(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】構造化物体の表面にわたる測定光波長の測定光の光学的位相差を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20221215BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
G03F1/84
G01N21/956 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522856
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2020078222
(87)【国際公開番号】W WO2021073994
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019215800.5
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】コッホ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴェク ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュースマン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カペッリ レンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ゲールケ ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ケルステーン グリツェルダ
【テーマコード(参考)】
2G051
2H195
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB02
2G051BA05
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA12
2G051EA16
2H195BA10
2H195BB03
2H195BD02
2H195BD04
2H195BD14
2H195BD27
2H195BD33
2H195CA11
(57)【要約】
構造化物体(8)の表面にわたる測定光波長の測定光(1
i、1
j)の光学的位相差(|φ
abs-φ
ML|)を決定するために、以下が実行される。最初に、物体(8)の3D空間像を記録するために、物体(8)の一連の2D像がそれぞれ異なる焦点面で測定される。次に、3D空間像の電界の振幅および位相を含む像側電界分布が、3D空間像から再構成される。その後、位相差(|φ
abs-φ
ML|)が、位相キャリブレーションを用いて再構成された電界分布から決定される。この場合、位相差(|φ
abs-φ
ML|)は、物体(8)の吸収体構造(9)によって反射された測定光1
iの吸収体構造位相φ
absと、物体(8)の反射体構造(10)によって反射された測定光1
jの反射体構造位相φ
MLとの間の差である。位相差(|φ
abs-φ
ML|)は、被測定物体構造全体にわたって適用可能な特性として決定される。この決定方法を実行するために、光学測定システムを有する計測システムが使用される。その結果、構造化物体を反射型リソグラフィマスクとして使用する際の像コントラストの最適化中に、有用性の高い値をもたらす位相差決定方法が得られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化物体(8;20;25;27;30)の表面にわたる測定光波長(λ)の測定光(1)の光学的位相差(Δφ)を決定するための方法であって、
前記物体(8;20;25;27;30)の頂部構造(9;21)によって反射された前記測定光(1)の頂部構造位相(φ
abs)と、
前記物体(8;20;25;27;30)の底部反射体構造(10;22)によって反射された前記測定光(1)の底部反射体構造位相(φ
ML)と
の間の前記位相差(Δφ)が、被測定物体構造全体にわたって適用可能な特性として決定される、方法であり、
投影光学ユニット(5)を用いて、前記物体(8)の3D空間像を記録するために各場合において異なる焦点面において前記物体(8;20;25;27;30)の一連の2D像を測定するステップ(16)と、
前記3D空間像の電界の振幅および位相を含む前記3D空間像から像側電界分布(f
rec)を再構成するステップ(17)と、
位相キャリブレーション(18)を用いて、前記再構成された電界分布(f
rec)から前記位相差(Δφ)を決定するステップと、
を含み、
前記位相キャリブレーション(18)において、以下のステップ、すなわち、
前記物体(8;20;25;27;30)の物体周期(p)、および/または
前記物体(8;20;25;27;30)の限界寸法(CD)、および/または
前記頂部構造(9;21)の複素反射率(r
r,i
abs)、および/または
前記反射体構造(10;22)の複素反射率(r
r,i
ML)
に依存する物体電界分布(f
obj)に基づくモデルを導入することによって像側電界分布(f
im)を計算するステップであり、
前記像側電界分布(f
im)が、前記物体電界分布(f
obj)と前記投影光学ユニット(5)のコヒーレント点拡がり関数(PSF)との畳み込みの結果である、
計算するステップと、
前記計算された像側電界分布(f
im)を前記再構成された像側電界分布(f
rec)と比較するステップと、
モデルパラメータの物体周期(p)および/または限界寸法(CD)および/または複素反射率(r
r,i
abs,ML)を変化させることによるフィッティング方法によって、前記計算された像側電界分布(f
im)と前記再構成された像側電界分布(f
rec)との間の前記差を最小化するステップと、
前記複素反射率(r
r,i
absおよびr
r,i
ML)について、前記モデルパラメータから前記位相差(Δφ)を計算し、前記最小化をもたらすステップと、が実行される、
方法。
【請求項2】
前記計算された像側電界分布(f
im)と前記再構成された像側電界分布(f
rec)との間の前記差が最小化される前記フィッティング方法において、最初は非線形であった出力関数の線形化が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記像側電界分布(f
