(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(54)【発明の名称】標本を検査する方法および荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/28 20060101AFI20221212BHJP
H01J 37/12 20060101ALI20221212BHJP
H01J 37/147 20060101ALI20221212BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/12
H01J37/147 B
H01L21/66 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523470
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2019078504
(87)【国際公開番号】W WO2021078352
(87)【国際公開日】2021-04-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504144253
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ イスラエル リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】507065751
【氏名又は名称】テクニシェ ユニヴェルシテイト デルフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クルート ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ナフタリ ロン
(72)【発明者】
【氏名】フロジエン ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】クック ベンヤミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バルダイ ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー ディーター
【テーマコード(参考)】
4M106
5C101
【Fターム(参考)】
4M106AA01
4M106AA09
4M106BA02
4M106DB05
4M106DB07
4M106DB16
4M106DJ17
5C101AA03
5C101BB03
5C101EE03
5C101EE14
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE26
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5C101EE42
5C101EE47
5C101EE61
5C101EE66
5C101EE67
5C101EE70
5C101FF02
5C101FF15
5C101GG15
5C101HH23
(57)【要約】
標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が記載される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置であって、
1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板と、
前記1次荷電粒子ビームまたは前記4つ以上の1次ビームレットのための1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、前記2つ以上の電極および前記多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、
前記4つ以上の1次ビームレットを4つ以上の信号ビームレットから分離するためのビーム分離ユニットと、
検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が前記4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、
前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、
3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置され、前記対物レンズユニットが、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させ、前記4つ以上の信号ビームレットを前記検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットと、
前記標本を支持するためのステージとを備える荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記開口距離が、200μm以上、特に400μm以上である、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記対物レンズユニットが、前記検出面上の前記4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整するために4つ以上の電極を備える、請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記4つ以上の信号ビームレットの前記スポットサイズが、検出距離、特に前記開口距離に類似した検出距離に適合される、請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記ビーム分離ユニットが、
第1の静電偏向器と、
第2の静電偏向器と、
前記第1の静電偏向器と前記第2の静電偏向器との間に設けられた磁気偏向器とを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記第1の静電偏向器、前記第2の静電偏向器、および前記磁気偏向器が、磁気回路を形成する、請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記第1の静電偏向器および前記第2の静電偏向器が各々、前記4つ以上の1次ビームレットの行間に少なくとも2つの細長い電極を含む、請求項5または6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記多開孔レンズ板の前記複数の開孔が、開孔アレイを形成し、前記開孔アレイ内の開孔の数が、前記標本に衝突する1次ビームレットの数より大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記多開孔レンズ板の前記複数の開孔が、正方形の形状または本質的に正方形の形状を有し、前記本質的に正方形の形状が、丸い角を有する正方形の形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記多開孔レンズ板を加熱するためのヒータ
をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記多開孔レンズ板と前記コリメータとの間に設けられた位置合わせシステム
をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記位置合わせシステムが、前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させるために少なくとも1つの四重極を含む、請求項11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記多開孔レンズ板と前記対物レンズユニットとの間に1つまたは複数の開孔アレイをさらに備え、前記1つまたは複数の開孔アレイが各々、前記4つ以上の1次ビームレットのための複数の開孔を有する、
請求項12に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
前記コリメータが、前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの第1の開孔アレイと、前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの第2の開孔アレイとの間に設けられる、請求項13に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの少なくとも1つの開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面に取り付けられた流速計
をさらに備える、請求項13または14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項16】
前記位置合わせシステムが、前記多開孔レンズ板と前記少なくとも1つの開孔アレイとの間に設けられる、請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項17】
前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの少なくとも1つのための開孔アレイホルダをさらに備え、前記開孔アレイホルダが、第1の真空区画を第2の真空区画から分離する、
請求項13または14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項18】
前記コリメータが、
1行の前記4つ以上の1次ビームレットを第1の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第1の細長い電極と、1行の前記4つ以上の1次ビームレットを前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第2の細長い電極とを備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項19】
前記コリメータが、前記コリメータから互いに平行に現れるように、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの前記第1の1次ビームレット、前記第2の1次ビームレット、前記第3の1次ビームレット、および前記第4の1次ビームレットを偏向させるように構成される、請求項1~18のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記対物レンズユニットが、
前記3つ以上の電極のうちの2つの電極間に設けられた1つまたは複数の絶縁板を備え、前記1つまたは複数の絶縁板が、前記4つ以上の1次ビームレットを前記絶縁板の1つの開口部に通すための1つの開口部を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記1つまたは複数の絶縁板が、標本の方へ進む前記1次ビームレットを減速させるための減速場を可能にするように構成され、最後から2つ目の電極と最後の電極との間の減速場が、少なくとも5kV/mmである、請求項20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
前記対物レンズユニットの前記3つ以上の電極のうちの少なくとも1つが、1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極、特に1つの1次ビームレットにつき8つ以上の偏向電極を備える、請求項1~21のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項23】
前記4つ以上の偏向電極の各々が、前記偏向電極の個々のバイアスを可能にするように、絶縁ワイアによって接続される、請求項22に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項24】
前記絶縁ワイアが、前記4つ以上の1次ビームレットによって形成されたアレイの側でコネクタに接続される、請求項23に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項25】
前記標本を支持するための前記ステージが、
前記標本をバイアスすることを可能にするように構成された絶縁層を備える、請求項1~24のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の第1の荷電粒子ビーム装置と、
1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査するための第2の荷電粒子ビーム装置とを備え、前記第2の荷電粒子ビーム装置が、
1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板と、
前記1次荷電粒子ビームまたは前記4つ以上の1次ビームレットのための1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、前記2つ以上の電極および前記多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、
前記4つ以上の1次ビームレットを4つ以上の信号ビームレットから分離するためのビーム分離ユニットと、
検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が前記4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、
前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、
3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置され、前記対物レンズユニットが、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させ、前記4つ以上の信号ビームレットを前記検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットとを備える、
荷電粒子ビーム装置アセンブリ。
【請求項27】
前記第1の荷電粒子ビーム装置および前記第2の荷電粒子ビーム装置が、前記標本の表面の異なる部分を同時に照射または検査するように、前記標本の上に互いに隣接して配置される、請求項26に記載の荷電粒子ビーム装置アセンブリ。
【請求項28】
4つ以上の1次ビームレットによって標本を検査する方法であって、
荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、
多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、前記4つ以上の1次ビームレットを生成することと、
コリメータによって、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、
走査偏向器アセンブリによって、前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
対物レンズユニットによって、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させて、4つ以上の信号ビームレットを生成することであり、前記対物レンズユニットの各電極が、前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置される、生成することと、
前記4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させることであり、1つまたは複数の検出面が、前記4つ以上の1次ビームレットのそれぞれの1次ビームレット間に配置される、集束させることと、
ビーム分離ユニットによって、前記4つ以上の信号ビームレットを前記4つ以上の1次ビームレットから分離して、前記4つ以上の信号ビームレットを前記検出面へ案内することとを含む方法。
【請求項29】
前記開口距離が、200μm以上、特に400μm以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検出面内の前記4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整することをさらに含み、特に検出距離が、前記検出面上の前記4つ以上の信号ビームレットの前記スポットサイズより大きい、
請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
ヒータによって、前記多開孔レンズ板を加熱することをさらに含む、
請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
測定される電流を最小にし、または信号ビームレットからの信号を最大にするように、コリメータの上流で位置合わせシステムを制御すること
をさらに含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの前記第1の1次ビームレット、前記第2の1次ビームレット、前記第3の1次ビームレット、および前記第4の1次ビームレットを互いに対して平行になるように偏向させること
をさらに含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記対物レンズユニットが、3つ以上の電極を備え、前記方法が、
前記3つ以上の電極のうちの最後から2つ目の電極と最後の電極との間の前記4つ以上の1次ビームレットを減速させることをさらに含み、偏向場が少なくとも5kV/mmである、請求項28~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極によって、前記対物レンズユニット内の前記1次ビームレットを偏向および/または補正すること
をさらに含む、請求項28~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記標本を支持するステージ上の前記標本をバイアスすることをさらに含み、前記ステージが絶縁層を有する、
請求項28~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
抽出器によって、前記1次荷電粒子ビームを前記荷電粒子ビーム源から抽出することと、
抽出器の後に、前記1次荷電粒子ビームを加速させることと、
前記2つ以上の電極によって、前記1次荷電粒子ビームを前記多開孔レンズ板の方へ減速させることとをさらに含み、前記多開孔レンズ板の上流に位置する前記2つ以上の電極のうちの最後の電極と前記多開孔レンズ板との間の第1の静電界が、前記2つ以上の電極のうちの最後から2つ目の電極と最後の電極との間の第2の静電界より小さい、
請求項28~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記減速させることが、前記多開孔レンズ板および前記2つ以上の電極によって形成されるレンズのCsおよびCcが最小になり、前記コリメータにおける前記4つ以上の1次ビームレットのピッチが前記コリメータのコリメータピッチに整合されるように提供される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記減速させることが、前記コリメータにおける前記開孔の像面湾曲が0になるように提供される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
