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特表2022-553023ポリブチレンテレフタレート組成物及びプラスチック/金属ハイブリッドの複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート組成物及びプラスチック/金属ハイブリッドの複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20221214BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20221214BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L25/08
C08K7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523179
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2020078772
(87)【国際公開番号】W WO2021074146
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/111502
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,チョン,コー
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チョン,チエ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,ローラント,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チェンクオ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC03X
4J002BC04X
4J002BC06X
4J002BN16X
4J002CF05Y
4J002CF07W
4J002DL006
4J002DL007
4J002FA046
4J002FA107
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、成分(A)としてポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)として融点が105℃~185℃であるポリエステルコポリマー、成分(C)としてビニルベースのポリマー、及び場合により成分(D)としてガラス気泡を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物に関しする。本発明はまた、金属物品と、金属物品に接合されて統合された本発明のポリブチレンテレフタレート組成物とを含む、プラスチック/金属ハイブリッドの複合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)としてポリブチレンテレフタレート樹脂、成分(B)として融点が105℃~185℃であるポリエステルコポリマー、成分(C)としてビニルベースのポリマー、及び場合により成分(D)としてガラス気泡を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の含有量が20質量%~80質量%、好ましくは20質量%~50質量%であり、
前記ポリエステルコポリマー(B)の含有量が5質量%~40質量%、好ましくは15質量%~35質量%であり、
前記ビニルベースのポリマー(C)の含有量が0.1質量%~20質量%、好ましくは5質量%~20質量%であり、
前記ガラス気泡(D)の含有量が0~30質量%、好ましくは5質量%~10質量%であり、
これらはポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づくものである、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルコポリマーが、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートを構成する第2のジカルボン酸成分及び/又は第2のグリコール成分を、共重合可能なモノマーで部分的に置換することによって得られたものであり、ここで前記第2のジカルボン酸成分が少なくともテレフタル酸及び/又はそのエステル誘導体を含み、
前記第2のグリコール成分が、少なくとも1つの1,4-ブタンジオール、エチレングリコール及び/又は1,4-ブタンジオール及びエチレングリコールのエステル誘導体を含み、好ましくは、エチレングリコール及び/又はそのエステル誘導体であり、
前記共重合可能なモノマーには、テレフタル酸を除く第3のジカルボン酸、及び/又はエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールを除く第3のグリコールから選択される1つ以上のモノマーが含まれる、請求項1及び/又は2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項4】
前記第3のジカルボン酸が、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及びテレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、
ここで、前記脂肪族ジカルボン酸が、好ましくは、4~40個の炭素原子を含み、
前記脂環式ジカルボン酸が、好ましくは、7~12個の炭素原子を含み、
テレフタル酸を除く前記芳香族ジカルボン酸が、好ましくは、8~16個の炭素原子を含み、
前記第3のグリコールが、エチレングリコール又は1,4-ブタンジオール、ポリオキシアルキレングリコールを除く脂肪族アルカンジオール、脂環式ジオール、及び芳香族ジオールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
ここで、前記脂肪族アルカンジオールが、好ましくは、2~12個の炭素原子を含み、
前記ポリオキシアルキレングリコールが、好ましくは、炭素原子数が2~4であるオキシアルキレン単位を複数含み、
前記脂環式ジオールが、好ましくは、6~12個の炭素原子を含み、
前記芳香族ジオールが、好ましくは、6~14個の炭素原子を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸及び/又はヘキサデカンジカルボン酸からなる群から選択され、
好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸及びセバシン酸であり、
前記脂環式ジカルボン酸が、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸及びヒミン酸からなる群から選択され、
テレフタル酸を除く前記芳香族ジカルボン酸が、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、及び4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸からなる群から選択され、
好ましくはイソフタル酸及び/又はフタル酸であり、
前記脂肪族アルカンジオールが、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及びデカンジオールからなる群から選択され、
前記ポリオキシアルキレングリコールが、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールからなる群から選択され、
前記脂環式ジオールが、1,4-シクロヘキサンジオール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、
前記芳香族ジオールが、キシリレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノール及びキシリレングリコールからなる群から選択される、
請求項4に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルコポリマーが、前記ポリエステルコポリマーを構成する前記モノマーの総モルに基づいて、5モル%~30モル%、好ましくは5モル%~20モル%の共重合可能なモノマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項7】
成分(C)としてのビニルベースのポリマーが、(C-1)少なくとも1つのビニルモノマーと、(C-2)少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体とから誘導され、
前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記誘導体が、前記エチレン性不飽和カルボン酸のエポキシ化合物、エステル、アミド、イミド、酸無水物及び/又は金属塩から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項8】
前記ビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、前記ビニルモノマー(C-1)が40質量%~90質量%の量であり、そして前記エチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(C-2)が10質量%~60質量%の量である、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項9】
前記ビニルモノマー(C-1)がアルファ-オレフィン及び/又はジエンであり、
前記アルファ-オレフィンが、好ましくは、2~20個の炭素原子を有し、
前記ジエンが好ましくは共役ジエンである、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項10】
前記アルファ-オレフィンが、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-デセン及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、エチレン、1-ブテン、1-プロピレン、1-ペンテン及びエチレンと1-オクテンとの混合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項11】
前記成分(C)が、少なくとも1つの(C-1)及び少なくとも1つの(C-2)から誘導される少なくとも2つのビニルベースのポリマーの組み合わせであり、1つの第1のビニルベースのポリマーの前記(C-2)が、前記エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つのエポキシ化合物を含む前記モノマーから誘導され、1つの第2のビニルベースのポリマーの前記(C-2)が、前記エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つの酸無水物を含む前記モノマーから誘導される、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項12】
前記第1のビニルベースのポリマーにおける前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記エポキシ化合物が、前記第1のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%の量であり、
