(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】カーボンブラックを含むポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20221209BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221209BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/04
C08J3/22 CFG
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022516111
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020075074
(87)【国際公開番号】W WO2021048123
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】デボワ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルマン,ヨッヒェン
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,イェンス
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AC04
4F070AC28
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4J002CL011
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4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含むポリアミド組成物(PC)であって、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素質量はX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、ポリアミド組成物(PC)に関する。本発明はさらに、ポリアミド組成物(PC)の生成方法、及び、ポリアミド組成物(PC)を形成することによって成形品を製造する方法に関する。さらに、本発明は、ポリアミド組成物(PC)を含む成形品、及び、前記ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率を増加させるための、ポリアミド組成物(PC)中の少なくとも1つのカーボンブラック(B)の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含むポリアミド組成物(PC)であって、
(A) 少なくとも1つのポリアミド、
(B) 少なくとも1つのカーボンブラック、
ここで、成分(B)の表面層は、前記成分(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素の質量はX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、ポリアミド組成物(PC)。
【請求項2】
前記ポリアミド組成物(PC)は、いずれの場合も前記ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、成分(A)を40~99.99質量%の範囲、及び、成分(B)を0.01~5質量%の範囲で含む、請求項1に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項3】
前記成分(B)の表面層が、前記成分(B)の表面層の総質量に基づいて、1質量%以下の窒素を含み、前記表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項4】
前記成分(B)は部分燃焼カーボンブラックである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項5】
前記成分(B)は、5~70nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項6】
前記ポリアミド組成物(PC)中に存在する前記少なくとも1つのポリアミド(A)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA510、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6I、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6I/6T、PA PACM12、PA6I/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-T、及び上述したポリアミドのうちの2つ以上からなるコポリアミドからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項7】
前記ポリアミド組成物(PC)中に存在する前記少なくとも1つのポリアミド(A)が、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6/66(PA6/66)、ポリアミド66/6(PA66/6)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド6/6T(PA6/6T)、ポリアミド12(PA12)及びポリアミド1212(PA12)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項8】
前記ポリアミド組成物(PC)が、安定剤、染料、顔料、フィラー、補強剤、耐衝撃性改良剤及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(C)をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項9】
前記ポリアミド組成物(PC)が、前記ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、前記少なくとも1つの添加剤(C)を0~55質量%の範囲で含む、請求項8に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項10】
前記成分(B)が50ppm未満の325メッシュのふるい残渣を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項11】
前記成分(B)が100Ω
*cm未満の体積抵抗を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項12】
前記成分(B)が300g/l未満のかさ密度を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を製造する方法であって、成分(A)、マスターバッチ(MB)及び任意に成分(C)が二軸押出機で合成され、前記マスターバッチ(MB)は成分(A)及び成分(B)を含む、方法。
【請求項14】
前記マスターバッチ(MB)が、いずれの場合も前記マスターバッチ(MB)の総質量に基づいて、60~80質量%の成分(A)及び20~40質量%の範囲の成分(B)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を形成することによって成形品を製造する方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を含む成形品。
【請求項17】
少なくとも5*10
11Ω
*mの体積抵抗を有する、請求項16に記載の成形品。
【請求項18】
ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率を増加させるためのポリアミド組成物(PC)における少なくとも1つのカーボンブラック(B)の使用であって、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素の質量は、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含むポリアミド組成物(PC)であって、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素質量はX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、ポリアミド組成物(PC)に関する。本発明はさらに、ポリアミド組成物(PC)の生成方法、及び、ポリアミド組成物(PC)を形成することによって成形品を製造する方法に関する。さらに、本発明は、ポリアミド組成物(PC)を含む成形品、及び、前記ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率(shrinkage)を増加させるための、ポリアミド組成物(PC)中の少なくとも1つのカーボンブラック(B)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは一般に非常に優れた機械的特性のために、特に工業的に重要な半結晶性のポリマーである。特に、それらは高い強度、剛性、及び靱性、優れた耐化学性、ならびに高い耐磨耗性及び耐トラッキング性を有する。これらの特性は射出成形の製造において特に重要である。高い靱性は包装フィルムとしてのポリアミドの使用のために特に重要である。その特性のため、ポリアミドは釣り糸、登山用ロープ、及びカーペットなどの繊維製品の製造に工業的に使用される。ポリアミドはまた、壁コンセント、ねじ、及び結束バンドの製造にも使用される。ポリアミドはまた、塗料、接着剤、及びコーティング材料としても採用される。
【0003】
しかし、ポリアミドは一般的に成形時にわずかに収縮するだけであるため、得られる成形品はしばしば不十分な収縮を示し、それは、いくつかの用途、特に自動車産業又は電子産業におけるいくつかの用途には不適当なものとなっている。さらに、得られた成形品が十分な収縮を示す場合、得られた成形品の機械的特性は、しばしば不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、成形中に収縮率の増加を示し、そこから非常に簡単かつ安価な方法で優れた機械的特性を有する成形品を製造することが可能であるポリアミド組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明に従って、以下の成分(A)及び(B)を含むポリアミド組成物(PC)によって達成され、
(A) 少なくとも1つのポリアミド、
(B) 少なくとも1つのカーボンブラック、
ここで、成分(B)の表面層は、成分(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、該表面層中の酸素の質量が、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される。
【0006】
驚くべきことに、本発明のポリアミド組成物(PC)は、成形中に、従来技術のポリアミド組成物と比較して、増加した収縮を示すことが見出された。さらに、驚くべきことに、高い収縮率にもかかわらず、得られる成形体は、高い耐クリープ性、ならびに高い引張弾性率(tensile modulus of elasticity)及び高い引張強度(tensile strength)などの優れた機械的特性を示すことが見出された。
【0007】
さらに、驚くべきことに、本発明のポリアミド組成物(PC)は、従来技術のポリアミド組成物と比較して、結晶化の増加を示すことも見出された。
【0008】
さらに、本発明のポリアミド組成物(PC)を形成することによる成形品の製造工程は、従来技術のポリアミド組成物を形成することによる成形品の製造工程のサイクルタイムより大幅に短いので、非常に費用効果が高い。
【0009】
さらに、驚くべきことに、本発明のポリアミド組成物(PC)中の少なくとも1つのポリアミド(A)がポリアミド6の場合、得られる成形体は、例えば、自動車産業又は電子産業におけるポリアミド組成物に通常使用される、はるかに高価なポリアミド66がポリアミド6で置き換えられるほどの優れた機械的特性を示すことが見出されている。
【0010】
本発明によるポリアミド組成物(PC)は、本明細書において以下により具体的に解明される。
【0011】
ポリアミド組成物(PC)
本発明によれば、ポリアミド組成物(PC)は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含む。
【0012】
本発明の文脈で「少なくとも1つのポリアミド(A)」は、正確に1つのポリアミド(A)を意味するか、さもなければ2つ以上のポリアミド(A)の混合物のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0013】
同じことが「少なくとも1つのカーボンブラック(B)」にも当てはまる。本発明の文脈で「少なくとも1つのカーボンブラック(B)」は、正確に1つのカーボンブラック(B)を意味するか、さもなければ2つ以上のカーボンブラック(B)の混合物のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0014】
ポリアミド組成物(PC)は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を任意の所望の量で含んでいてよい。
【0015】
ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を40~99.99質量%の範囲及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.01~5質量%の範囲で含む場合が好ましい。
【0016】
ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を55~99.9質量%の範囲及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.1~4質量%の範囲で含む場合が特に好ましい。
【0017】
ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を60~99.7質量%の範囲及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.3~3質量%の範囲で含む場合が最も好ましい。
【0018】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、組成物(A)を40~99.99質量%の範囲及び成分(B)を0.01~5質量%の範囲で含むポリアミド組成物(PC)を提供するものでもある。
【0019】
ポリアミド組成物(PC)は、任意の所望の形態で存在することができる。ポリアミド組成物(PC)が、ペレットの形態で存在する場合が好ましい。ポリアミド組成物(PC)は、顕微鏡によって決定される、0.5~10mmの範囲、より好ましくは0.8~5mmの範囲及び最も好ましくは1~3mmの範囲の、平均粒径を有するペレットとして存在する場合が特に好ましい。
【0020】
ポリアミド組成物(PC)は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)に加えて、少なくとも1つの添加剤(C)をさらに含んでよい。
【0021】
本発明の文脈では、「少なくとも1つの添加剤(C)」は、正確に1つの添加剤(C)を意味するか、さもなければ2つ以上の添加剤(C)の混合物のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0022】
