(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】環状グアニジン誘導体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20221219BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
C07D487/04 148
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022523423
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2020078610
(87)【国際公開番号】W WO2021078563
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ラングロッツ,ビョルン
【テーマコード(参考)】
4C050
4H039
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC05
4C050EE03
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH01
4H039CA42
4H039CG10
(57)【要約】
本発明は、式I
の環状グアニジン誘導体又はそれらの混合物(式I)を製造する方法であって、トリアミンをC
1源及び固体材料の存在下で気相又は液相で不活性雰囲気下で反応させることによる、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、R
1からR
13はH及びC
1からC
4アルキルの群から独立して選択され、n及びmは0及び1の群から独立して選択される自然数である)
の環状グアニジン誘導体又はそれらの混合物を製造する方法であって、トリアミンをC
1源の存在下で不活性材料、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ゼオライト又はこれらの混合物若しくは層の群から選択される固体材料を充填した反応器において気相又は液相で不活性雰囲気下で少なくとも90℃の温度及び1から320barの圧力で反応させることによる、方法。
【請求項2】
トリアミン及びC
1源をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される溶媒に溶解させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がメタノール、ジエチレングリコール又はブチルジグリコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
トリアミンがN-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(DETA)及びN-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンの群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
C
1源が炭酸ジメチル、尿素、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、二酸化炭素、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホスゲン及びシアナミドの群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の3つの工程:
I)トリアミンをC
1源の存在下で少なくとも90℃の温度で反応させて、式II
【化2】
(式中、R
1からR
13並びにn及びmは式I中と同じ意味を有する)
の尿素化合物とする工程、
II)工程I)の式IIの粗製の尿素化合物を溶媒に溶解させる工程、
III)工程II)からの式IIの粗製の溶解した尿素化合物を気相又は液相で不活性雰囲気下で固体材料の存在下で少なくとも120℃の温度及び1から320barの範囲内の圧力で環化する工程
を提供する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法が気相で少なくとも150℃の温度及び1から35barの圧力でなされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法の工程I)において、触媒量の有機塩基又は酸が存在する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
方法の工程II)の溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法の工程I)において、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される溶媒が使用される、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程II)及び工程I)の溶媒が同じである場合、工程II)が工程I)に含まれる、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式Iの環状グアニジン誘導体が1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンの混合物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