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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物及びその物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/10 20060101AFI20221209BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20221209BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20221209BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
C08L77/10
C08K5/5313
C08K5/5399
C08K7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521524
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2020078026
(87)【国際公開番号】W WO2021069456
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/109990
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】パラップヴェーティル サランガダーラン,スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョワン,フー,チン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL061
4J002CL06W
4J002DL008
4J002EW136
4J002EW157
4J002FA048
4J002FD018
4J002FD136
4J002FD137
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、ポリアミド組成物、及び、当該ポリアミド組成物から得られる又は得ることができる物品、とりわけ、ダブルデータレート5RAM用のコネクタソケットを開示する。本発明のポリアミド組成物は、0.4mmの薄肉の物品のための望ましい引張強さ、良好な流動性、高いHDTを示し、これによって、高い動作周波数を有する電子部品に適用され得る。一方で、当該組成物はまた、成形中の良好な熱安定性を示し、そのためUL94のV-0をも達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、前記ポリアミド組成物の全質量に基づき、
成分(A)として、30~55質量%の1種以上の長鎖半芳香族ポリアミド、
成分(B)として、10~20質量%の難燃剤系、
成分(C)として、1~4.8質量%のホスファゼン、及び
成分(D)として、30~50質量%の補強剤
を含有し、
前記難燃剤系が、(B-1)下記式(I)で表されるジアルキルホスフィネート及び/又は下記式(II)で表されるジホスフィン酸塩
【化1】

【化2】
(式中、
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-Cアルキル基を表し;
M又はNは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、プロトン化窒素塩基又はその混合物を表し;
mは、1~4の整数を表し;
nは、1~4の整数を表し;
は、直鎖状の又は分枝状のC-C10-アルキレン基、C-C10-アリーレン基、C-C20-アルキルアリーレン基又はC-C20-アリールアルキレン基を表し;
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキル基を表し;
qは、1~4の整数を表し;
pは、1~4の整数を表し;
xは、1~4の整数を表す)、
及び、(B-2)リン酸の金属塩を含有する、
前記ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記長鎖半芳香族ポリアミドが、ポリアミド(i)及び/又はポリアミド(ii)を含有し、
前記ポリアミド(i)は、
(A-1)ジカルボン酸であって、当該ジカルボン酸の全量に基づき60~100モル%のテレフタル酸を含有する、ジカルボン酸、
(A-2)ジアミンであって、成分(a)として、当該ジアミンの全量に基づき60~100モル%の量で少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジアミンを含有する、ジアミン、及び、
任意の(A-3)アミノ酸及び/又はラクタム
を含有するモノマーから誘導され;
前記ポリアミド(ii)は、
(A-4)ジカルボン酸であって、当該ジカルボン酸の全量に基づき60~100モル%の、少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸を含有する、ジカルボン酸、
(A-5)ジアミンであって、当該ジアミンの全量に基づき60~100モル%の芳香族ジアミンを含有する、ジアミン、及び、
任意の(A-3)アミノ酸及び/又はラクタム
を含有するモノマーから誘導される、
請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド(i)の脂肪族ジアミン(a)が、8~36個の炭素原子を含有し、好ましくは、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、1,22-ドコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン及び2,4-ジメチルオクタンジアミンから成る群より選択され;
前記ポリアミド(ii)の少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸が、好ましくは、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びC36ダイマー酸から成る群より選択される、
請求項1~2のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記長鎖半芳香族ポリアミドが、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T、PA14T PA6T/8T、PA10T/6T、PA10T/610、PA6T/610、PA5T/510及び/又はPA4T/410である、請求項1~3のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記長鎖半芳香族ポリアミドが、ISO307-2007法に従い96質量%HSO中で測定される、60~120mL/gの粘度数を有する、請求項1~4のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記式(I)で表されるジアルキルホスフィネートが、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム及びメチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛を包含し;
前記式(II)で表されるジホスフィン酸塩が、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム及びベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛を包含し;
前記リン酸の金属塩が、Al(HPO、Al(HPO、Zn(HPO)、Al(HPO・4HO及びAl(OH)(HPO・2HOを包含する、
請求項1~5のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記成分(B-1)及び(B-2)が、60:40~90:10の(B-1)/(B-2)質量割合にある、請求項1~6のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
前記ホスファゼン(C)が、下記式(V)で表される環状ホスファゼン、下記式(VI)で表される直鎖状ホスファゼン:
【化3】

【化4】
{式中、
各々のRは、同一の又は異なる、C-C20-アルキル基、C-C20-アリール基、C-C30-アリールアルキル基又はC-C30-アルキルアリール基を表し;
uは、3~25、好ましくは3~6の整数を表し;
vは、3~10000の整数を表し;
zは、-N=P(OR又は-N=P(O)ORを表し;
Sは、-P(OR又は-P(O)(ORを表す}、
及び、架橋基を用いて前記環状ホスファゼン又は前記直鎖状ホスファゼンを架橋することにより得られる、少なくとも1種のホスファゼン
より選択される少なくとも1種のホスファゼンである、請求項1~7のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記ホスファゼンが、下記式(VII):
【化5】

