(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】光学素子の表面形状を評価する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20221220BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20221220BHJP
G01B 9/02056 20220101ALI20221220BHJP
【FI】
G01M11/00 M
G01B11/24 D
G01B9/02056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522359
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2020075737
(87)【国際公開番号】W WO2021073821
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019215707.6
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン シーグラー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス リューフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル カール
(72)【発明者】
【氏名】トラルフ グリューナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シッケタンツ
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
2G086
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064BB05
2F064CC04
2F064DD09
2F064EE05
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2F064HH03
2F065AA04
2F065AA45
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2F065BB22
2F065CC21
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2F065HH03
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2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065UU05
2G086GG04
(57)【要約】
本発明は、光学素子の表面形状を評価する方法及び装置に関する。本発明による方法は、回折素子での電磁放射線の回折により生成されて光学素子で反射された被検波に上記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、干渉試験装置で光学素子の少なくとも第1インターフェログラム測定を実行するステップと、較正補正を決定するために較正ミラーでそれぞれ少なくとも1回のさらなるインターフェログラム測定を実行するステップと、光学素子で実行された第1インターフェログラム測定及び決定された較正補正に基づき光学素子の目標形状からの偏差を求めるステップとを含む。電磁放射線の偏光状態に関して相互に異なる少なくとも2回のインターフェログラム測定が、少なくとも1つの較正ミラーに対して実行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の表面形状を評価する方法であって
a)回折素子での電磁放射線の回折により生成されて前記光学素子で反射された被検波に前記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、干渉試験装置で前記光学素子の少なくとも1回の第1インターフェログラム測定を実行するステップと、
b)較正補正を決定するために較正ミラーでそれぞれ少なくとも1回のさらなるインターフェログラム測定を実行するステップと、
c)前記光学素子で実行された第1インターフェログラム測定及び決定された較正補正に基づき前記光学素子の形体を判定するステップと
を含む方法において、
前記電磁放射線の偏光状態に関して相互に異なる少なくとも2回のインターフェログラム測定が、少なくとも1つの前記較正ミラーに対して実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記較正補正の決定は、前記回折素子の3次元構造に特有のパラメータ、特にエッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルの決定を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記回折素子の3次元構造に特有のパラメータの決定は、厳密シミュレーションの実行により実施されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記ステップb)におけるインターフェログラム測定は、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの較正ミラーで実行されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも2回のインターフェログラム測定は、前記較正ミラー毎に実行されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも3回、特に少なくとも4回のインターフェログラム測定それぞれが、少なくとも1つの較正ミラーに、特に、較正ミラー毎に実行されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子の形体は、前記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の減算に基づき判定されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子の形体は、前記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の平均に基づき判定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、前記電磁放射線の偏光状態に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、前記光学素子で実行されることを特徴とする方法。
