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特表2022-552602粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの精製方法
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  • 特表-粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 315/06 20060101AFI20221212BHJP
   C07C 317/14 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C07C315/06
C07C317/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022513500
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020073373
(87)【国際公開番号】W WO2021037682
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19193684.8
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ブライ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン,イェシカ ナディネ
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,チュン
(72)【発明者】
【氏名】トゥルン,フラウケ
(72)【発明者】
【氏名】メルツァー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ミヒャエル クレメンス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD15
4H006AD17
4H006BB14
4H006BC51
4H006BD82
4H006BD84
4H006TA02
4H006TB13
(57)【要約】
本発明は、以下の工程:
(a)水を含有してもよい粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒に溶解し、任意に水を添加して、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、有機溶媒、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を得る工程と、
(b)溶液を4,4'-ジクロロジフェニルスルホンの飽和点未満の温度まで冷却して、結晶化した4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを含む懸濁液を得る工程と、
(c)固液分離を行って、残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホン及び母液を得る工程と、
(d)残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄する工程と、
(e)任意に、工程(b)~(d)を繰り返す工程と、
(f)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを乾燥させる工程と
を含む、粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを精製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)水を含有してもよい粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒に溶解し、任意に水を添加して、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、有機溶媒、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を得る工程と、
(b)前記溶液を4,4'-ジクロロジフェニルスルホンの飽和点未満の温度まで冷却して、結晶化した4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを含む懸濁液を得る工程と、
(c)固液分離を行って、残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホン及び母液を得る工程と、
(d)前記残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄する工程と、
(e)任意に、工程(b)~(d)を繰り返す工程と、
(f)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを乾燥させる工程と
を含む、粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを精製する方法。
【請求項2】
工程(b)において、前記溶液が、10~40K/hの冷却速度で冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、前記溶液が、0~25℃の範囲の温度まで冷却される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒に溶解するために、前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒を含む懸濁液が生成され、前記懸濁液を90~120℃の範囲の温度まで加熱する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)の冷却が、
(i)前記溶液の圧力を、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が蒸発し始める圧力に低減させること、
(ii)冷却によって、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する蒸発した有機溶媒を凝縮させること、
(iii)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する凝縮した有機溶媒と前記溶液を混合して、懸濁液を得ること
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力が、段階的に又は連続的に低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却が完了した後、前記圧力を常圧に設定する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記固液分離が濾過である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固液分離及び前記洗浄が同じ装置で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記母液の少なくとも一部、及び任意に4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する前記洗浄に使用された有機溶媒が、蒸留によってワークアップされる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記母液の50~100質量%、及び任意に4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する前記洗浄に使用された有機溶媒が、蒸留によってワークアップされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを溶解する、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する洗浄のための有機溶媒と同じである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸、トルエン、エチルアセテート又はモノクロロベンゼンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
