(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】確率的ドメイン知識に基づく計測レシピ最適化及び物理的実現
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20230125BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B11/02 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532099
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020060642
(87)【国際公開番号】W WO2021113063
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンデブ スティリアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】サンコ ドズミトリー
【テーマコード(参考)】
2F065
4M106
【Fターム(参考)】
2F065AA03
2F065AA20
2F065AA53
2F065BB02
2F065CC17
2F065FF43
2F065FF48
2F065FF50
2F065GG25
2F065HH04
2F065HH08
2F065HH18
2F065JJ01
2F065JJ08
2F065JJ15
2F065LL31
2F065LL67
2F065MM15
2F065MM25
2F065QQ21
2F065QQ23
2F065RR00
2F065RR03
4M106AA01
4M106BA06
4M106CA21
4M106CA39
4M106DB03
4M106DB14
4M106DJ20
(57)【要約】
パフォーマンス指標に基づき計量レシピを訓練及び実施する方法及びシステムを利用し、ある具体的アプリケーションにおける計量システムの計測パフォーマンスを定量的に特徴付ける。パフォーマンス指標を利用し、計測モデル訓練、モデルベース回帰又はその双方にて利用される最適化プロセスを正則化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明源及び検出器を有する計量ツールであり、第1ウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の計測に由来する一群の正則化計測データを集めるよう構成されている計量ツールと、
情報処理システムであり、
1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの計測に係る一群の実験計画法(DOE)計測データを受け取り、
前記DOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの既知な参照値を受け取り、
前記正則化計測データを受け取り、
前記正則化計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値を受け取り、且つ
前記一群の実験計画法(DOE)計測データ、1個又は複数個の注目パラメタの前記参照値、前記正則化計測データ、並びに前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標、が入っている最適化関数に基づき計測モデルを訓練するよう、構成されている情報処理システムであって、前記最適化関数が前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化される情報処理システムと、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの計測に係る前記一群の実験計画法(DOE)計測データのうち少なくとも一部分が、シミュレーションにより生成されたものであるシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記DOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの前記参照値が、前記シミュレーションに係る既知値であるシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記DOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの前記参照値が、信頼ある参照計量システムにより計測されたものであるシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記一群の実験計画法(DOE)計測データのうち少なくとも一部分が、第2ウェハ上に配された1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの実計測をもとに収集されたものであるシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記第1ウェハと前記第2ウェハとが同じウェハであるシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記1個又は複数個の正則化構造と前記1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットとが、同じ構造であるシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記計量ツールが、第3ウェハ上に配された1個又は複数個の計量ターゲットの計測をもとに一群の計測データを集め、前記1個又は複数個の計量ターゲットが、未知値を有する1個又は複数個の注目パラメタにより特徴付けられ、前記情報処理システムが、更に、
前記訓練を受けた計測モデルに依拠し、前記一群の計測データをもとに、前記1個又は複数個の計量ターゲットの前記注目パラメタの値を推定するよう、構成されているシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記訓練を受けた計測モデルが、ニューラルネットワークモデル、線形モデル、非線形モデル、多項式モデル、応答面モデル、サポートベクタマシンモデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、深層ネットワークモデル及び畳込みネットワークモデルのうち何れかであるシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記計量ツールが分光計量ツールであるシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、複数個の計測パフォーマンス指標を用い前記最適化関数が正則化され、それら複数個の計測パフォーマンス指標のうち少なくとも1個が、前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標のうち別のものとは別様に加重されるシステム。
【請求項12】
1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの計測に係る一群の実験計画法(DOE)計測データを受け取り、
前記DOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの既知な参照値を受け取り、
計量ツールによる、第1半導体ウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の計測に由来する一群の正則化計測データを受け取り、
前記正則化計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値を受け取り、且つ
前記一群の実験計画法(DOE)計測データ、1個又は複数個の注目パラメタの前記参照値、前記正則化計測データ、並びに前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標、が入っている最適化関数に基づき計測モデルを訓練する方法であり、前記最適化関数が前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化される方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの計測に係る前記一群の実験計画法(DOE)計測データのうち少なくとも一部分が、シミュレーションにより生成されたものである方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記DOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの前記参照値が、前記シミュレーションに係る既知値である方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法であって、前記一群の実験計画法(DOE)計測データのうち少なくとも一部分が、第2ウェハ上に配された1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの実計測をもとに収集されたものである方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記第1ウェハと前記第2ウェハとが同じウェハである方法。
