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特表2023-504714低コヒーレンス光干渉手法を用いた材料のレーザ加工のための機械における少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】低コヒーレンス光干渉手法を用いた材料のレーザ加工のための機械における少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/0209 20220101AFI20230130BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20230130BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230130BHJP
【FI】
G01B9/0209
G01B11/00 G
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533541
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2020061507
(87)【国際公開番号】W WO2021111393
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102019000023214
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508138955
【氏名又は名称】アディジェ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ドナデッロ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】プレヴィターリ,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ,ダニエーレ
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
4E168
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064BB03
2F064CC01
2F064EE01
2F064FF07
2F064GG02
2F064GG17
2F064GG24
2F064HH02
2F064HH03
2F064JJ03
2F065AA02
2F065AA06
2F065CC21
2F065EE01
2F065FF52
2F065GG25
2F065HH04
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ28
2F065UU03
4E168AA00
4E168AD03
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168BA32
4E168DA12
4E168DA23
4E168DA26
4E168DA28
4E168EA17
4E168EA24
4E168FA00
4E168FB02
4E168FB03
(57)【要約】
材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームを伝送するための光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定する方法とシステムが記載される。方法は、個々の測定低コヒーレンス光放射ビームを発生し、測定ビームを光学素子に向けて導いて、光学素子から反射または拡散した測定ビームを光干渉センサ配列に導くステップと、基準低コヒーレンス光放射の個々のビームを発生し、基準ビームを干渉光センサ配列に向けて導くステップと、測定ビームおよび基準ビームを、センサ配列の共通入射領域上で重畳するステップと、入射領域での測定ビームと基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置を検出するステップと、測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差を、入射領域の照射軸に沿った干渉縞パターンの位置の関数、または、周波数ドメインでの干渉パターンの周波数の関数として決定するステップとを含み、これは(a)光学素子の現在の局所位置と(b)光学素子の予め定めた公称局所位置との間の差を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームのための伝送光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法であって、
・個々の測定低コヒーレンス光放射ビームを発生し、前記測定ビームを前記光学素子に向けて導いて、前記測定ビームは少なくとも部分後方反射とともに入射して前記光学素子の少なくとも1つの後方反射表面によって反射または拡散した測定ビームを、光干渉センサセンサ手段に向けて導くステップであって、測定ビームは、個々の光源から前記光干渉センサ手段までの測定光学経路を進行し、該測定光学経路は、前記光源と前記光学素子の前記後方反射表面との間の第1セクションと、前記光学素子の前記後方反射表面と前記干渉センサ手段との間の第2セクションとを含み、前記光学素子が予め定めた動作条件に対応する予め定めた公称位置にある場合、個々の予め定めた公称幾何学的長さを有する、ステップと、
・前記低コヒーレンス光放射の個々の基準ビームを発生し、前記基準ビームを前記光干渉センサ手段に向けて導くステップであって、基準ビームは、前記光学素子の位置が予め定めた公称位置である公称動作条件において測定光学経路の光学長に相当する光学長を有する基準光学経路を進行する、ステップと、
・測定ビームおよび基準ビームを、予め定めた照射軸に沿って前記光干渉センサ手段の共通入射領域上で重畳するステップと、
・前記共通領域上の前記照射軸に沿った測定ビームと基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置を検出するステップであって、照射軸に沿った前記干渉縞パターンの延長部は、前記低コヒーレンス光放射のコヒーレンス長に対応し、あるいは、前記ビームの波長分散による測定ビームと基準ビームとの干渉によって得られる、波長スペクトルでの縞パターンの周波数を検出するステップであって、周波数ドメインでのその延長部は、前記低コヒーレンス光放射のコヒーレンス長によって決定される、ステップと、
・測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差を、前記入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、または、周波数ドメインでの前記干渉縞のパターンの周波数の関数として決定し、この光学長の差は、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示す、ステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記測定光学経路は、前記第1セクションと前記第2セクションとの中間にあり、光学素子の前記後方反射表面における第1後方反射と第2後方反射との間で構成される第3中間セクションを少なくとも含み、これは、前記光学素子の第2後方反射表面で少なくとも部分的な後方反射を少なくとも含み、前記第3セクションは、前記光学素子が予め定めた公称位置および/または予め定めた動作条件にある場合に、個々の予め定めた公称幾何学的光学長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定光学経路は、前記第1セクションと前記第2セクションとの中間にあり、光学素子の前記後方反射表面における第1後方反射と第2後方反射との間で構成される第3中間セクションを少なくとも含み、これは、レーザビームのための光学伝送経路に沿って介在する異なる光学素子の後方反射表面で少なくとも部分的な後方反射を少なくとも含み、前記第3セクションは、前記光学素子が予め定めた公称位置および/または予め定めた動作条件にある場合に、個々の予め定めた公称幾何学的光学長を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
測定光学経路の前記第1セクションおよび第2セクションは、レーザビームのための光学伝送経路に沿って介在する異なる光学素子、または加工対象の材料の後方反射表面で少なくとも部分的な後方反射を少なくとも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定ビームは、第1入射方向に沿って前記光干渉センサ手段の前記共通入射領域上に導かれ、
前記基準ビームは、第1入射方向に対して予め定めた入射角の第2入射方向に沿って前記光干渉センサ手段の前記共通入射領域上に導かれる、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
測定ビームおよび基準ビームは、同じ入射方向に沿って波長分散光学手段に向けて共線的に重畳され、該波長分散光学手段は、前記光干渉センサ手段の前記共通入射領域上での測定ビームおよび基準ビームの重畳によって得られるビームの周波数成分を分離するように構成される、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記予め定めた動作条件は、機械待機条件または、予め設定された加工パラメータに関連付けられた加工条件である、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
照射軸に沿った干渉縞パターンの位置は、前記干渉縞パターンの光放射の強度の包絡線の固有位置である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記干渉縞パターンの光放射の強度の包絡線の固有位置は、前記光放射の強度の包絡線のピークまたは最大の位置である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光干渉センサ手段は、前記照射軸に沿った光検出器のリニア配列または2次元配列を備える、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記光干渉センサ手段に入射する測定ビームは、
測定対象の前記光学素子の前記少なくとも1つの後方反射表面からの反射および、測定対象の前記光学素子の上流側で、加工レーザビームの光学経路に沿って介在する何れかの他の光学素子を経由した透過を備えたメイン測定光学経路の進行から生ずるメイン測定ビームと、
測定対象の前記光学素子の前記少なくとも1つの後方反射表面からの反射を備え、前記メイン測定光学経路の幾何学的長さよりも大きい幾何学的長さを有し、加工レーザビームおよび測定放射ビームの光学経路に沿って介在する異なる光学素子の表面での少なくとも部分的な後方反射を含む、追加の測定光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの追加の多重化測定ビームと、を含み、
該方法はさらに、
