(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】計測ランドスケープに基づく計測最適化のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230125BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230125BHJP
G03F 9/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B11/00 Z
G03F9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530818
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 US2020039476
(87)【国際公開番号】W WO2021107986
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレイン ダナ
(72)【発明者】
【氏名】マルチアノ タル
(72)【発明者】
【氏名】アルモン ノア
【テーマコード(参考)】
2F065
2H197
4M106
【Fターム(参考)】
2F065AA20
2F065BB02
2F065CC19
2F065DD03
2F065FF41
2F065FF44
2F065FF48
2H197HA03
2H197JA17
2H197JA23
4M106AA01
4M106CA21
4M106CA39
4M106DJ17
4M106DJ18
4M106DJ19
4M106DJ20
(57)【要約】
プロセスばらつきに対する計測の感度を定量化する方法であって、計測ツールによって、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行し、それによって計測ランドスケープを生成することと、上記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算することであって、上記感度指標が、上記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する上記計測ランドスケープの感度を定量化することと、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスばらつきに対する計測の感度を定量化する方法であって、
計測ツールによって、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行し、それによって計測ランドスケープを生成することと、
前記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算することであって、前記感度指標が、前記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する前記計測ランドスケープの感度を定量化する、ことと、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行することが、複数の計測ターゲットに対して計測を実行することを含み、
前記感度指標を計算することが、前記複数の計測ターゲットのそれぞれについて感度指標を計算することを含み、前記方法がさらに、
前記複数の計測ターゲットのそれぞれについて計算された前記感度指標を比較することと、前記複数の計測ターゲットの別のものに比べて前記プロセスばらつきに対して最も低い感度を有する最適な計測ターゲットとして、前記複数の計測ターゲットから選定計測ターゲットを選択することをさらに含み、前記選択は、前記選定計測ターゲットの前記感度指標の値が、前記複数の計測ターゲットの前記別のものの前記感度指標の値よりも低いことに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選定計測ターゲットを選択することの後に、
前記計測ツールによって、前記半導体ウェハに対して、前記選定計測ターゲットを利用する計測をさらに実行し、それによって追加の計測ランドスケープを生成することと、
前記追加の計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解することと、
前記追加の計測ランドスケープに対する前記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化することと、
前記定量化によって得られた前記寄与分を、前記追加の計測ランドスケープから取り除くことによって、前記追加の計測ランドスケープを補正することと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記感度指標の値に基づいて、前記計測ランドスケープの、前記プロセスばらつきにより生じる誤差を補正すること、をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記計測を実行することが、複数の波長にまたがって計測を実行することを含み、前記計測ランドスケープが、前記多数の波長に応じた計測測定値の変動の尺度となっている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記計測測定値が、前記半導体ウェハの層間の位置ずれの測定値を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記感度指標の値を前記多数の波長の値と相関させることに基づいて、前記多数の波長の別の波長に比べてプロセスばらつきに対して最小の感度を有する最適な波長を、前記多数の波長から選択することと、
前記計測ツールによって、前記半導体ウェハに対して、前記最適な波長を利用する計測をさらに実行することと、
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の条件の下で前記計測を実行することと、前記複数の条件のそれぞれについて前記感度指標を計算することと、前記複数の条件のうちの、計算された最低の感度指標値を有する条件に従って、前記計測の前記実行を最適化することを、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記感度指標が、
【数1】
に従って計算され、ここで、S
metricは前記感度指標、Nは前記計測ランドスケープの関心部分を測定する前記多数の波長の数、iは波長添字、MIS
iは前記多数の波長N個のうちの波長iでの位置ずれ測定値、w
iは波長の重み、<MIS>は前記のランドスケープ全体の加重平均位置ずれであり、<MIS>=Σw
iMIS
i/Σw
iによって与えられ、χは+1または-1の値をとり得る、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
プロセスばらつきに対する計測の感度を定量化するためのシステムであって、
半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行するように動作する計測ツールであって、計測ランドスケープを生成する計測ツールと、
前記計測ランドスケープを受信し、前記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算するように動作する感度指標計算機であって、前記感度指標が、前記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する前記計測ランドスケープの感度を定量化する、感度指標計算機と、
を備えるシステム。
【請求項11】
