗体溶離を導き、著しく低い溶離プール体積をもたらすことが見出された。
【0005】
とりわけ、本発明は、モノクローナル抗体が結合されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからモノクローナル抗体を溶離するための方法であって、
a)アフィニティークロマトグラフィーカラムとポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む溶離バッファーを接触させること;
b)ステップ(a)により得られたモノクローナル抗体を含有する1以上の画分を収集すること、
c)ステップ(b)により得られた画分を潜在的に1つにして、溶離産物プールを形成すること、
を含む方法を提供する。
有利なことに、これらの条件下での分離は、非常に少ない量の溶離液を使用して実行され得る。
同時に、産物は、より高い収率で、および改善された純度で得られ得る。以下に与えられた例は、このことを極めて明確に示す。
【0006】
溶離バッファーは、好ましくは2重量%から15重量%までの、より好ましくは5重量%から10重量%までのポリ(エチレングリコール)ポリマー濃度を有することが見出された。
本発明の好ましい態様において、ポリ(エチレングリコール)ポリマーは、1,000g/mol~10,000g/molの、より好ましくは3,000g/molから5,000g/molまでの範囲にある平均分子量を有する。
【0007】
本発明の別の好ましい態様において、溶離バッファーは、クエン酸塩バッファーである。
本発明の有利な側面に従うと、溶離ステップ(a)は、アフィニティークロマトグラフィーカラムをpH5.5からpH2.75までの溶離バッファー勾配を使用した溶離バッファーと接触させることを含む。
本発明のさらに好ましい態様において、溶離産物プールは、約3.9から約4.2までのpHを有する。
【0008】
本発明の詳細な記載
モノクローナル抗体の下流のプロセシングにおいて、プロテインAクロマトグラフィーなどの親和性をベースとしたクロマトグラフィープロセスについて、低体積の溶出液プールを伴う濃縮された溶液を得ることが所望される。本発明は目下、ポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む溶離バッファーの使用を含む、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムからモノクローナル抗体を溶離するための方法を提供する。溶離バッファーへのポリ(エチレングリコール)の添加により、鋭い溶離ピークを示す一方で、より低いpH値へと溶離がシフトすることが見出された。このことは、カラム出口からの大いに濃縮された溶出液画分を収集すること、および溶出液プール全体の体積の低減を可能にする。さらにまた、溶離の後の低いpHは、ウイルスの不活化に有益である。モノクローナル抗体の下流のプロセシングについて、この改善は、より高い収容能力および低減されたプロセシング時間をもたらす。
【0009】
本明細書に使用されるとき用語「抗体」は、所望の生物活性を提示するいずれかの形態の抗体またはそのフラグメントを指す。よって、それは、所望の生物活性を提示する限り最も広い意味において使用され、および具体的に言うと、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を包含する)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例として、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントをカバーする。「単離された抗体」は、結合化合物の精製状態を指し、およびかかる文脈において、分子が、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの他の生物学的分子、または細胞のデブリおよび成長培地などの他の材料が実質的に含まないことを意味する。一般に、用語「単離された」は、かかる材料を完全に含まないこと、または水、バッファー、または塩を含まないことを指すとは意図せず、それらは、本明細書に記載のとおりの結合化合物の実験的または治療的な使用と実質的に干渉しない限りの量において存在する
【0010】
本明細書に使用されるとき用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少数量において存在するかもしれない天然に存在し得る突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原エピトープに対して向けられている。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、種々のエピトープに対して向けられた(または特異的な)多数の抗体を包含する。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を指し示しており、およびいずれかの具体的な方法による抗体の産生を必要とするものとは解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるだろうモノクローナル抗体は、Kohler et al., (1975) Nature 256: 495により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または組換えDNA方法(例として、米国特許第4,816,567号参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al., (1991) Nature 352: 624-628およびMarks et al., (1991) J. Mol. Biol. 222: 581-597に記載される技法を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0011】
