(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/12 20060101AFI20230127BHJP
C08L 51/04 20060101ALI20230127BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230127BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230127BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230127BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L51/04
C08L23/08
C08L77/00
C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520109
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 KR2021007741
(87)【国際公開番号】W WO2022085893
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136605
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0078390
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ファ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・イル・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソンキョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン・キム
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB05Z
4J002BB06Z
4J002BB07Z
4J002BC061
4J002BN12Y
4J002BN14X
4J002BN15X
4J002CL07Z
4J002CL08Z
4J002DA076
4J002DA096
4J002FD040
4J002FD096
4J002FD100
4J002FD160
4J002FD170
4J002GR00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びそれを含む成形品に関し、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ベース樹脂と添加剤との相溶性に優れ、金属顔料の凝集現象を防止することができ、当該熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品は、メタリック表面のフローマークを改善して外観及び光沢度に優れ、射出品質及び帯電防止性に優れるため、電子製品をはじめとする様々な産業分野に広く適用可能であるという効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体;アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる熱可塑性共重合体;を含むベース樹脂と、
熱可塑性ポリアミド弾性体と、
エチレン共重合体と、
金属顔料とを含み、
前記ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、前記ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、前記ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aであることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1グラフト共重合体と前記第2グラフト共重合体の重量比は3:1~5:1の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂は、第1グラフト共重合体15~40重量%と、第2グラフト共重合体3~17重量%と、熱可塑性共重合体55~80重量%とを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン共重合体は、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンブテン共重合体及びエチレンオクテン共重合体から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン共重合体は、ベース樹脂100重量部に対して1~6重量部含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エチレン共重合体は、ビニルアセテートを18~30重量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、IEC 60093に準拠して測定した表面抵抗が1×10
7~1×10
9Ω/sqの範囲内であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、ポリ(エーテル-ブロック-アミド)共重合体及びポリ(エーテルエステル-ブロック-アミド)共重合体から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して5~20重量部で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記金属顔料は、アルミニウム顔料、銅顔料及び銀顔料から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して0.05~5重量部で含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記第1グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴムの平均粒径が0.01~1μmであり、シェルの重量平均分子量が70,000~300,000g/molであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記第1グラフト共重合体は、第1グラフト共重合体の総100重量%中、共役ジエン系重合体40~80重量%、芳香族ビニル系単量体10~45重量%及びビニルシアン系単量体1~25重量%を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記第2グラフト共重合体は、アクリルゴムの平均粒径が0.01~1μmであり、シェルの重量平均分子量が70,000~300,000g/molであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記第2グラフト共重合体は、第2グラフト共重合体の総100重量%中、アクリルゴム系重合体40~70重量%、芳香族ビニル系単量体10~45重量%及びビニルシアン系単量体1~25重量%を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
前記アクリルゴム系重合体は、ブチル(メタ)アクリレート重合体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート重合体及びヘキシルアクリレート重合体から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
熱可塑性共重合体の総100重量%中に芳香族ビニル系単量体50~90重量%及びビニルシアン系単量体10~50重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
ビニルシアン系単量体の含量が異なる熱可塑性共重合体を2種以上含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項17】
永久帯電防止用熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項18】