【請求項10】
光学素子の表面形状を評価する方法であって、
a)回折素子での電磁放射線の回折により生成されて前記光学素子で反射された被検波に前記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、干渉試験装置で前記光学素子の少なくとも1回の第1インターフェログラム測定を実行するステップと、
b)前記回折素子での電磁放射線の回折により生成されて前記光学素子で反射された被検波に前記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、光学素子の少なくとも1回の第2インターフェログラム測定を実行するステップであり、前記第1及び前記第2インターフェログラム測定は前記電磁放射線の偏光状態に関して相互に異なるステップと、
c)前記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の減算に基づき、前記回折素子の3次元構造に特有のパラメータを決定するステップであり、該パラメータは、エッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルのパラメータの1つを少なくとも含むステップと
を含む方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法において、前記電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも3回、特に少なくとも4回のインターフェログラム測定が、前記光学素子で実行されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法において、前記電磁放射線の偏光状態に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、表面形状に関して評価すべき前記光学素子とは異なる較正試料での事前較正で実行されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記光学素子又は前記較正試料で実行された前記インターフェログラム測定に基づき、較正補正がさらに決定されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法において、前記インターフェログラム測定は、直線入力偏光の電磁放射線を用いて実行されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法において、較正補正はさらに、前記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相における前記回折素子と前記干渉試験装置との間の偏光結合による成分を減らすための少なくとも1つの偏光補正素子を用いて決定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法において、前記インターフェログラム測定は、異なる回折素子をそれぞれ用いて複数回実行されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子の形体はさらに、前記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたコントラストの付加的な評価に基づき判定されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法において、前記電磁放射線の波長に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、前記光学素子及び/又は少なくとも1つの補正ミラーで実行されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法において、前記回折素子は計算機ホログラム(CGH)であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子はミラーであることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子は、30nm未満、特に15nm未満の作動波長用に設計されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の方法において、前記光学素子はマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子であることを特徴とする方法。
【請求項23】
光学素子、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子の表面形状を評価する装置であって、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法を実行するよう構成されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年10月14日に出願された独国特許出願第10 2019 215 707.6号の優先権を主張する。この独国出願の内容を参照により本願の本文に援用する。
【0002】