式Iの環状グアニジン誘導体が1,2,3,5,6,7-ヘキシヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン及び8-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジンの混合物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式Iの環状グアニジン誘導体が2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾール[1,2-a]イミダゾール及び1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロイミダゾール[1,2-a]イミダゾールの混合物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
【0002】
【化1】
の環状グアニジン誘導体又はそれらの混合物を製造する方法であって、トリアミンをC
1源及び固体材料の存在下で気相又は液相で不活性雰囲気下で反応させることによる、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
R1からR13がH及びC1からC4-アルキル基の群から独立して選択される式Iの環状グアニジン誘導体は有用且つ活性な化学製品である。それらは多様な異なる化学反応の触媒として使用される。US-A1 2009/0281314に記述されているとおり、二環式グアニジンを合成する公開された方法は多くの場合複雑であり、多くの場合複数工程の合成方法の使用を伴い、及び/又は多様な形で有害であり得る極めて高価な出発材料の使用を必要とする。
【0004】
さらに、環状グアニジン誘導体、例えば7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[5.5.0]デカ-5-エン(Me-TBD)は、有機酸で処理するとカチオン性1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウム部分及びアニオンが得られ、イオン性液体として使用することができる。これらのイオン性液体はWO 2018/138416に記載されているセルロース繊維又はフィルムを作製する方法において溶媒として使用することができる。それらは良好な水熱安定性を示し、木材パルプを溶解させることが可能である。得られた溶液は織物繊維の紡績に使用される。
【0005】
WO 2019/030197は、環状尿素単位を製造する方法であって、トリアミンをCO2と反応させることによる方法を記載している。環状グアニジン誘導体を生成するためにトリアミンをCO2とともに固体材料又は強有機塩基の存在下で気相又は液相で使用することは開示されていない。
【0006】
US-A1 2009/0281314は、二環式グアニジンを製造する方法であって、尿素及び脱水剤、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジシラザン、アルコキシ置換シラン又はそれらの組合せを含む反応混合物を≧90℃の温度に加熱することによる、方法を記載している。US-A1 2009/0281314は、気相又は液相で固体材料の存在下で二環式グアニジンを製造する方法を開示していない。1つの方法工程のみで環状グアニジン誘導体を製造する方法もまたUS-A1 2009/0281314に開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、式Iの環状グアニジン誘導体を製造する方法であって、環境に優しく、上記の方法よりも少ない廃棄物を生じ、最大3つの方法工程を有する、好ましくは1つの方法工程での方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外なことに、これは式I
【0009】
【化2】
(式中、R
1からR
13はH及びC
1からC
4アルキルの群から独立して選択され、n及びmは0及び1の群から独立して選択される自然数である)
の環状グアニジン誘導体又はそれらの混合物を製造する方法であって、トリアミンをC
1源及び固体材料の存在下で気相又は液相で不活性雰囲気下で少なくとも90℃の温度及び1から320barの圧力で反応させることによる、方法を用いて達成できることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、固体材料が不活性材料及び固体酸触媒の群から選択される場合に有利である。
【0011】
本発明の方法は、固体材料がケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム及びゼオライトの群から選択される固体酸触媒である場合に有利である。
【0012】
本発明の方法は、トリアミン及びC1源をメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム(proglyme)、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される溶媒に溶解させる場合に有利である。
【0013】
本発明の方法は、溶媒がメタノール、ジエチレングリコール又はブチルジグリコールである場合に有利である。
【0014】