共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体;アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる熱可塑性共重合体;を含むベース樹脂と、熱可塑性ポリアミド弾性体と、エチレン共重合体と、金属顔料とを含む熱可塑性樹脂組成物を、溶融混練及び押出するステップを含み、
前記ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、前記ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、前記ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aである、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物で製造される、成形品。
【請求項20】
前記成形品は、IEC 60093に準拠した表面抵抗が1×10
12Ω/sq以下であり、ASTM E97に準拠した光沢度(45°)が100以上であることを特徴とする、請求項19に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年10月21日付の韓国特許出願第10-2020-0136605号及びこれに基づいて2021年06月17日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0078390号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、帯電防止剤と金属顔料を投入して製品を成形したとき、表面抵抗、外観品質、光沢性及び加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、製品の差別化及び製品のデザインの変化に対するニーズにより、色及びデザインの多様化が試みられている。デザインの変化は素材の変化を求め、金属感のある表面を有する製品の開発のための研究も活発に進められている。
【0004】
製品の表面に金属感を与えるためには、実際に金属を製品の表面に使用したり、メタリック塗料を表面に適用したりされるが、金属を使用する場合、製品の重量及び生産コストが増加し、表面加工が容易でないという問題があり、メタリック塗料を表面に適用する場合には、表面の塗料から有害成分が発生し得るという問題があった。
【0005】
これによって、最近は、加工性が良好であり、衝撃強度が優れ、外観が優れたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene、以下、「ABS」という)樹脂に代表されるビニルシアン化合物-共役ジエンゴム-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、「ABS系樹脂」という)に金属顔料を直接的に導入し、製品として成形して適用する方式が導入されたが、このとき、帯電防止性を改善するために帯電防止剤を必ず含まなければならず、このように帯電防止剤を含む場合、表面不良がさらに増加するという欠点があるため、ABS系樹脂の優れた加工性、成形性、耐衝撃性、強度及び光沢を維持しながらも、優れた帯電防止性を提供し、かつ表面品質をはじめとする製品品質に優れたABS樹脂を製造する技術が依然として必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2013-0046154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、帯電防止性に優れながら、射出品質及び外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物から製造されるメタリックカラーを有する成形品を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、
共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体;アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる熱可塑性共重合体;を含むベース樹脂と、
熱可塑性ポリアミド弾性体と、
エチレン共重合体と、
金属顔料とを含み、
前記ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、前記ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、前記ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
前記第1グラフト共重合体と前記第2グラフト共重合体の重量比は3:1~5:1の範囲内であってもよい。
【0012】
前記ベース樹脂は、第1グラフト共重合体15~40重量%と、第2グラフト共重合体3~17重量%と、熱可塑性共重合体55~80重量%とを含むことができる。
【0013】
前記エチレン共重合体は、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンブテン共重合体及びエチレンオクテン共重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0014】
前記エチレン共重合体は、ベース樹脂100重量部に対して1~6重量部含むことができる。
【0015】
前記エチレン共重合体は、前記エチレン共重合体の総100重量%中にビニルアセテートを18~30重量%含むことができる。
【0016】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、IEC 60093に準拠して測定した表面抵抗が1×107~1×109Ω/sqの範囲内であってもよい。
【0017】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、ポリ(エーテル-ブロック-アミド)共重合体及びポリ(エーテルエステル-ブロック-アミド)共重合体から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して5~20重量部で含むことができる。
【0018】
前記金属顔料は、アルミニウム顔料、銅顔料及び銀顔料から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して0.05~5重量部で含むことができる。
【0019】
前記第1グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴムの平均粒径が0.01~1μmであり、シェルの重量平均分子量が70,000~300,000g/molであってもよい。
【0020】
前記第1グラフト共重合体は、第1グラフト共重合体の総100重量%中、共役ジエン系重合体40~80重量%、芳香族ビニル系単量体10~45重量%及びビニルシアン系単量体1~25重量%を含むことができる。
【0021】
前記第2グラフト共重合体は、アクリルゴムの平均粒径が0.01~1μmであり、シェルの重量平均分子量が70,000~300,000g/molであってもよい。
【0022】
前記第2グラフト共重合体は、第2グラフト共重合体の総100重量%中、アクリルゴム系重合体40~70重量%、芳香族ビニル系単量体10~45重量%及びビニルシアン系単量体1~25重量%を含むことができる。
【0023】
前記アクリルゴム系重合体は、ブチル(メタ)アクリレート重合体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート重合体及びヘキシルアクリレート重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0024】
前記熱可塑性共重合体は、熱可塑性共重合体の総100重量%中に芳香族ビニル系単量体50~90重量%及びビニルシアン系単量体10~50重量%を含んでなってもよい。
【0025】
前記熱可塑性共重合体は、ビニルシアン系単量体の含量が異なる熱可塑性共重合体を2種以上含むことができる。
【0026】
前記熱可塑性樹脂組成物は、永久帯電防止用熱可塑性樹脂組成物であってもよい。
【0027】
また、本発明は、