im)の計算において、実部(f
r
im)および虚部(f
i
im)が、互いに独立したパラメータでモデル化されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反復フィッティング方法を特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記像側電界分布(f
im)の実部(f
r
im)および虚部(f
i
im)が、互いに独立してフィッティングされることを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィッティング方法の構成部分として少なくとも1つのフーリエ変換を特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定(16)中に、前記物体(8;20;25;27;30)によって回折された測定光(1)の少なくとも2つの回折次数(j)が、前記投影光学ユニット(5)によって像側に導かれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するための光学測定システムを有する計測システム(2)であって、
検査される前記物体(8;20;25;27;30)を特定の照明設定で照明するための照明光学ユニット(4)を有し、
前記物体(8;20;25;27;30)の一部を測定面(12)に結像(imaging)するための結像光学ユニット(5)を有し、
前記測定面(12)に配置された空間分解検出装置(14)を有する、
計測システム(2)。
【請求項9】
前記測定(16)中に、前記物体(8)によって回折された測定光(1)の少なくとも2つの回折次数(j)が前記結像光学ユニット(5)によって前記結像光学ユニット(5)の像側に導かれるように、前記結像光学ユニット(5)を設計することを特徴とする、請求項8に記載の計測システム。
【請求項10】
EUV光源(3)を特徴とする、請求項8または9に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、ドイツ特許出願第10 2019 215 800.5号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、構造化物体の表面にわたる測定光波長の測定光の光学的位相差を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
位相測定システムおよびこれを用いて行うことができる測定方法は、H.Nozawaらによる論文「Phase-shift/Transmittance measurements in micro pattern using MPM193EX」、Photomask and Next-Generation Lithography Mask Technology XVI、proceedings of SPIE Vol.7379、737925、およびS.Perlitzらによる「Phame(商標):a novel phase metrology tool of Carl Zeiss for in-die phase measurements under scanner relevant optical Settings」、proceedings of SPIE March 2007、Art.No.65184 Rから知られている。
【0004】
EUVフォトマスクの位相の測定に関しては、本出願の優先日後に公開されたSherwinらの論文「Measuring the Phase of EUV Photomasks」、Proc.of SPIE Vol.11147 111471F-1~1114721F-11をさらに参照されたい。
【0005】
特定の吸収材料の理想的な位相と反射率の理論的決定は、Erdmannらの論文「Attenuated phase shift mask for extreme ultraviolet:can they mitigate three-dimensional mask effects?」、J.Micro/Nanolith.MEMS MOEMS 18(1)、011005(2018)から知られている。
【0006】
EUVリソグラフィ用の位相シフトマスクについては、Constanciasらの論文、Proc.SPIE 6151,Emerging Lithographic Technologies X,61511W(2006年3月23日)に記載されている。
【0007】
所与の形状を印刷するための最適なマスクおよびソースパターンについては、Rosenbluthら、Proc.SPIE 4346,Optical Microlithography XIV,(2001年9月14日)に記載されている。
【0008】
7nmノード以降のEUVソース-マスク最適化については、Liuら、Proc.SPIE 9048,Extreme Ultraviolet(EUV)Lithography V,90480Q(2014年4月17日)に記載されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、構造化物体を反射型リソグラフィマスクとして使用する際の像コントラストの最適化中に有用性の高い値が得られる位相差決定方法を提供することである。
【0010】
この目的は、本発明によると、請求項1に記載の特徴を有する決定方法によって達成される。
【0011】
本発明によると、電界の振幅と位相の両方が含まれる再構成された電界分布から位相差を決定することにより、関連付けられた振幅値ではなく位相値のみを規則的に考慮する従来技術の位相決定方法と比較して、特に振幅が小さい場合の位相値の重みを小さくできるため、有意義な結果が生成されることが見出された。結果として得られる位相差は、測定された構造化物体の像コントラストの認定(qualification)のために全体的に使用することができるパラメータである。したがって、それぞれ測定された位相差に基づいて物体構造の設計を最適化することが可能であり、その結果、可能な限り強い像コントラストが得られる。本発明による決定方法は、物体構造の、場合によっては任意に決定された表面領域にわたる位相値の伝達に依存しない。このことも、決定された光学的位相差の信頼性および再現性を向上させる。