本発明の方法は、トリアミンがN-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(DETA)及びN-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンの群から選択される場合に有利である。
【0015】
本発明の方法は、C1源が炭酸ジメチル、尿素、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、二酸化炭素、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホスゲン及びシアナミドの群から選択される場合に有利である。
【0016】
本発明の方法は、方法が以下の3つの工程:
I)トリアミンをC1源の存在下で少なくとも90℃の温度で反応させて、式II
【0017】
【化3】
(式中、R
1からR
13並びにn及びmは式I中と同じ意味を有する)
の尿素化合物とする工程、
II)工程I)の式IIの粗製の尿素化合物を溶媒に溶解させる工程、及び
III)工程II)からの式IIの粗製の尿素化合物を気相又は液相で不活性雰囲気下で固体材料の存在下で少なくとも120℃の温度及び1から320barの範囲内の圧力で環化する工程
を提供する場合に有利である。
【0018】
本発明の方法は、方法が気相で少なくとも150℃の温度及び1から35barの圧力でなされる場合に有利である。
【0019】
本発明の方法は、本発明の方法の工程Iにおいて、触媒量の有機塩基又は酸が存在する場合に有利である。
【0020】
本発明の方法は、本発明の方法の工程II)の溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される場合に有利である。
【0021】
本発明の方法は、本発明の方法の工程Iにおいて、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される溶媒が使用される場合に有利である。
【0022】
本発明の方法は、工程II)及び工程I)の溶媒が同じである場合、本発明の方法の工程II)が工程I)に含まれる場合に有利である。
【0023】
本発明の方法は、式Iの環状グアニジン誘導体が1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンの混合物である場合に有利である。
【0024】
本発明の方法は、式Iの環状グアニジン誘導体が1,2,3,5,6,7-ヘキシヒドロイミダゾール(hexyhydroimidazol)[1,2-a]ピリミジン及び8-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジンの混合物である場合に有利である。
【0025】
本発明の方法は、式Iの環状グアニジン誘導体が2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾール[1,2-a]イミダゾール及び1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロイミダゾール[1,2-a]イミダゾールの混合物である場合に有利である。
【0026】
本発明の方法を用いて、式I
【0027】
【化4】
の環状グアニジン誘導体又はそれらの混合物が製造される。この式I中、n及びmは0及び1の群から独立して選択される自然数であり、m及びnは同じ自然数であることが好ましく、m及びnは1であることが特に好ましい。
【0028】
式I中のR1からR13はH及びC1からC4アルキル基の群から独立して選択される。C1からC4アルキル基とはメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルを意味する。R1からR13はH及びメチルの群から独立して選択されることが好ましく、R2からR13はHであり、R1はH及びメチルの群から選択されることが特に好ましい。
【0029】
本発明の方法によって入手可能な式Iの好ましい環状グアニジン誘導体は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,2,3,5,6,7-ヘキシヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン、8-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン、2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾール[1,2-a]イミダゾール及び1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロイミダゾール[1,2-a]イミダゾールの群から選択される。
【0030】
式Iの環状グアニジン誘導体の好ましい混合物は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,2,3,5,6,7-ヘキシヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン及び8-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン又は2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾール[1,2-a]イミダゾール及び1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロイミダゾール[1,2-a]イミダゾールを含むものである。
【0031】
