(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(54)【発明の名称】封止フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20221208BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221208BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20221208BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B32B27/18 F
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522690
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 KR2020014802
(87)【国際公開番号】W WO2021086007
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0134808
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ボン・モク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ミン・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ナム・ムン
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウ・ヤン
【テーマコード(参考)】
3K107
4F100
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
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4F100AB01C
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(57)【要約】
本発明は、封止フィルム、その製造方法、それを含む有機電子装置及びそれを用いた有機電子装置の製造方法に関するもので、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を遮断し得る構造の形成が可能であり、有機電子装置の輝点発生を防止し得る封止フィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分吸着剤、輝点防止剤及び封止樹脂を含む封止層を含む封止フィルムであって、
前記封止層を有機溶剤に溶解させた後、300メッシュのナイロンフィルタでフィルタリングして通過されたサンプルに含まれている前記水分吸着剤と前記輝点防止剤に対して粒度分析した結果、下記一般式1による値が2.4~3.6の範囲を満足することを特徴とする、封止フィルム:
【数1】
前記一般式1で、D10は、粒度分析結果、D10による平均粒径であり、D50は、粒度分析結果、D50による平均粒径であり、D90は、粒度分析結果、D90による平均粒径であり、前記粒度分析は、ISO 13320:2009によって測定した粒度分布である。
【請求項2】
D50粒度分析による前記水分吸着剤の平均粒径に対する前記輝点防止剤の平均粒径の割合が2.0以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項3】
前記水分吸着剤は、粒径が100~15000nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項4】
前記輝点防止剤の粒径は、10nm~30μmの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項5】
前記輝点防止剤は、密度汎関数理論近似法(Density Functional Theory)によって計算されたアウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項6】
前記アウトガスは、酸素、H原子、H
2分子又はNH
3を含むことを特徴とする、請求項5に記載の封止フィルム。
【請求項7】
前記水分吸着剤は、化学反応性吸着剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項8】
前記水分吸着剤は、封止樹脂100重量部に対して5~250重量部の範囲内で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項9】
前記輝点防止剤は、封止樹脂100重量部に対して1~150重量部で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項10】
前記封止樹脂は、硬化性樹脂又は架橋可能な樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項11】
前記封止層は、粘着付与剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項12】
前記封止層は、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項13】
前記封止層の表面又は断面をSEMを通じて加速電圧15kVで後方散乱イメージ(Backscattered electron image)で確認したとき、100nm~20μmの粒径を有する水分吸着剤及び輝点防止剤が全体表面又は断面の面積で10%以上の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項14】
前記封止層の表面又は断面をSEMを通じて加速電圧15kVで後方散乱イメージ(Backscattered electron image)で確認したとき、輝点防止剤が占める面積は、水分吸着剤が占める面積より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項15】
前記封止層は、基板上に形成された有機電子素子の全面を密封することを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項16】
前記封止層の一面に形成されるメタル層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項17】
基板;前記基板上に形成された有機電子素子;及び前記有機電子素子を封止する請求項1に記載の封止フィルムを含むことを特徴とする、有機電子装置。
【請求項18】
前記有機電子素子は、一対の電極、少なくとも発光層を含む有機層及びパッシベーション膜を含むことを特徴とする、請求項17に記載の有機電子装置。
【請求項19】
上部に有機電子素子が形成された基板に請求項1に記載の封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用するステップを含むことを特徴とする、有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2019年10月28日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0134808号に基づく優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、封止フィルム、それを含む有機電子装置及び前記有機電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0004】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、既存の光源に比べて電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置又は照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れ、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコン及びTVにわたる多様な分野において適用されるものと期待されている。
【0005】
OLEDの商用化及び用途の拡大において、最も主要な問題点は耐久性の問題である。OLEDに含まれる有機材料及び金属電極などは水分などの外部的要因によって非常に容易に酸化される。また、OLED装置の内部から発生し得るアウトガスによりOLEDの輝点が発生する問題も存在する。すなわち、OLEDを含む製品は、環境的要因に非常に敏感である。これにより、OLEDなどの有機電子装置に対する外部からの酸素又は水分などの浸透を効果的に遮断し、同時に内部から発生するアウトガスを抑制するために多様な方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を遮断し得る構造の形成が可能であり、有機電子装置の輝点発生を防止し得る封止フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、封止フィルムに関する。前記封止フィルムは、例えば、OLEDなどの有機電子装置を封止又はカプセル化することに適用され得る。