【0012】
位相キャリブレーションは、計算アルゴリズムに変換することができ、このことは、位相キャリブレーションを自動的に行うことができることを意味する。
【0013】
位相差を決定することができる物体構造は、線構造、コンタクトホール構造またはコンタクトピン構造、および2次元に広がる一般的な構造形状、特に周期構造形状である。このような物体構造を有する物体は、リソグラフィマスクとして使用することができる。
【0014】
物体の頂部構造は、例えば、底部反射体構造上にコーティングされた吸収体材料の吸収体構造として具現化されてもよい。代替的または追加的に、物体の頂部構造は、頂部反射体構造として具現化されてもよい。この場合、一方では頂部反射体構造、他方では底部反射体構造は、それぞれの反射体構造、特に多層反射体構造をエッチングすることによって製造することができる。
【0015】
構造化物体は、EUVリソグラフィに特に適したリソグラフィマスクであってもよい。特に、構造化物体は、位相マスクとして、特に位相シフトマスク(PSM)として、例えばハードPSMとして具現化されてもよい。このような位相マスクは、エッチングされた底部構造とエッチングされていない頂部構造との間に180°の光学的位相差を必要とする場合がある。
【0016】
このような位相マスクは、エッチングされた底部構造とエッチングされていない頂部構造との間にエッチング停止層(ESL)を含むことができる。このような位相マスクのエッチングされた領域とエッチングされていない領域との間の位相差は、エッチングの深さおよびESLの厚さに依存する。ESLによって誘起される光位相シフトのESL厚さに対する依存性は、非線形であるため、慎重に決定する必要がある。
【0017】
光学的位相差決定方法は、位相マスクの製造中の準備方法として使用することができる。このような方法の間に、キャリブレーション構造を有する生の位相マスクが製造される。これらのキャリブレーション構造は、必要な高さを有するESLの上方に頂部構造を含み、すなわち、例えば180°の所望の光学的位相差を生成する頂部構造を含む。さらに、このような生の位相マスクは、所与の厚さを有するESLを含む。
【0018】
このような生の位相マスクの製造後、位相マスクの頂部構造と底部構造との間の光学的位相差を決定するために、光学的位相差決定が行われる。その後、ESLの厚さおよび/または頂部(キャリブレーション)構造のエッチング深さを変化させて、一方の頂部構造位相と他方の底部反射体構造位相との間に確実に所望の光学的位相差が存在するようにする。
【0019】
位相差が決定される構造化物体をリソグラフィマスクとして使用する場合、そのような構造化物体は、リソグラフィ製造プロセスで使用される投影露光装置の像面またはその近傍に結像(image)されて、マスク構造の3D像を生成する。このような投影露光装置における3D結像効果は、コントラストの低下をもたらすことがあり、すなわち、画質の低下をもたらすことがある。このような画質低下の原因は、焦点面の変位、結像テレセントリック性に影響する効果、および像面内の構造の横方向変位に影響するさらなる効果である場合がある。これらの原因はすべて、3D効果として見ることができ、すなわち、リソグラフィ製造プロセス中に結像(image)されるマスク上の構造によって少なくとも部分的に生成される。これらの3D効果は、所望の画質を得るために最小化されるべきである。
【0020】
上述のErdmannらの参考文献から、このような3D効果を最小限に抑える所与の吸収体材料について理想的な吸収体位相および吸収体反射率を決定することが知られている。その後、本発明による光学的位相差決定方法を使用する位相計測を使用して、特に吸収体材料の複素反射率を決定する。その後、吸収体材料の所望の位相および反射率を調整して最小限に抑えた3D効果を得るために、構造化物体の吸収体構造の厚さを変化させる。
【0021】
光学的位相差を決定するための方法は、欠陥を修復する方法の一部として使用することができる。このようなキャリブレーション方法の間、特に位相計測を含む本発明による光学的位相差決定方法を使用して、修復吸収体材料の厚さおよび組成に依存する修復吸収体材料の複素反射率を決定する。特に位相計測を含むこのような光学的位相差決定方法を使用して、修復されるマスクの吸収体構造の吸収体材料の複素反射率も決定される。一方では修復吸収体材料の複素反射率を決定し、他方では修復されるマスクの吸収体材料の複素反射率を決定した後、修復材料の複素反射率が修復されるマスクの吸収体材料の複素反射率と一致するように、それぞれの吸収体材料組成および吸収体材料厚さが修復ステップのために選択される。
【0022】
さらに、本発明による光学的位相差を決定するための方法を最適化プロセスの一部として使用して、一方では所与のマスクレイアウトを用いて、他方では所与の照明設定、特に部分的にコヒーレントな照明分布を用いて確実にウエハ上に所望の構造を生成することができ、望ましくは可能な限り大きなプロセスウィンドウを確保することができる。このようなソースマスク最適化(SMO)に関しては、上記で引用したRosenbluthらおよびLiuらを参照されたい。
【0023】
ソースマスク最適化には、入力パラメータとしてマスク上の吸収体構造の吸収体材料の複素反射率が必要である。SMOの結果は、このような複素反射率に依存する。本発明による光学的位相差を決定するための方法を使用することは、ソースマスク最適化のためにリソグラフィマスクのパラメータを最適化するキャリブレーションプロセスの一部であってもよい。このようなキャリブレーションプロセスでは、特に位相計測を含む光学的位相差を決定するための方法を使用して、キャリブレーションされるリソグラフィマスクの吸収体構造に使用される所与の吸収体材料の複素反射率を決定する。次いで、このような決定方法によって決定された複素反射率をソースマスク最適化のための入力パラメータとして使用して、マスクレイアウトを決定し、照明設定も決定する。
【0024】
フィッティング方法中に、最初は非線形であった出力関数を線形化することができる。
【0025】
請求項3に記載のモデリングは、像側電界分布の実部および虚部に対して異なるモデリングパラメータの使用を可能にする。これにより、計算方法の安定性を高めることができる。
【0026】