で表されるものである、請求項1~8のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
前記補強剤(D)が、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、真鍮繊維、ステンレス鋼繊維、鋼繊維、セラミック繊維及び玄武岩繊維であって;前記繊維長は、2~7mmであり、前記繊維径は、3~20μm、好ましくは7~13μmである、請求項1~9のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
前記ポリアミド組成物が、ISO75-1/2の方法Aに従い測定される、少なくとも265℃、好ましくは少なくとも270℃の熱変形温度を有する、請求項1~10のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド組成物が、ISO527-2に従う5A型の0.4mm厚を有する試料により測定される、99MPaよりも高い引張応力を有する、請求項1~11のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
請求項1~12のうちいずれか1項に記載のポリアミド組成物により得られる物品であって、前記物品が、ISO75-1/2の方法Aに従い測定される、少なくとも265℃の熱変形温度、及び、3.2GHzより高い、好ましくは6.4GHzより高い最大動作周波数を有する、前記物品。
【請求項14】
前記物品が、コネクタソケット、アンテナフレーム、回路基板、回路ブレーカー、コイルエレメント、又は、携帯電話、センサー或いはラップトップのフレームもしくはハウジングもしくはパッケージを包含する、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記コネクタソケットは、ランダムアクセスメモリ又は中央処理装置又はソリッドステートメモリ用の、好ましくは、DDR5のランダムアクセスメモリ用のソケットである、請求項13~14のうちいずれか1項に記載の物品。
【請求項16】
前記コネクタソケットが、少なくとも2つの対向する壁部と、コンタクトピン付きのインサートを受け入れるための前記対向する壁部の間に定義された通路とを含む、ファインピッチ電気コネクタソケットであって、前記対向する壁部及びコンタクトピンが、本願請求項に係るポリアミド組成物から形成され、前記壁部が、末端部分を有しており;前記末端部分の厚さが、好ましくは5.9mm未満、より好ましくは5.8~5.4mmであり、前記厚さは、前記インサートの挿入方向で測定され;前記コンタクトピンの幅が、好ましくは0.2mm~0.4mmであり;前記ファインピッチ電気コネクタソケットが、DDR5のランダムアクセスメモリのファインピッチ電気コネクタソケットである、請求項13~15のうちいずれか1項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリアミド組成物に関し、及び、前記ポリアミド組成物から得られる又は得られ得る物品、とりわけダブルデータレート5RAM用のコネクタソケットにも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
近年、バッチ式はんだリフロープロセスを使用して、基本的に部品をプリント回路基板(PCB)の表面に直接取り付けるか又は配置する、電子回路の製造に関する部品組立技術である表面実装技術(SMT)が、急速に開発されている。プリント回路板にはペースト状はんだが予め適用され、そしてチップのような部品が当該基板に実装される。次に、基板がリフローはんだ付け用オーブンに運ばれ、そしてペーストがおよそ250℃に加熱されて溶融し(はんだリフロープロセス)、それにより部品がプリント回路基板に接着される。SMTは、部品のリード線がめっきされたスルーホールに挿入されて、そして底部からウェーブはんだ付けされて当該ホールが埋まり、そして部品が相互接続される、他のPCB法とは異なっている。SMT部品は、リード線がより小さいか、或いはリードを全く有しないために、通常、スルーホール部品よりも小さい。SMTは、電子部品の小型化、向上したパッケージ密度、はんだ付けプロセスの効率化、めっきスルーホール挿入プロセスよりも低コスト、という利点を有し、このことが、電子製品の小型化及び軽量化に向けたSMTの不可欠な役割をもたらす。
【0003】
電気電子分野の発展は、電気部品の高速化と回路基板の高密度化を実現するために、より高い動作周波数及び電気部品のより低い高さを必要とする。これによって、成形、クロストーク、リフローはんだ付けにおける困難性、及び寸法の信頼性及び熱安定性に対するより高い要件をもたらしてしまう。DDR 4 RAM(ランダムアクセスメモリ)の一般的な動作周波数はおよそ3.2GHzであるが、DDR 4 RAM用の樹脂材料は、より高い動作周波数又はより小さな寸法に適用された場合に、多くの欠点を有することが見出された。
【0004】
電子部品は、通常、射出成形等を介して樹脂材料を成形することにより得られる。電子部品がより薄く、又はより低くなると、樹脂材料の貧弱な流動性により引き起こされる型穴の不完全な充填のために、ショートショットの問題が発生する。それ故、より小さな寸法の電子部品用に樹脂材料が使用される場合には、より高い流動性が必要とされる。
【0005】
脂肪族ポリアミドは、成形性、剛性、耐摩耗性のような良好な機械的特性のために、多くの電気部品に使用されてきた。しかしながら、典型的な脂肪族ポリアミドとして、ナイロン6及びナイロン66は、耐熱性及び寸法安定性の点で不十分である。ナイロン46又は半芳香族ポリアミドは、SMTによるリフローはんだ付けプロセスに許容され得る良好な耐熱性を有するように開発された。しかし、ナイロン46の高い吸水性が、はんだ付けプロセス中又は使用期間中にブリスターを、及び、成形品の寸法変化及び物理学的特性の劣化のような問題を、引き起こしてしまう。半芳香族ポリアミドは、その低い吸水率のため、このような2つの局面で有望な性能を示すが、その不十分な流動性によって、薄肉の電気部品の加工及び構築の要件に合致しにくい。
【0006】
E&E分野においては、UL-94規格のV-0等級のような高い難燃性規格が必要とされるため、ポリアミド樹脂に対して高い難燃性が必要とされる。V-0等級の垂直燃焼試験においては、垂直試験片で10秒以内に燃焼が停止することが必要とされており、滴下物によって綿が発火しない限り、粒子の滴下物が許容される。通常、流動性の向上は難燃性を犠牲にしている。樹脂材料の流動性が向上すると、垂直燃焼時の溶融張力が低下して、その結果、燃焼樹脂が綿に滴下することによって綿が着火し、そして難燃性がV-2等級になる。特許文献1においては、難燃性を補うために、フッ素樹脂及びアイオノマーを含有する落下防止剤、及び/又は変性芳香族ビニルベースのポリマーがポリアミド組成物に適用されている。
【0007】
SMTコネクタに使用されるポリアミド組成物が、特許文献2によって開示された。ポリアミド樹脂は、シュウ酸を含有するカルボン酸成分、並びに、1,9-ノナンジアミン及び2-メチル-1,8-オクタンジアミンと1,6-ヘキサンジアミンとの混合物のジアミン成分から作られている。この組成物は流動性の要件を満たし得るが、ダブルデータレート5(DDR5)用途の難燃性を解決しづらい。
【0008】
特許文献3は、ポリアミド樹脂を100部、ホスファゼン化合物及びホスフィネートより選択される少なくとも1種を少なくとも5~70部、並びに、シリカ、灰、ゼオライト及びケイ酸塩より選択される少なくとも1種を少なくとも0.1~15部含有するポリアミド組成物を開示している。しかしながら、当該文献においては、事実上、難燃剤成分としてホスファゼンのみが使用されている。ホスファゼンと、融点が280℃以上(特に310℃以上)の高融点ポリアミド樹脂との間には、融点に大きな相違がある。これによって、押出機等のニーダビリティの大きな低下、並びに、1/32インチ厚(0.8mm)の成形品におけるUL94のV-0の要件に匹敵する高い難燃性を確保することの困難さが生じている。
【0009】
芳香族ポリアミドの難燃性と流動性を改良するために、ホスフィネートとホスファゼンとの組合せが使用されている。特許文献4は、280~340℃のTmを有するポリアミドを20~80質量%、ホスフィネート化合物を5~30質量%、及びホスファゼン化合物を0.01~10質量%含有する難燃性ポリアミドを記載している。ホスフィネートとホスファゼンとの組合せは、流動性及び難燃性を改良するが、曲げ強度が犠牲となったことが、実施態様の1~4から分かる。電子部品の寸法がさらに小さくなると、機械的な乱切(scarification)がとりわけ重要になることが観察されている。
【0010】
特許文献5においては、ホスフィネートとリン酸塩との相乗的な組合せが使用されて、ポリアミド組成物の難燃性がさらに改良されている。当該特許出願は、ポリアミドを1~96質量%、ジアルキルホスフィン酸塩及び/又はジホスフィン塩を2~25質量%、リン酸塩を1~20質量%、ホスファゼンを1~20質量%、フィラー又は補強剤を0~50質量%含有するポリアミド組成物を記載している。しかしながら、脂肪族ポリアミドは、実際に使用されるSMT部品に使用された場合には、リフローはんだ付けプロセスの高温を可能にすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第2180018号