本明細書に記載のモノクローナル抗体は、具体的に言うと、所望の生物活性が提示される限り、重鎖および/または軽鎖の一部が、具体的な種に由来するかまたは具体的な抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは相同である一方で、鎖(単数または複数)の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、ならびにかかる抗体のフラグメントの対応する配列と同一であるかまたは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を包含する(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855)。
【0012】
用語「プロテインAアフィニティークロマトグラフィー」は、プロテインAを使用した物質および/または粒子の分離または精製を指すものであり、ここでプロテインAは、一般に固相上に固定化されている。プロテインAは、もとはStaphylococcus aureusにおいて見出された40~60kDの細胞壁タンパク質である。抗体のプロテインA樹脂への結合は、高度に特異的である。本明細書に記載のプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにおける使用のためのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム、これらに限定されないが、ポリビニルエーテル固相上に固定化されたプロテインA、例として、Eshmuno(登録商標)カラム(Merck、Darmstadt、Germany)、多孔質(pore)ガラスマトリックス上に固定化されたプロテインA、例として、ProSep(登録商標)カラム(Merck、Darmstadt、Germany)、アガロース固相上に固定化されたプロテインA、実例として、MABSELECT(商標)SuRe(商標)カラム(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を包含する。
【0013】
本明細書に使用されるとき用語「バッファー」は、その酸-塩基抱合体の構成要素の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝液を指すものとする。「溶離バッファー」は、クロマトグラフィーカラムからのタンパク質の溶離のために使用されるバッファーである。本発明のプロテインAアフィニティークロマトグラフィーのための溶離バッファーは、約2.75~5.5の範囲にあるpHを有する。この範囲内のpHを制御するだろうバッファーの例は、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩またはアンモニウムバッファー、またはそれより多くのものが包含される。かかる好ましいバッファーは、クエン酸塩である。
【0014】
用語「ポリ(エチレングリコール)」または「PEG」は、エチレンオキシドユニットから構成される長鎖、線状の合成ポリマーを指すものとする。エチレンオキシドユニットは、PEG化合物が、およそ200g/molから100,000g/molまでの範囲を取る分子量を有して得ることができるよう変化し得る。かかるポリ(エチレングリコール)は、結合反応のために必要である、分子の化学合成の結果生じる、または分子の部分の最適な間隔のためのスペーサーである、1以上のさらなる化学基(単数または複数)を含有していてもよい。これらのさらなる化学基は、ポリ(エチレングリコール)の分子量の計算には使用しない。加えて、このようなポリ(エチレングリコール)は、互いに連結する、1以上のポリ(エチレングリコール)鎖を含んでいてもよい。1より多くのポリ(エチレングリコール)鎖を伴うポリ(エチレングリコール)は、マルチアーム型または分枝状ポリ(エチレングリコール)と呼ばれる。
【0015】
ポリ(エチレングリコール)は、実質的に分子量によって変化するが、約400g/molから約30,000g/molまでの範囲にある分子量を有するポリマーが、大抵好適である。本発明の例において、4,000g/molの平均分子量のポリエチレングリコール(PEG4000)が選択される。本発明の好ましい態様において、1,000g/mol~10,000g/molの、より好ましくは3,000g/molから5,000g/molまでの範囲にある平均分子量を有するポリエチレングリコールが、好適に選択される。
【0016】
したがって、以下に記載の例は、モノクローナル抗体が結合されたプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムから、低減した体積の溶離液の使用によりモノクローナル抗体を分離する方法を提供し、該方法は以下:
