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特表2022-553024ポリブチレンテレフタレート組成物およびその物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート組成物およびその物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20221214BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20221214BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221214BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L25/08
C08K3/013
C08K7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523182
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078802
(87)【国際公開番号】W WO2021074165
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/111503
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チョン,チエ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,ローラント,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,チョン,コー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC03X
4J002BC04X
4J002BC06X
4J002BN16X
4J002CF05Y
4J002CF07W
4J002DL006
4J002DL007
4J002FA046
4J002FA107
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD030
4J002FD207
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート組成物、および成分(A)としてポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)としてビニル芳香族モノマーに由来する単位を含むビニル芳香族系ポリマー、および成分(C)として強化剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物に由来する物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)として少なくとも1種のポリブチレンテレフタレート樹脂、成分(B)としてビニル芳香族モノマーに由来する単位を含む少なくとも1種のビニル芳香族系ポリマー、および成分(C)として少なくとも1種の強化剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項2】
ビニル芳香族系ポリマーが、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)および/または(B-2)であり;
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)が、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)を構成する全モノマーに対して、50mol%~100mol%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位と;任意に、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b2)および/または1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位とを含み;
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)が、コアおよびシェルを含むコアシェルポリマーであり、コアが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)と、任意に、エチレン性不飽和モノマー(b2)および共役ジエンモノマー(b3)からなる群から選択される少なくとも1種とを含む第1のモノマー系に由来し;シェルが、ビニル芳香族モノマー(b1)およびエチレン性不飽和モノマー(b2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む第2のモノマー系に由来し;コアシェルポリマーにおけるコア対シェルの質量比が、90:10~10:90である、
請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項3】
ビニル芳香族モノマー(b1)が、式I:
【化1】
[式中、Rは、同一かまたは異なり、水素、C~C10アルキル基、C~Cアルケニル基、C~C10脂環式基、C~C12芳香族炭化水素基、C~Cアルコキシ基およびハロゲン原子からなる群から選択され、好ましくは、水素および/またはC~Cアルキル基であり;Rは、水素および/またはC~Cアルキル基である]
に対応するモノマーを含む、請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項4】
ビニル芳香族モノマー(b1)が、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、パラ-アルファ-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび2-イソプロペニルナフタレンからなる群から選択される、請求項3に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項5】
エチレン性不飽和モノマー(b2)が、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマーおよびこれらの誘導体からなる群から選択され;エチレン性不飽和酸モノマーの誘導体が、エチレン性不飽和酸の酸無水物、エステル、溶融塩、アミド、イミド、および/またはエポキシ化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項6】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和モノマー(b2)が、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、エチレン性不飽和酸の酸無水物、エチレン性不飽和酸のエステルおよび/もしくはエチレン性不飽和酸のエポキシ化合物であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のエチレン性不飽和モノマー(b2)が、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、エチレン性不飽和酸の酸無水物および/もしくはエチレン性不飽和酸のエステルである、
請求項1から4のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項7】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)および(B-2)中のエチレン性不飽和ニトリルモノマーが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよび/もしくはα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から独立に選択されるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和酸モノマーが、(メタ)アクリル酸、2-クロロアクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、ソルビン酸、アルファ-クロロソルビン酸、アルファ-シアノアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2.2.2)-オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ(2.2.1)オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、マレオピマル酸、7-オキサビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸およびアコニチン酸からなる群から選択され;好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸および/もしくはシトラコン酸であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のコアまたはシェルのエチレン性不飽和酸モノマーが、(メタ)アクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸およびアコニチン酸からなる群から選択され、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸および/もしくはイタコン酸であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和カルボン酸の酸無水物が、マレイン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、フマル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルハイミック酸無水物およびx-メチルビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物からなる群から選択され;好ましくは、マレイン酸無水物、(メタ)アクリル酸無水物および/もしくはフマル酸無水物であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のコアまたはシェルのエチレン性不飽和酸の酸無水物モノマーが、マレイン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、ブテン二酸無水物および/もしくはフマル酸無水物からなる群から選択され、好ましくは、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、イタコン酸無水物および/もしくはブテン二酸無水物であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)もしくは(B-2)中のエチレン性不飽和酸のエステルが、独立して、エチレン性不飽和カルボン酸のC~C18アルキルエステルおよび/もしくはC~C18ヒドロキシアルキルエステルであり、好ましくは、メチル(メタ)クリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジメチルマレエート、モノメチルマレエート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびビニルアセテートからなる群から選択され;より好ましくは、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)について、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/もしくはイソブチルメタクリレートであるか、もしくはより好ましくは、ビニル芳香族系ポリマー(B-2)について、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよび/もしくはビニルアセテートであるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和酸のエポキシ化合物が、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸1-グリシジルエステル、マレイン酸のジグリシジルエステル、イタコン酸のモノグリシジルエステル、イタコン酸のジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノグリシジルエステル、シトラコン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のトリグリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよび4-ビニルベンジルグリシジルエーテルからなる群から選択され、好ましくは、グリシジルアクリレートおよび/もしくはグリシジルメタクリレートであるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和酸のアミドが、アリルアミン、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N-モノエチルアミド、マレイン酸N,N-ジエチルアミド、フマル酸モノアミドおよびフマル酸ジアミドからなる群から選択されるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和酸のイミドが、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミドおよびN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選択されるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和酸の溶融塩が、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム、メタクリル酸ナトリウムおよびメタクリル酸カルシウムからなる群から選択される、
請求項5または6に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項8】