【0008】
本明細書で用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品又は装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッター及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明の一つの例示で、前記有機電子装置はOLEDであってもよい。
【0009】
例示的な有機電子素子の封止フィルムは、封止層を含むことができる。前記封止層は、基板上に形成された有機電子素子の全面を密封することができる。一つの例示で、前記封止層は、水分吸着剤、輝点防止剤及び封止樹脂を含むことができる。また、本発明は、前記封止層を有機溶剤に溶解させた後、300メッシュのナイロンフィルタでフィルタリングして通過したサンプルに含まれている前記水分吸着剤と前記輝点防止剤に対して粒度分析した結果、下記一般式1による値が2.4~3.6の範囲を満足し得る。すなわち、下記一般式1は、まず、封止層を有機溶剤に溶解させる。その後、溶解された封止層組成物を300メッシュのナイロンフィルタでフィルタリングして通過したものをサンプリングする。前記サンプリングされたサンプルに含まれている水分吸着剤と輝点防止剤に対して粒度分析を進行する。粒度分析結果、D10、D50及びD90を算出して、下記一般式1に代入する。下記一般式1によって算出された値の下限は、例えば、2.4、2.5、2.6、2.7、2.75、2.8、2.85、2.9、2.95、3.0、3.05、3.1、3.15又は3.17以上であってもよく、上限は、例えば、3.6、3.5、3.4、3.3、3.28、3.25、3.2、3.0、2.95、2.9、2.85又は2.8以下であってもよい。
【0010】
【0011】
前記一般式1で、D10は、粒度分析結果、D10による平均粒径であり、D50は、粒度分析結果、D50による平均粒径であり、D90は、粒度分析結果、D90による平均粒径である。単位は、μmである。前記粒度分析は、ISO13320:2009によって測定した粒度分布であってもよい。前記D10、D50及びD90の定義は、粒度分析で定義する通りである。前記D10、D50及びD90は、粒度分析の結果、粒子サイズの累積分布で最大値に対して、それぞれ10%、50%及び90%に該当するサイズを意味することができる。従来は、単純に平均粒径のみを通じて封止層に含まれる粒子のサイズを調節したが、本発明は、粒子の累積分布で体積累積50%に相当する粒径であるD50の絶対的な値と小さい粒子サイズを有する粒子及び大きい粒子サイズを有する粒子の間の適正割合を調節する。本発明は、これを通じて、水分遮断性を具現すると共に水素吸着を通じて輝点を防止することができ、また、硬化物性が低下しないことによって苛酷環境でも有機電子装置の長期耐久信頼性を具現し得る。
【0012】
一つの例示で、前記水分吸着剤と前記輝点防止剤の粒度分析結果、D10による平均粒径に対するD50による平均粒径の割合が2.0~4.0の範囲内であってもよい。前記割合の下限は、例えば、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6又は2.7以上であってもよく、上限は、例えば、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.95又は2.93であってもよい。
【0013】
一具現例で、前記有機溶剤の種類は、特に限定されないが、例えば、トルエンであってもよく、また、前記サンプルは、例えば、縦横1.5cm x 1.5cmで裁断されたサンプルに対して測定したものであってもよい。また、本明細書で単位「メッシュ」は、American ASTM基準の単位であってもよい。封止層がガラス基板及び/又はメタル層に付着されている場合、ガラス基板からこれをデキャップシュレーション(Decapsulation)して取った後、液体窒素に浸漬して封止層をメタル層から分離することができ、デキャップシュレーション(Decapsulation)する方法は、これに限定されず、公知の方法を用いることができる。本発明は、前記粒度分析を通じて粒径分布を定量的に算出することができる。また、前記フィルタリングを通じて封止層をフィルタリングすることは、再溶解過程で流入するほこりなどの不純物粒子を除去するためである。
【0014】
一つの例示で、D50粒度分析による水分吸着剤の平均粒径に対する輝点防止剤の平均粒径の割合が2.0以下であってもよい。前記粒径割合の下限は、0.01、0.1、0.15、0.18、0.2、0.23、0.25、0.3、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0又は1.1以上であってもよく、上限は、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4又は0.3以下であってもよい。本発明の封止フィルムは、本来の目的が外部から水分を遮断しようとする目的であるが、前記水素吸着という他の技術的な問題を解決するために輝点防止剤が新たに導入され、ただし、前記輝点防止剤を含みつつ本来の水分遮断効果を維持することが難しいという技術的問題があった。本発明は、前記水分吸着剤及び輝点防止剤の粒度分布及び/又は粒径割合を調節することによって、本来の水分遮断効果を維持すると共に優れた輝点防止性能を具現している。
【0015】
本明細書で用語「水分吸着剤(moisture absorbent)」は、例えば、後述する封止フィルムに浸透した水分乃至は湿気との化学的反応を通じて上記を除去できる化学反応性吸着剤を意味することができる。
【0016】
例えば、水分吸着剤は、封止層又は封止フィルム内に均一に分散した状態で存在することができる。ここで、均一に分散した状態は、封止層又は封止フィルムのいずれの部分でも同一又は実質的に同一の密度で水分吸着剤が存在する状態を意味することができる。上記で用いられる水分吸着剤としては、例えば、金属酸化物、硫酸塩又は有機金属酸化物などが挙げられる。具体的に、前記硫酸塩の例としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケルなどが挙げられ、前記有機金属酸化物の例としては、アルミニウムオキシドオクチレートなどが挙げられる。上記で金属酸化物の具体的な例としては、五酸化リン(P2O5)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)又は酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられ、金属塩の例としては、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸ガリウム(Ga2(SO4)3)、硫酸チタン(Ti(SO4)2)又は硫酸ニッケル(NiSO4)などの硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化イットリウム(YCl3)、塩化銅(CuCl2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF5)、フッ化ニオビウム(NbF5)、臭素化リチウム(LiBr)、臭素化カルシウム(CaBr2)、臭素化セシウム(CeBr3)、臭素化セレン(SeBr4)、臭素化バナジウム(VBr3)、臭素化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化バリウム(BaI2)又はヨウ化マグネシウム(MgI2)などの金属ハロゲン化物;又は過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)又は過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などの金属塩素酸塩などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。封止層に含まれ得る水分吸着剤としては、上述した構成のうち1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。一つの例示で、水分吸着剤として2種以上を用いる場合、焼成ドロマイト(calcined dolomite)などが用いられ得る。
【0017】
このような水分吸着剤は、用途に応じて適切なサイズに制御され得る。一つの例示で、水分吸着剤の平均粒径が100~15000nm、500nm~10000nm、800nm~8000nm、1μm~7μm、1.5μm~5μm又は1.8μm~3μmに制御され得る。前記範囲のサイズを有する水分吸着剤は、水分との反応速度があまり速くないため、保管が容易であり、封止しようとする素子に損傷を与えず、後述する輝点防止剤との関係において水素吸着過程を妨害しないと共に、効果的に水分を除去することができる。本明細書で、粒径は、平均粒径を意味することができ、特に他に規定しない場合、D50粒度分析機により公知の方法で測定したものであってもよい。
