(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】オリゴマーの製造装置
(51)【国際特許分類】
C07C 2/06 20060101AFI20221214BHJP
C07C 11/107 20060101ALI20221214BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20221214BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221214BHJP
【FI】
C07C2/06
C07C11/107
C08F2/01
C07B61/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507501
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2021008786
(87)【国際公開番号】W WO2022065645
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121969
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ホ・スン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
【テーマコード(参考)】
4H006
4J011
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AB60
4H006AB70
4H006AC21
4H006BA14
4H006BA45
4H006BC31
4H006BD21
4J011BB01
4J011BB17
4J011HB06
(57)【要約】
本発明は、オリゴマーの製造装置に関し、より詳細には、下部に第1気相反応物投入口が備えられた気相領域と、前記気相領域の上部で前記気相反応物と接触する反応媒体を含む反応領域とを含む反応器と、前記気相領域の反応器の内壁に備えられた第2気相反応物投入口、および前記第2気相反応物投入口と対向する反応器の内壁に備えられた第3気相反応物投入口と、前記第2気相反応物投入口に連結された第1噴射ノズルおよび第3気相反応物投入口に連結された第2噴射ノズルとを含むオリゴマーの製造装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に第1気相反応物投入口が備えられた気相領域と、前記気相領域の上部で前記気相反応物と接触する反応媒体を含む反応領域とを含む反応器と、
前記気相領域の反応器の内壁に備えられた第2気相反応物投入口、および前記第2気相反応物投入口と対向する反応器の内壁に備えられた第3気相反応物投入口と、
前記第2気相反応物投入口に連結された第1噴射ノズル、および第3気相反応物投入口に連結された第2噴射ノズルとを含む、オリゴマーの製造装置。
【請求項2】
前記第1気相反応物投入口と連結された第1気相反応物供給ラインと、
前記第1気相反応物供給ラインから分岐され、前記第2気相反応物投入口と連結された第2気相反応物供給ラインおよび前記第3気相反応物投入口と連結された第3気相反応物供給ラインと、
前記第1、第2、および第3気相反応物供給ラインにそれぞれ備えられた第1、第2および第3流量調節装置とをさらに含む、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項3】
前記反応媒体は、液体状態である、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項4】
前記第1気相反応物投入口は、前記反応器の下部の中央に位置する、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項5】
前記気相領域と反応領域との間に備えられた多孔分散板をさらに含む、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項6】
前記第2気相反応物投入口および第3気相反応物投入口の上部の反応器の内壁に備えられた第1デフレクタ(deflector)および第2デフレクタをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項7】
前記第1噴射ノズルおよび第2噴射ノズルから投入される気相反応物の投入角度は、反応器の下部方向に、それぞれ、40~50゜である、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項8】
前記気相領域の高さは、反応器の直径に対して70~90%である、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項9】
前記反応領域に反応媒体を供給する反応媒体供給ラインと、
前記反応領域から生成物を排出する生成物排出ラインと、
前記反応器から未反応の蒸気を排出する未反応蒸気排出ラインとをさらに含む、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項10】
前記気相反応物は、エチレンを含み、前記オリゴマーは、アルファオレフィンを含む、請求項1に記載のオリゴマーの製造装置。
【請求項11】
請求項2に記載のオリゴマーの製造装置において、
前記第1気相反応物投入口の閉塞(blocking)時に、前記第1流量調節装置を閉鎖(close)し、前記第2および第3流量調節装置を開放(open)して、前記第2および第3気相反応物供給ラインを介して前記気相領域に気相反応物を供給する、オリゴマーの製造方法。
【請求項12】
