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特表2022-552989半芳香族ポリアミドの混合物、及び溶接ラインの強度が向上された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】半芳香族ポリアミドの混合物、及び溶接ラインの強度が向上された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20221214BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20221214BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20221214BHJP
   B29B 7/90 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08L77/06
C08J3/20 Z CFG
B29B7/38
B29B7/90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522870
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078863
(87)【国際公開番号】W WO2021074204
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203279.5
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュヴィーク,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ライター,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ツァイハー,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】シロ,ジモーネ
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フクス,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ティシアー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ツァイフェルト,ヨハン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フリーチュ,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】シャイク,アブドゥラー
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AB09
4F070AB11
4F070AB23
4F070AB24
4F070AC04
4F070AC28
4F070AC46
4F070AD02
4F070AE03
4F070AE04
4F070AE17
4F070AE30
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F201AA29
4F201AB11
4F201AB25
4F201AD16
4F201AL03
4F201BA01
4F201BC01
4F201BD04
4F201BD06
4F201BK13
4F201BK40
4F201BK73
4J002CL031
4J002CL032
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミドA)及び少なくとも1種の半芳香族ポリアミドB)の混合物(なお、半芳香族ポリアミドA)及び半芳香族ポリアミドB)は、それぞれ、テレフタル酸に由来する繰り返し単位を含む)、そのポリアミドの混合物を含むポリアミド成形用組成物、そのポリアミド成形用組成物から製造された成形品、向上された機械的特性(特に、向上された溶接ラインの強度)を有する成形品を製造するための半芳香族ポリアミドの混合物の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- テレフタル酸を含むか又はそれからなる少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとに由来する繰り返し単位を含み、融点Tm1を有する、80~97質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- テレフタル酸を含むか又はそれからなる少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとに由来する繰り返し単位を含み、融点Tm2を有する、3~20質量%の少なくとも1種のポリアミドB)
を含み、
m1はTm2より少なくとも10℃高い、ポリアミド混合物。
【請求項2】
m1がTm2より少なくとも15℃高い、請求項1に記載のポリアミド混合物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリアミドA)が290~340℃の範囲の融点Tm1を有する、請求項1又は2に記載のポリアミド混合物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリアミドB)が、250~315℃、より好ましくは260~280℃の範囲の融点Tm2を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド混合物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリアミドA)及び前記少なくとも1種のポリアミドB)が、少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位を含み、その脂肪族ジアミンが、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2-エチルテトラメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、及びこれらの混合物から独立して選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド混合物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のポリアミドA)が、PA6T/6I、PA6T/DT、PA4T、及びこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載のポリアミド混合物。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリアミドB)が、PA8T、PA9T、PA10T、PA6T/66、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド混合物。
【請求項8】
i)25~100質量%の請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリアミド混合物、
ii)0~75質量%の少なくとも1種の充填剤及び補強剤、
iii)0~50質量%の少なくとも1種の添加剤
を含み、成分i)~iii)は合計100質量%である、ポリアミド成形用組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに一項に記載の少なくとも1種のポリアミドA)を含むポリアミド組成物と少なくとも1種のポリアミドB)を含むポリアミド組成物とを混合して、ドライブレンドを提供することを含み、
前記ポリアミド組成物の各々は、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤ならびに任意にその充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加剤を含む、ポリアミド成形用組成物を製造する方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤ならびに任意にその充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加剤を溶融ブレンドすることを含む、ポリアミド成形用組成物を製造する方法。
【請求項11】
押出機が使用され、以下の工程:
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)を提供する工程、
- 固体状の前記ポリアミドA)を前記押出機の取入口に供給し、前記融点Tm1越えの温度で前記ポリアミドAを融解させる工程、
- ポリマーA)が既に溶融状態にある取入口下流の地点で、側方供給を介して前記ポリアミドB)を前記押出機に供給する工程、
- 任意に、少なくとも1種の充填剤及び補強剤及び/又はそれとは異なる少なくとも1種の添加剤を前記押出機に供給する工程であって、前記の充填剤及び補強剤及び/又は添加剤が、前記の取入口を介して及び/又は取入口下流の地点で、1箇所又は複数個所で前記押出機に供給することができる、工程、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8に記載のポリアミド成形用組成物から製造されるか、又は請求項9~11のいずれか一項に記載の方法により調製される、成形品。