・(i)メイン測定ビームと基準ビームとの間のメイン干渉縞パターンの光放射強度のピークまたは最大値とは異なる光放射強度のピークまたは最大値、または(ii)メイン干渉縞パターンの光放射強度の包絡線の固有位置からオフセットした光放射強度の包絡線の固有位置、を有する追加の干渉縞パターンの位置を、前記共通入射領域上で検出するステップと、
・追加の測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差を、前記入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、または、周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数の関数として決定し、この光学長の差は、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示す、ステップと、を含む請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記光干渉センサ手段に入射する基準ビームは、
メイン基準光学経路の進行から生ずるメイン基準ビームと、
前記メイン基準光学経路の幾何学的長さとは異なる幾何学的長さを有する追加の基準光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの追加の多重化基準ビームとを含み、
該方法はさらに、
・(i)測定ビームとメイン基準ビームとの間のメイン干渉縞パターンの光放射強度のピークまたは最大値とは異なる光放射強度のピークまたは最大値、または、(ii)メイン干渉縞パターンの光放射強度の包絡線の固有位置からオフセットした光放射強度の包絡線の固有位置、を有する追加の干渉縞パターンの位置を、前記共通入射領域上で検出するステップと、
・測定光学経路と追加の基準光学経路との間の光学長の差を、前記入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、または、周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数の関数として決定し、この光学長の差は、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示す、ステップと、を含む請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
高出力レーザビームのための光学伝送経路に沿って介在する複数の光学素子の位置を決定することを含み、それは、複数の対応する基準光学経路に関連付けられた複数の測定光学経路の実装を含むことを特徴とし、
前記複数の光学素子の各々の少なくとも1つの後方反射表面からの反射または拡散の下流側で、前記複数の光学素子の各々にそれぞれ関連付けられた対応する複数の測定光ビームを抽出することによって、前記複数の基準光学経路は、個々の分離または重畳した基準光ビームを導くように配置され、あるいは、前記基準光ビームの偏向および分離のための光学素子を経由したベース基準光学経路の長さの連続的な変化によって決定される、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
基準光学経路の対応する部分の現在の光学長を基準として測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の摂動を決定するステップと、
前記摂動に基づいて、公称局所位置を基準として測定ビームの軸に沿って光学素子の現在の局所位置の決定された値を補正するステップとを含み、
前記光干渉センサ手段に入射する測定ビームは、較正測定光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの較正測定ビームを含み、
前記測定ビームは、測定光学経路に沿って介在する静止光学素子の少なくとも1つの背後方反射表面によって拡散または反射され、
前記光干渉センサ手段に入射する基準ビームは、前記較正測定光学経路の伝送媒体の幾何学的長さおよび屈折率が、前記較正基準光学経路の伝送媒体の幾何学的長さおよび屈折率に予め定めた許容範囲内で等しい較正の公称動作条件において、較正測定光学経路の光学長に相当する光学長を有する較正基準光学経路の進行から生ずる個々の較正基準ビームを含み、
測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の摂動を決定するステップは、
・較正測定ビームおよび較正基準ビームを、予め定めた照射軸に沿って前記光干渉センサ手段の共通入射領域上で重畳させるステップと、
・前記共通入射領域上の前記照射軸に沿った較正測定ビームと較正基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置、または、前記ビームの波長分散によって得られる較正測定ビームと較正基準ビームとの間の干渉縞パターンの周波数を検出するステップと、
・較正測定光学経路と較正基準光学経路との間の光学長の差を、前記入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置、または周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数のいずれかに依存して決定し、この光学長の差は、(a)較正測定光学経路の幾何学的長さと較正基準光学経路の幾何学的長さと、および/または、(b)較正測定光学経路の屈折率と較正基準光学経路の屈折率と、の間の差を示す、ステップと、
較正測定光学経路と較正基準光学経路との間の前記光学長の差は、測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の前記摂動を示す、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
加工レーザビームの伝搬軸の予め定めた近傍において、測定光放射ビームの伝搬軸の制御を含む、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームのための伝送光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するためのシステムであって、
・個々の測定低コヒーレンス光放射ビームを発生する手段と、
・前記測定ビームを前記光学素子に向けて導いて、前記測定ビームは少なくとも部分後方反射とともに入射して前記光学素子の少なくとも1つの後方反射表面によって反射または拡散した測定ビームを、光干渉センサセンサ手段に向けて導くように構成された、前記測定ビームの伝搬手段であって、測定ビームは、個々の光源から前記光干渉センサ手段までの測定光学経路を進行し、該測定光学経路は、前記光源と前記光学素子の前記後方反射表面との間の第1セクションと、前記光学素子の前記後方反射表面と前記干渉センサ手段との間の第2セクションとを含み、前記光学素子が予め定めた動作条件に対応する予め定めた公称位置にある場合、個々の予め定めた公称幾何学的長さを有するようにした、伝搬手段と、
・前記低コヒーレンス光放射の個々の基準ビームを発生する手段と、
・前記基準ビームを前記光干渉センサ手段に向けて導くように構成された前記基準ビームの伝搬手段であって、基準ビームは、前記光学素子の位置が予め定めた公称位置である公称動作条件において測定光学経路の光学長に相当する光学長を有する基準光学経路を進行する、伝搬手段とを備え、
測定ビームの伝搬手段および基準ビームの伝搬手段は、測定ビームおよび基準ビームを、予め定めた照射軸に沿って前記光干渉センサ手段の共通入射領域上で重畳するように構成され、
該システムはさらに、
・前記共通入射領域上で前記照射軸に沿って測定ビームと基準ビームとの間の干渉縞パターンの位置を検出する手段であって、照射軸に沿った前記干渉縞パターンの延長部は、前記低コヒーレンス光放射のコヒーレンス長に対応しており、
あるいは、前記ビームの波長分散によって、測定ビームと基準ビームとの間の干渉から得られる波長スペクトル内の縞パターンの周波数を検出する手段であって、周波数ドメインでのその延長部は、前記低コヒーレンス光放射のコヒーレンス長によって決定される、手段と、
・測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差を、前記入射領域の前記照射軸に沿った前記干渉縞パターンの位置の関数として、または、周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数の関数として決定し、この光学長の差は、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示すように構成された処理手段と、を備えるシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの光学素子を含む、レーザビームのための光学伝送経路に沿って導かれる高出力加工レーザビームによって動作する、材料のレーザ加工のための機械であって、
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成された、前記少なくとも1つの光学素子の位置を決定するためのシステムを備えることを特徴とする機械。
【請求項18】
材料のレーザ切削、穿孔または溶接のため、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械の加工ヘッドによって搬送されるアシストガス流を供給するためのノズルに関連付けられたアシストガスチャンバ内の圧力を決定するための方法であって、
・請求項1~15のいずれか1つに記載の、材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームのための伝送光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法を用いて、加工レーザビームのための光学伝送経路に沿って介在する、アシストガスチャンバの保護または境界設定の光学素子の局所位置、または、前記アシストガスチャンバに面しており、可能性として加工レーザビームの軸の外部にある光学補助素子の局所位置を決定するステップであって、それが、アシストガスチャンバ内のアシストガスの予め定めた基準圧力値に対応する予め定めた公称位置にある場合、前記保護光学素子または前記光学補助素子の表面における測定ビームの部分後方反射を含む公称動作条件において、基準ビームは、測定光学経路の光学長と等しい光学長の基準光学経路を進行する、ステップと、
・アシストガスチャンバ内のアシストガスの圧力を、前記予め定めた公称位置を基準としたアシストガスチャンバの光学保護素子または光学補助素子の位置と、アシストガス圧との間の公称関係を示す予め定めた基準モデルに従って決定するステップと、を含む方法。
【請求項19】
基準光学経路は、前記保護光学素子または前記光学補助素子に対応する光学素子であって、測定光学経路における前記光学保護素子または前記光学補助素子の公称位置に対応する位置に、前記基準光学経路に沿って配置された光学素子を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基準光学経路は、前記保護光学素子または前記光学補助素子に対応する光学素子であって、測定光学経路におけるアシストガスの前記予め定めた基準圧力値を構成する制御された圧力値に曝される光学素子を備える、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