請求項4に記載の反復フィッティング方法を用いることで、各反復ステップにおける線形フィッティングを通して非線形関数依存性を追跡することが可能になる。
【0027】
請求項5に記載の像側電界分布の実部と虚部を独立してフィッティングすることにより、フィッティング方法の精度を高めることができる。
【0028】
請求項6に記載のフーリエ変換は、フィッティング方法を簡略化することができる。
【0029】
請求項7に記載の測定により、位相差の正確な決定が可能になる。3以上の回折次数、例えば3、4またはそれ以上の回折次数を投影光学ユニットによって物体側から像側に導くことができる。
【0030】
請求項8または9に記載の計測システムの利点は、本発明による決定方法を参照して上で既に説明したものに対応する。
【0031】
請求項10に記載の計測システムにより、非常に高い分解能での測定が可能になる。EUV光源によって提供される測定光波長は、5nm~30nmの波長範囲にある場合がある。したがって、測定光波長は、リソグラフィマスクの形態の測定される構造化物体を半導体チップの製造で使用することができる投影露光装置の典型的な照明波長に適合している。
【0032】
以下、図面を参照して本発明の例示的実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】照明システムと、結像光学ユニットと、空間分解検出装置とを有する、リソグラフィマスクの形態の被測定物体の空間像を確認するための計測システムを概略的に示す図であり、さらに、被測定物体の平面図、および3D空間像の部分データセットとして例示的に生成された物体の2D像の平面図も示されている。
【
図2】
図1と比較して大幅に拡大された、物体の吸収体表面頂部構造部分および反射体表面底部構造部分を含む被測定物体の一部分の断面であり、例として、一方は吸収体表面部分の層によって反射され、もう一方は反射体表面部分の層によって反射される2つの照明光線または測定光線が示されている。
【
図3】物体の吸収体表面部分によって反射された照明光または測定光の吸収体構造位相と、物体の反射体表面部分によって反射された測定光の反射体構造位相との間の位相差Δφの、吸収体表面部分の吸収体構造の厚さまたは高さ範囲h
absに対する依存性を示す図であり、この依存性が、2つの異なる吸収体材料組成AM1およびAM2について示されている。
【
図4】投影リソグラフィにおいて構造化物体を使用する際に像コントラストが最適化されるように、光学的位相差Δφを決定し、被測定構造化物体の物体構造を最適化するための流れ図である。
【
図5】線構造を有する
図1による物体の例を用いて、
図4による方法の一部として像側電界分布を再構成した結果としての、吸収体表面位相および反射体表面位相の位相値を示す図である。
【
図6】物体の周期と、物体の限界寸法と、吸収体表面部分の複素反射率と、反射体表面部分の複素反射率とに依存する、決定された物体分布に基づくモデルを用いた像側電界分布の計算を示す図である。
【
図7】
図2と同様の断面において、被測定物体のさらなる実施形態であり、物体は、反射体表面頂部構造部分および反射体表面底部構造部分を含むEUV位相シフトマスクとして具現化されている。
【
図8】
図7による描写において、反射体表面頂部構造部分と反射体表面底部構造部分との間にエッチング停止層が位置する位相シフトマスクとして具現化された構造化物体の別の実施形態であり、エッチング停止層が反射体表面底部構造を覆っている。
【
図9】
図8と同様の描写において、ここでも位相シフトマスクとして具現化された構造化物体の実施形態であり、エッチング停止層が反射体表面底部構造部分から除去されている。
【
図10】
図2および
図7~
図9と同様の描写おいて、吸収体表面頂部構造部分および反射体表面底部構造部分を含む被測定物体のさらなる実施形態であり、吸収体表面頂部構造部分のうちの1つが欠陥修復構造によって補足されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、子午線断面に対応する断面図において、計測システム2におけるEUV照明光またはEUV結像光1のビーム経路を示す。照明光1は、EUV光源3によって生成される。
【0035】
位置関係の表現を容易にするために、以下では直交xyz座標系を使用する。
図1のx軸は、図面の平面に対して垂直に、図面から外に延びている。
図1のy軸は、右に向かって延びている。
図1のz軸は、上に向かって延びている。
【0036】
光源3は、レーザプラズマ源(LPP;laser produced plasma)または放電源(DPP;discharge produced plasma)とすることができる。原理的には、シンクロトロンに基づく光源、例えば自由電子レーザ(FEL)を使用することもできる。照明光1の使用波長は、5nm~30nmの範囲とすることができる。原理的に、投影露光装置2の変形形態の場合、別の使用光波長、例えば使用波長193nmの光源を使用することも可能である。
【0037】
照明光1は、計測システム2の照明システムの照明光学ユニット4において、照明の特定の照明設定、すなわち特定の照明角度分布が提供されるように調整される。照明光学ユニット4の照明瞳における照明光1の特定の強度分布は、前記照明設定に対応する。照明設定を指定するために、照明光学ユニット4は、図面には示されていない設定絞りを有することができる。
【0038】
照明光学ユニット4は、結像光学ユニットまたは投影光学ユニット8と共に、計測システム2の光学測定システムを構成する。
【0039】
照明光1は、それぞれ設定された照明設定で、計測システム2の物体平面7内の物体視野6を照明する。レチクルとも呼ばれるリソグラフィマスク8は、反射物体として物体平面7に配置される。レチクル8は、その光学的位相差が後述する方法によって決定される構造化物体の一例である。物体平面7は、x-y平面に平行に延びている。
【0040】
物体8は、互いに平行にかつx方向に平行に延びる線型吸収体頂部構造9を有する線構造を有する。反射体底部構造10が、2つの隣接する吸収体構造9のそれぞれの間に位置している。
【0041】
例示の目的で、
図1は、測定されるレチクル8の平面図を物体平面7の上方に示し、この平面図は、測定位置にあるレチクル8と比較して、図示する平面図位置へとy軸の周りに90°傾けられている。この平面図では、吸収体構造9と、吸収体構造の間にそれぞれ位置する反射体構造10は、z方向に平行に延びる線構造として見ることができる。
