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特表2023-502362光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-24
(54)【発明の名称】光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230117BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20230117BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230117BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20230117BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230117BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/37
C08K5/3492
C08G75/045
B32B27/00 101
B32B27/16 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527765
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020061167
(87)【国際公開番号】W WO2021102074
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/939,639
(32)【優先日】2019-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユク、チュヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】杉江 敦司
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドック
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J030
【Fターム(参考)】
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EJ08A
4F100JB14A
4F100JN01
4J002CP141
4J002EU187
4J002EV026
4J002EW148
4J002FD146
4J002FD157
4J002FD158
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ05
4J030BA03
4J030BA04
4J030BB07
4J030BC33
4J030BC43
4J030BG09
(57)【要約】
光硬化性シリコーン組成物が開示される。組成物の硬化物、及びそれを形成する方法も開示される。光硬化性シリコーン組成物は、(A)分子中にアルケニル基を有する特定のオルガノポリシロキサンと、(B)分子中に少なくとも2つのチオール基を有する化合物と、(C)リン原子を有する光ラジカル開始剤と、(D)特定のヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、を含む。本組成物は、広いUV-可視範囲を有するLEDランプ及びハロゲン化金属ランプによる優れた硬化性を示し、硬化して、優れた耐光性を示す硬化物を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)以下の平均組成式:
SiO(4-a-b)/2
(式中、Rが炭素数2~12のアルケニル基であり、Rが炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、但し、分子中のRの少なくとも30mol%が前記アリール基又は前記アラルキル基であり、「a」及び「b」が1≦a+b≦2.5及び0.001≦a/(a+b)≦0.2を満たす正の数である)によって表されるオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B)存在する成分中のチオール基の量が、成分(A)中の全アルケニル基の1mol当たり0.2~2.0molの範囲内である量の、分子中に少なくとも2つの前記チオール基を有する化合物と、
(C)リン原子を有する光ラジカル開始剤0.01~5質量部と、
(D)以下の一般式:
【化19】
(式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37が同じ又は異なり、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基から選択される基であり、Rが炭素数6~12の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は以下の一般式:
-CHCH(OH)CHOR
(式中、Rが炭素数6~20の直鎖状又は分岐状アルキル基である)によって表される基である)によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物0.001~2質量部と、を含む、光硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(D)中のR31、R34及びR35が水素原子であり、成分(D)中のR32、R33、R36及びR37が水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
成分(D)中のRが、以下の一般式:
-CHCH(OH)CHOR
(式中、Rが炭素数6~20の直鎖状又は分岐状アルキル基である)によって表される基である、請求項1又は2に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
成分(D)が、
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化20】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化21】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化22】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化23】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化24】