共役ジエンモノマー(b3)が、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンおよび3-ブチル-1,3-オクタジエンからなる群から選択され、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンである、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項9】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)が、ビニル芳香族モノマー(b1)と、エチレン性不飽和モノマー(b2)および共役ジエンモノマー(b3)からなる群から選択される少なくとも1種とから構成され;ビニル芳香族ポリマー(b1)が、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンからなる群から選択され;エチレン性不飽和モノマー(b2)が、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-クロロアクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、フマル酸無水物、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択され;共役ジエンモノマー(b3)が、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択されるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)が、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンからなる群から選択されるビニル芳香族モノマー(b1)と、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、メチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される成分(i)と、任意に、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルからなる群から選択される成分(ii)とから構成されるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)が、スチレン-マレイン酸無水物、スチレン-アクリロニトリル-マレイン酸無水物、スチレン-(メタ)アクリレート、スチレン-メチル(メタ)アクリレート、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン-アクリロニトリル-グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン-アクリル酸、スチレン-アクリル酸-α-メチルスチレン、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリルおよびスチレン-ブタジエン-アクリロニトリルのブロック、交互、ランダムまたはグラフトコポリマーである、
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項10】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中で、コアが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)および少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含み;ビニル芳香族モノマー(b1)が、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/もしくは4-メチルスチレンであり;共役ジエンモノマー(b3)が、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/もしくはイソプレンであるか;
または
コアが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)、ならびにエチレン性不飽和ニトリルおよびエチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する単位を含み;エチレン性不飽和ニトリルが、好ましくは、アクリロニトリルおよび/もしくはメタクリロニトリルであり;エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルが、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および/もしくはイソブチル(メタ)アクリレートであり;コアが、好ましくは、ブタジエン-スチレン-(メタ)アクリレートターポリマー、ブタジエン-スチレン-アクリロニトリルターポリマーであるか;
または
コアが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)、ならびにエチレン性不飽和酸、エチレン性不飽和酸、およびエチレン性不飽和ニトリルのC~Cアルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する単位を含み;エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルが、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/もしくはイソブチル(メタ)アクリレートであり;エチレン性不飽和酸が、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸および/もしくはイタコン酸であり;エチレン性不飽和ニトリルが、好ましくは、アクリロニトリルおよび/もしくはメタクリロニトリルであるか;
または
シェルが、エチレン性不飽和酸の少なくとも1種のエステルおよび/もしくは少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位を含み;エチレン性不飽和酸のエステルが、好ましくは、(メタ)アクリル酸もしくは酢酸のC1~C4アルキルエステルおよび/もしくはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび/もしくはイソブチルメタクリレートであり;ビニル芳香族モノマー(b1)が、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレンおよび/もしくはトリブロモスチレンであるか;
または
シェルが、エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルおよびビニル芳香族モノマー(b1)からなる群から選択される少なくとも1種、ならびにエチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、酸無水物および/もしくはエチレン性不飽和酸のC10~C20アルキルエステルからなる群から選択される、1種のモノマー(iii)に由来する単位を含み;エチレン性不飽和酸のC1~C4アルキルエステルが、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および/もしくはイソブチル(メタ)アクリレートであり;ビニル芳香族モノマー(b1)が、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレンおよび/もしくはトリブロモスチレンであり;モノマー(iii)が、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートおよび/もしくはステアリルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項11】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中で、コアが、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)および少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含み;シェルが、(メタ)アクリル酸または酢酸のC~Cアルキルエステルおよび/またはC~Cヒドロキシアルキルエステルに由来する単位を含み;ビニル芳香族モノマー(b1)が、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンであり;共役ジエンモノマー(b3)が、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンであり;(メタ)アクリル酸または酢酸のC1~C4アルキルエステルおよび/またはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルが、好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはイソブチルメタクリレートである、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項12】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中で、コア対シェルの質量比が、90:10~50:50であり、好ましくは90:10~70:30であり、より好ましくは90:10~80:20である、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項13】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のビニル芳香族モノマー(b1)が、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)を構成する全モノマーに対して、60mol%~99.5mol%の量であるか;
または
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中で、コアが、コアの総単位に対して、5質量%~80質量%、好ましくは15質量%~35質量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位と、20質量%~95質量%、好ましくは65質量%~85質量%の、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位とを含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項14】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)が、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および/または(メタ)アクリル酸モノマーの少なくとも1種のC1~C4アルキルエステルを含むグラフト結合モノマーに由来する単位を含む1つの内部グラフト段階と;以下のモノマー:C1~C8アルキルアクリレートまたは多価不飽和架橋剤のうちの少なくとも1種を含む任意の1つの中間シーラー段階とを含み、中間シーラー段階が、内部グラフト段階とシェルとの間にある、請求項1から13のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項15】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)が、70~85質量部のコアと;8~14質量部の内部グラフト段階と;0.1~5質量部の中間シーラー段階と;10~16質量部のシェルとを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項16】
ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、40質量%以下、好ましくは2~10質量%のビニル芳香族系ポリマー(B-1)を含むか;
または
ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、1~20質量%、好ましくは2~10質量%のビニル芳香族系ポリマー(B-2)を含む、
請求項1から15のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項17】
ポリブチレンテレフタレート組成物が、成分(D)として融点(Tm)が105℃~185℃のポリエステルコポリマー、成分(E)としてガラスバブル、および/または成分(F)として添加剤をさらに含み;
成分(D)が、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを構成する第2のジカルボン酸成分および/または第2のグリコール成分を共重合性モノマーで部分的に置換することによって誘導され;共重合性モノマーが、2~6個の炭素原子を有する脂肪族アルキレンジオール、約2~4の繰り返し数でオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および/または芳香族ジカルボン酸、18であり、より好ましくは、トリメチレングリコール、プロピレングリコールおよび/または、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸およびフタル酸からなる群から選択され;
ガラスバブル(E)が、好ましくは、5~50ミクロンの体積基準メジアン径D50;ASTM D2840-69を使用して測定された0.3~0.7g/ccの平均真密度;ASTM D3102-72を使用して測定された5,000PSI~30,000PSIの破砕強度を有する、
請求項1から16のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項18】
ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、20質量%~70質量%のポリブチレンテレフタレート樹脂、40質量%以下のビニル芳香族系ポリマー(B-1)または1~20質量%のビニル芳香族系ポリマー(B-2)、5質量%~40質量%の強化剤(C)、0質量%~40質量%の成分(D)、および0質量%~20質量%のガラスバブル(E)を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物を製造する方法であって、ポリブチレンテレフタレート組成物のすべての成分を混合する工程と、好ましくは、(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、ビニル芳香族系ポリマー(B)、任意の低融点ポリエステル(D)および任意の添加剤(F)を混合する工程と、(2)強化剤(C)を添加する工程と、任意に(3)ガラス泡(E)を添加する工程と、押出または混練する工程とを含む、方法。