【0042】
吸収体構造9は、反射体構造10と比較してz方向に高さ範囲h
absを有する(
図2参照)。吸収体構造9はそれぞれ、比較的少数の個々の層9
1、9
2を有する多層構造を有することができる。
【0043】
反射体構造10は、多数の個々の層10iを有する高反射性多層構造となるように設計されている。吸収体構造9自体は、前記多層構造上に位置する。
【0044】
図1は、物体視野6における照明光1の電界の式に従ったイラストをさらに示す。
【数1】
(1)
【0045】
ここで、Eretは照明光の電界強度を表し、φretは照明光1の電界の位相を表す。
【0046】
照明光1の2つの光線1
i、1
jについて、
図2は、光線1
i、1
jのそれぞれの反射割合に対する吸収体構造9および反射体構造10のそれぞれの層構造の効果を示す。この場合、光線1
iは、
図2に示す吸収体構造9に入射し、光線1
jは反射体構造10に入射する。式に従って、
図2には、吸収体構造9の反射率r
absおよび反射体構造10の反射率r
MLが描かれている。以下が成立する。
【数2】
(2)
【数3】
(3)
【0047】
ここで、φabsおよびφMLは、反射光線1i、1jの位相を示す。以下、位相差|φabs-φML|は、Δφとも呼ばれる。
【0048】
図3は、AM1およびAM2と表記された2つの吸収体材料の変形形態の例を使用して、吸収体構造9の高さh
absに対する位相差Δφの関数を示す。吸収体構造9の高さh
absが増加すると、位相差Δφも大きくなる。この増大は単調ではなく、周期的である。加えて、吸収体材料の変形形態が異なると、吸収体構造9の高さh
absの関数としての位相差Δφの前記増大の勾配が異なる。
【0049】
位相差Δφは、投影光学ユニット5を用いた物体8の構造の結像中に良好な像コントラストが得られるように、180°の領域内にあるべきである。
図3では、このような位相差Δφが180°の領域にある吸収体構造高さh
absがそれぞれ星印でマークされている。吸収体構造9のこれらの構造高さh
absは、それぞれの吸収体材料の変形形態に強く依存することが分かる。この理由から、計測システム2を用いて位相差Δφを正確に決定することが必要であり、前記位相差値Δφは、物体平面7内の吸収体構造9の構造的広がりとは無関係であり、すなわち特にピッチとは無関係であり、すなわち物体視野6にわたる吸収体構造9の周期性とは無関係である。この決定方法について以下でより詳細に説明する。
【0050】
照明光1は、
図1に概略的に示すように、リソグラフィマスク8によって反射され、入射瞳面内の結像光学ユニット5の入射瞳に入る。結像光学ユニット5の使用される入射瞳は、円形または楕円形の境界を有することができる。
【0051】
結像光学ユニット5内では、照明光または結像光1は、入射瞳面と射出瞳面との間を伝搬する。結像光学ユニット5の円形射出瞳は、射出瞳面に位置する。
【0052】
結像光学ユニット5は、物体視野6を計測システム2の像面12内の像視野11に結像する(image)。像面12は、測定面とも呼ばれる。投影光学ユニット5を用いた結像中の結像比率(結像スケール)は、500よりも大きい。投影光学ユニット5の実施形態に応じて、拡大結像比率は、100よりも大きくすることができ、200よりも大きくすることができ、250よりも大きくすることができ、300よりも大きくすることができ、400よりも大きくすることができ、500よりも大幅に大きくすることもできる。投影光学ユニット8の結像比率は、通常2000未満である。
【0053】
投影光学ユニット5は、物体8の一部分を像面12に結像(imaging)する働きをする。
【0054】
図1における物体8の平面図のイラストと同様に、物体8の結像の空間像13の平面図が、図面の平面に垂直な像面12の下に示されている。この空間像13は、3D空間像全体の部分的なデータセットであり、その測定については以下で説明する。
【0055】
像視野11内の照明光1の電界は、以下のように記述することができる。
【数4】
(4)
【0056】
物体視野6から像視野11への照明光1の電界の伝達中に、投影光学ユニット5の収差およびデフォーカスが電界の形状に影響を与える。
【0057】
計測システム2の空間分解検出装置14は、像面12に配置されている。この検出装置は、CCDカメラであってもよい。検出装置14は、強度Iを測定するために使用される。
I(x,y)=|Ecam|2
(5)
【0058】
検出装置14は、z方向に変位可能であり、
図1では、像面12から離れた奥まった位置に示されている。測定動作中、検出装置14は、像面12またはその近傍に配置される。したがって、検出装置14の検出面15は、像面12と一致するか、または像面12から規定された距離を有することができる。
【0059】
計測システム2は、被測定物体構造全体にわたって適用可能な特性として、光学的位相差Δφを決定するための方法を実行するために使用される。次いで、この特性を用いて、投影露光装置による物体8の結像中に物体8をそのコントラスト特性に関して認定することができる。
【0060】
決定方法の主なステップは、
図4以降に関連してさらに説明される。
【0061】
測定ステップ16において、物体8の一連の2次元像I(x,y)が、物体8の3次元空間像を記録するために、投影光学ユニット5を用いてそれぞれ異なる焦点面で測定される。2D像強度値I(x,y)が記録される各2D像測定の後、検出装置14は、検出変位装置(図示せず)を用いて指定された増分Δzだけ変位される。例えば、5個、7個、9個、11個または13個のこのような2D像I(x,y)が、3D空間像の完全な測定のために異なるz値で記録される。この測定中、物体8によって回折された照明光または測定光1の少なくとも2つの回折次数が、投影光学ユニット5によって像視野11に、すなわち計測システム2の像側に導かれる。
【0062】
続く再構成ステップ17において、3D空間像の電界Eの振幅および位相を含む像側電界分布frec(x,y)が再構成される。
【0063】
図5は、例として、線構造を有する物体8に対する再構成ステップ17の結果としての像視野11にわたる位相分布を示す。吸収体構造9は、210°の領域に絶対位相を有する反射体構造10とは異なる絶対位相φを30°の領域に有する。
【0064】
