(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-13
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 51/00 20060101AFI20221206BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20221206BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221206BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L51/00
C08L33/10
C08L77/00
C08J5/18 CER
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521701
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 KR2020018536
(87)【国際公開番号】W WO2022019408
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0091649
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0176203
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ホ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA22X
4F071AA33
4F071AA33X
4F071AA34X
4F071AA54
4F071AA76
4F071AA77
4F071AF21
4F071AF23
4F071AF25
4F071AF30
4F071AF32
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB05
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4J002BC062
4J002BC072
4J002BG052
4J002BG062
4J002BG092
4J002BG102
4J002BN121
4J002CL003
4J002CL013
4J002CL033
4J002FD203
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関し、より詳細には、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、下記数式1及び2を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)
本発明によれば、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型や一般のTダイ押出機などで射出又は押出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と、屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、
下記数式1及び2を満たすことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式3で計算された可読性(R)が1~1.4であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数式3]
R=Rc/Ro
(ここで、Rcは、数字の画の幅:2mm、最終光量:14lux、LED光源:150lm/W、光源とシートとの距離:接触、及びシートの厚さ:0.15Tの条件で測定された明度ピークの面積であり、Roは、光の滲みが全くない理論上の明度ピークの面積である。)
【請求項3】
前記ベース樹脂は、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~70重量%、ポリメタクリレート系樹脂5~50重量%、及びメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体10~50重量%を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記全光線透過率Ttは80~95%であり、前記ヘイズHzは1~90%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、i)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%以上であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、ii)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%未満であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びiii)平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴムを40~60重量%含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
ベース樹脂の総100重量%を基準として、前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は30~60重量%含まれ、前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は35~65重量%含まれ、及び前記iii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は5~30重量%含まれることを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、メタクリレート65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであることを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、a)重量平均分子量が30,000~90,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、b)重量平均分子量が100,000~200,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、及びc)重量平均分子量が200,000g/mol超~300,000g/mol以下のポリメタクリレート系樹脂からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
ベース樹脂の総100重量%を基準として、前記a)ポリメタクリレート系樹脂は5~30重量%含まれ、前記b)ポリメタクリレート系樹脂は5~30重量%含まれ、前記c)ポリメタクリレート系樹脂は10~50重量%含まれることを特徴とする、請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、メタクリレート65~85重量%、芳香族ビニル化合物10~30重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなることを特徴とする、請求項3~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、重量平均分子量が80,000~200,000g/molであることを特徴とする、請求項3~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記艶消し剤は、屈折率1.46~1.53のポリアミド樹脂であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項15】