【請求項20】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の比誘電率および誘電損失を減少させることにおける、請求項1から16のいずれか一項に記載のビニル芳香族系ポリマー(B)を使用する方法。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート組成物によって得られる物品であって、好ましくは、携帯電話、センサもしくはラップトップのフレーム、ハウジングもしくはパッケージ、または携帯電話もしくは車両のアンテナの部品または構成要素として使用される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート組成物、およびポリブチレンテレフタレート組成物に由来する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波通信技術の発達に伴い、従来の材料は、徐々に、アンテナ筐体、モバイルデバイス、および集積回路などの電子産業の需要に応えることができなくなっている。一方、熱可塑性樹脂は、徐々に、設計の柔軟性および優れた性能という利点を示すようになっている。ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は、その機械的特性における高い性能および加工上の利点により、一般的なカテゴリーである。ただし、PBT組成物、特に、望ましい低誘電特性を備えたガラス強化組成物を作製することは極めて困難である。
【0003】
誘電特性とは、材料が電束およびエネルギー損失率を集中させる程度を指し、電束およびエネルギー損失率は、通常、比誘電率DKおよび誘電正接DFとして表される。PBT組成物の高い比誘電率および誘電正接は、それ自体で高周波通信産業にとって望ましいというものでは必ずしもない。DKおよびDFの増加に伴い、電束密度およびエネルギー損失が増加する。電荷の蓄積は信号伝送を妨害し、電気回路の信頼性を低下させ、周波数のさらなる増加を制限する。低誘電正接は、高周波通信産業に適用される場合、PBT組成物にとって望ましい特性である。
【0004】
WO2018/196539は、45質量%~70質量%のPBTおよび/またはPPS、20質量%~45質量%のチョップドグラスファイバー、1質量%~3質量%の強靭化樹脂、0.2質量%~0.5質量%の未変性グリシジルメタクリレートを含む、低誘電組成物を開示した。チョップドグラスファイバーのDは、1MHz下で4.0~4.4である。本発明は、未変性グリシジルメタクリレートをチョップドグラスファイバーと一緒にすると、PBTの二電子特性(dielectronic property)を改善することができることを開示した。
【0005】
JP2013131576Aは、PBT樹脂、オレフィン樹脂および繊維状無機充填剤を含む、高周波信号伝送成分として使用される樹脂成分を開示した。ポリプロピレンは、低いDおよびDを有するオレフィン樹脂として知られている。しかしながら、組成物の機械的特性は、ポリプロピレンの添加によって急速に低下する。
【0006】
電子部品の小型化および高密度は、薄肉物品分野などのE&E分野のトレンドであるが、効率を急速に促進すると同時に部品の加熱の問題をももたらす。より低いDを有する材料は、加熱の問題を効果的に克服することができる。
【0007】
一方、ポリブチレンテレフタレート組成物の優れ機械的および加工特性、特に金属ユニットとの結合強度も必要とされる。
【0008】
したがって、依然として、ポリブチレンテレフタレート組成物の誘電正接を減少させ、その良好な機械的特性を維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2018/196539
【特許文献2】JP2013131576A
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、はるかに低い誘電正接および良好な機械的特性を示し、それにより高周波通信物品に適用されたときの問題が少ない、ポリブチレンテレフタレート組成物を提供することである。
【0011】
この目的は、成分(A)として少なくとも1種のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)としてビニル芳香族モノマーに由来する単位を含む少なくとも1種のビニル芳香族系ポリマー、および成分(C)として少なくとも1種の強化剤を含む、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物により達成された。
【0012】
したがって、本発明の他の目的は、本発明によるPBT組成物によって製造された物品を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物を製造するための方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の比誘電率および誘電損失を減少させる際のビニル芳香族系ポリマー(B)を使用する方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、携帯電話、センサもしくはラップトップのフレーム、ハウジングもしくはパッケージ、または携帯電話もしくは車両のアンテナの部品または構成要素の材料としてポリブチレンテレフタレート組成物を使用する方法を提供することである。
【0016】
本発明において、「a」、「an」および「the」という用語は、「少なくとも1つ」という用語と交換可能に使用される。「のうちの少なくとも1つ」および「のうちの少なくとも1つを含む」という句の後にリストが続くものは、リスト内の項目のいずれか1つ、およびリスト内の2つ以上の項目の任意の組合せを指す。すべての数値範囲は、特に明記されていない限り、端点および端点間の非整数値を含む。
【0017】
「第1の」、「第2の」および「第3の」という用語は、本開示において、1つまたは複数の実施形態の説明において便宜的にのみ使用される。特に断りのない限り、これらの用語は相対的な意味でのみ使用されることが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、成分(A)として少なくとも1種のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、成分(B)としてビニル芳香族モノマーに由来する単位を含む少なくとも1種のビニル芳香族系ポリマー、および成分(C)として少なくとも1種の強化剤を含む、ポリブチレンテレフタレート組成物を提供することである。
【0019】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)
本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を含有する。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレートのホモポリエステルまたはコポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートコポリエステル)を含む。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主成分としてブチレンテレフタレートを含有し、ブチレンテレフタレートは、一般的な方法によって、例えば、少なくとも1種のテレフタル酸および/またはそのエステル誘導体を含む第1のジカルボン酸成分と、少なくとも1種の1,4-ブタンジオールおよび/またはそのエステル誘導体を含む第1のグリコール成分とを含む重合モノマーの重縮合によって、得ることができる。
【0020】
任意の公知のポリブチレンテレフタレート樹脂を本発明で使用することができ、本発明は、結晶化特性、ポリブチレンテレフタレートの末端基の種類または量、固有粘度、分子量、直鎖または分岐構造、重合触媒の種類または量、および重合方法に限定されない。
【0021】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、特徴を損なわない範囲内で、テレフタル酸、そのエステル誘導体、1,4-ブタンジオールまたはそのエステル誘導体を除く他のモノマーに由来する単位を含み得る。例えば、他のモノマーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する全モノマーに対して、40mol%以下、特に20mol%以下の量が好ましい。
【0022】
他のモノマーの例としては、20個以下の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、7~12個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸、および/または8~16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸が挙げられ、好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、二量体酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、ハイミック酸(himic acid)、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸および4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸からなる群から選択され、より好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、イソフタル酸および/またはフタル酸である。これらの他のモノマーは、単独で、またはそれらの2種以上の種類を混合することによって、使用され得る。
【0023】
他のモノマーの例としては、2~12個の炭素原子を有する脂肪族グリコール、6~12個の炭素原子を有する脂環式グリコール、炭素原子数が2~4である複数のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、および/または6~14個の炭素原子を有する芳香族グリコールが挙げられ、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、トリメチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンタンジオール、1,3-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス-1,4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール、キシリレングリコールおよびナフタレンジオールからなる群から選択され、より好ましくはエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールである。これらの他のモノマーは、単独で、またはそれらの2種以上の種類を混合することによって、使用され得る。
【0024】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)およびポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレートが挙げられる。
【0025】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の粘度数は、ISO1628-5に従い0.005g/mlフェノール/1,2-ジクロロベンゼン溶液(質量比1:1)にて測定した、90~170cm/g、好ましくは100~135cm/g、より好ましくは100~120cm/gの範囲が適切である。
【0026】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、20質量%~80質量%のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む。例えば、本明細書に開示されるポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、20質量%~70質量%、20質量%~60質量%、20質量%~50質量%、20質量%~40質量%の範囲であり得る。
【0027】
本発明の一実施形態では、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、直鎖ポリブチレンテレフタレート樹脂である。
【0028】
ビニル芳香族系ポリマー(B)
本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、少なくとも1種のビニル芳香族系ポリマー(B-1)および/または(B-2)を含有する。
【0029】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)を構成する全モノマーに対して、約50mol%~約100mol%、好ましくは60mol%~99.5mol%、最も好ましくは70mol%~99.5mol%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位を含む。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)はまた、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b2)および/または少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含み得る。
【0031】
好適なビニル芳香族モノマー(b1)は、式I:
【化1】
[式中、Rは、同一かまたは異なり、水素、C~C10アルキル基、C~Cアルケニル基、C~C10脂環式基、C~C12芳香族炭化水素基、C~Cアルコキシ基およびハロゲン原子からなる群から選択され、好ましくは、水素、C~C10アルキル基および/またはハロゲン原子であり、より好ましくは、水素および/またはC~Cアルキル基であり、最も好ましくは、水素、メチル基および/またはエチル基であり;Rは、水素および/またはC~Cアルキル基であり、好ましくは、水素、メチル基および/またはエチル基である]
に対応するモノマーを含む。