共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体;アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる熱可塑性共重合体;を含むベース樹脂と、熱可塑性ポリアミド弾性体と、エチレン共重合体と、金属顔料とを含む熱可塑性樹脂組成物を、溶融混練及び押出するステップを含み、
前記ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、前記ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、前記ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aである熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0028】
また、本発明は、前述した熱可塑性樹脂組成物で製造される成形品を提供する。
【0029】
前記成形品は、IEC 60093に準拠した表面抵抗が1×1012Ω/sq以下であり、ASTM E97に準拠した光沢度(45°)が100以上であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ベース樹脂であるスチレン系樹脂と添加剤との相溶性に優れ、金属顔料の凝集現象を防止することができる。
【0031】
すなわち、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品は、メタリック表面のフローマークを改善して外観及び光沢度に優れ、射出品質及び帯電防止性に優れるため、電子製品、家電製品をはじめとする様々な産業分野に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】後述する比較例2による成形品の表面においてパール(pearl)の凝集によって発生したスジを確認した写真である。
【
図2】後述する実施例1による成形品の表面においてパール(pearl)の凝集を防止してスジがないことを確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明についての理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念として解釈されなければならない。
【0035】
本発明において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」または「由来の単位として含む」として定義できる。
【0036】
本発明において、表面抵抗は、帯電防止性を示す変数であって、この技術分野で公知された様々な方式により測定することができ、他に特定しない限り、IEC 60093に準拠して測定した値(単位Ω/sq)を指す。
【0037】
当該表面抵抗が1×1012Ω/sq以下である場合、永久帯電素材として効果が優れるものと判断できる。
【0038】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering)を用いて測定することができ、詳細には、ラテックス状態で粒度分布分析器(Nicomp380)を用いてガウスモードで測定することができ、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度(Intensity Distribution)平均粒径を意味することができる。
【0039】
具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint) 300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析)Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μ秒として測定することができる。
【0040】
本発明において、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて標準PS(標準ポリスチレン;standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができ、詳細には、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めたものを適用した値である。
【0041】
具体的には、測定する重合体を1%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに10μL注入するが、0.3mL/分の流速で流入させ、試料の濃度2.0mg/mL(100μL injection)に対して30℃で分析を行うことができる。ここで、カラムは、Waters社のPLmixed B2個を直列に接続し、検出器としてはRI検出器(Agilent Waters社製、2414)を用いて40℃で測定した後、ChemStationを使用してデータを加工したものであってもよい。
【0042】
本発明において、(共)重合体の組成比は、(共)重合体を構成する単位体の含量を意味するか、または(共)重合体の重合時に投入される単位体の含量を意味することができる。
【0043】
本発明において、「含量」は、別途の定義がない限り、重量を意味する。
【0044】
本発明において、ある化合物の「誘導体」とは、その化合物の水素及び官能基のうち1つ以上がアルキル基やハロゲン基などの他の種類の基で置換された物質を意味する。
【0045】
本発明のグラフト率は、グラフト重合体の乾燥粉末1gにアセトンを加えた後、常温で24時間撹拌し、これを遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、乾燥後の重量を測定し、下記数式1で計算して求めることができる。
【0046】
[数式1]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
-グラフトされた単量体の重量(g):グラフト共重合体をアセトンに投入し、振動機(商品名:SI-600R、製造社:Lab.companion)で24時間振動させて遊離したグラフト共重合体を溶解させ、遠心分離機で14,000rpmで1時間遠心分離し、真空乾燥機(商品名:DRV320DB、製造社:ADVANTEC)を用いて140℃で2時間乾燥させて収得した不溶性物質(gel)の重量からゴム質の重量(g)を引いた重量
-ゴム質の重量(g):グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴムコアの重量
【0047】
本発明者らは、加工性が良好であり、衝撃強度が優れ、外観が優れたスチレン系樹脂に帯電防止性を付与するために帯電防止剤を投入した素材を、メタリックカラー製品として成形する際に、本発明に係る第2グラフト共重合体とエチレン共重合体をそれぞれ使用する場合、金属顔料が容易に凝集することによって表面特性が不良であったが、前記第2グラフト共重合体とエチレン共重合体を前記帯電防止剤に対し適正な混合比で投入する場合、スチレン系樹脂の優れた加工性、成形性、耐衝撃性、強度及び光沢を維持しながら、当該スチレン系樹脂と金属顔料、さらに帯電防止剤との優れた相溶性を提供することで、金属顔料の凝集現象を防止し、帯電防止性と表面特性に優れながらも、基本物性が良好な素材を提供することを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体及び熱可塑性共重合体を含むベース樹脂と、金属顔料と、エチレン共重合体と、熱可塑性ポリアミド弾性体とを含む。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記構成を共に含むと同時に、ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aを満たすことができ、この場合、目的とする効果である帯電防止性、外観、射出品質、光沢度及び加工性を有する成形品を提供することができる。
【0050】
また、本発明は永久帯電防止用熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0051】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0052】
ベース樹脂
