(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ポリオレフィン
(51)【国際特許分類】
C08F 10/00 20060101AFI20221215BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521471
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 KR2020016439
(87)【国際公開番号】W WO2021118103
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0165771
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンキュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】セヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】イルハク・ベ
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AB02Q
4J100AB03Q
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4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC12B
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4J128BC15B
4J128BC25A
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4J128CA25A
4J128CA27A
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4J128EA01
4J128EB02
4J128EB03
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4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EB12
4J128EB13
4J128EB15
4J128EB16
4J128EB17
4J128EB18
4J128EB21
4J128EB26
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA01
4J128GA08
4J128GA16
4J128GA19
4J128GA26
(57)【要約】
本発明は、ポリオレフィンに関する。より具体的には、本発明は、少量の共重合体の含有量を有し、かつ優れた機械的物性を示すポリオレフィンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.910g/cm
3~0.930g/cm
3の密度;
炭素数1000個当たりのSCB(短鎖分岐、Short Chain Branch)が1.0~5.0個;および
下記式1で計算される結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下である、ポリオレフィン:
【数1】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【請求項2】
融点(Tm)が120~124℃である、請求項1に記載のポリオレフィン。
【請求項3】
重量平均分子量(Mw)が100,000~500,000g/molである、請求項1または2に記載のポリオレフィン。
【請求項4】
前記SSAは、示差走査熱量装置を用いて前記ポリオレフィンを最初の加熱温度120~124℃まで加熱し、15~30分間維持した後、28~32℃に冷却し、n+1番目の加熱温度は、n番目の加熱温度より3~7℃低い温度にして段階的に加熱温度を下げながら、最後の加熱温度が50~54℃になるまで加熱-アニーリング(annealing)-急冷を繰り返した後、最後に、30℃から160℃まで温度を上げることによって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリオレフィン:
【請求項5】
ASL fi(8~30nm)は、51%以上75%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリオレフィン。
【請求項6】
エチレンとα-オレフィンの共重合体である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリオレフィン。
【請求項7】
前記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項6に記載のポリオレフィン。
【請求項8】
下記化学式1で表される化合物の中から選択されるメタロセン化合物;および前記メタロセン化合物を担持する担体を含む、担持メタロセン触媒の存在下で、オレフィン単量体を重合して製造される、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリオレフィン:
【化1】
前記化学式1中、
M
1は4族遷移金属であり;
A
1は炭素(C)、ケイ素(Si)、またはゲルマニウム(Ge)であり;
Q
1およびQ
2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数2~20のアルコキシアルキル、炭素数7~40のアリールオキシアルキル、炭素数6~40のアリール、炭素数7~40のアルキルアリール、または炭素数7~40のアリールアルキルであり;
X
1およびX
2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数6~40のアリール、ニトロ基、アミド基、炭素数1~20のアルキルシリル、炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数1~20のスルホネート基であり;
C
1およびC
2は互いに異なり、それぞれ独立して、下記化学式2a、化学式2b、または化学式2cのうちの一つで表され、
【化2】
前記化学式2a、化学式2b、および化学式2c中、R
1~R
22は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のハロアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキルシリル、炭素数1~20のシリルアルキル、炭素数1~20のアルコキシシリル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数6~40のアリール、炭素数7~40のアルキルアリール、または炭素数7~40のアリールアルキルであり、前記R
15~R
22のうちの互いに隣接する2個以上が互いに連結されて置換または非置換の脂肪族または芳香族環を形成し;
*はA
1およびM
1と結合する部位を示す。
【請求項9】
前記化学式1で表される化合物は、下記構造式で表される化合物のうちのいずれか一つである、請求項8に記載のポリオレフィン:
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年12月12日付の韓国特許出願第10-2019-0165771号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリオレフィンに関する。より詳しくは、本発明は、少量の共重合体含有量を有し、かつ優れた機械的物性を示すポリオレフィンに関する。
【背景技術】
【0003】
直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を使用して低圧でエチレンとα-オレフィンとを共重合して製造されることで、分子量分布が狭く、一定長さの短鎖分枝を有し、長鎖分枝はない樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、一般のポリエチレンの特性以外にも、破断強度と伸び率が高く、引裂強度、落すい衝撃強度などに優れて、既存の低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどへの使用が増加している。
【0004】
また、直鎖状低密度ポリエチレンは、一般的に密度が低いほど機械的物性が増加する特性がある。しかし、低密度のポリエチレンを製造するためにα-オレフィン共単量体を多く使用する場合、スラリー重合工程でファウリング(fouling)の発生頻度が高くなるなどの工程が不安定になるか、または生産性が低くなる問題がある。
【0005】
したがって、安定した生産性で低密度かつ優れた機械的物性を実現できるポリエチレンの開発の必要性が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、類似SCB含有量のポリオレフィン樹脂に比べて低い密度と低い溶融温度を有し、少ない共単量体含有量でも低密度の製品を安定的に生産できるポリオレフィンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
