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特表2022-553347酸化ケイ素に比べて窒化ケイ素およびポリシリコンについて高い選択性を有する研磨組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】酸化ケイ素に比べて窒化ケイ素およびポリシリコンについて高い選択性を有する研磨組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221215BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221215BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221215BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523701
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020056748
(87)【国際公開番号】W WO2021081145
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/924,407
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ペトロ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ブリタニー ジョンソン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
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3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED02
3C158ED11
3C158ED23
3C158ED24
3C158ED26
5F057AA14
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB19
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA09
5F057EA15
5F057EA29
5F057EA31
(57)【要約】
本発明は、(a)セリア粒子を含む研磨剤と、(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、(d)水と、を含む化学機械研磨組成物において、約5~約8のpHを有する研磨組成物を提供する。本発明は同様に、本発明の化学機械研磨組成物と基板を接触させることによって、基板、特に酸化ケイ素、窒化ケイ素および/またはポリシリコンを含む基板を化学機械研磨する方法をも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セリア粒子を含む研磨剤と、
(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマとを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、
(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、
(d)水と、
を含む化学機械研磨組成物であって、
約5~約8のpHを有する、研磨組成物。
【請求項2】
約0.01質量%から約1質量%のセリア粒子を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記セリア粒子が約60nm~約120nmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
カチオン性ホモポリマを含み、約1ppm~約200ppmのカチオン性ホモポリマを含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記カチオン性ホモポリマが、繰り返し単位としての第4級アミン基で本質的に構成され、4級化アミン基が非環式であるかまたは環状構造内に取込まれている、請求項4に記載の研磨組成物。
【請求項6】
カチオン性コポリマを含み、約1ppm~約1000ppmのカチオン性コポリマを含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記カチオン性コポリマが、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種
の非イオン性モノマを含む、請求項6に記載の研磨組成物。
【請求項8】
第4級アンモニウム塩を含み、前記第4級アンモニウムが約75g/mol以上の分子量を有する第4級アンモニウムカチオンを含むハロゲン化物である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項9】
第4級アンモニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの前記第4級アンモニウム塩を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項10】
第4級ホスホニウム塩を含み、前記第4級ホスホニウム塩が、約94g/mol以上の分子量を有する第4級ホスホニウムカチオンを含むハロゲン化物である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項11】
ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、ジメチルジフェニルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリブチルドデシルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、トリブチルメチルホスホニウム塩、トリブチルオクチルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、トリブチルヘキシルホスホニウム塩およびそれらの組合せからなる群の中から選択された第4級ホスホニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの前記第4級ホスホニウム塩を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項12】
基板を化学機械研磨する方法であって、
(i)基板を提供するステップと、
(ii)研磨パッドを提供するステップと、
(iii)(a)セリア粒子を含む研摩剤と、
(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、
(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、
(d)水と、
を含み、約5~約8のpHを有する、
化学機械研磨組成物を提供するステップと、
(iv)前記研磨パッドおよび前記化学機械研磨組成物と前記基板を接触させるステップと、
(v)前記基板に対して前記研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を移動させて、前記基板の表面の一部分を研削し、これにより前記基板を研磨するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記化学機械研磨組成物が、約0.01質量%から約1質量%のセリア粒子を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セリア粒子が、約60nm~約120nmの平均粒子サイズを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化学機械研磨組成物が、カチオン性ホモポリマを含み、約10ppm~約100ppmのカチオン性ホモポリマを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記カチオン性ホモポリマが、カチオン性モノマ繰り返し単位で本質的に構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学機械研磨組成物が、カチオン性コポリマを含み、約1ppm~約1000ppmのカチオン性コポリマを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記カチオン性コポリマが少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化学機械研磨組成物が、第4級アンモニウム塩を含み、前記第4級アンモニウム塩が約75g/mol以上の分子量を有する第4級アンモニウムカチオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記化学機械研磨組成物が、第4級アンモニウム塩を含み、前記第4級アンモニウム塩が、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラドデシルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩およびその誘導体、ベンザルコニウム塩、N-アルキルメチルイミダゾリウム塩、N,N-ジアリールイミダゾリウム塩、N-アルキルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、ベンジルジメチルデシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルヘキシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム塩、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ドデシルエチルジメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩。トリヘキシルテトラデシルアンモニウム塩、[(3-メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム塩。コリン塩、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩などおよびそれらの組合せからなる群の中から選択され、前記化学機械研磨組成物が、約100ppm~約1000ppmの前記第4級アンモニウム塩を含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学機械研磨組成物が、第4級ホスホニウム塩を含み、前記第4級ホスホニウム塩が、約94g/mol以上の分子量を有する第4級ホスホニウムカチオンを含むハロゲン化物である、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記化学機械研磨組成物が、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、ジメチルジフェニルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリブチルドデシルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、トリブチルメチルホスホニウム塩、トリブチルオクチルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、トリブチルヘキシルホスホニウム塩およびそれらの組合せからなる群の中から選択された第4級ホスホニウム塩を含み、前記化学機械研磨組成物が、約100ppm~約1000ppmの前記第4級ホスホニウム塩を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板が、その表面上に窒化ケイ素を含み、前記基板の表面上の前記窒化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記基板がさらに、その表面上に酸化ケイ素を含み、前記基板の表面上の前記酸化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、前記酸化ケイ素除去速度が前記窒化ケイ素除去速度よりも低い、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基板が、その表面上にポリシリコンを含み、前記基板の表面上の前記ポリシリコンの少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
前記基板がさらに、その表面上に酸化ケイ素を含み、前記基板の表面上の前記酸化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、前記酸化ケイ素除去速度が前記ポリシリコン除去速度よりも低い、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
基板の表面を平坦化または研磨するための組成物および方法は、当該技術分野において周知である。研磨組成物(研磨スラリとしても公知である)は、典型的に、液体キャリヤ内に研摩材料を含み、研磨組成物で飽和した研磨パッドと表面を接触させることによって表面に適用される。典型的な研摩材料としては、二酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化スズが含まれる。研磨組成物は典型的に、研磨パッド(例えば研磨クロスまたはディスク)と併用される。研磨組成物中に懸濁される代りに、またはそれに加えて、研摩材料は、研磨パッド内に取込まれ得る。
【0002】