前記ベース樹脂は、加工性及び衝撃強度などの機械的物性、外観品質の維持、及び帯電防止剤を投入した素材の成形特性を考慮するとき、第1グラフト共重合体;第2グラフト共重合体;及び熱可塑性共重合体;を含むことが好ましい。
【0053】
第1グラフト共重合体
本発明の第1グラフト共重合体は、共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる。
【0054】
前記第1グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた加工性を付与するだけでなく、熱可塑性樹脂成形品内で衝撃補強剤の役割を担うことができる。
【0055】
前記共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体が重合されて製造された共役ジエン系重合体に、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体がグラフト重合されることによって変性された共役ジエン系重合体を含むことができる。ここで、前記共役ジエン系重合体は共役ジエンゴム質重合体であってもよい。
【0056】
前記共役ジエンゴム質重合体は、一例として、共役ジエンゴムがコロイド状態で水に分散されたラテックスであってもよく(但し、重量の場合、固形分基準)、この場合、機械的強度及び加工性に優れるという効果がある。
【0057】
前記共役ジエンゴム質重合体は、二重結合と単一結合が交互に配列している構造であるコンジュゲート化ジエン化合物を含んで重合された(共)重合体を意味し、一例として、ブタジエン重合体、ブタジエン-スチレン共重合体及びブタジエン-アクリロニトリル共重合体から選択されてもよい。
【0058】
また、前記共役ジエン系単量体は、一例として、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンから選択された1種以上であってもよく、このうち1,3-ブタジエンが好ましい。
【0059】
前記共役ジエン系重合体は、平均粒径が、一例として0.01~1μm、好ましくは0.03~0.8μm、より好ましくは0.05~0.5μmであってもよい。上述した範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の衝撃強度、加工性、表面特性及び表面光沢がさらに改善され得る。
【0060】
前記共役ジエン系重合体は、前記第1グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として40~80重量%、好ましくは45~75重量%、より好ましくは50~70重量%含まれてもよく、前記範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の衝撃強度、加工性、表面特性及び表面光沢がさらに改善され得る。
【0061】
前記共重合体のシェルの重量平均分子量は、一例として70,000~300,000g/mol、好ましくは80,000~170,000g/mol、より好ましくは90,000~150,000g/molであってもよく、前記範囲内で、機械的物性が改善されるという利点がある。
【0062】
前記共重合体のシェルは、共役ジエン系重合体にグラフト重合された芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなることができる。
【0063】
前記芳香族ビニル系単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、α-エチルスチレン、β-エチルスチレン、ビニルトルエン及びこれらの誘導体から選択された1種以上であってもよく、このうちスチレンが好ましい。
【0064】
前記芳香族ビニル系単量体は、前記第1グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として10~45重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは20~30重量%、最も好ましくは25~30重量%含まれてもよく、前記範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の機械的物性がさらに改善され得る。
【0065】
前記ビニルシアン系単量体は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル及びこれらの誘導体から選択された1種以上であってもよく、このうちアクリロニトリルが好ましい。
【0066】
前記ビニルシアン系単量体は、前記第1グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として1~25重量%、好ましくは5~19重量%、より好ましくは7~15重量%含まれてもよく、前記範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の機械的物性がさらに改善され得る。
【0067】
前記共重合体は、共役ジエン系重合体の存在下で、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を乳化重合、懸濁重合及び塊状重合から選択された1つ以上の方法により重合して製造することができ、このうち乳化重合により製造することが好ましい。
【0068】
前記乳化重合はグラフト乳化重合であってもよく、一例として50~90℃、好ましくは60~85℃で行うことができる。
【0069】
前記乳化重合は、開始剤及び乳化剤の存在下で行うことができる。
【0070】
前記開始剤は、ラジカル開始剤であって、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素をはじめとする無機過酸化物;t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノールペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートをはじめとする有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニルニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルをはじめとするアゾ化合物から選択された1種以上であってもよい。
【0071】
前記開始剤と共に、開始反応を促進させるために活性化剤がさらに投入されてもよい。
【0072】
前記活性化剤は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムから選択された1種以上であってもよい。
【0073】
前記開始剤は、前記共重合体を構成する単量体(共役ジエン系重合体を含む)の合計100重量部に対して、一例として0.001~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部、より好ましくは0.02~0.1重量部投入されてもよい。前記範囲内で、乳化重合が容易に行われ得ると共に、前記共重合体中の開始剤の残留量は数十ppm単位に最小化することができる。
【0074】
前記乳化剤は、一例として、アルキルベンゼンスルホネートのカリウム化合物、アルキルベンゼンスルホネートのナトリウム化合物、アルキルカルボキシレートのカリウム化合物、アルキルカルボキシレートのナトリウム化合物、オレイン酸のカリウム化合物、オレイン酸のナトリウム化合物、アルキルスルフェートのカリウム化合物、アルキルスルフェートのナトリウム化合物、アルキルジカルボキシレートのカリウム化合物、アルキルジカルボキシレートのナトリウム化合物、アルキルエーテルスルホネートのカリウム化合物、アルキルエーテルスルホネートのナトリウム化合物及びアリルオキシノニルフェノキシプロパン-2-イルオキシメチルスルホネートのアンモニウム化合物から選択された1種以上であってもよく、このうちドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0075】
前記乳化剤は市販の物質を用いることができるが、この場合、SE10N、BC-10、BC-20、HS10、Hitenol KH10及びPD-104から選択された1種以上を用いることができる。
【0076】