【0018】
水分吸着剤の含量は、特に制限されず、目的とする遮断特性を考慮して適切に選択され得る。一つの例示で、本発明の封止フィルムは、前記水分吸着剤に対する輝点防止剤の重量割合が0.001~0.5又は0.01~0.1の範囲内であってもよい。本発明は、輝点を防止するために輝点防止剤をフィルム内に分散させるが、前記輝点の防止のために添加された輝点防止剤は、封止フィルムの本来の機能である水分遮断性と素子の信頼性の具現を考慮したとき、前記水分吸着剤と特定の含量割合で含まれ得る。
【0019】
上述したしたように、本発明の封止層は、輝点防止剤を含むことができる。前記輝点防止剤は、密度汎関数理論近似法(Density Functional Theory)によって計算されたアウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下であってもよい。前記吸着エネルギーの下限値は、特に限定されないが、-20eVであってもよい。前記アウトガスの種類は、特に制限されないが、酸素、H原子、H2分子及び/又はNH3を含むことができる。本発明は、封止フィルムが前記輝点防止剤を含むことで、有機電子装置から発生するアウトガスによる輝点を防止することができる。
【0020】
本発明の具体例で、輝点防止剤と輝点原因原子又は分子間の吸着エネルギーを密度汎関数論(density functional theory)基盤の電子構造計算を通じて計算することができる。前記計算は、当業界の公知の方法で行うことができる。例えば、本発明は、結晶形構造を有する輝点防止剤の最密充填面が表面に現われる2次元slab構造を作った後に構造最適化を進行し、この真空状態の表面上に輝点原因分子が吸着された構造に対する構造最適化を進行した後、この二つのシステムの総エネルギー(total energy)差から輝点原因分子の総エネルギーを引いた値を吸着エネルギーとして定義した。それぞれのシステムに対する総エネルギーの計算のために電子-電子間の相互作用を模した交換相関(exchange-correlation)でGGA(generalized gradient approximation)系列の関数であるrevised-PBE関数を用い、電子運動エネルギー(kinetic energy)のカットオフ(cutoff)は、500eVを用い、逆格子空間(reciprocal space)の原点に該当するガンマ点(gamma point)のみを含ませて計算した。各システムの原子構造を最適化するために共役勾配(conjugate gradient)法を用い、原子間の力が0.01eV/Å以下になるまで繰り返し計算を行った。一連の計算は、常用コードであるVASPを通じて行われた。
【0021】
輝点防止剤の素材は、前記封止フィルムが有機電子装置に適用されて有機電子装置のパネルで輝点を防止する効果を有する物質であれば、その素材は制限されない。例えば、輝点防止剤は、有機電子素子の電極上に蒸着される酸化ケイ素、窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素の無機蒸着層から発生するアウトガスであって、例えば、酸素、H2ガス、アンモニア(NH3)ガス、H+、NH2+、NHR2又はNH2Rで例示される物質を吸着できる物質であってもよい。上記で、Rは、有機基であってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが例示され得るが、これらに制限されない。
【0022】
一つの例示で、輝点防止剤の素材は、前記吸着エネルギー値を満足する限り、制限されず、金属又は非金属であってもよい。前記輝点防止剤は、例えば、Li、Ni、Ti、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、In、Pt、Pd、Fe、Cr、Si又はその配合物を含むことができ、前記素材の酸化物又は窒化物を含むことができ、前記素材の合金を含むことができる。一つの例示で、輝点防止剤は、ニッケル粒子、酸化ニッケル粒子、窒化チタン、鉄-チタンのチタン系合金粒子、鉄-マンガンのマンガン系合金粒子、マグネシウム-ニッケルのマグネシウム系合金粒子、希土類系合金粒子、ゼオライト粒子、シリカ粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト、アルミノホスフェート分子体粒子又はメゾシリカ粒子を含むことができる。前記輝点防止剤は、封止樹脂100重量部に対して、1~150重量部、1.5~100重量部、2~80重量部、2.5~50重量部、3~40重量部、3.5重量部~20重量部、4重量部~10重量部又は4.5重量部~8重量部で含まれ得る。本発明は、前記含量範囲で、フィルムの接着力及び耐久性を向上させると共に有機電子装置の輝点防止を具現することができる。また、前記輝点防止剤の粒径は、10nm~30μm、50nm~21μm、105nm~18μm、110nm~12μm、120nm~9μm、140nm~4μm、150nm~2μm、180nm~900nm、230nm~700nm又は270nm~550nmの範囲内であってもよい。前記粒径は、D50粒度分析によるものであってもよい。本発明は、上記の輝点防止剤を含むことで、有機電子装置内で発生する水素を効率的に吸着すると共に、封止フィルムの水分遮断性及び耐久信頼性をともに具現することができる。本明細書で用語「樹脂成分」は、後述する封止樹脂及び/又はバインダ樹脂であってもよい。
【0023】
一具現例で、本発明は、封止層の表面又は断面をSEMを通じて加速電圧15kVで後方散乱イメージ(Backscattered electron image)で確認したとき、100nm~20μmの粒径を有する水分吸着剤及び輝点防止剤が全体表面又は断面の面積で10%以上、15%以上、20%以上の範囲内であってもよい。上限は、95%以下、80%以下、70%以下又は50%以下であってもよい。また、本発明は、封止層の表面又は断面をSEMを通じて加速電圧15kVで後方散乱イメージ(Backscattered electron image)で確認したとき、輝点防止剤が占める面積は、水分吸着剤が占める面積より小さいことがある。本発明は、前記後方散乱イメージの面積割合を調節することによって、水分遮断効果と輝点防止効果を具現するだけでなく、UV硬化する場合、光が十分に樹脂マトリックスに到逹できるようにして硬化特性及び高温高湿での耐久信頼性を具現することができる。前記面積割合は、上述した水分吸着剤と輝点防止剤の累積粒度分布、粒径サイズ又は粒径割合によって調節され得る。
【0024】
一つの例示で、本発明の封止層は、単一層又は少なくとも2以上の封止層を含む多層構造であってもよい。前記2以上の封止層を含む場合、前記封止層は、前記有機電子素子の封止時に前記素子を向いた第1層及び前記第1層の前記素子を向いた面とは反対面に位置する第2層を含むことができる。一具体例で、前記
図1の(a)のように、封止フィルムは、少なくとも2以上の封止層を含み、前記封止層は、封止時に有機電子素子を向いた第1層2及び前記有機電子素子を向かない第2層4を含むことができる。また、前記第2層4は、密度汎関数理論近似法(Density Functional Theory)によって計算されたアウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下である輝点防止剤3を含むことができる。また、本発明の封止フィルムは、封止時に有機電子素子を向いた第1層の素子付着面の反対面に位置する第2層に輝点防止剤を含むことで、前記輝点防止剤による応力集中による有機電子素子へのダメージを防止することができる。上記のような観点から、第1層は、封止フィルム内の全体輝点防止剤の質量を基準として15%以下で輝点防止剤を含むか、含まなくてもよい。また、前記第1層を除いた有機電子素子と接しない層に封止フィルム内の全体輝点防止剤の質量を基準として85%以上の輝点防止剤を含むことができる。すなわち、本発明で、素子の封止時に有機電子素子を向いた第1層に比べて有機電子素子と接しない他の封止層が輝点防止剤をさらに多量に含むことができ、これを通じて、フィルムの水分遮断性と輝点防止特性を具現すると共に、素子に加えられる物理的な損傷を防止することができる。
【0025】
上述したように、前記封止層は、2以上の多層構造であってもよい。2以上の層が封止層を構成する場合、前記封止層の各層の組成は、同一であるか、相異なっていてもよい。一つの例示で、前記封止層は、封止樹脂及び/又は水分吸着剤を含むことができ、前記封止層は、粘着剤層又は接着剤層であってもよい。
【0026】
図1に示したように、前記封止層2、4は、第1層2及び第2層4を含むことができ、前記封止層のうち第2層4が輝点防止剤3を含むことができる。また、