材料のレーザ加工のため、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械のための加工レーザビームの伝送光学経路に沿って介在する光学素子の温度を決定する方法であって、
・請求項1~15のいずれか1つに記載の、材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームのための伝送光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法を用いて、前記光学素子の局所位置を決定するステップであって、それが、予め定めた基準温度値に対応する予め定めた公称位置にある場合、前記光学素子の表面における測定ビームの部分後方反射を含む公称動作条件において、基準ビームは、測定光学経路の光学長と等しい光学長の基準光学経路を進行する、ステップと、
前記予め定めた公称位置を基準として前記光学素子の位置と、素子の温度との間の公称関係を示す予め定めた基準モデルに従って、光学素子の動作温度を決定するステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、好ましくは金属材料のレーザ加工に関し、詳細には、材料のレーザ加工、例えば、前記材料のレーザ切削、穿孔または溶接、または、前記材料の予め定めた構造の積層造形(additive manufacture)の制御の改良に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、材料のレーザ加工のために機械の加工ヘッド内でレーザビームを伝送するための光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法およびシステムに関する。
【0003】
更なる態様によれば、本発明は、前述の方法を実装するように設計された、レーザビームを伝送するための光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の位置を決定するためのシステムを備えた、請求項17の前文に記載の材料のレーザ加工のための機械に関する。
【0004】
本発明の他の態様は、材料のレーザ切削、穿孔または溶接のため、またはレーザによる3次元構造物の積層造形のための機械の加工ヘッドによって支持されるアシストガス流配給ノズルに関連するアシストガスチャンバ内の圧力の決定、および材料のレーザ加工のため、またはレーザによる3次元構造物の積層造形のための機械におけるレーザビームの光学伝送経路に沿って介在する光学素子の温度の決定に関する。
【背景技術】
【0005】
本明細書および下記請求項では、用語「材料」、好ましい実施例での「金属材料」は、閉じた断面(例えば、中空の円形、長方形または正方形の形状)、または開いた断面(例えば、平坦な断面、またはL字状、C字状またはU字状の断面など)を有する、例えば、プレートまたは細長いプロファイル(輪郭)などの任意の製品を特定するために使用される。積層造形における用語「材料」は、レーザビームを用いて局所的な焼結または溶融に曝される原料(一般にパウダー(粉末))を特定する。
【0006】
材料、プレートおよび金属プロファイルの工業加工プロセスにおいて、レーザは、多種多様な用途のための加熱ツールとして使用され、これは、レーザビームと加工対象の材料との間の相互作用に関連するパラメータ、特に、材料へのレーザビームの入射の体積当りのエネルギー密度、および相互作用時間間隔に依存する。
【0007】
例えば、金属材料に低密度エネルギー(表面1mm当り数十Wのオーダー)を長時間(数秒の範囲)向けることによって、硬化プロセスが生じ、一方、同じ金属材料にフェムト秒またはピコ秒のオーダーの時間で高エネルギー密度(表面1mm当り数十MWのオーダー)を向けることによって、光アブレーションプロセスが生ずる。増加しているエネルギー密度および減少している処理時間の中間範囲では、これらのパラメータを制御することにより、溶接、切削、穿孔、彫刻、マーキングのプロセスを実行することが可能になる。
【0008】
穿孔および切削による加工プロセス含む幾つかのプロセスでは、レーザビームが材料と相互作用する加工領域内にアシストガスの流れを発生させることが必要である。これは、溶融物を駆動する機械的機能、または燃焼を補助する化学的機能、または加工領域を囲む環境からの遮蔽の技術的機能を有する。
【0009】
材料のレーザ加工の分野では、レーザ切削、穿孔および溶接は、同じ機械で実行できるプロセスであり、これは、予め設定された横方向パワー分布を有する集光した高出力レーザビーム、典型的には1~10000kW/mmのパワー密度を有するレーザビームを材料の少なくとも1つの加工面上に発生でき、そして、材料に沿ってビームの入射の方向および位置を制御できる。材料上で実施できる種々のタイプの加工の差は、使用するレーザビームのパワーと、レーザビームと加工対象の材料との間の相互作用時間に実質的に起因する。
【0010】
先行技術に係るレーザ加工機械を図1および図2に示す。
【0011】
図1は、レーザビームの光学経路を空気中に有する工業COレーザ加工のための機械を概略的に示しており、この機械は、単一モードまたはマルチモードのレーザビームBを放出するのに適した光源10、例えば、COレーザ発生器と、光源によって放出されたレーザビームを、材料WPの近くに配置され、全体として符号14で示す加工ヘッドに向けて伝送するための光学経路に沿って導くように構成された複数の反射ミラー12a,12b,12cとを備える。加工ヘッド14は、レーザビームを集光するための光学系16を備え、一般に、集光レンズで構成され、金属材料に入射する光学伝搬軸に沿ってレーザビームを集光するように構成される。ノズル18が、集光レンズの下流側に配置され、材料の加工面のある領域に向けられたレーザビームが通過する。ノズルは、対応するプラント(不図示)によって注入されたアシストガスの流れを、材料上の加工領域に向けるように構成される。アシストガスは、加工プロセス(穿孔または切削)の実行、そして達成可能なプロセス品質を制御するために使用される。例えば、アシストガスは、金属との発熱反応、例えば、鉄の酸化などを促進する酸素を含んでもよく、これは、発熱反応によって種々のタイプの酸化鉄を発生し、それによりエネルギーを材料の中に放出し、レーザビームによって放出されたエネルギーと共にプロセスの動的平衡を維持するのに寄与し、それにより切削速度を増加させることが可能になり、あるいは材料の溶融に寄与しない不活性ガス、例えば、窒素などを発生し、しかし、溶融材料自体の推進機能を実行するが、(金属)材料を加工プロファイルのエッジにおいて不要な酸化から保護し、溶融物の任意のスプラッシュから加工ヘッドを保護し、そして、材料に生じた溝の側面を冷却するために使用してもよく、これにより熱影響ゾーンの範囲を閉じ込める。
【0012】
図2は、光ファイバ中に発射されたレーザビームを用いた工業加工機械を概略的に示す。それは、レーザビームを伝送ファイバ、例えば、イッテルビウム添加ファイバレーザの中に発射できる光源10、例えば、レーザ発生器、または直接のダイオードレーザを備え、これは、単一モードまたはマルチモードのレーザビームを放出することが可能であり、さらに、光源によって放出されたレーザ光を、材料WPの近くに配置された加工ヘッド14に向けて導くように構成された光ファイバガイド12dを備える。加工ヘッドでは、その自己の発散が制御されたファイバから出現するレーザビームは、コリメーション屈折光学系20によってコリメートされ、後方反射光学系22によって反射され、そして一般に集光レンズからなる光学集光系16を経由して集光され、材料WPに入射する光伝搬軸に沿って、放出ノズル18を通過する。
【0013】
図3は、先行技術に係る加工ヘッド14を例示する。符号30は、Bで示すレーザビームが伝送されるシリンドリカル形状または円錐形状のセクションを有する管状チャネルを表す。レーザビームBは、光源10によって発生し、多重反射を備えた空中の光学経路を経由して加工ヘッドに伝送され、あるいは、光ファイバの中に入射し、その光学伝搬軸を加工対象の材料への入射方向に偏向させる反射偏向素子32でコリメートされる。光学集光系16は、反射偏向素子32と、下流側に配置された保護ガラス34との間の中間であり、溶融物の任意のスプラッシュから集光系を保護するように構成され、そしてレンズホルダユニット36を備え、これにビームの伝搬方向に対して横方向に(軸X-Y)およびビームの伝搬方向(軸Z)にレンズの位置決めを較正するように機械調整機構38が接続される。
【0014】
第1近似として、理想のレーザビーム、即ち、平行ビームに理想的にコリメートされたレーザビームが、光学集光系の下流側で、そのウエストにおいて有限のサイズの集光スポットに集中する。一般に、工業的加工では、ビームが入射する材料の壁およびビームが出力される材料の壁を基準として、平面の横方向位置が1/10ミリメートルで正確に定義されたビームのウエストに対応していると、最適な加工条件に到達する。
【0015】
普通にコリメートされたレーザビームのパワー密度の分布は、典型的には、単一モードのビームの場合、回転対称性を備えたガウシアン形状であり、パワーがビームの長手方向軸(軸z)の周りに集中し、周辺の裾に沿って徐々に減少し、あるいは、マルチモードのビームの場合、回転対称性を有するガウシアンプロファイルの包絡線として記述できる。
【0016】
単一モードまたはマルチモードのレーザ放射のビームの使用は、これは、ガウシアンとして第1近似で記述でき、レーザの高出力用途の分野において、技術的制御の必要性に応答する。実際、ガウシアンビームは、少ないパラメータによって容易に記述され、光源から加工機械のヘッドまでの光学伝送経路に沿ったその伝搬において容易に制御できる。それは、パワー分布を変更することなく、伝搬特性を有するため、遠視野伝搬条件における半径値および発散値により記述できる(幾何光学近似を使用できる場合)。集光ビームの近視野伝搬条件では、幾何光学近似が有効でない加工軌跡に沿って、ビームは、その断面の各々においてガウシアン形状のパワー分布を維持する。
【0017】
これに対して、より高次の横モードを含むレーザビームが、非ガウシアンのパワー分布を有する。典型的には、これらの条件は、屈折光学系(透過光学系、即ち、レンズ)または反射光学系(反射光学系、即ち、ミラー)の使用により得られ、これはガウシアン分布から開始するビームの形状を変更する。
【0018】
レーザビームの伝搬方向の制御または、ガウシアン形状とは異なり、材料の加工領域での回転対称性とは異なる対称性を有することがある横方向パワーの分布形状の制御は、例えば、アシストガスの制御された分布に関連して、または、加工ヘッドと材料との間の分離距離、追従すべき加工軌跡、および実行すべきプロセスのタイプに応じて、加工プロセスに利点をもたらす。例えば、レーザビームのパワー分布の制御は、可能性としてビームの回転対称性の破壊を伴い、加工ヘッドと材料との間の分離距離および加工経路に関連して必要な場合にパワー分布を位置決めまたは拡大することを可能にする。
【0019】
