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▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】抗TIGIT抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221221BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221221BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526255
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020059139
(87)【国際公開番号】W WO2021092196
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,651
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/048,351
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】トン チャン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ ケルトン
(72)【発明者】
【氏名】リーウェイ リー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ナネマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョハンネス イェー
(72)【発明者】
【氏名】クリステル イフランド
(72)【発明者】
【氏名】チー アン
(72)【発明者】
【氏名】シンイェン チャオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA21
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB31
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本願は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント、これをコードする核酸、その治療用組成物、並びに細胞性免疫応答を上方制御するT細胞機能を増強及び腫瘍免疫などのT細胞機能障害性疾患の治療、感染性疾患及びがんの治療のためのこれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む単離重鎖可変領域ポリペプチドであって、
(a)HVR-H1配列は、GYTFTXYPであり;
(b)HVR-H2配列は、INTNTGNPであり;
(c)HVR-H3配列は、ARXGX10111213であり;
更に、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y,S又はFであり;Xは、S,G又はTであり;Xは、V,S又はGであり;Xは、D,Y又はPであり;Xは、E,D又はYであり;Xは、Y又はWであり;X10は、A,F又はSであり;X11は、F又はDであり;X12は、D又はPであり;X13は、V,Iであるか又は存在しない、
ポリペプチド。
【請求項2】
は、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y又はSであり;Xは、S又はGであり;Xは、V又はSであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、A又はFであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
は、Sであり;Xは、V又はTであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、S又はGであり;Xは、Vであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
は、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Dであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、Vである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記HVR間に並列された可変領域重鎖フレームワーク配列HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3及びHC-FR4を更に含み、したがって、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)の配列を形成する、請求項1~4の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記重鎖フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記重鎖フレームワーク配列は、ヒト生殖系列フレームワーク配列に由来する、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記重鎖フレームワーク配列の1つ以上は次のもの:
HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASであり;
HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGWであり;
HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCであり;
HC-FR4は、WGQGTLVTVSSである、
請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項9】
少なくともC1ドメインを更に含む、請求項5~8の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
2及びC3ドメインに含む、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と組み合わせた請求項1~10の何れか一項に記載の単離重鎖ポリペプチドであって、ここで
(a)前記HVR-L1配列は、QGISSYであり;
(b)前記HVR-L2配列は、AASであり;
(c)前記HVR-L3配列は、X14QX151617181920であり;
更に、X14は、Q、G又はHであり;X15は、L、V又はTであり;X16は、N、S、I又はMであり;X17は、S、R又はFであり;X18は、Y又はRであり;X19は、P又はLであり;X20は、T又はAである、ポリペプチド。
【請求項12】
14は、Q又はGであり;X15は、L又はVであり;X16は、N又はSであり;X17は、S又はRであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記HVR間に並列された可変領域軽鎖フレームワーク配列LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3及びLC-FR4を更に含み、したがって、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)の配列を形成する、請求項11~13の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記軽鎖フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記軽鎖フレームワーク配列は、ヒト生殖系列フレームワーク配列に由来する、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記軽鎖フレームワーク配列は、κ軽鎖配列である、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記軽鎖フレームワーク配列の1つ以上は次のもの:
LC-FR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASであり;
LC-FR2は、LAWYQQKPGKAPKLLIYであり;
LC-FR3は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCであり;
LC-FR4は、FGGGTKVEIKである、
請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項19】
ドメインを更に含む、請求項14~18の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(a)前記重鎖は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、更に、(i)前記HVR-H1配列は、GYTFTXYPであり;(ii)前記HVR-H2配列は、INTNTGNPであり;(iii)前記HVR-H3配列は、ARXGX10111213であり;
(b)前記軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、更に:(iv)前記HVR-L1配列は、QGISSYであり;(v)前記HVR-L2配列は、AASであり;(vi)前記HVR-L3配列は、X14QX151617181920であり;
更に、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y、S又はFであり;Xは、S、G又はTであり;Xは、V、S又はGであり;Xは、D、Y又はPであり;Xは、E、D又はYであり;Xは、Y又はWであり;X10は、A、F又はSであり;X11は、F又はDであり;X12は、D又はPであり;X13は、V、Iであるか又は存在せず;X14は、Q、G又はHであり;X15は、L、V又はTであり;X16は、N、S、I又はMであり;X17は、S、R又はFであり;X18は、Y又はRであり;X19は、P又はLであり;X20は、T又はAである、
単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項21】
は、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y又はSであり;Xは、S又はGであり;Xは、V又はSであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、A又はFであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIであり;X14は、Q又はGであり;X15は、L又はVであり;X16は、N又はSであり;X17は、S又はRであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである、請求項20に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項22】
は、Sであり;Xは、V又はTであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、S又はGであり;Xは、Vであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIであり;X14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである、請求項20に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項23】
は、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Dであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、Vであり;X14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである、請求項20に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項24】
(a)前記HVR-H1配列は、GYTFTSYPであり、
(b)前記HVR-H2配列は、INTNTGNPであり、
(c)前記HVR-H3配列は、ARVGGYSVDEYAFDVであり;
及び
(d)前記HVR-L1配列は、QGISSYであり、
(e)前記HVR-L2配列は、AASであり、
(f)前記HVR-L3配列は、QQLSSYPTである、
請求項20に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項25】
(a)前記HVR間に並列された可変領域重鎖フレームワーク配列HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3及びHC-FR4を更に含み、したがって、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)の配列を形成し、
(b)前記HVR間に並列された可変領域軽鎖フレームワーク配列LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3及びLC-FR4を更に含み、したがって、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)の配列を形成する、
請求項20~24の何れか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項26】
前記フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する、請求項25に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項27】
前記フレームワーク配列は、ヒト生殖系列フレームワーク配列に由来する、請求項25に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項28】
前記フレームワーク配列の1つ以上は次のもの:
HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASであり;
HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGWであり;
HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCであり;
HC-FR4は、WGQGTLVTVSSである、
請求項25に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項29】
前記フレームワーク配列の1つ以上は次のもの:
LC-FR1配列は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASであり;
LC-FR2配列は、LAWYQQKPGKAPKLLIYであり;
LC-FR3配列は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCであり;
LC-FR4配列は、FGGGTKVEIKである、
請求項25に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項30】
(a)可変重鎖フレームワーク配列は、次のもの:
(i)HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASであり;
(ii)HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGWであり;
(iii)HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCであり;
(iv)HC-FR4は、WGQGTLVTVSSであり;及び
(b)可変軽鎖フレームワーク配列は、次のもの:
(i)LC-FR1配列は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASであり;
(ii)LC-FR2配列は、LAWYQQKPGKAPKLLIYであり;
(iii)LC-FR3配列は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCであり;
(iv)LC-FR4配列は、FGGGTKVEIKである、
請求項25に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項31】
請求項30に記載のHC-FR及びLC-FR配列を有する、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであり、次のもの:
i)前記HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3配列は、表2に示されているIDの1つから選択される、抗体であって、
(a)前記HVR-L1配列は、QGISSYであり、
(b)前記HVR-L2配列は、AASであり、
(c)前記HVR-L3配列は、QQLNSYPTである、
抗体;
ii)前記HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3配列は、表3に示されているIDの1つから選択される、抗体であって、
(a)前記HVR-H1配列は、GYTFTSYPであり、
(b)前記HVR-H2配列は、INTNTGNPであり、
(c)前記HVR-H3配列は、ARVGGYSVDEYAFDVである、
抗体;又は
iii)表4から選択される抗体
から選択される、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項32】
少なくともC1ドメインを更に含む、請求項25~31の何れか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項33】
少なくともC2及びC3ドメインを更に含む、請求項32に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項34】
少なくともCドメインを更に含む、請求項25~33の何れか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項35】
前記定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群から選択される、請求項34に記載の抗体。
【請求項36】
前記定常領域は、IgG1である、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
完全ヒト抗体である、請求項1~36の何れか一項に記載の抗体又は抗体フラグメント。
【請求項38】
重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(a)前記重鎖配列は、重鎖配列:QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTLVTVSSと少なくとも85%配列同一性を有し、
(b)前記軽鎖配列は、軽鎖配列:DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLSSYPTFGGGTKVEIKと少なくとも85%配列同一性を有する、
単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項39】
前記配列同一性は、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%であるか又は100%である、請求項38に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項40】
前記配列同一性は、100%である、請求項39に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項41】
単離抗TIGIT抗体であって、
重鎖は:QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGであり、
(b)軽鎖は:DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLSSYPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECである、
単離抗TIGIT抗体。
【請求項42】
前記抗体は、ヒト及びカニクイザルTIGITと結合することができる、請求項20~41の何れか一項に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体は、ヒト、又はカニクイザルTIGIT及びそれぞれのヒト、又はカニクイザルPVR間の前記相互作用を遮断することができる、請求項20~20の何れか一項に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体は、10×10-9M以下のKでヒトTIGITと結合する、請求項20~43の何れか一項に記載の抗体。
【請求項45】
単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、ヒトTIGITの残基Q53、T55、Y113及びP114を含む機能的エピトープと結合する、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項46】
前記機能的エピトープは、ヒトTIGITの残基Q56、N70、及びH111を更に含む、請求項45に記載の単離抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項47】
単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、ヒトTIGITの残基T51、A52、Q53、T55、Q56、N70、D72、H111、T112、Y113、P114、及びG116を含む立体構造エピトープと結合する、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項48】
前記抗体は、請求項20~42の何れか一項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントとTIGITとを結合するために交差競合する、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項49】
医薬組成物であって、請求項20~48の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメント及び少なくとも1つの薬剤的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項50】
請求項1~41の何れか一項に記載のポリペプチドをコードする、単離核酸。
【請求項51】
請求項20~41の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメントの前記軽鎖又は重鎖配列をコードする、単離核酸。
【請求項52】
前記核酸は、次の配列:
ATGGAAACAGACACCCTGCTGCTGTGGGTGCTGCTGCTGTGGGTGCCCGGCTCCACAGGCCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCCGGCTCCGAGCTGAAGAAACCCGGCGCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCCGGCTACACCTTCACCTCCTACCCCATGAACTGGGTGAGGCAGGCTCCTGGCCAGGGACTGGAGTGGATGGGCTGGATCAACACCAACACCGGCAACCCTACCTACGCCCAGGGCTTCACCGGCAGGTTCGTGTTCTCCCTGGACACCAGCGTGTCCACCGCCTACCTGCAGATCTCCTCCCTGAAGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGTGGGAGGCTACTCCGTGGACGAGTACGCCTTCGACGTGTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGTCCTCCGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCACGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCCCCGGGT
を有する、請求項41に記載の重鎖をコードする単離核酸。
【請求項53】
前記核酸は、次の配列:
ATGAGGGCCCTGCTGGCTAGACTGCTGCTGTGCGTGCTGGTCGTGTCCGACAGCAAGGGCGACATCCAGCTGACCCAGTCCCCCTCCTTCCTGTCCGCTTCCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACTTGTCGTGCCTCCCAGGGCATCTCCTCCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACGCCGCTTCCACACTGCAGTCCGGCGTGCCCTCCAGGTTTTCCGGATCCGGCTCCGGCACCGAGTTCACCCTGACCATCTCCTCCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCAGCAGCTGTCCTCCTACCCCACCTTCGGCGGCGGCACAAAGGTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT
を有する、請求項41に記載の軽鎖をコードする単離核酸。
【請求項54】
請求項50~53の何れか一項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項55】
請求項54に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項56】
真核生物である、請求項55に記載の宿主細胞。
【請求項57】
哺乳類である、請求項56に記載の宿主細胞。
【請求項58】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、好ましくはCHO-K1SVである、請求項57に記載の宿主細胞。
【請求項59】
抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントの製造方法であって、前記方法は、前記抗TIGIT抗体又は抗原結合性フラグメントをコードする前記ベクターの発現に適した条件下、請求項55~58の何れか一項に記載の宿主細胞を培養し、前記抗体又はフラグメントを回収することを含む、方法。
【請求項60】
がんの治療方法であって、前記方法は、請求項20~48の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体、又は請求項49に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発する、方法。
【請求項61】
がんの治療方法であって、前記方法は、請求項20~48の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体、又は請求項49に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項62】
前記がんは、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、メラノーマ、膀胱がん、腎がん、肝がん、唾液腺がん、胃がん、グリオーマ、甲状腺がん、胸腺がん、上皮がん、頭頸部がん、胃がん及び膵がんからなる群から選択される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
T細胞機能障害性疾患の治療方法であって、前記方法は、請求項20~48の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体、又は請求項47に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項64】
