(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】EUVコレクタミラー
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221215BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20221215BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B5/10 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522843
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020075493
(87)【国際公開番号】W WO2021073813
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019215829.3
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】306025156
【氏名又は名称】アーエスエムエル・ネザーランズ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ASML Netherlands B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ケルコフ マルクス
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
2H249
【Fターム(参考)】
2H042DA00
2H042DB02
2H042DB08
2H042DD07
2H042DE00
2H042DE04
2H197AA06
2H197AA09
2H197AA10
2H197CA10
2H197CA12
2H197CB17
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA23
2H249AA07
2H249AA16
2H249AA55
(57)【要約】
EUVコレクタミラーが、光源領域(17)から反射面(16)に当たる使用可能なEUV光を後続のEUV光学部へ反射させる反射面(16)を有する。反射面(16)は、光源領域(17)からポンプ光回折格子構造(19)に当たるポンプ光(22)を光源領域(17)へ逆反射して戻すように設計されているポンプ光回折格子構造(19)を保持する。ポンプ光(22)は、使用可能なEUV光の波長からずれている波長を有する。このようなEUVコレクタミラーにより、一方で、レーザ放電生成プラズマ(LDPP)EUV光源のポンプ光のエネルギーと、他方で、結果として得られる使用可能なEUVエネルギーとの間で高い変換効率が可能になる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源領域(17)から反射面(16)に当たる使用可能なEUV光(3)を後続のEUV光学部(6、7)へ反射させる前記反射面(16)を有する、EUVコレクタミラー(15)であって、
前記反射面(16)が、前記光源領域(17)からポンプ光回折格子構造(19)に当たるポンプ光(22)を前記光源領域(17)へ逆反射して戻すように設計されている前記ポンプ光回折格子構造(19)を保持し、前記ポンプ光(22)が、前記使用可能なEUV光(3)の波長からずれている波長(λ
PL)を有し、
前記ポンプ光回折格子構造(19)のピッチが、前記EUVコレクタミラー(15)の反射面(16)にわたって変化する、EUVコレクタミラー。
【請求項2】
前記ポンプ光回折格子構造(19)が、約10μmの波長(λ
PL)を有するポンプ光(22)用に設計されている、請求項1に記載のEUVコレクタミラー。
【請求項3】
前記ポンプ光回折格子構造(19)が、約1μmの波長(λ
PL)を有するポンプ光(22)用に設計されている、請求項1に記載のEUVコレクタミラー。
【請求項4】
前記ポンプ光回折格子構造19の回折格子ピッチp(r)が次式に従っており、
【数1】
ここで、
p(r)は、前記反射面(16)上のそれぞれの衝突点と前記反射面(16)の対称回転軸(18)との間の距離rに依存する、ポンプ光回折格子構造(19)のピッチを表し、
λ
PLは、ポンプ光(19)の波長を表し、
θ
rは、それぞれのポンプ光線(22
r)の反射面(16)への入射角を表す
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のEUVコレクタミラー。
【請求項5】
前記ポンプ光回折格子構造(19)は、前記ポンプ光(22)に対して50%と90%との間の反射率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のEUVコレクタミラー。
【請求項6】
ポンプ光(22)を生成するポンプ光源(23)を有し、