乾燥(f)が接触乾燥機で行われ、前記接触乾燥機が、好ましくは105~140℃の範囲の壁温で運転される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄することにより除去されるn-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸又はそれらの混合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)溶液の圧力を、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が蒸発し始める圧力に低減させること、
(ii)冷却によって、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する蒸発した有機溶媒を凝縮させること、
(iii)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する凝縮した有機溶媒と前記溶液を混合して、懸濁液を得ること
により、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、有機溶媒、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を冷却するための、気密性密閉容器の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをC~Cアルコールに溶解し、懸濁液を形成し、懸濁液の固液分離を行い、得られた湿潤4,4'-ジクロロジフェニルスルホンをC~Cアルコールで洗浄することにより、粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(以下、DCDPS)は、例えば、ポリエーテルスルホン又はポリスルホンのようなポリマーを調製するためのモノマーとして、又は医薬品、染料及び農薬の中間体として使用されている。
【0003】
DCDPSは、例えば、触媒、例えば塩化アルミニウムの存在下で、出発材料としてのチオニルクロリド及びクロロベンゼンのフリーデル・クラフツ反応によって得ることができる4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドの酸化により製造される。
【0004】
CN-A 108047101、CN-A 102351758、CN-B 104402780及びCN-A 104557626は2段階プロセスを開示しており、ここで、第1段階では、フリーデル・クラフツアシル化反応を行って4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシドを製造し、第2段階では、過酸化水素を酸化剤として使用して4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシドを酸化させてDCDPSを得る。これによる酸化反応は、酢酸の存在下で行われる。このように、第1段階で4,4'-ジクロロ-ジフェニルスルホキシドを製造し、第2段階で過剰の過酸化水素及び溶媒としての酢酸を用いてDCDPSを得るプロセスは、SU-A 765262にも記載されている。
【0005】
さらに、第1段階でクロロベンゼン及びチオニルクロリドをフリーデル・クラフツ反応で反応させて4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシドを得、第2段階で酸化剤としての過酸化水素、及び溶媒としてのジクロロメタン又はジクロロプロパンを用いて4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシドを酸化させることにより、DCDPSを得るためのさらなるプロセスがCN-A 102351756及びCN-A 102351757に開示されている。
【0006】
少なくとも1種の過酸化物の存在下でそれぞれのスルホキシドを酸化することにより有機スルホンを製造するプロセスは、WO-A 2018/007481に開示されている。それにより、反応は、溶媒としてのカルボン酸中で行われ、このカルボン酸は、40℃で液体であり、40℃及び大気圧で水との混和性ギャップを有する。
【0007】
DE-A 37 04 931には、0.5~20質量%の2,4'-ジクロロジフェニルスルホン及び0.5~30質量%の3,4'-ジクロロジフェニルスルホンを含む混合物から、アルカノールと混合し、冷却し、沈殿したDCDPSを分離することにより、DCDPSを分離する方法が記載されている。
【0008】
これらのすべてのプロセスにおいて、反応が完了した後、DCDPS含有反応生成物を冷却して、固体DCDPSを沈殿させ、固体DCDPSを混合物から分離する。分離後、反応が溶媒としてのカルボン酸で行われるこれらのプロセスでは、固体DCDPSが水で洗浄される。
【0009】
しかしながら、反応プロセスに応じて、通常、洗浄したDCDPSでもカルボン酸、4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド及び異性体が残存している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】CN-A 108047101
【特許文献2】CN-A 102351758
【特許文献3】CN-B 104402780
【特許文献4】CN-A 104557626
【特許文献5】SU-A 765262
【特許文献6】CN-A 102351756
【特許文献7】CN-A 102351757
【特許文献8】WO-A 2018/007481
【特許文献9】DE-A 37 04 931
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、DCDPSをさらに精製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、以下の工程:
(a)水を含有してもよい粗DCDPSを、DCDPSが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒に溶解し、任意に水を添加して、DCDPS、有機溶媒、及びDCDPSと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を得る工程と、
(b)この溶液をDCDPSの飽和点未満の温度まで冷却して、結晶化した4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを含む懸濁液を得る工程と、
(c)固液分離を行って、残留水分含有DCDPS及び母液を得る工程と、
(d)残留水分含有DCDPSを、DCDPSが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄する工程と、
