(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】高い酸化物膜の除去速度のシャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械平坦化(CMP)研磨
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20230130BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230130BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230130BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533568
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020062783
(87)【国際公開番号】W WO2021113285
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】シアオポー シー
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ ピー.ムレラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ディー.ローズ
(72)【発明者】
【氏名】ホンチュン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】マーク レナード オニール
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
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5F057EA29
5F057EA30
5F057EA31
(57)【要約】
高い酸化物膜の除去速度のシャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械平坦化(CMP)研磨組成物、それらを使用する方法及びシステムが提供される。CMP研磨組成物は、セリアコーティングされた無機酸化物粒子、例えばセリアコーティングされたシリカと;高い酸化物膜の除去速度を提供するための化学添加剤とを含む。化学添加剤は、ゼラチン分子であって、その分子上に負及び正の電荷を有するゼラチン分子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子;
ゼラチン分子であって、その分子上に負の電荷を提供する有機カルボキシレート官能基と、正の電荷を提供するプロトン化された有機アミノ基とを含む、ゼラチン分子;
水溶性溶媒;並びに
任意選択で
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、2~12、3~10、4~9又は4.5~7.5のpHの値を有する、化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項2】
前記セリアコーティングされた無機酸化物粒子が、セリアコーティングされたコロイダルシリカ、セリアコーティングされた高純度コロイダルシリカ、セリアコーティングされたアルミナ、セリアコーティングされたチタニア、セリアコーティングされたジルコニアの粒子、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項3】
前記セリアコーティングされた無機酸化物粒子が、0.01wt%~20wt%、0.02wt%~10wt%、0.005wt%~5wt%又は0.01wt%~3wt%の濃度を有する、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項4】
前記ゼラチン分子が、有機アミド官能基と、ヘテロ原子として1つの窒素原子を有する5員の非芳香族環をさらに含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項5】
前記ゼラチン分子が、動物の皮から作られた有機ゼラチン分子である、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項6】
前記ゼラチン分子が、冷水魚の皮、豚の皮、牛の皮及びそれらの組み合わせからなる群から選択される動物の皮から作られた有機ゼラチン分子である、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項7】
前記ゼラチン分子が、
【化1】
の分子構造を有する、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項8】
前記ゼラチン分子が、0.0001wt%~5wt%、0.0005wt%~2wt%、0.001wt%~1wt%、0.002wt%~0.5wt%、0.0025wt%~0.25wt%又は0.003wt%~0.1wt%の濃度を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項9】
前記水溶性溶媒が、脱イオン(DI)水、蒸留水及びアルコール性有機溶媒からなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項10】
0.0001wt%~0.05wt%、0.0005wt%~0.025wt%又は0.001wt%~0.01wt%の濃度を有する殺生物剤をさらに含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項11】