前記第2のビニルベースのポリマーにおける前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記酸無水物が、前記第2のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%の量である、請求項11に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項13】
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2-エチルアクリル酸、2-クロロアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンジェリン酸、ソルビン酸、メサコン酸、桂皮酸、p-クロロ桂皮酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2.2.2)-オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ(2.2.1)オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、マレオピマル酸及び7-オキサビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸からなる群から選択され、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はシトラコン酸であり、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記酸無水物が、無水マレイン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、4-メチルシクロヘクス-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水ナジン酸、無水メチルナジン酸、無水ヒミン酸(himic anhydride)、無水メチルヒミン酸(methyl himic anhydride)及びx-メチルビシクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群から選択され、好ましくは無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸であり、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記エステルが、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ジメチルマレエート、モノメチルマレエート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びビニルアセテートからなる群から選択され、
好ましくはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、及び/又はイソブチルメタクリレートであり、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記エポキシ化合物が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、マレイン酸1-グリシジルエステル、マレイン酸のジグリシジルエステル、イタコン酸のモノグリシジルエステル、イタコン酸のジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノグリシジルエステル、シトラコン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のトリグリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、及び4-ビニルベンジルグリシジルエーテルからなる群から選択され、好ましくはグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートであり、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記アミドが、アリルアミン、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N-モノエチルアミド、マレイン酸N,N-ジエチルアミド、フマル酸モノアミド、及びフマル酸ジアミドからなる群から選択され、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の前記イミドが、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選択され、
前記成分(C)の前記エチレン性不飽和カルボン酸の溶融塩が、ナトリウムアクリレート、カルシウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート及びカルシウムメタクリレートからなる群から選択される、
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項14】
前記成分(C)が、第1及び第2のビニルベースのポリマーの組み合わせであり、
前記第1のビニルベースのポリマーが、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー及び/又はエチレン/ブチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーであり、
前記第2のビニルベースのポリマーが、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、及び/又はエチレン/ブチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーである、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項15】
前記ガラス気泡が5~50ミクロンの体積中位径D50を有し、
前記ガラス気泡の平均真密度が、ASTM D2840-69に準拠して測定して0.3~0.7g/ccであり、
前記ガラス気泡の破砕強度が、ASTM D3102-72に準拠して測定して、5,000PSI~30,000PSIである、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項16】
前記ポリブチレンテレフタレート組成物が、0~40質量%の成分(E)としての強化剤及び/又は0~5質量%の成分(F)としての添加剤を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項17】
(1)前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、前記ポリエステルコポリマー(B)、前記ビニルベースのポリマー(C)及び任意の添加剤(F)を混合し、場合により(2)前記強化剤(E)を添加し、場合により(3)前記ガラス気泡(D)を添加し、そして押出し又はニーディングをすることを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を製造する方法。
【請求項18】
融点が105℃~185℃である前記ポリエステルコポリマーを、プラスチック/金属ハイブリッドにおけるポリブチレンテレフタレート樹脂と金属との結合強度を高めるために使用する方法。
【請求項19】
請求項1から16のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物により得られた物品であって、好ましくは、移動体、センサー又はノート型パソコンのフレーム、ハウジング又はパッケージ、又は移動体又は車両のアンテナスプリッターの部品又は構成要素として使用される、物品。
【請求項20】
金属物品と、前記金属物品に接合されて統合された請求項1から16のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物とを含む、プラスチック/金属ハイブリッドの複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート組成物に関するものであり、また、本発明のポリブチレンテレフタレート組成物を含むプラスチック/金属ハイブリッドの複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費者用電子機器産業において、携帯用電子機器(例えば携帯電話、タブレット及びノート型パソコン)のメインハウジング及びシャーシ材料として、金属が好ましく使用されており、これは美的及び有用な特性の両方の観点において金属が提供する機能上の利点によるものである。
【0003】
熱可塑性プラスチックは、放射線透過性(radio transparency)、着色性、コストなどにおける金属の不足を補うことができる。金属/プラスチックハイブリッドソリューションは、金属とプラスチックの利点を組み合わせる。金属/プラスチックハイブリッドは、プラスチックと金属部品から作られた、2つの成分間の機械的なロックを備えた複合体部品であり、射出成形又は押出によって製造され、高い耐荷重及び低コストの部品の製造を可能とする。
【0004】
金属インサート成形、インモールド接着剤及び金属化は、金属/プラスチックハイブリッド設計の従来技術である。金属インサート成形では、機械的ロック設計を使用して、プラスチック部品と金属部品を物理的に接続する。金属とプラスチックの結合を向上させるために、接着剤が必要である。金属化については、プラスチック上に金属の薄い層をコーティングとして適用し、金属的な外観を作り出す。従来技術と比較すると、ナノモールディングテクノロジー(NMT)は普及した技術となっており、金属とプラスチックを直接結合するという明白な利点を示す。ナノモールディングテクノロジーは、大成プラス社によって開発された。これは、金属表面を反応させてナノサイズからマイクロサイズの穴を作り、次いで金属表面上に所望のプラスチック成分を射出成形して、界面で強固な結合を作り出す。この方法の利点は、軽量で強度の高い製品を製造できることである。NMTでは、様々な金属、例えばマグネシウム、アルミニウム、これら材料の合金、ステンレス鋼、及び他の鉄合金が使用できる。
【0005】
NMTで使用されるプラスチック材料は、金属と親和性があり、NMTプロセスに適合していなければならない。結晶性ポリマーのポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂及びポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は、その本来の良好な化学品耐性、及びフィラーと配合可能であることから、ナノモールディングテクノロジーにおいて普及したプラスチック材料となっている。
【0006】