前記乳化剤は、前記共重合体を構成する単量体(共役ジエン系重合体を含む)の合計100重量部に対して、一例として0.15~2.0重量部、好ましくは0.3~1.5重量部、より好ましくは0.5~1.2重量部投入されてもよく、前記範囲内で、乳化重合が容易に行われるだけでなく、共重合体中の開始剤の残留量は数十ppm単位に最小化することができる。
【0077】
前記乳化重合時に、分子量調節剤がさらに投入されてもよい。前記分子量調節剤は、一例として、t-ドデシルメルカプタン、N-ドデシルメルカプタン及びα-メチルスチレンダイマーから選択された1種以上であってもよく、このうちt-ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0078】
前記分子量調節剤は、前記共重合体を構成する単量体(共役ジエン系重合体を含む)の合計100重量部に対して、一例として0.1~1重量部、好ましくは0.2~0.8重量部、さらに好ましくは0.4~0.6重量部投入されてもよい。
【0079】
前記乳化重合は、単量体などを反応器に一括投入した後に開始するか、または乳化重合の開始前に反応器に単量体などを一部投入し、開始後に残りは連続投入するか、または単量体などを一定時間連続投入しながら乳化重合を行うことができる。
【0080】
収得された第1グラフト共重合体はラテックス形態であって、凝集、脱水及び乾燥の工程によりドライパウダー形態で回収することができる。
【0081】
凝集に使用される凝集剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの塩や硫酸、硝酸、塩酸などの酸性物質及び混合物を使用することができる。
【0082】
前記第1グラフト共重合体は、ベース樹脂の総100重量%に対して、一例として15~40重量%、好ましくは17~35重量%、より好ましくは20~30重量%含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から射出されて製造された成形品が優れた機械的物性及び射出品質を有することができる。
【0083】
第2グラフト共重合体
本発明の熱可塑性樹脂組成物は第2グラフト共重合体を含み、前記第2グラフト共重合体は、一例として、アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる。
【0084】
前記第2グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に、優れた耐衝撃性及び剛性を付与することができ、特に、前述した第1グラフト共重合体と後述する金属顔料、熱可塑性ポリアミド弾性体との相溶性を付与することで、本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出して製造される成形品の外観特性を向上させることができる。
【0085】
前記第2グラフト共重合体は、シード、コア及びシェルの構造を有することができる。
【0086】
前記シードは、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を単独で重合するか、またはアルキル(メタ)アクリレート系単量体と芳香族ビニル系単量体を共に重合して製造されるアクリルゴム系重合体を含むことができる。
【0087】
前記コアは、前記シードを囲み、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を含んで重合され得る。
【0088】
前記シードとコアに含まれるアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、一例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシルアクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートから選択された1種以上であってもよく、このうちブチル(メタ)アクリレート単量体、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート単量体またはヘキシルアクリレート単量体であってもよい。
【0089】
前記シェルは、前記コアを囲み、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体から選択された1種以上を含んで重合され得る。
【0090】
前記第2グラフト共重合体の製造に使用される重合は、乳化重合、懸濁重合及び塊状重合から選択される1つ以上の方法により重合を行うことができ、このうち乳化重合により製造することが好ましい。
【0091】
前記第2グラフト共重合体中のシードは、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を一括又は連続投入した後、乳化重合して製造するか、またはアルキル(メタ)アクリレート系単量体と芳香族ビニル系単量体を一括又は連続投入した後、乳化重合して製造することができる。
【0092】
前記第2グラフト共重合体中のコアは、前記シードの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート系単量体を一括又は連続投入した後、乳化重合して製造することができる。
【0093】
前記第2グラフト共重合体中のシェルは、前記コアの存在下で、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択された1種以上を一括又は連続投入した後、乳化重合して製造することができる。
【0094】
前記第2グラフト共重合体中のアクリルゴム系重合体は、前記第2グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として40~70重量%、好ましくは45~65重量%、より好ましくは45~60重量%含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の衝撃強度、熱安定性及び表面光沢をはじめとする表面品質に優れるという効果がある。
【0095】
前記アクリルゴム系重合体は、平均粒径が、一例として0.01~1μm、好ましくは0.03~0.8μm、より好ましくは0.05~0.6μmであってもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の機械的特性、光沢性及び加工性をさらに改善させることができる。
【0096】
前記共重合体のシェルの重量平均分子量は、一例として70,000~300,000g/mol、好ましくは80,000~170,000g/mol、より好ましくは90,000~150,000g/molであってもよく、前記範囲内で、機械的物性が改善されるという利点がある。
【0097】
前記芳香族ビニル系単量体は、前記第1グラフト共重合体についての説明で記載した通りである。
【0098】
前記芳香族ビニル系単量体は、前記第2グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として10~45重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは20~30重量%、最も好ましくは25~30重量%含まれてもよく、前記範囲内で、共重合体の剛性及び加工性がさらに改善され、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性がさらに改善され得る。
【0099】
前記ビニルシアン系単量体は、前記第1グラフト共重合体についての説明で記載した通りである。
【0100】
前記ビニルシアン系単量体は、前記第2グラフト共重合体の総100重量%に対して、一例として1~25重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは4~17重量%含まれてもよく、前記範囲内で、共重合体の剛性及び耐衝撃性がさらに改善され、熱可塑性樹脂組成物の機械的物性がさらに改善され得る。
【0101】
前記第2グラフト共重合体は、ベース樹脂の総100重量%に対して、一例として3~17重量%、好ましくは5~15重量%、より好ましくは5~10重量%含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から射出されて製造された成形品の機械的物性及び射出品質が優れ得る。
【0102】