【請求項17】
請求項12に記載の方法であって、前記1個又は複数個の正則化構造と前記1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットとが、同じ構造である方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、更に、
前記計量ツールによる、第3ウェハ上に配された1個又は複数個の計量ターゲットについての計測に由来する一群の計測データを受け取り、但し前記1個又は複数個の計量ターゲットが、未知値を有する1個又は複数個の注目パラメタにより特徴付けられるものであり、
前記訓練を受けた計測モデルに依拠し、前記一群の計測データをもとに、前記1個又は複数個の計量ターゲットの前記注目パラメタの値を推定する方法。
【請求項19】
照明源及び検出器を有する計量ツールであり、ウェハ上に配された1個又は複数個の計量ターゲットの計測に由来する一群の計測データを集めるよう構成されている計量ツールと、
情報処理システムであり、
前記一群の計測データを受け取り、
前記計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値を受け取り、且つ
前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化された最適化関数を孕む回帰分析に依拠し、前記一群の計測データをもとに、前記1個又は複数個の計量ターゲットを特徴付ける1個又は複数個の注目パラメタの値を推定するよう、
構成されている情報処理システムと、
を備えるシステム。
【請求項20】
半導体ウェハ上に配された1個又は複数個の計量ターゲットの計測に由来する一群の計測データを受け取り、
前記計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値を受け取り、且つ
前記1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化された最適化関数を孕む回帰分析に依拠し、前記一群の計測データをもとに、前記1個又は複数個の計量ターゲットを特徴付ける1個又は複数個の注目パラメタの値を推定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載されている諸実施形態は計量システム及び方法に関し、より具体的には、改良された半導体構造計測方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本件特許出願では、「確率的ドメイン知識を利用する計量システム及び物理的実現」(Metrology System Utilizing Probabilistic Domain Knowledge and Physical Realization)と題する2019年12月2日付米国仮特許出願第62/942730号に基づき米国特許法第119条の規定による優先権を主張し、参照によりその主題の全容を本願に繰り入れる。
【0003】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及びメモリデバイスを製造する際には、通常、一連の処理工程が試料に適用される。それら処理工程によって、それら半導体デバイスに備わる様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の構造階層が形成される。例えば、なかでもリソグラフィリソグラフィなる半導体製造プロセスでは半導体ウェハ上にパターンが生成される。半導体製造プロセスの別例には、これに限られるものではないが化学機械研磨、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。1枚の半導体ウェハ上に複数個の半導体デバイスを作成した後、それらを個別の半導体デバイスへと分けるようにするとよい。
【0004】
計量プロセスは半導体製造プロセス中の様々な工程にて用いられており、それによりウェハ上の欠陥を検出して歩留まり向上を促進することができる。光学及びX線ベースの計量技術には、標本破壊のリスク無しで高いスループットが得られる見込みがある。多数の計量ベース技術、例えばスキャタロメトリ(散乱計測法)、リフレクトメトリ(反射計測法)及びエリプソメトリ(楕円偏向法)の装置並びにそれらに関連する分析アルゴリズムが、限界寸法、膜厚、組成、オーバレイその他、ナノスケール構造のパラメタを解明するため広く用いられている。
【0005】
多くの計量技術では、間接的な方法により計測下試料の物理特性が計測される。大抵の場合は、生の計測信号を用い試料の物理特性を直接判別することができない。その代わりに、計測モデルを利用し、生の計測信号に基づき1個又は複数個の注目パラメタの値を推定するのである。例えばエリプソメトリは、計測下試料の物理特性を計測する間接的な方法である。一般に、生の計測信号(例.αmeas及びβmeas)に基づき試料の物理特性を判別するには、物理ベース計測モデルか機械学習ベース計測モデルが必要とされる。
【0006】
ある種の例では、1個又は複数個のモデルパラメタの仮定値に基づき生の計測信号(例.αmeas及びβmeas)を予測することを目論み、物理ベース計測モデルが生成される。等式(1)及び(2)に表されている通り、その計測モデルには計量ツール自体に係るパラメタ、例えばマシンパラメタ(Pmachine)と、計測下試料に係るパラメタとが組み込まれる。注目パラメタに関し解く際には、幾つかの試料パラメタを固定値(Pspec-fixed)として扱い、他の注目試料パラメタを浮動させて(Pspec-float)、それを生の計測信号に基づいて解く。
αmodel=f(Pmachine,Pspec-fixed,Pspec-float) (1)
βmodel=g(Pmachine,Pspec-fixed,Pspec-float) (2)
【0007】
マシンパラメタは、計量ツール(例.エリプソメータ)の特徴を表す(特徴付ける)のに用いられるパラメタである。マシンパラメタの例としては入射角(AOI)、アナライザ角(A0)、ポラライザ角(P0)、照明波長、数値開口(NA)、補償器又は波長板(存在している場合)等がある。試料パラメタは、試料を特徴付けるのに用いられるパラメタ(例.計測下構造(群)を特徴付ける素材及び幾何パラメタ)である。薄膜試料に係る試料パラメタの例としては、屈折率、誘電関数テンソル、全層の公称層厚、層順等がある。CD試料に係る試料パラメタの例としては、諸層に係る幾何パラメタ値、諸層に係る屈折率等がある。計測目的上、マシンパラメタと多くの試料パラメタとが既知な固定値パラメタとして扱われる。その反面、試料パラメタのうち1個又は複数個の値が未知な浮動注目パラメタとして扱われる。
【0008】
ある種の例では、理論予測・実験データ間最良フィットを図る反復的プロセス(例.回帰)により、その浮動注目パラメタの値について解かれる。未知な浮動注目パラメタ値を変化させつつ、モデル出力値(例.αmodel及びβmodel)の算出及び生の計測データとの比較を反復的要領にて行うことで、モデル出力値・実験計測値(例.αmeas及びβmeas)間に十分密なマッチがもたらされる一組の試料パラメタ値を求めるものである。他のある種の例では、その最密マッチを見出すべく事前算出解のライブラリ内をサーチすることで、その浮動パラメタについて解かれる。
【0009】
他のある種の例では、生の計測データに基づき注目パラメタの値を直に推定すべく、訓練済の機械学習ベース計測モデルが利用される。この種の例では、機械学習ベース計測モデルにより生の計測信号がモデル入力として採取され、注目パラメタ値がモデル出力として生成される。
【0010】
物理ベース計測モデル及び機械学習ベース計測モデルの何れにも、有用な注目パラメタ推定値を生成するよう、特定の計測アプリケーション向けに訓練を施す必要がある。一般に、モデル訓練は、既知値の注目パラメタを有する試料から収集された生の計測信号(即ち実験計画法(DOE)データ)に基づき行われる。
【0011】
機械学習ベース計測モデルは複数個の加重パラメタによりパラメタ表記される。従来から、機械学習ベース計測モデルの訓練は回帰プロセス(例.一般的な最小二乗回帰)により行われている。加重パラメタの値を反復的に調整することで、注目パラメタの既知な参照値と、計測された生の計測信号に基づきその機械学習ベース計測モデルにより推定された注目パラメタ値と、の間の差異を最小化させるものである。
【0012】
前述の通り、物理ベース計測モデルは、複数個のマシンパラメタ及び試料パラメタによりパラメタ表記される。従来から、物理ベース計測モデルの訓練も、回帰プロセス(例.一般的な最小二乗回帰)により行われている。マシンパラメタ及び試料パラメタのうち1個又は複数個を反復的に調整することで、生の計測データとモデル計測データと間の差異を最小化させるものである。各回反復では注目試料パラメタ値が既知DOE値に保たれる。
【0013】
従来から、機械学習ベース計測モデル及び物理ベース計測モデル両者の訓練(いわゆる計測レシピ生成)は、総出力誤差の最小化、通常は最小二乗値最小化として表されるそれにより果たされている。総出力誤差は総計測不確定性、即ち計測に由来する誤差全般の合計の表れであり、これには精度誤差、ツール対ツールマッチング誤差、パラメタトラッキング誤差、ウェハ内変動等が含まれている。不運なことに、総計測不確定性の諸成分に対する制御を欠く総計測不確定性依拠的なモデル訓練は、非最適な計測パフォーマンスにつながる。大きなモデル化誤差が発生する例が多く、とりわけ模擬導出(シミュレーション)データに基づき訓練を実行する際に模擬導出データ・実データ間不一致が原因で発生する。