本発明は、光学素子の表面形状を評価する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路又はLCD等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明装置及び投影レンズを備えたいわゆる投影露光装置で実行される。この場合、照明装置により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影レンズにより、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影レンズの像平面に配置された基板(例えばシリコンウェーハ)に投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
EUV領域の波長用に設計した投影レンズでは、すなわち例えば約13nm又は約7nmでは、適当な光透過屈折材料が利用可能でないことにより、ミラーを結像プロセス用の光学コンポーネントとして用いる。例えば特許文献1から既知のようなEUV用に設計した通常の投影レンズは、例えばNA=0.55程度の像側開口数(NA)を有することができ、(例えば弓形の)物体視野を像平面又はウェーハ面に結像させることができる。
【0005】
像側開口数(NA)の増加には、投影露光装置で用いるミラーの所要ミラー面積の拡大が通常は伴う。その結果としてさらに、ミラーの製造に加えてミラーの表面形状の試験も厳しい課題となる。ここで、特に干渉測定法がミラーの高精度試験に用いられる。
【0006】
この場合、計算機ホログラム(CGH)の使用も特に知られており、これは特に、実際の試験に必要な機能(すなわち、被検体形状に数学的に対応する波面を整形するためのミラー形状に従って設計したCGH構造)に加えて、較正又は誤差補正の働きをする参照波面を提供する少なくとも1つのさらなる「較正機能」を全く同一のCGHに符号化することができる。
【0007】
さらに、フィゾー構成で、参照面(「フィゾー板」)で反射した参照波とミラーで反射した被検波との間でインターフェログラムを生成することも例えば既知である。
【0008】
実際に起こる問題の1つは、各インターフェログラム測定中に確認されて各形体判定に用いられるインターフェログラム位相が、(被検体の表面形状又は形体に従った)実際に求められる位相成分以外にさらなる位相成分を有することである。このさらなる位相成分は、例えば各光学系で生じ且つ形体判定中に得られた結果を改悪する(例えば、光学素子に存在する複屈折層、応力複屈折等の結果として起こるような)偏光状態のさまざまな影響による、偏光誘起位相成分を特に含む。上記偏光誘起位相成分の補償又は目標通りの計算的抽出には、これをできる限り正確に把握することが必要である。しかしながら、この目的で実行できる偏光測定は、複雑であることが分かっており、この測定に関しても誤差を示し得る。
【0009】
さらに、形体の判定に用いられるインターフェログラム位相における上記さらなる位相成分は、それぞれ利用される回折構造又は利用される計算機ホログラムにより生じるような位相成分も含む。例えばエッチング深さ、傾斜角等に関する回折構造又は計算機ホログラムの3次元構造の欠陥も、この場合は計算により補償又は除去することができないインターフェログラム位相の誤差の原因となり、したがって形体の判定時の誤差につながる。その結果起こる問題はさらにより深刻だが、その理由は、較正ミラー、参照ミラー、及び実際の被検ミラーを含む干渉計の全ての光学コンポーネントが完全に調整され、形体欠陥が一切ない場合及び回折構造又はCGHのみが理想的でなく、したがって欠陥がある場合でも、偏光に依存する位相成分に加えて、これらの位相成分には、特に偏光に依存せず、偏光に依存する他の全ての位相成分より通常は大きく、且つ直線入力偏光又は任意の2つの所望の直交入力偏光を測定した後に測定されたインターフェログラム位相を平均した場合にも消えない位相成分が含まれることが分かったからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0085061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上を踏まえて、本発明の目的は、上述の問題を少なくとも部分的に回避しつつ精度の向上を可能にする、光学素子の表面形状を評価する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項の特徴に従った方法及び装置により達成される。
【0013】
光学素子の表面形状を評価する方法は、
回折素子での電磁放射線の回折により生成されて光学素子で反射された被検波に上記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、干渉試験装置で光学素子の少なくとも1回の第1インターフェログラム測定を実行するステップと、
較正補正を決定するために較正ミラーでそれぞれ少なくとも1回のさらなるインターフェログラム測定を実行するステップと、
光学素子で実行された第1インターフェログラム測定及び決定された較正補正に基づき光学素子の形体を判定するステップと
を含む。
【0014】
本方法は、電磁放射線の偏光状態に関して相互に異なる少なくとも2回のインターフェログラム測定が、(少なくとも1つの)較正ミラーに対して実行されることを特徴とする。
【0015】
特に、本発明は、光学素子の形体の判定のために追加で含まれた1つ又は複数の較正ミラーでの少なくとも1つのインターフェログラム測定が、較正ミラー毎に1回(単一の入力偏光で)ではなくそれぞれ異なる入力偏光で較正ミラー毎に複数回実行されると共に、結果として得られた追加情報も同様に較正補正の決定時に考慮され、この較正補正は光学素子の形体の実際の判定時に含まれるはずであるという概念に基づく。
【0016】
以下でより詳細にさらに説明するように、1つ又は複数の較正ミラーでの異なる入力偏光から得られた上記追加情報は、数学的観点から、それぞれ測定されたインターフェログラム位相を既知量(例えば、較正ミラーのフィット、及び各ビーム方向、及び光学設計で計算された又は測定により求められた特定の欠陥に対する感度)と、方程式系を解くことにより求められるべき未知の補正量(例えば、横方向構造オフセット及び形体欠陥)とに関連付ける方程式系の拡張をもたらし、その結果として、追加で立てられた方程式により、より多くの補正量(特に、回折素子の構造欠陥)をさらに求めることができる。
【0017】