及びこれらの混合物から選択されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物である、請求項1に記載の光硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1、又は請求項2~4のいずれか一項に記載の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することによって得られる、硬化物。
【請求項6】
前記硬化物が、同じ基板又は異なる基板間で積層された、請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
前記硬化物が、光デバイス内の同じ基板又は異なる基板間で積層された、請求項5に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月24日に出願された米国仮特許出願第62/939,639号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0003】
良好な光学的な透明性及び高い伸長特性を有する硬化性シリコーン組成物は、接着剤又は感圧接着剤として利用される。特に、画像表示装置を使用するために液晶、OLED、タッチパネル、及びカバーレンズのような熱的に不安定な構成部品が必要であるため、40℃未満などの比較的低い硬化温度を可能にする光硬化性シリコーン組成物が、主に光学ディスプレイに使用される。
【0004】
特許文献1は、脂肪族不飽和基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンと、ケイ素原子結合メルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと、アシルホスフィンオキシド系光反応開始剤と、アセトフェノン及び/又はプロピオフェノンと、を含む紫外線硬化性シリコーン組成物を提案する。
【0005】
しかしながら、そのような紫外線硬化性シリコーン組成物には、紫外線照射による深部硬化性が悪く、硬化が不十分であるという問題と、シリコーン硬化物が高温又は高湿条件に曝されることによって着色及びヘイズが発生するという問題とがある。
【0006】
特許文献2は、分子中に炭素数6~12の少なくとも1つのアリール基及び炭素数2~12の少なくとも1つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物と、分子中に少なくとも2つのチオール基を有する化合物と、リン原子を有する光ラジカル開始剤と、ヒンダードフェノール化合物と、を含む光硬化性シリコーン組成物を提案している。光硬化性シリコーン組成物は、活性エネルギー線を照射することによって硬化して、高温/高湿度条件に放置された場合であっても、着色及びヘイズによる透過率の低下を抑制する硬化物を形成する。
【0007】
しかしながら、そのような光硬化性シリコーン組成物には、優れた耐光性があるだけではなく、広いUV-可視範囲(365~405nm)を有するLEDランプ及びハロゲン化金属ランプによる硬化性が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-253179(A)号公報
【0009】
【特許文献2】国際公開第2017/155919(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、広いUV-可視範囲を有するLEDランプ及びハロゲン化金属ランプによる優れた硬化性を示し、硬化して、優れた耐光性を示す硬化物を形成する光硬化性シリコーン組成物を提供することである。本発明の別の目的は、優れた耐光性を示す硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光硬化性シリコーン組成物は、
(A)以下の平均組成式:
SiO(4-a-b)/2
(式中、Rは炭素数2~12のアルケニル基であり、Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基であり、但し、分子中のRの少なくとも30mol%はアリール基又はアラルキル基であり、「a」及び「b」は1≦a+b≦2.5及び0.001≦a/(a+b)≦0.2を満たす正の数である)によって表されるオルガノポリシロキサン100質量部と、
(B)存在する成分中のチオール基の量が、成分(A)中の全アルケニル基の1mol当たり0.2~2.0molの範囲内である量の、分子中に少なくとも2つのチオール基を有する化合物と、
(C)リン原子を有する光ラジカル開始剤0.01~5質量部と、
(D)以下の一般式:
【化1】
(式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37は同じ又は異なり、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基から選択される基であり、Rは炭素数6~12の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は以下の一般式:
-CHCH(OH)CHOR
(式中、Rは炭素数6~20の直鎖状又は分岐状アルキル基である)によって表される基である)によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物0.001~2質量部と、を含む。
【0012】
様々な実施形態では、成分(D)中のR31、R34、及びR35は水素原子であり、成分(D)中のR32、R33、R36及びR37は水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
【0013】
様々な実施形態では、成分(D)中のRは、以下の一般式:
-CHCH(OH)CHOR
(式中、Rは炭素数6~20の直鎖状又は分岐状アルキル基である)によって表される基である。
【0014】