本発明の方法において、トリアミンはC1源と反応する。本発明の方法に使用されるトリアミンはN-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン(DETA)及びN-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミンの群から選択される。N-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン(DPTA)の使用が好ましい。
【0032】
本発明の方法において使用されるC1源は炭酸ジメチル、尿素、ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、二酸化炭素、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ホスゲン及びシアナミドの群から選択される。炭酸ジメチル、尿素、二酸化炭素、炭酸エチレン又は炭酸プロピレンの使用が好ましい。炭酸ジメチル、尿素又は二酸化炭素の使用がより好ましい。
【0033】
本発明の方法の間、C1源は常に過剰で使用され、これはC1源が使用されるトリアミンと比較して1.01から1.50モル当量、好ましくは1.01から1.20モル当量の量で使用されることを意味する。二酸化炭素がC1源として使用される場合、使用されるトリアミンと比較して10から500モル当量の範囲内の大過剰の二酸化炭素が用いられる。
【0034】
本発明の方法の場合、出発生成物であるトリアミン及びC1源を溶媒に溶解させることができ、又は溶媒なしで反応させることができる。溶媒なしのトリアミンとC1源との反応が好ましい。溶媒が使用される場合、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコールの群から選択されるプロトン性溶媒又はテトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される非プロトン性溶媒である。メタノール及びブチルジグリコール及びテトラヒドロフランの群から選択される溶媒が好ましい。メタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコールのような溶媒が特に好ましい。
【0035】
本発明の方法は気相又は液相で固体材料を用いて実施することができる。気相での固体材料を用いた実施が好ましい。
【0036】
固体材料は反応器内に置かれる。本発明の方法は、原則として、1種の気体反応物及び該当する場合は1種以上の液体反応物を反応器へ供給することを伴う不均一触媒上での反応に慣習的に使用される耐圧反応器に好適である。これらは気相及び液相反応のための一般に慣用されている反応器、例えば管型反応器、シェルアンドチューブ反応器及びガス循環反応器を含む。管型反応器の具体的な実施形態はシャフト反応器のものである。この種類の反応器は原則として当業者に知られている。より特定すると、垂直縦軸を有する円筒型反応器であって、反応器の底部又は上部に、少なくとも1種の気体成分及び該当する場合は少なくとも1種の液体成分を含む反応混合物を供給するための注入装置又は複数の注入装置を有するものが使用される。所望の場合、気体及び/又は液体反応物の副流(substream)を、さらに少なくとも1つのさらなる供給装置により反応器へ供給することができる。
【0037】
好ましい気相反応では、出発化合物、例えばトリアミン、C1源、不活性ガス及び場合により溶媒を反応器内の固体材料に到達する前に蒸発器において蒸発させる。蒸発器は反応器の加熱によって加熱される、ラシヒリング、ガラス球、スチール金網若しくは細目金網リング(wire gauze ring)の群から選択される不活性材料からなる反応器内部の蒸発器床(evaporator bed)であってもよく、又はこれは反応器の上部の前の反応器外部に位置する付加的な油若しくは蒸気加熱式蒸発器装置であってもよい。蒸発温度は80から280℃の範囲内、好ましくは120から250℃の範囲内である。蒸発の間、圧力は1から35、好ましくは1から25barの範囲である。
【0038】
気相反応の場合、出発化合物は蒸発の後に固体材料と接触する。液相反応の場合、出発化合物、例えばトリアミン、C1源、不活性ガス及び場合により溶媒は固体材料と直接接触する。本発明の方法の工程IIにおいて式IIの化合物を溶媒に溶解させる場合、これは固体材料に到達する前に反応器の内部又は外部で行う。反応器を通る気相又は液相の流動方向は垂直である。流動方向は反応器の上部から下部へ又はその逆であり得る。反応器の上部から下部への流動方向が好ましい。
【0039】
気相又は液相で使用される固体材料は不活性材料、固体酸触媒又は不活性材料及び固体酸触媒の混合物若しくは層の群から選択される。不活性材料はラシヒリング、ガラス球、スチール金網、細目金網リング及びセラミック材料の群から選択される。固体酸触媒はケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ゼオライト又はこれらの固体酸の混合物の群から選択される。固体材料は異なる形状及びサイズを有し得る。反応器を通る一定の流量を可能にする場合、当業者に知られている固体材料のすべての形状及びサイズが可能である。これらの成形体はタブレット、押出物、スプリット、球状材料の群から選択される。材料の種類及び形状にかかわらず、これらの成形体の直径は1mmから20mmの範囲内である。
【0040】