【0032】
ビニル芳香族モノマー(b1)の例は、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、パラ-アルファ-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび2-イソプロペニルナフタレンであり、好ましくはスチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、パラ-ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび/または2-イソプロペニルナフタレンであり、より好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレンである。
【0033】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)はまた、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b2)および/または1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含み得る。
【0034】
エチレン性不飽和モノマー(b2)としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂との好適な相溶性を有するものが好ましい。ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のエチレン性不飽和モノマー(b2)は、好ましくは、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマーおよびこれらの誘導体である。エチレン性不飽和酸モノマーの誘導体は、好ましくは、エチレン性不飽和酸の酸無水物、エステル、溶融塩、アミド、イミドおよび/またはエポキシ化合物等であり、より好ましくは、エチレン性不飽和酸の酸無水物、エステルまたはエポキシ化合物である。
【0035】
1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ビニル芳香族モノマー(b1)と、エチレン性不飽和酸モノマー、酸無水物、および/またはエチレン性不飽和酸のエポキシ化合物から選択される第1のエチレン性不飽和モノマー(b2)と、任意に、エチレン性不飽和ニトリルモノマーおよび/またはエチレン性不飽和酸のエステルから選択される第2のエチレン性不飽和モノマー(b2)とから構成される。本明細書に開示されるビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、2~10質量%の範囲であり得る。
【0036】
エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択され、より好ましくは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルであり、最も好ましくは、アクリロニトリルである。
【0037】
エチレン性不飽和酸モノマーは、少なくとも1種の炭素-炭素二重結合、および少なくとも1種の酸基、例えばカルボキシルまたはスルホン酸基を有し、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸モノマーの例は、モノオレフィンおよびポリオレフィン不飽和モノ-およびポリ-カルボン酸(ジ-、トリ-カルボン酸)であり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、2-クロロアクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、ソルビン酸、アルファ-クロロソルビン酸、アルファ-シアノアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、3-(アクリロイルオキシ)プロパン酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2.2.2)-オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ(2.2.1)オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、マレオピマル酸、7-オキサビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸およびアコニット酸からなる群から選択され、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸および/またはシトラコン酸である。
【0038】
ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性を損なわないエチレン性不飽和カルボン酸の酸無水物が、好ましくは使用される。エチレン性不飽和カルボン酸の酸無水物の例は、マレイン酸無水物(MAH)、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、フマル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ビシクロ(2.2.2)オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10-オクタヒドロナフタレン-2,3-ジカルボン酸無水物、ビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ノルボルナ(tnorborn)-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、ナジック酸無水物(nadic anhydride)、メチルナジック酸無水物、ハイミック酸無水物、メチルハイミック酸無水物および/またはx-メチルビシクロ(2.2.1)ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物(XMNA)であり、より好ましくは、マレイン酸無水物、(メタ)アクリル酸無水物および/またはフマル酸無水物である。
【0039】
ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性を損なわないエチレン性不飽和酸のエステルが好ましくは使用され、好ましくは、エチレン性不飽和酸のアルキルエステルおよび/またはヒドロキシアルキルエステル、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸の、C~C18、より好ましくはC~C12、最も好ましくはC~Cアルキルエステルおよび/またはC~C18、より好ましくはC~C12、最も好ましくはC~Cヒドロキシアルキルエステルである。エチレン性不飽和酸のエステルの例は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ジメチルマレエート、モノメチルマレエート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびビニルアセテートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、および/またはイソブチルメタクリレートであり、最も好ましくは、メチルメタクリレートおよび/またはメチルアクリレートである。
【0040】
ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性を損なわないエチレン性不飽和酸のエポキシ化合物が、好ましくは使用される。エチレン性不飽和酸のエポキシ化合物は、カルボン酸グリシジルエステル、グリシジルエーテルなどであり得る。エチレン性不飽和酸のエポキシ化合物の例は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、マレイン酸1-グリシジルエステル、マレイン酸のジグリシジルエステル、イタコン酸のモノグリシジルエステル、イタコン酸のジグリシジルエステル、シトラコン酸のモノグリシジルエステル、シトラコン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のトリグリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルおよび4-ビニルベンジルグリシジルエーテルであり、より好ましくは、グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレートである。
【0041】
ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性を損なわないエチレン性不飽和酸のアミドが、好ましくは使用される。エチレン性不飽和酸のアミドの例は、アリルアミン、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸N-モノエチルアミド、マレイン酸N,N-ジエチルアミド、フマル酸モノアミドおよび/またはフマル酸ジアミドである。
【0042】
エチレン性不飽和酸のイミドは、好ましくは、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミドおよびN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選択される。
【0043】
エチレン性不飽和酸の溶融塩は、好ましくは、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム、メタクリル酸ナトリウムおよびメタクリル酸カルシウムからなる群から選択される。
【0044】
共役ジエンモノマー(b3)は、好ましくは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンおよび3-ブチル-1,3-オクタジエンからなる群から選択され、より好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンであり、最も好ましくは、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンである。
【0045】
本発明において、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)の重合方法に限定されず、好適なビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、直鎖コポリマー、例えば、ブロックコポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、および分岐コポリマー、例えば、グラフトコポリマーまたは星形コポリマーであり得る。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ビニル芳香族モノマー(b1)と、エチレン性不飽和モノマー(b2)および共役ジエンモノマー(b3)からなる群から選択される少なくとも1種から構成される。ビニル芳香族ポリマー(b1)は、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンからなる群から選択される。エチレン性不飽和モノマー(b2)は、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-クロロアクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、フマル酸無水物、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択され、より好ましくはメタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートである。共役ジエンモノマー(b3)は、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される。
【0047】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレンおよび4-メチルスチレンからなる群から選択されるビニル芳香族モノマー(b1)と、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、メチル(メタ)アクリレートおよびグリシジル(メタ)アクリレートからなる群から選択される成分(i)と、任意に、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルからなる群から選択される成分(ii)とから構成される。本明細書に開示されるビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、2~10質量%の範囲であり得る。
【0048】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、スチレン-マレイン酸無水物、スチレン-アクリロニトリル-マレイン酸無水物、スチレン-(メタ)アクリレート、スチレン-メチル(メタ)アクリレート、スチレン-グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン-アクリロニトリル-グリシジル(メタ)アクリレート、スチレン-アクリル酸、スチレン-アクリル酸-α-メチルスチレン、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリルおよびスチレン-ブタジエン-アクリロニトリルのブロック、交互、ランダムまたはグラフトコポリマーであり得る。
【0049】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、40質量%以下のビニル芳香族系ポリマー(B-1)を含む。例えば、本明細書に開示されるビニル芳香族系ポリマー(B-1)は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、0.1~30質量%、0.3~20質量%、2~10質量%の範囲であり得る。
【0050】
ビニル芳香族系ポリマー(B-1)の質量平均分子量(Mw)は、一般に、テトラヒドロフランを溶離液としてGPCにより測定した、1,000~15,000g/mol、好ましくは2,000~10,000g/molの範囲である。
【0051】
ビニル芳香族ポリマー(B-2)