【特許文献2】特開2011-116889号
【特許文献3】特開2007-138151号
【特許文献4】国際公開第2009/037859号
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0072873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
小さな寸法の薄肉の物品は、メモリチップのような電子素子の挿入中にクラックをより生じやすいことが観察された。当該クラックの課題を解決し、そして上記の課題を解決し得る、適した材料を見出す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の概要及び利点
それ故、本発明の目的は、3.2GHzより高い最大動作周波数を有する、とりわけDDR5用途の、薄肉の物品を実現化するための、良好な難燃性、引張特性及び流動性を有する、ポリアミド組成物及びその物品を提供することにある。
【0014】
流動性と引張特性とを同時に改良することは難しいという従来の知見とは反対に、驚くべきことに、本発明のポリアミド組成物が、とりわけ、高さの低い物品及び高い動作周波数の物品において顕著な引張特性を有し、流動性もまた向上し、且つ、難燃性がUL94のV-0規格を達成し得、このことが、そのような用途において当該ポリアミド組成物を将来性のあるものにするということが、本発明者らによって見出された。
【0015】
その目的は、ポリアミド組成物であって、前記ポリアミド組成物の全質量に基づき、
成分(A)として、30~55質量%の1種以上の長鎖半芳香族ポリアミド、
成分(B)として、10~20質量%の難燃剤系、
成分(C)として、1~4.8質量%のホスファゼン、及び
成分(D)として、30~50質量%の補強剤
を含有し、
前記難燃剤系が、(B-1)下記式(I)で表されるジアルキルホスフィネート及び/又は下記式(II)で表されるジホスフィン酸塩
【化1】

【化2】
(式中、
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-Cアルキル基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基を表し;
M又はNは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、プロトン化窒素塩基又はその混合物、好ましくは、Mg、Ca、Al、Zn又はその混合物を表し;
mは、1~4の整数を表し;
nは、1~4の整数を表し;
は、直鎖状の又は分枝状のC-C10-アルキレン基、C-C10-アリーレン基、C-C20-アルキルアリーレン基又はC-C20-アリールアルキレン基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキレン基又はC-C10-アリーレン基を表し;
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキル基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-Cアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基を表し;
qは、1~4の整数を表し;
pは、1~4の整数を表し;
xは、1~4の整数を表す)、
及び、(B-2)リン酸の金属塩を含有する、
前記ポリアミド組成物によって、達成された。
【0016】
本発明の他の目的は、ポリアミド組成物の製造方法を提供することである。
【0017】
それ故、本発明の他の目的は、当該ポリアミド組成物によって得られる又は得ることができる物品、とりわけDDR5部品を提供することである。
【0018】
本発明において、「1種の(a)」、「1種の(an)」及び「その(the)」なる用語は、「少なくとも1種(at least оne)」なる用語と置き換え可能に使用される。「の少なくとも1種(at least оne оf)」及び「の少なくとも1種を含む(comprises at least оne оf)」なるフレーズに続くリストは、当該リストの項目のうちいずれか1つ、及び、当該リスト内の2つ以上の項目の任意の組合せを指す。特に記載されていない限り、すべての数値範囲には、それらのエンドポイント、及びエンドポイント間の整数でない数値が含まれる。
【0019】
本発明において、「主鎖」とは、分子の連続鎖を一緒に形成する、共有結合した原子の最長の連続鎖である、ポリマーの直鎖状の主骨格を意味する。
【0020】
本発明の詳細な記載
開示されるのは、ポリアミド組成物であって、前記ポリアミド組成物の全質量に基づき、
成分(A)として、30~55質量%の1種以上の長鎖半芳香族ポリアミド、
成分(B)として、10~20質量%の難燃剤系、
成分(C)として、1~4.8質量%のホスファゼン、及び
成分(D)として、30~50質量%の補強剤
を含有し、
前記難燃剤系が、(B-1)下記式(I)で表されるジアルキルホスフィネート及び/又は下記式(II)で表されるジホスフィン酸塩
【化3】

【化4】
(式中、
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-Cアルキル基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基を表し;
M又はNは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、プロトン化窒素塩基又はその混合物、好ましくは、Mg、Ca、Al、Zn又はその混合物を表し;
mは、1~4の整数を表し;
nは、1~4の整数を表し;
は、直鎖状の又は分枝状のC-C10-アルキレン基、C-C10-アリーレン基、C-C20-アルキルアリーレン基又はC-C20-アリールアルキレン基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキレン基又はC-C10-アリーレン基を表し;
及びRは、同一の又は異なる直鎖状の又は分枝状のC-C-アルキル基、好ましくは、直鎖状の又は分枝状のC-Cアルキル基、より好ましくは、メチル基、エチル基又はプロピル基を表し;
qは、1~4の整数を表し;
pは、1~4の整数を表し;
xは、1~4の整数を表す)、
及び、(B-2)リン酸の金属塩を含有する、
前記ポリアミド組成物である。
【0021】
本発明における長鎖半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミン、及び任意のアミノ酸及び/又はラクタムから誘導され得、前記ジカルボン酸は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸を含有し、及び、前記ジアミンは、少なくとも8の炭素数を有する少なくとも1種の脂肪族ジアミンを含有するか、又は、前記ジカルボン酸は、少なくとも8の炭素数を有する少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含有し、及び、前記ジアミンは、少なくとも1種の芳香族ジアミンを含有する。
【0022】
本発明の好ましい一態様において、本発明における長鎖半芳香族ポリアミドは、ポリアミド(i)及び/又はポリアミド(ii)を含有し、
前記ポリアミド(i)は、
(A-1)ジカルボン酸であって、当該ジカルボン酸の全量に基づき60~100モル%のテレフタル酸を含有する、ジカルボン酸、
(A-2)ジアミンであって、成分(a)として、当該ジアミンの全量に基づき60~100モル%の量で少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジアミンを含有する、ジアミン、及び、
任意の(A-3)アミノ酸及び/又はラクタム
を含有するモノマーから誘導され;
前記ポリアミド(ii)は、
(A-4)ジカルボン酸であって、当該ジカルボン酸の全量に基づき60~100モル%の、少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸を含有する、ジカルボン酸、
(A-5)ジアミンであって、当該ジアミンの全量に基づき60~100モル%の芳香族ジアミンを含有する、ジアミン、及び、
任意の(A-3)アミノ酸及び/又はラクタム
を含有するモノマーから誘導される。
【0023】
本発明の好ましい一態様において、本発明における長鎖半芳香族ポリアミドは、ポリアミド(i)又はポリアミド(i)のコポリアミドである。
【0024】
本発明の好ましい一態様において、本発明における長鎖半芳香族ポリアミドは、ポリアミド(ii)又はポリアミド(ii)のコポリアミドである。
【0025】
ポリアミド(i)
テレフタル酸(「TPA」)を除き、本発明において適したジカルボン酸(A-1)は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸をも含有し得、好ましくは、他の芳香族及び/又は脂肪族ジカルボン酸である。