この場合、本発明は特に、回折素子の3次元構造に特有のパラメータを決定するために、例えばエッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルを決定するために1つ又は複数の較正ミラーで異なる入力偏光で実行されたインターフェログラム測定から入手可能な情報を用いるという概念も含む。この場合、デューティサイクル(占有度とも称する)は、回折素子又はCGHのエッチング面積と全体面積との比を示す。
【0018】
結果として、本発明による方法を用いて、回折素子の実質的により正確な較正が得られることで、表面形状に関して評価すべき光学素子の形体の判定を実施する際の精度も最終的に大幅に向上する。
【0019】
特に、本発明によれば、異なる入力偏光(関連するインターフェログラム測定の各実施時の)は、例えば表面形状に関して評価すべき光学素子自体のインターフェログラム測定中に設定されるだけではなく、回折素子の構造欠陥(特に3次元性からの構造欠陥)を求めるために1つ又は複数の較正ミラーに対して設定される。
【0020】
換言すれば、本発明は、回折素子により生じる位相成分であって、光学素子の形体による実際の位相成分に加えて表面形状に関して評価すべき光学素子のインターフェログラム測定中に求められたインターフェログラム位相で生じる位相成分を減らすという目的に特に基づく。
【0021】
この場合、本発明は、回折素子のみによる上記位相成分が、回折素子の偏光効果と回折素子自体を含めない残りの光学系におけるさまざまな偏光効果との結合による偏光誘起位相成分を上回るという概念を起点とする。この場合、「偏光誘起位相成分」は、結合位相項を意味するが、結合位相項は、回折構造が欠陥も含む場合にのみゼロではない(すなわち、回折構造に欠陥がないか又はCGH欠陥がなければ、結合位相項もない)。
【0022】
一実施形態によれば、較正補正の決定は、回折素子の3次元構造に特有のパラメータ、特にエッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルの決定を含む。
【0023】
一実施形態によれば、回折素子の3次元構造に特有のパラメータの決定は、厳密シミュレーションの実行により実施される。
【0024】
一実施形態によれば、較正補正を決定するためのインターフェログラム測定は、少なくとも2つ、特に少なくとも3つの較正ミラーで実行される。
【0025】
一実施形態によれば、電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも2回のインターフェログラム測定が、これらの較正ミラー毎に実行される。
【0026】
一実施形態によれば、電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも3回の、特に少なくとも4回のインターフェログラム測定それぞれが、較正ミラー毎に実行される。
【0027】
一実施形態によれば、光学素子の形体は、上記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の減算に基づき判定される。被検物測定の特定の線形結合で光学素子又は被検物の形体が減算により除去される結果として、さらなる方程式が補正誤差を求めるのに利用可能である。このような線形結合は、直線水平及び垂直入力偏光のインターフェログラム位相の差、又は例えば直線水平及び垂直入力偏光のインターフェログラム位相の差と2つの直交斜め入力偏光のインターフェログラム位相の差との差を含み得る。さらに、このような線形結合は、直線水平及び垂直入力偏光のインターフェログラム位相の平均値と2つの直交斜め又は円入力偏光のインターフェログラム位相の平均値との差も含み得る。
【0028】
一実施形態によれば、光学素子の形体はさらに、上記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の平均に基づき判定される。インターフェログラム測定の平均により、回折素子又はCGHの回折構造と残りの系との間の偏光結合に起因した位相成分(CGH基板の応力複屈折を含む)を減らすことで、回折素子又はCGHの構造欠陥を、したがって光学素子又はミラーの形体も、高精度で再現できるようにすることが可能である。
【0029】
一実施形態によれば、電磁放射線の偏光状態に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が光学素子で実行される。結果として、それぞれ測定されたインターフェログラム位相を既知量(例えば、較正ミラーの形体及びビーム方向)と、求めるべき構造欠陥(例えば、回折素子の横方向構造オフセット及び形体欠陥)とに関連付ける上記方程式系の利用可能な情報を、さらに増やすことができる。
【0030】
本発明はさらに、光学素子の表面形状を評価する方法であって、
回折素子での電磁放射線の回折により生成されて光学素子で反射された被検波に上記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、干渉試験装置で光学素子の少なくとも1回の第1インターフェログラム測定を実行するステップと、
回折素子での電磁放射線の回折により生成されて光学素子で反射された被検波に上記光学素子で反射されていない参照波を重畳させることにより、光学素子の少なくとも1回の第2インターフェログラム測定を実行するステップであり、第1及び第2インターフェログラム測定は電磁放射線の偏光状態に関して相互に異なるステップと、
上記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相の減算に基づき、回折素子の3次元構造に特有のパラメータを決定するステップであり、これらのパラメータは、エッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルのパラメータの1つを少なくとも含むステップと
を含む方法にも関する。
【0031】
一実施形態によれば、回折素子の3次元構造に特有の決定されたパラメータは、エッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクルのパラメータの全ても含み得る。
【0032】