固体材料は反応器内部に固定され、反応器床(reactor bed)である。反応器床は不活性材料のみ又は不活性材料及び1種以上の固体酸触媒を含むことができる。好ましい反応器床は不活性材料及び1種以上の固体酸触媒を含む。反応器床の一部として、不活性材料は反応器内部の床の位置を固定するために反応器床の始点及び終点にある。固体酸触媒が使用される場合、固体酸触媒は反応器床の始点及び終点の不活性材料の間に位置する。固体酸触媒は単一の固体酸触媒であってもよく、又は混合され若しくは層状に配置され、各層の間に不活性材料が位置し得る2種以上の異なる固体酸触媒であってもよい。好ましい反応器床は反応器床の始点及び終点の不活性材料並びにケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム及びそれらの混合物の群から選択される固体酸触媒を含む。
【0041】
気相及び/又は液相反応の間、N2及びアルゴンの群から選択される不活性ガスが使用される。不活性ガスを用いて、反応の空間速度を制御することができる。通常、空間速度は50から10000l/時の範囲内である。
【0042】
反応の温度は少なくとも90℃であり、150℃から350℃が好ましく、220℃から300℃の範囲内がより好ましい。本発明の方法の間の圧力は1から100barの間の範囲内である。本発明の方法の気相反応の間、圧力は1から35barの範囲内であることが好ましい。本発明の方法の液相反応の間、好ましい圧力は100bar以下である。
【0043】
本発明の方法は単一工程、2又は3工程の方法であり得る。単一工程の方法において、トリアミン、C1源、不活性ガス及び場合により溶媒は気相又は液相で直接反応して、式Iの化合物の1種又は式Iの化合物の混合物となる。2工程の方法において、工程Iの溶媒は工程IIのものと同じである。この場合、工程IIは工程Iに含まれ、式IIの尿素化合物は環化の工程IIIにおいて直接導入することができる。工程Iにおいて溶媒が使用されない場合又は工程IIにおいて工程Iとは別の溶媒が使用される場合、本発明の方法は3つの工程で実施される。本発明の方法の単一及び3工程の方法が好ましい。単一工程の方法が特に好ましい。
【0044】
本発明の別の実施形態では、反応は1つより多い工程に分離することができる。3つの工程が好ましい。第1の工程において、トリアミンをC1源と反応させて、式II
【0045】
【化5】
(式中、R
1~R
13、m及びnは式I中と同じ意味を有する)
の対応する尿素化合物とする。本発明の方法の工程Iにおけるトリアミン及びC
1源の反応において、触媒量の有機塩基又は有機酸を使用することができる。触媒量は使用されるトリアミンの0.01から10mol%、好ましくは0.1から5mol%の範囲内の量である。本発明の方法の工程Iにおいて、有機塩基又は有機酸のいずれかを使用することができる。有機塩基は少なくとも15のpk
a値を有する強有機塩基の群から選択される。有機酸はスルホン酸又はカルボン酸の群から選択される。窒素含有有機塩基、例えばグアニジン、が特に好ましい。
【0046】
トリアミン及びC1源の反応は溶媒の存在下で又は溶媒なしで実行することができる。溶媒なしの反応が好ましい。溶媒が使用される場合、これはプロトン性又は非プロトン性溶媒である。工程Iのプロトン性溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコールの群から選択される。工程Iの非プロトン性溶媒はテトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される。溶媒は、好ましくは、メタノール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール及びテトラヒドロフランの群から選択される。メタノール又はブチルジグリコールが溶媒として特に好ましい。
【0047】
工程Iの反応の反応温度は少なくとも90℃である。C1源が気体でない場合、工程Iにおける圧力は大気圧である。本発明の方法の工程Iにおいて、C1源がCO2である場合、圧力は20から100barの範囲内である。
【0048】
本発明の方法の工程Iの後、式IIの粗製の尿素化合物が入手可能である。「粗製の」とは混合物に少量の副生成物が含有されることを意味する。これらの副生成物は出発生成物、例えばトリアミン、C1源、アルキル化環状尿素誘導体及びより少量のR1がHである式Iの化合物の群から選択される。より少量とは本発明の方法の終了時のR1がHである式Iの化合物の量と比較してより少ない量である。
【0049】
少量の副生成物は式IIの尿素化合物に応じて0.01から10wt%の範囲内である。得られた式IIの粗製の尿素化合物を溶媒に溶解させる。溶媒はプロトン性又は非プロトン性溶媒であり得る。これはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコール、テトラヒドロフラン、ジグリム、プログリム、トリグリム、テトラグリム、トルエン、ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドンの群から選択される。溶媒は、好ましくは、メタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコール並びにテトラヒドロフランの群から選択される。特に好ましい溶媒はメタノール、ジエチレングリコール及びブチルジグリコールである。工程Iにおいて溶媒が使用される場合、工程IIの好ましい溶媒は工程Iのものと同じである。
【0050】