進歩したメモリおよび論理半導体デバイスの製造にあたって、集積回路(IC)スキームには、ポリシリコンおよび/または窒化ケイ素(SiN)層の選択的除去が必要となる。ポリシリコンおよび窒化ケイ素材料が除去された時点で、さらなる被着およびIC製造ステップのために無傷の状態にとどまることが所望される酸化ケイ素層が露出される。ここで提示する例に限定される意図は無いものの、このプロセスの一例が、逆シャロートレンチアイソレーション(R-STI)プロセスのための酸化ケイ素上の窒化ケイ素材料の除去である。さらに、高いアスペクト比を含むシリコン基板上に酸化物または窒化ケイ素層が形成される3D NANDデバイス製造のために、酸化ケイ素(SiO)研磨に優先したポリシリコンおよび窒化ケイ素の研磨に対する選択性が同様に必要とされる。その後、エッチングまたはフォトリソグラフィによりビアが形成され、ビアを充填するためにポリシリコン層が被着される。形成されたトレンチまたはビアの深さにばらつきがあることから、典型的に、全てのトレンチおよびビアの完全な充填を保証するため、基板の頂部に余剰の誘電材料(例えばSiNまたはポリシリコン)を被着させる必要がある。余剰の誘電材料はその後、典型的に、化学機械平坦化(CMP)プロセスによって除去されて、停止層として酸化ケイ素層を露出させる。酸化ケイ素が露出した時点で、高度の平坦度と表面均一性が所望される。
【0003】
概して、2つのCMPステップを用いて酸化物研磨に優先したポリシリコンおよび/またはSiN研磨に対する選択性を強調することが実践されてきた。したがって、酸化物層は、化学機械平坦化プロセス中、停止層として役立ってきた。多くの現行のスラリは、中程度のSiN速度と中程度の選択性を提供することで、その有用性を制限している。例えば、低ないし中程度の研磨速度は処理能力を制限する可能性があり、一方低ないし中程度のポリシリコン/酸化物またはSiN/酸化物選択性は、より厚いポリシリコンまたは窒化ケイ素コーティングを伴うより大きな構造に対する現行のスラリ技術の有用性を制限する。
【0004】
基板上の誘電材料は、典型的に、従来の研摩剤含有研磨組成物を用いて研磨される。しかしながら、従来の研摩剤含有研磨組成物を用いた酸化ケイ素またはポリシリコンの研磨は、基板の表面の過剰研磨または研磨不足を結果としてもたらすことが認められてきた。この過剰研磨の現象は、ディッシングと呼ばれる、パターン酸化物特徴部内の陥凹形成を生み出す可能性がある。基板特徴部のディッシングは、トランジスタおよびトランジスタコンポーネント相互の絶縁不良をひき起こし、その結果として短絡が発生することによってデバイスの製造に有害な影響を与え得ることから、ディッシングは、望ましくない。反対に基板の研磨不足は、ポリシリコンおよび/またはSiN層の不完全なまたは部分的な除去を結果としてもたらす可能性があり、さらに酸化ケイ素停止層が露出されるのを妨げ、その結果、平坦度または電気的絶縁が不充分になり、これはデバイスの品質および性能に有害な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当該技術分野においては、SiNおよびポリシリコンの比較的高い除去速度を提供する研磨組成物および方法、ならびにCMP中の酸化ケイ素に優先したSiNの選択的除去に対するニーズがなおも存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)セリア粒子を含む研磨剤と、(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、(d)水と、を含む化学機械研磨組成物において、約5~約8のpHを有する研磨組成物を提供する。
【0007】
本発明は同様に、基板を化学機械研磨する方法において、(i)基板を提供するステップと、(ii)研磨パッドを提供するステップと、(iii)(a)セリア粒子を含む研摩剤と、(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、(d)水と、を含み、約5~約8のpHを有する化学機械研磨組成物を提供するステップと、(iv)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と基板を接触させるステップと、(v)基板との関係において研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を移動させて、基板の表面の一部分を研削し、これにより基板を研磨するステップと、を含む方法をも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、(a)セリア粒子を含む研磨剤と、(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、(d)水とを含むか、本質的にこれらで構成されているか、またはこれらで構成されている、化学機械研磨組成物において、約5~約8のpHを有する研磨組成物を提供する。
【0009】
化学機械研磨組成物は、研摩剤を含み、ここで研摩剤はセリア粒子を含むか、本質的にセリア粒子で構成されているか、またはセリア粒子で構成されている。
【0010】
当業者には公知であるように、セリアは希土類金属セリウムの酸化物であり、酸化セリウム(ceric oxide)、(cerium oxide)(例えば酸化セリウム(IV))、または二酸化セリウムとしても知られている。酸化セリウム(IV)(CeO)は、シュウ酸セリウムまたは水酸化セリウムをか焼することによって形成可能である。セリウムは同様に、例えばCeなどの酸化セリウム(III)も形成する。セリア研摩剤は、これらのまたは他のセリア酸化物のうちのいずれか1つ以上であり得る。
【0011】
セリア研摩剤は、任意の好適なタイプのセリアであり得る。一実施形態において、セリアは湿式プロセスセリアである。本明細書中で使用される「湿式プロセス」セリアとは、(例えばヒュームドセリアまたは発熱性セリアとは対照的に)沈殿、縮合-重合、または類似のプロセスによって調製されたセリアを意味する。いずれかの特定の理論により束縛されることは望まないものの、湿式プロセスセリアは、球状セリア粒子および/またはより小さい凝集セリア粒子を含むと考えられている。例示的湿式プロセスセリアは、Rhodia社から市販されているHC-60(商標)セリアまたはHC-90(商標)セリアである。
【0012】
別の実施形態において、研磨組成物は、液体キャリヤ中に懸濁した立方体状の酸化セリウム研摩剤粒子を含む研摩剤粒子を含有する。「立方体状」とは、セリア研摩剤粒子が立方体の形をしている、すなわち実質的に立方体であることを意味している。言い方を変えると、立方体状セリア研摩剤粒子は、形状または性質的に立方体である。しかしながら、縁部寸法、隅部および隅部角度は、正確にまたは厳密に完全な立方体のものである必要はない、ということが理解される。例えば、立方体状研摩剤粒子は、わずかに丸味のあるまたは欠けた隅部、わずかに丸味のある縁部、互いに正確に等しくない縁部寸法、正確に90度でない隅部角度、および/または他の小さな不規則性を有し、しかもなお、基本的な立方体形状を保持している場合がある。当業者であれば、立方体状セリア研摩剤粒子が、粒子の成長および解凝集に対して一般に許容される公差を伴って形が立方体であることを容易に認識する(例えば走査電子顕微鏡法または透過電子顕微鏡法を介して)ことができるものである。
【0013】
本明細書中で使用される立方体状セリア研摩剤を含む化学機械研磨組成物は、研摩剤粒子の少なくとも25数パーセントが性質的に立方体である(上述の通り形が立方体である)化学機械研磨組成物である。好ましい実施形態においては、研摩剤粒子の少なくとも40数パーセント(例えば少なくとも60パーセントまたは少なくとも80パーセント)が、性質的に立方体である。以上で指摘した通り、立方体状セリア研摩剤粒子は、例えば約10,000倍~約500,000倍の範囲内の倍率で、TEMまたはSEM画像を用いて容易に評価され計数され得る。SEMまたはTEM画像は、類似の長さ(例えば互いの20パーセント以内)を有する4辺を伴う面を有する研摩剤粒子を示す。画像は同様に、隣接する辺が例えばおおよそ直交しており、約90度の角度を形成している(例えば約80~約100度の範囲内)ことも示している。セリア研摩剤組成物が立方体状セリア研摩剤粒子を含むか否かを決定するために、SEMまたはTEMでの観察が、無作為に選択された粒子(すなわち200超)について行なわれ、こうして統計的分析を行ないそれにより方形面を有する粒子の百分率を決定することが可能になる。保持される粒子は、その画像が顕微鏡写真上で充分目に見えるようなものでなければならない。粒子のいくつかは、その表面および/またはその隅部の1つ以上のいずれかにいくつかの欠陥を示し、それでもなお立方体状として考慮される可能性がある。
【0014】
立方体状セリア研摩剤粒子は、実質的に純粋なセリア研摩剤粒子(不純物について一般公差内)であるか、またはドープされたセリア研摩剤粒子であり得る。ドープされたセリア研摩剤粒子は、格子間ドーパント(通常は占有されていない格子内の空間を占有するドーパント)または置換型ドーパント(セリウムまたは酸素原子が通常占有する格子内の空間を占有するドーパント)を含み得る。このようなドーパントは、例えばCa、Mg、Zn、Zr、ScまたはYを含めた、実質的に任意の金属原子を含み得る。
【0015】
好適な立方体状セリアについてのさらなる説明は、例えば出願番号第62/924,328号などの、本出願と同じ日付で出願された同時係属出願中に見い出すことができる。
【0016】
湿式プロセスセリア粒子は、任意の好適な平均サイズ(すなわち平均粒径)を有することができる。1粒子の粒子サイズは、その粒子を包含する最小の球の直径である。セリア粒子の平均粒子サイズが過度に小さい場合、研磨組成物は充分な除去速度を示さない可能性がある。対照的に、セリア粒子の平均粒子サイズが過度に大きい場合には、研磨組成物は、例えば低い基板均一性などの望ましくない研磨性能を示し得る。したがって、セリア粒子は、約60nm以上、例えば約65nm以上、約70nm以上、約75nm以上、約80nm以上、約85nm以上、または約90nm以上の平均粒子サイズを有することができる。代替的にまたは付加的に、セリア粒子は、約120nm以下、例えば約115nm以下、約110nm以下、約105nm以下または約100nm以下の平均粒子サイズを有することができる。したがって、セリア粒子は、上述の端点のうちのいずれか2つを境界とする平均粒子サイズを有することができる。例えば、セリア粒子は、約60nm~約120nm、例えば約60nm~約115nm、約60nm~約110nm、約60nm~約105nm、約60nm~約100nm、約65nm~約120nm、約65nm~115nm、約70nm~約120nm、約70nm~115nm、約75nm~約120nm、約75nm~115nm、約80nm~約120nm、約80nm~115nm、約85nm~120nm、約85nm~115nm、約90nm~120nmまたは約90nm~115nmの平均粒子サイズを有することができる。非球形の湿式プロセスセリア粒子、例えば小さい凝集体については、粒子のサイズは、粒子を包含する最小球の直径である。セリア粒子の粒子サイズは、任意の好適な技術を用いて、例えばレーザ回析または動的光散乱技術を用いて測定可能である。好適な粒子サイズ測定計器は、例えばMalvern Instuments社(Malvern、UK)から入手可能である。
【0017】
セリア粒子は、好ましくは、発明力ある研磨組成物の中ではコロイド的に安定している。コロイドなる用語は、水中におけるセリア粒子の懸濁を意味する。コロイド安定性は、この懸濁状態の経時的な維持を意味する。本発明に関連して、研摩剤は、それを100mLのメスシリンダ内に入れて2時間撹拌せずに放置したときに、メスシリンダの底部50mL中の粒子の濃度(g/mL単位の[B])とメスシリンダの頂部50mL中の粒子の濃度(g/mL単位の[T])の差を研摩剤組成物中の初期粒子濃度(g/mL単位の[C])で除したものが0.5以下である(すなわち、{[B]-[T]}/[C]≦0.5)場合に、コロイド安定であるとみなされる。より好ましくは、[B]-[T]/[C]の値は0.3以下であり、より好ましくは0.1以下である。
【0018】
研磨組成物は、あらゆる好適な量のセリア研摩剤を含むことができる。本発明の研磨組成物が含むセリア研摩剤が過度に少ない場合、組成物は充分な除去速度を示さない可能性がある。対照的に、研磨組成物が含むセリア研摩剤が過度に多い場合には、組成物は、望ましくない研磨性能を示す可能性があり、費用効果性が高くない可能性があり、かつ/または安定性が欠如している可能性がある。研磨組成物は、約1質量%以下のセリア、例えば約0.9質量%以下、約0.8質量%以下、約0.7質量%以下、約0.6質量%以下、または約0.5質量%以下のセリアを含み得る。代替的に、又は付加的に、研磨組成物は、約0.01質量%以上のセリア、例えば約0.05質量%以上、約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、約0.3質量%以上、約0.4質量%以上または約0.5質量%以上のセリアを含むことができる。したがって、研磨組成物は、上述の端点のいずれか2つを境界とする量でセリアを含むことができる。例えば研磨組成物は、約0.01質量%~約1質量%のセリア、例えば約0.1質量%~約0.9質量%、約0.1質量%~約0.8質量%、約0.1質量%~約0.7質量%、約0.1質量%~約0.6質量%、約0.1質量%~約0.5質量%、約0.05質量%~約1質量%、約0.05質量%~約0.9質量%、約0.05質量%~約0.8質量%、約0.2質量%~約0.7質量%、約0.2質量%~約0.6質量%、約0.2質量%~約0.5質量%、約0.3質量%~約0.6質量%のセリアを含むことができる。
【0019】