4つ以上の1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法であって、
荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、
多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、前記4つ以上の1次ビームレットを生成することと、
コリメータによって、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、
開孔アレイ内の開口部にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するように、前記コリメータの上流で位置合わせシステムを制御することと、
前記開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面で電流を測定することとを含む方法。
【請求項41】
前記位置合わせシステムが、前記1つまたは複数の導電面における電流を最小にするように制御される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記1つまたは複数の導電面が、前記開孔アレイ内の前記開口部間に設けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記位置合わせシステムが、信号ビームレットからの信号を増大させるように制御される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記位置合わせシステムが、前記1つまたは複数の導電面における電流を最大にするように制御される、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記1つまたは複数の導電面が、前記開孔アレイ内の前記開口部によって形成された開口部アレイの外側に設けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記位置合わせシステムを制御することが、
a)前記開孔板の平面内で少なくとも第1の方向において、偏向場、特に1つの偏向場によって前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
b)前記開孔板の前記平面内で前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
c)前記開孔板の平面内で少なくとも第3の方向において、四重極場によって前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、
d)前記開孔板の平面内で少なくとも第4の方向において、四重極場によって前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、
e)前記開孔板の前記平面内で前記4つ以上の1次ビームレットによって形成されたアレイを回転させることとを含む制御手順のうちの1つまたは複数を含む、請求項40~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
制御手順a)および/またはb)、制御手順c)および/またはd)、ならびに制御手順e)が順次実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
制御手順a)および/またはb)、制御手順c)および/またはd)、ならびに制御手順e)が反復的に順次実行される、請求項46または47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、たとえば検査システムの応用例、試験システムの応用例、欠陥レビューまたはクリティカルディメンショニングの応用例などのための荷電粒子ビーム装置に関する。実施形態はまた、荷電粒子ビーム装置の動作方法に関する。より詳細には、実施形態は、汎用(生物学的構造の撮像など)および/または高スループットEBI(電子ビーム検査)のためのマルチビームシステムである荷電粒子ビーム装置に関する。実施形態は、マルチビーム荷電粒子カラムを使用してサンプルの表面を検査する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の半導体技術は、集積回路の生産中に使用される様々なプロセスの正確な制御に大きく依存している。それに応じて、ウエハは、問題の場所を可能な限り早く突き止めるために、繰返し検査される。さらに、ウエハの処理中には、マスクがそれぞれのパターンを正確に画定することを確実にするために、マスクまたはレチクルも実際の使用前に検査される。欠陥に関するウエハまたはマスクの検査は、たとえば300mmのウエハの生産に対して、ウエハまたはマスク領域全体を調査することを含む。特に、ウエハの製造中のウエハの検査は、生産スループットが検査プロセスによって制限されないような短い時間内でウエハ領域全体を調査することを含む。
【0003】
ウエハを検査するには、走査電子顕微鏡(SEM)が使用されてきた。たとえば単一の精巧に集束された電子ビームを使用して、ウエハの表面が走査される。電子ビームがウエハに当たると、2次電子および/または後方散乱電子、すなわち信号電子が生成されて測定される。ウエハ上のある箇所にパターン欠陥があれば、2次電子の強度信号をたとえばパターン上の同じ場所に対応する基準信号と比較することによって検出される。しかし、より高い分解能がますます求められているため、ウエハの表面全体を走査するには長い時間がかかる。それに応じて、従来の(単一ビーム)走査電子顕微鏡(SEM)手法は個々のスループットを提供しないため、ウエハ検査のためにこの手法を使用することは困難である。
【0004】
半導体技術におけるウエハおよびマスクの欠陥検査は、ウエハもしくはマスク全体への適用またはホットスポット検査の両方をカバーする高い分解能および速い検査ツールを必要とする。光学ツールの分解能は制限されており、縮小しつつある欠陥サイズを取り扱うことができないため、電子ビーム検査はさらに重要性を増している。特に、20nm以下のノードの場合、すべての関心欠陥を検出するために、電子ビームに基づく撮像ツールの高分解能の可能性が求められている。
【0005】
上記に照らして、当技術分野の問題の少なくともいくつかを克服する、荷電粒子マルチビーム装置、および荷電粒子のビームレットのアレイによって標本を検査する方法が提供される。
【発明の概要】
【0006】
上記に照らして、荷電粒子ビーム装置、荷電粒子ビーム装置アセンブリ、荷電粒子のビームレットのアレイによって標本を検査する方法、および4つ以上の1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法が提供される。さらなる態様、利点、および特徴は、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかになる。
【0007】
一実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板と、1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、4つ以上の1次ビームレットを4つ以上の信号ビームレットから分離するためのビーム分離ユニットと、検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、開口部が開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットが、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させ、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットと、標本を支持するためのステージとを含む。
【0008】
一実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置アセンブリが提供される。荷電粒子ビーム装置アセンブリは、本明細書に記載する実施形態のいずれかによる第1の荷電粒子ビーム装置と、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査するための第2の荷電粒子ビーム装置とを含む。第2の荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板、1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、4つ以上の1次ビームレットを4つ以上の信号ビームレットから分離するためのビーム分離ユニットと、検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、開口部が開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットが、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させ、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットとを含む。
【0009】
一実施形態によれば、4つ以上の1次ビームレットによって標本を検査する方法が提供される。この方法は、荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、4つ以上の1次ビームレットを生成することと、コリメータによって、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、走査偏向器アセンブリによって、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査することと、対物レンズユニットによって、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させて、4つ以上の信号ビームレットを生成することであり、対物レンズユニットの各電極が、4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、開口部が開口距離をあけて隔置される、生成することと、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させることであり、1つまたは複数の検出面が、4つ以上の1次ビームレットのそれぞれの1次ビームレット間に配置される、集束させることと、ビーム分離ユニットによって、4つ以上の信号ビームレットを4つ以上の1次ビームレットから分離して、4つ以上の信号ビームレットを検出面へ案内することとを含む。
【0010】
一実施形態によれば、4つ以上の1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法が提供される。この方法は、荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、4つ以上の1次ビームレットを生成することと、コリメータによって、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、開孔アレイ内の開口部にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するように、コリメータの上流で位置合わせシステムを制御することと、開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面で電流を測定することとを含む。
【0011】
実施形態はまた、開示する方法を実施する装置を対象とし、各々記載する方法特徴を実行するための装置部分を含む。これらの方法特徴は、ハードウェア構成要素によって、適当なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータによって、これら2つの任意の組合せによって、または任意の他の方法で実行することができる。さらに、実施形態はまた、記載する装置が動作する方法を対象とする。実施形態は、この装置のすべての機能を実施するための方法特徴を含む。
【0012】
上述した特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上記で簡単に要約した内容のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は実施形態に関し、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書に記載する実施形態による標本検査のための荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図2】本明細書に記載する実施形態による標本検査のための別の荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図3A-3B】開孔レンズアレイが特に減速モードで提供される、本開示の実施形態によるマルチビーム生成器の開孔レンズアレイの概略図である。
【
図4A】開孔レンズアレイが特に加速モードで提供される、本開示の実施形態によるマルチビーム生成器の開孔レンズアレイの概略図である。
【
図4B】本開示の実施形態によるマルチビーム生成器の開孔レンズアレイの概略図である。
【
図5A-5B】本開示の実施形態による多開孔レンズ板(開孔レンズアレイ)の概略図である。
【
図6A-6B】本開示の実施形態による多開孔レンズ板の開孔の概略図である。
【
図7A】本開示の実施形態によるコリメータならびに開孔アレイおよび/または位置合わせシステムなどの付随する構成要素の概略図である。
【
図7B-7C】本開示の実施形態による位置合わせシステムの概略図である。
【
図8A-8B】本明細書に記載する実施形態によるコリメータの偏向器アレイの概略側面図である。
【
図9】本明細書に記載する実施形態によるコリメータの偏向器アレイの概略上面図である。
【
図10】本明細書に記載する実施形態によるコリメータの偏向器アレイ、たとえば
図9に示す偏向器アレイの概略側面図である。
【
図11】本開示の実施形態による荷電粒子ビーム装置の概略図である。
【
図12】検出ユニットおよびビーム分離ユニットが描写されている、本開示の実施形態による荷電粒子ビーム装置の一部分の概略図である。
【
図13】本開示の実施形態によるビーム分離ユニットの概略図である。
【
図14A-14B】本開示の実施形態によるビーム分離器の磁気偏向器のそれぞれ概略上面図および概略側面図である。
【
図15】本開示の実施形態によるビーム分離ユニットの概略図である。
【
図16A-16C】本開示の実施形態によるさらなるビーム分離ユニットの概略図である。
【
図17】検出ユニットが描写されている、本開示の実施形態による荷電粒子ビーム装置の一部分の概略図である。
【
図19】本開示の実施形態によるさらなる検出ユニットの概略図である。
【
図20A-20D】電極の修正例が描写されている、本明細書に記載する実施形態による対物レンズユニットの概略図である。
【
図21】本明細書に記載する実施形態による荷電粒子ビーム装置のためのステージの概略図である。
【
図22】荷電粒子ビーム装置のカラム内の複数の1次ビームレットによって標本を検査する方法を示す流れ図である。
【
図23】本開示による2つ以上の荷電粒子ビーム装置を組み合わせる荷電粒子ビーム装置アセンブリの概略図である。
【
図24A-24B】本明細書に記載する実施形態による電流測定のための導電面を有する開孔アレイの概略図である。
【
図25】本開示の実施形態による1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に様々な実施形態を詳細に参照する。実施形態の1つまたは複数の例は、これらの図に示されている。以下の図面の説明の範囲内で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。個々の実施形態に関する違いについて説明する。各例は、説明のために提供されており、限定を意味するものではない。さらに、一実施形態の一部として例示または説明する特徴を、他の実施形態でまたは他の実施形態とともに使用して、さらなる実施形態を得ることもできる。説明は、修正例および変形例を含むことを意図したものである。
【0015】
本出願の保護範囲を限定することなく、以下、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素を例示的に、荷電粒子ビーム装置と呼び、これには、1次電子ビーム、および電子などの2次または後方散乱粒子の検出が含まれる。本明細書に記載するように、検出に関する議論および説明は例示的に、走査電子顕微鏡内の電子に関して説明される。様々な異なる機器内の装置によって、他のタイプの荷電粒子、たとえば陽イオンを放出および/または検出することができる。実施形態は、たとえば電子の1次ビーム、1次ビームレット、および1つまたは複数の信号ビームに関する。1次ビーム、1次ビームレット、および/または1つまたは複数の信号ビームは、他の荷電粒子によって電子として提供することもできる。さらに、1つまたは複数の信号ビームは、上述したように、微粒子などの他の信号を含むことができる。
【0016】
他の実施形態と組み合わせることができる本明細書の実施形態によれば、信号(荷電粒子)ビームまたは信号(荷電粒子)ビームレットを、2次粒子、すなわち2次および/または後方散乱電子のビームと呼ぶ。信号ビームまたは2次ビームは、1次ビームもしくは1次ビームレットが標本に衝突すること、または1次ビームもしくは1次ビームレットが標本から後方散乱することによって生成される。1次荷電粒子ビームまたは1次荷電粒子ビームレットは、粒子ビーム源によって生成され、検査または撮像されるべき標本上に案内および偏向される。
【0017】
本明細書で参照する「標本」または「サンプル」は、それだけに限定されるものではないが、ウエハ、半導体ウエハ、半導体加工物、フォトリソグラフィマスク、およびメモリディスクなどの他の加工物を含む。実施形態は、材料が堆積されたまたは構造化された任意の加工物に適用することができる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、装置および方法は、電子ビーム検査、クリティカルディメンショニングの応用例、および欠陥レビューの応用例のために構成または適用される。
【0018】
本開示の実施形態は、
図1に例示的に示すように、荷電粒子ビーム装置100を提供する。荷電粒子ビーム装置100は、マルチビーム生成器を含む。マルチビーム生成器は、荷電粒子ビーム源110、2つ以上の電極、および開孔レンズアレイを含むことができる。荷電粒子ビーム源110は、1次荷電粒子ビーム、たとえば電子ビームを放出する粒子ビームエミッタ111を含む。本明細書に記載する実施形態によれば、マルチビーム生成器は、1次荷電粒子ビームレットのアレイを生成するように構成される。荷電粒子ビーム源110は、1次ビームを放出する。開孔レンズアレイまたは多開孔レンズ板122は、1次ビームから1次粒子ビームレットを生成する。1つまたは複数の電極および多開孔レンズ板は、静電レンズの電極として動作することができる。それに応じて、1つまたは複数の電極は、レンズ電極とすることができる。特に、1つまたは複数の電極は、1次ビームのための開口部を含むことができる。多開孔レンズ板は、1次ビームレットを生成するための開口部を含む。1つまたは複数の電極、すなわちビームレットおよび多開孔レンズ板に共通の電極は、特にこれらのビームレットが多開孔レンズ板内の開口部または開孔に対応する個々のレンズによって影響されるかのようにともに作用する。
