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特表2022-551448疎水性のシリカエアロゲルブランケット及びその製造方法
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  • 特表-疎水性のシリカエアロゲルブランケット及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(54)【発明の名称】疎水性のシリカエアロゲルブランケット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20221202BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20221202BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20221202BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
C01B33/16
D06M11/79
D06M13/513
F16L59/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520929
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2021007628
(87)【国際公開番号】W WO2021256879
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0075290
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、セ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-シル
【テーマコード(参考)】
3H036
4G072
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
3H036AB15
3H036AB23
3H036AE02
4G072AA28
4G072CC04
4G072CC08
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH21
4G072HH28
4G072JJ41
4G072KK17
4G072MM31
4G072PP06
4G072QQ07
4G072QQ20
4G072SS01
4G072UU30
4L031AA26
4L031AB01
4L031AB34
4L031BA20
4L031DA17
4L033AA09
4L033AB01
4L033AB07
4L033AC04
4L033AC15
4L033BA96
(57)【要約】
本発明に係る疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、ホールを導入することにより、表面改質工程中のブランケット内の表面改質剤の拡散が容易であるため、表面改質の効率を改善することができ、これにより比表面積、熱伝導度などの物性に優れるだけでなく、疎水化度が調節され、高い疎水性を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを2個以上含み、
前記ホールとホールとの間の間隔は1.5mm~50.0mmであり、
前記ホール断面のアスペクト比(aspect ratio)は1.00~5.00である疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項2】
前記ホールは、貫通ホール又は非貫通ホールである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項3】
前記ホールの平均直径は0.05~3.05mmである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項4】
前記ホール断面のアスペクト比は1.50~5.00である、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項5】
前記ホールは、エアロゲルブランケット単位面積100cm2を基準として5~10,000個含むものである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項6】
1)シリカゾルを準備する段階と、
2)ブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階と、
3)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階と、
4)前記シリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて、疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階と、
5)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階と、を含み、
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して、表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階と、をさらに含む疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットで2個以上のホールを形成する場合、1mm~50mmの間隔を有するようにホールを形成する、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項8】
前記表面改質剤は、表面改質有効成分、又は非極性有機溶媒に表面改質有効成分を添加し混合して製造された表面改質溶液である、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項9】
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔することは、実験用ニードル、ニードリング機器、又はパンチを使用する、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットを含む断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年6月19日に出願された韓国特許出願第10-2020-0075290号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、表面改質の効率に優れ、高い疎水性を有するシリカエアロゲルブランケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、90~99.9%程度の気孔率と1~100nm範囲の気孔サイズを有する超多孔性の高比表面積(≧500m2/g)物質であって、優れた超軽量/超断熱/超低誘電などの特性を有する材料であるため、エアロゲル素材の開発研究は勿論のこと、透明断熱材及び環境親和的高温型断熱材、高集積素子用極低誘電薄膜、触媒及び触媒担体、スーパーキャパシタ用電極、海水淡水化用電極材料としての応用研究も活発に進められている。
【0004】