前記T細胞機能障害性疾患は、腫瘍免疫である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記腫瘍免疫は、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、メラノーマ、膀胱がん、腎がん、肝がん、唾液腺がん、胃がん、グリオーマ、甲状腺がん、胸腺がん、上皮がん、頭頸部がん、胃がん及び膵がんからなる群から選択されるがんに起因する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記方法は、放射線療法、外科手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケアからなる群から選択される治療レジメンの適用を更に含む、請求項60~65の何れか一項に記載の方法。
【請求項67】
少なくとも1つの抗がん剤の投与を更に含む、請求項60~66の何れか一項に記載の方法。
【請求項68】
パーツのキットであって、請求項49の医薬組成物及び請求項60~66の何れか一項に記載の治療用医薬組成物を使用するための説明書を含むパッケージインサートを備える、パーツのキット。
【請求項69】
パーツのキットであって、請求項49の医薬組成物、少なくとも1つの更なる抗がん剤、及び請求項60~67の何れか一項に記載の治療用医薬組成物と組み合わせて前記少なくとも1つの抗がん剤を使用するための説明書を含むパッケージインサートを備える、パーツのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列リスト
本願は、ASCII形式で電子的に提出し、その全文の参照により本明細書に援用される配列リストを含む。2020年11月5日に作成された前記ASCII複写物は、ファイル名P19-193_WO_SL.txtであり、容量40,940バイトである。
【0002】
技術分野
本願は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメント、これをコードする核酸、その治療用組成物、並びに細胞性免疫応答を上方制御するT細胞機能を増強及び腫瘍免疫などのT細胞機能障害性疾患の治療、感染性疾患及びがんの治療のためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リンパ球成長及び活性化
ヒトにおけるリンパ球の2つの主要な型は、T(胸腺由来)及びB(骨髄由来)である。これらの細胞は骨髄中の造血幹細胞及びリンパ系成長経路にコミットされた胎児肝臓由来である。これらの幹細胞の子孫は、成熟してBリンパ球又はTリンパ球のいずれかになる分岐経路に従う。ヒトBリンパ球成長は、骨髄内で完結する。一方、T細胞は、髄を残す未成熟前駆体から成長し、血流を通って胸腺に移動し、胸腺において増殖し成熟Tリンパ球に分化する。
【0004】
胸腺又は骨髄から現れる成熟リンパ球は、静止状態、又は「休止」状態にあり、すなわち、これらは有糸分裂的に不活性である。血流中に分散する場合、これらの「ナイーブ」又は「バージン」リンパ球は、脾臓、リンパ節又は扁桃腺などの様々な二次又は末梢リンパ系器官に移動する。最もバージンなリンパ球は、本質的に短寿命を有し、髄又は胸腺を離れた後、数日なしで死す。しかしながら、かかる細胞が抗原の存在を示すシグナルを受ける場合、これらは活性化することができ、連続的に細胞分裂する。次いで、得られた子孫細胞の一部は、休止状態に逆戻りしてメモリーリンパ球-刺激アレルゲンと再び会うために本質的に感作されるB細胞及びT細胞になる。活性化されたバージンリンパ球の他の子孫は、数日しか生存しないが、特異的防御活動を行うエフェクター細胞である。
【0005】
リンパ球活性化は、休止リンパ球が、刺激されて分裂して子孫を産生し、その一部がエフェクター細胞になるとして通るイベントの順序系列を表す。完全応答は、細胞増殖の誘発(有糸分裂誘発)及び免疫機能の発現の両方を示す。リンパ球は、特定のリガンドがこれらの面上の受容体と結合する場合に活性化する。リガンドはT細胞及びB細胞によって異なるが、得られた細胞内生理学的機序は同様である。
【0006】
いくつかの外来抗原それ自体はリンパ球活性化誘発することができ、特に、B細胞上の表面免疫グロブリン、又はT細胞上の他の糖タンパク質と架橋する巨大高分子抗原である。しかしながら、ほとんどの抗原は高分子ではなく、数多くのB細胞との直接的結合でさえ活性化するのに失敗する。これらのより共通な抗原は、隣接する活性化ヘルパーTリンパ球と共刺激される場合に、B細胞を活性化する。かかる刺激は、T細胞により分泌されたリンホカインから起こり得るが、特定のB細胞表面受容体と相互作用して二次シグナルを生成するT細胞表面タンパク質と、B細胞が直接接触することによって最も効率的に伝達する。
【0007】
T細胞
Tリンパ球は免疫グロブリンを発現しないが、代わりにT細胞受容体(TCR)と呼ばれる表面タンパク質によって外来物質の存在を検出する。これらの受容体は、直接的接触又は他の免疫細胞の活性化への影響のいずれかによって抗原を認識する。マクロファージと共に、T細胞は細胞免疫に関連する初代細胞型である。
【0008】
B細胞と異なり、T細胞は、特定の状況においてのみ外来物質を検出することができる。特に、Tリンパ球は、異種タンパク質が先ず小ペプチドに切断されて、次いで、抗原提示細胞(APC)と呼ばれる第二宿主細胞表面上に示される場合にのみ、異種タンパク質を認識するだろう。多くの型の宿主細胞は、いくつかの条件下で抗原を提示することができるが、特定の型はこの目的により特異的に適合し、マクロファージ及び他のB細胞を含むT細胞活性を制御するときに特に重要である。抗原提示は、提示細胞表面で、主要組織適合抗原(MHC)と呼ばれる特定のタンパク質に部分的に依存する。したがって、細胞免疫を刺激するため、異種ペプチドは、MHCペプチドと組み合わせてT細胞に提示されなければならず、この組合せはT細胞受容体によって認識されなければならない。
【0009】
2つの重要なT細胞サブセット:細胞傷害性Tリンパ球(T細胞又はCTL)及びヘルパーT細胞(T細胞)があり、マーカーCD8及びCD4の細胞表面発現に基づいて大まかに同定することができる。T細胞はウイルス防御において重要であり、特定の細胞表面発現ウイルスペプチドの認識によって直接的にウイルスを死滅することができる。T細胞は、他の細胞型の増殖、成熟及び免疫機能、例えば、B細胞、マクロファージ及び細胞傷害性T細胞の活性を制御するリンホカイン分泌を促進する。
【0010】
バージン及びメモリーTリンパ球の両方は、通常、休止状態のままであり、この状態において、これらは重要なヘルパー又は細胞傷害活性を示さない。活性化された場合、これらの細胞は数回の有糸分裂を行って娘細胞を産生する。これらの娘細胞のいくつかは、メモリー細胞として休止状態に戻るが、他はヘルパー又は細胞傷害活性を活発に発現するエフェクター細胞になる。これらの娘細胞はその親に類似し得:CD4+細胞はCD4+子孫のみを産生することができるが、CD8+細胞はCD8+子孫のみを産生する。エフェクターT細胞は、CD25、CD28、CD29、CD40L、トランスフェリン受容体及びクラスII MHCタンパク質などの休止T細胞上で発現されない細胞表面マーカーを発現する。活性化刺激を離脱する場合、細胞傷害又はヘルパー活性は、エフェクター細胞が死ぬか、あるいは休止状態に戻るとき、数日の期間にわたって徐々に鎮静する。
【0011】
B細胞活性化と同様に、ほとんどの抗原に対するTリンパ球の応答も、2つの型の共刺激を必要とする。第一は抗原であり、抗原提示細胞上のMHCタンパク質により適切に示された場合に抗原は認識されてT細胞受容体と結合することができる。この抗原-MHC複合体が細胞内部にシグナルを送るが、これは通常T細胞活性化をもたらすには不充分である。ヘルパーT細胞と一緒に生じるなど、完全活性化は、抗原提示細胞表面で発現される補助刺激分子と呼ばれる他の特定のリガンドとの同時刺激を必要とする。他方で、細胞傷害性T細胞の活性化は、概して、IL-2、活性化ヘルパーT細胞により分泌されたサイトカインを必要とする。
【0012】
免疫調節受容体
自己寛容を維持する免疫チェックポイントとして概して機能する抑制性免疫調節受容体(IMR)が、免疫を回避する腫瘍微小環境の能力の中核をなすという発見から、腫瘍免疫療法を可能にする重要な要因が明らかになった。抑制性IMRの遮断は、活性化サイトカイン又は腫瘍ワクチンを用いた腫瘍免疫の直接刺激より効果的に強力な腫瘍特異的免疫応答を解放するように思われ、このアプローチはヒトがん治療を変える可能性がある。他のIMRに対する新規抗体アンタゴニストを開発し、腫瘍臨床治験におけるレスポンダーの比率を増加させ、並びに腫瘍免疫療法治療が有効である腫瘍適応症を拡大させるために1つより多いIMRに対するアンタゴニスト抗体を組合せる可能性に関する重要な意義及び機会が今生じている。
【0013】
重要なことに、細胞性免疫を調節する抑制性IMR及びリガンドは、腫瘍細胞及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)上で通常過剰発現される。注目すべきことに、腫瘍におけるPD-L1の過剰発現は、腫瘍特異的T細胞疲弊及び予後不良に関連する。臨床治験におけるPD-1/PD-L1ライゲーションの遮断はかなり大きな割合の患者において持続的な腫瘍退縮応答をもたらした。最近の報告は、メラノーマ患者由来の腫瘍特異的CD8+ T細胞におけるPD-1及び別の抑制性IMR(TIM-3)の同時発現が、いずれかのIMR単独を発現する細胞と比較して、機能障害性T細胞疲弊表現型に関連することを示した。更に、前臨床腫瘍モデルを用いたいくつかの報告は、PD-1、TIM-3、LAG-3及びCTLA-4を含む複数のIMRの遮断が、PD-1単独に拮抗するよりも効果的に抗腫瘍応答を誘発することを示した。これらの結果は、IMR経路の更なる研究の重要性を強調する。
【0014】
TIGIT構造及びシグナル伝達
TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、本来、活性化T細胞及びNK細胞上で発現される免疫調節受容体である。TIGITは、VSIG9;VSTM3;及びWUCAMとしても知られている。その構造は、1つの細胞外免疫グロブリンドメイン、1型膜貫通領域及び2つのITIMモチーフを示す。TIGITは、T細胞上の陽性(CD226)及び陰性(TIGIT)免疫調節受容体、並びにAPC上で発現されるリガンド(CD155/PVR及びCD112)からなる共刺激ネットワークの一部を成す。
【0015】
TIGITの構造における重要な特徴は、その細胞質側末端ドメインにおける免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)の存在である。PD-1及びCTLA-4と同様に、TIGITの細胞質領域におけるITIMドメインは、SHP-1及びSHP-2などのチロシンホスファターゼを補充し、次いで、T細胞受容体(TCR)サブユニット上の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)内のチロシン残基を脱リン酸化すると予想される。したがって、腫瘍細胞又はTAMSにより発現される受容体-リガンドCD155及びCD112によるTIGITのライゲーションは、有効な抗腫瘍免疫を開始するのに必須であるTCRシグナル伝達及びT細胞活性化の抑制に寄与し得る。したがって、TIGITに対して特異的なアンタゴニスト抗体は、T細胞応答のCD155及びCD112誘発抑制を阻害し、抗腫瘍免疫を増強することができるだろう。単独又は他の試薬と組合せて感染性疾患及びがんの治療に使用することができる抗TIGIT抗体を得ることが、本発明の目的である。ヒトTIGITのアミノ酸配列は、次のものである(Genbank受託番号NP_776160):
【0016】
MRWCLLLIWAQGLRQAPLASGMMTGTIETTGNISAEKGGSIILQCHLSSTTAQVTQVNWEQQDQLLAICNADLGWHISPSFKDRVAPGPGLGLTLQSLTVNDTGEYFCIYHTYPDGTYTGRIFLEVLESSVAEHGARFQIPLLGAMAATLVVICTAVIVVVALTRKKKALRIHSVEGDLRRKSAGQEEWSPSAPSPPGSCVQAEAAPAGLCGEQRGEDCAELHDYFNVLSYRSLGNCSFFTETG(配列番号1)
【0017】
CD226(DNAM-1)と共にTIGIT及びCD96は、CD28/CTLA-4経路に酷似している経路を形成する。CD28及びCTLA-4と同様に、CD226は、共抑制受容体の役割を果たすTIGIT及びCD96とリガンドを共有する共刺激受容体の役割を果たす。CD226及びTIGITは、2つのネクチン及びネクチン様(necl)タンパク質:PVR(CD155、necl-5)及びCD112(PVRL2、ネクチン2)と結合する。CD96は、CD226及びTIGITとCD155の結合を共有するが、CD111とも結合する。
【0018】
TIGITは、活性化によりCD8+ T細胞上で上方制御される(Joller et al.,J Immunol 186:1338-1342,2011)。他者ら及び本発明者らは、TIGIT発現は、マウスにおいてCD8+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上で極めて強化されることを示した(Johnston et al Cancer Cell.2014;26:923-937,Kurtulus et al,J Clin Investig.2015;125:4053-4062)。重要なことに、TIGITは、非小細胞肺がん、結腸がん、及びメラノーマ(Chauvin et al.,J Clin Investig.2015;125:2046-2058,Johnston et al Cancer Cell.2014;26:923-937)並びに急性骨髄性白血病(AML)の末梢血単核球(PBMC)(Kong et al.Clin Cancer Res.2016;22:3057-3066)においてもCD8+TIL上で高度に発現される。CD8+TIL内で、TIGITは、共抑制受容体Tim-3及びPD-1を同時発現するCD8+T細胞のサブセットを標識し、TNF-α及びIL-2の産生に乏しく、TIGIT-CD8+TILと比較して細胞傷害性が低い(Kurtulus et al,J Clin Investig.2015;125:4053-4062)。重要なことに、TIGIT発現は、メラノーマ患者のPD-1+Tim-3+CD8+TILにおいてもより著しく高く、TIGITはメラノーマ及びAML患者の乏しいサイトカイン産生と相関する(Kong et al.Clin Cancer Res.2016;22:3057-3066)。まとめると、これらのデータは、TIGITはマウス及びヒト両方において機能障害表現型を示すCD8+TIL上で発見されることを示している。
【0019】
いくつかの一連の証拠は、TIGITはCD8+ T細胞のエフェクター機能及び増殖を限定することを示している。Kurtulusらは、Tigit-/-マウス由来のCD8+TILは、細胞傷害性及び増殖能増強を示すことを示した(J Clin Investig.2015;125:4053-4062)。同様に、AML患者のCD8+ T細胞におけるTIGITのノックダウンは、機能的欠陥の回復をもたらす(Kong et al.Clin Cancer Res.2016;22:3057-3066)。さらに、他者らは、TIGITの遮断は、マウス結腸がんにおいてCD8+ T細胞によりIFN-γ及びTNF-αの産生の増加の遮断(Johnston et al Cancer Cell.2014;26:923-937)、並びに抗原特異的増殖、サイトカイン産生、及びメラノーマ患者のPBMC及びTILからのCD8+ T細胞の脱顆粒の増強(Chauvin et al.,J Clin Investig.2015;125:2046-2058)にPD-1との相乗作用を与えることを示した。まとめると、これらのデータは、腫瘍の状況においてCD8+ T細胞の増殖及びエフェクター機能を保持するTIGITの役割を支持している(Johnston et al Cancer Cell.2014;26:923-937,41及びKong et al.Clin Cancer Res.2016;22:3057-3066)。
【0020】
特に、TIGITシグナル伝達の阻害は、がん(例えば、腫瘍免疫)並びに急性及び慢性両方の(例えば、遅延性)感染症を含む感染症の治療のためのT細胞免疫を増強する手段として提案された。TIGITシグナル伝達を遮断する抑制物質は、例えば、国際公開第16/028656号パンフレット及び国際公開第16/011264号パンフレットから公知である。しかしながら、この経路における標的へ誘導する最適治療薬がまだ商品化されなければならないので、重要でありいまだ満たされていない医療ニーズが存在する。
【発明の概要】
【0021】
コードする核酸を含む抗TIGIT抗体及びかかる抗体を含む組成物、並びに抗腫瘍免疫を増強するためのこれらの使用を提供することが、本発明の目的である。驚くべきことに、本発明の抗TIGIT抗体は、試験された前述の抗TIGIT抗体と比較して、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の媒介及び混合リンパ球反応(MLR)の増強において特に強力であることを発見した。さらに、抗体は、ヒトTIGIT及びヒトPVR(CD155)間の相互作用だけでなく、それぞれのカニクイザルタンパク質間の相互作用も遮断する。 そして、本発明の抗体は、ヒトTIGITの残基Q53、T55、Y113、及びP114を含む固有エピトープと結合する。
【0022】
1つの態様では、本発明は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む単離重鎖可変領域ポリペプチドであって、
(a)HVR-H1配列は、GYTFTXYP(配列番号36)であり;
(b)HVR-H2配列は、INTNTGNP(配列番号14)であり;
(c)HVR-H3配列は、ARXGX10111213(配列番号37)であり;
更に、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y,S又はFであり;Xは、S,G又はTであり;Xは、V,S又はGであり;Xは、D,Y又はPであり;Xは、E,D又はYであり;Xは、Y又はWであり;X10は、A,F又はSであり;X11は、F又はDであり;X12は、D又はPであり;X13は、V,Iであるか又は存在しない、
単離重鎖可変領域ポリペプチドを提供する。
【0023】
実施形態では、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y又はSであり;Xは、S又はGであり;Xは、V又はSであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、A又はFであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIである。
【0024】
別の実施形態では、Xは、Sであり;Xは、V又はTであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、S又はGであり;Xは、Vであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIである。
【0025】
さらに別の実施形態では、Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Dであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、Vである。
【0026】
態様では、ポリペプチド4は、HVR間に並列された可変領域重鎖フレームワーク配列HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3及びHC-FR4を更に含み、したがって、式:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)の配列を形成する。
【0027】
実施形態では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列又はヒト生殖系列フレームワーク配列に由来する。
【0028】
別の実施形態では、フレームワーク配列の少なくとも1つは、下記である:
HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKAS(配列番号2)であり;
HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGW(配列番号3)であり;
HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYC(配列番号4)であり;
HC-FR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号5)である。
【0029】
更なる実施形態では、ポリペプチドは、少なくともC1ドメイン、必要に応じて、C2及びC3ドメインを含む。
【0030】
更なる態様では、重鎖ポリペプチドを、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組合せ、
(a)HVR-L1配列は、QGISSY(配列番号6)であり;
(b)HVR-L2配列は、AAS(配列番号7)であり;
(c)HVR-L3配列は、X14QX151617181920(配列番号38)であり;
更に、X14は、Q、G又はHであり;X15は、L、V又はTであり;X16は、N、S、I又はMであり;X17は、S、R又はFであり;X18は、Y又はRであり;X19は、P又はLであり;X20は、T又はAである。
【0031】
実施形態では、X14は、Q又はGであり;X15は、L又はVであり;X16は、N又はSであり;X17は、S又はRであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである。
【0032】
別の実施形態では、X14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、T(配列番号8)である。
【0033】
態様では、軽鎖は、HVR間に並列された可変領域軽鎖フレームワーク配列LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3及びLC-FR4を更に含み、したがって、式:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)の配列を形成する。
【0034】
実施形態では、軽鎖フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列又はヒト生殖系列フレームワーク配列に由来する。
【0035】
別の実施形態では、軽鎖フレームワーク配列は、κ軽鎖配列である。
【0036】
更に別の実施形態では、軽鎖フレームワーク配列の少なくとも1つは、下記である:
LC-FR1配列は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRAS(配列番号9)であり;
LC-FR2配列は、LAWYQQKPGKAPKLLIY(配列番号10)であり;
LC-FR3配列は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号11)であり;
LC-FR4配列は、FGGGTKVEIK(配列番号12)である。
【0037】
更なる実施形態では、軽鎖ポリペプチドは、Cドメインを含む。
【0038】
別の態様では、本発明は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、更に(i)HVR-H1配列は、GYTFTXYPであり;(ii)HVR-H2配列は、INTNTGNP(配列番号14)であり;(iii)HVR-H3配列は、ARXGX10111213(配列番号37)であり;
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、更に(iv)HVR-L1配列は、QGISSY(配列番号6)であり;(v)HVR-L2配列は、AAS(配列番号7)であり;(vi)HVR-L3配列は、X14QX151617181920(配列番号38)であり;
更に、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y、S又はFであり;Xは、S、G又はTであり;Xは、V、S又はGであり;Xは、D、Y又はPであり;Xは、E、D又はYであり;Xは、Y又はWであり;X10は、A、F又はSであり;X11は、F又はDであり;X12は、D又はPであり;X13は、V、Iであるか又は存在せず;X14は、Q、G又はHであり;X15は、L、V又はTであり;X16は、N、S、I又はMであり;X17は、S、R又はFであり;X18は、Y又はRであり;X19は、P又はLであり;X20は、T又はAである、
抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0039】
実施形態では、Xは、S又はAであり;Xは、V又はTであり;Xは、G又はYであり;Xは、Y又はSであり;Xは、S又はGであり;Xは、V又はSであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、A又はFであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIであり;X14は、Q又はGであり;X15は、L又はVであり;X16は、N又はSであり;X17は、S又はRであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである。
【0040】
別の実施形態では、Xは、Sであり;Xは、V又はTであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、S又はGであり;Xは、Vであり;Xは、D又はYであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、V又はIであり;X14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである。
【0041】
更に別の実施形態では、Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Gであり;Xは、Yであり;Xは、Sであり;Xは、Vであり;Xは、Dであり;Xは、Eであり;Xは、Yであり;X10は、Aであり;X11は、Fであり;X12は、Dであり;X13は、Vであり;X14は、Qであり;X15は、Lであり;X16は、Sであり;X17は、Sであり;X18は、Yであり;X19は、Pであり;X20は、Tである。
【0042】
更に別の特定の実施形態では、本発明は、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(a)HVR-H1配列は、GYTFTSYP(配列番号13)であり、
(b)HVR-H2配列は、INTNTGNP(配列番号14)であり、
(c)HVR-H3配列は、ARVGGYSVDEYAFDV(配列番号15)であり;
及び
(d)HVR-L1配列は、QGISSY(配列番号6)であり、
(e)HVR-L2配列は、AAS(配列番号7)であり、
(f)HVR-L3配列は、QQLSSYPT(配列番号8)である、
抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0043】
更なる態様では、重鎖可変領域は、HVR:(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)間に並列された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、HVR:(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)間に並列された1つ以上のフレームワーク配列を含む。
【0044】
実施形態では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列又はヒト生殖系列配列に由来する。
【0045】
別の実施形態では、重鎖フレームワーク配列は:
HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKAS(配列番号2)であり;
HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGW(配列番号3)であり;
HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYC(配列番号4)であり;
HC-FR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号5)である。
【0046】
なお更なる実施形態では、軽鎖フレームワーク配列は、κ軽鎖配列である。
【0047】
もっと更なる実施形態では、軽鎖フレームワーク配列の1つ以上は:
LC-FR1は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRAS(配列番号9)であり;
LC-FR2は、LAWYQQKPGKAPKLLIY(配列番号10)であり;
LC-FR3は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号11)であり;
LC-FR4は、FGGGTKVEIK(配列番号12)である。
【0048】
もっと更なる特定の実施形態では、本発明は、単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
(a)可変重鎖フレームワーク配列は、次のもの:
(i)HC-FR1は、QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKAS(配列番号2)であり;
(ii)HC-FR2は、MNWVRQAPGQGLEWMGW(配列番号3)であり;
(iii)HC-FR3は、TYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYC(配列番号4)であり;
(iv)HC-FR4は、WGQGTLVTVSS(配列番号5)であり、及び
(b)可変軽鎖フレームワーク配列は、次のもの:
(i)LC-FR1配列は、DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRAS(配列番号9)であり;
(ii)LC-FR2配列は、LAWYQQKPGKAPKLLIY(配列番号10)であり;
(iii)LC-FR3配列は、TLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号11)であり;
(iv)LC-FR4配列は、FGGGTKVEIK(配列番号12)である、
抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0049】
更なる態様では、本発明は、下記から選択される、上記開示されているHC-FR及びLC-FRを有する単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントを提供する:
i)前記HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3配列は、実施例1の表2に示されているIDの1つから選択される、抗体であって、
(a)HVR-L1配列は、QGISSY(配列番号6)であり、
(b)HVR-L2配列は、AAS(配列番号7)であり、
(c)HVR-L3配列は、QQLNSYPT(配列番号8)である、抗体;
ii)前記HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3配列は、実施例1の表3に示されているIDの1つから選択される、抗体であって、
(a)HVR-H1配列は、GYTFTSYP(配列番号13)であり、
(b)HVR-H2配列は、INTNTGNP(配列番号14)であり、
(c)HVR-H3配列は、ARVGGYSVDEYAFDV(配列番号15)である、抗体;又は
iii)実施例1の表4から選択される抗体。
【0050】
更なる態様では、重鎖可変領域ポリペプチド、抗体又は抗体フラグメントは、少なくともC1ドメインを更に含む。
【0051】
もっと更なる態様では、上記及び下記の抗TIGIT抗体の可変領域軽鎖、抗体又は抗体フラグメントは、Cドメインを更に含む。
【0052】
もっと更なる態様では、抗体は、C1、C2、C3及びCドメインを更に含む。
【0053】
もっと更なる態様では、抗体は、ヒト又はマウス定常領域を更に含む。
【0054】
実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される
【0055】
もっと更なる態様では、本発明の抗TIGIT抗体は、完全ヒト抗体である。
【0056】
もっと更なる態様では、本発明は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、
【0057】
(a)前記重鎖配列は、重鎖配列:QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTLVTVSS(配列番号16)と少なくとも85%配列同一性を有し、
(b)前記軽鎖配列は、軽鎖配列:DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLSSYPTFGGGTKVEIK(配列番号17)と少なくとも85%配列同一性を有する、
抗体又は抗体フラグメントを提供する。
【0058】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。
【0059】
より特定の態様では、配列同一性は、100%である。
【0060】
非常に特定の態様では、抗TIGIT抗体は、完全ヒトIgG1抗体であり、重鎖及び軽鎖可変領域配列は、ヒト定常領域配列を更に含み、下記完全長重鎖及び軽鎖配列を得る:
【0061】
重鎖:
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号18)。
【0062】
実施形態では、発現系に応じて、重鎖は末端K(リジン)残基を含んでよい。
【0063】
軽鎖:
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLSSYPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)。
この抗体は、本明細書中以下において3963H03-12、又は簡潔にH03-12と呼ばれる。上記の全ての特定の(すなわち、可変部を含まない)配列は、抗体H03-12のものである。
【0064】
他の非常に特定の態様では、本発明は、これらの配列を本明細書中以下に記載されている、それぞれ、3964A06、3965D08、3966C11、7728B03及び7729G05、又は簡潔にA06、D08、C11、B03及びG05と呼ばれる抗TIGIT抗体を提供する。
【0065】
実施形態では、抗体は、ヒト及びカニクイザルTIGITと結合することができる。
【0066】
より特定の実施形態では、抗体は、ヒト、又はカニクイザルTIGIT及びそれぞれのヒト、又はカニクイザルCD155/PVR受容体間の相互作用を遮断することができる。
【0067】
別の実施形態では、抗体は、10×10-9M以下のK、好ましくは6×10-9M以下のK、更により好ましくは4×10-9M以下のKを有するヒトTIGITと結合する。
【0068】
別の態様では、本発明は、ヒトTIGITの残基Q53、T55、Y113及びP114を含む機能的エピトープと結合する単離抗TIGIT抗体(H03-12)又はその抗原結合性フラグメントに関する。
【0069】
実施形態では、抗体(H03-12)は、ヒトTIGITのQ56、N70、及びH111を更に含む機能的エピトープと結合する。
【0070】
更なる態様では、抗体(H03-12)は、ヒトTIGITのT51、Q53、T55、H111、T112、Y113、P114、及びG116含む立体構造エピトープと結合する。
【0071】
実施形態では、立体構造エピトープは、ヒトTIGITのT51、A52、Q53、T55、Q56、A71、D72、H111、T112、Y113、P114、G116及びT117を含む。
【0072】
別の実施形態では、抗体(H03-12)は、ヒトTIGITのT51、A52、Q53、T55、Q56、N70、D72、H111、T112、Y113、P114、及びG116を含む立体構造エピトープと結合する。
【0073】
別の実施形態では、抗体(A06)は、ヒトTIGITのT51、A52、Q53、T55、Q56、N70、A71、D72、H111、T112、Y113、P114、G116及びT117を含む立体構造エピトープと結合する。
【0074】
別の実施形態では、抗体(C11)は、ヒトTIGITのT51、A52、Q53、T55、Q56、N70、A71、D72、H111、T112、Y113、P114、及びG116を含む立体構造エピトープと結合する。
【0075】
別の実施形態では、抗体(B03)は、ヒトTIGITのT51、A52、Q53、T55、Q56、N70、A71、D72、H111、T112、Y113、P114、D115、G116及びT117を含む立体構造エピトープと結合する。
【0076】
別の実施形態では、抗体(G05)は、ヒトTIGITのM23、T51、Q53、V54、T55、Q56、N70、A71、H111、T112、Y113、P114、D115、G116、及びT117を含む立体構造エピトープと結合する。
【0077】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載されている本発明による抗体を有するTIGITと結合するために交差競合する抗TIGIT抗体、又はその抗原結合性フラグメントに関する。
【0078】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1つの薬剤的に許容可能な担体と一緒に、上記の抗TIGIT抗体、又はその抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
【0079】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載されている、ポリペプチドをコードする単離核酸、又は抗TIGIT抗体、若しくはその抗原結合性フラグメントの抗体軽鎖若しくは重鎖、若しくは可変領域配列を提供する。
実施形態では、前記重鎖をコードする単離核酸は、次の配列を有する:
ATGGAAACAGACACCCTGCTGCTGTGGGTGCTGCTGCTGTGGGTGCCCGGCTCCACAGGCCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCCGGCTCCGAGCTGAAGAAACCCGGCGCCTCCGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCCTCCGGCTACACCTTCACCTCCTACCCCATGAACTGGGTGAGGCAGGCTCCTGGCCAGGGACTGGAGTGGATGGGCTGGATCAACACCAACACCGGCAACCCTACCTACGCCCAGGGCTTCACCGGCAGGTTCGTGTTCTCCCTGGACACCAGCGTGTCCACCGCCTACCTGCAGATCTCCTCCCTGAAGGCCGAGGACACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGTGGGAGGCTACTCCGTGGACGAGTACGCCTTCGACGTGTGGGGCCAGGGCACCCTGGTGACCGTGTCCTCCGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGGGGCACAGCGGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCACACATGCCCACCGTGCCCAGCACCTGAACTCCTGGGGGGACCGTCAGTCTTCCTCTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACCCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACATGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCACGAAGACCCTGAGGTCAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTACAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAATGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGCCCTCCCAGCCCCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAACCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCACGGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTATCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTATAGCAAGCTCACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGCAGGGGAACGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACGCAGAAGAGCCTCTCCCTGTCCCCGGGT(配列番号20)。
【0080】
実施形態では、前記軽鎖をコードする単離核酸は、次の配列を有する:
ATGAGGGCCCTGCTGGCTAGACTGCTGCTGTGCGTGCTGGTCGTGTCCGACAGCAAGGGCGACATCCAGCTGACCCAGTCCCCCTCCTTCCTGTCCGCTTCCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACTTGTCGTGCCTCCCAGGGCATCTCCTCCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACGCCGCTTCCACACTGCAGTCCGGCGTGCCCTCCAGGTTTTCCGGATCCGGCTCCGGCACCGAGTTCACCCTGACCATCTCCTCCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCAGCAGCTGTCCTCCTACCCCACCTTCGGCGGCGGCACAAAGGTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT(配列番号21)。
【0081】
別の態様では、本発明は、前記核酸の1つ以上の発現に適しているベクターを提供する。
【0082】
更なる態様では、本発明は、前記核酸の発現に適しているベクターを含む宿主細胞、及び本明細書に記載されている抗TIGIT抗体、又はその抗原結合性フラグメントの成熟した正しく折り畳まれたポリペプチド、又は抗体軽鎖若しくは重鎖、又は可変領域配列を送達することを提供する。
【0083】
実施形態では、宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞である。
【0084】
特定の実施形態では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)などの哺乳類細胞である。
【0085】
より特定の実施形態では、CHO細胞は、CHO-KISVである。
【0086】
別の態様では、本発明は、抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントの製造方法であって、方法は、かかる抗体若しくはフラグメントを産生するのに適している条件下、発現に適している形態で前記TIGIT抗体若しくは抗原結合性フラグメントのいずれかをコードする核酸を含む宿主細胞を培養して、該抗体若しくはフラグメントを回収することを含む、方法を提供する。
【0087】
更に別の態様では、本発明は、サイトカイン又は成長因子などの治療薬と直接的又はリンカー分子を経て融合される、改変抗TIGIT抗体、又はその改変フラグメントを対象とする。かかる改変抗体又は改変抗体フラグメントを、腫瘍治療及び免疫系関連疾患で使用してもよい。抗体融合タンパク質、特に免疫サイトカインは、当技術分野において周知である。融合パートナーを、抗体若しくは抗体フラグメントのN末端又はそのC末端と結合することができる。
【0088】
もっと更なる態様では、本発明は、本明細書に開示されている抗TIGIT抗体、又は本明細書に開示されている医薬組成物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、がんの治療方法を提供する。
【0089】
実施形態では、がんは、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、メラノーマ、膀胱がん、腎がん、肝がん、唾液腺がん、胃がん、グリオーマ、甲状腺がん、胸腺がん、上皮がん、頭頸部がん、胃がん及び膵がんからなる群から選択される。
【0090】
もっと更なる態様では、本発明は、上記抗TIGIT抗体又は組成物のいずれかの有効量を投与することを含む、T細胞機能の増強方法を提供する。
【0091】
実施形態では、抗TIGIT抗体又は組成物は、機能障害性T細胞を機能障害でなくさせる。
【0092】
もっと更なる態様では、本発明は、上記抗TIGIT抗体又は組成物のいずれかの治療有効量を投与することを含むT細胞機能障害性疾患の治療方法を提供する。
【0093】
1つの特定の態様では、T細胞機能障害性疾患は、腫瘍免疫である。
【0094】
もっと更なる態様では、腫瘍免疫は、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、メラノーマ、膀胱がん、腎がん、肝がん、唾液腺がん、胃がん、グリオーマ、甲状腺がん、胸腺がん、上皮がん、頭頸部がん、胃がん及び膵がんからなる群から選択されるがんに起因する。
【0095】
なおより特定の態様では、腫瘍免疫は、肺がん、頭頸部がん、結腸がん、膀胱がん及び腎がんからなる群から選択されるがんに起因する。
【0096】
したがって、別の態様では、本発明の方法は、がんが初期段階又は後期段階及び/又は転移性であり得るがんの治療のため、腫瘍免疫原性の増大など免疫原性増強が望ましい病態の治療における使用を見出し得る。
【0097】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、いくつかのがんは、がん組織内のT細胞の存在を表しているかもしれない高レベルの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を有する。T細胞浸潤は、特定のがんにおける改善された臨床転帰に関連し得る(例えば、Zhang et al,N.Engl.J.Med.348(3):203-213(2003)参照)。しかしながら、腫瘍環境では、TILとしては、PD-1、TIGIT、TIM3、LAG3などの高レベルの抑制性共受容体を発現し、エフェクターサイトカインの産生能を欠けている疲弊T細胞(例えば、CD8+ T細胞)及び抑制性T細胞(例えば、調節性T細胞)も挙げられる。 ADCC潜在能力を有する抗TIGIT抗体は、TIGIT相互作用による、T細胞の疲弊の予防及び/又は救出、並びに抑制性T細胞の低減を遮断するだろうと期待される。
【0098】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、個体は、いくつかの実施形態では、T細胞アネルギー又はサイトカインを分泌、増殖又は細胞溶解活性を行う能力低下を特徴とするT細胞機能障害性疾患を有する。他の実施形態では、T細胞機能障害性疾患は、T細胞疲弊を特徴とする。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+及びCD8+ T細胞である。
【0099】
上記T細胞機能の増強方法、T細胞機能障害性疾患の治療方法、又はがんの治療方法に等しく、本発明は、同様に、T細胞機能の増強、T細胞機能障害性疾患の治療若しくはがんの治療のための医薬品製造のための上記及び下記抗TIGIT抗体若しくは組成物の使用、又はT細胞機能の増強、若しくはT細胞機能障害性疾患若しくはがんの治療における使用のための抗TIGIT抗体若しくは組成物に関する。
【0100】
別の態様では、本明細書において、抗TIGIT抗体及び抗がん剤及び/又は抗がん治療の有効量を個体に投与することを含む、がんを有する個体における免疫応答又は機能を増大、増強又は刺激する方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本明細書において、抗TIGIT抗体及び抗がん剤及び/又は抗がん治療の有効量を個体に投与することを含む、個体における腫瘍免疫もしくはがんの進行の治療若しくは遅延、又はがん再発の低減若しくは阻害する方法を提供する。
【0102】
特定の実施形態では、方法は、抗TIGIT抗体、及び/又は抗がん剤、及び/又は抗がん治療の有効量を個体に投与することを含む。
【0103】
特定の実施形態では、抗がん治療は、放射線療法、外科手術、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、アジュバント療法、ネオアジュバント療法、ホルモン療法、血管新生阻害、緩和ケア及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0104】
前の実施形態のいずれかと組み合せ得る特定の実施形態では、抗がん剤は、化学療法薬又は成長抑制薬、標的治療薬、キメラ抗原受容体、抗体又はその抗原結合性フラグメントを発現するT細胞、抗体薬物複合体、血管新生抑制薬、抗悪性腫瘍薬、がんワクチン、アジュバント、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0105】
特定の実施形態では、化学療法薬又は成長抑制薬は、アルキル化剤、アントラサイクリン系薬剤、抗ホルモン剤、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン薬、プロテインキナーゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害薬、細胞傷害性薬物又は抗腫瘍抗生物質、プロテアソーム阻害薬、微小管阻害薬、EGFRアンタゴニスト、レチノイド、チロシンキナーゼ阻害薬、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0106】
前の実施形態のいずれかと組み合せ得る特定の実施形態では、標的治療薬は、B-raf阻害薬、MEK阻害薬、K-ras阻害薬、c-Met阻害薬、Alk阻害薬、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害薬、Akt阻害薬、p70S6K阻害薬、BTK阻害薬、mTOR阻害薬、デュアルホスファチジルイノシトール3キナーゼ/mTOR阻害薬、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0107】
前の実施形態のいずれかと組み合せ得る特定の実施形態では、標的治療薬は、アレムツズマブ、アポリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ベバシズマブ、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、セミプリマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、デュルバルマブ、クリズマブ、エロツズマブ、エミシズマブ、エプラツズマブ、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、イブリツモマブ-チウキセタン、イノツズマブ-オゾガマイシン、イピリムマブ、モガムリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、パンチツムマブ(pantitumumab)、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、リツキシマブ(retuximab)、ロバルピツズマブ-テシリン、シルツキシマブ、トレメリムマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ザノリムマブ、抗IL-12、及び抗IL-17からなる群から選択される抗体、若しくはその抗原結合性フラグメント、又は抗体融合タンパク質である。より特定の実施形態では、少なくとも1つの治療薬は、アベルマブである。
【0108】
前の実施形態のいずれかと組み合せ得る特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性フラグメントは、PD-1、PD-L1、CTLA-4、CD52、VEGF-A、EGFR、CD20、HER2、HLA-DRB、CD62L、IL-6R、アミロイドβ、CD44、CanAg、CD4、TNFα、IL-2、CD25、補体C5、CDl la、CD22、CD18、RSウイルスF、インターフェロンγ、CD33、CEACAM5、IL-5、インテグリンα4、IgE、IL-4、IL-5、CD154、FAP、CD2、MUC-1、AFP、インテグリンα-v-β-3、IL6R、CD40L、EpCAM、志賀毒素様毒素II、IL-12、IL-23、IL-17、及びCD3からなる群から選択される標的と特異的に結合する。
【0109】
実施形態では、抗TIGIT抗体を、抗がん剤又は抗がん治療前に投与する。別の実施形態では、抗TIGIT抗体を、抗がん剤又は抗がん治療と同時に投与する。さらに別の実施形態では、抗TIGIT抗体を、抗がん剤又は抗がん治療後に投与する。
【0110】
本発明の別の態様は、がん治療における本明細書に開示されている抗TIGIT抗体又は組成物の抗体依存性細胞傷害(ADCC)の使用に関する。したがって、本発明は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発する抗TIGIT抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むがんの治療方法に関する。
【0111】
別の態様では、抗体又は組成物は、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘルペスウイルス、エプスタイン-バールウイルス又はヒトパピローマウイルスによるウイルス感染症などの持続性感染症の症状を治療又は予防する。
【0112】
もっと更なる態様では、本発明は、本明細書に開示されている医薬組成物、及び個体におけるT細胞機能障害性疾患及び/又はがんの治療のための使用を示すパッケージインサートを含むパーツのキットを提供する。
【0113】
もっと更なる態様では、本開示は、本明細書に開示されている医薬組成物、抗がん剤、並びに個体におけるT細胞機能障害性疾患及び/又はがんを治療するため、抗TIGIT抗体と一緒に抗がん剤を使用するための説明書を含むパッケージインサートを備えるキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0114】
定義
抗体関連定義