前記計測ツールが、複数の波長にまたがって前記計測を実行するように動作し、前記計測ランドスケープが、前記多数の波長に応じた計測測定値の変動の尺度となっており、前記計測ツールが、前記感度指標の値を前記多数の波長の値と相関させることに基づいて、前記多数の波長の別の波長に比べてプロセスばらつきに対して最小の感度を有する最適な波長を、前記多数の波長から選択するように動作し、
前記計測ツールが、前記半導体ウェハに対して、前記最適な波長を利用する追加の計測を実行し、それによって追加の計測ランドスケープを生成するように動作する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記計測ツールが、複数の計測ターゲットに対して前記計測を実行するように動作し、前記感度指標計算機が、前記複数の計測ターゲットのそれぞれについて感度指標を計算するように動作し、
前記感度指標計算機がさらに、前記複数の計測ターゲットのそれぞれについて計算された前記感度指標を比較し、前記複数の計測ターゲットの別のものに比べて前記プロセスばらつきに対して最も低い感度を有する最適な計測ターゲットとして、前記複数の計測ターゲットから選定計測ターゲットを選択するように動作し、前記選択は、前記選定計測ターゲットの前記感度指標の値が、前記複数の計測ターゲットの前記別のものの前記感度指標の値よりも低いことに基づいている、
請求項10または請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記計測ツールが、複数の条件の下で前記計測を実行するように動作し、前記感度指標計算機が、前記複数の条件のそれぞれについて前記感度指標を計算するように動作し、前記計測の実行が、前記複数の条件のうちの、計算された最低の感度指標値を有する条件に従って最適化される、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記感度指標が、
【数2】
に従って計算され、ここで、S
metricは前記感度指標、Nは前記計測ランドスケープの関心部分を測定する前記多数の波長の数、iは波長添字、MIS
iは前記多数の波長N個のうちの波長iでの位置ずれ測定値、w
iは波長の重み、<MIS>は前記のランドスケープ全体の加重平均位置ずれであり、<MIS>=Σw
iMIS
i/Σw
iによって与えられ、χは+1または-1の値をとり得る、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
ランドスケープ分解器をさらに備え、前記ランドスケープ分解器が、
前記追加の計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解し、
前記追加の計測ランドスケープに対する前記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化し、
前記寄与分を、前記追加の計測ランドスケープから取り除くことによって、前記追加の計測ランドスケープを補正する、
ように動作する、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解することと、
前記計測ランドスケープに対する前記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化することと、
前記定量化によって得られた前記寄与分を、前記計測ランドスケープから取り除くことによって、前記追加の計測ランドスケープを補正することと、
を含む、計測の成分を定量化する方法。
【請求項17】
前記分解が、前記計測ランドスケープの主成分分析によって実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分解が、生の不正確さレベル、モデル化された不正確さレベル、および残差の不正確さレベルのうちの少なくとも1つについて実行される、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分解前に、
計測ツールによって、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行し、それによって前記計測ランドスケープを生成することと、
前記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算することであって、前記感度指標が、前記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する前記計測ランドスケープの感度を定量化する、ことと、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
計測の成分を定量化するためのシステムであって、
半導体ウェハに対して計測を実行し、計測ランドスケープを出力するように動作する計測ツールと、
ランドスケープ分解器であって、前記計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解し、前記計測ランドスケープに対する前記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化し、前記寄与分を、前記計測ランドスケープから取り除くことによって、前記計測ランドスケープを補正するように動作する、ランドスケープ分解器と、
を備えるシステム。
【請求項21】
前記ランドスケープ分解器が、前記計測ランドスケープをその前記成分に分解するために、前記計測ランドスケープに対して主成分分析を実行するように動作する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記ランドスケープ分解器が、生の不正確さレベル、モデル化された不正確さレベル、および残差の不正確さレベルのうちの少なくとも1つについて、前記計測ランドスケープを分解するように動作する、請求項20または請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記計測ランドスケープを受信し、前記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算するように動作する感度指標計算機であって、前記感度指標が、前記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する前記計測ランドスケープの感度を定量化する、感度指標計算機を、さらに備える、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に計測に関し、より詳細には、半導体ウェハに対する位置ずれ測定に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本明細書では、2019年11月28日に出願された「LANDSCAPE DECOMPOSITION FOR IDENTIFYING AND QUANTIFYING THE IMPACT OF PROCESS VARIATION AND NOISE WITHIN METROLOGY MEASUREMENT」というタイトルの米国仮特許出願第62/941,726号を参照し、その開示内容を参照により援用し、その優先権を主張する。
【0003】