エアロゲルの最大の利点は、従来のスタイロフォーム(登録商標)などの有機断熱材よりも低い0.300W/m・K以下の熱伝導率を示すスーパー断熱性(super-insulation)である。また、有機断熱材の致命的な弱点である火事脆弱性と火事時の有害ガスの発生を解決することもできる。
【0005】
しかし、エアロゲルは、製造工程が複雑であり、製造コストが高いため、このような優れた素材特性を有しているにもかかわらず、極めて制限された用途にのみ使用されている実情である。また、高い気孔率により機械的強度が非常に弱いため、小さい衝撃にも割れやすいという欠点がある。そのため、近年、このようなエアロゲル自体の欠点を補完し、様々な形態に加工可能とするエアロゲルブランケット複合化技術が研究されている。
【0006】
エアロゲルブランケット(aerogel blanket)は、エアロゲル素材を複合化してマットレスやシートの形態に製作したもののことであり、柔軟性があるため、曲げたり折ったり又は切ったりすることができる特徴を有している。そのため、パイプの断熱や衣類などの分野にも応用可能であり、様々な産業への応用も可能である。柔軟性は、エアロゲルブランケットが繊維とエアロゲルで構成されている複合体(composite)であるため可能な特性である。繊維は、エアロゲルブランケットの柔軟性と機械的強度とを強化する役割を果たし、エアロゲルは、多孔性による断熱特性を付与する役割を果たす。繊維の特徴とエアロゲルの特徴とを複合化し、相互の利点を生かして欠点を補完することが、エアロゲルブランケットの核心的な複合化技術である。
【0007】
このようなエアロゲルブランケットは、従来のポリマー断熱材であるポリスタイロフォーム(登録商標)やポリウレタンフォームよりも耐熱性及び断熱性に優れた新素材であって、これから展開される省エネルギー及び環境問題を解決することができる先端素材として注目されている。
【0008】
従来のエアロゲルブランケットは、水ガラス又はアルコキシド系前駆体から得られたシリカゾルに繊維を混合してゲル化させた後、熟成、表面改質、及び乾燥して製造した。
【0009】
しかし、従来の方法により製造されたエアロゲルブランケットは、シリカゾルが繊維に含浸された後に表面改質が行われるので、繊維に含浸されないエアロゲルに比べて表面改質剤の拡散が円滑に行われないことから、表面改質の効率が相対的に低下し、エアロゲルブランケットで均一に表面改質が行われないという問題がある。
【0010】
エアロゲルブランケットの表面改質、すなわち、疎水性改質が全体的に円滑に行われないと、400℃以上の高温焼成時に疎水性を失いやすいという問題がある。焼成時に温度が高くなるほど、エアロゲルの気孔内部の疎水化基、例えば、メチル基又はエチル基などが燃焼されて疎水性を失うことになる。このように疎水性を失う場合、水分の浸透により断熱性能が低下するだけでなく、浸透した水分の蒸発過程で収縮により気孔構造が崩壊し、断熱性能を永久的に失うことになる。
【0011】
例えば、米国特許第5,789,075号には、シリカゾルの前駆体として水ガラス又はアルコキシド系前駆体を単独で使用してエアロゲルブランケットを製造する方法を開示しているが、水ガラスのみを単独で使用した場合には、乾燥時にスプリングバック(spring-back)効果が起こらないので、厚さが減少し、90%以上の気孔率を示すことができず、熱伝導率が高いという欠点があり、アルコキシド系前駆体を単独で使用した場合には、最初には熱伝導率などの特性に優れているが、高温処理時に疎水性を失いやすくて断熱材としての機能を果たすことができないという問題があるだけなく、アルコキシド系前駆体が高価であるため、非経済的であるという問題がある。
【0012】
したがって、エアロゲルブランケットを断熱材などに用いるためには、疎水化基が気孔内に安定して存在することで、高い疎水性を維持して断熱性能が悪くなることを防止することが重要であり、そこで、高い疎水性を有するエアロゲルブランケット及びそれを製造し得る技術が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US5,789,075B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、比表面積、熱伝導度などの物性に優れるだけでなく、疎水化度が調節されて高い疎水性を有するシリカエアロゲルブランケットの提供を目的とする。
【0015】
本発明の他の目的は、製造工程が単純であり、表面改質の反応を容易に調節することにより、高い疎水性を有するシリカエアロゲルを製造し得る疎水性のシリカエアロゲルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の課題を解決するために、本発明は、表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを2以上含み、前記ホール間の間隔は1.5mm~50.0mmであり、前記ホール断面のアスペクト比は1.00~5.00である疎水性のシリカエアロゲルブランケットを提供する。
【0017】
また、本発明は、1)シリカゾルを準備する段階;2)ブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階;3)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階;4)前記シリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階;及び5)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階を含み、前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階;をさらに含む疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、ホールを導入することにより、表面改質工程中にブランケット内の表面改質剤の拡散が容易であるため、表面改質の効率を改善することができ、これにより比表面積、熱伝導度などの物性に優れるだけでなく、疎水化度が調節され、高い疎水性を有することができる。
【0019】
本発明に係る疎水性のシリカエアロゲルの製造方法は、表面改質及び溶媒置換を一段階で同時に行うことができるので、製造時間が短くて生産性及び経済性に優れ、表面改質前にブランケット用基材又は湿潤ゲルブランケットを打孔してホールを形成することにより、表面改質剤の拡散が容易に行われるようにすることができ、これにより表面改質反応の効率を高めることができるので、製造されるシリカエアロゲルの疎水化度を改善することができる。
【0020】
したがって、本発明に係る前記製造方法及び疎水性のシリカエアロゲルは、これを必要とする産業、特に高い疎水性を有するシリカエアロゲルを必要とする産業、又は前記多様な範囲の疎水化度を有するシリカエアロゲルを必要とする産業に容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態による実施例5のシリカエアロゲルブランケットを撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられる用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0024】
本発明は、表面疎水性が改善された疎水性のシリカエアロゲルの製造方法を提供する。