レーザビームの伝搬方向および集光の制御またはレーザビームの横方向パワーの分布形状の制御、およびアシストガス流れの制御は、それを必要とするプロセスにおいて、正確かつ反復可能である必要があることは明らかであり、そのため示した利点が得られる。この理由のため、機械の加工ヘッド内のレーザビームの光学伝送経路に設けられた光学素子の位置(光学経路に沿って介在したり、それに面したり並行して)は、高い精度およびリアルタイムで制御されることが必要である。そうでなければ、レーザパワーを材料の厚さの望ましくない加工面に集光させるリスク、そして材料の表面において過剰または不充分であるアシストガス圧力を使用するリスクがある。光学素子の位置は、実際、機械の現在の動作条件に従って、また設置時にオペレータによる素子の位置決めの誤差や、構築許容誤差および望ましくない組立てクリアランスの存在に起因して変化することがある。また、機械および加工ヘッドの動作パラメータ、特に、高出力加工レーザビームが交差する領域および光学素子に影響を及ぼす現在の温度、アシストガスの圧力、レーザビームの光学伝送経路に設けられた光学素子(ファイバ、ミラー、レンズ)の可能性のある機械的変形を含む動作パラメータをチェックすることも必要である。そのため、これらのパラメータは公称値から逸脱しなくなり、プロセスの制御されない変化を引き起こし、プロセスの測定、例えば、材料からの加工ヘッドの分離距離の測定に影響を与え、これらは加工ヘッドの移動、そして材料を基準としたその近位端の位置、即ち、それを必要とするプロセスにおけるレーザビーム出力およびアシストガス流出ノズルの位置を正確に制御することができるようにリアルタイムで可能な限り正確である必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、材料のレーザ加工、特に光学部品の状態およびレーザ加工機械の動作パラメータを、可能ならばリアルタイムで有効に監視する方法を提供することを目的とする。
【0021】
この文脈において、本発明の特定の目的が、材料をレーザ加工する機械の加工ヘッド内でレーザビームの伝送光学経路に設けられた光学素子の局所位置を正確に決定することである。
【0022】
本発明の更なる目的が、材料のレーザ加工のための機械の構成要素および/または動作条件に関する光学測定の可能性のある摂動を決定する方法を提供することであり、例えば、光学測定経路の少なくとも一部が延在している伝送媒体の物理パラメータに対するプロセスパラメータ(例えば、圧力、温度または機械的変形)の影響に起因している。
【0023】
本発明の更なる目的が、材料のレーザ切削、穿孔または溶接、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械の加工ヘッドによって支持されるアシストガス流配給ノズルに関連するアシストガスチャンバ内の圧力を決定するための効率的な方法を提供することである。
【0024】
本発明の更なる別の目的が、材料をレーザ加工するため、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械において、加工レーザビームの光学伝送経路に沿って介在する光学素子または伝送媒体の温度を決定するための効率的な方法を提供することである。
【0025】
本発明によれば、これらの目的は、請求項1において参照される特徴を有する少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定する方法によって達成される。
【0026】
特定の実施形態は、従属請求項の主題を形成し、その内容は、本明細書の一体部分であることを意図している。
【0027】
本発明はまた、請求項16において参照される特徴を有する少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するためのシステムに関する。
【0028】
本発明の更なる目的が、上記の方法を実施するように構成された、光学素子の位置を決定するためのシステムを含む、材料のレーザ加工のための機械である。
【0029】
本発明の更なる目的が、請求項18において参照される特徴を有する、アシストガス流を供給するノズルに関連するアシストガスチャンバ内の圧力を決定する方法、および請求項21において参照される特徴を有する光学素子または伝送媒体の温度を決定する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
要約すると、本発明は、光干渉の原理の応用に基づいている。
【0031】
用語「光干渉」は、測定光ビームと基準光ビームとの間の干渉の現象を利用する複数の手法を示すものであり、これらのビームは重畳され、干渉縞を発生する。コヒーレント光における光干渉の理論はよく知られており、距離間の相対的比較に使用されているが、これは、例えば、光信号の一時的中断の後に、前記距離について一義的な絶対測定情報を提供できるものでない。
【0032】
本発明は、低コヒーレンス干渉手法を使用することによって、光学ドメインで絶対距離測定を実行できるという考察によって着想される。低コヒーレンス干渉法は、プローブとターゲットとの間の距離を高精度に測定するための簡単な手法であり、光源から検出器アセンブリへ伝搬し、この経路中にプローブによって放射され、ターゲットによって後方反射する測定光ビームが進行した距離と、光源から検出器アセンブリへ、プローブとターゲットとの間の既知の公称距離条件で測定経路に調整された基準経路を通って伝搬する基準光ビームが進行した距離との間の比較をベースとしている。
【0033】
低コヒーレンス干渉法では、測定光ビームおよび基準光ビームは、低コヒーレンス光源、例えば、LEDまたはスーパールミネッセントダイオードによって発生し、上述のビーム間の干渉縞は、個々の光学経路または光学経路の長さが対応する場合にのみ現れる。光学経路は、進行する光学経路全体に沿った各部分での幾何学的長さおよび個々の屈折率との積の和として定義され、即ち、測定経路の長さがコヒーレンス長の範囲内の基準経路の長さに対応する場合である。基準経路の長さが既知であると仮定すると、干渉縞の包絡線の存在を、典型的にはマイクロメータ範囲(5μm~100μm)であるコヒーレンス長のオーダーの分解能で検出することによって、測定経路の長さを導出することが可能である。
【0034】
この手法は、他の光源からまたは前記レーザ加工プロセス自体から到来する光は、干渉縞パターンを変更することなく、干渉信号にインコヒーレント(非干渉性)で加算されるため、光学的ノイズに関して特に堅牢である。測定は、測定光ビームが方向付けられるポイントにおいて局所的に適用され、周囲の形態から独立している。それはまた、レーザ加工と実質的に同軸である分布において距離の正確な絶対測定を可能にする。
【0035】
時間ドメイン、周波数ドメインおよび空間ドメインで干渉縞パターンを検出するための様々な手法が知られている。好都合には、空間ドメインおよび周波数ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた低コヒーレンス干渉手法は、時間ドメインでの検出と比較して、動作柔軟性の観点で最も有望でより効率的である。
【0036】
時間ドメインでの検出を用いた低コヒーレンス干渉法では、干渉縞パターンは、フォトダイオードまたはフォトダイオードのアレイによって、または類似の獲得スクリーンによって検出され、基準経路の長さを適合させることによって、基準経路の長さと測定経路の長さが、コヒーレンス長のオーダーの許容範囲を除いて対応する条件に到達する。この場合、利用可能な測定範囲の制限は、基準経路の長さの適応に関連しており、これは、例えば、上述の経路に沿って配置された後方反射素子の並進を用いて実行される。基準経路の後方反射素子の並進空間範囲は、数ミクロンから数ミリメートルの間にすることが可能であり、並進範囲のサイズは、駆動速度または動作の複雑さの不利益になる。
【0037】
時間ドメインでの検出手法は、測定経路および基準経路の絶対的光学長の間の対応を比較的簡単に実行し、容易に達成できる。しかし、これは、工業プロセスの過程がリアルタイムで測定される用途の実装には不向きである。実際に、動的測定では、基準経路の長さは、それが現在の測定経路の長さに対応して、干渉縞パターンの出現を生じさせる条件を見つけるために連続的に変調する必要がある。これは、屈折率変調器または高速動作機械アクチュエータ、例えば、圧電アクチュエータなどを含む種々のタイプの制御デバイスを用いて取得できる。しかしながら、これらのタイプのデバイスは、かなり高価で非常にデリケートである。その理由は、距離を測定するためのサンプリングレートよりもはるかに速い駆動速度(典型的にはkHzよりも高い)で動作する必要があるためであり、特に大きな変位の範囲では容易に得られない条件である。
【0038】
異なる検出手法が、スペクトル密度関数と、測定ビームおよび基準ビームの相互相関との間のフーリエ変換関係をベースとしており、これにより、2つの干渉ビームの波長のスペクトルプロファイルから実空間における差分距離測定値を抽出することが可能である。 こうして基準経路の長さを測定経路の長さに整合さるための機械的アクチュエータが必要でない。重畳された測定ビームおよび基準ビームの単一のスペクトル取得は、回折格子およびその下流側の集光レンズを用いて可能であり、干渉ビームのスペクトル分布をリニアセンサデバイス、例えば、ビデオカメラに投影できる。2つの干渉ビームのスペクトルは、周期的変調を示し、波長空間におけるこの変調の周期性(周波数)は、測定経路の光学長と基準経路の光学長との間の差で変化する。フーリエ変換、例えば、FFTアルゴリズムを計算するためのアルゴリズムが、実空間における光学経路間の差に関連して信号強度ピークの測定値を抽出するために適用される。
【0039】
基準経路の長さの走査が時間的に分布される時間ドメインにおける低コヒーレンス干渉手法とは異なり、周波数ドメインにおいて、測定経路と基準経路の長さを比較するための情報が波長空間においてエンコードされ、空間ドメインでの検出を含む低コヒーレンス干渉手法は、2つの従来技術を組み合わせて、実空間における測定の結果を直接に可視化することを可能にし、例えば、イメージセンサ、リニアセンサなどの経済的なデバイスを用いて迅速な取得を可能にする。
【0040】
周波数ドメインでの検出を用いた低コヒーレンス干渉計システムの典型的な実施形態では、測定ビームおよび基準ビームは、同じ入射方向に沿って、光学スペクトルの検出のための波長分散光学手段、例えば、回折格子、屈折プリズムまたは類似の光学素子に向けて共線的に重畳され、これは、光干渉センサ手段の共通入射領域上での測定ビームおよび基準ビームの重畳によって得られるビーム全体の周波数成分を分離するように構成される。
この構成では、2つの干渉ビームのスペクトル(干渉縞パターン)は、周期的な変調を示し、波長空間での縞パターンの周期性は、測定光学経路の空間的変化が光学経路を基準として変化するにつれて変化し、周波数ドメインでの延長部(extension)は、低コヒーレンス光放射線のコヒーレンス長によって決定される。従って、測定光学経路の長さと基準光学経路の長さと間の差の測定は、センサ手段によって放出される信号を処理し、測定ビームと基準ビームとの間の干渉パターンの周波数を検出することによって抽出できる。
【0041】
空間ドメインでの検出を用いた低コヒーレンス干渉システムの典型的な設計では、測定ビームおよび基準ビームは、異なる方向からセンサ手段表面に入射して重畳される。センサ手段の表面は、この重畳から生じる干渉縞パターンを検出するように直接構成される。この構成では、基準光学経路を基準とした測定光学経路の空間的変化が、2つのビームの相互傾斜角の結果としてセンサ手段に直接表示される。従って、測定光学経路の長さと基準光学経路の長さとの間の差の測定値は、センサ手段上の干渉縞パターンの位置を検出することによって簡単に抽出できる。センサ手段のリニア寸法における干渉縞パターンの延長部は、ビームの光放射のコヒーレンス長のオーダーである。