前記成形品は、ヒドゥン(hidden)ディスプレイ用フィルムまたはシート材料であることを特徴とする、請求項14に記載の成形品。
【請求項16】
前記フィルムまたはシートは、厚さが0.05~0.5Tであることを特徴とする、請求項15に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年07月23日付の韓国特許出願第10-2020-0091649号及びこれに基づいて2020年12月16日付で再出願された韓国特許出願第10-2020-0176203号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関し、より詳細には、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型や一般のTダイ押出機などで射出又は押出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリレート化合物-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐老化性、耐化学性、剛性、耐衝撃性及び加工性をすべて備えており、用途が多様であるので電気/電子製品、自動車、雑貨及び建築材分野などで広範囲に使用される。
【0004】
注目すべき点として、電気/電子製品の分野で人為的なプラスチック感を有さない外観デザインに対する顧客の選好度が大きく増加しているが、これを満足させることができる艶消しASA樹脂の開発が十分でない実情である。
【0005】
従来、ASA樹脂にナイロンなどの結晶性樹脂を投入するか、または別途の低光沢スプレーで表面処理して低い光沢のASA樹脂を実現したが、エアコン、冷蔵庫などのように外部にディスプレイ(Display)が装着される製品において重要な物性であるディスプレイの可読性などが大きく低下し、また、別途の腐食金型で押出/射出などの加工を行うとしても艶消しASA樹脂の可読性を確保するには困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2009-0095764号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型や一般のTダイ押出機などで射出又は押出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、下記数式1及び2を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0010】
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
【0011】
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)
【0012】
また、本発明は、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、下記数式3で計算された可読性(R)が1~1.4であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
[数式3]
R=Rc/Ro
(ここで、Rcは、数字の画の幅:2mm、最終光量:14lux、LED光源:150lm/W、光源とシートとの距離:接触、及びシートの厚さ:0.15Tの条件で測定された明度ピークの面積であり、Roは、光の滲みが全くない理論上の明度ピークの面積である。)
【0014】
本発明の可読性(R)は、ディスプレイの発光部と非発光部との境界で発生する光の滲みの程度として定義できるが、下記の
図1を参照すると、光の滲みがひどい場合、発光部の明度240から非発光部の明度160まで緩やかに低下し(不良)、光の滲みが少ない場合、発光部の明度240から非発光部の明度160まで急勾配で低下し(正常)、光の滲みが理論上全くない場合、発光部の明度260からすぐに非発光部の明度160になる(理論値)。したがって、光の滲みがひどいほど、可読性は低下し、可読性R値は大きくなる。下記の
図1において、x軸の位置の間隔5が約1mmである。ここで、明度160は、基準となる灰色フィルムの明度値である。
【0015】
前記ベース樹脂は、好ましくは、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~70重量%、ポリメタクリレート系樹脂5~50重量%、及びメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体10~50重量%を含むことができる。
【0016】
前記全光線透過率Ttは、好ましくは80~95%であり、前記ヘイズHzは、好ましくは1~90%であってもよい。
【0017】
前記アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、i)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%以上であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、ii)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%未満であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びiii)平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴムを40~60重量%含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0018】
ベース樹脂の総100重量%を基準として、好ましくは、前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は30~60重量%含まれ、前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は35~65重量%含まれ、及び前記iii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は5~30重量%含まれてもよい。
【0019】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、メタクリレート65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなってもよい。
【0020】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであってもよい。
【0021】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、a)重量平均分子量が30,000~90,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、b)重量平均分子量が100,000~200,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、及びc)重量平均分子量が200,000g/mol超~300,000g/mol以下のポリメタクリレート系樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0022】
好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、前記a)ポリメタクリレート系樹脂は5~30重量%含まれ、前記b)ポリメタクリレート系樹脂は5~30重量%含まれ、前記c)ポリメタクリレート系樹脂は10~50重量%含まれてもよい。