【0025】
一般的には、水ガラスを用いて製造されたシリカ湿潤ゲルは、気孔が溶媒である水で満たされた形態を取ることになり、前記溶媒を単純に乾燥して除去するようになれば、液状の溶媒が気相に気化しながら気/液界面での水の高い表面張力により気孔構造の収縮及び亀裂が発生しやすく、これによる表面積の減少及び気孔構造の変化を起こすこととなる。したがって、前記湿潤ゲルの気孔構造を維持するためには、表面張力の大きい水を相対的に表面張力の低い有機溶媒に置換する必要があるだけでなく、前記湿潤ゲルの構造をそのまま維持したままで、収縮なしに湿潤ゲルを洗浄して乾燥させ得る技術が必要である。
【0026】
また、乾燥されたシリカエアロゲルは、乾燥直後には低い熱伝導率を維持するが、シリカ表面のシラノール基(Si-OH)の新水性のため、空気中の水を吸収することとなり、熱伝導率が徐々に高くなるという欠点がある。したがって、低い熱伝導率を維持するためには、シリカエアロゲルの表面を疎水性に改質する必要がある。よって、表面改質剤を使用してシリカエアロゲルの表面を疎水性に改質する方法が広く用いられている。しかし、表面改質剤のみを使用して高い疎水性を有するシリカエアロゲルを製造するためには、多量の表面改質剤が必要であり、表面改質反応の制御が容易ではないので、生産性が良くないという問題がある。
【0027】
そこで、本発明は、シリカエアロゲルの気孔構造と低い熱伝導率とを維持しながらも、物性に優れた高い疎水性のシリカエアロゲル及びその製造方法を提供する。
【0028】
先に、本発明の一実施形態による疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを2個以上含み、前記ホール間の間隔は1.5mm~50.0mmであり、前記ホール断面のアスペクト比は1.00~5.00であることを特徴とする。
【0029】
ここで、ホールは、疎水性のシリカエアロゲルブランケットを厚さ方向に完全に貫通する貫通ホールや、完全に貫通されずに厚さ方向に湾入している非貫通ホールを示してよく、場合によっては、前記ホールは、ブランケットの厚さ方向に平均直径がますます広くなるか、ますます細くなってよい。また、表面でのホールの断面形態は、球形、楕円形などの閉曲線形態、又は多角形、スター型などの閉鎖型の多角線などであってよく、その形態に制限されることはなく、表面での平均直径、すなわち、閉曲線又は閉鎖型の多角線の中心を通る線の長さの平均値が、前記範囲の場合を意味してよい。
【0030】
これにより、本発明の他の一実施形態による疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、表面での平均直径が0.01mm~3.20mmである貫通ホール及び非貫通ホールのいずれか一つ以上を含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の他の一実施形態による疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、複数個のホールを含んでよく、このホールのいずれも貫通ホールであってよく、いずれも非貫通ホールであってよく、一部が貫通ホール、そして残部が非貫通ホールであってよい。
【0032】
また、前記ホールは、実験用ニードル、ニードリングマシン、パンチなどの打孔機器を使用して形成してよく、この際に使用される打孔機器のニードルは、一例として、バーミンガムケージ(Birmingham gauge)により分類される厚さ又は直径を有するニードルであってよく、ニードルの形態は、一般的には、横断面の直径が一定の円柱状であってよいが、厚さがますます細くなる円錐形であってもよく、打孔が可能な形態であれば、特に制限されない。
【0033】
前記シリカエアロゲルブランケットに形成されたホールの平均直径が0.01mm未満の場合には、幅が小さすぎて表面改質剤の円滑な拡散に役に立たないので、ブランケットにホールが形成されなかった際に比べて表面改質の効率の改善がほとんどなく、3.20mmを超える場合には、幅が広すぎて断熱材として適用する際に前記ホールが熱が通る通路として作用することになり、断熱性が低下する問題が発生することがある。
【0034】
そこで、本発明は、断熱性を示す熱伝導度の上昇を防止しながらも、表面改質の効率に優れ、相対的に少量の表面改質剤のみでも目的とする水準の表面改質の効果を確保することができ、表面改質の時間を短縮して、全体的な工程効率の改善の側面で、好ましくは0.05mm~3.10mm、0.10mm~3.05mm、より好ましくは0.10mm~3.00mm、又は0.10mm~2.50mm、さらにより好ましくは0.10mm~2.00mm、又は0.15mm~1.50mmであってよい。
【0035】
さらに他の一例として、前記ホールの表面での平均直径は0.01~1.50mmであってよく、0.01~1.00mmであってよく、0.01mm~0.50mm、又は0.01mm~0.14mm、より好ましくは0.01mm以上及び0.10mm未満であってよく、さらに他の一例として、0.10mm~3.20mm、好ましくは0.15mm~3.05mm、0.15mm~2.00mm、より好ましくは0.15mm~1.50mmであってよい。
【0036】
本発明の一実施形態によるエアロゲルブランケットは、前記ホール断面のアスペクト比が1.00~5.00であってよく、ここでアスペクト比とは、ホール断面の短軸に対する長軸の割合を意味し、好ましくは1.50~5.00、又は1.50~3.50であってよく、より好ましくは1.50~3.00であってよい。ホール断面の形態は、楕円で偏らない形態であって、このような形態を満たすと、ブランケットの構造的安定性の側面で好ましく、熱伝導度と疎水性の向上に寄与することができる。すなわち、あまり楕円の形態で偏らなければ、効果の具現に問題にならないが、5.00以上のアスペクト比を有するホールの形成は、ブランケットの構造的安定性の側面で好ましくないことがある。また、極めて円型の場合のために、楕円状を有することが断熱効果と比表面積の改善により好ましいことがある。したがって、アスペクト比が5.00以下になるようにホールを形成する必要があり、好ましくは1.50~5.00のアスペクト比を有するようにホールを形成することが好ましく、より好ましくは1.50~3.50のアスペクト比を有するようにホールを形成することが熱伝導度や疎水性の向上に好ましいことがある。
【0037】
また、本発明の一実施形態によれば、前記エアロゲルブランケットは、2個以上のホールを含み、この際、ホール間の間隔は1.5mm~50.0mmであってよい。ホール間の間隔は、2個のホールを最短距離で連結した直線の距離であり、ホール間の間隔が2以上測定され得る構造の場合には、その平均値を意味する。ホール間の間隔が前記範囲の間隔を満たすと、表面改質剤の分散性を改善させながらも、シリカゲルの構造を堅固に維持することができ、貫通ホール又は非貫通ホールによるクラックの形成を防止することができるので、乾燥時の収縮によるゲル構造の崩壊及び断熱性能の低下を防ぐことができる。優れた断熱性能を確保する側面で、好ましくは1.5mm~25.0mm、より好ましくは1.5mm~20.0mm、さらにより好ましくは2.0mm~15.0mmであってよい。
【0038】