【0026】
他の芳香族ジカルボン酸は、好ましくは8~20個の炭素原子、より好ましくは8~14個の炭素原子を含有し、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及び/又はジフェニルジカルボン酸である。
【0027】
脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは4~36個の炭素原子、より好ましくは5~36個の炭素原子、最も好ましくは5~18個の炭素原子又は36個の炭素原子を含有する。脂肪族ジカルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びC36ダイマー酸である。
【0028】
脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ビス(メチルシクロヘキシル)から成る群より選択される少なくとも1種の炭素主骨格を含有する、少なくとも1種の脂環式酸であり、より好ましくは、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸から成る群より選択される。
【0029】
ポリアミド(i)の適したジカルボン酸は、テレフタル酸、並びに、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びC36ダイマー酸から成る群より選択される任意の1種のジカルボン酸である。
【0030】
脂肪族ジアミン(a)以外に、本発明において適したジアミン(A-2)は、8未満の炭素数を有する他の脂肪族ジアミン、脂環式及び/又は芳香族ジアミンをも含有し得る。
【0031】
少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジアミン(a)は、直鎖状の脂肪族ジアミン(a)であるか、又は分枝状の脂肪族ジアミン(a)であり、好ましくは直鎖状の脂肪族ジアミン(a)である。脂肪族ジアミン(a)は、好ましくは8~36個の、より好ましくは8~22個の炭素原子又は36個の炭素原子を含有する。
【0032】
直鎖状の脂肪族ジアミン(a)の例は、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン及び1,22-ドコサンジアミンである。
【0033】
分枝状の脂肪族ジアミン(a)における窒素原子は、アルキル基によって置換されたアルキレン主鎖により分離されている。当該アルキレン主鎖におけるアルキル基は、好ましくはメチル基又はエチル基のようなC-Cアルキル基である。分枝状の脂肪族ジアミン(a)の例は、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン及び2,4-ジメチルオクタンジアミンである。
【0034】
脂肪族ジアミン(a)は、好ましくは、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、1,22-ドコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン及び2,4-ジメチルオクタンジアミンから成る群より選択される。
【0035】
本発明において、その他の8未満の炭素数を有する脂肪族ジアミンは、好ましくは、4~7個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族ジアミン、及び/又は、4~7個の炭素原子を有する分枝状の脂肪族ジアミンである。その他の脂肪族ジアミンの例は、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンである。
【0036】
ポリアミド(i)において、テレフタル酸の量は、60モル%以上、好ましくは65モル%以上、70モル%以上、又は75モル%以上であり、より好ましくは、80モル%以上であり、且つ、100モル%以下、好ましくは98モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、又は85モル%以下であり;当該テレフタル酸の好ましい量は、ジカルボン酸の全量に基づき、80モル%~100モル%である。
【0037】
好ましい一態様において、ポリアミド(i)は、
(A-1)ジカルボン酸であって、当該ジカルボン酸の全量に基づき、
80~100モル%のテレフタル酸を含有するジカルボン酸、並びに、
0~20モル%の、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びC36ダイマー酸から成る群より選択される、他のジカルボン酸
を含有するジカルボン酸;
(A-2)ジアミンであって、当該ジアミンの全量に基づき60~100モル%の量で、成分(a)として、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミン、1,20-エイコサンジアミン、1,22-ドコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン及び2,4-ジメチルオクタンジアミンから成る群より選択される脂肪族ジアミンを含有する、ジアミン
を含有するモノマーより誘導され得る。
【0038】
ポリアミド(ii)
少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸以外に、本発明における適したジカルボン酸(A-4)は、4~7の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸、芳香族及び/又は脂環式ジカルボン酸をも含有し得る。
【0039】
少なくとも8の炭素数を有する脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは8~36個の炭素原子を有し、より好ましくは9~18個の炭素原子又は36個の炭素原子を有する。脂肪族ジカルボン酸の例は、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及びC36ダイマー酸である。
【0040】
4~7個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸の例は、コハク酸、グルタル酸及び/又はアジピン酸である。
【0041】
芳香族ジカルボン酸は、好ましくは8~20個の炭素原子、より好ましくは8~14個の炭素原子を含有しており、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及び/又はジフェニルジカルボン酸である。
【0042】
芳香族ジアミン以外に、本発明における適したジアミン(A-5)は、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンをも含有する。
【0043】
本発明において適した芳香族ジアミンは、好ましくは、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノトルエン、N,N’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタン及び2,2’-ビス(4-メチルアミノフェニル)プロパンから成る群より選択される。
【0044】
本発明におけるポリアミド(ii)の脂肪族ジアミンは、好ましくは4~36個の炭素原子、より好ましくは8~36個の、最も好ましくは8~22個の、又は36個の炭素原子を有する。ポリアミド(ii)における脂肪族ジアミンの例は、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、オクタデカンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン、2,4-ジメチルオクタンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンである。
【0045】
ポリアミド(i)又はポリアミド(ii)における脂環式ジカルボン酸は、独立して、好ましくは、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン及びビス(メチルシクロヘキシル)から成る群より選択される少なくとも1種の炭素主骨格を含有する。脂環式ジカルボン酸の例は、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、並びにシス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸である。
【0046】
ポリアミド(i)又はポリアミド(ii)における脂環式ジアミンは、独立して、好ましくは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)及びイソホロンジアミン(IPDA)から成る群より選択される。
【0047】
本発明における適したアミノ酸は、好ましくは4~12個の炭素原子を含有する。当該アミノ酸の例は、4-アミノブタン酸、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸である。