図1の(b)のように、第2層は、輝点防止剤3と水分吸着剤5をともに含むことができる。また、上記に限定されず、封止層は、3層構造で形成され得る。本発明の封止フィルムで、封止層が3層構造である場合、少なくとも一つの封止層が輝点防止剤及び/又は水分吸着剤を含むことができる。例えば、前記輝点防止剤及び水分吸着剤は、一つの封止層にともに含まれてもよく、それぞれ別途の封止層に存在してもよい。ただし、封止フィルムが有機電子素子上に適用されるとき、有機電子素子に向いた封止層である第1層2は、前記輝点防止剤及び水分吸着剤を含まないか、含んでいても少量含むことができる。
【0027】
本発明の具体例で、封止層は、封止樹脂を含むことができ、前記封止樹脂は、硬化性樹脂又は架橋可能な樹脂であってもよい。前記封止樹脂は、ガラス転移温度が0℃未満、-10℃未満又は-30℃未満、-50℃未満又は-60℃未満であってもよい。下限は、特に制限されず、-150℃以上であってもよい。上記で「ガラス転移温度」とは、硬化後のガラス転移温度であってもよく、一具体例で、照射量約1J/cm2以上の紫外線を照射した後のガラス転移温度;又は紫外線の照射後に熱硬化を追加で進行した後のガラス転移温度を意味することができる。
【0028】
一つの例示で、前記封止樹脂は、スチレン系樹脂又はエラストマー、ポリオレフィン系樹脂又はエラストマー、その他エラストマー、ポリオキシアルキレン系樹脂又はエラストマー、ポリエステル系樹脂又はエラストマー、ポリ塩化ビニル系樹脂又はエラストマー、ポリカーボネート系樹脂又はエラストマー、ポリフェニレンスルフィド系樹脂又はエラストマー、炭化水素の混合物、ポリアミド系樹脂又はエラストマー、アクリレート系樹脂又はエラストマー、エポキシ系樹脂又はエラストマー、シリコーン系樹脂又はエラストマー、フッ素系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などを含むことができる。
【0029】
上記でスチレン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートブロック共重合体(ASA)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン系単独重合体又はこれらの混合物が例示され得る。前記オレフィン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂又はエラストマー、低密度ポリエチレン系樹脂又はエラストマー、ポリプロピレン系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物が例示され得る。前記エラストマーとしては、例えば、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、アクリル系エラストマー又はこれらの混合物などを用いることができる。そのうちオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、ポリブタジエン樹脂又はエラストマー、又はポリイソブチレン樹脂又はエラストマーなどが用いられ得る。前記ポリオキシアルキレン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリオキシメチレン系樹脂又はエラストマー、ポリオキシエチレン系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリエステル系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂又はエラストマー、ポリブチレンテレフタレート系樹脂又はエラストマー又はこれらの混合物などが例示され得る。前記ポリ塩化ビニル系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリビニリデンクロライドなどが例示され得る。前記炭化水素の混合物としては、例えば、ヘキサトリアコタン(hexatriacotane)又はパラフィンなどが例示され得る。前記ポリアミド系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ナイロンなどが例示され得る。前記アクリレート系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリブチル(メタ)アクリレートなどが例示され得る。前記エポキシ系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型及びこれらの水添加物などのビスフェノール型;フェノールノボラック型やクレゾールノボラック型などのノボラック型;トリグリシジルイソシアヌレート型やヒダントイン型などの含窒素環形;脂環式型;脂肪族型;ナフタレン型、ビフェニル型などの芳香族型;グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型などのグリシジル型;ジシクロペンタジエン型などのジシクロ型;エステル型;エーテルエステル型又はこれらの混合物などが例示され得る。前記シリコーン系樹脂又はエラストマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどが例示され得る。また、前記フッ素系樹脂またはエラストマーとしては、ポリトリフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂又はエラストマー、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂又はエラストマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化エチレンプロピレン又はこれらの混合物などが例示され得る。
【0030】
前記羅列した樹脂又はエラストマーは、例えば、マレイン酸無水物などとグラフトされて用いられてもよく、羅列された他の樹脂又はエラストマー乃至は樹脂又はエラストマーを製造するための単量体と共重合されて用いられてもよく、その外、他の化合物によって変性させて用いられてもよい。前記他の化合物の例としては、カルボキシル-末端ブタジエン-アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0031】
一つの例示で、前記封止層は、封止樹脂として前記言及した種類のうちオレフィン系エラストマー、シリコーン系エラストマー又はアクリル系エラストマーなどを含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0032】
本発明の一具体例で、前記封止樹脂は、オレフィン系樹脂であってもよい。一つの例示で、オレフィン系樹脂は、ブチレン単量体の単独重合体;ブチレン単量体と重合可能な他の単量体を共重合した共重合体;ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマー;又はこれらの混合物であってもよい。前記ブチレン単量体は、例えば、1-ブテン、2-ブテン又はイソブチレンを含むことができる。
【0033】
前記ブチレン単量体あるいは誘導体と重合可能な他の単量体は、例えば、イソプレン、スチレン又はブタジエンなどを含むことができる。前記共重合体を用いることで、工程性及び架橋度などの物性を維持することができるので、有機電子装置に適用するときに粘着剤自体の耐熱性を確保することができる。
【0034】
また、ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマーは、反応性官能基を有するブチレン重合体を含むことができる。前記オリゴマーは、重量平均分子量500~5000の範囲を有することができる。また、前記ブチレン重合体は、反応性官能基を有する他の重合体と結合されていてもよい。前記他の重合体は、アルキル(メタ)アクリレートであってもよいが、これに限定されるものではない。前記反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基又は窒素含有基であってもよい。また、前記反応性オリゴマーと前記他の重合体は、多官能性架橋剤により架橋されていてもよく、前記多官能性架橋剤は、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤及び金属キレート架橋剤からなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0035】
一つの例示で、本発明の封止樹脂は、ジエンと一つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体であってもよい。ここで、オレフィン系化合物は、ブチレンなどを含むことができ、ジエンは、前記オレフィン系化合物と重合可能な単量体であってもよく、例えば、イソプレン又はブタジエンなどを含むことができる。例えば、一つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物及びジエンの共重合体は、ブチルゴムであってもよい。
【0036】
