(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】耐火真空断熱グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20221215BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221215BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C03C27/06 101F
C03C27/06 101Z
C03C27/12 D
C03C27/12 R
E06B3/663 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522832
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020077749
(87)【国際公開番号】W WO2021073904
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】518428303
【氏名又は名称】エージーシー ビードロス ド ブラジル エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】マティ, バートランド
(72)【発明者】
【氏名】レスコ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフィル, ジュリアン
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA01
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC04
2E016EA01
4G061AA02
4G061AA28
4G061BA01
4G061CB02
4G061CB03
4G061CB06
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD24
(57)【要約】
本発明は、i.少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットであって、a.内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有する第1ガラスペインGP1並びに内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有する第2ガラスペインGP2、b.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に所定の距離を維持する、第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に位置決めされた一組の離散ピラー(4)、c.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接合封止体(5)、d.第1ガラスペインと第2ガラスペインによって画定され、且つ密封接合封止体によって閉鎖された内部容積Vであって、0.1mbar未満の絶対圧力の真空が存在し、内側ペイン面は、内部容積Vに対向する、内部容積Vを含む少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットと、ii.少なくとも1つの膨張ユニット(60)であって、-膨張材料の層(61)、-膨張ユニットガラスペインGPiu、-膨張ユニットガラスペインの周囲にわたって延在する膨張ユニット周辺スペーサ(62)を含む少なくとも1つの膨張ユニット(60)とを含む耐火真空断熱グレージング組立体(10)であって、膨張ユニットガラスペイン及び膨張ユニット周辺スペーサは、膨張材料の層を取り囲む膨張ユニット容積Viを画定し、膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサは、第1及び第2ガラスペインの外側ペイン面(12、22)の1つに対向している、耐火真空断熱グレージング組立体(10)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットであって、
a.内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有する第1ガラスペインGP1並びに内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有する第2ガラスペインGP2、
b.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に所定の距離を維持する、第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に位置決めされた一組の離散ピラー(4)、
c.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接合封止体(5)、
d.第1ガラスペインと第2ガラスペインによって画定され、且つ密封接合封止体によって閉鎖された内部容積Vであって、0.1mbar未満の絶対圧力の真空が存在し、内側ペイン面は、内部容積Vに対向する、内部容積V
を含む少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットと、
ii.少なくとも1つの膨張ユニット(60)であって、
- 膨張材料の層(61)、
- 膨張ユニットガラスペインGPiu、
- 膨張ユニットガラスペインの周囲にわたって延在する膨張ユニット周辺スペーサ(62)
を含む少なくとも1つの膨張ユニット(60)と
を含む耐火真空断熱グレージング組立体(10)であって、
膨張ユニットガラスペイン及び膨張ユニット周辺スペーサは、膨張材料の層を取り囲む膨張ユニット容積Viを画定し、
膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサは、第1及び第2ガラスペインの外側ペイン面(12、22)の1つに対向している、耐火真空断熱グレージング組立体(10)。
【請求項2】
膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサは、外側ペイン面(12、22)と接触する、請求項1に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項3】
膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサは、ポリマー中間層(7)によって外側ペイン面(12、22)にラミネートされた追加のガラスペインGP3によって外側ペイン面(12、22)から分離される、請求項1に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項4】
ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)などのポリアセタール、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー(COP)、イオノマー及び/又は紫外線活性化接着剤からなる群から選択される材料を含む、請求項3に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項5】
- 追加のガラスペインGP4、
- 膨張ユニットガラスペインGPiuと、追加のガラスペインGP4との間に位置決めされ、その間の距離を維持する追加の組の離散ピラー(4b)、
- 膨張ユニットガラスペインGPiuと追加のガラスペインGP4の間の距離をその周囲にわたって封止する追加の密封接合封止体(5b)、
- 膨張ユニットガラスペインGPiu及び追加のガラスペインGP4によって画定され、且つ追加の密封接合封止体(5b)によって閉鎖された追加の内部容積Vbであって、0.1mbar未満の圧力の絶対真空が存在する、追加の内部容積Vb
を更に含む、請求項2に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項6】
膨張材料の層は、
