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特表2022-553368マルチステーション集積回路製造チャンバにおける無線周波数(RF)電力の不平衡化
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  • 特表-マルチステーション集積回路製造チャンバにおける無線周波数(RF)電力の不平衡化 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】マルチステーション集積回路製造チャンバにおける無線周波数(RF)電力の不平衡化
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20221215BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221215BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221215BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20221215BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
C23C16/509
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523827
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 US2020057020
(87)【国際公開番号】W WO2021081304
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/925,919
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィールズ・ジェレミー・デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】グプタ・オウニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】チェン・チュン-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ランジネニ・ヤスワンス
(72)【発明者】
【氏名】パスクァーレ・フランク・ローレン
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB15
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD48
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH07
2G084HH24
2G084HH28
4K030EA01
4K030EA06
4K030FA03
4K030JA06
4K030KA08
4K030KA30
4K030KA41
4K030LA15
5F004AA01
5F004BA04
5F004BB13
5F004BD03
5F004CA03
5F004CB07
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB02
5F045AB32
5F045AC17
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5F045DP03
5F045DQ10
5F045DQ17
5F045EE17
5F045EF05
5F045EH13
5F045EH20
5F045EK07
5F045GB08
(57)【要約】
【解決手段】マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のプロセスステーションに伝達される無線周波数電力を、製造プロセスが行われる速度、および/または製造プロセスの結果が互いに整合するように調整してもよい。RF分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子の調整を通じて達成可能なこのような無線周波数電力の調整によって、個々のプロセスステーションに供給される電力を不平衡化させてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)電力を生成する装置であって、
1つ以上のRF電源と、
前記1つ以上のRF電源からの電力をマルチステーション集積回路製造チャンバの個々の入力ポートに割り当てるように構成されたRF電力分配ネットワークと、を含み、
前記RF電力分配ネットワークはさらに、1つ以上の制御パラメータを適用して、前記RF電力分配ネットワークから前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記個々の入力ポートへの前記電力を不平衡化させるように構成されている、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記RF電力分配ネットワークは、1つ以上のリアクタンス回路素子を含む、
装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異が特定されたことに応じて、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の少なくとも1つの値を調整するコントローラをさらに含む、
装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記堆積プロセスは、原子層堆積(ALD)を含む、
装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装置であって、
前記堆積プロセスは、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)を含む、
装置。
【請求項7】
請求項3に記載の装置であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
装置。
【請求項8】
請求項2に記載の装置であって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、少なくとも1つのコンデンサまたは少なくとも1つのインダクタを含む、
装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、少なくとも1つのコンデンサを含み、前記1つ以上の制御パラメータは、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、最大値の約10%から約90%の間に修正させる、
装置。
【請求項10】
マルチステーション集積回路製造チャンバであって、
各々が1つ以上の無線周波数(RF)電源から信号を受信するように構成された1つ以上の入力ポートと、
前記1つ以上の入力ポートのうちの対応する1つに結合され、1つ以上のリアクタンス回路素子を含むRF電力分配ネットワークと、
前記RF電力分配ネットワークに結合されたコントローラであって、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の値を修正し、前記1つ以上のRF電源から前記マルチステーション集積回路製造チャンバに結合されるRF電力を不平衡化させるように構成されたコントローラと、
を含む、マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項11】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、1つ以上のコンデンサを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項12】
請求項11に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記コントローラは、前記1つ以上のコンデンサの静電容量値を、最大値の約10%から最大値の約90%の間に修正するように構成されている、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項13】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記コントローラは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異が特定されたことに応じて、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の値を修正するように構成されている、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項14】
請求項13に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項15】
請求項13に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項16】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、4つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項17】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、2つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項18】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、8つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項19】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、16個のプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項20】
制御モジュールであって、
メモリに結合されたハードウェアプロセッサと、
通信ポートであって、
マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを示す情報を受信し、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合された無線周波数(RF)電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させる1つ以上の命令をRF電力分配ネットワークに送信するように構成されている、通信ポートと、
を含む、制御モジュール。
【請求項21】
請求項20に記載の制御モジュールであって、
前記1つ以上の命令は、前記RF電力分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子の値を修正するように動作する、
制御モジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の制御モジュールであって、
前記1つ以上のリアクタンス素子は、少なくとも1つのコンデンサを含み、前記1つ以上の命令は、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、最大値の約10%から約90%の間に修正するように動作する、
制御モジュール。
【請求項23】
製造プロセスを制御するための方法であって、
マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを特定することと、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合された無線周波数(RF)電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させることと、