0.910g/cm3~0.930g/cm3の密度;
炭素数1000個当たりのSCB(短鎖分岐、Short Chain Branch)が1.0~5.0個;および
下記式1で計算される結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下である、ポリオレフィン:
【0008】
【0009】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタロセン触媒を利用したポリオレフィン重合時にラメラ(lamellar)を形成するエチレンシーケンス(ethylene sequence)の分布度を調節して、類似SCB含有量を有する従来のポリオレフィンと比較して低い密度および溶融温度(Tm)を示して、機械的物性に優れたポリオレフィンを提供することができる。
【0011】
また、少量のα-オレフィン共単量体を投入しても所望する物性のポリオレフィンを安定的に製造することができ、重合の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例および比較例によるポリオレフィンのSCB含有量とBCDIの関係を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施例および比較例によるポリオレフィンのSCB含有量と溶融温度との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態によるSSA分析法の温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0014】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0015】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0016】
以下、本発明のポリオレフィンについて詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、0.910g/cm3~0.930g/cm3の密度;炭素数1000個当たりのSCB(短鎖分岐、Short Chain Branch)が1.0~5.0個;および下記式1で計算される結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下であることを特徴とする:
【0018】
【0019】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene;LLDPE)は、重合触媒を使用して低圧でエチレンとα-オレフィンを共重合して製造されるもので、分子量分布が狭く、一定長さの短鎖分枝を有する樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、一般のポリエチレンの特性以外にも、破断強度と伸び率が高く、引裂強度、落下衝撃強度などに優れて、既存の低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルムなどへの使用が増加している。
【0021】
また、直鎖状低密度ポリエチレンは、一般的に密度が低いほど落下衝撃強度が増加することが知られている。しかし、低密度のポリエチレンを製造するために共単量体を多く使用する場合、スラリー重合工程でファウリング(fouling)の発生頻度が高くなり、これを含むフィルムを製造するときにべたつきのせいでブロッキング防止剤(antiblocking)の使用量を増加させなければならないなどの問題がある。なお、生産時に工程が不安定であるか、または生成されるポリエチレンのモルフォロジー(morphology)特性が低下して、体積密度(bulk density)が減少するなどの問題がある。
【0022】
そこで、本発明ではラメラ(lamellar)を形成するエチレンシーケンス(ethylene sequence)の分布を適切に調節して、共単量体含有量を比較的低く維持し、かつ所望の低密度、高共重合性の製品生産を可能にする。これによって生成されるポリエチレンのモルフォロジー特性の低下を防止し、体積密度が改善されてファウリング(fouling)発生の危険を低くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0023】
SCB(短鎖分岐、Short Chain Branch)とは、オレフィン系重合体の主鎖に付いている2~6個の炭素数(オレフィン系重合体主鎖の炭素1000個当たり)を有する側枝を意味し、通常、共単量体(comonomer)として1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数4以上のα-オレフィンを使用する場合作られる側枝を意味する。このようなSCB個数(個/1000C)は、1H-NMRを用いて測定することができる。
【0024】
具体的には、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、0.910g/cm3~0.930g/cm3の密度;炭素数1000個当たりのSCB(Short Chain Branch)が1.0~5.0個;および下記式1で計算される結晶構造分布指数(Block comonomer distribution index、BCDI)が1.0以下を満たす:
【0025】
【0026】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、ポリオレフィンは、例えばエチレンとα-オレフィンの共重合体であり得る。この時、前記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンを含むものであり得る。その中でも前記ポリオレフィンは、エチレンと1-ブテンの共重合体、エチレンと1-ヘキセンの共重合体、またはエチレンと1-オクテンの共重合体であり得る。
【0028】
より具体的には、本発明の一実施形態によるポリオレフィンの密度は、0.910g/cm3以上、または0.915g/cm3以上、または0.916g/cm3以上、または0.917g/cm3以上、または0.918g/cm3以上、または0.919g/cm3以上であり、かつ0.930g/cm3以下、または0.928g/cm3以下、または0.927g/cm3以下、または0.925g/cm3以下、または0.922g/cm3以下、または0.921g/cm3以下、または0.920g/cm3以下である。この時、前記密度は、ASTM D1505により測定した値である。
【0029】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、炭素数1000個当たりのSCB(短鎖分岐、Short Chain Branch、ポリオレフィン主鎖に導入された炭素数6個以下の側鎖)の個数が1.0個以上、または1.5個以上、または2.0個以上であり、かつ5.0個以下、または4.5個以下、または4.0個以下である。この時、前記SCBの個数は1H-NMRを用いて測定した値である。
【0030】
本発明のポリオレフィンは、半結晶(semi-crystalline)高分子であって、結晶性部分と無定形部分とを含み得る。具体的には、前記結晶性部分は、エチレン繰り返し単位またはα-オレフィン繰り返し単位を含む高分子鎖が折り畳まれて束をなすようになり、これによってラメラ(lamellar)形態の結晶性ブロック(またはセグメント)を形成することができる。
【0031】
本発明者らは、高分子鎖内にラメラ結晶の分布を定量化した結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下であるとき、類似SCB含有量を有する従来のポリオレフィンと比較して低い密度および溶融温度を示し、したがって、少量の共単量体でも製品スペックに相当する密度を有するポリオレフィン樹脂の生産が可能であることに着目して、本発明に至った。
【0032】
例えば、炭素数1000個当たりのSCBが1.0~5.0個であり、結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下である本発明のポリオレフィンの場合、同じSCB含有量範囲の従来のポリオレフィンに比べてさらに低い密度および溶融温度を示すことができる。
【0033】
このような本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、下記式1で計算される結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下である。
【0034】
【0035】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【0036】