ポリアミド組成物(PC)は、例えば、ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つの添加剤(C)を0~55質量%の範囲で含むことができる。ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つの添加剤(C)を0~41質量%の範囲で、特に好ましくは0~37質量%の範囲で含む場合が好ましい。
【0023】
したがって、本発明はまた、ポリアミド組成物(PC)が、ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つの添加剤(C)を0~55質量%の範囲で含むポリアミド組成物(PC)を提供する。
【0024】
ポリアミド組成物(PC)が少なくとも1つの添加剤(C)を含む場合、ポリアミド組成物(PC)中に存在する少なくとも1つのポリアミド(A)の質量%値は、少なくとも1つのポリアミド(A)の質量%値、少なくとも1つのカーボンブラック(B)の質量%値及び少なくとも1つの添加剤(C)の質量%値の合計が100%になるように、対応して減少することが理解されるであろう。
【0025】
ポリアミド組成物(PC)が少なくとも1つの添加剤(C)を含む場合、ポリアミド組成物は、例えば、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)及び少なくとも1つの添加剤(C)の総質量に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を40~99.89質量%の範囲、少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.01~5質量%の範囲、及び、少なくとも1つの添加剤(C)を0.1~55質量%の範囲で含む。
【0026】
ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)及び少なくとも1つの添加剤(C)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を55~99.7質量%の範囲、少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.1~4質量%の範囲、及び、少なくとも1つの添加剤(C)を0.2~41質量%で含む場合が好ましい。
【0027】
ポリアミド組成物(PC)が、いずれの場合も、少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)及び少なくとも1つの添加剤(C)の質量パーセントの合計に基づいて、好ましくはポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、少なくとも1つのポリアミド(A)を60~99.4質量%の範囲、少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.3~3質量%の範囲、及び、少なくとも1つの添加剤(C)を0.3~37質量%の範囲で含む場合が最も好ましい。
【0028】
ポリアミド組成物(PC)中に存在する少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)及び任意に存在する少なくとも1つの添加剤(C)の質量%値は、したがって通常合計して100%になる。
【0029】
適切な添加剤(C)は、それ自体、当業者に既知である。添加剤(C)は、好ましくは、安定剤、染料、顔料、フィラー、補強剤、耐衝撃性改良剤及び可塑剤からなる群から選択される。
【0030】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)が、安定剤、染料、顔料、フィラー、補強剤、耐衝撃性改良剤及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(C)をさらに含むポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0031】
適切な安定剤は、例えば、フェノール、タルク、アルカリ土類金属ケイ酸塩、立体障害フェノール、亜リン酸塩及びアルカリ土類金属グリセロリン酸である。
【0032】
適切な染料及び顔料は、例えば、遷移金属酸化物又はニグロシンである。
【0033】
適切なフィラーは、例えば、ガラスビーズ、ガラス繊維、カオリン、ウォラストナイト、白雲母、金雲母、炭素繊維、カーボンナノチューブ及びチョークである。
【0034】
適切な耐衝撃性改良剤は、例えば、エチレンプロピレン(EPM)もしくはエチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴムもしくは熱可塑性ウレタンに基づくポリマー、及びアイオノマー又はスチレンベースのゴムである。
【0035】
適切な可塑剤は、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素油、N-(n-ブチル)-ベンゼンスルホンアミド、及び、オルト-及びパラ-トリルエチルスルホンアミドである。
【0036】
好ましい実施形態において、ポリアミド組成物(PC)は、ガラス繊維又は炭素繊維などの繊維を含まない。より好ましい実施形態では、ポリアミド組成物(PC)は、いかなるフィラーも含まない。
【0037】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)がいかなる繊維を含まないポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0038】
ポリアミド(成分(A)
ポリアミド組成物(PC)は、少なくとも1つのポリアミド(A)を含む。
【0039】
適切なポリアミド(A)は、一般に、70~350ml/g、好ましくは70~240ml/gの粘度数を有する。粘度数は、ISO307に従って、25℃で96質量%の硫酸中のポリアミド(A)の0.5質量%溶液から、本発明に従って決定される。
【0040】
好ましいポリアミド(A)は、半結晶性ポリアミドである。適切なポリアミド(A)は、500~2000000g/molの範囲、好ましくは5000~500000g/molの範囲、特に好ましくは10000~100000g/molの範囲の質量平均分子量(MW)を有する。質量平均分子量(Mw)は、ASTM D4001に従って決定される。
【0041】
適切なポリアミド(A)は、例えば、7~13個の環員を有するラクタムに由来するポリアミド(A)などを含む。適切なポリアミド(A)は、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミド(A)がさらに含む。
【0042】
ラクタムに由来するポリアミド(A)の例には、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及び/又はポリラウロラクタムに由来するポリアミドが含まれる。
【0043】
適切なポリアミド(A)は、ω-アミノアルキルニトリルから得られるものをさらに含む。好ましいω-アミノアルキルニトリルはアミノカプロニトリルであり、これはポリアミド6をもたらす。さらに、ジニトリルはジアミンと反応させることができる。ここで、アジポジニトリルとヘキサメチレンジアミンが好ましく、これらは重合してポリアミド66を得られる。ニトリルの重合は、水の存在下で行われ、直接重合としても知られている。
【0044】
ジカルボン酸とジアミンから得られるポリアミド(A)を用いる場合、4~36個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子、特に好ましくは6~10個の炭素原子を有するジカルボン酸アルカン(脂肪族ジカルボン酸)を採用することができる。芳香族ジカルボン酸もまた適切である。
【0045】
ジカルボン酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、さらにテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が含まれる。