後に、式IIの粗製の尿素化合物を不活性ガス及び溶媒と一緒に環化のために固体材料を充填した反応器の液相又は気相内に供給する。環化が気相で行われる場合、蒸発器が反応器床の前に位置する。これは反応器の上部で又は反応器床の前の反応器内部で行うことができる。蒸発器において、この合わせたガスが不活性ガスと一緒に固体材料を含む反応器床へ供給される前に粗製の尿素及び溶媒を一緒に蒸発させる。環化が液相で行われる場合、式IIの粗製の尿素化合物を最初に溶媒に溶解させ、次いで不活性ガスと一緒に反応器の上部又は下部へ供給する。
【0051】
本発明の方法の工程IIIにおける環化の温度は少なくとも120℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは150から300℃の範囲内である。工程IIIの間の圧力は1から320bar、好ましくは1から200barの範囲内である。
【0052】
好ましい工程IIIは気相で少なくとも150℃の温度及び1から35barの圧力でなされる。
【0053】
多くの場合、本発明の方法の式Iの環状グアニジン誘導体の混合物が得られる。好ましい混合物は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,2,3,5,6,7-ヘキシヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン及び8-メチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロイミダゾール[1,2-a]ピリミジン又は2,3,5,6-テトラヒドロ-1H-イミダゾール[1,2-a]イミダゾール及び1-メチル-2,3,5,6-テトラヒドロイミダゾール[1,2-a]イミダゾールを含む。特定の好ましい混合物は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンの混合物である。
【0054】
[実施例]
さらなる実施例について、以下の略語は以下の意味を有する:
DPTA:ジプロピレントリアミン(3,3'-ジアミノジプロピルアミン)
DPTU:1-(3-アミノプロピル)テトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
TBD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン
Me-TBD:7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン
【0055】
DPTAとCO2との反応:
【0056】
[実施例1]
メタノール中のDPTAの50wt%溶液40mLを、オーバーヘッド撹拌機及びガス注入口を備えた0.3L高圧実験用オートクレーブに移した。室温で、オートクレーブを二酸化炭素(5bar)で3回パージした。次いで、圧力を再び5barに上昇させ、撹拌機を起動した。20分以内に、二酸化炭素を少量ずつ注入して、8から10barの圧力を確立した。次いで、オートクレーブを180℃に加熱した。180℃に到達したら、さらなる二酸化炭素を注入することによって圧力を61barに上昇させた。61barに到達したら、反応混合物を16時間撹拌した。その後、反応混合物を室温に冷却し、オートクレーブを周囲圧力まで減圧した。反応混合物をガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0057】
反応混合物(溶媒なし)の組成は面積パーセントで示され、以下のとおりであった:
11%のDPTU
6%のTBD
20%の1-メチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
27%の1-エチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
【0058】
[実施例2]
DPTA 40mLを、オーバーヘッド撹拌機及びガス注入口を備えた0.3L高圧実験用オートクレーブに移した。室温で、オートクレーブを二酸化炭素(3bar)で3回パージした。次いで、圧力を再び5barに上昇させ、撹拌機を起動した。20分以内に、二酸化炭素を少量ずつ注入して、20barの圧力を確立した。次いで、オートクレーブを180℃に加熱した。180℃に到達したら、さらなる二酸化炭素を注入することによって圧力を61barに上昇させた。62barに到達したら、反応混合物を16時間撹拌した。その後、反応混合物を室温に冷却し、オートクレーブを周囲圧力まで減圧した。反応混合物をガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0059】
反応混合物(溶媒なし)の組成は面積パーセントで示され、以下のとおりであった:
31%のDPTU
6%のTBD
16%の1-メチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
22%の1-エチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
【0060】
[実施例3]
N-メチルピロリドン中のDPTAの50wt%溶液40mLを、オーバーヘッド撹拌機及びガス注入口を備えた0.3L高圧実験用オートクレーブに移した。室温で、オートクレーブを二酸化炭素(3bar)で3回パージした。次いで、圧力を再び5barに上昇させ、撹拌機を起動した。20分以内に、二酸化炭素を少量ずつ注入して、15barの圧力を確立した。次いで、オートクレーブを180℃に加熱した。180℃に到達したら、さらなる二酸化炭素を注入することによって圧力を61barに上昇させた。64barに到達したら、反応混合物を16時間撹拌した。その後、反応混合物を室温に冷却し、オートクレーブを周囲圧力まで減圧した。反応混合物をガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0061】