【0023】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、メタクリレート65~85重量%、芳香族ビニル化合物10~30重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなってもよい。
【0024】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、重量平均分子量が80,000~200,000g/molであってもよい。
【0025】
前記艶消し剤は、好ましくは、屈折率1.46~1.53のポリアミド樹脂であってもよい。
【0026】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【0027】
前記成形品は、好ましくは、ヒドゥン(hidden)ディスプレイ用フィルムまたは艶消しシート材料であってもよい。
【0028】
前記フィルムまたはシートは、好ましくは、厚さが0.05~0.5Tであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型や一般のTダイ押出機などで射出又は押出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ディスプレイの可読性の測定のための位置による明度の変化のグラフである。
【
図2】本発明に係るエアコン製品の優れたディスプレイの可読性を確認するために、製品のディスプレイをオンにした状態で撮影した写真であって、一番上の写真は従来の高光沢のエアコン製品の写真であり、中間の写真は従来の無光沢のエアコン製品の写真であり、一番下の写真が本発明に係るエアコン製品の写真である。
【
図3】実施例で使用したフィルム押出機の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を詳細に説明する。
【0032】
本発明者らは、エアコン製品などの外観の高級化及び多様化のための解決策として、ASA樹脂に艶消し効果とディスプレイの可読性などを実現するために鋭意研究した結果、ASA樹脂に特定の範囲内の屈折率を有する艶消し剤を一定量投入し、シートの光沢、ヘイズ(%)及び全光線透過率(%)を所定の関係式で調整する場合、人為的なプラスチック感を有さない無光沢の外観を有しながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出が可能であることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、下記数式1及び2を満たすことを特徴とし、このような場合、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供するという利点がある。
【0034】
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
【0035】
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)
【0036】
前記熱可塑性樹脂組成物は、具体例として、下記数式1aを満たすことができ、このような場合、機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0037】
[数式1a]
7≦G≦20
【0038】
前記Ttは、好ましくは80以上、より好ましくは85以上であり、前記Hzは、好ましくは10以下であり、この範囲内で、機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0039】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを含み、下記数式3で計算された可読性(R)が1~1.4であることを特徴とし、このような場合にも、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出が可能な艶消し熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供するという利点がある。
【0040】
[数式3]
R=Rc/Ro
(ここで、Rcは、数字の画の幅:2mm、最終光量:14lux、LED光源:150lm/W、光源とシートとの距離:接触、及びシートの厚さ:0.15Tの条件で測定された明度ピークの面積であり、Roは、光の滲みが全くない理論上の明度ピークの面積である。)
【0041】
本発明において、明度は、撮影されたイメージのRGB値を用いてマイクロソフトペイントで計算し、下記
図1を参照して、位置によって測定された明度値を表示し、位置による明度の変化のグラフを得た。前記明度値は0~240の範囲を有し、0は黒色(black)を意味し、240は白色(white)を意味する。
【0042】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0043】
<ベース樹脂>
本発明のベース樹脂は、好ましくは、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、ポリメタクリレート系樹脂、及びメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を含み、より好ましくは、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体10~70重量%、ポリメタクリレート系樹脂5~50重量%、及びメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体10~50重量%を含むことができる。
【0044】
アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
本発明の前記アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、i)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%以上であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、ii)平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴムを40~60重量%含み、グラフト率が40%未満であるアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体、及びiii)平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴムを40~60重量%含むアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、このような場合、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0045】
i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
本発明のi)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、30~60重量%、より好ましくは40~60重量%、さらに好ましくは40~55重量%、最も好ましくは45~55重量%含まれ、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0046】