- 水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層、又は
- 有機ヒドロゲルの層、又は
- 混合物の形態で存在する有機ヒドロゲル及び水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の両方を含む層
から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項7】
膨張材料の層は、水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項8】
膨張材料の層は、層の35重量%~48重量%の含水量を有する、請求項7に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項9】
膨張材料の層は、3~8のSiO
2/M
2Oモル比率を有する、請求項7又は8に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項10】
膨張材料の層は、層の20重量%未満の割合でポリオールを更に含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項11】
膨張層は、少なくとも1種のケイ酸塩安定化剤を更に含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項12】
膨張材料の層は、2~30mmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項13】
膨張材料の層と接触するガラスペインの少なくとも1つは、熱処理又は化学強化ガラスペインであり、より好ましくは、膨張材料の層と接触する両方のガラスペインは、熱処理又は化学強化ガラスペインである、請求項1~12のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項14】
膨張材料の層は、
- 膨張材料前駆体混合物を調製するステップ、
- 膨張ユニット容積Vi内に混合物を注入するステップ、
- 膨張材料の層を形成するために混合物を硬化させるステップ
を含むプロセスによって得られる、請求項1~13のいずれか一項に記載の耐火真空断熱組立体。
【請求項15】
膨張材料の層を得るためのプロセスは、膨張材料前駆体混合物を調製するステップと膨張ユニット容積内に混合物を注入するステップとの間に部分的な脱水ステップを更に含む、請求項14に記載の耐火真空断熱組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された熱性能を有する耐火グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
耐火グレージングは、当技術分野で周知であり、且つ壁のための欧州規格EN1363-1及び1364-1又はドア及び窓のための1634-1などの規格を含む、明確に定義された仕様を満たすように設計される。これらの特性は、当然のことながら、耐火特性を目的とするが、ユーザー及び/又は製造モードの要件を満たすために更なる技術的特性を追加しなければならない。
【0003】
耐火グレージングを構築する1つの方法は、膨張材料の層によって分離されたいくつかのガラスのペインを組み立てることである。耐火グレージングの重量及び厚さは、ガラスペイン及び膨張材料の層の数を規定する必要とされる耐火性能レベルに応じて大きくなり得る。膨張材料の層は、非常に多くの場合、水和アルカリ金属ケイ酸塩から構成され、例えば国際公開第2014190144号パンフレットに記述されるものなど、有機ヒドロゲルを代わりに使用することができる。これらの材料は、熱の影響下において、赤外放射に対して不透明な発泡体を形成することによって膨張し、この発泡体は、熱の影響下でガラス壁がフラグメント化される場合でもガラス壁を定位置に維持する。
【0004】
耐火グレージングの製造における水和アルカリ金属ケイ酸塩の使用は、主に2つの個別のモードに従って実行される。
【0005】
「乾燥プロセス」として知られる第1モードでは、ガラスペイン上にこれらのケイ酸塩の溶液を塗布し、且つ固体層が得られる時点までより長い又は短い期間の乾燥ステップを実行することにより、膨張材料の層を取得する。望ましい耐火性能を有する製品を得るために、いくつかの組立体層/ガラスペインを積み重ねることができる。形成されたケイ酸塩の最後の層は、最後のガラスペインによってカバーされる。
【0006】
「キャストインプロセス」として知られる第2モードは、ケイ酸塩溶液が、「硬化剤」、「架橋剤」として適格である製品の追加又は更に別の方法によって改質される製品に関連する。これらの適格性は、一般的には、ケイ酸塩溶液のゲル化を促進する製品を示す。これらは、ケイ酸塩溶液へのその追加後、ケイ酸塩溶液が、休止状態で残されたとき、乾燥ステップの実行を必要とすることなく、より短い時間で自発的に硬化するように慎重に選択される。
【0007】
これらの製品の場合、ゲルの形成前に、溶液及びその最終的な添加剤は、2つのガラスペイン間の空洞内に注入される。これらのガラスペインは、これらを互いに所定の距離に維持し、且つ溶液が注入された密閉空洞を2つのガラスペインで画定するスペーサにより、その周辺部で結合される。この第2モードによって得られる耐火グレージングは、膨張層を取り囲む周辺スペーサを含み、その結果、膨張材料の層は、ガラスペインのエッジまで延在しない。
【0008】
この第2モードによって得られる製品は、一般に、より大きい含水量を有するより厚い膨張層を特徴とする。この結果、1つの欠点は、得られる製品の低い及び高い温度に対する乏しい耐性である。-10℃以下などの低温では、通常の耐火材料(水和アルカリ金属ケイ酸塩)は、凍結し、これによりその光学品質の不可逆的な損傷(泡、亀裂)をもたらす。40℃以上などの高温では、その含水量が大きい膨張層の安定性は、劣化する傾向を有し、膨張層は、自らの重量下でクリープを起こす傾向を有し、これにより耐火グレージングを変形させる。更に、このような高温では、エージング時に膨張層の光学特性が変化し得る。従って、このような耐火グレージングの使用は、屋外用途では制限される。
【0009】
低温から膨張材料を保護するために、通常、エチレングリコール又はグリセリンなどの不凍材料が膨張材料に追加される。しかし、その存在が火災性能を大幅に変更することから、その濃度を限定しなければならない。この限定の結果として、キャストインプレースモードによって得られる耐火グレージングの使用は、低温環境では制限される。
【0010】
近年の気候変動に応答するために、現在の市場の傾向は、建物の熱性能を増大させるというものであり、グレージングは、その重要な一部である。従って、改善された熱性能を示す耐火グレージングを設計する必要性が存在する。
【0011】
熱性能を増大させるための1つの解決策は、二重グレージングシステム内に耐火グレージングを含めることである。しかし、このようなシステムは、いくつかの技術的課題を提起する。
【0012】
二重グレージング内の耐火グレージングの設計での第1の課題は、その結果、グレージングの合計厚さ及び重量が更に増大することである。従って、これらのグレージングは、取扱い及び枠加工が更に困難になる。
【0013】
更に、耐火二重グレージングの設計は、その定義上、二重グレージング周辺スペーサの使用を必要とする。しかし、一般的な二重グレージング周辺スペーサは、耐火用途では好ましくない。耐火用途では、ステンレス鋼スペーサなど、火災状態に対して適切に抵抗する特定のスペーサが必要とされる。一般的な二重グレージング周辺スペーサは、乏しい熱封止のみを示し、従って窓の全体的な熱特性を大幅に低減することになる。
【0014】
二重グレージング内の耐火グレージングの設計は、必要な熱保護を膨張材料の層に提供しないことが判明している。
【0015】