大成プラス社は、金属/プラスチックハイブリッド複合体をCN101743111Aで開示しており、ここで金属は鋼であり、プラスチックは高剛性結晶性樹脂組成物である。結晶性樹脂組成物は、70~97質量%のPBT、3~30質量%のPET及び/又はポリオレフィン樹脂を含む。30質量%のガラス繊維強化PBTをPETとブレンドした場合、結合強度は17MPaに達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN101743111A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記先行技術の観点から、本発明において解決すべき課題は、より高い結合強度及び良好な誘電特性を実現するポリブチレンテレフタレート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、成分(A)としてポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)として融点が105℃~185℃であるポリエステルコポリマー、成分(C)としてビニルベースのポリマー、及び場合により成分(D)としてガラス気泡を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明における目的は、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物によって得られた物品を提供することである。該物品は、好ましくは、E&E分野、特に高周波通信分野の部品又は構成要素、例えば移動体(mobiles)、センサー又はノート型パソコンのフレーム、ハウジング又はパッケージ、又は移動体又は車両のアンテナスプリッターとして使用される。
【0011】
また、本発明における目的は、ポリブチレンテレフタレート組成物のプロセスを提供することである。
【0012】
また、本発明における目的は、融点(T)が105℃~185℃であるポリエステルコポリマーを、プラスチック/金属ハイブリッドにおけるポリブチレンテレフタレート樹脂と金属との結合強度を高めるために使用する方法を提供することである。
【0013】
また、本発明における目的は、金属物品と、金属物品に接合されて統合された本発明のポリブチレンテレフタレート組成物とを含む、プラスチック/金属ハイブリッドの複合体を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「a」、「an」及び「the」などの用語は、単一の実体のみを指すことを意図するのではなく、特定の例が例示に使用される一般的なクラスを含む。
【0015】
「a」、「an」及び「the」という用語は、「少なくとも1つ」という用語と交換可能で使用される。「~の少なくとも1つ」及び「~の少なくとも1つを含む」の後に列挙が続く文言は、列挙された項目の任意の1つ、及び列挙された2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。特に明記されていない限り、すべての数値範囲には、そのエンドポイントとエンドポイント間の非整数値が含まれる。
【0016】
「第1の」、「第2の」及び「第3の」という用語は、本開示において、実施形態の1つ以上の記載における便宜上の問題としてのみ使用される。特に断りのない限り、これらの用語はその相対的な意味でのみ使用されていることが理解されよう。
【0017】
「グリコール」という用語は、異なる炭素原子に結合した2つのヒドロキシル基(-OH基)を含有する脂肪族ジオールである。
【0018】
「金属」という用語には、純金属材料、及び少なくとも1つが金属である2つ以上の元素から構成される金属合金が含まれる。
【0019】
発明の詳細な説明
開示するのは、成分(A)としてポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)として融点が105℃~185℃であるポリエステルコポリマー、成分(C)としてビニルベースのポリマー、及び場合により成分(D)としてガラス気泡を含む、1つのポリブチレンテレフタレート組成物である。
【0020】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)
本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を含有する。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)には、ホモ-ポリエステル又はコ-ポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートコ-ポリエステル)が含まれる。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主成分としてブチレンテレフタレートを含有し、これは一般的な方法によって、例えば重合成分の重縮合によって得ることができ、その重合成分は、少なくとも1つのテレフタル酸及び/又はそのエステル誘導体を含む第1のジカルボン酸成分と、少なくとも1つの1,4-ブタンジオール及び/又はそのエステル誘導体を含む第1のグリコール成分とを含む。
【0021】
本発明では任意の既知のポリブチレンテレフタレート樹脂を使用することができる。本発明において、結晶化特性、ポリブチレンテレフタレートの末端基の種類又は量、固有粘度、分子量、直鎖状又は分岐状構造、重合触媒の種類又は量、及び重合方法に制限はない。
【0022】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はそのエステル誘導体、又は1,4-ブタンジオール又はそのエステル誘導体以外の重合成分を、特性を損なうことのない範囲内で含有してよい。例えば、他の重合成分は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の全重合成分に基づいて、40モル%以下、特に20モル%以下の量である。
【0023】
他の重合成分の例には、20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、7~12個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、及び/又は8~16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸が含まれ、好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、二量体酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、ヒミン酸(himic acid)、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸からなる群から選択され、より好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、イソフタル酸及び/又はフタル酸である。これらの成分は、単独で使用してよく、又はこれらの2種類以上を混合して使用してもよい。
【0024】
他の重合成分の例には、2~12個の炭素原子を有する脂肪族グリコール、6~12個の炭素原子を有する脂環式グリコール、炭素原子数が2~4であるオキシアルキレン単位を複数有するポリオキシアルキレングリコール、及び/又は6~14個の炭素原子を有する芳香族グリコールが含まれ、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、トリメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、1,3-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス-1,4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール、キシリレングリコール及びナフタレンジオールからなる群から選択され、より好ましくは、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコールである。これらの成分は、単独で使用してよく、又はこれらの2種類以上を混合して使用してもよい。
【0025】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の例には、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)及びポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレートが含まれる。
【0026】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、20質量%~80質量%のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。例えば、本明細書に開示するポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、20質量%~70質量%、20質量%~60質量%、20質量%~50質量%、又は20質量%~40質量%の範囲でよい。
【0027】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の粘度数は、0.005g/mlフェノール/1,2-ジクロロベンゼン溶液(質量比1:1)中、ISO1628-5に準拠して測定して、90~170cm/g、好ましくは100~135cm/g、より好ましくは100~120cm/gの範囲で好適である。
【0028】
本発明の一実施形態では、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、直鎖状ポリブチレンテレフタレート樹脂である。
【0029】
低融点ポリエステル(B)
本発明における融点(T)が105℃~185℃であるポリエステルコポリマー(以下、単に「ポリエステルコポリマー」という)は、「低融点ポリエステル」とも呼ばれ、非修飾ポリエステルよりも低い融点を有する。融点は、示差走査熱量測定(「DSC」)により、ISO11357に準拠して、加熱速度10℃/分で測定される。ポリエステルコポリマーは、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートを構成する第2のジカルボン酸成分及び/又は第2のグリコール成分を、共重合可能なモノマーで部分的に置換することによって得ることができ、ここで第2のジカルボン酸成分は、少なくともテレフタル酸及び/又はそのエステル誘導体を含み、第2のグリコール成分は、少なくとも1つの1,4-ブタンジオール、エチレングリコール及び/又は1,4-ブタンジオール及びエチレングリコールのエステル誘導体を含み、好ましくは、エチレングリコール及び/又はそのエステル誘導体である。
【0030】
ポリエステルコポリマーは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸及び/又はエチレングリコールを、共重合可能なモノマーで部分的に置換することによって得ることができる。
【0031】
共重合可能なモノマーには、テレフタル酸を除く第3のジカルボン酸、及び/又はエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールを除く第3のグリコールから選択される1つ以上のモノマーが含まれる。
【0032】
ポリエステルコポリマー(B)において、ジカルボン酸(第2のジカルボン酸及び第3のカルボン酸)の、グリコール(第2のグリコール及び第3のグリコール)に対するモル比は、好ましくは0.9:1.1~1.1:0.9である。
【0033】
第3のジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び/又はテレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0034】