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)は、コアおよびシェルを含むコアシェルポリマーであり、コアは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)と、任意に、エチレン性不飽和モノマー(b2)および共役ジエンモノマー(b3)からなる群から選択される少なくとも1種とを含む第1のモノマー系に由来し;シェルは、ビニル芳香族モノマー(b1)およびエチレン性不飽和モノマー(b2)からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む第2のモノマー系に由来し;コアシェルポリマーにおけるコア対シェルの質量比は、90:10~10:90である。
【0052】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のエチレン性不飽和モノマー(b2)は、好ましくは、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマーおよびこれらの誘導体である。エチレン性不飽和酸の誘導体は、好ましくは、エチレン性不飽和酸の酸無水物、エステル、溶融塩、アミド、イミドおよび/またはエポキシ化合物であり、より好ましくは、エチレン性不飽和酸の酸無水物および/またはエステルである。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態では、ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のエチレン性不飽和モノマー(b2)は、エチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、エチレン性不飽和酸モノマーの酸無水物および/またはエチレン性不飽和酸モノマーのエステルである。
【0054】
コアシェルポリマーのコアは、第1のモノマー系に由来するポリマーまたはコポリマーである。第1のモノマー系の乳化重合は、望ましくは、コアを製造するためである。
【0055】
コアまたはシェル中の好適なビニル芳香族モノマー(b1)は、同一でも異なっていてもよく、式I:
【化2】
[式中、Rは、同一かまたは異なり、水素、C~C10アルキル基、C~Cアルケニル基、C~C10脂環式、C~C12芳香族炭化水素基、C~Cアルコキシ基およびハロゲン原子からなる群から選択され、好ましくは、水素、C~C10アルキル基および/またはハロゲン原子であり、より好ましくは、水素および/またはC~Cアルキル基であり、最も好ましくは、水素、メチル基および/またはエチル基であり;Rは、水素および/またはC~Cアルキル基であり、好ましくは、水素、メチル基および/またはエチル基である]
に対応するモノマーを含む。
【0056】
ビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、パラ-アルファ-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび2-イソプロペニルナフタレンであり、好ましくはスチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、パラ-ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび/または2-イソプロペニルナフタレンであり、より好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンである。
【0057】
共役ジエンモノマー(b3)は、好ましくは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンおよび3-ブチル-1,3-オクタジエンからなる群から選択され、より好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンであり、最も好ましくは、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンである。
【0058】
コアまたはシェルのエチレン性不飽和ニトリルモノマーは、好ましくは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリルおよび/またはα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択され、より好ましくは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルであり、最も好ましくは、アクリロニトリルである。
【0059】
コアまたはシェルのエチレン性不飽和酸モノマーは、少なくとも1種の炭素-炭素二重結合、および1種の酸基、例えばカルボキシルまたはスルホン酸基を有し、好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、例えば、モノオレフィンおよびポリオレフィン不飽和モノ-およびポリ-カルボン酸(ジ-、トリ-カルボン酸)である。エチレン性不飽和カルボン酸モノマーの例は、C3~C6エチレン性不飽和カルボン酸であり、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸およびアコニチン酸からなる群から選択され、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸および/またはイタコン酸である。
【0060】
コアまたはシェルのエチレン性不飽和酸の酸無水物モノマーの例は、マレイン酸無水物(MAH)、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、ブテン二酸無水物および/またはフマル酸無水物であり、より好ましくは、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、イタコン酸無水物および/またはブテン二酸無水物である。
【0061】
コアまたはシェルのエチレン性不飽和酸のエステルモノマーは、好ましくは、エチレン性不飽和酸のアルキルエステルおよび/またはヒドロキシアルキルエステル、例えば、C1~C18、より好ましくはC1~C12、最も好ましくはC1~C4アルキルエステルおよび/またはエチレン性不飽和カルボン酸のC1~C18、より好ましくはC1~C12、最も好ましくはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルである。エチレン性不飽和酸のエステルの例は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ジメチルマレエート、モノメチルマレエート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび/またはビニルアセテートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレートおよび/またはビニルアセテートであり、最も好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレートおよび/またはデシルアクリレートである。
【0062】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)中のコアまたはシェルのエチレン性不飽和酸のエポキシ化合物、アミド、イミドおよび溶融塩の例は、ビニル芳香族系ポリマー(B-1)中のものと同じであり得る。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーのコアは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)および少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含む。ビニル芳香族モノマー(b1)は、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンであり;共役ジエンモノマー(b3)は、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンである。コアシェルポリマーのコアは、好ましくは、1,3-ジエンとスチレンとのジブロックポリマー(例えば、ブタジエン-スチレンコポリマー、イソプレン-スチレンコポリマー)である。
【0064】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーのコアは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)、ならびにエチレン性不飽和ニトリルおよびエチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する単位を含む。エチレン性不飽和ニトリルは、好ましくは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルであり;エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および/またはイソブチル(メタ)アクリレートである。コアシェルポリマーのコアは、好ましくは、ブタジエン-スチレン-(メタ)アクリレートターポリマー、ブタジエン-スチレン-アクリロニトリルターポリマーである。
【0065】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーのコアは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)、ならびにエチレン性不飽和酸、エチレン性不飽和酸、およびエチレン性不飽和ニトリルのC~Cアルキルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーに由来する単位を含む。エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルは、好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートおよび/またはイソブチル(メタ)アクリレートであり;エチレン性不飽和酸は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸および/またはイタコン酸であり;エチレン性不飽和ニトリルは、好ましくは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルである。
【0066】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアは、コアの総単位に対して、5質量%~80質量%、好ましくは15質量%~35質量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位を含む。
【0067】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアは、コアの総単位に対して、5質量%~80質量%、好ましくは15質量%~35質量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位と、20質量%~95質量%、好ましくは65質量%~85質量%の、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)(好ましくは1,3-ジエン)に由来する単位とを含む。
【0068】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーのシェルは、エチレン性不飽和酸の少なくとも1種のエステルおよび/または少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位を含む。エチレン性不飽和酸のエステルは、好ましくは、(メタ)アクリル酸または酢酸のC1~C4アルキルエステルおよび/またはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはイソブチルメタクリレートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、プロピルメタクリレートおよび/またはブチルメタクリレートである。ビニル芳香族モノマー(b1)は、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレンおよび/またはトリブロモスチレンであり、より好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンである。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーのシェルは、エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルおよびビニル芳香族モノマー(b1)からなる群から選択される少なくとも1種、ならびにエチレン性不飽和ニトリルモノマー、エチレン性不飽和酸モノマー、酸無水物および/またはエチレン性不飽和酸のC10~C20アルキルエステルからなる群から選択される1種のモノマー(iii)に由来する単位を含む。エチレン性不飽和酸のC~Cアルキルエステルは、好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはイソブチルメタクリレートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、プロピルメタクリレートおよび/またはブチルメタクリレートである。ビニル芳香族モノマー(b1)は、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、4-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレンおよび/またはトリブロモスチレンであり、より好ましくはスチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンである。モノマー(iii)の例は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレートおよび/またはステアリルアクリレートである。
【0070】
