(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】プロセスチャンバのライナ用バネ式締め付けシステム
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20221215BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
F16B5/10 D
F16B2/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523430
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020050093
(87)【国際公開番号】W WO2021080702
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】M/S 1269,3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ, ベンジャミン エフ.
【テーマコード(参考)】
3J001
3J022
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GC12
3J001JD22
3J001KA19
3J001KB06
3J022DA12
3J022EA02
3J022EB02
3J022EC02
3J022EC12
3J022EC22
3J022FB07
3J022GA06
3J022GA16
(57)【要約】
バネ式締め具であって、内部空洞を画定するクリートと、内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、ショルダーボルトであって、ヘッド部分はバネ要素上に配置され、ショルダーボルトのショルダー部分は内部空洞の床の取付け開孔を通って延在し、ショルダーボルトのネジ部分は構造に締め付けされるショルダーボルトとを有するバネ式締め具を含む、ライナを構造に締め付けするためのバネ式締め付けシステムである。本システムは更に、ライナの裏面のハンガーポケットであって、クリートの下部の直径を収容するのに十分な大きさであり、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさではない開口部を有する第1の部分と、第1の部分に隣接し、ライナの裏面に、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさの開口部を有する第2の部分とを含むハンガーポケットを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ式締め具であって、
内部空洞を有する円錐台状クリートと、
前記内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、
前記内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、前記ショルダーボルトのヘッド部分の底面は前記バネ要素上に配置され、前記ショルダーボルトのショルダー部分は前記内部空洞の床の取付け開孔を通って延在する、ショルダーボルトと
を備える、バネ式締め具。
【請求項2】
前記バネ要素は環状であり、前記ショルダーボルトのヘッド部分の直径より小さい内径を有し、前記ショルダーボルトのヘッド部分の直径より大きい外径を有する、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項3】
前記クリートの底面に隣接して配置された平ワッシャを更に備え、前記ショルダーボルトのショルダー部分の底面は前記平ワッシャ上に配置され、前記ショルダーボルトのネジ部分は前記平ワッシャを通って延在する、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項4】
前記平ワッシャは、前記ショルダーボルトのショルダー部分の直径より小さい内径を有し、前記取付け開孔の直径より大きい外径を有する、請求項3に記載のバネ式締め具。
【請求項5】
前記バネ要素は、バネワッシャ及びコイルバネのうちの1つである、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項6】
前記バネ要素は、前記ショルダーボルトのヘッド部分と前記クリートの内部空洞の床とが互いに離れるように付勢する、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項7】
前記クリートは、アルミニウム、ステンレス鋼、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、及びテフロンのうちの1つで形成される、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項8】