【0014】
更に、経験、計測データ及び物理から得られるドメイン知識は、その計測モデルの最適化を促進する目的関数を直に表すものではない。結果として、ドメイン知識は計測レシピ開発プロセスにて存分に活用されない。これも、非最適な計測パフォーマンスにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0325571号
【特許文献2】国際公開第2017/100424号
【特許文献3】国際公開第2017/176637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
将来の計量アプリケーションは計量上の難題、特に分解能条件の更なる微細化、多パラメタ相関、幾何構造の更なる複雑化並びに不透明素材使用の増加による難題に直面することとなる。そのため、計測レシピ生成方法及びシステムの改良が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願では、計測データに係る個別的ドメイン知識に基づき計量レシピを訓練及び実施する方法及びシステムが提示される。ドメイン知識にはパフォーマンス指標を含め、それを利用することで、特定の計測アプリケーションにおける計量システムの計測パフォーマンスを定量的に特徴付ける(量的に解明する)。ドメイン知識を利用し、計測モデル訓練、モデルベース回帰又はその双方にて、利用される最適化プロセスを正則化する。
【0018】
ある非限定的な例では、計測精度、ツール対ツールマッチング、トラッキング、ウェハ内変動等に係る確率分布を利用し、その最適化プロセスが物理的に正則化される。このやり方では、それら重要指標が、計測モデル訓練中、モデルベース回帰中又はその双方にて制御される。それによりもたらされる訓練済計測モデル、モデルベース計測又はその双方により、計測パフォーマンス及び信頼性における顕著な改善がもたらされる。
【0019】
ある態様では、物理的に正則化された最適化関数に基づき計測モデルが訓練される。その訓練が、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンス(実現物)に係る計測データ、そのDOE計量ターゲットに係る注目パラメタの参照値、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから集めた実計測データ、並びにその実計測データに係る計測パフォーマンス指標に基づき行われる。
【0020】
更に、その1個又は複数個の計測パフォーマンス指標を利用して最適化が正則化され、それによりその計測モデル訓練プロセスが促進される。例えば、正則化構造から集めた実計測データを特徴付ける統計情報、例えば計測精度、ウェハ平均等といった重要計測パフォーマンス指標に係る既知分布を個別利用することで、計測モデル訓練を促進する最適化が正則化される。
【0021】
更なる態様では、その訓練済計測モデルを利用し、1個又は複数個の注目パラメタが未知値な構造の計測を踏まえ注目パラメタ値が推定される。ある種の実施形態では、その未知構造を計測するのに利用する計測システムを、DOE計測データを集めるのに利用するものと同じ計測システムにする。一般に、その訓練済計測モデルを利用し、ある単一の計測スペクトルに基づき注目パラメタの値を推定するのでも、複数個のスペクトルに同時に基づき注目パラメタの値を推定するのでもよい。
【0022】
ある種の実施形態では、その正則化構造をDOE計量ターゲットと同じ構造とする。とはいえ、一般に、正則化構造がDOE計量ターゲットと異なっていてもよい。
【0023】
ある種の実施形態では、その実正則化計測データが特定の計量システムにより収集される。この種の実施形態では、それと同じ計量システムによる計測の実行を伴う計測アプリケーション向けに計測モデルが訓練される。
【0024】
他のある種の実施形態では、その実正則化計測データが計量システムの複数個のインスタンス、即ち実質的に同一な複数個の計量システムにより収集される。この種の実施形態では、その計量システムの複数個のインスタンスのうち何れかによる計測の実行を伴う計測アプリケーション向けに計測モデルが訓練される。
【0025】
ある種の例では、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスそれぞれの、計量システムによる計測に係る計測データが、模擬導出(シミュレート)される。その模擬導出データの生成は、1個又は複数個のDOE計量構造それぞれの、その計量システムによる計測についてのパラメタ表記モデルをもとに、行われる。
【0026】
他のある種の例で、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスに係る計測データとされるものに、計量システムにより或いは計量システムの複数個のインスタンスにより収集された実計測データがある。この種の実施形態のうちあるものでは、それと同じ計量システム又はその計量システムの複数個のインスタンスを利用し、正則化構造から実正則化計測データが収集される。
【0027】
ある種の実施形態では、その1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスそれぞれから収集された実計測データが、物理的計測パフォーマンス指標により特徴付けられる。ある種の実施形態では、それらパフォーマンス指標が、履歴データ、その構造の生産に関わるプロセスについてのドメイン知識、物理、或いはユーザによる最善推測に基づくものとされる。ある種の例では計測パフォーマンス指標が単一点推定値とされる。他の諸例では計測パフォーマンス指標が推定値分布とされる。
【0028】
一般に、正則化構造から収集された計測データに係る計測パフォーマンス指標は、その正則化構造の物理属性値についての情報をもたらすものである。ある非限定的な例では、正則化構造のそれら物理属性のなかに、計測精度、ツール対ツールマッチング、ウェハ平均、ウェハ内レンジ、参照向けトラッキング、ウェハ対ウェハマッチング、ウェハスプリット向けトラッキング等のうち何れかを含める。
【0029】
更なる態様では、訓練済計測モデルのパフォーマンスが、誤差バジェット分析を用いテストデータで以て検証される。実計測データ、模擬計測データ又はその双方を、テストデータとして検証目的で利用することができる。実データに対する誤差バジェット分析により、正確度、トラッキング、精度、ツールマッチング誤差、ウェハ対ウェハ首尾一貫性(コンシステンシ)、ウェハシグネチャ首尾一貫性等が総誤差に及ぼす個別寄与の推定が、可能となる。ある種の実施形態では、総モデル誤差が各寄与成分に分割されるようテストデータが設計される。
【0030】
別の更なる態様では、計測モデルの訓練に際しモデルハイパーパラメタの最適化が行われる。ニューラルネットワークベースモデルに関するハイパーパラメタの例としては、ニューラルネットワーク層の個数及び種類、各層におけるニューロンの個数、オプティマイザ設定等がある。ハイパーパラメタ最適化中に複数個のモデルが生成され、最小のコストを伴うモデルが最良モデルとして選択される。
【0031】
別の態様では、計測モデルに対するモデルベース回帰が1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により物理的に正則化される。1個又は複数個の注目パラメタの推定値が、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の注目構造の複数個のインスタンスから集めた実計測データ、その計測に係る統計情報、並びにその注目パラメタの従前推定値に基づき、決定される。
【0032】
以上は概要であり、従って随所に単純化、一般化及び細部省略が含まれているので、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)には察せられる通り、この概要は専ら例証的なものであり如何様であれ限定的なものではない。本願記載の装置及び/又はプロセスの他の態様、独創的特徴及び長所については、本願中で説明される非限定的詳細記述にて明らかとされよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本願提示の諸方法例に従いウェハの特性を計測するウェハ計量システム100の描像を示す図である。
【
図2】一実施形態に従い計測モデル訓練エンジン例150を描いた図である。
【
図3A】あるハイパーパラメタを有する計測モデルに係る誤差分布を示すプロット図である。
【
図3B】別のハイパーパラメタを有する計測モデルに係る誤差分布を示すプロット図である。
【
図3C】更に別のハイパーパラメタを有する計測モデルに係る誤差分布を示すプロット図である。
【
図4】計測トラッキングパフォーマンスを特徴付ける指標を示すプロット図である。
【
図5】一実施形態に従い計測モデル回帰エンジン例190を描いた図である。
【
図6】計測データに係る個別的ドメイン知識に基づき注目パラメタ値を推定する計測モデルを訓練する方法300のフローチャートである。
【