好ましくは、上記式1で計算される結晶構造分布指数(BCDI)が0.9以下、または0.8以下、または0.7以下であり、かつ0.4以上、または0.5以上である。
【0037】
SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)は、示差走査熱量装置(Differential Scanning Calorimeter、DSC)を用いて段階的に温度を下げながら各段階が終わるたびに急冷して各段階ごとに当該温度で結晶化した結晶を保存する方法である。
【0038】
すなわち、ポリオレフィンを加熱して完全に溶融(melting)させた後、特定温度(T)に冷却し、徐々にアニーリング(annealing)すると、当該温度(T)で安定しないラメラは依然として溶融しており、安定したラメラのみを結晶化する。この時、当該温度(T)に対する安定性はラメラの厚さに依存し、ラメラの厚さは鎖構造に依存する。したがって、このような熱処理を段階的に行うことによって、高分子鎖構造によるラメラの厚さおよびその分布度を定量的に測定することができ、これにより、各溶融ピーク面積の分布を測定することができる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記SSAは、示差走査熱量装置を用いて前記ポリオレフィンを最初の加熱温度120~124℃まで加熱し、15~30分間維持した後、28~32℃に冷却し、n+1番目の加熱温度は、n番目の加熱温度より3~7℃低い温度にして段階的に加熱温度を下げながら、最後の加熱温度が50~54℃になるまで加熱-アニーリング(annealing)-急冷を繰り返すことによって行われる。
【0040】
より具体的には、前記SSAは、下記i)~v)の段階により行うことができる:
i)示差走査熱量装置を用いてポリオレフィンを160℃まで加熱した後、30分間維持して測定前の熱履歴をすべて除去する段階;
ii)160℃から122℃にまで温度を下げた後、20分間維持し、30℃まで温度を下げて1分間維持する段階;
iii)122℃より5℃低い温度の117℃まで加熱した後、20分間維持し、30℃まで温度を下げて1分間維持する段階;
iv)n+1番目の加熱温度は、n番目の加熱温度より5℃低い温度にし、昇温速度、維持時間および冷却温度は同様にして漸次加熱温度を下げながら加熱温度が52℃になるまで行う段階;および
v)最後に、30℃から160℃にまで温度を上げる段階である。
【0041】
本発明の一実施形態によるSSA分析法の温度プロファイルを
図3に示す。
【0042】
図3を参照すると、示差走査熱量装置(装置名:DSC8000、製造会社:PerkinElmer社)を用いてポリオレフィンを初期に160℃まで加熱した後、30分間維持して試料の測定前の熱履歴をすべて除去する。160℃から122℃にまで温度を下げた後、20分間維持し、30℃まで温度を下げて1分間維持した後、再び温度を増加させる。
【0043】
次に、最初の加熱温度122℃より5℃低い温度(117℃)まで加熱した後、20分間維持し、30℃まで温度を下げて1分間維持した後、再び温度を増加させる。このような方式でn+1番目の加熱温度は、n番目の加熱温度より5℃低い温度にし、維持時間および冷却温度は同様にして漸次加熱温度を下げながら52℃まで行う。この時、温度の上昇速度と下降速度は、それぞれ20℃/minに調節する。最後に、加熱-アニーリング(annealing)-急冷を繰り返して形成した結晶の分布を定量的に分析するため、30℃から160℃まで10℃/minの昇温速度で温度を上げて熱量変化を観察して温度記録(thermogram)を測定する。
【0044】
このように本発明のポリオレフィンに対し、SSA方式で加熱-アニーリング-急冷を繰り返した後、昇温すると温度別ピークが示され、前記ASLは、このように測定されたSSA thermogramから計算できる。
【0045】
より具体的には、ASLは下記式2により求められ、下記式2中、CH2 mole fractionは、全体ポリオレフィンで連続したエチレン(consecutive ethylene)のモル比率を意味し、前記エチレンのモル比率は再び下記式3で計算できる:
【0046】
[式2]
ASL=0.2534(CH2 mole fraction)/(1-CH2 mole fraction)
【0047】
[式3]
-ln(CH2 mole fraction)=-0.331+135.5/Tm(K)
【0048】
Tmは、ポリオレフィンで溶融温度(単位:K)であって、本発明ではSSA分析により得られる温度別ピークのピーク温度を意味する。
【0049】
上記式2および式3に対する説明と、より具体的なASLの計算方法についてはJournal of Polymer Science Part B:Polymer Physics.2002,vol.40,813-821,およびJournal of the Korean Chemical Society 2011,Vol.55,No.4を参照する。
【0050】
このような方式で計算して長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)、および長さが8~30nmのASLを有する鎖の比率(%)をそれぞれ求めることができ、これを上記式1に代入して結晶構造分布指数(BCDI)を求めることができる。
【0051】
本発明のポリオレフィンは、このような方法で計算した結晶構造分布指数(BCDI)が1.0以下の値を有することによって、最適の結晶構造分布によって少量の共単量体でも低密度特性および優れた機械的物性を実現することができる。
【0052】
また、上記式1中、ASL fi(<8nm)は14%以上、または17%以上であり、かつ23%以下、または20%以下である。
【0053】
また、上記式1中、ASL fi(>30nm)は14%以上、または17%以上であり、かつ28%以下、または24%以下である。
【0054】
また、上記式1中、ASL fi(8~30nm)は51%以上、または55%以上であり、かつ75%以下、または70%以下である。
【0055】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、溶融温度(Tm)が124℃以下であって、例えば124℃以下、または123.5℃以下、または123℃以下であり、かつ120℃以上、または120.5℃以上、または121.5℃以上である。本発明のポリオレフィンが、このような範囲の溶融温度を有することによって改善された加工性を示すことができる。
【0056】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、上述したように、特性を満たすと共に、ASTM D1238規格により190℃の温度および2.16kgの荷重下で測定された溶融指数(MI2.16)が0.5~1.5g/10minであり得る。より具体的には、前記溶融指数(MI2.16)が0.5g/10min以上、または0.7g/10min以上、または0.8g/10min以上、または0.9g/10min以上であり、かつ1.5g/10min以下、または1.4g/10min以下、または1.3g/10min以下であり得る。
【0057】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、フィルム製膜装置を用いてポリオレフィンフィルム(BUR2.3、フィルムの厚さ55~65μm)を製造した後、ISO 13468に基づいて測定したフィルムのヘイズ(haze)が11%以下であり得る。より具体的には、本発明の一実施形態によるポリオレフィンのヘイズは、11%以下、または10.5%以下、または10%以下、または9.5%以下であり得る。ヘイズ値は低いほど好ましく、その下限値は特に限定されないが、例えば4%以上、または5%以上、または6%以上、または7%以上であり得る。
【0058】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、フィルム製膜装置を用いてポリオレフィンフィルム(BUR2.3、フィルムの厚さ55~65μm)を製造した後、ASTM D1709[Method A]により測定した落下衝撃強度が850g以上、または900g以上、または950g以上、または1,000g以上であり得る。落下衝撃強度は高いほど好ましく、その上限値は特に限定されないが、例えば、1,500g以下、または1,400g以下、または1,300g以下、または1,200g以下であり得る。
【0059】
前記のように本発明のポリオレフィンは、同じ範囲の密度を有する従来のポリオレフィンよりも向上した透明度を示し、かつ優れた落下衝撃強度を示すことができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)が100,000~500,000g/molであり得る。より好ましくは、前記重量平均分子量は100,000g/mol以上、または150,000/mol以上でありながら、または200,000/mol以上でありながら、500,000g/mol以下、または450,000g/mol以下、または400,000g/molであり得る。