前記クリートの側壁は、前記クリートの底面から100度から120度の範囲の角度で延在する、請求項1に記載のバネ式締め具。
【請求項9】
ライナを構造に締め付けするためのバネ式締め付けシステムであって、
バネ式締め具であって、
内部空洞を有する円錐台状クリートと、
前記内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、
前記内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、前記ショルダーボルトのヘッド部分の底面は前記バネ要素上に配置され、前記ショルダーボルトのショルダー部分は前記内部空洞の床の取付け開孔を通って延在し、前記ショルダーボルトのネジ部分は前記構造に締め付けされる、ショルダーボルトと
を含む、バネ式締め具と、
前記ライナの裏面のハンガーポケットであって、
前記ライナの裏面に、前記クリートの下部の直径を収容するのに十分な大きさであり、前記クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさではない開口部を画定する第1の部分と、
前記第1の部分に隣接し、前記ライナの裏面に、前記クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさの開口部を画定する第2の部分と
を含む、ハンガーポケットと
を備える、バネ式締め付けシステム。
【請求項10】
前記バネ要素は環状であり、前記ショルダーボルトのヘッド部分の直径より小さい内径を有し、前記ショルダーボルトのヘッド部分の直径より大きい外径を有する、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項11】
前記クリートの底面に隣接して配置された平ワッシャを更に備え、前記ショルダーボルトのショルダー部分の底面は前記平ワッシャ上に配置され、前記ショルダーボルトのネジ部分は前記平ワッシャを通って延在する、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項12】
前記平ワッシャは、前記ショルダーボルトのショルダー部分の直径より小さい内径を有し、前記取付け開孔の直径より大きい外径を有する、請求項11に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項13】
前記バネ要素は、バネワッシャ及びコイルバネのうちの1つである、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項14】
前記バネ要素は、前記ショルダーボルトのヘッド部分と前記クリートの内部空洞の床とが互いに離れるように付勢する、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項15】
前記クリートは、アルミニウム、ステンレス鋼、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、及びテフロンのうちの1つで形成される、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項16】
前記クリートの側壁は、前記クリートの底面から100度から120度の範囲の角度で延在する、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項17】
前記クリートの側壁は前記クリートの底面から第1の角度で延在し、前記ハンガーポケットの側壁は前記ライナの裏面から第2の角度で延在し、前記第1の角度は前記第2の角度に等しい、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項18】
前記ハンガーポケットは、前記クリートと、前記クリートの底面に隣接して配置された平ワッシャとを合わせた深さ以上の深さを有する、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項19】
前記ハンガーポケットの側壁は前記クリートの側壁上に配置される、請求項9に記載のバネ式締め付けシステム。
【請求項20】
ライナを構造に締め付けするためのバネ式締め付けシステムであって、
バネ式締め具であって、
内部空洞を有する円錐台状クリートと、
前記内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、
前記内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、前記ショルダーボルトのヘッド部分の底面は前記バネ要素上に配置され、前記ショルダーボルトのショルダー部分は前記内部空洞の床の取付け開孔を通って延在し、前記ショルダーボルトのネジ部分は前記構造に締め付けされる、ショルダーボルトと