請求項1~5のいずれか一項に記載のEUVコレクタミラー(15)を有する、光源コレクタモジュール(2)。
【請求項7】
請求項6に記載の光源コレクタモジュール(2)の一部としてのポンプ光源(23)。
【請求項8】
パルス持続期間が50ns未満であるポンプ光パルスを生成する、請求項7に記載のポンプ光源。
【請求項9】
パルス立ち上がり時間が5ns未満であるポンプ光パルスを生成する、請求項7または8に記載のポンプ光源。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載のEUVコレクタミラー(15)を含むEUV投影露光装置(1)用の照明光学部(15、6)。
【請求項11】
前記使用可能なEUV照明光(3)を前記EUVコレクタミラー(15)から、結像されるべき物体(10)が配置可能である物体平面(5)内の物体視野(4)に向けて導くための、請求項10に記載の照明光学部(15、6)と、
基板(11)が配置可能である像視野(8)に前記物体視野(4)を結像するための投影光学ユニット(7)と、
一方では結像されるべき物体(10)用の、および他方では基板(11)用のホルダ(10a、12)と
を含む投影露光装置。
【請求項12】
構造化構成要素を製作する方法であって、
レチクル(10)およびウェーハ(11)を与えるステップと、
請求項11に記載の投影露光装置を用いて、レチクル(10)上の構造をウェーハ(11)の感光層の上に投影するステップと、
微細構造および/またはナノ構造をウェーハ(11)上に製作するステップと
を含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法に従って製作された、構造化構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドイツ特許出願DE10 2019 215 829.3の内容が、参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、EUV投射露光装置に使用するEUVコレクタミラー(EUV collector mirror:EUV集光鏡)に関する。
【背景技術】
【0003】
このような集光器(collector:コレクタ)を用いた照明光学ユニットが、DE10 2013 002 064 A1および米国特許出願公開第2019/0094699号により知られている。1つのコレクタミラーが、米国特許第10,101,569B2号により知られている。別のEUVコレクタミラーの実施形態が、DE10 2019 200 698 A1により知られている。
【0004】
本発明の目的は、一方で、レーザ放電生成プラズマ(LDPP)EUV光源のポンプ光(pump light)のエネルギーと、他方で、結果として得られる使用可能なEUVエネルギーとの間でより高い変換効率が可能になるEUVコレクタミラーを開発することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1に明記された特徴を含むEUVコレクタミラー(EUV集光鏡)によって達成される。
【0006】
本発明によって、LDPP光源の光源領域(source region)から発するポンプ光を逆反射する(retroreflect:再帰反射する)ように設計された格子構造により、ポンプ光エネルギーから使用可能なEUV光エネルギーへの高い変換効率を可能にすることが実現された。逆反射ポンプ光は、使用可能なEUV光に変換するために、再び光源領域で使用される。
【0007】
特に、EUVコレクタミラーのこのような逆反射ポンプ光格子構造では、従来技術により知られているポンプ光源のプリパルス/メインパルス方式の必要性をなくすことができる。これにより、ポンプ光レーザ光源を構築することが容易になる。特に、メインパルスを使用可能なEUV光に変換する効率を高めるために、LDPP光源のターゲット、たとえば錫液滴(tin droplet:スズの小さな滴)をプレパルスによって事前成形する必要がない。これにより、一方では光源を含む光源コレクタモジュール(source collector module:光源集光モジュール、ソースコレクタモジュール)の、他方ではEUVコレクタミラーの、構築に関するコストの低減につながる。従来のプリパルス/メインパルス方式と比較して効果的に使用されるポンプ光エネルギーは、大幅に、たとえば約50%、さらには100%も増加させることができる。
【0008】
特に、球状のターゲットを、さらなる成形を特に必要とせずに、ポンプ光が当たる(impinge:衝突する、作用する、影響を与える)ように使用することができる。
【0009】
ポンプ光格子構造は、ブレーズド格子でよい。ブレーズ角は、0次または±1次のポンプ光波長の逆反射拡散に対して最適化することができる。ポンプ光格子構造のピッチ(pitch)は、ポンプ光格子構造に当たるポンプ光線の入射角条件に逆反射特性を適合させるために、EUVコレクタミラーの反射面にわたって異なる。
【0010】