【0042】
空間ドメインでの検出を含む低コヒーレンス干渉手法では、センサ手段の共通入射領域に斜めに入射する各ビームの光学経路の長さは、センサ手段の照射軸に沿った位置とともに直線的に変化する。そのため、測定光学経路と基準光学経路との間の差も直線的に変化する。干渉縞パターンは、センサ手段によって取得される画像の特定のリニア範囲に現れ、これは、測定経路の光学長と基準経路の光学長が、光放射のコヒーレンス長内で等しくなる条件に対応しており、一方、センサ手段の他の領域では、ビームは、インコヒーレントに重畳される。センサ手段の直線延長部に沿って干渉縞パターンの包絡線の位置を検出することによって、測定経路の個々の長さを抽出することが可能である。
【0043】
この測定は、干渉縞パターンの包絡線が、センサ手段の照射領域内、即ち、センサ手段を形成する光検出器デバイスの検知領域内に得られる条件によってのみ制限される。測定間隔は、入射領域上のビームの傾き、または両者間の入射角によって決定され、同じビーム傾斜では、重畳ビームによって照射される光検出器または光検出領域(センサ手段の画素とも呼ばれる)の数と、センサ配列の光検出器の合計数との間の最小値、即ち、センサ手段上で利用可能な領域(画素)の合計数を基準として干渉縞パターンを復調するために照射すべき領域(画素)の最小数によって決定される。数千個の光検出器を有するセンサ配列を含む共通の条件下では、干渉縞のエイリアシング効果の出現前に、ミリメータの数十分の1の測定範囲が得られる。しかしながら、本発明者らは、干渉縞パターンのエイリアシング効果の存在は、測定を制限せず、実際には、測定可能な距離の範囲を増加させるために使用できることを実証した。実際に、このサブサンプリングのシステムは、より低い空間周波数で干渉縞パターンの有効な復調の結果になり、復調は、干渉センサ配列の光検出器のレベルで、追加の素子を介在させる必要なしに、類似の方法で直接に得られる。
【0044】
好都合には、空間ドメインでの検出を含む干渉手法の採用により、測定光学経路および基準光学経路の静的システムを用いて、センサ手段に入射する重畳された測定ビームおよび基準ビームの光放射の空間分布の個々の取得またはサンプリングのために、正確な距離測定を行うことが可能になる。この種のシステムを提供するために、標準的な光学素子が専ら必要であり、センサ手段によって放出される信号は、簡単な計算アルゴリズムに基づいて処理され、そのため計算上は煩わしくない。
【0045】
材料のレーザ加工、特にレーザ切削、穿孔または溶接、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械に上記の考察の適用は、加工ヘッド内に少なくとも部分的に一体化された測定光学経路と、測定光学経路に関連する基準光学経路とを含む干渉計システムの配置により達成され、これは、加工ヘッド内またはその外部に一体化されてもよい。測定光学経路は、レーザビームを伝送するために光学経路に設けられた光学素子、例えば、加工ヘッド内の光学経路に介在する光学素子の少なくとも1つの後方反射表面によって反射または拡散される。
【0046】
これにより、レーザビームの光学伝送経路に設けられた任意の光学素子、例えば、材料をレーザ加工する機械の加工ヘッド内の前記経路に沿って介在する光学素子の局所位置を、予め定めた公称局所位置に対して決定することを可能にし、そして、位置間の差は、監視対象の光学素子の一時的または永久的な変形または変位に関する有用な情報を取得することを可能にする。これは、例えば、素子の近傍の周囲温度または素子に入射するアシストガスの圧力に依存して、素子が曝される特定の動作条件に起因して発生した不正確な設置または偏差または摂動の結果である可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明の追加の特徴および利点は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる、その実施形態の下記詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【0048】
図1】先行技術に係るレーザ加工機械の例である。
図2】先行技術に係るレーザ加工機械の例である。
図3】先行技術に係るレーザ機械の加工ヘッドの概略例を示す。
図4a】周波数ドメインでの検出を用いた低コヒーレンス干渉計システムの構成の概略図を示す。
図4b】波長分散後の干渉縞パターンのセンサ配列の照射軸上に局在している干渉パターンFを示す。
図4c】干渉縞の周波数と、測定経路と基準経路の光学長の差との関係を示す。
図5a】空間ドメインでの検出を用いたリニア低コヒーレンス干渉計システムの構成の概略図である。
図5b】干渉縞パターンの、センサ配列の照射軸上の、相対入射ポイントを基準とした測定光学経路および基準光学経路の長さの変化の概略図である。
図5c】干渉縞パターンの、センサ配列の照射軸上の、相対入射ポイントを基準とした測定光学経路の長さと基準光学経路の長さとの間の差の変化の概略図(上グラフ)、および測定基準経路の光学長と基準光学経路の光学長が等しい状態でのセンサ配列の照射軸上の干渉縞パターンの識別(下グラフ)である。
図6】光学素子の局所位置および、材料をレーザ加工するための機械の加工ヘッドと材料の表面との間の分離距離を決定するためのシステムの例示的な図を示す。
図7】加工ヘッドの例示の実施形態に係る加工ヘッドでの加工レーザビームおよび 低コヒーレンス測定光ビームの経路を概略的に示す。
図8a】光学素子における測定光放射の後方反射または部分拡散の様々な可能性のある条件の概略図である。
図8b】光学素子における測定光放射の後方反射または部分拡散の様々な可能性のある条件の概略図である。
図8c】光学素子における測定光放射の後方反射または部分拡散の様々な可能性のある条件の概略図である。
図8d】光学素子における測定光放射の後方反射または部分拡散の様々な可能性のある条件の概略図である。
図8e】光学素子における測定光放射の後方反射または部分拡散の様々な可能性のある条件の概略図である。
図9】測定ビームの軸に沿ってアシストガスチャンバの保護または境界設定のための光学素子の表面の局所位置の変化の観点で表される干渉計測定値の結果と、アシストガスの圧力の傾向(増加、減少)との間の依存関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1図3は、先行技術を参照して前述したが、その内容は、本発明の教示に係る方法を実施するための制御された加工機械の実装に共通である限り、ここでは言及している。
【0050】
図4aは、周波数ドメインでの検出を用いた低コヒーレンス干渉システムのマイケルソン構成の概略図を示す。レンズTから来る測定光放射のコリメートされたビーム(Mで示す)および基準反射素子RMから来る同じ基準光放射のコリメートされたビーム(Rで示す)は(両方とも光源Lから由来する)、回折格子G上で重畳状態で入射し、ここから集光レンズを経由して、干渉ビームのスペクトル分布は、センサ配列Sの共通入射領域Cに到達し、そこでは図4bに示す干渉縞パターンFを形成する。
【0051】
センサ配列Sは、例えば、入射領域の少なくとも1つの照射軸(図中の軸X)に沿った光検出器の配列を含む。光検出器配列は、光検出器のリニアまたは2次元の配列であり、好ましくは、リニア配列である。入射領域の照射軸は、測定ビームMおよび基準ビームRの入射角によって定義される平面と、前記センサ配列のセンサ表面との交点によって決定される。
【0052】
図4cは、光検出器による干渉縞パターンの取得の処理の結果を示し、干渉ビームのスペクトルは、図4bの強度プロファイルから抽出され、FFTアルゴリズムを用いて干渉縞の周波数が決定され、これは、干渉ビームの位相差、即ち、測定経路および基準経路の光学長の対応する差Δpに依存することが知られている。
【0053】
図5aは、リニア空間検出を備えた低コヒーレンス干渉システムの構成の概略図である。光放射の測定コリメートビーム(Mで示す)および同じ光放射の基準コリメートビーム(Rで示す)が、予め定めた入射角αでセンサ配列Sの共通入射領域Cで重畳されるように入射し、そこで干渉縞パターンFを形成する。共通入射領域上のその延長部は、光放射のコヒーレンス長のオーダーである。光放射の測定コリメートビームの幅および光放射の基準コリメートビームの幅は、好ましくは、センサ配列全体を実質的に照射するように設計される。検出信号の強度およびコントラストを増加させるために、ビームは、例えば、シリンドリカル集光レンズを用いて照射軸に対して垂直な方向にセンサ上に集中させてもよい。
【0054】
センサ配列Sは、例えば、入射領域の少なくとも1つの照射軸(図中の軸x)に沿った光検出器の配列を備える。光検出器配列は、光検出器のリニアまたは2次元の配列であり、好ましくは、リニア配列である。入射領域の照射軸は、測定ビームMおよび基準ビームRの入射角によって定義される平面と、前記センサ配列のセンサ表面との交点によって決定される。
【0055】
図5bにおいて、グラフは、測定光学経路および基準光学経路の長さPの変化を概略的に示し、2つの入射ビームがセンサ配列上で対称である典型的な構成において、センサ配列Sの共通入射領域上の個々の測定ビームおよび基準ビームの初期の入射波面を参照している。x軸は、光検出器配列の照射軸に沿った位置またはx座標を示す。参照符号p1は、測定軸の原点である、共通入射領域Cの第1端xにおける測定ビームMの波面の初期の入射ポイントを基準として、第1光学経路、例えば、測定光放射ビームMの測定光学経路の追加の長さを示す。参照符号p2は、第1端とは反対にある、共通入射領域の第2端xにおける基準ビームRの波面の初期の入射ポイントを基準として、第2光学経路、例えば、基準光放射ビームRの基準光学経路の追加の長さを示す。参照符号Δpは、2つの経路の追加の長さの差p1-p2を示し、これはセンサ配列の中間座標においてゼロであり、共通入射領域の端xにおける値Δpx1から共通入射領域の端xにおける値Δpx2に変化する。
【0056】
図5cにおいて、上グラフは、図5bのグラフに対応するカーブΔpを示し、下グラフは、測定経路および基準経路の光学長が等しい場合に生じるセンサ配列Sの照射軸(x)上の干渉縞パターンFの識別を示す。干渉縞パターンFの包絡線はハッチングで示しており、測定光ビームおよび基準光ビームの経路の追加の長さの間の個々の差Δpは、上側グラフを用いて包絡線ピークxの座標に関連付けられる。
【0057】
およびPは、測定経路および基準経路を示し、その全長は、P=P1+p1、P=P2+p2として表され、P1は、低コヒーレンス光放射源からセンサ配列に入射する第1波面までの測定光学経路の光学長であり、P2は、同じ低コヒーレンス光放射源からセンサ配列に入射する第1波面への基準光学経路の光学長であり、好ましくは一定である。P1は、Pnom+dで構成されると考えることができ、Pnomは、低コヒーレンス光放射源と光学素子の予め定めた後方反射表面との間で構成される第1セクシヨン(その予め定めた公称位置において位置を決定する)と、前述の後方反射表面とセンサ配列Sとの間で構成される第2セクシヨンとを含む光学経路の公称長さであり、これらのセクシヨンは、個々の予め定めた不変の幾何学的長さを有する。dは、その公称位置に対する光学素子の位置オフセットを示す。p2は、基準光学経路の光学長であり、これは、光学素子がその予め定めた公称位置にある公称動作条件における測定光学経路の光学長Pnomと等価である。