用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体、ディアボディ、及び一本鎖分子、並びに抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。塩基性4鎖抗体単位は、2つの同じ軽(L)鎖及び2つの同じ重(H)鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる付加的ポリペプチドに加えて5つの塩基性ヘテロ四量体単位から成り、10抗原結合部位を含むが、IgA抗体は、重合してJ鎖と一緒に多価集合体を形成する2~5つの塩基性4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は、概して、薬150,000ダルトンである。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によりH鎖と結合しているが、2つのH鎖はH鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合により相互に結合している。各H鎖及びL鎖は、規則的に間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)を有し、次いで、α及びγ重鎖アイソタイプの各々のために3つの定常ドメイン(CH)並びにμ及びε重鎖アイソタイプのために4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端において、可変ドメイン(VL)を有し、次いで、その他末端において定常ドメインを有する。VLはVHによってアラインし、CLは重鎖の第一定常ドメイン(CH1)によってアラインする。特定のアミノ酸残基は、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の境界面を形成すると考えられる。VH及びVLの対形成は、単一抗原結合部位を共に形成する。抗体の異なる分類の構造及び特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P.Sties,Abba I. Terr and Tristram G.Parsolw(eds),Appleton and Lange,Norwalk,CT,1994,71頁及び第6章参照。いくつかの脊椎動物種由来のL鎖を、これらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2つの明らかに異なる型の1つに割り当てることができる。これらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なる分類又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの分類:それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがある。γ及びα分類は、CH配列及び機能におけるそれぞれの小さな差異に基づいてサブクラスに更に分割され、例えば、ヒトは次のサブクラス:IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2を発現する。
【0115】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを表す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインを、それぞれ、「VH」及び「VL」と呼んでよい。これらのドメインは、概して、抗体の最も可変な部分(同分類の他の抗体と比較して)であり、抗原結合部位を含む。
【0116】
用語「可変」は、可変ドメインの特定のセグメントは抗体中の配列において広範に異なるという事実を表す。Vドメインは抗原結合を媒介し、その抗原に対する抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全スパンにわたって均一に分布していない。代わりに、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方において高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3セグメント中に集中している。可変ドメインのより高度に保存的な部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きくβシート構造の形をとり、3HVRと連結された4つのFR領域を含み、βシート構造と接続、場合によってはその一部を形成するループを形成する。各鎖のHVRは、FR領域に近接近して他の鎖のHVRと一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)参照)。定常ドメインは、抗体が抗原と結合する際に直接的に関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与など様々なエフェクター機能を示す。
【0117】
本明細書で使用されるとき、用語「高頻度可変領域」、「HVR」、又は「HV」は、配列及び/又は構造的に規定されたループにおいて高頻度可変である抗体価片ドメインの領域を表す。概して、抗体は、6HVR;VHで3つ(H1、H2、H3)、及びVLで3つ(L1、L2、L3)を含む。天然抗体では、H3及びL3は、6HVRの最も多い多様性を示し、特にH3は、抗体に対する精密な特異性を与える固有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)参照。事実、重鎖のみから成る天然ラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman et al,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)参照。いくつかのHVR描写を使用している。ImMunGeneTics(IMGT)固有Lefrancナンバリング(IMGTナンバリング)(Lefranc,M.-P.et al.Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003))は、FR及びHVRを明らかにするために、X線回折研究からの配列保存、構造データ及び高頻度可変ループの特徴を考慮する。カバット(Kabat)相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づき、よく使用されている(Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を言及している(Chothia and Lesk,/.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、カバットHVR及びコチア(Chothia)構造ループ間の折衷であり、Oxford Molecular‘s AbM抗体モデリングソフトウェアにより使用する。「定常」HVRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。
【0118】
これらのHVRの各々からの残基を以下に記述する。
【0119】
【化1】
【0120】
HVRは、次のような「伸長HVR」を含む:VL中の24-40(LI)、56-69(L2)及び105-117(L3)並びにVH中の24-40(HI)、55-74(H2)及び105-117(H3)。可変ドメイン残基を、これらの定義の各々に対して、上記Lefrancらに従ってナンバリングする。
【0121】
表現「IMGT定義を用いた可変ドメイン残基ナンバリング」又は「IMGTなどの場合のアミノ酸位置ナンバリング」及びこれらの変化形は、上記Lefrancらにおける抗体可変ドメインに対して使用されるナンバリングシステムを表す。これらのナンバリングシステムを使用して、実際の直鎖アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はFR若しくはHVRへの挿入に対応するアミノ酸をほとんど含まなくてもよく、付加的アミノ酸を含んでもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、重鎖HVR残基111の後又は重鎖HVR112の前に挿入された残基(例えば、Lefrancに従って残基111.1及び残基112.1、その他)を含んでよい。残基のIMGTナンバリングを、「標準」IMGTナンバリングされた配列を用いて、抗体配列の相同領域におけるアラインメントによって所与の抗体について決定してよい。
【0122】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書において定義されているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0123】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」又は「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択における最もよくあるアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。概して、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)におけるサブグループである。VLについての例としては、サブグループは、上記Kabatら中のサブグループκI、κII、κIII又はκIVであり得る。加えて、VHに関して、サブグループは、上記Kabatら中のサブグループI、サブグループII、又はサブグループIIIであり得る。あるいは、ヒトコンセンサスフレームワークは、ドナーフレームワーク配列を様々なヒトフレームワーク配列のコレクションによりアラインすることによりドナーフレームワークとの相同性に基づいてヒトフレームワーク残基が選択される場合など、特定の残基が上記から導き出され得る。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、既存のアミノ酸配列変化を含んでもよい。いくつかの実施形態では、既存アミノ酸変化数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。
【0124】
「VHサブグループIコンセンサスフレームワーク」は、上記Kabatらの可変重鎖サブグループIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。
【0125】
「VLκIコンセンサスフレームワーク」は、上記Kabatらの可変軽鎖κサブグループIにおけるアミノ酸配列から得られるコンセンサス配列を含む。
【0126】
本明細書において、用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域及び多様体Fc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変わるかもしれず、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位、又はPro230位におけるアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端へ伸びることが明確化されている。本明細書において特に指定されない限り、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基のナンバリングは、上記KabatらのEUインデックスのものである。「KabatらのEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを表す。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによれば残基447)を、例えば、抗体の産生若しくは精製中、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換えにより改変することによって取り除いてもよい。したがって、未変化抗体の組成物は、取り除かれる全K447残基を有する抗体集団、取り除かれる全K447残基を有しない抗体集団、並びにK447残基を有する及び有しない抗体の混合物を有する抗体集団を含んでよい。本発明の抗体において使用するための適切な天然配列Fc領域としては、ヒトIgGl、IgG2、IgG3及びIgG4が挙げられる。[0068]「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域と結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(γ受容体)と結合するものであり、アレル多様体あるいはこれらの受容体のスプライス体を含むFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が挙げられ、FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性受容体」)及びFcγRIIB(「抑制性受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様なアミノ酸配列を有する。活性受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む。抑制性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン抑制性モチーフ(ITIM)を含む(M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997))。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991);Capel et al,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。将来同定されるものを含む他のFRは、本明細書において用語「FcR」により包含される。
【0127】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、新生児受容体、FcRnも含み、これは、母系IgGの胎児への移動に関与している。Guyer et al,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al,J.Immunol.24:249(1994)。FcRnとの結合測定方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward,Immunol.Today 18:(12):592-8(1997);Ghetie et al,Nature Biotechnology 15(7):637-40(1997);Hinton et al,J.Biol.Chem.279(8):6213-6(2004);国際公開第2004/92219号パンフレット(Hinton et al))。ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのインビボでのFcRnとの結合及び血清中半減期を、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス若しくはトランスフェクトヒト細胞株、又は多様体Fc領域を有するポリペプチドを投与する霊長類においてアッセイすることができる。国際公開第2004/42072号パンフレット(Presta)は、FcRへの結合を改変又は減少させた抗体多様体を記載している。例えば、Shields et al,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)も参照。
【0128】
「Fcフラグメント」は、ジスルフィドにより結合されたH鎖両方のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能を、Fc領域における配列により決定し、Fc受容体(FcR)により認識される領域は細胞の特定の型で発見される。「Fv」は、完全抗原認識及び結合部位を含む最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、非共有結合的に強固に会合した1つの重鎖及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためにアミノ酸残基を寄与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3ループ)を生じ、抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に対して特異的である3つのみのHVRを含むFvの半分)でさえ、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0129】
特定された位置、例えば、Fc領域の位置における「アミノ酸改変」は、特定された残基の置換若しくは欠失、又は特定の残基と隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を表す。特定された残基と「隣接する」挿入は、その1つ~2つの残基内の挿入を意味する。挿入は、特定された残基に対するN末端又はC末端であってよい。本明細書において、好ましいアミノ酸改変は、置換である。
【0130】
用語「裸抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識と結合していない抗体を表す。
【0131】
用語「完全長抗体」、「未変化抗体」又は「全抗体」は互換的に使用され、抗体フラグメントと反対にその実質的に未変化な形態の抗体を表す。具体的は、全抗体としては、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが挙げられる。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列多様体であり得る。場合によっては、未変化抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0132】
「抗体フラグメント」は、未変化抗体の部分、好ましくは未変化抗体の抗原結合領域及び/又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab‘、F(ab‘)2及びFvフラグメント;ディアボディ;直鎖抗体(米国特許第5,641,870号明細書、実施例2;Zapata et al,Protein Eng.8(10):1057-1062[1995]);一本鎖抗体分子及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメント、及び残部「Fc」フラグメントと呼ばれる2つの同じ抗原結合性フラグメントを得て、消化は容易に結晶化する能力を反映する。Fabフラグメントは、H鎖の可変領域ドメイン(VH)に加えて全L鎖、及び1つの重鎖の第一定常ドメイン(CH1)から成る。各Fabフラグメントは、抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、異なる抗原結合作用を有する2つのジスルフィド結合Fabフラグメントに概ね対応する単一の大きなF(ab‘)2フラグメントを生成し、さらに抗原を架橋することができる。Fab‘フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端における数個の付加的残基を有することによってFabフラグメントと異なる。Fab‘-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab‘に対する本明細書における呼称である。F(ab‘)2抗体フラグメントは、最初、これらの間にヒンジシステインを有するab‘フラグメント対として製造された。抗体フラグメントの他の化学カップリングも公知である。
【0133】
「sFv」又は「scFv」と略記される「一本鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖中に連結されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を生成することを可能とするVH及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvのレビューのため、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,269-315頁(1994)参照。 本発明の抗体の「機能性フラグメント」は、未変化抗体の抗原結合若しくは可変領域又は改変FcR結合能を保持若しくは有する抗体のFc領域を概して含む、未変化抗体の部分を含む。抗体フラグメントの例としては、直鎖抗体、一本鎖抗体分子及び抗体フラグメントから生成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0134】
用語「ディアボディ」は、Vドメインの鎖内だが鎖間でない対形成を行い、それにより、二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントを得るように、VH及びVLドメイン間に短いリンカー(約5~10残基)を用いてsFvフラグメント(前の段落参照)を構築することによって製造された小抗体フラグメントを表す。二重特異性ディアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「クロスオーバー」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ディアボディは、例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;Hollinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)により詳細に記載されている。本明細書におけるモノクローナル抗体は、詳細には、特定種由来の抗体又は重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の抗体分類若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同じ若しくは相同性であるが、鎖の残部は、別の種由来の抗体又は別の抗体分類若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同じ若しくは相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに所望の生物活性を示すならばかかる抗体のフラグメントも含む。
【0135】
非ヒト(例えば、マウス9抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。1つの実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR(以後定義される)からの残基が所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト種のHVR(ドナー抗体)からの残基により置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてもドナー抗体においても発見されない残基を含んでよい。これらの改変を、行って結合親和性などの抗体性能をさらに改良してもよい。概して、ヒト化抗体は、超可変ループの全て若しくは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン配列のものと一致し、FR領域は結合親和性、異性化、免疫原性、その他などの抗体性能を改良する1つ以上の個々のFR残基置換を含み得るが、FR領域の全て若しくは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的に全てを含むだろう。FR中のこれらのアミノ酸置換数は、通常、H鎖中6以下であり、L鎖中3以下である。ヒト化抗体は、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常、ヒト免疫グロブリンのものも含むだろう。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)参照。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma and Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);米国特許第6,982,321号明細書及び同第7,087,409号明細書も参照。
【0136】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のものと一致するアミノ酸配列を有し、及び/又は本明細書に開示されているヒト抗体の製造技術のいずれかを用いて製造された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体を、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野において公知の様々な技術を用いて製造することができる。Hoogenboom and Winter,/.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al,J.Mol.Biol,222:581(1991)。Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol,5:368-74(2001)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の製造に利用可能である。ヒト抗体を、遺伝子改変されたトランスジェニック動物に抗原を投与して、抗原投与に対して部分的又は完全ヒト抗体を産生することによって製造することができるが、その内因性遺伝子座は無効になり、例えば、OmniAb治療抗体プラットフォーム(Ligand Pharmaceuticals)、免疫化異種マウス(xenomice)(例えば、異種マウス技術に関して米国特許第6,075,181号明細書及び同第6,150,584号明細書参照)、その他。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されたヒト抗体に関して、Li et al,Proc.Natl.Acad.Set USA,103:3557-3562(2006)も参照。
【0137】
本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に同一抗体の集団から得られる抗体を表し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る潜在的天然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)以外同じである。モノクローナル抗体は、単一抗原部位に対して高度に特異的である。異なる決定部(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体製造とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定部に対する。これらの特異性加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンにより汚染されていないハイブリドーマ培養により合成されるという利点を有する。修飾後「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法によって抗体を製造する必要があると解釈されるべきでない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)参照、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座位又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の部分又は全てを有する動物におけるヒト又はヒト様抗体を製造する技術(例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826 (1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)。
【0138】
「親和性成熟」抗体は、これらの改変を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改良をもたらすその1つ以上のHVRにおける1つ以上の改変を有するものである。1つの実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモル又は更にピコモル親和性を有する。親和性成熟抗体を、当技術分野において公知の手順によって製造する。例えば、Marks et al,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VHドメイン及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟を記載している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば:Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0139】
本明細書で使用されるとき、用語「と特異的に結合する」又は「に対して特異的」であるは、生物学的分子を含む異種性分子集団の存在下に標的の存在を決定するような標的及び抗体間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を表す。例えば、標的(エピトープであり得る)と特異的に結合する抗体は、他の標的と結合するより、大きな親和性で、結合力で、より容易に、及び/又はより大きな持続時間この標的と結合する抗体である。
【0140】