半導体ウェハの製造における位置ずれを測定するための様々なシステムおよび方法が当技術分野で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0074227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するための新規のシステムおよび方法を提供することである。上記分析は、計測ランドスケープに基づく、ならびに/あるいは計測ランドスケープ中の不正確さに対する各寄与分を特定し低減するために、計測ランドスケープの分解に基づく、感度指標の計算を含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の好ましい実施形態に従って、プロセスばらつきに対する計測の感度を定量化する方法が提供され、上記方法は、計測ツールによって、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行し、それによって計測ランドスケープを生成することと、上記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算することであって、上記感度指標が、上記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する上記計測ランドスケープの感度を定量化する、ことを含む。
【0007】
本発明の好ましい一実施形態によると、上記少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行することが、複数の計測ターゲットに対して計測を実行することを含み、上記感度指標を計算することが、上記複数の計測ターゲットのそれぞれについて感度指標を計算することを含み、上記方法はさらに、上記複数の計測ターゲットのそれぞれについて計算された上記感度指標を比較することと、上記複数の計測ターゲットの別のものに比べて上記プロセスばらつきに対して最も低い感度を有する最適な計測ターゲットとして、上記複数の計測ターゲットから選定計測ターゲットを選択することを含み、上記選択は、上記選定計測ターゲットの上記感度指標の値が、上記複数の計測ターゲットの上記別のものの上記感度指標の値よりも低いことに基づいている。
【0008】
さらに、本発明の好ましい一実施形態によると、上記方法は、上記選定計測ターゲットを選択することの後に、上記計測ツールによって、上記半導体ウェハに対して、上記選定計測ターゲットを利用する計測をさらに実行し、それによって追加の計測ランドスケープを生成することと、上記追加の計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解することと、上記追加の計測ランドスケープに対する上記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化することと、上記定量化によって得られた上記寄与分を、上記追加の計測ランドスケープから取り除くことによって、上記追加の計測ランドスケープを補正することを、さらに含む。
【0009】
好ましくは、上記方法は、上記感度指標の値に基づいて、上記計測ランドスケープの、上記プロセスばらつきにより生じる誤差を補正することを、さらに含む。
【0010】
好ましくは、上記計測を実行することが、多数の波長にまたがって計測を実行することを含み、上記計測ランドスケープが、上記多数の波長に応じた計測測定値の変動の尺度となる。
【0011】
好ましくは、上記計測測定値が、上記半導体ウェハの層間の位置ずれの測定値を含む。
【0012】
本発明の別の好ましい実施形態によると、上記方法は、上記感度指標の値を上記多数の波長の値と相関させることに基づいて、上記多数の波長の、別の波長に比べてプロセスばらつきに対して最小の感度を有する最適な波長を、上記多数の波長から選択することと、上記計測ツールによって、上記半導体ウェハに対して、上記最適な波長を利用する計測をさらに実行することを、さらに含む。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態によると、上記方法は、複数の条件の下で上記計測を実行することと、上記複数の条件のそれぞれについて上記感度指標を計算することと、上記複数の条件のうちの、計算された最低の感度指標値を有する条件に従って、上記計測の上記実行を最適化することを、さらに含む。
【0014】
好ましくは、上記感度指標が、
【数1】
に従って計算され、ここで、S
metricは上記感度指標、Nは上記計測ランドスケープの関心部分を測定する上記多数の波長の数、iは波長添字、MIS
iは上記多数の波長N個のうちの波長iでの位置ずれ測定値、w
iは波長の重み、<MIS>は上記のランドスケープ全体の加重平均位置ずれであり、<MIS>=Σw
iMIS
i/Σw
iによって与えられ、χは+1または-1の値をとり得る。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、プロセスばらつきに対する計測の感度を定量化するためのシステムがさらに提供され、上記システムは、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行するように動作する計測ツールであって、計測ランドスケープを生成する計測ツールと、上記計測ランドスケープを受信し、その計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算するように動作する感度指標計算機であって、上記感度指標が、上記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する上記計測ランドスケープの感度を定量化する、感度指標計算機とを備える。
【0016】
本発明のシステムの好ましい実施形態によると、上記計測ツールが、複数の波長にまたがって上記計測を実行するように動作し、上記計測ランドスケープが、上記多数の波長に応じた計測測定値の変動の尺度となっており、上記計測ツールは、上記感度指標の値を上記多数の波長の値と相関させることに基づいて、上記多数の波長の別の波長に比べてプロセスばらつきに対して最小の感度を有する最適な波長を、上記多数の波長から選択するように動作し、上記計測ツールは、上記半導体ウェハに対して、上記最適な波長を利用する追加の計測を実行し、それによって追加の計測ランドスケープを生成するように動作する。
【0017】
本発明のシステムの別の好ましい実施形態によると、上記計測ツールが、複数の計測ターゲットに対して上記計測を実行するように動作し、上記感度指標計算機が、上記複数の計測ターゲットのそれぞれについて感度指標を計算するように動作し、上記感度指標計算機がさらに、上記複数の計測ターゲットのそれぞれについて計算された上記感度指標を比較し、上記複数の計測ターゲットの別のものに比べて上記プロセスばらつきに対して最も低い感度を有する最適な計測ターゲットとして、上記複数の計測ターゲットから選定計測ターゲットを選択するように動作し、上記選択は、上記選定計測ターゲットの上記感度指標の値が、上記複数の計測ターゲットの上記他のものの上記感度指標の値よりも低いことに基づいている。
【0018】
本発明のシステムの別の好ましい実施形態によると、上記計測ツールが、複数の条件の下で上記計測を実行するように動作し、上記感度指標計算機が、上記複数の条件のそれぞれについて上記感度指標を計算するように動作し、上記計測の実行が、上記複数の条件のうちの、計算された最低の感度指標値を有する条件に従って最適化される。
【0019】
好ましくは、上記感度指標が、
【数2】
に従って計算され、ここで、S
metricは上記感度指標、Nは上記計測ランドスケープの関心部分を測定する上記多数の波長の数、iは波長添字、MIS
iは上記多数の波長N個のうちの波長iでの位置ずれ測定値、w
iは波長の重み、<MIS>は上記のランドスケープ全体の加重平均位置ずれであり、<MIS>=Σw
iMIS
i/Σw
iによって与えられ、χは+1または-1の値をとり得る。
【0020】