【0058】
測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差は、下記のように数学的に表される。
-P
干渉縞は、これがゼロである条件、即ち、下記条件で現れる。
-P=0
ある関係が下記のように分解できる。
P1+p1-(P2+p2)=0
これは、下記のように書き換えられる。
nom+d+p1-P2-p2=0
ここから下記のものが推定される。
nom+d-P2+Δp=0
nom+d-Pnom+Δp=0
Δp=-d
即ち、光学素子の現在位置は、測定光学経路の追加長さと基準光学経路との間の差に等しい。
【0059】
従って、測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差によって決定される、その公称局所位置を基準とした光学素子の現在の局所位置は、測定光学経路の追加の長さと基準光学経路との間の差に起因しており、従って、公称位置、例えば、センサ配列Sの中央面を基準として、センサ配列Sの照射軸xに沿った干渉縞パターンの移動に起因している。
【0060】
本発明の主題である用途では、基準光学経路の長さは、光学素子の予め定めた公称位置における測定光学経路の長さに対応するように設定される。(a)前記光学素子の現在局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差は、測定光学経路と基準光学経路との間の長さの差から生じ、空間ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法が使用される場合は、センサ配列Sの入射領域の照射軸に沿った干渉縞パターンの位置に従って、あるいは、周波数ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法が使用される場合は、干渉縞パターンの周波数の関数として、認識可能である。
【0061】
局所位置は、予め定めた基準系、例えば、加工レーザビームの伝搬軸に沿った軸方向基準系、あるいは、加工ヘッドのデカルト基準系に対して、素子に影響を与える測定光ビームの軸に対して局所的な光学素子の領域の軸線zに沿った位置である。光学素子の後方反射表面は、測定ビームが遭遇する素子の第1表面、またはその反対側の表面でよく、反射した光放射の量に依存して、好ましくは、後方反射した放射のより高い量に基づいて測定を実行する。
【0062】
従って、「局所位置」とは、剛性のある素子の絶対位置を示し、または変形を受ける素子のある領域の位置に関する情報を有する。従って、測定ビームの軸は、面xy上の光学素子の表面を探索するように、加工ビームの軸の近傍で動的に制御することが可能である。
【0063】
好都合には、空間ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法の好ましい場合には、センサ配列の照射軸に沿った干渉縞パターンの中央位置は、光学素子の公称位置に対応する。代替として、照射軸に沿った干渉縞パターンの端部位置が、光学素子の公称位置に対応してもよく、この位置が一方向にしか変化しない場合は、干渉縞パターンは、照射軸の反対端部に向かってのみ移動するようになる。
【0064】
図5cの下グラフを参照すると、照射軸に沿った干渉縞パターンの位置Xは、前記干渉縞パターンの光放射の強度の包絡線の固有の位置であり、干渉縞パターンの光放射の強度の包絡線のこの固有位置は、例えば、光放射の包絡線のピークまたは最大強度の位置であり、光検出器の平均位置は、縞包絡線の光強度で重み付けされる。
【0065】
縞包絡線の検出は、例えば、バンドパス空間フィルタまたはハイパスおよびローパスフィルタをあるシーケンスで適用することによって、光強度プロファィル復調手法を用いて実行でき、干渉縞の空間周波数に対応する信号成分だけを明らかにする。例えば、光強度データを処理する第1ステップでは、センサマトリクスによって検出される光強度は、干渉縞の展開方向に対して垂直な方向、例えば、垂直に整列された干渉縞パターンを受信するように配向されたセンサマトリクスの列について積分される(センサ配列が、シリンドリカルレンズを用いてビームが集光される光検出器のリニア配列である場合、この動作は必要とされない)。続いて、光検出器によって発生した信号は、例えば、干渉縞のない画像から抽出されたバックグランド信号を基準として正規化される。従って、ハイパス空間フィルタが、例えば、光検出器空間周波数の1/5に適用され、ベースラインを除去し、干渉縞パターンを維持する。こうしてゼロ付近で振動する信号が得られるため、信号の絶対値が抽出され、従って、ローパス空間フィルタが、例えば、光検出器空間周波数の1/25に適用され、干渉縞パターンの包絡線を抽出する。最後に、干渉縞パターンの位置は、その最大値を求めたり、または、包絡線を予め定めたモデル関数(例えば、ガウス関数)と比較し、モデル関数のピークを抽出することによって、縞パターンの包絡線の位置を検出することによって得られる。
【0066】
図6は、加工ヘッドと材料との間の分離距離を決定するシステムにおいて、現在の好ましい実施形態に係る、材料WPのレーザ加工のための機械の加工ヘッド14内でレーザビームを伝送するための光学経路に設けられた少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための本発明のシステムオブジェクトの例示的な図を示す。
【0067】
図において、符号100は、LEDまたはスーパールミネッセントダイオードなど、直線偏光を適切に有する低コヒーレンス光放射源を示し、例えば、可視または近赤外の波長範囲で動作する。光源100によって放出された光放射は、適切な光アイソレータ120の下流側で光導波路、例えば、光ファイバ140の中に注入され、ビームスプリッタ160に搬送され、これは、測定光学経路P上に経路設定された測定光放射ビームM、および基準光学経路P上に経路設定された基準光放射ビームRを発生するように構成される。
【0068】
測定光学経路Pおよび基準光学経路Pは、導波経路であり、経路全体に沿って同じ偏光を維持するように構成された光ガイド(例えば、光ファイバ)を含む。
【0069】
測定光学経路Pは、上述のように、材料をレーザ加工するための機械の加工ヘッド14に導かれ、そこから加工対象の材料WPに向けて現れて、可能ならばその上に入射する。測定ビームMが出力される領域は、測定ヘッドのセクションに対応しており、上記材料からの距離が測定されることを意図しており、例えば、アシストガスの流れやレーザビームの出力を供給するノズルの開口である。
【0070】
光学基準経路Pは、好ましくは、光学濃度フィルタ200、光分散補償素子220、λ/4シート240および集光レンズ260の介在を経由して戻り反射素子180に導かれる。反射光学素子180は、基準光学経路に沿って配置され、ビームスプリッタ160から反射光学素子180までのこの経路の光学長が、ビームスプリッタ160から監視対象の光学素子の(反射)表面までの測定光学経路の光学長に対応するようにしており、即ち、その予め定めた公称位置においてその位置が決定される。反射光学素子は、異なる光学基準経路長を決定するように軸方向に移動され配置されてもよく、または、個々の反射光学素子180を含む複数の基準光学経路のうちの1つが選択されて、異なる光学素子の局所位置を決定するための方法と、可能ならば、加工対象の材料WPと、加工ヘッド、即ち、アシストガスノズルまたはビーム出力の開口などの材料に近接する加工ヘッドの端部との間の分離距離を決定するための方法との間で切り替わってもよい。
【0071】
詳細には、レーザビームを伝送する光学経路に沿って介在する複数の光学素子の位置を決定する場合、前記複数の光学素子の各々と個々に関連付けられた対応する複数の測定光ビームを、前記複数の光学素子の各々の少なくとも1つの後方反射表面からの反射または拡散の下流側で抽出することによって、複数の対応する基準光学経路に対応付けられた複数の光学測定経路が設けられる。複数の基準光学経路は、個々の分離または重畳された基準光ビームを導くように配置され、即ち、基準光ビームの偏位および分離について、光学素子を通過する基本基準光学経路の長さの連続的な変化を用いて決定される。
【0072】
測定光学経路および基準光学経路P,Pは、光放射が両方向でこれらを通過し、反射後にビームスプリッタ160に向けて、それぞれ光学素子の少なくとも部分的に後方反射表面および反射光学素子180に戻るように形成される。基準光学経路Pでは、基準ビームRがλ/4プレート240を通過する二重通過により、ビームの直線偏光の約90°回転をもたらし、これにより測定ビームMの直線偏光に対して直交する直線偏光を想定する。そして、ビームスプリッタ160は、測定光ビームおよび基準光ビームの再結合を行って、これらを方向付けし、検出光学経路P(測定光学経路の一部および基準光学経路の一部に共通)に沿ってセンサ配列Sに向けて重畳される。
【0073】
測定および基準光ビームの両方は、シリンドリカル集光レンズ280を経由して導かれ、これは、この軸に沿って信号を集中させることを目的として、コリメートビームを1つの方向、特に、センサ配列の照射軸に対して直交する方向に集光でき、これにより光検出器の照射を最適化し、偏光ビームスプリッタ300に到達し、これらの偏光に基づいて基準光ビームRから測定光ビームMの分離を行い、その第1のものを第1反射素子M1に向けて、その第2のものを第2反射素子M2に方向付け、後者のケースでは、元の偏光を回復させるλ/2プレート320を介在させることによって、この構成のため、第1および第2反射素子M1,M2は、測定光ビームおよび基準光ビームをセンサ配列Sにそれぞれ方向付けし、より正確にはセンサ配列の入射の共通領域に向けて入射角αで方向付けする。反射素子M1,M2が、相対光ビームの伝搬軸に沿って並進移動可能であり、そして入射面(図中の破線位置)に対して垂直な軸の周りに回転移動可能であるようにシステムの実施形態において、入射角αは、予め設定された値の範囲内で制御されることが好都合である。
【0074】
当然ながら、周波数ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法に基づいた実施形態では、光検出経路Pは、測定ビームおよび基準ビームの分離を再び提供しないが、図4aに記載されたアーキテクチャに従った分光計を備える。
【0075】
上述したように、センサ配列Sは、複数の光検出器デバイスを備え、その各々がその上に入射する光強度を表す特定の信号を放出するように構成され、これらの信号は、全体として処理手段350に送信され、これは、重畳された測定光ビームおよび基準光ビームの全体入射光パワーを取得することによって、センサ配列の共通入射領域Cに形成される干渉縞パターンFを識別するように構成される。
【0076】
好ましくは、測定光学経路および基準光学経路は、対応する光学素子を備え、特に、基準光学経路は、反射戻り素子を備え、その反射および光拡散特性は、測定光学経路に介在する監視される光学素子の反射および光拡散特性に可能な限り対応している。必要に応じて、光減衰手段を必要に応じて設けてもよく、これらは、監視される光学素子によって反射した測定光放射の強度を基準として、前記戻り反射素子によって反射した基準光放射の強度をバランスさせるように構成される。