を含む、バネ式締め具と、
前記ライナの裏面のハンガーポケットであって、
前記ライナの裏面に、前記クリートの下部の直径を収容するのに十分な大きさであり、前記クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさではない開口部を画定する第1の部分と、
前記第1の部分に隣接し、前記ライナの裏面に、前記クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさの開口部を画定する第2の部分と
を含む、ハンガーポケットと
を備え、
前記クリートの側壁は前記クリートの底面から第1の角度で延在し、前記ハンガーポケットの側壁は前記ライナの裏面から第2の角度で延在し、前記第1の角度は前記第2の角度に等しく、
前記クリートは前記ハンガーポケットの第1の部分内に配置され、前記ハンガーポケットの側壁は前記クリートの側壁上に配置される、バネ式締め付けシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、概して、半導体処理機器の分野に関し、より具体的には、イオン注入装置のプロセスチャンバにライナを取り外し可能に取り付けるためのバネ式締め付けシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]イオン注入は、特性を変化させる不純物を基板に導入するための標準的な技法である。イオン注入プロセスの間、所望の不純物材料(「ドーパント」)はソースチャンバでイオン化され、イオンは抽出開孔を通して方向づけされる。イオンは加速されて所定のエネルギーのイオンビームを形成し、プロセスチャンバに位置する基板の表面上に方向づけされる。イオンビームの高エネルギーイオンは、基板材料の表面下に浸透し、基板材料の結晶格子に埋め込まれ、所望の導電性又は材料特性の領域を形成する。
【0003】
[0003]従来のイオン注入装置のプロセスチャンバは、金属(例えば、アルミニウム)製である。イオン注入プロセス中に遮蔽されないまま放置されると、プロセスチャンバの内面は、基板からスパッタリングされた材料だけでなく、加速されたドーパントイオンを浴びる。これにより、プロセスチャンバの内面に汚染物質が蓄積され得る。蓄積した汚染物質は、最終的に様々なサイズの粒子の形で内面から剥げ落ちる可能性がある。これらの粒子は、ツールの機能性に悪影響を及ぼす可能性があり、修復するのに大規模な洗浄が必要になり得る。このような蓄積を軽減し、修復を促進するために、グラファイトライナをプロセスチャンバに設置し、このような汚染にさらされる可能性のある内面を覆うことが一般的である。特殊加工されたグラファイトの表面特性と形状寸法は、アルミニウム等の地金と比較して、より効果的に汚染物質を捕捉し、このような汚染物質の蓄積による剥がれ落ちを軽減することができる。更に、グラファイトの熱特性は、イオンビームの直接衝突が可能なところでの使用に非常に適している。
【0004】
[0004]従来のグラファイトライナは、一般に、プロセスチャンバ内の汚染を軽減するのに効果的であるが、このようなライナは、幾つかの欠点と関連している。例えば、グラファイトライナは、一般に、金属で形成された機械的締め具でプロセスチャンバの内面に締め付けされる。このため、機械的締め具自体が、プロセスチャンバの汚染に寄与しないように、グラファイトキャップ等による遮蔽を必要とする。機械的締め具やキャップは、グラファイトライナの表面テクスチャに好ましくない中断やばらつきを生じさせる。更に、グラファイトは一般に非常に脆い。従って、グラファイトライナをプロセスチャンバの内面に固定するために機械的締め具(例えば、ボルト)を使用する場合、しばしば専用のツールが使用され、グラファイトライナの破損を避けるために厳しいトルク要件が遵守される。前述の理由により、グラファイトライナの設置や取り外しは時間のかかる、面倒なものとなっている。
【0005】
[0005]これら及び他の考慮事項に関して、本改良は有用であり得る。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本概要は、概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。本概要は、特許請求の主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求の主題の範囲を決定する際の補助として意図されたものでもない。
【0007】
[0007]本開示の例示的な実施形態に係るバネ式締め具は、内部空洞を有する円錐台状クリートと、内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、ショルダーボルトのヘッド部分の底面はバネ要素上に配置され、ショルダーボルトのショルダー部分は内部空洞の床の取付け開孔を通って延在する、ショルダーボルトとを含み得る。