前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくはグラフト率が40%~55%であり、より好ましくは40%~50%であり、さらに好ましくは40%~45%であり、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0047】
本発明において、グラフト率は、グラフト共重合体粉末をアセトンに溶かして24時間撹拌した後、20000rpmで3時間遠心分離して不溶分と可溶分とに分離した後、分離して得られた不溶分を24時間乾燥させて測定した後、下記の数式4で計算することができる。
【0048】
[数式4]
グラフト率(%)=[(測定した不溶分の含量-グラフト共重合体のゴム(Rubber)の含量)/グラフト共重合体のゴム(Rubber)の含量]×100
【0049】
本発明において、含量は、別途に定義しない限り、重量を基準とする。
【0050】
前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0051】
好ましい例として、前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0052】
本発明において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0053】
前記i)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0054】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0055】
本発明において、アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、さらに好ましくは、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0056】
本発明において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0057】
本発明において、ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0058】
前記i)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくは平均粒径が0.1~0.15μmであり、より好ましくは0.12~0.15μm、さらに好ましくは0.12~0.14μmであるが、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた耐候性、着色性、衝撃強度、耐化学性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0059】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp380装備(製品名、製造社:PSS)を用いて測定することができる。
【0060】
また、本発明において、平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味することができる。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを蒸留水で1,000~5,000倍希釈して準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μsecとして測定することができる。
【0061】
ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
本発明のii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、35~65重量%、より好ましくは40~65重量%、さらに好ましくは50~65重量%、最も好ましくは55~65重量%含まれ、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0062】
前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくはグラフト率が20%~39%であり、より好ましくは25%~35%であり、さらに好ましくは25%~30%であり、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0063】
前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、平均粒径0.05~0.15μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、加工性、伸び率、表面品質、耐候性及び透明度などに優れるという効果がある。
【0064】
好ましい例として、前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0065】
前記ii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐化学性、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0066】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0067】
前記ii)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくは平均粒径が0.1~0.15μmであり、より好ましくは0.12~0.15μm、さらに好ましくは0.12~0.14μmであるが、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた耐候性、着色性、衝撃強度、耐化学性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0068】
iii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
本発明のiii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、5~30重量%、より好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは10~25重量%、最も好ましくは15~20重量%含まれ、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0069】
前記iii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは、平均粒径0.33~0.5μmのアクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなり、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0070】
前記iii)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、好ましくは平均粒径が0.35~0.5μmであってもよく、より好ましくは0.38~0.5μm、さらに好ましくは0.4~0.5μmであり、この範囲内で、耐候性が良いながらも、流動性、引張強度及び衝撃強度などの機械的強度に優れるという効果がある。
【0071】
好ましい例として、前記iii)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0072】
前記iii)アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体は、好ましくは5~15重量%、より好ましくは10~15重量%含まれてもよく、この範囲内で、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0073】