a)ロードされたアフィニティークロマトグラフィーカラムをポリ(エチレングリコール)ポリマーを含む溶離バッファーと接触させて、および鋭く、狭い溶離ピークを誘導するステップ、
b)ステップ(a)により得られたモノクローナル抗体を含有する溶離された画分の1以上を収集するステップ、
c)ステップ(b)により得られた画分を潜在的に1つにして、溶離産物プールを形成するステップ、
を含み、それによって
d)所望のモノクローナル抗体の改善された純度が達成され、および約9%かまたはそれ以上のHCPが分離され、および4%超の収率の増大が達成される。
【0017】
有利なことに、この方法を実行することによって、要求される溶離液が、少なくとも約11体積%低減される。
以下の例は、添加される賦形剤の量および選択を最適化することによって、溶離液の必要量がなおいっそう低減し得、それによって達成できる純度もまた、改善され得ることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図の簡単な記載:
図1図1は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したEshmuno(登録商標)Aに対する清澄化した採取物のmAbA溶離プロファイルを示す(例2)。
図2図2は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbA溶離プロファイルを示す(例3)。
図3図3は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したMabSelect(商標)Sure(商標)に対する清澄化した採取物のmAbA溶離プロファイルを示す(例4)。
【0019】
図4図4は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したEshmuno(登録商標)Aに対する清澄化した採取物のmAbB溶離プロファイルを示す(例5)。
図5図5は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbB溶離プロファイルを示す(例6)。
図6図6は、賦形剤を添加した、および添加しないpH勾配溶離を使用したMabSelect(商標)SuRe(商標)に対する清澄化した採取物のmAbB溶離プロファイルを示す(例7)。
【0020】
図7図7は、pH勾配溶離中のEshmuno(登録商標)Aに対する、種々の条件(添加剤の有無)におけるmAbBの宿主細胞タンパク質(HCP)プロファイルを示す(例5)。
図8図8は、Eshmuno(登録商標)Aに対するpH勾配溶離中のプールされた画分のHCP含量と総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す(例5)。
図9図9は、pH勾配溶離中のProSep(登録商標)Ultra Plusに対する、種々の条件(添加剤の有無)におけるmAbBの宿主細胞タンパク質(HCP)プロファイルを示す(例6)。
【0021】
図10図10は、ProSep(登録商標)Ultra Plusに対するpH勾配溶離中のプールされた画分のHCP含量と総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す(例6)。
図11図11は、pH勾配溶離中のMabSelect(商標)SuRe(商標)に対する、種々の条件(添加剤の有無)におけるmAbBの宿主細胞タンパク質(HCP)プロファイルを示す(例7)。
図12図12は、MabSelect(商標)SuRe(商標)に対するpH勾配溶離中のプールされた画分のHCP含量と総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す(例7)。
【0022】
本記載は、当業者が本発明を包括的に適用することを可能とする。さらなるコメントがなくとも、当業者は、上記を最も広い範囲において利用することができるであろうことが推測される。
実践者は、ルーチンの実験室作業で、本明細書における教示を使用して、上に定義されるとおりのタンパク質を新しいプロセスにて効率的に分離することができるであろう。
なお不明確であるものが何かある場合には、引用した刊行物および特許文献が参考にされるべきであることが理解される。結果的に、これらの文書は、本記載の開示内容の一部であるとみなされる。
【0023】
よりよい理解のために、および本発明を説明するために、本発明の保護の範囲内である例が、以下に与えられる。これらの例はまた、実行可能な変形を説明することにも役立つ。しかしながら、記載される発明の原理の一般妥当性のせいで、例が本出願の保護の範囲をこれら単独にまで低減するのに好適ではない。
さらにまた、当業者にとっては言うまでもないことだが、与えられた例において、およびまた残りの記載においての両方で、組成物中に存在する構成要素の量は、組成物全体に基づいて常に最大で100重量%、体積またはmol%まで添加されるが、たとえ指し示されたパーセント範囲より高い値が生じ得るとしても、これを超えることはできない。別様に明記されない限り、%データは、重量%、体積またはmol%であるが、例えば、混合物に使用されるある体積比率の溶媒の調製のための、溶離液などの体積データにおいて示される比率について例外を伴う。
例および記載ならびに特許請求の範囲で与えられる温度は、常に℃で表される。
【0024】
例:
例1:バッファーおよび賦形剤溶液の調製