(e)任意に、工程(b)~(d)を繰り返す工程と、
(f)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを乾燥させる工程と
を含む、粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを精製する方法により達成される。
【0013】
DCDPSの有機溶媒中の溶解度は、以下のように定義される
【0014】
【数1】
【0015】
(式中、mDCDPS=kgで表示するDCDPSの量であり、
solv=kgで表示する溶媒の量である)。
【0016】
精製する粗DCDPSは、例えば4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド(以下、DCDPSOと呼ぶ)を溶媒中で、酸化剤、例えば過酸化水素での酸化反応から得られるものである。反応終了後、得られた反応混合物は通常、水で洗浄される。このようにして製造された粗DCDPSは、依然として、0.1~0.9質量%の溶媒、例えばカルボン酸、0.001~0.1質量%のDCDPSO、及び0.01~0.3質量%のDCDPSの異性体、例えば2,2’-ジクロロジフェニルスルホン、3,4’-ジクロロジフェニルスルホン又は2,4’-ジクロロジフェニルスルホンを含有してもよい。酸化反応に応じて、カルボン酸は、例えば、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸又はそれらの混合物である。それによって、異性体の量は主に、DCDPSOの純度に依存する。粗DCDPSに含有する不純物の量は、すべて、粗DCDPSの総量に基づくものである。さらに、粗DCDPSは、洗浄工程後に、固液分離、例えば濾過によって除去されなかった水を依然として含有してもよい。粗DCDPS中の水含有量は、1~30質量%の範囲、好ましくは2~25質量%の範囲、特に3~20質量%の範囲であってよい。
【0017】
本発明の精製方法によれば、DCDPS中の不純物をさらに低減し、それぞれ乾燥DCDPSの総量に基づいて、0.3質量%未満の異性体、10ppm未満の4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド、特に2ppm未満の4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド、及び200ppm未満、特に100ppm未満のカルボン酸、特にn-ヘキサン酸及び/又はn-ヘプタン酸を含有するDCDPSを達成することが可能である。
【0018】
驚くべきことに、工程(a)で得られた溶液が、それぞれ水とDCDPSの量に基づいて、1~30質量%、好ましくは2~25質量%、特に3~20質量%の量の水を含む場合、望ましくない異性体、特に2,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び3,4’-ジクロロジフェニルスルホンの量をさらに低減することができることが示されている。溶液中に水が存在することで、粗DCDPSに含有するカルボン酸及びDCDPSOの少なくとも大部分も除去することができるという更なる利点がある。
【0019】
さらに、粗DCDPSを有機溶媒に溶解する前に水を除去するための濾過ケーキの乾燥は省略することができる。
【0020】
粗DCDPSを精製するために、まず、残留水分、例えば反応終了後にDCDPSを洗浄することからの水分を含有してもよい粗固体DCDPSを、DCDPSが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶剤(以下、有機溶媒と呼ぶ)と混合する。粗固体DCDPSと有機溶媒を混合することにより、懸濁液が形成され、粗固体DCDPSが溶解し始める。粗DCDPSが水を含有していない場合、又は粗DCDPS中の水分含有量が1質量%未満である場合は、懸濁液に水を添加する。懸濁液に水を添加する場合、有機溶媒及び水を含む液体混合物を使用することも、水を個別に添加することも可能である。水は、有機溶媒と同時に、有機溶媒を添加する前に、又は有機溶媒の添加を終了した後に添加することができる。しかしながら、特に好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~25質量%、特に3~20質量%の量の水を含有する粗DCDPSが使用される。
【0021】
粗固体DCDPSと有機溶媒を混合ことにおいて、バッチプロセスでは、好適な容器に有機溶媒を提供し、粗固体DCDPSを結晶化したペレットの状態で又は粉末として有機溶媒に添加することが好ましい。また、混合を連続的に行うことができる。連続的に混合する場合、粗固体DCDPSを混合装置に連続的に供給し、有機溶媒を適切な量で連続的に添加する。例えば、連続的に混合するための混合装置は混合容器であってもよい。この場合、容器内に形成された懸濁液も連続的に取り出される。粗固体DCDPSは、好ましくは直接に、固液分離、例えば濾過から混合装置に供給される。粗DCDPSが十分な量の水を含有しない場合、バッチプロセスでは、粗固体DCDPSを添加する前に容器中の有機溶媒に水を添加するか、又は粗固体DCDPSを容器に添加する前に水と混合することが好ましい。連続プロセスでは、有機溶媒と混合する前に粗DCDPSに水を添加するか、あるいは混合装置に有機溶媒と適量の水との混合物を添加するか、又は有機溶媒及び水を別々に添加することも可能である。
【0022】
連続的に又はバッチ式で行うことにかかわらず、この順序で混合することにより、粗固体DCDPSが凝集して、長くて溶解しにくいブロックを形成することが回避される。有機溶媒のDCDPSに対する比は、好ましくは1.3~6の範囲、より好ましくは1.5~4の範囲、特に好ましくは1.8~3の範囲である。有機溶媒のDCDPSに対するこの比により、できるだけ少ない量の有機溶媒を使用してDCDPSを有機溶媒に完全に溶解させることができる。
【0023】
粗固体DCDPSの有機溶媒への溶解をサポートするために、粗固体DCDPS、有機溶媒及び水を含む懸濁液は加熱される。好ましくは、懸濁液は、90~120℃の範囲、特に100~110℃の範囲の温度に加熱される。懸濁液の加熱中に有機溶媒の蒸発を避けるために、好ましくは、加熱は高圧で行われる。好ましくは、粗固体DCDPSの有機溶媒への溶解をサポートするための加熱の間、圧力は、2~10バール(abs)、より好ましくは3~5バール(abs)、特に3.5~4.5バール(abs)に設定される。
【0024】
工程(a)でのDCDPSの溶解が終了した後、こうして製造された懸濁液をDCDPSの飽和点未満の温度まで冷却して、有機溶媒及び水を含む母液(以下、液相と呼ぶ)中に結晶化したDCDPSを含む懸濁液を得る。この懸濁液を冷却することにより、DCDPSは再び結晶化し始める。この母液中での新たな結晶化は、粗DCDPSに含まれる不純物が母液中に溶け残り、冷却により新たに形成される結晶の純度が高くなるという利点がある。DCDPSを有機溶媒及び任意に水に溶解して溶液を得ることは、少なくとも90%のDCDPSが溶解した時点で完了する。特に好ましくは、DCDPSの有機溶媒への溶解は、全てのDCDPSが溶解した時点で完了する。
【0025】
飽和点は、DCDPSが結晶化し始める溶液の温度を示す。この温度は、溶液中のDCDPSの濃度に依存する。溶液中のDCDPSの濃度が低いほど、結晶化が始まる温度は低くなる。
【0026】