EUVコレクタミラーの反射面が回転対称軸に対して回転対称である場合、ピッチは、このような対称軸までの格子構造の距離が増加するとともに増加し得る。あるいは、別の実施形態では、ピッチは、距離が増加するとともに減少し得る。別の実施形態では、ピッチと、対称軸までの回折格子構造のこのような距離との間の依存関係は、非単調(non-monotonic)であり得る。
【0011】
ポンプ光回折格子構造(pump light grating structure)は、2つ以上の異なる高さレベルを含むことができ、すなわち、2段格子として、または多段格子として実現することができる。
【0012】
請求項2および3によるポンプ光波長は、使用可能なEUV照明光を効率的に生成するのに特に適していることが実証されている。
【0013】
請求項4に記載のピッチ、たとえば格子周期は、ポンプ光波長に対する逆反射条件を満たす。このピッチは、反射面へのポンプ光の入射角度に依存する。このような入射角は、それぞれのポンプ光線が反射面に当たる点と回転対称軸(axis of rotational symmetry)との間の距離に依存する。その結果、ピッチは、ポンプ光格子構造を保持する反射面領域の、このような対称軸までの距離に依存する。対称軸までの距離が増加すると、ピッチは減少し得る。
【0014】
典型的なピッチ寸法は、0.1mmと2mmとの間の範囲内、詳細には0.2mmと1.0mmとの間の範囲内、より詳細には0.5mmと0.9mmとの間の範囲内とすることができる。
【0015】
請求項5に記載の反射率は、適切なポンプ光格子構造を使用することによって達成することができる。EUVコレクタミラーの反射面は、使用可能なEUV照明光を当然ながら主として高反射するように最適化された、高反射コーティングを保持することができる。このような反射コーティングはまた、高反射のポンプ光波長に最適化することもできる。
【0016】
請求項6に記載の光源コレクタモジュールの利点は、EUVコレクタミラーに関して上で説明したものである。
【0017】
請求項7に記載のポンプ光源についても同様である。
【0018】
請求項8に記載のパルス持続時間および/または請求項9に記載のパルス立ち上がり時間は、特に高い変換効率を示すことが実証された。
【0019】
請求項10に記載の照明光学部(illumination optics)、請求項11に記載の投射露光装置、請求項12に記載の製造方法、および請求項13に記載のマイクロおよび/またはナノ構造化構成要素の各利点は、EUVコレクタミラー、光源コレクタミラーモジュールおよびポンプ光源に関して先に論じたものである。
【0020】
特に、半導体構成要素、たとえばメモリチップが、投影露光装置を使用して製造されてよい。
【0021】
本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】EUVマイクロリソグラフィ用の投影露光装置の概略図である。
【
図2】ポンプ光源から来るポンプ光の光路を含むEUVコレクタミラーの子午断面図である。
【
図3】光源領域からポンプ光回折格子構造に当たるポンプ光をこの光源領域へ逆反射して戻すように設計されているポンプ光回折格子構造を示す、反射面の拡大図であり、逆反射ポンプ光線路が+1次回折について、また-1次回折についても示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置1は、以下でさらに詳細に説明するEUV照明光および/または結像光3用の光源モジュール2を備える。このような光源モジュール2は、光源コレクタモジュール(光源集光モジュール)とも表記される。光源モジュール2の光源はEUV光源であり、たとえば5nmと30nmとの間、特に5nmと15nmとの間の波長範囲内の光を生成する。照明光および/または結像光3は、以下では使用EUV光とも呼ばれる。
【0024】
特に、EUV光源は、使用EUV波長が13.5nmの光源であっても、使用EUV波長が6.9nmまたは7nmの光源であってもよい。その他の使用EUV波長もまた可能である。照明光3のビーム経路が
図1に非常に概略的に示されている。
【0025】
照明光学ユニット6は、照明光3を光源から物体平面5内の物体視野4へ導く役割を果たす。前記照明光学ユニットは、
図1に非常に概略的に示されている視野面鏡FFと、照明光3のビーム経路の下流に配置され、同様に非常に概略的に描かれている瞳面鏡PFとを備える。かすめ入射(grazing incidence)用の視野形成鏡6b(GI鏡、grazing incidence mirror)が、照明光学ユニットの瞳面6aに配置されている瞳面鏡PFと物体視野4との間の照明光3のビーム経路に配置される。このようなGI鏡6bは、必須ではない。
【0026】
瞳面鏡PFの瞳面(これ以上詳細に記述しない)は、転送光学ユニットの一部であり、視野面鏡FFの視野面(同様に記述しない)を、特に像を、互いに重ね合わせて物体視野4内に転送する。従来技術により知られている一実施形態が、一方では視野面鏡FFに、他方では瞳面鏡PFに使用されてもよい。例として、このような照明光学ユニットは、DE10 2009 045 096 A1により知られている。