【請求項13】
- 自動車分野向けの部品又は部品の一部としての形である、
- 暖房分野向けの部品又は部品の一部としての形である、
- 飲料水及び工業用プロセス水の分野向けの部品又は部品の一部としての形である、
- 電気若しくは電子の部品又はその一部としての形である、
- 厨房及び家庭用品の部品又はその一部としての形である、
請求項12に記載の成形品。
【請求項14】
請求項8に記載のポリアミド成形用組成物又は請求項9~11のいずれか一項に記載の方法により調製されたポリアミド成形用組成物を射出成形又はブロー成形を行うことにより、成形品を製造する方法。
【請求項15】
向上された機械的特性(特に、向上された溶接ラインの強度)を有する成形品を製造するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド混合物又は請求項8に記載の成形用組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミドA)及び少なくとも1種の半芳香族ポリアミドB)の混合物(なお、半芳香族ポリアミドA)及び半芳香族ポリアミドB)は、それぞれ、テレフタル酸に由来する繰り返し単位を含む)、そのポリアミドの混合物を含むポリアミド成形用組成物、そのポリアミド成形用組成物から製造された成形品、向上された機械的特性(特に、向上された溶接ラインの強度)を有する成形品を製造するための半芳香族ポリアミドの混合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリアミド組成物は、その良好な物理的特性と便利かつ柔軟に様々な物品に成形できる能力とから、多くの応用分野(例えば、自動車、電気/電子部品及び家具)に広く使用されている。ポリアミドの重要なグループは、半結晶性又は非結晶性の熱可塑性半芳香族ポリアミドのグループであり、これらは高い熱安定性で特に注目され、高性能ポリアミド(PPA:ポリフタルアミド)とも呼ばれる。高温用途の成形用組成物に使用されるポリアミドは、幅広い要求を満たす必要があり、一般に、長時間の熱応力下でも良好な機械的特性と良好な加工性とを兼ね備えていることが要求される。
【0003】
或る所望の材料及び機械的特性を有するポリマー成形品を得るために、ポリアミド成形用組成物は、例えばポリアミド成形品の強度及び弾性を高めるために、繊維材料で強化することができる。ポリアミドブレンドは、高い剛性に加えて、良好な靭性と熱変形温度を示すので、技術建設材料の分野で強化ポリアミドブレンドを使用することが知られている。
【0004】
US2007/0117910には、A)ポリアミド66(脂肪族ホモポリアミド)及びB)ポリアミド6T/66(半芳香族コポリアミド)を或る質量範囲でブレンドしたポリアミドマトリックスと補強剤としてのガラス繊維及び炭素繊維の混合物とを含む繊維強化型ポリアミドブレンドが記載されている。強化ポリアミド成形材料は、例えば二軸押出機上で切断繊維又は連続フィラメントと配合することによって、ポリアミドブレンドから調製することができる。
【0005】
射出成形品は、その製造上、通常、溶接ライン(継ぎ目)を含んでいる。この溶接ラインでは、ポリマーの2本のメルトストランド(melt strand)が互いに出会い、実質的に繊維による補強はない。また、この部分では、ポリマーマトリックス内の相互作用が阻害される。従って、溶接ラインは機械的な弱点であり、通常、耐薬品性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US2007/0117910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このような弱点を有さないか或いはより少ない程度にしか有さない成形品を製造することができるポリアミド成形用組成物を提供することにある。
【0008】
驚くべきことに、大量の高融点半芳香族ポリアミドに対して低融点の半芳香族ポリアミドを少量添加して、得られたポリアミド混合物を強化型ポリアミド成形用材料の製造に使用することによってこの目的が達成されることが見出されたのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点において、本発明は、
- 少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸(なお、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を含むか又はそれからなる)及び少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位を含み、融点Tm1を有する、80~97質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- 少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸(なお、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を含むか又はそれからなる)及び少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位を含み、融点Tm2を有する、3~20質量%の少なくとも1種のポリアミドB)
を含み、
m1はTm2より少なくとも10℃高い、ポリアミド混合物を提供する。
【0010】
第2の観点において、本発明は、
i)25~100質量%の上記及び以下に記載の少なくとも1種のポリアミド混合物、
ii)0~75質量%の少なくとも1種の充填剤及び補強剤、
iii)0~50質量%の少なくとも1種の添加剤
を含み、成分i)~iii)は合計100質量%である、ポリアミド成形用組成物を提供する。
【0011】
第3の観点において、本発明は、前記及び以下に記載の少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤、ならびに任意に充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加剤を溶融ブレンドすることを含む、ポリアミド成形用組成物を製造する方法を提供する。
【0012】
第4の観点において、本発明は、本発明によるポリアミド成形用組成物から製造されるか、又は本発明による方法により調製される、成形品を提供する。
【0013】
第5の観点において、本発明は、本発明によるポリアミド成形用組成物又は本発明による方法により調製されたポリアミド成形用組成物の射出成形を行うことにより、成形品を製造する方法を提供する。
【0014】
第6の観点において、本発明は、向上された機械的特性(特に、向上された溶接ラインの強度)を有する成形品を製造するための、上記及び以下に記載するポリアミド混合物又はそれからの成形用組成物の使用方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリアミド混合物
本発明によるポリアミド混合物(ポリマーブレンド)は、少なくとも1種のポリアミドA)と少なくとも1種のポリアミドB)の物理的混合物をベースとしている。この2種の成分は、巨視スケールでブレンドすることも、分子スケールでブレンドすることもできる。巨視スケールでのポリアミド混合物の単純な実施形態は、少なくとも1種のポリアミドA)と少なくとも1種のポリアミドB)とを含むポリアミドの顆粒又はペレットの物理的混合物である。分子スケールでポリアミド混合物を調製するために、少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)は、溶融状態でポリアミドと任意の充填剤及び補強剤及び/又は添加剤とを混合又は/及びブレンドすることによって、既知の方法によって混ぜ合わせることができる。好適な混合機は、コニーダー、ツインスクリュー(共回転及び逆回転)、及び密閉式混合機である。
【0016】
少なくとも1種のポリアミドA)と少なくとも1つのポリアミドB)とのブレンドは、一般に混和できる。従って、DSC分析によれば均質である本発明によるポリアミド混合物を調製することが可能である。対応するポリマーブレンドは、単相構造を有する。この場合、1つのガラス転移温度と1つの融点のみが観察されることになる。
【0017】
本願明細書に記載されている融点(Tm)及びガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。加熱速度及び冷却速度は、それぞれ20K/分であった。
【0018】
融点Tm1は、成分A)のみの融点である。成分A)が1種越えのポリアミドを含むが、1つだけの融点を有する場合には、融点Tm1は、成分A)の1つだけの融点である(それを構成する成分の1つの融点ではない)。成分A)が1種越えのポリアミドを含み、1越えの融点を有する場合には、融点Tm1は、成分A)の最も低い融点である。
【0019】
融点Tm2は、成分B)のみの融点である。成分B)が1種越えのポリアミドを含むが、1つだけの融点を有する場合には、融点Tm2は、成分B)の1つだけの融点である。成分B)が1種越えのポリアミドを含み、1越えの融点を有する場合には、融点Tm2は、成分B)の最も高い融点である。
【0020】
本発明によれば、Tm1は、Tm2よりも少なくとも10℃高い。成分A)及び/又は成分B)が1越えの融点を有する場合には、成分A)の最低融点と成分B)の最高融点との差は、少なくとも10℃である。