一方では、真空断熱グレージングは、高断熱窓の市場における最近の技術である。真空断熱グレージングユニットは、その高性能の断熱に起因して推奨されている。真空断熱グレージングユニットは、通常、真空が生成された内部空間によって分離された少なくとも2つのガラスペインから構成される。一般に、高性能の断熱(熱貫流率UがU<1.2W/m2Kである)を実現するために、グレージングユニットの内側の絶対圧力は、通常、0.1mbar以下であり、一般的に2つのガラスペインの少なくとも1つが低放射率層によってカバーされる。グレージングユニットの内側でこのような圧力を得るために、密封接合封止体が2つのガラスペインの周辺部に配置され、且つ真空がポンプによってグレージングユニットの内側で生成される。グレージングユニットが(グレージングユニットの内部と外部との間の圧力差に起因して)大気圧下で陥没することを防止するために、離散スペーサが2つのガラスペイン間に配置される。
【0016】
しかし、このような技術のいずれも、低温及び高温におけるその熱感受性の回避並びに二重グレージングの技術的課題の回避を可能にする極めて優れた熱性能を示す耐火グレージングを提供するという技術的問題に対処していない。
【発明の概要】
【0017】
この背景に照らして、本発明者らは、本明細書により、
i.少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットであって、
a.内側ペイン面及び外側ペイン面を有する第1ガラスペインGP1並びに内側ペイン面及び外側ペイン面を有する第2ガラスペインGP2、
b.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に所定の距離を維持する、第1ガラスペインと第2ガラスペインの間に位置決めされた一組の離散ピラー、
c.第1ガラスペインと第2ガラスペインの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接合封止体、
d.第1ガラスペインと第2ガラスペインによって画定され、且つ密封接合封止体によって閉鎖された内部容積Vであって、0.1mbar未満の絶対圧力の真空が存在し、内側ペイン面は、内部容積Vに対向する、内部容積V
を含む少なくとも1つの真空断熱グレージングユニットと、
ii.少なくとも1つの膨張ユニットであって、
- 膨張材料の層、
- 膨張ユニットガラスペインGPiu、
- 膨張ユニットガラスペインの周囲にわたって延在する膨張ユニット周辺スペーサ
を含む少なくとも1つの膨張ユニットと
を含む耐火真空断熱グレージング組立体であって、
膨張ユニットガラスペイン及び膨張ユニット周辺スペーサは、膨張材料の層を取り囲む膨張ユニット容積Viを画定し、
膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサは、第1及び第2ガラスペインの外側ペイン面の1つに対向している、耐火真空断熱グレージング組立体を提供する。
【0018】
本発明は、膨張材料の層が、
- 膨張材料前駆体混合物を調製するステップ、
- 任意選択により、混合物を部分的に脱水するステップ、
- 膨張ユニット容積Vi内に混合物を注入するステップ、
- 膨張材料の層を形成するために混合物を硬化させるステップ
を含むプロセスによって得られる、耐火真空断熱組立体に更に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】1つの真空断熱グレージングユニット及び1つの膨張ユニットを含む、本発明の一実施形態による耐火真空断熱組立体の断面図を示す。
【
図2】1つの真空断熱グレージングユニット、真空断熱グレージングユニットにラミネートされた追加のガラスペイン及び1つの膨張ユニットを含む、本発明の一実施形態による耐火真空断熱組立体の断面図を示す。
【
図3】1つの真空断熱グレージングユニット及び2つの膨張ユニットを含む、本発明の更なる一実施形態による耐火真空断熱組立体の断面図を示す。
【
図4】1つの膨張ユニット及びポリマー中間層によってラミネートされた追加のガラスペインによって保護された1つの真空断熱グレージングユニットを含む、本発明の更なる一実施形態による耐火真空断熱組立体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、「耐火真空断熱グレージング組立体」に関する。このような物品は、以下で同様に全体として「FR-VIG」と呼称される。これは、以下で同様に「VIG」と呼称される真空断熱グレージングユニットと、以下で同様に「IU」と呼称される1つ又は複数の膨張ユニットとを含む。
【0021】
本発明の目的は、その重量及び厚さを極小化し、且つ低温及び高温に対するその耐性及びその持続可能性を増大させつつ、改善された熱性能を示す耐火グレージングを提供することである。
【0022】
本発明のFR-VIGは、驚くべきことに、二重グレージングシステムの技術的欠点を回避しつつ、優れた熱性能を示すことが判明した。本発明のFR-VIGは、金属スペーサが使用される場合、乏しい性能のみ有する標準的な二重グレージング周辺スペーサに起因した熱性能の損失を回避する。更に、本発明のFR-VIGは、-10℃未満の低温及び更に40℃超の高温から膨張材料の層を保護する。実際に、膨張材料の層は、低温及び更に高温の影響を受けやすい。高温では、硬化タイプのものでも、その含水量が大きい膨張層の安定性は、劣化する傾向を有し、膨張材料の層は、自らの重量下でクリープを起こす傾向を有し、これにより耐火グレージングを変形させる。これは、特に、水和アルカリ金属ケイ酸塩が使用される場合に問題となる。更に、このような高温では、エージング時に膨張層の光学特性が変化し得る。真空断熱グレージングの使用は、驚くべきことに、低温及び更に高温からの保護を提供し、これにより膨張材料の層のクリープの発生を回避し、且つこれにより改善された経時的な光学的安定性を提供することが判明した。従って、本発明のFR-VIGは、耐火グレージングの寿命の大幅な増大を可能にするだけでなく、中間温度プロファイルの気候条件の国々に限定されることなく、このようなFR-VIGの地理的使用を拡大する。
【0023】
更に、FR-VIGの大きい熱低減に起因して、その重量の大きい低減及びより容易な取扱い、フレーム寸法の大きい低減ももたらされ、その結果、これらのすべては、大きい費用節約を提供する。更に、非常に高度な耐火性能及び/又は高度な熱性能を伴ういくつかの特定の用途では、適合するフレームが現時点で存在しない。従って、本発明は、このような特定のFR-VIGに対する技術的解決策を提供する。更に、対応するフレームの溝の幅を同様に低減することが可能であり、従って、その結果、火災の危険に曝露された際のグレージング組立体の完全性の維持及び保持を改善する。
【0024】
本発明に適したガラスペインは、フロートガラスペイン又は代わりに鋳造若しくは延伸ガラスペインなどの任意のタイプであり得、且つフロートクリア、エクストラクリア若しくは着色ガラス、(部分的に)酸エッチング加工若しくは(部分的に)サンドブラスト加工されたガラス又はこれらの組合せなど、すべてのガラス技術の中で選択することができる。ガラスは、ソーダ-石灰-ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリフリーガラス、ボロ-ケイ酸塩ガラス及び同様のものであり得る。これは、クリア、エクストラクリア/低鉄又は着色ガラスシートであり得る。好ましくは、本発明のガラスペインは、ソーダ-石灰ガラス又はアルミノケイ酸塩ガラスから製造される。ガラスペインの非限定的な例は、Planibel(登録商標)Clear、Linea Azzura(登録商標)、Dragontrail(登録商標)、Tirex(登録商標)、Falcon(登録商標)、Clearvision(登録商標)、Clearlite(登録商標)である。
【0025】
ガラスペインは、少なくとも部分的に被覆することができる。「部分的に被覆される」は、その面の少なくとも1つの少なくとも一部分が、例えば、低放射率被覆、太陽光制御被覆、エナメル又はこれらの任意の組合せなど、必要に応じた任意の適切な被覆によって被覆され得ることを意味する。被覆が膨張材料の層と接触する特定の場合、適切な被覆は、例えば、水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の強力なアルカリ特性に対する適合性を有するものなど、膨張材料の層との適合性を有するものである。
【0026】
熱処理又は化学強化ガラスペインを使用することができる。熱処理ガラスペインは、熱強化(EN1863-1:2011によるもの)、熱強靭化(EN12150-2:2015によるもの)又は熱強靭化及び熱浸漬(EN14179-2:2005)など、当業者に既知の任意の熱処理によって処理することができる。これらの規格に従って熱処理されたガラスペインは、安全ガラスとして適切である。化学的な強化は、薄いガラスペインの場合に特に適している。