を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの入力ポートに結合されたRF電力分配ネットワークのリアクタンス回路素子の値を修正することを含む、
方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記リアクタンス回路素子の値を修正することは、前記リアクタンス回路素子の静電容量を、静電容量の最大値の約50%である基準値から、静電容量の前記最大値の約10%から約90%の間の値に調整することを含む、
方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合されたRF電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに対して少なくとも約1%異ならせることを含む、
方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[参照による援用]
本出願の一部として、PCT願書様式を本明細書と同時に提出する。同時に提出したPCT願書様式において特定される、本出願が利益または優先権を主張する各出願は、その内容全体が参照により、すべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
集積回路装置の製造において、半導体処理チャンバ内で半導体ウエハの処理を行う場合がある。一般的なプロセスとして、半導体材料を例えば層ごとに堆積する堆積プロセスと、半導体ウエハの一部の領域における材料を除去(例えば、エッチング)するプロセスとを行ってもよい。商業規模の製造において、各ウエハは、製造される特定の半導体装置の複製を多数含む。そして、多数のウエハを用いて、所望のボリュームの装置を得てもよい。したがって、半導体処理工程の商業的な実現可能性は、少なくともある程度は、ウエハ内の均一性と、ウエハ間でのプロセス条件の再現性とに依存する場合がある。そのため、所与のウエハの各部分、および半導体処理チャンバ内で処理される各ウエハが同じ処理条件で処理されるように努力がなされている。処理条件のばらつきにより、プロセス条件および/またはプロセス結果に望ましくないばらつきが生じる可能性があり、ひいては製造プロセス全体に許容できないばらつきが生じる可能性がある。このようなばらつきは、回路性能を低下させる可能性があり、ひいては、例えば集積回路装置を用いる上位システムの性能に許容できないばらつきが生じる可能性がある。
【0003】
ここに提供される背景技術の記載は、本開示の背景を概略的に提示することを目的としている。この背景技術に記載されている範囲内での本発明者らの研究、およびその他の点で出願時に先行技術と認められない可能性がある記載の態様は、明示的にも暗示的にも、本開示に対する先行技術とは認められない。
【発明の概要】
【0004】
簡潔に説明すると、一部の実施形態において、無線周波数電力を生成する装置は、1つ以上のRF電源と、前記1つ以上のRF電源からの電力をマルチステーション集積回路製造チャンバの個々の入力ポートに割り当てるように構成されたRF電力分配ネットワークと、を含んでもよい。前記RF電力分配ネットワークはさらに、1つ以上の制御パラメータを適用して、前記RF電力分配ネットワークから前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記個々の入力ポートへの前記電力を不平衡化させるように構成されてもよい。
【0005】
一部の実施形態において、前記RF電力分配ネットワークは、1つ以上のリアクタンス回路素子を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記装置はさらに、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異が特定されたことに応じて、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の少なくとも1つの値を調整するように構成されているコントローラを含んでもよい。一部の実施形態において、前記プロセスは、原子層堆積やプラズマ励起化学気相堆積などの堆積プロセスを含んでもよいし、エッチングプロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記装置の前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、少なくとも1つのコンデンサまたは少なくとも1つのインダクタを含んでもよい。さらに、前記1つ以上の制御パラメータは、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、静電容量の最大値の約10%から約90%の間に修正することを含んでもよい。
【0006】
一実施形態において、マルチステーション集積回路製造チャンバは、各々が1つ以上のRF電源から信号を受信するように構成された1つ以上の出力ポートを含んでもよい。前記マルチステーション集積回路製造チャンバはさらに、前記1つ以上の入力ポートのうちの対応する1つに結合され、1つ以上のリアクタンス回路素子を含むRF電力分配ネットワークを含んでもよい。前記製造チャンバはさらに、前記RF電力分配ネットワークに結合されたコントローラであって、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の値を修正し、前記1つ以上のRF電源から前記マルチステーション集積回路製造チャンバに結合されるRF電力を不平衡化させるように構成されたコントローラを含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、4つのプロセスステーションを含む。いくつかの実施形態において、前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、2つのプロセスステーションを含む。いくつかの実施形態において、前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、8つのプロセスステーションを含む。いくつかの実施形態において、前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、16個のプロセスステーションを含む。
【0008】
一部の実施形態において、前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、1つ以上のコンデンサを含んでもよい。一部の実施形態において、コントローラは、前記1つ以上のコンデンサの静電容量値を、最大値の約10%から最大値の約90%の間に修正するように構成されてもよい。一部の実施形態において、前記製造チャンバのコントローラは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異を特定したことに応じて、前記リアクタンス回路素子の値を修正するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、前記プロセスは堆積プロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記プロセスはエッチングプロセスを含んでもよい。
【0009】
一部の実施形態において、制御モジュールは、メモリに結合されたハードウェアプロセッサと、通信ポートとを含んでもよい。前記通信ポートは、マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを示す情報を受信するように構成されてもよい。前記通信ポートはさらに、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合されたRF電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させる1つ以上の命令をRF電力分配ネットワークに送信するように構成されてもよい。
【0010】
一部の実施形態において、前記1つ以上の命令は、前記RF電力分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子の値を修正するように動作する。一部の実施形態において、前記1つ以上のリアクタンス素子は、少なくとも1つのコンデンサを含み、前記1つ以上の命令は、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、最大値の約10%から約90%の間に修正するように動作する。
【0011】
一部の実施形態において、製造プロセスを制御するための方法は、マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを特定することを含んでもよい。前記方法はさらに、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合されたRF電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させることを含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの入力ポートに結合されたRF電力分配ネットワークのリアクタンス回路素子の値を修正することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記リアクタンス回路素子の値を修正することは、前記リアクタンス回路素子の静電容量を、静電容量の最大値の約50%である基準値から、静電容量の最大値の約10%から約90%の間の値に調整することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合されたRF電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに対して少なくとも約1%異ならせることを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記プロセスは、堆積プロセスを含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記プロセスは、エッチングプロセスを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る、任意の数のプロセスを用いて半導体基板の上または上方に膜を堆積するための基板処理装置を示す図である。
【0014】
図2図2は、一実施形態に係る、マルチステーション処理ツールの一実施形態の概略図である。
【0015】
図3図3は、一実施形態に係る、1つ以上のステーションに不平衡を導入可能なマルチステーション処理ツールの一実施形態の概略図である。
【0016】
図4図4は、一実施形態に係る、マルチステーション集積回路製造チャンバの1つ以上のステーションへのRF電力を不平衡化する方法のフローチャートである。
【0017】
図5図5は、一実施形態に係る、RF電力が平衡化された条件下と、RF電力が不平衡化された条件下とで堆積された材料の平均厚さを示すグラフである。
【0018】
図6図6は、一実施形態に係る、RF電力が平衡化された条件下と、RF電力が不平衡化された条件下とにおける半導体材料のエッチング速度を示すグラフである。
【0019】
図7図7は、一実施形態に係る、比較的高いRF電力条件下と、比較的低いRF電力条件下とでプロセスステーションにてウエハに堆積された膜のリーク電流を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