【0061】
前記重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したものであって、ポリスチレン標準(polystyrene standard)を用いたユニバーサル較正(universal calibration)した値を意味し、前記ポリオレフィンの用途または適用分野を考慮して適切に調節することができる。
【0062】
一方、このような物性的特徴を有する本発明の一実施形態によるポリオレフィンは、触媒活性成分として担持メタロセン化合物の存在下で、オレフィン単量体を重合する段階を含む製造方法によって製造される。
【0063】
より具体的には、本発明のポリオレフィンは、これに限定されるものではないが、下記化学式1で表される化合物の中から選択されるメタロセン化合物;および前記メタロセン化合物を担持する担体を含む、担持メタロセン触媒の存在下で、オレフィン単量体を重合して製造される。
【0064】
【0065】
前記化学式1中、
M1は4族遷移金属であり;
A1は炭素(C)、ケイ素(Si)、またはゲルマニウム(Ge)であり;
Q1およびQ2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数2~20のアルコキシアルキル、炭素数7~40のアリールオキシアルキル、炭素数6~40のアリール、炭素数7~40のアルキルアリール、または炭素数7~40のアリールアルキルであり;
X1およびX2は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数6~40のアリール、ニトロ基、アミド基、炭素数1~20のアルキルシリル、炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数1~20のスルホネート基であり;
C1およびC2は互いに異なり、それぞれ独立して、下記化学式2a、化学式2b、または化学式2cのうちの一つで表され、
【0066】
【0067】
前記化学式2a、化学式2b、および化学式2c中、
R1~R22は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のハロアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数1~20のアルキルシリル、炭素数1~20のシリルアルキル、炭素数1~20のアルコキシシリル、炭素数1~20のアルコキシ、炭素数6~40のアリール、炭素数7~40のアルキルアリール、または炭素数7~40のアリールアルキルであり、
前記R15~R22のうちの互いに隣接する2個以上が互いに連結されて置換または非置換の脂肪族または芳香族環を形成し;
*はA1およびM1と結合する部位を示す。
【0068】
前記担持メタロセン触媒において、前記化学式1の置換基をより具体的に説明すると以下の通りである。
【0069】
前記炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖または分枝鎖のアルキル基を含み、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0070】
前記炭素数2~20のアルケニル基としては、直鎖または分枝鎖のアルケニル基を含み、具体的にはアリル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0071】
前記炭素数6~20のアリール基としては、単環または縮合環のアリール基を含み、具体的にはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0072】
前記炭素数1~20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0073】
前記炭素数2~20のアルコキシアルキル基は、上述のアルキル基の1個以上の水素がアルコキシ基で置換された官能基であり、具体的にはメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、iso-プロポキシメチル基、iso-プロポキシエチル基、iso-プロポキシヘキシル基、tert-ブトキシメチル基、tert-ブトキシエチル基、tert-ブトキシヘキシル基などのアルコキシアルキル基;またはフェノキシヘキシル基などのアリールオキシアルキル基が挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0074】
前記炭素数1~20のアルキルシリル基または炭素数1~20のアルコキシシリル基は、-SiH3の1~3個の水素が1~3個の上述のアルキル基またはアルコキシ基で置換された官能基であり、具体的にはメチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジエチルメチルシリル基またはジメチルプロピルシリル基などのアルキルシリル基;メトキシシリル基、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基またはジメトキシエトキシシリル基などのアルコキシシリル基;メトキシジメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基またはジメトキシプロピルシリル基などのアルコキシアルキルシリル基が挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0075】
前記炭素数1~20のシリルアルキル基は、上述のアルキル基の1以上の水素がシリル基で置換された官能基であり、具体的には-CH2-SiH3、メチルシリルメチル基またはジメチルエトキシシリルプロピル基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0076】
前記ハロゲン(halogen)はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)である。
【0077】
前記スルホネート基は-O-SO2-R’の構造で、R’は炭素数1~20のアルキル基である。具体的には、炭素数1~20のスルホネート基としては、メタンスルホネート基またはフェニルスルホネート基などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0078】
また、本明細書において互いに隣接する2個の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成するということは、2個の置換基の原子および前記2個の置換基が結合した原子が互いに連結されて環をなすことを意味する。
【0079】
上述した置換基は目的とする効果と同一または類似の効果を発揮する範囲内で任意にヒドロキシ基;ハロゲン;アルキル基またはアルケニル基、アリール基、アルコキシ基;14族~16族のヘテロ原子のうち一つ以上のヘテロ原子を含むアルキル基またはアルケニル基、アリール基、アルコキシ基;シリル基;アルキルシリル基またはアルコキシシリル基;ホスフィン基;ホスファイド基;スルホネート基;およびスルホン基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され得る。
【0080】
前記4族遷移金属としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0081】
前記化学式1のメタロセン化合物を含む担持触媒を利用するとポリオレフィンの重合時、ラメラ(lamellar)を形成するエチレンシーケンス(ethylene sequence)の長さ別分布図を調節して、類似SCB含有量を有する従来のポリオレフィンに比べて低い溶融温度および密度を有するポリオレフィンを製造することができる。
【0082】
一般に、密度が低いほど機械的物性に優れるが、低密度製品の生産のために工程内に多くの共単量体を投入する場合、工程が不安定で、settling efficiencyが低下する。前記ポリオレフィンは、類似SCB含有量でも密度と溶融温度が低いため、比較的少ない共単量体の投入で低密度の製品を生産することができる。
【0083】
より具体的には、本発明の一実施形態による担持触媒において、前記化学式1で表されるメタロセン化合物は2個の互いに異なるリガンドでインデニルリガンド、フルオレニルリガンド、またはシクロペンタナフタレニルリカンドを含み、前記リガンドは-A1(Q1)(Q2)-によって架橋されており、前記リガンド間にM1(X1)(X2)が存在する構造を有する。このような構造の触媒を利用してポリオレフィンを重合すると同じ量のSCBを有するポリオレフィンに対して相対的にラメラ結晶構造がランダムに分布し、低い溶融温度を有するポリオレフィンを得ることができる。
【0084】
具体的には、前記化学式1で表されるメタロセン化合物の構造内で互いに異なるリガンドの組み合わせは、ポリオレフィン重合活性および共単量体の共重合性に影響を及ぼし得る。また、前記化学式1で表されるメタロセン化合物のリガンドの種類および置換された官能基の種類によって立体障害効果の程度を調節して製造されるポリオレフィンのラメラ分布を調整することができる。