【0021】
好ましくは、Tm1はTm2より少なくとも15℃高い。
【0022】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミドA)は、290~340℃、より好ましくは290~330℃の範囲の融点Tm1を有する。
【0023】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミドB)は、250~315℃、より好ましくは260~280℃の範囲内の融点Tm2を有する。
【0024】
本発明によるポリアミド混合物は、テレフタル酸(すなわち、芳香族ジカルボン酸)及び少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位を含み、ポリアミドA)及びB)を含む。これは、任意に、以下に定義されるような更なるコモノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0025】
少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)は、半芳香族ポリアミドである。用語「半芳香族」は、少なくとも1種の芳香族モノマー(通常は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸)に由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の脂肪族モノマー(通常は、少なくとも1種の脂肪族ジアミン)に由来する繰り返し単位とを含むポリアミドを表す。これに対して、用語「完全な脂肪族」ポリアミドは、少なくとも1種の脂肪族カルボン酸モノマー及び少なくとも1種の脂肪族ジアミンモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリアミドを表す。
【0026】
酸成分のモノマーとジアミン成分のモノマーと任意に使用されるモノマーの縮合により、それぞれのモノマーに由来するアミドの形態の繰り返し単位又は末端基が形成される。これらのモノマーは、一般に、ポリアミドA)及びB)に存在するすべての繰り返し単位及び末端基の少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%、特に少なくとも99mol%を占めている。さらに、ポリアミドA)及びB)は、例えばジアミンのようなモノマーの分解反応又は副反応から生じることがある少量の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0027】
ポリアミドは、本発明の文脈において、そのいくつかは当技術分野で慣用されている略語を使用して示され、文字PAの後に数字及び文字が続くものである。これらの略号のいくつかは、DIN EN ISO 1043-1で標準化されている。
【0028】
N(CH)x-COOH型のアミノカルボン酸又は対応するラクタムに由来され得るポリアミドは、PAZ(Zはモノマー中の炭素原子の数を表す)で特定される。例えば、PA6は、ε-カプロラクタム又はω-アミノカプロン酸のポリマーを表す。HN-(CH-NH及びHOOC-(CH-COOHタイプのジアミンとジカルボン酸とに由来するポリアミドは、PAZ1Z2(Z1はジアミン中の炭素原子数、Z2はジカルボン酸中の炭素原子数を表す)で特定される。コポリアミドは、各成分の割合の順にスラッシュで区切って表記する。例えば、PA66/610は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とセバシン酸とのコポリアミドである。本発明に従って使用されるモノマーのいくつかについては、以下の文字略号が使用される:T=テレフタル酸、I=イソフタル酸、D=2-メチルペンタメチレンジアミン、MXDA=m-キシリレンジアミン、IPDA=イソホロンジアミン、PACM=4,4’-メチレンビス-(シクロヘキシルアミン)、MACM=2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)。
【0029】
以下、用語「C-C-アルキル」は、非置換の直鎖及び分枝のC-C-アルキル基を含む。C-C-アルキル基の例としては、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)である。
【0030】
後述の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及びモノカルボン酸において、カルボキシル基は、それぞれ、非誘導体の形態で存在してもよいし、誘導体の形態で存在してもよい。ジカルボン酸の場合には、いずれのカルボキシル基の誘導体の形態ではなく、一方のカルボキシル基又は両方のカルボキシル基が誘導体の形態であってもよい。好適な誘導体は、無水物、エステル、酸塩化物、ニトリル、及びイソシアネートである。好ましい誘導体は、無水物又はエステルである。ジカルボン酸の無水物は、モノマーの形態であっても重合体の形態であってもよい。好ましいエステルは、アルキルエステル及びビニルエステルであり、より好ましくはC-C-アルキルエステル(特に、メチルエステル又はエチルエステル)である。
【0031】
ポリアミドA)及びB)を形成するための成分は、好ましくは以下から選択される:
a) テレフタル酸、及びテレフタル酸の誘導体、
b) 脂肪族ジアミン、
c) 任意の芳香族ジカルボン酸、及びa)とは異なる芳香族ジカルボン酸の誘導体、
d) 任意の脂環式ジアミン、
e) 任意の芳香族ジアミン、
f) 任意の脂肪族又は 脂環式ジカルボン酸、
g) 任意のモノカルボン酸、
h) 任意のモノアミン、
i) 任意の3官能以上のアミン、
j) 任意のラクタム、
k) 任意のω-アミノ酸、
l) 任意の、a)~k)とは異なり、a)~k)と縮合可能である化合物。
【0032】
成分a)は、テレフタル酸及びその誘導体から選択される。
【0033】
脂肪族ジアミンb)は、好ましくは、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、 2-エチルテトラメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
好ましい実施形態において、ポリアミドA)の調製に用いられる脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びこれらの混合物のみから選択される。
【0035】
好ましい実施形態において、ポリアミドB)の調製に使用される脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミンのみである。
【0036】
芳香族ジカルボン酸c)は、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、及びそれらの誘導体、及び前記の芳香族ジカルボン酸の混合物から選択されることが好ましい。特に好ましいのは、イソフタル酸である。
【0037】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸、又はテレフタル酸とイソフタル酸との混合物に由来する繰り返し単位を含有する。
【0038】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸としてのテレフタル酸に由来する繰り返し単位を含有する。この実施形態では、少なくとも1種のポリアミドB)は、テレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を含まない。
【0039】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミドA)は、全てのジカルボン酸のうち芳香族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50mol%、より好ましくは70mol%~100mol%、特に100mol%である。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、全てのジカルボン酸を基準としたテレフタル酸又はテレフタル酸とイソフタル酸との混合物の割合が、少なくとも50mol%、好ましくは70mol%~100mol%、特に100mol%である。
【0040】
第1の好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、全てのジカルボン酸のうちの芳香族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50mol%、より好ましくは70mol%~100mol%、特に100mol%である。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、すべてのジカルボン酸を基準としたテレフタル酸の割合が、少なくとも50mol%、好ましくは70mol%~100mol%、特に100mol%である。
【0041】
第2の好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、すべてのジカルボン酸のうちの芳香族ジカルボン酸の割合が10~90mol%であり、そしてすべてのジカルボン酸のうちの脂肪族ジカルボン酸の割合が10~90mol%である。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、すべてのジカルボン酸のうちのテレフタル酸の割合が50~90mol%であり、そしてすべてのジカルボン酸のうちのアジピン酸の割合が10~50mol%である。