【0027】
好ましくは、膨張の層と接触するガラスペインの少なくとも1つは、熱処理ガラスペインであり、より好ましくは、膨張材料の層と接触する両方のガラスペインは、熱処理ガラスペインである。
【0028】
耐火真空断熱グレージング組立体は、VIGを含み、VIGは、通常、第1ガラスペインGP1及び第2ガラスペインGP2を含み、これらは、一組の離散ピラー、密封接合封止体及び内部容積によって離間される。一組の離散ピラーは、前記ペインを特定の距離だけ離間して保持する。この距離は、通常、50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~150μmの範囲である。前記ガラスペイン間に0.1mbar未満の絶対圧力の真空が存在する内部容積Vは、前記内部空間の周りでガラスペインの周辺部に配置された密封接合封止体によって閉鎖される。
【0029】
第1及び第2ガラスペインは、それぞれ内側ペイン面及び外側ペイン面を有する。それぞれの内側ペイン面は、内部容積Vに対向する。一実施形態では、第1ガラスペインの厚さZ1は、第2ガラスペインの厚さZ2と同一である(Z1=Z2)。別の実施形態では、第1ガラスペインの厚さZ1は、第2ガラスペインの厚さZ2超又は未満である(Z1>Z2又はZ1<Z2)。VIGユニットの第1及び/又は第2ガラスペインの厚さZ1、Z2は、通常、2mm以上(Z1、Z2≧2mm)、好ましくは3mm以上(Z1、Z2≧3mm)、より好ましくは4mm以上(Z1、Z2≧4mm)、より好ましくは6mm以上(Z1、Z2≧6mm)である。通常、第1及び第2ガラスペインの厚さは、12mm、好ましくは10mm、より好ましくは8mm以下となる。
【0030】
本発明のVIGは、内部容積Vを維持するように第1ガラスペインGP1と第2ガラスペインGP2との間に挟持された複数の離散ピラーを含む。離散ピラーは、GP1とGP2との間に位置決めされ、これによりその間に所定の距離を維持し、且つ10mm~100mmに含まれるピッチλを有するアレイを形成する(10mm≦λ≦100mm)。ピッチは、離散ピラー間の間隔を意味する。好適な一実施形態では、ピッチは、20mm~80mm(20mm≦λ≦80mm)、より好ましくは20mm~50mm(20mm≦λ≦50mm)に含まれる。アレイは、通常、正三角形、正方形、六角形の方式、好ましくは正方形の方式に基づく規則的なアレイである。
【0031】
離散ピラーは、円筒形、球状、糸状、砂時計、C形状、十字形、プリズム形などの異なる形状を有し得る。小さいピラーを使用することが好ましく、即ち5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下の、その外周によって画定されたガラスペインに対する接触表面を一般に有するピラーを使用することが好ましい。これらの値は、美的でありつつ、良好な機械的抵抗力を提供し得る。離散ピラーは、通常、燃焼及び焼成などの高温プロセスに耐える能力を有し、且つガラスペインが製造された後にガスを放出しにくい、ガラスペインの表面から圧力された圧力に抗して耐えることができる強度を有する材料から製造される。このような材料は、好ましくは、硬質金属材料、石英ガラス又はセラミックガラス、特に鉄、タングステン、ニッケル、クローム、チタニウム、モリブデン、炭素鋼、クローム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケル-クローム鋼、マンガン鋼、クロミウム-マンガン鋼、クロミウム-モリブデン鋼、シリコン鋼、ニクローム、ジュラルミン若しくは同様のものなどの金属材料又はコランダム、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素若しくは同様のものなどのセラミック材料である。
【0032】
VIGのガラスペインGP1、GP2間に境界が定められた内部容積Vは、前記内部容積の周りでガラスの周辺部に配置された密封接合封止体によって閉鎖される。前記密封接合封止体は、不透過性を有し、且つ硬質である。「不透過性」という用語は、本明細書では、空気又は大気中に存在する任意の他のガスに対する不透過性を有することを意味するものと理解されたい。
【0033】
様々な密封接合封止体技術が存在する。第1のタイプの封止体(最も広範に使用されるもの)は、溶融点がグレージングユニットのガラスペインのガラスの溶融点未満である、はんだガラスに基づく封止体である。このタイプの封止体の使用は、はんだガラスを実装するために必要とされる熱サイクルによって劣化しないもの、即ち場合により250℃の高い温度に耐えることができるものに低E層の選択肢を限定する。
【0034】
第2のタイプの封止は、例えば、ソフトすず合金はんだなどのはんだ付け可能な材料の層によって少なくとも部分的にカバーされたタイ下層によってグレージングユニットの周辺部にはんだ付けされた、小さい厚さ(<500μm)の金属ストリップなどの金属封止体を含む。第1タイプの封止に対するこの第2タイプの封止の1つの大きい利点は、これが、2つのガラスペイン間に生成される膨張差を部分的に吸収するように部分的に変形し得ることである。ガラスペイン上に様々なタイプのタイ下層が存在する。
【0035】
特許出願国際公開第2011/061208A1号パンフレットは、真空断熱グレージングユニットのための第2のタイプの周辺不透過性封止体の例示的な一実施形態について記述している。この実施形態では、封止体は、例えば、はんだ付け可能な材料を利用して、ガラスペインの周辺部に提供された接着帯にはんだ付けされた、銅から製造された金属ストリップである。
【0036】
0.1mbar未満、好ましくは0.01mber未満の絶対圧力の真空は、GP1及びGP2及び一組の離散ピラーによって画定され、且つ本発明のVIG内で密封接合封止体によって閉鎖された内部容積V内に生成される。真空断熱グレージングユニットを通したエネルギー伝達は、真空によって大幅に低減される。グレージングユニットの内部空間内に真空を生成するために、一般的に、内部空間を外部と連通させる中空ガラスチューブがガラスペインの1つの主面上に提供される。従って、ガラスチューブの外部端部に接続されたポンプを利用して、内部空間内に存在するガスをポンプ排出することにより、部分的な真空が内部空間内に生成される。
【0037】
真空断熱グレージングユニット内で所与の真空レベルを経時的に維持するために、ゲッタをグレージングユニット内に使用することができる。具体的には、グレージングユニットを構成するガラスペインの内部表面は、ガラス中に予め吸収されたガスを経時的に放出する場合があり、これにより真空断熱グレージングペイン内の内部圧力を増大させ、且つ従って真空性能を低減する。一般に、このようなゲッタは、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、アルミニウムなどの合金から構成され、且つ薄い層(厚さが数ミクロン)の形態又は見られないようにグレージングペインのガラスペイン間に配置されたブロックの形態で堆積される(例えば、外部エナメル又は周辺不透過性封止体の一部分によって隠蔽される)。ゲッタは、その表面上に室温でパッシベーション層を形成し、従ってパッシベーション層を消失させ、且つ従ってその合金ゲッタ除去特性を活性化するために加熱しなければならない。ゲッタは、「熱活性化される」ものと表現される。
【0038】
本発明のFR-VIGは、IUガラスペインGPiu、IU周辺スペーサ及び膨張材料の層を含む少なくとも1つの膨張ユニットを含む。
【0039】
膨張材料は、100℃の温度超に加熱した場合に膨らむことになる材料を意味する。この膨張は、通常、膨張材料内の液相から気相への間質水の相遷移の結果である。前記水の関連する容積膨張は、ゲルの発泡をもたらす。この結果、ゲル層の厚さは、2~数十の範囲の倍率で増大し得る。
【0040】