また、本発明の一実施形態によれば、前記エアロゲルブランケットは、前記ホールの平均直径の条件下で、ブランケット単位面積100cm2当り5個以上、9個以上、好ましくは20個以上、より好ましくは100個以上であってよく、10,000個以下、7,000個以下、又は5,000個以下であってよく、好ましくは3,000個以下、より好ましくは2,500個以下のホールを含んでよい。前記ホールの密度を満たすと、熱の通る通路が熱伝導度に影響を与えるほど形成されることを防止して、優れた断熱性能を確保することができるという利点がある。
【0039】
また、本発明の他の一実施形態によれば、本発明は、前記ホールが1個以上形成された疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造し得る製造方法を提供する。
【0040】
前記製造方法は、1)シリカゾルを準備する段階;2)ブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階;3)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階;4)前記シリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階;及び5)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階を含み、前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階;をさらに含む。
【0041】
以下では、打孔によりホールを形成する過程が、段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットで行われる場合を中心に製造方法に関して説明し、打孔する過程が行われる順序外に他の内容は、2つの場合で全て同様に適用されてよい。
【0042】
一例として、前記製造方法は、1)シリカゾルを準備する段階、2)ブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階、3)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階、4)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階、5)前記打孔されたシリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階、及び6)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階を含むことを特徴とする。
【0043】
前記段階1は、シリカゾルを製造するための段階であって、シリカゾルは、シリカ前駆体及び酸触媒を混合して製造するものであってよく、必要に応じて、アルコールをさらに添加してよい。
【0044】
前記シリカ前駆体は、具体的には、水ガラス溶液であってよく、シリカゾルで酸触媒は、水ガラス溶液内の水ガラスに対して1~3のモル比で含むものであってよい。
【0045】
前記水ガラス溶液は、水ガラスに蒸溜水を添加して混合した希釈溶液であるものであってよく、前記水ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)とアルカリとを融解して得たケイ酸アルカリ塩であるソジウムシリケート(Sodium silicate、Na2SiO3)であってよい。
【0046】
前記水ガラス分散液は、二酸化ケイ素(SiO2)を1重量%~11重量%で含有しているものであってよい。もし、前記水ガラス分散液内の二酸化ケイ素が前記範囲よりも低い含量で含有された場合には、エアロゲルが良好に形成されない可能性があり、前記二酸化ケイ素が前記範囲よりも高い含量で含有された場合には、比表面積が低下する可能性がある。
【0047】
前記酸触媒は、シリカゾルで水ガラス溶液内の二酸化ケイ素とともに混合されており、後述する表面改質剤溶液内の表面改質剤と反応して表面改質剤の分解を活性化させる役割を果たすものであってよく、これに表面改質の反応を向上させることができ、アンモニアの生成を促進させ、pHを上昇させることにより、ゲル化を誘導することができる。前記酸触媒は、特に制限されるものではなく、有機酸及び無機酸のいずれか一つ以上を使用してよく、例えば、酢酸、シュウ酸、硝酸、塩酸、硫酸、及びフッ酸からなる群から選択された1種以上であってよい。具体的には、硝酸又は酢酸であってよい。
【0048】
前記酸触媒は、シリカゾルのpHが4~8になるようにする量で含まれてよい。前記シリカゾルのpHが前記範囲から外れると、後述する段階3)のゲル化が容易ではないか、ゲル化の速度が遅すぎて公正性が低下する恐れがある。
【0049】
前記段階2)は、前記シリカゾルをブランケット用基材に含浸させることにより、ゲル-ブランケット複合体を形成する段階である。
【0050】
ここで、本発明の一実施形態によるブランケット用基材は、シリカエアロゲルブランケットの断熱性を改善する側面で、具体的には、多孔質(porous)基材であってよい。多孔質のブランケット用基材を使用すると、シリカゾルが基材の内部に浸透が容易であるので、ブランケット用基材の内部で均一にエアロゲルを形成することにより製造されたシリカエアロゲルブランケットが優れた断熱性を有することができる。
【0051】
本発明の一実施形態により使用可能なブランケット用基材は、フィルム、シート、ネット、繊維、発泡体、不織布体、又はこれらの2層以上の積層体であってよい。また、用途に応じて、その表面に表面粗さが形成されるかパターン化されたものであってもよい。より具体的には、前記ブランケット用基材は、ブランケット用基材の内部にシリカエアロゲルを挿入することが容易である空間又は空隙を含むことにより、断熱性能をより向上させ得る繊維であってよい。また、前記ブランケット用基材は、低い熱伝導度を有するものが好ましいことがある。
【0052】
具体的には、前記ブランケット用基材は、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、綿、毛、麻、不織布、ガラス繊維又はセラミックウールなどであってよく、より具体的には、本発明における前記ブランケット用基材は、ガラス繊維(glass fiber)であってよい。
【0053】
また、本発明の一実施形態によれば、ブランケット用基材が含まれた反応容器に、シリカゾルを注ぐか、ブランケット用基材をシリカゾルに浸す方法で含浸が行われてよい。この際、ブランケット用基材とシリカゾルとの結合を良好にするために、ブランケット用基材を軽く押して十分に含浸されるようにすることができる。その後、一定の圧力でブランケット用基材を一定の厚さで加圧することにより、残りのシリカゾルを除去し、乾燥時間を減らすこともできる。
【0054】
前記段階3)は、疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造するための段階であって、ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルのゲル化が行われるように放置して湿潤ゲルブランケットを製造することができる。
【0055】
ここで、前記ゲル化は、ゾル-ゲル反応を示すものであってよく、前記「ゾル-ゲル(sol-gel)反応」は、シリコン単位前駆体物質から網状構造を形成させるものであってよい。
【0056】
