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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20221212BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L51/04
C08F279/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523335
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2021003986
(87)【国際公開番号】W WO2021235676
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0060730
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0041215
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ル・ダ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン・フ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジェ・オ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BG04X
4J002BN14W
4J026AA17
4J026AA68
4J026AC11
4J026BA05
4J026BA27
4J026BA31
4J026DA04
4J026DB04
4J026GA07
(57)【要約】
本発明は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体;(メタ)アクリレート系単量体単位;及び第2スチレン系単量体単位を含み、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比は2以下であり、重量平均分子量が130,000~250,000g/molである熱可塑性樹脂組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体と、
(メタ)アクリレート系単量体単位と、
第2スチレン系単量体単位と、を含み、
前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比は2以下であり、
重量平均分子量が130,000~250,000g/molである熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比は0.80~2.00である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量は140,000~210,000g/molである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゴム質重合体20.00~40.00重量%と、
前記(メタ)アクリレート系単量体単位23.00~51.00重量%と、
前記第2スチレン系単量体単位18.00~41.00重量%を含むものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
アクリロニトリル系単量体単位を含むものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記アクリロニトリル系単量体単位を3.00~12.00重量%で含むものである、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体、前記ゴム質重合体にグラフトされた(メタ)アクリレート系単量体単位、及び前記ゴム質重合体にグラフトされた第2スチレン系単量体単位を含むグラフト共重合体と、
(メタ)アクリレート系単量体単位及び第2スチレン系単量体単位を含む非グラフト共重合体と、を含むものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記グラフト共重合体の屈折率は1.5230~1.5420である、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記グラフト共重合体は、重量平均分子量が70,000~250,000g/molである、請求項7又は8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記非グラフト共重合体は、重量平均分子量が140,000~250,000g/molである、請求項7~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2020年5月21日に出願された韓国特許出願第10-2020-0060730号及び2021年3月30日に出願された韓国特許出願第10-2021-0041215号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関するものであって、透明性、耐衝撃性、加工性、耐化学性、及びガンマ線に対する抵抗性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、環境問題に加えて、素材産業にも多くの変化があった。特に、医療用や食品容器として使用する素材に対しても、環境ホルモンや廃棄などの問題において、これまで使用されたポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどを代替するための多くの努力が行われている。特に、内部に液状を保管保存使用する注射器やチューブコネクタなどに使用される医療用透明素材の分野で新しい素材の開発が必要な状況である。
【0004】
一方、通常使用される透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル-スチレンなどが使用されている。しかし、ポリカーボネートは、衝撃強度及び透明性に優れているが、加工性が低下して複雑な製品を作製し難く、耐化学性に優れていない。そして、ポリカーボネートの製造時に使用されるビスフェノールAにより、使用がますます制限されている。また、ポリメチルメタクリレートは、優れた光学特性を有するが、耐衝撃性及び耐化学性に優れていない。また、ポリスチレン及びポリアクリロニトリル-スチレンも耐衝撃性及び耐化学性に優れていない。また、ジエン系グラフト重合体は、耐衝撃性及び加工性にバランスよく優れているが、透明性に優れていない。
【0005】