【0008】
[0008]本開示の例示的な実施形態に係るバネ式締め付けシステムは、バネ式締め具であって、内部空洞を有する円錐台状クリートと、内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、ショルダーボルトのヘッド部分の底面はバネ要素上に配置され、ショルダーボルトのショルダー部分は内部空洞の床の取付け開孔を通って延在し、ショルダーボルトのネジ部分は構造に締め付けされる、ショルダーボルトとを含むバネ式締め具を含み得る。バネ式締め付けシステムは更に、ライナの裏面のハンガーポケットであって、ライナの裏面に、クリートの下部の直径を収容するのに十分な大きさであり、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさではない開口部を画定する第1の部分と、第1の部分に隣接し、ライナの裏面に、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさの開口部を画定する第2の部分とを含むハンガーポケットを含み得る。
【0009】
[0009]本開示の例示的な実施形態に係るバネ式締め付けシステムは、バネ式締め具であって、内部空洞を有する円錐台状クリートと、内部空洞の床上に配置されたバネ要素と、内部空洞に配置されたショルダーボルトであって、ショルダーボルトのヘッド部分の底面はバネ要素上に配置され、ショルダーボルトのショルダー部分は内部空洞の床の取付け開孔を通って延在し、ショルダーボルトのネジ部分は構造に締め付けされる、ショルダーボルトとを含むバネ式締め具を含み得る。バネ式締め付けシステムは更に、ライナの裏面のハンガーポケットであって、ライナの裏面に、クリートの下部の直径を収容するのに十分な大きさであり、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさではない開口部を画定する第1の部分と、第1の部分に隣接し、ライナの裏面に、クリートの上部の直径を収容するのに十分な大きさの開口部を画定する第2の部分とを含むハンガーポケットを含み得、クリートの側壁はクリートの底面から第1の角度で延在し、ハンガーポケットの側壁はライナの裏面から第2の角度で延在し、第1の角度は第2の角度に等しい。クリートはハンガーポケットの第1の部分内に配置され、ハンガーポケットの側壁はクリートの側壁上に配置される。
【0010】
[0010]実施例として、開示のシステムの様々な実施形態を、添付の図面を参照しながら、これから説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Aは、本開示の例示的な実施形態に係るバネ式締め具を示す上面斜視図であり、Bは、
図1Aのバネ式締め具を示す底面斜視図である。
【
図3】Aは、予備取付け位置にある本開示の締め付けシステムを示す背面図であり、Bは、
図3Aにおける平面A-Aに沿って切り取った断面側面図である。
【
図4】Aは、中間取付け位置にある本開示の締め付けシステムを示す背面図であり、Bは、
図4Aにおける平面B-Bに沿って切り取った断面側面図である。
【
図5】Aは、最終取付け位置にある本開示の締め付けシステムを示す背面図であり、Bは、
図5Aにおける平面C-Cに沿って切り取った断面側面図である。
【
図6】
図5Aにおける平面D-Dに沿って切り取った断面底面図である。
【
図7】A~Bは、本開示の例示的な実施形態に係る代替的なハンガーポケットを示す切取平面図である。
【
図8】本開示の締め付けシステムの例示的な実装態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0023]以下に本実施形態を、一部の実施形態を示す添付の図面を参照しながら、より完全に説明する。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきでない。これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に主題の範囲を完全に伝えるように提供される。図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0013】
[0024]本開示により、バネ式締め付けシステムが提供され、以下に詳細に説明される。締め付けシステムは、イオン注入装置のプロセスチャンバにおけるライナ(例えば、グラファイトライナ)の便利で迅速な設置及び取り外しを容易にすることができ、ツールの使用を必要としない。更に、本開示の締め付けシステムは、露出した機械的締め具を覆うためのキャップを必要としない。したがって、締め付けシステムは、ライナの表面テクスチャに望ましくない中断又はばらつきを生じさせない。
【0014】
[0025]本開示の非限定的で例示的な実施形態に係るバネ式締め具10(以下「締め具10」)を示す上面及び底面斜視図である