本明細書に開示する脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、4~40個の炭素原子、より好ましくは4~24個の炭素原子、4~14個の炭素原子、又は4~10個の炭素原子を含む。例えば、本明細書に開示する脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸及び/又はヘキサデカンジカルボン酸であってよく、好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸及び/又はセバシン酸である。
【0035】
脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、7~12個の炭素原子を含む。例えば、本明細書に開示する脂環式ジカルボン酸は、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸及び/又はヒミン酸であってよい。
【0036】
テレフタル酸を除く芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、8~16個の炭素原子を含み、より好ましくは、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、及び4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくはイソフタル酸及び/又はフタル酸である。
【0037】
第2のジカルボン酸の誘導体は、好ましくは、フタル酸又はイソフタル酸のC~Cアルキルエステル、例えばジメチルフタレート又はジメチルイソフタレート(DMI)である。
【0038】
第3のグリコールは、エチレングリコール又は1,4-ブタンジオール、ポリオキシアルキレングリコールを除く脂肪族アルカンジオール、脂環式ジオール、及び芳香族ジオールからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0039】
本明細書に開示する脂肪族アルカンジオールは、好ましくは、2~12個、より好ましくは2~10個、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む脂肪族アルカンジオールであり、例えば、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及び/又はデカンジオールである。
【0040】
本明細書に開示するポリオキシアルキレングリコールは、好ましくは、炭素原子数が2~4であるオキシアルキレン単位を複数含み、より好ましくは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0041】
本明細書に開示する脂環式ジオールは、好ましくは、6~12個の炭素原子を含み、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジオール及び/又は1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0042】
本明細書に開示する芳香族ジオールは、好ましくは、6~14個の炭素原子を含み、より好ましくは、キシリレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノール及びキシリレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、第3のグリコールは、2~6個の炭素原子を有する脂肪族アルカンジオール、例えばトリメチレングリコール、プロピレングリコール及び/又はヘキサンジオール、及び/又は約2~4の繰り返し数でオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、第3のジカルボン酸は、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及び/又はセバシン酸、及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸及び/又はフタル酸である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、第3のグリコールは、約2~4の繰り返し数でオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールであってよく、そして第3のジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸及び/又はフタル酸であってよい。
【0046】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに基づいて、5モル%~30モル%、好ましくは5モル%~20モル%の共重合可能なモノマーを含んでよい。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに基づいて、1モル%~10モル%の第3のグリコール、例えばポリオキシアルキレングリコールと、4モル%~29モル%の第3のジカルボン酸、例えば芳香族ジカルボン酸、特にイソフタル酸及び/又はフタル酸を含む。
【0048】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、第3のグリコールとしてのテレフタル酸、エチレングリコール、炭素原子数が2~4であるオキシアルキレン単位を2~4個有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール、及び第3のカルボン酸としての8~16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸及び/又はフタル酸から構成される。好ましくは、第3のグリコールの量は1モル%~10モル%であり、第3のジカルボン酸の量は4モル%~29モル%であり、これらはポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに基づき、ジカルボン酸(テレフタル酸及び第3のカルボン酸)の、グリコール(エチレングリコール及び第3のグリコール)に対するモル比は0.9:1.1~1.1:0.9である。
【0049】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、5質量%~40質量%のポリエステルコポリマーを含む。例えば、本明細書に開示するポリエステルコポリマーは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、10質量%~35質量%、10質量%~30質量%、15質量%~35質量%、又は15質量%~30質量%の範囲であってよい。
【0050】
低融点ポリエステルは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することにより測定して、8,000~80,000g/モル、好ましくは10,000~30,000g/モルの質量平均分子量を有する。
【0051】
ビニルベースのポリマー(C)
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、(C-1)少なくとも1つのビニルモノマー、及び(C-2)少なくとも1つのエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体から誘導される、(C)ビニルベースのポリマーを含む。ビニルモノマーは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有するモノマーである。
【0052】
ビニルモノマー(C-1)は、好ましくは、アルファ-オレフィン及び/又はジエンであり、より好ましくはアルファ-オレフィンである。アルファ-オレフィンは、好ましくは、2~20個の炭素原子を有し、より好ましくは4~10個の炭素原子を有する。アルファ-オレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-デセン及びそれらの混合物であり、より好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、イソブテン、エチレンとプロピレンとの混合物、エチレンと1-オクテンとの混合物、エチレンと1-ブテンとの混合物、プロピレンと4-メチル-1-ペンテンとの混合物、プロピレンと1-ブテンとの混合物、エチレンとプロピレンと1-ブテンとの混合物、及び1-デセンと1-メチル-1-ペンテンとの混合物であり、最も好ましくは、エチレン、1-ブテン、1-プロピレン、1-ペンテン、及びエチレンと1-オクテンとの混合物である。
【0053】
ジエンは、好ましくは、共役ジエンであり、より好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン及びそれらの混合物であり、より好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン及び/又はイソプレンであり、最も好ましくは、1,3-ブタジエンである。
【0054】
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の誘導体は、好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸のエポキシ化合物、エステル、アミド、イミド、酸無水物及び/又は金属塩から選択され、より好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸のエステル、エポキシ化合物及び/又は酸無水物である。
【0055】
ビニルベースのポリマーにおいて、ビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、ビニルモノマー(C-1)は、好ましくは、40質量%~90質量%、及び好ましくは50質量%~85質量%の量であり、そしてエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(C-2)は、好ましくは、10質量%~60質量%、及び好ましくは15質量%~50質量%の量である。
【0056】
1つの好ましい実施形態では、成分(C)は、少なくとも1つの(C-1)及び少なくとも1つの(C-2)から誘導される少なくとも2つのビニルベースのポリマーの組み合わせであり、1つの第1のビニルベースのポリマーの(C-2)は、エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つのエポキシ化合物を含むモノマーから誘導され、1つの第2のビニルベースのポリマーの(C-2)は、エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つの酸無水物を含むモノマーから誘導される。第1及び第2のビニルベースのポリマーの(C-1)は、同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
第1のビニルベースのポリマーの、第2のビニルベースのポリマーに対する質量比は、好ましくは80:20~20:80であり、より好ましくは70:30~30:70であり、最も好ましくは60:40~40:である。
【0058】
1つの好ましい実施形態では、第1のビニルベースのポリマー中のエチレン性不飽和カルボン酸のエポキシ化合物は、第1のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%、好ましくは2質量%~8質量%の量である。第2のビニルベースのポリマー中のエチレン性不飽和カルボン酸の酸無水物は、第2のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%、好ましくは2質量%~8質量%の量である。