したがって、透明性、耐衝撃性、耐化学性及び加工性のいずれも優れた医療用素材の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、透明性、耐衝撃性及び加工性がバランスをとり、(メタ)アクリレート系単量体の使用量を減らして耐化学性及びガンマ線に対する抵抗性を改善させることができ、製造費用が節減可能な熱可塑性樹脂組成物の提供を目的とする。また、医療用として使用可能な熱可塑性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するために、本発明は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体;(メタ)アクリレート系単量体単位;及び第2スチレン系単量体単位を含み、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比は2以下であり、重量平均分子量が130,000~250,000g/molである熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性、加工性、耐化学性、及びガンマ線に対する抵抗性に優れているだけでなく、(メタ)アクリレート系単量体の使用量を減らすことができるので、製造費用の節減が可能である。また、医療用素材として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明を詳しく説明する。
本明細書及び特許請求の範囲に用いられる用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0010】
本発明における平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定してよく、詳しくは、Particle Sizing Systems社のNicomp380装備を用いて測定してよい。本発明における平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、すなわち、散乱強度(Intensity Distribution)平均粒径を意味してよい。
【0011】
本発明における平均粒径は、透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で測定してよい。
【0012】
本発明における屈折率は、物質の絶対屈折率を意味するものであって、屈折率は、自由空間での電磁気輻射線の速度対物質内での輻射線の速度の比として認識され得る。ここで、輻射線は、波長が450nm~680nmである可視光線であってよく、具体的には、波長が589.3nmである可視光線であってよい。屈折率は、公知の方法、すなわち、アッベ屈折計(Abbe refractometer)で測定してよい。
【0013】
本発明においては、グラフト共重合体及び非グラフト共重合体を0.2mmの厚さに広げた後、25℃で波長が589.3nmである可視光線を用いて、アッベ屈折計(Abbe refractometer)で測定してよい。
【0014】
本発明における熱可塑性樹脂組成物に含まれたゴム質重合体、ジエン系単量体単位、(メタ)アクリレート系単量体単位、第1スチレン系単量体単位及び第2スチレン系単量体単位の重量は、赤外線分光法(Infrared Spectroscopy)で測定してよい。ここで、赤外線分光法測定装置としては、Nicolet(登録商標) iS20 FTIR Spectrometer(モデル名、製造社:Thermo Scientific)を用いてよい。
【0015】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の衝撃補強領域は、ゴム質重合体と前記ゴム質重合体とグラフトされた単量体単位とからなる領域を意味してよく、マトリックス領域は、衝撃補強領域を除いた領域、グラフト共重合体のゴム質重合体とグラフトされない単量体単位と非グラフト共重合体に含まれた単量体単位とからなる領域を意味してよい。
【0016】
本発明における熱可塑性樹脂組成物又はグラフト共重合体の重量平均分子量は、熱可塑性樹脂組成物又はグラフト共重合体をアセトンに溶かした後、遠心分離して上澄液と沈殿物を分離し、上澄液を乾燥し、テトラヒドロフランに溶かしてフィルタリングした後、ゲル透過クロマトグラフィーを介して標準ポリスチレン試料に対する相対値として求めてよい。
【0017】
詳しくは、熱可塑性樹脂組成物又はグラフト共重合体粉末1gを、アセトン50gに24時間攪拌しながら溶かした後、遠心分離機(商品名:SUPRA30K、製造社:Hanil Science Industrial)に投入し、16,000rpm、-10℃の条件下で4時間遠心分離して上澄液と沈殿物を分離し、上澄液を50℃の熱風乾燥機で12時間乾燥してよい。得た乾燥物を、1重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶かし、1μmフィルターを介して濾過した後、ゲル透過クロマトグラフィーを介して標準ポリスチレン試料に対する相対値として測定してよい。
【0018】
一方、ゲル透過クロマトグラフィーの測定時、Agilent 1200 series systemを用いてよく、測定条件は、下記のとおりである。
【0019】
屈折率検出器(Refractive index detector(RI)):Agilent G1362 RID
RI温度:35℃
データ処理:Agilent ChemStation S/W
溶媒:テトラヒドロフラン
コラム温度:40℃
流速:0.3ml/分
サンプル濃度:2.0mg/ml
注入量:10μl
カラムモデル:1×PLgel 10um MiniMix-B(250×4.6mm)
+1×PLgel 10um MiniMix-B(250×4.6mm)
+1×PLgel 10um MiniMix-B Guard(50×4.6mm)
標準試料:ポリスチレン
【0020】
本発明における非グラフト共重合体の重量平均分子量は、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン試料に対する相対値として測定してよい。
【0021】
本発明における第1スチレン系単量体単位は、ゴム質重合体に含まれたスチレン系単量体単位を意味してよく、第2スチレン系単量体単位は、熱可塑性樹脂組成物内に含まれるが、ゴム質重合体に含まれないスチレン系単量体単位を意味してよい。
【0022】
本発明における第1及び第2スチレン系単量体単位は、それぞれスチレン系単量体から由来した単位であってよい。前記スチレン系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びp-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、スチレンが好ましい。
【0023】
本発明における(メタ)アクリロニトリル系単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル系単量体から由来した単位であってよい。前記(メタ)アクリロニトリル系単量体は、C~C10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体であってよく、C~C10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、メチルメタクリレートが好ましい。
【0024】
本発明におけるアクリロニトリル系単量体単位は、アクリロニトリル系単量体から由来した単位であってよい。前記アクリロニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル及びα-クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、アクリロニトリルが好ましい。
【0025】