5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン又は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの活性成分を有する殺生物剤をさらに含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項12】
0wt%~1wt%、0.01wt%~0.5wt%又は0.1wt%~0.25wt%の濃度を有するpH調節剤をさらに含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項13】
硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、他の無機若しくは有機酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される、酸性pH条件のためのpH調節剤;又は水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機水酸化第四級アンモニウム化合物、有機アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、塩基性pH条件のためのpH調節剤をさらに含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項14】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子としてのセリアコーティングされたコロイダルシリカ粒子と、冷水魚の皮、豚の皮、牛の皮及びそれらの組み合わせからなる群から選択される動物の皮から作られたゼラチン分子を含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項15】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子としてのセリアコーティングされたコロイダルシリカ粒子と、冷水魚の皮、豚の皮、牛の皮及びそれらの組み合わせからなる群から選択される動物の皮から作られたゼラチン分子とを含み、pHの値が4~9である、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項16】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子としてのセリアコーティングされたコロイダルシリカ粒子と、冷水魚の皮から作られたゼラチン分子とを含む、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項17】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子としてのセリアコーティングされたコロイダルシリカ粒子と、冷水魚の皮から作られたゼラチン分子とを含み、pHの値が4~9である、請求項1に記載の化学機械平坦化研磨組成物。
【請求項18】
二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する半導体基材を化学機械平坦化(CMP)する方法であって、
半導体基材を提供する工程;
研磨パッドを提供する工程;
請求項1~17のいずれか1項に記載の化学機械平坦化研磨組成物を提供する工程;
前記半導体基材を、前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物と接触させる工程;並びに
前記二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を研磨する工程
を含む、方法。
【請求項19】
前記二酸化ケイ素膜が、化学気相堆積(CVD)二酸化ケイ素膜、プラズマ強化CVD(PECVD)二酸化ケイ素膜、高密度堆積CVD(HDP)二酸化ケイ素膜、スピンオン二酸化ケイ素膜及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体基材が、窒化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面をさらに有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記半導体基材が、窒化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面をさらに有し、二酸化ケイ素膜の研磨速度/窒化ケイ素膜の研磨速度が1以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する半導体基材を化学機械平坦化(CMP)するシステムであって、
a.半導体基材;
b.請求項1~17のいずれか1項に記載の化学機械平坦化研磨組成物;及び
c.研磨パッド
を備え、前記二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面が、前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物と接触している、システム。
【請求項23】