【0059】
1つの好ましい実施形態では、成分(C)は、第1のビニルベースのポリマーと第2のビニルベースのポリマーとの組み合わせであり、
第1及び第2のビニルベースのモノマーの(C-1)は、エチレン、1-ブテン、1-プロピレン、1-ペンテン、及びエチレンと1-オクテンとの混合物から、好ましくはエチレン、1-プロピレン及びエチレンと1-オクテンとの混合物から、独立して選択され、
第1のビニルベースのモノマーの(C-2)は、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを含み、そして場合により、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを除く他のエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を含み、好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸のエステルであり、
グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートは、好ましくは、第1のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~8質量%の量であり、
第2のビニルベースのモノマーの(C-2)は、(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸を含み、そして場合により、(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸を除く他のエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を含み、好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸のエステルであり、
(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸は、好ましくは、第2のビニルベースのポリマーを構成する全モノマーに基づいて、1質量%~10質量%、より好ましくは2質量%~8質量%の量である。
【0060】
エチレン性不飽和カルボン酸は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合及び少なくとも1つのカルボキシル基を有する。エチレン性不飽和カルボン酸の例は、モノオレフィン酸及びポリオレフィン不飽和モノ-及びポリ-カルボン酸(ジ-、トリ-カルボン酸)であり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、2-エチルアクリル酸、2-クロロアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンジェリン酸、ソルビン酸、メサコン酸、桂皮酸、p-クロロ桂皮酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2.2.2)-オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ(2.2.1)オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、マレオピマル酸及び7-オキサビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及び/又はシトラコン酸である。
【0061】
エチレン性不飽和カルボン酸の酸無水物は、好ましくは、無水マレイン酸(MAH)、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、4-メチルシクロヘクス-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルン-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水ナジン酸、無水メチルナジン酸、無水ヒミン酸(himic anhydride)、無水メチルヒミン酸(methyl himic anhydride)及びx-メチルビシクロ(2.2.1)ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物(XMNA)からなる群から選択され、より好ましくは無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸である。
【0062】
エチレン性不飽和カルボン酸のエステルは、好ましくは、アクリル酸及び/又は酢酸のエステルであり、より好ましくは、アクリル酸及び/又は酢酸のアルキルエステル及び/又はヒドロキシアルキルエステル、例えばアクリル酸及び/又は酢酸のC~C18、より好ましくはC~C12、最も好ましくはC~Cアルキルエステル及び/又はC~C18、より好ましくはC~C12、最も好ましくはC~Cヒドロキシアルキルエステルである。エチレン性不飽和カルボン酸のエステルの例は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ジメチルマレエート、モノメチルマレエート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及びビニルアセテートであり、
より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、及び/又はイソブチルメタクリレートであり、最も好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート及び/又はブチルメタクリレートである。
【0063】
エチレン性不飽和カルボン酸のエポキシ化合物は、カルボン酸グリシジルエステル、グリシジルエーテル及び/又は同類のものであってよい。エチレン性不飽和酸のエポキシ化合物の例は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、マレイン酸1-グリシジルエステル、マレイン酸のジグリシジルエステル、イタコン酸のモノグリシジルエステル、イタコン酸のジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノグリシジルエステル、シトラコン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のトリグリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、及び4-ビニルベンジルグリシジルエーテルであり、好ましくはグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートである。
【0064】
エチレン性不飽和カルボン酸のアミドは、好ましくは、アリルアミン、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N-モノエチルアミド、マレイン酸N,N-ジエチルアミド、フマル酸モノアミド、及びフマル酸ジアミドからなる群から選択される。
【0065】
エチレン性不飽和カルボン酸のイミドは、好ましくは、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選択される。
【0066】
エチレン性不飽和カルボン酸の溶融塩は、好ましくは、ナトリウムアクリレート、カルシウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート及びカルシウムメタクリレートからなる群から選択される。
【0067】
1つの好ましい実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体は、無水マレイン酸、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート又はそれらの任意の組み合わせである。
【0068】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニルベースのポリマーは、(C-1)の少なくとも1つ及び(C-2)の少なくとも1つの、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー又はグラフトコポリマーであってよく、より好ましくは、(C-1)の少なくとも1つ及び(C-2)の少なくとも1つのブロックコポリマー及び/又はグラフトコポリマーである。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニルベースのポリマーは、エチレン、プロピレン及びオクテンからなる群から選択されるモノマーを含む(C-1)、及び無水マレイン酸、メチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート及びエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマーを含む(C-2)から誘導される。
【0070】
ビニルベースのポリマーの、直鎖、分岐及びコアシェル構造、重合触媒の種類又は量、及び重合方法に制限はない。
【0071】
オレフィンを不飽和カルボン酸又はその誘導体で重合するために、様々な既知の方法を採用することができる。例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体を、オレフィンモノマーで重合したポリオレフィン部分に添加して、グラフト共重合又はブロック共重合を行う方法、及び溶媒に溶解した不飽和カルボン酸又はその誘導体を、ポリオレフィン部分に添加して、グラフト共重合又はブロック共重合を行う方法を採用することができる。
【0072】
1つの好ましい実施形態では、ビニルベースのポリマーは、エチレン/メチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリレート、エチレン/エチル(メタ)アクリレート、エチル/ブチル(メタ)アクリレート、プロピレン/メチル(メタ)アクリレート、プロピレン/(メタ)アクリレート、プロピレン/エチル(メタ)アクリレート、プロピレン/ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/オクテン/メチル(メタ)アクリレート、エチレン/オクテン/(メタ)アクリレート、エチレン/オクテン/エチル(メタ)アクリレート、エチレン/オクテン/ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/無水マレイン酸、プロピレン/無水マレイン酸、エチレン/オクテン/無水マレイン酸、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸、エチレン/(メタ)アクリレート/無水マレイン酸、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸、エチレン/ブチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸、エチレン/グリシジルメタクリレート、プロピレン/グリシジルメタクリレート、エチレン/オクテン/グリシジルメタクリレート、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレート、エチレン/(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレート、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレート、及びエチレン/ブチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートのブロックコポリマーからなる群から選択される。
【0073】
1つの好ましい実施形態では、ビニルベースのポリマーはグラフト化コポリマーであり、より好ましくは、グリシジルメタクリレートグラフト化コポリマー及び/又は無水マレイン酸グラフト化コポリマー、例えばグリシジルメタクリレートグラフト化ポリエチレン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリプロピレン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリオクテン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/オクテン)、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/メチル(メタ)アクリレート)、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/(メタ)アクリレート)、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/エチル(メタ)アクリレート)、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/ブチル(メタ)アクリレート)、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト化ポリオクテン、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/オクテン)、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/メチル(メタ)アクリレート)、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/(メタ)アクリレート)、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/エチル(メタ)アクリレート)、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/ブチル(メタ)アクリレート)である。
【0074】
1つの好ましい実施形態では、成分(C)は、第1のビニルベースのポリマーと第2のビニルベースのポリマーとの組み合わせであり、第1のビニルベースのポリマーは、少なくとも1つのビニルモノマー(C-1)及び少なくとも1つのグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートを含むモノマーから誘導されるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであり、
第2のビニルベースのポリマーは、少なくとも1つのビニルモノマー(C-1)及び少なくとも1つの(メタ)アクリル酸無水物及び/又は無水フマル酸を含むモノマーから誘導されるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであり、
第1及び/又は第2のビニルベースのポリマーは、場合により、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート及び/又はイソブチルメタクリレートからなる群から、好ましくはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸からなる群から、より好ましくはメチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート及び/又はブチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む。第1及び第2のビニルベースのポリマーのビニルモノマー(C-1)は同じであっても異なっていてもよく、好ましくは、エチレン、-プロピレン、及びエチレンと1-オクテンとの混合物である。第1のビニルベースのポリマーの第2のビニルベースのポリマーに対する質量比は、好ましくは80:20~20:80であり、より好ましくは70:30~30:70であり、最も好ましくは60:40~40:60である。
【0075】
1つの好ましい実施形態では、成分(C)は、第1及び第2のビニルベースのポリマーの組み合わせであり、
ここで、第1のビニルベースのポリマーは、エチレン/グリシジルメタクリレートコポリマー、プロピレン/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/オクテン/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/アクリル酸のエステル/グリシジルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリエチレン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリプロピレン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリオクテン、グリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/オクテン)及びグリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/アクリル酸のエステル)からなる群から選択され、
好ましくは、エチレン/アクリル酸のエステル/グリシジルメタクリレートコポリマー及び/又はグリシジルメタクリレートグラフト化ポリ(エチレン/アクリル酸のエステル)であり、
ここで、第2のビニルベースのポリマーは、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、プロピレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/オクテン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸のエステル/無水マレイン酸コポリマー、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト化ポリオクテン、無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/オクテン)及び無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/アクリル酸のエステル)からなる群から選択され、好ましくは、エチレン/アクリル酸のエステル/無水マレイン酸コポリマー及び/又は無水マレイン酸グラフト化ポリ(エチレン/アクリル酸のエステル)であり、
ここで、アクリル酸のエステルは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及び/又はブチル(メタ)アクリレートである。
【0076】
1つの好ましい実施形態では、成分(C)は、第1及び第2のビニルベースのポリマーの組み合わせであり、
第1のビニルベースのポリマーは、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー及び/又はエチレン/ブチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーであり、
第2のビニルベースのポリマーは、エチレン/メチル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/エチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、及び/又はエチレン/ブチル(メタ)アクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマーである。
【0077】
本発明のビニルベースのポリマーは、ポリブチレンテレフタレート組成物の0.1質量%~20質量%の量であることが好ましい。ビニルベースのポリマーの量は、ポリブチレンテレフタレート組成物の質量の、0.1質量%~18質量%、0.1質量%~15質量%、0.1質量%~12質量%、0.1質量%~10質量%、0.5質量%~20質量%、0.5質量%~18質量%、0.5質量%~15質量%、0.5質量%~12質量%、0.5質量%~10質量%、1質量%~20質量%、1質量%~18質量%、1質量%~15質量%、1質量%~12質量%、1質量%~10質量%、2質量%~20質量%、2質量%~18質量%、2質量%~15質量%、2質量%~12質量%、2質量%~10質量%、5質量%~20質量%、5質量%~18質量%、5質量%~15質量%、5質量%~12質量%、5質量%~10質量%の範囲でよい。
【0078】
ガラス気泡(D)
本発明のガラス気泡は、「中空ガラス気泡(hollow glass bubbles)」、「中空ガラス微小球(hollow glass microspheres)」、「中空ガラスビーズ」、「ガラスマイクロ気泡(glass microbubbles)」又は「ガラスバルーン(glass balloons)」とも呼ばれ、約500マイクロメートル未満の平均直径を有し、そして中空部分と、その中空部分を囲むガラスシェルとを含む。中空部分は空気などのガスで満たされていてよい。
【0079】
平均直径は、好ましくは、体積中位径D50である。中空ガラス気泡の体積中位径D50は、好ましくは5~50ミクロンの範囲である。
【0080】
本発明におけるガラス気泡の平均真密度は、好ましくは0.3~0.7g/ccであり、より好ましくは0.3~0.6g/ccである。例えば、本明細書に開示するガラス気泡の平均真密度は、0.32g/cc~0.6g/cc、0.35g/cc~0.6g/cc、0.38g/cc~0.6g/cc、0.43g/cc~0.6g/cc、0.45g/cc~0.6g/cc、0.46g/cc~0.6g/cc、0.49g/cc~0.6g/cc、0.30g/cc~0.55g/cc、0.32g/cc~0.55g/cc、0.35g/cc~0.55g/cc、0.38g/cc~0.55g/cc、0.43g/cc~0.55g/cc、0.45g/cc~0.55g/cc、0.46g/cc~0.55g/cc、0.49g/cc~0.55g/cc、0.30g/cc~0.5g/cc、0.32g/cc~0.5g/cc、0.35g/cc~0.5g/cc、0.38g/cc~0.5g/cc、0.40g/cc~0.5g/cc、0.43g/cc~0.5g/cc、0.45g/cc~0.5g/cc、0.46g/cc~0.5g/cc、0.43g/cc~0.49g/ccの範囲でよい。ガラス気泡の平均真密度は、ガラス気泡のサンプルの質量を、ガスピクノメーターで測定したそのガラス気泡の質量の真の体積で割って得られた商である。「真の体積」は、バルク体積ではなく、ガラス気泡の総体積である。平均真密度は、ASTM D2840-69「Average True Particle Density of Hollow Microspheres」に準拠したピクノメーターを使用して測定することができる。「g/cc」は、1立方センチメートルあたりのグラム数を意味する。
【0081】