本発明におけるジエン系単量体単位は、ジエン系単量体から由来した単位であってよい。前記ジエン系単量体単位は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうち、1,3-ブタジエンが好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体;(メタ)アクリレート系単量体単位;及び第2スチレン系単量体単位を含み、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比は2以下であり、重量平均分子量が130,000~250,000g/molである。
【0027】
本発明者は、ゴム質重合体の組成及び平均粒径を調節し、熱可塑性樹脂組成物に含まれた第2スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比を調節し、重量平均分子量を調節すると、透明性、耐衝撃性、加工性、耐化学性、及びガンマ線に対する抵抗性に優れた熱可塑性樹脂組成物が製造されることを見出し、ここに本発明を完成した。
【0028】
以下、本発明に対して詳しく説明する。
【0029】
ゴム質重合体としてジエン系単量体単位のみを含む場合、熱可塑性樹脂組成物の衝撃補強領域とマトリックス領域との屈折率の差がないようにするか最小化するために、マトリックス領域に(メタ)アクリレート系単量体単位を過量に含まなければならない。しかし、(メタ)アクリレート系単量体単位は、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性を低下させる原因となり、単量体の単価が高いので、製造費用を上昇させる原因となる。また、スチレン系単量体単独では、ゴム質重合体が製造され得ない。一方、本発明に係るゴム質重合体は、ジエン系単量体単位だけでなく、第1スチレン系単量体単位を含むことにより、ゴム質重合体の屈折率を高めることができ、これにより、マトリックス領域に(メタ)アクリレート系単量体単位を少量含むことが可能である。したがって、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、(メタ)アクリレート系単量体単位から誘発される耐化学性の低下及び製造費用の上昇を最小化することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記ゴム質重合体は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、好ましくは15:85~30:70の重量比で含んでよい。前述した条件を満たすと、耐衝撃性を改善させ得、屈折率を高めることができるため、(メタ)アクリレート系単量体単位の使用量を減らすことができ、(メタ)アクリレート系単量体単位による耐化学性の低下及び製造費用の上昇を最小化することができる。しかし、第1スチレン系単量体単位の含量が前述した範囲未満であれば、耐化学性及びガンマ線に対する抵抗性が顕著に低下する。また、第1スチレン系単量体単位の含量が前述した範囲を超過すれば、透明性及び耐衝撃性が顕著に低下する。
【0031】
前記ゴム質重合体は、ジエン系単量体単位と第1スチレン系単量体とを前述した重量比で含むので、ジエン系単量体のみからなるゴム質重合体よりも屈折率が高いことがある。具体的な例として、前記ゴム質重合体は、屈折率が1.5230~1.5420、好ましくは1.5300~1.5400であってよい。
【0032】
また、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物に含まれたゴム質重合体は、平均粒径が250~450nmであり、好ましくは300~350nmであってよい。本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物が前述した範囲未満のゴム質重合体を含む場合、加工性及び耐衝撃性が顕著に低下する可能性がある。また、平均粒径が前述した範囲を超過するゴム質重合体を含む場合、表面光沢の特性が低下する可能性がある。また、乳化重合によりゴム質重合体を製造する際に、ゴム質重合体のラテックス安定性が顕著に低下する問題が発生するため、好ましくない。
【0033】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が2以下、好ましくは0.8~2であってよい。前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が2を超過するということは、(メタ)アクリレート系単量体単位を過量に含むことを意味するものであって、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が2を超過する場合、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性が顕著に低下し、過量の(メタ)アクリレート単量体の投入により製造費用が上昇する原因となる。また、前記第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が0.8未満の場合、耐衝撃性が低下する。
【0034】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、重量平均分子量が130,000~250,000g/molであり、好ましくは140,000~210,000g/molであってよい。前記重量平均分子量は、以下に記載するグラフト共重合体及び非グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、すなわち、衝撃補強領域とマトリックス領域とを含む熱可塑性樹脂組成物自体に対する重量平均分子量を意味するものであり、熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量が前述した範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性が低下し、前述した範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下する。
【0035】
一方、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、前記ゴム質重合体20.00~40.00重量%;前記(メタ)アクリレート系単量体単位23.00~51.00重量%;及び前記第2スチレン系単量体単位18.00~41.00重量%を含んでよい。好ましくは、前記ゴム質重合体27.00~37.00重量%;前記(メタ)アクリレート系単量体単位27.00~45.00重量%;及び前記第2スチレン系単量体単位22.00~37.00重量%で含んでよい。前述した条件を満たすと、耐衝撃性、耐化学性及び加工性が全て改善した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0036】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、耐化学性をより改善させるために、アクリロニトリル系単量体単位をさらに含んでよい。前記アクリロニトリル系単量体単位は、耐化学性を改善させながら黄変現象が最小限でしか発生しないようにするために、3.00~12.00重量%、好ましくは5.00~10.00重量%で含んでよい。