ここで、前記網状構造(network structure)は、原子の配列が1種あるいはそれ以上の種類からなっている、ある特定の多角形が連結された平面網状の構造、又は特定の多面体の頂点、角、面などを共有して3次元骨格の構造を形成している構造を示すものであってよい。
【0057】
本発明の一実施形態による製造方法は、前記段階3)のゲル化後に製造されたシリカ湿潤ゲルブランケットを熟成する段階をさらに行うことであってよい。
【0058】
前記熟成は、特に制限されるものではないが、例えば、50℃~90℃の温度で1時間~24時間放置させて行うことであってよい。
【0059】
本発明の一実施形態による製造方法は、シリカ湿潤ゲルブランケットの製造後に前記熟成を経ることにより、前記シリカ湿潤ゲルブランケット内の湿潤ゲルの網状構造をさらに堅固に形成させることができ、これにより気孔の特性に優れる可能性がある。
【0060】
前記段階4)は、前記シリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して0.01mm~3.20mmの表面平均直径を有するホールを形成することである。ここで、前記ホールの好ましい表面平均直径の範囲は、前述したエアロゲルブランケットで説明したとおりである。
【0061】
具体的には、前記段階4)は、前記シリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して0.01mm~3.20mmの表面平均直径を有する貫通ホールを形成することであるか、ここに0.01mm~3.20mmの表面平均直径を有する非貫通ホールを形成することであるか、前記貫通ホール及び非貫通ホールの両方を形成することであってよい。
【0062】
また、本発明の一実施形態によれば、前述したエアロゲルブランケットにおけるホールの条件を満たすように打孔することであってよく、例えば、前記エアロゲルブランケットは、2個以上のホールが含まれるように打孔してよく、この際、ホール間の間隔は、前述したように1mm~50mm、1mm~30mm、1mm~15mm又は2mm~10mmになるように打孔してよく、エアロゲルブランケット単位面積100cm2当り1個~10,000個、好ましくは9個~10,000個、又は20個~7,000個のホールを含むように打孔してよい。
【0063】
この際、打孔は、ブランケットにホールを形成し得るものであれば打孔機器の種類を制限しないが、前述した幅を有するホールの形成を容易にする側面で、具体的には、実験用ニードル、ニードリング機器(ニードリングマシン)、パンチなどの打孔機器を使用してよい。本発明におけるニードリング機器及びパンチは、ホールを形成し得る特定の直径の打孔部材、例えば、ニードルを少なくとも一つ以上含む機器を示すものであり、一例として、多角形の板状部材にニードルを特定の間隔で複数個形成したものであってよい。この際、使用される打孔機器に含まれるニードルは、一例として、バーミンガムケージ(Birmingham gauge)により分類される厚さ又は直径を有するニードルであってよい。
【0064】
また、前記打孔は、乾燥前に行われることが好ましい。乾燥後には、エアロゲルが表面改質まで完了した後に疎水性を帯びている乾燥粒子であるという点で、強い物理的衝撃に大きく損傷する恐れがあり、打孔時に打孔される部分でのエアロゲル損失だけでなく、その周辺の損失も発生するので、打孔は乾燥前に行われることがよい。
【0065】
前記段階5)は、打孔されたシリカ湿潤ゲルブランケットを表面改質させる段階であって、無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを形成することである。
【0066】
この際、前記表面改質剤は、表面改質有効成分を単独で使用するか、表面改質有効成分及び非極性有機溶媒を混合した表面改質溶液を使用してよく、表面改質溶液は、非極性有機溶媒に表面改質有効成分を添加し混合して製造されたものであってよく、この際、前記表面改質溶液内の表面改質有効成分の濃度は0.1M~4Mであってよい。すなわち、前記表面改質溶液は、非極性有機溶媒に表面改質有効成分を0.1M~4Mになる量で添加した後に混合して製造されたものであってよい。
【0067】
また、前記表面改質溶液は、シリカゾル内の水ガラスに対して表面改質有効成分が0.1~10のモル比になる量で添加するものであってよく、表面改質反応性の改善及び原材料費用の節減の側面で、好ましくは0.1~5.0のモル比、さらにより好ましくは0.5~3.0のモル比になる量で添加するものであってよい。もし、前記表面改質溶液を水ガラスに対して表面改質有効成分のモル比が0.1未満の割合になる量で添加する場合には、相対的にシリカゾル内のシラノール基(Si-OH)よりもこれと反応し得る表面改質有効成分の量が少ないので、表面改質反応性が低下するだけでなく、表面改質が容易に行われないこともあり、よって、乾燥時に表面改質されないシラノール基が縮合反応を起こして、最終生成されるシリカエアロゲルブランケットの気孔サイズが小さくなり、多孔性を達することができないという問題が発生する可能性がある。また、前記表面改質溶液を水ガラスに対して表面改質有効成分のモル比が10を超える割合になる量で添加する場合には、表面改質反応に参加しない残りの表面改質有効成分が多量存在するようになり、高価の表面改質有効成分が無駄になって、経済性が低下する問題が発生する可能性がある。
【0068】
前記表面改質有効成分は、トリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、及びトリメチルエトキシシランからなる群から選択された1種以上であってよい。
【0069】
前記非極性有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、及びキシレンからなる群から選択された1種以上であってよい。
【0070】
前記段階5の表面改質反応は、シリカ湿潤ゲルに無機酸及び表面改質剤を添加して混合させることにより行ってよく、前記表面改質反応は、25℃~95℃の温度で行われてよい。また、一例として、前記混合は、撹拌により行ってよい。
【0071】
この際、前記撹拌は、特に制限されるものではないが、例えば、50rpm~700rpmの速度で撹拌させてよい。
【0072】
また、本発明の一実施形態による段階5)は、2~24時間行われることであってよく、表面改質の効果を優れた水準に維持しながらも、工程の経済性を改善する側面で、好ましくは2時間~12時間、又は2時間~8時間行われることであってよい。
【0073】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、前記表面改質反応を行うと同時に溶媒置換を行ってよい。
【0074】
具体的には、前記製造方法は、シリカ湿潤ゲルに無機酸を投入し、表面改質剤溶液を混合して反応させることにより、前記無機酸により表面改質剤溶液内の表面改質剤の分解が活性化され得、これにより表面改質反応が促進され得る。また、表面改質剤溶液に含まれた非極性有機溶媒により表面改質反応を進行しながら、溶媒置換が行われる可能性がある。したがって、既存の多回繰り返しが必要なアルコールによる溶媒置換工程と連結される表面改質工程を適用した製造方法に対して、本発明の一実施形態による製造方法は、前述したように溶媒置換と表面改質を一段階で同時に行うことができるので、工程段階及び工程時間を減少することができ、生産性及び経済性が向上することができる。それに加えて、少量の表面改質剤有効成分のみでも表面改質反応が効果的に行われ得るので、優れた疎水化度を有するシリカエアロゲルブランケットを製造することができる。