好ましくは、上記システムは、ランドスケープ分解器をさらに備え、上記ランドスケープ分解器が、上記追加の計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解し、上記追加の計測ランドスケープに対する上記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化し、上記寄与分を、上記追加の計測ランドスケープから取り除くことによって、上記追加の計測ランドスケープを補正する、ように動作する。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態によると、計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解することと、上記計測ランドスケープに対する上記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化することと、上記定量化によって得られた上記寄与分を、上記計測ランドスケープから取り除くことによって、上記計測ランドスケープを補正することを含む、計測の成分を定量化する方法が、さらに提供される。
【0022】
好ましくは、上記分解が、上記計測ランドスケープの主成分分析によって実行される。
【0023】
好ましくは、上記分解が、生の不正確さレベル、モデル化された不正確さレベル、および残差の不正確さレベルのうちの少なくとも1つについて実行される。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態によると、上記方法は、上記分解前に、計測ツールによって、半導体ウェハ上にある少なくとも1つの部位に位置する少なくとも1つの計測ターゲットに対して計測を実行し、それによって計測ランドスケープを生成することと、上記計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算することであって、上記感度指標が、上記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する上記計測ランドスケープの感度を定量化する、ことをさらに含む。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態に従って、計測の成分を定量化するためのシステムがさらに提供され、上記システムは、半導体ウェハに対して計測を実行し、計測ランドスケープを出力するように動作する計測ツールと、ランドスケープ分解器であって、上記計測ランドスケープを、少なくとも、そのシステマティック誤差により生じる成分と非システマティック誤差により生じる成分とに分解し、上記計測ランドスケープに対する上記成分のうちの少なくとも1つの寄与分を定量化し、上記寄与分を、上記計測ランドスケープから取り除くことによって、上記計測ランドスケープを補正するように動作する、ランドスケープ分解器とを備える。
【0026】
好ましくは、上記ランドスケープ分解器が、上記計測ランドスケープをその成分に分解するために、上記計測ランドスケープに対して主成分分析を実行するように動作する。
【0027】
好ましくは、上記ランドスケープ分解器が、生の不正確さレベル、モデル化された不正確さレベル、および残差の不正確さレベルのうちの少なくとも1つについて、上記計測ランドスケープを分解するように動作する。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態によると、上記システムは、上記計測ランドスケープを受信し、その計測ランドスケープに直接基づいて感度指標を計算するように動作する感度指標計算機であって、上記感度指標が、上記半導体ウェハの製造に関わるプロセスばらつきに対する上記計測ランドスケープの感度を定量化する、感度指標計算機を、さらに備える。
【0029】
図面と併せて以下の詳細な説明を読めば、本発明についてより一層理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に従って構成され動作する、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するためのシステムの構成要素の概略図である。
【
図2A】
図1に示されているタイプのシステムによって生成された、計測ランドスケープの分析から得られたデータを示す簡略化されたグラフである。
【
図2B】
図2Aに示されているタイプのデータをもたらす、半導体ウェハの表面上にあるターゲット構造体を簡略化した概略図である。
【
図3A】
図1に示されているタイプのシステムによって生成された計測ランドスケープの分析から得られた、別のデータを示す簡略化されたグラフである。
【
図3B】
図1に示されているタイプのシステムによって生成された計測ランドスケープの分析から得られた、別のデータを示す簡略化されたグラフである。
【
図4】
図1に示されているタイプのシステムによって実行され得る、計測の最適化に関わる好ましいステップを示す簡略化された上位のフローチャートである。
【
図5】本発明の別の好ましい実施形態に従って構成され動作する、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するためのシステムの構成要素の概略図である。
【
図6】
図5に示されているタイプのシステムによって実行される、計測ランドスケープの分解に関わる好ましいステップを示す簡略化された上位のフローチャートである。
【
図7】
図6に示されているステップに従って、
図5に示されているタイプのシステムによって生成された、様々な成分に分解された計測ランドスケープを示す簡略化されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、
図1を参照する。
図1は、本発明の好ましい一実施形態に従って構成され動作する、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するためのシステムの構成要素の概略図である。
【0032】
図1から分かるように、好ましくは半導体加工ツール102、計測ツール104および感度指標計算機106を含んだ、計測を最適化するためのシステム100が提供される。上記感度指標計算機106は、加工ツール102で行われる加工におけるプロセスばらつきに対する、計測ツール104で行われる計測の感度を定量化する指標を、計算するためのものである。
【0033】
加工ツール102は、好ましくは、半導体ウェハを加工するように動作し、その一例である半導体ウェハ110がここに示されている。半導体ウェハ110は、1ロットの半導体ウェハに属し得る。そのロットは、加工ツール102が加工を行う1バッチの半導体ウェハの一部分を形成し得る。
【0034】
加工ツール102は、好ましくは、スキャナ等のリソグラフィ・パターニング・ツールとして具体化される。
図1のシステムで有用な加工ツールの例は、オランダ、フェルトホーフェンのASML社から市販されているASMLスキャナ1950iである。加工中、半導体ウェハは、好ましくは、加工ツール102のステージ上に保持され、典型的にはステージ上の2つのチャックに保持される。
【0035】
計測ツール104は、好ましくは、加工ツール102で行われる連続的な加工ステップによって製造される半導体ウェハ110の層の、層間の位置ずれを測定するための位置ずれ測定ツールとして具体化される。計測ツールは、特に好ましくは、半導体ウェハ110の各層上に位置するターゲット間の位置ずれを測定するように動作する。このターゲット間の位置ずれが、各ターゲットが位置する層自体の間の位置ずれを示しているとみなされる。ウェハ110上に位置する計測ターゲット112が、
図1にかなり模式化された形で示されている。
【0036】