特定の実施形態において、RF電力の不平衡化は、プラズマ式またはプラズマ支援式集積回路製造に関連する装置など、集積回路の製造に関わる各種の装置と組み合わせて用いてもよい。このような装置は、複数の集積回路ウエハに同時に製造プロセスを施すものなどのマルチステーション製造チャンバを含んでもよい。一部の実施形態において、マルチステーション製造チャンバを用いるプラズマ式および/またはプラズマ支援式製造プロセスは、1つ以上の個々のステーションに結合されたRF信号の電力レベルをステーション間で不平衡化できることが有益となり得る。このように、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のステーション間で異なる信号振幅を結合することで、プラズマ式膜堆積およびプラズマ式材料エッチングなどの製造プロセスにおける均一性を高められる可能性がある。その結果、マルチステーション製造チャンバによる集積回路形成プロセスがより高い精度で実行され、それにより、製造チャンバを用いて形成された装置の不良率が低減し、かつ/または歩留まりが向上する可能性がある。
【0021】
一部の実施形態において、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のステーションに結合されたRF電力に不平衡を生じさせることにより、製造チャンバ内で生じるプロセスの条件および/または結果に影響を及ぼす可能性があるステーション間の不均一性を少なくとも部分的に補償できる可能性がある。このようなプロセス条件および/またはプロセス結果は、膜堆積速度、エッチング速度、膜の電気品質(例えば、リーク電流)または他のパラメータを含んでもよい。プロセス条件および/またはプロセス結果に差異を生じさせる可能性のある不均一性は、例えば原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)プロセスで用いられる前駆体ガス濃度のステーション間でのばらつき、前駆体ガス温度のばらつき、ステーション固有の幾何学的ばらつき、RF結合構造のステーション間でのばらつきなどを含んでもよい。特定の実施形態において、例えば第1のステーションにおける膜堆積および/または材料エッチング速度を増加させる一方で、例えば第2のステーションにおける堆積/エッチング速度を低下させてもよい。したがって、膜堆積および/または材料エッチングを、より安定的かつ規則的に実行し得る。
【0022】
特許請求される主題の実施形態はいかなる特定の理論にも限定されるものではないが、ステーション間のばらつきにより、プロセスステーションが示す複素インピーダンスの値に差異が生じ得ることが考えられる。したがって、例えば、マルチステーション製造チャンバのプロセスステーションを、RF電源に対して同じインピーダンスを示すように構築・稼働しようとしても、プロセスステーション間のばらつきにより、RF電源に対する負荷にばらつきが生じる可能性がある。したがって、プロセスステーションが示す負荷が基準複素インピーダンス値から乖離すると、電力がプロセスステーションから発電器に戻る方向に反射されることがある。そのため、プロセスチャンバが示す負荷がこのようにその時々によってばらつく結果として、ウエハ製造中に任意の特定のプロセスステーションに供給される実際の電力が大きく変動する可能性がある。
【0023】
特定の実施形態は、マルチステーション集積回路製造チャンバのプロセスステーションにRF電力を結合する他の手法に対して改善を示し得る。例えば、いくつかの場合、RF電力をプロセスステーションにバランスよくまたは均一に結合して、RF電力がプロセスステーション間で均等に分割されるようにしても、半導体膜堆積/エッチング速度などのプロセス条件および/またはプロセス結果に著しいばらつきが生じる可能性がある。特定の例では、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のプロセスステーションに結合されるRF電力を平衡化したにもかかわらず、材料のエッチング速度が例えば約12%~約20%、またはそれ以上に変動する場合がある。他の例では、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のプロセスステーションへのRF電力を平衡化した場合、膜堆積速度が約5%~約10%、またはそれ以上に変動する場合がある。さらに他の例では、平衡化されたRF電力を用いた場合、膜堆積速度は互いに比較的(少なくとも顧客仕様の範囲内で)整合または一致する一方で、エッチング速度は互いに比較的不整合または不一致となる場合がある。このような場合、RF電力を調整してエッチング速度を平衡化させ、1つ以上の他の技術を用いて総膜厚を一致させることが可能な場合がある。
【0024】
本明細書で説明するように、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のプロセスステーションに結合されたRF電力の不平衡化は、RF発生器からの出力電力に影響を与えることなく実現してもよい。例えば、特定の実施形態において、RF発生器は、約1.5kW~約2kWの出力電力など、略一定の出力電力を供給するように構成されてもよい。マルチステーション製造チャンバの個々のプロセスステーションに結合されたRF電力に対する制御は、特定のプロセスステーションに結合またはリンクされたRF電力分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子を調整することによって制御または変調されてもよい。したがって、RF電力分配ネットワークのリアクタンス素子を調整することによって(これは、RF電力分配ネットワークの可変コンデンサおよび/または可変インダクタを調整することを含んでもよい)、プロセスステーションに供給される電力を所定量増加または減少させてもよい。このように1つ以上のプロセスステーションに供給される電力を増加または減少させることにより、これら1つ以上のプロセスステーションで行われるプロセスの速度を調整可能にしてもよい。このような調整により、マルチステーション集積回路製造チャンバにおける他の1つ以上のプロセスステーションとの製造プロセスおよび/または結果の調和を図り得る。本明細書において、リアクタンス回路素子とは、電気信号の電圧と電流の位相関係を変更するように動作する電気回路の集中素子または分布素子を指す。したがって、リアクタンス回路素子は例えば、インダクタ、コンデンサ、または電流と電圧信号の間の位相関係を変更するように動作する他の任意の装置を含んでもよい。
【0025】
一部の実施形態および実装形態は、各種のプラズマ励起原子層堆積(ALD)プロセス(例えば、ALD1、ALD2)や各種のプラズマ励起化学気相堆積(例えば、PECVD1、PECVD2、PECVD3)プロセスなどの複数のウエハ製造プロセスで用いてもよいし、単一の堆積プロセス中にその場で用いてもよい。一部の実施形態において、複数の出力ポートを有するRF電力発生器を任意の信号周波数で用いてもよい。周波数は約300kHz~約60MHzなどであり、例えば約400kHz、約1MHz、約2MHz、13.56MHz、13.83MHz、27.12MHzである。ただし、他の実施形態において、複数の出力ポートを有するRF電力発生器は任意の信号周波数で動作してもよく、これは約50kHz~約300kHzの周波数などの比較的低い周波数、および約60MHz~約100MHzの周波数などのより高い信号周波数を含み、実質的に制限はない。
【0026】
なお、本明細書に記載の特定の実施形態において、出力電力が4ステーション集積回路製造チャンバの4つのプロセスステーション間で分割される単一の出力ポートを有するRF電力発生器を図示および/または説明する場合があるが、特許請求される主題は、任意の数のプロセスステーションを有するマルチステーション集積回路製造チャンバをも包含することを意図している。したがって、いくつかの実施形態において、RF電力発生器の出力ポートは、例えば、2つまたは3つのプロセスステーションを有するマルチステーション製造チャンバのプロセスステーションに割り当てられてもよい。他の実施形態において、RF電力発生器の出力ポートは、より多くのプロセスステーション、例えば5つ、6つ、7つ、8つ、または任意の他の数(実質的に制限はない)のプロセスステーションを有するマルチステーション集積回路製造チャンバのプロセスステーションに割り当てられてもよい。
【0027】
半導体デバイスの製造では、通常、統合製造プロセスにおいて、平面基板または非平面基板の上または上方に1つ以上の薄膜を堆積することが行われる。統合プロセスのいくつかの態様において、固有の基板形状に適合する薄膜を堆積することが有用な場合がある。いくつかの場合に有用な反応の種類として、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)がある。一般的なCVDプロセスでは、反応チャンバのステーションに導入された気相反応物が同時に気相反応を起こす。この気相反応による生成物が、基板表面に堆積する。この種の反応は、プラズマの存在によって活性化、励起、または支援されてもよく、その場合、プロセスはプラズマ励起化学気相堆積(PECVD:Plasma-Enhanced CVD)反応と呼ばれることがある。本明細書において、CVDという用語は、特に断りのない限り、PECVDを含むことが意図されている。CVDプロセスにはいくつかの欠点があり、それにより一部の状況下ではCVDプロセスが不適切となる。例えば、CVD気相反応の物質移動の制限により、上面(例えば、ゲートスタックの上面)では堆積が厚くなり、凹面(例えば、ゲートスタックの底面角部)では堆積が薄くなる堆積効果が生じる場合がある。さらに、一部の半導体ダイではデバイス密度が異なる領域があるため、基板表面にわたる物質移動の影響により、ダイ内およびウエハ内で厚さのばらつきが生じる場合がある。そのため、その後のエッチングプロセスにおいて、厚さのばらつきにより、一部の領域ではエッチング過多、他の領域ではエッチング不足となる可能性があり、これにより、装置の性能やダイの歩留まりが低下する可能性がある。CVDプロセスに関するもう1つの問題として、このようなプロセスでは、高アスペクト比のフィーチャ内にコンフォーマルな膜を堆積できない場合が多いことが挙げられる。この問題は、装置の小型化が進むにつれて、ますます深刻になる可能性がある。ウエハ製造プロセスの特定の態様におけるこれらおよび他の欠点については、図1および図2を参照して説明する。
【0028】
別の例として、いくつかの堆積プロセスでは、各々が個別の膜厚を生成する複数の膜堆積サイクルが実行される。例えば、原子層堆積(ALD)において、堆積層の厚さは、膜形成化学反応自体の前に、基板表面に吸着して吸着制限層を形成可能な1つ以上の膜前駆体反応物の量によって制限される場合がある。このように、ALDの特徴は、薄膜層(例えば、原子または分子1個分の幅の層)を反復的かつ逐次的に形成することである。装置や機能の小型化が進み、集積回路(IC)設計において3次元の装置や構造が一般的になるにつれて、コンフォーマルな薄膜(例えば、下地構造の形状に対して均一な厚さを有する材料の膜)を堆積する能力がその重要性を増し続けている。このように、ALDは、各堆積サイクルが原子または分子1個分の材料の層を堆積する成膜技術であるという点で、コンフォーマル膜の堆積に好適な場合がある。ALDを用いた一般的な装置製造プロセスでは、数百から数千回に及ぶこともある複数のALDサイクルを行ってもよく、これを用いて、実質的にあらゆる所望の厚さの膜も形成し得る。さらに、各層が薄くコンフォーマルであるという点で、このようなプロセスから得られる膜は、あらゆる下地デバイス構造の形状にも適合し得る。一部の実施形態において、ALDサイクルは、以下の工程を含んでもよい。
【0029】
基板表面を第1の前駆体に曝露する工程。
【0030】
基板が配置された反応チャンバをパージする工程。
【0031】
一般的にはプラズマおよび/または第2の前駆体を用いて、基板表面の反応を活性化する工程。
【0032】
基板が配置された反応チャンバをパージする工程。
【0033】
各ALDサイクルの時間は一般的に、約25秒未満、約10秒未満、または約5秒未満であってもよい。ALDサイクルにおける1つ以上のプラズマ曝露工程は、約1秒以下など、短い時間であってもよい。いくつかの場合、1つのALDサイクル全体が1秒未満で終了してもよい。
【0034】