前記二酸化ケイ素膜が、化学気相堆積(CVD)二酸化ケイ素膜、プラズマ強化CVD(PECVD)二酸化ケイ素膜、高密度堆積CVD(HDP)二酸化ケイ素膜又はスピンオン二酸化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記半導体基材が、窒化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面をさらに有する、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記半導体基材が、窒化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面をさらに有し、二酸化ケイ素膜の研磨速度/窒化ケイ素膜の研磨速度が1以上である、請求項22に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2019年12月4日に提出された米国特許出願62/943314号明細書の利益を主張するものである。米国特許出願62/943314号明細書の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(STI)のための、高い酸化物膜の除去速度を有するシャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械平坦化(CMP)組成物、方法及びシステムに関する。
【0003】
マイクロエレクトロニクス装置の製造に包含される重要な工程は研磨工程、とりわけ、選択された材料の回復及び/又は構造の平坦化のための化学機械研磨についての表面を、研磨工程である。
【0004】
パターニングされたSTI構造の一般的な平坦化において、酸化物膜の、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)及び高密度堆積化学気相堆積(CVD)又はHDP膜のバルクキャップ層を速く除去することは、3D NAND、層間誘電体(ILD)及びSTI CMPプロセスにおける、高い処理量のSTI CMPプロセスのための重要な要件である。
【0005】
米国特許第5876490号明細書は、研磨粒子を含有し、かつ法線応力効果を示す研磨組成物を開示している。スラリーは、へこみにおける低下した研磨速度をもたらす非研磨粒子をさらに含有し、一方で、研磨粒子は、高い箇所における高い研磨速度を維持する。このことは、改善された平坦化をもたらす。より具体的には、スラリーは、酸化セリウム粒子及びポリマー性電解質を含み、シャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途のために使用することができる。
【0006】
米国特許第6964923号明細書は、シャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途のための、酸化セリウム粒子及びポリマー性電解質を含有する研磨組成物を教示している。使用されるポリマー性電解質は、米国特許第5876490号におけるものと類似の、ポリアクリル酸の塩を含む。セリア、アルミナ、シリカ及びジルコニアが、研磨剤として使用される。このような列挙されたポリ電解質についての分子量は、300~20000であるが、全体では<100000である。
【0007】
米国特許第6616514号明細書は、化学機械平坦化研磨によって、窒化ケイ素に優先して、物品の表面から第一の物質を除去する用途のための化学機械平坦化研磨スラリーを開示している。その発明による化学機械平坦化研磨スラリーは、研磨剤と、水性媒体と、プロトンを解離させない有機ポリオールとを含み、有機ポリオールは、水性媒体中で解離しない少なくとも3つのヒドロキシル基を有する化合物、又は水性媒体中で解離しない少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのモノマーから形成されたポリマーを含む。
【0008】
米国特許第6984588号明細書は、粉状セリアスラリーを開示していて、粉状セリアスラリーの、ブランケット二酸化ケイ素及び窒化ケイ素ウエハを研磨する能力を評価している。約2~4μmの粒子サイズを有するRhoditeグレードの400HSセリアをUniversal Photonics,Hicksville,N.Y.から購入し、攪拌器ビードミルを使用して、150nmの一次平均粒子サイズまで粉化した。粉化プロセスの後に得られたスラリーが約7.5~8.5のpHであり、20%~30%の固体を含有するように、湿式条件の下で粉化がされた。
【0009】
米国特許第6544892号明細書は、研磨パッドと、水と、研磨粒子と、カルボン酸官能基並びにアミン及びハライドから選択される第二の官能基の両方を有する有機化合物とを使用して物品の表面を研磨することを含む化学機械研磨によって、窒化ケイ素に対して優先して、物品の表面から二酸化ケイ素を除去する方法を開示している。
【0010】
米国特許第7247082号明細書は、研磨剤と、pH調節剤と、選択比の改良剤と、水とを含む研磨組成物であって、研磨剤が0.5~30wt%の量で含有されていて、pH調節剤が0.01~3wt%の量で含有されていて、選択比の改良剤が0.3~30wt%の量で含有されていて、水が45~99.49wt%の量で含有されていて、wt%は研磨組成物の重量を基にしたものであり、改良剤が、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール、ビス(3-アミノプロピル)アミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ピペラジン及びピペリジンからなる群から選択される1つ又は複数の化合物である、研磨組成物を開示している。(注:4つのスラリーの請求項がある。請求項:改良剤が、プロピルアミン、イソプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール、ビス(3-アミノプロピル)アミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル及びピペラジンからなる群から選択される1つ又は複数の化合物である、請求項1に記載の研磨組成物。特許請求の範囲に記載される研磨剤は、コロイダルシリカ若しくはヒュームドシリカ又は混合物である。
