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特表2023-500731プロピレンのアンモ酸化用触媒、その製造方法、これを用いたプロピレンのアンモ酸化方法
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  • 特表-プロピレンのアンモ酸化用触媒、その製造方法、これを用いたプロピレンのアンモ酸化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-10
(54)【発明の名称】プロピレンのアンモ酸化用触媒、その製造方法、これを用いたプロピレンのアンモ酸化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20221227BHJP
   B01J 37/32 20060101ALI20221227BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221227BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20221227BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20221227BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
B01J23/887 Z
B01J37/32
B01J37/08
C07C255/08
C07C253/26
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526797
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2021008936
(87)【国際公開番号】W WO2022015003
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0087104
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョンヨン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ソン・チェ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC04A
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC35A
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD03A
4G169CB53
4G169CB76
4G169DA05
4G169EB17X
4G169EB17Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC21X
4G169EC21Y
4G169EC27
4G169FB06
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC54
4H006BA02
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BB70
4H006BE14
4H006QN18
4H039CA70
4H039CL50
(57)【要約】
本発明は、プロピレンのアンモ酸化用触媒、その製造方法、これを用いたプロピレンのアンモ酸化方法に関する。具体的には、本発明の一実施形態では、金属酸化物がシリカ担体に担持された構造であり、粒度分布が狭く、耐摩耗性に優れた触媒を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が2~15nmの気孔を含み、見掛け密度が0.25~1.0g/ccである、シリカ担体;および
前記シリカ担体に担持され、モリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)、および異種金属を含む金属酸化物;
を含む、
プロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項2】
前記シリカ担体は、
直径が2~13nmの気孔を含む、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項3】
前記シリカ担体は、
見掛け密度が0.3~1.0g/ccである、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項4】
前記シリカ担体は、
D50粒径が50~150μmである、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項5】
前記シリカ担体は、
アンモニア昇温脱着法(NH-TPD)で測定されたアンモニア(NH)脱着量が1.3mmol/g以下(ただし、0超過)である、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項6】
前記金属酸化物は、
下記の化学式1で表される、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒:
[化学式1]
Mo12BiFe
前記化学式1において、
Aは、Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素であり、
Bは、Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素であり、
Cは、Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素であり、
前記a~e、およびxはそれぞれ、原子または原子団の分率であり、aは0.1~5であり、bは0.1~5であり、cは0.01~10であり、dは0.01~2であり、eは0~10であり、xは24~48である。
【請求項7】
前記化学式1は、
下記の化学式1-1である、
請求項6に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒:
[化学式1-1]
Mo12BiFeCo
前記化学式1-1において、a~d、およびxの各定義は、請求項6に記載の通りである。
【請求項8】
前記金属酸化物および前記シリカ担体の重量比は、15:85~35:65である、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項9】
前記触媒は、
第2気孔を含むシリカ担体;
前記第2気孔の壁面を連続的にコーティングし、前記化学式1で表される金属酸化物を含む内部コーティング層;および
前記第2気孔内部に位置し、前記内部コーティング層を除いた空き空間を占める第1気孔;を含む、