【0019】
開孔レンズアレイによって生成されたビームレットは、コリメータ130によってコリメートされる。たとえば、コリメータは、
図1に示す偏向器アレイおよびレンズのうちの1つを含むことができる。コリメートされたビームレットは、本質的に平行に、かつ/または対物レンズユニット170の光軸に沿って、サンプルまたは標本80上へ進むことができる。1つまたは複数のさらなる開孔アレイ140を設けることができる。たとえば、コリメータ130の下流に開孔アレイを設けることができる。
【0020】
ビーム分離ユニット160は、1つまたは複数の信号ビームレット、たとえば1次ビームレットに対応する信号ビームレットから、1次ビームレットを分離する。信号ビームレットは、検出ユニット150によって検出することができる。一例として、いくつかの検出面152が
図1に示されている。本明細書に記載する実施形態によれば、1つの信号ビームレットにつき1つの検出面を設けることができ、または1行の信号ビームレットにつき1つの検出面を設けることができる。
【0021】
対物レンズユニット170は、孔または開口部のアレイを有する複数の電極を含む。複数の電極は、複数の電極の対応する孔および開口部を通過するビームレットに対する静電レンズとして作用することができる。対物レンズユニットは、減速レンズとして提供することができる。複数の電極は、標本に衝突する前に1次ビームレットを減速させる電位に設定することができる。
【0022】
対物レンズユニット170は、ビームレットを標本80に、特に個々に集束させる。標本80は、ステージ180、たとえばドライバを有するウエハホルダ上に提供することができる。たとえば、ドライバは、標本またはサンプルをx、y、およびz方向に動かすことができる。
【0023】
図2は、荷電粒子ビーム装置100の別の例示的な実施形態を示す。
図2に示す点線のボックスは、荷電粒子ビーム装置の異なる部分を示す。たとえば、ボックス210は、荷電粒子ビーム源110を指す。ボックス220は、2つ以上の電極および開孔レンズアレイの組合せを指す。ボックス230は、コリメータ130を指す。ボックス250は、ビーム分離ユニット160および検出ユニット150を指す。ボックス270は、対物レンズユニット170を指す。ボックス280は、ステージ180を指す。態様、特徴、詳細、および構成要素について、それぞれのボックスを参照しながら、以下でより詳細に説明する。本開示の実施形態によれば、より詳細な説明の特徴、態様、詳細、構成要素、修正例、および変形例は、互いに組み合わせることができる。
【0024】
図2に関して、コリメータ130は、本明細書に記載する偏向器アレイ132ならびに本明細書に記載するレンズ232を含むことができることにさらに留意されたい。さらに、コリメータ130またはボックス230に付随する構成要素、すなわちコリメータに近接または隣接する構成要素は、以下でより詳細に説明する位置合わせ偏向器システム234を含むことができる。さらに、荷電粒子ビーム装置100は、ボックス270に付随することができる走査偏向器アセンブリ271をさらに含むことができる。たとえば、走査偏向器アセンブリ271は、標本80にわたってビームレットを走査し、対物レンズユニット170内にまたは対物レンズユニット170に近接して位置することができる。
【0025】
以下、マルチビーム生成器について、
図3A~
図6Cに関して説明する。マルチビーム生成器は、荷電粒子ビーム源110、2つ以上の電極、および開孔レンズアレイを含む。
【0026】
荷電粒子ビーム源(ボックス210内)
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム源110(ボックス210も参照)は、エミッタ111を含むことができる。特に、単一のエミッタ、たとえば高輝度エミッタを設けることができる。エミッタは、ショットキー型、または冷電界エミッタ(CFE)などの電界エミッタ型とすることができる。
【0027】
ショットキーまたはTFEエミッタは現在、最大2・108Am-2(SR)-1V-1の測定された換算輝度で利用可能であり、CFEエミッタは、最大5・109Am-2(SR)-1V-1の測定された換算輝度を有する。たとえば、少なくとも5・107Am-2(SR)-1V-1を有する荷電粒子ビームであることが有益である。本開示の実施形態によれば、高輝度のエミッタが提供される。それに応じて、各ビームレットに対して高いスループットを可能にする信号対雑音比が提供されるように、標本上の各ビームレットに対して有益な電流を提供することができる。たとえば、本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、エミッタは、上述したように、1×108Am-2(SR)-1V-1~5×108Am-2(SR)-1V-1の輝度、またはさらに高い輝度を有することができる。
【0028】
本明細書に記載する荷電粒子ビームエミッタは、冷電界エミッタ(CFE)、ショットキーエミッタ、TFEまたは別の高電流高輝度の荷電粒子ビーム源(電子ビーム源など)とすることができる。高電流は、100mradで5μA以上、たとえば最大5mA、たとえば100mradで30μA~100mradで1mA、たとえば100mradで約300μAであると考えられる。いくつかの実装例によれば、電流は、特に線形または長方形のアレイの場合、本質的に均一に分布され、たとえば偏差は±10%である。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1次荷電粒子ビーム源または1次荷電粒子ビームレット源は、2nm~100nmの直径を有することができる。
【0029】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、大きいビーム電流を提供することが可能なTFEまたは別の高換算輝度源、たとえば電子ビーム源は、最大10μA~100μA、たとえば30μAを提供するために、放出角度が増大させられたとき、輝度が最大値の20%を超えて低下しないビーム源である。
【0030】
いくつかの実施形態では、エミッタ11は、発散する電子ビームを放出するために、単一の熱電界放出エミッタ、好ましくはショットキー型のエミッタとすることができる。1次ビーム、すなわち単一のエミッタの単一の1次ビームを、多開孔レンズ板122の方へ放出することができる。複数の1次ビームレットを生じさせるために、複数の開孔が配置され、1つの開孔につき1つの1次ビームレットを生じさせる。
【0031】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、荷電粒子ビーム源110は、抑制器312および抽出器314のうちの少なくとも1つを含むことができる。電子を1次荷電粒子ビームの荷電粒子と見なすと、抑制器312は、エミッタ111と比較して負の電位とすることができる。電子を1次荷電粒子ビームの荷電粒子と見なすと、抽出器は、エミッタ111と比較して正の電位とすることができる。本明細書に記載する実施形態によれば、抑制器は、エミッタから放出される電流および1次ビームのプロファイルを特に制御することができる。抽出器は、エミッタ111の先端からの電子などの荷電粒子を抽出することができる。それに応じて、たとえば電界放出のための静電界を、抽出器によって提供することができる。
【0032】
図3Aは、荷電粒子ビーム装置のうちエミッタ111、抑制器312、および抽出器314を有する部分の概略図を示す。それに応じて、荷電粒子ビーム源110(ボックス210も参照)が提供される。
【0033】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、抽出器として働くように、第1の電極324を設けることができる。
図3Bに示す第1の電極324は、特にエミッタ111の先端の電位に対して、先端から電子が放出される電位に設定することができる。鋭く尖っているテープの小さい湾曲、およびたとえば数キロボルトの電位差のため、高い電界によって電界放出が生じることができる。ショットキー型のエミッタの場合、高い電界によって熱電子放出が促進される。
【0034】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、エミッタ111の先端と抽出器、たとえば
図3Aに示す抽出器314または
図3Bに示す電極324との間の電位差は、5keV以上、たとえば10keV以上とすることができる。抽出器または2つ以上の電極のうちの第1の電極は、エミッタから荷電粒子を抽出する。さらに、荷電粒子は、カラム内で高い電位まで加速される。いくつかの実施形態によれば、カラム内で荷電粒子、たとえば電子を加速させるために、さらなる電極を設けることができる。カラム内の荷電粒子エネルギーは、8keV以上、特に少なくとも15keV以上とすることができる。
【0035】
共通の電極および開孔レンズアレイ(ボックス220内)
マルチビーム生成器は、2つ以上の電極および開孔レンズアレイを含む。
図3Aは、4つの電極124と、開孔レンズアレイ、すなわち多開孔レンズ板122とを示す。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、2~6つの電極、特に静電電極と、多開孔レンズ板とを設けることができる。多開孔レンズ板は、複数の開孔を含む。開孔レンズアレイ(ALA)または多開孔板は、1つの開孔につき1つの1次ビームレットを生成する。
【0036】
開孔レンズアレイは、荷電粒子ビーム源110の下流に位置し、開孔アレイは、発散する1次荷電粒子ビームを複数の1次荷電粒子ビームレットに分割する。加えて、電極および多開孔レンズ板によってビームレットのために生成されるレンズは、
図3Aに平面222によって示されている平面内に、個々の各1次荷電粒子ビームレットを集束させる。平面222は、多開孔レンズ板の下流に位置し、すなわち多開孔レンズ板122は、平面222とエミッタ111との間に位置する。
【0037】
それに応じて、荷電粒子ビーム源およびALAは、サンプルの表面の方へ誘導される複数の1次荷電粒子ビームレットを生じさせるためのマルチビーム生成器を構成する。開孔レンズアレイ、すなわち多開孔レンズ板は、2つ以上の電極124と相互作用する。2つ以上の電極および開孔レンズ板は、それぞれ1次ビームのための静電レンズ電界を形成するように、または1次ビームレットを生成するようにバイアスされる。すなわち、2つ以上の電極および開孔板は、ビームレットに対応する複数の仮想ビーム源を生成する。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、多開孔レンズ板122は、たとえば
図3Aに示すように、2つ以上の電極124の下流に設けることができる。言い換えれば、2つ以上の電極124は、多開孔レンズ板122とそれぞれ荷電粒子ビーム源および/またはエミッタ111との間に設けられる。2つ以上の電極は、減速モードで動作する。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、2つ以上の電極124は、多開孔レンズ板122の下流に位置することができる。言い換えれば、多開孔レンズ板122は、2つ以上の電極124とそれぞれ荷電粒子ビーム源および/またはエミッタとの間に位置することができる。それに応じて、2つ以上の電極は、加速モードで動作する。これを、たとえば
図4Aに示す。さらなる実施形態によれば、
図4Bに例示的に示すように、2つ以上の電極124を設けることができる。多開孔レンズ板は、2つ以上の電極124の2つの電極間に設けることができる。本開示の実施形態によれば、2つ以上の電極124は、1次荷電粒子ビームが通過することができる開孔開口部を有することができる。たとえば、2つ以上の電極の各々が、1次荷電粒子ビームが通過することができる1つの開口部を有することができ、または多開孔レンズ板の下流に位置する電極に対して、2つ以上の電極の各々が、1次ビームレットが通過することができる1つの開口部を有することができる。
【0039】
図3Bは、本開示の他の実施形態と組み合わせることができる開孔アレイのさらなる修正例を示す。多開孔レンズ板122のためのヒータが設けられる。ヒータは、電源322を含むことができる。たとえば、電源は、多開孔レンズ板122に設けられたヒータのための電流を提供することができる。たとえば、加熱要素を多開孔レンズ板に取り付けることができ、または多開孔レンズ板内に埋め込むことができる。多開孔レンズ板を加熱することで、汚染を除去することが可能になる。多開孔レンズ板は、荷電粒子ビーム、すなわち1次ビームの一部分を阻止する。さらに、多開孔レンズ板の開孔は、ビームレットを形成するためのビーム制限開孔を提供することができる。それに応じて、開孔の汚染が、ビームレット形成を劣化させることがある。それに応じて、たとえば加熱によって汚染を除去することで、改善された荷電粒子ビーム装置を提供し、かつ/または保守の必要を低減させることができる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。さらに、多開孔レンズ板を加熱するためのヒータが設けられる。多開孔レンズ板を加熱することで、特に多開孔レンズ板のビーム制限開孔のために、汚染を防止および/または除去し、したがって保守を低減させることが可能になる。
【0041】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、多開孔レンズ板122と相互作用する少なくとも2つの電極124と、少なくとも1つの抽出器とが設けられる。電極124内のそれぞれの開口部は、サイズ、すなわち直径を変動させることができる。さらに、抽出器、2つ以上の電極、および多開孔レンズ板の電位を独立して制御することができる。電極間の距離、開口部のサイズ、および電位を適合させることで、コリメータにおける1次ビームレットの収差および1次ビームレットのピッチを制御することが可能になる。いくつかの実施形態によれば、距離および開口部のサイズは、製造後に設計され、判定および設計されることに留意されたい。それに応じて、特有の設計に対して、電位は動作中に変動させることができ、他のパラメータはたとえば動作中に変動させることができない。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、抽出器と開孔板との間の2つの電極だけではピッチまたは像面湾曲を制御することができないという欠点は、3つ以上の電極を設けることによって克服することができる。それに応じて、3つ以上の電極を有することで、ビームレットのピッチをコリメータのピッチに、すなわち
図1に示すコリメータ130内の開口部に整合させることが可能になる。
【0042】
たとえば、像面湾曲補正は、複数の1次ビームレットの焦点が、荷電粒子ビーム装置の光軸に直交する平面またはコリメータに平行な平面、たとえば
図3Aに示す平面222内に位置するように提供することができる。
【0043】
標本を照射または検査するいくつかの実施形態によれば、以下の動作を提供することができる。1次荷電粒子ビームは、抽出器によって荷電粒子ビーム源から抽出される。1次荷電粒子ビームは、抽出器後に加速させられる。1次荷電粒子ビームは、2つ以上の電極によって多開孔レンズ板の方へ減速させられる。たとえば、多開孔レンズ板の上流に位置する2つ以上の電極のうちの最後の電極と多開孔レンズ板との間の第1の静電界は、2つ以上の電極のうちの最後から2つ目の電極と最後の電極との間の第2の静電界より小さい。上記に照らして、特に加えて2つ以上の電極124の適当な直径を提供することによって、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって形成されるレンズのCsおよびCcが最小になり、コリメータにおける4つ以上の1次ビームレットのピッチがコリメータのコリメータピッチに整合するように、減速および任意選択で加速を提供することができる。さらに加えて、コリメータにおける像面湾曲がゼロになるように、減速および任意選択で加速度を提供することができる。Ccはレンズの色収差係数であり、Csはレンズの球面収差係数である。
【0044】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、抽出器314と、3つ以上の電極124、たとえば5つの電極と、多開孔レンズ板122とを設けることができる。たとえば、多開孔レンズ板122の上流に4つの電極124を設けることができ、多開孔レンズ板122の下流に1つの電極124を設けることができる。3つ以上の電極124を設けることで、1次ビームレット制御において少なくとも追加の1自由度が提供される。それに応じて、個々の各1次荷電粒子ビームレットが集束される平面222(
図3A参照)が、カラムの長さに沿って動くことができる。たとえば、1次ビームレットの焦点(たとえば
図3Aの平面22参照)を、コリメータの下流に位置するように適合させることができる。
【0045】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、1次ビームレットの焦点を動かすことで、標本上のビーム源の倍率を制御することが可能になる。
【0046】
開孔レンズアレイは、1つのビームレットにつき少なくとも1つの開孔開口部を含む。開孔開口部は、線形、長方形、正方形、リング、または任意の好適な1次元もしくは2次元のアレイなど、任意のアレイ構成で多開孔レンズ板122上に位置することができる。たとえば、ビームレットアレイは、線形、長方形、または正方形に配置することができる。
【0047】
多開孔レンズ板122を1次荷電粒子ビームで照射することによって、たとえば多開孔レンズ板の前で減速電界を使用することによって、いくつかの集束された1次荷電粒子ビームレットが生じる。1次荷電粒子ビームレットの焦点平面に、レンズまたは偏向器アレイを配置することができる。これらの図で、1次荷電粒子ビームレットのアレイの1次荷電粒子ビームレットのうちのいくつかが、レンズの後に示されており、他の1次荷電粒子ビームレットは、よりよい外観のために図面から省略されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、多開孔レンズ板122は、荷電粒子ビームエミッタ111によって直接照射することができる。いくつかの実施形態によれば、「直接」とは、多開孔レンズ板の前(伝播する1次荷電粒子ビームの方向に見たとき)に像面湾曲補正電極を有する実施形態における2つ以上の電極は別にして、荷電粒子ビームエミッタ111と多開孔レンズ板との間に追加の光学要素が設けられないことを意味することができる。多開孔レンズ板は、荷電粒子ビームエミッタから放出された1次荷電粒子ビームを1次荷電粒子ビームレットのアレイに分割する。たとえば、多開孔レンズ板は、1次荷電粒子ビームを少なくとも3つの1次荷電粒子ビームレットに分割するために、少なくとも3つの開孔開口部を有する。
図1に示す例では、7つの1次荷電粒子ビームレットが概略図に示されている。いくつかの実施形態では、1次荷電粒子ビームレットは、1次元アレイ(線形)、または2次元アレイ(たとえば、4×4、3×3、5×5)もしくは長方形アレイ(たとえば2×5)で配置することができる。本明細書に記載する実施形態は、これらのアレイの例に限定されるものではなく、1次荷電粒子ビームレットの任意の好適なアレイ構成を含むことができる。
【0049】