次に図面を参照すると、図1は、種々の実施形態に係る、任意の数のプロセスを用いて半導体基板の上に膜を堆積するための基板処理装置100を示す図である。図1の処理装置100は、内部容積に台座108などの単一の基板ホルダを備えたプロセスチャンバの単一のプロセスステーション102を用いるものである。内部容積は、真空ポンプ118の動作に応じて真空下に維持してもよい。プロセスチャンバに流体的に結合可能なシャワーヘッド106およびガス供給システム130によって、例えば、膜前駆体、ならびにキャリアガスおよび/またはパージガスおよび/またはプロセスガス、前駆体ガス、二次反応物などの供給を可能にしてもよい。図1には、プロセスチャンバ内でのプラズマ生成に用いられる装置も示されている。図1に概略を示した装置は、特にPECVDの実行に適合されてもよい。
【0035】
図1において、ガス供給システム130は、混合容器104を含む。混合容器104は、シャワーヘッド106への供給用に前駆体および/またはプロセスガスを配合および/または調整するように動作してもよい。1つ以上の混合容器入口弁120によって、混合容器104への前駆体および/またはガスの導入を制御してもよい。特定の反応物は、気化されてプロセスチャンバのプロセスステーション102に供給される前に、液体の状態で貯蔵されてもよい。図1の実施形態は、混合容器104に供給される液体反応物を気化させるための気化ポイント103を含む。いくつかの実装形態において、気化ポイント103は、加熱された液体注入モジュールで構成されてもよい。いくつかの他の実装形態において、気化ポイント103は、加熱された蒸発器で構成されてもよい。さらに他の実装形態において、プロセスステーションは気化ポイント103を備えなくてもよい。いくつかの実装形態において、気化ポイント103の上流に、気化されてプロセスステーション102に供給される液体の質量流量を制御するための液体流量コントローラ(LFC:Liquid Flow Controller)が設けられてもよい。
【0036】
シャワーヘッド106は、プロセスステーションの基板112に向けてプロセスガスおよび/または反応物(例えば、膜前駆体)を分配するように動作してもよい。これらの流れは、シャワーヘッドの上流に配置された1つ以上のバルブ(例えば、バルブ120、120A、105)によって制御される。図1に示す実施形態では、基板112はシャワーヘッド106の下方に位置し、台座108に載置されている。シャワーヘッド106は、任意の適切な形状を有してもよく、基板112にプロセスガスを分配するために任意の適切な数のポートを任意の適切な配置で有してもよい。2つ以上のステーションを有するいくつかの実施形態において、ガス供給システム130は、シャワーヘッド106の上流にバルブおよび/または他の流量制御構造を含み、これらは、各ステーションへのプロセスガスおよび/または反応物の流れを独立して制御でき、1つのステーションへのガス流を許容する一方で、2つ目のステーションへのガス流を遮断できる。さらに、ガス供給システム130は、異なるステーションに供給されるガス組成が異なるものとなるように、マルチステーション集積回路製造装置の各ステーションに供給されるプロセスガスおよび/または反応物を独立して制御するように構成されてもよい。例えば、あるガス成分の分圧が、同一時点においてステーション間で異なってもよい。
【0037】
図1において、容積107はシャワーヘッド106の下方に位置している。いくつかの実装形態において、基板112を容積107に露出させ、かつ/または容積107のサイズを変動させるように、台座108を昇降させてもよい。任意の構成として、堆積プロセスの一部の間に台座108を昇降させて、容積107内のプロセス圧力や反応物濃度などを調節してもよい。図示のシャワーヘッド106および台座108は、プラズマ発生器に電力を結合するための無線周波数電源114および整合ネットワーク116に電気的に結合されている。したがって、シャワーヘッド106は、プロセスステーション102に無線周波数電力を結合するための電極として機能してもよい。いくつかの実装形態において、プラズマエネルギーは、プロセスステーション圧力、ガス濃度、RF電力発生器などのうちの1つ以上を制御することによって(例えば、適切な機械可読命令および/または制御ロジックを有するシステムコントローラを介して)制御される。例えば、RF電源114および整合ネットワーク116は、任意の適切なRF電力レベルで動作してもよく、これにより、所望のラジカル種組成を有するプラズマを形成するように動作してもよい。同様に、RF電源114は、任意の適切な周波数または周波数群および電力レベルのRF電力を供給してもよい。
【0038】
いくつかの実装形態において、プラズマ点火および維持条件は、システムコントローラ内の適切なハードウェアおよび/または適切な機械可読命令によって制御され、システムコントローラは、入力/出力制御(IOC:Input/Output Control)命令のシーケンスを介して制御命令を提供してもよい。一例として、プラズマを点火または維持するための命令が、プロセスレシピのプラズマ活性化レシピとして提供される。いくつかの場合、プロセスレシピは、逐次的に配置されてもよい。この場合、プロセスに対する少なくとも一部の命令を同時に実行できる。いくつかの実装形態において、1つ以上のプラズマパラメータを設定するための命令が、プラズマ点火プロセスに先行するレシピに含まれてもよい。例えば、第1のレシピは、不活性ガス(例えば、ヘリウム)および/または反応ガスの流量を設定するための命令と、プラズマ発生器を電力設定値に設定するための命令と、第1のレシピに対する時間遅延命令とを含んでもよい。これに続く第2のレシピは、プラズマ発生器を有効にするための命令と、第2のレシピに対する時間遅延命令とを含んでもよい。第3のレシピは、プラズマ発生器を無効にするための命令と、第3のレシピに対する時間遅延命令とを含んでもよい。これらのレシピは、本開示の範囲内で、任意の適切な態様でさらに細分化および/または反復実行されてもよいことが認識される。いくつかの堆積プロセスにおいて、プラズマ点火の時間は、約3秒~約15秒などの数秒の時間に対応してもよいし、例えば約30秒以下など、より長い時間であってもよい。本明細書に記載の一部の実装形態において、これよりはるかに短いプラズマ点火を処理サイクル中に適用してもよい。このようなプラズマ点火の時間は、約50ミリ秒未満のオーダーであってもよく、具体例としては約25ミリ秒が用いられる。
【0039】
簡略化のために、図1の処理装置100は、低圧環境を維持するためのプロセスチャンバのスタンドアロンステーション(102)として示されている。ただし、複数のプロセスステーションが、図2に示すようなマルチステーション処理ツール環境に含まれてもよいことが認識される。図2は、マルチステーション処理ツールの一実施形態の概略図である。処理装置200は、複数の製造プロセスステーションを含む集積回路製造チャンバ263を採用している。製造プロセスステーションの各々は、特定のプロセスステーションにて、図1の台座108などのウエハホルダに保持された基板に対して処理工程を行うのに用いてもよい。図2の実施形態では、集積回路製造チャンバ263は、4つのプロセスステーション251、252、253、254を有する。実装形態、および例えば必要とされる並列ウエハ処理のレベル、サイズ/スペースの制約、コストの制約などに応じて、他の同様のマルチステーション処理装置におけるプロセスステーションの数はこれより多くても少なくてもよい。また、図2には、基板ハンドラロボット275が示されている。基板ハンドラロボット275は、システムコントローラ290の制御下で動作してもよく、基板をロードポート280のウエハカセット(図2では不図示)から、集積回路製造チャンバ263内のプロセスステーション251、252、253、254のうちの1つへと移動させるように構成されている。
【0040】
また、図2には、処理装置200のプロセス条件およびハードウェア状態を制御するためのシステムコントローラ290の一実施形態が示されている。システムコントローラ290は、1つ以上のメモリ装置、1つ以上の大容量記憶装置、および1つ以上のプロセッサを含んでもよい。1つ以上のプロセッサは、中央処理装置(CPU)、アナログおよび/またはデジタル入出力接続、ステッピングモータ制御ボードなどを含んでもよい。いくつかの実施形態において、システムコントローラ290は、処理ツール200のすべての動作を制御する。システムコントローラ290は、大容量記憶装置に記憶されたシステム制御ソフトウェアを実行する。システム制御ソフトウェアは、メモリ装置にロードされてもよく、システムコントローラのハードウェアプロセッサ上で実行される。システムコントローラ290のプロセッサによって実行されるソフトウェアは、タイミング、ガスの混合、製造チャンバおよび/またはステーション圧力、製造チャンバおよび/またはステーション温度、ウエハ温度、基板台座、チャックおよび/またはサセプタ位置、1つ以上の基板に対して実行されるサイクル数、ならびに処理ツール200によって実行される特定のプロセスの他のパラメータを制御するための命令を含んでもよい。これらのプログラムされたプロセスは、各種のプロセスを含んでもよい。各種のプロセスは、チャンバ内部の表面への蓄積量の決定に関連するプロセス、複数のサイクルを伴う基板への膜堆積に関連するプロセス、およびチャンバの洗浄に関連するプロセスを含む(ただし、これらに限定されない)。システムコントローラ290の1つ以上のプロセッサによって実行可能なシステム制御ソフトウェアは、任意の適切な態様で構成されてもよい。例えば、各種のツールによるプロセスを実行するために必要なプロセスツールコンポーネントの動作を制御するために、各種のプロセスツールコンポーネントサブルーチンまたは制御オブジェクトが記述されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、システムコントローラ290のプロセッサによって実行されるソフトウェアは、上記の各種パラメータを制御するための入力/出力制御(IOC)シーケンス命令を含んでもよい。例えば、基板への堆積の各フェーズおよび堆積サイクルは、システムコントローラ290によって実行される1つ以上の命令を含んでもよい。ALD/CFD堆積プロセスフェーズのプロセス条件を設定するための命令は、対応するALD/CFD堆積レシピフェーズに含まれてもよい。いくつかの実施形態において、レシピフェーズは、逐次的に配置されてもよい。この場合、あるプロセスフェーズに対する全ての命令が、そのプロセスフェーズと同時に実行される。
【0042】
いくつかの実施形態において、システムコントローラ290の大容量記憶装置および/またはシステムコントローラ290にアクセス可能なメモリ装置に記憶された他のコンピュータソフトウェアおよび/またはプログラムを用いてもよい。このためのプログラムまたはプログラムの一部の例としては、基板位置決めプログラム、プロセスガス制御プログラム、圧力制御プログラム、ヒータ制御プログラム、およびプラズマ制御プログラムが挙げられる。基板位置決めプログラムは、基板を(図2の)台座108に積載するとともに、基板と処理装置200の他の部分との間の間隔を制御するために用いられるプロセスツールコンポーネント用のプログラムコードを含んでもよい。位置決めプログラムは、基板への膜堆積およびチャンバの洗浄のために必要に応じて基板を反応チャンバに対して適切に搬入出するための命令を含んでもよい。
【0043】
プロセスガス制御プログラムは、ガス組成および流量を制御するためのコードを含んでもよく、さらに任意で、堆積前にプロセスステーション内の圧力を安定させるために、1つ以上のプロセスステーションにガスを流すためのコードを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プロセスガス制御プログラムは、基板への成膜時に反応チャンバにガスを導入するための命令を含む。これは、基板のバッチ内の1つ以上の基板に対して異なるサイクル数でガスを導入することを含んでもよい。圧力制御プログラムは、例えば、プロセスステーションの排気システムにおけるスロットルバルブや、プロセスステーションへのガス流などを調節することによってプロセスステーション内の圧力を制御するためのコードを含んでもよい。圧力制御プログラムは、バッチの処理中に、1つ以上の基板に対して異なるサイクル数の堆積を行う際に、同じ圧力を維持するための命令を含んでもよい。