本発明の1つの好ましい実施形態では、コアは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)および少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位を含み;シェルは、(メタ)アクリル酸または酢酸のC1~C4アルキルエステルおよび/またはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルに由来する単位を含む。ビニル芳香族モノマーは、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンであり;共役ジエンモノマーは、好ましくは、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび/またはイソプレンであり;(メタ)アクリル酸または酢酸のC1~C4アルキルエステルおよび/またはC1~C4ヒドロキシアルキルエステルは、好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはイソブチルメタクリレートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、プロピルメタクリレートおよび/またはブチルメタクリレートである。
【0071】
コアシェルポリマーにおけるコア対シェルの質量比は、90:10~10:90であり、好ましくは、90:10~50:50、より好ましくは90:10~70:30であり、最も好ましくは90:10~80:20である。
【0072】
コアシェルポリマーはまた、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および/または(メタ)アクリル酸モノマーの少なくとも1種のC~Cアルキルエステルを含むグラフト結合モノマーに由来する単位を含む1つの内部グラフト段階と;以下のモノマー:C~Cアルキルアクリレートまたは多価不飽和架橋剤のうちの少なくとも1種を含む任意の1つの中間シーラー段階とを含んでもよく、中間シーラー段階は、内部グラフト段階とシェルとの間にある。
【0073】
内部グラフト段階中のビニル芳香族モノマーは、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、パラ-アルファ-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、オルト-ジビニルベンゼン、メタ-ジビニルベンゼン、パラ-ジビニルベンゼン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、トリクロロスチレン、2-ビニルナフタレンおよび/または2-イソプロペニルナフタレンであり、好ましくは、スチレン、アルファ-メチルスチレンおよび/または4-メチルスチレンである。
【0074】
(メタ)アクリル酸モノマーのC~Cアルキルエステルは、好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、アクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはイソブチルメタクリレートであり、より好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよび/またはプロピルメタクリレートである。
【0075】
内部グラフト段階は、以下のモノマー:アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ならびにより高炭素(C12~C20)のアルキルメタクリレートおよびアクリレート、例えば、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレートおよびイソボルニルメタクリレートのいずれか1種または複数に由来する単位を含むこともできる。
【0076】
好適なC~Cアルキルアクリレートには、メチルメタクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびオクチルアクリレートが含まれ、より好ましくは、ブチルアクリレートである。
【0077】
好適な多価不飽和架橋剤には、ブチレングリコールジメタクリレート、アルカンポリオールポリアクリレートまたはポリメタクリレート、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートまたはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ならびに不飽和カルボン酸アリルエステル、例えば、アリルアクリレート、アリルメタクリレートおよびジアリルマレエートが含まれ、好ましくは、ジビニルベンゼンである。
【0078】
1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーは、70~85質量部のコアと;8~14質量部の内部グラフト段階と;0.1~5質量部の中間シーラー段階と;10~16質量部のシェルとを含む。コアは、好ましくは、コアの総単位に対して、15質量%~35質量%の、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー(b1)に由来する単位と、65質量%~85質量%の、少なくとも1種の共役ジエンモノマー(b3)に由来する単位とを含む。
【0079】
コアシェルポリマーのコアは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、約8,000超、より好ましくは50,000超の質量平均分子量を有する。
【0080】
コアシェルポリマーのシェルは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される、約5,000~約100,000、より好ましくは約10,000~約80,000の質量平均分子量を有する。
【0081】
コアシェルポリマーは、それぞれの内容が参照によって本明細書に組み込まれる、EP1514883A1、EP0985692A1およびEP0348565A1に記載されているコアシェルポリマーのうちのいずれか1種または複数であり得る。
【0082】
本発明のコアシェルポリマーは、EP0348565A1またはEP1514883A1に記載されている方法などの従来の重合方法を介して製造され得る。
【0083】
第1のモノマー系を乳化重合してコアを形成し、次にコアの存在下で第2のモノマー系を乳化重合してシェルを形成することを含むか;
または第2のモノマー系を乳化重合してシェルを形成し、次にシェルの存在下で第1のモノマー系を乳化重合してコアを形成することを含むコアシェルポリマーの製造方法。
【0084】
1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーの製造方法は、以下のI~IIIのうちのいずれか1つであり得る:
I.グラフト結合モノマーの存在下での、コアの乳化重合;シェルの乳化重合およびシェルのコアへのグラフト化。
【0085】
II.コアを乳化重合する;グラフト結合モノマーを添加し、コアに浸漬させ、グラフト結合モノマーを重合させる;シェルをコアの存在下で乳化重合し、コアに化学的にグラフトする。
【0086】
III.グラフト結合モノマーの存在下での、シェルの乳化重合;コアの乳化重合およびコアのシェルへのグラフト化。
【0087】
1つの好ましい実施形態では、コアシェルポリマーの製造方法は、
i.乳化剤およびフリーラジカル開始剤の存在下で、65質量%~85質量%のジオレフィンモノマーおよび15質量%~35質量%のビニル芳香族モノマーを含む第1のモノマー系を、モノマーからポリマーへの60%~90%の変換が達成されるまで、乳濁液中で重合する工程と;
ii.少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、および/または(メタ)アクリル酸モノマーの少なくとも1種のC~Cアルキルエステルを含むグラフト結合モノマーを添加しながら、第1のモノマー系の重合を継続する工程と;
iii.グラフト結合モノマーの重合を、ポリマーへの少なくとも90%の変換が達成されるまで継続する工程と;
iv.エチレン性不飽和酸の少なくとも1種のC~Cアルキルエステルおよび/または少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む第2のモノマー系を添加し、フリーラジカル開始剤を添加し、モノマーからポリマーへの少なくとも95%の変換が達成されるまで重合を継続する工程であって、工程(i)から(iv)中の反応温度は、20℃~100℃、好ましくは60℃~70℃の範囲である、工程と
を含む。
【0088】
工程(iii)の後、好ましくは、少なくとも1種のC~Cアルキルアクリレートまたは少なくとも1種の多価不飽和架橋剤、およびフリーラジカル開始剤を添加する。
【0089】
方法の様々な工程で使用することができるフリーラジカル開始剤は、ほぼ室温~約100℃、好ましくは55℃~80℃の温度範囲で行われるフリーラジカル重合において従来から利用されているものである。好適な開始剤には、過硫酸塩、過酸化物、またはペルオキシエステルなどの熱活性化開始剤が含まれる。好適な開始剤には、還元剤、例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、亜硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、またはイソアスコルビン酸と組み合わせた、酸化剤、例えば、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、または過酸化物などの「レドックス」開始剤も含まれる。水溶性がスチレン(25℃~50℃にて3.5mM)未満の油溶性開始剤が好ましく、その例としては、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート(perbenxoate)、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオクトエート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。レドックス反応は、鉄塩、例えば第一鉄-エチレン-ジアミン四酢酸(「Fe-EDTA」)などの試薬によっても促進され得る。
【0090】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、最も好ましくは2~10質量%のビニル芳香族系ポリマー(B-2)を含む。
【0091】
ビニル芳香族系ポリマー(B-2)を含むポリブチレンテレフタレート組成物は、より良好な結合強度および誘電損失を示し、より多くの用途を有する。
【0092】
強化剤(C)
本発明による強化剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で選択された任意の強化剤であり得る。
【0093】
強化剤の例は、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、1種または複数のウイスカー、タルク、マイカ、粘土、およびそれらの混合物であり得る。
【0094】
本発明は、直径、円筒形および繭形などの形状、長さ、ならびにガラス切断方法、例えば、ガラス繊維のチョップドストランドおよび粗糸に限定されない。さらに、本発明は、ガラスの種類、例えば、Eガラス繊維、Dガラス繊維、Sガラス繊維、Cガラス繊維、Tガラス繊維に限定されず、Eガラス繊維またはジルコニウムを含有する耐食性ガラスが品質の観点から好ましくは使用される。ガラス繊維の種類に制限はなく、従来のEガラス繊維は低誘電損失の要件を満たすことができる。比誘電率が5.0以下のDガラス繊維も好ましい。
【0095】
強化剤は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、5質量%~40質量%、好ましくは5質量%~35質量%、より好ましくは15質量%~30質量%の含有量で使用される。
【0096】
低融点ポリエステル(D)
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、成分(D)として、融点(T)が105℃~185℃、好ましくは110℃~160℃のポリエステルコポリマーをさらに含むことができる。
【0097】
本発明において融点(T)が105℃~185℃のポリエステルコポリマー(以下、単に「ポリエステルコポリマー」という)は「低融点ポリエステル」とも呼ばれ、未変性ポリエステルよりも融点が低い。融点は、10℃/分の加熱速度でISO11357に準拠した示差走査熱量測定(「DSC」)によって測定される。ポリエステルコポリマーは、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートを構成する第2のジカルボン酸成分および/または第2のグリコール成分を、共重合性モノマーで部分的に置換することによって得ることができ、第2のジカルボン酸成分は、少なくともテレフタル酸および/またはそのエステル誘導体を含み、第2のグリコール成分は、少なくとも1種の1,4-ブタンジオール、エチレングリコールならびに/または1,4-ブタンジオールおよびエチレングリコールのエステル誘導体を含み、好ましくはエチレングリコールおよび/またはそのエステル誘導体である。
【0098】
共重合性モノマーは、テレフタル酸を除く第3のジカルボン酸、ならびに/またはエチレングリコールおよび1,4-ブタンジオールを除く第3のグリコールから選択される1種または複数のモノマーを含む。
【0099】
ジカルボン酸(第2のジカルボン酸および第3のカルボン酸)とグリコール(第2のグリコールおよび第3のグリコール)との比は、0.9:1.1~1.1:0.9である。
【0100】
第3のジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、ならびに/またはテレフタル酸およびそれらの反応性誘導体を除く芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0101】
本明細書に開示される脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは4~40個の炭素原子、より好ましくは4~24個の炭素原子、4~14個の炭素原子、または4~10個の炭素原子を含むジカルボン酸である。例えば、本明細書に開示される脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸および/またはヘキサデカンジカルボン酸であり得、好ましくは、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸および/またはセバシン酸である。