すべてのバッファーおよび賦形剤を、0.45μmのHAWPセルロース混合エステルフィルター(Merck、Darmtadt、Germany)を使用して濾過し、および使用前に超音波浴で20min脱気した。すべてのプロテインAクロマトグラフィーのランについて、以下のバッファーを調製し、および使用した:
表1:プロテインAクロマトグラフィーpH5.50のためのバッファーA1
【表1】

表2:プロテインAクロマトグラフィーpH7.00のためのバッファーA2
【表2】
【0025】
表3:プロテインAクロマトグラフィーpH2.75のためのバッファーB
【表3】

以下の賦形剤を、抗体を凝集から保護するそれらの能力に基づき選んだ:
表4:適用された濃度で適用された賦形剤、製造業者および標準的な品質
【表4】
【0026】
例1.1:クエン酸塩バッファーpH5.5中の0.5Mスクロースの調製
171.1gのスクロース(M=342.29g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを5.5+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0027】
例1.2:クエン酸塩バッファーpH2.75中の0.5Mスクロースの調製
171.1gのスクロース(M=342.29g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを2.75+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0028】
例1.3:クエン酸塩バッファーpH5.5中の0.5Mトレハロースの調製
171.1gのトレハロース(M=342.29g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを5.5+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0029】
例1.4:クエン酸塩バッファーpH2.75中の0.5Mトレハロースの調製
171.1gのトレハロース(M=342.29g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを2.75+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、および0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0030】
例1.5:クエン酸塩バッファーpH5.5中の0.5Mマンニトールの調製
91.09gのマンニトール(M=182,17g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを5.5+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、および0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0031】
例1.6:クエン酸塩バッファーpH2.75中の0.5Mマンニトールの調製
91.09gのマンニトール(M=182,17g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを2.75+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0032】
例1.7:クエン酸塩バッファーpH5.5中の0.5Mソルビトールの調製
91.09gのソルビトール(M=182,17g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを5.5+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0033】
例1.8:クエン酸塩バッファーpH2.75中の0.5Mソルビトールの調製
91.09gのソルビトール(M=182,17g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを2.75+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0034】
例1.9:クエン酸塩バッファーpH5.5中の5%(w/v)PEG4000の調製
50gのPEG4000(M=3500~4500g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを5.5+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH5.5で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0035】
例1.10:クエン酸塩バッファーpH2.75中の5%(w/v)PEG4000の調製
50gのPEG4000(M=3500~4500g/mol)を、適切なフラスコ内に測り取った。およそ800mlの0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75を添加し、物質が完全に溶解するまで溶液を攪拌した。1M HClを使用してpHを2.75+/-0.05に調整した。その後、溶液を1000.0mlメスフラスコに移して、0.1M Na-クエン酸塩バッファーpH2.75で標線まで満たし、徹底的に混合した。
【0036】
例2:Eshmuno Aに対する清澄化した採取物のmAbA溶離性能