図7】計測データに係る個別的ドメイン知識に基づき計測モデル上で回帰を実行し注目パラメタ値を推定する方法400のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の背景例及びある種の実施形態を詳細に参照し、またその諸例を添付図面に描出する。
【0035】
本願では、計測データに係る個別的ドメイン知識に基づき計量レシピを訓練及び実施する方法及びシステムを提示する。ドメイン知識にはパフォーマンス指標を含め、それを利用することで、特定の計測アプリケーションにおける計量システムの計測パフォーマンスを定量的に特徴付ける(量的に解明する)。ドメイン知識を利用し、計測モデル訓練、モデルベース回帰又はその双方にて、利用される最適化プロセスを正則化する。この要領で、物理ベース計測パフォーマンス指標についての一通り又は複数通りの式に従い、その最適化プロセスが物理的に正則化される。ある非限定的な例では、計測精度、ツール対ツールマッチング、トラッキング、ウェハ内変動等に係る確率分布を利用し、その最適化プロセスが物理的に正則化される。この要領により、それら重要指標が、計測モデル訓練、モデルベース回帰又はその双方にて制御される。それによりもたらされる訓練済計測モデル、モデルベース計測又はその双方により、計測パフォーマンス及び信頼性における顕著な改善がもたらされる。
【0036】
訓練データを特徴付けるドメイン知識を用い計測モデルを訓練するのに利用される最適化プロセスを物理的に正則化することで、モデル首尾一貫性が改善され且つモデル訓練に係る情報処理労力が低減される。その最適化プロセスが、オーバフィッティングに対し一層鈍感になる。物理的正則化を利用した場合、様々な計測モデルアーキテクチャ及び計測アプリケーションに亘り、計測パフォーマンス仕様、例えば精度、ツール対ツールマッチング及びパラメタトラッキングがより信頼性良く充足される。ある種の実施形態では模擬導出訓練データが利用される。この種の実施形態では、物理的正則化によって、模擬導出・実計測データ間不一致に因む誤差が顕著に低減される。
【0037】
ある態様では、物理的に正則化された最適化関数に基づき計測モデルが訓練される。この訓練は、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスに係る計測データ、そのDOE計量ターゲットに係る注目パラメタの参照値、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから集めた実計測データ、並びにその実計測データに係る計測パフォーマンス指標に基づき行われる。更に、その1個又は複数個の計測パフォーマンス指標を利用し、計測モデル訓練プロセスを促進する最適化が正則化される。
【0038】
図1には、本願提示の諸方法例に従い試料の特性を計測するシステム100が描かれている。
図1に示すシステム100を用い、
図1記載の構造101の分光エリプソメトリ計測を実行することができる。本態様のシステム100には、イルミネータ(照明器)102及びスペクトロメータ(分光計)104が備わる分光エリプソメータ(楕円偏向計)を設けることができる。本システム100のイルミネータ102は、指定波長域(例.100~2500nm)の照明を生成し、試料の表面上に配されている構造へとある計測スポット110に亘り差し向けるよう、構成されている。他方、スペクトロメータ104は、構造101から反射されてきた照明を受光するよう構成されている。更に注記されることに、イルミネータ102に発する光を、偏向状態ジェネレータ107を用い偏向させることで、偏向照明ビーム106が生成されている。構造101により反射された輻射は、偏向状態アナライザ(検光器)109を経てスペクトロメータ104の方へと通される。その集光ビーム108に沿いスペクトロメータ104により受光される輻射が偏向状態に関し検光されるので、そのアナライザを通った輻射につきそのスペクトロメータによるスペクトル分析を行うことが可能である。それらスペクトル111は、本願記載の如く構造分析のため情報処理システム130に引き渡される。
【0039】
図1記載のシステム100は単一の計測テクノロジ(即ちSE)が組み込まれたものである。しかしながら、一般に、システム100内に何個の別々な計測テクノロジが組み込まれていてもよい。ある非限定的な例によれば、分光エリプソメータ(ミュラー行列エリプソメトリを含む)、分光リフレクトメータ(反射計)、分光スキャタロメータ(散乱計)、オーバレイスキャタロメータ、角度分解ビームプロファイルリフレクトメータ、偏向分解ビームプロファイルリフレクトメータ、ビームプロファイルリフレクトメータ、ビームプロファイルエリプソメータ、何らかの単一又は複数波長エリプソメータ、或いはそれらの何らかの組合せとして、システム100を構成することができる。更に、一般に、計測データを様々な計測テクノロジにより収集し本願記載の諸方法に従い分析するに当たり、その収集を複数個のツールにより行っても、複数通りのテクノロジを統合する単一のツールにより行っても、それらの組合せにより行ってもよい。
【0040】
更なる実施形態によれば、システム100内に1個又は複数個の情報処理システム130を設け、それを、本願記載の諸方法に従い開発された計測モデルに依拠し諸構造の計測を実行するのに、利用することができる。その1個又は複数個の情報処理システム130をスペクトロメータ104に可通信結合させることができる。ある態様では、その1個又は複数個の情報処理システム130が、計測下構造(例.構造101)の計測に係る計測データ111を受け取るよう構成される。
【0041】
ある態様では、本願記載の如く正則化構造の計測を踏まえ計測モデルを訓練する計測モデル訓練エンジン150として、情報処理システム130が構成される。
図2は、一実施形態に従い計測モデル訓練エンジン例150を描いた図である。
図2記載の計測モデル訓練エンジン150は、計測モデル訓練モジュール154を有している。
図2記載の計測モデル訓練モジュール154は、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスの、模擬計測、実計測又はその双方に係る計測データX
DOE153を受け取る。分光エリプソメータ計測の例であれば計測スペクトル、模擬導出スペクトル又はその双方をそのDOE計測データに含める。一例としては、1個又は複数個のDOE計量ターゲットの複数個のインスタンスから計量システム100により収集された計測スペクトル111を、そのDOE計測データ153に含める。加えて、計測モデル訓練モジュール154は、そのDOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの参照値Y
DOE155を参照源156から受け取る。注目パラメタの例としては、限界寸法(CD)、オーバレイ、焦点、照射量等がある。ある種の実施形態における参照値155は模擬導出されたものである。この種の実施形態では参照源156がシミュレーションエンジンとされ、それにより、対応する模擬導出DOE計測データ153が既知参照値155に関し生成される。ある種の実施形態における参照値155は、信頼ある計測システム(例.走査型電子顕微鏡等)により計測された値である。この種の実施形態における参照源は、その信頼ある計測システムである。計測モデル訓練モジュール154は、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから収集された実正則化計測データX
REG152をも、その実正則化計測データ152に係る計測パフォーマンス指標θ
REG151と併せ受け取る。一例としては、その正則化計測データ153に、1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから計量システム100により収集された計測スペクトル111を含める。
【0042】
計測モデル訓練モジュール154は、その1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化された最適化関数に基づき計測モデルを訓練する。ある種の例における計測モデルはニューラルネットワークモデルである。ある種の例では、各計測パフォーマンス指標が別々の分布として表現される。ある例では、その正則化構造に係る計測精度分布が逆ガンマ分布となる。等式(1)は計測精度データセットxに関する確率密度関数pを表す式であり、式中のΓ(・)はガンマ関数、定数aは形状パラメタ、定数bはスケールパラメタを表している。
【数1】
【0043】
別の例では、被計測正則化構造の諸インスタンスの平均値のウェハ上での分布が、正規分布により記述される。等式(2)は計測ウェハ平均データセットxに関する確率密度関数mを表す式であり、式中のμは固有平均、σはその分布に係る固有分散を表している。
【数2】
【0044】
更なる態様では、正則化構造から集めた実計測データを特徴付ける統計情報、例えば計測精度、ウェハ平均等といった重要計測パフォーマンス指標に係る既知分布を個別利用することで、計測モデル訓練を促進する最適化が正則化される。等式(3)は、注目DOEパラメタy
DOEと、正則化構造の計測に係る計測パフォーマンス指標criteria
regと、についての同時尤度を表している。この同時尤度を最大化させることにより訓練中に計測モデルh(・)を進化させることで、DOE計測データx
DOEに対する忠実性を保ちつつ適合化させ、正則化構造に係る計測データx