前記第1グラフト共重合体と前記第2グラフト共重合体の重量比は3:1~5:1の範囲内であってもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から射出されて製造された成形品の機械的物性及び射出品質が優れ得る。
【0103】
熱可塑性共重合体
本発明の熱可塑性共重合体は、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる。
【0104】
前記熱可塑性共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の物性のバランス、すなわち、面衝撃をはじめとする機械的特性、加工性、塗装外観品質及び塗装後の亀裂の予防のバランスを調節するベース樹脂の役割を担うために含まれ得る。
【0105】
前記熱可塑性共重合体は、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体を共重合して製造することができる。
【0106】
具体的には、前記熱可塑性共重合体は、芳香族ビニル系単量体とビニルシアン系単量体を一括又は連続投入し、乳化重合、懸濁重合及び塊状重合から選択される1種以上の方法により重合して製造することができる。
【0107】
前記芳香族ビニル系単量体及び前記ビニルシアン系単量体の種類は、前記第1グラフト共重合体についての説明で記載した通りである。
【0108】
前記熱可塑性共重合体は、前記熱可塑性共重合体の総100重量%に対して、前記芳香族ビニル系単量体を、一例として50~90重量%、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%、最も好ましくは65~76重量%含むことができる。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の物性バランス及び表面光沢をさらに改善することができる。
【0109】
前記熱可塑性共重合体は、前記熱可塑性共重合体の総100重量%に対して、前記ビニルシアン系単量体を、一例として10~50重量%、好ましくは15~45重量%、より好ましくは20~40重量%、最も好ましくは24~35重量%含むことができる。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の物性バランス及び表面光沢をさらに改善することができる。
【0110】
前記熱可塑性共重合体は、重量平均分子量が、一例として40,000~200,000g/mol、好ましくは60,000~190,000g/mol、より好ましくは80,000~190,000g/molであってもよい。上述した範囲を満たす場合、ベース樹脂の物性のバランス、すなわち、機械的特性、加工性及び塗装外観品質のバランスをより容易に調節することができる。
【0111】
前記熱可塑性共重合体は、本発明の定義に従う限り、市販の物質を用いることができる。
【0112】
前記熱可塑性共重合体は、ベース樹脂の総100重量%に対して、一例として55~80重量%、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~80重量%、最も好ましくは65~75重量%含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から製造される成形品の物性バランス及び表面光沢をさらに改善することができる。
【0113】
前記熱可塑性共重合体は、好ましくは、ビニルシアン系単量体の含量が異なる熱可塑性共重合体を2種以上含むものであってもよい。
【0114】
すなわち、前記熱可塑性共重合体は、ビニルシアン系単量体が第1含量を有する第1共重合体と、ビニルシアン系単量体が前記第1含量よりも大きい第2含量を有する第2共重合体とを含むことができる。
【0115】
ここで、前記第1共重合体は、ビニルシアン系単量体が、一例として21~31重量%(第1含量に該当する)であってもよく、前記第2共重合体は、ビニルシアン系単量体が、一例として31重量%超、35重量%以下(第2含量に該当する)であってもよく、この範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物から射出されて製造された成形品の機械的物性、射出品質及び加工性をさらに改善することができる。
【0116】
前記熱可塑性共重合体は、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合から選択された1つ以上の方法により重合して製造することができ、このうち塊状重合により製造される場合、製造コストが削減されるだけでなく、機械的物性に優れるという効果がある。
【0117】
前記塊状重合の場合、乳化剤又は懸濁剤などの添加剤が投入されないため、共重合体中の不純物の量が最小化された高純度の共重合体を製造することができる。これによって、透明度の維持を具現する熱可塑性樹脂組成物には、塊状重合により製造された共重合体が含まれることが有利であり得る。
【0118】
前記塊状重合は、一例として、単量体混合物に、反応媒質である有機溶媒、及び必要に応じて分子量調節剤、重合開始剤をはじめとする添加剤を投入して重合させる方法であってもよい。
【0119】
具体的な一例として、前記熱可塑性共重合体の製造方法は、芳香族ビニル系化合物及びビニルシアン系化合物を含む単量体混合物100重量部に、反応媒質20~40重量部及び分子量調節剤0.05~0.5重量部を混合し、反応温度130~170℃を維持しつつ2~4時間重合反応させるステップを含むことができる。
【0120】
前記反応媒質は、この技術分野で通常使用される溶媒であれば、特に制限されず、一例として、エチルベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系化合物であってもよい。
【0121】
前記熱可塑性共重合体の製造方法は、一例として、原料投入ポンプ、反応原料が連続的に投入される連続撹拌槽、連続撹拌槽から排出された重合液を予備的に加熱する予備加熱槽、未反応単量体及び/又は反応媒質を揮発させる揮発槽、ポリマー移送ポンプ、及び重合体をペレット状に製造する押出加工機で構成されている連続工程機で行われてもよい。
【0122】
このとき、前記押出加工の条件は、一例として210~240℃であってもよいが、これに限定するものではない。
【0123】
前記熱可塑性共重合体は、本発明の定義に従う限り、市販の物質を用いることができる。
【0124】
前記熱可塑性共重合体は、ベース樹脂の総100重量%に対して、一例として55~80重量%、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~75重量%であってもよい。上述した範囲を満たす場合、ベース樹脂の物性のバランス、すなわち、機械的特性、加工性及び塗装外観品質のバランスをさらに容易に調節することができる。
【0125】
熱可塑性ポリアミド弾性体
本発明において、前記熱可塑性ポリアミド弾性体は帯電防止剤の役割を担う。
【0126】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、一例として、IEC 60093に準拠して測定した表面抵抗が1×107~1×109Ω/sqの範囲内であってもよい。
【0127】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、一例として、ポリ(エーテル-ブロック-アミド)共重合体及びポリ(エーテルエステル-ブロック-アミド)共重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0128】
前記熱可塑性ポリアミド弾性体は、前記ベース樹脂(第1グラフト共重合体+第2グラフト共重合体+熱可塑性共重合体)100重量部に対して、一例として5~20重量部、好ましくは6~19重量部、最も好ましくは8~17重量部含むことができる。上述した範囲を満たし、後述する金属顔料と併用する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から、優れた帯電防止性を有するメタリック外観を示す成形品が射出され得る。
【0129】
エチレン共重合体
本発明のエチレン共重合体は、前述した第2グラフト共重合体と併用して適切な含量で使用される場合、前述した熱可塑性ポリアミド弾性体と金属顔料の併用時に現れるスジをはじめとする表面品質の不良を解消し、改善された射出外観を提供するという効果がある。