【0037】
一方、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体及び非グラフト共重合体を含んでよい。
【0038】
前記グラフト共重合体は、屈折率が1.5230~1.5420、好ましくは1.5300~1.5400であってよい。前述した範囲を満たすと、前述したゴム質重合体と屈折率が一致するか類似して、グラフト共重合体の透明性がより改善され得る。
【0039】
前記グラフト共重合体と非グラフト共重合体は、屈折率の差が0.0100以下であってよく、0であることが好ましい。前述した条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物がより透明になることができる。
【0040】
前記グラフト共重合体と非グラフト共重合体との重量比は、40:60~80:20、好ましくは50:50~70:30であってよい。前述した範囲を満たすと、耐衝撃性が低下せず、加工性がより改善され得る。
【0041】
前記グラフト共重合体は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を含み、平均粒径が250~450nmであるゴム質重合体、前記ゴム質重合体にグラフトされた(メタ)アクリレート系単量体単位、及び前記ゴム質重合体にグラフトされた第2スチレン系単量体単位を含んでよい。
【0042】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物に含まれたゴム質重合体と前記グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体とは、同一のものであってよい。
【0043】
前記グラフト共重合体は、前記ゴム質重合体にグラフトされない(メタ)アクリレート系単量体単位と第2スチレン系単量体単位とも含んでよい。
【0044】
一方、前記グラフト共重合体の透明性は、前記ゴム質重合体と前記ゴム質重合体にグラフトされた単量体単位を含むシェルの屈折率により決定されてよい。また、シェルの屈折率は、単量体単位の混合比により調節されてよい。すなわち、ゴム質重合体とシェルの屈折率が類似していなければならず、一致することが好ましい。これにより、前記グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体の屈折率と前記ゴム質重合体にグラフトされた単量体単位の屈折率との差は、0.0100以下であってよく、0であることが好ましい。前述した条件を満たすと、熱可塑性樹脂組成物がより透明になることができる。
【0045】
前記グラフト共重合体は、前記ゴム質重合体を30.00~65.00重量、好ましくは35.00~60.00重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、耐衝撃性に優れ、グラフト共重合体の製造時にグラフティングが十分に行われ、グラフト共重合体に優れた透明性を具現することができる。
【0046】
前記ゴム質重合体は、第1スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位を10:90~35:65の重量比で含み、好ましくは15:85~30:70の重量比で含んでよい。前述した条件を満たすと、耐衝撃性を改善させ得、屈折率を高めることができるので、(メタ)アクリレート系単量体単位の使用量を減らすことができ、(メタ)アクリレート系単量体単位による耐化学性の低下及び製造費用の上昇を最小化することができる。しかし、第1スチレン系単量体単位の含量が前述した範囲未満であれば、耐化学性及びガンマ線に対する抵抗性が顕著に低下する。また、第1スチレン系単量体単位の含量が前述した範囲を超過すれば、透明性及び耐衝撃性が顕著に低下する。
【0047】
前記グラフト共重合体は、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を11.00~46.00重量%、好ましくは15.00~40.00重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、グラフト共重合体に優れた透明性を具現することができる。
【0048】
前記グラフト共重合体は、前記第2スチレン系単量体単位を10.00~36.00重量%、好ましくは15.00~30.00重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、グラフト共重合体に優れた加工性を具現することができる。
【0049】
前記グラフト共重合体は、耐化学性をより改善させるために、アクリロニトリル系単量体単位をさらに含んでよい。前記アクリロニトリル系単量体単位は、耐化学性を改善させながら黄変現象が最小限でしか発生しないようにするために、9.00重量%以下、好ましくは1.00~9.00重量%で含んでよい。
【0050】
前記グラフト共重合体は、重量平均分子量が70,000~250,000g/mol、好ましくは100,000~200,000g/molであってよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性及び加工性がより改善され得る。
【0051】
前記グラフト共重合体は、ゴム質重合体を前述した条件で製造するために、乳化重合を用いることが好ましい。
【0052】
前記非グラフト共重合体は、(メタ)アクリレート系単量体単位及び第2スチレン系単量体単位を含む非グラフト共重合体を含んでよい。
【0053】
前記非グラフト共重合体は、前記(メタ)アクリレート系単量体単位を45.00~70.00重量%、好ましくは50.00~65.00重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、透明性が改善した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0054】
前記非グラフト共重合体は、前記第2スチレン系単量体単位を30.00~55.00重量%、好ましくは35.00~50.00重量%で含んでよい。前述した条件を満たすと、加工性が改善した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0055】
前記非グラフト共重合体は、耐化学性をより改善させるために、アクリロニトリル系単量体単位をさらに含んでよい。前記アクリロニトリル系単量体単位は、耐化学性を改善させながら黄変現象が最小限でしか発生しないようにするために、15.00重量%以下、好ましくは5.00~15.00重量%で含んでよい。
【0056】
前記非グラフト共重合体は、重量平均分子量が140,000~250,000g/mol、好ましくは160,000~230,000g/molであってよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性及び加工性がより改善され得る。
【0057】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例
【0058】
製造例1:グラフト共重合体粉末A-1の製造
スチレン30重量%及び1,3-ブタジエン70重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が350nmであり、屈折率が1.5380であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0059】