【0046】
適切なジアミンとしては、例えば4~36個の炭素原子を有するアルカンジアミン、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及び芳香族ジアミン、例えば、m-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン及び1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンなどが挙げられる。
【0047】
好ましいポリアミド(A)は、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド及びポリカプロラクタム、さらにコポリアミド6/66であり、特にカプロラクタム単位の割合が5~95質量%を有するものである。
【0048】
また、上記及び下記のモノマーの2つ以上の共重合によって得られるポリアミド(A)、又は任意の所望の混合比での複数のポリアミド(A)の混合物も好適である。特に好ましい混合物は、ポリアミド66と他のポリアミド(A)との混合物、特にコポリアミド6/66である。
【0049】
適切なポリアミド(A)は、したがって、脂肪族、半芳香族又は芳香族ポリアミド(A)である。「脂肪族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(A)が脂肪族モノマーのみから構成されることを意味すると理解されるべきである。「半芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(A)が脂肪族及び芳香族モノマーの両方から構成されることを意味すると理解されるべきである。「芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(A)が芳香族モノマーのみから構成されることを意味すると理解されるべきである。
【0050】
以下の網羅的でないリストは、上記のものを含み、さらに、本発明による方法で使用するのに適したポリアミド(A)、及び存在するモノマーを含む。
【0051】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 ドデカン-1,12-ジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 トリデカン-1,13-ジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T ノニルジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6Tを参照されたい)
PA6/66 (PA6及びPA66を参照されたい)
PA6/12 (PA6及びPA12を参照されたい)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610を参照されたい)
PA6I/6T (PA6I及びPA6Tを参照されたい)
PA PACM12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA6I/6T/PACM PA6I/6T及びジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
【0052】
このように、本発明はまた、ポリアミド組成物(PC)中に存在する少なくとも1つのポリアミド(A)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA510、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6I、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6I/6T、PA PACM12、PA6I/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-T、及び上述したポリアミドのうちの2つ以上からなるコポリアミドからなる群から選択される、ポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0053】
少なくとも1つのポリアミド(A)が、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6/66(PA6/66)、ポリアミド66/6(PA66/6)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド6/6T(PA6/6T)、ポリアミド12(PA12)及びポリアミド1212(PA1212)からなる群から選択される場合が好ましい。
【0054】
特に好ましいポリアミド(A)は、ポリアミド6(PA6)及び/又はポリアミド66(PA66)であり、ポリアミド6(PA6)が特に好ましい。
【0055】
したがって、本発明はまた、ポリアミド組成物(PC)中に存在する少なくとも1つのポリアミド(A)が、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6/66(PA6/66)、ポリアミド66/6(PA66/6)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド6/6T(PA6/6T)、ポリアミド12(PA12)及びポリアミド1212(PA12)からなる群から選択されるポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0056】
カーボンブラック(成分(B))
ポリアミド組成物(PC)は、少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含み、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、該表面層中の酸素の質量が、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される。
【0057】
「表面層」という用語は、当業者には既知である。
【0058】
本発明の文脈において、「表面層」という用語は、X線透過深さによって決定され、少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面から2~10nmの距離と、少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面の間の層を意味する。
【0059】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて、1.5質量%以下の酸素を含み、表面層中の酸素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定されることが好ましい。
【0060】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて、1.25質量%以下の酸素を含み、表面層中の酸素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定されることがより好ましい。
【0061】
さらに、少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、成分(B)の表面層の総質量に基づいて、1質量%以下の窒素を含み、表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定されることが好ましい。
【0062】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、成分(B)の表面層の総質量に基づいて、0.8質量%以下の窒素を含み、表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定されることがより好ましい。