記載する多開孔レンズ板は、荷電粒子ビーム装置、荷電粒子ビーム装置のアレイを含むシステム、および荷電粒子ビーム装置を動作させる方法に関する他の実施形態でも使用することができることが有益である。多開孔レンズ板の設計は、異なる基準に従うことが有益であり、全体的な荷電粒子の光路設計の文脈で考慮されなければならない。他の本明細書に記載する実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有する多開孔レンズ板を設けることができる。開孔開口部の数は、可能な限り大きい総電流と光学性能との間の妥協点であり、特に可能な限り大きいビームレット電界で実現可能なスポットサイズである。別の境界条件は、検出器上の信号ビームレット分離を保証しながらクロストークを低減または回避する標本上でのビームレット分離である。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、走査中に基板面の領域を完全にカバーすることを可能にするような格子構成(すなわち、標本上の1次ビームレットの位置および/または開孔板内の開孔開口部の位置)が提供される。カバー範囲は、たとえばxy方向における純粋な荷電粒子ビームレット走査に限定されるものではなく、たとえばx方向などの第1の方向における荷電粒子ビームレット走査、およびたとえばy方向などの第1の方向とは異なる別の方向におけるステージの動きのような混合走査動作も含む。
【0050】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の実施形態による多開孔レンズ板122の例を示す。さらに、多開孔レンズ板の開孔開口部の修正例が、
図6A~
図6Cに示されている。多開孔レンズ板および/または開孔開口部の修正例は、他の本明細書に記載する実施形態と組み合わせることができる。
図5Aは、開孔開口部522を有する多開孔レンズ板122を示す。開孔開口部は、アレイで配置される。いくつかの実施形態によれば、開孔開口部の正方形のアレイまたは正方形のパターンを提供することができる。上述したように、他のアレイまたはパターンを提供することもできる。たとえば、
図5Aは、開孔開口部522の3×3のアレイを示す。多開孔レンズ板の場合、さらなる開口部524が設けられる。さらなる開口部524は、ダミー開口部と見なすことができる。さらなる開口部524からさらなるビームレットを生成することができるが、さらなるビームレットは、像の生成に利用されない。さらなる開口部は、開孔開口部522のための隣接する開口部を提供する。それに応じて、特に像の生成のために1次ビームレットを生成する開孔開口部にとって対称の特性を有するように、最小数の開口部のためにどちらの側にも隣接する開孔開口部を有していないはずの開孔開口部522に、隣接するさらなる開口部が設けられる。上記に照らして、近接する開口部のない開孔開口部に対して生じうる六重極作用または六重極収差を低減させることができる。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、多開孔レンズ板の複数の開孔が、開孔アレイを形成し、開孔アレイ内の開孔の数は、標本に衝突する1次ビームレットの数より大きい。標本に衝突する1次ビームレットより多くの開孔開口部を設けることで、1次ビームレットのアレイの周囲に位置する1次ビームレットに対して、収差の低減、特に八重極収差の低減が可能になる。
【0052】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、開孔開口部のアレイまたはパターンは、正方形または長方形のパターンで提供することができる。さらに、開孔開口部の六角形のパターンを提供することができる。六角形のパターンは、ハニカムパターンであると見なすことができる。
【0053】
上述したように、半導体ウエハの検査および他の応用例のためのスループットを増大させることが有益である。それに応じて、本開示の実施形態によれば、マルチビームカラムが提案される。スループットをさらに増大させるために、標本上の複数のビームレットの全体的な電流を増大させることが有益である。それに応じて、開孔開口部522の面積の和は、それぞれ多開孔レンズ板の面積または1次荷電粒子ビームによって照射される面積と比較して大きい。それに応じて、開口部のサイズが大きいことが有益である。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、開孔開口部の直径は、開孔開口部のピッチ、たとえば中心から中心までの距離と比較して、60%以上とすることができる。たとえば、開孔開口部の直径は、開孔開口部のピッチと比較して、70%以上とすることができる。
【0054】
図6Bに関して示すように、開孔開口部は、丸い形状、したがって画定された直径を有することができる。さらなる実施形態によれば、開孔開口部は、異なる形状を有することができる。それに対応して、開孔開口部のサイズは、開孔開口部のピッチの60%以上、特に70%以上とすることができる。たとえば、開孔開口部のサイズは、任意の方向において開孔開口部の最も小さいサイズとすることができる。たとえば、正方形の開孔開口部は、正方形の1辺のサイズを有し、長方形の開孔開口部は、長方形の短辺のサイズを有する。
【0055】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、開孔開口部のサイズおよび形状は、開口部のアレイ内の多開孔レンズの面積の50%以上、特に70%以上の多開孔板内の開口面積(すなわち、開口部の面積の和)を有するように提供することができる。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含み、第1の方向における開孔のサイズは、第1の方向における開孔のピッチの少なくとも70%である。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。同等に大きいサイズを有する開孔を設けることで、開孔開口部の面積の和が増大され、標本上の1次ビームレットの全体的なビーム電流が増大される。それに応じて、撮像の信号対雑音比を増大させることができる。
【0057】
図5Bは、多開孔レンズ板122上の開孔開口部522の代替配置を示す。開孔開口部は、円で配置することができる。これにより、1次荷電粒子ビームまたは1次荷電粒子ビームレットに共通する光学要素の軸外動作を低減させることができる。
【0058】
図6Aは、開孔開口部522の一実施形態を示す。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、開孔開口部は、正方形の形状または実質的に正方形の形状を有することができる。正方形の形状または実質的に正方形の形状によって、丸い開孔開口部に対して生じうる八重極作用または八重極収差を低減させることができる。さらに、開孔開口部の形状は、実質的に正方形とすることができ、開孔開口部の側縁622を含むことができる。側縁、特に4つの側縁は、同じ長さを有することができる。角623は、丸くすることができる。それに応じて、平均開口部は、角に丸い縁部を有する正方形とすることができる。丸い角は、八重極作用または八重極収差をさらに低減させることができる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含み、複数の開孔の形状は、丸い角を有する正方形である。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。開口部に丸い角を有する正方形の形状を提供することで、1次ビームレットに対する収差、特に八重極収差が低減された。
【0060】
コリメータおよび多開孔(ボックス230内)
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができる本開示の実施形態によれば、コリメータ130および付随する構成要素を、ALAの下流に設けることができる。コリメータ130は、ビームレットをコリメートする。それに応じて、1次ビームレットの発散するパターンまたはアレイが、コリメータ130によって再誘導される。たとえば、1次ビームレットは、コリメータの後に平行または本質的に平行とすることができる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、コリメータ130は、
図3Aに示す平面222内または平面222付近に設けることができる。平面付近とは、ALAの焦点距離の20%の範囲内にコリメータ130を有することであると理解されたい。平面222、すなわちALAの焦点平面を、コリメータ内またはコリメータ付近に配置することによって、偏向の収差による個々の電子ビームの歪みを低減させることができる。
【0061】
さらなる実施形態によれば、上述したように、ALAの下流で平面22を動かすことによって、倍率制御を提供することができる。
【0062】
図7Aに示すように、コリメータは、偏向器アレイ132およびレンズ232を含むことができる。さらなる修正例によれば、コリメータは、偏向器アレイを含むことができ、または別法としてレンズ232を含むことができる。本明細書に記載するように、コリメータは、コリメータ偏向構造を指すこともでき、開孔レンズアレイからの1次ビームレットがコリメータから互いに対して平行に現れるように構成される。
【0063】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、個々の偏向電極によって、各ビームレットを偏向させることができる。偏向電極は、
図8Aおよび
図8Bに例示的に示されている。
図8Aは、偏向器アレイ132および偏向電極812のアレイを示す。x方向およびy方向に1対の偏向電極が設けられる。それに応じて、各ビームに対して個々にコリメートを提供することができる。たとえば、偏向電極は、微小電気機械システム(MEMS)として設けることができ、ウエハ上に設けることができる。
【0064】
本明細書に記載する実施形態と組み合わせることができる本開示の実装例によれば、1つの1次ビームレットにつき複数、たとえば4つまたは8つの偏向電極を設けることができる。各1次ビームレットは、個々に偏向させることができる。コリメータ偏向構造は、セグメント化されたコリメータを含むことができる。コリメータ偏向構造は、1次ビームレットの各々に対してセグメント化された偏向器を含むことができる。
【0065】
さらなる実施形態によれば、
図8Aに例示的に示すように、荷電粒子ビームカラムの軸に沿って、1つまたは複数の偏向器アレイを設けることができる。偏向器または偏向器アレイのスタックを設けることができ、たとえば1つまたは複数のウエハ上に設けることができ、したがってビームレットごとの個々の偏向電極の位置合わせを簡略化することができる。たとえば、第1の偏向電極812が、ビームレットをx方向に偏向させることができ、第2の偏向電極814が、ビームレットをy方向に偏向させることができ、第3の偏向電極816が、収差補正、たとえば補正非点収差を提供することができる。
【0066】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる修正例によれば、2つ以上の1次ビームレットを偏向させる電極対によって、1次ビームレットをコリメートするための偏向器アレイを設けることができる。たとえば、
図9は、1行の1次ビームレットをy方向に沿って偏向させるための細長い電極912と、1行の1次ビームレットをx方向に沿って偏向させるための細長い電極914とを示す。
図9は、コリメータ130の偏向器アレイ132の上面図を示す。
図10は、偏向器アレイの側面図を示す。たとえば、細長い電極912および割り当てられた電極914が示されている。さらに、
図8Aおよび
図8Bと同様の個々の偏向器を設けることができる。個々の電極は、コリメートまたは収差補正の微調整のために設けることができる。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、コリメータは、1行の4つ以上の1次ビームレットを第1の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第1の細長い電極と、1行の4つ以上の1次ビームレットを第1の方向とは異なる第2の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第2の細長い電極とを含む。それに応じて、低減された数の電極によって、1次荷電粒子ビームレットのアレイを案内することができ、その結果、電源および電源接続の数が低減される。
【0068】
偏向器アレイの個々の偏向器は、少なくとも4次(四重極)の多重極要素によって実現することができる。いくつかの実施形態によれば、多重極要素は、従来の機械加工によって製造することができる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができる特定の実施形態によれば、微小電気機械システム(MEMS)技術偏向器要素が、より高い多重極密度を可能にし、電極の配線を容易にすることから有益となりうる。
【0069】
上述したように、
図7Aに示すように、偏向器アレイ132に加えて、レンズ232を設けることができる。以下で詳細に説明するいくつかの実施形態によれば、偏向器アレイ132が、レンズ内またはレンズ付近に配置される。いくつかの実施形態によれば、偏向器アレイがレンズ「内またはその付近」またはレンズ「内」に配置されるということは、偏向器アレイがレンズの焦点距離内に配置されることであると理解されよう。特に、偏向器アレイは、レンズ内に配置することができる。たとえば、レンズは、3つの電極を含むことができ、偏向器アレイは、3つの電極のうちの2つの電極間に配置することができる。いくつかの実施形態によれば、偏向器アレイは、レンズの3つの電極のうちの中間電極とほぼ同じ高さに配置することができる。
【0070】
いくつかの実施形態によれば、レンズは、1次荷電粒子ビームレットを偏向させるという主作用、特にコリメータが本質的に平行に現れるように1次ビームレットをコリメートするという主作用を実現するために使用することができる。偏向器アレイ132は、個々の1次荷電粒子ビームレットの微調整のために、特に対物レンズのコマフリー点内へまたは対物レンズのコマフリー点を通って案内されるように1次荷電粒子ビームレットを微調整するために使用することができる。荷電粒子ビーム装置は、レンズおよび偏向器アレイの動作パラメータを制御するためのコントローラ(たとえば、フィードバックループ内に接続もしくは一体化されたコントローラ、または荷電粒子ビーム装置の動作を監視するための監視装置)を含むことができる。
【0071】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、偏向器アレイ132に対する別法として、レンズ232を設けることができる。たとえば、レンズは3つの電極を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、レンズ232は、特に2つ以上の電極が減速モードで駆動され、かつ/または多開孔レンズ板の前(伝播する1次荷電粒子ビームの方向に見たとき)に配置される場合、加速レンズとすることができる。いくつかの実施形態では、加速レンズ(または他の実施形態では減速レンズ)として設けられるレンズ232は、静電レンズまたは磁気静電複合レンズとすることができる。
【0073】
本明細書に記載する実施形態によれば、1次荷電粒子ビームレットは、レンズ232の方へ誘導される。たとえば、レンズ232は、多開孔レンズ板から伝播する1次荷電粒子ビームレットを加速させるための加速レンズとすることができる。伝播する1次荷電粒子ビームの方向において2つ以上の電極が多開孔レンズ板の前に配置される実施形態では、レンズ232は、1次荷電粒子ビームレットを高いカラム電圧へ加速させるために使用することができる。たとえば、加速レンズは、1次荷電粒子ビームレットを典型的には10kV以上、より典型的には20kV以上のカラム電圧へ加速させることができる。加速電圧は、荷電粒子ビームレットの荷電粒子がカラムを進む速度を決定することができる。一例では、加速レンズは、静電レンズとすることができる。
【0074】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるボックス230内の構成要素のさらなる修正例によれば、位置合わせ偏向器システム234を設けることができる。たとえば、開孔レンズアレイとコリメータ130との間にコイルを設けることができる。コイルは、コリメータ開孔上の1次ビームレットの位置決めを生成することができ、かつ/または1次ビームレットのアレイを回転させることができる。さらに、追加または別法として、x方向および/またはy方向における1次ビームレットのアレイのピッチを補正するために、四重極場を設けることができる。
【0075】
図7Aは、複数の1次ビームレットに共通に作用する位置合わせ偏向器716を示す。
図7Aは、第1の方向のための位置合わせ偏向器を示す。たとえば第1の方向に直交する第2の異なる方向のために、さらなる位置合わせ偏向器を設けることができる。さらに、1次ビームレットのアレイを回転させる位置合わせコイルが設けられる。位置合わせ偏向器716は、x方向、y方向、またはこれらの組合せにおいて偏向場(双極場)を提供することができる。さらに、位置合わせ偏向器716は、1次ビームレットのアレイに作用する四重極場を提供することができる。それに応じて、x方向および/またはy方向における1次ビームレットのアレイのピッチを調整または位置合わせすることができる。
【0076】
図7Aは、磁気偏向器を有する位置合わせ偏向器716を示すが、位置合わせ偏向器システムはまた、静電偏向器または磁気偏向器および静電偏向器の組合せを備えることもできる。
【0077】
図7Bは、位置合わせシステム710における1次ビームレット701のアレイを示す。位置合わせシステムは、第1の方向(
図7Bの矢印参照)に第1の四重極場を生成するための2つの位置合わせコイルを含むことができる。位置合わせシステムは、第2の方向に第2の四重極場を生成するためのさらなる2つの位置合わせコイル716を含むことができる。第1の方向および第2の方向は、約45°回転させることができる。それに応じて、1次ビームレット701のアレイの形状を適合させることができる。すなわち、1次ビームレットのアレイ上の歪みを調整するために、1次ビームレットのピッチを2つの方向に、たとえば45°回転させた方向に適合させることができる。四重極場は、x方向および/またはy方向において1次ビームレットのアレイのピッチを補正するために提供することができる。四重極場は、1次ビームレットのピッチを適合させるために、一方の方向にアレイを圧迫し、直交方向にアレイを引き延ばすことができる。それに応じて、ビームレットのアレイの偏向および/または圧迫を提供することができる。
【0078】
図7Aは、いくつかの実施形態による位置合わせシステムの実装例を示す。たとえば、コア796を設けることができる。コアは開口部を有し、1次ビームレットのアレイがコアの開口部を通過する。すべての偏向位置合わせコイルおよび四重極場を提供する位置合わせコイルなど、複数の位置合わせコイル716を、コア796に設けることができる。それに応じて、アレイの複合偏向およびアレイのピッチ調整のための双極部分および四重極部分を有する電界を提供することができる。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、多開孔レンズ板とコリメータとの間に設けられた位置合わせシステムをさらに含み、位置合わせシステムは、4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させるために、少なくとも1つの四重極を含む。それに応じて、コリメータにおいて、1次ビームレットのアレイの1次ビームレットのピッチを調整することができる。