前記第2気相反応物供給ラインおよび第3気相反応物供給ラインを介して前記気相領域に供給される気相反応物の流量比率は、前記第1気相反応物供給ラインに供給される気相反応物の全流量に対して、それぞれ、40~60%である、請求項11に記載のオリゴマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月22日付けの韓国特許出願第10-2020-0121969号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、オリゴマーの製造装置に関し、より詳細には、反応器の内部でウィーピング(weeping)現象が発生した時に、工程不安定性を短時間で最小化することで、工程の運転を中断させることなく安定的な運転時間を確保するためのオリゴマーの製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用されており、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として頻繁に使用されている。
【0004】
前記アルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンオリゴマー化反応が行われる反応器の形態として、気相のエチレンを反応物として使用して触媒を含む液相の反応媒体を含む反応領域との接触により、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)を行う気泡塔反応器(bubble column reactor)が使用されている。
【0005】
気泡塔反応器は、反応器の下部に設置された多孔分散板を介して気相反応物が液相の反応媒体を含む反応領域に流入されると同時に分散され、分散された気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、自然的な混合が行われる。
【0006】
この際、効率的な混合のための最も理想的な気相反応物投入口の位置は、反応器の下部の中央であるが、混合が行われる初期安定化ステップでは、反応によって目的とするオリゴマー以外の、触媒反応中に生成される副生成物である高分子による、気相反応物の分散流れの妨害、または運転者の流量調節装置の操作ミスによる、瞬間的な気相反応物の供給流量の減少などの問題が発生し得る。
【0007】
その結果として、反応領域内の一部の液相の反応媒体が反応器の下部の気相領域に落下する(dropping)現象であるウィーピング(weeping)が発生し得、この場合、気相領域に落下した液相の反応媒体が気相反応物投入口を閉塞(blocking)して、気体の投入および流れを妨害し続ける可能性がある。これによって、反応領域内での混合効率が著しく減少し、全工程の運転を中断(shut down)する問題が発生する。
【0008】
したがって、前記のような問題を解決するためには、反応器の内部でウィーピング現象が発生した時に、工程不安定性を短時間で最小化することで、工程の運転を中断させることなく、安定的な運転時間を確保するための方法が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、反応器の内部でウィーピング現象が発生した時に、工程不安定性を短時間で最小化することで、工程の運転を中断させることなく、安定的な運転時間を確保するためのオリゴマーの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、下部に第1気相反応物投入口が備えられた気相領域と、前記気相領域の上部で前記気相反応物と接触する反応媒体を含む反応領域とを含む反応器と、前記気相領域の反応器の内壁に備えられた第2気相反応物投入口、および前記第2気相反応物投入口と対向する反応器の内壁に備えられた第3気相反応物投入口と、前記第2気相反応物投入口に連結された第1噴射ノズル、および第3気相反応物投入口に連結された第2噴射ノズルとを含むオリゴマーの製造装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、本発明によるオリゴマーの製造装置において、前記第1気相反応物投入口の閉塞時に、前記第1流量調節装置を閉鎖(close)し、前記第2および第3流量調節装置を開放(open)して、前記第2および第3気相反応物供給ラインを介して前記気相領域に気相反応物を供給するオリゴマーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるオリゴマーの製造装置は、反応器の内部でウィーピング現象が発生した時に、工程不安定性を短時間で最小化することで、工程の運転を中断させることなく、安定的な運転時間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるオリゴマーの製造装置を示す模式図である。
【
図2】従来のオリゴマーの製造のための気泡塔反応器の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)および固体(solid)のいずれか一つ以上が含まれたものを意味し得る。
【0016】
本発明において、「#」が正の整数である「C♯」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C♯+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0017】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、下記
図1~