プロテインAクロマトグラフィー樹脂:
Eshmuno(登録商標)基材は、ポリビニルエーテルを基にした硬く親水性であるポリマーである。それに固定化されるものは、E. coliにおいて組換えで産生される、五量体形態でのStaphylococcus aureusプロテインAのCドメインである。Eshmuno(登録商標)Aは、Merck(Darmtadt、Germany)からのものであり、カラムは、Repligen GmbH(Ravensburg、Germany)により充填された。
表5:適用されたEshmuno(登録商標)A樹脂についてのカラムパラメータ
【表5】
【0037】
抗体試料調製:
モデル抗体mAbAは、pI約7.01~8.58を有するモノクローナル抗体(およそ152kDa)である。0.8/0.2μm Supor(登録商標)膜を有するVacuCap(登録商標)90PFフィルターユニット(Pall Corporation、NY、USA)を使用して濾過したものを、清澄化した細胞培養採取物として使用した。溶液は、0.943mg/mLの濃度、7.0のpHおよび12mS/cmの導電率を有する。
【0038】
プロテインAクロマトグラフィー方法:
プロテインAクロマトグラフィーを以下の方法のパラメータを使用して行った:
表6:プロテインAクロマトグラフィーについての方法のパラメータ
【表6】
【0039】
例1に従った5つの賦形剤を含有する溶離バッファーの各々および参照として賦形剤を含有しない溶離バッファーを用いて、6つの溶離ランを実行した。pH5.5からpH2.75まで30CVの直線勾配を適用することにより定義された勾配傾斜で溶離を実行した。種々のクロマトグラフィーのランからUV280nm(2mm経路長)で、30mAUの開始ピークシグナルと30mAUの終了ピークシグナルとの間で溶離ピークの画分を収集し、およびpH、体積、収率およびHCP含量について分析した(mAbBに対してのみ適用される)。
【0040】
以下の結果が得られ、および図1に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表7:Eshmuno Aに対する清澄化した採取物のmAbAの溶離性能
【表7】
【0041】
図1は、5%PEG4000の添加が、より低いpHに有意にシフトした、より鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない、または二糖類およびポリオールを使用した溶離は、より広い溶離ピークを示すことを示す。表7に従うと、溶離産物プールの体積は、二糖類およびポリオールの使用と比較して低減し、および溶離産物プールは最も低いpHを提示する。
【0042】
例3:ProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbAの溶離性能
プロテインAクロマトグラフィー樹脂:
ProSep(登録商標)Ultra Plus樹脂は、制御された多孔質ガラスマトリックスおよびそれに結合するリガンドとして組換えのネイティブなプロテインAを有する。ProSep(登録商標)Ultra Plusは、Merck(Darmtadt、Germany)からのものであり、カラムは、Repligen GmbH(Ravensburg、Germany)により充填された。
表8:適用されたProSep(登録商標)Ultra Plus樹脂についてのカラムパラメータ
【表8】

試料調製およびプロテインAクロマトグラフィー方法は、例2に記載のとおりであった。
【0043】
以下の結果が得られ、および図2に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表9:ProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbAの溶離性能
【表9】
【0044】
図2は、5%PEG4000の添加が、ProSep(登録商標)Ultra Plusに対してより鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない、または二糖類およびポリオールを使用した溶離は、より広い溶離ピークを示すことを示す。表9に従うと、溶離産物プールの体積は、二糖類、ポリオールを使用した、または賦形剤なしの試料と比較して最も低く、および溶離産物プールは最も低いpHを提示する。
【0045】
例4:MabSelect(商標)SuRe(商標)に対する清澄化した採取物のmAbAの溶離性能
プロテインAクロマトグラフィー樹脂:
MabSelect(商標)SuRe(商標)樹脂は、アガロースマトリックスを有する。チオエーテルを通してそれに固定化されるものは、C末端システインを有する改変されたプロテインAドメインの組換えで産生された(E. coli)テトラマーである。この樹脂はGE Healthcare(Uppsala、Sweden)によって産生され、およびカラムはRepligen GmbH(Ravensburg、Germany)によって充填された。
表10:適用されたMab Select(登録商標)SuRe(商標)樹脂についてのカラムパラメータ
【表10】

抗体試料調製およびプロテインAクロマトグラフィー方法は、例2に記載された通りであった。
【0046】
以下の結果が得られ、および図3に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表11:MabSelect(商標)SuRe(商標)に対する清澄化した採取物のmAbAの溶離性能