【0011】
米国特許第8778203号明細書は、基材の表面上のターゲット材料を選択的に除去するための方法であって、ターゲット材料及び非ターゲット材料を備える基材を提供する工程;研磨溶液中に酸素を溶解して所定の溶解酸素濃度を達成する工程であって、研磨溶液が約5~約11のpHを有し、研磨溶液が複数の研磨シリカ粒子を含み、複数の研磨シリカ粒子のうち少なくとも幾らかがn-(トリメトキシシリルプロピル)イソチオウロニウムクロリドで官能化される工程;実質的に純粋な酸素を研磨溶液に連続的に適用することによって、研磨溶液の所定の溶解酸素濃度を約8.6mg/L~約16.6mg/Lに維持する工程;研磨パッドと表面との間に研磨溶液を配置する工程;表面に研磨パッドを適用する工程;並びに所定の厚さのターゲット材料を選択的に除去する工程、を含み、除去工程の間に、研磨溶液の溶解酸素含有量を変化させることが、ターゲット材料/非ターゲット材料の除去比を変化させる、方法を開示している。
【0012】
米国特許第6914001号明細書は、化学機械研磨方法であって、半導体の表面を研磨パッドの表面と接触させる工程;研磨粒子と、除去速度加速剤と、別個の第一及び第二の不動態化剤とを含有する水性溶液を、研磨パッドの表面と半導体ウエハの表面との間の界面に供給する工程であって、第一の不動態化剤がアニオン性、カチオン性又は非イオン性の界面活性剤である工程;並びに研磨パッドの表面に対して半導体ウエハの表面を回転させて、半導体ウエハ上の酸化物材料を除去する工程、を含む、方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、比較的低い研磨剤濃度の使用で、高い酸化物及び誘電体膜の除去速度をもたらすことができるSTI CMPスラリー、並びに酸化物膜の除去速度を加速することができる適した新規の化学添加剤についての強い要求が未だに存在する。
【0014】
したがって、当分野において、STI化学機械平坦化(CMP)プロセスにおいて高い酸化物膜の除去速度を提供することができる、STI化学機械平坦化研磨の組成物、方法及びシステムについての要求があることは、先述のことから直ちに明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高い酸化物膜の除去速度を達成するためのSTI CMP研磨組成物、方法及びシステム、並びにその関連するCMP研磨方法を提供する。
【0016】
シャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための、開示される化学機械平坦化(CMP)研磨組成物は、セリアコーティングされた無機酸化物研磨粒子と、ゼラチン分子であって、その分子上で負及び正の電荷を有するゼラチン分子とを使用するユニークな組み合わせを有し、酸化物膜の除去速度を加速する適した化学添加剤としての天然源又は合成化学物質から作られる。
【0017】
1つの態様において、
セリアコーティングされた無機酸化物粒子;
ゼラチン分子であって、その分子上で負及び正の電荷を有するゼラチン分子;
水溶性溶媒;並びに
任意選択で
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9、最も好ましくは4.5~7.5のpHを有する組成物が提供される。
【0018】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子は、以下に限定するものではないが、セリアコーティングされたコロイダルシリカ、セリアコーティングされた高純度コロイダルシリカ、セリアコーティングされたアルミナ、セリアコーティングされたチタニア、セリアコーティングされたジルコニア又は任意の他のセリアコーティングされた無機金属酸化物粒子を含む。
【0019】
水溶性溶媒は、以下に限定するものではないが、脱イオン(DI)水、蒸留水及びアルコール性有機溶媒を含む。
【0020】
ゼラチン分子は、酸化物膜の除去速度加速剤として機能する。
【0021】
ゼラチン分子は、有機又は無機であってよく、その分子上で負及び正の電荷を有する天然源又は合成化学物質のいずれかから作られてよい。
【0022】
例えば、動物の皮、例えば冷水魚の皮、豚の皮及び牛の皮から作られたゼラチンが考えられ、STI CMP研磨組成物におけるゼラチン分子として使用される。
【0023】
別の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上で説明されるSTI CMP研磨組成物を使用して、二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する基材を化学機械平坦化(CMP)する方法が提供される。
【0024】
別の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上で説明されるSTI CMP研磨組成物を使用して、二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する基材を化学機械研磨(CMP)するシステムが提供される。
【0025】
研磨される酸化物膜は、化学気相堆積(CVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)若しくは高密度堆積CVD(HDP)によって形成された二酸化ケイ素膜、又はスピンオン二酸化ケイ素膜であってよい。
【0026】