本明細書で使用されるとき、用語「イムノアドヘシン」は、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を有する異種タンパク質(「アドヘシン」の結合特異性を組み合わせた抗体様分子を表す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体(すなわち、「異種」である)の抗原認識及び結合部位、並びに免疫グロブリン定常ドメイン配列以外である所望の結合特異性を有するアミノ酸配列の融合を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、通常、受容体又はリガンドの少なくとも結合部位を含む連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列を、IgG1、IgG2、IgG-3、又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどのいずれかの免疫グロブリンから得てもよい。Ig融合は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に本明細書に記載されているポリペプチド又は抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合の製造については、1995年6月27日に発行された米国特許第5,428,130号明細書も参照。細胞表面受容体のIg Fc及びECDのイムノアドヘシン組合せは、可溶性受容体と名付けられるときもある。
【0141】
「阻止」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物活性を阻害又は低減するものである。いくつかの実施形態では、阻止抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の発現又は生物活性を実質的に又は完全に阻害する。例えば、本開示の抗TIGIT抗体又はその抗原結合性フラグメントは、TIGIT発現を阻害、TIGITのPVRとの相互作用を遮断、TIGITのPVRL2との相互作用を遮断、TIGITのPVRL3との相互作用を遮断、PVRとのTIGIT結合に媒介される細胞内シグナル伝達を阻害及び/若しくは遮断、PVRL2とのTIGIT結合に媒介される細胞内シグナル伝達を阻害及び/若しくは遮断、並びに/又はPVRL3とのTIGIT結合に媒介される細胞内シグナル伝達を阻害及び/若しくは遮断し得る。
【0142】
「アゴニスト」又は活性抗体は、結合する抗原によりシグナル伝達を増強又は開始するものである。いくつかの実施形態では、アゴニスト抗体は、天然リガンドの存在なしでシグナル伝達を起こす又は活性化する。
【0143】
用語「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する」、「交差遮断された」及び「交差遮断」は本明細書において互換的使用され、これらの標的抗原との本発明の抗体のアロステリック調節による直接的又は間接的結合と相互作用する抗体又はそのフラグメントの能力を意味する。抗体又はそのフラグメントが標的との別の抗体又はそのフラグメントの結合と相互作用することができる程度、したがって、本発明による交差遮断又は交差競合することができると考えられているかどうかは、競合結合アッセイを用いて決定することができる。定量的交差競合アッセイに特に適したものは、標的とのその結合に関して、標識(例えば、Hisタグ、ビオチン化又は放射性標識)された抗体又はそのフラグメント及び他の抗体又はそのフラグメント間の競合を測定するFACS-又はAlphaScreenベースのアプローチを使用する。概して、交差競合抗体又はそのフラグメントは、例えば、アッセイ中及び第二抗体又はそのフラグメントの存在下、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドの記録された置換が、所定量で存在する被試験潜在的交差遮断抗体又はそのフラグメントを試験することによって、100%以下(例えば、FACSベースの競合アッセイにおいて)の最大理論置換(例えば、交差遮断されなければならない寒冷(例えば、非標識)抗体又はそのフラグメントによる置換)であるように、交差競合アッセイにおける標的と結合するだろうものである。好ましくは、交差競合抗体又はそのフラグメントは、10%~100%、より好ましくは50%~100%である記録された置換を有する。
【0144】
「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル、好ましくはヒト又はヒト化抗体である。二重特異性抗体の製造方法は、当技術分野において公知である。従来、二重特異性抗体の組換え製造は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づき、該2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello,Nature,305:537-539(1983))。
【0145】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、抗体)の一重結合部位及びその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有結合性相互作用の合計の強度を表す。本明細書で使用されるとき、特に指定されない限り、「結合親和性」、「と結合する(bind to)」、「と結合する(binds to)」又は「との結合(binding to)」は、結合対のメンバー(例えば、抗体Fabフラグメント及び抗原)間の1対1相互作用を反映する固有結合親和性を表す。分子XのそのパートナーYに対する親和性を、概して、解離定数(KD)により表すことができる。親和性を、本明細書に記載されているものを含む当技術分野において公知の通常の方法によって測定することができる。低親和性抗体は、概して、ゆっくり抗原と結合して容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、概して、迅速に抗原と結合してより長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法は、当技術分野において公知であり、これらのいずれも、本発明の目的のために使用することができる。結合親和性、すなわち、結合強度を測定するための具体的例証及び例示的実施形態を以下に記載する。
【0146】
本発明による「KD」又は「KD値」を、抗体のFabバージョン及び抗原分子を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)、又はBIACORE(BIAcore,Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定することができる。
【0147】
本明細書で使用されるとき、用語「機能的エピトープ」は、抗体の結合にエネルギー的に寄与する抗原のアミノ酸残基を表し、すなわち、「エネルギーエピトープ」を形成する。抗原のエネルギー的に寄与する残基のいずれか1つのアラニンへの変異は、抗体の結合を破壊し、抗原のフォールディングを破壊しない結果、抗体の相対的KD比(KD変異TIGIT/KD野生型TIGIT)は3.2より大きくなり、これはΔΔGに関して0.7kcal/mol(2.9kJ/mol)と同等である。
【0148】
本明細書で使用されるとき、用語「立体構造エピトープ」は、ポリペプチド鎖が折り畳んで天然タンパク質を形成する場合に面上で集合し、共結晶構造中の結合されたFabにおけるアミノ酸残基の3.8Å以内に存在するTIGIT抗原のアミノ酸残基を表す。立体構造エピトープは、これに限定されないが、機能的エピトープを含む。
【0149】
免疫系関連定義
「免疫原性」は、免疫応答を誘発する物質の能力を表す。腫瘍は免疫原性であり、腫瘍免疫原性増強は、免疫応答により腫瘍細胞のクリアランスに役立つ。腫瘍免疫原性増強の例としては、免疫調節受容体の抑制薬を用いた治療が挙げられるが、これに限定されない。
【0150】
本明細書で使用されるとき、用語「ワクチン」としては、宿主に接種された場合に特定の病原体に対して防御免疫を誘発するいずれもの非病原性免疫原が挙げられる。ワクチンは、多くの形態をとり得る。ワクチンは、病原体と重要な抗原を共有するが、病原性それ自体でない全生物体(例えば、牛痘)であり得る。ワクチンを、不活化(例えば、ソークポリオワクチン)又は弱毒化(疾病をもたらす能力損失-例えば、セービンポリオワクチン)から製造することもできる。ワクチンを、病原性生物から単離された精製巨大分子から製造することもできる。
【0151】
「T細胞機能増強」は、T細胞が持続若しくは増大された生物機能を有するか、又は疲弊若しくは不活化T細胞を再生若しくは再活性化するように誘発する、引き起こす若しくは刺激することを意味する。T細胞機能増強の例としては:治療介入前のかかるレベルと比較して、CD8+ T細胞からのγインターフェロンの分泌増大、増殖増大、抗原応答性増大(例えば、ウイルス、病原体、又は腫瘍クリアランス)が挙げられる。1つの実施形態では、増強レベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この増強の測定方法は、当業者に公知である。
【0152】
「T細胞機能障害性疾患」は、抗原刺激に対する(例えば、免疫原を発現する腫瘍に対する)応答性低下を特徴とするT細胞の障害又は病態である。例えば、T細胞機能障害性疾患は、アネルギー性である又はサイトカインを分泌、増殖、若しくは細胞溶解活性を行う能力が低下したT細胞を特徴とし得る。応答性低下は、免疫原を発現する腫瘍の無効な制御をもたらし得る。T細胞機能障害を特徴とするT細胞機能障害性疾患の例としては、腫瘍免疫及びがんが挙げられる。
【0153】
免疫機能障害との関連で用語「機能障害」は、抗原刺激に対する免疫応答性低下の状態を表す。該用語は、抗原認識は起こり得るが免疫応答の確保は感染症又は腫瘍増殖を制御するには無効である疲弊及び/又はアネルギー両方の共通要素を含む。
【0154】
本明細書で使用されるとき、用語「機能障害性」は、抗原認識に対する不応性又は無応答性、詳細には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)及び/又は標的細胞死滅などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力低下も含む。
【0155】
用語「アネルギー」は、T細胞受容体により送達される不完全又は不充分なシグナルから得られる抗原刺激に対する無応答の状態を表す()。同時刺激の非存在下抗原による刺激時にもT細胞アネルギーは結果として生じ得、ちょうど同時刺激との関連で抗原によるその後の活性化が無効になる細胞をもたらす。無応答状態は、インターロイキン-2の存在により覆され得ることが多い。アネルギー性T細胞は、クローン増殖を行わず及び/又はエフェクター機能を獲得しない。
【0156】
用語「疲弊」は、多くの慢性感染症及びがんの間に起こる持続TCRシグナル伝達から生じるT細胞機能障害の状態としてのT細胞疲弊を表す。不完全又は不順文和シグナル伝達により生じないが、持続シグナル伝達から生じるアネルギーから区別される。エフェクター機能不良、抑制性受容体の持続発現及び機能性エフェクター又はメモリーT細胞のものと異なる転写状態によって定義される。疲弊は、感染症及び腫瘍の最適制御を妨げる。疲弊は、外因性ネガティブ調節経路(例えば、免疫調節サイトカイン)並びに細胞内因性ネガティブ調節(同時刺激)経路の両方に起因し得る。
【0157】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを逃れる方法を表す。したがって、治療概念として、かかる回避を減弱し、腫瘍を認識し、免疫系によって攻撃する場合に腫瘍免疫は治療される。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍退縮及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0158】
「抗体依存性細胞傷害」又はADCCは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合される分泌Igは、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原担持標的細胞と特異的に結合し、その後、細胞毒で標的細胞を殺細胞することを可能とする細胞傷害性の形態を表す。抗体「アーム」及び細胞傷害性細胞は、この機序により標的細胞の殺傷に必要である。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、単核球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血幹細胞上のFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464頁の表3に纏められている。対象の分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号明細書又は同第5,821,337号明細書に記載されているものなど、インビトロADCCアッセイを行ってよい。かかるアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は更に、対象の分子のADCC活性を、例えば、Clynes et al,PNAS USA 95:652-656(1998)に開示されているものなど、動物モデルにおいてインビボで評価してよい。
【0159】
「エフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現する白血球であり、エフェクター機能を行う。1つの態様では、エフェクター細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単核球、細胞傷害性T細胞及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞を、天然源、例えば、血液から単離してよい。エフェクター細胞は、概して、エフェクター相に関連するリンパ球であり、サイトカイン(ヘルパーT細胞)、病原体に感染している殺傷細胞(細胞傷害性T細胞)又は分泌抗体(分化B細胞)を産生する働きをする。
【0160】
「自己免疫疾患」は、個体自身の組織若しくは器官又はその同時分離若しくは症状又はそれから得られる病態から生じる及び対象とする疾病若しくは障害である。自己免疫疾患は、器官特異的疾患(すなわち、免疫応答は内分泌系などの器官系、造血系、皮膚、心肺系、胃腸及び肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、筋神経系、中枢神経系、その他を特異的に対象とする)又は多臓器系に影響を与え得る全身疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、多発性筋炎、その他)であり得る。
【0161】
がん関連定義
本明細書で使用されるとき、「腫瘍」は、悪性か良性にかかわらず全ての腫瘍性細胞成長及び増殖、並びに全ての前がん性及びがん性細胞及び組織を表す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖障害」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」は、本明細書にあるように相互排他的でない。
【0162】
本明細書で使用されるとき、「がん」及び「がん性」は、不規則な細胞成長を通常特徴とする哺乳類における生理的状態を表す又は説明する。良性及び悪性がん並びに休眠腫瘍又は微小転移は、この定義に含まれる。
【0163】
本明細書で使用されるとき、「転移」は、身体内のその最初の部位から他の場所にがんが拡がることを意味する。がん細胞は、原発性腫瘍から離脱し、リンパ管及び血管中に入り、血流を通って循環し、身体内の他の場所の正常組織において離れた病巣(distant focus)で成長(転移)することができる。転移は局所的又は遠隔的であり得る。転移は、腫瘍細胞が原発性腫瘍から分裂し、血流を通って移動し、遠位部位で停止することを条件とする一連のプロセスである。新しい部位において、細胞が血液供給を確立し、成長して生命を脅かす集団を形成することができる。腫瘍細胞内の刺激及び抑制性分子経路の両方は、この挙動を調節し、腫瘍細胞及び遠位部位における宿主細胞間の相互作用も重要である。
【0164】
本明細書で使用されるとき、「がん再発の低減又は抑制」は、腫瘍若しくはがん再発又は腫瘍若しくはがん憎悪を低減又は抑制することを意味する。本明細書で開示されているように、がん再発及び/又はがん憎悪としては、がん転移が挙げられるが、これに限定されない。
【0165】
本明細書で使用されるとき、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療されている疾病(例えば、がん)が悪化しない間の治療中及び治療後の時間の長さを表す。無増悪生存期間は、患者が完全奏効又は部分奏効を経験した時間、並びに患者が安定疾患を経験した時間を含む場合もある。
【0166】
本明細書で使用されるとき、「奏効率」(ORR)は、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を表す。
【0167】
本明細書で使用されるとき、「全生存率」は、期間後生存する可能性がある群中の個体のパーセンテージを表す。
【0168】
本明細書で使用されるとき、「完全奏効」又は「CR」は、全標的病変の消滅を表し;「部分奏効」又は「PR」は、ベースラインSLD標的病変の長径和(SLD)がベースラインSLDと比較して少なくとも30%減少することを表し:「安定疾患」又は「SD」は、治療開始以後の最小SLDと比較してPRに該当する標的病変の充分な縮小もなく、PDに該当する増大もないことを表す。
【0169】
本明細書で使用されるとき、「進行性疾患」又は「PD」は、標的病変のSLDが治療開始又は1つ以上の新しい病変の存在以後に記録された最小SLDと比較して少なくとも20%増加することを表す。
【0170】
製剤及び薬物送達関連定義
用語「医薬製剤」は、有効成分の生物活性を有効になるような形態であり、製剤が投与されるだろう対象に対して容認しがたく毒性を有する付加的成分を含まない製剤を表す。かかる製剤は、無菌である。
【0171】
「無菌」製剤は、無菌性又は全ての生きている微生物及びその芽胞を含まない。
【0172】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、本技術分野の当業者に容易に知られるそれぞれの値に対する通常の誤差範囲を表す。
【0173】
フレーズ「薬剤的に許容可能な」は、物質又は組成物が製剤を含む他の成分と化学的及び/若しくは毒物学的に適合性であり、並びに/又は個体がこれを用いて治療されなければならないことを示す。
【0174】
「安定な」製剤は、その中のタンパク質がその物理的及び化学的安定性並びに貯蔵時の完全性を本質的に保持するものである。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術は当技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,New York,Pubs(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)で概説されている。安定性を、選択される時間選択される温度で測定することができる。迅速なスクリーニングのため、製剤を、安定性を測定する時間において2週間~1ヶ月間40℃に維持してよい。製剤が2~8℃で貯蔵しようとする場合、概して、製剤は少なくとも1ヶ月間30℃若しくは40℃において安定及び/又は少なくとも2年間2~8℃において安定であるべきである。製剤が30℃で貯蔵しようとする場合、概して、製剤は少なくとも2年間30℃において安定及び/又は少なくとも6ヶ月間40℃において安定であるべきである。例えば、貯蔵中のアグリゲーションの程度は、タンパク質安定性の指標として使用することができる。したがって、「安定な」製剤は、約10%未満、好ましくは約5%未満のタンパク質が製剤中のアグリゲートとして存在するものであってよい。
【0175】
「再溶解後の(reconstituted)」製剤は、タンパク質がくまなく分散するように希釈剤中に凍結乾燥タンパク質又は抗体製剤を溶解することによって製剤されたものである。再溶解後の製剤は、対象のタンパク質を用いて治療しようとする患者に投与(例えば、皮下投与)に適しており、本発明の特定の実施形態では、非経口又は静脈投与に適しているものであってよい。
【0176】
「等張」製剤は、ヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有するものである。等張製剤は、概して、約250~350mOsmの浸透圧を有する。用語「低浸透圧性」は、ヒト血液よりも低い浸透圧を有する製剤を表す。同様に、用語「高浸透圧性」は、ヒト血液よりも高い浸透圧を有する製剤を表すために使用される。等張性を、例えば、蒸気圧又は製氷型浸透圧計を使用して測定することができる。
【0177】
「薬剤的に許容可能な」バッファ及び塩としては、上記酸及び塩基の酸及び塩基付加塩の両方から誘導されるものが挙げられる。具体的バッファ及び/又は塩としては、ヒスチジン、コハク酸塩及び酢酸塩が挙げられる。
【0178】
本明細書で使用されるとき、「薬剤的に許容可能な担体」は、投与量及び使用される濃度においてそれに暴露される細胞又は個体に対して無毒性である賦形剤を表す。しばしば、薬剤的に許容可能な担体は、pH緩衝水溶液である。薬剤的に許容可能な担体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などのバッファ;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/又はツイーン、ポリエチレングリコール(PEG)、及びプルロニック(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0179】
「パッケージインサート」は、適応症についての情報、用法、投与量、投与、禁忌症、パッケージされた製品と併用される他の医薬品、及び/又はかかる医薬品の使用に懸念される警告、その他を含む医薬品の市販パッケージ中に通例含まれる説明書を表す。
【0180】
他の定義
本明細書で使用されるとき、用語「治療」又は「治療すること」は、臨床病理、例えば、がん又は腫瘍免疫の過程において治療される個体又は細胞の自然経過を変更するように設計された臨床的介入を表す。治療の所望の効果としては、疾病憎悪速度の減少、疾病状態の寛解又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。例えば、個体は、がんに関連する1つの症状が、軽減若しくは排除される場合に首尾良く「治療」され、がん性細胞の増殖を低減(又は破壊)、疾病からもたらされる症状を低減、疾病に罹患している者の生活の質を向上、疾病を治療する必要がある他の医薬品の容量を低減、疾病の憎悪を遅延、及び/又は個体の生存率を延長することが挙げられるが、これに限定されない。
【0181】
本明細書で使用されるとき、「疾病の憎悪を遅延すること」は、疾病(がん又は腫瘍免疫など)の発症を遅らせる、邪魔する、遅くする、遅延させる、安定化する、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾病の病歴及び/又は治療される個体に応じて、時間の長さを変えることができる。当業者に明らかであるように、充分な又は有意な遅延は、事実上、個体が疾病を発症しない予防を包含することができる。例えば、転移の発症などの後期がんを遅延させる可能性がある。
【0182】
「有効量」は、障害の測定可能な改善又は予防を行うのに必要な少なくとも最小濃度である。本明細書において有効量は、患者の疾病状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に応じて変わり得る。また、有効量は、治療の有毒又は損傷効果より治療の薬効が上回るものである。予防的使用のため、有益又は所望の結果としては、リスクを排除若しくは低減すること、重症度を下げること、又は疾病の生化学的、組織学的及び/若しくは行動学的症状を含む疾病の発症を遅延すること、疾病の発症中に示されるその合併症及び中間病理学的表現型が挙げられる。治療用途のため、有益又は所望の結果としては、疾病からもたらされる1つ以上の症状を低減すること、疾病に罹患している者の生活の質を向上すること、疾病を治療するのに必要な他の医薬品の容量を減らすこと、標的化によるなど別の医薬品の効果を増強すること、疾病の憎悪を遅延すること、及び/又は生存率を延ばすことなどの臨床結果が挙げられる。がん又は腫瘍の場合、薬物の有効量は、がん細胞数を低減する;腫瘍体積を低減する;末梢期間へのがん細胞浸潤を抑制する(すなわち、ある程度遅延させる又は望ましくは停止する);腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度遅延させる又は望ましくは停止する);及び/又は障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度緩和する効果を有し得る。有効量を、1つ以上の投与で投与することができる。本発明の目的のため、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、直接的又は間接的のいずれかで予防的又は治療的処置を行うのに充分な量である。臨床状況で理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量を、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成してもよく、併せて達成しなくてもよい。したがって、「有効量」は、投与との関連で、1つ以上の治療薬を投与することと見做し得、1つ以上の他の薬物との併用において、所望の結果を達成し得るか、又は達成する場合に単剤は有効量で与えられると見做され得る。
【0183】
本明細書で使用されるとき、「と併用して(in combination with)」は、1つの治療様式を、別の治療様式に加えて投与することを表す。そのように、「と併用して(in combination with)」は、1つの治療様式を、個体に他の治療様式の投与前、投与中、又は投与後に投与することを表す。用語「と併せて(in conjunction with)」は、本明細書において互換的に使用してよい。
【0184】
本明細書で使用されるとき及び附属のクレームにおいて、単数形「a」、「or」、及び「the」は、文脈上別段に明白に指示されない限り、複数の参照対象を含む。
【0185】
本明細書において、「約(about)」値又はパラメータと言うことは、その値又はパラメータ自体を対象とする変化形を含む(及び表す)。例えば、「約X」と言う説明は、「X」の記載を含む。
【0186】
本明細書で使用されるとき、用語「個体」及び「対象」は互換的に使用され、これに限定されないが、ヒト又はウシ、ウマ、ヒツジ、又はネコなどの非ヒト哺乳類を含む哺乳類を表す。好ましくは、個体又は対象は、ヒトである。患者も、本明細書において、個体又は対象である。
【0187】
ペプチド、ポリペプチド又は抗体配列に関して「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、必要に応じて配列をアラインし、配列同一性最大パーセントを達成するためにギャップを導入した後、配列同一性の部分としていかなる保存的置換を考慮しないで、特定のペプチド又はポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントを、例えば、BLAST、BLAST-2又はALIGNソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当技術分野における技術の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを含むアラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0188】
本明細書中のポリペプチド及び抗体をコードする「単離」核酸分子は、これが産生された環境に通常関連する少なくとも1つの混入核酸分子から同定され、分離された核酸分子である。好ましくは、単離核酸は、産生環境と関連する全成分との関連を有しない。本明細書中のポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、これが天然で発見される形態又は状況以外の形態である。したがって、単離核酸は、細胞内に天然で存在する本明細書におけるポリペプチド及び抗体をコードする核酸と区別される。