母液に溶解した不純物が新たに形成された結晶に取り込まれることによる速すぎる結晶成長を避けるために、最初に3~15K/hの冷却速度で0.5~3時間、より好ましくは0.5~2時間、その後に所定の終了温度に達するまで、10~40K/h、より好ましくは15~30K/hの冷却速度、特に18~25K/hの冷却速度の多段階冷却速度で、工程(b)で溶液を冷却することが好ましい。好ましい多段階冷却の他に、終了温度に達するまで10~30K/hの範囲の冷却速度で一段階冷却することも可能である。
【0027】
溶液が冷却される温度が低いほど、母液中にまだ溶解しているDCDPSの量は少なくなる。一方、冷却に必要な労力は、温度が下がるほど増加する。したがって、好ましくは、溶液は、工程(b)において、-10~25℃の範囲の温度、より好ましくは0~20℃の範囲の温度、特に3~12℃の範囲の温度まで冷却される。このような範囲の温度への冷却は、必要な労力に関する段階的な収量が最適化されるという利点を有する。このことは、プロセス全体の廃棄物ストリームを最小化することができるというさらなる効果を有する。
【0028】
DCDPSを結晶化するための溶液の冷却は、溶液の冷却を可能にする任意の結晶化装置で行うことができる。このような装置は、例えば、冷却することができる表面を備える装置、例えば冷却ジャケット、冷却コイル又はいわゆる「パワーバッフル」のような冷却バッフルを備えた容器又はタンクである。
【0029】
DCDPSの結晶化のための溶液の冷却は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。冷却された表面に沈殿及び汚れを避けるために、気密性密閉容器で、
(i)溶液の圧力を、有機溶媒が蒸発し始める圧力に低減させること、
(ii)冷却によって蒸発した有機溶媒を凝縮させること、
(iii)凝縮した有機溶媒と溶液を混合して、懸濁液を得ること
によって、冷却を行うことが好ましい。
【0030】
このプロセスにより、結晶化したDCDPSが蓄積して固体層を形成する冷却された表面がなして溶液を冷却することを可能にする。これにより、冷却プロセスの効率が向上する。また、この固体層を除去するための追加の努力を回避することができる。したがって、冷却された表面のない気密性密閉容器を使用することが特に好ましい。
【0031】
気密性密閉容器で冷却するためのこのプロセスでは、有機溶媒に加えて、水の一部も蒸発することを排除できない。したがって、冷却プロセスにおける蒸発ステップ及び凝縮ステップの説明において「有機溶媒」という用語が使用される場合、当業者は、有機溶媒が水も含む場合があることを理解する。
【0032】
結晶化したDCDPSの沈殿を避けるために、結晶化装置で懸濁液をかき混ぜることがさらに好ましい。したがって、好適な装置は、例えば、攪拌タンク又はドラフトチューブ式結晶器である。攪拌タンクで結晶化を行う場合は、任意の攪拌機を使用することができる。攪拌機によって結晶器に投入される比出力は、好ましくは0.2~0.5W/kgの範囲、より好ましくは0.2~0.35W/kgの範囲である。好ましくは、局所的なエネルギー散逸に関する高い勾配なしに、むしろ均質な電力入力をもたらすタイプの攪拌機が使用される。
【0033】
有機溶媒を蒸発させるための減圧(i)は、段階的であっても連続的であってもよい。段階的に減圧する場合は、所定の温度低下速度が観測されるまで、特に所定の速度が「0」である、すなわちそれ以上温度低下が生じなくなるまで、一段階で圧力を保持することが好ましい。この状態が達成された後、圧力は、次の圧力ステップの次の所定の圧力値まで減少される。この場合、減圧するステップはすべて同じであってもよいし、異なっていてもよい。異なるステップで減圧する場合、減圧するステップの大きさを低減することが好ましい。各減圧ステップは、使用される溶媒に依存する。特に好ましくは、段階的な減圧は、各ステップで温度が1~10K、より好ましくは1~7K、特に1~3K低下するように行われる。
【0034】
減圧が連続的である場合、減圧は、例えば直線的、双曲線的、放物線的又は他の任意の形状とすることができ、ここで、非線形減圧の場合は、圧力の減少に伴って圧力が低下するように減圧することが好ましい。
【0035】
溶液の冷却(b)は、バッチ式で、半連続的に又は連続的に行うことができる。
【0036】
冷却、及びしたがってDCDPSの結晶化をバッチ式で行う場合は、減圧(i)中に凝縮(ii)及び混合(iii)を行うことが好ましい。それにより、気密性密閉容器中の温度が-10~25℃の範囲、好ましくは0~20℃の範囲、特に3~12℃の範囲の所定値に達するまで、ステップ(i)において連続的に減圧することが特に好ましい。これらの所定温度において、気密性密閉容器中の圧力は、一般に10~400ミリバール(abs)の範囲、より好ましくは10~200ミリバール(abs)の範囲、特に30~80ミリバール(abs)の範囲である。所定の温度値に達した後、減圧を停止し、その後、常圧に達するまで気密性密閉容器を通気する。気密性密閉容器中の温度プロファイルは、好ましくは、溶液が一定の過飽和度にさらされるように選択される。これらの条件は、溶液中のDCDPSのそれぞれの濃度において、温度を飽和温度未満に維持しながら冷却プロファイルを適用することによって達成することができる。詳細には、相平衡、結晶核の質量、及び結晶核の初期サイズに基づいて、適用される冷却プロファイルが選択される。さらに、冷却プロファイルを適用するために、成長速度が一定であることを仮定する。冷却プロファイルを適用するためのデータを決定するために、例えば、濁度プローブ、屈折率プローブ又はATR-FTIR-プローブを使用することができる。温度プロファイル及び/又は圧力プロファイルは、例えば、段階的、線形、又は漸進的であり得る。
【0037】
DCDPSの溶解度を低下し、したがって固化したDCDPSの収率を上げるためには、飽和点を変えることが必要である。これは、一定温度で有機溶媒の量を連続的に減らすことにより、例えば有機溶媒を蒸発させることにより、又は一定濃度で溶液を冷却することにより、又は蒸発によって有機溶媒の量を減少させた後に温度を下げるというハイブリッド手順により、可能である。溶液中のDCDPSの溶解度を低下し、結晶化を改善するために、少なくとも1種のドラウニングアウト剤(drowning-out agent)、例えば水をさらに添加することがさらに可能である。
【0038】
常圧に達した後、冷却により気密性密閉容器中に形成された有機溶媒中に粒子状4,4’-ジクロロジフェニルスルホキシドを含む懸濁液(以下、「懸濁液」と呼ぶ)を取り出し、固液分離(c)に供給する。
【0039】
冷却、及びしたがってDCDPSOの結晶化を連続的に行う場合、冷却及び結晶化を少なくとも2つのステップ、特に2つ~3つのステップで段階的に行うことが好ましい。冷却及び結晶化を2つのステップで行う場合、第1ステップでは、好ましくは、溶液を70~110℃の範囲の温度に冷却し、第2ステップでは、好ましくは、-10~25℃の範囲の温度に冷却する。冷却を2つを超えるステップで行う場合、好ましくは、第1ステップを70~110℃の範囲の温度で行い、最後のステップを-10~25℃の範囲の温度で行う。さらなるステップは、ステップごとに温度を下げながら、これらの範囲の間の温度で行われる。冷却及び結晶化を3つのステップで行う場合、例えば第2ステップを20~70℃の範囲の温度で行う。
【0040】