請求項6に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項10】
前記触媒は、
D10粒径、D50粒径およびD90粒径が下記の式1の関係を満たす、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒:
[式1]
(D90-D10)/D50≦2.0
【請求項11】
前記触媒は、
ASTM9797-00法による耐摩耗性(摩耗損失、Attrition loss)が10%以下である、
請求項1に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒。
【請求項12】
Mo前駆体を含む第1前駆体水溶液を製造する段階、
Bi前駆体および異種金属前駆体を含む第2前駆体水溶液を製造する段階、
直径が2~15nmの気孔を含み、見掛け密度が0.25~1.0g/ccである、シリカ担体;に、前記第1および第2前駆体水溶液の混合物を担持させる段階、
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を乾燥させる段階、そして
前記乾燥した物質を焼成する段階を含む、
プロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項13】
前記第2前駆体水溶液は、
Bi前駆体、Fe前駆体、A前駆体(A=Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素)、およびB前駆体(B=Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素)を含む第2前駆体水溶液を製造する段階である、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項14】
前記第2前駆体水溶液を製造する段階において、
Bi前駆体、Fe前駆体、Co前駆体、およびK前駆体を含む第2前駆体水溶液を製造する、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項15】
前記第2前駆体水溶液を製造する段階において、
C前駆体(Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素)をさらに含む第2前駆体水溶液を製造する、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項16】
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物は、
金属のモル比が下記の化学式1の化学量論的モル比を満たす、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法:
[化学式1]
Mo12BiFe
前記化学式1において、
Aは、Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素であり、
Bは、Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素であり、
Cは、Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素であり、
前記a~e、およびxは、原子または原子団の分率であり、aは0.1~5であり、bは0.1~5であり、cは0.01~10であり、dは0.01~2であり、eは0~10であり、xは24~48である。
【請求項17】
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を乾燥させる段階は、
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を120~160mbarで1次真空乾燥する段階、および
前記1次真空乾燥した物質を30~50mbarで2次真空乾燥する段階を含む、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項18】
前記2次真空乾燥した物質を常圧で3次乾燥する段階;をさらに含む、
請求項17に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項19】
前記乾燥した物質を焼成する段階は、
500~700℃で行われる、
請求項12に記載のプロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法。
【請求項20】
反応器内で、請求項1に記載の触媒の存在下、プロピレンおよびアンモニアを反応させる段階を含む、
プロピレンのアンモ酸化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年7月14日付の韓国特許出願第10-2020-0087104号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、プロピレンのアンモ酸化用触媒、その製造方法、これを用いたプロピレンのアンモ酸化方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリルは、プロピレンのアンモ酸化反応により製造される。
【0004】
具体的には、プロピレンのアンモ酸化反応は、アンモニアとプロピレンの還元反応および酸素による再酸化反応を含むが、このような反応中に発生する熱を制御するために流動層反応器が用いられることが一般的である。
【0005】
プロピレンのアンモ酸化用触媒としては、Mo(モリブデン)-Bi(ビスマス)酸化物触媒が提示されて以来、多様な酸化状態を有する金属が添加された触媒が提示されている。ただし、触媒組成の多様化にもかかわらず、その構造および物性に関する研究が不足して、アクリロニトリルの収率を高めるのには限界があった。
【0006】
具体的には、プロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法としてゾルゲル法が広く知られているが、これは、金属前駆体溶液とシリカゾルを共沈させ、その共沈生成物を噴霧乾燥した後に焼成する方法に相当する。
【0007】
このようなゾルゲル法によれば、金属酸化物粒子とシリカ粒子が集合された二次粒子構造の触媒が製造されるが、二次粒子を構成する粒子の結合力が弱くて、流動性反応器内で摩耗したり一次粒子に割れて触媒活性を失いやすい。よって、ゾルゲル法で製造された触媒を用いる場合、プロピレンのアンモ酸化反応中に持続的に触媒を追加(make-up)しなければならず、追加してもアクリロニトリルの収率を高めるのには限界がある。
【0008】