【0189】
本明細書で使用されるとき、フレーズ「実質的に低減」、又は「実質的に異なる」は、前記値(例えば、KD値)により測定された生物学的特徴との関連で統計的有意性がある2つの値の差異を当業者が考慮するように、2つの数値(概して、1つは分子に関連するもの及び他は参照/比較分子に関連するもの)の充分に大きい差異を示す。前記2つの値の差異は、例えば、参照/比較分子の値の関数として約10%より大きい、約20%より大きい、約30%より大きい、約40%より大きい、及び/又は約50%より大きい。
【0190】
本明細書で使用されるとき、用語「実質的に同様」又は「実質的に同じ」は、前記値(例えば、Kd値)により測定された生物学的特徴との関連で生物学的及び/又は統計的有意差がほとんどない若しくはない2つの値の差異を当業者が考慮するように、2つの数値(例えば、本発明の抗体に関連するもの及び他は参照/比較抗体に関連するもの)の充分に大きい類似性を示す。前記2つの値の差異は、例えば、参照/比較品の値の関数として約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0191】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、部分の各々が異なる特性を有するポリペプチドである共有結合で結合している2つの部分を有するポリペプチドを表す。特性は、インビトロ又はインビボでの活性など、生物学的特性であってよい。特性は、標的分子との結合、反応の触媒、その他など、単純な化学的又は物理的特性であってもよい。2つの部分は、一重ペプチド結合又はペプチドリンカーにより直接結合してよいが、リーディングフレームにおいて相互に結合している。抗体融合タンパク質の例は、ビントラフスプアルファ(bintrafusp alfa)、PD-L1及びTGFβと結合することができる二官能性分子である。
【0192】
用語「アンタゴニスト」は、広義で使用され、本明細書で開示されている天然ポリペプチドの生物活性を部分的又は完全に遮断、抑制、又は中和するいずれもの分子を含む。同様に、用語「アゴニスト」は、広義で使用され、本明細書で開示されている天然ポリペプチドの生物活性を模倣するいずれもの分子を含む。適切なアゴニスト又はアンタゴニスト分子は、具体的には、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体フラグメント、天然ポリペプチドのフラグメント又はアミノ酸配列多様体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子有機分子、その他が挙げられる。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの同定方法は、ポリペプチドを候補アゴニスト又はアンタゴニスト分子と接触させて、ポリペプチドと通常関連する1つ以上の生物活性の検出可能な変化を測定することを含み得る。
【0193】
用語「TIGITアンタゴニスト」及び「TIGIT活性のアンタゴニスト又はTIGIT発現」は互換的に使用され、TIGITをコードする核酸の転写若しくは翻訳を低減すること、又はTIGITポリペプチド活性を抑制若しくは遮断すること、又は両方のいずれかによって、TIGITの正常機能を干渉する化合物を表す。TIGITアンタゴニストの例としては、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA-DNAキメラ、TIGIT特異的アプタマー、抗TIGIT抗体、抗TIGIT抗体のTIGIT結合フラグメント、TIGIT結合小分子、TIGIT結合ペプチド、及びTIGITと特異的に結合した(必要に応じて1つ以上の付加的ドメインと融合された1つ以上のTIGITリガンドのTIGIT結合フラグメントを含むが、これに限定されない)結果、TIGITアンタゴニスト及びTIGIT間の相互作用がTIGIT活性又は発現の減少又は休止をもたらす他のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、TIGITアンタゴニストが1つのTIGIT活性を別のTIGIT活性に影響を与えないでアンタゴナイズし得ると当業者に理解されるだろう。例えば、本明細書中の特定の方法において使用するための所望のTIGITアンタゴニストは、例えば、他のTIGIT相互作用のいずれかに影響しない又は最小限に影響してPVR相互作用、PVRL3相互作用、又はPVRL2相互作用の1つに応答してTIGIT活性をアンタゴナイズするTIGITアンタゴニストである。
【図面の簡単な説明】
【0194】
図1】TIGITのCD155との結合を遮断する抗TIGIT抗体の能力を評価する競合ELISAの結果を示すグラフ。
図2】重鎖(黒色)及び軽鎖(明灰色)を有するヒトTIGIT(灰色)と結合された抗TIGIT Fabの結晶構造のレンダリング:A.3963H03;B.3966C11;C.3964A06;D.7729G05;E.7728B03;F.3963H03-12。
図3】3963H03-12がTIGIT上のPVRの結合部位と重複することを示す、PVRと複合したTIGITの結晶構造のレンダリング(Protein Data Bankエントリー3UDW)で覆われたFab3963H03-12の結晶構造のレンダリング。PVRの表面を暗灰色で表示する。3963H03-12の軽鎖を明灰色で示し、重鎖を暗灰色で示す。
図4】変異残基が3963H03と接触するヒトTIGIT ECD結晶構造をスティックで示す。アラニン又はグリシンへの変異による結合親和性変化に応じて残基を着色した。(暗灰色:>3kcal/mol(12.6kJ/mol);中間灰色>2kcal/mol(8.4kJ/mol);明灰色<0.7kcal/mol(2.9kJ/mol))。
図5】抗TIGIT3963H03-12のTIGIT変異体に対する動力学的結合親和性の概要を示す。変異による結合親和性の損失により強調された結合KD(ΔΔG)。損失の大きさを示す、有意な結合エネルギー損失の原因である変異を3つの異なる色合いで強調された位置。装置測定範囲を超えるとき、KD=0.1nMより強い結合親和性を、<0.1と報告した。NBは結合がないことを示す。1回より多い実験を行った場合、標準偏差を報告した。
図6】動力学的親和性データから換算されたTIGIT変異体に対する結合親和性変化を、抗TIGIT3963H03-12について示す。結合親和性ΔGを、式ΔG=ln(KD)*RTを用いて算出した。結合親和性変化ΔΔGは、変異体及び親TIGIT間の結合親和性の差異である。いずれかの多様体のKDが0.1nMより強い場合、ΔΔGを算出せず、ND(決定していない)と示す。
図7】ヒトTIGIT(A)又はカニクイザルTIGIT(B)細胞外ドメインを発現するCHO-S細胞を用いた細胞結合アッセイの結果を示すグラフ。抗TIGIT抗体を様々な濃度で試験し、結合をフローサイトメトリーにより測定した。
図8】機能性TIGIT/CD155相互作用の遮断。TIGIT/CD155相互作用の遮断を細胞ジャーカットレポーターアッセイ(Promega CS198801)を用いて抗TIGIT又はアイソタイプコントロール抗体の濃度範囲の存在下測定した。配列最適化3963H03-12、親3963H03及びアイソタイプコントロールを試験した。データをプロットし、カーブフィッティング及びEC50値算出をGraphPad Prismプログラムを用いて行った。RLU、相対的ルシフェラーゼ単位。
図9】ヒトTIGIT細胞外ドメインを発現するCHO-S細胞を標的として用いた抗TIGIT抗体3963H03及び3963H03-12のADCC活性を示すグラフ。
図10】ヒトTIGIT細胞外ドメインを発現する51Cr標識CHO-S細胞を標的として用いた3963H03-12の補体依存性細胞傷害(CDC)を示すグラフ。
図11】抗TIGIT抗体、A06、C11、D08、H03が抗CD3及び抗CD28を用いてT細胞活性化アッセイにおいてIFNγ産生を増強したことを示すグラフ。
図12】抗TIGIT H03抗体が抗CD3を用いてCD8+ T細胞活性化アッセイにおいてIFNγ産生の増加によりCD155媒介CD8+ T細胞抑制を回復したことを示すグラフ。
図13】ヒト(A)及びカニクイザル(B)CD3+ T細胞へのH03-12の結合を示すグラフ。
図14】ヒト全血(A)及びカニクイザル脾臓細胞(B)におけるH03-12の用量依存性標的占有率を示すグラフ。
図15】H03-12はTIGIT/CD155(A)及びTIGIT/CD112(B)相互作用を用量依存的に遮断したことを示すグラフ。
図16】FRETベースTIGIT/CD226遮断アッセイ(A)及び3963H03-12によるTIGIT/CD226相互作用の容量依存性阻害(B)のセットアップを示すグラフ。
図17】双方向MLRアッセイにおける3963H03-12の容量依存性活性を示すグラフ。
図18】一方向MLRアッセイにおける3963H03-12の容量依存性活性を示すグラフ。
図19A】3963H03-12がP815.hCD155細胞(A)及びMDA-MB-231 GFP/Luc細胞(B)を用いたNK細胞媒介キリングアッセイにおけるNK細胞活性を増強したことを示すグラフ。
図19B】同上。
図20】muCD155及びmuCD112のCHO-S-huTIGIT細胞との結合に対する3963H03-12及び3963H03-12-muIgG2cの遮断作用強度を示すグラフ。
図21】MC38腫瘍を有するB-huTIGITノックインマウスにおける3963H03-12-muIgG2cの薬物動態評価。
図22】B-huTIGITノックインマウス中のMC38結腸がんモデル(A)、GL261神経膠芽腫モデル(B)、Hepa1-6幹細胞がんモデル(C)及び3LL肺がんモデル(D)における3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性を示すグラフ。
図23】B-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2cの用量依存性抗腫瘍活性を示すグラフ。平均及び個別腫瘍体積を長い間の生存率メジアンに加えて各治療群についてプロットする。
図24】B-huTIGITノックインマウス中のMC38モデル(A)又はHepa1-6モデル(B)において、エフェクターコンピテント3963H03-12-muIgG2cは抗腫瘍活性を有したが、エフェクターヌル3963H03-12-muIgG1(D265A)は有しないことを示すグラフ。
図25】長い間の生存率メジアンに加えて各治療群についての平均及び個別腫瘍体積両方と比較したB-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブを用いた併用治療の結果を示すグラフ。
図26】B-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びビントラフスプアルファを用いた併用治療の結果。 平均及び個別腫瘍体積両方はいずれかの単剤療法と比較して併用治療を用いた抗腫瘍活性増強を示す。いずれかの単剤療法と比較して併用した場合に生存率の延長も観察される。
図27】3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブあるいはビントラフスプアルファのいずれかを用いた併用治療後の完全な腫瘍退縮を示したMC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスで行われた再チャレンジ試験の結果。治癒されたマウスと比較してナイーブマウスの腫瘍体積を示す。
【実施例
【0195】
下記に示されている実施例は本発明の特定の実施形態を例証することが目的であり、決して本明細書又はクレームの範囲を限定する目的はない。
【0196】
1.抗体の選択及び改変
TIGITに対する完全なヒトモノクローナル抗体を作製するため、OmniRats(Open Monoclonal Technologies,Inc./Ligand Pharmaceutical Inc.)を、複数部位における反復免疫(Repetitive Immunization at Multiple Sites)ストラテジー(RIMMSとしても知られている)を用いてヒトTIGITの組換え細胞外ドメイン(ECD)(Sino Biological Inc、Cat.10917-H08H)によって免疫化した。8~12週齢ラットを、第一注射剤のためのフロイント完全アジュバント(Sigma-Aldrich、Cat.F5881)、次いで、残りの注射剤のためのフロイント不完全アジュバント(Sigma-Aldrich、Cat.F5506)で乳化された組換えTIGITタンパク質により隔週に6回免疫化した。血清免疫応答を、免疫原性に対するELISAによりモニターした。手短に、96ウェル透明平底プレート(Thermo Scientific、Cat.439454)を、4℃において一夜、ヒトTIGITタンパク質(Sino Biological Inc、Cat.10917-H08H)で被覆した。 プレートを、PBS/0.05%ツイーン20で洗浄し、室温において2時間、3%BSA(Sigma、Cat.A3912-100G)と共にインキュベートした。段階希釈された血清サンプルを、プレートに添加し、室温において1時間インキュベートした。次いで、プレートを、1時間、1:5000希釈西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ラットIgG Fcフラグメント(Jackson ImmunoResearch、Cat.112-036-071)と共にインキュベートした。100μlのテトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB)基質(BioFx、Cat.TMBW-1000-01)で発色し、50μlの2N硫酸(Sigma Aldrich、Cat.320501-500)の添加で停止した。450nmにおける吸光度を、SpectraMax M5(Molecular Devices)を用いて読んだ。
【0197】
抗血清免疫応答を有する免疫化ラットからの血液及び/又は脾臓及び/又はリンパ節から回収されたリンパ球から単一B細胞選別を行った。手短に言えば、4℃において1時間、5分間、抗ラットCD32(クローンD34-485、BD Biosciences)、次いで、ヒトTIGITタンパク質(R&D、cat.#7898-TG)と共に細胞をインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、4℃において30分間、FITC結合マウス抗ラットIgM(クローンMRM-47、Biolegend)、PE-Cy7結合マウス抗ラットCD45R(クローンHIS 24、eBioscience)、及びAPC結合マウス抗His(クローンAD1.1.10R、R&D)抗体の混合物と共にインキュベートした。BD FACS AriaIIIフローサイトメトリーで4μlの溶解バッファ(0.1M DTT、40U/ml Rnase阻害剤、Invitrogen、Cat#10777-019)を含有する96ウェルプレートの各ウェルに単一TIGIT+B細胞を分けた。プレートをマイクロシール「F」フィルム(BioRad)でシールし、-80℃で貯蔵する前に直ぐにドライアイスで凍結した。
【0198】
単一選別B細胞からのIg V遺伝子クローニングを、Tiller et al.,2008,J Imm Methods 329から修正されたプロトコールで行った。要するに、単一選別B細胞由来全RNAを、製造者プロトコールに従って150ngランダムヘキサマープライマー(pd(N)6、Applied Biosystems、P/N N808-0127)及び50U Superscript III逆転写酵素(Invitrogen、Cat#18080-044)の最終量/濃度を用いてヌクレアーゼフリー水(Invitrogen、Cat#AM9935)を含むオリジナル96ウェル選別プレート中14μl/ウェルの最終体積において逆転写した。プライマー(リストなし)を既出版物(Wardemann et al,Science 2003 301:1374-1377)に基づいて改変し、及び/又はIMGT(登録商標)、国際免疫遺伝学情報システム(http://www.imgt.org;(Lefranc et al.,2009) and NCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)データベースからの公開Ig遺伝子セグメントヌクレオチド配列の調査により設計した。 ヒトIgh、Igk及びIgl V遺伝子転写を、テンプレートとして3.5μlのcDNAから出発し、ネステッド(Igh、Igk及びIgl)PCRの2ラウンドによって独立して増幅した。製造者プロトコールに従ってAccuPrime Taq DNAポリメラーゼ高忠実度キット(Invitrogen、Cat#.12346-094)を用いてウェル当たり40μlの全体積で96ウェルプレートにおいて全PCR反応を行った。PCRの第一ラウンドを95℃で2分間、次いで、94℃で30秒間、50℃で30秒間、72℃で40秒間の40サイクルで行い、72℃で5分間インキュベートした。
【0199】
ネステッドPCR第二ラウンドを、95℃で2分間、5μlの未精製第一ラウンドPCR生成物を用いて行い、次いで、94℃で30秒間、42℃で30秒間、72℃で45秒間の5サイクル、そして94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で45秒間の50サイクルで行い、72℃で5分間最終インキュベーションを行った。PCR生成物を、Ig発現及び機能スクリーニングのためにIgG発現ベクターにクローン化した。
【0200】
860TIGIT+B細胞の全部を、単一細胞蛍光活性細胞選別により単離した。免疫グロブリンVH及びVL領域を、個々の溶解B細胞から製造されたcDNAからPCR増幅した。対形成されたVH及びVL領域を、388B細胞ライセートから得て、発現、及び生化学的特徴付け、及びDNA配列決定のためにIgG発現ベクターにクローン化した。
【0201】
ヒット最適化候補を、CD155のTIGITとの結合を遮断する作用強度並びにヒトTIGIT及びカニクイザルTIGIT両方と結合する能力に基づいて選択した。TIGITとの結合を、最初ELISAにより決定し、TIGIT発現細胞との結合をFACSにより決定し、その後、Biacoreにより定量化した。83クローンをELISA並びにヒト及びカニクイザルTIGIT(Novoprotein cat.No.CP02)交差反応性細胞結合剤としてフローサイトメトリーにより確認した。これらのクローンの30は、TIGIT:CD155相互作用を遮断した。4つの候補、3963H03、3964A06、3965D08、及び3966C11(それぞれ、H03、A06、D08、及びC11と略す)は、所定のプロファイルとフィットし、最終的に3963H03を配列最適化に選択した。配列最適化の目的は、生殖系列残基により可変領域フレームワーク中の非生殖系列残基を置換すること、及び翻訳後修飾する潜在的傾向がある配列モチーフを除去することにより製造可能性を改良することである。
【0202】
3963H03の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は次のものである:
重鎖:
EIQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号22)
軽鎖:
AIRLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号23)
【0203】
酵母は、AFM及び配列最適化を示す。
3963H03重鎖及び軽鎖CDR3領域を、倹約変異誘発(parsimonious mutatagenesis)に付し、親和性成熟多様体を得るために酵母ディスプレイライブラリーを構築するために使用した。2つのライブラリー:(1)親重鎖と対形成された変異L3-CDR軽鎖ライブラリー、及び(2)親軽鎖と対形成された変異誘発されたH3-CDR重鎖ライブラリーを最初に構築した。L3-CDR及びH3-CDRライブラリーを、FACSにより2回個別にスクリーニングして、親3963H03を発現する酵母クローンより高いシグナルを有するトップ5~10%結合剤について選択した。変異誘発された軽鎖及び重鎖を、選択から得られたプールから単離し、酵母に形質転換して複雑さの少ない新ライブラリーを作成した。これらから、交配ライブラリーを作成し、FACSにより3回以下スクリーニングしてトップ1~0.1%高親和性結合剤を単離した。より高親和性を有する選択及び検証されたクローンを、BIACORE(商標)親和性分析による更なる検証のために哺乳類発現ベクターにサブクローン化した。2つの候補、7729G05及び7728B03は、ピコモルKD範囲でヒト及びカニクイザルTIGITに対する親和性を実証し、更なる試験のために選択した。
【0204】
3963H03の可変領域配列の評価は、軽鎖可変領域フレームワーク中の2つの非生殖系列アミノ酸残基及び重鎖可変領域フレームワーク中の2つの非生殖系列アミノ酸を同定した。加えて、徐々に酸化する可能性があり得る重鎖フレームワーク4内のメチオニン残基を同定し、脱アミド化モチーフを軽鎖CDR3中で同定した。これらの分析に基づき、一連の配列設計を作製し、可能性ある問題のアミノ酸を、その一における生殖系列関連アミノ酸、又は、生殖系列メチオニンの場合、生物物理学的に保存性ロイシン置換のいずれかにより置換した。 アミノ酸置換を、表1に示す。
【0205】
【表1】
【0206】
VH1.03(E1Q、I2V、M117L、連続ナンバリング)及びVL1.02(A1D、R3Q、N92S、連続ナンバリング)からなるH03-12と名付けられた配列最適化多様体を、結合及び機能アッセイにおいて、最も好ましい置換、CHO細胞内の優れた産生能、及び親分子と同等、又はより優れた活性を有することに基づいてリード候補として選択した。
【0207】
1.1 NGS及びSPRによる多様体同定
3963H03関連B細胞配列を、次世代シーケンシング(NGS)技術により展開した。手短に、3963H03をクローン化するために使用される同じリンパ節組織から、約5×10TIGIT特異的B細胞及び血漿細胞をバルク選別によりFACSを用いて集めた。全RNAを単離してNGSライブラリーを作成した。cDNA合成に従って、IGVH7-4及びIGKV1-9(3963H03ヒットと比較して)遺伝子特異的プライマーを、3963H03特異的IgH及びIgK B細胞V領域配列のRT-PCR単離のために使用し;これらを、IgG抗体のための発現ベクターにサブクローン化した。固有のCDR配列(表2)を含む3963H03に関連する73VH配列を、3963H03の親軽鎖と対形成し、Expi293F細胞内でIgGとして発現した。同様に、固有のCDR配列(表3)を含む3963H03に関連する20VK配列を、3963H03の親重鎖と対形成し、Expi293F細胞内でIgGとして発現した。3963H03親だけでなく、これらの93IgGのための培養上澄みを集め、1:10希釈し、ヒトTIGITとの結合の動態オフ速度を、以下のようにGE Healthcare Biacore 4000装置を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。ヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories #109-005-098)を、先ず、製造者により記載されている手順に従って遊離アミノ基と直接カップリングを用いてBIAcoreカルボキシメチル化デキストランCM5チップ上に固定化した。次いで、抗体をCM5バイオセンサーチップ上で捕獲した。HBS-EP+泳動用バッファを用いて結合測定を行った。100nM~10nMの開始濃度を有するHisタグヒトTIGITの2倍希釈系列を、25℃において30μl/分の流量で注入した。解離速度(koff、秒-1)を、単純1:1ラングミュア結合モデル(Biacore Evaluationソフトウェア)を用いて算出した。測定されたkoffを表2及び表3に示し、新規多様体の中でより遅い及びより速いkoffの両方を明らかにする。
【0208】
1.2 重鎖及び軽鎖の組加法性による高親和性多様体同定。
本発明者らは、koffゲイン又はロスは、式1に数学的に示されているように組加法性であろうと仮定した。
【0209】
【数1】
【0210】
式1を用いて、表2及び3の抗体のオフ速度を使用して他の多様体軽鎖又は重鎖と対形成された多様体重鎖又は軽鎖の活性を予測した。15NGS同定多様体対は、改良された結合親和性を有すると予測した。これらの15は発現され、動態オフ速度はSPRを特徴とする。これらのうち3つは3963H03の1.5倍以内であったが、12多様体は予測通り3963H03と比較して2~4.7倍の改良された親和性を有した(表4)。全体として、前のものと一緒にこのストラテジーは、ライブラリーを作成するためのプローブとして配列をしようした初期ヒット3963H03と比較して改良されたオフ速度を有する多くを含む活性の範囲を有する多様体の同定を可能とした。
【0211】
【表2-1】
【表2-2】
【0212】
【表3】
【0213】
【表4】
【0214】
2.製造及び精製
2.1 バイオプロダクション、清澄及び精製
開示されている抗体H03-12を、CHO-KISV細胞から産生した。
【0215】
3963H03-12重鎖:
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号18)。
【0216】
3963H03-12軽鎖:
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLSSYPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号19)。
【0217】
37℃においてグルコースを添加した専売CHO流加成長培地中で細胞を成長させた。播種3日、5日、7日及び10日後に専売供給成分の混合物を培養液に供給した。
【0218】
バイオリアクター試験からの粗条件培地を、2.2m2Millistak+Pod D0HC(Millipore MD0HC10FS1)及び1.1m2Millistak+Pod X0HC(Millipore#MX0HC01FS1)フィルターを用いて清澄化し、次いで、Millipore Opticap XL3 0.5/0.2μmフィルター(Millipore#KHGES03HH3)で最後にろ過した。
【0219】
それから、抗体を、標準方法を用いて精製し、0.05%ツイーン20と共に10mMヒスチジン、5mMメチオニン、8%トレハロース、pH5.5中に製剤した。
【0220】
抗体をリン酸バッファ中に貯蔵し、等張剤としてNaClを用いてpH調整することができる。
【0221】
3.生化学及び生物学的特徴
3.1 Biacore結合親和性及び特異性
ヒトTIGIT及びカニクイザルTIGITに対する抗TIGITヒット候補抗体の結合親和性を、次のように、GE Healthcare Biacore 4000装置及びGE Healthcare Biacore T200装置を用いて表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。ヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories #109-005-098)を、先ず、製造者により記載されている手順に従って遊離アミノ基と直接カップリングを用いてBIAcoreカルボキシメチル化デキストランCM5チップ上に固定化した。それから、抗体をCM5バイオセンサーチップで補角して約200応答単位(RU)を得た。HBS-EP+泳動用バッファを用いて結合測定を行った。100nM~10nMの開始濃度のHisタグヒト及びカニクイザル(cyno)TIGITタンパク質を含む2倍希釈系列を、25℃において30μl/分の流量で注入した。会合速度(kon、M-1-1)及び解離速度(koff、秒-1)を、単純1:1ラングミュア結合モデル(Biacore Evaluationソフトウェア)を用いて算出した。平衡解離常数(KD、M)を、koff/konの比として算出した。ヒトTIGITとの結合の候補3963H03、3963H03-12、3964A06、3965D08、及び3966C11の親和性は、2.5~10nMの範囲であり、cyno TIGITとの結合の親和性は、0.8~8.7nMの範囲にあった(表5)。
【0222】
【表5】
【0223】
表6aは、本明細書に記載されている候補抗体のCDR配列を示す。
【表6-1】
【0224】