【0102】
脂環式ジカルボン酸は、好ましくは7~12個の炭素原子を含む。例えば、本明細書に開示される脂環式ジカルボン酸は、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸および/またはハイミック酸であり得る。
【0103】
テレフタル酸を除く好適な芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、8~16個の炭素原子を含み、より好ましくは、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、フタル酸またはイソフタル酸のC~Cアルキルエステル(例えば、ジメチルフタル酸またはジメチルイソフタル酸(DMI))、およびエステルを形成し得る酸塩化物または酸無水物などの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはイソフタル酸および/またはフタル酸である。
【0104】
第3のグリコールは、エチレングリコールまたは1,4-ブタンジオールを除く脂肪族アルカンジオール、ポリオキシアルキレングリコール、脂環式グリコール、および芳香族ジオールからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0105】
本明細書に開示される脂肪族アルカンジオールは、好ましくは2~12個、より好ましくは2~10個、さらに好ましくは2~6個の炭素原子を含む脂肪族アルカンジオール、例えば、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオールおよび/またはデカンジオールである。
【0106】
本明細書に開示されるポリオキシアルキレングリコールは、好ましくは、炭素原子数が2~4である複数のオキシアルキレン単位を有するグリコールであり、より好ましくは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0107】
本明細書に開示される脂環式グリコールは、好ましくは、6~12個の炭素原子を含み、より好ましくは、1,4-シクロヘキサンジオールおよび/または1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0108】
本明細書に開示される芳香族グリコールは、好ましくは6~14個の炭素原子を含む芳香族ジオールであり、より好ましくは、キシリレングリコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビフェニル、ビスフェノールおよびキシリレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0109】
本発明の好ましい実施形態では、第3のグリコールは、2~6個の炭素原子を有する脂肪族アルカンジオール、例えば、トリメチレングリコール、プロピレングリコールおよび/もしくはヘキサンジオール、ならびに/または約2~4の繰り返し数でオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールである。
【0110】
本発明の好ましい実施形態では、第3のジカルボン酸は、6~12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸もしくはセバシン酸、ならびに/または芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸および/もしくはフタル酸である。
【0111】
本発明の好ましい実施形態では、第3のグリコールは、約2~4の繰り返し数でオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールであり得、第3のジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸および/またはフタル酸であり得る。
【0112】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに対して、5mol%~30mol%、好ましくは5mol%~20mol%の共重合性モノマーを含み得る。
【0113】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに対して、1mol%~10mol%の第3のグリコール、例えばポリオキシアルキレングリコールと、4mol%~29mol%の第3のジカルボン酸、例えば芳香族ジカルボン酸、特にイソフタル酸および/またはフタル酸とを含む。
【0114】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、テレフタル酸、エチレングリコール、炭素原子数が2~4である2~4個のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール、例えば第3のグリコールとしてのジエチレングリコール、ならびに8~16個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、例えば第3のカルボン酸としてのイソフタル酸および/またはフタル酸から構成される。好ましくは、第3のグリコールの量は、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに対して、1mol%~10mol%であり、第3のジカルボン酸の量は、1mol%~10mol%であり、ジカルボン酸(テレフタル酸および第3のカルボン酸)とグリコール(エチレングリコールおよび第3のグリコール)との比は、0.9:1.1~1.1:0.9である。
【0115】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、ポリエステルコポリマーを構成するモノマーの総モルに対して、5mol%~30mol%、好ましくは5mol%~20mol%の共重合性モノマーを含み得る。
【0116】
1つの好ましい実施形態では、ポリエステルコポリマーは、1mol%~10mol%の第3のグリコール、例えばポリオキシアルキレングリコールと、4mol%~29mol%の第3のジカルボン酸、例えば芳香族ジカルボン酸、特にイソフタル酸および/またはフタル酸とを含む。
【0117】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、0質量%~40質量%のポリエステルコポリマーを含む。例えば、本明細書に開示されるポリエステルコポリマーは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、10質量%~35質量%、10質量%~30質量%、15質量%~35質量%、15質量%~30質量%の範囲であり得る。
【0118】
低融点ポリエステルは、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されることによって測定される、8,000~80,000g/mol、好ましくは10,000~30,000g/molの質量平均分子量を有する。
【0119】
ガラスバブル(E)
本発明のポリブチレンテレフタレート組成物は、成分(E)としてガラスバブルをさらに含み得る。
【0120】
本発明におけるガラスバブルは、「中空ガラスバブル」、「中空ガラスミクロスフェア」、「中空ガラスビーズ」、「ガラスマイクロバブル」または「ガラスバルーン」とも呼ばれ、平均直径が約500マイクロメートル未満であり、中空部分と、中空部分を囲むガラスシェルとを含む。中空部分は空気などのガスで満たすことができる。
【0121】
平均直径は、好ましくは、体積基準メジアン径D50である。中空ガラスバブルの体積基準メジアン径D50は、好ましくは5~50ミクロンの範囲である。
【0122】
本発明におけるガラスバブルの平均真密度は、好ましくは0.3~0.7g/ccであり、より好ましくは0.3~0.6g/ccである。例えば、本明細書に開示されるガラスバブルの平均真密度は、0.32g/cc~0.6g/cc、0.35g/cc~0.6g/cc、0.38g/cc~0.6g/cc、0.43g/cc~0.6g/cc、0.45g/cc~0.6g/cc、0.46g/cc~0.6g/cc、0.49g/cc~0.6g/cc、0.30g/cc~0.55g/cc、0.32g/cc~0.55g/cc、0.35g/cc~0.55g/cc、0.38g/cc~0.55g/cc、0.43g/cc~0.55g/cc、0.45g/cc~0.55g/cc、0.46g/cc~0.55g/cc、0.49g/cc~0.55g/cc、0.30g/cc~0.5g/cc、0.32g/cc~0.5g/cc、0.35g/cc~0.5g/cc、0.38g/cc~0.5g/cc、0.40g/cc~0.5g/cc、0.43g/cc~0.5g/cc、0.45g/cc~0.5g/cc、0.46g/cc~0.5g/cc、0.43g/cc~0.49g/ccの範囲であり得る。ガラスバブルの平均真密度は、ガラスバブルの試料の質量を、ガスピクノメーターによって測定したガラスバブルの質量の真体積で割ることにより得た商である。「真体積」は、バルク体積ではなく、ガラスバブルの集合総体積である。平均真密度は、ASTM D2840-69「Average True Particle Density of Hollow Microspheres」に準拠したピクノメーターを使用して測定され得る。「g/cc」は、グラム毎立方センチメートルを意味する。
【0123】
ガラスバブルの破砕強度は、好ましくは5,000PSI~30,000PSIであり、より好ましくは6,000PSI~28,000PSIである。例えば、本明細書に開示される破砕強度は、8,000PSI~20,000PSI、10,000PSI~18,000PSI、16,000PSI~18,000PSIの範囲であり得る。ガラスバブルの破砕強度は、典型的に、ASTM D3102-72「Hydrostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres」を使用して測定される。
【0124】
本発明によるガラスバブルは、約8マイクロメートル~約60マイクロメートルの範囲の体積基準メジアン径を含む粒度分布を有する。ガラスバブルの体積基準メジアン径は、例えば、10~55マイクロメートル、15~55マイクロメートル、15~50マイクロメートル、15~45マイクロメートル、15~40マイクロメートル、15~35マイクロメートル、15~30マイクロメートル、15~25マイクロメートル、15~20マイクロメートル、20~55マイクロメートル、20~50マイクロメートル、20~45マイクロメートル、20~40マイクロメートル、20~35マイクロメートル、20~30マイクロメートル、20~25マイクロメートルの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるガラスバブルは、5~30マイクロメートル、10~35マイクロメートル、10~50マイクロメートル、15~60マイクロメートル、20~38マイクロメートル、20~45マイクロメートル、20~70マイクロメートルに分布するサイズを有する。体積基準メジアン径はDv50径とも呼ばれ、ここで、分布内のガラスバブルの50体積パーセントは表示サイズよりも小さい。本明細書で使用される場合、サイズという用語は、ガラスバブルの直径および/または高さと同等であると考えられる。ガラスバブルの粒度分布は、ガウス分布、正規分布、非正規分布である場合がある。非正規分布は、単峰性または多峰性である場合がある。
【0125】
本明細書において本発明に有用なガラスバブルは、商業的に得ることができ、Potters Industries、Valley Forge、PA19482によって商標名「Sphericel Hollow Glass Spheres」(例えば、グレード110P8および60P18)で、または3M Companyによって商標名「3M Glass bubbles」、例えばグレードS60、S60HS、S38HS、S38XHS、iM16K、iM30K、K42HS、およびK46で販売されている。
【0126】
ポリブチレンテレフタレート組成物は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、0質量%~20質量%のガラスバブルを含む。例えば、本明細書に開示されるガラスバブルは、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、5質量%~15質量%、5質量%~10質量%の範囲であり得る。
【0127】
シランカップリング剤の例は、エポキシ官能性シラン、ウレタン官能性シランおよび/またはアミノウレイド官能性シランであり、好ましくは、エポキシシクロヘキシル官能性シラン、グリシドキシ官能性シラン、イソシアネート官能性シランおよびアミノウレイド官能性シランからなる群から選択される少なくとも1種であり、最も好ましくは、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリブトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシイシリ(triethoxyysily)-N-(1,3ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランおよび3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランから選択される少なくとも1種である。
【0128】
添加剤(F)
ポリブチレンテレフタレート組成物は、製品の後の使用に応じて、好ましくは下記で定義される慣例的添加剤のうちの少なくとも1種から、当業者によって選択される添加剤である他の成分をさらに含むことができる。ただし、前記慣例的添加剤が本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物に対して負の効果を有さないことを条件とする。
【0129】
慣例的添加剤は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、好ましくは0質量%~10質量%で使用され、より好ましくは0.1質量%~5質量%であり、最も好ましくは0.5質量%~3質量%の量である。
【0130】