【0042】
脂環式ジアミンd)は、好ましくは、ビス(4-アミノシクロヘキシル)-メタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、及びそれらの混合物から選択される。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、脂環式ジアミンd)に由来するいかなる繰り返し単位も含有しない。更なる具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、脂環式ジアミンd)に由来するいかなる繰返し単位も含まない。
【0043】
好適な芳香族ジアミンe)は、ビス(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノトルエン(s)、m-キシリレンジアミン、N,N’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタン、2,2-ビス(4-メチルアミノフェニル)-プロパン、又はそれらの混合物から選択される。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、芳香族ジアミンe)に由来するいかなる繰り返し単位も含有しない。更なる具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、芳香族ジアミンe)に由来するいかなる繰返し単位も含有しない。
【0044】
脂肪族又は脂環式ジカルボン酸f)は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン-α,ω-ジカルボン酸、ドデカン-α,ω-ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸f)に由来するいかなる繰り返し単位も含有しない。さらなる具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸f)に由来するいかなる繰返し単位も含まない。
【0045】
任意に、ポリアミドA)及び/又はB)は、少なくとも1種の共重合モノカルボン酸g)を含んでいてもよい。モノカルボン酸g)は、本発明に従って調製されたポリアミドをエンドキャップする役割を果たす。適切なモノカルボン酸は、原則として、ポリアミド縮合の反応条件下で利用可能なアミノ基の少なくとも一部と反応することができるもの全てである。好適なモノカルボン酸g)は、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられる。これらには、酢酸、プロピオン酸、n-、iso-又はtert-酪酸、バレリアン酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、エナンチン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、メチル安息香酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸、オレイン酸、リシノレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、大豆、亜麻仁、トウゴマ及びヒマワリ由来の脂肪酸、アクリル酸、メタクリル酸、Versatic(登録商標)酸、Koch(登録商標)酸、及びそれらの混合物が含まれる。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、モノカルボン酸g)に由来するいかなる繰り返し単位も含まない。さらなる具体的な実施形態において、少なくとも1つのポリアミドB)は、モノカルボン酸g)に由来するいかなる繰返し単位も含有しない。
【0046】
脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドは、少なくとも1種の共重合モノアミンh)を含んでいてもよい。モノアミンh)は、本発明に従って調製されたポリアミドをエンドキャップする役割を有する。適切なモノアミンは、原則として、ポリアミド縮合の反応条件下で利用可能なカルボン酸基の少なくとも一部と反応することができるもの全てである。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、モノアミンh)に由来するいかなる繰り返し単位も含有しない。さらなる具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、モノアミンh)に由来するいかなる繰返し単位も含有しない。
【0047】
脂肪族及び半芳香族ポリアミドの調製のために、さらに、少なくとも三官能性のアミンi)の少なくとも1種を使用することが可能である。これらには、N’-(6-アミノ-ヘキシル)ヘキサン-1,6-ジアミン、N’-(12-アミノドデシル)ドデカン-1,12-ジアミン、N’-(6-アミノ-ヘキシル)ドデカン-1,12-ジアミン、N’-[3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]ヘキサン-1,6-ジアミン、N’-[3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]ドデカン-1,12-ジアミン、N’[(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチル]ヘキサン-1,6-ジアミン、N’-[(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチル]ドデカン-1,12-ジアミン、3-[[[3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]アミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアミン、3-[[(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチルアミノ]メチル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアミン、3-(アミノ-メチル)-N-[3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアミンが含まれる。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)は、少なくとも三官能性のアミンi)に由来するいかなる繰り返し単位も含まない。さらなる具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドB)は、少なくとも三官能性のアミンi)に由来するいかなる繰返し単位も含まない。
【0048】
好適なラクタムj)は、ε-カプロラクタム、2-ピペリドン(δ-バレロラクタム)、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、カプリラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム、及びこれらの混合物である。具体的な実施形態において、少なくとも1つのポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)は、成分j)に由来する任意の繰り返し単位を含まない。
【0049】
好適なω-アミノ酸k)は、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、及びそれらの混合物である。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)は、成分k)に由来するいかなる繰り返し単位も含有しない。
【0050】
a)~k)とは異なり、a)~k)と縮合可能な好適な化合物l)は、少なくとも三塩基性のカルボン酸、ジアミノカルボン酸などである。好適な化合物l)は、さらに、4-[(Z)-N-(6-アミノヘキシル)-C-ヒドロキシカルボニルイミドイル]安息香酸、3-[(Z)-N-(6-アミノヘキシル)-C-ヒドロキシカルボニルイミドイル]安息香酸、(6Z)-6-(6-アミノ-ヘキシルイミノ)-6-ヒドロキシヘキサンカルボン酸、4-[(Z)-N-[(5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル)メチル]-C-ヒドロキシカルボニルイミドイル]安息香酸、3-[(Z)-N-[(5-アミノ-1,3,3-トリメチル-シクロヘキシル)メチル]-C-ヒドロキシカルボニミドイル]安息香酸、4-[(Z)-N-[3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-C-ヒドロキシカルボニルイミドイル]安息香酸、3-[(Z)-N-[3-(アミノ-メチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキシル]-C-ヒドロキシカルボニルイミドイル]安息香酸、及びそれらの混合物である。具体的な実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)は、成分l)に由来するいかなる繰り返し単位も含まない。