【0063】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、成分(B)の表面層の総質量に基づいて、0.6質量%以下の窒素を含み、表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定されることが最も好ましい。
【0064】
したがって、本発明は、成分(B)の表面層が、成分(B)の表面層の総質量に基づいて、1質量%以下の窒素を含み、表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、ポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0065】
ポリアミド組成物(PC)に含まれる少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層に含まれる酸素及び窒素の質量パーセントは、X線光電子分光法(XPS)により決定される。
【0066】
X線光電子分光法(XPS)は、試料(この場合は少なくとも1つのカーボンブラック(B)の試料)内に存在する元素の元素組成、実験式、化学状態、電子状態を測定することができる定量分光学的手法である。試料にX線ビームを照射し、同時に試料の表面層から逃げる電子の運動エネルギーと数を測定することで、XPSスペクトルを得ることができる。この場合、X線の透過深さが2~10nmであり、これは電子が試料表面から2~10nm以下の深さから逃げることができることを意味する。XPS分析では、一般的に単色アルミニウムKot(AlKa)X線を採用し、これはアルミニウムアノード表面に集束電子ビームを照射することによって発生させることができる。生成されたAlKa X線の一部は、集光モノクロメータによってインターセプトされ、狭いX線エネルギーバンドが試料表面の分析部位に集光される。試料表面でのAlKa X線のX線束は、電子ビーム電流、アルミニウムアノード表面の厚さと完全性、結晶品質、サイズ、モノクロメータの安定性に依存する。
【0067】
カーボンブラックは、原則として当業者に知られている。
【0068】
本発明のポリアミド組成物(PC)に好ましく含まれる少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、一般にふるい残渣(sieve residue)が少なく、体積抵抗が低く、かさ密度が低い。
【0069】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、50ppm未満、好ましくは20ppm未満、より好ましくは10ppm未満の325メッシュのふるい残渣を有する。ふるい残渣は、ASTM D1514-00に従って決定される。
【0070】
したがって、本発明はまた、成分(B)が50ppm未満の325メッシュのふるい残渣を有するポリアミド組成物(PC)を提供するものである。
【0071】
さらに、少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、好ましくは100Ω*cm未満、より好ましくは50Ω*cm未満、最も好ましくは20Ω*cm未満の体積抵抗を有する。
【0072】
したがって、本発明はまた、成分(B)が100Ω*cm未満の体積抵抗を有するポリアミド組成物(PC)を提供するものである。
【0073】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、好ましくは300g/l未満、より好ましくは200g/l未満のかさ密度を有する。かさ密度は、ASTM D1513-99に従って決定される。
【0074】
したがって、本発明は、成分(B)が300g/l未満のかさ密度を有するポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0075】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、任意の所望の形態で存在することができる。成分(B)が粉末の形態で存在する場合が好ましい。成分(B)が、5~70nmの範囲、より好ましくは10~60nmの範囲、最も好ましくは15~50nmの範囲の平均粒径(D50値)を有する粉末として存在する場合に、特に好ましい。
【0076】
したがって、本発明はまた、成分(B)が5nm~70nmの範囲の平均直径を有するポリアミド組成物(PC)を提供する。
【0077】
本発明の文脈では、「D50値」は、粒子の総体積に基づく粒子の50体積%がD50値より小さいか等しく、粒子の総体積に基づく粒子の50体積%がD50値より大きい粒子サイズを意味すると理解されるべきである。
【0078】
適切なカーボンブラックは、例えば部分燃焼カーボンブラックである。
【0079】
したがって、本発明はまた、成分(B)が部分燃焼カーボンブラックであるポリアミド組成物(PC)も提供する。
【0080】
部分燃焼カーボンブラックは、好ましくは部分的にグラファイト構造を有し、好ましくは低速度、クエンチなし及び添加物なしの炭素化学及び石油化学に由来する部分オイル酸化に基づく方法によって製造される。
【0081】
ポリアミド組成物(PC)に含まれる少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、前記ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率を増加させるためのポリアミド組成物(PC)に使用されることができる。
【0082】
したがって、本発明はまた、前記ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率を増加させるための、ポリアミド組成物(PC)におけるカーボンブラックの使用を提供し、そこでは、少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層は、該少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて2質量%以下の酸素を含み、表面層中の酸素質量は、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される。
【0083】
ポリアミド組成物(PC)の製造
ポリアミド組成物(PC)は、当業者に公知の任意の方法によって製造されることができる。
【0084】
好ましくは、合成することによって製造される。
【0085】
合成するための方法は、当業者に知られている。
【0086】
例えば、少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)及び任意に少なくとも1つの添加剤(C)は、押出機で合成され、続いてそこから押出され、任意にその後の押出物のペレット化を伴うことができる。
【0087】
ポリアミド組成物(PC)を調製するために、成分(A)、(B)及び任意で(C)を合成する間の押出機の温度は、任意の温度でよく、通常200~350℃の範囲、好ましくは220~330℃の範囲、特に好ましくは240~310℃の範囲である。
【0088】
押出機のバレル温度は、押出機内の成分の温度よりも高くすることができ、同様に押出機のバレル温度が押出機内の部品の成分より低いのも可能である。例として、押出機のバレル温度は、最初は、成分が加熱されているときは、押出機内の成分の温度よりも高くすることができる。押出機内の成分が冷却されているときは、押出機のバレル温度は押出機内の成分の温度よりも低くすることができる。本発明で与えられ、押出機に言及する温度は、押出機のバレル温度であることを意図している。「押出機のバレル温度」とは、押出機のバレルの温度を意味する。したがって、押出機のバレル温度は、押出機バレルの外壁の温度である。押出機としては、当業者に知られている任意の押出機が適しており、これは合成中の温度及び圧力で使用されることができる。一般に、押出機は、少なくとも1つのポリアミド(A)、少なくとも1つのカーボンブラック(B)、及び任意に少なくとも1つの添加剤(C)が合成される温度まで加熱されることが可能である。