バッチ式プロセスでは、連続運転プロセスの温度は、冷却される表面、例えば冷却ジャケット、冷却コイル、又はいわゆる「パワーバッフル」のような冷却バッフルを有する冷却及び結晶化のための装置を使用して設定することができる。冷却及び結晶化のための少なくとも2つのステップを確立するために、各ステップには冷却及び結晶化のための少なくとも1つの装置を使用する。DCDPSの沈殿を避けるために、連続プロセスにおいても、冷却及び結晶化のための装置中の圧力を下げることによって温度を下げることが好ましく、ここで、冷却及び結晶化のための装置は好ましくは気密性密閉容器である。冷却及び結晶化のためのさらに好適な装置は、例えば、撹拌タンク式結晶器、ドラフトチューブ式結晶器、水平式結晶器、強制循環式結晶器又はオスロ式結晶器である。必要な温度を達成するために設定される圧力は、溶液の蒸気圧に対応する。減圧により、低沸点物質、特に有機溶媒が蒸発する。蒸発した低沸点物質は冷却されて凝縮し、凝縮した低沸点物質は、温度が設定された冷却及び結晶化のためのそれぞれの装置に戻される。
【0041】
冷却及び結晶化を連続的に行う場合、懸濁液のストリームは、冷却及び結晶化のための装置から連続的に取り出される。その後、懸濁液は、固液分離(c)に供給される。冷却及び結晶化のための装置中の液体レベルを所定の範囲内に維持するために、DCDPS及び有機溶媒を含む新鮮な溶液を、装置から取り出された懸濁液の量に対応する又は本質的に対応する量で装置に供給することができる。新鮮な溶液は、冷却及び結晶化のための装置中の最小液体レベルに到達するたびに、連続的又はバッチ式で添加することができる。
【0042】
バッチ式で又は連続的に行われることにかかわらず、結晶化の最後のステップにおいて懸濁液中の固形分が、懸濁液の質量に基づいて、5~50質量%の範囲、より好ましくは5~40質量%の範囲、特に15~40質量%の範囲になるまで、好ましくは結晶化を継続する。
【0043】
冷却及び結晶化を連続的に又はバッチ式で行うことができるが、冷却及び結晶化をバッチ式で行うこと、特に冷却及び結晶化のための装置の冷却された表面に結晶化したDCDPSの沈殿を避けるためにステップ(i)~(iii)を含む上述プロセスに従って圧力を低下させることにより溶液を冷却することが好ましい。バッチ式の冷却及び結晶化により、操作ウィンドウ(operating window)及び結晶化条件に関して高い柔軟性が得られ、プロセス条件の変動に対してより堅牢である。
【0044】
冷却及び結晶化を連続的に行うか、又はバッチ式で行うかにかかわらず、固液分離(c)を、連続的に又はバッチ式で、好ましくは連続的に行うことができる。
【0045】
冷却及び結晶化をバッチ式で行い、固液分離を連続的に行う場合は、冷却及び結晶化に使用される装置から取り出された懸濁液が充填された少なくとも1つのバッファ容器を使用する。懸濁液を提供するために、連続流が少なくとも1つのバッファ容器から取り出され、固液分離装置に供給される。少なくとも1つのバッファ容器の容量は、好ましくは、冷却及び結晶化のための装置の内容物がバッファ容器に供給される2つの充填サイクルの間に、各バッファ容器が完全に空にならないようにする。複数のバッファ容器を使用する場合、別のバッファ容器の内容物を取り出して固液分離装置に供給されている間に、1つのバッファ容器を充填することが可能である。この場合、少なくとも2つのバッファ容器は並列に接続される。バッファ容器の並列接続は、1つのバッファ容器が満たされた後に、さらに別のバッファ容器に懸濁液を充填することを可能にする。少なくとも2つのバッファ容器を使用することの利点は、バッファ容器の容量が1つのバッファ容器のみの場合よりも小さい場合があることである。このより小さな容量は、懸濁液をより効率的に混合して、結晶化したDCDPSの沈降を避けることを可能にする。懸濁液を安定に維持し、バッファ容器中の固体DCDPSの沈降を避けるために、バッファ容器に懸濁液をかき混ぜるための装置、例えば撹拌機を提供し、バッファ容器中の懸濁液をかき混ぜることが可能である。かき混ぜは、好ましくは、撹拌によるエネルギー入力が、結晶を懸濁させるのに十分な高さでありながら、結晶の破損を防ぐことができる最小レベルに維持されるように行われる。この目的のために、エネルギー入力は、好ましくは0.2~0.5W/kgの範囲、特に0.25~0.4W/kgの範囲であり、攪拌機の先端速度は3m/秒未満である。
【0046】
冷却及び結晶化と固液分離をバッチ式で行う場合、固液分離装置が冷却及び結晶化のための容器の全内容物を取り込むのに十分な大きさであれば、冷却及び結晶化のための容器の内容物を固液分離装置に直接供給することができる。この場合、バッファ容器を省略することが可能である。また、冷却及び結晶化と固液分離を連続的に行う場合は、バッファ容器を省略することも可能である。この場合も、懸濁液を固液分離装置に直接供給する。固液分離装置が小さすぎて、冷却及び結晶化のための容器の全内容物を取り込むことができない場合は、バッチ式実行の場合でも、結晶化装置を空にして新しいバッチを開始できるように、少なくとも1つのさらなるバッファ容器が必要である。
【0047】
冷却及び結晶化を連続的に行い、固液分離をバッチ式で行う場合は、冷却及び結晶化装置から取り出した懸濁液をバッファ容器に供給し、固液分離のための各バッチをバッファ容器から取り出して固液分離装置に供給する。
【0048】
固液分離は、例えば、濾過、遠心分離又は沈降を含む。好ましくは、固液分離は濾過である。固液分離では、固体DCDPSから母液を除去し、残留水分含有DCDPS(以下、「湿潤DCDPS」と呼ぶ)が得られる。固液分離が濾過である場合、湿潤DCDPSは「濾過ケーキ」と呼ばれる。
【0049】
連続的に行うか、又はバッチ式で行うかにかかわらず、固液分離は、好ましくは室温又は室温未満の温度、好ましくは0~10℃の範囲の温度で行われる。例えば、ポンプを使用することにより、又は高圧の不活性ガス、例えば窒素を使用することにより、高圧で懸濁液を固液分離装置に供給することは可能である。固液分離が濾過であり、懸濁液を高圧で濾過装置に供給する場合は、濾過プロセスに必要な差圧は、濾過装置の濾過物側に常圧を設定することによって実現される。懸濁液を常圧で濾過装置に供給する場合は、濾過装置の濾液側に減圧を設定して、必要な差圧を実現する。さらに、濾過装置の供給側に常圧を超える圧力、及び濾過物側に常圧未満の圧力を設定することが可能であり、又は濾過装置のフィルターの両側に常圧未満の圧力を設定することも可能であり、この場合も濾過物側の圧力が供給側よりも低くなければならない。さらに、濾過プロセスにおいてフィルター上の液体層の静圧を使用することのみにより濾過を行うことも可能である。好ましくは、供給側と濾過物側との圧力差、従って濾過装置における差圧は、100~6000ミリバール(abs)の範囲、より好ましくは300~2000ミリバール(abs)の範囲、特に400~1500ミリバール(abs)の範囲であり、ここで、差圧は固液分離(c)で使用されるフィルターにも依存する。
【0050】
固液分離(c)を行うために、当業者に知られている任意の固液分離装置を使用することができる。好適な固液分離装置としては、例えば、撹拌式圧力ヌッチェ、回転式圧力フィルター、ドラムフィルター、ベルトフィルター又は遠心分離機が挙げられる。固液分離装置に使用されるフィルターの細孔径は、好ましくは1~1000μmの範囲、より好ましくは10~500μmの範囲、特に20~200μmの範囲である。
【0051】
特に好ましくは、冷却及び結晶化をバッチ式で行い、固液分離を連続的に行う。
【0052】
DCDPSをさらに精製し、結晶化したDCDPSの表面から、湿潤DCDPS中に残存する有機溶媒に含有される不純物及び結晶化していないDCDPSを除去するために、DCDPSが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒(以下、有機溶媒と呼ぶ)で湿潤DCDPSを洗浄する。
【0053】