【0051】
少なくとも1種のポリアミドA)は、PA6T/6I、PA6T/DT、PA4T、及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0052】
具体的な実施形態において、ポリアミドA)は、PA6T/6Iである。
【0053】
好ましくは、ポリアミドA)は、PA6T/6Iであり、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の50~95mol%がテレフタル酸に由来し、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の5~50mol%がイソフタル酸に由来している。より好ましくは、ポリアミドA)は、PA6T/6I(少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の60~80mol%がテレフタル酸に由来し、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の20~40mol%がイソフタル酸に由来している)である。
【0054】
さらなる具体的な実施形態において、ポリアミドA)は、PA6T/DT(Dは、2-メチルペンタメチレンジアミンを示す)である。好ましくは、ポリアミドAはPA6T/DT(少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位の60~80mol%はヘキサメチレンジアミンに由来し、少なくとも1種の脂肪族ジアミンに由来する繰り返し単位の20~40mol%は2-メチルペンタメチレンジアミンに由来している)である。
【0055】
さらなる具体的な実施形態において、ポリアミドA)は、PA4Tである。
【0056】
少なくとも1種のポリアミドB)は、好ましくは、PA8T、PA9T、PA10T、PA6T/66、及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、少なくとも1種のポリアミドB)は、PA9T又はPA6T/66である。本発明の意味において、PA9Tは、アミン繰り返し単位がノナメチレンジアミンと2-メチルオクタメチレンジアミンとの混合物を含むポリアミドも包含する。2-メチルオクタメチレンジアミンの量は、PA9Tの融点を所望の値に設定するために変化させることができる。
【0057】
本発明によれば、ポリアミド混合物は、以下を含む:
- 80~97質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- 3~20質量%の少なくとも1種のポリアミドB)。
【0058】
好ましくは、ポリアミド混合物は、以下を含む:
- 88~96質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- 4~12質量%の少なくとも1種のポリアミドB)。
【0059】
ポリアミドA)及びB)の好適で好ましい実施形態に関して、前述の説明を参照されたい。
【0060】
好ましくは、ポリアミド混合物は、以下からなる:
- 80~97質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- 3~20質量%の少なくとも1種のポリアミドB)
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0061】
より好ましくは、ポリアミド混合物は、以下からなる:
- 88~96質量%の少なくとも1種のポリアミドA)、及び
- 4~12質量%の少なくとも1種のポリアミドB)
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0062】
好ましい実施形態において、ポリアミド混合物は、以下を含む:
A)80~97質量%のPA6T/6I、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T。
【0063】
特に、ポリアミド混合物は、以下からなる:
A)80~97質量%のPA6T/6I、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0064】
さらなる好ましい実施形態において、ポリアミド混合物は、以下を含む:
A)80~97質量%のPA6T/DT、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T。
【0065】
特に、ポリアミド混合物は、以下からなる:
A)80~97質量%のPA6T/DT、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0066】
さらなる好ましい実施形態において、ポリアミド混合物は、以下を含む:
A)80~97質量%のPA4T、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T。
【0067】
特に、ポリアミド混合物は、以下からなる:
A)80~97質量%のPA4T、及び
B)3~20質量%のPA6T66及び/又はPA9T
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0068】
ポリアミド成形用組成物
本発明のさらなる目的は、以下の成分を含むポリアミド成形用組成物である:
i) 25~100質量%の上記で定義された少なくとも1種のポリアミド混合物、
ii) 0~75質量%の少なくとも1種の充填剤及び補強剤、
iii)0~50質量%の少なくとも1種の添加剤
(なお、A)及びB)の量は、合計100質量%である)。
【0069】
用語「充填剤及び補強剤」(=成分ii)は、本発明の文脈では広義に理解され、粒子状充填剤、繊維状物質、及び任意の中間形態を含む。粒子状充填剤は、塵の形の粒子から大きな粒までの広範囲の粒径を有することができる。有用な充填剤材料には、有機又は無機充填剤及び補強剤が含まれる。例えば、無機充填剤(例えば、カオリン、チョーク、珪灰石、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛、グラファイト、ガラス粒子(例えば、ガラスビーズ)、ナノスケールの充填剤(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ナノスケールのシート状ケイ酸塩、ナノスケールのアルミナ(Al)、ナノスケールのチタニア(TiO)、グラフェン、永久磁石又は磁化可能な金属化合物及び/又は合金、シート状ケイ酸塩、及びナノスケールシリカ(SiO))を使用することが可能である。また、充填剤は、表面処理されていてもよい。
【0070】
本発明の成形用組成物に使用可能なシート状ケイ酸塩の例としては、カオリン、サーペンタイン、タルク、マイカ、バーミキュライト、イライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、複水酸化物、又はそれらの混合物が挙げられる。シート状ケイ酸塩は、表面処理されていてもよく、未処理であってもよい。
【0071】
さらに、1種以上の繊維状物質を使用することも可能である。これらは、好ましくは、既知の無機補強繊維(例えば、ホウ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、及び玄武岩繊維)、有機補強繊維(例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維)、及び天然繊維(例えば、木質繊維、亜麻繊維、麻繊維、サイザル麻繊維)から選択される。
【0072】
特に、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、金属繊維、又はチタン酸カリウム繊維を使用することが好ましい。
【0073】
具体的には、チョップドガラス繊維が使用される。より詳細には、成分ii)は、ガラス繊維及び/又は炭素繊維を含み、短繊維を使用することが好ましい。これらは、好ましくは、2~50mmの範囲の長さ及び5~40μmの直径を有する。代表的な直径は約10μmである。代わりに、連続繊維(ロービング)を使用することも可能である。好適な繊維は、円形及び/又は非円形の断面積を有するものであり、後者の場合、主断面軸と副断面軸の寸法の比は、特に>2、好ましくは2~8の範囲、より好ましくは3~5の範囲にある。
【0074】
特定の実施において、成分ii)は、いわゆる「平板ガラス繊維」を含む。これらは、具体的には、卵形(oval)であるか又は楕円形(elliptical)であるか又は楕円型でありくぼみ(1つ又は複数)を有する断面積(「繭」繊維と呼ばれる)、又は長方形又は実質的に長方形である断面積を有する。本明細書では、非円形の断面積を有し、主断面軸と副断面軸の寸法の比が2以上、好ましくは2~8、特に3~5であるガラス繊維を使用することが好ましい。
【0075】
本発明の成形用組成物を補強するために、円形断面及び非円形断面を有するガラス繊維の混合物を使用することも可能である。特定の実施において、上記で定義したような平板ガラス繊維の割合が、優位であり、繊維の全質量の50質量%以上を占めることを意味する。
【0076】