再構成ステップ17は、国際公開番号第2017/207297A1号から知られている方法を用いて実行することができる。
【0065】
次に、位相キャリブレーションステップ18を用いて、再構成された電界分布frecから位相差が決定される。位相キャリブレーション中、物体8の物体周期またはピッチp、物体8の限界寸法CD、吸収体構造9の複素反射率rabs、および反射体構造10の複素反射率rMLに依存する物体電界分布に基づくモデルを導入することによって、像側電界分布fimが計算される。像側電界分布fimは、物体電界分布と投影光学ユニット5のコヒーレント点拡がり関数(point spread function)PSFとの畳み込みの結果である。コヒーレント点拡がり関数は、コヒーレント光伝達関数のフーリエ変換である。
【0066】
これが
図6に示されている。
図6は、左側に、空間座標x、反射体構造10の反射率r
ML、吸収体構造9の反射率r
abs、デューティサイクルd、および周期(ピッチ)pに依存する物体電界分布f
objを示す。デューティサイクルdについては、d=CD/pである。
【0067】
次に、実部(指数r)と虚部(指数i)とに分割されるこの物体構造f
objに基づいて、今度は、投影光学ユニット5の点拡がり関数PSF
cohとの畳み込みによって、物体電界分布の結像の生成における投影光学ユニット5の影響を考慮に入れる。これは
図6の中央に示されており、異なるパラメータr、dに対してそれぞれ実部および虚部が指定されている。物体電界分布と点拡がり関数PSFとの畳み込みの結果は、像側電界分布f
imの実部f
r
imおよび虚部f
i
imであり、これが
図6の右側に概略的に示されている。この像側電界分布f
imは、空間座標x、反射体構造10および吸収体構造9の反射率r
ML、r
abs、デューティサイクルの虚部d
iおよび実部d
r、ならびにピッチpに依存する。
【0068】
続いて、このようにモデル的に計算された像側電界分布f
imが、再構成された像側電界分布f
recと比較される。この目的のために、モデルパラメータの物体周期(ピッチp)、限界寸法CD、および複素反射率r
ML、r
absのうちの少なくとも1つを変化させることによるフィッティング方法を用いて、前記電界分布間の差が最小化される。これは、x-y視野範囲にわたって積分され、最小化されると考えられるメリット関数を用いて行われる。このメリット関数Mは、以下のように書くことができる。
【数5】
(6)
【0069】
上記の式(6)に従って実部および虚部に対して独立して実現されるこのメリット関数の最小化のために、再構成された像側電界分布frecおよび計算された像側電界分布fimがフーリエ変換される。これらのフーリエ変換Frec、Fimは、空間周波数νx、νyに依存する。
【0070】
実部と虚部に分割された前記フーリエ変換F
rec、F
imを用いて、メリット関数Mは、以下のように書くことができる。
【数6】
(7)
【0071】
周波数領域での積分は、周期構造について、それぞれの引数が0から逸脱するそれらの周波数にわたる加算によって置き換えることができ、物体8の考慮される線構造は、j=-jmax…jmaxについて周波数νx=j/pである。
【0072】
jmaxは、この場合、投影光学ユニット5が透過する最大回折次数である。
【0073】
投影光学ユニット5が条件|jmax|≧2を満たすためには、物体8のピッチpについて、p≧2λ/NAが成り立つ必要がある。
【0074】
ここで、λは照明光1の波長であり、NAは投影光学ユニット5の物体側開口数である。
【0075】
メリット関数の実部および虚部についてのこの加算は、反射率r
ML、r
absの実部および虚部に線形に依存する。
【数7】
(8)
【0076】
さらに、この線形表記の係数は、デューティサイクルdの実部drおよび虚部diに非線形に依存する。これらの非線形のデューティサイクル出力関数は、以下で説明するように線形化することができる。
【0077】
メリット関数を最小化するためのデューティサイクルの実部および虚部dr、diならびに反射率rMLおよびrabsの最適化は、反復フィッティング方法によって行うことができ、最初にデューティサイクルdの実部および虚部に対する開始値d0
r,iが取られ、次いで反射率に対する対応する開始値rr,i
ML,0およびrr,i
abs,0が計算される。
【0078】
この目的のために、メリット関数は、最初の反復ステップにおいて以下のように書くことができる。
【数8】
(9)
【0079】
ここで、
【数9】
は反射率rの係数を表し、これはデューティサイクルdの実部および虚部に依存する。
【数10】
は、この場合、j
max行を有する行列であり、2つの反射率r
Ml、r
absに対する行列の効果のために2列を有する行列である。反射率の開始値r
r,i
ML,0およびr
r,i
abs,0は、線形最適化によってデューティサイクルd
0
r,iの開始値に基づいて決定される。
【0080】
ここで、
【数11】
の個々の行列要素は、デューティサイクルの開始値の周りにテイラー級数で展開することができる。このテイラー級数の第2項は、値Δd
0
r,i、すなわちデューティサイクルdの開始値に対する実部および虚部の補正値において線形である。前記補正値は、反復法の次のステップのために開始値を変更しなければならない補正値である。
【0081】
次数Δdまでのテイラー展開を式(8)に挿入すると、反射率およびデューティサイクルの補正値に対する線形依存性が得られる。
【数12】
(10)
【0082】
修正された行列
【数13】
は、デューティサイクルの既知の開始値および反射率の既に計算された開始値のみに依存する。
【0083】
ここで、Δd
0
r,iを線形最適化によって再び決定することができ、その結果、開始値に基づいて、反復の次の値d
1
r,iを次式に従って決定することができる。
【数14】
(11)
【0084】
上記の式(9)の行列
【数15】
は、デューティサイクルの新しい値で更新され、反射率の新しい線形最適化が実行される。
【0085】
この反復法は、反復ステップmにおいて、反復補正Δdm
r,iが特定のしきい値を下回るまで繰り返される。
【0086】
この反復フィッティング方法の収束後、メリット関数Mが最小化されるrML、rabsの反射率値が分かる。
【0087】