封止層において前記樹脂又はエラストマー成分は、粘着剤組成物がフィルム形状に成形が可能な程度の重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を有することができる。例えば、前記樹脂又はエラストマーは、約10万~200万g/mol、12万~150万g/mol又は15万~100万g/mol程度の重量平均分子量を有することができる。本明細書で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。ただし、上記言及された重量平均分子量を前記樹脂又はエラストマー成分が必ず有しなければならないものではない。例えば、樹脂又はエラストマー成分の分子量がフィルムを形成する程度のレベルにならない場合には、別途のバインダ樹脂が粘着剤組成物に配合され得る。
【0037】
また他の具体例で、本発明による封止樹脂は、硬化性樹脂であってもよい。封止樹脂が硬化性樹脂である場合、前記封止樹脂は、硬化後のガラス転移温度が85℃以上、200℃以下の樹脂であってもよい。前記ガラス転移温度は、前記封止樹脂を光硬化又は熱硬化させた後のガラス転移温度であってもよい。本発明で使用できる硬化性樹脂の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、この分野で公知となっている多様な熱硬化性又は光硬化性樹脂を用いることができる。用語「熱硬化性樹脂」は、適切な熱の印加又は熟成(aging)工程を通じて硬化され得る樹脂を意味し、用語「光硬化性樹脂」は、電磁気波の照射によって硬化され得る樹脂を意味する。また、前記硬化性樹脂は、熱硬化と光硬化の特性を共に含むデュアル硬化型樹脂であってもよい。
【0038】
本発明で硬化性樹脂の具体的な種類は、上述した特性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、硬化されて接着特性を示すことができるものであって、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はアミド基などの熱硬化が可能な官能基を一つ以上含むか、あるいはエポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基又はラクトン(lactone)基などの電磁気波の照射によって硬化可能な官能基を一つ以上含む樹脂が挙げられる。また、前記のような樹脂の具体的な種類には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂又はエポキシ樹脂などが含まれ得るが、これらに制限されるものではない。
【0039】
本発明では、前記硬化性樹脂として、芳香族又は脂肪族;又は直鎖形又は分岐鎖形のエポキシ樹脂を用いることができる。本発明の一具現例では、2個以上の官能基を含有するものであって、エポキシ当量が180g/eq~1,000g/eqであるエポキシ樹脂を用いることができる。前記範囲のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を使用して、硬化物の接着性能及びガラス転移温度などの特性を効果的に維持できる。このようなエポキシ樹脂の例には、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、4官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂の一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
【0040】
本発明では、硬化性樹脂として分子構造内に環状構造を含むエポキシ樹脂を用いることができ、芳香族基(例えば、フェニル基)を含むエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂が芳香族基を含む場合、硬化物が優れた熱的及び化学的安定性を有し、且つ低い吸湿量を示し、有機電子装置の封止構造の信頼性を向上させ得る。本発明で使用できる芳香族基含有エポキシ樹脂の具体的な例としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、クレゾール系エポキシ樹脂、ビスフェノール系エポキシ樹脂、キシロール系エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂及びアルキル変性トリフェノールメタンエポキシ樹脂などの一種又は二種以上の混合物であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0041】
また、一つの例示で、本発明の封止層は、封止樹脂と相溶性が高く、前記封止樹脂とともに特定架橋構造を形成し得る活性エネルギー線重合性化合物を含むことができる。この場合、前記封止樹脂は、架橋可能な(cross-linkable)樹脂であってもよい。
【0042】
例えば、本発明の封止層は、封止樹脂とともに活性エネルギー線の照射によって重合され得る多官能性又は単官能性の活性エネルギー線重合性化合物を含むことができる。前記活性エネルギー線重合性化合物は、例えば、活性エネルギー線の照射による重合反応に参加できる官能基、例えば、アクリロイル基又はメタクリロイル基などのエチレン性不飽和二重結合を含む官能基、エポキシ基又はオキセタン基などの官能基を2個以上含む化合物を意味することができる。
【0043】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、多官能性アクリレート(MFA;Multifunctional acrylate)を用いることができる。
【0044】
また、前記多官能性の活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して、3重量部~30重量部、5重量部~25重量部、8重量部~20重量部、10重量部~18重量部又は12重量部~18重量部で含まれ得る。単官能性の活性エネルギー線重合性化合物の場合も前記のような含量範囲で別に含まれ得る。本発明は、前記範囲内で、高温高湿など苛酷条件でも耐久信頼性に優れた封止フィルムを提供する。
【0045】
前記活性エネルギー線の照射によって重合され得る多官能性の活性エネルギー線重合性化合物は、制限なしに用いられ得る。例えば、前記化合物は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオール(dodecanediol)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)ジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を含むことができる。
【0046】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、分子量が100以上、1,000g/mol未満であり、官能基を2個以上含む化合物を用いることができる。単官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、分子量が100以上、1,000g/mol未満であり、官能基を1個含む化合物を用いることができる。この場合、分子量は、重量平均分子量(GPC測定)又は通常的な分子量を意味することができる。前記多官能性の活性エネルギー線重合性化合物に含まれる環構造は、炭素環式構造又は複素環式構造;又は単環式又は多環式構造のいずれでもよい。
【0047】
本発明の具体例で、封止層は、ラジカル開始剤をさらに含むことができる。ラジカル開始剤は、光開始剤又は熱開始剤であってもよい。光開始剤の具体的な種類は、硬化速度及び黄変可能性などを考慮して適切に選択され得る。例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系又はホスフィンオキシド系光開始剤などを用いることができ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを用いることができる。
【0048】
ラジカル開始剤は、活性エネルギー線重合性化合物100重量部に対して、0.2重量部~20重量部、0.5~18重量部、1~15重量部又は2重量部~13重量部の割合で含まれ得る。これを通じて、活性エネルギー線重合性化合物の反応を効果的に誘導し、また、硬化後に残存成分により封止層組成物の物性が悪くなることを防止することができる。
【0049】
本発明の具体例で、封止フィルムの封止層は、含まれる樹脂成分の種類によって硬化剤をさらに含むことができる。例えば、上述した封止樹脂と反応して架橋構造などを形成し得る硬化剤をさらに含むことができる。本明細書で用語「封止樹脂及び/又はバインダ樹脂」は、樹脂成分と同一の意味で用いられ得る。
【0050】
硬化剤は、樹脂成分又はその樹脂に含まれる官能基の種類によって適切な種類が選択及び用いられ得る。
【0051】
一つの例示で、樹脂成分がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、この分野で公知となっているエポキシ樹脂の硬化剤として、例えば、アミン硬化剤、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤、リン硬化剤又は酸無水物硬化剤などの一種又は二種以上を用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0052】