【0089】
押出機は、単軸、二軸、又は多軸押出機であってよい。二軸押出機が好ましい。二軸押出機は、ダブルスクリュー押出機としても知られている。二軸押出機は、共回転であってよく、又は逆回転であってよい。単軸押出機、二軸押出機及び多軸押出機は、当業者に知られており、例えば、C.Rauwendaal:ポリマー押出、Carl Hanser Verlag GmbH&Co.KG,第5版(2014年1月16日)に記載されている。
【0090】
押出機はまた、さらなる装置、例えば混合要素又は混練要素を含んでよい。混合要素は、押出機に含まれる個々の成分を混合するために役立つ。適切な混合要素は当業者に知られており、例として、静的混合要素又は動的混合要素がある。混練要素も同様に、押出機に含まれる各成分の混練に役立つ。適切な混練要素は当業者に知られており、例えば混練スクリュー又は混練ブロック、例えばディスク混練ブロック又はショルダー混練ブロックである。成分(A)、(B)及び任意に(C)は、連続して又は同時に押出機に添加されることができ、押出機内で混合及び合成されてポリアミド組成物(PC)が得られる。
【0091】
少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、粉末として、又はマスターバッチ(MB)の形態で、押出機に導入されることができる。好ましくは、少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、マスターバッチ(MB)の形態で押出機に導入される。
【0092】
マスターバッチ(MB)は、好ましくは、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含む。
【0093】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのポリアミド(A)、マスターバッチ(MB)、及び任意に少なくとも1つの添加剤(C)は、二軸押出機で合成され、そこでは、マスターバッチ(MB)は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を含む。
【0094】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)を製造するための方法を提供し、そこでは、成分(A)、マスターバッチ(MB)及び任意に成分(C)は二軸押出機で合成され、該マスターバッチ(MB)は成分(A)及び成分(B)を含む。
【0095】
好ましくは、マスターバッチ(MB)は、いずれの場合もマスターバッチ(MB)の総質量に基づいて、60~80質量%の成分(A)及び20~40質量%の範囲の成分(B)、より好ましくは60~75質量%の成分(A)及び25~40質量%の範囲の成分(B)、最も好ましくは65~75質量%の成分(A)及び25~35質量%の範囲の成分(B)を含む。
【0096】
したがって、本発明はまた、マスターバッチ(MB)が、いずれの場合もマスターバッチ(MB)の総質量に基づいて、60~80質量%の成分(A)及び20~40質量%の範囲の成分(B)を含む方法も提供する。
【0097】
好ましくは、マスターバッチ(MB)は、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)を合成することによって調製される。例えば、少なくとも1つのポリアミド(A)及び少なくとも1つのカーボンブラック(B)は、押出機で合成され、その後そこから押出され、任意にその後の押出物ペレット化を伴う。
【0098】
マスターバッチ(MB)を調製するために、成分(A)及び(B)を合成する際の押出機の温度も任意の温度とすることができ、通常200~350℃の範囲、好ましくは220~330℃の範囲、特に好ましくは240~310℃の範囲である。
【0099】
ポリアミド組成物(PC)がその後の押出物ペレット化によって製造される場合、ペレットは、顕微鏡によって決定されて、0.5~10mmの範囲、より好ましくは0.8~5mmの範囲、最も好ましくは1~3mmの範囲の平均粒径を有する。
【0100】
マスターバッチ(MB)についても同様である:マスターバッチ(MB)がその後の押出物ペレット化によって製造される場合、ペレットはまた、顕微鏡によって決定されて、0.5~10mmの範囲、より好ましくは0.8~5mmの範囲、最も好ましくは1~3mmの範囲の平均粒径を有する。
【0101】
ポリアミド組成物(PC)を含む成形品の製造
ポリアミド組成物(PC)を含む成形品は、ポリアミド組成物(PC)を形成することにより製造されることができる。
【0102】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)を形成することによって成形品を製造する方法も提供する。
【0103】
ポリアミド組成物(PC)は、成形品を製造するための当業者に知られている任意の方法によって形成されることができる。適切な形成方法の例としては、射出成形、押出成形、カレンダー成形、回転成形、及びブロー成形が挙げられる。ポリアミド組成物(PC)は、好ましくは射出成形及び/又は押出成形により形成され、より好ましくは射出成形により形成される。
【0104】
成形品が射出成形を介して調製される場合、ポリアミド組成物(PC)は、射出成形機で、230~350℃の範囲、好ましくは240~320℃の範囲、最も好ましくは250~300℃の範囲の溶融温度で射出成形されて成形部品を与える。
【0105】
成形品は、当業者に知られている任意の形態を有していてよい。それは、例えば、フィルム、シート又は完成部品の形態で存在してよい。好ましい実施形態では、成形品は、フィルムの形態で存在しない。
【0106】
したがって、本発明はまた、フィルムの形態で存在しない成形品も提供する。
【0107】
本発明の文脈における「フィルム」とは、20μm~500μmの範囲、好ましくは50μm~300μmの範囲の厚さを有する平面成形品を指す。「シート」とは、0.5mm超~100mmの範囲の厚さを有する平面成形品を指す。
【0108】
完成部品は、例えば、建設分野、自動車製造、海洋建設、鉄道車両建設、コンテナ建設、家電製品用部品、衛生設備用部品、及び/又は航空宇宙旅行用部品である。好ましい完成部品は、例えば、ダッシュボード、包装用フィルム、及び例えば漁網又は釣り糸のためのモノフィラメントである。
【0109】
したがって、本発明は、ポリアミド組成物(PC)を含む成形品も提供する。
【0110】
好ましくは、成形品は、少なくとも5*1011Ω*m、より好ましくは少なくとも1*1012Ω*m、最も好ましくは少なくとも2*1012Ω*mの体積抵抗を有する。
【0111】
したがって、本発明は、少なくとも5*1011Ω*mの体積抵抗を有する成形品も提供する。
【0112】
体積抵抗は体積導電率の逆数であるため、まず電気伝導率を体積導電率として決定することによって、体積抵抗が決定された。体積導電率は、4点測定器を用いて決定された。各成形品について、測定は、成形品から切り出された77×12×4mm3の寸法の5つの試験片で実行された。試験片と電極を良好に接触させるために、4つの銀電極は、導電性銀ペースト(Hans Wohlbring GmbHのLeitsilber 200)を用いて、試験片に直接塗布された。電流源225を電流源として使用し、プログラマブル電位計617を電圧測定器として使用し、マルチメータ1000を電流測定器として使用し、いずれの場合もKeithley Instruments社からのものである。
【0113】
本発明は、以下の実施例に限定されることなく、詳細に説明される。
【0114】
実施例
以下の成分を採用した:
ポリアミド(A):
(A1) ポリアミド6(PA6) (Ultramid(登録商標)B27E;BASF SE)
カーボンブラック(B):
(B1) Ensaco(登録商標)250G (Imerys Graphite & Carbon Switzerland Ltd.)