GPiu及びIU周辺スペーサは、IU容積Viを画定する。Viは、Gpui及びGpiuの反対側のIU周辺スペーサの先端間に含まれる容積であることを理解されたい。換言すれば、これは、Gpiu、IU周辺スペーサ及びGPiuと接触する周辺スペーサの面とは反対側の周辺スペーサの面を含むGPiuに平行な表面間に含まれる容積である。Viは、膨張材料の層を取り囲み、膨張材料の層は、VIGのGP1又はGP2の外側ペイン面に対向している。換言すれば、膨張材料の層は、グレージングの外部に対向しない。更に、IU周辺スペーサの存在に起因して、膨張材料の層は、IUガラスペインのエッジまで延在しない。膨張材料の層を取り囲む周辺スペーサを含む膨張ユニットは、通常、キャストインプレースプロセスによって取得される。
【0041】
本発明に適した膨張材料の層は、通常、2~30mmの範囲の厚さを有する。厚さは、好ましくは、3~15mm、好ましくは3~8mmの範囲を有する。2mm未満では耐火性能が限定され、且つ30mm超では更なる厚さが防火性能の何らの大きい追加ももたらさず、むしろより大きいクリープの発生という欠点をもたらし得る。
【0042】
膨張材料の層は、水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層であり得る。代わりに、これは、例えば、国際公開第2014190444号パンフレットに記述されるものなどの有機ヒドロゲルの層であり得る。代わりに、膨張材料の層は、混合物の形態で存在する有機ヒドロゲル及び水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の両方を含む層であり得る。
【0043】
本発明の好適な一実施形態では、膨張材料の層は、同様に、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物とも呼称される、水和アルカリ金属ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物から得られた水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層である。
【0044】
水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物で使用されるアルカリケイ酸塩は、一般に、カリウム、ナトリウム及び/又はケイ酸リチウムの中で選択される。これらのケイ酸塩の混合物を様々な割合で有することができる。しかし、ケイ酸カリウムが好適である。同一のSiO2/M2O比率におけるケイ酸カリウムは、ケイ酸ナトリウムよりも大きい発泡Tgを有する。従って、これらの使用は、耐火特性に有益である。加えて、これらは、より良好な透明性を提供する。ケイ酸カリウム、特に水酸化カリウムとのコロイドシリカの反応によって合成方式で形成されたものは、ケイ酸ナトリウムの類似の挙動と比較して、含水量とは無関係に極めて透明な状態に留まる。従って、適用機会がケイ酸カリウムの場合よりも大きい。ケイ酸カリウム及びナトリウムの混合物を使用することもできる。しかし、このような混合物は、ケイ酸カリウムのみの場合に観察されるものよりも小さい発泡Tgをもたらす。ケイ酸カリウム及びナトリウムの均等割合における混合物は、場合により、個々の使用される2つのケイ酸塩よりも小さいTgをもたらす場合があり、混合物は、共晶系を形成するものと考えられる。好ましくは、ケイ酸カリウムは、すべてのケイ酸塩の少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%を表す。好ましいアルカリ金属ケイ酸塩は、アルカリケイ酸カリウム及びナトリウムの混合物、より好ましくは90重量%超のアルカリケイ酸カリウム及び10重量%未満のケイ酸ナトリウムを有する混合物である。
【0045】
膨張材料の層の含水量は、層の「耐火物」特性に影響を及ぼし、且つその火災抵抗力特性を部分的にコンディショニングする。この含水量によって減衰するこの耐火物特性を改善するために、SiO2/M2Oモル比率がより高い(即ち4超の)組成物を選択することが好ましく、ここで、Mは、アルカリ性のカリウム若しくはナトリウム又はこれらの2つの組合せである。好適な一実施形態では、膨張材料の層は、好ましくは、3~8、より好ましくは4~6、より好ましくは4.5~5.3のSiO2/M2Oモル比率を有する水和アルカリ金属ケイ酸塩に基づく。
【0046】
ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物を調製するために、コロイドシリカ及びアルカリ性ヒドロキシの懸濁液から開始することが好ましい。この懸濁液は、溶液の形態を有するか、又は可能な限り混合物の含水量を限定するために少なくとも部分的に固体ペレットの形態を有する。
【0047】
シリカ懸濁液が、通常、シリカの50重量%以下である場合、アルカリ性ヒドロキシとのこれらの懸濁液の反応によって得られる組成物は、産業用ケイ酸塩のものよりも大幅に小さい含水量を有し得、従ってSiO2/M2Oの比率が大幅に大きい。しかし、経済的理由から、少なくとも部分的に産業用ケイ酸塩を使用することが好ましい場合、過剰な水の量を除去する必要性を伴うことなく、望ましいモル比率を有する混合物を実現するために、コロイドシリカの大幅な追加により、これらを改質することが必要とされる。
【0048】
加えて、シリカ懸濁液の使用が必要とされる、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物の硬化は、少なくとも部分的に、使用されるシリカ粒子のサイズに更に依存する。一般に、特定の限度内における粒子サイズの増大は、混合物の凝結の遅延を可能にする。従って、シリカ粒子サイズを増大させることにより、更なる処理のための混合物の必要とされる粘度を維持しつつ、低減された含水量を得ることができる。標準的な粒子サイズのシリカを有する混合物における通常の含水量は、膨張材料前駆体混合物の44重量%~55重量%である。増大した寸法の粒子を有するシリカを含む混合物は、必要なレオロジー特性を保持しつつ、最低で30重量%の大幅に小さい含水量を実現することができる。
【0049】
明らかに、粒子サイズの増大が限定され、なぜなら、特定の寸法を超えた場合、混合物は、もはや必要とされる光学特性、特に透明性を示さなくなるからである。シリカ粒子の過剰に大きい寸法は、光の拡散と、ヘイズの形成とをもたらす。実際に、ケイ酸塩に基づく膨張材料混合物の形成のために使用されるシリカ粒子は、40nm以上、好ましくは50nm以上の平均直径を有する。これらの粒子は、有利には、150nm以下、好ましくは130nm以下の平均寸法も有する。特に好ましい平均直径は、60nm~120nmである。
【0050】
通常、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物は、任意の更なる任意選択の脱水ステップ前に44%~55%の含水量を有する。しかし、このより豊富な水の存在は、グレージングの結束性の欠落をもたらし得る。グレージングの平面で剪断力に曝露されると、ガラスペインは、通常の温度における場合でも互いに圧接して移動する可能性が高い。更に、大きい含水量は、膨張ユニットの完全性にも有害で非常に不規則な「泡」を生成し得る。膨張材料の層内の大きい含水量は、例えば、これらのエッジからの漸進的乾燥に後続する経時的な変化を回避するために、エッジ保護の強化を必要とし得る。
【0051】
従って、このような混合物は、任意選択により、膨張ユニットの膨張ユニット容積内に注入される前に、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物の35重量%~48重量%、好ましくは40重量%~48重量%、より好ましくは42重量%~46重量%の含水量のレベルに到達するように、部分的脱水ステップを経ることになる。
【0052】
ケイ酸塩成分及び水に加えて、ポリオール及び特にエチレングリコール又はグリセロールなどの様々な添加剤を使用することができる。ポリオールは、膨張材料の混合物の可塑性の欠如を補償し、且つ水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層の低温に対する抵抗力を改善することを意図される。ポリオールは、一般に、膨張材料の層の20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは3重量%~8重量%の濃度で追加される。好ましいポリオールは、グリコール、特にエチレングリコール及び/又はグリセリンである。