【0044】
ヒータ制御プログラムは、基板の加熱に用いられる(図1の)加熱ユニット110への電流を制御するためのコードを含んでもよい。あるいは、ヒータ制御プログラムは、基板への伝熱ガス(ヘリウムなど)の供給を制御してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、システムコントローラ290に関連付けられたユーザインタフェースが設けられてもよい。ユーザインタフェースは、表示画面、装置および/またはプロセス条件のグラフィックソフトウェア表示、ならびにポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力装置を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、システムコントローラ290が調整するパラメータは、プロセス条件に関連してもよい。非限定的な例としては、プロセスガスの組成および流量、温度、圧力、プラズマ条件などが挙げられる。これらのパラメータは、レシピとしてユーザに提供されてもよい。レシピは、ユーザインタフェースを用いて入力されてもよい。基板のバッチ全体に対するレシピは、バッチ処理の過程における厚さ傾向を補償するために、バッチ内の1つ以上の基板に対する補償サイクル数を含んでもよい。
【0047】
プロセスを監視するための信号は、各種のプロセスツールセンサから、システムコントローラ290のアナログおよび/またはデジタル入力接続を介して供給されてもよい。プロセスを制御するための信号は、処理ツール200のアナログおよび/またはデジタル出力接続を介して出力されてもよい。監視可能なプロセスツールセンサの非限定的な例としては、マスフローコントローラ、圧力センサ(マノメータなど)、熱電対などが挙げられる。センサはまた、チャンバ内部の1つ以上の表面への蓄積量、および/またはチャンバ内の基板上の材料層の厚さを監視ならびに決定するために設けられ、用いられてもよい。これらのセンサからのデータとともに、適切にプログラムされたフィードバックおよび制御アルゴリズムを用いて、プロセス条件を維持してもよい。
【0048】
システムコントローラ290は、上記の堆積プロセスを実行するためのプログラム命令を提供してもよい。これらのプログラム命令は、DC電力レベル、圧力、温度、基板に対するサイクル数、チャンバ内部の少なくとも1つの表面への蓄積量などの種々のプロセスパラメータを制御してもよい。これらの命令は、本明細書に記載の種々の実施形態に従って、膜スタックのインサイチュでの堆積を操作するためのパラメータを制御してもよい。
【0049】
例えば、システムコントローラは、堆積チャンバ内部の少なくとも1つの内部領域に現在蓄積している堆積材料の量を決定すること、この堆積チャンバ内部の内部領域に現在蓄積している堆積材料の量を前提として、目標堆積厚さを生成するための補償ALDサイクル数を得るために、決定された堆積材料の量、またはそこから導出したパラメータを、(i)目標堆積厚さを達成するために必要なALDサイクル数と、(ii)蓄積した堆積材料の量を表す変数との関係に適用すること、および、基板のバッチにおける1つ以上の基板に対してこの補償ALDサイクル数を実行することなどの、本明細書に記載の技術を実行するための制御ロジックを含んでもよい。システムはさらに、チャンバ内の蓄積量が蓄積限界に達したことを決定し、その決定を受けて基板のバッチに対する処理を停止するための制御ロジックと、チャンバ内部の洗浄を行わせるための制御ロジックとを含んでもよい。
【0050】
図2のシステムコントローラ290によって実行される上記の機能および/または動作に加えて、コントローラはさらに、RFサブシステム295の動作を制御および/または管理してもよい。RFサブシステム295は、RF電力を生成し、RF入力ポート267を介して集積回路製造チャンバ263に伝達してもよい。本明細書でさらに説明するように、このような動作は、例えば、集積回路製造チャンバ263に供給されるRF電力の上限および下限閾値の決定、集積回路製造チャンバ263に供給されるRF電力の実際の(リアルタイムなどの)レベル、RF電力の有効化/無効化タイミング、RF電力のオン/オフ時間、動作周波数などの決定に関連してもよい。
【0051】
特定の実施形態において、集積回路製造チャンバ263は、入力ポート267に加えて入力ポート(図2には不図示の追加の入力ポート)を備えてもよい。したがって、集積回路製造チャンバ263は、8つのRF入力ポートを用いてもよい。特定の実施形態において、集積回路製造チャンバ165のプロセスステーション251~254はそれぞれ、第1および第2の入力ポートを用いてもよい。ここで、第1の入力ポートが第1の周波数の信号を伝達してもよく、第2の入力ポートが第2の周波数の信号を伝達してもよい。2つの周波数を用いることにより、プラズマ特性を向上できる可能性があり、これにより、堆積速度を特定の制限内に維持し、かつ/または堆積速度をより容易に制御できる可能性がある。2つの周波数を用いることにより、他にも好ましい結果が得られる可能性があり、特許請求される主題はこの点に関して限定されない。一部の実施形態において、約300kHz~約65MHzの周波数を用いてもよい。いくつかの実装形態において、約2MHz以下の信号周波数を低周波(LF)と呼び、約2MHz超の周波数を高周波(HF)と呼ぶ場合がある。
【0052】
図3は、実施形態300に係る、1つ以上のステーションに不平衡を導入可能なマルチステーション製造チャンバの実施形態の概略図である。ここで、不平衡とは、マルチステーション製造チャンバのプロセスステーションの入力ポートに略等しい電力が結合される状態から、プロセスステーションの入力ポートに不均等な量の電力が結合される状態へと逸脱することを含んでもよい。特定の実施形態において、平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約1%未満である状態を指す。したがって、そのような実施形態において、不平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約1%超である状態を指す。一部の実施形態において、平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約2%未満である状態を指す。したがって、そのような実施形態において、不平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約2%超である状態を指す。他の実施形態において、平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約2.5%未満である状態を指す。したがって、そのような実施形態において、不平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約2.5%超である状態を指す。他の実施形態において、平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約5%未満である状態を指す。したがって、そのような実施形態において、不平衡状態とは、各プロセスステーションに結合されたRF電力の偏差が約5%超である状態を指す。
【0053】
図3を参照して説明するように、RF電力発生器314は、比較的高い電力出力信号をRF整合ネットワーク320に結合するように、単一の出力信号経路を含んでもよい。図3の実施形態において、RF整合ネットワーク320は、RF電力発生器314の出力インピーダンスと整合する入力インピーダンスを提供するように動作する。したがって、RF電力発生器314が約50オームの出力インピーダンスを提供する一部の実施形態では、RF整合ネットワーク320は、整合する(50オームの)入力インピーダンスを提供してもよい。RF電力発生器314は、1.5kWの振幅を有する信号を生成してもよい。ただし、特許請求される主題は、1.5kW未満(例えば、750W、1kW、1.25kWなど)の出力レベルなど、幅広い出力電力レベルを有するRF電力発生器を包含することが意図されている。他の実施形態において、RF電力発生器314は、1.75kW、2kW、2.5kWの電力出力など、1.5kW超の振幅を有する信号を発生させてもよく、実質的に制限はない。
【0054】
図3の実施形態において、RF電力分配ネットワーク323は、マルチステーション集積回路製造チャンバのプロセスステーション間でRF電力を割り当てるように構成される。特定の実施形態において、RF電力分配ネットワーク323は、マルチステーション集積回路製造チャンバ363のプロセスステーションである4つのプロセスステーション(Stn-1、Stn-2、Stn-3、Stn-4として示す)間で分配するために、RF整合ネットワーク320から比較的高い電力入力信号を受信する。図3以外の実施形態において、RF分配モジュールは、4つより少ないプロセスステーション(例えば、2つもしくは3つのプロセスステーション)または4つより多いプロセスステーション(例えば、5つ、6つ、8つ、16個のプロセスステーションなど)など、任意の数のプロセスステーション間で電力を割り当ててもよく、特許請求される主題はこの点に関して限定されない。
【0055】
図3の実施形態において、RF電力分配ネットワーク323は、レシピで制御された静電容量(RCC:Recipe-Controlled Capacitance)モジュール324、326、328、330を含む。RCCモジュールは、少なくとも1つの調整可能な容量性素子を含む。容量性素子は、RCC制御モジュール332から1つ以上の制御パラメータを受信したことに応答して、RF電力分配ネットワーク323からの1つ以上の出力信号に対して容量性リアクタンスを加算または減算するように動作してもよい。したがって、RCCモジュール324、326、328、330は、個々のRCCモジュールの容量性リアクタンスを調整することによって、RF電力分配ネットワーク323の出力ポートのインピーダンスと、対応するプロセスステーション(例えば、Stn-1、Stn-2、Stn-3、Stn-4)の入力ポートのインピーダンスとを正確に整合させるように動作するRF電力分配ネットワークとして動作してもよい。さらに、RCCモジュール324~330は、対応するプロセスステーションの入力ポート間に意図的な不整合を生じさせることにより、プロセスステーションに伝達されるRF電力の一部がRF電力発生器314の出力ポートに向かって反射される不平衡を生じさせてもよい。
【0056】
したがって、プロセスステーションStn-1~Stn-4の少なくとも特定の初期動作またはベースライン動作中、RCC制御モジュール332はRF電力分配ネットワーク323に対して、RCCモジュール324~330によって導入される容量性リアクタンスをベースラインまたは基準値(調整可能範囲内の中点など)に設定するように指示してもよい。特定の実施形態において、静電容量の調整可能範囲の中点は、RCCモジュール324~330の各々の最大到達可能値の約50%の値に対応してもよい。そのような場合、RCCモジュール324~330は、RF電力分配ネットワーク323と協働して、マルチステーション集積回路製造チャンバ363の各プロセスステーションに略等しい電力を供給してもよい。多くの可能な例のうちの1つの特定の例では、マルチステーション製造チャンバの個々のステーションに供給されるRF電力は、約450Wに等しくてもよい。
【0057】