【0080】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、1つまたは複数のさらなる開孔アレイ140を設けることができる。たとえば、
図7Aは、コリメータ130の下流に位置する第1の開孔アレイ140と、コリメータ130の上流に位置する第2の開孔アレイ740とを示す。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、コリメータの両側に開孔アレイを設けることができる。
図7Aに例示的に示すように、開孔アレイ140内の開口部および/またはアレイ740の開孔の数は、多開孔レンズ板122内の開孔開口部の数と比較してより小さい。
図5Aに関して上述したように、1次ビームレットのための開孔開口部522およびダミー開孔524を設けることができる。ダミー開孔は、ALAの収差を低減させる。ダミー開孔は、標本に衝突する1次ビームレットを生成することを意図したものではない。それに応じて、開孔アレイ740は、荷電粒子ビームがダミー開孔524を通過することを阻止する部分を含むことができる。それに応じて、多開孔レンズ板は、1つまたは複数のさらなる開孔アレイ内の開口部またはコリメータの偏向器アレイ内の開口部の数と比較して、より多くの開口部を含む。
【0081】
図7Aは、他の本明細書に記載する実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態、特に位置合わせシステム710を有する実施形態を示す。開孔アレイ740は、導電性材料742を含む。導電性材料742または導電面は、開孔アレイ上への1次ビームレットの衝突によって潜在的に提供される電流を測定することを可能にする。電流は、流速計744によって測定することができる。それに応じて、導電性材料に衝突する荷電粒子に基づいて、コリメータ130に対する1つまたは複数の1次ビームレットの位置合わせ不良を検出することができる。測定された電流が0であるということは、すべての1次ビームレットがさらなる開孔アレイ740内の開口部を通って案内されていることに対応する。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、位置合わせシステム710は、たとえば電流測定に基づいて、4自由度の調整を可能にすることができる。四重極場によってx方向の偏向、y方向の偏向、z軸の周りの回転、およびピッチ調整を提供することができる。
【0082】
さらなる実施形態によれば、導電性材料742または導電面は、導電性材料のセグメントまたは部分を含むことができ、各セグメントまたは部分は、開孔アレイ内の個々の開口部、または開孔アレイ内の開口部のパターン、たとえば行もしくは列に対応する。それに応じて、個々の開口部または開口部のパターンに対する電流を測定する能力は、位置合わせシステム710に対する1次ビームレットのさらに改善された位置合わせに役立つことができる。
【0083】
特に
図7A~
図7Cに関して説明する位置合わせシステムに対する1次ビームレットの位置合わせのための開孔板上の電流測定のさらなる実装例について、
図24Aおよび
図24Bを参照して説明することができる。
図24Aは、開孔アレイ740を示す。開孔アレイ内に複数の開孔開口部が設けられており、破線703によって示す開口部のアレイを形成する。開孔は板を有し、板上に導電性材料742の導電面または領域が設けられる。
図24Aは、破線によって示す4つの導電面を示す。4つの導電面は、互いから絶縁することができる。導電面には流速計を接続することができる。適切に位置合わせされた1次ビームレットのアレイが、開孔アレイ内の開口部を通過する。それに応じて、適切に位置合わせされたアレイの場合、1次ビームレットの荷電粒子からの電流は生成されない。導電面、すなわち導電性材料742に衝突する1次ビームレットの数に応じて、流速計744内の電流が増大する。それに応じて、導電面に衝突する1次ビームレットの数が大きければ大きいほど、電流も大きくなる。
【0084】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、開孔アレイ740上の導電性材料742をセグメント化することができ、たとえば4つの導電面を設けることができる。位置合わせシステムを制御するとき、1つまたは複数の1次ビームレットが開孔アレイの開口部に対して動き、1つまたは複数の流速計744内の電流が変動する。
図24Aに関して説明する一実施形態によれば、導電性材料をセグメント化し、導電性材料のセグメントに流速計を接続することで、流速計の各々に対する異なる電流を判定することが可能になる。それに応じて、1次ビームレットのアレイをたとえば
図24Aの右側へ動かすことで、右側の流速計上の電流測定値を増大させることができる。異なるセグメントに対する差を評価することで、位置合わせシステムの所与の1組の制御パラメータに関して、開孔アレイ内の開口部に対する1次ビームレットの複数の位置を判定することが可能になる。位置合わせシステムの制御パラメータを変動させること、すなわち開孔アレイの表面にわたって1次ビームレットを走査すること、1次ビームレット間のピッチを適合させること、および/または1次ビームレットのアレイを回転させることによって、異なる制御パラメータに対する電流測定値を提供することができる。1次ビームレットのアレイの配向、位置、および/または形状を判定することができる。制御パラメータは、すべての1次ビームレットが開孔アレイの開口部を通過するように、位置合わせされた1次ビームレットのアレイを生じさせるように設定することができる。
【0085】
追加または別法として提供することができる別の実装例によれば、開孔板上および破線703によって示す開口部のアレイの外側に、1つまたは複数の導電面を設けることができる。
【0086】
たとえば、開口部のアレイの1つの角に隣接して、導電面を設けることができる。例示的に、これは、
図24Bに示す右上の導電面、または対応する導電性材料742とすることができる。
図24Bは、右上の1次ビームレットのハイライトをさらに示す。矢印749によって示すように1次ビームレットのアレイを走査することで、右上の1次ビームレットを導電面上に、たとえば1次ビームレットのアレイの対応する角に隣接する導電面上に誘導することができる。流速計744によって、電流を測定することができる。したがって、電流を検出することができるように1次ビームレットのアレイを走査することによって、1次ビームレットのアレイの偏向量を判定することができる。対応する偏向は、いくつかの1次ビームレット、特に1次ビームレットのアレイの角における1次ビームレットに対して提供することができる。
【0087】
導電面上の角、たとえば
図24Bに示すアレイの4つの角の各々を走査することで、各角の位置を判定することが可能になる。本明細書に記載する実施形態によれば、走査は、対応するビームレットが、他のビームレットが導電面に衝突する前に導電面に衝突するように提供することができる。一実施形態によれば、2つ以上の角のビームレットを同じ導電面上に案内することができる。代替実施形態によれば、各角のビームレットを異なる導電面へ案内することができる。たとえば、
図24Bを参照すると、各角のビームレットを導電性材料742へ、すなわちそれぞれの角に隣接する対応する導電面へ案内することができる。
【0088】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、少なくとも3つの角に関して位置合わせシステムの制御パラメータを判定することで、1次ビームレットのアレイの走査位置、1次ビームレットのアレイの潜在的な歪み、および1次ビームレットのアレイの潜在的な回転配向を評価することが可能になる。それに応じて、本開示の実施形態によれば、位置合わせシステム710および開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面に接続された1つまたは複数の流速計の組合せにより、開孔アレイに対する1次ビームレットのアレイの適切な位置合わせが可能になる。
【0089】
図25は、1次ビームレットのアレイを位置合わせする対応する方法を示す流れ図を示す。動作1252で、荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームが生成される。動作1254で、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、4つ以上の1次ビームレットが生成される。1次ビームレットの領域を位置合わせする方法は、本明細書では、単一のビーム源が1次荷電粒子ビームを生成し、1次ビームレットが開孔レンズアレイによって生成される実装例に関して説明される。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、荷電粒子ビーム源のアレイによって生成される1次ビームレットのアレイに対して、1次ビームレットのアレイの位置合わせを等しく提供することができる。
【0090】
動作1256で、コリメータによって、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットが互いに対して偏向される。動作1257で、コリメータの上流に位置する位置合わせシステムが、開孔アレイ内の開口部にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するように制御される。さらに、動作1258で、1つまたは複数の導電面における電流が、開孔アレイ上で測定される。
【0091】
図24Aに関して説明する実施形態によれば、位置合わせシステムは、1つまたは複数の導電面における電流を最小にするように制御することができる。たとえば、開孔アレイ内の開口部間に、1つまたは複数の導電面を設けることができる。追加または別法として、
図24Bに関して説明するように、位置合わせシステムは、1つまたは複数の導電面における電流を増大させるように制御することができる。そのような実装例では、開孔アレイ内の開口部によって形成される開口部アレイの外側に、1つまたは複数の導電面が設けられる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、開孔アレイに対する1次ビームレットのアレイの位置合わせ後、1次ビームレットまたは1次ビームレットの少なくとも一部分が、標本に到達することができ、信号ビームレットからの信号を測定することができる。1次ビームレットのアレイは、信号ビームレットの信号を増大させることによって、開孔アレイの下流にさらに位置合わせすることができる。たとえば、位置合わせシステム、および/またはコリメータ内の1次ビームレットの個々の偏向の調整によって、さらなる位置合わせを提供することができる。
【0092】
1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法に関して、位置合わせシステムを制御することは、a)開孔板の平面内で少なくとも第1の方向において、偏向場、特に1つの偏向場によって4つ以上の1次ビームレットを走査することと、b)開孔板の平面内で第1の方向に直交する第2の方向において、4つ以上の1次ビームレットを走査することと、c)開孔板の平面内で少なくとも第3の方向において、四重極場によって4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、d)開孔板の平面内で少なくとも第4の方向において、四重極場によって4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、e)開孔板の平面内で4つ以上の1次ビームレットによって形成されたアレイを回転させることとを含む制御手順のうちの1つまたは複数を含むことができる。制御手順a)および/またはb)、制御手順c)および/またはd)、ならびに制御手順e)は、順次実行することができる。加えて、これらの制御手順は、反復的に順次実行することができる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、コリメータは、1つまたは複数の開孔アレイのうちの第1の開孔アレイと、1つまたは複数の開孔アレイのうちの第2の開孔アレイとの間に設けられ、特に1つまたは複数の開孔アレイのうちの少なくとも1つの開孔アレイに、流速計が取り付けられる。それに応じて、コリメータにおける1次ビームレットのビーム調整を測定することができる。さらに、コリメータの上の第1の開孔アレイおよびコリメータの下の第2の開孔アレイにより、電界、たとえばコリメータの静電界を制限することが可能になる。さらに、追加または別法として、開孔アレイおよび開孔アレイの対応するホルダが、真空区画間の真空分離として働くことができる。開孔アレイ内の開口部は、ポンピング開孔として働くことができる。
【0094】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、1つまたは複数のさらなる開孔アレイのうちの少なくとも1つは、真空を隣接する真空区画に分離するように設けることができる。
図11は、荷電粒子ビーム装置100を示す。荷電粒子ビーム源110は、第1の真空区画118内に設けられる。真空ポンプ119が、真空区画118と流体連結するように設けられる。真空ポンプ119は、真空区画118を排気する。
図11に示す例では、開孔レンズアレイまたは多開孔レンズ板はそれぞれ、真空区画118内に設けられる。さらなる実施形態によれば、真空区画118の代わりに、2つの真空区画を設けることができる。それに応じて、荷電粒子ビーム源110および開孔レンズアレイは、別個の区画内に設けることができる。
【0095】
図11に示すように、第2の真空区画138を設けることができる。たとえば、コリメータ130は、第2の真空区画138内に設けることができる。さらなる修正例によれば、開孔レンズアレイもまた、第2の真空区画138内に設けることができる。真空ポンプ139が、第2の真空区画138と流体連結するように設けられる。真空ポンプ139は、真空区画138を排気する。
【0096】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、さらなる開孔アレイ140のためのホルダ149が設けられる。ホルダ149、特にホルダ149および開孔アレイ140は、第2の真空区画138を第3の真空区画188から分離する。それに応じて、それぞれホルダおよび/またはさらなる開孔アレイ140の両側で、異なる真空区画の差動ポンピングを提供することはできない。
【0097】
第3の真空区画188は、真空ポンプ189と流体連結している。第3の真空区画は、対物レンズユニット170を含むことができる。さらに、ステージ180を第3の真空区画188内に設けることができる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、少なくとも3つの真空区画を荷電粒子ビーム装置100内に設けることができる。2つの隣接する真空区画は、さらなる開孔アレイおよび/またはさらなる開孔アレイのためのホルダによって、互いから分離することができる。3つ以上の真空区画を有することで、荷電粒子ビーム装置100のカラム内に異なる圧力の領域を有することが可能になる。
【0098】
本開示による荷電粒子ビーム装置の実施形態は、複数の1次ビームレットによる標本の照射または標本の検査を提供し、1次ビームレットは、単一の荷電粒子ビーム源から、たとえばALAによって生成される。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、1次ビームレットは、1次ビームレットのアレイのうちの第1の1次ビームレットが、1次ビームレットのアレイのうちの第2の1次ビームレットと交差することなく、特に荷電粒子ビーム装置内で生成される1次ビームレットが交差することなく、荷電粒子ビーム装置を通って進む。交差を回避することで、1次ビームレット間の相互作用が回避される。より大きいビーム電流が、1次ビームレットを提供することができる。
【0099】
ビームの分離および検出(ボックス250内)
図2のボックス250を参照して、ビーム分離ユニット160および検出ユニット150について、以下でさらに詳細に説明する。ビーム分離ユニット160は、1次ビームレットを1つまたは複数の信号ビームレットから分離する。信号ビームレットは、検出ユニット150によって検出される。
図12は標本80を示す。1次ビームレット103は、標本80に衝突する。1次ビームレット103が衝突するとき、信号ビームレット105が生成される。1次ビームレット103および信号ビームレット105は、ビーム分離ユニットによって分離される。
【0100】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、ビーム分離ユニットは、磁気偏向器162および静電偏向器164を有するウィーンフィルタアレイとすることができる。磁気偏向器162による1次ビームレットの偏向は、静電偏向器164の偏向方向とは反対の方向に提供される。それに応じて、ビーム分離ユニットの前後の1次ビームレットのビーム経路は、平行または実質的に平行である。磁気偏向器162および静電偏向器164が1次ビームレットの光軸に沿って異なる平面内で作用する
図12に例示的に示す配置において、1次ビームレットのシフトが生じうる。磁気偏向器および静電偏向器の偏向場が重複する配置では、1次ビームレットは実質的に偏向されない。
【0101】
1次ビームレット103は、対物レンズユニット170によって標本80上に集束される。信号ビームレット105は、対物レンズを通って、1次ビームレット103の方向とは実質的に反対の方向に進む。それに応じて、ウィーンフィルタアレイが、信号ビームレット105を偏向させる。ウィーンフィルタアレイの偏向は、磁気偏向器162の偏向方向の変化に基づいている。それに応じて、磁気偏向器162および静電偏向器164は、信号ビームレット105に対して同じ方向に作用する。
【0102】
ビーム分離ユニットはまた、1次および信号ビームレットの分離のための電磁気偏向システムと見なすことができる。たとえば、信号ビームレットは、1°~20°の角度だけ、特に3°以下の角度だけ偏向させることができる。
【0103】
1次ビームレットの長方形アレイまたは正方形アレイを考慮すると、
図13、
図14A、および
図14Bに例示的に示すように、電磁気偏向システム、たとえばウィーンフィルタアレイを設けることができる。静電偏向器164は、2つ以上の細長い偏向電極によって設けることができる。偏向電極は、たとえば、
図13で紙面に対して平行にすることができる。偏向電極は、1次ビームレットのアレイの両側に設けることができる。1次ビームレット行の間に、さらなる偏向電極を設けることができる。たとえば、M(M≧1)行の1次ビームレットを含む1次ビームレットのアレイを有することで、M+1個の電極を設けることができる。これらの電極は、1行の1次ビームレットを偏向させるように細長い。
【0104】
磁気偏向器162は、コイルのアレイによって提供することができる。コイル464は、コア462上に設けることができる。コイル464は、線に沿って設けることができ、この線に直交する方向に細長くすることができる。コイルは、1行の1次ビームレットを偏向させるように細長くすることができる。本開示のいくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイのうちの1行の1次ビームレットが、コイルのアレイのうちの2つの隣接するコイル間を通ることができる。N(N≧1)行の1次ビームレットを含む1次ビームレットのアレイを有することで、N+1個のコイルを設けることができる。たとえば、これらのコイルを、たとえば磁性材料を有する磁気コアに巻き付けて、磁気回路を形成し、磁束線を閉じることができる。