さらに、ゾルゲル法で製造された触媒は、流動性反応器に投入される前に、すでに多量の微粉を含むことができる。金属前駆体溶液とシリカゾルの共沈生成物を噴霧乾燥する工程で、適切な大きさに凝集できず微粉が生成されうるのである。よって、ゾルゲル法で製造された触媒は、それ自体の生産性が低く製造費用が高い問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、微粉含有量が少なく耐久性に優れたプロピレンのアンモ酸化用触媒を提供し、このような触媒を用いてより高い収率でアクリロニトリルを製造するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、本発明の一実施形態では、気孔径と見掛け密度がそれぞれ特定範囲に制御されたシリカ担体に、特定組成の金属酸化物が担持された構造の触媒を提供する。
【発明の効果】
【0011】
前記一実施形態の触媒は、含浸法で製造可能であり、ゾルゲル法で製造された触媒に比べて微粉含有量が少なく耐久性に優れることができる。
【0012】
また、前記金属酸化物の組成、前記シリカ担体の気孔径と見掛け密度などに応じて、より均一な粒度分布を示しながらも耐久性が向上できる。
【0013】
したがって、前記一実施形態の触媒を用いる場合、流動層反応器内で進行するプロピレンのアンモ酸化工程中に触媒の追加供給がなくても、高い収率でアクリロニトリルを大量生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】共沈法を用いて製造された二次粒子構造の触媒を概略的に示したものである。
図2】前記一実施形態による触媒を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は多様な変換が加えられて様々な実施例を有することができるが、特定の実施例を例示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。本発明を説明するにあたり、かかる公知の技術に関する具体的な説明が本発明の要旨をあいまいにしうると判断された場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
また、以下に使用される第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲で第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよく、類似して、第2構成要素も第1構成要素と名付けられてもよい。
【0017】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0018】
以下、「粒径Dv」は、粒径による体積累積分布のv%の地点での粒径を意味する。つまり、D50は粒径による体積累積分布の50%の地点での粒径であり、D90は粒径による体積累積分布の90%の地点での粒径を、D10は粒径による体積累積分布の10%の地点での粒径である。
【0019】
以下、図面を参照して、前記一実施形態のプロピレンのアンモ酸化用触媒を詳しく説明する。
【0020】
プロピレンのアンモ酸化用触媒
本発明の一実施形態では、直径が2~15nmの気孔を含み、見掛け密度が0.25~1.0g/ccである、シリカ担体;および前記シリカ担体に担持され、モリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)、および異種金属を含む金属酸化物;を含む、プロピレンのアンモ酸化用触媒を提供する。
【0021】
一般に知られたプロピレンのアンモ酸化用触媒は、ゾルゲル法で製造されて、金属酸化物ナノ粒子とシリカナノ粒子が集合された二次粒子構造として提供される(図1)。
【0022】
これは、内部および外部に金属酸化物粒子が均一に分布した代わりに、内部気孔がほとんど含まれない構造で、プロピレンのアンモ酸化反応に参加できる部位が外部表面部に制限されるのである。
【0023】
それに対し、前記一実施形態の触媒は、含浸法で製造されて、金属酸化物がシリカ担体に担持された構造として提供される(図2)。
【0024】
例えば、目的とする金属酸化物の化学量論的モル比を満たすように製造された金属前駆体水溶液にシリカ担体を浸漬して、前記シリカ担体内に前記金属前駆体水溶液を含浸させることができる。
【0025】
以後、乾燥工程により溶媒(つまり、水)を除去すると、シリカ担体の気孔壁に金属前駆体が残存し、焼成工程で金属前駆体が酸化されながらシリカ担体の気孔壁を連続的にコーティングする膜を形成することができる。
【0026】
このように製造された一実施形態の触媒は、製造後の後処理として分級工程を進行させなくても、ゾルゲル法によって同一の組成で製造された触媒よりも狭い粒度分布を有し、微粉含有量が少ない。
【0027】
特に、前記一実施形態の触媒は、気孔径と見掛け密度がそれぞれ2~15nmおよび0.25~1.0g/ccと適正範囲内にあるシリカ担体を含むことによって、微粉含有量をさらに低減しながらも耐久性を改善することができる。
【0028】
また、前記一実施形態の触媒は、アンモ酸化反応の活性を高めると知られたMoおよびBiだけでなく、プロピレンのアンモ酸化反応に対する好適な水準の活性点を形成する金属をさらに含む金属酸化物により、触媒活性をより一層高めることができる。
【0029】
したがって、前記一実施形態の触媒を用いる場合、流動層反応器内で進行するプロピレンのアンモ酸化工程中に触媒の追加供給なくても、高い収率でアクリロニトリルを得ることができる。
【0030】
以下、前記一実施形態の触媒をより詳しく説明する。
【0031】
シリカ担体の気孔径
前記シリカ担体の気孔径は、粒子内気孔の平均サイズを意味し、液体窒素温度下、窒素ガスの脱着等温曲線でBJH計算式によって得られるDpによるdVp/dDpの曲線において、dVp/dDpの最大点でのDp値を意味する。上記において、Dpは粒子の気孔径、Vpは粒子の気孔体積を意味する。
【0032】
前記シリカ担体の気孔径が2nm未満と過度に小さくなると、前記シリカ担体の気孔への前記金属酸化物の含浸が均一に行われず最終触媒の活性が低くなるにつれ、このように含浸されない金属酸化物が解離して微粉を形成することがある。
【0033】
これとは異なり、前記シリカ担体の気孔径が15nm超過と過度に大きくなると、最終触媒活性は高いが、気孔径が大きいだけに見掛け密度と耐久性が低くなって、流動層反応器内で摩耗して微粉化されやすい。
【0034】
よって、気孔径が2nm未満と過度に小さいシリカ担体だけでなく、15nm超過と過度に大きいシリカ担体を用いた場合にも、アクリロニトリルの大量生産工程では持続的に触媒を追加(make-up)しなければならず、追加してもアクリロニトリルの収率を高めるのには限界がある。
【0035】
したがって、本発明の一実施形態では、前記シリカ担体の気孔径を2~15nmの範囲内に制限する。
【0036】
前記シリカ担体の気孔径は、最終触媒に対して、目的とする物性に応じて、2~30nmの範囲内に制御できる。