様々な実施形態では、成分(D)は、以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化2】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化3】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化4】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化5】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化6】
及びこれらの混合物から選択されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物である。例えば、成分(D)は、前述の化合物のうちの単に1つ又は2つ以上を含んでもよい。
【0015】
本発明の硬化物は、上記の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することにより得られる。様々な実施形態では、硬化物は、同じ基板又は異なる基板、特に光デバイス内の同じ基板又は異なる基板間で積層される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化性シリコーン組成物は、広いUV-可視範囲を有するLEDランプ及びハロゲン化金属ランプによる優れた硬化性を示し、硬化して、優れた耐光性を示す硬化物を形成する。更に、本発明の硬化物は、優れた耐光性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0018】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0020】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠された任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、その中に整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、記述し、想定すると理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、そして各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
<光硬化性シリコーン組成物>
【0021】
成分(A)は、本組成物の塩基化合物であり、平均組成式:
SiO(4-a-b)/2によって表されるオルガノポリシロキサンである。
【0022】
式中、Rは、炭素数2~12のアルケニル基であり、その例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。それらの中でも、ビニル基及びヘキセニル基が好ましい。
【0023】
式中、Rは炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基が好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、及びビフェニル基が挙げられる。それらの中でも、フェニル基が好ましい。アラルキル基の例としては、フェニルメチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、及び2-フェニルプロピル基が挙げられる。それらの中でも、2-フェニルエチル基及び2-フェニルプロピル基が好ましい。成分(A)では、分子中のRの少なくとも30mol%はアリール基又はアラルキル基である。
【0024】
更に、式中、「a」及び「b」は、1≦a+b≦2.5、好ましくは1.5≦a+b≦2.2、及び0.001≦a/(a+b)≦0.2、好ましくは0.005≦a/(a+b)≦0.1を満たす正の数である。
【0025】
25℃における成分(A)の状態は、限定されず、好ましくは液体である。成分(A)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは100~1,000,000mPa・sの範囲内である。なお、本明細書において、粘度は、ASTM D 1084に従ってB型粘度計を用いて23±2℃において測定した値である。
【0026】
成分(A)は、上記の平均組成式を満たす1種のオルガノポリシロキサンであってもよく、又は上記の平均組成式を満たす少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。そのような成分(A)の例としては、以下の「平均組成式:平均式」によって表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。なお、式中、「Me」、「Vi」、「Hex」、「Ph」、「Phe」、及び「Php」はそれぞれ、メチル基、ビニル基、ヘキセニル基、フェニル基、2-フェニルエチル基、及び2-フェニルプロピル基を示す。
Vi0.03Me1.03Ph0.97SiO0.99:ViMeSiO(MePhSiO)65SiMeVi
Vi0.10Me1.10Ph0.90SiO0.95:ViMeSiO(MePhSiO)18.4SiMeVi
Vi0.09Me1.06Ph0.91SiO0.97:PhSi{O(PhMeSiO)10SiMeVi}
Hex0.09Me1.07Ph0.89SiO0.98:Si{O(PhMeSiO)10SiMeHex}
Hex0.12Me1.12Ph0.88SiO0.94:HexMeSiO(PhMeSiO)15SiMeHex
Vi0.06Me1.38Phe0.63SiO0.97:ViMeSiO(PheMeSiO)20(MeSiO)10SiMeVi
Hex0.06Me1.38Php0.63SiO0.97:HexMeSiO(PhpMeSiO)20(MeSiO)10SiMeHex
【0027】
成分(B)は、本組成物の硬化剤であり、分子中に少なくとも2つのチオール基を有する化合物である。成分(B)は、成分(A)に十分な溶解性を有する限り限定されない。
【0028】
そのような成分(B)の例としては、o-、m-、又はp-キシレンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-チオプロピオネート)、ブタンジオールビス(3-チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-チオプロピオネート)、トリヒドロキシエチルトリイソシアヌル酸トリス(3-チオプロピオネート)、及びメルカプト基で置換されたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0029】