【0130】
前記エチレン共重合体は、i)エチレンと;ii)C3-C10アルファオレフィン、不飽和C3-C20モノカルボン酸のC1-C12アルキルエステル、不飽和C3-C20モノ又はジカルボン酸、不飽和C4-C8ジカルボン酸の無水物、及び飽和C2-C18カルボン酸のビニルエステルから選択される1種以上のエチレン性不飽和単量体と;の共重合体であるか、または前記共重合体のアイオノマー(ionomer)であってもよい。
【0131】
前記エチレン共重合体は、一例として、エチレンビニルアセテート共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレンブテン共重合体及びエチレンオクテン共重合体から選択された1種以上であってもよい。
【0132】
前記エチレン共重合体は、前記エチレン共重合体の総100重量%中にビニルアセテートを18~30重量%、具体例として21~30重量%含むことができる。上述した範囲を満たす場合、前記熱可塑性ポリアミド弾性体と金属顔料の併用時に現れるスジをはじめとする表面品質の不良を解消し、改善された射出外観を提供するという効果がある。
【0133】
前記エチレン共重合体は、前記ベース樹脂(第1グラフト共重合体+第2グラフト共重合体+熱可塑性共重合体)100重量部に対して、一例として1~6重量部、好ましくは1~5重量部、より好ましくは2~5重量部であってもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から、優れたメタリックカラーの外観及び物性を示す成形品が射出され得る。
【0134】
前述した熱可塑性ポリアミド系弾性体の含量をaとし、前記エチレン共重合体の含量をb、そして、前述した第2グラフト共重合体の含量をcとするとき、b+cがaの0.5倍以上である場合、目的とする効果である優れた帯電防止性、外観、射出品質、光沢度及び加工性を有する成形品を提供することができる。
【0135】
金属顔料
前記金属顔料は、メタリック外観を形成する役割を担う。
【0136】
前記金属顔料は、一例として、アルミニウム顔料、銅顔料または銀顔料であってもよく、このうちアルミニウム顔料であることが好ましい。
【0137】
前記金属顔料は、直接製造して使用するか、または市販の物質を使用することができる。
【0138】
前記金属顔料は、前記ベース樹脂100重量部に対して、一例として0.05~5重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.5~5重量部、さらに好ましくは1~4重量部であってもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物から、優れたメタリック外観を示す成形品が射出され得る。
【0139】
前記金属顔料は、好ましくは平均粒径が1~50μm、より好ましくは5~40μm、さらに好ましくは10~30μm、より一層好ましくは15~25μmであり、この範囲内で、優れたメタリックカラー及び外観品質を確保することができる。
【0140】
本発明において、金属顔料の平均粒径は、粒子の大きさを測定する公知の方法により測定することができ、詳細には、窒素ガス吸着法を用いてBET分析装置(Micromeritics社のSurface Area and Porosity Analyzer ASAP 2020装置)を用いて測定することができる。
【0141】
その他の添加剤
前記熱可塑性樹脂組成物は、塗装外観品質及び外観物性などに影響を与えない範囲内で滑剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、衝撃補強剤及び可塑剤から選択された1種以上の添加剤を含むことができる。
【0142】
前記添加剤は、一例として、前記ベース樹脂の総100重量部に対して、一例として0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物固有の基本物性を低下させることなく、添加剤の機能を実現するという効果がある。
【0143】
前記滑剤は、一例として、エチレンビスステアロアミド、酸化ポリエチレンワックス、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアロアミド、及びステアリン酸から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0144】
前記光安定剤は、一例として、HALS系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤などを使用することができるが、これに限定されない。
【0145】
前記帯電防止剤は、一例として、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などを1種以上使用することができ、これに限定されるものではない。
【0146】
前記離型剤は、一例として、グリセリンステアレート、ポリエチレンテトラステアレートなどから選択された1種以上を使用することができ、これに限定されるものではないことを明示する。
【0147】
具体例として、前記添加剤は、滑剤0.1~5重量部及び酸化防止剤0.1~1重量部を含むことができ、この範囲内で、熱可塑性樹脂組成物の物性に影響を与えずに滑剤及び酸化防止剤本来の特性が発現されるという効果がある。
【0148】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0149】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、一例として、共役ジエン系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第1グラフト共重合体;アクリルゴム系重合体、芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる第2グラフト共重合体;及び芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体を含んでなる熱可塑性共重合体;を含むベース樹脂と、熱可塑性ポリアミド弾性体と、エチレン共重合体と、金属顔料とを含む熱可塑性樹脂組成物を溶融混練及び押出するステップを含む。
【0150】
このとき、前記ベース樹脂100重量部に対する熱可塑性ポリアミド弾性体の重量をaとし、前記ベース樹脂100重量部に対する前記エチレン共重合体の重量をbとし、前記ベース樹脂の総100重量%中の前記第2グラフト共重合体の重量をcとするとき、b+c≧0.5aの関係を満たす。
【0151】
他の例として、前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、熱可塑性共重合体、熱可塑性ポリアミド弾性体、エチレン共重合体及び金属顔料を押出機に投入し、210~240℃で溶融混練するステップを含む。
【0152】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述したその他の添加剤を含むことができる。
【0153】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサーから選択された1種以上を用いて行われてもよく、好ましくは二軸押出機を用いて均一に混合した後、押出して、一例としてペレット状の熱可塑性樹脂組成物を収得することができ、この場合、機械的物性、熱的特性、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0154】
他の例として、前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、熱可塑性共重合体と熱可塑性ポリアミド弾性体、エチレン共重合体及び金属顔料を混合した後、一軸押出機、二軸押出機またはバンバリーミキサーを用いて均一に分散させて押出した後、押出物を水槽に通過させ、これを切断してペレットを製造するステップを含むことができる。
【0155】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、一例として、210~240℃及び150~250rpm下で、具体例として、220~235℃及び170~230rpm下で行うものであってもよく、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0156】