本発明に従って使用される慣例的添加剤は、好ましくは、潤滑剤、安定剤、抗酸化剤、離型剤、UV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤、帯電防止剤、流動助剤、難燃剤、エラストマー改質剤、酸掃去剤、乳化剤、核剤、可塑剤および/または顔料である。これらのおよびさらなる好適な添加剤は、例えば、Gaechter、Mueller、Kunststoff-Additive [Plastics Additives]、第3版、Hanser-Verlag、Munich、Vienna、1989およびPlastics Additives Handbook、第5版、Hanser-Verlag、Munich、2001に記載されている。添加剤は、単独でもしくは混合して、またはマスターバッチの形態で、使用され得る。
【0131】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1種もしくは複数の潤滑剤および/または処理剤をさらに含み得る。潤滑剤および/または処理剤が含まれる場合、それらは、好ましくは、10~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸および/または2~40個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコールもしくはアミンのエステルまたはアミドである。好ましい潤滑剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート、すなわち、10~20個の炭素原子を有するペンタエリスリトールの脂肪酸エステルである。
【0132】
潤滑剤は、それぞれ本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、好ましくは約0質量%~3質量%、より好ましくは約0.01質量%~2質量%、最も好ましくは約0.2質量%~1質量%の量で存在する。
【0133】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1種または複数の抗酸化剤をさらに含み得る。使用される抗酸化剤は、好ましくは、芳香族アミン系抗酸化剤、ヒンダードフェノール系抗酸化剤およびホスファイト系抗酸化剤である。
【0134】
芳香族アミン系抗酸化剤の例は、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチル-キノリン)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、および/またはN,N’-ビス(メチルフェニル)-1,4-ベンゼンジアミンである。
【0135】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の例は、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-アルファ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-オメガ-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7~C9-分岐アルキルエステルである。さらに、好ましくは、固体ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル)-6-tert-ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]からなる群「B-S」から選択される1種または複数である。
【0136】
ホスファイト系抗酸化剤の例は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE、CAS31570-04-4)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Ultranox(登録商標)626、Chemtura、CAS26741-53-7)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(ADK Stab PEP-36、Adeka、CAS80693-00-1)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228、Dover Chemical Corporation、CAS154862-43-8)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE、CAS26523-78-4)、(2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール)-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura、CAS161717-32-4)およびHostanox(登録商標)P-EPQである。
【0137】
抗酸化剤は、それぞれ本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、好ましくは約0質量%~2質量%、より好ましくは約0.01質量%~1質量%、最も好ましくは約0.2質量%~0.8質量%の量で存在する。
【0138】
本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物は、1種または複数の接着補助剤をさらに含み得る。
【0139】
接着補助剤の例は、エポキシド、例えば脂肪酸のエポキシ化アルキルエステル、例えば、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ダイズ油、エポキシ化ナタネ油およびエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA樹脂である。
【0140】
接着補助剤は、それぞれ本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、好ましくは約0質量%~3質量%、より好ましくは約0.01質量%~2質量%、最も好ましくは約1質量%~2質量%の量で存在する。
【0141】
1つの好ましい実施形態では、ポリブチレンテレフタレート組成物は、ポリブチレンテレフタレート組成物の総質量に対して、20質量%~50質量%、好ましくは20質量%~40質量%のポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、2~10質量%のビニル芳香族系ポリマー(B)、5質量%~40質量%、好ましくは15質量%~30質量%の強化剤(C)、0質量%~40質量%、好ましくは15質量%~30質量%のポリエステルコポリマー(D)、0質量%~20質量%、好ましくは5質量%~15質量%のガラスバブル(E)、0質量%~10質量%、好ましくは0.1質量%~5質量%の添加剤(F)を好ましくは含む。
【0142】
別の態様では、本発明は、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物を製造するための方法に関する。ポリブチレンテレフタレート組成物は、押出または混練などの様々な公知の方法によって製造または加工され得る。例えば、本発明による組成物は、(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、ビニル芳香族系ポリマー(B)、任意の低融点ポリエステル(D)および任意の添加剤(F)を混合する工程と、(2)強化剤(C)を添加する工程と、任意に(3)ガラスバブル(E)を添加する工程と、押出または混練する工程とによって製造または加工され得る。成分が同じ供給領域に導入される場合、成分は、その形態または特性に応じて、異なるホッパーを介して導入され得ることが理解されるべきである。押出機の温度は、ポリブチレンテレフタレート組成物の従来の加工温度であり、好ましくは200~270℃である。押出機の合理的な速度は、ポリブチレンテレフタレート組成物の従来の加工速度であり、好ましくは200~500rpmである。
【0143】
別の態様では、本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の比誘電率および誘電損失を低減させる際のビニル芳香族系ポリマー(B)を使用する方法に関する。
【0144】
別の態様では、本発明はまた、本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物によって得られた、または得ることができる物品に関する。物品は、E&E分野、特に高周波通信分野、例えば、携帯電話、センサもしくはラップトップのフレーム、ハウジングもしくはパッケージ、または携帯電話もしくは車両のアンテナの部品または構成要素として好ましくは使用される。
【0145】
別の態様では、本発明はまた、携帯電話、センサもしくはラップトップのフレーム、ハウジングもしくはパッケージ、または携帯電話もしくは車両のアンテナの部品または構成要素の材料としての本発明によるポリブチレンテレフタレート組成物を使用する方法に関する。
【実施例
【0146】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらに説明される。実施例は例示として記載されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0147】
[実施例1~6および比較例1~6]
実施例および比較例のすべての成分を表1~5に列挙する。
【0148】
成分A:
BASF製Ultradur(登録商標)B2550(ISO307、1157、1628での粘度数が107cm/g、数平均モル質量分子量(Mn)が16500g/molであるPBT)。
【0149】
成分B:
(B-1)BASF製Joncryl(登録商標)ADF1300、スチレン、アクリル酸、およびアルファ-メチルスチレンのコポリマー、質量平均分子量がM=2800g/mol、およびスチレン量が90~99.5mol%、Tが56℃である。
(B-2)Nantong Sunny Polymer New Materials Technology Co. Ltd.製Fine-Blend(商標)SAG-002、スチレン量が70~80モル%のスチレン-アクリロニトリル-グリシジルメタクリレート三成分系ランダムコポリマー。
(B-3)TOTAL Cray Valley Oaklands Corporate Center製SMA(登録商標)3000、ポリ(スチレン-マレイン酸無水物)コポリマー、スチレンとマレイン酸無水物が約3:1モル、質量平均分子量がM=9500、および数平均分子量がM=3800である。
(B-4)Dow製Paraloid(商標)EXL-2655、コアがポリ(ブタジエン/スチレン)であり、シェルがメチルメタクリレートであり、スチレン量が10~30モル%である、コアシェルポリマー。
(B-5)Chi Mei Corporation製POLYLAC(登録商標)ABS757k、スチレン量が50~70モル%である。
【0150】
成分C:
(C-1)Chongqing Polycomp International Corp.(CPIC)製ガラス繊維ECS3031H
(C-2)ガラス繊維ECS303(HL)303N-3 Chongqing Polycomp International Corp.(CPIC)
【0151】
成分D:
低融点ポリエステル180:テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、エチルグリコール(EG)、およびジエチレングリコール(DEG)から製造され、TPA:IPA:EG:DEGのモル比=1:0.4:1.3:0.1、T=68℃、T=174℃、固有粘度=0.68dL/g。
【0152】
成分E:
3M Company製ガラスバブルiM16K。
【0153】
成分F:
(F-1)Vikoflex(登録商標)7190、Arkema Inc.製安定剤。
(F-2)Irganox(登録商標)1010、BASF製抗酸化剤。
(F-3)Loxiol(登録商標)P861/3.5、Emery Oleochemicals製のペンタエリスリトールの長鎖脂肪酸エステル。
(F-4)MODIPER(登録商標)CL430-G、NOF Corporation製相溶化剤、主鎖はポリカーボネートであり、分岐ポリマーはスチレン量が1~20モル%のポリ(グリシジルメタクリレート-アクリロニトリル-スチレン)コポリマーである。
(F-5)Elvaloy(登録商標)PTW、DuPont製弾性剤、エチレンターポリマー。
【0154】
PP Z1500、Dawn Group製ポリプロピレン。
【0155】
比較例の成分
Sinopec Yizheng Chemical fiber Co.,Ltd.製PP Z1500。
Zhejiang Wankai New Materials Co.,Ltd.製PET WK851、TPA系ポリエチレンテレフタル酸樹脂。
【0156】
特性決定:
23℃にてISO527-1/2に従って、タイプ1Aの試験片を使用して、引張弾性率、破断点伸び、破断点引張強度を測定し、特性決定する。
【0157】
ノッチ付きシャルピー衝撃強度およびノッチなしシャルピー衝撃強度を、23℃にてISO179-1-2010のタイプAに従って試験した。試料ストライプは80*10*4mm(長さ*幅*厚さ)である。
【0158】
MVR:溶融体積-流量を、ISO1133-2011に従って試験した。試験条件は275℃にて2.16kgの負荷である。
【0159】
比誘電率および誘電損失を、1GHz下でのIEC60250、またはGB/T12636-90に従って評価した。
【0160】
タイプBの試験片を使用して、ISO19095に従って、結合強度を試験した。
【0161】
以下の実施例の押出条件は、次のとおりである。スクリュー押出機の領域温度は200℃~250℃であり、スループットは30kg/hである。
【0162】
【表1】
【0163】
表1からわかるように、ビニル芳香族系ポリマーを含む組成物は、比誘電率および誘電損失を低減させ、一方で、組成物の引張弾性率および流動性は急速に増加する。
【0164】
【表2】
【0165】
表2からわかるように、ポリプロピレンは低い比誘電率(2.1)および誘電損失(0.0003)を有する樹脂であるが、PPの添加は誘電特性の改善に対する明らかな効果を有さず、引張特性の低下に対して明らかな負の効果を有する。
【0166】
【表3】
【0167】
表3からわかるように、実施例4の誘電損失は減少した。
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
表5からわかるように、コアシェルビニル芳香族ポリマーは、コアシェルポリマーの量が非常に少ない場合でも誘電損失の減少および流動性の向上に対して望ましい効果を示す。
【国際調査報告】