前記iii)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐候性、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れるという効果がある。
【0074】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0075】
ポリメタクリレート系樹脂
本発明のポリメタクリレート系樹脂は、好ましくはメタクリレート化合物を65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上含み、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0076】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、メタクリレート65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0077】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、重量平均分子量が、好ましくは50,000~200,000g/mol、より好ましくは100,000~150,000g/molであってもよく、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0078】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、a)重量平均分子量が30,000~90,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、b)重量平均分子量が100,000~200,000g/molのポリメタクリレート系樹脂、及びc)重量平均分子量が200,000g/mol超~300,000g/mol以下のポリメタクリレート系樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、このような場合、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0079】
本発明において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲルパーミエーショングラフィー:Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/分、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0080】
前記a)ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、5~30重量%、より好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは10~25重量%、最も好ましくは10~20重量%含まれ、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0081】
前記b)ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、5~30重量%、より好ましくは10~30重量%、さらに好ましくは10~25重量%、最も好ましくは10~20重量%含まれ、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0082】
前記c)ポリメタクリレート系樹脂は、好ましくは、ベース樹脂の総100重量%を基準として、10~50重量%、より好ましくは10~45重量%、さらに好ましくは15~45重量%、最も好ましくは15~40重量%含まれ、この範囲内で、光沢、硬度、耐候性及び透明性などに優れるという効果がある。
【0083】
本発明において、メタクリレート化合物は、好ましくは、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、好ましい例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、炭素数1~4個の鎖アルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、さらに好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0084】
前記ポリメタクリレート系樹脂は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合で製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0085】
メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本発明のメタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、メタクリレート65~85重量%、芳香族ビニル化合物10~30重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなってもよく、より好ましくは、メタクリレート65~75重量%、芳香族ビニル化合物15~25重量%及びビニルシアン化合物5~10重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、表面粗さ値が低いので感性的に柔らかいという効果がある。
【0086】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくはメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体であってもよく、この場合、耐候性がさらに優れ、表面粗さ値が低いので感性的に柔らかいという効果がある。
【0087】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは重量平均分子量が80,000~200,000g/molであってもよく、より好ましくは100,000~150,000g/molであってもよく、さらに好ましくは120,000~140,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐候性がさらに優れ、流動性、引張強度及び衝撃強度に優れ、表面粗さ値が低いので感性的に柔らかいという効果がある。
【0088】
前記メタクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、重量平均分子量が70,000~90,000g/molであるメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体、及び重量平均分子量が120,000~140,000g/molであるメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、透明度及び耐候性などに優れるという利点がある。
【0089】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合で製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0090】
<艶消し剤>
本発明の艶消し剤は、屈折率が、一例として1.46~1.53、好ましくは1.47~1.53、より好ましくは1.50~1.53、さらに好ましくは1.51~1.53であってもよく、この範囲内で、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0091】