【0075】
また、本発明の一実施形態によれば、前記段階4)で打孔する段階を含むことにより、前記段階5)の表面改質反応時にシリカ湿潤ゲルブランケット内の表面改質剤の拡散を容易にして、表面改質反応の効率を大幅に向上させることができ、また、表面改質剤が均一に拡散され得るので、最終製造されるエアロゲルブランケットの疎水化度が改善し、断熱性能が効果的に向上することができる。
【0076】
また、表面改質剤の拡散を容易にすることにより、厚いブランケット用基材を使用してエアロゲルブランケットを製造しても高い疎水化度を有することができ、よって、使用可能なブランケット用基材の厚さ範囲を確張することができる。
【0077】
前記段階6)は、疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造するために、前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階である。
【0078】
この際、前記乾燥前に洗浄する段階をさらに行ってよい。
【0079】
前記洗浄は、反応中に発生された不純物(ナトリウムイオン、未反応物、副産物など)を除去し、高純度の疎水性のシリカエアロゲルを得るためのものであって、前記疎水性のシリカ湿潤ゲルを非極性有機溶媒を添加し、20分~1時間撹拌して行ってよいが、これに制限されるものではない。
【0080】
前記乾燥は、常圧乾燥、超臨界乾燥などの方法により行われてよいが、これに制限されるものではない。一例として、常圧乾燥は、100℃~190℃の温度条件下で1時間~12時間常圧で乾燥する方法であってよく、超臨界乾燥は、超臨界状態のCO2を用いて行う方法であって、常圧乾燥の場合は比較的単純でかつ経済的であるという利点があり、超臨界乾燥の場合はゲル内部の流体を効果的に除去することができるという利点がある。
【0081】
本発明の一実施形態による前記疎水性のシリカエアロゲルブランケットは、前記製造方法で製造されることにより、表面改質の効率を大幅に改善させることができ、これにより優れた気孔特性などの物性を有しながら高い疎水性を有し、よって、断熱性能を優れた水準に確保することができる。
【0082】
本発明のさらに他の一実施形態によれば、本発明は、前記ホールが1個以上形成された疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造し得る前記方法とは異なる製造方法を提供する。
【0083】
具体的には、前記製造方法は、1)シリカゾルを準備する段階、2)ブランケット用基材を打孔して表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階、3)前記打孔されたブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階、4)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階、5)前記シリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階、及び6)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階を含むことを特徴とする。
【0084】
前記疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法において、湿潤ゲルブランケットを打孔する段階は、前述した製造方法での段階4)が段階2)のブランケット用基材を打孔する段階に変形して適用されてよい。すなわち、最終的にシリカエアロゲルブランケットにホールを形成するための打孔の過程は、ブランケット用基材にシリカゾルを含浸させ、ゲル化させる前に行われてよいか、シリカゾルを含浸させてゲル化させた後、湿潤ゲルブランケットを形成した後に行われてよい。言い換えれば、ホールの形成は、表面改質剤の拡散を容易にし、均一に表面改質反応させることが主な機能であるため、表面改質剤を添加する前に行われると、本発明の目的を達成することができる。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、前述した疎水性のシリカエアロゲルブランケットを含む断熱材を提供する。
【0086】
前記シリカエアロゲルブランケットは、例えば、1000℃~1200℃又はそれ以上の温度で、断熱を要する応用を含む断熱用途を含む多様な用途に用いられてよい。例えば、二重ケーシングパイプ(double-casing pipe)のようなパイプ用断熱材、航空機及びその部品の断熱、建物の断熱、宇宙船の断熱、自動車の断熱、衣類の断熱、靴の断熱などに用いられてよい。前記エアロゲルブランケットは、エアロゲルマット又は複数のエアロゲルが使用される場合と同様の方式で用いられてよい。
【0087】
以下、実施例及び実験例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
水ガラス溶液(水ガラス13.8g含有)に酢酸2.6mlを添加した反応溶液を、10mmの厚さ、ガラス繊維ウェブに注いで、シリカ湿潤ゲルブランケットを製造する。前記シリカ湿潤ゲルブランケットを50℃で1時間熟成させた。その後、断面直径が0.51mm、アスペクト比が1.8である実験用ニードルでシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して、前記実験用ニードルの幅と同一の幅のホール(貫通又は非貫通)をガラス繊維ウェブ単位面積(100cm2)当り100個になるように形成し、前記打孔間隔は10mmになるようにした。ホールが形成されたシリカ湿潤ゲルブランケットに硝酸7gを添加した後、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)溶液を添加し、55℃のオーブンで5時間温度を維持して表面改質反応を進行させた。この際、前記ヘキサメチルジシラザン溶液は、n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン23gを添加し撹拌させて製造した。製造された疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットが表面改質されて上段の有機溶媒(n-ヘキサン)層に完全に浮かび上がると回収した後、150℃の強制循環乾燥器で4時間完全乾燥させて、疎水性のシリカエアロゲルを製造した。
【0089】
(実施例2)
ニードルのアスペクト比が2.41であるものを使用し、水ガラスが20.7g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を4.3ml混合した以外は、前記実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0090】
(実施例3)
ニードルのアスペクト比が1.59であるものを使用し、水ガラスが24.1g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を5.3ml混合した以外は、前記実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0091】
(実施例4)