研磨組成物は、カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびこれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマを含む。
【0020】
カチオン性ホモポリマは、本質的にカチオン性モノマ繰り返し単位で構成された任意の好適なカチオン性ホモポリマであり得る。例えば、カチオン性ホモポリマは、本質的に繰り返し単位としての第4級アミン基で構成された任意の好適なカチオン性ポリマであり得る。4級化アミン基は、非環式であるかまたは環状構造内に取込まれ得る。4級化アミン基は、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アクリルアミドまたはメタクリレート基から独立して選択された4つの基で置換された四置換窒素原子を含むか、または、環状構造内に取込まれた場合には、窒素原子を含みかつ上述の通りの2つの基でさらに置換された複素環飽和環、または窒素原子に結合した上述の通りのさらなる基を有するN-複素環基(例えばイミダゾールまたはピリジン)のいずれかを含む。4級化アミン基は正電荷を有する(すなわち、結び付けられたアンオン部分を有し、これにより塩を形成するカチオンである)。本発明のカチオン性ポリマはさらに、カチオン性ポリマの溶解度、粘度または他の物理的パラメータを改変するべく、アルキル化、アシル化、エトキシル化などの化学反応によって修飾され得る。好適な第4級アミンモノマには、例えば4級化ビニルイミダゾール(ビニルイミダゾリウム)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(MADQUAT)、ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、エピクロロヒドリンジメチルアミン(epi-DMA)およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態において、カチオン性ポリマは、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むコポリマであり得、ここで少なくとも1種のカチオン性モノマは、コポリマのモルベースで50%超、またはコポリマのモルベースで約50%以下のいずれかを構成する。カチオン性モノマは、カチオン性ホモポリマに関連して本明細書中に記載されている通りであり得る。好適な非イオン性モノマの非限定的な例としては、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、ビニルアルコール、ポリビニルホルマル、ポリビニルブチラール、ポリ(ビニルフェニルケトン)、ビニルピリジン、ポリアクロレイン、エチレン、プロピレン、スチレンおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0022】
好適なカチオン性ポリマには、例えば4級化ポリ(ビニルイミダゾール)メチル硫酸、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド(ポリMADQUAT)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(ポリDADMAC)、ポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテルーアルト-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ウレア](すなわちポリクオタニウム-2)、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマー(ポリクオタニウム-7)、ビニルピロリドンと4級化ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマ(ポリクオタミウム-11)、ビニルピロリドンと4級化ビニルイミダゾールのコポリマ(すなわちポリクオタミウム-16)、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドンおよび4級化ビニルイミダゾールのターポリマ(すなわちポリクオタニウム-46)、および3-メチル-1-ビニルイミダゾリウム メチル硫酸-N-ビニルピロリドンコポリマ(すなわちポリクオタニウム-44)、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマが含まれる。さらに、好適なカチオン性ポリマには、Luviquat(登録商標)Supreme、Luviquat(登録商標)Hold、Luviquat(登録商標)UltraCare、Luviquat(登録商標)FC370、Luviquat(登録商標)FC550、Luviquat(登録商標)FC552、Luviquat(登録商標)Excellence、およびそれらの組み合わせなどの、パーソナルケア用カチオン性ポリマが含まれる。
【0023】
研磨組成物がカチオン性ホモポリマを含む場合、研磨組成物はあらゆる好適な量のカチオン性ホモポリマを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約1ppm以上のカチオン性ホモポリマ、例えば約5ppm以上、約10ppm以上、約15ppm以上、約20ppm以上、約25ppm以上、または約30ppm以上、約50ppm以上のカチオン性ホモポリマを含み得る。代替的に、または付加的に、研磨組成物は、約200ppm以下のカチオン性ホモポリマ、例えば約175ppm以下、約150ppm以下、約125ppm以下、約100ppm以下、約90ppm以下、約85ppm以下、約80ppm以下、約75ppm以下、約70ppm以下、約65ppm以下、約60ppm以下、約55ppm以下または約50ppm以下のカチオン性ホモポリマを含むことができる。したがって、研磨組成物は、上述の端点のいずれか2つを境界とする量のカチオン性ホモポリマを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約1ppm~約200ppmのカチオン性ホモポリマ、例えば約1ppm~約80ppm、約1ppm~約75ppm、約1ppm~約70ppm、約1ppm~約65ppm、約1ppm~約60ppm、約5ppm~約125ppm、約10ppm~約100ppm、約10ppm~約90ppm、約10ppm~約85ppm。約10ppm~約80ppm、約10ppm~約75ppm、約10ppm~約70ppm、約10ppm~約65ppm、約10ppm~約60ppm、約20ppm~約200ppm、約20ppm~約125ppm、約20ppm~約100ppm、約20ppm~約90ppm、約20ppm~約85ppm、約20ppm~約80ppm、約20ppm~約75ppm、約20ppm~約70ppm、約20ppm~約65ppm、約20ppm~約60ppm、約30ppm~約200ppm、約30ppm~約150ppm、約30ppm~約100ppm、約30ppm~約90ppm、約30ppm~約85ppm、約30ppm~約80ppm、約30ppm~約75ppm、約30ppm~約70ppm、約30ppm~約65ppm、または約30ppm~約60ppmのカチオン性ホモポリマを含むことができる。
【0024】
研磨組成物がカチオン性コポリマを含む場合、研磨組成物は、あらゆる好適な量のカチオン性コポリマを含むことができる。例えば研磨組成物は、約1ppm以上のカチオン性コポリマ、例えば約10ppm以上、約20ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上、約120ppm以上、約130ppm以上、約140ppm以上、約150ppm以上、約160ppm以上、約170ppm以上、約180ppm以上、約190ppm以上、または約200ppm以上のカチオン性コポリマを含むことができる。代替的にまたは付加的に、研磨組成物は、約1000ppm以下のカチオン性コポリマ、例えば約950ppm以下、約900ppm以下、約850ppm以下、約800ppm以下、約750ppm以下、約700ppm以下、約650ppm以下、約600ppm以下、約505ppm以下、または約500ppm以下のカチオン性コポリマを含むことができる。したがって、研磨組成物は、上述の端点のいずれか2つを境界とする量でカチオン性コポリマを含むことができる。例えば、研磨組成物は、約1ppm~約1000ppmのカチオン性コポリマ、例えば約1ppm~約750ppm、約1ppm~約600ppm、約1ppm~約500ppm、約10ppm~約950ppm、約100ppm~約900ppm、約100ppm~約850ppm、約100ppm~約800ppm、約100ppm~約750ppm、約100ppm~約700ppm、約100ppm~約650ppm、約100ppm~約600ppm、約100ppm~約550ppm、約100ppm~約500ppm、約110ppm~約500ppm、約120ppm~約500ppm、約130ppm~約500ppm、約140ppm~約500ppm、または約150ppm~約500ppmのカチオン性コポリマを含むことができる。
【0025】
研磨組成物は、水溶性第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含む。いくつかの実施形態において、第4級アンモニウム塩は、
【化1】
から選択された構造を有し、ここでR~Rは、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C10アリール、アクリルアミド、メタクリレート、第1級または第2級アルコール基から独立して選択され、
【化2】
はアニオンである。R基が、C16以上の長さの鎖を含むアルキル、アルケニルまたはアリールタイプである場合には、望ましくない窒化ケイ素除去速度および酸化ケイ素に対する選択性が観察される可能性がある。好ましい水溶性第4級アンモニウム塩は、C16未満のR基を含む。
【0026】
非限定的に、アニオン、
【化3】
は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、メチル硫酸塩、リン酸塩などの一般的なアニオンタイプを含むことができる。好ましいアニオンは、塩化物または臭化物である。酢酸アニオンおよび酢酸塩のものに類似するアニオンは、酸化物に対する選択性の喪失が認められたため、さほど好ましくない。
【0027】
第4級ホスホニウム塩は、
【化4】
という構造を有し、ここでR~Rは、C~C12アルキル、C~C10アリールおよびC~C12アルケニルから独立して選択され、ここで
【化5】
はアニオンである。ホスホニウム塩アニオンは、第4級アンモニウム塩アニオンに関連して本明細書中に記載されている通りであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、研磨組成物は、約75g/mol以上(例えば約80g/mol以上、約90g/mol以上、約100g/mol以上、約110g/mol以上、約120g/mol以上、約130g/mol以上または約140g/mol以上)の分子量を有する
【化6】
を含む第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含む。好適な第4級アンモニウム塩の非限定的例としてはテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラドデシルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩および誘導体類、ベンザルコニウム塩、N-アルキルメチルイミダゾリウム塩、N,N-ジアリールイミダゾリウム塩、N-アルキルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、ベンジルジメチルデシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルヘキシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム塩、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ドデシルエチルジメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩、トリヘキシルテトラデシルアンモニウム塩、[(3-メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム塩、コリン塩、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩などが挙げられる。好適な第四級ホスホニウム塩の非限定的な例としては、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、ジメチルジフェニルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリブチルドデシルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、トリブチルメチルホスホニウム塩、トリブチルオクチルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、トリブチルヘキシルホスホニウム塩が含まれる。
【0029】