洗浄に使用される有機溶媒の量は、好ましくは、湿潤DCDPSから不純物及び結晶化していないDCDPSが除去されるように選択される。好ましくは、洗浄に使用される有機溶媒の量は、1kgの湿潤DCDPS当たり0.3~3kgの範囲であり、より好ましくは1kgの湿潤DCDPS当たり0.5~2kgの範囲であり、特に1kgの湿潤DCDPS当たり0.8~1.5kgの範囲である。洗浄のための有機溶媒の量が少ないほど、有機溶媒をリサイクルしてプロセスサイクルで再利用するための努力が少なくなるが、有機溶媒の量が少ないほど、カルボン酸、特にn-ヘキサン酸及び/又はn-ヘプタン酸、並びに残りの4,4’-DCDPSO及び4,4’-DCDPSの異性体に関する洗浄効率は低くなる。
【0054】
固液分離及び湿潤DCDPSの洗浄は、同じ装置で、又は異なる装置で行うことができる。固液分離が濾過である場合、濾過を連続的に行うか、又はバッチ式で行うかにかかわらず、その後、濾過装置で濾過ケーキの洗浄を行うことが可能である。洗浄後、濾過ケーキを取り出し、乾燥させて、乾燥DCDPSを生成物として得る。
【0055】
濾過及び濾過ケーキの洗浄を1つの装置で行う以外に、濾過ケーキを濾過装置から取り出し、後続の洗浄装置で洗浄することも可能である。濾過がベルトフィルターで行われる場合、フィルターベルト上の濾過ケーキを洗浄装置中に輸送することが可能である。この目的のために、フィルターベルトは、濾過装置から出て洗浄装置に入るように設計されている。フィルターベルト上の濾過ケーキを濾過装置から洗浄装置中に輸送する以外にも、好適なコンベヤーで濾過ケーキを集めて、コンベヤーから濾過ケーキを洗浄装置に供給することも可能である。濾過ケーキが好適なコンベヤーで濾過装置から取り出される場合、濾過ケーキは、全体として、又は塊(chunks)又は粉状などのより小さな断片で、濾過装置から取り出すことができる。例えば、塊は、濾過ケーキが濾過装置から取り出されるときに壊れた場合に生じる。粉末状に達成するためには、通常、濾過ケーキを粉砕する必要がある。濾過ケーキの状態にかかわらず、洗浄において濾過ケーキを有機溶媒と接触させる。例えば、濾過ケーキを洗浄装置の好適なトレイに置き、有機溶媒をトレイ及び濾過ケーキに通って流すことができる。さらに、濾過ケーキを小さな塊又は粒子にして、この塊又は粒子を有機溶媒と混合することも可能である。続いて、濾過ケーキの塊又は粒子と有機溶媒とのこのようにして製造された混合物を濾過して有機溶媒を除去する。洗浄が個別の洗浄装置で行われる場合、洗浄装置は任意の好適な装置であり得る。好ましくは、洗浄装置は、より少量の有機溶媒を使用し、1つの装置のみで有機溶媒を固体DCDPSから分離することができるフィルター装置である。しかしながら、洗浄装置として、例えば攪拌タンクを使用することも可能である。この場合、次のステップで、例えば濾過又は遠心分離により、洗浄されたDCDPSから有機溶媒を分離する必要がある。
【0056】
固液分離(c)を遠心分離により行う場合、遠心分離機によっては、湿潤DCDPSを洗浄するために別個の洗浄装置を使用する必要がある。しかしながら、通常、分離ゾーン及び洗浄ゾーンを含む遠心分離機を使用することができるか、又は遠心分離機で遠心分離した後に洗浄を行うことができる。
【0057】
湿潤DCDPSの洗浄は、好ましくは室温で行われる。また、湿潤DCDPSを、室温とは異なる温度、例えば室温を超える温度で洗浄することも可能である。洗浄が濾過装置で行われる場合、濾過ケーキを洗浄するためには、差圧を確立しなければならない。これは、例えば、濾過ケーキを洗浄するために有機溶媒を常圧を超える圧力で供給し、有機溶媒が供給される圧力未満の圧力、例えば常圧で濾過ケーキを通過させた後に有機溶媒を取り出すことによって可能である。さらに、濾過ケーキを洗浄するための有機溶媒を常圧で供給し、濾過ケーキを常圧未満の圧力で通過させた後に有機溶媒及び水を取り出すことも可能である。
【0058】
固液分離で得られた母液、及び洗浄に使用された有機溶媒は、まだ結晶化していないDCDPSを含有してもよい。本方法において精製したDCDPSの収率を高め、廃棄する有機溶媒の量を減らすために、好ましくは、蒸留により母液の少なくとも一部及び任意に洗浄に使用された有機溶媒をワークアップする。
【0059】
母液の少なくとも一部及び任意に洗浄に使用された有機溶媒をワークアップすることにより、有機溶媒に依然として溶解しているDCDPSの少なくとも一部を高沸点物質として取り出し、この高沸点物質の少なくとも一部を精製プロセス又は精製プロセスの上流のプロセスステップにリサイクルしてDCDPSを生成物として得て収率を高めることが可能である。さらに、蒸留で精製され、低沸点物質として得られた有機溶媒は、DCDPSを溶解するための有機溶媒として、又はDCDPSを洗浄するための有機溶媒として、精製プロセスにリサイクルすることができる。DCDPSの洗浄に使用される場合、有機溶媒は所定の純度の要件を満たす必要がある。洗浄に使用される場合、有機溶媒は、それぞれ有機溶媒の全質量に基づいて、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.03質量%未満、特に0.015質量%未満の不純物を含有する。
【0060】
DCDPSを溶解するために使用される有機溶媒は好ましくは、洗浄に使用される有機溶媒と同じ純度を有するが、しかし、DCDPSを溶解するために純度が低い有機溶媒を使用することも可能である。上記で特定された純度を有する生成物を達成するために、DCDPSを溶解するために使用される有機溶媒は、それぞれ有機溶媒の全質量に基づいて、好ましくは0.05質量%未満の不純物、より好ましくは0.03質量%未満の不純物、特に0.015質量%未満の不純物を含有する。
【0061】
特に好ましくは、蒸留によってワークアップされる母液及び任意に洗浄に使用された有機溶媒の量は、それぞれ母液及び洗浄に使用された有機溶媒の総量に基づいて、50~100質量%の範囲、より好ましくは70~100質量%の範囲、特に90~100質量%の範囲である。
【0062】
DCDPSを溶解するために使用される有機溶媒及び湿潤DCDPSを洗浄するために使用される有機溶媒は、好ましくはさらに、有機溶媒の沸点におけるDCDPSの溶解度が最大100%となるように選択される。例えば、好適な有機溶媒は、対称又は非対称、分岐状又は直鎖エーテル、例えばジエチルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテル、置換又は非置換の芳香族溶媒、例えばトルエン、モノクロロベンゼン又はベンゼン、低分子カルボン酸、特にC~Cカルボン酸、又は低分子アルコール、特にC~Cアルコールである。好ましくは、有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸、トルエン、エチルアセテート又はモノクロロベンゼンである。特に好ましくは、有機溶媒は、C~Cアルコール、特にメタノール、エタノール又はイソプロパノールである。最も好ましくは、有機溶媒はメタノールである。
【0063】
DCDPSの溶解及び洗浄には、異なる有機溶媒を使用することができる。しかしながら、溶液を得るため、及び湿潤DCDPSを洗浄するため、同じ有機溶媒を使用してDCDPSを溶解することが特に好ましい。同じ有機溶媒を使用することで、母液及び洗浄に使用する有機溶媒を一緒にワークアップすることができるが、DSCDPSの溶解及び湿潤DCDPSの洗浄に異なる有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の再利用を可能にするために、有機溶媒が混合しないよう別々にワークアップしなければならなくなる。
【0064】
固液分離及び洗浄後のDCDPSが依然として大量の不純物を含有する場合は、プロセス工程(a)~(d)を繰り返すことが可能である。