【0048】
本発明における適したラクタムは、好ましくは、4~12個の炭素原子、より好ましくは6~12個の炭素原子を含有する。当該ラクタムの例は、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、2-ピペリドン(δ-バレロラクタム)、ε-カプロラクタム、カプリルラクタム、デカンラクタム、ウンデカノラクタム、エナントラクタム、及びラウリルラクタムであり、好ましくはε-カプロラクタムである。
【0049】
ポリアミド(i)又はポリアミド(ii)における(A-3)アミノ酸及び/又はラクタムの量は、ポリアミド(i)又はポリアミド(ii)についてのモノマーの全量に基づき、独立して、好ましくは、0~20質量%の範囲にあり、より好ましくは10~20質量%の範囲にある。
【0050】
好ましい態様において、長鎖半芳香族ポリアミドは、
(A-1)ジカルボン酸の全量に基づき、80~100モル%のテレフタル酸、及び0~20モル%のテレフタル酸以外のジカルボン酸であって、当該テレフタル酸以外のジカルボン酸が、イソフタル酸、及び、5~36個の炭素原子、より好ましくは5~18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、から成る群より選択される、前記ジカルボン酸;
(A-2)ジアミンの全量に基づき、80~100モル%の脂肪族ジアミン(a)、及び0~20モル%の、脂肪族ジアミン(a)以外の脂肪族ジアミン、及び/又は芳香族ジアミン;
(A-3)(A-1)~(A-3)の全量に基づき、0~20質量%のアミノ酸及び/又はラクタム
を含有するモノマーより誘導される。
【0051】
長鎖半芳香族ポリアミドの例は、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T及びPA14Tである。
【0052】
長鎖半芳香族ポリアミドは、ポリアミド(i)、ポリアミド(ii)及び/又は1種以上の他のポリアミドのコポリアミド(まとめてポリアミド(iii)と呼ぶ)のような、種々のポリアミドから構成され得る。
【0053】
ポリアミド(i)のコポリアミドは、PA XT/MYとして表され得る。本明細書において、「T」はテレフタル酸を表し、「X」及び「M」はジアミンの炭素数を表し、「Y」はジカルボン酸を表す。PA XT/MYの例は、PA6T/8T、PA10T/6T、PA10T/610、PA6T/610、PA5T/510及びPA4T/410である。
【0054】
長鎖半芳香族ポリアミドは、好ましくは結晶性であり、且つ融点(Tm)を有し、好ましくは280℃より高く、より好ましくは285℃~330℃であり、最も好ましくは305℃~315℃である。融点は、示差走査熱量測定(DSC)曲線の吸熱ピークに対応する温度として定義され、これは、DSCを使用して10℃/分の加熱速度でポリアミドを加熱することによって得られる。
【0055】
適した長鎖半芳香族ポリアミドは、Kuraray社からのGENESTAR(登録商標)PA9T、Kingfa社からのVicnyl(登録商標)PA10T、EMS社からのGrivoryHT(登録商標)PA10T/X、及びEvonik社からのVestamid HTplus PA10T/Xであり得る。
【0056】
本発明における長鎖半芳香族ポリアミドは、好ましくは、ISO307-2007法に従い96質量%HSO中で測定される、60~120mL/gの粘度数を有する。
【0057】
長鎖半芳香族ポリアミド(A)の量は、ポリアミド組成物の全質量に基づき、30質量%~55質量%であり、好ましくは30質量%~50質量%であり、より好ましくは35質量%~50質量%であり、最も好ましくは40質量%~50質量%、例えば、37質量%、39質量%、41質量%、43質量%、44質量%、45質量%、46質量%、48質量%又は50質量%である。
【0058】
式(I)で表されるジアルキルホスフィネートの例は、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム及びメチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛を包含する。これらのうち、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸アルミニウム及びジメチルホスフィン酸亜鉛が、より好ましい。
【0059】
式(II)で表されるジホスフィン酸塩の例は、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム及びベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛を包含する。
【0060】
本発明におけるリン酸の金属塩(B-2)は、好ましくは、式(III)又は(IV):
【化5】
(式中、
Tは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、プロトン化窒素塩基又はその混合物、好ましくは、Al及び/又はZnを表し;
rは、1~4であり;
wは、1~4であり;
zは、1~7、好ましくは1~4である)
で表される構造単位を含有する。
【0061】
リン酸の金属塩の例は、Al(HPO、Al(HPO、Zn(HPO)、Al(HPO・4HO及びAl(OH)(HPO・2HO、好ましくはAl(HPOを包含する。
【0062】
成分(B-1)及び(B-2)は、好ましくは、60:40~90:10、例えば、85:15、80:20、又は75:25の、(B-1)/(B-2)質量割合にある。
【0063】
本発明における成分(B-1)の量は、好ましくは、ポリアミド組成物の全質量に基づき、6質量%~18質量、例えば、10質量%、12質量%、13質量%、14質量%である。本発明における成分(B-2)の量は、好ましくは、ポリアミド組成物の全質量に基づき、2質量%~8質量%、例えば、3質量%、4質量%である。
【0064】
難燃剤系(B)の量は、ポリアミド組成物の全質量に基づき、10質量%~20質量%、好ましくは、12質量%~19質量%、例えば、14質量%、15質量%、16質量%、17質量%、18質量%又は19質量%である。
【0065】
本発明におけるポリアミド組成物は、他の難燃剤又は難燃相乗剤の添加なしに、UL-94 V-0の難燃効果を達成することができる。
【0066】
本発明におけるホスファゼン(C)は、式(V)で表される環状ホスファゼン、式(VI)で表される直鎖状ホスファゼン:
【化6】
【化7】
{式中、
各々のRは、同一の又は異なる、C-C20-アルキル基、C-C20-アリール基、C-C30-アリールアルキル基又はC-C30-アルキルアリール基、好ましくは、C-C30-アリール基又はC-C30-アルキルアリール基を表し;
uは、3~25、好ましくは3~6の整数を表し;
vは、3~10000の整数を表し;
zは、-N=P(OR又は-N=P(O)ORを表し;
Sは、-P(OR又は-P(O)(ORを表す}、
及び、架橋基を用いて前記環状ホスファゼン又は前記直鎖状ホスファゼンを架橋することにより得られる、少なくとも1種のホスファゼン
より選択される少なくとも1種のホスファゼンである。
【0067】
により表されるアリール基は、好ましくはC-C15、より好ましくはC-C12-アリール基である。Rにより表されるアリール基の例は、フェニル基;ナフチル基;ビフェニル基、例えば、о-フェニルフェニル基、m-フェニルフェニル基及びp-フェニルフェニル基;アルコキシフェニル基、例えば、о-メトキシフェニル基、m-メトキシフェニル基及びp-メトキシフェニル基;ヒドロキシフェニル基、例えば、о-ヒドロキシフェニル基、m-ヒドロキシフェニル基、о-ヒドロキシフェニル基;(ヒドロキシアリール)アルキルアリール基、例えば、p-[2-(p’-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]フェニル基;(ヒドロキシアリールスルホニル)アリール基、例えば、p-(p’-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェニル基;(ヒドロキシアリールオキシ)アリール基、例えば、p-(p’-ヒドロキシフェニルオキシ)フェニル基;グリシジルフェニル基;及びシアノフェニル基であり;好ましくは、フェニル基又はシアノフェニル基を包含する。
【0068】
により表されるアルキルアリール基は、好ましくは(C-C10)アルキル(C-C20)アリール基であり、より好ましくは(C-C)アルキルフェニル基である。R又はRにより表されるアルキルアリール基の例は、トリル基、例えば、о-トリル基、m-トリル基、p-トリル基;キシリル基、例えば、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基及び2,6-キシリル基;エチルフェニル基;ブチルフェニル基、例えば、2-t-ブチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、2,6-ジ-t-ブチルフェニル基、3-メチル-6-t-ブチルフェニル基及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル基;アミノフェニル基、例えば、2,4-ジ-t-アミノフェニル基及び2,6-ジ-t-アミノフェニル基;シクロヘキシルフェニル基;トリメチルフェニル基;及びメチルナフチル基を包含し;好ましくは、о-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,4-キシリル基、2,6-キシリル基及び3,5-キシリル基である。