成分ii)としてガラス繊維のロービングを使用する場合には、このロービングは好ましくは10~20μm、より好ましくは12~18μmの直径を有する。この場合には、ガラス繊維の断面は、円形、卵形(oval)、楕円形、実質的に長方形、長方形のいずれであってもよい。断面軸の比が2~5である扁平ガラス繊維と呼ばれるものが特に好ましい。より詳細には、Eガラス繊維が使用される。しかしながら、他の全てのガラス繊維タイプ(例えば、A、C、D、M、S、又はRガラス繊維)又はそれらの任意の所望の混合物、又はEガラス繊維との混合物を使用することも可能である。本発明によるポリアミド成形用組成物は、長繊維強化ロッドペレットを製造するための公知のプロセス、特に引抜き成形法(この引抜き成形法において、連続繊維ストランド(ロービング)をポリマー溶融物で完全に飽和させ、次に冷却して切断する)によって製造することができる。このようにして得られた長繊維強化ロッドペレットは、好ましくは3~25mm、特に4~12mmのペレット長を有し、慣用の加工方法(例えば、射出成形又はプレス成形)によってさらに加工して成形品を与えることができる。
【0077】
本発明によるポリアミド成形用組成物は、ポリアミド成形用組成物の合計質量を基準として、好ましくは15~65質量%、より好ましくは30~60質量%の少なくとも1種の充填剤及び補強剤ii)を含んでいる。
【0078】
好適な添加剤iii)は、熱安定剤、難燃剤、光安定剤(紫外線安定剤、紫外線吸収剤又は紫外線遮断剤)、滑剤、染料、核剤、金属顔料、金属フレーク、金属被覆粒子、帯電防止剤、導電性添加剤、離型剤、蛍光増白剤、消泡剤などである。
【0079】
成分iii)として、本発明による成形用組成物は、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.02~2質量%、特に0.1~1.5質量%の少なくとも1種の熱安定剤を含む。
【0080】
熱安定剤は、銅化合物、第二級芳香族アミン、立体障害フェノール、ホスファイト、ホスホナイト、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0081】
銅化合物を用いる場合には、銅の量は、成分i)~iii)の合計を基準として、好ましくは0.003~0.5質量%、特に0.005~0.3%、より好ましくは0.01~0.2質量%である。
【0082】
第二級芳香族アミンに基づく安定剤を使用する場合には、この安定剤の量は、成分i)~iii)の合計を基準として、好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0083】
立体障害性フェノールに基づく安定剤を使用する場合には、この安定剤の量は、成分i)~iii)の合計を基準として、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0084】
ホスファイト及び/又はホスホナイトに基づく安定剤を使用する場合には、この安定剤の量は、成分i)~iii)の合計に基づいて、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0085】
一価又は二価の銅の好適な化合物iii)は、例えば、一価又は二価の銅と無機酸又は有機酸又は一価又は二価のフェノールとの塩、一価又は二価の銅の酸化物、又は銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物又はホスフィンとの錯体、好ましくは、ヒドロハル酸又はヒドロシアン酸のCu(I)又はCu(II)塩、又は脂肪族カルボン酸の銅塩が挙げられる。特に好ましいのは、一価の銅化合物CuCl、CuBr、CuI、CuCN及びCuO、ならびに二価の銅化合物CuCl、CuSO、CuO、酢酸銅(II)又はステアリン酸銅(II)である。
【0086】
銅化合物は、市販されているか、又はその調製は当業者に知られている。銅化合物は、そのまま、又は濃縮物の形態で使用することができる。濃縮物とは、好ましくは成分iii)と同じ化学的性質のポリマーであって、高濃度の銅塩を含んでいるものを意味すると理解される。濃縮物の使用は標準的な方法であり、特に、非常に少量の原料を計量しなければならない場合に頻繁に採用される。有利には、銅化合物は、さらなる金属ハロゲン化物、特にアルカリ金属ハロゲン化物、例えば、Nal、KI、NaBr、KBrと組み合わせて用いられ、この場合、金属ハロゲン化物とハロゲン化銅とのモル比は、0.5~20、好ましくは1~15、より好ましくは3~10とするのがよい。
【0087】
第二級芳香族アミンに基づき本発明に従って使用可能な安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノレン、4,4´-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard(登録商標)445)、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミンとの付加物、又は、それらの2つ以上の混合物である。
【0088】
立体障害フェノールをベースとし本発明に従って使用可能な安定剤の好ましい例は、N,N’-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、又はこれらの安定剤の2種以上の混合物である。
【0089】
好ましいホスファイト及びホスホナイトは、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ペンタエリスリチルジホスファイトのジステアリル、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリスリチルジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、及びビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトが挙げられる。より詳細には、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニルホスファイト及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Hostanox(登録商標)PAR24:BASF SE社の市販品)がより好ましい。
【0090】
熱安定剤の好ましい実施形態は、有機熱安定剤(特に、Hostanox PAR 24及びIrganox 1010)、ビスフェノールAベースのエポキシド(特に、Epikote 1001)、及びCuI及びKIに基づく銅安定化の組み合わせからなる。有機安定剤及びエポキシドからなる市販の安定剤混合物の例としては、BASF SE社のIrgatec NC66が挙げられる。より詳細には、専らCuI及びKIに基づく熱安定化が好ましい。銅又は銅化合物の添加は別として、さらなる遷移金属化合物(特に、周期律表のVB、VIB、VIIB又はVIIIB族の金属塩又は金属酸化物)の使用は排除される。さらに、本発明の成形用組成物には、周期律表のVB族、VIB族、VIIB族又はVIIIB族の遷移金属(例えば、鉄粉又は鋼粉)を添加しないことが好ましい。
【0091】
本発明による成形用組成物は、成分i)~iii)の合計質量に基づいて、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%の、添加剤iii)としての少なくとも1種の難燃剤を含むものである。本発明の成形用組成物が少なくとも1種の難燃剤を含む場合には、それは、好ましくは、成分i)~iii)の合計質量に基づいて、0.01~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%の量である。有用な難燃剤iii)には、ハロゲン化難燃剤及びハロゲンフリー難燃剤ならびにそれらの相乗剤が含まれる(Gaechter/Mueller,3rd edition 1989 Hanser Verlag,chapter 11も参照されたい)。好ましいハロゲンフリー難燃剤は、赤リン系、ホスフィン系又はジホスフィン系の塩及び/又は窒素含有難燃剤、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミン硫酸塩、メラミンホウ酸塩、シュウ酸メラミン、(第一、第二)リン酸メラミン又は(第二)ピロリン酸メラミン、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミン、グアニジン、及び当業者に公知のそれらの誘導体、高分子リン酸メラミン(CAS番号:56386-64-2又は218768-84-4、またEP 1095030)、ポリリン酸アンモニウム、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(任意に、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの混合物中のポリリン酸アンモニウム)(EP 584567)。さらなる窒素含有又はリン含有難燃剤、又は難燃剤として好適なリン窒素縮合物は、DE 10 2004 049 342に記載されている。この文献では、この目的のために慣用されている相乗剤、例えば酸化物やホウ酸塩も開示されている。好適なハロゲン化難燃剤は、例えば、オリゴマー臭素化ポリカーボネート(BC 52 Great Lakes)又は窒素が4より大きいポリペンタブロモベンジルアクリレート(FR 1025 Dead sea bromine)、テトラブロモビスフェノールAとエポキシド、臭素化オリゴマー又はポリマースチレンとの反応生成物、デクロラン(これらは、通常、相乗剤として酸化アンチモンと共に使用される(詳細及びさらなる難燃剤については、DE-A-10 2004 050 025を参照)である。