研磨組成物は、あらゆる好適な量の第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含むことができる。例えば、研磨組成物は、約10ppm以上の第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、例えば約25ppm以上、約50ppm以上、約100ppm以上である。約110ppm以上、約120ppm以上、約130ppm以上、約140ppm以上、約150ppm以上、約160ppm以上、約170ppm以上、約180ppm以上、約190ppm以上、または約200ppm以上の第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含むことができる。代替的にまたは付加的に、研磨組成物は、約1000ppm以下の第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、例えば約950ppm以下、約900ppm以下、約850ppm以下、約800ppm以下、約750ppm以下、約700ppm以下、約650ppm以下、約600ppm以下、約505ppm以下、または約500ppm以下の第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含むことができる。したがって、研磨組成物は、上述の端点のいずれか2つを境界とする量で第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩を含むことができる。例えば、研磨組成物は約10ppm~約1000ppmの第4級アンモニウム塩、例えば約10ppm~約900ppm、約10ppm~約500ppm、約100ppm~約900ppm、約100ppm~約850ppm、約100ppm~約800ppm、約100ppm~約750ppm、約100ppm~約700ppm、約100ppm~約650ppm、約100ppm~約600ppm、約100ppm~約550ppm、約100ppm~約500ppm、約110ppm~約500ppm、約120ppm~約500ppm、約130ppm~約500ppm、約140ppm~約500ppm、または約150ppm~約500ppmの第4級アンモニウム塩を含むことができる。
【0030】
化学機械研磨組成物は、研磨組成物のpHを調整する能力を有する(すなわちこれを調整する)1つ以上の化合物(すなわちpH調整用化合物)を含むことができる。研磨組成物のpHは、研磨組成物のpHを調整する能力を有する任意の好適な化合物を用いて調整可能である。pH調製用化合物は、望ましくは、水溶性でありかつ、研磨組成物の他の構成成分と相溶性がある。典型的には、化学機械研磨組成物は、ユースポイントにおいて約5~約8のpHを有する。好ましくは、化学機械研磨組成物は、ユースポイントにおいて5~約7のpH、例えば約5~約6のpHを有する。
【0031】
pH調製用作用物質は、実質的に任意の好適なpH調製用作用物質、例えばアルキルアミン、アルコールアミン、第4級アミン水酸化物、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、カルボン酸、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩、アゾール、アルキルアンモニウム塩基または共役酸、アルキルアンモニウム水酸化物、アンモニウムアルコキシドまたはその共役酸、それらの混合物などであり得る。一部の実施形態において、好適なpH調製用作用物質は、トリエタノールアミン(TEA)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAHまたはTMA-OH)、またはテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAHまたはTEA-OH)を含み得る。研磨組成物は、以上で記載したpH範囲内の研磨組成物のpHを達成および/または維持するのに充分な濃度のpH調製用作用物質を含むことができる。
【0032】
化学機械研磨組成物は任意にはさらに1つ以上の添加物を含む。例示的添加物には、コンディショナ、錯化剤、キレート剤、殺生物剤、レオロジ改質剤および分散剤が含まれる。
【0033】
殺生物剤または殺真菌剤が存在する場合それらは、任意の好ましくない単細胞または多細胞生物の成長制限、ゼロ成長、排除またはそれらの間のいずれかの活動を標示するものとして殺生物または殺真菌特性を有するかまたは示す任意の好適な添加物であり得、研磨組成物内にあらゆる好適な量で存在することができる。非限定的に、好適な殺生物剤はイソチアゾリノンを含み得る。典型的に、研磨組成物は、約1ppm~約100ppmの殺生物剤、好ましくは約10ppm~約20ppmの殺生物剤を含む。ジ第4級アンモニウム界面活性剤などの好適な殺真菌剤を使用してもよい。
【0034】
研磨組成物は、任意の好適な技術によって生産可能であり、その多くが当業者には公知である。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスにおいて調製可能である。概して、研磨組成物は、研磨組成物の構成成分を組合わせることによって調製される。本明細書中で使用される「構成成分」なる用語には、個別の成分(例えばセリア、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、あらゆるpH調製剤、および/またはあらゆる添加物)、ならびに成分(例えばセリア、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤)のあらゆる組合せが含まれる。
【0035】
例えば、研磨組成物は、(i)水の全てまたは一部分を提供するステップ、(ii)セリア粒子、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤、および/または任意の添加物を、このような分散を調製するために好適な任意の手段を用いて分散させるステップ、(iii)必要に応じて分散のpHを調整するステップ、および(iv)任意には、好適な量のあらゆる他の任意の構成成分および/または混合物に添加するステップ、によって調製可能である。
【0036】
代替的には、研磨組成物は、(i)セリアスラリ中に1つ以上の構成成分(例えば水、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤および/またはあらゆる任意の添加物)を提供するステップ、(ii)添加物溶液中に1つ以上の構成成分(例えば、水、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤、および/またはあらゆる任意の添加物)を提供するステップ、(iii)セリアスラリと添加物溶液を組合わせて混合物を形成するステップ、(iv)任意には、好適な量のあらゆる他の任意の添加物を混合物に添加するステップ、および(v)必要に応じて混合物のpHを調整するステップ、によって調製可能である。
【0037】
研磨組成物は、セリア粒子、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤、および/またはあらゆる任意の添加物および水を含むワンパッケージシステムとして供給可能である。代替的には、本発明の研磨組成物は、セリアスラリと添加物溶液を含むツーパッケージシステムとして供給され得、ここでセリアスラリは、セリア粒子、任意のpH調製剤および水で本質的に構成または構成されており、添加物溶液は、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤および/またはあらゆる任意の添加物で本質的に構成または構成されている。ツーパッケージシステムは、2つのパッケージ、すなわちセリアスラリと添加物溶液の配合比を変更することによって、基板の包括的平坦化特性および研磨速度の調整を可能にする
【0038】
このようなツーパッケージ研磨システムを使用するために、さまざまな方法を用いることができる。例えば、セリアスラリおよび添加物溶液は、供給配管の出口で接合され連結されている異なるパイプによって、研磨テーブルへと送達され得る。セリアスラリおよび添加物溶液を研磨の少し前または直前に混合するかまたは研磨テーブル上に同時に供給することが可能である。さらに、2つのパッケージを混合するときに、要望通りに脱イオン水を添加して、研磨組成物および結果としての基板研磨特性を調整することが可能である。
【0039】
同様にして、本発明に関連して3、4、またはそれ以上のパッケージのシステムを利用することができ、ここで、多数の容器の各々は、発明力ある化学機械研磨組成物の異なる構成成分、1つ以上の任意の構成成分および/または異なる濃度で同じ構成成分の1つ以上を含んでいる。
【0040】
ユースポイントまたはその近傍で研磨組成物を作り出すために2つ以上の保管デバイス内に格納された構成成分を混合する目的で、保管デバイスには、各々の保管デバイスから研磨組成物のユースポイント(例えばプラテン、研磨パッドまたは基板表面)まで導く1つ以上のフローラインが具備されている。本明細書中で使用される「ユースポイント」なる用語は、研磨組成物が基板表面に適用される点(例えば研磨パッドまたは基板表面自体)を意味する。「フローライン」なる用語は、個別の保管容器からその内部に保管されている構成成分のユースポイントまでの流れ経路を意味している。フローラインは各々直接ユースポイントに導くことができ、あるいは、2つ以上のフローラインを、いずれかの点においてユースポイントに導く単一のフローラインへと組合わせることもできる。さらに、フローラインのいずれか(例えば個別のフローラインまたは組合せ型フローライン)を最初に1つ以上の他のデバイス(例えば圧送デバイス、測定デバイス、混合デバイスなど)に導き、その後構成成分のユースポイントに到達することが可能である。
【0041】
研磨組成物の構成成分は、独立した形でユースポイントに送達され得(例えば、構成成分は基板表面に送達され、その時点で構成成分は研磨プロセス中に混合される)、あるいは1つ以上の構成成分を、ユースポイントへの送達の前、例えばユースポイントへの送達の少し前または直前に組合わせることも可能である。構成成分は、混合された形でのプラテン上への添加前の約5分以内の時間に、例えば混合された形でのプラテン上への添加前の約4分以内、約3分以内、約2分以内、約1分以内、約45秒以内、約30秒以内、約10秒以内の時間に、あるいは、ユースポイントでの構成成分の送達と同時に組合わされた(例えば構成成分はディスペンサにおいて組合わされる)場合に、「ユースポイントへの送達の直前」に組合わされたことになる。同様に、構成成分は、ユースポイントの5メートル以内、例えばユースポイントの1メートル以内、さらにはユースポイントの10cm以内(例えばユースポイントの1cm以内)で組合わされた場合にも、「ユースポイントへの送達の直前に」組合わされたことになる。
【0042】
研磨組成物の構成成分の2つ以上がユースポイントに達する前に組合わされる場合、混合デバイスを使用することなく、フローライン内で構成成分を組合わせ、ユースポイントに送達することができる。代替的には、フローラインの1つ以上が、混合デバイス内に通じていて、2つ以上の構成成分の組合せを容易にすることができる。任意の好適な混合デバイスを使用することができる。例えば、混合デバイスは、2つ以上の構成成分が中を流れるノズルまたはジェット(例えば高圧ノズルまたはジェット)であり得る。代替的には、混合デバイスは、研磨スラリの2つ以上の構成成分がミキサに導入されるときに通る1つ以上の入口と、混合済み構成成分がミキサを退出して直接または装置の他の要素を介して(例えば1つ以上のフローラインを介して)ユースポイントに送達されるときに通る少なくとも1つの出口とを含む容器タイプの混合デバイスであり得る。さらに、混合デバイスは、2つ以上のチャンバを含むことができ、各チャンバは少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口を有し、ここで2つ以上の構成成分が各チャンバ内で組合わされている。容器型混合デバイスが使用される場合、混合デバイスは好ましくは、構成成分の組合せをさらに容易にするための混合機構を含む。混合機構は概して、当該技術分野において公知であり、撹拌棒、ブレンダ、撹拌機、パドル付きバッフル、ガススパージャシステム、振動器などを含む。
【0043】
研磨組成物は同様に、使用前に適切な量の水で希釈されるよう意図された濃縮物としても提供され得る。このような実施形態においては、研磨組成物濃縮物は、適量の水で濃縮物を希釈した時点で研磨組成物の各構成成分が、各構成成分について以上で列挙した適正な範囲内の量で研磨組成物内に存在することになるような量で、研磨組成物の構成成分を含む。例えば、セリア粒子、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤および/またはあらゆる任意の添加物は各々、濃縮物が等体積の水(例えばそれぞれ、2等体積の水、3等体積の水、4等体積の水、または5等体積の水)で希釈されたとき、各構成成分が各構成成分について以上で明記した範囲内の量で研磨組成物内に存在することになるような形で、各構成成分について以上で列挙した濃度の約2倍(例えば約3倍、約4倍または約5倍)の量で濃縮物中に存在することができる。さらに、当業者であれば理解するように、濃縮物は、セリア、カチオン性ポリマ、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩、任意のpH調製剤および/またはあらゆる任意の添加物が濃縮物中で少なくとも部分的にまたは完全に溶解させられることを保証するために、最終的研磨組成物中に存在する適切な割合の水を含有することができる。
【0044】
本発明は同様に、本明細書中に記載の研磨組成物で基板を化学機械研磨する方法をも提供する。詳細には、本発明は、基板を化学機械研磨する方法において、(i)基板を提供するステップと、(ii)研磨パッドを提供するステップと、(iii)(a)セリア粒子を含む研摩剤と、(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、(d)水と、を含み、約5~約8のpHを有する化学機械研磨組成物を提供するステップと、(iv)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と基板を接触させるステップと、(v)基板との関係において研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を移動させて、基板の表面の一部分を研削し、これにより基板を研磨するステップと、を含む方法を提供する。