【0037】
具体的には、前記金属酸化物の組成および担持量が同一の時、これを担持するシリカ担体の気孔径が2~15nmの範囲内で小さくなるほど、最終触媒の微粉量が減少し、粒度分布が均一になる。
【0038】
例えば、前記シリカ担体の気孔径は、2nm以上にしかつ、15nm以下、14nm以下、13nm以下、または12nm以下の範囲内に制御できる。
【0039】
シリカ担体の見掛け密度
一般に、見掛け密度は、3ccの定体積の容器に入った多孔体の重量(W1)を測定して、容器の定体積3ccで割った値をいう。
【0040】
前記シリカ担体のD50粒径が同一の時、気孔径が大きくなるほど、見掛け密度が減少する傾向がある。
【0041】
前記シリカ担体の気孔径が大きくなって見掛け密度が0.25g/cc未満と過度に小さくなる時、最終触媒活性は高いが、見掛け密度と耐久性が低くなって、流動層反応器内で摩耗して微粉化されやすい。
【0042】
これとは異なり、前記シリカ担体の気孔径が小さくなって見掛け密度が1.0g/cc超過と過度に大きくなると、前記シリカ担体の気孔への前記金属酸化物の含浸が均一に行われず最終触媒の活性が低く、このように含浸されない金属酸化物が解離して微粉を形成することがある。
【0043】
よって、見掛け密度が0.25g/cc未満と過度に小さいシリカ担体だけでなく、1.0g/cc超過と過度に大きいシリカ担体を用いた場合にも、アクリロニトリルの大量生産工程では持続的に触媒を追加(make-up)しなければならず、追加してもアクリロニトリルの収率を高めるのには限界がある。
【0044】
前記シリカ担体の見掛け密度は、最終触媒に対して、目的とする物性に応じて、0.25~1.0g/ccの範囲内で制御できる。
【0045】
具体的には、前記金属酸化物の組成および担持量が同一の時、これを担持するシリカ担体の見掛け密度が0.25~1.0g/ccの範囲内で大きくなるほど、最終触媒の微粉量を低減することができる。
【0046】
例えば、前記シリカ担体の見掛け密度は、0.25g/cc以上、0.27g/cc以上、0.29g/cc以上、または0.3g/cc以上でかつ、1.0g/cc以下であってもよい。
【0047】
シリカ担体のD50粒径
前記シリカ担体のD50粒径は、50~150μmの範囲内であってもよい。
【0048】
具体的には、前記シリカ担体は、D50粒径の下限を50μm以上、51μm以上、53μm以上、または55μm以上にしかつ、上限を150μm以下、110μm以下、90μm以下、または75μm以下にすればよい。
【0049】
シリカ担体のアンモニア脱着量
触媒反応の初期には、触媒表面に反応物が化学的に吸着される過程が必要であり、触媒の活性点と表面積は、吸着能力およびこれによる化学反応と直接的な関連性がある。
【0050】
また、触媒表面への化学的吸着は、吸着速度は、物理的吸着(Physisorption)より遅いが、温度の増加に伴って増加する傾向がある。
【0051】
これに関連して、触媒の酸点の強度に対する程度をアンモニア(NH)の脱着程度(TPD:Temperature Programmed Desorption)によって測定する、アンモニア昇温脱着法(NH-TPD)が広く知られている。
【0052】
例えば、400℃で約1時間前処理した後、約100℃で5%NH/He(50cc/min)で1時間NHを吸着させ、それと同一の温度でHeを流しながら物理吸着されたNHを除去した後、温度を800℃まで昇温させ、脱着されるNHを測定できる。
【0053】
前記シリカ担体は、前記アンモニア昇温脱着法(NH-TPD)で測定されたアンモニア(NH)脱着量が1.3mmol/g以下、1.2mmol/g以下、1.1mmol/g以下、または1.00mmol/g以下(ただし、0mmol/g超過)で、吸着能力に優れることができる。
【0054】
これはつまり、プロピレンのアンモ酸化反応時、前記シリカ担体およびこれを含む触媒から脱着されるアンモニアの量を低減し、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率を改善する要因になり得る。
【0055】
金属酸化物の組成
一方、前記一実施形態の触媒と同一の構造を有しても、前記金属酸化物を構成する成分の種類と含有量に応じて、活性点が少なく形成されるか、むしろ過度に密度が高い活性点が形成されることがある。
【0056】
これに関連して、活性金属としてMoおよびBiのみ含む金属酸化物よりは、異種金属を添加して適切な活性点を形成する必要がある。
【0057】
具体的には、前記一実施形態の触媒において、前記金属酸化物を構成する金属の種類と含有量は、下記の化学式1を満たすことができる。
【0058】
[化学式1]
Mo12BiFe
【0059】
前記化学式1において、
Aは、Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素であり、
Bは、Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素であり、
Cは、Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素であり、
前記a~e、およびxはそれぞれ、原子または原子団の分率であり、aは0.1~5であり、bは0.1~5であり、cは0.01~10であり、dは0.01~2であり、eは0~10であり、xは24~48である。
【0060】
特に、前記金属酸化物が下記の化学式1-1で表されるものである時、Feのモリブデンの格子酸素の移動速度を高めて転換率を高める効果、Coのモリブデンとの複合酸化物の形成でプロピレンの部分酸化反応特性を高める効果、およびKのモリブデンを含む複合酸化物の活性点を分散させてANの選択度を高める効果のシナジー効果により、プロピレンのアンモ酸化反応での活性度がより高くなり得る:
【0061】
[化学式1-1]
Mo12BiFeCo
【0062】
前記化学式1-1において、前記a~d、およびxはそれぞれ、原子または原子団の分率であり、aは0.1~5であり、具体的には0.1~2.0であり、bは0.1~5であり、具体的には0.5~3.0であり、cは0.01~10であり、具体的には1~10であり、dは0.01~2であり、具体的には0.01~1.0であり、xは24~48、具体的には28~45であってもよい。
【0063】
金属酸化物:担体の重量比
前記一実施形態の触媒は、前記金属酸化物および前記シリカ担体を15:85~35:65、具体的には20:80~35:65の重量比(金属酸化物:シリカ担体)で含むことができる。
【0064】
この範囲内で、前記一実施形態の触媒は、高い活性度と共に高いアクリロニトリルの選択度を有することができる。
【0065】
触媒の構造