図2を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施形態によると、オリゴマーの製造装置が提供される。前記オリゴマーの製造装置は、下部に第1気相反応物投入口10が備えられた気相領域110と、前記気相領域の上部で前記気相反応物と接触する反応媒体RMを含む反応領域120とを含む反応器100と、前記気相領域110の反応器100の内壁に備えられた第2気相反応物投入口20および前記第2気相反応物投入口20と対向する反応器100の内壁に備えられた第3気相反応物投入口30と、前記第2気相反応物投入口20に連結された第1噴射ノズル22および第3気相反応物投入口30に連結された第2噴射ノズル32とを含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記反応器100は、触媒および溶媒の存在下で単量体をオリゴマー化反応させてオリゴマー生成物を製造するためのものであることができる。
【0020】
具体的な例として、前記気相領域110に供給される気相反応物は、前記単量体を含むことができ、前記反応領域120に含まれた前記反応媒体RMは、前記触媒および溶媒を含むことができる。すなわち、前記気相領域110に供給される気相の単量体を含む気相反応物が、前記触媒および溶媒を含む液相の反応媒体RMを含む反応領域120と接触してオリゴマー化反応が行われることができ、これにより、オリゴマー生成物を生成することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記反応器100は、連続工程に適する反応器100であることができる。例えば、前記反応器100は、気泡塔反応器(bubble column reactor)であることができ、これにより、連続的にオリゴマー生成物を製造することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記単量体は、エチレン単量体を含むことができる。具体的な例として、前記エチレン単量体を含む気相反応物を反応器100に供給し、オリゴマー化反応を経て、目的とするアルファオレフィン生成物を製造することができる。
【0023】
この際、前記オリゴマー化反応は、反応器100内の気相領域110の上部領域で行われ、触媒および助触媒の存在下で溶媒が溶解された液体状態の反応媒体RM内で単量体のオリゴマー化反応が行われることができる。このように、単量体のオリゴマー化反応が行われる反応媒体RMからなる領域を反応領域120と定義することができる。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量体化(trimerization)、四量体化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量化(multimerization)と言う。
【0024】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として頻繁に使用される。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンのようなアルファオレフィンは、例えば、エチレンの三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0025】
前記反応媒体RMは、反応媒体供給ラインL4を介して反応領域120に供給されることができる。具体的な例として、前記反応媒体供給ラインL4は、反応器100の一側面(side)を介して反応領域120と連結されたものであることができる。
【0026】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0027】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレートおよびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0028】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0029】
上述のように、前記エチレンのオリゴマー化反応が行われる反応器の形態として、気相のエチレン単量体を反応物として使用して触媒を含む液相の反応媒体RMを含む反応領域120との接触によりエチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)を行う気泡塔反応器(bubble column reactor)が使用されることができる。
【0030】
前記気泡塔反応器は、反応器100内の気相領域110と反応領域120との間に備えられた多孔分散板130を介して気相反応物が液相の反応媒体RMを含む反応領域120に流入されると同時に分散され、分散された気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、液相の反応媒体RMと気相反応物の自然的な混合が行われる。この際、多孔分散板130を介して反応領域120に流入される気相反応物の分散力は、前記液相の反応媒体RMから下方に作用する水頭圧に比べて大きく維持されることで、前記液相の反応媒体RMが前記反応領域120内に滞留することができる。
【0031】
また、前記気相反応物と液相の反応媒体RMの効率的な混合のための最も理想的な気相反応物投入口の位置は、反応器の下部の中央であることができる。しかし、前記のように混合が行われる初期安定化ステップでは、反応によって、目的とするオリゴマー以外の、触媒反応中に生成される副生成物である高分子(具体的には、C10+高分子)による気相反応物の分散流れの妨害、または運転者の流量調節装置の操作ミスよる瞬間的な気相反応物の供給流量の減少などの問題が発生し得る。