【0045】
化学機械研磨組成物は、あらゆる好適な基板を研磨するために使用可能であり、低誘電材料で構成された少なくとも1つの層(典型的には表面層)を含む基板を研磨するために特に有用である。好適な基板としては、半導体産業で使用されるウエハが含まれる。ウエハは典型的に、例えば金属、金属酸化物、金属窒化物、金属複合材料、金属合金、低誘電材料またはそれらの組合せを含むかまたはこれらで構成されている。本発明の方法は、酸化ケイ素、窒化ケイ素および/またはポリシリコン、例えばこれらの材料のうちのいずれか1つ、2つまたは3つを含む基板を研磨するために極めて有用である。
【0046】
一部の実施形態において、基板は、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素と組合わせた形でポリシリコンを含む。ポリシリコンは、あらゆる好適なポリシリコンであり得、その多くが当該技術分野において公知である。当該技術分野においては、ポリシリコン基板が同様にドープ剤も含有し得るということは周知である。ポリシリコンのためのあらゆる好適なドープ剤を使用することができる。非限定的に、一般的ドープ剤は、ホウ素およびリンを含む。ポリシリコン基板は、あらゆる好適な位相を有することができ、非晶質、結晶質またはそれらの組合せであり得る。窒化ケイ素は同様に、当該技術分野で公知のあらゆる好適なタイプのものである。一般的タイプには、非限定的に、PEまたはLPが含まれ得る。窒化ケイ素組成物中のSiとNのあらゆる比率が好適であり得る。同様にして、酸化ケイ素は、あらゆる好適な酸化ケイ素であり得、その多くが当該技術分野において公知である。好適な酸化ケイ素タイプには、非限定的に、TEOS、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、PETEOS、熱酸化物、未ドープケイ酸塩ガラス、HDP酸化物が含まれる。
【0047】
当該技術分野で周知であるように、ポリシリコンの応用の性質およびその固有の特性に起因して、平坦化ステップを行なう前にポリシリコン薄膜を調製する必要があるかもしれない。吸湿性でかつ空気に敏感な材料であるケイ素は、水または大気酸素に対して曝露した時点で酸化物パッシベーション層を形成する。本明細書中で提示された実施形態を用いて、ポリシリコン薄膜の組成および性質に応じて、この偶発性自然酸化物層をポリシリコンから除去するための準備ステップが必要となる場合がある。ポリシリコンを調製するための方法は、当該技術分野周知であり、非限定的に;1)酸化物比率の高いスラリ組成物を用いた追加のCMPステップまたは;2)自然酸化物を除去して新鮮な酸化度の低いポリシリコン表面を露出するために、増大した工具下向き力で本発明の一実施形態を使用するステップを含む。したがって、ポリシリコンについて本明細書中に記載の研磨速度は、自然酸化物が除去された後の研磨速度を反映するということが理解される。
【0048】
本発明の化学機械研磨組成物は、望ましいことに、本発明の方法にしたがって酸化ケイ素を含む基板を研磨するとき、低い除去速度を示す。例えば、本発明の一実施形態にしたがって、高密度プラズマ(HDP)酸化物および/またはプラズマ助長オルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)および/またはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を含むシリコンウエハを研磨する場合、研磨組成物は、望ましくは約500Å/min以下、例えば約400Å/min以下、約300Å/min以下、約200Å/min以下、約100Å/min以下、約50Å/min以下、約40Å/min以下、約30Å/min以下、約20Å/min以下、または約10Å/min以下の酸化ケイ素除去速度を示す。
【0049】
本発明の化学機械研磨組成物は、望ましいことに、本発明の方法にしたがって窒化ケイ素を含む基板を研磨するとき、高い除去速度を示す。例えば、本発明の一実施形態にしたがって、窒化ケイ素を含むシリコンウエハを研磨する場合、研磨組成物は、望ましくは約500Å/min以上、例えば約600Å/min以上、約700Å/min以上、約800Å/min以上、約900Å/min以上、約1000Å/min以上、約1100Å/min以上、約1200Å/min以上、約1300Å/min以上、約1400Å/min以上または約1500Å/min以上の窒化ケイ素除去速度を示す。
【0050】
本発明の化学機械研磨組成物は、望ましいことに、本発明の方法にしたがってポリシリコンを含む基板を研磨するとき、高い除去速度を示す。例えば、本発明の一実施形態にしたがって、ポリシリコンを含むシリコンウエハを研磨する場合、研磨組成物は、望ましくは約500Å/min以上、例えば約600Å/min以上、約700Å/min以上、約800Å/min以上、約900Å/min以上、約1000Å/min以上、約1100Å/min以上、約1200Å/min以上、約1300Å/min以上、約1400Å/min以上または約1500Å/min以上のポリシリコン除去速度を示す。
【0051】
いくつかの実施形態において、基板は、基板の表面上に窒化ケイ素を含み、基板の表面上の窒化ケイ素の少なくとも一部分は、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、基板はさらに、その表面上に酸化ケイ素を含む。これらの実施形態においては、基板の表面上の酸化ケイ素の少なくとも一部分は、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、ここで酸化ケイ素除去速度は窒化ケイ素除去速度よりも低い。
【0052】
他の実施形態において、基板は、基板の表面上にポリシリコンを含み、基板の表面上のポリシリコンの少なくとも一部分は、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、基板はさらに、その表面上に酸化ケイ素を含む。これらの実施形態においては、基板の表面上の酸化ケイ素の少なくとも一部分は、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、ここで酸化ケイ素除去速度はポリシリコン除去速度よりも低い。
【0053】
いずれかの特定の理論により束縛されることは望まないものの、カチオン性ポリマは酸化ケイ素の表面上に優先的に吸着されると考えられている。カチオン性ポリマは、酸化ケイ素表面上に保護膜を形成して、研磨組成物と酸化ケイ素表面の間の接触を阻止し、これにより、酸化ケイ素除去速度が低減されることになる一方で、有利にも窒化ケイ素除去速度は有意な影響を受けないと考えられている。第4級アンモニウム塩の添加により、酸化ケイ素表面の被覆率が改善されることで酸化ケイ素の停止能力の改善が提供され、こうして、酸化ケイ素の除去が大幅に削減または阻止されることになる。さらに、第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩はカチオン性ポリマを溶液中に分配するために機能し、こうして、パッド/ウエハの表面のために利用可能なカチオン性ポリマがより多く存在することになる。
【0054】
本発明の化学機械研磨組成物および方法は、化学機械研磨装置と併用するのに特に適している。典型的には、該装置は、使用中運動していて、軌道運動、直線運動または円運動の結果生じる速度を有するプラテン、このプラテンと接触し運動中プラテンと共に移動する研磨パッド、そして研磨パッドの表面との関係において基板を接触させこれを移動させることによって研磨すべき基板を保持するキャリヤを含む。基板の研磨は、基板が本発明の研磨パッドおよび研磨組成物と接触して設置されていること、そしてその後研磨パッドが基板との関係において移動して基板の少なくとも一部分を研削して基板を研磨することによって行なわれる。
【0055】
あらゆる好適な研磨パッド(例えば研磨表面)を用いて、基板を化学機械研磨組成物で研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば製織および不織研磨パッドが含まれる。その上、好適な研磨パッドは、変動する密度、硬度、厚み、圧縮率、圧縮時反発能力および圧縮係数を有するあらゆる好適なポリマを含むことができる。好適なポリマには、例えばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの同時成形製品およびそれらの混合物が含まれる。軟質ポリウレタン研磨パッドは、発明力ある研磨方法との併用で極めて有用である。典型的パッドには、非限定的に、EPICD100、NexPlanar Elementシリーズ、NexPlanar Ultraシリーズ、Ikonic3000、Visionpad5000、IC1010が含まれる。好ましい研磨パッドとしては、Cabot Microelectronicsから市販されているNexPlanar E6088およびNexPlanar U5050パッドが含まれる。
【0056】
望ましくは、化学機械研磨装置はさらに、インサイチュ研磨終点検出システムを含んでおり、その多くは当該技術分野公知である。研磨中の基板の表面から反射された光または他の放射物を分析することにより研磨プロセスを検査し監視するための技術が、当該技術分野公知である。このような方法は、例えば、米国特許第5,196,353号、米国特許第5,433,651号、米国特許第5,609,511号、米国特許第5,643,046号、米国特許第5,658,183号、米国特許第5,730,642号、米国特許第5,838,447号、米国特許第5,872,633号、米国特許第5,893,796号、米国特許第5,949,927号および米国特許第5,964,643号中に記載されている。望ましくは、研磨中の基板との関係における研磨プロセスの進捗の検査または監視は、研磨終点の決定、すなわち特定の基板に関していつ研磨プロセスを終結させるかの決定を可能にする。
【0057】
本発明は、以下の実施形態によって特徴付けることが可能である。
【0058】
(1)実施形態1では、
(a)セリア粒子を含む研磨剤と、
(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、
(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、
(d)水と、
を含む化学機械研磨組成物において、約5~約8のpHを有する研磨組成物が提示されている。
【0059】
(2)実施形態2では、約0.01質量%から約1質量%のセリア粒子を含む、実施形態(1)に記載の研磨組成物が提示されている。
【0060】
(3)実施形態3では、セリア粒子が約60nm~約120nmの平均粒子サイズを有する、実施形態(1)または(2)に記載の研磨組成物が提示されている。
【0061】
(4)実施形態(4)では、カチオン性ホモポリマを含み、約1ppm~約200ppmのカチオン性ホモポリマを含む、実施形態(1)~(3)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。
【0062】
(5)実施形態(5)では、カチオン性ホモポリマが、カチオン性モノマ繰り返し単位で本質的に構成されたあらゆる好適なカチオン性ホモポリマであり得る、実施形態(4)に記載の研磨組成物が提示されている。例えば、カチオン性ホモポリマは、繰り返し単位としての第4級アミン基で本質的に構成されているあらゆる好適なカチオン性モノマであり得る。4級化アミン基は非環式であるかまたは環状構造内に取込まれている。4級化アミン基は、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アクリルアミドまたはメタクリレート基の中から独立して選択された4つの基で置換された4置換窒素原子を含むか、あるいは環状構造内に取込まれている場合には窒素原子を含みかつ上述の通りの2つの基でさらに置換された複素環飽和環か、または窒素原子に結合した上述の通りのさらなる基を有するN複素環基(例えばイミダゾールまたはピリジン)のいずれかを含む。4級化アミン基は、正電荷を有する(すなわち、結び付けられたアニオン部分を有するカチオンであり、これにより塩を形成する)。同様に、カチオン性ポリマをアルキル化、アシル化、エトキシル化または他の化学反応によってさらに修飾して、カチオン性ポリマの溶解度、粘度または他の物理的パラメータを改変することも好適である。好適な第4級アミンモノマには、例えば4級化ビニルイミダゾール(ビニルイミダゾリウム)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(MADQUAT)、ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、エピクロロヒドリン-ジメチルアミン(エピ-DMA)およびこれらの組み合わせが含まれる。適切なカチオンポリマーとしては、例えば、四級化ポリ(ビニルイミダゾール)メチル硫酸、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド(ポリMADQUAT)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(ポリDADMAC)、ポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-アルト-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ウレア](すなわちポリクオタニウム-2)およびそれらの組み合わせなどが含まれる。