【表11】
【0047】
図3は、5%PEG4000の添加が、MabSelect(商標)SuRe(商標)に対して、より低いpHへの優れたシフトをした、より鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない溶離または二糖類およびポリオールを使用した溶離が、より広い溶離ピークを示すことを示す。表11に従うと、溶離産物プールの体積は、二糖類、ポリオールを使用した試料、または賦形剤を使用しない試料と比較して最も低く、および溶離産物プールは最も低いpHを提示する。
【0048】
例5:Eshmuno(登録商標)Aに対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
抗体試料調製:
第2のモデル抗体mAbBは、Merck(Darmtadt、Germany)によって産生された、pI約7.6~8.3を有するモノクローナル抗体(およそ145kDa)である。0.8/0.2μm Supor(登録商標)膜を有するVacuCap(登録商標)90PFフィルターユニット(Pall Corporation、NY、USA)を使用して濾過したものを、清澄化した細胞培養採取物として使用した。溶液は、1.45mg/mLの濃度、7.0のpHおよび12.87mS/cmの導電率を有する。
プロテインAクロマトグラフィー樹脂は、例2に記載のとおりのEshmuno(登録商標)Aであり、およびプロテインAクロマトグラフィー方法もまた例2に記載のとおりであった。
【0049】
以下の結果が得られ、および図4図7および図8に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表12:Eshmuno(登録商標)Aに対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
【表12】
【0050】
図4は、5%PEG4000の添加が、Eshmuno(登録商標)Aに対して、有意に鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない、または二糖類およびポリオールを使用した溶離が広い溶離ピークを示すことを示す。表12に従うと、溶離産物プールの体積は、二糖類、ポリオールを使用した、または賦形剤を使用しない試料と比較して最も低く、および溶離産物プールは最も低いpHを提示する。
【0051】
図7は、pH勾配にわたるHCP分布を示す。500mMのソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの添加剤の条件のHCPプロファイルは、添加剤を用いない対照条件に匹敵する。比較すると、PEG4000の存在下でのHCPのものの溶離挙動は、対照および他の選択される添加剤の条件とは有意に異なる。ここでより多くのHCPが、大きなピーク中の勾配の後部において溶離しており、このことはHCP溶離がわずかに低いpH条件にシフトしたことを意味する。このことは、より高い純度の溶離プール(賦形剤を添加しない対照条件における勾配中の総HCPのうち68.2%の残存HCPに対してたった59%のHCP)のみならず、より高い収率(賦形剤を添加しない対照条件の75.5%の収率に対して79.8%の収率)までももたらす。
【0052】
図7中の紫色の実線は、賦形剤なしのmAbBのUV溶離プロファイルを表し、およびHCP溶離に関して勾配中の抗体の溶離時間を説明することのみを意図する。ソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの存在下での抗体の溶離プロファイルも同様である。5%PEG4000の存在下でのUV溶離プロファイルは、より高い勾配条件(より低いpH条件)にわずかにシフトする。
各クロマトグラフィーのランからpH勾配中に収集された画分のHCP含量を分析し、比較した。図8は、UV280の収集基準である>30mAUに基づいて収集された画分からの溶離プールのHCP含量と、pH勾配溶離中の総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す。5%PEG4000の添加とともにEshmuno(登録商標)Aを使用したクロマトグラフィーのランの間に、勾配中の総HCPの59%までの最も低いHCP含量を有する溶離プールが達成された。
【0053】
例6:ProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
例3に記載のとおりのProSep(登録商標)Ultra Plus樹脂をプロテインAクロマトグラフィー樹脂として使用し、および例5に記載のとおりのmAbBを抗体として使用したこと以外は、例2に記載のとおりプロテインAクロマトグラフィーを実行した。
【0054】
以下の結果が得られ、および図5図9および図10に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表13:ProSep(登録商標)Ultra Plusに対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
【表13】
【0055】