計測ツール104は、特に好ましくは、1つまたは複数の計測測定値(位置ずれ等)の、1つまたは複数の計測パラメータ(測定波長等)に対する依存関係を記録する計測スペクトルすなわちランドスケープを出力するように動作する。計測ツール104によって出力される計測ランドスケープを、以後、波長に応じて変動する位置ずれのランドスケープとして説明するが、これは一例に過ぎず、波長以外の計測パラメータに応じた位置ずれ以外の計測測定値をチャート化する別の計測ランドスケープも可能であり、本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0037】
計測ツール104は、画像処理タイプのツールまたは散乱計測タイプのツールを含む任意のタイプの光学計測ツールであり得る。
図1のシステムで有用な計測ツールの例は、米国カリフォルニア州のKLA社から市販されているArcher ATL100である。加工ツール102と計測ツール104は、好ましくは、加工ツール102によって加工された半導体ウェハ110が、計測ツール104に容易に移動されて、そこで計測が実行される得るように、共通の場所に位置する。加工ツール102と計測ツール104との間の半導体ウェハ110の物理的な移動が、
図1に矢印120によって示されている。
【0038】
加工ツール102による半導体ウェハ110の加工は、典型的には、プロセスばらつきを伴い得る。そのプロセスばらつきにより、計測ツール104によって出力される計測測定値信号の中に不正確さが生じ得る。かかるプロセスばらつきには、非対称性のプロセスばらつきと呼ばれるタイプのものがあり得る。非対称性のプロセスばらつきは、例えばターゲットの変形や傾斜、ノイズ等により、計測ターゲット112に非対称性を引き起こし得る。それに加えてまたはその代わりに、上記のプロセスばらつきには、対称性のプロセスばらつきと呼ばれるタイプのものもあり得る。対称性のプロセスばらつきは、層間の光学特性のむらや層厚のむら等、ウェハ110の特性にむらを引き起こし得る。
【0039】
非対称性および/または対称性のプロセスばらつきに起因する計測信号の非対称性が、ウェハ110の層間の実際の位置ずれに起因する計測信号の非対称性に加わる。したがって、計測ツール104によって出力される信号全体は、目的とする所望の測定値であるウェハ110の層間の実際の位置ずれと、プロセスばらつきに起因する不正確な成分と、様々な発生源から生じるノイズに起因するその他の不正確な成分の合計になる。したがって、位置ずれ実測値は、次のように表現され得る。
MISmeasured(λ)=ε+δN(λ) (1)
ここで、MISmeasured(λ)は計測波長λに応じた位置ずれ実測値、εは半導体層間の実際の位置ずれ、δN(λ)は位置ずれ実測値のうちの波長依存である誤差成分である。
【0040】
一態様における本発明の目的は、本明細書で感度(Sensitivity)指標すなわちS指標と呼ぶ新規の指標を提供することである。この指標は、計測ツール104によって測定される計測測定値の、プロセスばらつきに対する感度を定量化するためのものである。つまり、S指標は、上記の式(1)の項δN(λ)の値の尺度を提供する。かかるS指標に基づいて、位置ずれ測定値の、プロセスばらつきにより生じる誤差を自動的に補正するように、アルゴリズムを開発することができる。それに加えてまたはその代わりに、以下に詳細に説明するように、S指標値を最小にして、計測ツール104および/または加工ツール102の動作を最適化することもできる。これらの手法の一方または両方の結果、位置ずれ測定値の精度が向上し得る。
【0041】
S指標は、好ましくは、計測ツール102によって出力される計測ランドスケープに直接基づいて計算される。このS指標により、好ましくは、計測ツール104が測定する計測ランドスケープの少なくとも一部分および任意選択で全ての、プロセスばらつきに対する感度が定量化される。S指標は、好ましくは、以下に従って計算される。
【数3】
(2)
ここで、Nは計測ランドスケープの関心部分を測定する波長の個数、iは波長の添字、MIS
iは複数の波長N個のうちの波長iでの位置ずれ測定値、w
iは波長の重み、<MIS>はランドスケープ全体の加重平均位置ずれであり、次式によって与えられる。
<MIS>=Σw
iMIS
i/Σw
i (3)
【0042】
χは、計測信号の共振方向に応じて+1または-1の値をとり得る。この値は、共振箇所での位置ずれ実測値と共振でない箇所での位置ずれ実測値との差の符号を計算することによって求めることができる。あるいは、χを式(2)から削除し、その代わりにS指標の絶対値を求めることもできる。
【0043】
波長の重みwiは、波長iにおける上記計測測定値の測定可能性を表す一連の可能な各種品質指標のうちの1つに基づいて、定義され得る。こういった品質指標には例えば、画像処理ベースの計測の場合の測定コントラストや、散乱計測ベースの計測の場合の測定感度等がある。品質指標が大きいほど、例えば波長iにおけるコントラストが大きいほど、その波長iでの測定値に割り当てられる相対的な重みは大きくなる。これは、測定可能性が高い状態で取得された測定値には、より大きな重みを与え、測定可能性が低い状態で取得された測定値には、より小さな重みを与えるべきという解釈に基づいている。というのは、計測ランドスケープの一領域での測定可能性が低いほど、その領域での測定値の不正確さが大きくなるからである。
【0044】
好ましくは、ウェハ110の表面上にある多数の部位に対して、特定の一計測ターゲットについてのS指標が測定される。したがって、次式に従って、特定の計測ターゲットを含んだ特定のウェハ表面に対する全体的なS指標を求めることができる。
Wafer_Smetric=<Site_Smetric>s+3*σs(Site_Smetric) (4)
ここで、Wafer_Smetricはウェハの全体的なS指標、sは測定部位の添字、<Site_Smetric>sは全ての測定部位について平均したS指標、3*σs(Site_Smetric)は、測定された全ての部位にまたがるS指標の3σのばらつきである。Wafer_Smetricはターゲットの設計固有のものであり、ウェハ上の特定のターゲットの設計について計算されることが理解されよう。さらに、ウェハS指標は、計測ツール104の構成によって決まり、そのため計測ツール104の特定の構成について計算されることが理解されよう。
【0045】
上記S指標は、好ましくは、計測ツール104によって測定、出力された計測ランドスケープに基づいて、感度指標計算機モジュール106によって自動的に計算される。感度指標計算機モジュール106は、本明細書では、計測ツール104とは異なる別個のモジュールとして示されているが、これは説明を明確にするためであり、感度指標計算機モジュール106の機能は、その代わりに、計測ツール104内に完全にまたは部分的に組み込まれ得ることが理解されよう。感度指標計算機モジュール106は、好ましくは、以下に詳細に説明するように、計算した1つまたは複数のS指標値に基づいて、加工ツール102および計測ツール104の一方または両方にフィードバックを提供するように動作する。
【0046】
特定のターゲット112に対するウェハ110の表面全体にわたるS指標の分布の例が
図2Aに示されている。ここで
図2Aを参照すると、S指標が、ウェハ110上にある多数の部位について計算されていることが分かる。
図2Aに示されているウェハ110全体の分布中に、各部位が1つの丸で表されている。
図2AのS指標の絶対値が大きいほど、その部位における計測ランドスケープの、プロセスばらつきに対する感度が高いことを示し、S指標の絶対値が小さいほど、その部位における計測ランドスケープの、プロセスばらつきに対する感度が低いことを示している。最大のS指標絶対値は、ウェハ110の上端と下端で見られ、ウェハのこれらの領域において、プロセスばらつきに対する感度が最大になっていることを示している。
【0047】