【0032】
その結果として、反応領域120内の一部の液相の反応媒体RMが反応器の下部の気相領域110に落下する(dropping)現象であるウィーピング(weeping)が発生し得、この場合、気相領域110に落下した液相の反応媒体RMが気相反応物投入口を閉塞(blocking)して、気体の投入および流れを妨害し続ける可能性がある。これによって、反応領域110内での混合効率が著しく減少し、全工程の運転を中断(shut down)する問題が発生する。
【0033】
したがって、本発明では、反応器の内部でウィーピング現象が発生した時に、工程不安定性を短時間で最小化することで、工程の運転を中断させることなく、安定的な運転時間を確保するための方法として、本発明によるオリゴマーの製造装置を提供する。
【0034】
本発明の一実施形態によると、気相反応物は、反応器100の下部に備えられた第1気相反応物投入口10を介して反応器100内の気相領域110に供給されることができる。具体的な例として、前記気相の反応物は、反応器100の外部から第1気相反応物投入口10と連結された第1気相反応物供給ラインL1を介して供給されることができる。
【0035】
このように、気相領域110に供給された気相反応物は、反応器100内の気相領域110と反応領域120との間に備えられた多孔分散板130を介して、前記気相領域110の上部に位置し、液相の反応媒体RMを含む反応領域120に流入されると同時に分散され、分散された気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、自然的な混合が行われる。
【0036】
前記多孔分散板130は、気相反応物が通過することができる大きさを有する多数のホール(hole)を含み、気相反応物が通過しながら反応領域120に分散することができる起動力を気相反応物に提供する役割を果たすことができる。具体的な例として、前記気相反応物が、多孔分散板130を通過して反応領域120に流入されて、気相反応物が上昇しようとする力と液相の反応媒体RMが押圧する力が複合的に発生する。これにより、上昇流と下降流による渦流現象(turbulence)が発生することで、気相反応物の分散、および気相反応物と液相の反応媒体RMの混合が行われることができる。
【0037】
前記反応領域120内で、反応媒体RMと気相反応物の混合過程で、気相反応物の触媒反応によるオリゴマー化反応が行われる。前記オリゴマー化反応により生成されたオリゴマー生成物は、液体状態であり、反応器100の他側面(side)、すなわち、上述の反応器100内の反応媒体供給ラインL4が備えられた一側面(side)と対向する他側面(side)に備えられた生成物排出ラインL5を介して排出されることができる。
【0038】
前記生成物排出ラインL5を介して排出される生成物排出ストリームには、オリゴマー生成物および溶媒を含むことができ、前記オリゴマー生成物および溶媒は、追加の分離装置(図示せず)を介して分離することができ、分離した溶媒は、反応領域120内で再使用することができる。前記気相反応物としてエチレン単量体を含む場合、例えば、オリゴマー生成物は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むことができる。
【0039】
一方、反応領域120内でオリゴマー化反応されていない未反応物は、気体状態の未反応の蒸気として、反応器100の上部に備えられた未反応蒸気排出ラインL6を介して反応器100の上部に排出されることができる。
【0040】
前記反応領域120内で反応媒体RMと分散された気相反応物の効率的な混合のための最も理想的な気相反応物投入口の位置は、反応器の下部の中央である。これにより、従来、気泡塔反応器では、反応器100の下部の中央位置に第1気相反応物投入口10が備えられていた。
【0041】
しかし、この場合、上述のように、ウィーピング現象によって気相領域110に落下した液相の反応媒体RMが第1気相反応物投入口10を閉塞(blocking)する場合、反応領域110内での混合効率が著しく減少し、全工程の運転を中断(shut down)する問題が発生する。
【0042】
このような問題を解決するために、本発明によるオリゴマーの製造装置は、前記気相領域110の反応器100の内壁に備えられた第2気相反応物投入口20および前記第2気相反応物投入口20と対向する反応器100の内壁に備えられた第3気相反応物投入口30を含むことで、反応中にウィーピング現象によって液相の反応媒体RMによって第1気相反応物投入口10が閉塞される場合、前記第2気相反応物投入口20および第3気相反応物投入口30を介して気相反応物を気相領域110に供給することができる。
【0043】
具体的な例として、前記気相の反応物は、反応器100の外部から、前記第2気相反応物投入口20と連結された第2気相反応物供給ラインL2、および前記第3気相反応物投入口30と連結された第3気相反応物供給ラインL3を介して供給されることができる。
【0044】
より具体的な例として、前記気相の反応物は反応器100の外部から、前記第1気相反応物供給ラインL1から分岐され、前記第2気相反応物投入口20と連結された第2気相反応物供給ラインL2、および前記第3気相反応物投入口30と連結された第3気相反応物供給ラインL3を介して供給されることができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、本発明によるオリゴマーの製造装置は、前記第1、第2、および第3気相反応物供給ラインL1、L2、L3にそれぞれ備えられた第1、第2および第3流量調節装置V1、V2、V3をさらに含むことができる。