図5は、5%PEG4000の添加が、ProSep(登録商標)Ultra Plusに対して、より低いpHへの優れたシフトをした、有意に鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない、または二糖類およびポリオールを使用した溶離が広い溶離ピークを示すことを示す。表13に従うと、溶離産物プールの体積は、二糖類、ポリオールを使用した、または賦形剤を使用しない試料と比較して最も低い。
【0056】
図9は、pH勾配にわたるHCP分布を示す。500mMのソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの添加剤の条件のHCPプロファイルは、添加剤を用いない対照条件に匹敵する。比較すると、PEG4000の存在下でのHCPのものの溶離挙動は、対照および他の選択される添加剤の条件とは有意に異なっている。ここでより多くのHCPが、大きなピーク中の勾配の後部において溶離しており、このことはHCP溶離がわずかに低いpH条件にシフトしたことを意味する。このことは、より高い純度の溶離プール(賦形剤を添加しない対照条件における勾配中の総HCPのうち66.4%の残存HCPに対してたった52.6%の残存HCP)のみならず、より高い収率(賦形剤を添加しない対照条件の収率である83%に対して86.3%の収率)までももたらす。
【0057】
図9中の紫色の実線は、賦形剤を用いないmAbBのUV溶離プロファイルを表し、およびHCP溶離に関して勾配中の抗体の溶離時間を説明することのみ意図する。ソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの存在下での抗体の溶離プロファイルも同様である。5%PEG4000の存在下でのUV溶離プロファイルは、より高い勾配条件(より低いpH条件)にわずかにシフトする。
各クロマトグラフィーのランからpH勾配中に収集された画分のHCP含量を分析し、比較した。図10は、UV280の収集基準である>30mAUに基づいて収集した画分からの溶離プールのHCP含量と、pH勾配溶離中の総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す。5%PEG4000の添加とともにProSep(登録商標)Ultra Plusを使用したクロマトグラフィーのランの間に、勾配中の総HCPの52.6%までの最も低いHCP含量を有する溶離プールが達成された。
【0058】
例7:MabSelect(商標)SuRe(商標)に対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
例4に記載のとおりのMabSelect(商標)SuRe(商標)樹脂をプロテインAクロマトグラフィー樹脂として使用し、および例5に記載のとおりのmAbBを抗体として使用したこと以外は、例2に記載のとおりプロテインAクロマトグラフィーを実行した。
【0059】
以下の結果が得られ、および図6図11および図12に溶離プロファイルとして図表を用いて表す:
表14:MabSelect(商標)SuRe(商標)に対する清澄化した採取物のmAbBの溶離性能
【表14】
【0060】
図7は、5%PEG4000の添加が、MabSelect(商標)SuRe(商標)に対して、より低いpHへの優れたシフトをした、より鋭い溶離ピークを引き起こす一方で、賦形剤を使用しない、または二糖類およびポリオールを使用した溶離がより広い溶離ピークを示すことを示す。表14に従うと、溶離産物プールのpHは、二糖類、ポリオールを使用した、または賦形剤を使用しない試料と比較して、最も低い。
【0061】
図11は、pH勾配にわたるHCP分布を示す。500mMのソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの添加剤の条件のHCPプロファイルは、添加剤を用いない対照条件に匹敵する。比較すると、PEG4000の存在下でのHCPのものの溶離挙動は、対照および他の選択される添加剤の条件とは有意に異なる。ここでより多くのHCPが、大きなピーク中の勾配の後部において溶離しており、このことは、HCP溶離がわずかに低いpH条件にシフトしたことを意味する。このことは、より高い純度の溶離プール(賦形剤を添加しない対照条件における勾配中の総HCPのうち79.1%の残存HCPに対してたった67.3%の残存HCP)のみならず、より高い収率(賦形剤を添加しない対照条件の収率である76.6%に対して77.7%の収率)までももたらす。
【0062】
図11中の紫色の実線は、賦形剤を用いないmAbBのUV溶離プロファイルを表し、およびHCP溶離に関して勾配中の抗体の溶離時間を説明することのみを意図する。ソルビトール、マンニトール、トレハロースまたはスクロースの存在下での抗体の溶離プロファイルも同様である。5%PEG4000の存在下でのUV溶離プロファイルは、より高い勾配条件(より低いpH条件)にわずかにシフトする。
各クロマトグラフィーのランからpH勾配中に収集された画分のHCP含量を分析し、および比較した。図12は、UV280の収集基準である>30mAUに基づいて収集された画分からの溶離プールのHCP含量と、pH勾配溶離中の総HCP含量との比較に基づいた溶離プールの純度を示す。5%PEG4000の添加とともにMabSelect(商標)SuRe(商標)を使用したクロマトグラフィーのランの間に、勾配中の総HCPの67.3%までの最も低いHCP含量を有する溶離プールが達成された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】