本発明において、屈折率は、REICHERT MARK 2 PLUSにより、25℃で、ASTM Method D 542-50方法で測定することができる。
【0092】
前記艶消し剤は、好ましくは、PMMA系艶消し剤及びポリアミドからなる群から選択された1種以上であり、より好ましくはポリアミドであってもよく、前記ポリアミドは、アミド結合を含む熱可塑性高分子を意味し、具体例として、ポリアミド6、ポリアミド66(PA6.6)、ポリアミド46、ポリアミドll、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9I及びポリアミド66/12/6Iからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド6.6またはこれらの混合であり、さらに好ましくはポリアミド66(PA6.6)である。
【0093】
前記ポリアミドは、一例として、融点が230℃以上、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは260~270℃であるものを用いることがよい。
【0094】
前記ポリアミドは、一例として、相対粘度(硫酸96%溶液)が2.0~4.0、好ましくは2.0~3.5、より好ましくは2.0~3.0、さらに好ましくは2.4~2.7であるものを用いることがよい。
【0095】
本発明において、相対粘度は、ISO 307硫酸法によってウベローデ(Ubbelohde)粘度計で測定することができる。
【0096】
前記艶消し剤は、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~10重量%、さらに好ましくは3~8重量%、最も好ましくは3~5重量%含み、この範囲内で、光沢を低下させることで、艶消し効果が大きく、物性バランスに優れるという利点がある。
【0097】
前記PMMA系艶消し剤は、本発明に係る屈折率を有する場合であれば、本発明の属する技術分野で通常用いられるPMMA系艶消し剤である場合、特に制限されない。
【0098】
前記PMMA系艶消し剤及びポリアミドの製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るPMMA系艶消し剤及びポリアミドの定義に符合するならば、商業的に購入して用いても構わない。
【0099】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、下記数式1及び2を満たし、このような場合、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0100】
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
【0101】
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)
【0102】
前記熱可塑性樹脂組成物は、具体例として、下記数式1a及び2aを満たすことができる。
【0103】
[数式1a]
7≦G≦20
【0104】
[数式2a]
Hz+3.0<Tt
【0105】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、より具体的な例として、下記数式1b及び2aを満たすことができる。
【0106】
[数式1b]
7≦G≦15
【0107】
[数式2a]
Hz+3.0<Tt
【0108】
前記熱可塑性樹脂組成物は、全光線透過率Ttが、好ましくは80~95%、より好ましくは85~95%、さらに好ましくは87~91%であり、前記ヘイズHzが、好ましくは1~90%、より好ましくは2~90%、さらに好ましくは2~88%であってもよく、この範囲内で、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0109】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記数式3で計算された可読性(R)が、好ましくは1~1.4、より好ましくは1.0~1.3、さらに好ましくは1.0~1.2であり、この範囲内で、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れるという効果がある。
【0110】
[数式3]
R=Rc/Ro
(ここで、Rcは、数字の画の幅:2mm、最終光量:14lux、LED光源:150lm/W、光源とシートとの距離:接触、及びシートの厚さ:0.15Tの条件で測定された明度ピークの面積であり、Roは、光の滲みが全くない理論上の明度ピークの面積である。)
【0111】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、オプティカルプロファイラーシステムにより5ポイントを測定して平均した表面粗さ(Ra)が、0.5~3であり、より好ましくは1~2.7であり、さらに好ましくは1.5~2.6であり、より一層好ましくは1.8~2.3であり、この範囲内で、艶消し効果が良好に発現されながらも、柔らかさ、高級感及び自然さなどが優れるという効果がある。
【0112】
本発明において、表面粗さ(Ra)は、熱可塑性樹脂組成物を下記の実施例のように0.15Tのシートに製造した後、オプティカルプロファイラーシステム(Optical profiler system)(NV-2700、(株)ナノシステム)により、対物レンズ(Objective lens)10倍×接眼レンズ1倍(F.O.V:628μm×471μm)、モード:WSI Envelope、Scan range:±10μmの分析条件下で5ポイントを測定して平均した値であり、その単位はμmである。
【0113】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、SAE J1960方法により2000時間測定した耐候性(△E)が5.0以下、好ましくは4.9以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下であってもよい。
【0114】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D1238に準拠した流動指数(MI)(220℃、荷重10kg)が4g/10分以上であり、好ましくは5g/10分以上であり、より好ましくは6g/10分以上であり、さらに好ましくは9g/10分以上であり、具体例として4~15g/10分であってもよい。
【0115】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D638に準拠した伸び率(1/8インチ)が20以上であり、より好ましくは25以上であり、具体例として20~40、好ましい例として29~38であってもよい。
【0116】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D785に準拠した硬度が70以上であり、より好ましくは75以上であり、具体例として70~120、好ましい例として78~116であってもよい。
【0117】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、グロスメーター(gloss meter)VG7000を用いて60°で測定した射出光沢(3.17T)が50以下であり、より好ましくは45以下であり、具体例として20~50、好ましい例として23~42であってもよい。
【0118】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM 256に準拠したアイゾット衝撃強度(1/4インチ)が、好ましくは4kg・cm/cm以上であり、具体例として4~7kg・cm/cmであってもよい。