【0092】
本発明の成形用組成物に用いられる帯電防止剤は、例えば、カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブであってもよい。カーボンブラックの使用は、成形用組成物の黒色を向上させる役割も果たし得る。ただし、成形用組成物は、金属顔料を含まないものであってもよい。
【0093】
ポリアミド成形用組成物の製造方法
前述したように、本発明によるポリアミド混合物は、少なくとも1種のポリアミドA)と少なくとも1種のポリアミドB)を含む、巨視スケール、例えば、ポリアミドペレットの混合物の形態でのポリマーブレンドとすることができる。この実施形態において、少なくとも1種のポリアミドA)を含む少なくとも1種の組成物と少なくとも1種のポリアミドB)を含む少なくとも1種の組成物とを混合して、その後さらに処理されるドライブレンドを提供することができる。前記のさらなる処理は、ポリアミド混合物の製造と共に、又はその直後に、又はそれとは別に実施することができる。別個の処理は、例えば射出成形部品の製造業者によって、ポリアミド混合物の製造から空間的に分離して実施することも可能である。ドライブレンドを提供するために使用されるポリアミド組成物A)及び/又はポリアミド組成物B)は、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤を含み、任意に充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加物を含む。ポリアミド組成物A)及びB)の調製は、固体形態のポリアミドを押出機の取入口に供給し、融点以上の温度でポリアミドを融解し、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤及び/又はそれとは異なる少なくとも1種の添加剤を押出機に供給して反応混合物を溶融ブレンドすることによって実施することができる。
【0094】
好ましくは、本発明によるポリアミド成形用組成物の製造方法は、少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤、ならびに任意に充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加剤を溶融ブレンドすることを含む。溶融ブレンドすることにより、ポリマー成分の全てが互いの中によく分散され、非ポリマー成分の全てがポリマーマトリックス中によく分散され、それによって結合され、ブレンドが統一された全体を形成するようにすることができる。溶融ブレンドは、慣用の配合機で高分子成分及び非高分子成分を、全てを1つの段階で一度にあるいは段階的に添加し、溶融ブレンドすることができる。重合体成分及び非重合体成分を段階的に添加する場合には、最初に重合体成分及び/又は非重合体成分の一部を添加して溶融ブレンドし、その後、残りの重合体成分及び非重合体成分を添加して、さらによく混合された組成物が得られるまで溶融ブレンドする。
【0095】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)のペレット、任意に少なくとも1種の充填剤及び補強剤、並びに任意に充填剤及び補強剤とは異なる少なくとも1種の添加剤を混合してドライブレンドを与え、その後更に処理することができる。例えば、各場合において、まず成分A)及び/又はB)、任意に充填剤ii)及び/又は添加剤iii)からペレット形態の化合物を調製し、次にこれらのペレットを混合して、任意にペレット形態の成分A)及び/又はB)のさらなる量を添加したドライブレンドを与えることができる。このようにして調製されたドライブレンドは、次にさらに処理される。さらなる処理のために、ドライブレンドは、慣用の配合機に供給することができる。
【0096】
さらなる好ましい実施形態において、本発明によるポリアミド成形用組成物は、ドライブレンドを予め製造することなく調製される。
【0097】
本発明によるポリアミド成形用組成物の調製は、好ましくは単軸又は二軸押出機、ブレンダー、ニーダー、ハーケミキサー、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサー又はロールミキサーから選ばれる慣用の配合機で実施することが可能である。好ましくは、単軸もしくは二軸の押出機、又はスクリューニーダーが採用される。
【0098】
一実施形態では、高融点ポリアミドA)の部分が最初に溶融され、低融点ポリアミドB)の部分が時間的及び/又は空間的に後に供給される。ポリアミド成形用組成物が押出機を用いて調製される場合には、ポリアミドA)はスクリューの始点で供給され、ポリアミドB)は下流の1つ又は複数の側方供給(複数可)を介して供給される。存在する場合には、少なくとも1種の充填剤及び補強剤ii)及び添加剤iii)は、スクリューの始点でポリアミドA)と部分的又は完全に一緒に導入することができ、あるいは1つ又は複数の側方供給(複数可)を介して導入することができる。少なくとも1種の充填剤及び補強剤ii)及び添加剤iii)の1つ又は複数の側方供給(複数可)を介する供給は、ポリアミドB)と部分的に又は完全に一緒に、あるいはそれとは異なって実施することができる。
【0099】
配合は、好ましくは、融点Tm1よりも少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃高いバレル温度設定で実施される。配合は、好ましくは300~360℃の範囲のバレル温度設定で実施される。
【0100】
好ましくは、ポリアミド成形用組成物を製造するために押出機が使用され、その工程は以下の工程を含む:
- 少なくとも1種のポリアミドA)及び少なくとも1種のポリアミドB)を提供する工程、
- 固体状のポリアミドA)を押出機の取入口に供給し、融点Tm1越えの温度でポリアミドA)を融解させる工程、
- ポリマーA)が既に溶融状態にある取入口下流の地点で、側方供給を介してポリアミドB)を押出機に供給する工程、
- 任意に、少なくとも1種の充填剤及び補強剤及び/又はそれとは異なる少なくとも1種の添加剤を押出機に供給する工程(なお、充填剤及び補強剤及び/又は添加剤は、取入口を介して及び/又は取入口下流の地点で、1箇所又は複数個所で押出機に供給することができる)。
【0101】
本発明によるポリアミド成形用組成物から製造されたポリマー押出物は、あらゆる既知のペレタイジング法によって、例えば押出物を水浴中で冷却した後に切断するペレタイジングなどによって、処理してペレットを与えることができる。より高い繊維含量(例えば、押出物の全質量に基づいて60質量%以上の繊維含量)を有するポリマー押出物は、水中ペレタイジング又は水中ホットフェイスカットにかけることができ、この方法ではポリマーメルトがダイを通して直接押し出され、水流中で回転ナイフによってペレタイジングされる。得られたペレットは、既知の方法(特に、射出成形)によって成形品を作製するために使用することができる。
【0102】
本発明によるポリアミド成形用組成物から製造されたポリマー押出物は、成形品の調製に直接使用することも可能である。この場合、押出機を出た溶融材料は、金型に直接注入することができる。
【0103】
本発明によるポリアミド混合物及び当該ポリアミド混合物を含むポリアミド成形用組成物は、多成分射出成形(2K、3K)及びハイブリッド技術を含む全ての既知の射出成形プロセスに適している。
【0104】
成形品
本発明によるポリアミド混合物及び当該ポリアミド混合物を含むポリアミド成形用組成物は、有利には、種々の用途の成形品の製造に使用するのに好適である。本発明によるポリアミド混合物及びポリアミド成形用組成物は、任意の成形技術(例えば、押出成形、射出成形、熱成形、圧縮成形又はブロー成形)によってポリアミド組成物を成形することにより、成形品を製造するのに適している。
【0105】
本発明による成形品は、自動車分野、電気・電子部品、金属代替用の部品から選択されることが好ましい。
【0106】
本発明によるポリアミド混合物及びポリアミド成形用組成物は、特に、熱、湿度、及び自動車用流体に対する耐性が重要であるボンネット下の用途に適している。具体的な実施形態は、自動車分野のための部品(特に、シリンダーヘッドカバー、エンジンフード、チャージエアクーラー用ハウジング、チャージエアクーラーバルブ、吸気管、インテークマニホールド、コネクター、ギヤ類、ファンインペラー、冷却水タンク、熱交換器用のハウジング又はハウジング部品、クーラントクーラー、チャージエアクーラー、サーモスタット、ウォーターポンプ、燃料ポンプ、添加剤ポンプ(例:AdBlue用)、水ポンプのインペラー、発熱体、固定部品から選択される)又はその部品の一部としての形である成形品である。
【0107】
自動車内装では、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シート部品、ヘッドレスト、センターコンソール、ギアボックス部品、ドアモジュールに使用される可能性があり、そして、自動車外装では、ドアハンドル、エクステリアミラー部品、フロントガラスワイパー部品、フロントガラスワイパー保護ハウジング、グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム、エンジンフード 、シリンダーヘッドカバー、ワイパー、及び外装部品に使用される可能性がある。