ガラス気泡の破砕強度は、好ましくは5,000PSI~30,000PSIであり、より好ましくは6,000PSI~28,000PSIである。例えば、本明細書に開示する破砕強度は、8,000PSI~20,000PSI、10,000PSI~18,000PSI、16,000PSI~18,000PSIの範囲でよい。ガラス気泡の破砕強度は、典型的には、ASTM D3102-72「Hydrostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres」を使用して測定される。
【0082】
本発明によるガラス気泡は、約8マイクロメートル~約60マイクロメートルの範囲の体積によるメジアン径を含むサイズ分布を有する。ガラス気泡の体積によるメジアン径は、例えば、10~55マイクロメートル、15~55マイクロメートル、15~50マイクロメートル、15~45マイクロメートル、15~40マイクロメートル、15~35マイクロメートル、15~30マイクロメートル、15~25マイクロメートル、15~20マイクロメートル、20~55マイクロメートル、20~50マイクロメートル、20~45マイクロメートル、20~40マイクロメートル、20~35マイクロメートル、20~30マイクロメートル、20~25マイクロメートルの範囲でよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示するガラス気泡は、5~30マイクロメートル、10~35マイクロメートル、10~50マイクロメートル、15~60マイクロメートル、20~38マイクロメートル、20~45マイクロメートル、20~70マイクロメートルに分布するサイズを有する。体積中位サイズはDv50サイズとも呼ばれ、ここで分布内のガラス気泡の50体積パーセントが、示したサイズよりも小さい。本明細書で使用するサイズという用語は、ガラス気泡の直径及び/又は高さと同等であると見なされる。ガラス気泡のサイズ分布は、ガウス分布、正規分布、非正規分布でよい。非正規分布は、単峰性又は多峰性でよい。
【0083】
本明細書における本発明に有用なガラス気泡は商業的に入手可能であり、Potters Industries,Valley Forge,PA19482から、「Sphericel Hollow Glass Spheres」(例えば、グレード110P8及び60P18)の商品名で、又は3M社から、「3M Glass bubbles」の商品名で、例えばグレードS60、S60HS、S38HS、S38XHS、iM16K、iM30K、K42HS、及びK46で販売されている。
【0084】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0質量%~30質量%のガラス気泡を含む。例えば、本明細書に開示するガラス気泡は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、5質量%~25質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、5質量%~10質量%の範囲でよい。
【0085】
ガラス気泡は、好ましくは、表面接着性を改善するために表面処理されたものである。接着剤は、例えば、シランカップリング剤、ウレタン、エポキシド、及び/又はアミノシラン酸コポリマーであり、より好ましくは、シランカップリング剤である。
【0086】
シランカップリング剤の例は、エポキシ官能性シラン、ウレタン官能性シラン及び/又はアミノウレイド官能性シランであり、好ましくは、エポキシシクロヘキシル官能性シラン、グリシドキシ官能性シラン、イソシアナート官能性シラン及びアミノウレイド官能性シランからなる群から選択される少なくとも1つであり、最も好ましくは、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシイシリ-N-(1,3ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランヒドロクロリド、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン及び3-イソシアナートプロピルトリエトキシシランから選択される少なくとも1つである。
【0087】
強化剤(E)
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、成分(E)として強化剤をさらに含んでよい。
【0088】
本発明において強化剤(E)に制限はないが、繊維状強化剤が好ましい。強化剤の例は、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、完全な芳香族ポリアミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、カリウムチタネート繊維、真鍮繊維、ステンレス鋼繊維、鋼繊維、セラミック繊維及び玄武岩繊維であり、ガラス繊維及び炭素繊維が好ましい。
【0089】
任意の既知のガラス繊維が好ましく使用され、そして本発明においては、ガラス繊維の直径、シリンダー及び繭などの形状、長さ及びガラスの切断方法(例えばチョップドストランド及びロービングなど)に制限はない。さらに本発明においては、ガラスの種類(例えばE-ガラス繊維、D-ガラス繊維、S-ガラス繊維、C-ガラス繊維、T-ガラス繊維)に制限はなく、そしてE-ガラス繊維又はジルコニウムを含有する耐食性ガラスが、品質の観点から好ましく使用される。
【0090】
強化剤、好ましくはガラス繊維は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0質量%~40質量%の量、好ましくは5質量%~40質量%、より好ましくは5質量%~35質量%、最も好ましくは5質量%~30質量%の量である。
【0091】
添加剤(F)
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、成分(F)として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に一般的に添加される添加剤、すなわち潤滑剤、安定剤、酸化防止剤、離型剤、UV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤、帯電防止剤、流動助剤、難燃剤、エラストマー改質剤、酸捕捉剤、乳化剤、核剤、可塑剤及び/又は顔料をさらに含んでよい。これらの添加剤及びさらに適した添加剤は、例えば、Gaechter,Mueller,Kunststoff-Additive[プラスチック添加剤]、第3版、Hanser-Verlag,Munich,Vienna、1989年及びPlastics Additives Handbook、第5版、Hanser-Verlag,Munich、2001年に記載されている。添加剤は単独で、又は混合物中で、又はマスターバッチの形で使用することができる。
【0092】
添加剤は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、0.01質量%~5質量%の量で使用され、好ましくは0.1質量%~3質量%であり、最も好ましくは0.1質量%~2質量%である。
【0093】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1つ以上の潤滑剤及び/又は処理剤をさらに含んでよい。含まれる場合、潤滑剤及び/又は処理剤は、好ましくは、10~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸及び/又は2~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコール又はアミンのエステル又はアミドである。好ましい潤滑剤はペンタエリスリトールテトラステアレート、10~20個の炭素原子を有するペンタエリスリトールの脂肪酸エステルである。
【0094】
潤滑剤は、好ましくは、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量にそれぞれ基づいて、約0質量%~3質量%、より好ましくは約0.01質量%~2質量%、及び最も好ましくは約0.2質量%~1質量%の量で存在する。
【0095】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1つ以上の抗酸化剤をさらに含んでよい。使用される抗酸化剤は、好ましくは、芳香族アミンベースの抗酸化剤、ヒンダードフェノールベースの抗酸化剤、及びホスファイトベースの抗酸化剤である。
【0096】
芳香族アミンベースの抗酸化剤の例は、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチル-キノリン)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、及び/又はN,N’-ビス(メチルフェニル)-1,4-ベンゼンジアミンである。
【0097】
ヒンダードフェノールベースの抗酸化剤の例は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-アルファ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-オメガ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7~C9-分岐アルキルエステルである。そして好ましくは、固体ヒンダードフェノールベースの抗酸化剤は、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群「B-S」から選択される1つ以上である。
【0098】
ホスファイトベースの抗酸化剤の例は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE、CAS31570-04-4)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Ultranox(登録商標)626、Chemtura、CAS26741-53-7)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(ADK Stab PEP-36、Adeka、CAS80693-00-1)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228、Dover Chemical Corporation、CAS154862-43-8)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE、CAS26523-78-4)、(2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール)-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura、CAS161717-32-4)及びHostanox(登録商標)P-EPQである。
【0099】
抗酸化剤は、好ましくは、それぞれ本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、約0質量%~2質量%、より好ましくは約0.01質量%~1質量%、及び最も好ましくは約0.2質量%~0.8質量%の量で存在する。
【0100】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1つ以上の接着補助剤をさらに含んでよい。
【0101】