【0105】
図15は、ビーム分離ユニット160のさらなる実施形態を示す。ビーム分離ユニットは、磁場163によって提供することができる。たとえば、磁場163は、
図14Aおよび
図14Bに示すように、コイル464のアレイによって提供することができる。コリメータ130は、対物レンズユニットの光軸に対して角度をなして1次ビームレット103を案内するように動作させることができる。ビーム分離ユニットは、対物レンズユニット170の光軸に対して平行または本質的に平行になるように、1次ビームレットを偏向させることができる。荷電粒子ビーム装置内を上方へ案内される信号ビームレットは、ビーム分離ユニット160の磁場163によって、1次ビームレットから分離される。
【0106】
さらなる実施形態によるビーム分離ユニット160が、
図16A~
図16Cに示されている。たとえば磁性材料の3つの層が設けられる。磁性材料は、高透磁率の材料とすることができ、これらの層は、磁気回路を形成することができる。
図16Aに示すように、第1の静電偏向器164が設けられる。磁気偏向器162が設けられる。第2の静電偏向器164が設けられる。磁気偏向器162は、第1の静電偏向器と第2の静電偏向器との間に設けることができる。磁気偏向器または静電偏向器を参照する本開示の実施形態を、それぞれ磁気偏向器アレイまたは静電偏向器アレイと呼ぶこともできる。磁気偏向器162および1つまたは複数の静電偏向器164は、1次ビームレットおよび/または信号ビームレットのアレイを偏向させるように構成される。たとえば、本明細書に記載するように、電極の1次元アレイとして、アレイを形成することができる。
【0107】
第1の静電偏向器164および第2の静電偏向器164は、1次ビームレットのアレイ行間に、少なくとも2つの電極を含む。少なくとも2つの電極は、第1の電極165および第2の電極166とすることができる。第1の電極165は、正の電位とすることができ、第2の電極166は、負の電位とすることができ、または逆も同様である。少なくとも2つの電極は、ビームレットのアレイ行に対して静電偏向場を提供する。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができる本開示のいくつかの実施形態によれば、少なくとも2つの電極を、割当て電極またはストリップ電極とすることができる。さらに、追加または別法として、少なくとも2つの電極を、1次ビームレットのアレイ行間に設けることができる。
【0108】
磁気偏向器162(または磁気偏向器アレイ)は、1次ビームレットのアレイ行間に、1つの電極、たとえば細長い電極またはストリップ電極を含む。磁気偏向器の1つの電極は、コイルによって取り囲まれる。たとえば、コイルは、絶縁ワイアを有することができる。この1つの電極を、磁場生成のためのコアと呼ぶこともでき、またはこの1つの電極が、磁場生成のためのコアを提供することもできる。
【0109】
本開示の実施形態は、それぞれ1次ビームレットのアレイおよび信号ビームレットのアレイを指す。本開示は、行がx方向に提供されるか、それともy方向に提供されるかにかかわらず、行(行および列ではなく)を指す。1行のアレイは、第1の方向に延びることができ、さらに1行は、第1の方向に直交する第2の方向に延びることができることが理解される。電気光学構成要素の特性から、1次ビームレットおよび/または2次ビームレットのアレイについて説明するために本明細書で利用されるときの「行」という用語の配向は、当業者にはよく理解されよう。
【0110】
3つの電極層を設けることによって、磁気回路が形成される。さらに、ビームレットの光軸の方向に沿って対称の配置が提供される。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、検出面を有する検出ユニットを含むことができる。1つまたは複数の検出面が、4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される。たとえば、検出面は、信号ビームレットを光子に変換することができ、4つ以上の光検出器が、検出ユニットのために設けられる。ビーム分離ユニットは、第1の静電偏向器と、第2の静電偏向器と、第1の静電偏向器と第2の静電偏向器との間に設けられた磁気偏向器とを含むことができ、任意選択で、第1の静電偏向器、第2の静電偏向器、および磁気偏向器が、磁気回路を形成する。さらに任意選択の追加または代替の特徴として、第1の静電偏向器および第2の静電偏向器は各々、4つ以上の1次ビームレットの行間に少なくとも2つの細長い電極を含む。それに応じて、対称のビーム分離ユニットを設けることができる。
【0112】
図12を次に再び参照すると、1次ビームレット103のアレイが、距離dを有することができる。ピッチは、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。1次ビームレット間の少なくとも第1のピッチを、第1の方向、たとえばx方向に沿って提供することができる。静電偏向器164の電極および/または磁気偏向器162のコアもしくは電極は、第1のピッチに類似したピッチを有することができる。たとえば、電極のピッチは、第1のピッチ±10%の範囲内とすることができる。さらに、本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1次ビームレットと信号ビームレットとの間のビーム分離を、1次ビームレット間の第1のピッチの10%~90%距離だけ、特に信号ビームレットの信号検出の平面内で提供することができる。
【0113】
上述したように、荷電粒子ビーム装置100が、ビーム分離ユニット160を含む。ビーム分離ユニット160は、1次ビームレット103、すなわち1次荷電粒子ビームレットを、信号ビームレット105から分離する(
図12に示す)。いくつかの実施形態によれば、ビーム分離ユニットは、たとえば、少なくとも1つの磁気偏向器、ウィーンフィルタ、または任意の他の電気光学構成要素を含むことができ、電子は、たとえばローレンツ力に応じた速度によって、1次荷電粒子ビームレットビームから離れる方へ誘導される。
【0114】
ビーム分離ユニットは、対物レンズユニット170と検出ユニット150との間に設けることができる。検出ユニット150は、複数の検出器または検出面152を含む。検出ユニットは、信号ビームレットを光子に変換する複数の変換ユニット153を含むことができる。特に、変換ユニット153は、電子光子変換ユニットとすることができる。変換ユニット153は、検出面152を含むことができ、特に蛍光性ストリップのアレイを含むことができる。蛍光性ストリップのアレイは、変換ユニット153の平面内に、1次ビームレットまたは1行の1次ビームレットに隣接して設けることができる。たとえば、蛍光性ストリップのアレイのピッチは、距離dまたは1次ビームレットの第1のピッチに類似したものとすることができる。1次ビームレット103は、それぞれ変換ユニットの蛍光性ストリップまたは蛍光性ストリップのアレイを通過することができる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、検出面152の平面157における1次ビームレット103のピッチ、すなわち距離d、蛍光性ストリップのピッチ、および信号ビームレット105のピッチは、同じまたは本質的に同じものとすることができる。信号ビームレットは、
図12に概略的に示すように、対物レンズユニットの光軸に対して角度をなして進み、電子光子変換器ユニット81の蛍光性ストリップまたは検出面152上へ信号電子を投影するように、ビーム分離ユニットによって偏向される。
【0115】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、蛍光性ストリップの前記アレイのうちの少なくとも1つの蛍光性ストリップが、1次ビームレットの2つの隣接する行間に配置される。
【0116】
本明細書に記載するいくつかの実施形態によれば、検出面は、信号ビームレット、すなわち信号電子を、1次荷電粒子ビームレットに隣接する一方の側へ投影するように配置される。それに応じて、隣接する1次荷電粒子ビームレットからの信号電子のスポットの重複を低減または防止することができ、それにより隣接する1次ビームレットに起因する信号ビームレットを検出および区別することがより容易になる。それに応じて、サンプルの表面からの信号ビームレットの検出および評価をより速くすることができ、それによりサンプルの検査のためのスループットが増大する。
【0117】
図12に示す例では、変換ユニット、たとえば電子光子変換ユニットは、実質的にY方向に延びる平行に配置された一連の蛍光性ストリップ内に配置される。さらなる実施形態によれば、電子光子変換ユニットまたは検出面は、1次荷電粒子ビームレットのための貫通孔を有する板に設けることができる。板は、XY方向に延びることができる。板に検出面もしくは蛍光部分を設けることができ、または板が蛍光性材料を含むことができる。本開示によれば、そのような板のうち、貫通孔間をXまたはY方向に延びる部分、またはそのような板の部分上の蛍光性材料もまた、蛍光性ストリップであると見なされる。
【0118】
変換ユニット153において、信号ビームレットが入射すると光子が生成される。光子は、蛍光性ストリップまたは部分によって生成することができる。光子の少なくとも一部は、変換ユニットから光検出器へ案内される。光子は、たとえば光ファイバ156によって案内することができる。光ファイバの第1の端部は、変換ユニットに隣接して配置することができ、変換ユニットに結合することができ、または変換ユニットに取り付けることができる。光、すなわち光子は、光ファイバ内へ結合される。光ファイバの第2の端部は、光検出器に設けることができる。光ファイバは、信号ビームレットのアレイに対応するアレイとして設けることができる。1行の光ファイバアレイを、1行の1次ビームレットアレイ間に設けることができる。たとえば、光ファイバのアレイは、x方向およびy方向のうちの1つにおいて、1次ビームレットのアレイ間に設けることができる。
【0119】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、蛍光性ストリップのアレイが設けられ、各蛍光性ストリップは、1次ビームレットに隣接して位置する。たとえば、蛍光性ストリップは、検出面152の平面157内の1次ビームレットのピッチに等しい距離で位置することができる。生成された光を光検出器、たとえば光検出器のアレイへ輸送するために、光ファイバまたはガラスファイバのアレイが設けられる。
【0120】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、信号粒子が衝突する検出面152、すなわち変換ユニット153の表面は、導電性材料を含むことができる。たとえば、検出面上に導電性材料を被覆することができる。導電性材料は、検出面上に生成される電荷の除去を可能にする。
【0121】
図12は、XZ平面におけるビームの分離および検出を示すが、
図17は、YZ平面における対応する配置を示す。見ることができるように、光ファイバ156は、変換ユニットから光検出器アレイ159へ光子を案内するように設けることができる。光ファイバは、1次ビームレットのアレイの行間に設けることができる。
【0122】
マルチセンサ検出器システムなどの光検出器アレイは、たとえば1次ビームレットの光軸に直交する方向において、1次ビームレットのアレイから隔置された位置に配置することができる。検出ユニットは、蛍光性ストリップのアレイを含むことができ、各ストリップは、1次ビームレットまたは1行の1次ビームレットに隣接して位置する。たとえば、蛍光性ストリップは、検出面の平面内の1次ビームレットのピッチに等しい距離の範囲内に位置することができる。いくつかの実施形態によれば、蛍光性ストリップは、1次荷電粒子ビームレットに近接して配置することができる。好ましくは、蛍光性ストリップの前記アレイのうちの少なくとも1つのストリップが、2つの隣接する1次ビームレット間に配置される。蛍光性ストリップを1次ビームレットに近接して、またはさらには2つの隣接する1次ビームレット間に配置することによって、マルチビーム荷電粒子カラムの幅を低減させることができる。これにより、複数のマルチビーム荷電粒子カラムを互いに近接してより容易に配置することが可能になり、より多くのマルチビーム荷電粒子カラムをサンプルの上の特定の領域内に配置することが可能になる。それに応じて、サンプルの表面をより迅速に検査することができ、それによりサンプルの検査のためのスループットが増大する。
【0123】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、光検出器アレイが、それぞれ複数の光検出器を含むことができ、特に1つの信号ビームレットまたは光ファイバにつき少なくとも1つの光検出器を含むことができる。たとえば、光検出器は、フォトダイオード、またはPN接合を含む別の電気光学要素とすることができる。追加または別法として、光検出器は、光電子増倍管を含むことができる。光検出器によって、電気信号が生成される。特に、光検出器のアレイは、1つの信号ビームレットにつき1つの電気信号を生成することを可能にする。
【0124】
図18は、変換ユニット153、たとえば電子光子変換器ユニットの平面における概略上面図を示す。
図17に示すように、1次ビームレット103は、複数の行で配置され、各行は、第1の方向、
図17ではY方向に延びる。1次ビームレット103の行は、第2の方向、
図17ではX方向に、互いに隣接して配置される。変換ユニット153の蛍光性ストリップは、たとえば、それぞれ変換ユニット153または検出面において1次ビームレットの行のピッチに等しい距離で、1行の1次ビームレットに隣接して配置される。蛍光性ストリップ間の開口部または間隙は、1次ビームレットが検出面の平面を通過することを可能にするように配置される。
【0125】
1次ビームレットが標本に衝突するときに生成される信号ビームレット105は、ビーム分離ユニットによって、たとえば
図18でx方向に偏向される。信号ビームレットは、検出面、すなわち変換ユニットの蛍光性ストリップまたは部分に衝突する。検出面は、ビーム分離ユニットに面する側にある。変換ユニットは、蛍光性材料を使用して、信号ビームレットを光子(光)に変換する。検出面とは反対側では、生成された光子または生成された光子の少なくとも一部分を収集するために、光ファイバ156を設けることができる。
【0126】
特有の蛍光性ストリップ上で信号ビームレットの様々なスポット上に光子を収集するように配置された光ファイバ156は、前記蛍光性ストリップの上に、特に
図18のZY平面内に配置される。
図17に概略的に示すように、光ファイバ156は、ファイバの第2の端部を光検出器アレイ159に配置するように、YZ平面内で屈曲または湾曲させられる。
【0127】
図17および
図18に示す湾曲または屈曲させた光ファイバ156に対する代替として、光ファイバ156’は、検出面152で先細りさせられる。光ファイバ156’の第1の端部は、前記光ファイバの中心軸CAに対して10°~60°の角度αで切断することができる。先細り端部には、蛍光性の板または蛍光性の層が、検出面152として配置される。検出面上へ投影された2次電子105’は、光子20に変換される。生成された光子20の少なくとも一部は、光ファイバの第1の端部内へ結合され、前記光ファイバを通って光検出器の方へ運搬または誘導される。光子20は、光ファイバの側面における内部全反射によって、光ファイバ内に閉じ込められる。光ファイバ156’は、
図19のファイバのうちの1つに概略的に示すように、光反射層によって少なくとも部分的に被覆することができる。
【0128】
対物レンズユニットおよび走査(ボックス270内)
図20Aは、対物レンズユニット170を示す。対物レンズユニットの様々な態様、詳細、特徴、および修正例について、
図20A~
図20Dに関して説明する。対応する実施形態は、他の本明細書に記載する実施形態、特に本明細書に記載する荷電粒子ビームカラムの様々な部分に関して説明した実施形態と組み合わせることができる。
【0129】
対物レンズユニットは、孔272を有する3つ以上の電極を含む。孔272は、孔のアレイを形成する。単一の1次ビームレットおよび/またはビームレットの各々に対して、それぞれ1つの孔または開口部が設けられる。それに応じて、孔のアレイは、1次ビームレットのアレイに対応する。
図20Aに示すように、1次ビームレットの各々に対して光軸OAが設けられる。3つ以上の電極が、静電レンズ構成要素を形成する。
【0130】
本開示の実施形態によれば、3つ以上の電極のうちの2つの電極間に、絶縁板174が設けられる。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、絶縁板174は、2つ以上の1次ビームレットを通すための1つの開口部を含み、特にすべての1次ビームレットを絶縁板174の1つの開口部に通すための1つの開口部を含む。3つ以上の電極が異なる電位へバイアスされて、1次ビームレットのためのレンズ場が形成される。特に、本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、電極は、標本の方へ進む1次ビームレットを減速させるための減速場を生成するように構成される。たとえば、最後から2つ目の電極と最後の電極との間の減速場は、少なくとも5kV/mmとすることができる。
【0131】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、
図20Bに示すように、3つ以上の電極のうちの1つまたは複数の電極を、電極172とすることができる。電極172は、孔272または開口部、特に孔のアレイを含む。電極172は、孔272の各々の周りに共通の電位を提供するように構成される。電極172は、1次ビームレットのアレイに対して共通の電位を提供する。
図20Aに示すように、電極172は、電源173またはコントローラに接続することができる。電極の各々が、電位にバイアスされる。特に、隣接する電極172(光軸に沿って隣接する)が、異なる電位にバイアスされて、レンズ場を生成することができる。
【0132】
いくつかの修正例によれば、
図20Cに示すように、3つ以上の電極のうちの1つまたは複数の電極を、電極176とすることができる。電極176は、孔272または開口部、特に孔の領域を含む。孔272が個々の導電性部分を含むことができる導電性部分276によって示すように、孔または開口部の各々に異なる電位を提供することができる。電極176は、電源177またはコントローラに接続される。電源またはコントローラは、個々の導電性部分の各々の電位を制御することができる。異なる開口部に対して異なる電位を提供する能力により、それぞれの1次ビームレット、たとえば各1次ビームレットに対して個々に、レンズ場の微調整を提供することが可能になる。
図20Cは、孔272の各々に対して導電性部分276を示す。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるさらなる実施形態によれば、開口部のうちのいくつかが、共通の導電性部分276を有することができ、したがって開口部のうちのいくつかを同じ電位にバイアスすることができる。さらに、少なくとも2つの個別の導電性部分が設けられる。第1の孔272の少なくとも第1の導電性部分を、第1の電位にバイアスすることができ、第2の孔の少なくとも第2の導電性部分を、第1の電位とは異なる第2の電位にバイアスすることができる。
【0133】