(B2) Ensaco(登録商標)360G (Imerys Graphite & Carbon Switzerland Ltd.)
(B3) ブラックパール(登録商標) 880 (Cabot Corporation)
添加剤(C)
(C1) ガラス繊維 ECS 03 T-249 (Nippon Electric Glass)
(C2) N,N’-エチレンビス(ステアルアミド)
(C3) CuIとKIを含むマスターバッチ
【0115】
表1に使用されたポリアミド(成分(A))の主要パラメータを、表2に使用されたカーボンブラック(成分(B))の主要パラメータを示す。
【0116】
【0117】
AEGはアミノ末端基濃度を示す。これは、滴定により決定される。アミノ末端基濃度(AEG)の決定では、1gの成分(半結晶性ポリアミド)を、30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解し、次いで、水中0.2N塩酸で電位差滴定に供する。
【0118】
CEGはカルボキシル末端基濃度を示す。これは滴定によって決定される。カルボキシル末端基濃度(CEG)の決定では、1gの成分(半結晶性ポリアミド)を、30mLのベンジルアルコールに溶解した。続いて、120℃で、水中0.05N水酸化カリウム溶液で目視滴定に供する。
【0119】
半結晶性ポリアミドの溶融温度(TM)及びガラス転移温度(TG)は、それぞれ、示差走査熱量測定によって決定された。
【0120】
溶融温度(TM)を決定するために、上述したように、20K/分の加熱速度で最初の加熱運転(H1)を測定した。このとき、溶融温度(TM)は、加熱運転(H1)の溶融ピークの最高値における温度に対応していた。
【0121】
ガラス転移温度(TG)を決定するために、最初の加熱運転(H1)後に、冷却運転(C)、その後続いて第2の加熱運転(H2)を測定した。冷却運転は、20K/分の冷却速度で測定された;第1の加熱運転(H1)及び第2の加熱運転(H2)は、20K/分の加熱速度で測定された。次いで、ガラス転移温度(TG)を、上述したように、第2の加熱運転(H2)の段差の半分で決定した。
【0122】
ゼロせん断速度粘度(zero shear rate viscosity)η0は、TA Instruments社製「DHR-1」回転粘度計を用い、直径25mm、プレート間隔1mmのプレート-プレート形状で決定された。未平衡試料を減圧下、80℃で7日間乾燥させ、これらを500~0.5rad/sの角度周波数範囲で時間依存周波数掃引(シーケンステスト)で分析した。さらに以下の分析パラメータを使用した:変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20分、試料調製後の予熱時間:1.5分。
【0123】
【0124】
325メッシュふるい残渣は、ASTM D1514-00に従って決定された。
【0125】
酸素と窒素の質量%は、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される。
【0126】
マスターバッチ(MB)の製造
表3に報告されている成分は、表3に報告されている比率で、280rpm、260℃のバレル温度、11.2kg/時間のスループットで二軸押出機(ZE25A UXTI)で合成され、その後に押出物ペレット化を実施された。
【0127】
【0128】
ポリアミド組成物(PC)の製造
表3に報告されている成分は、表4に報告されている比率で、280rpm、260℃のバレル温度、11.2kg/時間のスループットで二軸押出機(ZE25A UXTI)で合成され、その後に押出物ペレット化を実施された。
【0129】
【0130】
成形部品の製造
上記で得られたペレットは射出成形機で280℃の溶融温度で射出成形され、厚さ2mm、寸法60×60mmの成形部品を得た。
【0131】
続いて、得られた成形部品の特性を決定した。得られた成形部品を減圧下、80℃で336時間乾燥させた後、乾燥状態で試験した。その結果を表5に示す。
【0132】
収縮率は、ISO294に従って測定された。
【0133】
Δクリープを測定するために、成形部品を降伏応力70%まで引き、成形部品の伸びを測定した。12時間後、再び成形部品の伸びを測定した。2つの伸びの差は、Δクリープに相当する。
【0134】
ISO 527-1:2012に従って、引張強度、引張弾性率及び破断伸びを決定した。
【0135】
体積抵抗は、体積導電率の逆数であるため、まず電気伝導率を体積導電率として決定することによって、体積抵抗は決定された。体積導電率は、4点測定器を用いて決定された。各成形品について、測定は、成形品から切り出した77×12×4mm3の寸法の5つの試験片で実行された。試験片と電極を良好に接触させるために、4つの銀電極は、導電性銀ペースト(Hans Wohlbring GmbHのLeitsilber 200)を用いて、試験片に直接塗布された。電流源225を電流源として使用し、プログラマブル電位計617を電圧測定器として使用し、マルチメータ1000を電流測定器として使用し、いずれの場合もKeithley Instruments社からのものである。
【0136】
【0137】
表5から明らかなように、少なくとも1つのカーボンブラック(B)のポリアミド組成物における使用は(前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて2質量%以下の酸素を含む)、このポリアミド組成物(PC)を含む成形体の高い収縮率をもたらす。成形体は、高い収縮率にもかかわらず、高い耐クリープ性とともに、高い引張弾性率及び高い引張強度のような良好な機械的特性を示す。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含むポリアミド組成物(PC)であって、
(A) 少なくとも1つのポリアミド、
(B) 少なくとも1つのカーボンブラック、