前記一実施形態の触媒は、第2気孔を含むシリカ担体;前記第2気孔の壁面を連続的にコーティングし、前記化学式1で表される金属酸化物を含む内部コーティング層;および前記第2気孔内部に位置し、前記内部コーティング層を除いた空き空間を占める第1気孔;を含む構造であってもよい。
【0066】
ここで、第2気孔の直径は、2~15nmであり、第1気孔は、前記第2気孔に担持された金属酸化物の量に応じて決定可能である。
【0067】
このような担持構造上、ゾルゲル法で製造された触媒に比べて、微粉含有量が少なく、耐久性に優れ、活性が高い触媒になり得る。
【0068】
よって、前記一実施形態の触媒を用いる場合、流動層反応器内で進行するプロピレンのアンモ酸化工程中に触媒の追加供給がなくても、高い収率でアクリロニトリルを得ることができる。
【0069】
具体的には、前記一実施形態の触媒は、エッグシェル(egg-shell)構造を有することができる。
【0070】
このために、前記シリカ担体としては、非多孔性コア部;および前記非多孔性コアの表面に位置し、直径が2~30nmの第2気孔を含む、多孔性シェル部;を含むものを使用することができる。
【0071】
具体的には、前記多孔性シェルは、表面の凹部および凸部を含み、前記凹部は、前記第2気孔が前記多孔性シェルの表面に開かれて形成されたものであってもよい。
【0072】
これによって、前記一実施形態の触媒は、前記多孔性シェルの凹部および凸部を連続的にコーティングし、前記化学式1で表される金属酸化物を含むコーティング層;および前記シリカ担体の凹部に、前記コーティング層を除いた空き空間を占める第1気孔;を含む構造を有することができる。
【0073】
最終触媒のD50粒径および粒度分布の均一性
前記一実施形態の触媒は、金属酸化物がシリカ担体に担持された状態で、D50に対する粒度分布が均一であり、微粉含有量が少ない。
【0074】
具体的には、前記一実施形態の触媒は、D50粒径が30~200μmであってもよく、このようなD50粒径に対する[D90粒径とD10粒径との差]の比が2.0以下で、狭い粒度分布を示すことができる。
【0075】
より具体的には、前記一実施形態の触媒は、D50粒径の下限を30μm以上、35μm以上、40μm以上、または45μm以上にしかつ、上限を200μm以下、190μm以下、180μm以下、170μm以下、160μm以下、または150μm以下にすればよい。
【0076】
また、前記一実施形態の触媒は、D50粒径に対する[D90粒径とD10粒径との差]の比を2.0未満、1.7以下、1.5以下、1.3以下、または1.0以下にして、狭い粒度分布を示すことができる。
【0077】
言い換えれば、前記一実施形態の触媒が示す粒度分布の均一性は、そのD50粒径に対するD10粒径およびD90粒径が下記の式1、具体的には下記の式1-1の関係を満たす点から裏付けられる:
【0078】
[式1]
(D90-D10)/D50≦2.0
【0079】
[式1-1]
(D90-D10)/D50≦1.0
【0080】
触媒の摩耗損失量
粒子の摩耗とは、固体の粒子が機械的、化学的過程により分解される現象をいう。粒子の摩耗は、摩滅(abrasion)と破砕(fragmentation)の2つの形態に分類され、2つの形態が共に起こることもある。
【0081】
特に、流動層工程で触媒粒子が摩耗して微粉化され、持続的に摩耗した量だけ触媒を補充(make-up)する必要があり、これは、全体工程の経済性に影響を与えることがある。
【0082】
粒子の摩耗を測定する基準としてはASTM9797-00法が知られている。これは、内径35mm、高さ710mmの垂直型内管に50gの触媒(W0)を充填した後、10L/minでNガスを流した後、5時間後、微粉フィルタに捕集された触媒の量(W)を測定して、下記の式を用いて耐摩耗性(摩耗損失、Attrition loss)を測定する方法に相当する。
【0083】
耐摩耗性(摩耗損失、attrition loss)(%)=(W0)/W×100
【0084】
前記一実施形態の触媒は、前記ASTM9797-00法により測定された耐摩耗性(摩耗損失、Attrition loss)が10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、または5%以下で、その損失量が非常に少なく、耐摩耗性に優れることができる。
【0085】
したがって、前記一実施形態の触媒は、ゾルゲル法で製造された触媒に比べて優れた耐摩耗性を示し、流動層反応器内で進行するプロピレンのアンモ酸化反応中に触媒の追加供給なくても、より高い収率でアクリロニトリルを製造することができる。
【0086】
プロピレンのアンモ酸化用触媒の製造方法
本発明の他の実施形態では、含浸法を用いて前述した一実施形態の触媒を製造する方法を提供する。
【0087】
先に簡単に説明したように、前記一実施形態の触媒は、含浸法を用いて前記シリカ担体に金属前駆体水溶液を担持させ、乾燥後に焼成させる一連の工程により製造できる。
【0088】
より具体的には、前記一実施形態の触媒を製造する方法であって、
Mo前駆体を含む第1前駆体水溶液を製造する段階、
Bi前駆体および異種金属前駆体を含む第2前駆体水溶液を製造する段階、
直径が2~15nmの気孔を含み、見掛け密度が0.25~1.0g/ccである、シリカ担体;に、前記第1および第2前駆体水溶液の混合物を担持させる段階、
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を乾燥させる段階、そして
前記乾燥した物質を焼成する段階を含む方法を提供する。
【0089】
以下、前述した内容と重複する説明は省略し、前記一実施形態の触媒の製造工程を詳しく説明する。
【0090】
第1前駆体水溶液の製造工程
前記第1前駆体水溶液を製造する段階では、クエン酸、シュウ酸、またはこれらの混合物を含む添加剤が添加される。
【0091】
前記添加剤は、共沈と噴霧乾燥を利用する触媒の製造工程では強度調節剤として機能するが、これは、一実施形態において前記第1前駆体水溶液を透明にする機能を果たす。
【0092】
前記添加剤の添加時、前記モリブデン前駆体および前記添加剤の重量比は、1:0.1~1:1、具体的には1:0.2~1:0.7を満たすことができ、この範囲内でモリブデン前駆体の溶解度が増加できるが、これに制限されるわけではない。
【0093】
第2前駆体水溶液の製造工程
前記第1前駆体水溶液に含まれているMo前駆体を除き、残りの金属前駆体を含む第2前駆体水溶液を製造することができる。
【0094】
具体的には、前記第2前駆体水溶液を製造する段階は、Bi前駆体、Fe前駆体、A前駆体(A=Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素)、およびB前駆体(B=Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素)を含む第2前駆体水溶液を製造する段階であってもよい。
【0095】