一実施形態によれば、電磁放射線の偏光状態に関して異なる少なくとも3回、特に少なくとも4回のインターフェログラム測定が光学素子で実行される。
【0033】
一実施形態によれば、電磁放射線の偏光状態に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、表面形状に関して評価すべき光学素子とは異なる較正試料での事前較正でも実行され得る。換言すれば、利用される全ての入力偏光に関する全てのインターフェログラム測定を、較正試料として働く特定の被検物で実行することができ、続いてそれ以降の被検物では単一の入力偏光での測定が1回だけ実行され、(被検構造の十分な時間安定性があれば)第1被検物の場合に又は較正試料に関して実行されたインターフェログラム測定に基づき残りの入力偏光のインターフェログラム位相に変換することが可能である。
【0034】
十分な時間安定性の場合、第1被検物のインターフェログラム測定前に較正ミラーの全てのインターフェログラム測定を完全に実行することが可能である。しかしながら、(例えば、インターフェログラム測定間の参照ミラーの相対位置の変化があるので)被検物の各インターフェログラム測定の範囲内で較正ミラーの適時のインターフェログラム測定を実行することも必要であり得る。上述のように、この場合、全ての入力偏光で較正ミラーのインターフェログラム測定を事前に実行し、単一の入力偏光で較正ミラーの実際のインターフェログラム測定を被検面の測定に関して適時に実行すれば十分である。
【0035】
一実施形態によれば、較正補正はさらに、光学素子又は較正試料で実行されたインターフェログラム測定に基づき決定される。
【0036】
一実施形態によれば、光学素子及び/又は各較正ミラーのインターフェログラム測定は、直線入力偏光の電磁放射線を用いて実行される。結果として、インターフェログラム位相における回折素子又はCGHの回折構造と残りの系との間の偏光結合に起因した位相成分を測定の観点から既に減らすことができ、これはさらに、光学素子又は被検物の形体のより確実な判定を容易にする。
【0037】
一実施形態によれば、光学素子及び/又は各較正ミラーのインターフェログラム測定は、系の特定の好ましい方向の直線入力偏光の電磁放射線を用いて実行される。結果として、インターフェログラム位相における回折素子又はCGHの回折構造と残りの系との間の偏光結合に起因した位相成分を測定の観点から既に減らすことができ、これはさらに、光学素子又は被検物の形体のより確実な判定を容易にする。
【0038】
一実施形態によれば、光学素子及び/又は各較正ミラーのインターフェログラム測定は、任意の2つの所望の直交入射偏光の直線入力偏光の電磁放射線と、得られたインターフェログラム位相のその後の平均とを用いて実行される。結果として、偏光結合に起因した上記位相成分を測定の観点から前段落の場合よりもさらに減らすことができ、これはさらに、光学素子又は被検物の形体のさらにより確実な判定を容易にする。
【0039】
一実施形態によれば、光学素子及び/又は各較正ミラーのインターフェログラム測定は、少なくとも1つの入力偏光の電磁放射線を用いて実行される。偏光に応じた位相誤差に加えて、位相誤差は、回折素子又はCGHからの位相寄与も誤差として含み、この位相寄与は、偏光に依存せず通常はこれらの位相誤差を大きく上回る。これらの状況は、光学素子及び/又は較正ミラー1つずつの測定インターフェログラム位相から厳密な位相誤差を計算的に求めるために利用することができ、これはさらに、光学素子又は被検物の形体のさらにより確実な判定を容易にする。例として、厳密な誤差をこのように計算的に求めるのは、最初に回折素子又はCGHにおける特定の厳密な外乱を特殊関数系に分解してから、光線追跡により厳密な外乱毎の個々の関数のインターフェログラム位相における効果を計算し、こうして得られた厳密な誤差の位相分布のインターフェログラム位相中の成分をフィットにより求めることにより、実施することができる。
【0040】
一実施形態によれば、較正補正はさらに、インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたインターフェログラム位相における回折素子と干渉試験装置との間の偏光結合による成分を減らすための少なくとも1つの偏光補正素子を用いて決定される。
【0041】
一実施形態によれば、インターフェログラム測定は、異なる回折素子をそれぞれ用いて複数回実行される。
【0042】
一実施形態によれば、光学素子の形体はさらに、上記インターフェログラム測定中にそれぞれ得られたコントラストの付加的な評価に基づき判定される。
【0043】
一実施形態によれば、電磁放射線の波長に関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、光学素子及び/又は少なくとも1つの補正ミラーで実行される。
【0044】
一実施形態によれば、システムパラメータに関して異なる複数回のインターフェログラム測定が、光学素子及び/又は少なくとも1つの較正ミラーで実行され、回折素子により生じた特徴的且つ測定可能な位相変化がその際に生じる。
【0045】
一実施形態によれば、回折素子は計算機ホログラム(CGH)である。
【0046】
表面形状に関して評価すべき光学素子は、特にミラーであり得る。さらに、光学素子は、30nm未満、特に15nm未満の作動波長用に設計され得る。特に、光学素子は、マイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子であり得る。
【0047】
本発明はさらに、光学素子、特にマイクロリソグラフィ投影露光装置の光学素子の表面形状を評価する装置であって、前述の特徴を有する方法を実行するよう構成された装置に関する。装置の利点及び有利な構成に関しては、本発明による方法に関連した上記説明を参照されたい。
【0048】
本発明のさらに他の構成は、明細書及び従属請求項から得ることができる。
【0049】
添付図面に示す例示的な実施形態に基づいて、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明による方法で用いることができる干渉試験装置の可能な構成を説明する概略図を示す。
【
図2】本発明による方法の例示的な実施形態を説明するフロー図を示す。