【0053】
ケイ酸塩安定化剤などの他の添加剤を小さい割合で使用することができる。これらは、ケイ酸塩ネットワークを安定化させ、且つ火災の場合、規則的な泡の発生に有益である窒素製品(ウレア、アミンなど)又は膨張アルカリ金属ケイ酸塩組成物が接触するガラスペインの湿潤を促進する界面活性剤である。有利には、混合物は、膨張材料の層の2重量%以下の含有量でテトラ-メチルアンモニウムヒドロキシ(TMAH)を含む。
【0054】
ガラスシートに対する膨張層の接着を改善するために、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物に、例えばシランなどの接着を促進する化合物及びアミノ-シランなどの官能化されたシランを導入することが更に可能である。
【0055】
ケイ酸塩に基づく膨張材料混合物は、通常、「硬化剤又は架橋剤」の追加によって安定化される。「硬化剤又は架橋剤」は、一般に、ケイ酸塩に基づく膨張材料前駆体混合物のゲル化を促進する製品を意味する。硬化剤は、具体的には、ケイ酸塩に基づく膨張材料混合物へのその追加後に混合物が乾燥の必要性を伴うことなく、より短い時間で自発的に硬化するように選択される。乾燥ステップの不存在は、明確な利点であり、なぜなら、膨張材料の層は、明らかにより大きい含水量を保持するからである。
【0056】
調整され、且つ膨張ユニット容積内に注入されるための準備が完了している、即ち任意選択の部分的な脱水後の膨張材料前駆体混合物は、混合物の硬化後に得られた膨張材料の層の組成物と実質的に同一の組成を有する。実際に、混合物の乾燥は、膨張ユニット容積内に注入された後に実質的に発生しない。従って、膨張材料の層、通常、水和アルカリ金属ケイ酸塩の層は、好ましくは、層の35重量%~48重量%、より好ましくは40重量%~48重量%、最も好ましくは42重量%~46重量%の含水量を有する。水和アルカリ金属ケイ酸塩の層は、層の20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは3重量%~8重量%の割合でポリオールを含む。水和アルカリ金属ケイ酸塩の層は、3~8、好ましくは4~6、より好ましくは4.5~5.3のSiO2/M2Oモル比率を有する。
【0057】
膨張ユニットは、膨張ユニット周辺スペーサを含む。IU周辺スペーサは、GPiuの周囲にわたって延在し、且つそれに緊密に接着する。これは、GPiuと共に膨張材料の層を取り囲む膨張ユニット容積Viを画定する。IU周辺スペーサは、通常、膨張ユニット容積内への膨張材料前駆体混合物の注入を可能にするための開口部を含む。この開口部は、製造プロセスの最後に封止される。
【0058】
Vi内で膨張材料の層を維持するその役割において、IU周辺スペーサは、当然のことながら、適切な密封特性を提供しなければならない。膨張ユニット周辺スペーサの材料は、膨張材料前駆体混合物又は膨張材料の層との接触によって変化しないことが更に必要とされる。具体的には、これは、非常に強力に塩基性になることが判明している水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物によって改質されてはならない。膨張ユニット周辺スペーサは、経時的な膨張材料の層の潜在的なクリープの発生に起因したFR-VIGの可能な変形に抵抗するために、依然としてガラスペインに強力に接着しなければならない。
【0059】
これらの膨張ユニット周辺スペーサを形成するために様々な解決策が提案されている。これは、例えば、熱可塑性スペーサ又は押し出されたブチルゴム封止体など、本質的な密封及び接着特性を有する材料から製造されたスペーサであり得る。この解決策は、ガラスペインに対する良好な接着を可能にし、且つこれらのペインの平坦性における不規則性を補償し、これにより良好な封止を保証するという利点を提供する。これらは、すべての可能な形状に適合するという利点も提供する。このような熱可塑性スペーサ又は押し出されたブチルゴム封止体に良好なUV抵抗力を付与し、且つガラスペイン間の距離を維持するための十分な剛性を付与するために、これらは、多くの場合、カーボンブラック、ガラスパウダーなどのミネラルパウダーを含む様々なフィラーによって補強される。
【0060】
しかし、このようなスペーサの使用は、一般に、水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物との反応と、グレージングの品質に影響を及ぼす泡の可能な形成とを完全には防止しない。ケイ酸塩と接触する、改善された化学的抵抗力のためのブチルゴムの代替としてシリコーンゴムが存在する。
【0061】
このタイプの他の適切な膨張ユニット周辺スペーサは、国際公開第2009/007452号パンフレットに記述されており、この場合、スペーサは、アルカリケイ酸塩に対して抵抗力を有する剛性又は半剛性材料から製造され、ガラスペインに対向するその少なくとも一部分は、アルカリ性ケイ酸塩に対する抵抗力を有する接着剤によって被覆されたプロファイルを形成する。
【0062】
別の解決策は、金属スペーサなどのより剛性の材料から製造されたスペーサの使用である。しかし、金属スペーサは、ガラスペインのものと実質的に異なる熱膨張係数を有し、これらは、乏しい熱性能を有する。この理由から、ガラスペインのものに類似した膨張係数を有するセラミック材料から製造されたスペーサを使用することもできる。エッジに沿った透明性が望ましい場合、剛性スペーサは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド又はポリエステルにおけるものなどの透明ポリマースペーサの中から選択することができる。剛性材料から製造されたこのようなスペーサは、ガラスペインに緊密に接着するために、ブチルゴム、シリコーン又はアクリル樹脂に基づく接着剤によってカバーされる必要がある。
【0063】
膨張ユニット容積内で膨張材料の層を維持する役割に加えて、膨張ユニット周辺スペーサは、特性、特に光学特性を変更し得る外部の影響からも膨張材料の層を保護しなければならない。ケイ酸塩コンポーネントは、外側雰囲気からの水の可能な伝達の影響を受けやすい。ケイ酸塩の含水量の局所的変更は、グレージングの周辺におけるヘイズの出現をもたらし得る。この理由のため、ガラスペインに良好に接着し、且つIU周辺スペーサの他の材料と適合性を有するポリウレタン、シリコーン又はポリスルフィド材料など、特定の水蒸気の通過を防止する材料によってグレージングのエッジをカバーすることが習慣的である。好ましくは、ポリスルフィドが選択される。
【0064】
本発明は、具体的には、以下の実施形態を含む。
【0065】
本発明の第1の特定の実施形態では、本発明は、単一の膨張ユニットを含むFR-VIGに関し、膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、GP1又はGP2の外側ペイン面(12、22)に対向しており、且つそれらと接触する。従って、この実施形態では、膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、GP1の外側ペイン面又はGP2の外側ペイン面と接触する。
【0066】
本発明で使用される「接触する」という用語は、ガラスペインの一部分であると本明細書で見なされる(低放射率、太陽光制御被覆、エナメルなどの)上述のものなどの被覆の存在又はガラスペインの表面上の接着促進剤の存在を排除しない。
【0067】
図1は、FR-VIG(10)がVIG及び1つのIU(60)を含む、この実施形態の図を提供する。VIGは、内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有するGP1と、内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有するGP2とを含む。GP2の内側ペイン面(21)には、被覆(8)が提供される。VIGは、GP1及びGP2と、GP1及びGP2間の距離をその周囲にわたって封止する密封接合封止体(5)との間の距離を維持する、GP1及びGP2間に位置決めされた一組の離散ピラー(4)を更に含む。内部容積Vは、GP1及びGP2によって画定され、且つ密封接合封止体によって閉鎖される。内側ペイン面(11、21)は、内部容積Vに対向する。膨張ユニット(60)は、一方の側でGP2の外側ペイン面(22)と、且つ他方の側で膨張ユニットガラスペイン(GPiu)と接触する膨張材料(61)の層を含む。膨張材料の層(61)は、周辺スペーサ(62)及びGPiuによって画定されたViによって取り囲まれる。