【0046】
このように、前記第1、第2、および第3気相反応物供給ラインL1、L2、L3にそれぞれ備えられた第1、第2および第3流量調節装置V1、V2、V3は、それぞれの気相反応物供給ラインに供給される気相反応物の流量を調節する役割を果たすことができる。具体的な例として、前記第1、第2および第3流量調節装置V1、V2、V3は、バルブまたはポンプであることができ、これに限定されるものではなく、より具体的な例として、バルブであることができる。
【0047】
例えば、上記のウィーピング現象によって第1気相反応物投入口10を介した気相反応物の供給が難しくなる場合には、前記第1気相反応物供給ラインL1に備えられた第1流量調節装置V1を閉鎖(close)して、第1気相反応物投入口10に投入される気相反応物ストリームを遮断した後、閉鎖されていた前記第2および第3流量調節装置を開放(open)して、前記第2および第3気相反応物供給ラインL2、L3を介して前記気相領域110に気相反応物を供給することができる。これにより、ウィーピング現象の発生による工程不安定性を短時間で最小化し、工程を中断しなくても安定的な運転時間を確保することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、本発明によるオリゴマーの製造装置は、前記第2気相反応物投入口20に連結された第1噴射ノズル22、および第3気相反応物投入口30に連結された第2噴射ノズル32を含むことができる。すなわち、前記第2および第3気相反応物投入口20、30を介して供給される気相反応物を気相領域110の内部に噴射するための噴射ノズル22、32を含むことができる。
【0049】
具体的な例として、前記第1および第2噴射ノズル22、32は、反応器100内の気相領域110において、前記第2および第3気相反応物投入口20、30のそれぞれに連結されることができる。この際、前記第2および第3気相反応物投入口20、30は、同一の水平線上に位置することができ、これにより、前記第1および第2噴射ノズル22、32また同一の水平線上に位置することができる。すなわち、前記第1および第2噴射ノズル22、32は、反応器100内部で同じ高さに備えられることができる。
【0050】
前記オリゴマーの製造装置は、前記第2気相反応物投入口20から第1噴射ノズルを連結させるための第1ノズル配管24、または前記第3気相反応物投入口30から第2噴射ノズル32を連結させるための第2ノズル配管34をさらに含むことができる。具体的な例として、前記第1ノズル配管420および第2ノズル配管34は、直線形状であることができ、これに限定されるものではない。
【0051】
前記第1および第2噴射ノズル22、32のそれぞれは、少なくとも一つの噴射口を含むことができる。また、前記第1および第2噴射ノズル22、32は、それぞれ、複数個の噴射口を含むスプレーの形態に実現されることができる。例えば、前記第1および第2噴射ノズル22、32の噴射口は、1個~5個、1個~4個または2個~4個であることができる。具体的な例として、
図1に図示されているように、前記第1および第2噴射ノズル22、32は、それぞれ3個の噴射口を含む形態に実現されることができる。
【0052】
前記第1および第2噴射ノズル22、32を介して噴射される気相反応物の噴射圧力は、液相の反応媒体RMから下方に作用する圧力よりも0.1~0.3Mpa高いことができる。前記範囲内の圧力で前記気相反応物が第1および第2噴射ノズル22、32を介して噴射されることで、気相領域110内で均一に分散することができる。このように均一に分散した気相反応物が多孔分散板130を介して反応領域120に流入される場合、液相の反応媒体RMとの混合も均一に行われることができ、反応領域120内での混合効率を向上させる効果がある。
【0053】
本発明の一実施形態によると、本発明によるオリゴマーの製造装置は、前記第2気相反応物投入口20および第3気相反応物投入口30の上部の反応器100の内壁に備えられた第1デフレクタ(deflector)26および第2デフレクタ36をさらに含むことができる。前記第1および第2デフレクタ26、36は、第2気相反応物投入口20および第3気相反応物投入口30を介して、第1および第2噴射ノズル22、32から噴射され上方に流れる気相反応物の流れを逆方向に変化させる役割を果たすことができる。
【0054】
具体的な例として、前記第1および第2デフレクタ24、34は、前記第1噴射ノズル22および第2噴射ノズル32と、前記多孔分散板130との間の領域の反応器100の内壁に備えられることができる。前記気相領域110の反応器100の内壁に備えられた第1噴射ノズル22および第2噴射ノズル32から噴射される気相反応物は、前記多孔分散板130のホール(hole)のうち反応器100の内壁に隣接したホールの方にその流れが偏ることがあるが、上記のように第1および第2デフレクタ24、34を含む場合、かかる偏重流れを防止し、多孔分散板130のすべてのホールに気相反応物の均一な流れを誘導することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記第1噴射ノズル22および第2噴射ノズル32から投入される気相反応物の投入角度は、反応器100の下部方向に40~50゜であることができる。この際、前記投入角度は、前記第2気相反応物投入口20から第1噴射ノズルを連結する第1ノズル配管、または前記第3気相反応物投入口30から第2噴射ノズル32を連結する第2ノズル配管の角度であることができる。
【0056】