【0027】
投影光学ユニットまたは結像光学ユニット7を使用して、物体視野4は像平面9の像視野8に所定の縮尺で結像される(imaged)。この目的のために使用できる投影光学ユニットは、たとえば、DE10 2012 202 675 A1により知られている。
【0028】
投影露光装置1、および投影光学ユニット7の様々な実施形態についての説明を容易にするために、デカルトxyz座標系が図面に示されており、この座標系から、図に示された構成要素のそれぞれの位置関係は明らかである。
図1において、x方向は、図面の平面に垂直に平面へ向かっている。y方向は
図1の左の方へ延び、z方向は
図1の上の方へ延びる。物体平面5は、xy平面に平行に延びる。
【0029】
物体視野4および像視野8は矩形である。あるいは、物体視野4および像視野8が、曲がった、または湾曲した実施形態になっている、すなわち、特に、一部がリング形であることも可能である。物体視野4および像視野8は、x/yアスペクト比が1よりも大きい。したがって、物体視野4は、x方向に長い物体視野寸法と、y方向に短い物体視野寸法とを有する。これらの物体視野寸法は、視野座標xおよびyに沿って延びている。
【0030】
従来技術により知られている例示的な実施形態のうちの1つを投影光学ユニット7に使用することができる。この場合に物体として結像されるのは、物体視野4と一致する、レチクルとも呼ばれる反射マスク10の一部分である。レチクル10は、レチクルホルダ(reticle holder:レチクル保持部)10aによって保持されている。レチクルホルダ10aは、レチクル移動駆動装置10bによって移動される。
【0031】
投影光学ユニット7による結像は、基板ホルダ(substrate holder:基板保持部)12によって保持されているウェーハの形の基板11の表面で実現される。基板ホルダ12は、ウェーハまたは基板移動駆動装置12aによって移動される。
【0032】
図1は、レチクル10と投影光学ユニット7の間の、前記投影光学ユニットに入る照明光3の光線ビーム13と、投影光学ユニット7と基板11の間の、投影光学ユニット7から出てくる照明光3の光線ビーム14とを概略的に示す。投影光学ユニット7の像視野側開口数(NA)は、原寸に比例しては
図1に再現されていない。
【0033】
投影露光装置1は、スキャナ型である。投影露光装置1の動作中に、レチクル10と基板11の両方がY方向に走査される。基板11の個々の露光間にレチクル10および基板11のy方向の段階的な移動が行われる、ステッパタイプの投影露光装置1もまた実施可能である。これらの移動は、移動駆動装置10bおよび12aを適切に作動させることによって、互いに同期して行われる。
【0034】
図2は、光源モジュール2の一部であるEUVコレクタミラー15の子午断面図を子午断面で示す。EUVコレクタミラー15の反射面16は、
図2には示されていない、光源領域17から反射面16に当たる照明光を後続のEUV照明光学ユニット6へ反射する役割を果たす。この目的のために、反射面16は、光軸18に対して回転対称である楕円形状を有する。光源領域17は、反射面16の楕円形状の一方の焦点領域に配置される。この楕円形状の他方の焦点には、使用可能なEUV照明光3を他の波長と区別する、またデブリとも区別する役割を果たす、
図2には示されていない中間焦点が配置されている。
【0035】
図3は、EUVコレクタミラー15の反射面16の拡大断面図を示す。この拡大図には、周期的に交互になっている正の構造20(「山」)と負の構造21(「谷」)とを含む、ポンプ光回折格子構造19が概略的に示されている。回折格子構造19のこのような周期性は、回折格子ピッチpによって記述される。
【0036】
ポンプ光回折格子構造19は、光源領域17からポンプ光回折格子構造19に当たるポンプ光22(
図2も比較)を光源領域へ逆反射して戻すように設計されている。
【0037】
ポンプ光22は、
図2に概略的に示されるように、ポンプ光源23から発せられる。ポンプ光源23は、約10μm(around 10μm:10μmのまわり)の波長、たとえば10.6μmのポンプ光波長を有するポンプ光を生成するCO
2レーザ光源である。あるいは、ポンプ光源23は、波長が約1μm前後である、たとえばポンプ光波長が1.064μmのポンプ光を生成するNdベース固体レーザ光源、たとえばNd:YAGレーザであってもよい。ポンプ光22の波長は、照明光3の波長から、すなわち使用可能なEUV光の波長からずれている。
【0038】
ポンプ光22は、パルス状になっている。ポンプ光源23は、MOPA(主発振器電力増幅器)レーザ光源である。
【0039】
平行ポンプ光22は、EUVコレクタミラー15の反射面16に配置された貫通孔24を通過し、光源領域17に配置された錫液滴25に当たって、
図2には示されていない照明光3が生成される。ポンプ光源23から光源領域17に至るポンプ光22の光路は、EUVコレクタミラー15の反射面16の光軸18と同一線上にある。