図2Aのウェハの左下側から右上側への方向における、ウェハ全域に見られるS指標の符号の変化は、ウェハ110上にあるターゲット112の非対称性の変化を示している。ターゲットの非対称性のかかる変化が、
図2Bに略図で示されている。ここで
図2Bを参照すると、ターゲット112は、非対称性を引き起こすプロセスばらつき以外は対称性を有する、バー形ターゲット等のターゲットであるように設計されている。ターゲット112の非対称性が物理的に変化すると、それに基づいて計算される、それに対応するS指標値の符号が変化する。S指標の絶対値がウェハの中心に向かって減少していることが分かる。これは、ウェハのその領域で計測ランドスケープのターゲット対称性と精度が良くなっていることを示している。
【0048】
以上より、S指標は、計測ランドスケープに基づいて直接計算され、その計測ランドスケープまたはその一部分の、プロセスばらつきに対する感度の量的尺度を提供することが理解されよう。
【0049】
このS指標値を、いくつかの方法で、計測精度を向上させるために使用することができる。そのうちのいくつかを、以下に、例示として取り上げる。しかしながら、S指標のそれ以外の用途も当業者にとっては明らかであり得、それらが本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0050】
本発明の可能な一実施形態によると、特定の波長で、S指標と位置ずれとの間に相関性が見いだされ得る。例えば、かかる相関性は、コンピュータアルゴリズムによって自動的に見いだされ得る。ある特定の測定波長でウェハ全体のS指標と位置ずれとの間の相関性が高い場合、その特定の波長で、プロセスばらつきに対する感度が高いことを示している可能性があり、したがってその特定の波長は計測にとってあまり好ましくない。逆に、別の特定の測定波長でウェハ全体のS指標と位置ずれとの間の相関性が低い場合は、その別の特定の波長で、プロセスばらつきに対する感度が低いことを示している可能性があり、したがってその別の特定の波長は計測にとってより好ましい。したがって、例えばS指標計算機モジュール106と計測ツール104の間でフィードバックを行うなどによって、プロセスばらつきに対する最小の感度を有する動作方式に従って計測ツールが計測を実行するように、計測ツール104の動作レシピを調整することができる。例えば、位置ずれ実測値と計測ランドスケープ全体のS指標値との相関性が最も低い特定の波長で計測を実行するように、計測ツール104を調整してもよい。最高の精度を提供する計測波長レシピは、min(Ss-MISi,s)によって与えることができる。ここで、MISは位置ずれ測定値、iは波長添字、Sはウェハ110上の特定の部位sのS指標である。
【0051】
それに加えてまたはその代わりに、S指標値に基づいて、スケーリング係数が計算され得る。それによって、特定の計測レシピに対する、位置ずれ測定値の、プロセスばらつきに起因する不正確さが補正される。かかるスケーリング係数は、各部位のS指標値に基づいて部位ごとに計算することも、ウェハ全体で平均化されたS指標値に基づいてウェハごとに計算することもできる。かかるスケーリングは、好ましくは、別途の内部リファレンスまたは外部リファレンスを基にして行われるはずである。こういったリファレンスを使用して、S指標値で表現される不正確さを定量化する(例えば単位はnm)。例えば、上記リファレンスは、異なる計測ツールすなわち異なる計測技術によって測定された、ウェハ全体の各位置ずれ値のマップであり得る。他の例として、上記リファレンスは、ウェハ上にある部位毎の位置ずれ測定値を生成するように機能するアルゴリズムによって提供され得る。
【0052】
それに加えてまたはその代わりに、様々に異なる計測ツール条件下で、ウェハ全体のS指標値のばらつきが測定され得る。それによって、プロセスばらつきに対して最も感度が低い条件が求められる。例えば、2つの異なる偏光下の計測ランドスケープに対して、S指標値が求められ得る。最小のS指標値、またはS指標値の最小のばらつきを示す計測ツール条件が、最適な計測ツール条件として選択され得る。したがって、その選択された最適条件の範囲内で、例えば最適な波長等、計測ツールのレシピが最適化され得る。かかる最適化は、スケーリング計測計算機106から計測ツール104へのフィードバックに基づいて、計測ツール104の動作を調整することによって実行することができる。
【0053】
それに加えてまたはその代わりに、S指標値に基づいて、一連の可能な計測ターゲットの中から、ウェハ110上に形成するのに最適な計測ターゲットが選択され得る。かかる事例では、ウェハ110上に位置する一連のターゲットのS指標値が計算され、プロセスばらつきに対して最小の感度を示すターゲット設計が、最適な計測ターゲットとして選択され得る。かかるターゲットの最適化は、例えば、スケーリング計測計算機106から加工ツール102へフィードバックすることに基づいて実行することができる。
【0054】
図3Aおよび3Bに示されている計測ランドスケープを考慮すると、2つの異なる計測ターゲットの、S指標によって定量化されたプロセスばらつき感度の差を理解することができる。
図3Aおよび3Bには、同じウェハ上に位置する2つの異なる計測ターゲットの計測ランドスケープ実測値が、それぞれ示されている。
図3Aおよび3Bの計測ランドスケープは、いずれも同じ複数の部位にまたがって測定されている。部位ごとの計測ランドスケープが、
図3Aと3Bとで互いに対応する線で示されている。
図3Aのターゲットの3σS指標値は3.4nmに等しく、
図3Bのターゲットの3σS指標値は6.7nmに等しい。したがって、
図3Aのターゲットの方が、
図3Bのターゲットよりも、このS指標値によって特徴付けられるプロセスばらつきに対する感度が低いため、好ましいターゲットになる。自動化されたコンピュータアルゴリズムを使用すると、様々な計測ターゲットの中で最も正確でロバストなターゲットを自動的に選択することができる。したがって、上で述べた別途の技術を使用することによって、選択されたターゲット内部の、プロセスばらつきによって引き起こされる不正確さを低減するように、計測レシピおよび計測ツール設定を最適化することができる。
【0055】
次に
図4を参照する。
図4は、
図1に示されているタイプのシステムによって実行され得る、計測の最適化に関わる好ましいステップを示す簡略化された上位のフローチャートである。
【0056】
図4から分かるように、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するための方法400が、第1のステップ402で開始し得る。第1のステップ402では、半導体ウェハに対して計測が実行され得、それによって計測ランドスケープが生成され得る。第1のステップ402は、例えば、
図1の計測ツール104によって実行され得ることが理解されよう。
【0057】
次に、第2のステップ404にあるように、本明細書でS指標と呼ぶプロセスばらつき感度指標が計算され得る。S指標は、好ましくは、第1のステップ402で生成された計測ランドスケープの少なくとも一部、場合により全てに直接基づいて計算される。S指標は、好ましくは、上記で概略を説明した式(2)~(4)に従って計算される。
【0058】
第3のステップ406、第4のステップ408および第5のステップ410にあるように、第2のステップ404で計算されたS指標に基づいて、様々な計測最適化が実行され得る。第3のステップ406、第4のステップ408および第5のステップ410の全てが必ずしも実行されるとは限らず、これらのステップが必ずしも示された順序で実行されるとは限らないことが理解されよう。さらに、第4のステップ408は、第3のステップ406の後に実行され得るか、または第2のステップ404の後に実行され得ること、同様に、第5のステップ410は、第2のステップ404に続く第4のステップ408の後、または第3のステップ406に続く第4のステップ408の後、または第2のステップ404の直後に、実行され得ることが理解されよう。