成分(B)の含有量は、存在する成分によって提供されるチオール基の量が、成分(A)中の全アルケニル基の1mol当たり、0.2~2.0molの範囲内、又は任意に0.3~1.6molの範囲内であるような量である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲内であるとき、得られる硬化物の機械的強度が増大するためである。
【0030】
成分(C)は、本組成物の光硬化反応を開始させる成分であり、リン原子を含有する光ラジカル開始剤である。そのような成分(C)の例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:TPO、BASF製)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスホネート(商品名:TPO-L、BASF製)、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名:Irgacure 819、BASF製)が挙げられる。
【0031】
成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部当たり、0.01~5質量部の範囲内、任意に0.05~2質量部の範囲内、又は任意に0.1~1.5質量部の範囲内である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲内であるとき、硬化が効率的に進行して、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が形成されるためである。
【0032】
成分(D)は、以下の一般式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物である。
【化7】
【0033】
式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36及びR37は同じ又は異なり、水素原子、ヒドロキシ基、又は炭素数1~12のアルキル基から選択される基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基が好ましい。それらの中でも、R31、R34及びR35は、好ましくは水素原子であり、R32、R33、R36及びR37は、好ましくは水素原子又は炭素数1~12のアルキル基である。
【0034】
式中、Rは炭素数6~12の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、又は以下の一般式:
-CHCH(OH)CHORによって表される基である。
【0035】
それらの中でも、Rは、好ましくは、以下の一般式:
-CHCH(OH)CHORによって表される基である。
【0036】
のアルキル基の例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0037】
式中、Rは炭素数6~20の直鎖状又は分岐状アルキル基である。Rのアルキル基の例としては、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0038】
そのような成分(D)の例としては、以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化8】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化9】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化10】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化11】
以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化12】
及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
成分(D)の含有量は、成分(A)100質量部当たり、0.001~2質量部の範囲内、任意に0.01~1.5質量部の範囲内、又は任意に0.05~1.5質量部の範囲内である。これは、成分(D)の含有量が上記範囲内であるとき、LEDランプによる組成物の硬化性が増大するためである。
【0040】
本組成物は、上記の成分(A)~成分(D)を含むが、本組成物の硬化物の耐熱性を与えるために、好ましくは(E)ヒンダードフェノール化合物を含有させる。そのような成分(E)の例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[{3,5-ビス(1,1-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)メチル}ホスホネート、3 3′,3′′,5,5′,5′′-ヘキサン-tert-ブチル-4-a,a′,a′′-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、及びヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0041】
成分(E)の含有量は、限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.001~1質量部の範囲内、好ましくは0.003~0.5質量部の範囲内である。これは、成分(E)の含有量が上記範囲内であるとき、光硬化前の組成物の粘度変化が小さく、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が得られるためである。
【0042】