【0108】
さらなる具体的な実施形態は、ブロー成形によって得られた成形品(例えば、エアダクト、液体や気体を輸送するためのパイプ、パイプのインナーライニング、燃料パイプ、エアブレーキチューブ、クーラントパイプ、空気圧チューブ、油圧ハウス、ケーブルカバー、ケーブルタイ、コネクタ、キャニスターから選択される)である。
【0109】
さらなる具体的な実施形態は、飲料水及び工業用プロセス水の分野のための部品又は部品の一部としての形である成形品である。特に、本発明は、特に高温、好ましくは80℃の領域及びそれ以上の温度で水を搬送及び/又は貯蔵するための成形品を提供する。そして、成形品は、好ましくは、パイプ、水栓、継ぎ手、ハウジング、ミキサー、タップ、フィルターケーシング、水道メーター、水道メーターの部品(ベアリング、プロペラ、ピン)、バルブ、バルブ部品(ハウジング、シャットオフボール、スライド、シリンダー)、販売業者、家庭用機器(例:給湯器、炊飯器、スチームクッカー、スチームアイロン)、ポンプ、ポンプ部品(例:タービンホイール、インペラー)、容器などから選択される。
【0110】
さらなる具体的な実施形態は、プリント回路基板の電気的又は電子的な受動部品又は能動部品として又はその一部としての成形品、プリント基板の一部の成形品、筐体構成部材の成形品、フィルムの成形品、又はワイヤの成形品、特に、スイッチの形又はその一部の形、プラグの形、ブッシングの形、ディストリビューターの形、リレーの形、抵抗器の形、コンデンサーの形、巻線又は巻線本体の形、ランプの形、ダイオードの形、LEDの形、トランジスターの形、コネクタの形、レギュレータの形、集積回路(IC)の形、プロセッサの形、コントローラの形、メモリ素子及び/又はセンサーの形である。
【0111】
本発明によるポリアミド混合物、及び当該ポリアミド混合物を含むポリアミド成形用組成物は、さらに、鉛フリー条件下でのはんだ付け作業(鉛フリーはんだ付け)のために、プラグコネクタ、マイクロスイッチ、マイクロボタン、半導体部品、特に発光ダイオード(LED)のリフレクタハウジングの製造のために特に好適に使用される。
【0112】
具体的には、電気・電子部品の固定部材(例えば、スペーサー、ボルト、フィレット、押し込みガイド、ネジ、ナット)としての成形品が挙げられる。
【0113】
特に好ましいのは、ソケット、プラグコネクタ、プラグ又はブッシングの形状又はその一部である成形品である。成形品は、好ましくは、機械的靭性が要求される機能的要素を含む。そのような機能要素の例としては、フィルムヒンジ、スナップインフック、スプリングトングなどがある。
【0114】
キッチン及び家庭用品の分野でのポリアミドの使用は、厨房機器の部品(例えば、フライヤー、平滑化アイロン、ノブ)の製造において、又は、ガーデンやレジャー分野での用途(例えば、灌漑設備や園芸機器の部品、ドアの取手)において使用可能である。
【0115】
本発明のさらなる目的は、向上した機械的特性(特に、向上した溶接ライン強度)を有する成形品の製造のための、本発明によるポリアミド混合物又は前記ポリアミド混合物を含むポリアミド成形用組成物の使用である。
【0116】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【実施例
【0117】
以下の略号を用いた。
HMD:1,6-ヘキサンジアミン
2-MOD:2-メチル-1,8-オクタンジアミン
T:テレフタル酸
I:イソフタル酸
6T/6I:T、I、及びHMDのコポリアミド(IよりもTがモル過剰)
6I/6T:T、I、及びHMDのコポリアミド(TよりもIがモル過剰)
6T/66:T、アジピン酸、及びHMDのコポリアミド
9T:T及び1,9-ノナンジアミンのコポリアミド(PA9Tの融点を所望の値に調整するために、1,9-ノナンジアミンと2-メチルオクタメチレンジアミンとの混合物を含んでいてもよい)
【0118】
分析方法
I)GPCによる分子量測定
標準物質:PMMA
溶離液:ヘキサフルオロイソプロパノール+0.05%トリフルオロ酢酸カリウム
流速:1ml/分
カラム圧力:プレカラム7.5MPa、分離カラム75MPa
カラムセット :プレカラム1本(長さ5cm)、分離カラム2本(各長さ30cm)
検出器:DRI(屈折率検出器) Agilent1100
【0119】
II)融点
表1及び表2の融点Tは、DIN EN ISO 11357-3に準拠した方法により、動的示差熱量測定(DSC)により測定した。DSC分析は毎回1回ずつ繰り返し、ポリアミドの熱履歴を規定するために、試料を融点で5分間保持した。測定は、いずれの場合も、窒素下で開放型アルミニウムるつぼを用い、加熱速度及び冷却速度20K/分で実施した。
【0120】
III)溶接ラインの強度の測定
溶接ラインの強度の測定に用いる試験片は、ISO 294-1 に従って、ISO 294-1附属書,図A.1タイプC:「ダブル T ランナー付きバリエーション」に従う金型で成形される。このような金型では、ポリマー溶融物は、溶接ラインを形成する平行な測定領域の中央で再び合流する2つのフローフロントに分けられる。溶接ラインの強度の測定は、ISO527-2に従って行われる。
【0121】
ポリアミドの調製
ポリアミドA)
以下の組成物は、ポリアミド成分A)として高融点ポリアミドを含んでいる。
【0122】
実施例1(ポリアミド組成物A.I)PA6T/6I:
ポリアミド組成物A.Iとして、ガラス繊維で強化され、熱安定剤としての0.6質量%の4,4´-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard445)で安定化され、0.2質量%のカーボンブラックで着色され、そして直径10μmのガラス繊維40質量%を含むPA6T/6I組成物を使用した。
【0123】
PA6T/6Iは、モル比T/I=70/30、数平均分子量M=13300g/mol、PD=3.3である。この合成は、WO2014/198764A1、比較例V3に詳細に記載されている。
【0124】
実施例2(ポリアミド組成物A.II)PA6T/6I:
使用したポリアミドは、WO2014/198764A1に記載されている、比較例V3(モル比T/I=70/30、数平均分子量M=13300g/mol、融点T=318℃)のPA 6T/6Iである。
【0125】
ポリアミド組成物の調製のために、そのポリアミドを、4,4´-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(Naugard 445)0.6質量%、離型剤(BASF SE社製Luwax(登録商標)OA5)0.5質量%、及び核形成剤(Talkum IT Extra)0.2質量%と一緒に二軸押出機の供給装置に供給した。使用した押出機は、12個のバレルセグメントと、バレルセグメント5及び8に側方供給を有する逆回転型二軸押出機であった。チョップドガラス繊維(3B Fibreglassから入手可能であり、直径10μm及び長さ5mmを有するDS1110-10N)を、バレルセグメント5の側方供給を介して溶融塊に添加した。
【0126】
ポリアミドB)
ポリアミド成分B)としては、以下の低融点ポリアミドを使用した。
【0127】
実施例3(ポリアミドB.I)6I/6T:
ASTM D4066で測定した固有粘度=0.82、DSCで測定したガラス転移温度=125℃の非晶質PA6I/6T(デュポン社製Selar(登録商標)PA3426)。
【0128】
実施例4(ポリアミドB・II)6T/66:
融点T=310℃のPA6T/66(エムズ化学社製Grivory(登録商標)HT2-3H)
【0129】
実施例5(ポリアミドB.III)ポリアミド9Tブレンドからの化合物:
以下の2種類のポリアミドを等量で溶融ブレンドした。
1)T=300℃のPA9T(株式会社クラレ製Genestar(登録商標)N1000A)
2)T=264℃のPA9T(株式会社クラレ製Genestar(登録商標)N1001D)
【0130】
得られた組成物は、融点Tが280℃である。
【0131】
実施例6(ポリアミドB.IV)9T:
が264℃であるPA9T(株式会社クラレ製Genestar(登録商標)N1001D)。
【0132】
実験シリーズ1(ポリアミドペレットの混合物)
射出成形機(Arburg Allrounder)を用いて、シリンダー温度250℃~350℃、スクリュー速度15m/分で試験片を作製した。成形温度は120℃~160℃であった。溶接ライン強度を測定するための試験片は、上記のA.IとB.I~B.IIIのペレットをブレンドして作製した。この試験片は,両面に射出成形した引張ロッドを作製した。
【0133】
【表1】
【0134】
実験シリーズ2:(ポリアミド化合物)
ポリアミド化合物の調製は、実施例2におけるポリアミド組成物A.IIの調製に類似して行われた。ポリアミドB.II、B.IIIを、それぞれ、バレルセグメント5及び8に添加した。A.IIの量は、B.III又はB.IVの量だけ減少させた。それぞれの場合において、ガラス繊維の量は40%に調整された。
【0135】
このポリアミド配合物を用いて、上記の方法に従って、溶接ラインの強度を測定するための試験片を作製した。その結果を表2に示す。
【0136】
【表2】
【国際調査報告】