【0068】
この実施形態の一変形形態では、加えて、FR-VIGは、別の膨張ユニットを含み、膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、GP1又はGP2の外側ペイン面の他方に対向しており、且つそれと接触する。この特定の場合、GP1及びGP2の外側ペイン面のそれぞれは、膨張層及び膨張ユニット周辺スペーサと接触する。換言すれば、FR-VIGは、VIGのそれぞれの側に膨張ユニットを含む。
【0069】
本発明の第2の特定の実施形態では、膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、ポリマー中間層によって前記外側ペイン面にラミネートされた追加のガラスペインGP3によって第1GP1又は第2GP2ガラスペインの外側ペイン面(12、22)から分離される。膨張材料の層は、依然としてGP1又はGP2の外側ペイン面に対向しているが、以前の実施形態とは逆に、膨張材料の層は、ここでは、ポリマー中間層及びGP3によってGP1又はGP2の外側ペイン面から分離される。
【0070】
この構造は、任意選択により、個々のコンポーネントが処理される場所と同一の又は異なる場所において、既存のVIGコンポーネントを2つのガラスシート(ここではGPiu及びGP3)間に膨張材料を含む既存の耐火グレージングに結合することを可能にする。
【0071】
このような構造の利点は、EN12600(安全グレージングのための欧州規格)によるグレージングの機械的補強による、より高いクラスの安全グレージングへの到達を含む。更なる利点は、反りの場合におけるコンポーネント間の機械的応力の改善された吸収である。
【0072】
この実施形態で使用されるポリマー中間層は、通常、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)などのポリアセタール、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー(COP)、イオノマー及び/又は紫外線活性接着剤並びにガラスラミネートの製造の技術分野で既知の他のものからなる群から選択される材料を含む。これらの材料の任意の適合性を有する組合せを使用するブレンドされた材料も同様に適し得る。好ましくは、ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル及び/又はポリビニルブチラールからなる群から選択される材料を含む。より好ましくは、ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニルなど、より低い圧力で処理される能力を有する材料を含む。
【0073】
ポリマー中間層は、「接合中間層」として機能する。なぜなら、ポリマー中間層及びガラスペインは、ガラスペインとポリマー中間層との間の接着を結果的にもたらす接合を形成するからである。
【0074】
本発明で使用されるポリマー中間層は、透明又は半透明ポリマー中間層であり得る。しかし、装飾用途の場合、ポリマー中間層は、着色又はパターン化することができる。
【0075】
ポリマー中間層のための通常の厚さは、0.15mm~3.5mm、好ましくは0.30mm~1.75mm、より好ましくは0.5mm~1.75mmである。通常の市販のポリマーフィルムは、0.38mm及び0.76mm、1.52mm、2.28mm及び3.04mmのポリビニルブチラール(PVB)層である。望ましい厚さを実現するために、これらのフィルムの1つ又は複数を使用することができる。
【0076】
例えば、EastmanのSaflex(登録商標)音響PVB中間層又はKurarayのTrosifol(登録商標)音響PVB層などの特定のPVBなど、特定の音響性能を有するポリマー中間層を使用することより、補強された防音を提供することができる。
【0077】
ポリマー中間層を適切に選択することにより、膨張材料のUV保護を提供することもできる。
【0078】
いくつかのポリマー中間層がFR-VIG内に存在する場合、これらは、同一の又は異なる材料から製造することができる。実際的な理由から、これらは、好ましくは、同一の材料から製造される。
【0079】
図2は、
図1を参照して既に記述されたように、FR-VIG(10)がVIG、1つのIU(60)を含む、この実施形態の図を提供するが、ここでは、被覆(8)がGP1の内側ペイン面(11)上に提供される。FR-VIGは、追加のガラスペインGP3及びポリマー中間層(7)を更に含む。ガラスペインGP3は、一方の側でVIGのGP2の外側ペイン面(22)にラミネートされ、且つ他方の側でIUの膨張材料(61)の層及びIU周辺スペーサ(62)と接触する。膨張材料(61)の層は、周辺スペーサ(62)及びGPiuによって画定されたViによって取り囲まれる。
【0080】
この第2の実施形態の一変形形態では、FR-VIGは、加えて、別の膨張ユニットを含み、膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、GP1又はGP2の外側ペイン面の他方に対向しており、且つポリマー中間層によって前記外側ペイン面にラミネートされた追加のガラスペインによってそれから分離される。換言すれば、FR-VIGは、VIGのそれぞれの側に膨張ユニット、追加のガラスペイン及びポリマー中間層を含む。
【0081】
本発明の第3の特定の実施形態は、2つの第1実施形態の組合せであり、FR-VIGのVIGは、それぞれの側で膨張ユニットによって取り囲まれる。一方の側では、GP1又はGP2の1つは、膨張材料の層及び第1膨張ユニットの周辺スペーサと接触するその外側ペイン面を有し、且つ他方の側では、GP1又はGP2の他方は、ポリマー中間層によって前記外側ペイン面にラミネートされたガラスペインによって膨張材料の層及び第2膨張ユニットの周辺スペーサから分離されたその外側ペイン面を有する。
【0082】
3つの先行するものにも適用可能である本発明の第4の特定の実施形態では、FR-VIGは、少なくとも1つの追加の膨張ユニットを含み、膨張層及び追加の膨張ユニットのIUスペーサは、先行する膨張ユニットのIUガラスペインに対向している。追加の膨張ユニットは、先行する膨張ユニットのIUガラスペインに対向しており、且つそれと接触し得るか、又はそれは、先行する膨張ユニットのIUガラスペインに対向しており、且つポリマー中間層によって前記IUガラスペインにラミネートされた追加のガラスペインによってそれから分離され得る。この実施形態におけるFR-VIGは、いくつかの追加の膨張ユニットも含み得る。FR-VIGがいくつかの膨張ユニットを含む場合、FR-VIGの防火性能は、有利には、膨張ユニットの数の増大に伴って改善するが、FR-VIGの厚さ及び重量も増大し、従って必要に応じて正しいバランスを実現しなければならない。本実施形態では、IUの数は、通常、2~6、好ましくは2~4の範囲である。
【0083】
図3は、この実施形態の図を提供し、ここで、FR-VIG(10)は、
図1を参照して既に記述されたVIG及び2つのIU(60、60b)を含む。それぞれのIU(60、60b)は、膨張材料の層(61、61b)、IU周辺スペーサ(62、62b)、IUガラスペイン(GPiu、GPiub)及び膨張ユニット容積(Vi、Vib)を含む。第1膨張ユニット(60)は、VIGに隣接して位置決めされ、従って、膨張材料の層(61)及びそのIU周辺スペーサ(62)は、GP2の外側ペイン面(22)に対向しており、且つそれと接触する。第2IU(60b)は、第1膨張ユニット(60)に隣接して位置決めされ、従って、その膨張材料の層(61b)及びそのIU周辺スペーサ(62b)も、GP2の外側ペイン面(22)に対向しているが、第1膨張ユニット(60)のGPiuと接触する。
【0084】
本発明の第5の特定の実施形態では、FR-VIGの膨張材料の層及びIU周辺スペーサは、GP1又はGP2の外側ペイン面(12、22)に対向しており、且つそれと接触し、及びFR-VIGは、