メチルメタクリレート21.20重量部、スチレン20.80重量部、アクリロニトリル3.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.05重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0060】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス55.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0061】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5380であり、重量平均分子量が150,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-1を得た。
【0062】
製造例2:グラフト共重合体粉末A-2の製造
スチレン10重量%及び1,3-ブタジエン90重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5230であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0063】
メチルメタクリレート28.44重量部、スチレン14.56重量部、アクリロニトリル7.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.07重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.10重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0064】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0065】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.523であり、重量平均分子量が150,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-2を得た。
【0066】
製造例3:グラフト共重合体粉末A-3製造
スチレン15重量%及び1,3-ブタジエン85重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5268であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0067】
メチルメタクリレート26.58重量部、スチレン16.42重量部、アクリロニトリル7.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.05重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.10重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0068】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0069】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5268であり、重量平均分子量が170,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-3を得た。
【0070】
製造例4:グラフト共重合体粉末A-4の製造
スチレン23重量%及び1,3-ブタジエン77重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5330であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0071】
メチルメタクリレート24.90重量部、スチレン20.10重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.10重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.050重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.100重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0072】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部(固形分基準)が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0073】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5330であり、重量平均分子量が130,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-4を得た。
【0074】
製造例5:グラフト共重合体粉末A-5の製造
スチレン30重量%及び1,3-ブタジエン70重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5379であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0075】
メチルメタクリレート21.00重量部、スチレン22.00重量部、アクリロニトリル7.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.1重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0076】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0077】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5379であり、重量平均分子量が150,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-5を得た。
【0078】
製造例6:グラフト共重合体粉末A-6の製造
スチレン35重量%及び1,3-ブタジエン65重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5416であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0079】
メチルメタクリレート20.58重量部、スチレン24.42重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.03重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0080】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0081】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5416であり、重量平均分子量が190,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-6を得た。