【0077】
図6のシステムまたは同等のシステムによって、少なくとも1つの光学素子の局所位置を決定するための方法が実装される。
【0078】
この方法は、低コヒーレンス測定光放射ビームMを発生することを含み、これは、例えば、材料のレーザ加工のための機械の加工ヘッド内でレーザビームの光伝送経路に設けられた、例えば、介在する光学素子に向けて導かれ、そして、前記光学素子の少なくとも1つの後方反射表面によって反射または散乱され、加工ヘッド14を経由してセンサ配列Sに向けて導かれる。
【0079】
反射光学素子の場合、素子の第1面において測定光ビームの反射または散乱が生じると仮定することができ、一方、反射光学素子の場合、測定光ビームの反射または散乱が素子の両面で生じると推定できる。
【0080】
測定光放射ビームMは、詳細には光源100からセンサ配列Sまでの光学測定経路を進行し、前記光学素子が予め定めた動作条件に対応する予め定めた公称位置にある場合、個々の予め定めた不変の幾何学的長さを有する2つのセクションを含み、第1セクションは、光源100と前記光学素子の後方反射表面との間で構成され、第2セクションは、前記光学素子の後方反射表面と前記センサ配列Sとの間で構成される。
【0081】
同じ光源100から、前記基準低コヒーレンス光放射ビームRが発生し、これは、センサ配列Sに向けて導かれる。基準ビームRは、前記光学素子の位置が予め定めた公称位置である公称動作条件において、測定光学経路Pの光学長に相当する光学長さの基準光学経路Pに沿って進行する。
【0082】
測定ビームMおよび基準ビームRは、予め設定された照射軸に沿ってセンサ配列Sの共通入射領域C上で重畳される。
【0083】
空間ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法を適用すると、共通入射領域C上の照射軸に沿った測定ビームMと基準ビームRとの間の干渉縞パターンFの位置は、処理手段350によって検出され、上述したように、測定光学経路Pと基準光学経路Pとの間の光学長の差を決定することを可能にし、それは、(a)光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示す。
【0084】
周波数ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法を適用することによって、測定ビームMと、共通入射領域C上の照射軸に沿って光を波長で散乱させることによって得られる基準ビームRとの間の干渉縞パターンFの周波数は、処理手段350によって検出され、上述したように、測定光学経路Pと基準光学経路Pとの間の光学長の差を決定することを可能にし、それは、(a)光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置と、の間の差を示す。
【0085】
この方法は、材料の加工中にリアルタイムで実施できるが、例えば、加工ヘッドの光学素子の状態を特定するために、加工の前または後に実行してもよい。加工対象の材料は、例えば、加工ステップとは別個に行われる光学素子の監視ステップにおいて不在でもよく、例えば、前記光学素子によって最大に反射される波長の低コヒーレンス光放射を使用してもよい。加工ステップの際に光学素子の監視が行われるときに材料が存在する場合は、対応する基準光学経路が選択された関心のある光学素子の表面に後方反射された測定信号の一部が採用される。
【0086】
図7を参照して、加工ヘッド内の加工レーザ光Bおよび測定光ビームMの経路の例示的な実施形態が概略的に示される。
【0087】
図7は、レーザビームを偏向する反射素子、例えば、符号DMで示すダイクロイックミラーを示し、これは、加工レーザビームBの伝搬の光軸を、ヘッド進入方向から、加工対象の材料WP上での入射方向に偏向する。これは、横方向レーザビーム入力を含む加工ヘッドの一実施形態で採用される構成である。この実施形態では、測定光放射ビームMは、下流側で監視される光学素子に向けて方向付けられ(そして材料測定領域に向けて)、感知できる偏向なしでダイクロイックミラーDMを通過し、反射光学走査システムSMまたは折り返しミラーを用いて、その傾斜は、測定ポイントが素子の表面を捕まえる位置を制御するために、素子の異なる領域を探索する必要性に従って、例えば、圧電的に制御される。対象の素子は、限定なしで示す例では、集光レンズFLである。図に見えるように、測定ビームの伝搬方向は、反射光学走査システムSMの傾斜によって加工レーザビームBに同軸的に重畳されないように、それとは異なるように制御してもよい。当業者が、加工レーザビームに対して透明であり、横方向入力から来る測定ビームを反射するダイクロイックミラーが設けられる、「二重」または「反対」構成が可能であることを理解するであろう。
【0088】
図8a、図8b、図8cは、光学素子Eの第1面S1または第2面S2への、測定光放射の後方反射または部分拡散の第1条件を概略的に示し、加工対象の材料WPの介在が可能である。Mは、光学素子Eを通過する測定光放射ビームの一部を示し、MR1およびMR2は、光学素子Eの表面S1またはS2で反射した測定光放射ビームの一部を示す。図8cにおいて、MTRは、光学素子Eを通過し、材料WPによって戻り経路に反射した測定光放射ビームの一部を示し、MTR2は、光学素子Eの表面S2によってさらに反射した測定光放射ビームの一部を示し、MTR2Rは、材料WPによってさらに反射した測定光放射ビームの一部を示し、MTR2RTは、光学素子Eを通過する測定光放射ビームの一部を示す。
【0089】
他の可能な動作条件は、図8dに示しており、測定光学経路は、光源から光学素子Eの後方反射表面S2までの第1セクションと、光学素子Eの後方反射表面S2とセンサ配列Sとの間の第2セクションとの間の少なくとも第3中間セクションを少なくとも含む。前記第3セクションは、光学素子の後方反射表面S2への第1後方反射と第2後方反射との間に構成され、光学素子Eの後方反射表面S1への少なくとも1つの部分後方反射を含む。MR2は、光学素子Eの表面S2で反射した測定光放射ビームの一部を示し、MR21は、光学素子Eの表面S1によってさらに反射した測定光放射ビームの一部を示し、MR212は、光学素子Eの表面S2によって再び反射した測定光放射ビームの一部を示す。前述した第3のセクションは、光学素子が予め定めた公称位置および/または予め定めた動作条件にある場合、公称条件下で個々の予め定めた公称幾何学的光学長を有する。
【0090】
他の可能な動作状態は、図8eに示しており、光学測定経路は、光源から光学素子Eの後方反射表面S1までの第1セクションと、光学素子Eの後方反射表面S1とセンサ配列Sとの間の第2セクションとの間の少なくとも第3中間セクションを少なくとも含む。前記第3セクションは、前記光学素子の後方反射表面S1への第1後方反射と第2後方反射との間で構成され、レーザビームの光学伝送経路に沿って介在した、異なる光学素子E’の後方反射表面S2’への少なくとも1つの部分後方反射を含む。前述した第3のセクションは、光学素子Eが予め定めた公称位置および/または予め定めた動作条件にある場合、個々の予め定めた公称幾何学的光学長を有する。
【0091】
予め定めた動作条件は、機械の休止条件または予め定めた加工パラメータに関連する加工条件である。
【0092】
さらに、測定光学経路の第1セクションおよび第2セクションは、レーザビームのための光学伝送経路に沿って配置された異なる光学素子、または加工対象の材料の後方反射表面において、少なくとも1つの部分後方反射を含んでもよい。
【0093】
好都合には、説明した方法は、例えば、レンズまたはミラーなど、レーザビームの光学伝送経路に設けられた、可能性ある変形または変位、一時的(加工中)または永久的な光学素子の位置決めを確認することを可能にする。実際、光学素子が、それが存在する環境の温度に起因して形状の変化を受けるか、または、それが露出される圧力に起因して可撓性である場合、それが分割する環境の部屋間に確立された圧力差に起因して良好である。光学素子はまた、温度または圧力の影響に起因する位置の変化を受けることがあり、これらの物理的パラメータがその受けシート、例えば、並進し得る変形可能リングに影響を及ぼす場合がある。
【0094】
特定の応用例について下記に説明する。
【0095】
レーザ切削、穿孔または溶接、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械において、アシストガス流を供給するためのノズルを有する加工ヘッドを備え、臨時のセンサの設置に頼ることなく、ノズルチャンバ内のアシストガス圧力を制御することが望ましい。アシストガス圧力の知識は、ノズルを経由して伝搬する測定光放射ビームの伝搬機構に対するアシストガス圧力の影響を決定するのにも有用であり、例えば、加工対象の材料から加工ヘッドの(ノズルの)の距離を決定するために使用される。
【0096】
ノズルのアシストガスチャンバ内のアシストガスの圧力は、加工レーザビームの光学伝送経路に沿って介在する保護光学素子、前記アシストガスチャンバに面しており、可能性として加工レーザビームの軸の外部にある補助光学素子の表面、またはアシストガスチャンバの境界の局所位置の変化の測定から、アシストガスの予め定めた基準圧力値に対応する個々の予め定めた公称位置に対する前記光学素子の表面の位置と、アシストガスの圧力との間の予め定めた公称関係を示す予め定めた基準モデルに従って、間接的に導出してもよい。
【0097】
この基準モデルは、直接圧力測定から、そして較正ステップにおける光学素子の位置の検出から開始して構築できる。
【0098】
図9は、測定ビームの軸に沿ってアシストガスチャンバを保護または境界設定するための光学素子の表面の局所位置の変化の意味で表現される干渉計測定値の結果と、上記チャンバ内のアシストガスの圧力の傾向(増加、減少)との間の依存関係を示す。カーブAは、チャンバ内の圧力が増加するにつれて、保護光学素子の表面またはアシストガスチャンバの境界の局所位置の変化を表す。カーブBは、チャンバ内の圧力が減少するにつれて、保護光学素子の表面またはアシストガスチャンバの境界の局所位置の変化を表す。2つのカーブ間のヒステリシスは、関与する材料の非弾性変形に起因することがある。
【0099】
この実施形態では、基準光学経路は、好都合には光学保護素子または光学アシスト素子に対応する光学素子を備え、これは、測定光学経路中の光学保護素子またはアシスト光学素子の公称位置に対応する位置に基準光学経路に沿って配置され、測定光学経路内のアシストガスの前述した予め定めた基準圧力値を構成する制御された圧力値を受ける。
【0100】
間接的な圧力測定と同様に、本発明のさらに特定の応用例は、局所的な変形または変位を決定する場合、加工レーザビームの、または素子が設置される環境の光学伝送経路に沿って介在する光学素子または伝送媒体の温度の決定に関する。前記光学素子の状態は、上述のように、その局所位置を決定するための方法を採用することによって決定され、基準ビームが、それが予め定めた基準温度値に対応する予め定めた公称位置にある場合、光学素子の表面における測定ビームの部分後方反射を含む公称動作条件における測定光学経路の光学長に等しい光学長の基準光学経路に沿って進行する。そして、光学素子の動作温度は、予め定めた公称位置に対する光学素子の位置と、素子の温度との間の公称関係を示す予め定めた基準モデルに従って決定される。