ここで、成分(B)の表面層は、前記成分(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素の質量はX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定され、
前記ポリアミド組成物(PC)は、前記ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、前記少なくとも1つのポリアミド(A)を55~99.9質量%の範囲で、及び、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)を0.1~4質量%の範囲で含む、ポリアミド組成物(PC)。
【請求項2】
前記ポリアミド組成物(PC)は、いずれの場合も前記ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、成分(A)を
60~
99.7質量%の範囲、及び、成分(B)を
0.3~
3質量%の範囲で含む、請求項1に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項3】
前記成分(B)の表面層が、前記成分(B)の表面層の総質量に基づいて、1質量%以下の窒素を含み、前記表面層中の窒素の質量がX線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項4】
前記成分(B)は部分燃焼カーボンブラックである、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項5】
前記成分(B)は、5~70nmの範囲の平均粒径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項6】
前記ポリアミド組成物(PC)中に存在する前記少なくとも1つのポリアミド(A)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA510、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6I、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6I/6T、PA PACM12、PA6I/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-T、及び上述したポリアミドのうちの2つ以上からなるコポリアミドからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項7】
前記ポリアミド組成物(PC)中に存在する前記少なくとも1つのポリアミド(A)が、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド6/66(PA6/66)、ポリアミド66/6(PA66/6)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド6/6T(PA6/6T)、ポリアミド12(PA12)及びポリアミド1212(PA12)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項8】
前記ポリアミド組成物(PC)が、安定剤、染料、顔料、フィラー、補強剤、耐衝撃性改良剤及び可塑剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤(C)をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項9】
前記ポリアミド組成物(PC)が、前記ポリアミド組成物(PC)の総質量に基づいて、前記少なくとも1つの添加剤(C)を0~55質量%の範囲で含む、請求項8に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項10】
前記成分(B)が50ppm未満の325メッシュのふるい残渣を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項11】
前記成分(B)が100Ω
*cm未満の体積抵抗を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項12】
前記成分(B)が300g/l未満のかさ密度を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリアミド組成物(PC)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を製造する方法であって、成分(A)、マスターバッチ(MB)及び任意に成分(C)が二軸押出機で合成され、前記マスターバッチ(MB)は成分(A)及び成分(B)を含む、方法。
【請求項14】
前記マスターバッチ(MB)が、いずれの場合も前記マスターバッチ(MB)の総質量に基づいて、60~80質量%の成分(A)及び20~40質量%の範囲の成分(B)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を形成することによって成形品を製造する方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項によるポリアミド組成物(PC)を含む成形品。
【請求項17】
少なくとも5
*10
11Ω
*mの体積抵抗を有する、請求項16に記載の成形品。
【請求項18】
ポリアミド組成物(PC)から作られる成形品の収縮率を増加させるためのポリアミド組成物(PC)における少なくとも1つのカーボンブラック(B)の使用であって、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層が、前記少なくとも1つのカーボンブラック(B)の表面層の総質量に基づいて、2質量%以下の酸素を含み、前記表面層中の酸素の質量は、X線光電子分光法によって2~10nmのX線透過深さで測定される、使用。
【国際調査報告】