本組成物は、任意成分として、本組成物の遮光状態での保存安定性を高めるために、成分(E)以外のラジカル捕捉剤(F)を更に含有することができ、好ましくは含有させる。そのような成分(F)の例としては、ヒンダードアミン、例えばN,N′,N′′,N′′′-テトラキス(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、及び8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン;キノン又はフェノール類、例えばメチルハイドロキノン、1,4-ナフトキノン、4-メトキシナフトール、tert-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、ピロガロール、及びフェノチアジンが挙げられる。
【0043】
成分(F)の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.0001~1質量部の範囲内、任意に0.0001~0.1質量部、又は任意に0.0001~0.05質量部の範囲内である。これは、成分(F)の含有量が上記範囲内であるとき、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物が得られるためである。
【0044】
本組成物は、任意成分として、分子中に少なくとも2つのエーテル結合及び少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物(G)を更に含有することができる。成分(G)における脂肪族炭素-炭素二重結合を有する基は限定されず、それらの例としてはアルケニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が挙げられる。それらの中でも、アクリロイル基又はメタクリロイル基が好ましい。更に、25℃における成分(G)の状態は、限定されず、好ましくは液体である。成分(G)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは1~10000mPa・sの範囲内である。
【0045】
そのような成分(G)の例としては、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシノナエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールジエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAトリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAトリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、プロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール/プロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
【0046】
成分(G)の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは3~30質量部の範囲内、又は任意に5~20質量部の範囲内である。これは、成分(G)の含有量が上記範囲の下限以上であるとき、高温/高湿での硬化物の透過率の低下が小さくなるためである。一方、含有量が上記範囲の上限以下であるとき、高温での硬化物の硬度変化は小さく、着色は低減される。
【0047】
本組成物は、上記の成分(A)及び成分(G)以外に、任意成分として、分子中に少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物(H);粘着付与剤;無機充填剤、例えばシリカ、酸化チタン、ガラス、アルミナ、又は酸化亜鉛;ポリメタクリレート樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂微粉末;並びに、本発明の目的が損なわれない限りにおいて、顔料又は蛍光物質を更に含有し得る。
【0048】
成分(H)は、分子中に少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有する有機化合物である限りにおいて限定されず、好ましくは25℃で液体である。成分(H)の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは1~500mPa・sの範囲内である。
【0049】
そのような成分(H)の例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフランアクリレート、ベンジルアクリレート、o-フェニルフェノールエトキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、2-プロペン酸オクタヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-5-イルエステル、デシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、アリルメタクリレート、ジビニルスルホン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0050】
更に、粘着付与剤の例としては、シラン化合物、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;ケイ素原子結合アルケニル基及び/又はケイ素原子結合水素原子のうちの少なくとも1つ、及び少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を分子中に有するシロキサン化合物;少なくとも1つのケイ素原子結合アルコキシ基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物と、
分子中に少なくとも1つのケイ素原子結合ヒドロキシ基と、少なくとも1つのケイ素原子結合アルケニル基を有するシロキサン化合物との混合物;メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、及びエポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられる。粘着付与剤の含有量は限定されないが、その含有量は、成分(A)100質量部当たり、好ましくは0.01~10質量部の範囲内である。
【0051】