図20Dは、他の本明細書に記載する実施形態と組み合わせることができる電極のさらなる修正例を示す。対物レンズユニット170の電極は、4つ以上、たとえば8つの偏向電極178を含むことができる。偏向電極178は、XY平面内に1次ビームレットの各々に対して偏向場を生成するように制御することができる。さらに、収差補正のために、八重極場および/または四重極場を生成することができる。個々の偏向電極を有する電極は、電源179またはコントローラに接続することができる。たとえば、偏向電極の各々は、偏向電極の個々のバイアスを可能にするように、絶縁ワイアによって接続することができる。いくつかの実施形態によれば、偏向電極を有する電極は、微小電気機械システム(MEMS)として製造することができる。MEMS技術の偏向器は、より高い多重極密度を可能にし、電極の配線を容易にする。
【0134】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、対物レンズユニットが、孔272のアレイを有する3つ以上の電極、たとえば3~10個の電極を含むことができる。上述したように、隣接する電極間に、絶縁板174を設けることができる。前記電極のうちの1つは、
図20Dに関して説明する偏向電極178を備えることができる。
図20Aに示す例は、第1の電極172と、第2の電極172と、第3の電極172と、導電性部分276を有する第1の個々の集束電極176と、偏向電極178を有する電極と、第4の電極172とを含む。たとえば、偏向電極を有する電極と第4の電極172との間に、減速場を設けることができる。偏向場は、少なくとも5kV/mmとすることができる。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。対物レンズユニットの3つ以上の電極のうちの少なくとも1つは、各々1つの1次ビームレットにつき開口部を有する1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極と、標本を支持するステージとを含む。それに応じて、個々の1次ビームレットのビーム位置を標本上で調整することができる。
【0136】
本明細書に記載する実施形態によれば、1次荷電粒子ビームレットは、対物レンズユニット170によって標本80上の別個の場所に集束され、それらの別個の場所で標本を同時に検査する。対物レンズユニット170は、1次荷電粒子ビームレットを標本上へ集束させるように構成することができ、対物レンズは、減速電界型レンズである。たとえば、減速電界型レンズは、1次荷電粒子ビームレットを、所定の入射エネルギーまで減速させることができる。いくつかの実施形態では、カラムエネルギーから標本上の入射エネルギーへのエネルギーの低減は、少なくとも10分の1、たとえば少なくとも30分の1である。一例では、入射エネルギーは、典型的には、約100eV~8keV、より典型的には2keV以下、たとえば1keV以下、たとえば500eVまたはさらには100eVである。
【0137】
図2に例示的に示すように、対物レンズユニット170に隣接して、または対物レンズユニット170内に、走査偏向器アセンブリ271を設けることができる。走査偏向器271は、1次ビームレットのアレイのための走査場を提供することができる。たとえば、これらのビームレットに対して個々に走査場を提供することができる。たとえば、走査偏向器アセンブリ271は、磁気走査偏向器アセンブリとすることができる。さらなる修正例によれば、追加または別法として、静電走査偏向器アセンブリを設けることができる。いくつかの実施形態によれば、走査偏向器アセンブリは、対物レンズユニット170とビーム分離ユニット160との間に設けることができる。走査偏向器アセンブリは、追加または別法として、対物レンズユニット170の2つ以上の電極のうちの2つの電極間に設けることができる。
【0138】
ステージ(ボックス280内)
図21は、本開示の実施形態による荷電粒子ビーム装置100内に設けることができるステージ180を示す。ステージ180は、運動アセンブリ182を含む。運動アセンブリ182は、標本80を少なくともx方向、y方向、およびz方向に動かすためのドライバを含む。それに応じて、対物レンズユニット170の光軸に対して標本80を動かすことができ、標本80と対物レンズユニット170との間の距離を適合させることができる。ステージ180は、絶縁層184および導電層186を含む。導電層186は、標本を受け取る面を提供する。導電層は、標本80と絶縁層184との間に設けられる。
図20Aに示すように、導電層186を電源288に接続することができる。それに応じて、ウエハをバイアスすることができる。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、絶縁層184は、標本またはウエハを接地から絶縁する。それに応じて、標本を電位に、たとえば少なくとも5kVの高電位に設定することができる。標本をバイアスすることで、荷電粒子ビーム装置の特定の領域内の電圧を低減させながら、荷電粒子ビーム装置の構成要素間に電圧を提供することが可能になり、これは電気光学の目的で有益である。たとえば、エミッタ111および標本80を負の電圧にバイアスすることができる。それに応じて、エミッタと標本との間の他の構成要素を、低減された(正の)電圧にバイアスすることができる。それに応じて、2つ以上の電極、ALA、コリメータ、対物レンズユニットなどは、偏向、収差補正、集束などのためのより低い電圧に加えて、高い電圧を必要としなくなる。
【0140】
4つ以上の1次ビームレットによって標本を検査する方法の実施形態について、
図22に示す流れ図を参照して説明する。動作1221で、荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームが生成され、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、4つ以上の1次ビームレットが生成される。それに応じて、1次ビームレットのアレイを提供することができる。動作1222で、コリメータによって、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットが、互いに対して偏向される。たとえば、1次ビームレットは、平行になるように偏向させることができる。動作1223で、走査偏向器アセンブリによって、4つ以上の1次ビームレットが標本の表面にわたって走査され、対物レンズユニットによって標本上に集束されて、4つ以上の信号ビームレットを生成する。動作1224で、4つ以上の信号ビームレットは、検出距離を有する検出面上に集束され、1つまたは複数の検出面が、4つ以上の1次ビームレットのそれぞれの1次ビームレット間に配置される。動作1225で、ビーム分離ユニットによって、4つ以上の信号ビームレットが4つ以上の1次ビームレットから分離され、4つ以上の信号ビームレットは検出距離をあけて検出面へ案内される。本開示の実施形態によれば、ビームレット距離は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。それに応じて、対物レンズユニット内の開口部は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。本開示の実施形態によれば、検出距離は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。それに応じて、検出距離をあけて検出面間のピッチを提供することができ、かつ/または信号ビームレットは、検出距離で検出面上に衝突する。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、検出距離は、特に検出ユニットの平面において、1次ビームレット間のピッチに対応する。さらに、追加または代替の修正例によれば、検出面において、4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整することができ、特に検出距離は、検出面上の4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズより大きい。
【0141】
本開示のいくつかの実施形態は、対物レンズユニットの電極の開口部が隔置される、200μm以上、特に400μm以上のビームレット距離または開口距離を提供する。それに応じて、開口部は、たとえば100μm以上、特に200μm以上のサイズを有することができる。したがって、検出面上に案内および/または集束することができる信号電子の数は、改善された検出効率を提供する。たとえば、検出距離、すなわち検出面の距離は、開口距離に類似したものとすることができる。さらに、対物レンズユニットの電極は、信号ビームレットを検出面上に集束させることができる。それに応じて、対物レンズユニットの電極内の開口部のサイズ、および対応する開口距離は、任意選択で信号ビームレットの集束と組み合わせて、有利な収集効率を提供する。
【0142】
本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極を有する対物レンズユニット内で、1次ビームレットを偏向させることができ、かつ/または非点収差を補正することができる。さらに、追加または別法として、標本を支持するステージ上の標本をバイアスすることができ、ステージは絶縁層を有する。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置内のエネルギーは、荷電粒子ビーム装置内の場所に応じて変化する。一例を以下に示す。たとえば、多開孔レンズ板122の前の減速モードで2つ以上の電極124が使用される、たとえば
図3Aおよび
図3Bに例示的に示す構成において、ビームエミッタの後かつ多開孔レンズ板の前の1次荷電粒子ビームのエネルギーは、約15kVとすることができ、アレイの前で約3kVまで減速させられる。多開孔レンズ板の後かつコリメータの前に、荷電粒子ビーム装置のカラム内のエネルギーは、約3kVとすることができる。いくつかの実施形態では、コリメータは、1次荷電粒子ビームレットを約15kVのエネルギーまで加速することができる。1次荷電粒子ビームレット(対物レンズによって減速される)の入射エネルギーは、1keVを下回り、たとえば約300eVとすることができる。
【0144】
加えて、本明細書に記載する実施形態による荷電粒子ビーム装置、および荷電粒子ビーム装置によって標本を検査する方法は、標本上に1次荷電粒子ビームレットの小さいスポットサイズを提供する。スポットサイズは、単一の1次荷電粒子ビームレットによって照射される標本上の領域の直径であることが理解されよう。たとえば、本明細書に記載する実施形態による1次荷電粒子ビームレットのアレイのうちの単一の1次荷電粒子ビームレットのスポットサイズは、典型的には20nm未満、より典型的には10nm未満、さらにより典型的には5nm未満とすることができる。いくつかの実施形態によれば、単一の1次荷電粒子ビームレットは、本明細書に記載する実施形態によるビーム源による1次荷電粒子ビームレットのアレイの生成により、高い電流密度を有することができる。高い電流密度は、信号対雑音比、したがって荷電粒子ビーム装置のスループットを増大させるのに役立つ。
【0145】
上述したように、本明細書に記載する実施形態による荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームレットのアレイを提供することを可能にする。いくつかの実施形態によれば、1次荷電粒子ビームレットのアレイは、典型的には1つのカラムにつき3つ以上の1次荷電粒子ビームレット、より典型的には10個以上の1次荷電粒子ビームレットを含むことができる。本明細書に記載するいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載する実施形態による荷電粒子ビーム装置、および荷電粒子ビーム装置によってサンプルを検査する方法は、荷電粒子ビーム装置の1つのカラム内に、サンプル表面において互いに距離を有する1次荷電粒子ビームレットのアレイを提供する。たとえば、1つのカラム内の2つの1次荷電粒子ビームレット、すなわち行の方向における隣接する荷電粒子ビームレット間の距離は、典型的には、0.2mm以上および/または3mm以下とすることができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する実施形態による2つ以上の荷電粒子ビーム装置を、マルチカラムマルチビーム顕微鏡(MCM)内に配列することができる。複数のカラムが各々、標本を検査するために1次荷電粒子ビームレットのアレイを有することで、プロセス速度およびスループットがさらに増大する。
【0147】
図23は、荷電粒子ビーム装置アセンブリを示し、本開示の実施形態による3つの荷電粒子ビーム装置100がアレイ内に設けられている。いくつかの実施形態によれば、1次元アレイまたは2次元アレイなどのアレイ内に、1つまたは複数の荷電粒子ビーム装置を設けることができる。本開示の実施形態によれば、荷電粒子ビーム装置は各々、荷電粒子ビーム源110と、2つ以上の電極、すなわち1次荷電粒子ビームのための開口部を有するまたは1次荷電粒子ビームレットに共通の開口部を有する電極と、開孔レンズアレイと、コリメータ130と、任意選択で検出ユニット150と、任意選択でビーム分離ユニット160と、対物レンズユニット170とを含み、これには、追加または別法として本開示に互いに関して説明した様々な修正例が含まれる。
【0148】
図23に示す荷電粒子ビーム装置は、複数のカラムを含み、各カラムは、カラム内に複数のビームレットを有する。複数のカラムは、標本80を有する標本ステージの上に配置される。それに応じて、マルチカラムマルチビーム装置は、標本、サンプルまたはウエハ、特に単一の標本を検査するように構成することができる。
【0149】
本開示の実施形態は、複数の利点を提供し、利点のいくつかは次のように説明される。特に信号電子の改善された収集効率に照らして、EBIのためのスループットを増大させることができ、1次ビームレットのアレイの周囲における1次ビームレットに対して、収差、特に低減された八重極収差を低減させることができ、標本上の1次ビームレットの全体的なビーム電流を増大させることができ、それにより撮像に対する信号対雑音比が増大し、1次ビームレットに対する収差、特に六重極収差を低減させることができ、特に多開孔レンズ板のビーム制限開孔に対する汚染を除去することができ、したがって保守の必要を低減させることができ、1次ビームレットのアレイのうちの1次ビームレットのピッチを、コリメータにおいて調整することができ、コリメータにおける1次ビームレットのビーム調整を測定することができ、対物レンズユニットによって、標本上で個々の1次ビームレットのビーム位置を調整することができる。さらに、多開孔板から標本への衝突までの1次ビームレットの分離により、クロストークが低減される。
【0150】
上記は実施形態を対象とするが、本発明の範囲から逸脱することなく、他のさらなる実施形態を考案することができ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置であって、
1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板と、
前記1次荷電粒子ビームまたは前記4つ以上の1次ビームレットのための1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、前記2つ以上の電極および前記多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、
検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が前記4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、
前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、
3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置され、前記対物レンズユニットが、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させ
て4つ以上の信号ビームレットを生成し、前記4つ以上の信号ビームレットを前記検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットと、
前記標本を支持するためのステージとを備える荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記開口距離が、200μm以上、特に400μm以上である、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記対物レンズユニットが、前記検出面上の前記4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整するために4つ以上の電極を備える、請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記4つ以上の信号ビームレットの前記スポットサイズが、検出距離、特に前記開口距離に類似した検出距離に適合される、請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記4つ以上の1次ビームレットを前記4つ以上の信号ビームレットから分離するためのビーム分離ユニットを更に備え、
前記ビーム分離ユニットが、
第1の静電偏向器と、
第2の静電偏向器と、
前記第1の静電偏向器と前記第2の静電偏向器との間に設けられた磁気偏向器とを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記第1の静電偏向器、前記第2の静電偏向器、および前記磁気偏向器が、磁気回路を形成する、請求項5に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記第1の静電偏向器および前記第2の静電偏向器が各々、前記4つ以上の1次ビームレットの行間に少なくとも2つの細長い電極を含む、請求項5または6に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
前記多開孔レンズ板の前記複数の開孔が、開孔アレイを形成し、前記開孔アレイ内の開孔の数が、前記標本に衝突する1次ビームレットの数より大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
前記多開孔レンズ板の前記複数の開孔が、正方形の形状または本質的に正方形の形状を有し、前記本質的に正方形の形状が、丸い角を有する正方形の形状である、請求項1~8のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
前記多開孔レンズ板を加熱するためのヒータ
をさらに備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
前記多開孔レンズ板と前記コリメータとの間に設けられた位置合わせシステム
をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
前記位置合わせシステムが、前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させるために少なくとも1つの四重極を含む、請求項11に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
前記多開孔レンズ板と前記対物レンズユニットとの間に1つまたは複数の開孔アレイをさらに備え、前記1つまたは複数の開孔アレイが各々、前記4つ以上の1次ビームレットのための複数の開孔を有する、