前記熱可塑性樹脂組成物ペレットは、一例として、射出機を用いて射出バレル温度210~250℃下で、好ましくは220~240℃下で射出成形品として製造され得る。
【0157】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0158】
成形品
本発明の成形品は、一例として、本発明の熱可塑性樹脂組成物で製造されたものであってもよく、この場合、機械的特性及び帯電防止性に優れながら、射出品質及び外観に優れたメタリックカラーを有する成形品を提供するという効果がある。
【0159】
本発明の成形品は、一例として、IEC 60093に準拠した表面抵抗が1×1012Ω/sq以下であってもよい。
【0160】
本発明の成形品は、一例として、ASTM E97に準拠した光沢度(45°)が100以上であってもよく、具体例として100~102であってもよい。
【0161】
前記成形品の用途は、特に制限されないが、好ましくは、電子製品及び家電製品用ハウジングであってもよく、この場合、製品に帯電防止性を提供することで、静電気の発生による加工上の問題、埃の吸着などの問題を予防することができる。また、表面品質に優れるため、加工による製品加工収率が高くなるという利点がある。
【0162】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装置などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0163】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0164】
[実施例]
下記実施例1~5、比較例1~7及び参照例1~4に用いられた材料は、次の通りである。
【0165】
A)第1グラフト共重合体(ABS):平均粒径300nmのブタジエン重合体60重量%、スチレン30重量%、アクリロニトリル10重量%
B)第2グラフト共重合体(ASA):平均粒径300nmのブチルアクリレート重合体50重量%、スチレン35重量%、アクリロニトリル15重量%
C-1)熱可塑性共重合体(バルク重合SAN):スチレン70重量%、アクリロニトリル30重量%、Mw120,000g/mol
C-2)熱可塑性共重合体(バルク重合SAN):スチレン68重量%、アクリロニトリル32重量%、Mw150,000g/mol
D-1)熱可塑性ポリアミド弾性体(ポリ(エーテル-ブロック-アミド)共重合体):融点200℃、密度1.14、IEC 60093により測定した表面抵抗1×107Ω/sq
D-2)熱可塑性ポリアミド弾性体(ポリ(エーテルエステル-ブロック-アミド)共重合体):融点202℃、IEC 60093により測定した表面抵抗1×109Ω/sq
E-1)エチレン共重合体:ビニルアセテート28重量%及びエチレン72重量%
E-2)エチレン共重合体:ビニルアセテート15重量%及びエチレン85重量%
E-3)エチレン共重合体:ビニルアセテート35重量%及びエチレン65重量%
F-1)金属顔料(アルミニウム顔料、Silverline社製、平均粒径20μm)
F-2)非金属無機顔料(製品名:BAYFERROX120、製造社:Lanxess)
【0166】
実施例1~5、比較例1~7、及び参照例1~3
それぞれ、下記表1~表3に記載された成分及び含量を、230℃に設定された二軸押出機に投入し、溶融混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットを用いて溶融指数を測定した。
【0167】
製造されたペレットを成形温度230℃で射出し、物性を測定するためのサイズ100mm×100mm×3.2mmの試験片を作製し、これを用いて、表面抵抗、射出外観(表面流れ特性)及び射出光沢度などを測定した。
【0168】
[試験例]
前記実施例1~5、比較例1~7、及び参照例1~3で製造されたペレット及び試験片を、下記に記載された方法により物性を測定し、その結果を下記表1~表3に共に示した。
【0169】
*流動指数(MI、g/10分):製造されたペレットをDYNISCO社の溶融指数測定装置を用いて、220℃で錘の重量10kg、基準時間10分に設定してASTM D1238に準拠して測定した。
【0170】
*表面抵抗(Ω/sq):100mm×100mmのサイズに製造された射出試験片をもって、IEC 60093に準拠して2種類のプローブタイプを有する表面抵抗測定器を用いて測定した。
【0171】
*射出外観(フローマーク及び外観のドットの評価):成形品の表面にゲートを中心に射出品の壁面に沿って現れるフローマーク及び外観のドットが改善される条件を、次の3つの基準に基づいて評価した。すなわち、射出温度10℃以内、射出速度30%未満に調節したときにスジ及び外観ドットの不良の発生がない場合に○、射出温度10~30℃に調節、射出速度30~70%に調節することによりスジ及び外観ドットの不良の発生にばらつきがある場合に△、射出温度30℃超に調節、射出速度70%以上に調節しても多数あるいは鮮明なスジ及び外観ドットの不良が多数である場合に×と区分して示した。
【0172】
*射出光沢度(gloss):厚さ1/8インチ(3.2mm)である試験片の光沢度を、ASTM E97に準拠してグロスメーター(Glossmeter)VG7000を用いて45°で測定した。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
前記表1~表3に示したように、本発明の実施例1~5の場合、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、熱可塑性共重合体、熱可塑性ポリアミド弾性体、エチレン共重合体及び金属顔料を最適の組成で含むことで、溶融指数及び射出光沢を、本発明の組成を外れる比較例1~7、参考例1~3と比較して、同等又はそれ以上に維持しながらも、表面抵抗及び射出外観に優れることが確認できた。
【0177】
また、熱可塑性ポリアミド弾性体を含まない比較例1は、表面抵抗が本発明の効果に著しく及ばず、少量使用した比較例4の場合、表面抵抗が本発明の効果に著しく及ばず、過量使用した比較例7は、金属顔料と樹脂の凝集により加工不良が激しくなり、作業性が悪化して物性の測定が不可であった。
【0178】
また、エチレン共重合体と第2グラフト共重合体の和の比率が少ない比較例2及び比較例3は、それぞれ、射出外観が劣悪になることが確認できた。
【0179】
また、エチレン共重合体を構成するビニルアセテートの含量が適切でない比較例5~6は、それぞれ、射出外観及び表面品質が良好でないことが確認できた。
【0180】
一方、第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体の重量比が3超:1である参照例1によれば、光沢が低下することを確認した。第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体の重量比が1:0.5である参照例2の場合、金属顔料の分散性の悪化により射出品の外観品質が低下することが分かる。
【0181】
さらに、金属顔料の代わりに非金属無機顔料を使用した参照例3は、物性や射出外観は確保できるが、メタリック顔料が提供する表面品質を提供することができない。
【0182】
また、下記
図1及び
図2を参照すると、本発明の範囲を外れた比較例2は、金属顔料の凝集現象によりスジが発生し、射出外観が不良であることを直接目視でも確認することができ、本発明に係る実施例1は、スジが発生せず、金属顔料の凝集現象が防止されたことが分かる。
【0183】
結論的に、本発明は、ABS系樹脂に、帯電防止剤を含む金属顔料を導入して製品として成形する際に生じていた表面不良の問題を、ABS系樹脂に、アクリレート系重合体を含むグラフト共重合体とエチレン共重合体を適正な混合比で投入することによって、ABS系樹脂の優れた加工性、成形性、耐衝撃性、強度及び光沢を維持しながら、当該ABS系樹脂と金属顔料、さらに帯電防止剤として投入する熱可塑性ポリアミド弾性体との相溶性を提供して、金属顔料の凝集現象を防止し、表面不良を画期的に改善するだけでなく、帯電防止性、射出外観、射出光沢及び加工性に優れたメタリックカラーの素材を提供することで、成形品に適することが確認できた。
【国際調査報告】