【0063】
(6)実施形態(6)では、カチオン性コポリマを含み、約1ppm~約1000ppmのカチオン性コポリマを含む、実施形態(1)~(3)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。
【0064】
(7)実施形態(7)では、カチオン性コポリマが少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含み、少なくとも1種のカチオン性モノマがモルベースで50%超のコポリマまたはモルベースで約50%以下のコポリマのいずれかを含む、実施形態(6)に記載の研磨組成物が提示されている。カチオン性モノマは、カチオン性ホモポリマに関連して本明細書中で説明されている通りであり得る。好適な非イオン性モノマの非限定的な例としては、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、ビニルアルコール、ポリビニルホルマル、ポリビニルブチラール、ポリ(ビニルフェニルケトン)、ビニルピリジン、ポリアクロレイン、エチレン、プロピレン、スチレンおよびそれらの組合せが含まれる。好適なカチオン性コポリマには、例えば、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマ(すなわちポリクオタニウム-7)、ビニルピロリドンと四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマ(すなわちポリクオタミウム-11)、ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールのコポリマ(すなわちポリクオタミウム-16)、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、および第4級化ビニルイミダゾールのターポリマ(すなわちポリクオタニウム-46)、および3-メチル-1-ビニルイミダゾリウム メチルサルフェート-N-ビニルピロリドンコポリマ(すなわちポリクオタニウム-44)、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマーが含まれる。さらに、好適なカチオン性ポリマには、Luviquat(登録商標)Supreme、Luviquat(登録商標)Hold、Luviquat(登録商標)UltraCare、Luviquat(登録商標)FC370、Luviquat(登録商標)FC550、Luviquat(登録商標)FC552、Luviquat(登録商標)Excellenceなどのパーソナルケア用のカチオン性ポリマが含まれる。
【0065】
(8)実施形態(8)では、第4級アンモニウム塩を含み、第4級アンモニウムが約75g/mol以上の分子量を有する第4級アンモニウムカチオンを含むハロゲン化物である、実施形態(1)~(7)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。好適な第4級アンモニウム塩の非限定的例には、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラドデシルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩および誘導体、ベンザルコニウム塩、N-アルキルメチルイミダゾリウム塩、N,N-ジアリールイミダゾリウム塩、N-アルキルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、ベンジルジメチルデシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルヘキシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム塩、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ドデシルエチルジメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩、トリヘキシルテトラデシルアンモニウム塩、[(3-メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム塩、コリン塩、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩が含まれる。
【0066】
(9)実施形態(9)では、第4級アンモニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの第4級アンモニウム塩を含む、実施形態(1)~(7)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。
【0067】
(10)実施形態(10)では、第4級ホスホニウム塩を含み、第4級ホスホニウム塩が、約94g/mol以上の分子量を有する第4級ホスホニウムカチオンを含むハロゲン化物である、実施形態(1)~(7)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。好適な第4級ホスホニウム塩の非限定的な例には、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、ジメチルジフェニルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリブチルドデシルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、トリブチルメチルホスホニウム塩、トリブチルオクチルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、トリブチルヘキシルホスホニウム塩などが含まれる。
【0068】
(11)実施形態(11)では、第4級ホスホニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの第4級ホスホニウム塩を含む、実施形態(1)~(7)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。
【0069】
(12)実施形態(12)では、基板を化学機械研磨する方法において、
(i)基板を提供するステップと、
(ii)研磨パッドを提供するステップと、
(iii)(a)セリア粒子を含む研摩剤と、
(b)カチオン性ホモポリマ、少なくとも1種のカチオン性モノマおよび少なくとも1種の非イオン性モノマを含むカチオン性コポリマ、およびそれらの組合せの中から選択されたカチオン性ポリマと、
(c)第4級アンモニウム塩または第4級ホスホニウム塩と、
(d)水と、
を含み、約5~約8のpHを有する化学機械研磨組成物を提供するステップと、
(iv)研磨パッドおよび化学機械研磨組成物と基板を接触させるステップと、
(v)基板との関係において研磨パッドおよび化学機械研磨組成物を移動させて、基板の表面の一部分を研削し、これにより基板を研磨するステップと、
を含む、方法が提示されている。
【0070】
(13)実施形態(13)では、研磨組成物が、約0.01質量%から約1質量%のセリア粒子を含む、実施形態(12)に記載の方法が提示されている。
【0071】
(14)実施形態(14)では、セリア粒子が約60nm~約120nmの平均粒子サイズを有する、実施形態(12)または(13)に記載の方法が提示されている。
【0072】
(15)実施形態(15)では、研磨組成物が、カチオン性ホモポリマを含み、約1ppm~約200ppmのカチオン性ホモポリマを含む、実施形態(12)~(14)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0073】
(16)実施形態(16)では、カチオン性ホモポリマが、カチオン性モノマ繰り返し単位で本質的に構成されたあらゆる好適なカチオン性ホモポリマであり得る、実施形態(15)に記載の方法が提示されている。例えば、カチオン性ホモポリマは、繰り返し単位としての第4級アミン基で本質的に構成されているあらゆる好適なカチオン性モノマであり得る。4級化アミン基は非環式であるかまたは環状構造内に取込まれている。4級化アミン基は、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アクリルアミドまたはメタクリレート基の中から独立して選択された4つの基で置換された4置換窒素原子を含むか、あるいは、環状構造内に取込まれている場合には窒素原子を含みかつ上述の通りの2つの基でさらに置換された複素環飽和環か、または窒素原子に結合した上述の通りのさらなる基を有するN-複素環基(例えばイミダゾールまたはピリジン)のいずれかを含む。4級化アミン基は、正電荷を有する(すなわち、結び付けられたアニオン部分を有するカチオンであり、これにより塩を形成する)。同様に、カチオン性ポリマをアルキル化、アシル化、エトキシル化または他の化学反応によってさらに修飾して、カチオン性ポリマの溶解度、粘度または他の物理的パラメータを改変することも好適である。好適な第4級アミンモノマには、例えば4級化ビニルイミダゾール(ビニルイミダゾリウム)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(MADQUAT)、ジアリルジメチルアンモニウム(DADMAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム(MAPTAC)、エピクロロヒドリン-ジメチルアミン(エピ-DMA)およびこれらの組み合わせが含まれる。適切なカチオンポリマーとしては、例えば、四級化ポリ(ビニルイミダゾール)メチル硫酸、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)クロリド(ポリMADQUAT)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(ポリDADMAC)、ポリ(ジメチルアミン-コ-エピクロロヒドリン)、ポリ[ビス(2-クロロエチル)エーテル-アルト-1,3-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ウレア](すなわちポリクオタニウム-2)およびそれらの組み合わせなどが含まれる。
【0074】
(17)実施形態(17)では、研磨組成物が、カチオン性コポリマを含み、約1ppm~約1000ppmのカチオン性コポリマを含む、実施形態(12)~(14)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0075】
(18)実施形態(18)では、カチオン性コポリマが少なくとも1種のカチオン性モノマと少なくとも1種の非イオン性モノマを含み、少なくとも1種のカチオン性モノマがモルベースで50%超のコポリマまたはモルベースで約50%以下のコポリマのいずれかを含む、実施形態(17)に記載の方法が提示されている。カチオン性モノマは、カチオン性ホモポリマに関連して本明細書中で説明されている通りであり得る。好適な非イオン性モノマの非限定的な例としては、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、アクリルアミド、ビニルアルコール、ポリビニルホルマル、ポリビニルブチラール、ポリ(ビニルフェニルケトン)、ビニルピリジン、ポリアクロレイン、エチレン、プロピレン、スチレンおよびそれらの組合せが含まれる。好適なカチオン性コポリマには、例えば、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマ(すなわちポリクオタニウム-7)、ビニルピロリドンと四級化ジメチルアミノエチルメタクリレートのコポリマ(すなわちポリクオタミウム-11)、ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールのコポリマ(すなわちポリクオタミウム-16)、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、および第4級化ビニルイミダゾールのターポリマ(すなわちポリクオタニウム-46)、および3-メチル-1-ビニルイミダゾリウム メチルサルフェート-N-ビニルピロリドンコポリマ(すなわちポリクオタニウム-44)、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムのコポリマが含まれる。さらに、好適なカチオン性ポリマには、Luviquat(登録商標)Supreme、Luviquat(登録商標)Hold、Luviquat(登録商標)UltraCare、Luviquat(登録商標)FC370、Luviquat(登録商標)FC550、Luviquat(登録商標)FC552、Luviquat(登録商標)Excellenceなどのパーソナルケア用のカチオン性ポリマが含まれる。
【0076】