regに対する計測パフォーマンスを充足させることができる。
【数3】
【0045】
その同時尤度を最大化させるに当たり、DOE計測データが平均二乗誤差に寄与し、正則化構造に係る計測データが損失関数中の正則化項として寄与する。要するに、同時尤度を最大化することは、Reg(h(・))を諸モデルパラメタに関する包括的正則化であり定数パラメタαにより加重されるものとし、Reg
k(x
reg,k,h(・),θ
reg,k)を定数パラメタγ
kにより加重される第k正則化項とし、x
reg,kを第k正則化データセットとし、θ
reg,kを正則化構造から集めた実計測データに係る統計情報を記述するパラメタのベクトルとして、等式(4)にて表されている損失関数を、DOE計測データ・正則化データ間並びに様々な正則化データセット間の独立性が仮定されている許で最小化することと等価である。
【数4】
ある例では、計測モデルの最適化に二種類の正則化項Reg
1及びReg
2が利用される。Reg
1は計測精度データセットx
reg-precに対する計測精度の正則化を表し、Reg
2はウェハ内データセットx
WIWに対するウェハ平均の正則化を表している。ある非限定的な例では、形状パラメタ
【数5】
及びスケールパラメタ
【数6】
を有する逆ガンマ分布により計測精度が記述されるものと仮定され、且つ平均μ
WiW及び分散σ
WiW
2を有する正規分布によりウェハ平均が記述されるものと仮定される。これらの仮定によれば、正則化項Reg
1を、
【数7】
であり且つσ(h(x
reg-prec))によりh(x
reg-prec)の標準偏差が表される等式(5)に表される如く、書き記すことできる。
【数8】
同様に、正則化項Reg
2を、θ
reg-WiW={μ
WiW,σ
WiW
2}であり且つ
【数9】
によりウェハ平均が表される等式(6)に表される如く、書き記すことができる。
【数10】
【0046】
本例では、計測モデル最適化関数を、h
W,b(・)がニューラルネットワークモデル、その荷重値がW、バイアス値がb、モデル誤差分散がσ
D
2、荷重分散がσ
W
2たる等式(7)に表される如く書き記すことができる。
【数11】
【0047】
計測モデル最適化関数を用いるモデル訓練に利用されるDOEデータセット、計測精度データセット及びウェハ平均データセットは、等式(8)にて表される。
【数12】
【0048】
モデル誤差、ニューラルネットワーク荷重値、計測精度並びにウェハ内ウェハ平均を記述する統計モデルの既知パラメタは、等式(9)にて表される。
【数13】
【0049】
モデル訓練中に、等式(7)により表される最適化関数が、DOEデータ推定誤差と他の全ての基準との間で平衡する。第1項は、モデル誤差分散σD
2により減殺された平均二乗誤差としてDOEデータ推定誤差を表す項である。第2項はモデル荷重Wに関する包括的正則化項である。モデル荷重Wが荷重分散σW
2により減殺されている。最後の2項は、前述の通り計測精度及びウェハ平均に関する最適化を正則化する項である。
【0050】
各回反復時には最適化関数によりニューラルネットワークモデルhW,b(・)の荷重値W及びバイアス値bに対する変更が促進され、それによりその最適化関数が最小化される。最適化関数が十分小さな値に達した時点でその計測モデルの訓練が済んだと見なされ、その訓練済計測モデル157がメモリ(例.メモリ132)内に格納される。
【0051】
別の更なる態様では、その訓練済計測モデルを利用し、1個又は複数個の注目パラメタが未知値な構造の計測を踏まえ注目パラメタの値が推定される。ある種の例では、その訓練済モデルにより注目パラメタの推定値と計測値の不確定度とが共にもたらされる。その訓練済計測モデルを利用し、計測システム(例.計量システム100)により収集された実計測データ(例.計測スペクトル)をもとに、1個又は複数個の注目パラメタの値が推定される。ある種の実施形態では、その計測システムが、DOE計測データを集めるのに利用されたものと同じ計測システムとされる。他の諸実施形態では、その計測システムが、そのDOE計測データを合成的に生成すべく模擬形成されたシステムとされる。実計測データの一例は、1個又は複数個の注目パラメタが未知値な1個又は複数個の計量ターゲットから計量システム100により収集された計測スペクトル111を含むものである。
【0052】
一般に、訓練済計測モデルを利用し注目パラメタの値を推定するに当たり、ある単一の計測スペクトルを踏まえても複数個のスペクトルを同時に踏まえてもよい。
【0053】
ある種の実施形態では、その正則化構造がDOE計量ターゲットと同じ構造とされる。とはいえ、一般に、正則化構造がDOE計量ターゲットと別物であってもよい。
【0054】
ある種の実施形態では、実正則化計測データを1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから収集するに当たり、その収集がある特定の計量システムにより行われる。この種の実施形態では、それと同じ計量システムによる計測の実行を孕む計測アプリケーション向けに計測モデルが訓練される。
【0055】
他のある種の実施形態では、実正則化計測データを1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスから収集するに当たり、その収集がある計量システムの複数個のインスタンス、即ち実質的に同一な複数個の計量システムにより行われる。この種の実施形態では、その計量システムの複数個のインスタンスのうち何れかによる計測の実行を孕む計測アプリケーション向けに計測モデルが訓練される。
【0056】
ある種の例では、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスそれぞれの、計量システムによる計測に係る計測データが、模擬導出される。その模擬導出データの生成が、その計量システムによる1個又は複数個のDOE計量構造それぞれの計測のパラメタ表記モデルをもとに、行われる。
【0057】
他のある種の例における、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの複数個のインスタンスに係る計測データは、計量システムにより或いは計量システムの複数個のインスタンスにより収集された実計測データである。この種の実施形態のうちあるものでは、それと同じ計量システム又はその計量システムの複数個のインスタンスを利用し、正則化構造から実正則化計測データが収集される。
【0058】
ある種の実施形態では、その1個又は複数個の正則化構造の複数個のインスタンスそれぞれから収集された実計測データが、物理的計測パフォーマンス指標により特徴付けられる。ある種の実施形態では、それらパフォーマンス指標が、履歴データ、その構造の生産に関わるプロセスについてのドメイン知識、物理、或いはユーザによる最善推測に基づくものとされる。ある種の例では計測パフォーマンス指標が単一点推定値とされる。他の諸例では計測パフォーマンス指標が推定値の分布とされる。
【0059】
一般に、正則化構造から収集された計測データに係る計測パフォーマンス指標により、その正則化構造の物理属性値についての情報がもたらされる。ある非限定的な例では、正則化構造の物理属性のなかに、計測精度、ツール対ツールマッチング、ウェハ平均、ウェハ内レンジ、参照値向けトラッキング、ウェハ対ウェハマッチング、ウェハスプリット向けトラッキング等のうち何れかを含める。
【0060】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、そのウェハの特定個所における正則化構造のパラメタの固有値及びそれに対応する不確定度を含める。その計測パフォーマンス指標の一例は、ウェハ上の特定個所における限界寸法(CD)及びその不確定度、例えばそのCDが35ナノメートル±0.5ナノメートル、といったものである。
【0061】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、ウェハ内、ウェハロット内或いは複数ウェハロット横断的な、構造パラメタ値の確率分布を含める。例えばCDは、ある平均値及びある標準偏差を有する正規分布、例えばCDの平均値が55ナノメートルで標準偏差が2ナノメートルのそれを呈する。
【0062】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、ウェハ横断的な注目パラメタ値空間分布、例えばウェハマップと、それに対応する各個所別の不確定度とを含める。
【0063】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、複数ツールに亘る注目パラメタ計測値の分布であり、ツール対ツールマッチングを特徴付けるそれを含める。その分布により、個々のウェハ上での平均値、各サイトでの値、或いはその双方を表すことができる。
【0064】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに計測精度誤差の分布を含める。
【0065】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、諸ウェハロットに亘る推定値とマッチングするウェハマップを含める。