一つの例示で、前記硬化剤としては、常温で固相であり、融点又は分解温度が80℃以上であるイミダゾール化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール又は1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0053】
硬化剤の含量は、組成物の組成、例えば、封止樹脂の種類や割合によって選択され得る。例えば、硬化剤は、樹脂成分100重量部に対して、1重量部~20重量部、1重量部~10重量部又は1重量部~5重量部で含むことができる。しかし、前記重量割合は、封止樹脂又はその樹脂の官能基の種類及び割合、又は具現しようとする架橋密度などによって変更され得る。
【0054】
樹脂成分が活性エネルギー線の照射によって硬化され得る樹脂である場合、開始剤としては、例えば、陽イオン光重合開始剤を用いることができる。
【0055】
陽イオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)又は有機金属塩(organometallic salt)系列のイオン化陽イオン開始剤又は有機シラン又は潜在性硫酸(latent sulfonic acid)系列や非イオン化陽イオン光重合開始剤を用いることができる。オニウム塩系列の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)又はアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)などが例示され得、有機金属塩系列の開始剤としては、鉄アレン(iron arene)などが例示され得、有機シラン系列の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)又はアシルシラン(acyl silane)などが例示され得、潜在性硫酸系列の開始剤としては、α-スルホニルオキシケトン又はα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどが例示され得るが、これらに制限されるものではない。
【0056】
一つの例示で、陽イオン開始剤としては、イオン化陽イオン光重合開始剤を用いることができる。
【0057】
一つの例示で、封止層は、粘着付与剤をさらに含むことができ、前記粘着付与剤は、好ましくは、水素化された環状オレフィン系重合体であってもよい。粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂を水素化して得られる水素化された石油樹脂を用いることができる。水素化された石油樹脂は、部分的に又は完全に水素化され得、そのような樹脂の混合物であってもよい。このような粘着付与剤は、粘着剤組成物と相溶性が良いと共に水分遮断性に優れ、有機揮発成分が低いものを選択することができる。水素化された石油樹脂の具体的な例としては、水素化されたテルペン系樹脂、水素化されたエステル系樹脂又は水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤の重量平均分子量は、約200~5,000g/molであってもよい。前記粘着付与剤の含量は、必要に応じて適切に調節することができる。例えば、粘着付与剤の含量は、一つの例示によると、封止樹脂100重量部に対して、5重量部~100重量部、8~95重量部、10重量部~93重量部又は15重量部~90重量部の割合で含まれ得る。
【0058】
封止層は、必要な場合、水分遮断剤をさらに含むことができる。本明細書で用語「水分遮断剤(moisture blocker)」は、水分との反応性がないか低いが、物理的に水分乃至は湿気のフィルム内での移動を遮断するか妨害することができる物質を意味することができる。水分遮断剤としては、例えば、クレイ、タルク、球形シリカ、針状シリカ、板状シリカ、多孔性シリカ、ゼオライト、チタニア又はジルコニアのうち一種又は二種以上を用いることができる。また、水分遮断剤は、有機物の浸透が容易になるよう有機改質剤などによって表面処理が施され得る。このような有機改質剤としては、例えば、ジメチルベンジル水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl benzyl hydrogenatedtallow quaternaty ammonium)、ジメチル水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl dihydrogenatedtallow quaternary ammonium)、メチルタロウビス-2-ヒドロキシエチル4級アンモニウム(methyl tallow bis-2-hydroxyethyl quaternary ammonium)、ジメチル水素化タロウ2-エチルヘキシル4級アンモニウム(dimethyl hydrogenatedtallow 2-ethylhexyl quaternary ammonium)、ジメチル脱水素化タロウ4級アンモニウム(dimethyl dehydrogenated tallow quaternary ammonium)又はこれらの混合物である有機改質剤などが用いられ得る。
【0059】
水分遮断剤の含量は、特に制限されず、目的とする遮断特性を考慮して適切に選択され得る。
【0060】
封止層には、上述した構成外にも用途及び後述する封止フィルムの製造工程によって多様な添加剤が含まれ得る。例えば、封止層は、硬化性物質、架橋剤又はフィラーなどを目的とする物性によって適正範囲の含量で含むことができる。
【0061】
前記封止層は、2層以上の層に形成される場合、有機電子素子と接触しない第2層が前記水分吸着剤を含むことができる。例えば、2層以上の層に形成される場合、前記封止層のうち有機電子素子と接触する層は、水分吸着剤を含まないか、封止樹脂100重量部に対して5重量部未満又は4重量部未満の少量で水分吸着剤を含むことができる。
【0062】
具体的に、前記水分吸着剤の含量は、前記封止フィルムが有機電子素子の封止に適用される点を考慮するとき、素子の損傷などを考慮して制御できる。例えば、封止時に素子を向いた第1層に少量の水分吸着剤を構成してもよく、水分吸着剤を含まなくてもよい。一つの例示で、封止時に素子を向いた封止層の第1層は、封止フィルムが含有する水分吸着剤の全体質量に対して0~20%の水分吸着剤を含むことができる。また、素子と接触しない封止層は、封止フィルムが含有する水分吸着剤の全体質量に対して80~100%の水分吸着剤を含むことができる。
【0063】
本発明の具体例で、封止フィルムは、前記封止層の一面に形成されるメタル層をさらに含むことができる。本発明のメタル層は、15W/m・K以上、18W/m・K以上、20W/m・K以上、25W/m・K以上、30W/m・K以上、40W/m・K以上、50W/m・K以上、60W/m・K以上、70W/m・K以上、80W/m・K以上、90W/m・K以上、100W/m・K以上、110W/m・K以上、120W/m・K以上、130W/m・K以上、140W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上又は210W/m・K以上の熱伝導度を有することができる。前記熱伝導度の上限は特に限定されず、800W/m・K以下であってもよい。このように高い熱伝導度を有することで、メタル層の接合工程時に接合界面から発生した熱をよりはやく放出させ得る。また、高い熱伝導度は、有機電子装置の動作中に蓄積される熱を迅速に外部に放出させ、これによって、有機電子装置自体の温度は一層低く維持させることができ、クラック及び欠陥発生は減少する。前記熱伝導度は、15~30℃の温度範囲のうちいずれか一つの温度で測定したものであってもよい。
【0064】
本明細書で用語「熱伝導度」とは、物質が伝導により熱を伝達することができる能力を示す程度であり、単位は、W/m・Kで示すことができる。前記単位は、同じ温度と距離で物質が熱伝逹する程度を示したものであって、距離の単位(メートル)と温度の単位(ケルビン)に対する熱の単位(ワット)を意味する。
【0065】