上で開示される基材は、窒化ケイ素表面をさらに備えていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】3.0psiのダウンフォース(DF)における、酸化物膜の除去速度(RR)(Å/min.)に対する、冷水魚の皮から作られたゼラチンを使用する除去効果である。
【
図2】3.0psiのダウンフォース(DF)における、酸化物膜及びSiN膜の除去速度(RR)(Å/min.)に対する、冷水魚の皮から作られたゼラチンを使用する除去効果である。
【
図3】4.0psiのダウンフォース(DF)における、酸化物及びSiN膜の除去速度(RR)(Å/min.)に対する、魚の皮から作られたゼラチンの効果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
パターニングされたSTI構造の一般的な平坦化において、高い酸化物膜の除去速度で、酸化物キャップ層を速く除去することは、重要な要素であると考えられている。したがって、酸化物キャップ層を効果的に除去するために使用されるときに、高い酸化物膜の除去速度を提供することができるSTI CMP研磨組成物を得ることが重要である。
【0029】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための、化学機械研磨(CMP)組成物に関する。
【0030】
より具体的には、開示されるシャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための化学機械研磨(CMP)組成物は、セリアコーティングされた無機酸化物研磨粒子と、酸化物膜の除去速度加速剤としての適した化学添加剤とを使用するユニークな組み合わせを有する。
【0031】
適した化学添加剤は、以下に限定するものではないが、ゼラチン分子であって、その分子上で負及び正の電荷を有し、かつ天然源、合成化学物質及びそれらの組み合わせのいずれかから作られたゼラチン分子を含む。
【0032】
本発明のSTI CMP研磨組成物における化学添加剤としてのゼラチン分子の使用は、高い処理量の装置製造のために高い酸化物膜の除去速度が必要とされるVNAND、ILD及びSTI CMP用途のために非常に有用である、高い酸化物膜の除去速度を達成する利点を提供する。
【0033】
1つの態様において、STI CMP研磨組成物であって、
ゼラチン分子であって、その分子上で負及び正の電荷を有するゼラチン分子;
水溶性溶媒;並びに
任意選択で
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9、最も好ましくは4.5~7.5のpHを有する組成物が提供される。
【0034】
セリアコーティングされた無機酸化物粒子は、以下に限定するものではないが、セリアコーティングされたコロイダルシリカ、セリアコーティングされた高純度コロイダルシリカ、セリアコーティングされたアルミナ、セリアコーティングされたチタニア、セリアコーティングされたジルコニア又は任意の他のセリアコーティングされた金属酸化物粒子を含む。
【0035】
本明細書において開示される発明におけるこれらのセリアコーティングされた無機酸化物粒子の平均粒子サイズ(MPS)は、10nm~1000nm、20nm~500nm、30nm~400nm、50nm~400nm、50nm~250nm又は100nm~200nmである。MPSは粒子の直径をいい、動的光散乱(DLS)技術を使用して測定される。
【0036】
これらのセリアコーティングされた無機酸化物粒子の濃度は、0.01wt%~20wt%、0.02wt%~10wt%、0.005wt%~5wt%又は0.01wt%~3wt%である。
【0037】
好ましいセリアコーティングされた無機酸化物粒子は、セリアコーティングされたコロイダルシリカ粒子である。
【0038】
ゼラチン化学添加剤は、ゼラチン分子であって、その分子上で負及び正の電荷を有するゼラチン分子を含む。
【0039】
ゼラチン分子は、有機又は無機であってよく、その分子上で負及び正の電荷を有する天然源又は合成化学物質のいずれかから作られてよい。
【0040】
例えば、ゼラチン分子は、負の電荷を提供する有機カルボキシレート基と、正の電荷を提供するプロトン化した有機アミノ基とを含む。加えて、ゼラチン分子は、有機アミド官能基、ヘテロ原子として1つの窒素原子を有する5員の非芳香族環を含有してもよい。
【0041】
例えば、有機ゼラチン分子は、動物の皮、例えば冷水魚の皮、豚の皮及び牛の皮から作られる。
【0042】
冷水魚の皮由来のゼラチン(G7041)、牛の皮由来のゼラチン(G9381、G9382、G6650)及び豚の皮由来のゼラチン(G1890)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOから購入することができる。
【0043】
一例として、冷水魚の皮から作られるゼラチンの分子構造を以下に示す。
【化1】
【0044】
水溶性溶媒は、以下に限定するものではないが、脱イオン(DI)水、蒸留水及びアルコール性有機溶媒を含む。
【0045】
ゼラチンの濃度は、0.0001wt%~5wt%、0.0005wt%~2wt%、0.001wt%~1wt%、0.002wt%~0.5wt%、0.0025wt%~0.25wt%又は0.003wt%~0.1wt%である。
【0046】
好ましい水溶性溶媒はDI水である。
【0047】
STI CMP組成物は、0.0001wt%~0.05wt%、0.0005wt%~0.025wt%又は0.001wt%~0.01wt%の殺生物剤を含有してよい。
【0048】
殺生物剤は、以下に限定するものではないが、Dupont/Dow Chemical Co.のKathonTM、KathonTM CG/ICP II、Dupont/Dow Chemical Co.のBiobanを含む。それらは、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの活性成分を有する。