【0085】
また、前記化学式1で表されるメタロセン化合物の構造内で前記化学式2a~化学式2cのリガンドは、-A1(Q1)(Q2)-によって架橋されて優れた安定性を示すことができる。このような効果をさらに効果的に担保するために、Q1およびQ2はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~20のアリール基のうちのいずれか一つであり得る。より具体的には、Q1およびQ2はそれぞれ独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、およびベンジル基のいずれか一つであるメタロセン化合物を使用することができる。
【0086】
前記化学式1で表されるメタロセン化合物の構造内で前記シクロペンタジエニルリガンドとテトラヒドロインデニルリガンドとの間に存在するM1(X1)(X2)は、金属錯体の保存安定性に影響を及ぼし得る。このような効果をさらに効果的に担保するために、X1およびX2はそれぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基および炭素数1~20のアルコキシ基のうちのいずれか一つであり得る。より具体的には、X1およびX2はそれぞれ独立して、F、Cl、BrまたはIであり、M1はTi、ZrまたはHfであるか;ZrまたはHfであるか;あるいはZrである。
【0087】
前記化学式1のメタロセン化合物は、下記構造式で表される化合物であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0088】
【0089】
前記化学式1で表される第1メタロセン化合物は、公知の反応を応用して合成することができる。具体的には、
化学式2a、化学式2b、または化学式2cの化合物を架橋化合物で連結してリガンド化合物を製造した後、金属前駆体化合物を投入してメタレーション(metallation)を行うことによって製造することができるが、これに限定されるものではなく、より詳細な合成方法は実施例を参照することができる。
【0090】
また、前記メタロセン化合物は、上述した構造的特徴を有して担体に安定的に担持され得る。
【0091】
前記担体としては、表面にヒドロキシ基またはシロキサン基を含有する担体を使用することができる。具体的には、前記担体としては、高温で乾燥して表面に水分を除去することによって反応性が高いヒドロキシ基またはシロキサン基を含有する担体を使用することができる。より具体的には、前記担体としてはシリカ、アルミナ、マグネシアまたはこれらの混合物などを使用することができ、その中でもシリカがより好ましい。前記担体は、高温で乾燥されたものであり、例えば高温で乾燥されたシリカ、シリカ-アルミナ、およびシリカ-マグネシアなどを使用することができ、これらは通常Na2O、K2CO3、BaSO4およびMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩成分を含み得る。
【0092】
前記担体の乾燥温度は約200~800℃が好ましく、約300~600℃がより好ましく、約300~400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が約200℃未満の場合、水分が多すぎて表面の水分と助触媒が反応することになり、約800℃を超える場合担体表面の気孔同士が係合して表面積が減り、また、表面にヒドロキシ基がほとんどなくなり、シロキサン基のみが残ることになり、助触媒との反応サイトが減少するので好ましくない。
【0093】
前記担体表面のヒドロキシ基の量は、約0.1~10mmol/gであることが好ましく、約0.5~5mmol/gであることがより好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法および条件または乾燥条件、例えば温度、時間、真空または噴霧乾燥などによって調整することができる。
【0094】
前記ヒドロキシ基の量が約0.1mmol/g未満であれば助触媒との反応サイトが少なく、約10mmol/gを超えると担体粒子の表面に存在するヒドロキシ基以外の水分に起因するものである可能性があるので、好ましくない。
【0095】
また、前記一実施形態の担持メタロセン触媒において、前記メタロセン化合物を活性化するために担体にともに担持される助触媒としては、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般的なメタロセン触媒下でオレフィンを重合する時に使用可能なものであれば、特に限定されるものではない。
【0096】
具体的には、前記助触媒化合物は、下記化学式3のアルミニウム含有第1助触媒、および下記化学式4のボレート系の第2助触媒のうちの一つ以上を含み得る。
【0097】
[化学式3]
Ra-[Al(Rb)-O]n-Rc
【0098】
前記化学式3中、
Ra、Rb、およびRcは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル基、またはハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビル基であり;
nは2以上の整数であり;
【0099】
[化学式4]
T+[BG4]-
【0100】
化学式4中、T+は+1価の多原子イオンであり、Bは+3の酸化状態のホウ素であり、Gはそれぞれ独立して、ハイドライド基、ジアルキルアミド基、ハライド基、アルコキシド基、アリールオキシド基、ヒドロカルビル基、ハロカルビル基およびハロ-置換されたヒドロカルビル基からなる群より選択され、前記Gは20個以下の炭素を有するが、但し、一つ以下の位置でGはハライド基である。
【0101】
前記化学式3の第1助触媒は、線形、円形または網状形で繰り返し単位が結合したアルキルアルミノキサン系化合物であり得、このような第1助触媒の具体的な例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンなどが挙げられる。
【0102】
また、前記化学式4の第2助触媒は、三置換されたアンモニウム塩、またはジアルキルアンモニウム塩、三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物であり得る。このような第2助触媒の具体的な例としては、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、メチルテトラデシクロオクタデシルアンモニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラフェニルボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(2級-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、ジメチル(t-ブチル)アンモニウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリウムテトラキス(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、またはN,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたアンモニウム塩形態のボレート系化合物;ジオクタデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジテトラデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのジアルキルアンモニウム塩形態のボレート系化合物;またはトリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルジオクタデシルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、またはトリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの三置換されたホスホニウム塩形態のボレート系化合物などが挙げられる。
【0103】
前記一実施形態の担持メタロセン触媒において、メタロセン化合物に含まれる遷移金属全体に対する担体の質量比は1:10~1:1,000である。上記の質量比で担体およびメタロセン化合物を含むときに最適な形状を示すことができる。
【0104】
また、助触媒化合物に対する担体の質量比は1:1~1:100である。上記の質量比で助触媒および担体を含むときに活性および高分子微細構造を最適化することができる。
【0105】
前記一実施形態の担持メタロセン触媒はそれ自体としてオレフィン系単量体の重合に使用することができる。また、前記担持メタロセン触媒は、オレフィン系単量体と接触反応して予備重合された触媒で製造して使用することもでき、例えば、触媒を別にしてエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのオレフィン系単量体と接触させて予備重合された触媒で製造して使用することもできる。