【0082】
製造例7:グラフト共重合体粉末A-7の製造
スチレン6重量%及び1,3-ブタジエン94重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5200であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0083】
メチルメタクリレート31.37重量部、スチレン13.63重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.10重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0084】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0085】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.52であり、重量平均分子量が130,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-7を得た。
【0086】
製造例8:グラフト共重合体粉末A-8の製造
スチレン40重量%及び1,3-ブタジエン60重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5454であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0087】
メチルメタクリレート18.72重量部、スチレン26.28重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.10重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0088】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0089】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5454であり、重量平均分子量が130,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-8を得た。
【0090】
製造例9:グラフト共重合体粉末A-9の製造
1,3-ブタジエンを乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5160であるブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0091】
メチルメタクリレート24.90重量部、スチレン20.10重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.10重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0092】
前記ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0093】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5454であり、重量平均分子量が130,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-9を得た。グラフト共重合体粉末A-9は、ブタジエンゴム質重合体とこれにグラフトされた硬質共重合体との間の屈折率の差により不透明になるので、屈折率が測定されなかった。
【0094】
製造例10:グラフト共重合体粉末A-10の製造
スチレン23重量%及び1,3-ブタジエン77重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が100nmであり、屈折率が1.5330であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0095】
メチルメタクリレート24.90重量部、スチレン20.10重量部、アクリロニトリル5.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.10重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0096】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0097】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5330であり、重量平均分子量が100,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-10を得た。
【0098】
製造例11:グラフト共重合体粉末A-11の製造
スチレン30重量%及び1,3-ブタジエン70重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が350nmであり、屈折率が1.5380であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0099】
メチルメタクリレート21.20重量部、スチレン20.80重量部、アクリロニトリル3.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.20重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.3重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0100】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス55.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0101】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5380であり、重量平均分子量が80,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-11を得た。
【0102】
製造例12:グラフト共重合体粉末A-12の製造
スチレン10重量%及び1,3-ブタジエン90重量%からなる単量体混合物を乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5230であるスチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0103】
メチルメタクリレート33.00重量部、スチレン16.00重量部、アクリロニトリル1.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.15重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0104】