次いで、位相差Δφの所望の値が次式に従って、得られた反射率値rML、rabsから得られる。
Δφ=φML-φabs=arg(rML)-arg(rabs) (12)
【0088】
したがって、特定のマスク構造に対して、物体構造のモデリングに基づいて位相差値を計算することができ、その結果、特定の構造設計が像コントラストに関して最適な位相差をもたらすかどうかをチェックすることができる。
【0089】
図7は、上述した方法の実施形態を使用して光学的位相差が決定される物体20の別の例を示す。このような物体20は、特に
図2に関して上述した物体8の代わりに使用することができる。
【0090】
物体20は、共通のベース層23によって担持された頂部構造21およびエッチングされた底部構造22を有するハード位相シフトマスク(PSM)である。頂部構造21は、反射率R1を有する反射体表面頂部構造部分として具現化されている。底部構造22は、頂部構造と底部構造の両方を構成する多層からエッチングされた反射体表面底部構造として具体化されている。底部構造22は、反射率R2を有する。反射率R1、R2に対して、以下の代替関係が成り立ってもよい。
R1>R2,R1=R2
【0091】
頂部/底部構造21、22は、一方では頂部構造21によって反射され、他方では底部構造22によって反射される測定光1に対して光学的位相差Δφを生成する。頂部構造21に対する底部構造22のエッチング深さは、
図7においてhで示されている。
【0092】
頂部構造21によって反射された測定光1の頂部構造位相と、底部構造22によって反射された測定光1の底部反射体構造位相との間の物体20の表面にわたる測定光1の位相差Δφは、上述した方法の実施形態に従って決定することができる。
【0093】
物体8とは異なり、物体20では、頂部構造21も多層材料で作られている。特に、物体20は、多層基板をエッチングすることによって製造されている。
【0094】
図8は、上述した物体8または20の代わりに使用することができる物体25の別の実施形態を示す。特に
図2および
図7に関して上述した構成要素および機能には、同じ用語および参照番号が付与されており、再度詳細には説明しない。
【0095】
物体25は、頂部構造21と底部構造22との間に、頂部構造21および底部構造22の多層組成の層材料とは異なる材料であるエッチング停止層26を有する。このようなエッチング停止層は、物体25のエッチング生成プロセスにおいて、エッチングがエッチング停止層26に達するまで行われるため、頂部構造部分と底部構造部分とを区別するために使用される。
【0096】
もちろん、物体25のエッチング停止層26の反射率、材料、および厚さは、一方の頂部構造位相と他方の底部反射体構造位相との間の測定光1の光学的位相差に影響を与える。これは、ハード位相シフトマスクを製造するための最適化プロセスにおいて使用することができる。このようなキャリブレーションプロセス中に、物体25に応じたキャリブレーション用の生の位相シフトマスクが生成される。次いで、このような生のキャリブレーション用マスクの頂部構造位相と底部反射体構造位相との間の光学的位相差Δφが決定される。その後、エッチング停止層26の厚さおよび/またはエッチング深さhを変化させて、所望の位相差Δφ、例えば180°(=π)の位相差を実現する。
【0097】
図9は、位相シフトマスクとしても使用することができ、上述した物体8、20および25を置き換えることができる物体27の別の実施形態を示す。特に
図2および
図8に関して上述した構成要素および機能には、同じ用語および参照番号が付与されており、再度詳細には説明しない。
【0098】
物体27は、エッチング停止層26も含む。物体25のレイアウトとは異なり、物体27のエッチング停止層26は、底部構造22の底部構造部分で除去されている。
【0099】
図10は、上述した物体8、20、25および27の代わりに使用することができる物体30の別の実施形態を示す。特に
図2および
図9に関して上述した構成要素および機能には、同じ用語および参照番号が付与されており、再度詳細には説明しない。
【0100】
物体30は、特に
図2に関して上述したものによる頂部吸収体構造9および底部反射体構造10を含む。
【0101】
例として、
図10において9
Dによって示されるこのような吸収体構造9のうちの1つは、欠陥を含む。このような欠陥は、吸収体構造9
Dのx方向への延びが減少することで存在する。
【0102】
このような欠陥の修復として、物体30は、修復用吸収体材料で作られた構造補足材31を担持する。このような修復用吸収体材料は、一般に、物体30の元の吸収体構造9の吸収体材料とは異なる。公称吸収体構造9の高さhと比較して、修復用構造補足材31は、一般にhとは異なる高さhDを有する。
【0103】
修復プロセス中、上述した決定方法の位相計測の少なくとも1つの実施形態を使用して、構造補足材に使用される修復用吸収体材料に応じた複素反射率が決定される。また、上述したように、修復される物体30の吸収体材料の複素反射率が決定される。一方では修復用吸収体材料の複素反射率を決定し、他方では修復される物体の吸収体材料の複素反射率を決定した後、修復用吸収体材料の複素反射率が、修復されるマスクの吸収体材料の複素反射率に一致するように、修復吸収体材料、およびその高さhDも選択される。
【0104】
光学的位相差決定方法、特に位相計測をさらに使用して、位相差Δφを最適化し、生産用投影露光装置において結像に対する物体の3D効果を最小限に抑えることができる。さらに、このような決定方法、特に位相計測は、例えば、一方ではマスクレイアウトを、他方では生産用投影露光装置の照明設定を同時最適化するために、ソースマスク最適化のための物体パラメータ、特にリソグラフィマスクパラメータをキャリブレーションするために使用することができる。
【0105】
特に、それぞれの物体の頂部構造の配置が位相差Δφに影響を与え、したがって、生産用投影露光装置における結像結果に影響を与える可能性があることが認識された。
【0106】
このような頂部構造効果は、光学的位相差Δφを決定するための方法の上述した実施形態を使用して測定することができ、リソグラフィマスクの最適化に関して後で使用するために、異なる頂部構造配置について位相差ライブラリに保存されてもよい。
【0107】