【0059】
第3のステップ406にあるように、半導体ウェハ上に配置される一連の可能な計測ターゲットの中から、最適な計測ターゲットが選択され得る。これは、そのターゲットが、別の可能なターゲットよりも低いS指標値を提供するということに基づいている。第3のステップ406は、様々な可能なターゲットについて、ウェハごとまたはウェハ上にある部位ごとのS指標値を測定することを含み得る。最も低いS指標値をもたらすターゲットが、別のターゲットに比べてプロセスばらつきに対して最も低い感度を示すことから、最も正確な計測測定値をもたらすターゲットとして選択され得る。
【0060】
それに加えてまたはその代わりに、第4のステップ408にあるように、計算された上記S指標値に基づいて、計測ツールのレシピおよび/または設定が最適化され得る。本発明の好ましい方法の一実施形態では、第3のステップ406で、まず、最適な計測ターゲットが選択され得る。次に、選択された上記ターゲットに対して、計測ツールのレシピおよび/または設定が最適化され得る。本発明の好ましい方法の別の実施形態では、第4のステップ408で、計測ツールのレシピおよび/または設定が最適化され得る。このステップの前に必ずしも最適なターゲットが選択されるとは限らない。いずれの場合も、最小のS指標値に関連付けられた計測ツールのランドスケープパラメータを見つけ、そのパラメータに従って動作するように計測ツールを調整することに基づいて、計測ツールのレシピが最適化され得る。例えば、最小のS指標値と相関する計測ツールの波長を見いだし、その波長で計測を実行するように計測ツールを調整することができる。この波長は、プロセスばらつきに対して最も低い感度を示すと見なされる波長である。
【0061】
それに加えてまたはその代わりに、第5のステップ410にあるように、半導体ウェハごとに、または半導体ウェハ上にある部位ごとに、S指標値に基づいて、スケーリング係数が計算され得る。上記スケーリング係数は、位置ずれ測定値の、プロセスばらつきに起因する誤差を補正し得る。かかる補正は、好ましくは、必要な補正を定量化するために使用される別途の内部リファレンスまたは外部リファレンスに基づいて実行される。かかるスケーリングは、必ずとは限らないが、好ましくは、ステップ406および408を参照して説明した最適なターゲットの選択とその選択されたターゲットに対する最適な計測レシピの選択の後に実行されることが理解されよう。
【0062】
次に、
図5を参照する。
図5は、本発明の別の好ましい実施形態に従って構成され動作する、計測ランドスケープの分析に基づいて計測を最適化するためのシステムの構成要素の概略図である。
【0063】
図5から分かるように、好ましくは半導体加工ツール502、計測ツール504およびランドスケープ分解器506を含んだ、計測最適化のためのシステム500が提供される。上記ランドスケープ分解器506は、計測ツール504によって生成された計測ランドスケープを分解するためのものである。それによって、計測ランドスケープの各種誤差成分を識別し、その識別された各種誤差成分の、計測ランドスケープ中の不正確さに対する各寄与分を定量化する。
【0064】
加工ツール502は、好ましくは、半導体ウェハを加工するように動作し、その一例である半導体ウェハ510がここに示されている。半導体ウェハ510は、1ロットの半導体ウェハに属し得る。そのロットは、加工ツール502が加工を行う1バッチの半導体ウェハの一部分を形成し得る。
【0065】
加工ツール502は、好ましくは、スキャナ等のリソグラフィ・パターニング・ツールとして具体化される。
図5のシステムで有用な加工ツールの例は、オランダ、フェルトホーフェンのASML社から市販されているASMLスキャナ1950iである。加工中、半導体ウェハは、好ましくは、加工ツール502のステージ上に保持され、典型的にはステージ上の2つのチャックに保持される。
【0066】
計測ツール504は、好ましくは、加工ツール502で行われる連続的な加工ステップによって製造される半導体ウェハ510の層の、層間の位置ずれを測定するための位置ずれ測定ツールとして具体化される。計測ツールは、特に好ましくは、半導体ウェハ510の各層上に位置するターゲット間の位置ずれを測定するように動作する。このターゲット間の位置ずれが、各ターゲットが位置する層自体の間の位置ずれを示しているとみなされる。ウェハ510上に位置する計測ターゲット512が、
図5にかなり模式化された形で示されている。
【0067】
本発明の特に好ましい一実施形態によると、計測ターゲット512の設計は、
図1~4を参照して上記で説明したように、最適な計測ターゲット設計が最小のS指標値を有することに基づいて選択される。本発明のこの実施形態では、
図1のシステム100が、まず、S指標によって定量化される、プロセスばらつきに対する最小の感度を有する最適なターゲット設計を見つけるように動作する。その計算については上記で説明している。次に、最適なターゲット設計512がウェハ510上に形成され、計測ツール504によってそれに対して計測が実行される。かかる実施形態では、
図1に示されているシステム100の機能が、
図5に示されているシステム500の機能と組み合わされ得ることが理解されよう。ここでは、それぞれの説明を明確にすることのみを目的として、これら2つのシステムを区別している。
【0068】
あるいは、計測ターゲット512の設計を、S指標に基づいた事前の最適化を行うことなく、S指標以外の計測選択基準に従って選択してもよい。
【0069】
計測ターゲット512の設計の選択が何に基づいて行われたかに関係なく、計測ツール504は、好ましくは、1つまたは複数の計測測定値(位置ずれ等)の、1つまたは複数の計測パラメータ(測定波長等)に対する依存関係を記録する計測スペクトルすなわちランドスケープを出力するように動作する。計測ツール504によって出力される計測ランドスケープを、以後、波長に応じて変動する位置ずれのランドスケープとして説明するが、これは一例に過ぎず、波長以外の計測パラメータに応じて位置ずれ以外の計測測定値をチャート化する別の計測ランドスケープも可能であり、本発明の範囲に含まれることが理解されよう。
【0070】
計測ツール504は、画像処理タイプのツールまたは散乱計測タイプのツールを含む任意のタイプの光学計測ツールであり得る。
図5のシステムで有用な計測ツールの例は、米国カリフォルニア州のKLA社から市販されているArcher ATL100である。加工ツール502および計測ツール504は、好ましくは、加工ツール502によって加工された半導体ウェハ510が、計測ツール504に容易に移動されて、そこで計測が実行される得るように、共通の場所に位置する。加工ツール502と計測ツール504との間の半導体ウェハ510の物理的な移動が、
図5に矢印520によって示されている。
【0071】
計測ツール504によって生成される計測ランドスケープは、典型的には、システム500内に存在するシステマティックな作用と非システマティックな作用の両方の影響を受け、それにより計測ランドスケープの中に不正確さが生じる。システム500内のシステマティックな不正確性作用は、計測ターゲット512の非対称性に起因する誤差と、加工ツール502で行われる加工におけるプロセスばらつきに起因する誤差を含み得る。システム500内の非システマティックな不正確性作用は、システム500内の様々なノイズ源により生じる誤差を含み得る。これらのノイズ源には、ターゲット512に関連するノイズ、ランダムノイズ、および計測方法自体に関連するノイズが含まれる。こういったシステマティック作用と非システマティック作用が、ランドスケープ実測値に対して寄与することにより、そのランドスケープ実測値は、半導体ウェハ510の層間の実際の位置ずれの、波長に応じた測定値と、システマティック作用と非システマティック作用に起因する誤差成分の両方とを含む。