反応混合物(溶媒なし)の組成は面積パーセントで示され、以下のとおりであった:
31%のDPTU
5%のTBD
13%の1-メチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
20%の1-エチルテトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン
【0062】
DPTAと炭酸ジメチルとの反応
【0063】
[実施例4]
還流凝縮器を備えた1000mL三つ口フラスコにDPTA 100g(0.76mol)及びTBD 6.9g(0.05mol)を投入した。氷浴を使用することによって混合物を8℃に冷却した。炭酸ジメチル75g(0.83mol、1.09当量)を2時間後に滴下添加した。次いで、反応混合物を20℃に昇温させた。20℃に到達した後、混合物を油浴で90℃に加熱し、この温度で6時間保持した。次いで、還流凝縮器を蒸留ブリッジ(distillation bridge)で置換し、生じたメタノールを大気圧下で130℃までの油浴温度を用いて留去した。蒸留の後、溶液を20℃に冷却し、受け取ったままさらに精製することなく次の工程(複数可)に使用した。
【0064】
例示的な生成物混合物の組成:
反応混合物(溶媒なし)の組成は面積パーセントで示され、以下のとおりであった
78%のDPTU
11%のDPTA
6%のTBD
【0065】
工程II及びIII:
【0066】
[実施例5]
1-(3-アミノプロピル)テトラヒドロピリミジン-2(1H)-オン(DPTU)の1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)への気相環化
【0067】
【0068】
油加熱式の長さ1000mm、直径40mmの二重壁ガラス反応器であって、下部に石英フリット、ポンプに接続された上部に液体及び気体供給物の注入口を備え、気体供給物(N2)がロータメーターにより測定されるものを垂直に設置し、排出口(下部)を収集フラスコ(collecting flask)に接続した。オフガスを実験用フードの排気口に接続した。反応器の中心に、ガラス管を上から下に入れ、フレキシブル熱電対をこの管に導入した。反応器に3層で充填した。最初に、スチール金網(直径5mm)から構成されるラシヒリング200mLを石英フリット上にロードした。次いで、触媒(100mL、3mmスプリット/押出物)を導入した。触媒床の高さは約80mmであった。触媒床の上に、蒸発器並びに液体供給物及び気体供給物の加熱ゾーンとして機能するラシヒリング700mLをロードした。
【0069】
管型反応器を反応温度(253℃)まで加熱した。
【0070】
DPTUは実施例4に開示されている触媒量のTBDを用いた炭酸ジメチルとDPTAとの反応からの粗製の溶液(85面積%のDPTU、10面積%のDPTA、2面積%のTBD)として使用した。
【0071】
実施例4に記載のとおり得られた粗製のDPTUを溶媒に溶解させ(10~25wt%の粗製のDPTU)、得られた溶液を反応器内の蒸発器床の上部に直接供給した。窒素を蒸発器床の上部から反応器を通って下方へと1barで反応器内に供給した。DPTU溶液は加熱及び窒素による一定の同伴の合わせた作用により蒸発し、蒸発器床はDPTU/窒素流の加熱器として機能した。
【0072】
DPTU、溶媒及び窒素の合わせたガス流は触媒床上を通過し、これを収集フラスコにおいて凝縮させた。液体試料をフラスコから定期的に抜き取った。
【0073】
液体試料の組成をガスクロマトグラフィーによって決定して、主成分であるTBD及びMe-TBDの面積百分率を得た。
【0074】
【0075】
[実施例6]
電気加熱式の長さ770mm、壁厚3mm及び内径12mmのスチール反応器を使用した。反応器に3層で充填した。最初に、反応器に3~5個の細目金網リング(3mm)及びガラス球5mLを充填し、次いで実施例5の触媒A(90mL、3mmスプリット)又はステアタイトリング(70mL、4×3.5×2mm)を充填し、次いで再びガラス球5mL及び3~5個の細目金網リング(3mm)を充填した。粗製のDPTU及び溶媒を含む出発材料の溶液をポンプにより添加し、255℃で油加熱式蒸発器を使用して蒸発させた。窒素ガスを蒸発器の前面のプラントに導入した。反応器の排出管を70から100℃に加熱し、収集容器に接続した。反応器の排出口の後に別の供給物(典型的には溶媒)を添加して、生成物供給物を希釈することもできる。
【0076】
反応器を反応温度(350℃まで)に加熱した。
【0077】
実施例4に記載のとおり得られた粗製のDPTUを溶媒に溶解させ(20~25wt%)、プラントの蒸発器内に直接供給した。DPTU、溶媒及び窒素の合わせたガス流は触媒床上を通過し、反応器の後に追加の溶媒を添加し、生成物混合物を収集フラスコにおいて凝縮させた。液体試料をフラスコから定期的に抜き取った。
【0078】
液体試料の組成をガスクロマトグラフィーによって決定して、主成分の面積百分率を得た。
【0079】
【0080】
表1と比較した表2の結果は、式Iの化合物の形成を反応の圧力によって制御できることを示す。より高い圧力はアルキル化グアニジンの形成をもたらす。
【0081】
【国際調査報告】