【
図3】本発明による方法で用いることができる干渉試験装置のさらに別の可能な構成を説明する概略図を示す。
【
図4】EUVでの動作用に設計された投影露光装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
まず、
図4は、EUVでの動作用に設計され、本発明による方法により試験可能であるミラーを備えた例示的な投影露光装置の概略図を示す。
【0052】
図4によれば、EUV用に設計された投影露光装置410の照明装置が、視野ファセットミラー403及び瞳ファセットミラー404を含む。プラズマ光源401及びコレクタミラー402を含む光源ユニットからの光は、視野ファセットミラー403へ指向される。第1望遠鏡ミラー405及び第2望遠鏡ミラー406が、瞳ファセットミラー404の下流の光路に配置される。偏向ミラー407が光路の下流に配置され、当該偏向ミラーは、入射した放射線を6つのミラー421~426を含む投影レンズの物体平面の物体視野へ指向させる。物体視野の場所では、反射構造担持マスク431がマスクステージ430上に配置され、上記マスクは投影レンズを用いて像平面に結像され、像平面では、感光層(フォトレジスト)でコーティングされた基板541がウェーハステージ440上に位置する。
【0053】
以下に記載の干渉試験装置において本発明による方法により試験される光学素子は、例えば、投影露光装置410の任意のミラーであり得る。
【0054】
図1は、CGHを用いてミラーを試験する干渉試験装置の可能な設定を説明する概略図を示す。
【0055】
図1によれば、光源(図示せず)が発生させて光導波路101の出射面から出る照明放射線は、球面波面を有する入力波105として出てビームスプリッタ110を通り、続いて複素符号化CGH120に入射する。CGH120は、その複素符号化に従って本例では透過時に入力波105から合計4つの出力波を発生させ、そのうち1つの出力波は被検波として、ミラー140の形態の表面形状に関して評価すべき光学素子の表面に上記ミラー140の目標形状に適合させた波面で当たる。さらに、CGH120は、入力波105からさらに3つの出力波を透過時に発生させ、それらの出力波のそれぞれが、さらにそれぞれの反射光学素子131、132、及び133に入射する。この場合、反射光学素子131、132、及び133のうち2つそれぞれの任意の組合せを、参照波及び較正波をそれぞれ生成するために選択することができる(すなわち、原理上は素子131、132、及び133のそれぞれを、参照波を生成するための参照ミラー又は較正波を生成するための較正ミラーとして代替的に用いることができる)。各参照ミラーで反射された参照波は、ミラー140で反射された被検波に又は各較正ミラーで反射された較正波に干渉させられる。これに関連して、適当な設計のシャッタ(そのうち1つのシャッタ135を概略的に示す)により、個々の光学素子を光ビーム経路から一時的に分離することができる。CGH120は、反射光学素子131~133で反射された波を重畳させるようにも働き、これらの波は、収束ビームとしてビームスプリッタ110に再度入射し、ビームスプリッタ110からCCDカメラとして設計された干渉計カメラ160の方向に反射され、その過程で接眼レンズ150を通る。干渉計カメラ160は、干渉波により生成されたインターフェログラムを取得し、ミラー140の光学面の実際の形状は、評価装置(図示せず)により上記インターフェログラムから判定される。
【0056】
図1に概略的に示す偏光影響素子170が、所望の入力偏光を目標通りに設定する働きをし、上記素子は、任意所望の適当な形で設計可能であり且つ光ビーム経路内に可変に配置可能である。実施形態において、各偏光方向間を切り換えるために半波長板と組み合わせて直線偏光を設定するのに適した偏光子を用いることが可能である。さらに他の実施形態において、直交する直線及び円入力偏光を設定するために回転可能な半波長板及び回転可能な1/4波長板と組み合わせて適当な偏光子を用いることが可能である。
【0057】
図1において、シャッタ135の代わりに、又はこのシャッタに加えて、参照ミラーの上流のビーム経路でさらに別の偏光影響素子を用いることができる。素子170と同様に、偏光影響素子135も、形体の判定時に考慮すべき較正補正を決定するための追加情報をこのようにして得る目的で、偏光を操作する働きをする。さらに他の実施形態において、できる限り平面状且つ平行な表面を有する回転可能で十分に薄い板の形態の、適当な偏光子又は位相差素子を利用することができる。参照ミラーが平面ミラーとして具現される場合、平面波面が偏光影響素子135に入射する。結果として、角荷重が小さく、したがって素子135により導入される付加的な偏光誤差も小さい。例えば、結果として偏光に依存せず素子135の表面欠陥又は屈折率不均一性により生じる幾何学的位相誤差を、参照ミラーの形体欠陥と共に計算により除去することができる。素子135を用いて、インターフェログラム測定での位相変調を(例えば参照ミラーの変位の結果としての位相変調の代わりに)実施することもできる。
【0058】
ここで、本発明は、ミラー140の形体の判定時の較正補正も含むという自体公知の概念を出発点として用い、上記較正補正は、この点で較正ミラーとして働く反射光学素子131~133の較正測定に基づき実施される。本発明によれば、特にこれらの較正ミラー及び場合によっては表面形状に関して評価すべきミラーのインターフェログラム測定が、1回だけでなくそれぞれ異なる入力偏光で複数回実行されることで、形体の判定時に含める較正補正を決定するための追加情報が得られるようになる。
【0059】
以下の数学的考察によれば、それぞれ測定されたインターフェログラム位相を既知量と、この方程式系の解に基づき求めるべき使用回折素子の未知の構造欠陥とに関連付ける方程式系の拡張が、(追加の方程式を与えるという意味の範囲内で)このようにして得られるので、回折素子のより多数の構造欠陥を求めることが最終的に可能である。追加の方程式により、概して(CGHの構造欠陥だけでなく)偏光依存欠陥を導くことが可能である。本発明によれば、回折素子又はCGHの3次元構造に特有のパラメータ、例えばエッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクル又は占有度をさらに決定することが特に可能である。