【0066】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、注目パラメタ参照値による注目パラメタ推定値のトラッキングを特徴付ける1個又は複数個の指標を含める。ある種の例では、トラッキングパフォーマンスを特徴付けるその指標のなかに、R2値、勾配値及びオフセット値のうち何れかを含める。
【0067】
ある種の例では、計測パフォーマンス指標のなかに、DOEスプリット実験に係るウェハ平均に対する注目パラメタ推定値のトラッキングを特徴付ける1個又は複数個の指標を含める。ある種の例では、トラッキングパフォーマンスを特徴付けるその指標のなかに、R2値、勾配値及びオフセット値のうち何れかを含める。
【0068】
図4には、トラッキングパフォーマンスを特徴付ける指標を示すプロット180が描かれている。
図4描出の通り、プロット180上の各データポイントのx方向位置が注目パラメタの予測値を示しており、各データポイントのy方向位置がその注目パラメタの既知値(例.DOE参照値)を示している。理想的トラッキングパフォーマンスが破線181により示されている。仮に、全ての予測値が、それに対応しており既知な信頼ある値と完全にマッチしているのであれば、全てのデータポイントが線181上に存することとなろう。しかしながら、実際には、トラッキングパフォーマンスは完全でない。線182は、諸データポイントに対する最良当て嵌め線を描いたものである。
図4記載の通り、線182は勾配値及びy切片値により特徴付けられ、既知値・予測値間相関はR
2値により特徴付けられる。
【0069】
更なる態様では、訓練済計測モデルのパフォーマンスが、誤差バジェット分析を用いテストデータで以て検証される。実計測データ、模擬計測データ又はその双方を、テストデータとして検証目的で利用することができる。
【0070】
実データに対する誤差バジェット分析により、正確度、トラッキング、精度、ツールマッチング誤差、ウェハ対ウェハ首尾一貫性、ウェハシグネチャ首尾一貫性等が総誤差に及ぼす個別寄与の推定が可能となる。ある種の実施形態では、総モデル誤差が各寄与成分に分割されるようテストデータが設計される。
【0071】
ある非限定的な例では、実データには以下のサブセットのうち何れか、即ち正確度及びトラッキングの計算に関する参照値、例えば勾配、オフセット、R2、3STEYX、平均二乗誤差、3シグマ誤差等の参照値を伴う実データ、同一サイトを複数回計測し計測精度を推定するための計測に由来する実データ、同一サイトを別々のツールにより計測しツール対ツールマッチングを推定するための計測に由来する実データ、複数枚のウェハ上の諸サイトの計測でありウェハ平均及びウェハ分散のウェハ対ウェハ変化を推定するための計測に由来する実データ、並びに複数枚のウェハの計測でありウェハシグネチャ、例えば所与ウェハで現れるものと期待されるブルズアイパターンの様な典型的ウェハパターンを識別するための計測に由来する実データ、のうち何れかを含める。
【0072】
他のある種の例では、その構造のパラメタ表記モデルを利用し、誤差バジェット分析向けに模擬導出データが生成される。その構造の各パラメタがそのDOE内で標本化される一方、他のパラメタが公称値にて固定されるよう、模擬導出データが生成される。ある種の例では、そのシミュレーションの他の諸パラメタ、例えばシステムモデルパラメタが、誤差バジェット分析に組み込まれる。パラメタの真なる参照値は模擬導出データで以てわかるので、その構造の各パラメタの変化による誤差を分離することができる。
【0073】
ある種の例では、精度誤差を算出すべく別のノイズ標本化で以て付加的な模擬導出データが生成される。
【0074】
ある種の例では、外挿誤差を推定すべくそのパラメタ表記構造のDOE外で付加的な模擬導出データが生成される。
【0075】
別の更なる態様では、計測モデルの訓練に際しモデルハイパーパラメタの最適化が行われる。ニューラルネットワークベースモデルに関するハイパーパラメタの例としては、ニューラルネットワーク層の個数及び種類、各層におけるニューロンの個数、オプティマイザ設定等がある。ハイパーパラメタの最適化中には、複数個のモデルが生成され最小コストのモデルが最良モデルとして選択される。
【0076】
一般に、ハイパーパラメタ最適化中に生成される複数個のモデルは、同様の総コストを有するものとなりうるけれども、個々別々なパフォーマンス指標及びそれに関連する正則化項に係るコストが大きく異なるものとなりうる。誤差バジェット分析を適用することでそれら誤差が分離され、各パフォーマンス指標の寄与に別様に加重しうる柔軟性が本願記載の最適化によりもたらされるので、ユーザが、ユーザ基準を最善充足するモデルを選択することが可能となる。
【0077】
例えば、
図3A~
図3Cには、総コストが同じだが正確度、精度及びツールマッチングパフォーマンスが異なる様々なモデルが記されている。
図3A記載のプロット160はある計測モデルに係る誤差分布を示している。プロットライン161は総コストを表している。プロットライン162はツールマッチング誤差を表しており、プロットライン163は正確度誤差を表しており、プロットライン164は精度誤差を表している。
図3B記載のプロット165は、別のハイパーパラメタを有する計測モデルに係る誤差分布を示している。プロットライン166は総コストを表している。プロットライン167はツールマッチング誤差を表しており、プロットライン168は正確度誤差を表しており、プロットライン169は精度誤差を表している。
図3C記載のプロット170は、別のハイパーパラメタを有する更に別の計測モデルに係る誤差分布を示している。プロットライン171は総コストを表している。プロットライン172はツールマッチング誤差を表しており、プロットライン173は正確度誤差を表しており、プロットライン174は精度誤差を表している。
図3A~
図3C描出の通り、3個のモデル全てで総コストが同じだが、諸誤差成分の大きさが異なっている。例えば、各誤差成分の寄与を平衡させることをユーザが望んでいる場合は、
図3Cに係る計測モデルが最善の選択となる。
【0078】
別の態様では、計測モデルに対するモデルベース回帰が1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により物理的に正則化される。1個又は複数個の注目パラメタの推定値が、1枚又は複数枚のウェハ上に配された1個又は複数個の注目構造の複数個のインスタンスから集めた実計測データ、その計測に係る統計情報、並びにその注目パラメタについての従前推定値に基づき、決定される。
【0079】
ある態様では、本願記載の如く構造の計測を実行する計測モデル回帰エンジンとして情報処理システム130が構成される。
図5は、一実施形態に従い計測モデル回帰エンジン例190を描いた図である。
図5記載の計測モデル回帰エンジン190は計測モデル回帰モジュール191を有している。
図5記載の計測モデル回帰モジュール191は、1個又は複数個の計量ターゲットの計測に係る計測データX
POI194を計測源192、例えば分光エリプソメータ等から受け取る。その計測データ194の一例は、1個又は複数個の計量ターゲットから計量システム100により収集された計測スペクトル111を含むものである。加えて、計測モデル訓練モジュール191は、その計測データ194に係る計測パフォーマンス指標θ
REG193を受け取る。
【0080】
計測モデル回帰モジュール191は、1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化された最適化関数に基づき、被計測計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタ195の値を推定する。その注目パラメタ195の推定値がメモリ(例.メモリ132)内に格納される。
【0081】
回帰の損失関数は、データ再構築誤差項と、1個又は複数個の正則化項とを含むものである。等式(10)は、実計測をもとに1個又は複数個の注目パラメタの値を推定するモデルベース回帰の損失関数例を表している。
【数14】
この損失関数の第1項は、実計測データX・模擬計測データg(Y)間差異の物差しとなる再構築誤差であり、式中のg(・)は、1個又は複数個の注目パラメタYの現在の推定値をもとに計測スペクトルを推定する既知な計測シミュレーションモデルである。等式(10)に表されている例では、その再構築誤差項がノイズ共分散行列Σの逆行列により加重されている。正則化項は、1個又は複数個の注目パラメタの従前推定値及び各計測パフォーマンス指標を記述するモデルの既知パラメタに基づき、計測パフォーマンス指標がどれだけ良好に合致しているかを評価する項である。各データセットX
kはデータXのサブセットであり、対応する計測情報θ
k及び推定パラメタY
kが付随している。この回帰での目標は、1個又は複数個の注目パラメタにつき、損失関数が最小化される値を見つけることである。回帰を通じてパラメタYが調整され、それにより模擬導出データ・実データ間ミスマッチが低減されると共に、従前情報所与下で計測パフォーマンス指標が充足される。
【0082】
一例としては、正則化項が前述の如く計測精度及びウェハ内ウェハ平均とされる。本例では、計測精度に係る正則化項が、Y
reg-precが注目パラメタの従前推定値であり且つσ(Y
reg-prec)でY
reg-precの標準偏差が表される等式(11)にて表される。
【数15】
ウェハ精度内ウェハ平均に係る正則化項は、
【数16】
をそのウェハにおける注目パラメタの従前の推定平均値とする等式(12)により表される。