本発明の具体例で、前記封止フィルムのメタル層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。前記メタル層の厚さは、3μm~200μm、10μm~100μm、20μm~90μm、30μm~80μm又は40μm~75μmの範囲内であってもよい。本発明は、前記メタル層の厚さを制御することで、放熱効果が十分に具現される薄膜の封止フィルムを提供することができる。前記メタル層は、薄膜のメタルホイル(Metal foil)又は高分子基材層にメタルが蒸着されていてもよい。前記メタル層は、上述した熱伝導度を満足し、金属を含む素材であれば、特に制限されない。メタル層は、金属、酸化金属、窒化金属、炭化金属、オキシ窒化金属、オキシホウ化金属及びその配合物のうちいずれか一つを含むことができる。例えば、メタル層は、一つの金属に1以上の金属元素又は非金属元素が添加された合金を含むことができ、例えば、ステンレススチール(SUS)を含むことができる。一つの例示で、メタル層は、鉄、クロム、銅、アルミニウムニッケル、酸化鉄、酸化クロム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオビウム及びこれらの配合物を含むことができる。メタル層は、電解、圧延、加熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリング、反応性スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着又は電子サイクロトロン共鳴ソースプラズマ化学気相蒸着手段により蒸着され得る。本発明の一実施例で、メタル層は、反応性スパッタリングにより蒸着され得る。
【0066】
従来には、封止フィルムとしてニッケル-鉄合金(Invar)を通常的に多く用いたが、前記ニッケル-鉄合金は、価格が高価であり、熱伝導度が落ち、裁断性が悪いという短所がある。本発明は、メタル層として前記ニッケル-鉄合金を使わないと共に、有機電子装置の輝点発生を防止し、放熱特性に優れ、磁性による工程便宜を具現する封止フィルムを提供する。
【0067】
封止フィルムは、基材フィルム又は離型フィルム(以下、「第1フィルム」と称する場合がある)をさらに含み、前記封止層が前記基材又は離型フィルム上に形成されている構造を有することができる。前記構造は、また、前記メタル層上に形成された基材又は離型フィルム(以下、「第2フィルム」と称する場合がある)をさらに含むことができる。
【0068】
本発明で用いられる前記第1フィルムの具体的な種類は、特に限定されない。本発明では、前記第1フィルムとして、例えば、この分野における一般的な高分子フィルムを用いることができる。本発明では、例えば、前記基材又は離型フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニルフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルム又はポリイミドフィルムなどを用いることができる。また、本発明の前記基材フィルム又は離型フィルムの一面又は両面には、適切な離型処理が行われていてもよい。基材フィルムの離型処理に用いられる離型剤の例としては、アルキド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系又はワックス系などを用いることができ、このうち、耐熱性の側面から、アルキド系、シリコーン系又はフッ素系離型剤を用いることが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0069】
本発明で上記のような基材フィルム又は離型フィルム(第1フィルム)の厚さは、特に限定されず、適用される用途によって適切に選択され得る。例えば、本発明で前記第1フィルムの厚さは、10μm~500μm、好ましくは、20μm~200μm程度であってもよい。前記厚さが10μm未満であると、製造過程で基材フィルムの変形が容易に発生する恐れがあり、500μmを超過すると、経済性に劣る。
【0070】
本発明の封止フィルムに含まれる封止層の厚さは、特に制限されず、前記フィルムが適用される用途を考慮して下記の条件によって適切に選択できる。封止層の厚さは、5μm~200μm、好ましくは、5μm~100μm程度であってもよい。前記封止層の厚さは、多層の封止層全体の厚さであってもよい。封止層の厚さが5μm未満である場合、十分な水分遮断能力を発揮することができず、200μmを超過する場合、工程性を確保しにくく、水分反応性に起因して厚さ膨張が大きいため、有機発光素子の蒸着膜に損傷を与えることがあり、経済性に劣る。
【0071】
また、本発明は、有機電子装置に関する。前記有機電子装置は、
図2に示したように、基板21;前記基板21上に形成された有機電子素子22;及び前記有機電子素子22を封止する上述した封止フィルムを含むことができる。前記封止フィルムは、基板上に形成された有機電子素子の全面、例えば、上部及び側面を全て封止していてもよい。前記封止フィルムは、粘着剤組成物又は接着剤組成物を架橋又は硬化された状態で含有する封止層を含むことができる。また、前記封止層が基板上に形成された有機電子素子の全面に接触するように密封して有機電子装置が形成されていてもよい。前記封止層12上には、カバー基板13が形成され得る。前記カバー基板13は、ガラス、プラスチックフィルム又は上述したメタル層であってもよい。一つの例示で、前記カバー基板13は、前記封止層12と一体に含まれて封止フィルムを形成することができる。一つの例示で、本発明の封止フィルムは、封止層12及びメタル層13を一体に含む多層構造のフィルムであってもよい。
【0072】
本発明の具体例で、有機電子素子は、一対の電極、少なくとも発光層を含む有機層及びパッシベーション膜を含むことができる。具体的に、前記有機電子素子は、第1電極層、前記第1電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機層及び前記有機層上に形成される第2電極層を含み、前記第2電極層上に電極及び有機層を保護するパッシベーション膜を含むことができる。前記第1電極層は、透明電極層又は反射電極層であってもよく、第2電極層も透明電極層又は反射電極層であってもよい。より具体的に、前記有機電子素子は、基板上に形成された透明電極層、前記透明電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機層及び前記有機層上に形成される反射電極層を含むことができる。
【0073】
上記で有機電子素子は、例えば、有機発光素子であってもよい。
【0074】
前記パッシベーション膜は、無機膜と有機膜を含むことができる。一具体例で、前記無機膜は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、Zn及びSiからなる群より選択された一つ以上の金属酸化物又は窒化物であってもよい。前記無機膜の厚さは、0.01μm~50μm又は0.1μm~20μm又は1μm~10μmであってもよい。一つの例示で、本発明の無機膜は、ドーパントが含まれない無機物であるか、又はドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドーピングされ得る前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択された1種以上の元素又は前記元素の酸化物であってもよいが、これらに限定されない。前記有機膜は、発光層を含まない点で、上述した少なくとも発光層を含む有機層とは区別され、エポキシ化合物を含む有機蒸着層であってもよい。
【0075】
前記無機膜又は有機膜は、化学気相蒸着(CVD、chemical vapor deposition)により形成され得る。例えば、前記無機膜は、シリコンナイトライド(SiNx)を用いることができる。一つの例示で、前記無機膜で用いられるシリコンナイトライド(SiNx)を0.01μm~50μmの厚さで蒸着することができる。一つの例示で、前記有機膜の厚さは、2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であってもよい。
【0076】
また、本発明は、有機電子装置の製造方法を提供する。前記製造方法は、上部に有機電子素子が形成された基板に上述した封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用するステップを含むことができる。また、前記製造方法は、前記封止フィルムを硬化するステップを含むことができる。前記封止フィルムの硬化ステップは、封止層の硬化を意味することができ、前記封止フィルムが有機電子素子をカバーする前又は後に進行され得る。
【0077】
本明細書で用語「硬化」とは、加熱又はUVの照射工程などを経て本発明の粘着剤組成物が架橋構造を形成して粘着剤の形態で製造することを意味することができる。または、接着剤組成物が接着剤として固化及び付着されることを意味することができる。
【0078】
具体的に、基板で用いられるガラス又は高分子フィルム上に真空蒸着又はスパッタリングなどの方法で電極を形成し、前記電極上に、例えば、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層などにより構成される発光性有機材料の層を形成した後、その上部に電極層を追加で形成して有機電子素子を形成することができる。続いて、前記工程を経た基板の有機電子素子の全面を前記封止フィルムの封止層が覆うように位置させる。
【発明の効果】
【0079】
本発明の封止フィルムは、OLEDなどの有機電子装置の封止又はカプセル化に適用され得る。前記フィルムは、外部から有機電子装置に流入する水分又は酸素を遮断し得る構造の形成が可能であり、有機電子装置の輝点発生を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】