【0060】
数学的考察の起点は、各インターフェログラム測定が実行される3つの較正ミラーに基づき、3つの方程式(1)~(3)の以下の方程式系に従って3つの未知数を求めることが可能であるということである。
【0061】
本発明による較正中に補間が実行され、較正波の波数ベクトル(「kベクトル」)は、光源からの光の回折後に四面体を張り、当該四面体は、(被検波の波数ベクトルが四面体内に位置付けられるような)被検波の波数ベクトルの方向を含む。被検物及び較正ミラーのインターフェログラム位相における未知数又は誤差は、入力偏光に依存せず、(被検物の表面形状又は形体に対応して)実際に求めるべき位相成分に加えられ、且つ較正により求められるものであり、一定の成分又は誤差c
0並びに波数ベクトルに関して線形である2つの(誤差)成分c
x及びc
yに分解することができ、以下の補間スキームが得られる。
【数1】
【0062】
入力偏光に依存せず波数ベクトルに関して一定且つ被検面及び較正ミラーで同一な位相成分を発生させる誤差c0は、例えば特に参照ミラーの形体欠陥であり、入力偏光に依存せず波数ベクトルに関して線形な位相成分を発生させる誤差cx及びcyは、特に回折素子又はCGHの横方向構造オフセット欠陥である。
【0063】
(被検物の表面形状又は形体に対応する)実際に求めるべき位相成分に加えて、且つ特に参照ミラーの形体欠陥及び回折素子又はCGHの横方向構造オフセット欠陥に加えて、インターフェログラム位相は、さらに他の位相成分、具体的には回折素子又はCGHのスカラー位相成分と、回折素子又はCGHのみの偏光誘起位相成分及び回折素子又はCGHと残りの光学系との結合に起因した偏光誘起位相成分の両方とを含む。
【0064】
本発明は、ここで、回折素子又はCGHにより生じたインターフェログラム位相の位相成分の低減を目標とする。本発明によれば、これは、それぞれ電磁放射線の異なる偏光状態での複数回のインターフェログラム測定(すなわち、少なくとも2回の測定)を較正ミラー毎に実行することにより回折素子又はCGHの構造欠陥を求めることに関して、上記較正を拡張することにより達成される。結果として本発明により得られた回折素子又はCGHの回折構造の知識が正確であるほど、それにより生じたインターフェログラムの位相成分をより正確に求めて、得られたインターフェログラム位相からそれを減算することが容易になる。
【0065】
【0066】
この場合、φ
K,pは入力偏光pの場合の各較正ミラーで測定されたインターフェログラム位相を示し、
は入力偏光pの場合の各較正ミラーの形体を示し、
はノミナル位相又は光学設計(厳密シミュレーションを含む)で計算された位相を示し、
は回折素子又はCGHの欠陥の(場合によっては同様に厳密シミュレーションを含めて計算された)感度を示す。さらに、偏光に位相する量を追加の指数pで示す。
【0067】
また、表面形状に関して評価すべき光学素子の形体を以下の方程式に従って計算することができる。
【数3】
【0068】
この場合、δc
mは未知数(例えばエッチング深さ、傾斜角、エッジラウンディング、及びデューティサイクル等の回折素子又はCGHの厳密な欠陥、及び例えば偏光補正素子の量)を示し、
及び
は入力偏光pの場合の光学設計(厳密シミュレーションを含む)で計算されたノミナルな外乱系の位相を示し、
は入力偏光pの場合の表面形状に関して評価すべき光学素子又は被検物で測定されたインターフェログラム位相を示す。
【0069】
方程式系(4)及び方程式(5)からなる計算法の代わりに、方程式系を解くことにより求めるべき量として被検面の形体
を適用することにより、較正ミラー及び被検面に関する共通の方程式系(ここでは例示的に3つの較正ミラーの場合)
【数4】
を立てることも可能である。3つの較正ミラーがあり、較正ミラー及び被検面のインターフェログラム測定においてN
p個の異なる入力偏光がある場合、合計4×N
p個の方程式が利用可能であり、その結果として、未知数
、c
x、c
y、及びC
0に加えて、例えば回折素子若しくはCGHの厳密な欠陥又は他の偏光誤差であり得る4×N
p-4個のさらなる未知数δc
mを求めることができる。したがって、2つの異なる入力偏光の場合は4つの例えば厳密な誤差δc
mを求めることができ、これは4つの異なる入力偏光の場合はさらに12まで増加する。2つ又は4つの異なる入力偏光の場合、インターフェログラム測定において水平方向及び垂直方向並びに2つの対角方向の直線入力偏光を用いることが有利であり、それは、直線入力偏光が回折素子又はCGHの回折構造と残りの系との間の偏光結合に起因した位相成分を減らすからである。
【0070】
適当な仮想偏光補正素子の導入の結果として、回折素子又はCGHの回折構造と残りの系との間の偏光結合に起因した位相成分を減らす補正量を求めることが可能である。その際に、(CGH)構造欠陥に加えて残りの光学系における偏光誤差が「較正により除去される」結果として、回折素子又はCGHの実際の構造諸量を較正によってより正確に再現することができ、その結果として被検物の形体をより正確に判定することができる。
【0071】
このような仮想偏光補正素子は、回折素子又はCGHの構造化された側の直前のジョーンズ行列による偏光効果を記述し、純粋なダイクロイック素子及び純粋な位相差素子の組合せを表すことができ、これは、特に直線二色及び直線位相差効果に基づくことができる。直線二色性及び直線位相差の場合の対応するジョーンズ行列は、以下の通りであり、
【数5】
二色性及び位相差の大きさ及び軸方向の向きを
【数6】
とする。
【0072】
ここで、仮想偏光補正素子のジョーンズ行列は、直線二色性及び直線位相差の場合の2つのジョーンズ行列の積であり、二色性及び位相差の大きさが小さいと見積もって、積における2次成分を、したがって円成分も無視できる程度であると考えることができる。
【数7】
【0073】
ここで、誤差量
【数8】
が拡張較正で求められる。
【0074】