【数17】
本例では、損失関数が等式(13)により表される。
【数18】
【0083】
ある種の実施形態では、計測モデルを訓練するのに利用される注目パラメタ値が、参照計量システムによるDOEウェハの計測をもとに導出される。参照計量システムとは、十分に正確な計測結果を生成する、信頼ある計測システムのことである。参照計量システムの例としては、低速過ぎてそのウェハ製造プロセスフローの一部たるウェハのオンライン計測に用いえないが、モデル訓練等の目的でのオフライン使用には適するものがある。ある非限定的な例によれば、スタンドアロン光学計量システム、例えば分光エリプソメータ(SE)、複数通りの照明角を有するSE、ミュラー行列要素を計測するSE、単一波長エリプソメータ、ビームプロファイルエリプソメータ、ビームプロファイルリフレクトメータ、広帯域反射スペクトロメータ、単一波長リフレクトメータ、角度分解リフレクトメータ、イメージングシステム、スキャタロメータ、例えばスペックルアナライザ、X線ベース計量システム例えば透過又はかすめ入射モードで稼働する小角X線スキャタロメータ(SAXS)、X線回折(XRD)システム、X線蛍光(XRF)システム、X線光電子分光(XPS)システム、X線リフレクトメータ(XRR)システム、ラマン分光システム、原子間力顕微法(AFM)システム、透過型電子顕微法システム、走査型電子顕微法システムその他、デバイス幾何を判別可能な諸テクノロジを、参照計量システムに含めることができる。
【0084】
ある種の実施形態では、本願記載の如く訓練される計測モデルがニューラルネットワークモデルとして実現される。他の諸例によれば、線形モデル、非線形モデル、多項式モデル、応答面モデル、サポートベクタマシンモデル、ランダムフォレストモデル、深層ネットワークモデル、畳込みネットワークモデルその他の種類のモデルとして、計測モデルを実現することができる。ある種の例によれば、本願記載の如く訓練される計測モデルを諸モデルの組合せとして実現することができる。
【0085】
また別の更なる態様によれば、本願記載の計測結果を用い、プロセスツール(例.リソグラフィツール、エッチングツール、堆積ツール等)への能動フィードバックを提供することができる。例えば、本願記載の計測方法に依拠し決定された計測パラメタ値をエッチングツールに送り、エッチング時間を調整することで、所望のエッチング深さを達成することができる。同様のやり方で、エッチングパラメタ(例.エッチング時間、拡散率等)や堆積パラメタ(例.時間、濃度等)を計測モデルに組み込み、エッチングツールや堆積ツールそれぞれへの能動フィードバックを提供してもよい。ある例によれば、計測されたデバイスパラメタ値と訓練済計測モデルとに基づきプロセスパラメタに対する補正量を決定し、プロセスツールに送ることができる。ある実施形態では、計測システムから受け取った計測信号111に基づき、プロセス中に、情報処理システム130が1個又は複数個の注目パラメタの値を判別する。加えて、情報処理システム130は、1個又は複数個の注目パラメタの判別値に基づきプロセスコントローラ(図示せず)に制御コマンドを送る。それら制御コマンドに従い、プロセスコントローラはプロセスの状態を変化させる(例.エッチングプロセスを停止させる、拡散率を変化させる、リソグラフィ焦点を変化させる、リソグラフィ照射量を変化させる等)。
【0086】
ある種の実施形態では、メモリ構造の計測に本願記載の半導体デバイス計量方法及びシステムが適用される。その種の実施形態では、周期的且つ平坦な構造に関する光学的限界寸法(CD)、膜及び組成計量が可能である。
【0087】
ある種の例では、米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA-Tencor Corporationから入手可能なSpectraShape(商標)光学限界寸法計量システムの一要素として、計測モデルが実現される。このやり方であれば、スペクトルがそのシステムにより収集された直後に、そのモデルが生成され使用準備が整う。
【0088】
他のある種の例では、例えば、米国カリフォルニア州ミルピタス所在のKLA-Tencor Corporationから入手可能なAcuShape(登録商標)ソフトウェアを情報処理システムにより実行することで、計測モデルがオフライン実現される。それによりもたらされる訓練済モデルを、計測を実行する計量システムによるアクセスが可能なAcuShape(登録商標)ライブラリの一要素として、組み込むことができる。
【0089】
図6には、少なくとも1個の新規態様に従い1個又は複数個の計量パフォーマンス指標に基づき計測モデルを訓練する方法300が描かれている。方法300は、本願の
図1に描かれている計量システム100等、計量システムによる実施に適している。ある態様によれば、認識頂けるように、予めプログラミングされているアルゴリズムを情報処理システム130又は他の何らかの汎用情報処理システムに備わる1個又は複数個のプロセッサにより実行することを通じ、方法300の諸データ処理ブロックを実行することができる。本願での認識によれば、計量システム100の具体的な構造的側面は限定を表すものではなく、専ら例証として解されるべきである。
【0090】
ブロック301では、1個又は複数個の実験計画法(DOE)計量ターゲットの計測に係る一群の実験計画法(DOE)計測データが、情報処理システムにより受け取られる。
【0091】
ブロック302では、そのDOE計量ターゲットに係る1個又は複数個の注目パラメタの既知な参照値が、その情報処理システムにより受け取られる。
【0092】
ブロック303では、計量ツールによる、第1ウェハ上に配された1個又は複数個の正則化構造の計測に由来する一群の正則化計測データが、その情報処理システムにより受け取られる。
【0093】
ブロック304では、その正則化計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値が、その情報処理システムにより受け取られる。
【0094】
ブロック305では、それら一群の実験計画法(DOE)計測データ、1個又は複数個の注目パラメタの参照値、正則化計測データ、並びに1個又は複数個の計測パフォーマンス指標、が入っている最適化関数に基づき計測モデルが訓練される。その最適化関数は、その1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化されたものとする。
【0095】
図7には、少なくとも1個の新規態様に従い1個又は複数個の計量パフォーマンス指標により正則化された最適化関数に基づき、1個又は複数個の注目パラメタの値を推定する方法400が描かれている。方法400は、本願の
図1に描かれている計量システム100等、計量システムによる実施に適している。ある態様によれば、認識頂けるように、予めプログラミングされているアルゴリズムを情報処理システム130又は他の何らかの汎用情報処理システムに備わる1個又は複数個のプロセッサにより実行することを通じ、方法400の諸データ処理ブロックを実行することができる。本願での認識によれば、計量システム100の具体的な構造的側面は限定を表すものではなく、専ら例証として解されるべきである。
【0096】
ブロック401では、ウェハ上に配された1個又は複数個の計量ターゲットの、計量ツールによる計測に由来する一群の計測データが、情報処理システムにより受け取られる。
【0097】
ブロック402では、その計測データに係る1個又は複数個の計測パフォーマンス指標の値が、その情報処理システムにより受け取られる。
【0098】
ブロック403では、その1個又は複数個の計測パフォーマンス指標により正則化された最適化関数を孕む回帰分析に依拠し、その一群の計測データをもとに、その1個又は複数個の計量ターゲットを特徴付ける1個又は複数個の注目パラメタの値が推定される。
【0099】
更なる実施形態では、システム100に1個又は複数個の情報処理システム130を設けそれを利用することで、本願記載の方法に従い収集された分光計測データに基づき半導体構造の計測が実行される。その1個又は複数個の情報処理システム130を、1個又は複数個のスペクトロメータ、能動光学素子、プロセスコントローラ等に可通信結合させることができる。ある態様では、その1個又は複数個の情報処理システム130が、ウェハ101の構造の分光計測に係る計測データを受け取るよう構成される。
【0100】
認識されるべきことに、本件開示の随所に記載の1個又は複数個のステップを、単一コンピュータシステム130により実行してもよいし、それに代え複数コンピュータシステム130により実行してもよい。更に、システム100の様々なサブシステムに、本願記載のステップのうち少なくとも一部分を実行するのに適したコンピュータシステムを組み込んでもよい。従って、上掲の記述は本発明に対する限定事項としてではなく、単なる例証として解されるべきである。
【0101】
加えて、コンピュータシステム130をスペクトロメータに可通信結合させる要領を、本件技術分野で既知な何れの要領としてもよい。例えば、1個又は複数個の情報処理システム130を、そのスペクトロメータと連携する情報処理システムに結合させてもよい。また例えば、そのスペクトロメータを、コンピュータシステム130に結合された単一コンピュータシステムにより直に制御してもよい。
【0102】