(19)実施形態(19)では、研磨組成物が、第4級アンモニウム塩を含み、第4級アンモニウムが約75g/mol以上の分子量を有する第4級アンモニウムカチオンを含むハロゲン化物である、実施形態(12)~(18)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。好適な第4級アンモニウム塩の非限定的例には、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラドデシルアンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウム塩および誘導体、ベンザルコニウム塩、N-アルキルメチルイミダゾリウム塩、N,N-ジアリールイミダゾリウム塩、N-アルキルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、ベンジルジメチルデシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルヘキシルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム塩、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、ドデシルエチルジメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩、トリヘキシルテトラデシルアンモニウム塩、[(3-メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム塩、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム塩、コリン塩、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム塩が含まれる。
【0077】
(20)実施形態(20)では、研磨組成物が、第4級アンモニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの第4級アンモニウム塩を含む、実施形態(12)~(18)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0078】
(21)実施形態(21)では、研磨組成物が、第4級ホスホニウム塩を含み、第4級ホスホニウム塩が、約94g/mol以上の分子量を有する第4級ホスホニウムカチオンを含むハロゲン化物である、実施形態(12)~(18)のいずれか1つに記載の研磨組成物が提示されている。好適な第4級ホスホニウム塩の非限定的な例には、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩、ジメチルジフェニルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、ブチルトリフェニルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、トリブチルドデシルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、イソプロピルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、トリブチルメチルホスホニウム塩、トリブチルオクチルホスホニウム塩、トリフェニルプロピルホスホニウム塩、トリブチルヘキシルホスホニウム塩などが含まれる。
【0079】
(22)実施形態(22)では、研磨組成物が、第4級ホスホニウム塩を含み、約10ppm~約1000ppmの第4級ホスホニウム塩を含む、実施形態(12)~(18)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0080】
(23)実施形態(23)では、基板がその表面上に窒化ケイ素を含み、基板の表面上の窒化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、実施形態(12)~(22)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0081】
(24)実施形態(24)では、基板がさらにその表面上に酸化ケイ素を含み、基板の表面上の酸化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、酸化ケイ素除去速度が窒化ケイ素除去速度よりも低い、実施形態(23)に記載の方法が提示されている。
【0082】
(25)実施形態(25)では、基板がその表面上にポリシリコンを含み、基板の表面上のポリシリコンの少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、実施形態(12)~(22)のいずれか1つに記載の方法が提示されている。
【0083】
(26)実施形態(26)では、基板がさらにその表面上に酸化ケイ素を含み、基板の表面上の酸化ケイ素の少なくとも一部分が、いずれかの除去速度で研削され、前記基板が研磨される、酸化ケイ素除去速度がポリシリコン除去速度よりも低い、実施形態(25)に記載の方法が提示されている。
【0084】
以下の例は本発明をさらに例示するが、いかなる形であれその範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例
【0085】
例1
この例は、本発明の一実施形態に係る、SiNおよびSiOの除去速度に対するセリア粒子サイズの効果を実証する。
【0086】
SiNおよびSiO層を含む基板を、研磨組成物1Aおよび研磨組成物1Bで別個に研磨した。研磨組成物1Aは、pH5.3で、平均粒子サイズ60nmのセリア0.2質量%と、30ppmのポリMADQUAT(ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド)(すなわちカチオン性ホモポリマ)を含んでいた。研磨組成物1Bは、pH5.3で、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.2質量%と、30ppmのポリMADQUATを含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、113rpm;回転(キャリヤ)、107rpm;スラリ流量、250mL/min;下向きの力、3psi(20.7kPa);研磨時間、60秒。
【0087】
研磨後、SiNおよびSiOの除去速度を決定し結果は表1に記されている。SiN/SiO選択性は、SiN除去速度対SiO除去速度の比である。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に記された結果から明らかであるように、平均粒子サイズ90~110nmのセリアを含んでいた研磨組成物1Bは、平均粒子サイズ60nmのセリアを含んでいた研磨組成物1Aが示したSiNおよびSiO除去速度よりもおよそ269%および677%大きいSiNおよびSiO除去速度を示した。研磨組成物1Aおよび1Bは両方共、望ましいSiN/SiO選択性を示し、研磨組成物1Bは、研磨組成物1Aが示したSiN/SiO選択性のおよそ47%であるSiN/SiO選択性を示した。
【0090】
例2
この例は、本発明の一実施形態に係る、カチオン性ホモポリマおよびカチオン性コポリマをpH5.0で含む研磨組成物が示すSiNおよびSiO除去速度に対する、これらのカチオン性ホモポリマおよびカチオン性コポリマの濃度の効果を実証している。
【0091】
SiNまたはSiO層を含む基板を研磨組成物2A~2Eで別個に研磨した。研磨組成物2A~2Eは、pH5.0で水中に平均粒子サイズ60nmのセリア0.2質量%、30ppmの酢酸緩衝液および殺生物剤を含んでいた。研磨組成物2A(対照)は、いかなる追加の構成成分も含んでいなかった。研磨組成物2Bおよび2Cはさらに、それぞれ30ppmまたは150ppmのポリDADMACホモポリマを含んでいた。研磨組成物2Dおよび2Eはさらに、アクリルアミドとのポリDADMACコポリマをそれぞれ30ppmまたは150ppm含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、100rpm;回転(キャリヤ)85rpm;スラリ流量、150mL/min;下向きの力、2.5psi(17.2kPa);SiNの研磨時間、40秒;SiOの研磨時間、120秒。
【0092】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表2に記されている。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に記された結果から明らかであるように、研磨組成物2B中の30ppmから研磨組成物2C中の150ppmまでポリDADMACカチオン性ホモポリマの濃度を上昇させた結果として、SiN除去速度はおよそ59%低下し、SiO除去速度はおよそ50%低下した。研磨組成物2D中の30ppmから研磨組成物2E中150ppmへとポリDADMACカチオン性コポリマの濃度を上昇させた結果、SiN除去速度の低下は有意でないが、SiO除去速度はおよそ85%低下し、その結果SiN/SiO選択性は0.61から3.8に改善した。したがって、ポリDADMACカチオン性コポリマの濃度を上昇させると、SiN除去速度には有意な影響無く、SiN/SiO選択性が改善され、SiO除去速度も有意に低下し、これにより、有利なSiN/SiO選択性が維持された。
【0095】
例3
この例は、特定のカチオン性ポリマをpH7で含む研磨組成物が示すSiNおよびSiO除去速度に対する、このカチオン性ポリマの効果を実証している。
【0096】
SiNまたはSiO層を含む基板を研磨組成物3A~3Fで別個に研磨した。研磨組成物3A~3Fは、pH7で水中に、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.4質量%および、40ppmのトリエタノールアミン緩衝液を含んでいた。研磨組成物3A(対照)は、いかなる追加の構成成分も含んでいなかった。研磨組成物3Bはさらに、30%のDADMA(モノマ)を含む25ppmのDADMACビニルピロリドンコポリマを含んでいた。研磨組成物3Cはさらに、50%のDADMACモノマを含むDADMACビニルピロリドンコポリマを25ppm含んでいた。研磨組成物3Cはさらに、25ppmのDADMACホモポリマを含んでいた。研磨組成物3Eはさらに、30%の4級化ビニルイミダゾールモノマを含む4級化ビニルイミダゾール-ビニルピロリドンコポリマを25ppm含んでいた。研磨組成物3Fはさらに25ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)ホモポリマを含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、90rpm;回転(キャリヤ)、93rpm;スラリ流量、150mL/min;下向きの力、3psi(20.7kPa);SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0097】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表3に記されている。
【0098】
【表3】
【0099】
表3に記された結果から明らかであるように、カチオン性ポリマ中のカチオン性モノマ単位の百分率が研磨組成物3B~3D中で30%から50%、100%へと増大するにつれて、SiN除去速度は856Å//minから692Å//minへと低下し、SiN/SiO選択性は0.2から36まで増大した。4級化ポリ(ビニルイミダゾール)モノマ単位を含むカチオン性ポリマを含む研磨組成物3Eおよび3F中のカチオン性モノマ単位の百分率を30%から50%まで増大させることによって、SiN除去速度はおよそ18%上昇し、SiN/SiO選択性はおよそ66倍増大した。
【0100】
例4
この例は、本発明の一実施形態に係る、カチオン性ポリマと第4級アンモニウム塩の組合せを含む研磨組成物が示すSiNおよびSiO除去速度に対する、この組合せの濃度の効果を実証している。
【0101】
SiNまたはSiO層を含む基板を研磨組成物4Aおよび4Bで別個に研磨した。研磨組成物4Aおよび4Bは、pH5.3で水中に、平均粒子サイズ60nmのセリア0.2質量%、表4に記された量の4級化ポリ(ビニルイミダゾール)(すなわちカチオン性ホモポリマ)およびジアリルジメチルアンモニウムクロリドモノマ(DADDAC)(すなわち第4級アンモニウム塩)、30ppmの酢酸緩衝液および殺生物剤を含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、113rpm;回転(キャリヤ)、107rpm;スラリ流量、150mL/min;下向きの力、3psi(20.7kPa);SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0102】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表4に記されている。
【0103】
【表4】
【0104】
表4に記された結果から明らかであるように、4級化ポリ(ビニルイミダゾール)およびDADMACモノマの濃度をそれぞれ10ppmおよび50ppmから50ppmおよび550ppmまで増大させることによって、望ましいことに、およそ400%のSiN除去速度の上昇およびおよそ86%のSiO除去速度の低下が結果としてもたらされた。結果としてのSiN/SiO選択性の増大は、およそ29倍であった。
【0105】
例5
この例は、本発明の一実施形態に係る、第4級アンモニウム塩を含む研磨組成物が示すSiNおよびSiOの除去速度に対する、この第4級アンモニウム塩の効果を実証している。
【0106】
SiNまたはSiO層を含む基板を研磨組成物5Aおよび5Bで別個に研磨した。研磨組成物5Aおよび5Bは、pH7で水中に、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.4質量%、52ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)、650ppmのトリエタノールアミン緩衝液および殺生物剤を含んでいた。研磨組成物5Aは、第4級アンモニウム塩を含んでいなかった。研磨組成物5Bはさらに、500ppmのDADMACモノマ(すなわち第4級アンモニウム塩)を含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、90rpm;回転(キャリヤ)、93rpm;スラリ流量、250mL/min;SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0107】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表5に記されている。