【0069】
式(V)又は(VI)で表される環状及び/又は直鎖状ホスファゼンの例は、環状及び/又は直鎖状(C-C)アルキル(C-C20)アリールオキシホスファゼン、環状及び/又は直鎖状(C-C20)アリール(C-C)アルキル(C-C20)アリールオキシホスファゼン及び/又は環状フェノキシホスファゼンを包含する。ホスファゼンの例は、(ポリ)トリルオキシホスファゼン、例えば、ポリ(о-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(m-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(p-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(о,m-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(о,p-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(m,p-トリルオキシホスファゼン)及びポリ(о,m,p-トリルオキシホスファゼン);(ポリ)キシリルオキシファゼン;(ポリ)メチルナフチルオキシホスファゼン;(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン、例えば、ポリ(フェノキシ-о-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(フェノキシ-m-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(フェノキシ-p-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(フェノキシ-о,m-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(フェノキシ-о,p-トリルオキシホスファゼン)、ポリ(フェノキシ-m,p-トリルオキシホスファゼン)及びポリ(フェノキシ-о,m,p-トリルオキシホスファゼン);(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン;(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン;(ポリ)フェノキシメチルナフチルオキシホスファゼン及び(ポリ)フェノキシホスファゼンを包含する。
【0070】
本発明におけるホスファゼンの使用はまた、架橋基を用いて、上記の式(V)で表される環状ホスファゼン、及び、式(VI)で表される直鎖状ホスファゼンより選択される少なくとも1種のホスファゼンを架橋することにより得られる架橋ホスファゼンをも包含する。1対のホスファゼンが架橋基によって架橋されると、1対のRに代わって二価の架橋基が導入される。
【0071】
架橋基は、アルキレン基又はシクロアルキレン基であり得るが、通常、アリーレン基である。アリーレン基の例は、フェニレン基(例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン及び1,4-フェニレン基);ナフチレン基;ビフェニレン基(例えば、4,4’-ビフェニレン基及び3,3’-ビフェニレン基); 及びビスフェノール残基(例えば、1,4-フェニレンイソプロピリデン-1,4-フェニレン基(ビスフェノールA残基)、1,4-フェニレンメチル-エン-1,4-フェニレン基(ビスフェノールF残基)、1,4-フェニレンカルボニル-1,4-フェニレン基、1,4-フェニレンスルホニル-1,4-フェニレン基(ビスフェノールS残基)、1,4-フェニレンチオ-1,4-フェニレン基、及び1,4-フェニレンオキシ-1,4-フェニレン基)を包含する。
【0072】
架橋基の割合は、Rの全量に基づき、0.01~50モル%、好ましくは0.1~30モル%である。
【0073】
ホスファゼンは、既知の方法、例えば、特開2004-115815号、特開2002-114981号又は欧州特許出願公開第0945478A号に記載される方法を用いて調製され得る。市販のホスファゼンは、FUSHIMI Pharmaceutical社のRabitle(登録商標)Series、Otsuka Chemical社のSPB-100、SPS-100及びSPE-100を包含する。
【0074】
本発明の好ましい一態様においては、ポリフェノキシホスファゼンは、式(VII):
【化8】
で表されるものである。
【0075】
ホスファゼン(C)の量は、ポリアミド組成物の全質量に基づき、好ましくは1質量%~4質量%であり、より好ましくは2質量%~4質量%である。
【0076】
本発明において補強剤(D)の限定はされないが、好ましくは繊維状補強剤である。補強剤の例は、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、真鍮繊維、ステンレス鋼繊維、鋼繊維、セラミック繊維及び玄武岩繊維であり、好ましくは、ガラス繊維及び炭素繊維である。
【0077】
繊維補強剤の繊維長及び繊維径は特に限定されない。繊維長は、好ましくは2~7mmであり、より好ましくは3~6mmである。繊維径は、好ましくは3~20μmであり、より好ましくは7~13μmである。
【0078】
繊維状補強剤の断面形状の例は、円形、矩形、楕円形、及びその他の非円形断面を包含し、好ましくは円形である。
【0079】
ガラス繊維又は炭素繊維は、好ましくは、シランカップリング剤、例えば、ビニルシランベースのカップリング剤、アクリルシランベースのカップリング剤、エポキシシランベースのカップリング剤及びアミノシランベースのカップリング剤、好ましくはアミノシランベースのカップリング剤によって、表面処理される。シランカップリング剤は、サイジング剤に分散されていてもよい。サイジング剤の例は、アクリル化合物、アクリル酸/マレイン酸誘導体変性化合物、エポキシ化合物、ウレタン化合物、ウレタン/マレイン酸誘導体変性化合物及びウレタン/アミン変性化合物である。
【0080】
補強剤(D)の量は、ポリアミド組成物の全質量に基づき、30質量%~50質量%であり、好ましくは35質量%~45質量%である。
【0081】
ポリアミド組成物はまた、添加剤及びその量が本発明における組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさない限り、種々の慣用の添加剤(E)をも含有し得る。添加剤は、潤滑剤、表面効果添加剤、酸化防止剤、着色剤、顔料、安定化剤(熱、UV、放射線又は加水分解安定剤)、流動性改質剤、可塑剤、離型剤、抗ドリップ剤、紫外線吸収剤、核剤、帯電防止剤、エラストマー変性剤、可塑剤、放出剤及び/又は抗菌剤を包含し得る。
【0082】
潤滑剤は、10~40個の炭素原子を有する脂肪酸の、エステル、アミド、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩(例えば、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ベヘン酸Mg、ステアリン酸Mg)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、EVAワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、モンタンワックス、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル(PETS)及びシリコーンワックス等であるが、これらに限定されない。好ましい潤滑剤は、エチレンビスステアラミドである。
【0083】
潤滑剤は、好ましくは、ポリアミド組成物の全質量に基づき、およそ0質量%~3質量%、より好ましくは0.01~2質量%、又は0.2質量%~1質量%、又は0.2質量%~0.8質量%の量で、存在する。
【0084】
酸化防止剤は、芳香族アミンベースの酸化防止剤、ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤、ホスファイトベースの酸化防止剤、金属塩及びヨウ化物等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0085】
芳香族アミンベースの酸化防止剤の例は、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチル-キノリン)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、 N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(メチルフェニル)-1,4-ベンゼンジアミン及びヒドラジン誘導体である。