本組成物の25℃における粘度は限定されないが、その粘度は、好ましくは100~100,000mPa・sの範囲内、又は任意に500~10,000mPa・sの範囲内である。これは、本組成物の粘度が上記範囲の下限以上であるとき、機械的強度の高い硬化物が得られるためである。一方、粘度が上記範囲の上限以下であるとき、得られる組成物の被覆性/作業性が優れたものとなり、硬化物においてボイドの形成が回避される。
【0052】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上記の光硬化性シリコーン組成物に光を照射することにより得られる。本組成物を硬化させるために使用される光の例としては、紫外線及び可視光が挙げられるが、250~500nmの範囲の波長を有する光が好ましい。これは、優れた硬化性が得られ、硬化物が光により分解されないためである。
【0053】
硬化物は、典型的には、光学的に透明である。これは、好ましくは、光デバイス又は画像表示に硬化物を使用する場合、光学的な透明性が高性能にとって望ましいためである。硬化物の形態は限定されず、シート、フィルム、又はブロックの形態であることができる。硬化物は様々な基板と組み合わせることができる。硬化物は、典型的には、同じ基板又は異なる基板間、特に光デバイス内の同じ基板又は異なる基板間で積層される。
【0054】
硬化物の状態は限定されないが、好ましくはエラストマー又はゲルである。硬度は、ショアOO硬度において、好ましくは0~80の範囲内、又は任意に10~70の範囲内である。これは、硬化物が上記の範囲内である場合、変形に対する良好な凝集力及び材料破砕に対する良好な可撓性が得られるためである。なお、本明細書において、ショアOO硬度は、ASTM D 2240に従ってOO硬度を用いて23±2℃において測定した値である。
【0055】
<硬化物の製造方法>
硬化物の製造方法は、以下の:
i-1)基板のうちの少なくとも1つが透明であるという条件で、同じ基板又は異なる基板間に本発明の光硬化性シリコーン組成物を積層するステップと、
i-2)光硬化性シリコーン組成物を、透明基板を通して光に曝露するステップと、を含む、方法によって例示されるが、限定されない。
【0056】
ステップi-1では、光硬化性シリコーン組成物は、光を遮断する基板(例えば、黒色の基板)の表面に適用される。コーティング方法の例としては、スリットコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷等が挙げられる。光硬化性シリコーン組成物の厚さは限定されないが、好ましくは50~1,000μmの範囲内、任意に50~500μmの範囲内、又は任意に100~350μmの範囲内である。次いで、遮光部を有する透明基板を、上記のような光硬化性シリコーン組成物の表面に積層する。積層は、空気中又は真空中のいずれかで実施することができる。積層中に気泡が生じるのを防ぐために、真空中で積層することが好ましい。また、積層は、プレス等によって加圧下で実施することができる。
【0057】
ステップi-2では、透明領域を硬化させるために、紫外線硬化が紫外線照射によって実施される。例えば、低圧、高圧、若しくは超高圧水銀ランプ、ハロゲン化金属ランプ、(パルス)キセノンランプ、又は無電極ランプは、UVランプとして有用である。照射線量は、好ましくは5~6,000mJ/cmの範囲内、又は任意に10~4,000mJ/cmの範囲内である。
【0058】
透明基板の遮光部により、光を通すことができず、未硬化の光硬化性シリコーン組成物が遮光部の底部に存在する。遮光部を硬化させるために、側部硬化は、UV LED(発光ダイオード)ランプによって実施される。UV LEDランプの典型的な波長は、365nm、385nm、395nm、及び405nmである。好ましくは、365nm及び395nmが全般に使用される。照射は、好ましくは50~2,000mJ/cmの範囲内、又は任意に100~1,000mJ/cmの範囲内である。照射時間は、好ましくは、1~120秒の範囲内、又は任意に15~60秒の範囲内である。「未硬化」という用語は、25℃環境下で流動性がある状態を示す。
【0059】
硬化物を製造する別の方法は、以下の:
ii-1)本発明の光硬化性シリコーン組成物を透明又は不透明(又は不透明(opaque))基板上に適用するステップと、
ii-2)光硬化性シリコーン組成物を光に曝露して、半硬化状態でシリコーン生成物を形成するステップと、
ii-3)シリコーン生成物を別の透明又は不透明基板と積層するステップと、
ii-4)シリコーン生成物を、透明基板を通して光に曝露するステップと、を含むことができる。
【0060】
ステップii-1では、光硬化性シリコーン組成物を基板の表面に適用する。コーティング方法の例としては、上記の方法が挙げられる。光硬化性シリコーン組成物の厚さは限定されないが、好ましくは50~1,000μmの範囲内、任意に50~500μmの範囲内、又は任意に100~350μmの範囲内である。
【0061】
ステップii-2では、適用された光硬化性シリコーン組成物は、UV LEDランプによって部分的に硬化されて、非流動性未硬化層を形成する。「未硬化」という用語は、25℃で流動性がないが、完全架橋網状組織ではない状態(液体と完全硬化物との間の中間物理的特性を有する状態)を示す。紫外線硬化は紫外線照射によって行われ、紫外線に近い光線を照射するランプの場合、紫外線の光源は重要ではない。典型的には、硬化速度を正確に制御するために、UV LEDランプが全般に使用される。UV LEDランプの典型的な波長は、365nm、385nm、395nm、及び405nmである。好ましくは、365nm及び395nmが全般に使用される。照射線量は、好ましくは5~1,000mJ/cmの範囲内、又は任意に10~500mJ/cmの範囲内である。紫外線の照射は通常、空気中、コーティング側の上面(通常、好ましくは表面から照射された大気)である。表面酸素阻害を防止する必要がある場合、光硬化性シリコーン組成物は、窒素及び二酸化炭素などの硬化抑制を引き起こさないガスの環境内の紫外線で照射してもよい。
【0062】
ステップii-3では、遮光部を有する透明基板を、上記で調製された、コーティングされた光硬化性シリコーン組成物の表面に適用する。積層は、空気中及び真空中のいずれかで実施することができる。積層中に気泡が生じるのを防ぐために、真空中で積層することが好ましい。また、積層は、プレス等によって加圧下で実施することができる。
【0063】