実施形態において、複数の偏光補正素子が適当な場所で系に仮想的に挿入され得る。2つの偏光補正素子が用いられる場合、8つの補正すべきパラメータがある。実施形態において、特に、照明から回折素子又はCGHの回折構造までの偏光誤差を取得するために、仮想偏光補正素子を回折構造の直前で且つ順方向でのみ用いることができ、第2仮想偏光補正素子を干渉計カメラのAR層の後方で用いることができ、光学系の回折構造から干渉計カメラまでの偏光誤差は、後者の偏光補正素子により取得される。
【0075】
実施形態において、複数の異なる回折素子又はCGHを有する同じ被検構造で測定を実行することも可能である。(CGH)回折構造と残りの系との偏光結合の結果としての偏光誘起位相成分を求めるために、CGHのみが交換される場合にCGHの回折構造まで及びそこから干渉計カメラまでの干渉試験装置の構造がそれぞれ不変であることを、この場合は利用することが可能である。したがって、全く同一の被検構造からの測定が複数の異なるCGHについて評価される場合、残りの系(CGH回折構造なし)の(ノミナル系との差の意味の範囲内の)偏光における誤差を求めることが原則として可能である。
【0076】
CGHの交換時に、これが回折構造の偏光効果だけでなくCGH基板の偏光効果も変えることを認識すべきである。例として、基板における応力複屈折がこの場合は問題となり得る。この応力複屈折は、未知数として計算に残り、結果として誤差につながる。異なるCGH及び一般的には同じ参照及び較正ミラーでの測定により、各方程式系を併合することが可能であると共に、仮想偏光補正素子のパラメータを共通の未知数として求めることができる。換言すれば、全てのCGHについての方程式を連立してより大きな方程式系にすることができ、このとき偏光補正素子の補正量は全てのCGHで同じなので、事実上は未知数が少なければより多数の方程式を利用可能である。これにより、仮想偏光補正素子のパラメータ(「PCEパラメータ」)をより正確に求めることができるようになるだけでなく、較正ステップにおいてさらなる未知数を適用することもできるようになる。
【0077】
さらに、例えば仮想偏光補正素子のパラメータに加えて評価すべき被検面の形体
が共通の未知数なので、同じ被検面の場合に複数の異なる回折素子又はCGHを有する同じ被検構造での較正ミラー及び被検ミラーの測定は、上述のように、各CGHに関する方程式系を拡張することにより方程式の数を増やすので有利である。この場合、入力偏光の使用は、方程式系を解くことにより偏光に依存しないより多くの誤差量を求めることを可能にするので、較正ミラー及び被検面自体のインターフェログラム測定で有利であり得る。
【0078】
さらに他の実施形態において、構造外乱を(シミュレーションではなく)測定により部分的に検出することもできるのが有利であるような、CGH基板の特定の既知の構造欠陥及び比較的小さな偏光効果(特に低い応力複屈折)を有する較正CGHで測定を実行することも可能である。
【0079】
さらに他の実施形態において、残りの系(CGH回折構造なし)の(ノミナル系との差の意味の範囲内の)偏光における誤差を(シミュレーションではなく)測定により部分的に検出することもできるのが有利であるような、被検システムに導入されており偏光を変える特定の較正偏光素子で測定を実行することもできる。
【0080】
実施形態において、(較正ミラー及び被検物の場合及び異なる入力偏光の場合の)インターフェログラムにおけるコントラスト及び強度も、インターフェログラムにおける位相の評価に加えて評価することができ、このときコントラスト及び強度は同様に偏光に依存する成分及び偏光に依存しない成分を有する。最低次では、被検物形体はコントラストに寄与しないので、被検物及び較正ミラーのコントラストの評価で追加の方程式が成り立つ。3つの較正ミラーで、被検物及び較正ミラーのそれぞれNp個の異なる入力偏光でのインターフェログラム測定の場合、4×Np個の追加の方程式が成り立つ。被検面の形体に加えて、例えば3つの較正ミラーを用いる場合に方程式系を解くことにより求まる量の数は、2つの異なる入力偏光では4×2-1=7から7+4×2=15、4つの異なる入力偏光の場合は4×4-1=15個から15+4×4=31個の方程式に増える。
【0081】
本発明の実施形態において(また、干渉試験装置の十分な時間安定性の場合)、較正ミラーのインターフェログラム測定は、表面形状に関して評価すべき光学素子又は被検物のインターフェログラム測定前に実行することができる。さらに、利用される全ての入力偏光での全てのインターフェログラム測定を特定の被検物について実行することができ、さらなる被検物については単一の入力偏光で1回の測定のみ実行され、第1被検物の場合に実行されたインターフェログラム測定に基づき残りの入力偏光でのインターフェログラム位相に変換することが可能である。
【0082】
図3は、
図1の代替として干渉試験装置のさらに別の例示的な構成を示す。
【0083】
図3によれば、フィゾー構成で、参照面302(「フィゾー板」)で反射した参照波とミラー301で反射した被検波との間でインターフェログラムが生成される。この場合、測定光が、「被検物形状」(すなわち、該当のミラー301の形状)に目標距離で数学的に正確に対応する波面を形成するようCGH303により整形される。第1に参照面302から、第2に該当のミラー301又は被検物から反射された波面は、
図3によれば光源305、ビームスプリッタ板306、コリメータ307、絞り308、接眼レンズ309、及びCCDカメラ310を備えた干渉計304で相互に干渉する。各ミラー301のインターフェログラムが、CCDカメラ310により記録される。
【0084】
ここでも、対応する入力偏光は、偏光影響素子350を用いて設定され、偏光影響素子350は、
図3には概略的に示すにすぎず、
図1と同様に、任意の適当な方法で構成され且つ光ビーム経路に可変に配置され得る。
【0085】
本発明は特定の実施形態に基づいて説明されているが、例えば個々の実施形態の特徴の組合せ及び/又は交換により、多数の変形形態及び代替的な実施形態が当業者には明らかとなるであろう。したがって、当業者には言うまでもなく、かかる変形形態及び代替的な実施形態も本発明に包含され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の意味の範囲内にのみ制限される。
【国際調査報告】