より具体的には、前記第2前駆体水溶液を製造する段階において、最終的に目的とする触媒内金属酸化物の組成を考慮して、Mo前駆体を除いた金属前駆体の種類を選択することができる。
【0096】
例えば、前述した化学式1-1を満たす金属酸化物の組成を考慮して、Bi前駆体、Fe前駆体、Co前駆体、およびK前駆体を含む第2前駆体水溶液を製造することができる。
【0097】
これに、C前駆体(Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素)をさらに含む第2前駆体水溶液を製造することもできる。
【0098】
第1および第2前駆体水溶液の混合物
前記第1および第2前駆体水溶液を製造する工程はそれぞれ独立的であり、製造の順序が制限されるわけではない。
【0099】
ただし、前記第1および第2前駆体水溶液の混合物は、金属のモル比が下記の化学式1の化学量論的モル比を満たすように製造することができる:
【0100】
[化学式1]
Mo12BiFe
【0101】
前記化学式1において、
Aは、Ni、Mn、Co、Zn、Mg、Ca、およびBaのうちの1つ以上の元素であり、
Bは、Li、Na、K、Rb、およびCsのうちの1つ以上の元素であり、
Cは、Cr、W、B、Al、およびVのうちの1つ以上の元素であり、
前記a~e、およびxは、原子または原子団の分率であり、aは0.1~5であり、bは0.1~5であり、cは0.01~10であり、dは0.01~2であり、eは0~10であり、xは24~48である。
【0102】
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物の担体内担持工程
前記第1および第2前駆体水溶液を混合した後、これをシリカ担体に担持させることができる。
【0103】
ここで、先に言及した第2気孔を含むシリカ担体を前記第1および第2前駆体水溶液の混合物に投入して、前記シリカ担体の気孔に前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されるようにできる。
【0104】
具体的には、前記金属酸化物が担持されないシリカ担体自体のD50サイズが20~400μmであってもよい。
【0105】
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担体された担体の乾燥工程
前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を乾燥させる段階は、前記第1および第2前駆体水溶液の混合物が担持されたシリカ担体を120~160mbarで1次真空乾燥する段階、および前記1次真空乾燥した物質を30~50mbarで2次真空乾燥して、前記第1および第2前駆体の混合物が担持されたシリカ担体を得る段階を含むことができる。
【0106】
具体的には、前記1次真空乾燥は、60~80℃で1~2時間行い、前記2次真空乾燥は、80~100℃で15~45分間行うことによって、溶媒(つまり、水)が除去され、前記第1および第2前駆体のみシリカ担体の気孔壁面に残存しうる。
【0107】
前記2次真空乾燥が完了した物質を直ちに焼成できるが、常圧で3次乾燥することによって、前記2次真空乾燥後に残っている溶媒(つまり、水)までも効果的に除去することができる。
【0108】
具体的には、前記3次乾燥は、100~120℃で20~30時間行われる。
【0109】
ただし、これは例示に過ぎず、溶媒(つまり、水)は除去され、前記第1および第2前駆体が担持された担体が得られる乾燥条件であれば特に限定されない。
【0110】
最終焼成工程
最終的に、前記乾燥した物質、つまり、前記第1および第2前駆体が担持された担体を500~700℃の温度範囲内で2~5時間焼成させて、最終的に触媒を得ることができる。
【0111】
ただし、前記乾燥および焼成の各条件は例示に過ぎず、前記担体の内部気孔から溶媒を十分に除去し、金属前駆体を酸化させることができる条件であれば十分である。
【0112】
プロピレンのアンモ酸化方法
本発明のさらに他の実施形態では、反応器内で、前述した一実施形態の触媒の存在下、プロピレンおよびアンモニアを反応させる段階を含む、プロピレンのアンモ酸化方法を提供する。
【0113】
前記一実施形態の触媒は、高い活性度と共に高温安定性を有し、プロピレンのアンモ酸化反応に用いられて、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率を高めることができる。
【0114】
前記一実施形態の触媒以外の事項については、当業界にて一般に知られた事項を参照可能で、それ以上の詳細な説明を省略する。
【0115】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は発明の実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0116】
実施例1
(1)前駆体溶液の製造工程
蒸留水に、10.59gのMo前駆体((NHMo24)および5.3gのクエン酸(Citric acid)を投入し、混合して、Mo前駆体溶液を製造した。
【0117】
これと独立して、蒸留水に、1.82gのBi前駆体(Bi(NO・5HO)、9.49gのCo前駆体(Co(NO・6HO)、2.99gのFe前駆体(Fe(NO・9HO)、および0.35gのK前駆体(KNO)を投入し、2.29gの硝酸(HNO)を添加した後、混合して、Bi、Fe、Co、およびK前駆体混合溶液を製造した。
【0118】
前記Mo前駆体溶液;および前記Bi、Fe、Co、およびK前駆体混合溶液を混合して、Mo、Bi、Fe、Co、およびKの前駆体混合溶液を完成した。
【0119】
前記前駆体混合溶液における、蒸留水の総量は45.74gである。
【0120】
(2)シリカ担体内前駆体溶液の担持工程(含浸法利用)
平均直径12nmの気孔を含み、見掛け密度が0.32g/ccであり、D50粒径が70μmであるシリカ(SiO、D60-120A(N)、AGC Si-Tech Co.,Ltd.)粒子を担体として用いた。
【0121】
前記Mo、Bi、Fe、Co、およびKの前駆体混合溶液に前記シリカ担体18.30gを投入し、常温および80℃で順次にそれぞれ2時間撹拌して、前記シリカ担体の気孔に前記Mo、Bi、Fe、Ni、Co、およびK前駆体混合溶液が十分に担持されるようにした。
【0122】
(3)前駆体溶液が担持されたシリカ担体の乾燥および焼成工程
以後、前記Bi、Fe、Co、およびKの前駆体混合溶液が担持されたシリカ担体を回収して回転真空乾燥機に投入した後、140mbarの圧力および70℃の温度条件で1時間40分間1次真空乾燥し、続いて、40mbarの圧力および90℃の温度条件で30分間2次真空乾燥した。
【0123】