表6bは、抗体H03-12と比較したフレームワーク領域配列における偏差を示す。定常領域だけでなく全ての他のフレームワーク領域アミノ酸は、H03-12のものと一致する。
【表6-2】
【0225】
完全可変領域配列を以下に提供する:
A06-VH
EVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTAYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVYDYAFDIWGQGTMVTVSS(配列番号24)
A06-VL
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPTFGGGTKVEIK(配列番号25)
C11-VH
EIQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTNAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYGGYDYAFDIWGQGTMVTVSS(配列番号:26)
C11-VL
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPTFGGGTKLEIK(配列番号:27)
H03-VH
EIQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGYSVDEYAFDVWGQGTMVTVSS(配列番号28)
H03-VL
AIRLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPTFGGGTKVEIK(配列番号29)
D08-VH
EVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARTGYSGSYYWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号30)
D08-VL
DIRLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKFLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYLTFGQGTRLEIK(配列番号31)
B03-VH
QMQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARTGGYSVDEYSFDIWGQGTTVTVSS(配列番号32)
B03-VL
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCHQTIFRPTFGGGTKVEIK(配列番号33)
G05-VH
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTSYPMNWVRQAPGQGLEWMGWINTNTGNPTYAQGFTGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARVGGFTVPEYAFDIWGQGTTVTVSS(配列番号34)
G05-VL
DIRLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCGQVMRYPAFGGGTKVEIK(配列番号35)
【0226】
3.2 感度
3963H03、3964A06、3965D08、3966C11及び誘導体は、ELISA EC50アッセイにおいて関連ファミリーメンバータンパク質CD226又は関連しないタンパク質PD-L1との検出可能な結合を有しなかった。
【0227】
選択性のより総合的な評価のため、専売固定細胞マイクロアレイ技術を、Retrogenix Ltd.(High Peak、英国)により使用して、大部分が細胞表面膜タンパク質からなる5647ヒトタンパク質のライブラリーとのオフターゲット結合のために多様体3963H03-12をスクリーニングした。ライブラリーは、CD226、CD96、PVR、及びネクチン1~4などのTIGITと関連する最も公知の免疫グロブリンスーパーファミリー受容体を含んでいた。4フェーズ:(1)スクリーニングのためバックグラウンドレベル及び最適試験抗体濃度を決定するためのプレスクリーニング、(2)5647タンパク質を発現する固定HEK293細胞と結合する3963H03-12のための一次スクリーニング、(3)HEK293細胞内で推定ヒットを再発現することにより行われる確認/特異性スクリーニング、並びに(4)HEK293生細胞内での特定のヒットの再発現及び3963H03-12とアイソタイプコントロールの両方との結合のフローサイトメトリーによる分析による更なる検証、で試験を行った。
【0228】
11結合剤を、非常に弱い~強い範囲の強度で一次スクリーニングにおいて同定した。全11を、確認/特異性二次スクリーニングにおいて結合剤として確認した。強い結合剤は、3963H03-12標的タンパク質TIGITを含んでいた。11の主結合剤のうちの6つもコントロール抗体の1つと結合し、非特異的結合剤として分類した。これらは、一次抗体Fc又は二次抗体のいずれかと直接的に結合するFcγ受容体を含んでいた。1つの結合剤は非常に弱く、有意と見做すにはあまりにもバックグラウンドに近すぎ、4つの最終結合剤:TIGIT(Genbank受託NM_173799.3)、TMEM25アイソフォーム1(Genbank受託NM_032780.3)、HAVCR2(Genbank受託BC063431.1)、及びサイクリンG会合キナーゼ(GAK Genbank受託BC008668)を委託した。GAKは、HEK293生細胞内で発現された場合3963H03-12と結合しない細胞内タンパク質であり、したがって無効化した。TMEM25アイソフォーム1及びHAVCR2は膜貫通タンパク質であり、固定細胞スクリーニングにおいて3963H03-12に対する弱い結合剤としてスコア化し、その後、ベクターのみをトランスフェクトしたHEK293細胞との3963H03-12結合より4.3倍及び3.0倍高い蛍光メジアンを有するトランスフェクトされた生細胞に対する低レベル相互作用を有することが分かった。アイソタイプコントロール抗体は、ベクターのみをトランスフェクトしたHEK293細胞とのアイソタイプコントロール結合より1.4倍及び1.9倍高い蛍光メジアンを有する3963H03-12より僅かに低いTMEM25アイソフォーム1及びHAVCR2トランスフェクトHEK293細胞との結合を有し、これは、細胞内タンパク質GAKでトランスフェクトされた細胞との結合と同様であった。 対照的に、3963H03-12は、ベクターのみをトランスフェクトしたHEK293細胞と比較して、TIGITトランスフェクトHEK293細胞との結合に関して130倍より高い蛍光メジアンを示した。
まとめると、これらの結果は、3963H03-12がTIGITと選択的に結合することを示す。
【0229】
3.3 ELISAベースTIGIT:CD155競合アッセイ
抗TIGIT抗体及びコントロール抗体が、ビオチン化ヒトTIGIT-FcキメラのヒトCD155-Fcキメラとの結合と競合する能力は、競合ELISAにより決定した。図1は、試験抗体についての代表的競合曲線を示す。結果は、抗TIGIT抗体3963H03、3964A06、3965D08、3966C11が、0.8~1.2nMのIC50を有するTIGIT及びCD155の相互作用を効果的に遮断することを示した。
【0230】
次のアッセイプロトコールを使用した:
1.96ウェルプレートを、50μ/ウェルにおいて2.5μg/ml rhCD155-Fc(Sino Biologicals;Cat#10109H02H)で被覆し、4℃で一夜インキュベートした。
2.PBS、0.05%ツイーン、200μl/ウェルで3回よく洗浄。
3.室温において1時間、200μlのPBS中の1%BSAを用いてよく遮断。
4.PBS、0.05%ツイーン、200μl/ウェルで3回よく洗浄。
5.1:3希釈系列(166.7~0.08nM)において75μlの1mg/mlヒトTIGIT-Fc-ビオチン(EMD-Seronoにおいてビオチン化したR&D Systems cat.No.7898-TG)を75μlの試験又はコントロール抗体と混合し、二重反復ウェルに各々50μlを添加。室温において2時間インキュベート。
6.PBS、0.05%ツイーン、200μl/ウェルで3回よく洗浄。
7.検出のため、ストレプトアビジン-HRP複合体(Millipore;Cat#18-152)を、1:200希釈、100μl/ウェルで添加し;室温において30分間インキュベート。
8.PBS、0.05%ツイーン、200μl/ウェルで3回よく洗浄。
9.1-Step(商標)Ultra TMB-ELISA基質溶液(ThermoFisher Scientific Cat#34028)、100μl/ウェルを添加し、室温において1~2分間インキュベート。
10.各ウェルに100μlの2N硫酸を添加。
11.ELISAプレートリーダーで450nm及び630nmにおいてODを測定。
【0231】
3.4 構造及び機能TIGITエピトープマッピング
a)本発明のFabフラグメントとのTIGITの共結晶化
ヒトTIGIT ECD及び本発明の抗体の様々なFabフラグメントの複合体の結晶構造を決定して、ヒトTIGIT及び抗体可変領域間の相互作用するアミノ酸を同定した。ヒトTIGITを大腸菌(E.coli)封入体中で発現し、リフォールディングし、親和性及びサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。FabフラグメントをExpi293F細胞内においてHisタグと共に発現し、標準方法に従って親和性クロマトグラフィーにより精製した。TIGIT及び各Fabフラグメントの1:1複合体を形成し、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製し、95%を超える純度を有する同一タンパク質複合体を得た。複合体を含む溶液を濃縮し、高スループット蒸気拡散結晶化スクリーニングの標準技術を適用した。
【0232】
ヒトTIGITとの複合体における3963H03Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.75μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、24.57mg/mL)を0.5μlリザーバー溶液(0.2Mクエン酸アンモニウム、pH7.0、20%PEG3350)及び0.25μlシードストックと混合することによって成長させた。ヒトTIGITとの複合体における3963H03-12Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.5μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、20.26mg/mL)を0.3μlリザーバー溶液(0.15Mクエン酸ナトリウム、0.1M ビスTris 8.5、22%PEG3350)及び0.2μlシードストックと混合することによって成長させた。ヒトTIGITとの複合体における3964A06Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.75μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、18.66mg/mL)を0.5μlリザーバー溶液(0.2Mギ酸ナトリウム、20%PEG3350)及び0.25μlシードストックと混合することによって成長させた。ヒトTIGITとの複合体における3966C11Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.5μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、27mg/mL)を0.5μlリザーバー溶液(16%PEG4000、5%~10%イソプロパノール、0.1Mヘペス pH7.5)と混合することによって成長させた。ヒトTIGITとの複合体における7728B03Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.75μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、22.35mg/mL)を0.5μlリザーバー溶液(25%PEG3350、0.1M Tris pH8.5)及び0.25μlシードストックと混合することによって成長させた。ヒトTIGITとの複合体における7729G05Fabの結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて20℃において、0.3μlタンパク質溶液(50mM Tris-HCl pH7.5、200mM NaCl、21mg/mL)を0.2μlリザーバー溶液(0.1Mリン酸/クエン酸、40%(体積/体積)エタノール、5%(重量/体積)PEG1000)及び0.1μlシードストックと混合することによって成長させた。
【0233】
結晶を100Kの温度において急速凍結し、測定した。X線回折データを、極低温状態を用いてSWISS LIGHT SOURCE(SLS、スイス国フィリゲン)又はDeutsches Elektronen-Synchrotron(独国ハンブルク)において集めた。プログラムXDSを用いてデータ処理した。
【0234】
サーチモデルとしてヒトTIGITの構造(PDB ID:3UCR)及びFab(組織内構造)を用いてPhaser、バージョン2.5.7(McCoy,A.J.et al.J.Appl.Cryst.(2007).40,658-674)を用いて分子置換により、複合体を構造解析した。Buster、バージョン2.11.6を用いて構造の精密化を行った(Bricogne,G.et al.Buster version 2.11.6(2016)Cambridge,United Kingdom:Global Phasing Ltd.)。最終タンパク質モデルを含む全モデルを、COOTバージョン0.8.1を用いて構築した(Emsley,P.& Cowtan,K.(2004).Acta Cryst.D60,2126-2132)。データ収集、データ処理、構造精密化及び構造品質に関する全関連データを、表7及び表8に見ることができる。
【0235】
【表7-1】
【表7-2】
【0236】
1 SWISS LIGHT SOURCE (SLS、スイス国フィリゲン)
2 括弧内の値は最高分解能を表す

【数2】
式中、Ih,iはhのi番目の測定の強度値である

【数3】
式中、Ih,iはhのi番目の測定の強度値である
5 独立反射で算出
【0237】
1 SWISS LIGHT SOURCE (SLS、スイス国フィリゲン)
2 Deutsches Elektronen-Synchrotron (ドイツ国、ハンブルグ)
3 括弧内の値は最高分解能を表す

【数4】
式中、Ih,iはhのi番目の測定の強度値である

【数5】
式中、Ih,iはhのi番目の測定の強度値である
6 独立反射で算出
【0238】
6つを鏡映独立に算出した。
【0239】
【表8-1】
【0240】
【表8-2】
【0241】
1 sigma cut-offを用いないでREFMAC5により定義される値
2 テストセットは5%の測定された反射を含む
3 回折成分精度指数(DPI)をCRUICKSHANK,D.W.J.(1999)ACTA CRYST D55,583-601のσ(x,Bavg)=1.0(N/nobs1/2-1/3freeminに従って算出する
4 幾何学的目標値からの平均二乗偏差
5 MOLPROBITYを用いて算出
【0242】
1 sigma cut-offを用いないでREFMAC5により定義される値
2 テストセットは5%の測定された反射を含む
3 回折成分精度指数(DPI)をCRUICKSHANK,D.W.J.(1999)ACTA CRYST D55,583-601のσ(x,Bavg)=1.0(N/nobs1/2-1/3freeminに従って算出する
4 幾何学的目標値からの平均二乗偏差
5 MOLPROBITYを用いて算出
【0243】
TIGIT ECDとの複合体における抗TIGIT抗体3963H03、3963H03-12、3966C11、3964A06、7729G05及び7728B03のFabフォーマットの構造を、それぞれ、2.41、2.87、1.73、1.6、1.9、及び1.35Åの解像度で解析した。
【0244】
複合体は、抗原及び抗体可変領域の非水素原子上の0.79Åの平均RMSDで、図2に示されているように、ほとんど同じフォールディングを有する。構造は、各FabがPVR結合を立体的に妨害するだろうTIGIT上の領域と結合することを示す。事実、図3は、PVR及びFabの著しい重なりを示す入手可能なTIGIT:PVR共結晶構造(プロテインデータバンクエントリー3UDW)を有するTIGIT:3963H03-12共結晶構造の重なりを示す。
【0245】
抗TIGIT FabとのヒトTIGIT ECD複合体の結晶構造を使用して、TIGITに対する高TIGIT Fabのエピトープを同定した。接触残基は、Fabの非水素原子の3.8Å以内にある非水素原子を有するTIGITの残基と定義される。BioPythonパッケージを用いて最終結晶学的座標から距離を測定した。各結晶構造の非対称単位の全複合体に存在する接触を表9に報告する。FabによるTIGITに対する相互作用面を、いくつかの連続及び非連続(すなわち、非隣接)配列:すなわち表9に詳しく記載されているように残基Met23、Thr51、Ala52、Gln53、Thr55、Gln56、Asn70、Ala71、Asp72、His111、Thr112、Tyr113、Pro114、Asp115、Gly116、又はThr117により形成した。これらの残基は、本発明に記載されている抗TIGIT Fabにより認識される例示的三次元立体構造エピトープを形成する。
【0246】
【表9-1】
【表9-2】
b)変異誘発
TIGIT ECD上の接触残基に関する抗TIGIT抗体結合エネルギーへの寄与を、選択された残基のアラニンへの変異により評価した。親残基がアラニン又はプロリンである場合の位置を、グリシンにより置換した。変異による結合エネルギー損失は、結合に対する親残基の重要性を示す。全体として、アラニン又はグリシンへの点変異を有する11ヒトTIGIT多様体を設計した。変異体を大腸菌(E.coli)において発現させ、親和性及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。抗体3963H03-12との結合動態を、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて特徴付けした。大部分結合エネルギーに寄与する結合ホットスポット、又は残基(Wells.J.A.,PNAS 93,1-6,1996)を、100nM抗原における閾結合シグナルを満足しないものと同定した。さらに、野生型及び各変異体に対する抗体の親和性を決定し、結合エネルギーに対する各エピトープ残基の寄与を算出するために使用した。
【0247】
スティックで示され、親和性変化に応じて陰影をつけられた変異誘発された残基を有するTIGIT ECD構造の図を図4に示す。加えて、結果を下表10に要約し、TIGITの11点変異体を抗体結合について野生型TIGIT抗原と比較した。SPR(Biacore)を使用して動態速度定数(k及びk)の決定を可能とする動態試験を行った。手短に、ヤギポリクローナル抗ヒトFc抗体を、CM5チップと化学的に結合した。次に、3963H03-12抗体を注入し、ポリクローナル抗体により捕獲した。バッファを使用して、ベースラインRUが安定するまで結合していない抗体を洗い流した。次に、抗原(野生型又は変異ヒトTIGIT ECD)を固定濃度において3時間注入し、会合を報告した。バッファを更に3分間注入し、解離を観察した。抗原を、100nM、50nM、25nM、12.5nM及び6.25nMの濃度で注入した。各サイクル間で、チップを低pHバッファで再生し、次の濃度の抗原を注入する前に新鮮な3963H03-12を捕獲した。速度定数を、カイ二乗を最小にするアルゴリズムにより1:1結合モデルにデータを反復フィッティングすることによって決定した。平衡解離定数(K)を、速度定数の比として算出し、野生型TIGIT(ΔΔGmut)と比較した変異体の結合のギブズ自由エネルギー変化を野生型K及び変異体Kの比から誘導した。自由エネルギーを抗体-抗原結合の不安定化に応じて強調している;「**」:>3kcal/mol(12.6kJ/mol)不安定化(結合ホットスポット);「*」:>0.7kcal/mol(2.9kJ/mol)。この分析によれば、「**」又は「*」でマークされたアミノ酸は、機能的エピトープの部分である。NBは結合がないことを意味する。蛍光モニターされる熱変性の温度中間点を、野生型タンパク質及び変異体タンパク質について得た。野生型TIGIT及び全てのその変異体は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で単分散を示す。Kに関して、n>1の場合、平均及び標準偏差を得た。
【0248】
【表10】
【0249】
Q53A、T55A、Y113A及びP114G点変異体の3963H03-12との結合の欠如は、実際にホットスポット残基の欠失が原因であり、抗原の全体的なアンフォールディングが原因ではないと確認することは重要であった。変異タンパク質の構造的完全性を、水溶液中クエンチされる染料と共にタンパク質をインキュベートするが、露出した疎水性残基により結合された場合に蛍光を発する、蛍光モニター熱アンフォールディングアッセイを用いて確認した。温度が上昇するとき、タンパク質の熱変性は疎水性コア残基を露出させ、これは、染料の蛍光増大によりモニターすることができる。データを式2(Bullock,A.N.et al.Thermodynamic stability of wild-type and mutant p53 core domain.PNAS 94,14338-14342(1997))にフィットして曲線の屈曲点における温度(T1/2)を決定した。
【0250】
【数6】
【0251】
Q53A、T55A、Y113A及びP114Gの変異体は、蛍光モニターされたアンフォールディングのT1/2における小さい低下により示された抗原の最小の不安定化を示した(表10)。これは、Q53、T55、Y113及びP114が3963H03-12の真の結合ホットスポットであることを確証させる。他の変異体タンパク質の大部分の構造的完全性も、この方法によって確証した(表10)。サイズ排除クロマトグラフィー分析で野生型と同様な挙動のほとんどの変異体タンパク質は、変異体抗原タンパク質の天然構造のための更なる指示を提供する。
【0252】
3.5 直接FACS結合アッセイにより測定されるEC50
3963H03が細胞表面を標的とする用量依存性結合能を、フローサイトメトリーにより確認した。これは、4.7nMのEC50を有するCHO-S細胞表面上で発現されるヒトTIGIT ECD及び3.6nMのEC50を有するCHO-S細胞表面上で発現されるカニクイザルTIGIT ECDと効率的に結合する(表11及び図8)。アッセイは、抗TIGIT抗体の用量依存性結合特性を定性的に説明した。
【0253】
【表11】
【0254】
3.6 TIGITジャーカットレポーターアッセイ
その配列最適化多様体、3963H03-12に加えて3963H03を、製造者により提供されたプロトコールを用いて細胞ベースTIGIT/CD155遮断バイオアッセイ(Promega Cat.No.CS198801)で試験した。アッセイは、IL2プロモーターにより誘導されたルシフェラーゼレポーター遺伝子を有し、ヒトCD155を発現するCHO-K1細胞と共培養された組換えヒトTIGITを発現するヒトジャーカット細胞、及びT細胞活性化受容体からなる。IgG1及びκ定常領域でフォーマットされたB細胞クローニングヒット3963H03及びその配列最適化多様体3963H03-12は、6.3~12.5μg/mlの範囲の同様なEC50を有した(図8及び表12)。
【0255】
【表12】
【0256】
3.7 抗体依存性細胞傷害(ADCC)
抗TIGIT 3963H03及びその配列最適化多様体3963H03-12のADCC活性を、標準的クロム遊離アッセイを用いて、ヘテロ接合FcγRIIIa 158V/158Fアロタイプで安定にトランスフェクトしたCHO-S-hTIGIT標的細胞及びドナーエフェクター細胞を使用して試験した。手短に、CHO-S-hTIGIT細胞を先ず45分間51Crで標識化し、次いで、33nMの開始濃度において抗TIGIT抗体の4倍希釈系列と共に37℃で15分間インキュベートした。エフェクター細胞を1:100の比で添加し、37℃で4時間インキュベートした。細胞をLumaplate96ウェルDryPlateに移し、一夜乾燥して、ガンマカウンターを用いて放射活性を測定した。((Count-Spont)/(100%Lysis-Spont))×100の比として溶解%を算出し、式中、SpontはCHO-S-hTIGIT細胞単独(抗体及びエフェクター細胞の非存在下)でカウントされた放射活性であり、100%溶解はCHO-S-hTIGIT細胞を界面活性剤で溶解することによって算出された。示されている実施例のアッセイを、アロタイプV/Fを有する3ドナーからのエフェクター細胞で行った。この実施例アッセイで試験された両方の抗体は、CHO-S-hTIGIT標的細胞のADCCを誘発し、EC50は0.026~0.1nMの範囲であり(表13)、最大細胞溶解は約20~30%と同様なパーセントであった(図9)。
【0257】
【表13】
【0258】
3.8.補体依存性細胞傷害(CDC)活性
CDCアッセイのため、CHO-S-ヒトTIGIT ECD細胞を先ず45分間51Crで標識化し、次いで、20,000ng/mlの開始濃度において抗TIGIT抗体の4倍希釈系列と共に37℃で15分間インキュベートした。あらかじめ、CDC機能のある正常ヒト血清補体を1:10希釈で添加し、37℃で2時間インキュベートした。細胞をLumaplate96ウェルカウンティングプレートに移し、一夜乾燥して、MicroBeta2カウンター(Perkin Elmer)を用いて放射活性を測定した。((Count-Spont)/(100%Lysis-Spont))×100の比として溶解%を算出し、式中、SpontはCHO-S-huTIGIT細胞単独(抗体及び補体の非存在下)でカウントされた放射活性であり、100%溶解は標識化されたCHO-S-ヒトTIGIT ECD細胞を界面活性剤で溶解することによって算出された。 図10は、CHO-S-ヒトTIGIT ECD標的細胞及び3963H03-12を用いてアッセイを行い、この抗体がCDC活性を媒介することができることを示していることを示す。
【0259】
3.9 T細胞活性化アッセイ
抗CD3抗体及び抗CD28抗体で治療する場合、ヒトPBMCのT細胞を活性化した。拮抗性抗TIGIT抗体の同時治療は、TIGIT抑制性シグナル伝達を遮断することができ、結果として、IFNγ産生により測定されるT細胞活性化を更に増強する可能性がある。ヒトPBMCを、抗TIGIT抗体又はヒトIgG1アイソタイプコントロール(20μg/ml)の存在下、0.5ng/ml抗CD3 OKT3及び20ng/ml抗CD28で48時間刺激した。培養液上澄み中のIFN-γを、ELISAにより測定した。4つの異なるドナー(1003、1579、1059、1558)からのPBMCを試験した。抗TIGIT抗体(A06、C11、D08、H03)は、図11に示されているようにIFN-γを増強した。抗TIGIT H03は、A06、C11及びD08より一貫してIFN-γ産生を増強することが分かった。
【0260】
3.10 CD8+ T細胞アンタゴニストアッセイ
CD155のTIGITとの結合は、CD8+ T細胞に抑制性シグナル伝達を引き起こし、拮抗性抗TIGIT抗体を用いた同時治療はTIGIT/CD155相互作用を遮断することもあり得、結果として、IFNγ産生により測定されるT細胞活性化を増強する。96ウェル細胞培養プレートを、抗CD3(OKT3、2μg/ml)及び組換えCD155-Fc(2μg/ml)で共に被覆した。新たに単離されたヒトCD8+ T細胞を添加し、10μg/ml可溶性抗TIGIT抗体又はヒトIgG1アイソタイプコントロールの存在下、4日間培養した。上澄み中のIFNγ産生を、ELISAにより測定した。 抗TIGIT 3963H03は、CD155媒介T細胞抑制を回復し、結果として、図12に示されているようにIFNγ産生を増加した。
【0261】
3.11 一次細胞結合アッセイ