光学的位相差Δφに関しては、多層構造の各層の厚さおよび複素屈折率、すなわち特に屈折率の吸収の影響が、影響を与えるパラメータである。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
請求項11または12に記載の計測システムの利点は、本発明による決定方法を参照して上で既に説明したものに対応する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
請求項13に記載の計測システムにより、非常に高い分解能での測定が可能になる。EUV光源によって提供される測定光波長は、5nm~30nmの波長範囲にある場合がある。したがって、測定光波長は、リソグラフィマスクの形態の測定される構造化物体を半導体チップの製造で使用することができる投影露光装置の典型的な照明波長に適合している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化物体(8;20;25;27;30)の表面にわたる測定光波長(λ)の測定光(1)の光学的位相差(Δφ)を決定するための方法であって、
前記物体(8;20;25;27;30)の頂部構造(9;21)によって反射された前記測定光(1)の頂部構造位相(φ
abs)と、
前記物体(8;20;25;27;30)の底部反射体構造(10;22)によって反射された前記測定光(1)の底部反射体構造位相(φ
ML)と
の間の前記位相差(Δφ)が、被測定物体構造全体にわたって適用可能な特性として決定される、方法であり、
投影光学ユニット(5)を用いて、前記物体(8)の3D空間像を記録するために各場合において異なる焦点面において前記物体(8;20;25;27;30)の一連の2D像を測定するステップ(16)と、
前記3D空間像の電界の振幅および位相を含む前記3D空間像から像側電界分布(f
rec)を再構成するステップ(17)と、
位相キャリブレーション(18)を用いて、前記再構成された電界分布(f
rec)から前記位相差(Δφ)を決定するステップと、
を含み、
前記位相キャリブレーション(18)において、以下のステップ、すなわち、
前記物体(8;20;25;27;30)の物体周期(p)、および/または
前記物体(8;20;25;27;30)の限界寸法(CD)、および/または
前記頂部構造(9;21)の複素反射率(r
r,i
abs)、および/または
前記底部反射体構造(10;22)の複素反射率(r
r,i
ML)
に依存する物体電界分布(f
obj)に基づくモデルを導入することによって像側電界分布(f
im)を計算するステップであり、
前記像側電界分布(f
im)が、前記物体電界分布(f
obj)と前記投影光学ユニット(5)のコヒーレント点拡がり関数(PSF)との畳み込みの結果である、
計算するステップと、
前記計算された像側電界分布(f
im)を前記再構成された像側電界分布(f
rec)と比較するステップと、
モデルパラメータの物体周期(p)および/または限界寸法(CD)および/または複素反射率(r
r,i
abs,ML)を変化させることによるフィッティング方法によって、前記計算された像側電界分布(f
im)と前記再構成された像側電界分布(f
rec)との間の前記差を最小化するステップと、
前記複素反射率(r
r,i
absおよびr
r,i
ML)について、前記モデルパラメータから前記位相差(Δφ)を計算し、前記最小化をもたらすステップと、が実行される、
方法。
【請求項2】
前記計算された像側電界分布(f
im)と前記再構成された像側電界分布(f
rec)との間の前記差が最小化される前記フィッティング方法において、最初は非線形であった出力関数の線形化が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記像側電界分布(f
im)の計算において、実部(f
r
im)および虚部(f
i
im)が、互いに独立したパラメータでモデル化されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
反復フィッティング方法を特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記像側電界分布(f
im)の実部(f
r
im)および虚部(f
i
im)が、互いに独立してフィッティングされることを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記フィッティング方法の構成部分として少なくとも1つのフーリエ変換を特徴とする、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定(16)中に、前記物体(8;20;25;27;30)によって回折された測定光(1)の少なくとも2つの回折次数(j)が、前記投影光学ユニット(5)によって像側に導かれることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
特定のマスク構造に対する位相差値の計算を特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記計算のための基礎としての物体構造のモデリングを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
特定の構造設計が像コントラストに関して最適な位相差であるかどうかのチェックを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するための光学測定システムを有する計測システム(2)であって、
検査される前記物体(8;20;25;27;30)を特定の照明設定で照明するための照明光学ユニット(4)を有し、
前記物体(8;20;25;27;30)の一部を測定面(12)に結像(imaging)するための結像光学ユニット(5)を有し、
前記測定面(12)に配置された空間分解検出装置(14)を有する、
計測システム(2)。
【請求項12】
前記測定(16)中に、前記物体(8)によって回折された測定光(1)の少なくとも2つの回折次数(j)が前記結像光学ユニット(5)によって前記結像光学ユニット(5)の像側に導かれるように、前記結像光学ユニット(5)を設計することを特徴とする、請求項11に記載の計測システム。
【請求項13】
EUV光源(3)を特徴とする、請求項11または12に記載の計測システム。
【国際調査報告】