【0119】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に熱安定剤、光安定剤、染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部、または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという利点がある。
【0120】
前記熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ビニル重合体を、一例として0~35重量%含むことができ、好ましくは10~35重量%含むことができ、10重量%未満含むことがより好ましく、5重量%未満含むことがさらに好ましく、含まないことが最も好ましく、この範囲内で、耐候性に優れ、特に表面粗さの値が大幅に低くなるので、光沢が均一で、手で触れたときに柔らかい感じがするという利点がある。
【0121】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、アクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体を含むベース樹脂100重量部と;屈折率1.46~1.53の艶消し剤0.5~10重量部とを混合した後、220~280℃の条件下で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂組成物は、下記数式1及び2
[数式1]
G≦20
(ここで、Gは、60°でグロスメーターにより測定した0.15Tサイズのシートの光沢である。)
[数式2]
Hz<Tt
(ここで、Hz及びTtは、それぞれ、0.15Tサイズのシートのヘイズ(%)及び全光線透過率(%)である。)を満たすことを特徴とし、このような場合、従来のASA樹脂と比較して機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながら、ディスプレイの可読性に優れ、別途の腐食金型なしにも一般の金型で射出可能であるという利点がある。
【0122】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0123】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは、220~280℃下で、より好ましくは220~250℃下で行うものであってもよく、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0124】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0125】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、このような場合、機械的物性、耐候性及び加工性などが同等以上に維持されながらも、ディスプレイの可読性などに優れるという効果がある。
【0126】
前記成形品は、一例として、押出成形品または射出成形品であってもよく、好ましくは、ヒドゥン(hidden)ディスプレイ用フィルムまたはシート材料であってもよい。
【0127】
前記フィルムまたはシートは、好ましくは、厚さが0.05~0.5T、より好ましくは0.1~0.5Tであってもよく、この範囲内で、艶消し特性及びディスプレイの可読性に優れるという効果がある。
【0128】
前記成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形温度190~250℃下、好ましくは210~240℃下で押出又は射出するステップを含んで製造されてもよく、この範囲内で、別途の腐食金型なしにも一般の金型で製造可能であり、艶消し特性及びディスプレイの可読性が製品に良好に発現されるという利点がある。
【0129】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0130】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0131】
[実施例]
下記の実施例1~4及び比較例1~4で用いられた物質は、次の通りである。
【0132】
A-1)乳化重合方式のグラフト共重合体(平均粒径500nmのブチルアクリレート重合体由来の単位50重量%、スチレン由来の単位35重量%、アクリロニトリル由来の単位15重量%)
【0133】
A-2)乳化重合方式のグラフト共重合体(平均粒径90nmのブチルアクリレート重合体由来の単位50重量%、スチレン由来の単位35重量%、アクリロニトリル由来の単位15重量%、グラフト率30%)
【0134】
A-3)乳化重合方式のグラフト共重合体(平均粒径80nmのブチルアクリレート重合体由来の単位50重量%、スチレン由来の単位35重量%、アクリロニトリル由来の単位15重量%、グラフト率40%)
【0135】
B-1)PMMA樹脂(重量平均分子量40,000g/mol、MMA由来の単位95重量%、MA由来の単位5重量%)
【0136】
B-2)PMMA樹脂(LG化学、IH830)
【0137】
B-3)PMMA樹脂(重量平均分子量230,000g/mol、MMA由来の単位97重量%、MA由来の単位3重量%)
【0138】
C-1)バルク重合方式のSAMMA樹脂(メチルメタクリレート由来の単位70重量%、スチレン由来の単位20重量%、アクリロニトリル由来の単位10重量%、重量平均分子量150,000g/mol)
【0139】
C-2)バルク重合方式のSAMMA樹脂(メチルメタクリレート由来の単位70重量%、スチレン由来の単位20重量%、アクリロニトリル由来の単位10重量%、重量平均分子量70,000g/mol)
【0140】
D-1)屈折率1.53の結晶性樹脂(PA66)
【0141】
D-2)屈折率1.57の結晶性樹脂(シンジオタクチックPA樹脂)
【0142】
E)SAN樹脂(LG化学、90HR)
【0143】
実施例1~4及び比較例1~4
それぞれ、下記の表1に記載された成分及び含量を二軸押出機にて280℃下で36φ規格で押出混練機を用いてペレットに製造した。製造されたペレットを、フィルム押出機を通じて厚さ0.15Tで均一にシートとして作製し、これを試料(sample)として、ヘイズ(Hz)、全光線透過率(Tt)、可読性、シートの光沢(sheet gloss)及び表面粗さ(Ra)などを下記の方法により測定した。このとき、フィルム押出機は、シート成形用一軸押出機(Collin社製、E20T製品、20φ、L/D:25)を用い、温度条件は、押出機の投入口から順にバレル部の温度50、200、210、210℃及びダイ部の温度220、220、230℃にセットした。ペレットは、フィルム押出機に投入する前に80℃のオーブンで3時間以上十分に乾燥させて水分の影響を除去した後、フィルム押出機の投入口に投入して厚さ0.15Tで均一にシートとして作製した。使用された後段ローラ(Roller)の温度は、水を媒質として用いて85℃にセットし、ローラの構成は、下記の
図3のように、Tダイ(T-Die)を通じて押し出される樹脂の片面のみがロール(Roll)と接触するタイプを用いた。ここで、フィルム押出機のスクリュー(Screw)のRPMは100に固定し、ロールの線速度を調節してシートの厚さが0.15Tになるようにした。ここで、押出されたシートの面のうち一番目のロールと接触した面に対してヘイズ(Hz)、全光線透過率(Tt)、可読性、シートの光沢(sheet gloss)及び表面粗さ(Ra)などを測定した。参考に、一番目のロールと接触していない面を測定する場合、表面粗さに差が発生することがある。
【0144】
一方、前記製造されたペレットを成形温度220℃で射出して物性測定用試験片を作製し、これを用いて衝撃強度、伸び率、硬度及び射出光沢などを測定した。