【0065】
乾燥生成物を得るために、洗浄後、有機溶媒を依然として含有しているDCDPSを乾燥させる。乾燥は、粒子状物質の乾燥に使用することができる任意の乾燥機で行うことができる。好適な乾燥機は、例えば、パドル乾燥機、タンブル乾燥機、又は他のタイプの接触乾燥機又は流動床乾燥機である。さらに、少なくとも2つのタイプの乾燥機の組み合わせを使用することができる。
【0066】
乾燥は、好ましくは105~140℃の範囲、より好ましくは110~135℃の範囲、特に120~135℃の範囲の壁温を有する接触乾燥機を用いて行われる。このような温度でDCDPSを乾燥させることにより、DCDPSの着色を回避することができる。乾燥は、好ましくは90~600分間、より好ましくは180~350分間、特に200~300分間継続される。
【0067】
乾燥プロセスをサポートし、例えば酸化による生成物の損傷を避けるために、乾燥機での乾燥は、好ましくは不活性雰囲気中で行われる。不活性雰囲気は、不活性ガスを乾燥機に供給することによって達成される。不活性ガスは、好ましくは、窒素、二酸化炭素、又は希ガス、例えばアルゴンである。特に好ましくは、不活性ガスは窒素である。
【0068】
蒸発による乾燥中にDCDPSから取り出された有機溶媒を再利用できるようにするため、蒸発した有機溶媒は冷却により凝縮される。乾燥機に不活性ガスが供給される場合、通常は不活性ガス及び蒸発した有機溶媒を一緒に乾燥機から取り出す。この場合、凝縮器において、凝縮した有機溶媒は不活性ガスから分離される。この有機溶媒は、例えば、溶液の製造又はDCDPSの洗浄に再利用することができる。
【0069】
これらの条件で乾燥させることで、400ppm未満の有機溶媒を含有する最終生成物を達成することができる。
【0070】
乾燥後、DCDPSを冷却して、保管又は輸送のためにビッグバッグに詰めるなど、さらなる処理できるようにすることができる。乾燥したDCDPSを冷却するための好適な冷却器は、スクリュー冷却器、パドル冷却器又はその他のバルク冷却器又は流動床冷却器であり得る。
【0071】
本発明の例示的な実施態様を図に示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、本発明の方法の実施態様のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1では、粗DCDPSを精製する方法をフロー図で示している。
【0074】
粗DCDPSを精製するために、好ましくは1~30質量%の水を含有する粒子状粗DCDPS1及び有機溶媒3、好ましくはメタノールを気密性密閉容器5に供給する。気密性密閉容器5において、粒子状粗DCDPS1は、有機溶媒3に溶解される。粒子状粗DCDPS1を有機溶媒3に溶解することをサポートするために、気密性密閉容器5中の粒子状粗DCDPSと有機溶媒の混合物を90~120℃の範囲の温度に加熱する。混合物を加熱するために、気密性密閉容器5は、加熱媒体、例えば熱油又は水蒸気によって流れることができる二重ジャケット7を備えている。粗DCDPSを有機溶媒に溶解することをサポートするために、粗DCDPSと有機溶媒を混合するための攪拌手段9がさらに含まれている。攪拌手段は、例えば、撹拌機であり得る。粗DCDPSを有機溶媒に溶解することが完了した後、こうして製造した溶液を冷却して、DCDPSを再結晶させる。粒子状粗DCDPS1が十分な量の水を含有しない場合、DCDPS及び水の量に基づいて1~30質量%の水を含有する溶液を達成するために、さらに水を気密性密閉容器5に供給する。
【0075】
溶液を冷却するために、気密性密閉容器5を減圧する。減圧により、有機溶媒は蒸発し始める。蒸発した有機溶媒は、気密性密閉容器5から取り出され、凝縮器11に流入する。凝縮器11では、気化した有機溶媒は冷却され、凝縮する。こうして凝縮し冷却した有機溶媒は、気密性密閉容器5に戻される。減圧、及びそれに伴う有機溶媒の蒸発及び凝縮によって、気密性密閉容器5中の溶液は、0~25℃の範囲の温度になるまで冷却される。溶液の冷却により、DCDPSは溶液中で結晶化し、懸濁液が形成される。結晶化したDCDPSを懸濁液中に保持し、気密性密閉容器5の表面に汚れが付着しないために、気密性密閉容器5中に形成される懸濁液を攪拌手段9で混合する。気密性密閉容器中の圧力を下げるために、例えば、凝縮器11の下流に配置された真空ポンプ13を使用することができる。気密性密閉容器5から送出される蒸発した有機溶媒は、凝縮して回収又は廃棄することができる。
【0076】
気密性密閉容器5中の所望の温度が達成された後、気密性密閉容器5中で形成された懸濁液は、ライン15を介して取り出され、バッファ容器17に供給される。バッファ容器17から、懸濁液は濾過装置19に供給される。バッファ容器17を使用することにより、気密性密閉容器5での結晶化及び濾過装置19での濾過を連続的に行うことが可能である。しかしながら、結晶化及び濾過をバッチ式で行う場合にも、バッファ容器17を使用し、気密性密閉容器5と異なる容量を有する濾過装置19を使用できるようにすることが好ましい。これにより、処理量及び消費電力がそれぞれ最適化された気密性密閉容器5及び濾過装置19をそれぞれ使用することができる。濾過装置19では、結晶化したDCDPSが有機溶媒、水、結晶化していないDCDPS及び不純物を含有する母液から分離される。母液は濾過装置19から取り出され、有機溶媒収集タンク21に収集される。母液から分離された後、残留水分含有DCDPSは、有機溶媒で洗浄される。図に示している実施態様では、洗浄も濾過装置で行われる。洗浄に使用された後の有機溶媒は、有機溶媒収集タンク21に収集される。図に示しているように母液及び洗浄のための有機溶媒を1つの有機溶媒収集タンク21のみに収集するためには、DCDPSを溶解するために使用した有機溶媒及び洗浄のための有機溶媒が同じであることが必要である。
【0077】
精製のためは、有機溶媒収集タンク21で収集された有機溶媒を蒸留塔23に供給する。蒸留塔では、高沸点物質及び低沸点物質が分離される。低沸点物質は、実質的に有機溶媒を含み、高沸点物質は、結晶化していないDCDPS及び高沸点不純物を含む。その後、低沸点有機溶媒は、有機溶媒貯蔵タンク25に供給される。
【0078】
洗浄後、洗浄されたDCDPSは、濾過装置19から取り出され、乾燥機27に供給される。乾燥機では、DCDPSから有機溶媒を取り出す。乾燥されたDCDPSは、好ましくは、400ppm未満の有機溶媒を含有する。乾燥されたDCDPSは、生成物29として乾燥機27から取り出される。乾燥機中で蒸発によってDCDPSから分離された有機溶媒は、乾燥機27から取り出され、凝縮器31に供給される。蒸発をサポートし、かつ、酸化を回避するために、不活性ガス33、好ましくは窒素が乾燥機27に供給される。不活性ガスは、蒸発した有機溶媒とともに乾燥機27から取り出される。凝縮器31では、有機溶媒が不活性ガスから分離される。凝縮された有機溶媒は、有機溶媒貯蔵タンク25に供給され、不活性ガスは、通気ライン35を介して通気される。
【0079】
十分な量の有機溶媒を提供し、かつ、プロセスから、例えば気密性密閉容器5、凝縮器31又は蒸留塔23から取り出された有機溶媒を置き換えるために、新鮮な有機溶媒37を有機溶媒貯蔵タンク25に添加することができる。
【0080】
有機溶媒貯蔵タンク25から、有機溶媒は、溶液を製造するための気密性密閉容器5、及びDCDPSを洗浄するための濾過装置19に供給される。
【実施例
【0081】