接着補助剤の例は、エポキシド、例えば脂肪酸のエポキシ化アルキルエステル、例えばエポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、及びエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA樹脂である。
【0102】
接着補助剤は、好ましくは、それぞれ本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に基づいて、約0質量%~3質量%、より好ましくは約0.01質量%~2質量%、及び最も好ましくは約1質量%~2質量%の量で存在する。
【0103】
1つの好ましい実施形態では、ポリブチレンテレフタレート組成物は、20質量%~50質量%の成分(A)ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、15質量%~35質量%の成分(B)ポリエステルコポリマー(融点105℃~185℃)、5質量%~15質量%の成分(C)ビニルベースのポリマー、5質量%~15質量%の成分(D)ガラス気泡、
5質量%~30質量%の成分(E)強化剤、好ましくはガラス繊維、
及び0質量%~5質量%の添加剤(F)を含む。ポリエステルコポリマーは、好ましくは、第3のグリコールとしての、テレフタル酸、エチレングリコール、炭素原子数が2~4であるオキシアルキレン単位を2~4個有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール、及び第3のカルボン酸としての、8~16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸及び/又はフタル酸から構成される。好ましくは、第3のグリコールの量は1モル%~10モル%であり、第3のジカルボン酸の量は1モル%~10モル%であり、これらはポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに基づき、ジカルボン酸(テレフタル酸と第3のカルボン酸)のグリコール(エチレングリコールと第3のグリコール)に対する比は0.9:1.1~1.1:0.9である。ビニルベースのポリマーは、好ましくは、少なくとも1つの(C-1)及び少なくとも1つの(C-2)から誘導される少なくとも2つのビニルベースのポリマーの組み合わせであり、1つの第1のビニルベースのポリマーの(C-2)は、エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つのエポキシ化合物を含むモノマーから誘導され、1つの第2のビニルベースのポリマーの(C-2)は、エチレン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つの酸無水物を含むモノマーから誘導される。第1及び第2のビニルベースのポリマーの(C-1)は、同じであっても異なっていてもよい。
【0104】
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、樹脂組成物を調製するための従来の方法で一般的に使用される設備及びプロセスを使用して、容易に調製することができる。
【0105】
別の態様では、本発明は、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物を調製するための方法に関する。ポリブチレンテレフタレート組成物は、様々な既知の方法、例えば押出し又はニーディングによって調製又は処理してよい。例えば、本発明による組成物は、(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、ポリエステルコポリマー(B)、ビニルベースのポリマー(C)及び任意の添加剤(F)を混合し、場合により(2)強化剤(E)を添加し、場合により(3)ガラス気泡(D)を添加し、そして押出し又はニーディングをすることによって、調製又は処理してよい。成分が同じ供給ゾーンに導入される場合、成分は、その形態又は特性に応じて、異なるホッパーを介して導入してよいことが理解されるべきである。押出機の温度は、ポリブチレンテレフタレート組成物の従来の処理温度であり、好ましくは200℃~270℃である。押出機の合理的な速度は、ポリブチレンテレフタレート組成物の従来の処理速度であり、好ましくは200~500rpmである。
【0106】
別の態様では、本発明は、融点(T)が105℃~185℃であるポリエステルコポリマーを、プラスチック/金属ハイブリッドにおけるポリブチレンテレフタレート樹脂と金属との結合強度を高めるために使用する方法に関する。結合強度は、好ましくは、ISO19095に準拠して試験した引張重ねせん断強度である。
【0107】
別の態様では、本発明はまた、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物によって得られた又は得ることができる物品に関する。その物品は、好ましくは、E&E分野、特に高周波通信分野の部品又は構成要素、例えば移動体、センサー又はノート型パソコンのフレーム、ハウジング又はパッケージ、又は移動体又は車両のアンテナスプリッターとして使用される。
【0108】
プラスチック/金属ハイブリッドの複合体も本発明で開示する。これは、金属物品と、金属物品に接合されて統合された本発明のポリブチレンテレフタレート組成物とを含む。金属は、好ましくは、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、又はマグネシウムである。
【0109】
金属の表面は、50~500nmの高さ及び長さと数百~数千nmの幅を有する無限の連続した段階として造形された超微細な凹凸で、実質的に完全に覆われている。「数百~数千」の数は、1から10までの数である。
【0110】
金属の表面は、好ましくは、金属酸化物又は金属ホスフェートの層で覆われている。
【0111】
プラスチック/金属ハイブリッドの複合体は、従来のナノモールディングテクノロジーの方法で一般的に使用される設備及びプロセス、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれるEP2174766B1に記載の方法を使用して、容易に調製することができる。
【0112】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂は、プラスチック/金属ハイブリッドにおいて金属との高い結合強度を有し、既知のプラスチック/金属ハイブリッドと比較して、より様々な分野に適用することができる。プラスチック/金属ハイブリッドの複合体は、E&E分野、特に高周波通信分野の部品又は構成要素、例えば移動体、センサー又はノート型パソコンのフレーム、ハウジング又はパッケージ、又は移動体又は車両のアンテナスプリッターとして使用してよい。
【0113】
少なくとも2つのビニルベースのポリマーを含むポリブチレンテレフタレート組成物の好ましい実施形態では、ポリブチレンテレフタレート組成物は、金属との高い結合強度及び低い誘電率及び損失を維持できる。
【実施例
【0114】
以下の実施例を参照し、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0115】
特性の評価に使用される成分の詳細は次のとおりである。
実施例で使用されている原材料は次のとおりである:
(A) BASF社のUltradur(登録商標)B2550、ポリブチレンテレフタレート樹脂、粘度数107cm/g(ISO1628に準拠して0.005g/mlのフェノール/1,2-ジクロロベンゼン溶液(質量比1:1)で測定)、数平均モル質量分子量(Mn)16500g/モル。
(B) 低融点ポリエステル:テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、エチルグリコール(EG)及びジエチレングリコール(DEG)でできており、モル比TPA:IPA:EG:DEG=1:0.4:1.3:0.1、T=68℃、T=174℃、固有粘度=0.68dL/g。
(B’) Zhejiang Wankai New Materials Co.,Ltd社のPET WK851、TPAベースのポリエチレンテレフタレート、Tm=243℃。
(C-1) ポリオレフィンベースのポリマー:Elvaloy(登録商標)PTW:Dupont社のエチレン/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートコポリマー、58質量%のエチレン、36質量%のn-ブチルアクリレート、6質量%のグリシジルメタクリレートを含む。
(C-2) ポリオレフィンベースのポリマー:Paraloid(商標)EXL-2655MBS:DOW Chemical社のメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)コポリマー。
(C-3) ポリオレフィンベースのポリマー:Lotader(登録商標)3410:Arkema社のエチレン、ブチルアクリレート及び無水マレイン酸のランダムターポリマー、17~20質量%のブチルアクリレート、3質量%の無水マレイン酸を含む。
(D) ガラス気泡:3M Company社のiM16K。
(E-1) ガラス繊維:Chongqing Polycomp International Corp社のECS3031H。
(E-2) Chongqing Polycomp International Crop社のガラス繊維ECS303N-3-K/HL。
【0116】
添加剤:
Vikoflex(登録商標)7190:安定剤、Arkema社のエポキシ化亜麻仁油。
Loxiol(登録商標)P861/3.5:Emery oleochemicals社のペンタエリスリトールの長鎖脂肪酸エステル。
Irganox(登録商標)1010:BASF社の抗酸化剤。
【0117】
実施例及び比較例の配合を以下の表1~3に示す。原材料を高速攪拌機で合わせて混合し、二軸押出機(Berstorff ZE25)に供給し、260~265℃の温度で溶融押出し、ペレット化して、ペレット形状のポリブチレンテレフタレート組成物を得た。以下の実施例の押出条件は次の通りであった:スクリュー押出機のゾーン温度は200℃~250℃であり、スループットは30kg/hであった。試験片は、Arburg370Cでの射出成形によって調製し、溶融温度は260℃、及び成形温度は80℃であった。
【0118】
特性評価:
- 引張弾性率、破断点伸び、破断点引張強度は、ISO527-1/2に準拠し、23℃でタイプ1Aの試験片を使用して測定及び特性評価した。
- シャルピーノッチ付き衝撃強度及びシャルピーノッチなし衝撃強度は、ISO179-1-2010のタイプAに準拠して23℃で試験し、サンプルストライプは80×10×4mm(長さ×幅×厚さ)であった。
- MVR:溶融体積-流量は、ISO1133-2011に準拠して試験し、試験条件は275℃で2.16kgの負荷であった。
- 誘電率及び誘電損失は、IEC60250に準拠し1GHzで、又はGB/T12636-90に準拠して評価した。
- 引張重ねせん断強度は、ISO19095に従って試験した。試験片の樹脂部分は10mm(幅)×45mm(長さ)×3mm(厚さ)のサイズを有し、試験片の金属部分は18mm(幅)×45mm(長さ)×1.6mm(厚さ)のサイズを有するAl6061で作られており、結合面積は0.5cm2であった。試験前に、試験片を170℃で1時間焼き戻した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表1~3から分かるように、実施例1~11は比較例よりも良好な結果を示した。
【国際調査報告】