【0145】
[試験例]
前記実施例1~4及び比較例1~4で製造されたシート及び試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0146】
*溶融指数(melt index;MI):製造されたペレットを220℃/10kgの条件下でASTM D1238方法により測定した(単位:g/10分)。
【0147】
*アイゾット衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM 256方法により測定した。
【0148】
*伸び率:ASTM D638方法により測定した。
【0149】
*硬度:ASTM D785方法により測定した。
【0150】
*射出光沢(gloss、3.175T):グロスメーター(gloss meter)VG7000により45°で測定した。
【0151】
*シートの光沢(sheet gloss、0.15T):グロスメーター(gloss meter)VG7000により60°で測定した。
【0152】
*可読性(R):撮影されたイメージのRGB値を用いてマイクロソフトペイントで明度を測定し、下記の
図1を参照して、位置によって測定された明度値を表示し、位置による明度の変化のグラフを得た後、下記数式3を用いて計算した。ここで、Rcは、数字の画の幅:2mm、最終光量:14lux、LED光源:150lm/W、光源とシートとの距離:接触、及びシートの厚さ:0.15Tの条件で測定された明度ピークの面積であり、Roは、理論上の明度ピークの面積である。測定された明度は0~240の範囲の値を有し、0値は黒色(black)を意味し、240値は白色(white)を意味する。位置による明度の変化のグラフを示した下記
図1を参照すると、理論値のピーク面積を1とするとき、ディスプレイの可読性が良好な試料の正常のピーク面積は1.2であり、ディスプレイの可読性が不良な試料のピーク(red)は1.5で、理論値のピーク面積よりも大きいほど、ディスプレイの可読性が良くない。すなわち、光の滲みがひどい場合、ディスプレイの可読性が良くない。
【0153】
[数式3]
R=Rc/Ro
【0154】
*全光線透過率(Tt)及びヘイズ(Hz):ASTM D1003方法により測定した。具体的には、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装備を用いて、シート試験片に対してASTM D1003に準拠して23℃の温度下で全光線透過率及びヘイズ値を測定した。
【0155】
【0156】
前記表1に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~4及び
図2の一番下の写真参照)は、本発明に係るシートの光沢、ヘイズ(%)及び全光線透過率(%)に関する関係式に符合しない比較例1~4と比較して、衝撃強度、加工性などの機械的物性は同等又はそれ以上を維持しながらも、耐候性に優れ、特に、艶消し特性で自然かつ柔らかいながらも高級感を有し、ディスプレイの可読性に優れることが確認できた。また、下記の
図2を参照すると、従来の高光沢のエアコン製品(一番上の写真参照)は、ディスプレイの可読性が良好であるが、人為的なプラスチック感を有し、このような人為的なプラスチック感を有さないように外観を無光沢に変えた従来のエアコン製品(中間の写真参照)は、ディスプレイの可読性が非常に不良であることを確認できる。これに反して、本発明に係る無光沢のエアコン製品(一番下の写真参照)は、無光沢で自然かつ高級感がありながらも、ディスプレイの可読性が非常に優れることが確認できた。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
[実施例]
下記の実施例1、参考例2、実施例3及び4並びに比較例1~4で用いられた物質は、次の通りである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
実施例1、参考例2、実施例3、及び4並びに比較例1~4
それぞれ、下記の表1に記載された成分及び含量を二軸押出機にて280℃下で36φ規格で押出混練機を用いてペレットに製造した。製造されたペレットを、フィルム押出機を通じて厚さ0.15Tで均一にシートとして作製し、これを試料(sample)として、ヘイズ(Hz)、全光線透過率(Tt)、可読性、シートの光沢(sheet gloss)及び表面粗さ(Ra)などを下記の方法により測定した。このとき、フィルム押出機は、シート成形用一軸押出機(Collin社製、E20T製品、20φ、L/D:25)を用い、温度条件は、押出機の投入口から順にバレル部の温度50、200、210、210℃及びダイ部の温度220、220、230℃にセットした。ペレットは、フィルム押出機に投入する前に80℃のオーブンで3時間以上十分に乾燥させて水分の影響を除去した後、フィルム押出機の投入口に投入して厚さ0.15Tで均一にシートとして作製した。使用された後段ローラ(Roller)の温度は、水を媒質として用いて85℃にセットし、ローラの構成は、下記の
図3のように、Tダイ(T-Die)を通じて押し出される樹脂の片面のみがロール(Roll)と接触するタイプを用いた。ここで、フィルム押出機のスクリュー(Screw)のRPMは100に固定し、ロールの線速度を調節してシートの厚さが0.15Tになるようにした。ここで、押出されたシートの面のうち一番目のロールと接触した面に対してヘイズ(Hz)、全光線透過率(Tt)、可読性、シートの光沢(sheet gloss)及び表面粗さ(Ra)などを測定した。参考に、一番目のロールと接触していない面を測定する場合、表面粗さに差が発生することがある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0145
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0145】
[試験例]
前記実施例1、参考例2、実施例3及び4並びに比較例1~4で製造されたシート及び試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表1に示した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0155
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0155】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0156
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0156】
前記表1に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1
、参考例2、実施例3及び4
並びに図2の一番下の写真参照)は、本発明に係るシートの光沢、ヘイズ(%)及び全光線透過率(%)に関する関係式に符合しない比較例1~4と比較して、衝撃強度、加工性などの機械的物性は同等又はそれ以上を維持しながらも、耐候性に優れ、特に、艶消し特性で自然かつ柔らかいながらも高級感を有し、ディスプレイの可読性に優れることが確認できた。また、下記の
図2を参照すると、従来の高光沢のエアコン製品(一番上の写真参照)は、ディスプレイの可読性が良好であるが、人為的なプラスチック感を有し、このような人為的なプラスチック感を有さないように外観を無光沢に変えた従来のエアコン製品(中間の写真参照)は、ディスプレイの可読性が非常に不良であることを確認できる。これに反して、本発明に係る無光沢のエアコン製品(一番下の写真参照)は、無光沢で自然かつ高級感がありながらも、ディスプレイの可読性が非常に優れることが確認できた。
【国際調査報告】