115gの水を含有し、かつ、約0.24%のヘプタン酸及び約240ppmの4,4’-DCDPSの異性体を含有する500.4gの粗DCDPSを1385gのメタノール中に懸濁させた。この混合物を密閉容器中で100℃の温度まで加熱した。この温度を100℃で2時間20分間維持した。その後、容器中の圧力を低減させ、メタノールが蒸発し始めた。メタノールの蒸発により、DCDPSの結晶化をもたらした。10℃の温度に達するまで、1時間当たり10ケルビンの速度で直線的に容器中の温度を下げた。この温度に達した後、常圧になるまで容器を通気した。こうして得られた結晶化したDCDPSとメタノールの混合物をフィルターヌッチェで濾過した。この濾過により、質量が613.5gの湿潤濾過ケーキが得られた。この湿湿潤濾過ケーキを、400gの新しいメタノールで洗浄した。その後、洗浄した湿潤濾過ケーキを、壁面温度130℃のRotavapor(登録商標)回転蒸発装置で5時間乾燥させた。こうして得られた生成物は、以下の組成を有していた:
99.987%の4,4’-DCDPS
120ppmのメタノール
90ppmのDCDPS-異性体
20ppmの残りのカルボン酸。
【符号の説明】
【0082】
1 粗DCDPS
3 有機溶媒
5 気密性密閉容器
7 二重ジャケット
9 攪拌手段
11 凝縮器
13 真空ポンプ
15 ライン
17 バッファ容器
19 濾過装置
21 有機溶媒収集タンク
23 蒸留塔
25 有機溶媒貯蔵タンク
27 乾燥機
29 生成物
31 凝縮器
33 不活性ガス
35 通気ライン
37 有機溶媒
図1
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)水を含有してもよい粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを有機溶媒に溶解し、任意に水を添加することにより、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を得る工程と、
(b)前記溶液を4,4'-ジクロロジフェニルスルホンの飽和点未満の温度まで冷却して、結晶化した4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを含む懸濁液を得る工程と、
(c)固液分離を行って、残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホン及び母液を得る工程と、
(d)前記残留水分含有4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄する工程と、
(e)任意に、工程(b)~(d)を繰り返す工程と、
(f)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを乾燥させる工程と
を含む、粗4,4’-ジクロロジフェニルスルホンを精製する方法。
【請求項2】
工程(b)において、前記溶液が、10~40K/hの冷却速度で冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)において、前記溶液が、0~25℃の範囲の温度まで冷却される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒に溶解するために、前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒を含む懸濁液が生成され、前記懸濁液を90~120℃の範囲の温度まで加熱する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)の冷却が、
(i)前記溶液の圧力を、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が蒸発し始める圧力に低減させること、
(ii)冷却によって、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する蒸発した有機溶媒を凝縮させること、
(iii)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する凝縮した有機溶媒と前記溶液を混合して、懸濁液を得ること
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力が、段階的に又は連続的に低減される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記冷却が完了した後、前記圧力を常圧に設定する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記固液分離が濾過である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固液分離及び前記洗浄が同じ装置で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記母液の少なくとも一部、及び任意に4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する前記洗浄に使用された有機溶媒が、蒸留によってワークアップされる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記母液の50~100質量%、及び任意に4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する前記洗浄に使用された有機溶媒が、蒸留によってワークアップされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
4,4'-ジクロロジフェニルスルホンを溶解する、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する洗浄のための有機溶媒と同じである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルtert-ブチルエーテル、酢酸、トルエン、エチルアセテート又はモノクロロベンゼンである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
乾燥(f)が接触乾燥機で行われ、前記接触乾燥機が、好ましくは105~140℃の範囲の壁温で運転される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粗4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒で洗浄することにより除去されるn-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸又はそれらの混合物を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)溶液の圧力を、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する有機溶媒が蒸発し始める圧力に低減させること、
(ii)冷却によって、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する蒸発した有機溶媒を凝縮させること、
(iii)4,4'-ジクロロジフェニルスルホンが20℃で0.5~20%の溶解度を有する凝縮した有機溶媒と溶液を混合して、懸濁液を得ること
により、4,4'-ジクロロジフェニルスルホン、有機溶媒、及び4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと水の量に基づいて1~30質量%の水を含む溶液を冷却するための、気密性密閉容器の使用方法。
【国際調査報告】