図1A及び
図1Bを参照する。締め具10は、内部空洞14を画定する概ね円錐台状クリート12と、空洞14内に配置されたバネ要素16と、クリート12の底部上に配置された平ワッシャ18と、空洞14内に配置され、バネ要素16、クリート12及び平ワッシャ18を通って延在するショルダーボルト20とを含み得る。様々な実施形態では、クリート12は、アルミニウム、ステンレス鋼、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン、及びテフロンを含むがこれらに限定されない様々な金属又は非金属材料で形成され得る。バネ要素16、平ワッシャ18、及びショルダーボルト20は、鋼、アルミニウム、様々な合金等を含むがこれらに限定されない様々な金属で形成され得る。本開示はこれに関して限定されず、クリート12、バネ要素16、平ワッシャ18、及びショルダーボルト20のいずれかが、以下で更に説明するように、締め具10の動作を容易にするのに適した代替材料で形成され得る。
【0015】
[0026]クリート12は、半径方向に対称であってよく、概して平面的な底面19及びテーパ状の側壁21を有していてよい。クリート12の上部は第1の直径を有していてよく、クリート12の下部は第2の直径を有していてよく、第1の直径は第2の直径よりも大きい。側壁21の上部エッジは、丸みを帯びていてよい。様々な実施形態では、側壁21は、底面19から100度から120度の範囲の角度で延在し得る。好ましい実施形態では、側壁21は、底面19から110度の角度で延在し得る。本開示は、これに関して限定されない。
【0016】
[0027]ここで、構造22(例えば、イオン注入装置のプロセスチャンバの内部)に動作可能に取り付けられた締め具10を示す断面側面図である
図2を参照する。便宜上及び明確さのために、「上部」、「底部」、「上方」、「下方」、「上部」、「下部」、「下向き」及び「上向き」等の用語は全て以下において、
図2に示す締め具10のように、締め具10の形状寸法及び向きに関して締め具10の種々の構成要素の相対配置及び向きを説明するために使用され得る。当該専門用語は、具体的に言及された単語、その派生語、及び類似の意味の単語を含むであろう。
【0017】
[0028]
図2に示すように、ショルダーボルト20のネジ部分24は、構造22の対応するネジボア孔26と確実にネジ係合するように配置され得る。ネジ部分24の外径より大きく、ショルダーボルト20のショルダー部分28の外径より小さい内径を有する平ワッシャ18は、ネジ部分24を囲んでいてよく、ショルダー部分28の底面と構造22の表面との間に軸方向に挟まれていてよい。平ワッシャ18は、ショルダーボルト20がボア孔26に更にネジ込まれるのを防止するための停止部として機能することができ、ボア孔26がさら穴である場合に、締め具10と構造22との間の正確な位置接触を確保し得る。また、平ワッシャ18は、ショルダーボルト20が設置中にトルクをかけられたときに、ショルダー部分28が構造22に食い込んで損傷することを防止し得る。
【0018】
[0029]ショルダーボルト20のヘッド部分30は、クリート12の内部空洞14内に配置されていてよく、ヘッド部分30の底面はバネ要素16の上に着座し、ショルダー部分28はバネ要素16を通って、及び内部空洞14の床33の取付け開孔32を通って延在し得る。ショルダー部分28の外径よりも大きく、ヘッド部分30の外径よりも小さい内径を有するバネ要素16は、ショルダー部分28を囲んでいてよく、ヘッド部分30の底面と内部空洞14の床33との間に軸方向に挟まれていてよい。バネ要素16は、内部空洞14の床33に下向きの力を加えることにより、クリート12を下向きに、平ワッシャ18に向かって付勢し得る。バネ要素16は、バネ要素16のバイアス力に打ち勝つのに十分な上向きの力がクリートに加えられた場合に、クリート12が上向きに短い距離変位することを可能に得る。様々な実施形態では、バネ要素16は、ベルビルワッシャ(円錐ディスクバネ、円錐バネワッシャ、ディスクバネ、ベルビルバネ、又はバネワッシャとも呼ばれる)であってよい。本開示は、これに関して限定されない。代替実施形態では、バネ要素16は、クリート12をショルダーボルト20のヘッド部分30から離れて、下向きに付勢するように適合されたコイルバネ又は他のバネデバイスであってよい。当業者には理解されるように、バネ要素16によって付与されるバイアス力は、バネ要素16の厚さ、バネ要素16の材料等を変えることによって調整され得る。
【0019】
[0030]工程において、上述の締め具10は、イオン注入装置のプロセスチャンバの内壁又は表面等の構造に固定されてよく、ライナ等の物体は、締め具10に掛けられることにより、構造に固定され得る。例えば、
図3A~