【0106】
また、前記一実施形態の担持メタロセン触媒は、担体に助触媒を担持させる段階と;前記助触媒が担持された担体にメタロセン化合物を担持させる段階と;を含む製造方法により製造することができる。
【0107】
上記の方法で、担持条件は特に限定されず、該分野の当業者によく知られている範囲で行うことができる。例えば、高温担持および低温担持を適切に利用して行うことができ、例えば担持温度は約-30℃~150℃の範囲で行うことができ、好ましくは常温(約25℃)~約100℃、より好ましくは常温~約80℃である。担持時間は、担持しようとするメタロセン化合物の量によって適宜調節できる。反応させた担持触媒は、反応溶媒をろ過するか、または減圧蒸留させて除去してそのまま使用することができ、必要であれば、トルエンなどの芳香族炭化水素でソックスレーフィルターして使用することができる。
【0108】
そして、前記担持触媒の製造は、溶媒または無溶媒下で行うことができる。溶媒を使用する場合、使用可能な溶媒としては、ヘキサンまたはペンタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエンまたはベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタンなどの塩素原子で置換された炭化水素溶媒、ジエチルエーテルまたはTHFなどのエーテル系溶媒、アセトン、酢酸エチルなどのほとんどの有機溶媒が挙げられ、ヘキサン、ヘプタン、トルエンまたはジクロロメタンが好ましい。
【0109】
そして、前記オレフィン単量体はエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0110】
前記オレフィン単量体の重合反応のために連続式溶液重合工程、バルク重合工程、懸濁重合工程、スラリー重合工程または乳化重合工程などのオレフィン単量体の重合反応として知られている多様な重合工程を採用することができる。このような重合反応は約25~500℃、または約25~200℃、または約50~150℃の温度、および約1~100barまたは約10~80barの圧力下で行うことができる。
【0111】
また、前記重合反応で、前記担持メタロセン触媒はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどの溶媒に溶解または希釈した状態で用いられる。この時、前記溶媒を少量のアルキルアルミニウムなどで処理することによって、触媒に悪影響を与えることがある少量の水または空気などを予め除去することができる。
【0112】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されているに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【0113】
<実施例>
合成例1
【0114】
【0115】
1-1 リガンド化合物の製造
500mLのシュレンク(schlenk)フラスコを用意し、Ar雰囲気下で2-メチルベンゾインデン(2-methylbenzoindene) 9.0gをMTBE100mLに溶かし、-20℃でn-BuLi(2.5M in Hex)22mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認し、ヘキサン(hexane) 100mLを投入した。温度を-20℃に下げ、ジクロロジメチルシラン(dichlorodimethylsilane) 12.9gを投入した後、温度を常温まで徐々に上げて攪拌した。反応が完了したら溶媒を全て蒸留し、トルエン(Toluene) 20mLを投入して攪拌した。
【0116】
250mLのシュレンク(schlenk))フラスコを用意し、Ar雰囲気下でフルオレン(Fluorene) 8.3gをMTBE 100mLに溶かした。温度を0℃に下げ、n-BuLi(2.5M in Hex)22mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認した後、該溶液を上記500mLのフラスコに投入した。16時間攪拌すると白い固体のリガンドが析出した。
【0117】
LiClを除去するために上記反応物に水100mLを投入し、10分間攪拌後、水層を除去した。水でさらに2回洗浄(washing)した後、有機層で固体をろ過して白い固体のリガンドを得た。さらに有機層は、MgSO4で水分を除去し、溶媒を蒸留した。残った固体にヘキサン(hexane) 20mLを入れて攪拌した後、ろ過して清潔な固体のリガンドを得た(15.5g、77%)。
【0118】
1-2 メタロセン化合物の製造
1-1で合成したリガンド1.4gをAr雰囲気下で250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに投入し、エーテル(Ether) 45mLを投入した。0℃でn-BuLi(2.5M in Hex)2.9mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌して反応を終了し、ZrCl4(THF)2 1.3gを投入した。16時間常温で攪拌し、ろ過して固体を得た。固体にDCM50mLを投入し、35℃で2時間攪拌しろ過した。30mLのDCMで洗浄(washing)した後、ろ液(Filtrate)のDCMを蒸留して生成物(product)を得て(0.45g、23%)、H-NMRで構造を確認した。
【0119】
1H-NMR(C6D6 500MHz):7.95(1H、d)、7.91(1H、d)、7.82(1H、dd)、7.75(1H、dd)、7.70(1H、dd)、7.50-7.60(3H、m)、7.46(1H、m)、7.35(1H、s)、7.30-7.40(2H、m)7.24(1H、m)、7.12(1H、m)、7.05(1H、m)、2.38(3H、s)、1.56(3H、s)、1.42(3H、s)
【0120】
合成例2
【0121】
【0122】
2-1 リガンド化合物の製造
500mLのシュレンク(schlenk)フラスコを用意し、Ar雰囲気下で2-メチルベンゾインデン(2-methylbenzoindene) 9.0gをMTBE 100mLに溶かし、-20℃でn-BuLi(2.5M in Hex)22mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認し、ヘキサン(hexane) 100mLを投入した。温度を-20℃に下げ、ジクロロジメチルシラン(dichlorodimethylsilane) 12.9gを投入した後、温度を常温まで徐々に上げて攪拌した。反応が完了したら溶媒を全て蒸留し、MTBE 20mLを投入して攪拌した。
【0123】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコを用意し、Ar雰囲気下でインデン(indene) 5.8gをMTBE 100mLに溶かした。温度を0℃に下げ、n-BuLi(2.5M in Hex)22mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認した後、該溶液を上記500mLのフラスコに投入した。常温で16時間反応後、水とエーテル(Ether)でワークアップ(workup)し、MgSO4で水分を除去してリガンドを得た。
【0124】
2-2 メタロセン化合物の製造
2-1で合成したリガンド6.2gをAr雰囲気下で250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに投入し、MTBE 45mLを投入した。0℃でn-BuLi(2.5M in Hex)14.9mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌して反応を終了し、ZrCl4(THF)2 6.7gをトルエン(Toluene)(80mL)スラリーで投入した。16時間常温で攪拌し、ろ過して固体を得た。固体をDCM 100mLに溶かしてろ過してLiClを除去した。ろ液(Filtrate)の溶媒を蒸留して固体状態の生成物(product)を得て(2.5g、27%)、H-NMRで構造を確認した。
【0125】
1H-NMR(C6D6 500MHz):ジアステレオマー(Diastereomer)A、Bの混合物
8.00(1H、m)、7.58-7.75(2H、m)、7.45-7.52(3H、m)、7.30-7.40(2H、m)、7.10-7.22(3H、m)、6.85-6.98(1H、m)、6.22(1H of form A、d)、6.18(1H of form B、d)、2.41(3H of form A、s)、2.30-1.56(3H of form B、s)、1.38(3H of form A、s)、1.24(3H of form B、s)、1.20(3H of form B、s)、1.10(3H of form A、s)
【0126】
合成例3
【0127】
【0128】
3-1 リガンド化合物の製造