前記スチレン/ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0105】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5230であり、重量平均分子量が130,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-12を得た。
【0106】
製造例13:グラフト共重合体粉末A-13の製造
1,3-ブタジエンを乳化重合して、平均粒径が300nmであり、屈折率が1.5160であるブタジエンゴム質重合体ラテックスを製造した。
【0107】
メチルメタクリレート35.00重量部、スチレン12.00重量部、アクリロニトリル3.00重量部、イオン交換水100重量部、オレイン酸ナトリウム1.0重量部、t-ドデシルメルカプタン0.5重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第1鉄0.001重量部及びクメンヒドロペルオキシド0.2重量部を均一に混合して混合溶液を製造した。
【0108】
前記ブタジエンゴム質重合体ラテックス50.00重量部が存在する反応器を75℃に昇温した後、前記混合溶液を5時間連続投入して重合した。連続投入が終了した後、前記反応器を80℃に昇温して1時間熟成し、重合を終了させてグラフト共重合体ラテックスを得た。
【0109】
前記グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで凝集し、洗浄、脱水及び乾燥して、屈折率が1.5160であり、重量平均分子量が100,000g/molであるグラフト共重合体粉末A-13を得た。
【0110】
製造例14:非グラフト共重合体ペレットB-1の製造
反応器に、メチルメタクリレート44.10重量部、スチレン44.90重量部、アクリロニトリル11.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.05重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5380であり、重量平均分子量は200,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-1を製造した。
【0111】
製造例15:非グラフト共重合体ペレットB-2の製造
反応器に、メチルメタクリレート60.52重量部、スチレン30.48重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5230であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-2を製造した。
【0112】
製造例16:非グラフト共重合体ペレットB-3の製造
反応器に、メチルメタクリレート56.72重量部、スチレン34.28重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5268であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-3を製造した。
【0113】
製造例17:非グラフト共重合体ペレットB-4の製造
反応器に、メチルメタクリレート52.00重量部、スチレン39.00重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5315であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-4を製造した。
【0114】
製造例18:非グラフト共重合体ペレットB-5の製造
反応器に、メチルメタクリレート45.62重量部、スチレン45.38重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5379であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-5を製造した。
【0115】
製造例19:非グラフト共重合体ペレットB-6の製造
反応器に、メチルメタクリレート41.92重量部、スチレン49.08重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5416であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-6を製造した。
【0116】
製造例20:非グラフト共重合体ペレットB-7の製造
反応器に、メチルメタクリレート63.52重量部、スチレン27.48重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5200であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-7を製造した。
【0117】
製造例21:非グラフト共重合体ペレットB-8の製造
反応器に、メチルメタクリレート38.12重量部、スチレン52.88重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.06重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5454であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-8を製造した。
【0118】
製造例22:非グラフト共重合体ペレットB-9の製造
反応器に、メチルメタクリレート56.72重量部、スチレン34.28重量部、アクリロニトリル9.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.01重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5268であり、重量平均分子量は350,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-9を製造した。
【0119】
製造例23:非グラフト共重合体ペレットB-10の製造
反応器に、メチルメタクリレート44.10重量部、スチレン44.90重量部、アクリロニトリル11.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.3重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5380であり、重量平均分子量は90,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-10を製造した。
【0120】
製造例24:非グラフト共重合体ペレットB-11の製造
反応器に、メチルメタクリレート63.50重量部、スチレン31.50重量部、アクリロニトリル5.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.08重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5230であり、重量平均分子量は190,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-11を製造した。
【0121】
製造例25:非グラフト共重合体ペレットB-12の製造