【0049】
STI CMP組成物はpH調節剤を含有してよい。
【0050】
酸性又は塩基性pH調節剤を使用して、STI研磨組成物を、最適化されたpHの値に調節することができる。
【0051】
pH調節剤は、以下に限定するものではないが、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、他の無機又は有機酸、及びそれらの混合物を含む。
【0052】
pH調節剤はまた、塩基性pH調節剤、例えば水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機水酸化第四級アンモニウム化合物、有機アミン、及びよりアルカリ性の方向にpHを調節するのに使用することができる他の化学試剤を含む。
【0053】
STI CMP組成物は、0wt%~1wt%、0.01wt%~0.5wt%又は0.1wt%~0.25wt%のpH調節剤を含有する。
【0054】
別の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上で説明されるSTI CMP研磨組成物を使用する、二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する基材を化学機械平坦化(CMP)する方法が提供される。
【0055】
別の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上で説明されるSTI CMP研磨組成物を使用する、二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する基材を化学機械研磨(CMP)するシステムが提供される。
【0056】
研磨される二酸化ケイ素膜は、化学気相堆積(CVD)によって(CVD二酸化ケイ素膜といわれる)、プラズマ強化CVD(PECVD)によって(PECVD二酸化ケイ素膜といわれる)、高密度堆積CVD(HDP)によって(高密度二酸化ケイ素膜といわれる)、又はスピンオンによって(スピンオン二酸化ケイ素膜といわれる)形成されてよい。
【0057】
上で開示される基材は、窒化ケイ素表面をさらに備えていてよい。
【0058】
別の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上で説明されるSTI CMP研磨組成物を使用する、二酸化ケイ素膜を備える少なくとも1つの表面を有する基材を化学機械平坦化(CMP)する方法が提供される。研磨される二酸化ケイ素膜は、CVD二酸化ケイ素膜、PECVD二酸化ケイ素膜、高密度二酸化ケイ素膜又はスピンオン二酸化ケイ素膜であってよい。
【0059】
以下の非限定的な例は、本発明をさらに例示するために提供される。
【実施例】
【0060】
CMP方法
下に提供される例において、CMP実験を、以下に与える手順及び実験条件を使用して行った。
【0061】
パラメータ
Å又はA:オングストローム-長さの単位
BP:バック圧力、psi単位
CMP:化学機械平坦化又は化学機械研磨
CS:キャリア速度
DF:ダウンフォース:DMPの間に適用される圧力、単位:psi
min:分
ml:ミリリットル
mV:ミリボルト
psi:ポンド毎平方インチ
PS:研磨ツールのプラテン回転速度、rpm(回転毎分)
SF:組成物の流れ、ml/min
wt%:(記載される構成成分の)重量パーセント
HDP:高密度プラズマ堆積されたTEOS
TEOS:テトラエチルオルトシリケート
TEOS又はHDPの除去速度:所与のダウン圧力でTEOS又はHDPの除去速度を測定した。以下に記載される例において、CMPツールのダウン圧力は3.0psi又は4.0psiであった。
SiN除去速度:所与のダウン圧力でSiN除去速度を測定した。記載される例において、CMPツールのダウン圧力は3.0psi又は4.0psiであった。
【0062】
研磨実験
使用したCMPツールは、Applied Materials,3050 Boweres Avenue,Santa Clara,California,95054によって製造された200mm Mirra又は300mm Reflexionである。DOW,Inc,451 Bellevue Rd.,Newark,DE 19713によって提供されたIC1000パッドを、ブランケット及びパターンウエハの調査のためのプラテン1に対して使用した。
【0063】
研磨パッド:研磨パッド、Dow,Inc.によって提供されたIC1010、IC1000及び他のパッドを、CMPの間に使用した。
【0064】
Dow,Inc.によって提供されたIC1010パッド、又は他のパッドを、18min、17lbsのダウンフォースで、調整器において調整することによって仕込みをした。ツール設定及び仕込みをしたパッドを調整するために、2つのタングステンモニター及び2つのTEOSモニターを、ベースライン条件で、Versum Materials Inc.によって提供されるVersum(登録商標)STI2305組成物を用いて研磨した。
【0065】
セリアコーティングされたシリカ粒子(種々のサイズを有する)は、日本のFGC C&C Ltd.によって提供された。粒子を、特開2013-119131号公報、特開2013-133255号公報及び国際公開第2016/159167号において説明される方法によって製造し;粒子の特性もまた米国出願公開第2016/0200944号明細書において説明されるものであり;これらの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0066】