【0108】
【表5】
【0109】
表5に記された結果から明らかであるように、500ppmのDADMACモノマを含む研磨組成物5Bは、DADMACモノマを含んでいなかった研磨組成物5Aが示すSiN除去速度に比べおよそ11%高いSiN除去速度を示した。研磨組成物5Bが示したSiO除去速度は、研磨組成物5Aが示したSiO除去速度のおよそ50%であった。したがって、DADMACモノマの存在は、研磨組成物5Bが示すSiN除去速度を妨げずにSiO除去速度を有効に抑制し、結果として選択性の望ましい増大がもたらされた。
【0110】
例6
この例は、カチオン性ポリマおよび第4級アンモニウム塩の組合せを含む研磨組成物が示すSiNおよびSiO除去速度に対する、この組合せの効果を実証している。
【0111】
SiNまたはSiO層を含む基板を、研磨組成物6A~6Dで別個に研磨した。研磨組成物6A~6Dは、pH7で水中に、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.4質量%および16.26ppmのトリエタノールアミン緩衝液を含んでいた。研磨組成物6A(対照)は、いかなる追加の構成成分も含んでいなかった。研磨組成物6B(比較用)はさらに100ppmのDADMACモノマ(すなわち第4級アンモニウム塩)を含んでいた。研磨組成物6C(比較用)は、さらに、10ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)(すなわちカチオン性ポリマ)を含んでいた。研磨組成物6D(本発明)はさらに、10ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)と100ppmのDADMACモノマを含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、93rpm;回転(キャリヤ)、87rpm;スラリ流量、50mL/min;下向きの力、2psi(13.8kPa);SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0112】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表6に記されている。
【0113】
【表6】
【0114】
表6に記された結果から明らかであるように、100ppmのDADMACモノマを含むものの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)は含んでいなかった研磨組成物6Bは、DADMACモノマまたは4級化ポリ(ビニルイミダゾール)を含まなかった対照の研磨組成物6Aと実質的に同じであるSiN/SiO選択性を示した。10ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)を含むもののDADMACモノマは含まなかった研磨組成物6Cは、対照の研磨組成物6Aが示したSiN除去速度に比べておよそ236%高いSiN除去速度、そして対照の研磨組成物6Aが示したSiO除去速度に比べおよそ90%のSiO除去速度の低下を示した。10ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)および100ppmのDADMACモノマを含む研磨組成物6Dは、対照の研磨組成物6Aが示したSiN除去速度に比べておよそ121%高いSiN除去速度、そして対照の研磨組成物6Aが示したSiO除去速度よりもおよそ99%低いSiO除去速度を示した。したがって、研磨組成物6D中に10ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)と100ppmのDADMACモノマが存在することで望ましいことに、研磨組成物6Cに比べてSiN除去速度に対する有意な影響なくSiO除去速度が抑制され、対照の研磨組成物6Aおよび比較用研磨組成物6Bおよび6Cに比べて選択性が実質的に改善された。
【0115】
例7
この例は、SiNおよびSiO除去速度に対する第4級アンモニウム塩中の炭素原子数の効果を実証している。
【0116】
SiNまたはSiO層を含む基板を、研磨組成物7A~7Kで別個に研磨した。研磨組成物7A~7Kは各々、pH約5.0で水中に、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.2質量%および3.33ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)、30ppmの酢酸酢酸緩衝液、および表7に示す通りの1mMの第4級アンモニウム塩を含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、93rpm;回転(キャリヤ)、87rpm;スラリ流量、50mL/min;下向きの力、2psi(13.8kPa);SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0117】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表7に記されている。
【0118】
【表7】
【0119】
表7に記された結果から明らかであるように、第4級アンモニウム塩を含まなかった研磨組成物7A~7Cは高いSiO除去速度と低いSiN/SiO選択性を示した。4~16個の炭素原子を有する第4級アンモニウム塩を含んでいた研磨組成物7D~7Iは、研磨組成物7Aが示したSiN除去速度のおよそ91~108%であるSiN除去速度を維持する一方で、対照の研磨組成物7Aが示したSiO除去速度のおよそ34~61%であるSiO除去速度を示した。それぞれ17個および27個の炭素原子を有する第4級アンモニウム塩を含んでいた研磨組成物7Jおよび7Kは、研磨組成物7Aが示したSiO除去速度のおよそ15%および7%であるSiO除去速度を示した。研磨組成物7Jおよび7Kが示したSiN除去速度はそれぞれ、研磨組成物7Aが示したSiN除去速度のおよそ71%および55%であり、アルキル置換基の疎水性および/または増大したサイズと相関する約16超の炭素数を有する第4級アンモニウム塩での穏やかなSiN除去速度の抑制を実証していた。
【0120】
例8
この例は、SiNまたはSiOを含む基板についての研磨速度に対する第4級ホスホニウム塩および第4級アンモニウム塩の効果を実証している。
【0121】
SiNまたはSiO層を含む基板を、研磨組成物8A~8Fで別個に研磨した。研磨組成物8A~8Fの各々は、およそ5.0のpHで水中に、平均粒子サイズ90~110nmのセリア0.2質量%、3.33ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)および30ppmの酢酸緩衝液を含んでいた。研磨組成物8A~8Fはさらに、テトラブチルアンモニウムクロリド(BuNCl)、テトラブチルアンモニウムブロミド(BuNBr)、またはテトラブチルホスホニウムブロミド(BuPBr)を表8中に記された量で含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、93rpm;回転(キャリヤ)、87rpm;スラリ流量、50mL/min;下向きの力、2psi(13.8kPa);SiNおよびSiOの研磨時間、60秒。
【0122】
研磨後、SiNおよびSiO除去速度を決定し、結果は表8に記されている。
【0123】
【表8】
【0124】
表8に記された結果から明らかであるように、Bu4NCl、Bu4NBrおよびBu4PBrの量を1mMから5mMまで増大させた結果、SiN除去速度の変化は比較的小さかった(0~15%)ものの、1mMの第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム塩を含む研磨組成物が示したSiO除去速度の22%、52%および45%までSiO除去速度が低下した。SiN/SiO選択性は、SiO除去速度の抑制に起因してBu4NCl、Bu4NBrおよびBu4PBrの量の増加と共に増大した。
【0125】
本明細書中で引用されている刊行物、特許出願および特許を含めた全ての参照文献は、各参照文献が参照により組込まれるべく個別にまたは具体的に標示され本明細書中にその全体が明記されている場合と同じ程度で、参照により本明細書中に組込まれている。
【0126】
例9
この例は、本発明の一実施形態に係る、SiN、SiOおよびポリシリコンを含む研磨組成物が示した、立方体状のセリア粒子を伴う研磨組成物の除去速度に対する第4級アンモニウム塩の効果を実証している。
【0127】
SiN、SiOおよびポリシリコン層を含む基板を、研磨組成物9A~9Cで別個に研磨した。研磨組成物9A~9Cの各々は、窒素吸着によって1グラムあたり11.8mと決定されたBET比表面積そしてHoriba960により測定された102nmおよびMalvern Zetasizenにより測定された140nmという平均粒子サイズを有する立方体状セリア0.2質量%を含んでいた。さらに、各研磨組成物は、水中に30ppmの4級化ポリ(ビニルイミダゾール)を含んでいた。研磨組成物9Aおよび9Bはさらに、約5のpHで0.5mMの酢酸緩衝液を含み、研磨組成物9Cはさらに、約7のpHで0.5mMのトリエタノールアミン緩衝液を含んでいた。研磨組成物9Aは、第4級アンモニウム塩を含んでいなかった。研磨組成物9Bおよび9Cは、さらに300ppmのジアリルジメチルアンモニウムクロリドモノマ(DADMAC)(すなわち第4級アンモニウム塩)を含んでいた。研磨条件は以下の通りであった:回転(プラテン)、113rpm;回転(キャリヤ)、107rpm;スラリ流量、150mL/min;下向きの力、3psi(20.7kPa);SiN、SiOおよびポリシリコンの研磨時間、60秒。
【0128】
研磨後、SiN、SiOおよびポリシリコンの除去速度を決定し、結果は表9に記されている。
【0129】
【表9】
【0130】
表9に記された結果から明らかであるように、300ppmのDADMACモノマを含む研磨組成物9Bおよび9Cは、いかなるDADMACモノマも含んでいなかった研磨組成物9Aに比べてそれぞれおよそ79%および85%低いSiO除去速度を示した。研磨組成物9Bおよび9CについてのSiO除去速度の低下はさらに、研磨組成物9Aと比べたSiN/SiO選択性をそれぞれおよそ5倍および6倍改善した。さらに、ポリシリコン研磨挙動の選択性は、研磨組成物9A中の選択的なSiO除去から、DADMACモノマを含んでいた研磨組成物9Bおよび9C中でのSiOよりもポリシリコンの除去を優先させるように変化した。
【0131】
本発明の説明に関連した(特に以下のクレームに関連した)「a」および「an」ならびに「the」および「at least one(少なくとも1つ)」なる用語および類似の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示の無いかぎりまたは文脈から明らかに矛盾するのでないかぎり、単数および複数の両方を網羅するものとみなされるべきである。「at least one(少なくとも1つ)」なる用語とそれに後続する1つ以上の項目のリスト「例えばAおよびBの少なくとも1つ(at least one of A and B)」の使用は、別段の指示のないかぎりまたは文脈から明らかに矛盾するのでないかぎり、列挙された項目から選択された1つの項目(AまたはB)または列挙された項目の2つ以上のあらゆる組合せ(AおよびB)を意味するものとみなされるべきである。「comprising(~を含む)」、「having(~を有する)」、「including(~を含む)」、「containing(~を含む)」なる用語は、別段の指摘の無いかぎり、オープンエンド用語(すなわち「~を非限定的に含む(including、but not limited to)」を意味する)とみなされるべきである。本明細書中の値の範囲の記述は、本明細書中に別段の指示が無いかぎり、この範囲内に入る各々別個の値に個別に言及する省略方法として役立つように意図されているにすぎず、各々の別個の値は、あたかもそれが本明細書中に個別に記述されているかのように本明細書中に組込まれる。本明細書中に記載の方法は全て、本明細書中で別段の指示が無いかぎり、または文脈から明らかに別段の矛盾があるのでないかぎり、あらゆる好適な順序で行なうことができる。本明細書中で提供されているいずれかのおよび全ての例または例示的言語(例えば「such as(例えば)」)は、本発明の理解をより容易にするように意図されているにすぎず、別段の請求の無いかぎり、本発明の範囲に対し制限を加えるものではない。明細書中のいかなる文言も、いずれかの非請求対象の要素を本発明の実践にとって不可欠であると示唆するものとみなされるべきではない。
【0132】
本発明を実施するための本発明者らに知られた最良の様式を含め、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。当業者には、以上の説明を読んだ時点で、これらの好ましい実施形態の変形形態が明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形形態を必要に応じて使用することを想定しており、本発明者らは、本発明が本明細書中で具体的に記載されているもの以外の形で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用可能な法が許容する通り、本明細書に添付の特許請求の範囲に記述された主題の全ての修正および等価物を含む。さらに、本明細書中に別段の指示が無いかぎりまたは文脈により明確に否定されない限り、上述の要素の考えられる全ての変形形態におけるあらゆる組合せが、本発明により包含される。
【国際調査報告】