システム100のコンピュータシステム130を、本システムの諸サブシステム(例.スペクトロメータ等)からのデータ又は情報を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。この構成では、その伝送媒体を、コンピュータシステム130とシステム100の他サブシステムとの間のデータリンクとして働かせることができる。
【0103】
システム100のコンピュータシステム130を、他システムからのデータ又は情報(例.計測結果、モデル化入力、モデル化結果、参照計測結果等々)を伝送媒体、例えば有線及び/又は無線区間を有するそれにより受領及び/又は獲得するよう、構成してもよい。この構成では、その伝送媒体を、コンピュータシステム130と他システム(例.システム100のオンボードメモリ、外部メモリ又は他の外部システム)との間のデータリンクとして働かせることができる。例えば、データリンクを介し格納媒体(即ちメモリ132又は外部メモリ)から計測データを受け取るよう情報処理システム130を構成してもよい。一例としては、本願記載のスペクトロメータを用い取得した分光結果を恒久的又は半恒久的メモリデバイス(例.メモリ132又は外部メモリ)内に格納させることができる。この構成では、その分光結果をオンボードメモリから、或いは外部メモリシステムからインポートすることができる。更に、伝送媒体を介しコンピュータシステム130から他システムにデータを送ってもよい。一例としては、コンピュータシステム130により決定された推定パラメタ値又は計測モデルを送り、外部メモリ内に格納させることができる。この構成では、計測結果を他システムにエキスポートすることができる。
【0104】
情報処理システム130には、これに限られるものではないが、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサその他、本件技術分野で既知なあらゆる装置が包含されうる。一般に、語「情報処理システム」は、記憶媒体から得た命令を実行するプロセッサを1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広く定義することができる。
【0105】
方法例えば本願記載のそれらを実現するプログラム命令134を、伝送媒体例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンク上で伝送させてもよい。例えば、
図1描出の通り、メモリ132に格納されているプログラム命令を、バス133上を経てプロセッサ131へと伝送させる。コンピュータ可読媒体(例.メモリ132)内にプログラム命令134を格納させる。コンピュータ可読媒体の例としてはリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、光ディスク及び磁気テープがある。
【0106】
本願記載の語「限界寸法」には、構造のあらゆる限界寸法(例.下部限界寸法、中部限界寸法、上部限界寸法、側壁角、格子高さ等々)、任意の2個以上の構造間の限界寸法(例.2個の構造間の距離)、並びに2個以上の構造間のずれ(例.重なり合う格子構造間のオーバレイ位置ずれ等々)が包含される。構造の例としては三次元構造、パターン化構造、オーバレイ構造等々がある。
【0107】
本願記載の語「限界寸法アプリケーション」や「限界寸法計測アプリケーション」にはあらゆる限界寸法計測が包含される。
【0108】
本願記載の語「計量システム」には、計測アプリケーション例えば限界寸法計量、オーバレイ計量、焦点/照射量計量及び組成計量を初め、その態様を問わず試料の解明に少なくとも部分的に利用されるシステム全てが包含される。とはいえ、こうした技術用語により本願記載の語「計量システム」の範囲が限定されるわけではない。加えて、システム100をパターン化ウェハの計測向けに構成しても、及び/又は、無パターンウェハの計測向けに構成してもよい。その計量システムを、LED検査ツール、エッジ検査ツール、背面検査ツール、マクロ検査ツール又はマルチモード検査ツール(1個又は複数個のプラットフォームから同時にデータを得るものを含む)その他、限界寸法データに基づくシステムパラメタの校正から利を受けるどのような計量又は検査ツールとして構成してもよい。
【0109】
本願には、何らかの半導体処理ツール(例.検査システムやリソグラフィシステム)内で試料を計測するのに使用しうる半導体計測システムに関し様々な実施形態が記述されている。本願で用いられている語「試料」は、本件技術分野で既知な手段により処理(例.印刷又は欠陥検査)されうるウェハ、レティクルその他の標本全てを指している。
【0110】
本願中の用語「ウェハ」は、総じて、半導体又は非半導体素材で形成された基板のことを指している。その例としては、これに限られるものではないが、単結晶シリコン、ヒ化ガリウム及び燐化インジウムがある。そうした基板は半導体製造設備にて普通に見出すことができ、及び/又は、処理することができる。場合によっては、ウェハが基板のみで構成されることがある(いわゆるベアウェハ)。そうではなく、ウェハが、基板上に形成された1個又は複数個の異種素材層を有することもある。ウェハ上に形成された1個又は複数個の層が「パターニング」されていることも「未パターニング」なこともありうる。例えば、ウェハ内に複数個のダイがありそれらが可反復パターンフィーチャを有していることがありうる。
【0111】
「レティクル」は、レティクル製造プロセスのどの段階にあるレティクルでもよいし、レティクルの完成品でもよいし、また半導体製造設備での使用向けにリリースされていてもいなくてもよい。レティクル或いは「マスク」は、一般に、その上にほぼ不透明な領域が形成されておりその領域がパターンをなしているほぼ透明な基板として定義される。その基板は、例えば、ガラス素材例えばアモルファスSiO2を含有するものとすることができる。レジストで覆われたウェハの上方にレティクルを配してリソグラフィプロセスのうち露出工程を行うことで、そのレティクル上のパターンをそのレジストへと転写することができる。
【0112】
ウェハ上に形成される1個又は複数個の層がパターンをなしていてもよいし、なしていなくてもよい。例えば、ウェハ内の複数個のダイそれぞれが、可反復パターンフィーチャを有していてもよい。そうした素材層の形成及び処理によって、最終的にはデバイスの完成品が得られよう。ウェハ上には多種多様なデバイスを形成しうるので、どのような種類のものであれ本件技術分野で既知なデバイスがその上に作成されるウェハを包括することを意図して、本願では語ウェハが用いられている。
【0113】
1個又は複数個の例示的実施形態では、前述の機能がハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はそれらの何らかの組合せの態で実現されうる。ソフトウェアでの実現時には、それらの機能が1個又は複数個の命令又はコードとしてコンピュータ可読媒体上に格納され又はその媒体上で伝送されよう。コンピュータ可読媒体にはコンピュータ格納媒体及び通信媒体の双方、例えばコンピュータプログラムをある場所から別の場所へと転送するのに役立つ媒体全てが包含される。格納媒体は、汎用又は専用コンピュータによるアクセスが可能な何れの入手可能媒体であってもよい。例えば、限定するものではないが、そうしたコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROMその他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージその他の磁気格納装置を初め、命令又はデータ構造の形態を採る所望のプログラムコード手段の搬送又は格納に使用することが可能で、且つ汎用又は専用コンピュータ或いは汎用又は専用プロセッサによるアクセスが可能な、あらゆる媒体を以て構成することができる。また、どのような接続であれコンピュータ可読媒体と称して差し支えない。例えば、そのソフトウェアをウェブサイト、サーバその他のリモートソースから送信するに当たり同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、ディジタル加入者線(DSL)又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波が用いられるのであれば、それら同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL又は無線テクノロジ例えば赤外線、無線周波数若しくはマイクロ波は媒体の定義に収まる。本願中の用語ディスク(disk/disc)には、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、ディジタルバーサタイルディスク(DVD)、フロッピーディスク及びブルーレイ(登録商標)ディスクを初め、通常はデータが磁気的に再生されるディスク(disk)及びレーザで以てデータが光学的に再生されるディスク(disc)が包含される。上掲のものの組合せもまたコンピュータ可読媒体の範囲内に包含されるべきである。
【0114】
ある種の具体的諸実施形態を教示目的で上述したが、本件特許出願の教示は一般的な適用可能性を有するものであり、上述の具体的諸実施形態に限定されるものではない。従って、特許請求の範囲中で説明されている発明の技術的範囲から離隔することなく、上述の諸実施形態の諸特徴につき様々な修正、適合化並びに組合せを実施することができる。
【国際調査報告】