請求項12に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項14】
前記コリメータが、前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの第1の開孔アレイと、前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの第2の開孔アレイとの間に設けられる、請求項13に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの少なくとも1つの開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面に取り付けられた流速計
をさらに備える、請求項13または14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項16】
前記位置合わせシステムが、前記多開孔レンズ板と前記少なくとも1つの開孔アレイとの間に設けられる、請求項15に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項17】
前記1つまたは複数の開孔アレイのうちの少なくとも1つのための開孔アレイホルダをさらに備え、前記開孔アレイホルダが、第1の真空区画を第2の真空区画から分離する、
請求項13または14に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項18】
前記コリメータが、
1行の前記4つ以上の1次ビームレットを第1の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第1の細長い電極と、1行の前記4つ以上の1次ビームレットを前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って偏向させるための2つ以上の第2の細長い電極とを備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項19】
前記コリメータが、前記コリメータから互いに平行に現れるように、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの前記第1の1次ビームレット、前記第2の1次ビームレット、前記第3の1次ビームレット、および前記第4の1次ビームレットを偏向させるように構成される、請求項1~18のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記対物レンズユニットが、
前記3つ以上の電極のうちの2つの電極間に設けられた1つまたは複数の絶縁板を備え、前記1つまたは複数の絶縁板が、前記4つ以上の1次ビームレットを前記絶縁板の1つの開口部に通すための1つの開口部を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記1つまたは複数の絶縁板が、標本の方へ進む前記1次ビームレットを減速させるための減速場を可能にするように構成され、最後から2つ目の電極と最後の電極との間の減速場が、少なくとも5kV/mmである、請求項20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
前記対物レンズユニットの前記3つ以上の電極のうちの少なくとも1つが、1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極、特に1つの1次ビームレットにつき8つ以上の偏向電極を備える、請求項1~21のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項23】
前記4つ以上の偏向電極の各々が、前記偏向電極の個々のバイアスを可能にするように、絶縁ワイアによって接続される、請求項22に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項24】
前記絶縁ワイアが、前記4つ以上の1次ビームレットによって形成されたアレイの側でコネクタに接続される、請求項23に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項25】
前記標本を支持するための前記ステージが、
前記標本をバイアスすることを可能にするように構成された絶縁層を備える、請求項1~24のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1項に記載の第1の荷電粒子ビーム装置と、
1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査するための第2の荷電粒子ビーム装置とを備え、前記第2の荷電粒子ビーム装置が、
1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、
前記1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板と、
前記1次荷電粒子ビームまたは前記4つ以上の1次ビームレットのための1つの開口部を有する2つ以上の電極であり、前記2つ以上の電極および前記多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる、2つ以上の電極と、
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータと、
検出面を有する検出ユニットであり、1つまたは複数の検出面が前記4つ以上の1次ビームレットのビーム経路間に配置される、検出ユニットと、
前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、
3つ以上の電極を有する対物レンズユニットであり、各電極が前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置され、前記対物レンズユニットが、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させ
て4つ以上の信号ビームレットを生成し、前記4つ以上の信号ビームレットを前記検出面上に集束させるように構成される、対物レンズユニットとを備える、
荷電粒子ビーム装置アセンブリ。
【請求項27】
前記第1の荷電粒子ビーム装置および前記第2の荷電粒子ビーム装置が、前記標本の表面の異なる部分を同時に照射または検査するように、前記標本の上に互いに隣接して配置される、請求項26に記載の荷電粒子ビーム装置アセンブリ。
【請求項28】
4つ以上の1次ビームレットによって標本を検査する方法であって、
荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、
多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、前記4つ以上の1次ビームレットを生成することと、
コリメータによって、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、
走査偏向器アセンブリによって、前記標本の表面にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
対物レンズユニットによって、前記4つ以上の1次ビームレットを前記標本上に集束させて、4つ以上の信号ビームレットを生成することであり、前記対物レンズユニットの各電極が、前記4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有し、前記開口部が開口距離をあけて隔置される、生成することと、
前記4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させることであり、1つまたは複数の検出面が、前記4つ以上の1次ビームレットのそれぞれの1次ビームレット間に配置される、集束させること
とを含む方法。
【請求項29】
前記開口距離が、200μm以上、特に400μm以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検出面内の前記4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整することをさらに含み、特に検出距離が、前記検出面上の前記4つ以上の信号ビームレットの前記スポットサイズより大きい、
請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
ヒータによって、前記多開孔レンズ板を加熱することをさらに含む、
請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
測定される電流を最小にし、または信号ビームレットからの信号を最大にするように、コリメータの上流で位置合わせシステムを制御すること
をさらに含む、請求項28~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記4つ以上の1次ビームレットのうちの前記第1の1次ビームレット、前記第2の1次ビームレット、前記第3の1次ビームレット、および前記第4の1次ビームレットを互いに対して平行になるように偏向させること
をさらに含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記対物レンズユニットが、3つ以上の電極を備え、前記方法が、
前記3つ以上の電極のうちの最後から2つ目の電極と最後の電極との間の前記4つ以上の1次ビームレットを減速させることをさらに含み、偏向場が少なくとも5kV/mmである、請求項28~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
1つの1次ビームレットにつき4つ以上の偏向電極によって、前記対物レンズユニット内の前記1次ビームレットを偏向および/または補正すること
をさらに含む、請求項28~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記標本を支持するステージ上の前記標本をバイアスすることをさらに含み、前記ステージが絶縁層を有する、
請求項28~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
抽出器によって、前記1次荷電粒子ビームを前記荷電粒子ビーム源から抽出することと、
抽出器の後に、前記1次荷電粒子ビームを加速させることと、
前記2つ以上の電極によって、前記1次荷電粒子ビームを前記多開孔レンズ板の方へ減速させることとをさらに含み、前記多開孔レンズ板の上流に位置する前記2つ以上の電極のうちの最後の電極と前記多開孔レンズ板との間の第1の静電界が、前記2つ以上の電極のうちの最後から2つ目の電極と最後の電極との間の第2の静電界より小さい、
請求項28~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記減速させることが、前記多開孔レンズ板および前記2つ以上の電極によって形成されるレンズのCsおよびCcが最小になり、前記コリメータにおける前記4つ以上の1次ビームレットのピッチが前記コリメータのコリメータピッチに整合されるように提供される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記減速させることが、前記コリメータにおける前記開孔の像面湾曲が0になるように提供される、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
4つ以上の1次ビームレットのアレイを位置合わせする方法であって、
荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームを生成することと、
多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、前記4つ以上の1次ビームレットを生成することと、
コリメータによって、前記4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させることと、
開孔アレイ内の開口部にわたって前記4つ以上の1次ビームレットを走査するように、前記コリメータの上流で位置合わせシステムを制御することと、
前記開孔アレイ上の1つまたは複数の導電面で電流を測定することとを含む方法。
【請求項41】
前記位置合わせシステムが、前記1つまたは複数の導電面における電流を最小にするように制御される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記1つまたは複数の導電面が、前記開孔アレイ内の前記開口部間に設けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記位置合わせシステムが、信号ビームレットからの信号を増大させるように制御される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記位置合わせシステムが、前記1つまたは複数の導電面における電流を最大にするように制御される、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記1つまたは複数の導電面が、前記開孔アレイ内の前記開口部によって形成された開口部アレイの外側に設けられる、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記位置合わせシステムを制御することが、
a)前記開孔板の平面内で少なくとも第1の方向において、偏向場、特に1つの偏向場によって前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
b)前記開孔板の前記平面内で前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記4つ以上の1次ビームレットを走査することと、
c)前記開孔板の平面内で少なくとも第3の方向において、四重極場によって前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、
d)前記開孔板の平面内で少なくとも第4の方向において、四重極場によって前記4つ以上の1次ビームレット間のピッチを適合させることと、
e)前記開孔板の前記平面内で前記4つ以上の1次ビームレットによって形成されたアレイを回転させることとを含む制御手順のうちの1つまたは複数を含む、請求項40~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
制御手順a)および/またはb)、制御手順c)および/またはd)、ならびに制御手順e)が順次実行される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
制御手順a)および/またはb)、制御手順c)および/またはd)、ならびに制御手順e)が反復的に順次実行される、請求項46または47に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
いくつかの実施形態によれば、1次ビームレットのアレイによって標本を照射または検査する荷電粒子ビーム装置が提供される。荷電粒子ビーム装置は、1次荷電粒子ビームを生成するための荷電粒子ビーム源と、1次荷電粒子ビームから4つ以上の1次ビームレットを形成するための複数の開孔を有する多開孔レンズ板とを含む。1つの開口部を有する、たとえば1次荷電粒子ビームまたは4つ以上の1次ビームレットのための各々1つの開口部を有する2つ以上の電極が設けられ、2つ以上の電極および多開孔レンズ板をバイアスして集束作用を提供することができる。荷電粒子ビーム装置は、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットを互いに対して偏向させるためのコリメータをさらに含む。荷電粒子ビーム装置は、標本の表面にわたって4つ以上の1次ビームレットを走査するための走査偏向器アセンブリと、3つ以上の電極を有する対物レンズユニットとをさらに含み、各電極が4つ以上の1次ビームレットのための開口部を有する。開口部は、開口距離をあけて隔置され、対物レンズユニットは、4つ以上の1次ビームレットを標本上に集束させるように構成される。いくつかの実装例によれば、対物レンズユニットは、4つ以上の信号ビームレットを検出面上に集束させるようにさらに構成することができる。荷電粒子ビーム装置は、標本を支持するためのステージをさらに含む。対物レンズユニットの3つ以上の電極のうちの少なくとも1つは、各々1つの1次ビームレットにつき開口部を有する1つの1次ビームレットにつき4つ以上、特に、各々1つの1次ビームレットにつき開口部を有する1つの1次ビームレットにつき8つ以上の偏向電極と、標本を支持するステージとを含む。それに応じて、個々の1次ビームレットのビーム位置を標本上で調整することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
4つ以上の1次ビームレットによって標本を検査する方法の実施形態について、
図22に示す流れ図を参照して説明する。動作1221で、荷電粒子源によって、1次荷電粒子ビームが生成され、多開孔レンズ板および2つ以上の電極によって、4つ以上の1次ビームレットが生成される。それに応じて、1次ビームレットのアレイを提供することができる。動作1222で、コリメータによって、4つ以上の1次ビームレットのうちの第1の1次ビームレット、第2の1次ビームレット、第3の1次ビームレット、および第4の1次ビームレットが、互いに対して偏向される。たとえば、1次ビームレットは、平行になるように偏向させることができる。動作1223で、走査偏向器アセンブリによって、4つ以上の1次ビームレットが標本の表面にわたって走査され、対物レンズユニットによって標本上に集束されて、4つ以上の信号ビームレットを生成する。動作1224で、4つ以上の信号ビームレットは、検出距離を有する検出面上に集束され、1つまたは複数の検出面が、4つ以上の1次ビームレットのそれぞれの1次ビームレット間に配置される。
特に、検出距離は、対物レンズユニットの電極の開口部が隔置される開口距離に類似したものであり得る。動作1225で、ビーム分離ユニットによって、4つ以上の信号ビームレットが4つ以上の1次ビームレットから分離され、4つ以上の信号ビームレットは検出距離をあけて検出面へ案内される。本開示の実施形態によれば、ビームレット距離は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。それに応じて、対物レンズユニット内の開口部は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。本開示の実施形態によれば、検出距離は、200μm以上、特に400μm以上とすることができる。それに応じて、検出距離をあけて検出面間のピッチを提供することができ、かつ/または信号ビームレットは、検出距離で検出面上に衝突する。本明細書に記載する他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、検出距離は、特に検出ユニットの平面において、1次ビームレット間のピッチに対応する。さらに、追加または代替の修正例によれば、検出面において、4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズを調整することができ、特に検出距離は、検出面上の4つ以上の信号ビームレットのスポットサイズより大きい。
【国際調査報告】