【0101】
本発明の光学素子物体の位置を決定する方法の更なる特定の応用例は、基準光学経路の対応する部分の現在の光学長を基準として測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の摂動の決定に関する。
【0102】
測定光放射ビームの伝搬機構は、それが伝搬する伝送媒体の物理的パラメータ(温度、圧力、機械的変形)によって影響される。伝送媒体の屈折率がこうしたパラメータに従って可変であるためである。従って、本発明に係る方法は、後方反射光学素子の位置を静的なものと仮定して、例えば、アシストガスの圧力によって誘起される屈折率変動など、交差した伝送媒体の屈折率変動を測定するために使用できる。
【0103】
材料のレーザ切削、穿孔または溶接、またはレーザによる3次元構造の積層造形のための機械において、アシストガス流を供給するためのノズルを有する加工ヘッドを備え、測定光放射ビームは、ノズルを経由して伝搬され、その伝搬機構は、アシストガスの圧力によって影響される。
【0104】
従って、本発明の加工物体の精度を改善するために、測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差の決定は、好ましくは、幾何学的長さから開始して計算される測定光学経路の正規化光学長と、ノズルであるアシストガスチャンバを通過する前記光学測定経路の一部の正規化屈折率とに基づいている。正規化された屈折率は、ガスの圧力に対するアシストガスによって導かれる伝送媒体の屈折率に依存して、所定の公称関係に従って、チャンバ内のアシストガスの圧力の関数として計算される。
【0105】
より一般的に言えば、測定光学経路の光学長は、経路の幾何学的長さおよび伝送媒体の屈折率に依存するため、測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差の決定は、幾何学的長さから開始して計算される光学測定経路の正規化光学長と、前記測定光学経路の伝送媒体または前記測定光学経路の一部の伝送媒体の正規化屈折率に基づいてもよい。その屈折率は、屈折率または反射率と素子自体の温度との間の予め定めた公称関係に従って、伝送媒体の少なくとも1つの物理パラメータ、例えば、温度の変化の関数として計算される。
【0106】
代替または上記との組合せで、測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差の決定は、正規化された幾何学的長さから開始して、前記測定光学経路の一部の材料伝送媒体の屈折率から計算される測定光学経路の正規化光学長に基づいてもよい。正規化された幾何学的長さは、予め定めた公称関係に従って前記材料伝達媒体の機械的変形(例えば、伸長または短縮)の関数として計算される。
【0107】
好都合には、本発明の技術目的は、基準光学経路の対応する部分の現在の光学長を基準として測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の摂動を決定し、決定された摂動に基づいて、公称局所位置に対する測定ビームの軸に沿った光学素子の局所現在位置の決定された値を補正することを可能にする(例えば、素子の現在の局所位置の測定から摂動の測定値を減算することによって(可能ならば補正係数を適用した後))。摂動は、例えば、測定光学経路が延びる伝送媒体の少なくとも1つの物理的パラメータの変化に起因して生じる。
【0108】
これらの目的のために、センサ配列Sに入射する測定ビームは、較正測定光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの較正測定ビームを含み、測定ビームは、測定光学経路に沿って介在する静的光学素子の少なくとも1つの後方反射表面によって反射または拡散される。センサ配列Sに入射する基準ビームは、較正測定光学経路の伝送媒体の幾何学的長さおよび屈折率が、予め定めた許容範囲内の較正基準光学経路の幾何学的長さおよびの屈折率に等しい較正の公称動作条件において、較正測定光学経路の光学長に相当する光学長を有する較正基準光学経路の進行から生ずる個々の較正基準ビームを含む。静的光学素子は、例えば、レーザビームの光学集光システム16でもよい。
【0109】
測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の摂動を決定することは、下記の動作を含む。
・較正測定ビームおよび較正基準ビームを、照射軸に沿ってセンサ配列Sの共通入射領域上で重畳させるステップ。
・測定較正ビームと基準較正ビームとの間の干渉縞パターンの位置を、あるいは、周波数ドメイン検出を用いた干渉手法が適用される場合、測定較正ビームと基準較正ビームとの間の干渉縞パターンの位置の周波数を、共通入射領域内の照射軸に沿って検出するステップ。
・入射領域の照射軸に沿った干渉縞パターンの位置、あるいは、周波数ドメインでの干渉縞パターンの周波数のいずれかに応じて、
較正測定光学経路と較正基準光学経路との間の光学長の差((a)較正測定光学経路の幾何学的長さと、較正基準光学経路の幾何学的長さとの間、および/または、(b)較正測定光学経路の屈折率と基準校正光学経路の屈折率、の間の差を示す)を決定するステップ。
【0110】
較正測定光学経路と較正基準光学経路との間の光学長の差は、測定光学経路の少なくとも一部の現在の光学長の前述した摂動を示す。
【0111】
決定された摂動に基づいて、公称局所位置を基準として、測定ビームの軸に沿った光学素子の現在の局所位置の決定された値の補正は、例えば、メイン測定値から較正値を減算することによって実行される。
【0112】
本発明の改良について、本説明で以下に説明する。
【0113】
特に、本発明の手法によって測定可能な測定経路の長さと基準経路の長さとの間の差の間隔を増加させる解決策は、加工レーザビームの経路および測定光放射ビームの経路に沿って介在する少なくとも1つの異なる光学素子の表面における部分後方反射を利用すること、またはメイン基準光学経路の長さとは異なる予め定めた長さの基準光学経路を利用することである。
【0114】
一実施形態では、センサ配列Sに入射する測定ビームは、測定対象の光学素子の後方反射表面からの反射を伴うメイン測定光学経路の進行および、測定対象の前記光学素子の上流側にある加工レーザビームの光学経路に沿って介在する何れか他の光学素子を経由する伝送とから生じるメイン測定ビームと、測定対象の前記光学素子の背面反射表面からの反射を備え、メイン測定光学経路の幾何学的長さよりも大きい幾何学的長さを有する、追加の測定光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの追加の多重化測定ビームとを含む。例えば、それは、加工レーザビームおよび測定光放射ビームの光学経路に沿って介在する異なる光学素子の表面において少なくとも部分後方反射を含むためである。
【0115】
この実施形態では、本発明の方法は、追加の測定ビームと基準ビームとの間の干渉によって決定される、センサ配列Sの共通入射領域C上の追加の干渉縞パターンの位置の検出に基づく。空間ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法では、追加の干渉縞パターンは、例えば、(i)メイン測定ビームと基準ビームとの間のメイン干渉縞パターンの光放射の包絡線のピークまたは最大強度とは異なり、例えば、それより低い光放射の包絡線のピークまたは最大強度、または、(ii)メイン干渉パターンと同時に現れる場合、メイン干渉パターンの光放射強度の固有の位置とは異なる光放射の強度の包絡線の固有位置を有する。
【0116】
従って、上記の条件では、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置との間の差を示す、追加の測定光学経路と基準光学経路との間の光学長の差が、入射領域の照射軸に沿った追加の干渉縞パターンの位置の関数として、または周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数の関数として決定される。
【0117】
異なる実施形態では、センサ配列Sに入射する基準ビームは、メイン基準光学経路の進行から生ずるメイン基準ビームと、メイン基準光学経路の幾何学的長さとは異なる幾何学的長さを有する追加の基準光学経路の進行から生ずる少なくとも1つの追加の多重化基準ビームと、を含む。
【0118】
この実施形態では、本発明の方法は、測定ビームと追加の基準ビームとの間の干渉によって決定される、センサ配列Sの共通入射領域上の追加の干渉縞パターンの位置の検出に基づく。
【0119】
またこの場合、空間ドメインでの干渉縞パターンの検出を用いた干渉手法では、追加の干渉縞パターンは、例えば、(i)測定ビームとメイン基準ビームとの間のメイン干渉縞パターンの光放射の包絡線のピークまたは最大強度とは異なる、例えば、それより低い光放射の包絡線のピークまたは最大強度、または、(ii)メイン干渉パターンと同時に現れる場合、メイン干渉パターンの光放射強度の固有位置とは異なる光放射強度の包絡線の固有位置を有する。
【0120】
複数の別個の動作間隔がセンサ配列上に並行していない、または重畳されておらず、個々の干渉縞を交互に示すように充分に分離している場合、干渉縞パターンの選択は、追加の基準経路を選択することによって行われる。
【0121】
従って、上記の状態では、(a)前記光学素子の現在の局所位置と、(b)測定ビームの軸に沿った前記光学素子の予め定めた公称局所位置との間の差を示す、測定光学経路と追加の基準光学経路との間の光学長の差が、入射領域の照射軸に沿った追加の干渉縞パターンの位置の関数として、または、周波数ドメインでの前記干渉縞パターンの周波数の関数として決定される。
【0122】
便利には、ある光学素子の位置の正確な決定、より良好にはレーザビームの伝送経路の各光学素子の決定により(これらは測定光学経路に関連付けできる個々の基準光学経路の考慮により選択できる)、レーザ加工機械の制御ユニットが、いくつかの動作パラメータ、例えば、アシストガスの圧力などの補正または制御をフィードバック式で動作することを可能にし、あるいは、光学素子が異常な位置にあると判断した場合には、アラーム信号を発して各加工プロセスを停止させることを可能にする。これは、例えば、製造プロセスの安全性を改善するために特に有用である。
【0123】
前述の議論において提案された本発明の実施形態は、純粋に例示的な性質のものであり、本発明を限定するものではないことに留意すべきである。当業者は、本発明を種々の実施形態で容易に実施することができ、これは本明細書に記載の原理から逸脱せず、したがって本特許に含まれる。
【0124】
これは、様々な低コヒーレンス光放射波長を使用する可能性に関して、引用したもの、あるいは非限定的な例として、図6に示したものとは異なる光学素子を介在させた測定光学経路および基準光学経路に対して、特に適用可能である。
【0125】
当然ながら、本発明の原理は理解され、製造の詳細および実施形態は、添付の請求項によって定義される本発明の保護の範囲から逸脱することなく、非限定的な例として説明され例示されたものと比べて広範に変更してもよい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9
【国際調査報告】