しかしながら、マルチステーション集積回路製造チャンバ363の各プロセスステーションにおいて製造プロセスが行われている際に、条件のばらつきによって、プロセス結果に望ましくないばらつきが生じる可能性がある。このようなばらつきとしては、例えば、ALDプロセス中の膜堆積速度の不均一性、ウェットエッチングまたはドライエッチング工程中の材料エッチング速度の不均一性、または他の製造プロセスにおける不均一性が挙げられる。さらに、製造プロセスにおける不均一性により、膜抵抗や膜誘電率などの電気的特性に望ましくないばらつきが生じる可能性がある。さらに、製造プロセスの不均一性により、膜密度などの物理的特性に望ましくないばらつきが生じる可能性がある。ここで、より低いRF電力レベルを用いると、より高いRF電力レベルを用いて製造されたより高密度な膜に比べて、エッチングが速いより低密度の膜になる可能性がある。前述したように、処理条件のばらつきは、ALDプロセスで用いる前駆体ガス濃度の差異、前駆体ガス温度のばらつき、ステーション固有の幾何学的ばらつき、RF結合構造におけるステーション間のばらつきなどによって生じる可能性がある。したがって、例えば、ALD工程中、プロセスステーションStn-1内のウエハ351に形成されている膜などの集積回路膜の厚さは、Stn-4内のウエハ355に形成されている膜よりも厚くなる可能性がある。特定の実施形態において、膜厚のこのようなばらつきは、回路性能を低下させる可能性があり、その結果、例えば、マルチステーション集積回路製造チャンバ363のステーションStn-1~Stn-4で製造された集積回路装置を用いる上位システムの性能に許容できないばらつきが生じる可能性がある。
【0058】
例えば、マルチステーション集積回路製造チャンバ363のプロセスステーションStn-1~Stn-4内で成膜速度に違いが生じていることを検出した場合、RCC制御モジュール332は、RCCモジュール324~330のうちの1つ以上に対して、RCCモジュール324~330のうちの1つ以上におけるリアクタンス回路素子によって導入される静電容量を変化させるように指示してもよい。特定の実施形態において、RCCモジュールのリアクタンス回路素子の値に対するこのような制御は、RCCモジュール内のステッピングモータを制御することによって行ってもよい。このモータは、固定コンデンサプレート間に1つ以上のプレートをスライドまたは挿入するように動作してもよい。したがって、一例として、Stn-1における成膜速度が、マルチステーション集積回路製造チャンバ363の他のステーションにおける成膜速度に対して低下していることをRCC制御モジュール332が検出した場合、RCC制御モジュール332はRCCモジュール324に対して、容量性リアクタンスを低下させるように指示してもよい。特定の実施形態において、このように容量性リアクタンスを低下させることによって、Stn-1に伝達される相対的な電力が増加する場合がある。これにより、時間の経過とともに、Stn-1における膜堆積速度が増加して他のプロセスステーションにおける膜堆積速度と同等になる場合がある。
【0059】
図3の例では、RCCモジュール324、326、328、330は、容量性リアクタンスを提供する回路素子を備えるものとして説明した。特定の実施形態において、可変の調整可能な静電容量を提供する回路素子は、可変の調整可能なインダクタンスを提供する回路素子よりも一定の実装上の利点を有する場合がある。しかしながら、一部の実施形態において、可変の調整可能なインダクタンスを提供するリアクタンス回路素子が有利な場合もあり、特許請求される主題は、容量性または誘導性の回路素子を用いたRCCモジュールを包含することが意図されている。
【0060】
なお、図3のRF電力発生器314は、単一のRF電力発生器で構成されるものとして説明したが、特定の実施形態において、RF電力発生器314は、1つを超えるRF電力発生器の集まりで構成されてもよい。いくつかの場合、2つ以上のRF電力発生器を用いることにより、1つのRF電力発生器が故障してRF電力の生成が停止した場合に、ある程度の冗長性を確保できる場合がある。2つ以上のRF電力発生器を用いることにより、さらなるメリットを得られる場合もあり、特許請求される主題は、この点に関して限定されない。RF電力発生器314が2つ以上の個別のRF電力発生器の集まりで構成される特定の実施形態において、RF電力分配ネットワーク323は、マルチステーション集積回路製造チャンバの入力ポートにRF電力を分配することに加えて、2つ以上の個別のRF電力発生器からのRF電力を統合するように動作してもよい。
【0061】
図4は、一実施形態に係る、マルチステーション集積回路製造チャンバの1つ以上のステーションへのRF電力を不平衡化する方法400のフローチャートである。特許請求される主題の実施形態は、方法400に記載の動作に加えてさらなる動作を含んでもよいし、方法400に記載の動作よりも少ない動作を含んでもよいし、方法400に記載の順序と異なる順序で動作を実行してもよい。さらに、図3の装置が、図4の方法を実行するのに適している場合があるが、特許請求される主題は、他のシステムおよび/または装置を用いて図4の方法を実行する場合も包含することが意図されている。図4の方法はまず、ステップ410にて、マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを特定してもよい。このようなプロセスには、例えば、ALDやPECVDなどの膜堆積プロセスが含まれてもよい。また、プロセスには、ウェットエッチングまたはドライエッチングプロセスが含まれてもよい。
【0062】
方法は、続くステップ420にて、マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションに結合されたRF電力に対して、マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションに結合されたRF電力を不平衡化してもよい。このような不平衡化は、マルチステーション集積回路製造チャンバへの入力においてRF電力分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子の値を修正することを含んでもよい。特定の実施形態において、リアクタンス回路素子の値をこのように修正することは、静電容量を、静電容量の最大値の約50%である基準値から、最大値の約10%~約90%の値に調整することを含んでもよい。
【0063】
特定の実施形態において、ステップ410を参照して説明したような、ステーション間でのプロセス条件および/またはプロセス結果の不均一性を特定したことを、フィードバックループへの入力信号として用いてもよい。不均一性を特定した場合、ユーザ入力なしで(例えば自動的に)、不均一性が発生している個々のプロセスステーションに供給されるRF電力を不平衡化してもよい。このようなフィードバックループへの入力信号は、各種の技術を用いてプロセスステーション間の不均一性を測定してもよく、このような技術を、処理中にチャンバ内で使用してもよい。製造プロセス中にチャンバ内で使用される技術としては、例えば、前駆体または試薬のガス濃度、ガス温度などの測定が挙げられる。ウエハ処理の完了後に使用可能な、反応チャンバの外部で用いられる技術としては、ウエハ重量、ウエハの形状的特徴(例えば、限界寸法、エッチングプロファイル、堆積のコンフォーマル性、堆積膜厚など)の測定値、処理されたウエハの物理的および/または化学的特性、エッチング速度、エッチング深さ、ならびにウエハの電気的および/または光学的特性(例えば、シート抵抗、絶縁破壊電圧、誘電率、屈折率、反射スペクトルなど)の測定が挙げられる。これらの測定、および場合によっては他の測定は、プロセスチャンバに付随するインフラストラクチャ(例えば、ロボット)によって提供可能な一体型計測モジュールなどの一体型ツールを用いて行ってもよい。また、非一体型計測ツールによって測定を行ってもよい。
【0064】
ウエハの測定された特性における差異を、入力パラメータを処理し、マルチチャンバ集積回路製造チャンバの個々のステーションに結合されるRF電力の例えば振幅、周波数成分などを正確に調整するための出力パラメータを返すモデルまたは他のプロセスロジックへの入力パラメータとして提供してもよい。チャンバに結合されるRF電力の特性をこのように修正することにより、ステーション間の不均一性を低減できる場合がある。この調整は、複数のウエハを処理する複数のサイクルにわたってなど、繰り返し行ってもよい。ステーション間の不均一性レベルに関する更新後の判定結果を、モデルまたは他のプロセスロジックに提供してもよく、これを用いて、モデル出力に基づいてステーション間のRF電力レベルをさらに更新または修正してもよい。いくつかの場合、モデルは、処理されたウエハのパラメータ値(例えば、厚さまたは絶縁破壊電圧)と、対応するRF電力レベルとの関係を取り入れてもよい。一部の実施形態において、モデルは、ステーション間の不均一性レベルと、同じステーション間の対応する補償的なRF不平衡化との1つ以上の感度関係を取り入れてもよい。
【0065】
図5は、実施形態500に係る、RF電力が平衡化された条件下と、RF電力が不平衡化された条件下とで堆積された材料の平均厚さを示すグラフである。図3の装置が、図5のグラフ結果となる堆積プロセスを実行するのに適している場合があるが、堆積プロセスは、他の装置構成によって実行してもよく、特許請求される主題はこの点に関して限定されない。図5のグラフの縦軸は、マルチステーション集積回路製造チャンバのプロセスステーションにおいて時間変動電磁界が存在する状態で堆積される膜の単位時間(すなわち、分)あたりの平均または代表厚さ(オングストローム、「Å」)を示す。図5に示す例では、RFが平衡化された条件下において、プロセスステーション1(Stn-1)における膜堆積は1478Å/分の速度で行われ、プロセスステーション2、3、4(Stn-2、Stn-3、Stn-4)における膜堆積はそれぞれ1518Å/分、1521Å/分、1505Å/分の値である。したがって、図3の装置構成を参照すると、RF電力分配ネットワーク323は、マルチステーション集積回路製造チャンバにRF電力を略等しく割り当てるように構成し得るが、それでも個々のプロセスチャンバ内のばらつきにより、実際のチャンバ内反応速度に不均一が生じる場合がある。図3の構成を用いて、RCCモジュール324~330の1つ以上の容量性素子を、最大値の約50%の基準値またはベースライン値から調整することによって、プロセスステーション1~4間でRF電力を略等しくまたはバランスよく割り当てられる場合がある。
【0066】
マルチステーション製造チャンバのステーション1において堆積速度が低下していることを検出した場合、図3のRCCモジュール324が示す静電容量を調整(例えば、低下)してもよい。これにより、製造チャンバの残りのプロセスステーションと比較したプロセスステーション1(Stn-1)内の不均一性を少なくとも部分的に補償してもよい。これにより、図5の例では、最大値の約50%であるベースライン値(RF平衡状態)から最大値の約35%(RF不平衡状態)に修正するなど、RCCモジュール324が示す容量性リアクタンスを修正することに応じて、堆積速度が上昇し得る。図5の特定の例では、RCCモジュール324における容量性リアクタンスを低下させることにより、プロセスステーション1(Stn-1)における堆積速度が約1478Å/分から約1505Å/分まで上昇し得る。また、図5から分かるように、プロセスステーション1(Stn-1)に結合されたRCCモジュール324など、あるRCCモジュールの容量性リアクタンスを調整した場合の、製造チャンバの残りのチャンバにおける膜堆積速度への影響は無視できる程度に過ぎないと思われる。例えば、RCCモジュール324における容量性リアクタンスを最大値の約50%から最大値の約35%に調整すると、プロセスステーション2(Stn-1)における膜堆積速度が約5Å/分(約0.33%)だけ低下する。
【0067】