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコを用意し、Ar雰囲気下でオクタメチルフルオレン(Octamethyl fluorene)(1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレン(1,1,4,4,7,7,10,10-Octamethyl-2,3,4,7,8,9,10,12-octahydro-1H-dibenzo[b,h]fluorene))11.6gをMTBE 120mLに溶かし、0℃でn-BuLi(2.5M in Hex)13.2mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認し、温度を0℃に下げ、ジクロロジエチルシラン(dichlorodiethylsilane) 4.71gを投入した後、温度を常温まで徐々に上げて攪拌した。
【0129】
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコを用意し、Ar雰囲気下でインデン(indene) 3.5gをMTBE 45mLに溶かした。温度を0℃に下げ、n-BuLi(2.5M in Hex)13.2mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌後、反応完了をNMRで確認した後、該溶液を上記250mLのフラスコに投入した。常温で16時間反応後、水とエーテル(Ether)でワークアップ(workup)し、MgSO4で水分を除去してリガンドを得た。
【0130】
3-2 メタロセン化合物の製造
3-1で合成したリガンド5.9gをAr雰囲気下で250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに投入し、MTBE 100mLを投入した。0℃でn-BuLi(2.5M in Hex)8.4mLを徐々に滴下した。常温で4時間攪拌して反応を終了し、ZrCl4(THF)2 3.78gを投入した。16時間常温で攪拌し、ろ過してLiClを除去した。ろ液(Filtrate)の溶媒を蒸留し、ヘキサン(hexane) 40mLを投入すると生成物(product)が赤色の固体に析出した。ろ過して固体を得て(2.43g、33%)、H-NMRで構造を確認した。
【0131】
1H-NMR(C6D6 500MHz):8.17(1H、s)、8.08(1H、s)、7.62(1H、s)、7.53(1H、d)、7.46(1H、s)、7.17(1H、d)、6.88(1H、dd)、6.70(1H、s)、6.66(2H、dd)5.86(1H、s)、1.80-1.95(2H、dq)、1.76-1.60(2H、dq)、1.67-1.60(2H、m)、1.60-1.53(4H、m)、1.53(3H、s)、1.53-1.51(2H、m)、1.36(3H、t)、1.35(3H、t)、1.34(3H、s)、1.32(3H、s)、1.29(3H、s)、1.28(3H、s)、1.27(3H、s)、1.19(3H、s)、1.77(3H、s)
【0132】
比較合成例1
【0133】
【0134】
1-1 リガンド化合物の製造
250mLのシュレンク(schlenk)フラスコにオクタメチルフルオレン(octamethylfluorene)とMTBEを投入し攪拌して溶かした。-78℃でn-BuLiを投入し、常温で4時間攪拌した。ジフェニルフルベン(Diphenyl fulvene)とMTBEを250mLのシュレンク(schlenk)フラスコに投入して溶かし、上記リチウム化(Lithiation)された溶液をフルベン(fulvene)-78℃で徐々に滴下した。これを常温に昇温しながら16時間攪拌した。ジエチルエーテル(Diethyl ether)とNH4Clで抽出して有機層を分離し、これをろ過してペールイエローの粉末(pale yellow powder)の固体リガンドを得た。
【0135】
1-2メタロセン化合物の製造
ペールイエローの粉末(Pale yellow powder)形態のリガンド(Ligand)(3.5g、5.7mmol)を100mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)でMTBE(40mL、0.14M)に溶かした。-78℃でn-BuLiを投入し、常温で一晩攪拌して樺色スラリーを得た。H-NMRでリチウム化(lithiation)が完了したことを確認し、-78℃で冷却してZrCl4を投入し、常温で一晩攪拌して赤に近いピンクのスラリー(reddish-pink slurry)を得た。リガンドが無くなったことをH-NMRで確認し、ガラスフィルター(glass filter)でろ過してLiClを除去した。ホットピンクの溶液(Hot pink solution)の溶媒を減圧除去し、トルエン(toluene)(20mL)で置換蒸留してMTBEをさらに除去した。トルエン(toluene)(~50mL)とn-ヘキサン(n-hexane)(50mL)で沈澱を得てろ過した。蛍光ピンクの粉末(pink powder)(1.4g、1.8mmol、32%収率(yield))をフィルターケーキ(filter cake)から得て、H-NMRで構造を確認した。
【0136】
1H-NMR(C6D6 500MHz):8.41(2H、s)、7.75(2H、d)、7.70(2H、d)、6.94-7.18(6H、m)、6.42(2H、s)、6.22(2H、s)、5.68(2H、s)、1.62(8H、m)、1.52(3H、s)、1.35(3H、s)、1.07(3H、s)、1.01(3H、s);(CDCl3 500MHz):8.07(2H、s)、7.96(2H、d)、7.86(2H、d)、7.46(2H、t)、7.34(2H、t)、6.29(2H、s)、6.20(2H、s)、5.57(2H、s)、1.67(4H、m)、1.61(4H、m)、1.48(6H、s)、1.42(6H、s)、0.95(6H、s)、0.83(6H、s)
【0137】
比較合成例2
【0138】
【0139】
2-1リガンド化合物の製造
乾燥された250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に2.724g(10.4mmol)の4-(4-(tert-ブチル)フェニル)-2-イソプロピル-1H-インデン(4-(4-(tert-butyl)phenyl)-2-isopropyl-1H-indene)を入れて、アルゴン下で30mlのジエチルエーテル(diethylether)を注入した。ジエチルエーテル溶液(diethylether solution)を0℃まで冷却した後、4.8mL(12mmol)の2.5M nBuLiヘキサン溶液(hexane solution)を徐々に滴下した。反応混合物は徐々に常温に上げた後、翌日まで攪拌した。そこに予め合成しておいたクロロジメチル(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタ-2,4-ジエン-1-イル)シラン(chlorodimethyl(2,3,4,5-tetramethylcyclopenta-2,4-dien-1-yl)silane) 2.230g(10.4mmol)とTHF 50mlの溶液(solution)を滴下して一日間攪拌した後、フラスコ内に50mlの水を入れてクエンチング(quenching)し、有機層を分離してMgSO4で乾燥(drying)した。その結果、4.902g(10.12mmol、97.5%収率(Yield))のオイルを得た。NMR基準純度(wt%)=90.99%(不純物THF)Mw=440.752。
【0140】
2-2メタロセン化合物の製造
オーブンに乾燥した250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)にリガンドを入れてMTBE 70mlに溶かした後、2.1当量のnBuLi溶液(solution)(21mmol、8.5ml)を加えて翌日までリチウム化(lithiation)させた。グローブボックス(Glove box)内で1当量のZrCl4(THF)2を取って250mLのシュレンクフラスコ(schlenk flask)に入れて、エーテル(Ether)を入れた懸濁液(suspension)を用意した。上記2つのフラスコいずれも-20℃まで冷却させた後、リガンドアニオン(ligand anion)を徐々にZr懸濁液(suspension)に加えた。注入が終わった後、反応混合物は徐々に常温まで上げた。これを一日間攪拌した後、混合物中のMTBEを直ちにシュレンクフィルター(schlenk filter)でアルゴン下でろ過してろ液(Filtrate)を捨て、黄色固体(solid)のフィルターケーキ(Filtercake)を取った。このフィルターケーキ(filtercake)からLiClを除去するためにDCMに溶かした後、ろ過後、減圧して溶媒を除去して1.079gの触媒前駆体を確保した。NMR基準純度(wt%)=100%、Mw=600.85、収率(Yield) 17.7%。