3963H03-12のヒト及びカニクイザル初代T細胞上で発現されたTIGITとの結合能を、フローサイトメトリーにより決定した。ヒト又はcynoPBMCを、3963H03-12の段階希釈(1:3)と共にインキュベートし、抗TIGIT抗体のCD3+ T細胞との結合を、抗hIgG APC(1:1000)により検出した。BD-Caliburを用いてフローサイトメトリー分析を行った。CD3+ T細胞をゲーティングし、親集団の平均蛍光強度(MFI)及びAPC染色%を決定した。3963H03-12は、図13に示されているように、それぞれ、85.2±28.8ng/mL(0.6±0.2nM)及び132.2±29.2ng/mL(0.8±0.2nM)のEC50を含む用量依存性方法において初代ヒト及びカニクイザルT細胞と結合した。
【0262】
3.12 標的占有率(TO)アッセイ
抗TIGIT 3963H03-12のCD3+ T細胞に対する標的占有率を、ヒト全血及びカニクイザル脾臓細胞を用いてフローサイトメトリーにより測定した。抗TIGITの段階希釈を1時間ヒト又はカニクイザルサンプルと共にインキュベートし、CD3+ 初代T細胞上の非占有TIGITを、ビオチン化抗TIGIT(3963H03-12)を用いてフローサイトメトリーにより測定した。BD-Caliburを用いてフローサイトメトリー分析を行い、CD3+細胞でゲーティングし、以下のように分析した。標的占有率パーセンテージ(TO%)を、式、TO(%)=(1-(Dt-Ct)/(D0-C0))×100を用いて算出し、前記式中、Dt=TIGIT染色のパーセンテージ、Ct=抗TIGITの特定の濃度におけるアイソタイプコントロール染色のパーセンテージ、D0=TIGIT染色のパーセンテージ、及びC0=抗TIGITの非存在下におけるアイソタイプコントロールのパーセンテージである。3963H03-12は、ヒト(図14A)及びカニクイザル(図14B)T細胞両方に対する標的を効率的に飽和させることが分かった。9ヒトドナーからの平均EC50は、239.8±168.04ng/mL(1.6±1.1nM)であり、6cynoドナーからのEC50は、92.7±21.6ng/mL(0.6±0.1nM)であった。
【0263】
3.13 細胞ベースTIGIT/CD155及びTIGIT/CD112遮断アッセイ
抗TIGIT 3963H03-12が、TIGITとそのリガンドCD155及びCD112との相互作用を遮断する能力を評価するため、ヒトTIGITを安定に発現するCHO-S改変細胞(CHO-S-hTIGIT細胞株#4-60)を用いて遮断アッセイを行った。CHO-S-ヒトTIGIT細胞を、ビオチン化ヒトCD112-Fc又はヒトCD155-Fc(2μg/mL最終濃度)を添加する前に、3963H03-12の段階希釈(1:3)と共にインキュベートした。CD155/TIGIT又はCD112/TIGITの相互作用を、ストレプトアビジン-APC(1:1000)により検出した。3963H03-12は、TIGITとCD155(図15A)及びCD112(図15B)との相互作用を用量依存的に遮断し、IC50は、それぞれ、165.0±39.7ng/mL(1.1±0.3nM)及び410.6±315.5ng/mL(2.8±2.1nM)であった。
【0264】
3.14 細胞ベースTIGIT/CD226遮断アッセイ
細胞表面上で発現されるTIGIT受容体はCD226と相互作用し、CD226刺激性機能にとって重要であるCD226ホモ二量体を破壊する。3963H03-12での遮断は、CD226及びTIGIT相互作用を低下させ、CD226による補助刺激シグナル伝達増加をもたらす可能性がある。FRETアッセイを、TIGIT及びCD226間の相互作用並びにこの相互作用に対する3963H03-12の効果を測定するために設計した(図16A)。CHO細胞をリポフェクタミン3000(Invitrogen、L3000-015)を用いてCD226/SNAPタグプラスミドでトランスフェクトした後、250μg/mlのハイグロマイシンB(Invitrogen、10687010)を用いて安定に発現するCD226細胞を選択することによりCHO-CD226細胞を作製した。白色96ウェルプレート(Greiner Bio-One、655083)中に播種されたCHO-CD226細胞を、リポフェクタミン3000を用いて0.1μg/ウェルTIGIT/HAタグプラスミドでトランスフェクトし、24時間、10、1及び0.1μg/mlの濃度において3963H03-12又はアイソタイプコントロールAbと共にインキュベートした。その後、細胞をTag-lite標識培地(Cisbio、7SEC30K)で洗浄し、次いで、37℃で1時間5%CO2インキュベーターにおいて1μM SNAP-Redアクセプター(Cisbio、SSNPREDE)で染色した。次に、細胞を3回洗浄し、室温で2時間1.6nM抗HA-TBクリプテートドナー(Cisbio、610HATTA)と共にインキュベートした。Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer、Xcite Multilabel Reader)を用いて320nm及び60μ秒遅延において励起150μ秒後に665nm及び615nmにおいてFRETシグナルを記録した。(TIGITトランスフェクト細胞からの発光665nm/発光615nm)-(偽トランスフェクト細胞からの発光665nm/発光615nm)としてFRET強度を算出した。アイソタイプコントロールに正規化されたFRET%を、(抗TIGIT抗体で遮断されたTIGITトランスフェクトされたCho.CD226細胞のFRET強度)/(アイソタイプコントロールAbで遮断されたTIGITトランスフェクトされたCho.CD226細胞のFRET強度)×100として算出した。3963H03-12によるTIGIT及びCD226相互作用を測定するFRETシグナルの阻害の定量は、3963H03-12がTIGIT/CD226相互作用を遮断することを実証した(図16B)。
【0265】
3.15 同種間二元MLR(混合リンパ球反応)アッセイ
2つの関連のないドナーからのPBMCを用いた二元MLRアッセイでは、レスポンダー(エフェクターT)は、両ドナーにおけるレスポンダー細胞及び刺激細胞間の主要組織適合抗原(MHCクラスI及びII)差に応じて活性化及び増殖を行う。機能的アンタゴニストチェックポイント阻害剤(CPI)抗体を用いた同時治療は、IFNγ産生により測定されるT細胞活性化を更に増強する。2つの異なる比とドナーからのPBMCを1:1比で共培養し、2日間3963H03-12又はアイソタイプコントロールの段階希釈で治療した。免疫細胞活性化を、上澄み中のIFNγの測定により評価した。7つの異なるドナー対を用いた7アッセイからの結果を、1に設定された1ng/mLにおけるアイソタイプコントロールを超える倍数として合わせてプロットした。3963H03-12は、IFNγ産生を用量依存的に増強し、EC50は、158.9±185.0ng/mL(1.1±1.2nM)であった(図17)。
【0266】
3.16 同種間一元MLR(混合リンパ球反応)アッセイ
2つの関連のないドナーからの細胞を用いた一元MLRアッセイでは、レスポンダー(エフェクターT)細胞は、レスポンダー細胞及び刺激(標的)細胞間の主要組織適合抗原(MHCクラスI及びII)差に応じて活性化及び増殖を行う。機能的アンタゴニストチェックポイント阻害剤(CPI)抗体を用いた同時治療は、IFNγ産生により測定されるT細胞活性化を更に増強する。照射MDA-MB-231腫瘍細胞を、IL-2(R&D Systems、IL-010)を用いて7日間ヒトドナーからのPBMCと共培養し、同種間反応性T細胞増殖を誘発した。それから、これらの細胞(エフェクター細胞)を収穫し、新たに照射されたMDA-MB-231細胞(標的細胞)と共に2:1 E:T比において共培養し、抗TIGIT及び/又は抗PD-L1(アベルマブ)抗体と共に同時治療した。T細胞活性化を、上澄み中のIFN-γの測定により評価した。共培養細胞を、3963H03-12又はアイソタイプコントロールの段階希釈で治療した。2アッセイからの結果を、1に設定された1ng/mLにおけるアイソタイプコントロールを超える倍数として合わせてプロットした。3963H03-12は、同種抗原特異的T細胞活性化を用量依存的に増強し、EC50は、136.9±114.6ng/mL(0.9±0.8nM)であった(図18)。併用試験のため、共培養細胞を、10μg/mLのアイソタイプコントロール又はH03-12と組み合わせたアベルマブの段階希釈で治療した。H03-12とアベルマブとの併用は、IFNγ産生を更に増強した(図19B)。
【0267】
3.17 NK細胞キリングアッセイ
3963H03-12が、TIGIT/CD155相互作用の遮断によりNK媒介腫瘍細胞殺生を増強する能力を、ヒトCD155を発現するように改変されたP815細胞株を用いて実証した。NK細胞を、10μg/mLの3963H03-12又はIgG1アイソタイプコントロール抗体の存在下P815.hCD155細胞と共培養した。腫瘍細胞死を、4.5時間IncuCyteシステムを用いて緑色シグナル(カスパーゼ-3/7)の測定によりモニターした。殺細胞を、4項目、治療IgG1コントロール及び治療抗TIGIT抗体間の二元ANOVA比較のp値においてモニターした:p<0.00005(****)。3963H03-12は、アイソタイプコントロールと比較して2倍以下の腫瘍細胞死滅を増加した(図19A)。抗TIGIT、H03-12がNK媒介腫瘍細胞死滅を増強する能力を、GFPレポーターを発現する乳がんMDA-MB-231細胞株を用いて更に実証した。NK細胞を、10μg/mLの抗TIGIT H03-12又はIgG1コントロール抗体の存在下MDA-MB-231 GFP/Luc細胞と共培養した。腫瘍細胞死滅を、IncuCyteシステムを用いてGFPシグナルの測定によりモニターした。各時点におけるGFPシグナルを、0時点に正規化した。殺細胞を、4項目、IgG1コントロール及び抗TIGIT H03-12抗体間の二元ANOVA比較のp値においてモニターした:p<0.00005(****)、p<0.005(**)。抗TIGIT H03-12によるNK媒介腫瘍細胞死滅の有意な増加を、2.5~12.5時間検出した(図19B)。
【0268】
4.インビボ活性
4.1 マウスCD155(muCD155)及びマウスCD112(muCD112)のCHO-s-huTIGIT細胞との結合による3963H03-12及び3963H03-12-muIgG2cの遮断アッセイ
インビボでの3963H03-12の有効性を評価するため、マウス免疫グロブリンとの3963H03-12のバージョン(3963H03-12-muIgG2c)を開発した。
【0269】
3963H03-12-muIgG2c及び3963H03-12がTIGITとそのリガンドmuCD155及びmuCD112との相互作用を遮断する能力を、ヒトTIGITを安定に発現するCHO-S改変細胞(CHO-S-hTIGIT細胞株)を用いてフローサイトメトリーベースの結合アッセイで評価した。3963H03-12-muIgG2c及び3963H03-12とのプレインキュベーションは、muCD155-FcのCHO-hTIGIT細胞との結合減少をもたらしたが、アイソタイプコントロールとのプレインキュベーションではそうではなかった。3963H03-12-muIgG2c及び3963H03-12両方は、TIGITとmuCD155との相互作用を用量依存的に遮断し、それぞれ、IC50は、290.7ng/mL(1.994nM)及び499.3ng/mL(3.450nM)であった(図22)。3963H03-12-muIgG2c及び3963H03-12両方も、TIGITとmuCD112との相互作用を用量依存的に遮断し、それぞれ、IC50は、1189ng/mL(8.155nM)及び1678ng/mL(11.593nM)であった(図20)。
【0270】
4.2 MC38腫瘍を有するB-huTIGITノックインマウスにおける3963H03-12-muIgG2cの薬物動態評価
3963H03-12-muIgG2cのPKを、Biocytogenにより開発されたMC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスにおいて測定した。このモデルでは、マウスTIGITを、エクストリームゲノム編集(EGE)によりヒトTIGITにより置換した。 単一腹腔内投与後、3963H03-12-muIgG2cピーク血漿濃度を全投与群において24時間目に測定した。Cmax後、異なるPKプロファイルを3投与群において観察した。高用量群において遅い単相性消失が観察されたが、低用量群では速い単相性消失が観察された。中程度用量群においては二相性消失が観察され、168時間以下で濃度はゆっくり減少し、次いで、最後の定量化時点(336時間)以下で濃度は急速に減少した。PKプロファイルに従って、算出された終末相半減期は、低用量及び中程度用量群に対して同等であり、高用量群に対してより長い。AUC 0~∞は、0.25~25mg/kgで比例した用量より高く、AUC 0~∞比値は、1:10:100の実際の用量比に対して1.0:26.8:334であった。増加は、2.5~25mg/kgでおよそ比例した用量であり、AUC 0~∞比は、1:10の実際の用量比に対して1.0:15.0であった(図21)。
【0271】
4.3 B-huTIGITノックインマウスのMC38、GL261、Hepa1-6及び3LL腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性
3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性を、B-huTIGITノックインマウスにおいて評価した(C57BL/6/バックグラウンド)。雌B-huTIGITノックインマウス、10週齢は、Biocytogenにより供給された。結腸がん細胞株MC38、多形神経膠芽腫(GBM)細胞株GL261、肝細胞がん(HCC)細胞株Hepa1-6及び肺がん細胞株3LLを、右上側腹部において皮下に接種した。接種細胞量は、それぞれ、1×10、5×10、2×10及び5×10であった。
【0272】
3963H03-12-muIgG2c及びanti-HEL-muIgG2cを、腫瘍サイズが50~100mmに達した場合に腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスに腹腔内注射により0日目、7日目、14日目に25mg/kg投与した。腫瘍サイズを、ノギスを用いて三次元で毎週2回測定し、腫瘍体積を、式:幅×長さ×高さ×0.5236を用いてmmの単位で表した。TGI%は、式:TGI(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100と定義され、Tiは所与の日における治療群の平均腫瘍体積であり;T0は治療初日における治療群の平均腫瘍体積であり、ViはTiと同日における媒体コントロール群の平均腫瘍体積であり;V0は治療初日における媒体群の平均腫瘍体積である。二元ANOVAを、有意性分析のために行った。
【0273】
結果を図22に示す。 抗HELアイソタイプコントロール(ニワトリ卵白リゾチームと結合)と比較して、3963H03-12-muIgG2cのTGIは、MC38結腸がんにおいて63.5%であり(p<0.0001)、GL261 GBMにおいて85.3%であり(p<0.0001)、Hepa1-6肝がんにおいて85.7%であり(p<0.0001)、3LL肺がんにおいて41.5%である(p=0.0034)。まとめると、これらのデータは、3963H03-12-muIgG2cが複数の腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を示し、広範な適応症における抗腫瘍効果を示していることを示唆する。
【0274】
4.4 B-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2cの用量依存性抗腫瘍活性
B-huTIGITノックインマウスを使用して3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性を評価した。最良の治療投与量を最適化するため、3963H03-12-muIgG2cを、MC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスに腹内注射により0日目、7日目、14日目に25、5、1、又は0.2mg/kg投与した。腫瘍接種及び腫瘍サイズ測定の方法は、セクション4.3に記載されているのと同じであった。
【0275】
抗HELアイソタイプコントロールと比較して、25mg/kg、5mg/kg、及び1mg/kgの3963H03-12-muIgG2cは、有意な腫瘍増殖抑制(30日目、3群の各々について、それぞれ、TGI=63.5%、41%、及び42.3%、並びにP<0.0001)を誘発し、アイソタイプコントロール(31.5日)と比較して生存期間メジアン(それぞれ、42日、37日、及び38.5日)を延長した。逆に、0.2mg/kgの3963H03-12-muIgG2cは、アイソタイプコントロールと比較して有意な腫瘍増殖抑制(TGI=17.6%、P>0.05、30日目)を示さなかった(図23)。
【0276】
5mg/kgの3963H03-12-muIgG2cで治療されたマウス及び1mg/kgで治療されたマウス間の腫瘍体積の有意差はなかった(P>0.05、30日目)が、3963H03-12-muIgG2cの0.2mg/kg用量と比較して5mg/kg及び1mg/kg用量両方では腫瘍体積の有意な減少があった(それぞれ、P=0.0075及びP=0.0039、30日目)。5mg/kg又は1mg/kg用量のいずれかと比較して25mg/kgの3963H03-12-muIgG2cでも腫瘍体積の有意な減少があった(それぞれ、P=0.0118及びP=0.0211、30日目)。まとめると、これらのデータは、3963H03-12-muIgG2cがこの腫瘍モデルにおいて用量依存性抗腫瘍活性を有したことを示唆している。
【0277】
4.5 3963H03-12の抗腫瘍エフェクターに対する抗体Fc媒介エフェクター機能の寄与
3963H03-12-muIgG2c及び3963H03-12-muIgG1(D265A)の抗腫瘍活性を、B-huTIGITノックインマウスにおけるMC38及びHepa1-6腫瘍担持マウスで比較した。雌B-huTIGITノックインマウス、10週齢は、Biocytogenにより供給された。腫瘍発育するために、0.1mLのPBS中のMC38腫瘍細胞(1×10)又は0.1mLのPBS中のHepa1-6腫瘍細胞(5×10)を、各マウスの右側腹部の皮下(sc)に接種した。平均腫瘍体積が約50mmに達した場合、腫瘍体積に基づいて層別ランダム化を用いて治療群にマウスを割り当てた。各群は10匹のマウスであった。抗HELmuIgG2c(25mg/kg)若しくは3963H03-12-muIgG2c(25mg/kg)でマウスを治療するか又は3963H03-12-muIgG1(D265A)(25mg/kg)を0日目、7日目、14日目に腹腔内注射により与えた。腫瘍サイズ測定及びデータ解析プロトコールは、セクション4.3に記載しているのと同じであった。
【0278】
3963H03-12の抗腫瘍活性における抗体Fc媒介エフェクター機能の役割を評価するため、MC38及びHepa1-6腫瘍担持マウスを、エフェクター成分3963H03-12-muIgG2c又はエフェクターヌル3963H03-12-muIgG1(D265A)のいずれかで治療した。3963H03-12-muIgG1(D265A)の免疫エフェクター機能を消滅させてFcγR活性及びFc媒介毒性を低減した。3963H03-12-muIgG1(D265A)は、3963H03-12-muIgG2cの多くの機能的特徴を共有したが、これは、「エフェクターサイレント」であり、細胞傷害性エフェクター機能を誘発することができない。エフェクター成分3963H03-12-muIgG2c治療は、アイソタイプコントロールと比較して、MC38及びHepa1-6モデル(それぞれ、TGI=46.82%、P<0.0001、24日目;及びTGI=106.45%、P=0.0087、30日目)両方において有意な腫瘍阻害をもたらしたが、エフェクターヌル3963H03-12-muIgG1(D265A)(それぞれ、TGI=-4.88%及びTGI=-33.07%)の抗腫瘍活性は、アイソタイプコントロールと比較して、有意に少ないエフェクター能力(それぞれ、P<0.0001、24日目及びp=0.0002、30日目)であり、有意に増強するとは言えない(図24)。これらの結果は、Fc媒介免疫エフェクター機能は、3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性において重要な役割を果たすことを実証した。
【0279】
4.6.B-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブを用いた併用治療
アベルマブと併用した3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性も、MC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスにおいて評価した。抗HEL+抗PD-L1アイソタイプコントロールと比較して、3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブ単剤療法全ては、有意な腫瘍増殖阻害(それぞれ、TGI=75.3%、及び56.7%、アイソタイプコントロールと比較して各群についてp<0.0001、27日目)、及びアイソタイプコントロール(30日目)と比較して延長された生存期間メジアン(それぞれ、41及び40.5)を誘発した(図25)。腫瘍増殖阻害を、3963H03-12-muIgG2c(P=0.0028、27日目)及びアベルマブ(P<0.0001、27日目)単剤療法と比較して、3963H03-12-muIgG2cとアベルマブ(TGI=90.5%)との併用で更に増強した。3963H03-12-muIgG2cとアベルマブとの併用も、生存期間メジアン(55日)を延長した(図25)。
【0280】
4.6 B-huTIGITノックインマウスのMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びM7824を用いた併用治療
ビントラフスプアルファ(M7824)と併用した3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性も、MC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスにおいて評価した。抗HEL+不活性抗PD-L1アイソタイプコントロールと比較して、3963H03-12-muIgG2c及びM7824単剤療法全ては、有意な腫瘍増殖阻害(それぞれ、TGI=75.3%、及び63.3%、アイソタイプコントロールと比較して各群についてp<0.0001、27日目)、及びアイソタイプコントロール(30日目)と比較して延長された生存期間メジアン(それぞれ、41日及び42.5日)を誘発した(図26)。 腫瘍増殖阻害を、3963H03-12-muIgG2c(P=0.0011、27日目)及びM7824(P<0.0001、27日目)単剤療法と比較して、3963H03-12-muIgG2cとM7824(TGI=96.6%)との併用で更に増強した。3963H03-12-IgG2cとM7824との併用も、生存期間メジアン(55日)を延長した(図26)。
【0281】
4.7 再チェレンジ試験
それから、3963H03-12 muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法の少なくとも3ヶ月後の完全な腫瘍退縮を示したMC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスで再チェレンジ試験を行った。複数の試験(それぞれ、n=2、n=4)からの3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法後の「治癒」したマウスの初回注射の反対側にMC38腫瘍細胞を再チャレンジした。これらのマウスの中で少なくとも36日間腫瘍が発育したマウスはなかった(それぞれ、0/2又は0/4マウス、0%)が、MC38細胞を注射されたナイーブB-huTIGITノックインマウス(n=10)は全て腫瘍が発育した(10/10、100%)(図27参照)。これらの結果は、3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法が、B-huTIGITノックインマウスに腫瘍抗原特異的長期防御免疫を付与したことを示唆した。
【0282】
4.5 B-huTIGITノックインマウス中のMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブを用いた併用治療
アベルマブと併用した3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性も、MC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスにおいて評価した。抗HEL+不活性抗PD-L1アイソタイプコントロールと比較して、3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブ単剤療法全ては、有意な腫瘍増殖阻害(それぞれ、TGI=75.3%、及び56.7%、アイソタイプコントロールと比較して各群についてp<0.0001、27日目)、及びアイソタイプコントロール(30日目)と比較して延長された生存期間メジアン(それぞれ、41及び40.5)を誘発した(図26)。腫瘍増殖阻害を、3963H03-12-muIgG2c(P=0.0028、27日目)及びアベルマブ(P<0.0001、27日目)単剤療法と比較して、3963H03-12-muIgG2cとアベルマブ(TGI=90.5%)との併用で更に増強した。3963H03-12-muIgG2cとアベルマブとの併用も、生存期間メジアン(55日)を延長した(図25)。
【0283】
4.6 B-huTIGITノックインマウスのMC38腫瘍モデルにおける3963H03-12-muIgG2c及びM7824を用いた併用治療
ビントラフスプアルファ(M7824)と併用した3963H03-12-muIgG2cの抗腫瘍活性も、MC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスにおいて評価した。抗HEL+不活性抗PD-L1アイソタイプコントロールと比較して、3963H03-12-muIgG2c及びM7824単剤療法全ては、有意な腫瘍増殖阻害(それぞれ、TGI=75.3%、及び63.3%、アイソタイプコントロールと比較して各群についてp<0.0001、27日目)、及びアイソタイプコントロール(30日目)と比較して延長された生存期間メジアン(それぞれ、41日及び42.5日)を誘発した(図26)。腫瘍増殖阻害を、3963H03-12-muIgG2c(P=0.0011、27日目)及びM7824(P<0.0001、27日目)単剤療法と比較して、3963H03-12-muIgG2cとM7824(TGI=96.6%)との併用で更に増強した。3963H03-12-IgG2cとM7824との併用も、生存期間メジアン(55日)を延長した(図26)。
【0284】
4.7 再チェレンジ試験
それから、3963H03-12 muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法の少なくとも3ヶ月後の完全な腫瘍退縮を示したMC38腫瘍担持B-huTIGITノックインマウスで再チェレンジ試験を行った。3963H03-12-muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法(それぞれ、n=2、1)後の「治癒」したマウスの初回注射の反対側にMC38腫瘍細胞を再チャレンジした。これらのマウスの中で少なくとも36日間腫瘍が発育したマウスはなかった(それぞれ、0/2又は0/1マウス、0%)が、MC38細胞を注射されたナイーブB-huTIGITノックインマウス(n=10)は全て腫瘍が発育した(10/10、100%)(図27参照)。これらの結果は、3963H03-1-muIgG2c及びアベルマブ又はビントラフスプアルファ併用療法が、B-huTIGITノックインマウスに腫瘍抗原特異的防御免疫を付与したことを示唆した。
【0285】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【表14-4】
図1
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【配列表】
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【国際調査報告】