前記2次真空乾燥まで完了した物質を回収してオーブン(oven)に投入し、常圧および110℃の温度条件で24時間3次乾燥させた後、空気雰囲気のBox焼成炉で580℃の温度を維持しながら3時間熱処理して、最終的に実施例1の触媒を得た。
【0124】
(4)プロピレンのアンモ酸化工程
内径が3/8インチ(inch)の管状反応器内に、触媒の活性化のために石英繊維(Quartz wool)0.05gを充填し、実施例1の触媒0.2gを反応器内に充填させた。
【0125】
このように石英繊維と触媒が充填された反応器の内部圧力を常圧(1atm)に維持し、10℃/minの昇温速度で反応器の内部温度を昇温させながら、前処理工程で窒素とアンモニアガスを流した。これによって、反応器の内部温度がアンモ酸化反応が可能な温度である400℃に到達した後、15分間還元気体の雰囲気下で維持させ、十分な前処理が行われるようにした。
【0126】
このように前処理が完了した反応器に、反応物であるプロピレンおよびアンモニアと共に空気(air)を供給し、プロピレンのアンモ酸化工程を行った。この時、反応物の供給量はプロピレン:アンモニア:空気=0.8:1.2:8の体積比となるように構成しながら、プロピレン、アンモニア、および空気の総重量空間速度(WHSV:weight hourly space velocity)は1.54h-1となるようにした。
【0127】
前記アンモ酸化反応終了後、その生成物を回収し、アクリロニトリルがよく生成されたかを確認するために、多様な装置を用いて分析した。
【0128】
その分析方法、分析結果などについては、後述する実験例で詳しく記述する。
【0129】
実施例2~7
下記表1に記載の組成に応じて前駆体溶液を製造し、下記表2に記載のシリカ担体を用いかつ、残りは実施例1と同様にして実施例2~7の各触媒を製造した。
【0130】
また、実施例1の触媒の代わりに実施例2~7の各触媒を用いてプロピレンのアンモ酸化工程を行った後、その生成物を回収し、実施例1と同様に分析を実施した。
【0131】
比較例1
(1)触媒の製造工程(共沈後噴霧乾燥利用)
まず、蒸留水に、10.59gのMo前駆体((NHMo24)および5.3gのクエン酸(Citric acid)を投入し、混合して、Mo前駆体溶液を製造した。
【0132】
これとは独立して、蒸留水に、1.82gのBi前駆体(Fe(NO・5HO)、9.49gのCo前駆体(Co(NO・6HO)、2.99gのFe前駆体(Fe(NO・9HO)、および0.35gのK前駆体(KNO)を投入し、1.13gの硝酸(HNO)を添加した後、混合して、Bi、Fe、Co、およびK前駆体混合溶液を製造した。
【0133】
前記Mo前駆体溶液;および前記Bi、Fe、Co、およびK前駆体混合溶液を混合し、これにシリカゾル22.53g(LUDOX AS 40、固形分含有量:40%、Grace)を添加して撹拌した後、Disk-typeの噴霧乾燥機を用いて、120℃(inlet)および230℃(outlet)の条件で噴霧乾燥した。
【0134】
これによって得られた粉末を580℃で3時間焼成して、比較例1の触媒として最終的に得た。
【0135】
(3)プロピレンのアンモ酸化工程
実施例1の触媒の代わりに前記比較例1の触媒を用い、残りは実施例1と同様にしてプロピレンのアンモ酸化工程を行った。
【0136】
比較例1のアンモ酸化反応終了後、その生成物を回収し、実施例1と同様に分析を実施した。
【0137】
比較例2および3
下記表1に記載の組成に応じて前駆体溶液を製造し、下記表2に記載のシリカ担体を用いかつ、残りは実施例1と同様にして比較例2および3の各触媒を製造した。
【0138】
また、実施例1の触媒の代わりに比較例2および3の各触媒を用いてプロピレンのアンモ酸化工程を行った後、その生成物を回収し、実施例1と同様に分析を実施した。
【0139】
比較例4
下記表1に記載の組成に応じて前駆体溶液を製造し、下記表2に記載のシリカ担体を用いかつ、残りは比較例1と同様にして比較例4の触媒を製造した。
【0140】
また、比較例1の触媒の代わりに比較例1の触媒を用いてプロピレンのアンモ酸化工程を行った後、その生成物を回収し、比較例1と同様に分析を実施した。
【0141】
比較例5
下記表1に記載のシリカ担体を用い、下記表2に記載の金属酸化物の組成およびそのシリカ担体との配合比を考慮して担持工程を実施しかつ、残りは実施例1と同様にして比較例5の触媒を製造した。
【0142】
また、実施例1の触媒の代わりに比較例5の触媒を用いてプロピレンのアンモ酸化工程を行った後、その生成物を回収し、実施例1と同様に分析を実施した。
【0143】
【表1】
【0144】
前記表1にて、Moは(NHMo24であり、BiはBi(NO・5HOであり、FeはFe(NO・9HOであり、CoはCo(NO・6HOであり、NiはNi(NO・6HOであり、KはKNOである。
【0145】
【表2】
【0146】
実験例1:シリカ担体の分析
次のような分析法により、実施例および比較例で使用された各シリカ担体を分析し、分析結果を下記表3に記載した:
【0147】
見掛け密度:3cm(cc)体積の容器に自由落下方式で試料を入れて、容器に入った試料の表面が容器の表面と一直線となるように試料の量を取り出したり加えた後、容器に入った試料の重量を測定し、これを容器の体積で割って、試料の見掛け密度を求める。
【0148】
気孔の平均径:BET比表面積測定機器(製造会社:BEL Japan、機器名:BELSORP_Mini)を用いて、液体窒素温度(77K)下、相対圧(P/P0)1まで測定された吸着量と、0.03まで測定された脱着量を用いて、BJH数式から気孔サイズを測定した。
【0149】
D50粒径:Dvはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定できる。具体的には、レーザ回折法を用いる粒度測定装置(Microtrac、Blue wave)に実施例および比較例の各シリカ担体を導入して、粒子がレーザビームを通過する時、粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置内で、粒径による体積累積分布の50%となる地点での粒子径を算出することによって、D50の値を得た。
【0150】
アンモニア(NH )脱着量:U字の石英管に触媒約0.1gを充填して、U字反応器を装置に連結した後、ヘリウムガス(50cc/min)を用いて、常温から昇温速度10℃/minで昇温させて約400℃まで温度を上げた後、400℃で約1時間維持して前処理を進行させる。これは、触媒に残存する有機物除去のためである。
【0151】
前処理が終わった後、約100℃で5%NH/He(50cc/min)で1時間NHを吸着させる。同一温度でHeを流しながら物理吸着されたNHを除去し、温度を800℃まで昇温させて脱着されるNHを測定する。
【0152】
【表3】
【0153】
実験例2:触媒の分析