図1は、本発明の一つの例示による封止フィルムを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの例示による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0082】
<実施例1>
封止層の製造
【0083】
第1層の溶液を製造するために、トルエンに溶解されたブチルゴム樹脂(BR268、EXXON、固形分20%)250kg及びトルエンに溶解されたジシクロペンタジエン水添樹脂(SU525、KOLON、固形分70%)50kgを均質化した。前記均質化された溶液にトルエンに溶解された多官能性アクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート、MIWON、固形分50%)15kg及びトルエンに溶解された光開始剤(lrgacure651、Ciba、固形分20%)5kgを投入し、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート15kg及び追加溶媒としてトルエンを137kg投入して均質化した後、1時間の間高速撹拌して第1層の溶液を製造した。
【0084】
第2層の溶液を製造するために、トルエンに溶解されたブチルゴム樹脂(BR268、EXXON、固形分20%)265kg及びトルエンに溶解されたジシクロペンタジエン水添樹脂(SU525、KOLON、固形分70%)67kg及び輝点防止剤としてニッケル(平均粒径500nm)3kgを均質化した。前記均質化された溶液にトルエンに溶解された多官能性アクリレート(トリメチロールプロパントリアクリレート、MIWON、固形分50%)16kg及びトルエンに溶解された光開始剤(lrgacure651、Ciba、固形分20%)8kgを投入し、水分吸着剤としてトルエンに分散された酸化カルシウム(CaO、原料平均粒径2μm)溶液(固形分50%)288kgを投入した。前記溶液にトルエンを66kgを投入して均質化した後、1時間の間高速撹拌して第2層の溶液を製造した。
【0085】
上記で製造された封止層の溶液を400メッシュのナイロンフィルタでフィルタリングした後、第1層(10μm厚さ)及び第2層(50μm厚さ)それぞれ別に離型PETの離型面にリップコーターを用いて塗布し、乾燥機で110℃でそれぞれ2分、4分間乾燥し、紫外線をそれぞれ0.8、2J/cm2照射して封止層を形成した後、二つの層をラミネーションした。前記厚さは、乾燥完了した後の厚さを意味する。
【0086】
封止フィルムの製造
予め準備されたメタル層(SUS430、厚さ80μm)上に、前記封止層の第2層に付着された離型処理されたPETを剥離させ、ロールツーロール(Roll-to-Roll)工程で70℃でラミネーションして、第2層がメタル層と接するように封止フィルムを製造した。
【0087】
前記製造された封止フィルムを65インチのサイズにカッティングしてシート状態の有機電子素子封止用フィルムを製造した。製造されたフィルムに対して物性を測定する。
【0088】
<実施例2>
【0089】
CaO粒子の含量を290kgに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0090】
<実施例3>
CaO粒子の平均粒径を2.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0091】
<実施例4>
CaO粒子の平均粒径を1.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0092】
<実施例5>
【0093】
Ni粒子の平均粒径を600nmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0094】
<比較例1>
CaO粒子の平均粒径を6μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0095】
<比較例2>
Ni粒子の平均粒径を2μmに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0096】
<比較例3>
CaO粒子の含量を1kgに変更したこと以外は、実施例1と同一の方法によって有機電子素子封止用フィルムを製造した。
【0097】
<実験例1-吸着エネルギーの計算>
実施例及び比較例で用いた輝点防止剤のアウトガスに対する吸着エネルギーを密度汎関数論(density functional theory)基盤の電子構造計算を通じて計算した。結晶形構造を有する輝点防止剤の最密充填面が表面に現われる2次元slab構造を作った後に構造最適化を進行し、この真空状態の表面上に輝点原因分子が吸着された構造に対する構造最適化を進行した後、この二つのシステムの総エネルギー(total energy)差から輝点原因分子の総エネルギーを引いた値を吸着エネルギーとして定義した。それぞれのシステムに対する総エネルギーの計算のために電子-電子間の相互作用を模した交換相関(exchange-correlation)でGGA(generalized gradient approximation)系列の関数であるrevised-PBE関数を用い、電子運動エネルギー(kinetic energy)のカットオフ(cutoff)は、500eVを用い、逆格子空間(reciprocal space)の原点に該当するガンマ点(gamma point)のみを含ませて計算した。各システムの原子構造を最適化するために共役勾配(conjugate gradient)法を用い、原子間の力が0.01eV/Å以下になるまで繰り返し計算を行った。一連の計算は、常用コードであるVASPを通じて行われた。実施例及び比較例で用いられた輝点防止剤であるNiのNH3及びHに対する吸着エネルギーは、それぞれ-0.54及び-2.624であった。
【0098】
<実験例2-粒度分布結果>
実施例で製造した封止フィルムに対して封止層を1.5cm x 1.5cmで裁断してサンプルとして製造した後、トルエン3gにとかす(sonication 20min、50℃)。その後、300メッシュのナイロンフィルタによりフィルタリングした後、フィルタを通過した溶液に対して粒度を測定する。粒度測定方法は、ISO 13320:2009によって認証された技術が適用された器機であるMastersizer(Malvern Panalytical Ltd)を用いた。ソフトウェア上の設定で粒子類型を非球形で入力した後に溶媒をトルエンで入力し、レベルセンサ閾値を20で入力する。その後、バックグラウンド測定時間とサンプル測定時間をそれぞれ10秒、5秒で入力し、測定オプスキュレーションの下限と上限をそれぞれ1と20パーセントで入力した後、測定を最小3回施行するように入力して設定を終える。トルエン溶媒を装置に投入して2000~3000RPMで循環した後、イニシャライズ及びバックグラウンド数値測定を施行し、前記フィルタリングされた輝点防止剤と水分吸着剤の分散溶液を投入して、ソフトウェア画面上のオプスキュレーション値を3~7パーセントの間となるようにした後に測定を施行した。測定過程で、粒径30μm以上領域で一定ではない頻度とシグナルで現われるピークは、ほこりなどによるノイズであると判断して除去した後、結果値を導出した。
【0099】
下記一般式1による算出値を計算した。平均粒径の単位は、μmである。
【0100】
【0101】
【0102】
<実験例3-パネル不良測定>
薄膜トランジスタガラス基板上に有機電子素子を蒸着した後、実施例及び比較例で製造した封止フィルムを真空合着機を用いて25℃、真空度50mtorr、0.4MPaの条件で、前記素子上に有効ベゼルを長さが3~4mmとなるように合着して65インチサイズの有機電子パネルを製造した。前記有効ベゼルは、ガラス基板上の縁に有機電子素子なしに封止層がガラス基板と直接接することになる縁領域の外辺と内辺の距離を意味する。前記製造したパネルを85℃及び相対湿度85%で1000時間駆動した後、暗室で点灯して肉眼で不良画素の発生有無を確認した。不良画素は、周辺に比べて明るい輝点や周辺に比べて暗い輝点を不良画素であると判断した。不良画素が3個以下である場合、O、不良画素が10個未満である場合、Δ、不良画素が10個以上発生した場合、Xに分類した。
【0103】
<実験例4-水分遮断長さの測定>
前記実験例3の測定が完了したパネルの縁領域で水分が浸透した長さとして透明度が増加した領域の外辺と内辺の距離を測定した。水分吸着剤は、水分との反応により透明度が増加して水分が浸透した領域と浸透していない領域を透明度差の境界点で区分した。水分遮断距離が2mm以下である場合、O、2mmを超過して高温、高湿耐久信頼性が良好ではない場合、Xに分類した。
【0104】
高温、高湿の評価時に耐久性(硬化度)が良くない場合、水分遮断距離が悪くなる。したがって、水分遮断距離は、耐久性と硬化の尺度になり得る。
【0105】
【符号の説明】
【0106】
1:封止フィルム
2、4:封止層
3:輝点防止剤
5:水分吸着剤
21:基板
22:有機電子素子
12:封止層
13:メタル層
【国際調査報告】