【0086】
ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤の例は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-α-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-[3-[3,5- ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル] -o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7-C9-分枝状アルキルエステルである。そして好ましくは、固体ヒンダードフェノールベースの酸化防止剤は、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-第三ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-第三ブチル-5-メチル-4-ヒドロフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-第三ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群「B-S」より選択される1種以上である。
【0087】
ホスファイトベースの酸化防止剤の例は、トリス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE、CAS 31570-04-4)、ビス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Ultranox(登録商標)626、Chemtura、CAS 26741-53-7)、ビス(2,6-ジ-第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(ADK Stab PEP-36、Adeka、CAS 80693-00-1)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228、Dover Chemical Corporation、CAS 154862-43-8)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE、CAS 26523-78-4)、(2,4,6 -トリ-第三ブチルフェノール)-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura、CAS 161717-32-4)及びHostanox(登録商標)P-EPQである。
【0088】
市販の酸化防止剤の例としては、銅塩とヨウ化物の組み合わせがあり、例えば、Brueggemann-Gruppe社からのBrueggolen(登録商標)H3350、又は、PolyAd Services社からのPolyad(登録商標)PB201である。
【0089】
酸化防止剤は、好ましくは、各々、ポリアミド組成物の全質量に基づき、およそ0質量%~2質量%、より好ましくはおよそ0.01質量%~1質量%、及び最も好ましくはおよそ0.1質量%~0.8質量%の量で存在する。
【0090】
着色剤は、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、硫化亜鉛、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン及びアントラキノンであるが、これらに限定されない。
【0091】
着色剤は、好ましくは、ポリアミド組成物の全質量に基づき、およそ0質量%~5質量%、より好ましくはおよそ0.01質量%~3質量%、及び最も好ましくはおよそ0.1質量%~2質量%の量で存在する。
【0092】
安定剤は、好ましくは、各々、ポリアミド組成物の全質量に基づき、およそ0質量%~2質量%、より好ましくはおよそ0.01質量%~1質量%、及び最も好ましくはおよそ0.01質量%~0.5質量%の量で存在する。
【0093】
適した核剤の例は、フェニルホスフィン酸ナトリウム又はフェニルホスフィン酸カルシウム、アルミナ(CAS No.1344-28-1)、タルク、二酸化ケイ素、アジピン酸及びジフェニル酢酸である。
【0094】
適した可塑剤の例は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ブチルベンジル、炭化水素油及びN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0095】
本発明における全ての添加剤の量は、ポリアミド組成物の全質量に基づき、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、及び最も好ましくは2質量%以下である。
【0096】
本発明のポリアミド組成物は、ISO 75-1/2の方法Aに従い測定される、少なくとも265℃、好ましくは少なくとも270℃の熱変形温度を有する。
【0097】
本発明のポリアミド組成物は、ISO527-2に従い0.4mm厚を有する試料により測定される、99MPaよりも高い引張応力を有する。
【0098】
好ましい態様において、ポリアミド組成物は、当該ポリアミド組成物の全質量に基づき、成分(A)として、40~55質量%の長鎖半芳香族ポリアミド;成分(B)として、10~20質量%の難燃剤系;成分(C)として、2~4質量%のホスファゼン;及び成分(D)として、30~45質量%の補強剤を含有する。
【0099】
好ましい態様において、ポリアミド組成物は、当該ポリアミド組成物の全質量に基づき、
成分(A)として、40~55質量%の、
PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA13T、PA14T PA6T/8T、PA10T/6T、PA10T/610、PA6T/610、PA5T/510、及び/又はPA4T/410から成る群より選択される長鎖半芳香族ポリアミド、好ましくはPA9T、PA10T、PA11T、PA10T/6T、PA10T/610、及び/又はPA5T/510;
成分(B)として、10~20質量%の難燃剤系であって、
(B-1)ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸アルミニウム及びジメチルホスフィン酸亜鉛より選択されるジアルキルホスフィネート;及び
(B-2)Al(HPO、Al(HPO、Zn(HPO)、Al(HPO・4HO及びAl(OH)(HPO・2HOから成る群より選択されるリン酸の金属塩
を含有する、難燃剤系;
成分(C)として、
2~4質量%の、式(V)で表される、好ましくは式(VI)で表されるホスファゼン;
成分(D)として、
30~45質量%のガラス繊維;
成分(E)として、
0~5質量%の添加剤;例えば、0~3質量%の潤滑剤、0~2質量%の酸化防止剤、0~2質量%の安定化剤;
を含有する。
【0100】
本発明はまた、ポリアミド組成物の製造方法をも提供する。 本発明のポリアミド組成物は、種々の既知の方法によって製造され得る。例えば、ポリアミド樹脂の重合又は重縮合中にポリアミド樹脂以外の全ての成分を添加するか、又は配合プロセスにおいてポリアミド樹脂以外の全ての成分をポリアミドに添加することが可能である。
【0101】
本発明によるポリアミド組成物は、押出機を用いて、好ましくは260~330℃のプロセス温度下で、長鎖半芳香族ポリアミド(A)、難燃剤系(B)、ホスファゼン(C)及び任意の添加剤(E)を、供給ゾーンに導入し、そして、下流の供給ゾーンで補強剤(D)を導入し、混錬し及び押出すことによって、調製又は加工され得る。成分が同じ供給ゾーンに導入される場合に、成分は、その形態又は特性に応じて、種々のホッパーを介して導入され得ることが理解されるべきである。
【0102】
本発明はまた、ISO75-1/2の方法Aに従い測定される、少なくとも265℃の熱変形温度、及び、3.2GHzより高い、好ましくは6.4GHzより高い最大動作周波数を有する、ポリアミド組成物により得られる又は得ることができる、いずれの物品をも提供する。
【0103】
本発明における物品の例は、コネクタソケット、アンテナフレーム、回路基板、回路ブレーカー、コイルエレメント、又は、携帯電話、センサー或いはラップトップのフレーム/ハウジング/パッケージであり得る。コネクタソケットは、好ましくは3.2GHzより高い、より好ましくは6.4GHzより高い、又は6.4~6.5GHzの最大動作周波数を有する。
【0104】
本発明の一態様において、コネクタソケットは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、中央処理装置(CPU)又はソリッドステートメモリ用の、好ましくは、DDR5のRAM用のソケットである。
【0105】