例において使用するセリアコーティングされたシリカ複合粒子のMPSは、約110nm~約125nmであった。コロイダルシリカ粒子の表面にコーティングしたセリアナノ粒子は、10nn超又は13nm超であった。
【0067】
冷水魚の皮から作ったゼラチン(G7041)は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOによって提供された。
【0068】
ブランケットウエハの調査において、酸化物ブランケットウエハ及びSiNブランケットウエハを、ベースライン条件で研磨した。ツールのベースライン条件は、テーブル速度:87rpm、ヘッド速度:93rpm、メンブレン圧力;3.0psiのDF又は4.0psiのDF、組成物の流れ:200ml/minであった。試験のために使用した研磨パッドは、Dow Chemicalsによって提供されたIC1010パッドであった。
【0069】
研磨実験を、PECVD、LECVD又はHD TEOSウエハを使用して行った。これらのブランケットウエハは、Silicon Valley Microelectronics,2985 Kifer Rd.,Santa Clara,CA 95051から購入した。
【0070】
例における組成物中の溶媒として、脱イオン水を使用した。
【0071】
SWK Associates,Inc.2920 Scott Blvd. Santa Clara,CA 95054によって提供されたパターニングされたウエハ(MIT860)に対する研磨実験において使用した。これらのウエハを、Veeco VX300プロファイラー/AFM器具において測定した。3つの異なるサイズのピッチ構造を、酸化物ディッシング測定のために使用した。ウエハを、ダイの位置の中央、中間及びエッジにおいて測定した。
【0072】
実施例
例1
例1において、酸化物の研磨のために使用した研磨組成物を表1に示す。
【0073】
0.2wt%のセリアコーティングされたシリカ粒子と、0.0001wt%~0.05wt%の非常に低い濃度の殺生物剤と、DI水とを使用することによって、5.35の最終pHで、参照サンプルを作製した。
【0074】
0.0083wt%(又は83rpm)の、冷水魚の皮から作られたゼラチンを、5.35の最終pHを有する参照サンプルに添加することによって、研磨組成物を調製した。
【0075】
使用する研磨工程の条件は、DowのIC1010パッドで、3.0psiのDFで、87/93rpmのテーブル/ヘッド速度で、かつex-situの条件であった。
【0076】
異なる膜についての除去速度(RR、Å/min)を試験した。膜の除去速度に対する、冷水魚の皮から作られた化学添加剤ゼラチンの効果が、表1に記載し、
図1に示すように観察された。
表1.膜のRR(Å/min)に対する、冷水魚の皮から作られたゼラチンの効果
【表1】
【0077】
表1及び
図1に示す結果のように、0.0083wt%の冷水魚の皮から作られたゼラチンの、研磨組成物への添加は、TEOS、HDP及びSiN膜の除去速度を効果的に加速させた。それぞれ、TEOS膜の除去速度は60%増加し、HDP膜の除去速度は134%増加し、PECVD膜の除去速度は246%増加した。
【0078】
例2
例2において、研磨のために使用した研磨組成物を表2に示す。
【0079】
1.0wt%のセリアコーティングされたシリカ粒子と、0.0001wt%~0.05wt%の非常に低い濃度の殺生物剤と、DI水とを使用することによって、参照サンプルを作製した。
【0080】
それぞれ0.0083wt%(83ppm)、0.0415wt%(415ppm)又は0.083wt%(830ppm)の異なる濃度の冷水魚の皮から作られたゼラチンを、参照サンプルに添加することによって調製した。
【0081】
参照サンプルと研磨組成物とは、約7.0の同じpHを有していた。
【0082】
酸化物及びSiN膜の除去速度に対する、冷水魚の皮から作られたゼラチンを使用する効果を3.0psiのDFで試験して、結果を表2に記載し、
図2に示す。
表2.酸化物及びSiN膜に対する、魚の皮由来のゼラチンの効果
【表2】
【0083】
表2及び
図2に示す結果の通り、異なる濃度で、約7.0のpHで、研磨組成物中に化学添加剤として冷水魚の皮から作られたゼラチンを添加することは、酸化物及びSiN膜の両方の除去速度を加速した。化学添加剤として冷水魚の皮から作られた0.0415wt%のゼラチンの場合、3.0psiのDFで、TEOS膜の除去速度は70%超加速し、SiN膜の除去速度は500%超加速した。
【0084】
例3
例3において、参照サンプル及び研磨組成物は例2において使用したものと同じであった。
【0085】
酸化物及びSiN膜の除去速度に対する、冷水魚の皮から作られたゼラチンの効果を4.0psiのDFで試験して、結果を表3に記載し、
図3に示す。
表3.酸化物及びSiN膜に対する、魚の皮由来のゼラチンの効果
【表3】
【0086】
表3及び
図3に示す通り、異なる濃度で、約7.0のpHでの、研磨組成物へのか額添加剤としての冷水魚の皮から作られたゼラチンの添加は、酸化物及びSiN膜の両方の除去速度を加速した。化学添加剤としての冷水魚の皮から作られた0.0415wt%のゼラチンの場合、4.0psiのDFで、TEOS膜の除去速度は70%超加速し、SiN膜の除去速度は170%超加速した。
【0087】
実施例を含む、上で記載された本発明の実施態様は、本発明から作られ得る多くの実施態様のうち例示的なものである。プロセスの多くの他の構成を使用することができ、プロセスにおいて使用される材料は、具体的に開示されたもの以外の多くの材料から選択することができると理解される。
【国際調査報告】