- 追加のガラスペインGP4、
- 膨張ユニットガラスペインとGP4との間に位置決めされ、その間に所定の距離を維持する追加の組の離散ピラー、
- 膨張ユニットガラスペインと追加のガラスペインGP4との間の距離をその周囲にわたって封止する追加の密封接合封止体、
- 膨張ユニットガラスペイン及び追加のガラスペインGP4によって画定され、且つ他の密封接合封止体によって閉鎖された追加の内部容積Vbであって、0.1mbar未満の圧力の絶対的真空が存在する、内部容積Vb
を更に含む。
【0085】
この実施形態では、第2VIGは、従って、GP4、IUガラスペイン、追加の組の離散ピラー、追加の密封接合封止体及び内部容積Vbを含んで形成される。IUガラスペインは、同時に膨張ユニット及び第2VIGのガラスペインである。
【0086】
この変形形態のFR-VIGは、例えば、膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサを有する2つのVIGを膨張材料の層及び膨張ユニット周辺スペーサと結合することにより取得することができる。
【0087】
FR-VIGがいくつかの膨張ユニットを含む本発明の実施形態では、膨張材料の層は、同一であるか又は異なり得る。膨張材料の異なる層の使用のすべてを網羅しないいくつかの例は、異なる組成物の水和アルカリ金属ケイ酸塩の層を有するFR-VIG、異なる組成物の有機ヒドロゲルの層を有するFR-FIG、水和アルカリ金属ケイ酸塩のいくつかの層及び有機ヒドロゲルのいくつかを有するFR-VIGである。いくつかの膨張ユニットが存在する場合、膨張材料の層は、好ましくは、そのいずれもIU周辺スペーサによって取り囲まれる。これらは、好ましくは、そのいずれも同一の又は異なる組成を有する水和アルカリ金属ケイ酸塩組成物の層である。
【0088】
FR-VIGがいくつかの膨張ユニットを含む本発明の実施形態では、すべての膨張ユニットは、好ましくは、VIGの同一のガラスペインに対向している。換言すれば、VIGは、膨張ユニット間に挟持されない。
【0089】
これは、パーティション内で開口部を閉鎖するためにFR-VIGが使用される場合に特に興味深い。このパーティションは、内部空間から外部空間を分離し、通常、パーティションは、建物の内部空間から外部雰囲気を分離する。実際に、この場合、1つ又は複数の膨張ユニットは、外部環境及び極端な温度から保護しなければならない。従って、FR-VIGは、好ましくは、膨張ユニットが内部空間に対向しており、及びVIGが外部雰囲気に対向しているように位置決めされる。同一の理由から、建物の内部空間から外部雰囲気を分離するパーティションの開口部を閉鎖するために使用される単一の膨張ユニットを含むFR-VIGも、好ましくは、膨張ユニットが内部空間に対向しており、及びVIGが外部雰囲気に対向している状態で位置決めされる。
【0090】
本発明のFR-VIGは、1つ又は複数のポリマー中間層によってラミネートされた1つ又は複数の追加のガラスペインも1つ又は両方の先端に含み得る。ポリマー中間層については、上述されている。これは、防犯及び防弾性能、デフェネストレーションからの保護などの安全性能を改善するために特に有利である。
【0091】
図4は、FR-VIG(10)が、
図1を参照して上述されるVIG及び1つのIU(60)を含む、この実施形態の図を提供する。GP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマー(7)によって追加のガラスペインGP5に更にラミネートされる。膨張ユニット(60)は、膨張材料(61)の層及びIU周辺スペーサ(62)を含み、これらの両方は、一方の側でGP2の外側ペイン面(22)と、且つ他方の側で膨張ユニットガラスペイン(GPiu)と接触する。
【0092】
本発明の好適な実施形態によれば、少なくとも1つのVIGの第1及び/又は第2ガラスペインの内側ペイン面には、熱線反射被覆又は低E被覆などの被覆が提供される。これは、例えば、
図1及び
図2の被覆(8)によって示される。
【0093】
FR-VIGの膨張ユニットの数は、通常、1~6、好ましくは1~4の範囲である。
【0094】
本発明によるFR-VIGの膨張材料の層は、通常、
- 膨張材料前駆体混合物を調製するステップ、
- 膨張ユニット容積Vi内に混合物を注入するステップ、
- 膨張材料の層を形成するために混合物を硬化させるステップ
を含むプロセスによって得られる。
【0095】
上述のように、膨張材料前駆体混合物は、水和アルカリ金属ケイ酸塩前駆体混合物又は有機ヒドロゲル前駆体混合物であり得る。このプロセスは、水和アルカリ金属ケイ酸塩前駆体混合物に特に適している。
【0096】
膨張材料前駆体混合物を調製するステップは、当業者に既知の任意の方法によって実行することができる。膨張材料前駆体混合物の組成については、上述したとおりである。前駆体は、例えば、混合タンク内に流量計を介して導入することができる。
【0097】
このプロセスは、任意選択により、混合物を調製するステップと、膨張ユニット容積内に混合物を注入するステップとの間に混合物の部分的脱水ステップを含み得る。このステップは、上述したように、膨張材料前駆体混合物中で適切な含水量に到達することを目的とする。
【0098】
任意選択の脱水後の混合物は、通常の周辺温度条件で十分に安定している。これは、ゲルの形成のリスクを伴うことなく、必要に応じて冷却により数時間又は場合により数日にわたって保存することができる。混合物の調製時に出現し得る泡を除去するために、この安定性を利用することができる。泡の除去は、例えば、単純に休止状態で混合物を放置することにより、又は超音波の使用若しくは部分的圧力下における脱ガスなどの任意の既知の技法により実行することができる。
【0099】
混合物は、膨張材料の層を後に取り囲むことになる膨張ユニット容積Vi内に注入される次のステップに位置する。IU周辺スペーサは、一方の側においてGPiu上に、且つ他方の側において組立体の別のガラスペインに緊密に接着し、これは、例えば、組立体の構成に応じて、VIGの第1ガラスペイン(GP1)若しくは第2ガラスペイン(GP2)であり得るか、又は別の膨張ユニットのIUガラスペイン若しくは追加のガラスペインの1つであり得る。
【0100】
例えば、
図1では、他方のガラスペインは、GP2である。
図2では、他方のガラスペインは、追加のガラスペインGP3である。
【0101】
2つのガラスペインを分離する通常の距離は、2~30mm、好ましくは3~15mm、より好ましくは3~8mmである。
【0102】
IU周辺スペーサは、通常、膨張ユニット容積内への膨張材料前駆体混合物の注入を可能にするための開口部を含む。必要な量が導入された後、混合物は、例えば、回転テーブルに起因して膨張ユニット容積の全体を通して分散又は拡散される。次いで、開口部が閉鎖及び封止される。
【0103】
次いで、膨張材料前駆体混合物が硬化される。硬化は、例えば、十分な硬度を有するゲルを取得し、且つ膨張材料の層を形成するように、数時間にわたって通常60~90℃のオーブン内で実行することができる。
【0104】
このプロセスでは、形成された膨張材料の層は、IU周辺スペーサによって取り囲まれ、その結果、膨張材料の層は、ガラスペインのエッジまで延在しない。
【0105】
当業者は、本発明が上述の好適な実施形態に決して限定されないことを理解するであろう。逆に、多くの変更形態及び変形形態が添付の請求項の範囲内で可能である。本発明は、本明細書で記述され、且つ請求項で記述される特徴及び好適な特徴のすべての可能な組合せに関することに更に留意されたい。
【符号の説明】
【0106】
10 耐火真空断熱グレージング組立体
11 第1ガラスペインの内側ペイン面
12 第1ガラスペインの外側ペイン面
21 第2ガラスペインの内側ペイン面
22 第2ガラスペインの外側ペイン面
GP1 第1ガラスペイン
GP2 第2ガラスペイン
GP3、GP4、GP5 追加のガラスペイン
4 離散ピラー
5 密封接合封止体
60、60b 膨張ユニット
GPiu、GPiub IUガラスペイン
62、62b IU周辺スペーサ
61、61b 膨張材料の層
7 ポリマー中間層
8 被覆
V 内部容積
Vi、Vib 膨張ユニット容積
【国際調査報告】