本発明の一態様において、コネクタソケットは、少なくとも2つの対向する壁部と、コンタクトピン付きのインサートを受け入れるための前記対向する壁部の間に定義された通路とを含む、ファインピッチ電気コネクタソケットであって、前記対向する壁部及びコンタクトピンが、本願請求項に係るポリアミド組成物から形成され、前記壁部が末端部分を有する、コネクタソケットである。末端部分の厚さは、好ましくは5.9mm未満、より好ましくは5.8~5.4mmであり、厚さは、インサートの挿入方向で測定される。コンタクトピンの幅は、好ましくは0.2mm~0.4mmである。本ポリアミド組成物は、ISO527-2に従い0.4mm厚を有する試料により測定される、99MPaよりも高い引張応力を示す。ファインピッチ電気コネクタソケットは、DDR5のランダムアクセスメモリのファインピッチ電気コネクタソケットである。
【0106】
本発明の有利な効果
DDR5 RAMは、DDR4の速度を2倍にするように設計されており、これによって、取付け密度がより高まり、且つ、材料の寸法安定性、流動性及びブリスター制御に対する要件がより厳しくなる。本発明のポリアミド組成物は、0.4mmの薄肉の物品のための望ましい引張強さ、良好な流動性、高いHDTを示し、これによって、高い動作周波数を有する電子部品に適用され得る。引張特性、流動性以外にも、本組成物はまた、成形中に良好な熱安定性も示し、E&E、とりわけDDR5用途での薄肉成分に重要な特徴でもあるUL94のV-0を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1図1は、本発明のRAMコネクタソケットの壁部の図である。
図2図2は、ブリスター試験におけるリフロープロセス温度対リフロープロセス時間のグラフである。
【実施例
【0108】
実施例
以下、実施例を参照して本発明を詳述するが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。実施例及び比較例において、物理学的特性の測定及び評価は、以下に記載されるように為された。
【0109】
(A)Kuraray社からのPA9T(ISO307、1157、1628の粘度数は79cm/g、数平均モル質量分子量(Mn)は9600g/モル)
(B)Clariant Plastics&Coating社からのExolitOP1400、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩およそ80質量%及びリン酸のアルミニウム塩およそ20質量%の混合物;
(C1)Otsuka Chemical社からのSPB100、式(VI)で表される環状フェノキシホスファゼン
(C2)OSAKA GAS Chemicals社からの流動性改質剤である、OGSOL MF-11
(C3)BASF社からの酸官能性スチレン/アクリルポリマーである、Joncryl(登録商標)ADD3310
(D)PPG Industries社からのHP3610、直径10μm及び長さ4.5mmを有するガラス繊維
(E-1)PolyAd Services社からのPolyad(登録商標)PB201、CuI80質量%、KI10質量%及びステアリン酸亜鉛10質量%の組合せ
(E-2)Croda Trading(Shanghai)社からのEBS(エチレンビスステアラミド)
(E-3)Orion Engineered Carbonsからのカーボンブラック
【0110】
実施例1~5及び比較例1~8
実施例及び比較例1~6の配合を下記表1に示す。原料をTurbulaT50A高速攪拌機内で一緒に混合し、Coperion ZSK26MC二軸スクリュー押出機に供給し、320℃の温度下で溶融押出し、ペレット化して、ペレット形態にある半芳香族ポリアミド組成物を得た。
【0111】
乾燥したペレットを、Krauss Maffei社からの射出成形機KM130CX内において、300℃~330℃の溶融温度にて130Tのクランプ力で加工して、試験片を得た。
【0112】
流れの長さは、スパイラルランナー(spiral runner)付きのスパイラルフロー具を使用して測定した。スパイラルランナーの断面は、2mmの厚さ及び5.5mmの幅を有しており、ランナーに沿って番号を付し、且つ、細分されたセンチメートルの印を付した。試験材料を320℃で溶融し、次に、溶融物を500barの圧力及び140℃でスパイラルランナーに注入した。スパイラルランナーの中央にあるスプルーからスパイラルランナーを充填し、そして溶融物が止まるまで圧力及び温度を維持し、ここで、スパイラル溶融物の先端のマーク番号が流れの長さを示す。
【0113】
ISO527-1-2012に従い、4mm厚の試料の破断引張応力(Tensile stress at break)及び破断引張歪み(tensile strain at break)を測定した。 ISO527-1-2012に記載の1型の試験片を使用した。
【0114】
ISO527-1-2012に従い、0.4mm厚の試料の破断引張応力及び破断引張歪みを測定した。ISO527-1-2012に記載の5A型の形状の試験片を使用した。試験片の寸法は以下の通りである:全長l=75mm、幅の狭い平行部分の長さl=25mm、グリップ間距離L=50mm、標線間距離L=20mm、幅の狭い平行部分の幅b=4mm、エッジ部の幅b=12.5mm、大半径r=12.52mm、小半径r=8mm、及び厚さh=0.4mm。l、l、L、L、b、b、r、r、及びhの定義は、ISO527-2-2012におけるものと同じである。
【0115】
ISO179-1-2010に従い、エッジワイズ衝撃を介して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ及びノッチ無しシャルピー衝撃強さを試験した。
【0116】
ノッチ無しシャルピー試験のための試験片は、80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有する1型試験片であった。ノッチ付きシャルピー試験の試験片は、ノッチ付きA型の1型であった。全ての試験片を、23℃及び50%の相対湿度にて16時間コンディショニングした。コンディショニングと同じ雰囲気下で試験を実施した。
【0117】
ISO75-2-2013の方法Aに従い、1.8MPa下でHDTを試験した。
【0118】
127mm×12.7mm×0.4mm(長さ×幅×厚さ)、127mm×12.7mm×0.8mm、及び、127mm×12.7mm×1.6mmの試料寸法を使用して、UL94燃焼分類を試験した。
【0119】
比較例1~2、7~8は、ホスファゼン及び市販の流動性改質剤を添加すると流動性が向上するが、HDTのような組成物の機械的特性、引張特性が低下することを示している。ホスファゼン及び酸官能性スチレン/アクリルポリマーは、4mmと0.4mmの両方の厚さの試料、とりわけ0.4mm厚の試料の引張特性を低下させた。C1及びC2の難燃性は、0.4mm厚の試料でのみV-2を達成することができた。OGSOL MF-11の添加によって、4mm厚の試料の引張特性は向上したが、0.4mm厚及びHDTの引張特性は低下した。
【0120】
実施例1~5及び比較例2は、4mm厚の試料の引張特性が、ホスファゼン量が1~4質量%内で維持され、ホスファゼン量が5質量%のときに大幅に低下したことを示した。一方で、組成物は、ホスファゼン量が1~4.8質量%、ガラス繊維量が30~50質量%内で、0.4mm厚において優れた引張特性を示し、これにより、3.2GHzを超える最大動作周波数を有する電子製品の要求を十分に満たすことができる。
【0121】
実施例6
実施例1~5のポリアミド組成物から射出成形にて、図1に示すコネクタソケットを製造した。当該コネクタソケットは、142mm長を有する2つの対向する壁部1,2と、メモリチップ又はコンタクトピン付きの他のインサートを受け入れるための前記対向する壁部1,2の間に定義された通路とを含み、各々の壁部は、5.4mmの厚さTを有する端子部分3を有する。コンタクトピンの幅は0.2mm~0.4mmであった。
【0122】
リフロープロセス中のブリスター試験:
実施例1~5のポリアミド組成物を、試験片(長さ:64mm、幅:6mm、厚さ:0.4mm)に射出成形した。
【0123】
IPC/JEDEC J-STD-020D.1(共同工業規格)に従ってリフロープロセスを実施した。コネクタソケットを、168時間の間、85℃及び相対湿度85%の湿気に曝した。図2に示す温度プロファイルに従ってリフロープロセスを実施した。図2に関し、試験片を217℃まで加熱し、そして次に255℃まで30秒間加熱し、ピーク温度を270℃にし、その後217℃まで、そして25℃まで冷却した(サイクル1)。上記のリフロープロセスをさらに2回実施し、そしてコネクタソケットの表面のブリスターを目視検査した。上記のリフロープロセスから、ソケットが溶融せず、且つ表面にブリスターが観察されないピーク温度が見出された。3サイクルのリフロープロセスの後でも、ソケットにブリスターは生じなかった。
【0124】
DDR5適用試験:
JEDEC’S JC-42 COMMITTEEのJEDEC DDR5規格に従い、コネクタソケットを試験した。全てのコネクタが適用試験にパスした。
【0125】
【表1】

「C」は比較例を表し、「E」は実施例を表す。
図1
図2
【国際調査報告】