図6は、実施形態600に係る、RF電力が平衡化された条件下と、RF電力が不平衡化された条件下とにおける半導体材料のエッチング速度を示すグラフである。図3の装置が、図6のグラフ結果となるエッチングプロセスを実行するのに適している場合があるが、エッチングプロセスは、他の装置構成によって実行してもよく、特許請求される主題はこの点に関して限定されない。図6のグラフの縦軸は、時間変動電磁界が存在する状態でフッ化水素(HF)と水の100:1混合物を用いたウェットエッチングプロセス中などにおけるウェットエッチング速度を示す。図6に示す例では、RFが平衡化された条件下において、プロセスステーション3(Stn-3)におけるウェットエッチング速度は139Å/分であり、プロセスステーション1、2、4(Stn-1、Stn-2、Stn-4)におけるウェットエッチング速度はそれぞれ152Å/分、158Å/分、144Å/分の値である。したがって、図3の装置構成を参照すると、RF電力分配ネットワーク323は、マルチステーション集積回路製造チャンバにRF電力を略等しく割り当てるように構成し得るが、それでも個々のプロセスチャンバ内のばらつきにより、実際のチャンバ内反応速度に不均一が生じる場合がある。図3の構成を用いて、RCCモジュール324~330の1つ以上の容量性素子を、最大値の約50%である基準値またはベースライン値に調整することによって、プロセスステーション1~4間でRF電力を略等しくまたはバランスよく割り当てられる場合がある。
【0068】
マルチステーション製造チャンバのステーション3においてエッチング速度が低下していることを検出した場合、図3のRCCモジュール328の容量性リアクタンスを、例えば最大値の約50%であるベースライン値から最大値の約90%に調整(例えば、増加)してもよい。ただし、特定の場合、あるRCCモジュールの容量性リアクタンスを調整しても、特定のプロセスステーションにおけるウェットエッチング速度が、残りのプロセスステーションに対して所望の通りに増加または低下しない可能性がある。したがって、図6の例では、RCCモジュール328の容量性リアクタンスを調整することによってプロセスステーション3(Stn-3)におけるエッチング速度を増加させるよりも、プロセスステーション1および2(Stn-1およびStn-2)におけるウェットエッチング速度を低下させるようにRCCモジュール324および326の容量性リアクタンスを追加で調整することが有利となり得る。したがって、図6の例では、RCCモジュール328の容量性リアクタンスを調整するとともに、RCCモジュール324および326の容量性リアクタンスを調整することによって、マルチステーション製造チャンバのすべてのプロセスステーションにわたってウェットエッチング速度が互いに均一になり得る。図6の特定の例では、RCCモジュール324~328の容量性リアクタンスをこのように調整することにより、プロセスステーション1(Stn-1)におけるRF電力が約450Wから約426Wに、プロセスステーション2(Stn-2)におけるRF電力が約450Wから約442Wに、プロセスステーション3(Stn-3)におけるRF電力が約450Wから約427Wに低下し得る。
【0069】
図7は、実施形態700に係る、比較的高いRF電力条件下と、比較的低いRF電力条件下とでプロセスステーションにてウエハに堆積された膜のリーク電流を示すグラフである。図7の実施形態では、所定の表面積を有する高伝導性水銀電極を膜に接触させる水銀プローブを用いて、リーク電流を測定してもよい。そして、電界を生成する電圧を水銀電極に印加し、誘導電流を水銀プローブの表面積で割ることにより得られるリーク電流密度を測定できる。図7に示すように、特定の実施形態において、膜品質(ここでは、RFによって生成される電界に反応して誘起されるリーク電流を指す)は、プロセスステーションに供給されるRF電力の低下に応じて高くなる。したがって、図7を参照すると、10MV/CM(メガボルト/センチメートル)の電界の影響などによる電圧破壊の前に、低下したRF電力(図7の↓)に曝露されたプロセスステーションで製造された膜は、約3×10-9アンペア/cm2のリーク電流が発生する。逆に、増加したRF電力(図7の↑)に曝露されたプロセスステーションで製造された膜は、リーク電流が低下し、例えば、約2×10-9アンペア/cm2となる。
【0070】
図2のコントローラ290を参照すると、このようなコントローラは一般に、命令の受信、命令の送出、動作の制御、洗浄動作の有効化、エンドポイント測定の有効化などを行う、様々な集積回路、ロジック、メモリ、および/またはソフトウェアを含む電子機器を用いて構築されてもよい。集積回路は、プログラム命令を記憶するファームウェアとしてのチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または1つ以上のマイクロプロセッサ、もしくはプログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含んでもよい。プログラム命令は、様々な個別の設定(またはプログラムファイル)としてコントローラに通信される命令であってもよく、半導体ウエハ上でもしくは半導体ウエハ用に、またはシステムに対して、特定のプロセスを実施するための動作パラメータを定義する。いくつかの実装形態において、動作パラメータは、1つ以上の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、および/またはウエハダイの製造において1つ以上の処理工程を達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部であってもよい。
【0071】
いくつかの実装形態において、コントローラは、コンピュータの一部であってもよいし、コンピュータに結合されていてもよい。ここで、コンピュータは、システムと一体化しているか、システムに結合されているか、その他の形でシステムとネットワーク接続されているか、これらを組み合わせた形態をとる。例えば、コントローラは、「クラウド」上に存在してもよいし、工場ホストコンピュータシステムのすべてまたは一部に存在してもよい。これにより、ウエハ処理のリモートアクセスが可能になる。コンピュータは、システムへのリモートアクセスを有効化して、製造工程の進捗状況の監視、過去の製造工程履歴の調査、または複数の製造工程から傾向もしくは性能指標の調査を行うことができ、現在の処理のパラメータを変更したり、現在の処理に続く処理工程を設定したり、新たなプロセスを開始したりできる。いくつかの例において、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)からシステムに対して、ネットワークを介してプロセスレシピを提供できる。ここで、ネットワークは、ローカルネットワークまたはインターネットを含んでもよい。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力やプログラミングを可能にするユーザインタフェースを含んでもよい。これらのパラメータおよび/または設定はその後、リモートコンピュータからシステムに通信される。いくつかの例において、コントローラは、データとして命令を受信する。このデータは、1つ以上の動作において実行される各処理工程のパラメータを指定する。なお、これらのパラメータは、実行するプロセスの種類、およびコントローラが連携または制御するように構成されているツールの種類に対して固有のパラメータであってもよいことを理解されたい。したがって、上述したように、コントローラは、1つ以上の個別のコントローラを備えることなどによって分散されてもよい。これらの個別のコントローラはネットワーク化され、本明細書に記載のプロセスおよび制御といった共通の目的に向けて動作する。このような目的のための分散コントローラの一例としては、(例えばプラットフォームレベルで、またはリモートコンピュータの一部として)遠隔設置された1つ以上の集積回路と通信するチャンバに搭載された1つ以上の集積回路が挙げられる。これらの集積回路は協働してチャンバにおけるプロセスを制御する。
【0072】
上記の詳細な説明において、提示される実施形態または実装形態の完全な理解に供するため、数々の具体的詳細を示した。本開示の実施形態または実装形態は、これらの具体的詳細の一部またはすべてを除いて実施されてもよい。他の例においては、本開示の実施形態または実装形態が不必要に曖昧になることを避けるため、周知のプロセス工程については、詳細な説明を省いた。なお、本開示の実施形態または実装形態を具体的な実施形態または実装形態に関連付けて説明したが、こうした説明は本開示の実施形態または実装形態の範囲を限定する意図ではないことが理解される。
【0073】
上記の詳細な説明は、本開示の態様を説明する目的で、一部の実施形態または実装形態に関してなされたものである。しかしながら、本明細書に記載の教示は、数多くの異なる方法で適用および実施可能である。上記の詳細な説明では、添付図面が参照されている。本開示の実施形態または実装形態は、当業者がこれらの実施形態または実装形態を実践できるように十分詳細に説明されているが、これらの例は本開示を限定するものではないことを理解されたい。他の実施形態または実装形態を用いてもよいし、本開示の実施形態または実装形態の主旨および範囲から逸脱することなく、これらに変更を加えてもよい。さらに、特に断りのない限り、本明細書における接続詞「または」は、適宜、包含的な意味を意図していることを理解されたい。例えば、「A、B、またはC」という表現は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、ならびに「A、B、およびC」の可能性を含むことを意図している。
【0074】
本願において、「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、「ウエハ基板」および「部分的に製造された集積回路」という用語は、互換的に用いられる。「部分的に製造された集積回路」という用語が、集積回路の多数の製造工程のいずれかにおけるシリコンウエハを意味し得ることは、当業者であれば理解できる。半導体装置の分野で用いられるウエハまたは基板の直径は通常、200mm、300mm、または450mmである。上記の詳細な説明は、実施形態または実装形態がウエハで実装されるか、またはウエハの形成もしくは製造に関連するプロセスとともに実装されることを前提としている。しかしながら、特許請求される主題は、これに限定されるものではない。ワークピースは、種々の形状、サイズおよび素材で構成されてもよい。半導体ウエハの他に、特許請求される主題を利用可能なワークピースとして、プリント回路基板など各種の物品、またはプリント回路基板の製造などを含んでもよい。
【0075】
本開示の文脈によって別途明確に要求されない限り、「含む」などの用語は、本明細書および特許請求の範囲を通して、排他的なまたは網羅的な意味ではなく、包含的な意味、すなわち、「含むが限定されない」という意味として解釈すべきである。単数形または複数形を用いた用語も、一般に、それぞれ複数または単数も含む。「または」という用語を、2つ以上の項目の列挙に関して用いた場合、その用語は、列挙された項目のうちのいずれか、列挙された項目のすべて、および、列挙された項目のうちのいずれかの組み合わせの解釈のすべてを含む。「実装形態」という用語は、本明細書に記載の技術および方法の実装形態だけでなく、本明細書に記載の構造を具体化する、かつ/または本明細書に記載の技術および/もしくは方法を取り入れた物理的対象をも意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)電力を生成する装置であって、
1つ以上のRF電源と、
前記1つ以上のRF電源からの電力をマルチステーション集積回路製造チャンバの個々の入力ポートに割り当てるように構成されたRF電力分配ネットワークと、を含み、
前記RF電力分配ネットワークはさらに、1つ以上の制御パラメータを適用して、前記RF電力分配ネットワークから前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記個々の入力ポートへの前記電力を不平衡化させるように構成されている、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記RF電力分配ネットワークは、1つ以上のリアクタンス回路素子を含む、
装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異が特定されたことに応じて、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の少なくとも1つの値を調整するコントローラをさらに含む、