図5Bを参照すると、締め具10に掛けられたグラファイトライナ34を示す一連の背面図及び対応する断面側面図が提供される。グラファイトライナ34の裏面35は、そこに形成されたハンガーポケット36を有していてよく、ハンガーポケット36は、以下で更に説明するように締め具10を受け入れ、係合するように適合され得る。締め具10は、構造22(例えば、プロセスチャンバ内の抽出プレートの内面又は他の表面)に取り付けられ得る。
【0020】
[0031]ハンガーポケット36は、グラファイトライナ34の裏面に形成された概して鍵穴状の凹部又は空洞であってよく、第2の下部円弧40の上部と交差する第1の上部円弧38によって画定されていてよく、上部円弧38の半径は下部円弧40の半径より小さい。様々な実施形態では、上部円弧38は、120から180度の範囲の円弧角を有していてもよい。本開示は、これに関して限定されない。様々な実施形態では、上部円弧38は、クリート12の底部の半径よりもわずかに大きく(例えば、2から5ミリメートル大きい)、クリート12の上部の半径よりも小さい(例えば、5から10ミリメートル小さい)半径を有し得る。
【0021】
[0032]
図3A及び
図3Bを参照すると、ハンガーポケット36は、クリート12が下部円弧40内に完全に配置された状態で(すなわち、クリート12のどの部分も上部円弧38内に配置されていない状態で)クリート12の上に配置され得る。ハンガーポケット36は、
図3Bに示すZ軸に沿って測定されたクリート12及び平ワッシャ18を合わせた深さ以上の最小深さを有し得る。ハンガーポケット36は、クリート12及びフラットワッシャ18を合わせた深さに、バネ要素16が完全に圧縮されたときにクリート12がショルダーボルト20のショルダー部分28に沿って移動し得る深さを加えたもの以下の最大深さを有し得る。したがって、グラファイトライナ34の裏面は、構造22の前面と平坦に係合して配置されていてよく、クリート12の上部は、ハンガーポケット36の後壁46と接触する、又はほぼ接触するように延在し得る。ハンガーポケット36の側壁48は、クリートの側壁21の角度に一致するような角度がついていてよい。例えば、クリート12の側壁21がクリート12の底面19と110度の角度を形成する場合、ハンガーポケット36の側壁48は、グラファイトライナ34の裏面35と110度の角度を形成し得る。
【0022】
[0033]
図4A及び
図4Bを参照すると、グラファイトライナ34がクリート12上に部分的に下げられ、ハンガーポケット36の上部円弧38がクリート12に垂直に接近しているところが示されている。グラファイトライナ34が下げられるときに、ハンガーポケット36が、
図4Aに示すようにクリート12に対して横方向に中心にある(すなわち、
図4Aに示すX軸に沿って中心にある)場合、グラファイトライナ34を下げ続けることができ、クリート12が直接上部円弧38に入り得る。しかしながら、グラファイトライナ34が下げられるときに、ハンガーポケット36がクリート12に対して横方向に中心から外れている場合、下部円弧40の上部の側壁48がクリート12の側壁21と係合し得る。グラファイトライナ34が下げ続けられると、クリート12の側壁21と下部円弧40の上部の内向きに湾曲した側壁48との間の係合により、グラファイトライナ34が横方向にずらされ、ハンガーポケット36はクリート12と横方向に並ぶように又はその近くに移動され得る。したがって、グラファイトライナ34がクリート12上に下げられると、下部円弧40の収束する上部は、クリート12を上部円弧38内に自動的に案内するか、又は漏斗状にし得る。
【0023】
[0034]
図5A及び
図5Bを参照すると、グラファイトライナ34がクリート12上に完全に下げられ、クリート12が上部円弧38内に部分的に配置され、上部円弧38の側壁48がクリート12の側壁21に着座したところが示されている。クリート12の上部の半径は、上部円弧38の半径よりも大きいため、クリート12は、(
図3A及び
図3Bに示すように)クリート12をより大きい下部円弧40内にずらすように最初に上向きに持ち上げられる場合を除いて、グラファイトライナ34が構造22から水平に引き離される(すなわち、
図5Bにおいて右側に引き寄せられる)ことを防止する。したがって、グラファイトライナ34は、グラファイトライナ34が取り外されるまで、構造22にしっかりと取り付けられたままである。
【0024】
[0035]上部円弧38内に配置されたクリート12を示す断面底面図である
図6を参照する。上述したように、締め具10のバネ要素16は、クリート12の内部空洞14の床33に下向きの力を加えることにより、クリート12を(