ニードルのアスペクト比が2.57であるものを使用し、水ガラスが27.6g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を5.7ml混合した以外は、前記実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0092】
(実施例5)
ニードルのアスペクト比が1.62であるものを使用し、n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン15gを添加し撹拌させて製造したヘキサメチルジシラザン溶液を使用した以外は、前記実施例5と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0093】
(実施例6)
ニードルのアスペクト比が2.10であるものを使用し、n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン35gを添加し撹拌させて製造したヘキサメチルジシラザン溶液を使用した以外は、前記実施例5と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0094】
(実施例7~9)
ニードルのアスペクト比と打孔間隔とを下記表1に記載された数値に調節した以外は、実施例4と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。打孔間隔の調節に応じて、ブランケット100cm2に形成されたホールの個数も下記表1のように変更された。
【0095】
(実施例10~12)
実験用ニードルの断面直径とアスペクト比とを下記表1に記載された数値に調節した以外は、実施例4と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0096】
(実施例13)
ニードルのアスペクト比が1.92であるものを使用し、表面改質反応時間を12時間に調節した以外は、実施例4と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0097】
(実施例14)
直径が0.51mm、アスペクト比が4.71であるニードルを使用した以外は、実施例4と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0098】
(比較例1)
水ガラス溶液(水ガラス13.8g含有)に酢酸2.6mlを添加した反応溶液を、10mmの厚さ、100cm2の面積を有するガラス繊維ウェブに注いで、シリカ湿潤ゲルブランケットを製造する。前記シリカ湿潤ゲルブランケットを50℃で1時間熟成させた。その後、シリカ湿潤ゲルブランケットにエタノールを添加して、一日間溶媒置換する工程を3回繰り返した後、n-ヘキサンを前記エタノール置換されたシリカ湿潤ゲルブランケットに添加して、一日間有機溶媒に置換する工程を3回繰り返した。前記溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルブランケットにヘキサメチルジシラザン(HMDS)溶液を添加して、55℃のオーブンで12時間温度を維持して表面改質反応を進行させた。この際、前記ヘキサメチルジシラザン溶液は、n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン23gを添加し撹拌させて製造した。その後、製造された疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを回収し、150℃の強制循環乾燥器で4時間完全乾燥させて、疎水性のシリカエアロゲルを製造した。
【0099】
(比較例2)
水ガラスが17.2g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を3.3ml混合した以外は、前記比較例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0100】
(比較例3)
水ガラスが20.7g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を4.3ml混合した以外は、前記比較例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0101】
(比較例4)
水ガラスが24.1g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を5.3ml混合した以外は、前記比較例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0102】
(比較例5)
水ガラスが27.6g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を5.7ml混合した以外は、前記比較例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0103】
(比較例6)
n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン15gを添加し撹拌させて製造したヘキサメチルジシラザン溶液を使用した以外は、前記比較例5と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0104】
(比較例7)
n-ヘキサン200mlにヘキサメチルジシラザン35gを添加し撹拌させて製造したヘキサメチルジシラザン溶液を使用した以外は、前記比較例5と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0105】
(比較例8)
打孔する段階を省略した以外は、実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0106】
(比較例9)
水ガラスが17.2g含有された水ガラス溶液を使用し、酢酸を3.3ml混合する段階と打孔する段階とを省略した以外は、実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0107】
(比較例10)
打孔する段階を省略した以外は、実施例2と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0108】
(比較例11)
打孔する段階を省略した以外は、実施例3と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0109】
(比較例12)
打孔する段階を省略した以外は、実施例4と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0110】
(比較例13)
打孔する段階を省略した以外は、実施例5と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0111】
(比較例14)
打孔する段階を省略した以外は、実施例6と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0112】
(比較例15)
実験用ニードルの断面直径を3.4mmに調節した以外は、実施例3と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0113】
(比較例16)