【0072】
本発明の一態様における、本発明の目的は、計測ツール504によって生成された計測ランドスケープを、システマティック作用と非システマティック作用により生じる成分を含む様々な成分に分解する新規な方法を提供することである。したがって、ランドスケープ実測値に対する上記作用の寄与分を定量化することができ、それにより、ランドスケープ実測値の、こういった作用の補正が可能になる。その結果、計測ツール504によって得られる位置ずれ測定値の精度が向上し得る。
【0073】
計測ツール504によって出力された計測ランドスケープは、好ましくは、ランドスケープ分解器506に提供される。ランドスケープ分解器506は、好ましくは、主成分分析(PCA)モジュール530を含む。PCAモジュール530は、好ましくは、計測ツール504によって生成された計測ランドスケープを受信し、PCAを実行してそのランドスケープをシステマティック作用と非システマティック作用に関連するシグネチャ(signature)成分に分解するように動作する。PCAモジュール530はさらに、好ましくは、システマティック作用と非システマティック作用により生じる上記各成分の、位置ずれ実測値に対する寄与分を定量化するように動作し、それにより、位置ずれ実測値の、これらの作用を補正することが可能になる。
【0074】
ランドスケープ分解器506は、本明細書では、計測ツール504とは異なる別個のモジュールとして示されているが、これは、説明を明確にするためであり、ランドスケープ分解器506の機能は、その代わりに、計測ツール504内に完全にまたは部分的に組み込まれ得ることが理解されよう。ランドスケープ分解器は、好ましくは、以下に詳細に説明するように、それによって実行された分解に基づいて、計測ツール504にフィードバックを提供するように動作する。ランドスケープ分解器506の一部分を形成するPCAモジュール530は、好ましくは、実行されると様々なステップを実施するコンピュータコードを含んだコンピュータモジュールである。これら様々なステップについては、
図6および7を参照して以下に説明する。
【0075】
PCAモジュール530の好ましい動作モードが
図6に示されている。
図6のフローチャート600から分かるように、第1のステップ602で、位置ずれの、その測定が行われる一連の波長全体に対するばらつきが求められる。この波長に関する位置ずれのばらつきが、各位置ずれ測定値の不正確さに対応すると見なされ得る。
【0076】
第2のステップ604にあるように、位置ずれの不正確さすなわちばらつきが、好ましくは、部位ごとの個々のシグネチャに分解される。その個々のシグネチャはそれぞれ、位置ずれ実測値に対する、システマティックまたは非システマティックいずれかの特定の作用を表す。上記分解は、好ましくは、PCAを使用して実行される。PCAの各主成分が、一シグネチャに対応する。上記分解は、生の不正確さ、モデル化された不正確さ、および残差の、3つのレベルのうちの1つ以上に対して実行され得る。
【0077】
画像処理タイプの計測では、半導体ウェハの現在の層と前の層の間で共有される最適な焦点で、様々な撮像波長にまたがって1つのランドスケープ・シグネチャを構築することにより、PCA分解が実行され得る。あるいは、層ごとに最適な焦点で、波長ごとに個別のランドスケープ・シグネチャを構築することにより、PCA分解が実行され得る。あるいは、焦点と波長を介して1つのランドスケープ・シグネチャを構築し、そのランドスケープ・シグネチャを3D分解することによって、PCA分解が実行され得る。あるいは、焦点ごとに複数の波長にまたがって、PCA分析が実行され得る。この焦点は、層ごとの焦点でも共有焦点でもよい。上記PCA分解は、位置ずれ抽出元の生信号であるカーネル自体について、または波長全体にまたがったカーネルについて、実行され得る。
【0078】
散乱タイプの計測では、PCA分解は、ランドスケープレベル、瞳レベル、またはランドスケープレベルと瞳レベルの両方で実行され得る。
【0079】
第3のステップ606にあるように、ステップ604で検出されたシグネチャが、好ましくは、システマティック作用に対応するシグネチャと非システマティック作用に対応するシグネチャにグループ分けされる。システマティック作用に対応するシグネチャと非システマティック作用に対応するシグネチャの識別は、任意の適当な基準に基づき得る。例えば、各主成分をウェハ全体にまたがってモデル化し、生のシグネチャを残差のシグネチャと相関させてもよい。相関性が高い場合、その主成分は非システマティックであると見なすことができ、相関性が低い場合、その主成分はシステマティックであると見なすことができる。それに加えてまたはその代わりに、主成分ごとの説明変動のパーセンテージを調べてもよい。説明変動のパーセンテージが高い場合、例えば50%以上の場合、その主成分はシステマティックであると見なすことができ、説明変動のパーセンテージが低い場合、例えば50%未満の場合、その主成分は非システマティックであると見なすことができる。それに加えてまたはその代わりに、主成分の生のシグネチャとその同じ主成分の残差のシグネチャとの間における、ばらつきの差を求めてもよい。このばらつきの差が特定の閾値を超える場合、その主成分は非システマティックであると見なすことができ、ばらつきの差がその特定の閾値を下回る場合、その主成分はシステマティックであると見なすことができる。
【0080】
次に、第4のステップ608にあるように、各シグネチャすなわち主成分の影響が定量化され得る。シグネチャの影響は、生の位置ずれのばらつき、そのモデル、またはその残差を用いて定量化され得る。生の位置ずれのばらつきをシステマティック作用、非システマティック作用、およびその他の作用に分解した例が
図7に示されている。
図7に示されている分解された計測ランドスケープは、ランドスケープ分解器506(
図5)によって出力され得る。
図7から分かるように、ランドスケープは、第1のプロット702で示されているシステマティックな成分、第2のプロット704で示されている非システマティックな成分、および第3のプロット706で示されているその他の成分に、分解され得る。
図7を考察するとわかるように、計測波長が長くなる方に向かって、最小の不正確さが見られる。これに基づいて、最高の測定精度を示す波長を選択することにより、計測ツール504(
図5)によって実行される計測レシピが最適化され得る。さらに、
図7に示されている分解された成分に基づいて、計測ツール504(
図5)によって出力される計測ランドスケープが、そこから不正確さ成分を除去するように較正され得る。システマティック、非システマティック、またはその両方の作用が除去され得る。
【0081】
第5のステップ610にあるように、各シグネチャまたは主成分が、好ましくは、その物理的意味に関連付けられる。例えば、ターゲットに非対称性がある場合、1つの主成分が、現在の層におけるターゲットのバー形成部分の側壁角度が1度であることを示し得る。もう1つの主成分は、直前の層におけるターゲットのバー形成部分の側壁角度が2度であることを示し得る。3つ目の主成分は、ターゲットの一番上のバーの傾斜を示し得る。ステップ610で、可能性のある様々な物理的作用が特定された後、これらの作用が補正または補償され得る。
【0082】
本発明が、本明細書で特に示し、説明したものに限定されないことを当業者ならば理解するであろう。本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、ならびに従来技術にはないそれらの修正形態を含む。
【国際調査報告】