図6に示すように締め具10の向きを基準にして)下向きに、平ワッシャ18に向かって付勢し得る。このバイアス力は、クリート12の角度の付いた側壁21とハンガーポケット36の角度の付いた側壁48との間の係合を通してグラファイトライナ34に伝達され得る。したがって、締め具10は、グラファイトライナ34を構造22としっかりと係合させて保持すると同時に、クリート12が構造22から離れるように(すなわち、バネ要素16の撓みを介して)移動することを可能にし得る。このように、締め具10は、グラファイトライナ34への上記累積公差及び/又は熱膨張に起因する損傷のリスクを軽減しながら、累積公差、並びに構造22、グラファイトライナ34、及び/又は締め具10の熱膨張に対応することができる。
【0025】
[0036]様々な代替実施形態では、ハンガーポケット36は、形状が、クリート12の上部を収容するのに十分に大きいライナの裏面に開口部を有する下部を含む限り、上述し、
図3A~
図5Bに示す形状以外の様々な異なる形状を有していてよい。例えば、
図7Aを参照すると、ライナ37aの一部に形成された代替のハンガーポケット36aが示され、ハンガーポケット36aは、概ねアーチ形の下部と交差する概ね半円形の上部を有している。
図7Bを参照すると、ライナ37bの一部に形成された代替のハンガーポケット36bが示され、ハンガーポケット36bは、連続アーチを画定する上部及び下部を有し、ハンガーポケット36bの底部は、ライナ37bの底部エッジを通って延在している。本開示は、これに関して限定されない。
【0026】
[0037]プロセスチャンバの内面52にグラファイトライナ50を取り外し可能に取り付けるために使用される、本開示の締め付けシステムの例示的な実装態様を示す
図8を参照する。特に、上述の締め具10と同一の3つの締め具10a、10b、10cが、様々な位置で内面52のチャンバに面する側面に固定(例えば、ボルト締め)され得る(3つの締め具10a、10b、10cはグラファイトライナ50の背後に位置しているため破線で図示される)。グラファイトライナ50は、締め具10a,10b,10cの位置に対応する位置に、その裏面に形成された(したがって破線で図示された)上述のハンガーポケット36と同一の3つのハンガーポケット36a,36b,36cを含み得る。グラファイトライナ50は、ハンガーポケット36及び締め具10に関して上述した方法で、ハンガーポケット36a、36b、36cを締め具10a、10b、10cの上に配置し、ハンガーポケット36a、36b、36cを締め具10a、10b、10c上に下げることによって、内面52に取り外し可能に締め付けされ得る。
図8に提供される実施例には示していないが、本開示の締め付けシステムに加えて、1又は複数の従来の機械的締め具(例えばネジ、ボルト等)が、グラファイトライナ50の対応する取付け開孔を通して挿入され、グラファイトライナ50が不用意に押し出されないように内面52に固定し得る様々な実装態様が考えられる。このような機械的締め具は、グラファイトライナ50のチャンバに面する側面でグラファイトキャップによって覆われ得る。
【0027】
[0038]当業者によって理解されるように、上述の締め付けシステムは、イオン注入装置のプロセスチャンバにおけるライナ(例えば、グラファイトライナ)の便利で迅速な設置及び取り外しを容易にすることによって当技術分野における利点を提供するものであり、ツールの使用は必要ない。更に、締め付けシステムは、ライナのチャンバに面する側面にいかなる機械的締め具又はキャップも設置する必要がなく、したがって、ライナのチャンバに面する側面の表面テクスチャに望ましくない中断又はばらつきが導入されない。更に、本開示の締め具は、取り付けられたライナーへの累積公差及び/又は熱膨張に起因する損傷のリスクを軽減しながら、周囲構造の上記累積公差及び熱膨張に動的に対応する。
【0028】
[0039]本明細書で使用する、単数形で言及され、単語「a」又は「an」が前につく要素又はステップは、除外が明示的に言及されない限り、複数の要素又はステップを除外しないものとして理解されるであろう。更に、本開示の「一実施形態」への言及は、言及された特徴を組み込んだ追加の実施形態の存在を排除すると解釈されるようには意図していない。
【0029】
[0040]本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び変更例が、前述の説明及び添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。したがって、そのような他の実施形態及び変更例は、本開示の範囲内に入ることが意図される。更に、本開示を、特定の目的のための特定の環境における特定の実装態様の文脈で本明細書に説明してきたが、当業者であれば、その有用性がそれらに限定されないことを認識するであろう。本開示の実施形態は、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得る。したがって、以下に記載される特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の全幅及び主旨に鑑みて解釈されるものとする。
【国際調査報告】