具体的な例として、前記第1噴射ノズル22および第2噴射ノズル32から投入される気相反応物の投入角度は、反応器100の下部方向に40~50゜、42~48゜、44~46゜であることができる、この場合、反応器100の内壁方向に位置した多孔分散板130のホール(hole)に気相反応物の流入が偏る現象を最小化することができ、前記反応領域120での反応媒体RMおよび気相反応物の混合効率を向上させることで、オリゴマー化反応効率が向上する効果がある。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記気相領域110の高さは、反応器100の直径に対して、70~90%、70~85%、75~80%であることができる。この場合、反応器100内で気相領域110が十分な緩衝の役割を果たすことができ、液相の反応媒体RMの不安定な下降偏流が発生した時にも、下部に位置した気相領域110へのウィーピング現状の発生を最小化することができ、これにより、気相反応物を気相領域110の真中に位置した第1気相反応物投入口10を介して投入しなくても安定的な運転を行うことができる効果がある。
【0058】
本発明の一実施形態によると、本発明によるオリゴマーの製造装置を用いたオリゴマーの製造方法が提供される。
【0059】
前記オリゴマーの製造方法は、本発明によるオリゴマーの製造装置において、前記第1気相反応物投入口10の閉塞(blocking)時に、前記第1流量調節装置を閉鎖(close)し、前記第2および第3流量調節装置を開放(open)して、前記第2および第3気相反応物供給ラインを介して前記気相領域で気相反応物を供給することであることができる。
【0060】
上述のように、例えば、上記のウィーピング現象によって、前記第1気相反応物投入口10が閉塞(blocking)され、第1気相反応物投入口10を介する気相反応物の供給が難しくなる場合には、前記第1気相反応物供給ラインL1に備えられた第1流量調節装置V1を閉鎖(close)して、第1気相反応物投入口10に投入される気相反応物ストリームを遮断した後、閉鎖されていた前記第2および第3流量調節装置を開放(open)して、前記第2および第3気相反応物供給ラインL2、L3を介して前記気相領域110に気相反応物を供給することができる。これにより、ウィーピング現象発生による工程不安定性を短時間で最小化し、工程を中断しなくても安定的な運転時間を確保することができる。
【0061】
具体的な例として、前記気相領域110の温度が急激に上昇する場合、液相の反応媒体RMが気相領域110に流入されて第1気相反応物投入口10が閉塞されたと判断することができ、これにより、第1流量調節装置V1閉鎖し、第2および第3流量調節装置V2、V3を開放することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、第1流量調節装置V1を閉鎖して、第1気相反応物投入口10に投入される気相反応物ストリームを遮断した場合に、前記第2気相反応物供給ラインL2および第3気相反応物供給ラインL3を介して前記気相領域110に供給される気相反応物の流量比率は、前記第1気相反応物供給ラインL1に供給される気相反応物の全流量に対して、それぞれ、40~60%、45~55%、48~52%であることができる。
【0063】
具体的な例として、前記第2気相反応物供給ラインL2を介して気相領域110に供給される気相反応物の流量は、前記第1気相反応物供給ラインL1に供給される気相反応物の全流量に対して、40~60%、45~55%、48~52%であることができ、前記第3気相反応物供給ラインL3を介して気相領域110に供給される気相反応物の流量は、前記第1気相反応物供給ラインL1に供給される気相反応物の全流量に対して、40~60%、45~55%、48~52%であることができる。この範囲内で、前記多孔分散板130を介する気相反応物の均一な分散効果により、前記反応領域120での反応媒体RMおよび気相反応物の混合効率が向上することができる。
【0064】
例えば、上記のように、前記第2気相反応物供給ラインL2および第3気相反応物供給ラインL3を介して前記気相領域110に供給される気相反応物の流量の比率を調節することは、前記第2流量調節装置V2および第3流量調節装置V3の調節により行われることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記オリゴマーの製造装置は、必要に応じて、流量調節装置(図示せず)、凝縮器(図示せず)、再沸器(図示せず)、ポンプ(図示せず)、冷却施設(図示せず)、フィルタ(図示せず)、撹拌機(図示せず)、分離装置(図示せず)、圧縮機(図示せず)および混合機(図示せず)など、オリゴマーの製造に必要な装置を追加的にさらに設置することができる。
【0066】
以上、本発明によるオリゴマーの製造装置について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明によるオリゴマーの製造装置を実施するために適切に応用され用いられることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 第1気相反応物投入口
20 第2気相反応物投入口
22 第1噴射ノズル
24 第1ノズル配管
26 第1デフレクタ
30 第3気相反応物投入口
32 第2噴射ノズル
34 第2ノズル配管
36 第2デフレクタ
100 反応器
110 気相領域
120 反応領域
130 多孔分散版
L1 第1気相反応物供給ライン
L2 第2気相反応物供給ライン
L3 第3気相反応物供給ライン
L4 反応媒体供給ライン
L5 生成物排出ライン
L6 未反応蒸気排出ライン
V1 第1流量調節装置
V2 第2流量調節装置
V3 第3流量調節装置
RM 反応媒体
【国際調査報告】