水ガラスに含まれた水ガラス含量を60.3g、酢酸を13.3ml、ヘキサメチルジシラザンを57.5g、硝酸を17.5gに変更し、ガラス繊維ウェブの厚さを17.5mmに変更し、打孔する段階を省略した以外は、実施例1と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0114】
(比較例17)
実験用ニードルのアスペクト比が1.62であるものを使用し、ホール間の間隔を60mmになるようにした以外は、実施例3と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0115】
(比較例18)
実験用ニードルのアスペクト比が1.53であるものを使用し、ホール間の間隔を1mmになるようにした以外は、実施例3と同様の方法により疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0116】
前記実施例の製造条件は下記表1に、比較例の製造条件は下記表2に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
(実験例)
前記実施例及び比較例で製造した各疎水性のシリカエアロゲルブランケットの物性比較分析のために、各エアロゲルの比表面積(BET、m2/g)、炭素含量(carbon contents、wt%)及び熱伝導度を測定した。
【0120】
1)熱伝導度の測定(mW/mK)
前記実施例及び比較例で製造したシリカエアロゲルブランケットをNETZSCH社のHFM436装備を用いて常温(約23℃)の熱伝導度を測定した。
【0121】
2)炭素含量(重量%)
炭素含量は、炭素分析器(Carbon-Sulfur Analyzer CS-2000、Eltra社)を用いて測定した。炭素含量が多いほどエアロゲルブランケットの疎水化度が高いことを示す。
【0122】
3)比表面積(BET、m2/g)
比表面積は、3FLEX装置(Micrometrics社)を用いて、部分圧(0<p/p0<1)による窒素の吸/脱着量で分析した。
【0123】
具体的には、シリンダーに各エアロゲルブランケット100mgを入れて200℃で8時間前処理した後、比表面積測定装置を用いて測定した。
【0124】
4)測定結果
比較対象になり得る実施例及び比較例をグループ化して、次のように表3~5に記載した。
【0125】
【表3】
【0126】
前記表3を見ると、本発明の製造方法による実施例1~6は、既存の溶媒置換工程及び表面改質工程を行った場合である比較例1~7の結果と同等以上の水準が達成されることを確認することができ、これは、生産性が約2倍以上向上(表面改質工程時間が実施例の場合5時間、比較例1~7は12時間)したことを考慮すると、顕著に改善した効果であると言える。また、比較例8~14の場合、無機酸を活用して溶媒置換と表面改質は本発明と同様の工程を適用したが、打孔しないものであって、実施例に対して熱伝導度と比表面積の特性が非常に劣悪な水準であることが確認される。したがって、打孔する工程と無機酸を活用した溶媒置換及び表面改質工程の場合、相互有機的な結合によりシナジー効果を出し得ることが分かる。それに加えて、実施例13のように、表面改質工程を比較例1~7のように12時間適用する場合には、その性能が非常に優れるようになることを確認することができ、原料の含量を増量させて製造した比較例16を見ると、このような製造方法上のコントロールは、性能の改善には全く役に立たないことも確認することができる。
【0127】
【表4】
【0128】
前記表4の結果は、ホール間の間隔に関する効果を確認することができるものであって、ホール間の間隔が1.5mm~50.0mmに入らない比較例17及び18は、その性能が非常に劣悪であることを確認することができる。特に、比較例18の場合、ホールを稠密に形成しすぎて構造的に安定していないので、試験片として製作することができなかた。
【0129】
【表5】
【0130】
前記表5を参照すれば、ホール直径が3.20mmを超える比較例15の場合、それ以下である実施例10~12に対して、熱伝導度が劣悪であり、比表面積及び疎水性が顕著に低いという問題があることを確認することができる。
【0131】
これにより、本発明の製造方法により規格に合うようにホールを形成した実施例1~14が、そうではない比較例1~18に対して優れた性能を有するエアロゲルブランケットであるということを確認することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを2個以上含み、
前記ホールとホールとの間の間隔は1.5mm~50.0mmであり、
前記ホール断面のアスペクト比(aspect ratio)は1.00~5.00である疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項2】
前記ホールは、貫通ホール又は非貫通ホールである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項3】
前記ホールの表面での平均直径は0.05~3.05mmである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項4】
前記ホール断面のアスペクト比は1.50~5.00である、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項5】
前記ホールは、エアロゲルブランケット単位面積100cm2を基準として5~10,000個含むものである、請求項1に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケット。
【請求項6】
1)シリカゾルを準備する段階と、
2)ブランケット用基材に前記シリカゾルを含浸させる段階と、
3)前記ブランケット用基材に含浸されたシリカゾルをゲル化させてシリカ湿潤ゲルブランケットを形成する段階と、
4)前記シリカ湿潤ゲルブランケットに無機酸及び表面改質剤を添加し反応させて、疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階と、
5)前記疎水性のシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥する段階と、を含み、
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔して、表面での平均直径が0.01mm~3.20mmであるホールを形成する段階と、をさらに含む疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットで2個以上のホールを形成する場合、1mm~50mmの間隔を有するようにホールを形成する、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項8】
前記表面改質剤は、表面改質有効成分、又は非極性有機溶媒に表面改質有効成分を添加し混合して製造された表面改質溶液である、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項9】
前記段階2)のブランケット用基材又は前記段階3)のシリカ湿潤ゲルブランケットを打孔することは、実験用ニードル、ニードリング機器、又はパンチを使用する、請求項6に記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の疎水性のシリカエアロゲルブランケットを含む断熱材。
【国際調査報告】