装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記堆積プロセスは、原子層堆積(ALD)を含む、
装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装置であって、
前記堆積プロセスは、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)を含む、
装置。
【請求項7】
請求項3に記載の装置であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
装置。
【請求項8】
請求項2に記載の装置であって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、少なくとも1つのコンデンサまたは少なくとも1つのインダクタを含む、
装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、少なくとも1つのコンデンサを含み、前記1つ以上の制御パラメータは、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、最大値の約10%から約90%の間に修正させる、
装置。
【請求項10】
マルチステーション集積回路製造チャンバであって、
各々が1つ以上の無線周波数(RF)電源から信号を受信するように構成された1つ以上の入力ポートと、
前記1つ以上の入力ポートのうちの対応する1つに結合され、1つ以上のリアクタンス回路素子を含むRF電力分配ネットワークと、
前記RF電力分配ネットワークに結合されたコントローラであって、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の値を修正し、前記1つ以上のRF電源から前記マルチステーション集積回路製造チャンバに結合されるRF電力を不平衡化させるように構成されたコントローラと、
を含む、マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項11】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記1つ以上のリアクタンス回路素子は、1つ以上のコンデンサを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項12】
請求項11に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記コントローラは、前記1つ以上のコンデンサの静電容量値を、最大値の約10%から前記最大値の約90%の間に修正するように構成されている、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項13】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記コントローラは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果との差異が特定されたことに応じて、前記1つ以上のリアクタンス回路素子の値を修正するように構成されている、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項14】
請求項13に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項15】
請求項13に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項16】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、4つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項17】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、2つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項18】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、8つのプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項19】
請求項10に記載のマルチステーション集積回路製造チャンバであって、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバは、16個のプロセスステーションを含む、
マルチステーション集積回路製造チャンバ。
【請求項20】
制御モジュールであって、
メモリに結合されたハードウェアプロセッサと、
通信ポートであって、
マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを示す情報を受信し、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合された無線周波数(RF)電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させる1つ以上の命令をRF電力分配ネットワークに送信するように構成されている、通信ポートと、
を含む、制御モジュール。
【請求項21】
請求項20に記載の制御モジュールであって、
前記1つ以上の命令は、前記RF電力分配ネットワークの1つ以上のリアクタンス素子の値を修正するように動作する、
制御モジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の制御モジュールであって、
前記1つ以上のリアクタンス素子は、少なくとも1つのコンデンサを含み、前記1つ以上の命令は、前記少なくとも1つのコンデンサの値を、最大値の約10%から約90%の間に修正するように動作する、
制御モジュール。
【請求項23】
製造プロセスを制御するための方法であって、
マルチステーション集積回路製造チャンバの第1のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果が、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの第2のステーションにおけるプロセス条件および/またはプロセス結果と異なっていることを特定することと、
前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合された無線周波数(RF)電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに結合されたRF電力に対して不平衡化させることと、
を含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの入力ポートに結合されたRF電力分配ネットワークのリアクタンス回路素子の値を修正することを含む、
方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記リアクタンス回路素子の値を修正することは、前記リアクタンス回路素子の静電容量を、静電容量の最大値の約50%である基準値から、静電容量の前記最大値の約10%から約90%の間の値に調整することを含む、
方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
前記不平衡化させることは、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第1のステーションに結合されたRF電力を、前記マルチステーション集積回路製造チャンバの前記第2のステーションに対して少なくとも約1%異ならせることを含む、
方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、堆積プロセスを含む、
方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、
前記第1のステーションおよび前記第2のステーションにおける前記プロセス条件および/または前記プロセス結果は、エッチングプロセスを含む、
方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
特定の実施形態において、集積回路製造チャンバ263は、入力ポート267に加えて入力ポート(図2には不図示の追加の入力ポート)を備えてもよい。したがって、集積回路製造チャンバ263は、8つのRF入力ポートを用いてもよい。特定の実施形態において、集積回路製造チャンバ165のプロセスステーション251~263はそれぞれ、第1および第2の入力ポートを用いてもよい。ここで、第1の入力ポートが第1の周波数の信号を伝達してもよく、第2の入力ポートが第2の周波数の信号を伝達してもよい。2つの周波数を用いることにより、プラズマ特性を向上できる可能性があり、これにより、堆積速度を特定の制限内に維持し、かつ/または堆積速度をより容易に制御できる可能性がある。2つの周波数を用いることにより、他にも好ましい結果が得られる可能性があり、特許請求される主題はこの点に関して限定されない。一部の実施形態において、約300kHz~約65MHzの周波数を用いてもよい。いくつかの実装形態において、約2MHz以下の信号周波数を低周波(LF)と呼び、約2MHz超の周波数を高周波(HF)と呼ぶ場合がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
ウエハの測定された特性における差異を、入力パラメータを処理し、マルチステーション集積回路製造チャンバの個々のステーションに結合されるRF電力の例えば振幅、周波数成分などを正確に調整するための出力パラメータを返すモデルまたは他のプロセスロジックへの入力パラメータとして提供してもよい。チャンバに結合されるRF電力の特性をこのように修正することにより、ステーション間の不均一性を低減できる場合がある。この調整は、複数のウエハを処理する複数のサイクルにわたってなど、繰り返し行ってもよい。ステーション間の不均一性レベルに関する更新後の判定結果を、モデルまたは他のプロセスロジックに提供してもよく、これを用いて、モデル出力に基づいてステーション間のRF電力レベルをさらに更新または修正してもよい。いくつかの場合、モデルは、処理されたウエハのパラメータ値(例えば、厚さまたは絶縁破壊電圧)と、対応するRF電力レベルとの関係を取り入れてもよい。一部の実施形態において、モデルは、ステーション間の不均一性レベルと、同じステーション間の対応する補償的なRF不平衡化との1つ以上の感度関係を取り入れてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
マルチステーション製造チャンバのステーション1において堆積速度が低下していることを検出した場合、図3のRCCモジュール324が示す静電容量を調整(例えば、低下)してもよい。これにより、製造チャンバの残りのプロセスステーションと比較したプロセスステーション1(Stn-1)内の不均一性を少なくとも部分的に補償してもよい。これにより、図5の例では、最大値の約50%であるベースライン値(RF平衡状態)から最大値の約35%(RF不平衡状態)に修正するなど、RCCモジュール324が示す容量性リアクタンスを修正することに応じて、堆積速度が上昇し得る。図5の特定の例では、RCCモジュール324における容量性リアクタンスを低下させることにより、プロセスステーション1(Stn-1)における堆積速度が約1478Å/分から約1505Å/分まで上昇し得る。また、図5から分かるように、プロセスステーション1(Stn-1)に結合されたRCCモジュール324など、あるRCCモジュールの容量性リアクタンスを調整した場合の、製造チャンバの残りのステーションにおける膜堆積速度への影響は無視できる程度に過ぎないと思われる。例えば、RCCモジュール324における容量性リアクタンスを最大値の約50%から最大値の約35%に調整すると、プロセスステーション(Stn-1)における膜堆積速度が約5Å/分(約0.33%)だけ低下する。
【国際調査報告】