【0141】
1H-NMR(C6D6 500MHz):7.947(2H、d)、7.406(2H、d)、7.389(2H、d)、7.253(1H、s)、6.899(1H、dd)、2.051(3H、s)、1.978(3H、s)、1.893(3H、s)、1.880(3H、s)、1.792(3H、s)、1.235(9H、s)、0.779(3H、s)、0.649(3H、s)
【0142】
<担持メタロセン触媒の製造例>
製造例1
(1)担体用意
シリカ(SP952、Grace Davision社製)を600℃の温度で12時間真空を加えた状態で脱水および乾燥した。
【0143】
(2)助触媒担持担体の製造
乾燥されたシリカ20gをガラス反応器に入れて、トルエン溶液中に13mmolの含有量でアルミニウムが含まれているメチルアルミノキサン(MAO)溶液を加えて、40℃で1時間攪拌しながら徐々に反応させた。反応完了後、反応しないアルミニウム化合物が完全に除去されるまで十分な量のトルエンで複数回洗浄し、50℃で減圧して残っているトルエンを除去した。結果として、32gの助触媒担持担体(MAO/SiO2)を得た(担持触媒中のAlの含有量=17重量%)。
【0144】
(3)担持触媒の製造
上記で製造した助触媒担持担体(MAO/SiO2)12gをガラス反応器に入れた後、トルエン70mLを加えて攪拌した。前記合成例1で用意した化合物(0.20mmol)をトルエンに溶解させて製造した溶液を前記ガラス反応器に添加し、40℃で2時間攪拌しながら反応させた。その後、反応生成物に対して十分な量のトルエンで洗浄した後、真空乾燥して固体粉末として担持メタロセン触媒を得た。
【0145】
製造例2
前記合成例1の代わりに合成例2のメタロセン化合物を使用したことを除いては、製造例1と同様の方法で担持メタロセン触媒を製造した。
【0146】
製造例3
前記合成例1の代わりに合成例3のメタロセン化合物を使用したことを除いては、製造例1と同様の方法で担持メタロセン触媒を製造した。
【0147】
比較製造例1
前記合成例1の代わりに比較合成例1のメタロセン化合物を使用したことを除いては、製造例1と同様の方法で担持メタロセン触媒を製造した。
【0148】
比較製造例2
前記合成例1の代わりに比較合成例2のメタロセン化合物を使用したことを除いては、製造例1と同様の方法で担持メタロセン触媒を製造した。
【0149】
<ポリオレフィン製造の実施例>
実施例1
製造例1で製造した担持触媒(7mg)をドライボックスで定量して30mLのガラス瓶に入れた後、ゴム隔膜で密封し、ドライボックスから取り出して注入する触媒を用意した。重合は機械式撹拌機が装着された温度調節が可能であり、高圧で利用可能な0.6LのParr高圧反応器で行った。
【0150】
前記反応器にヘキサン0.26kgとTIBAL(1M in Hexane)0.5gを反応器に投入した。前記製造例1の担持触媒(7mg)をヘキサンスラリー(hexane slurry)で反応器に投入し、500rpmで攪拌しながら温度を80℃に昇温した。内部温度が80℃に到達すると内部圧力を除去し、1-ヘキセン(1-hexene) 10mLを投入した。エチレン圧力30bar下で500rpmで攪拌しながら1時間反応させた。反応終了後、得られたポリマーはフィルターを通してヘキサンを1次除去した後、80℃のオーブンで3時間乾燥してエチレン-1-ヘキセン共重合体を得た。
【0151】
実施例2
前記製造例1の代わりに製造例2のメタロセン担持触媒を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でエチレン-1-ヘキセン共重合体を製造した。
【0152】
実施例3
前記製造例1の代わりに製造例3のメタロセン担持触媒を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でエチレン-1-ヘキセン共重合体を製造した。
【0153】
比較例1
前記製造例1の代わりに比較製造例1のメタロセン担持触媒を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でエチレン-1-ヘキセン共重合体を製造した。
【0154】
比較例2
前記製造例1の代わりに比較製造例2のメタロセン担持触媒を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でエチレン-1-ヘキセン共重合体を製造した。
【0155】
<実験例>
実施例および比較例で製造されたポリオレフィンに対し、下記のように物性を測定してその結果を下記表1に示す。
【0156】
(1)SCB(短鎖分岐、short chain branch):1H NMRによりポリオレフィンに導入された炭素数6以下の側鎖の種類および個数(1000個炭素当たり)を分析した。この時、重合体試料を高温で1,1,2,2-テトラクロロエタン(1,1,2,2-tetrachloroethane)-d2溶媒に溶かした後、120℃で分析し、Bruker AVANCEIII 500 MHz NMR/BBO Prodigy Cryo probeを用いた。
【0157】
Bruker AVANCEIII 500 MHz NMR/BBO Prodigy Cryo probe:1H NMR(120℃)、D-solvent:TCE-d2。
【0158】
(2)ASL(Average Ethylene Sequence Length)
示差走査熱量装置(装置名:DSC8000、製造会社:PerkinElmer社)を用いてポリオレフィンを初期に160℃まで加熱した後、30分間維持して試料の測定前の熱履歴をすべて除去した。
【0159】
160℃から122℃にまで温度を下げた後、20分間維持して30℃まで温度を下げて1分間維持した後、再び温度を増加させた。次に、最初の加熱温度122℃より5℃低い温度(117℃)まで加熱した後、20分間維持し、30℃まで温度を下げて1分間維持した後、再び温度を増加させた。このような方式でn+1番目の加熱温度はn番目の加熱温度より5℃低い温度にし、維持時間および冷却温度は同様にして漸次加熱温度を下げながら52℃まで進行した。この時、温度の上昇速度と下降速度は、それぞれ20℃/minに調節した。最後に、30℃から160℃にまで10℃/minの昇温速度で温度を上げて熱量変化を観察してSSA thermogramを測定した。
【0160】
(3)結晶構造分布指数(BCDI)
(2)で求めた各長さ別ASL(<8nm、>30nm、8~30nm)を下記式1に代入して結晶構造分布指数(BCDI)を計算した:
【0161】
【0162】
式1中、
ASL fi(<8nm)は、SSA(Successive Self-nucleation and Annealing)分析時、長さが8nm未満であるASL(Average Ethylene Sequence Length)を有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(>30nm)は、SSA分析時、長さが30nm超過のASLを有する鎖の比率(%)であり、
ASL fi(8~30nm)は、SSA分析時、長さが8~30nmであるASLを有する鎖の比率(%)である。
【0163】
(4)重量平均分子量(Mw、g/mol)
Agilent mixed Bカラムを用いてWaters社製のalliance2695装置を用い、評価温度は40℃であり、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)を溶媒として使用し、流速は1.0mL/minの速度で、サンプルは1mg/1mLの濃度に調製した後、100ulの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線を用いてMwの値を求めた。ポリスチレン標準品の分子量は2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0164】
(5)溶融温度(Tm、℃)
PerKinElmer社で製造した示差走査熱量装置(DSC:Differential Scanning Calorimeter6000)を用いて得た。すなわち、温度を200℃まで増加させた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで下げ、再び温度を増加させてDSC曲線の頂点を融点とした。この時、温度の上昇と下降の速度は10℃/minであり、融点は2番目の温度が上昇する間に得られる。
【0165】
(6)密度(density):ASTM D1505規格により測定した。
本発明の実施例および比較例によるポリオレフィンのSCB含有量とBCDIとの関係を示すグラフを
図1に示す。
【0166】
また、本発明の実施例および比較例によるポリオレフィンのSCB含有量と溶融温度(Tm)との関係を示すグラフを
図2に示す。
【0167】
【0168】
上記表1、
図1および
図2を参照すると、本発明の実施例1~実施例3のポリオレフィンは類似SCB含有量を有する比較例1~2に比べて、低い密度と溶融温度を示すことが分かった。
【国際調査報告】