反応器に、メチルメタクリレート70.40重量部、スチレン24.60重量部、アクリロニトリル5.00重量部、トルエン30重量部、n-オクチルメルカプタン0.1重量部を含む混合溶液を、平均重合時間が3時間になるように連続投入した。ここで、重合温度は148℃に維持した。前記反応器から連続排出された重合溶液を予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体及び溶媒を揮発させ、重合体の温度を210℃に維持させながら、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いて、屈折率が1.5160であり、重量平均分子量は150,000g/molである非グラフト共重合体ペレットB-12を製造した。
【0122】
実施例及び比較例
下記表1~表3に記載された含量でグラフト共重合体粉末と非グラフト共重合体ペレットとを均一に混合して、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0123】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物の物性を下記の方法で測定し、その結果を表1~表3に記載した。
【0124】
1)重量平均分子量(g/mol):熱可塑性樹脂組成物1gをアセトン50gに24時間攪拌しながら溶かした後、遠心分離機(商品名:SUPRA30K、製造社:Hanil Science Industrial)に投入し、16,000rpm、-10℃の条件下で4時間遠心分離して上澄液と沈殿物を分離し、上澄液を50℃の熱風乾燥機で12時間乾燥した。得た乾燥物を1重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶かし、1μmフィルターを介して濾過した後、ゲル透過クロマトグラフィーを介して標準ポリスチレン試料に対する相対値として測定した。
【0125】
一方、ゲル透過クロマトグラフィーの測定時、Agilent 1200 series systemを用い、測定条件は下記のとおりである。
【0126】
屈折率検出器(Refractive index detector(RI)):Agilent G1362 RID
RI温度:35℃
データ処理:Agilent ChemStation S/W
溶媒:テトラヒドロフラン
コラム温度:40℃
流速:0.3ml/分
サンプル濃度:2.0mg/ml
注入量:10μl
カラムモデル:1×PLgel 10um MiniMix-B(250×4.6mm)
+1×PLgel 10um MiniMix-B(250×4.6mm)
+1×PLgel 10um MiniMix-BGuard(50×4.6mm)
標準試料:ポリスチレン
【0127】
2)メチルメタクリレート単位/第2スチレン単位(MMA unit/STunit):Nicolet(登録商標) iS20 FTIR Spectrometer(モデル名、製造社:Thermo Scientific)を用いて、赤外線分光法で熱可塑性樹脂組成物内のメチルメタクリレート単位とゴム質重合体に含まれないスチレン単位との重量を導出した後、スチレン単位に対するメチルメタクリレート単位の重量比を算出した。
【0128】
実験例2
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物100重量部、滑剤0.3重量部及び酸化防止剤0.2重量部を均一に混合した後、シリンダー温度が220℃である二軸押出混練機を用いてペレットを製造した。前記ペレットの物性を下記の方法で測定し、その結果を表1~表3に記載した。
【0129】
1)流動指数(melt flow index、g/10分):ASTMD1238に基づいて220℃、10kgの条件下で測定した。
【0130】
実験例3
実験例2で製造したペレットを射出して試験片を製造し、下記の方法で物性を測定し、その結果を下記表1~表3に記載した。
【0131】
1)ヘイズ(Haze value、%):ASTM D1003に基づいて試験片(厚さ:1/8inch)の透明度を測定した。
【0132】
2)ノッチ付きアイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm、1/4inch):ASTM D256に基づいて23℃で測定した。
【0133】
3)耐化学性:治具歪み0.5%である治具に固定された試験片に70%イソプロピルアルコールをつけて10分間観察した。変化がない場合はOK、クラックが発生した場合はNGと記載した。
【0134】
4)ガンマ線の変色:3mm厚さの試験片のL、a、b値を、ASTM D2244に基づいて測定した。そして、3mm厚さの試験片にガンマ線を照射し、21日間保管した後、L、a、b値をASTM D2244に基づいて測定した。
【数1】
【0135】
前記式で、L、a及びbは、ガンマ線を照射した試験片を21日間保管した後、L、a及びbをCIE LAB色座標系で測定した値であり、L、a及びbは、ガンマ線を照射しない試験片のL、a及びbをCIE LAB色座標系で測定した値である。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
【表3】
【0139】
前記表1~表3を参照すれば、スチレン10~35重量%、1,3-ブタジエン65~90重量%を重合して製造したスチレン/ブタジエンゴム質重合体を用いた実施例1~実施例6は、加工性、透明性、耐衝撃性、耐化学性、及びガンマ線に対する抵抗性のいずれも優れた。しかし、スチレン6重量%と1,3-ブタジエン94重量%を重合して製造したスチレン/ブタジエンゴム質重合体を用いた比較例1は、実施例1~実施例6に対して耐化学性及びガンマ線に対する抵抗性が顕著に低下した。
【0140】
スチレン40重量%と1,3-ブタジエン60重量%を重合して製造したスチレン/ブタジエンゴム質重合体を用いた比較例2は、実施例1~実施例6に対して透明性及び耐衝撃性が顕著に低下した。
【0141】
一方、熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量が270,000g/molである比較例3は、重量平均分子量が高すぎて、射出加工時に成形されなかった。これにより物性評価ができなかった。
【0142】
平均粒径が300nmであるブタジエンゴム質重合体を含む比較例4は、透明性が顕著に低下した。
【0143】
平均粒径が100nmであるスチレン/ブタジエンゴム質重合体を用いる比較例5は、耐衝撃性が顕著に低下した。
【0144】
熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量が85,000g/molである比較例6及び比較例7は、耐化学性が顕著に低下した。
【0145】
第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が約2.04である比較例8は、透明性、耐化学性、及びガンマ線に対する抵抗性が顕著に低下した。
【0146】
第2スチレン系単量体単位に対する前記(メタ)アクリレート系単量体単位の重量比が約2.88である比較例9は、メチルメタクリレート単位を過量に含んで耐化学性が低下し、高価の原料であるメチルメタクリレートを過量に使用して製造費用が上昇した。また、ガンマ線に対する抵抗性が顕著に低下した。
【国際調査報告】