ステップii-4では、透明領域を硬化させるために、紫外線硬化が紫外線照射によって実施される。例えば、低圧、高圧、若しくは超高圧水銀ランプ、ハロゲン化金属ランプ、(パルス)キセノンランプ、又は無電極ランプは、UVランプとして有用である。照射線量は、好ましくは5~6,000mJ/cmの範囲内、又は任意に10~4,000mJ/cmの範囲内である。
【0064】
透明基板の遮光部により、光を通すことができず、未硬化の光硬化性シリコーン組成物が遮光部の底部に存在する。遮光部を硬化させるために、側部硬化は、UV LED(発光ダイオード)ランプによって実施される。UV LEDランプの典型的な波長は、365nm、385nm、395nm、及び405nmである。好ましくは、365nm及び395nmが全般に使用される。照射は、好ましくは50~2,000mJ/cmの範囲内、又は任意に100~1,000mJ/cmの範囲内である。照射時間は、好ましくは、1~120秒の範囲内、又は任意に15~60秒の範囲内である。「未硬化」という用語は、25℃環境下で流動性がある状態を示す。
【0065】
硬化物は、光デバイス又は画像表示における積層体として有用である。光デバイスは、例えば、光半導体デバイスである。光半導体デバイスの例としては、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、及びCCDが挙げられる。更に、光半導体素子として、発光ダイオード(LED)素子及び固体画像センサが示される。特に、多数の小LED素子が基板上に配置された構造を有するいわゆるマイクロLED(ミニLED)を集合的にシーリングする場合であっても、本発明の光硬化性シリコーン組成物を好適に使用することができる。このとき、硬化物の屈折率は、アリール基の含有量などの官能基の種類を選択することによって、必要に応じて調整され得る。更に、本発明の光硬化性シリコーン組成物は耐熱性及び耐湿性に優れているため、透明性が低下し難く、濁りがほとんど引き起こされない。したがって、マイクロLEDを含む光半導体デバイスの光取り出し効率を良好に維持することができるという利点がある。
【実施例
【0066】
本発明の光硬化性シリコーン組成物及び硬化物を、実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。なお、式中、「Me」、「Ph」、「Vi」はそれぞれ、メチル基、フェニル基、及びビニル基を示す。光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を以下のように測定した。
【0067】
<粘度>
23±2℃での粘度を、ASTM D 1084「Standard Test Methods for Viscosity of Adhesive」に従って、B型粘度計(Brookfield LVF Type回転粘度計を、60rpmでスピンドル#2を使用して)を使用することによって測定した。
【0068】
<硬度>
光硬化性シリコーン組成物を所定の形状のくぼみを有する成形型に注ぎ、累積照射量が4,000mJ/cmであるように、紫外線を高圧水銀ランプで上部の液体表面から照射した。得られた硬化物の硬度を、ASTM D 2240-00によって規定された方法に従って、Type OO押し込み硬度計によって測定した。
【0069】
<透過率及び黄色度指数(YI)>
上記のように硬化した500μmの厚さを有する板状硬化物の透過率及び黄色度指数を、ASTM D 1003(UV-可視分光計)によって規定された方法によって測定した。黄色度指数(YI)を、ASTM D 1925(分光光度計、CM-3600A)によって上記と同じ方法で測定した。
【0070】
<QUV老化試験>
光疲労に対する耐性を、0.89W/m/nm(ASTM G154 サイクル1)に較正されたUVA-340ランプを備えたQUV促進耐候試験機(Q-PanelCo.、Cleveland,Ohio)によって決定した。上記のように硬化した500μmの厚さを有する板状硬化物を、60℃の温度で8時間の照射、及び50℃の温度で4時間の暗所(縮合)からなる1サイクル当たり連続12時間、QUV促進耐候試験機で照射した。その後、板状硬化物を48サイクル(24日間)保持し、上記と同じ方法で黄色度指数(YI)を測定した。
【0071】
<深部硬化特性>
光硬化性シリコーン組成物を2cmの厚さの2つの黒色板からなる成形型に注ぎ、板を500μmの厚さのスペーサによって分離した。UV照度1000mW/cmでの紫外線を、365nmLEDランプ(FireJet(商標)FJ100)を用いて、上部の液体表面から30秒間及び60秒間照射した。次いで、UV照度200mW/cmでの紫外線を、395nmLEDランプ(FireJet(商標)FJ100)を用いて、上部の液体表面から30秒間及び60秒間照射した。照射後、試験片を分解し、硬化によって流動性を失う部分の長さ(cm)を測定した。
【0072】
<実施例1~2及び比較例1~4>
光硬化性シリコーン組成物を、表1に示す組成(質量部)を用いて、以下の成分から、自転公転真空ミキサー(Thinkyミキサー)によって調製した。なお、実施例1~2及び比較例1~4の光硬化性シリコーン組成物を調製して、成分(a1)及び(a2)中の全脂肪族炭素-炭素二重結合の1モルに対して、成分(b1)中に0.8モルのチオール基を得た。この光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を表1に示す。
【0073】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(A)として使用した。
(a1)40,000mPa・sの粘度を有し、以下の平均式:
ViMeSiO(MePhSiO)92SiMeVi
(平均組成式:Vi0.02Me1.02Ph0.98SiO0.99)で表されるオルガノポリシロキサン。
(a2)3,000mPa・sの粘度を有し、以下の平均式:
ViMeSiO(MePhSiO)23SiMeVi
(平均組成式:Vi0.08Me1.08Ph0.92SiO0.96)で表されるオルガノポリシロキサン。
【0074】
以下の有機化合物を成分(B)として使用した。
(b1):トリメチロールプロパントリス(3-チオプロピオネート)
【0075】
以下の光ラジカル開始剤を成分(C)として使用した。
(c1):エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート
【0076】
以下のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を成分(D)として使用した。
(d1)以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化13】
(d2)以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物の混合物、
【化14】
及び以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物。
【化15】
【0077】
以下のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を成分(D)の比較として使用した。
(d3)以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化16】
(d4)以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物、
【化17】
(d5)以下の式によって表されるヒドロキシフェニルトリアジン化合物。
【化18】
【表1】
【0078】
比較例1は、トリアジン添加剤の欠如により、QUV老化試験中に激しい黄変/褐変を示した。黄色度指数は、0.24から24.12に増加した。一方、実施例1~2及び比較例2~4は、トリアジン添加剤の添加のために、QUV老化試験中に良好な光学的安定性を示した。これらの添加剤は、光照射条件下で光硬化性シリコーン組成物の硬化物を効果的に安定化したことが明らかになった。同時に、これらの添加剤は、透過率が表1に要約されるようにUVA及びUVB領域の範囲での吸収が高いため、深部硬化特性を低下させた。それらの中でも、それぞれ実施例1及び2の成分(d1)及び(d2)などの特定のヒドロキシフェニルトリアジン化合物は、それぞれ比較例2、3及び4の成分(d3)、(d4)及び(d5)などの他のヒドロキシフェニルトリアジン化合物と比較して優れた深部硬化特性を示すことが明らかとなった。
【0079】
<実施例3~6及び比較例5~8>
光硬化性シリコーン組成物を、表2に示す組成(質量部)を用いて、上記の成分から、自転公転真空ミキサー(Thinkyミキサー)によって調製した。なお、実施例3~6及び比較例5~8の光硬化性シリコーン組成物を調製して、成分(a1)及び(a2)中の全脂肪族炭素-炭素二重結合の1モルに対して、成分(b1)中に0.8モルのチオール基を得た。この光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を表2に示す。
【表2】
【0080】
実施例3~6及び比較例5~8は、0.1ppbの成分(c1)を含有していた。実施例3~6及び実施例1では、成分(d1)の量を0.05から1に変更した。成分(d1)の含有量が低下するにつれて、QUV老化試験後に、より多くの黄変が現れた。成分(d1)の含有量が増加するにつれて、深部硬化特性及び初期黄変にわずかな悪影響が現れた。成分(d1)の好ましい含有量は、組成物の1ppb未満及び0.05ppb(質量)よりも高いと思われる。最も好ましい範囲は、組成物の0.1~0.5ppb(質量)である。一方、比較例5~8では、成分(d4)を成分(d1)の代わりに使用し、不十分な側部硬化特性を示した。
【0081】
<実施例7~12及び比較例9~13>
光硬化性シリコーン組成物を、表3に示す組成(質量部)を用いて、上記の成分及び以下の成分から、自転公転真空ミキサー(Thinkyミキサー)によって調製した。なお、実施例7~12及び比較例9~13の光硬化性シリコーン組成物を調製して、成分(a1)及び(a2)中の全脂肪族炭素-炭素二重結合の1モルに対して、成分(b1)中に0.8モルのチオール基を得た。この光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を表3に示す。
【0082】
以下の光ラジカル開始剤を成分(C)として使用した。
(c2):90質量%のエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートと10質量%のフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドとの混合物
(c3):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
【0083】
以下の光開始剤を、成分(C)の比較として使用した。
(c4)1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン
(c5)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン
【表3】
【表4】
【0084】
実施例7~12に示されるようなリン含有光開始剤は、単純なフェニルケトンタイプの光開始剤を含有する比較例9~13と比較して優れた深部硬化特性を示した。光開始剤の量が1ppbに増加するにつれて、より激しい黄変が現れた。含有量は、好ましくの組成物の<1ppb、より好ましくは<0.05である。
【0085】
<比較例14~24>
光硬化性シリコーン組成物を、表4に示す組成(質量部)を用いて、上記の成分及び以下の成分から、自転公転真空ミキサー(Thinkyミキサー)によって調製した。なお、比較例14~24の光硬化性シリコーン組成物を調製して、成分(a1)及び(a2)中の全脂肪族炭素-炭素二重結合の1モルに対して、成分(b1)中に0.8モルのチオール基を得た。光硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の特性を表4に示す。
【表5】
【表6】
【0086】
成分(d4)を含むため、全ての比較例14~24は、不十分な深部硬化特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本組成物は、紫外線及び可視光等の高エネルギー線を照射すると容易に硬化し、透明な硬化物を提供し、優れた深部硬化性を有する。したがって、本組成物は、様々なポッティング剤、シーリング剤、及び接着剤として有用である。本硬化物は、高い光学的な透明性、及び優れた接着特性を有する。したがって、本硬化物は、光デバイス及び画像表示などの積層体として有用である。
【国際調査報告】