次のような分析法により実施例および比較例の各触媒を分析し、分析結果を下記表4に記載した。参照として、活性物質(金属酸化物)の含有量および組成、担体の見掛け密度および気孔の平均径も併せて下記表4に記載した:
【0154】
D10、D50およびD90の測定:Dvはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定できる。具体的には、レーザ回折法を用いる粒度測定装置(Microtrac、Blue wave)に実施例および比較例の各触媒を導入して、粒子がレーザビームを通過する時、粒子サイズによる回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。測定装置内で、粒径による体積累積分布の10%、50%および90%となる地点での粒子径を算出することによって、D10、D50およびD90の値を得て、粒度分布度((D90-D10)/D50の値)も出力することができる。
【0155】
耐摩耗性(Attrition loss):ASTM9797-00法に基づいて、内径35mm、高さ710mmの垂直型内管に50gの触媒(W0)を充填した後、10L/minでNガスを流した後、5時間後、微粉フィルタに捕集された触媒の重量(W)を測定して、下記の式を用いて耐摩耗性(摩耗損失、attrition loss)を測定した。
【0156】
耐摩耗性(摩耗損失、attrition loss)(%)=(W0)/W×100
【0157】
【表4】
【0158】
前記表4にて、実施例1~7の触媒は、比較例1~5の触媒に比べて粒度分布が狭く、摩耗比率が少ない。
【0159】
特に、ゾルゲル法で製造された比較例1および4の触媒との関係から、実施例1~7の触媒を製造するのに用いられた含浸法は、金属酸化物がシリカ担体に担持された構造を形成して、粒度分布が狭く耐摩耗性に優れた触媒を製造するのに有利な方法であることが分かる。
【0160】
ただし、比較例2および3の触媒は、含浸法で製造されたにもかかわらず、広い粒度分布と高い摩耗損失が現れる。
【0161】
比較例2の触媒は、気孔径が1.5nmと小さいシリカ担体を用いることによって、担持工程で多量の金属酸化物が前記シリカ担体の小さい気孔に含浸されず、このように含浸されない金属酸化物によって形成された多量の微粉を含み、粒度分布が広く耐摩耗性は劣るのである。
【0162】
一方、比較例3の各触媒は、気孔径が16nmと大きいシリカ担体を用いることによって、見掛け密度と耐久性が低くなって、微粉化されやすいのである。
【0163】
比較例5の触媒も、含浸法で製造されたにもかかわらず、広い粒度分布と高い摩耗損失が現れる。
【0164】
比較例5の触媒は、気孔径と見掛け密度がそれぞれ適正範囲内であるシリカ担体を用いたにもかかわらず、活性金属としてMoおよびBiのみ含む金属酸化物の影響により、広い粒度分布と劣る耐摩耗性を示したのである。
【0165】
それに対し、実施例1~7の触媒は、気孔径と見掛け密度がそれぞれ2~15nmおよび0.3~1.0g/ccと適正範囲内にあるシリカ担体を用い、MoおよびBiだけでなく、Fe、Co、Kなどの活性金属成分をさらに含む金属酸化物を前記シリカ担体に担持させた結果、粒度分布が狭く、耐摩耗性に優れている。
【0166】
特に、実施例1~7の触媒は、(D90-D10)/D50が2以下、具体的には0.85以下と均一な粒度分布を示しながら、ASTM9797-00法による摩耗損失が10%以下、具体的には5%以下である。
【0167】
実験例3:プロピレンのアンモ酸化生成物の分析
FID(Flame Ionization Detector)とTCD(Thermal conductivity detector)が装着されたクロマトグラフィー(Gas chromatography、製造会社:Agilent機器名:HP 6890 N)を用いて、実施例および比較例の各アンモ酸化生成物を分析した。
【0168】
具体的には、FIDではエチレン(ehthlene)、シアン化水素(hydrogen cyanide)、アセトアルデヒド(Acetaldehyde)、アセトニトリル(Acetonitrile)、アクリロニトリル(Acrylonitrile)などの生成物を分析し、TCDではNH、O、CO、COなどのガス生成物および未反応プロピレンを分析して、実施例および比較例でそれぞれ反応したプロピレンのモル数とアンモ酸化生成物のモル数を求めた。
【0169】
これによる分析結果とともに、供給されたプロピレンのモル数を下記の式1、2、および3に代入して、プロピレンの転換率、プロピレンのアンモ酸化反応生成物であるアクリロニトリルの選択度および収率を計算し、その計算値を表5に記載した。
【0170】
参照として、活性物質(金属酸化物)の含有量および組成、担体の見掛け密度および気孔の平均径も併せて下記表5に記載した:
【0171】
[式1]
プロピレンの転換率(%)
=100×(反応したプロピレンのアンモ酸化モル数)/(供給されたプロピレンのモル数)
【0172】
[式2]
アクリロニトリルの選択度(%)
=100×(生成されたアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロピレンのモル数)
【0173】
[式3]
アクリロニトリルの収率(%)
=100×(生成されたアクリロニトリルのモル数)/(供給されたプロピレンのモル数)
【0174】
【表5】
【0175】
前記表5にて、実施例1~7の触媒は、比較例1、2、4および5の触媒に比べて、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率が顕著に高い。
【0176】
前記表4の結果とまとめてみる時、粒度分布が狭く耐摩耗性に優れた触媒を製造することは、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率を顕著に高めるのに寄与することが分かる。
【0177】
ただし、比較例3の触媒は、気孔径が16nmと大きいシリカ担体を用いて製造された結果、触媒活性が高い。よって、実験室スケールで行われた反応では、前記表4に示されているように、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率を高めることができた。
【0178】
しかし、シリカ担体の気孔径が大きいだけに、見掛け密度と耐久性が低くなって流動層反応器内で摩耗して微粉化されやすい。よって、アクリロニトリルの大量生産工程では持続的に触媒を追加(make-up)しなければならず、追加してもアクリロニトリルの収率を高めるのには限界がある。
【0179】
したがって、アクリロニトリルの大量生産工程では、実施例を参照して、前述した一実施形態の範囲内でシリカ担体の気孔径、見掛け密度などを制御することによって触媒の安定性を高くし、プロピレンの転換率、アクリロニトリルの選択度および収率を所望の範囲に調節できる。
図1
図2
【国際調査報告】