【0040】
錫液滴25は、ポンプ光22が当たるときには球状である、すなわちパンケーキの形状ではない。
【0041】
錫液滴25に当たるポンプ光22の一部は、錫液滴25に吸収される。当たるポンプ光22の別の一部は、錫液滴25から反射される。このような反射されたポンプ光22のビーム経路が、
図2にポンプ光線22
rとして例示されている。錫液滴25が球状であるので、反射ポンプ光線22
rは、
図3に概略的に示されたポンプ光回折格子構造19を保持する反射面16に、その広い領域にわたって当たる。
【0042】
図3はまた、1つの例示的な反射ポンプ光線22
rの逆反射状態を概略的に示している。このようなポンプ光線22
rは反射面16に、θ
rとも表記される入射角αで当たる。このような入射角θ
rは、反射面16上のポンプ光線22
rの衝突点IPの、光軸18からの径方向の距離に依存する。
図3中の、衝突点IPと光軸18の間のこのような距離は、rと表記される。
【0043】
ポンプ光回折格子構造19のピッチpは、次式に従って、光軸に対するそれぞれの正負の構造20/21の距離rに依存して、反射面16にわたって変化する。
【数1】
【0044】
ここで、
p(r)は、それぞれの衝突点(impingement point:当たる点、作用点、影響を与える点)IPと光軸18の間の距離rに依存するポンプ光回折格子構造19のピッチを表し、
λ
PLはポンプ光19の波長を表し、
θ
rは(上記p(r)の式中、
【数2】
をθ
rと表記する。)、それぞれのポンプ光線22
rの反射面16への入射角、すなわち、一方の入射ポンプ光線22
rと、それぞれの衝突点IPまわりの反射面16の主表面の断面に対する法線との間の角度を表す。
【0045】
上式によれば、入射角θrが小さいとピッチpが大きくなり、逆に、入射角θrが大きいとピッチpが小さくなる。これは、入射形状に依存して、すなわち反射面16の配置、その曲率、および光源領域の位置に依存して、それぞれのrating構造20/21の光軸18までの距離rとのピッチの依存関係に関して、以下の変化になる。
ピッチpの変化は、距離rが増加するとピッチが増加するような変化であり得る。
ピッチの変化pは、距離rが増加するとピッチが減少するような変化であり得る。
ピッチpは、距離rに非単調に依存し得る。
【0046】
ポンプ光回折格子構造19のピッチは、+1次回折について、ポンプ光線22
rのそれぞれに対し逆反射条件を満たす。その結果、EUVコレクタミラー15の反射面16上のポンプ光回折格子構造19に当たるポンプ光線22
rのすべてが、
図2に示されるように、また、ポンプ光線22
rの1つについて例示されている
図3にも示されるように、逆反射される。
【0047】
さらに、
図3はまた、-1次回折の回折ビームも示している。
【0048】
ポンプ光回折格子構造19は、
図3には示されていないポンプ光線22
rの+1次回折に対してブレーズされる。したがって、+1次回折は、入射するポンプ光線22
rのエネルギーのほとんどすべてを保持する。
【0049】
逆反射されたポンプ光線22rは、再び錫液滴25に当たり、それによって光源モジュール2のポンピング効率が向上する。
【0050】
ポンプ光19の個々のパルスは、パルス持続時間(全幅半値)が50ns未満であり、好ましくは40ns未満、好ましくは30ns未満、好ましくは20ns未満、好ましくは10ns未満、好ましくは8ns未満、好ましくは5ns未満である。
【0051】
特に、最大パルス強度の10%未満である低照度レベルと最大パルス強度の80%超である高照度レベルとの間のポンプ光パルスの立ち上がり時間は、15ns未満、10ns未満、さらには5ns未満である。このような短いパルス持続時間、および/またはこのような小さい立ち上がり時間は、ポンプ光エネルギーから使用可能なEUV照明光3のエネルギーへの良好な変換効率をもたらす。
【0052】
ポンプ光回折格子構造19では、ポンプ光22の反射率が50%を超える。具体的には、このような反射率は、50%と90%との間の範囲内にあり得るのであり、60%と85%との間の範囲内、または65%と75%との間の範囲内にあり得る。
【0053】
ポンプ光19と錫液滴25の相互作用により、使用可能なEUV照明光3は、たとえば6.5nmまたは13nmの波長で生成される。
【0054】
微細構造化構成要素またはナノ構造化構成要素を製作するために、投影露光装置1は、次のように使用される。最初に、反射マスク10すなわちレチクル、および基板すなわちウェーハ11が与えられる(provided)。続いて、レチクル10上の構造が、ウェーハ11の感光層の上に投影露光装置1を用いて投影される。次に、ウェーハ11上の微細構造(microstructure:マイクロ構造)またはナノ構造(nanostructure)が、したがって構造化構成要素(structured component)が、感光層を現像(develop)することによって製作される。
【国際調査報告】