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特表2023-505490TNFαおよびOX40Lを標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】TNFαおよびOX40Lを標的とする免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230202BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230202BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230202BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20230202BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
C07K16/24
C07K16/18
A61P37/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P1/04
A61P17/06
A61P37/06
A61K48/00
A61K31/7088
A61K39/395 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533408
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020084431
(87)【国際公開番号】W WO2021110817
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/944,661
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20305071.1
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517123807
【氏名又は名称】アブリンクス・エヌ・フェー
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハイディ・ロメラエレ
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブリジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーグリット・コルネリス
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】カレン・ハイニンク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クロイツベルク
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・レーウ
(72)【発明者】
【氏名】エリク・ローレン
(72)【発明者】
【氏名】オエゼン・セルジャン・アルプ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトルート・ジーベンホルン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD06
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA77X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB06
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA68
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB15
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本技術の目的は、自己免疫性または炎症性疾患を罹患している対象を治療するための新規タイプの薬物を提供することである。具体的には、本技術は、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むポリペプチドであって、少なくとも2つのISVDはTNFαに結合し、少なくとも2つのISVDはOX40Lに結合することを特徴とするポリペプチドを提供する。また、本技術は、核酸、ベクター、および組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド、該ポリペプチドを含む組成物、または該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、該ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはからなり、該ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a.第1のISVDおよび第2のISVDは各々、OX40Lに特異的に結合し、各々は、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号13と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み;
b.第3のISVDおよび第4のISVDは各々、TNF-αに特異的に結合し、各々は、
iv.配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号14と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含む、前記ペプチド、前記ポリペプチドを含む組成物、または前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物。
【請求項2】
a.前記第1のISVDおよび前記第2のISVDは各々、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;
b.前記第3のISVDおよび前記第4のISVDは各々、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項1に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項3】
a.前記第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%よりも高い配列同一性を含み;
b.前記第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%よりも高い配列同一性を含み;
c.前記第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%よりも高い配列同一性を含み;
d.前記第4のISVDのアミノ酸配列は、配列番号6と90%よりも高い配列同一性を含む、請求項1または2に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項4】
a.前記第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b.前記第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列を含み;
c.前記第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列を含み;
d.前記第4のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットをさらに含み、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットを有していない対応するポリペプチドと比較して半減期の増加を前記ポリペプチドに提供する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項6】
半減期の増加を前記ポリペプチドに提供する前記1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンのような)または血清免疫グロブリン(IgGのような)に結合することができる結合ユニットからなる群から選択される、請求項4または5に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項7】
半減期の増加を前記ポリペプチドに提供する前記結合ユニットは、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、請求項6に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項8】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号15と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含む、請求項7に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項9】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、請求項7または8に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項10】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%よりも高い配列同一性を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項11】
前記ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列を含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と90%よりも高い配列同一性を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはからなる、請求項1~12のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
核酸であって、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む前記核酸。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生するための方法であって、少なくとも、
a.好適な宿主細胞もしくは宿主生物にてまたは別の好適な発現系にて、請求項14に記載の核酸を発現させる工程;場合により、続いて:
b.請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を含む前記方法。
【請求項17】
組成物であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチドまたは請求項14に記載の核酸を含む前記組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤、および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
薬剤として使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項17もしくは18に記載の組成物。
【請求項20】
自己免疫性または炎症性疾患の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチド、または請求項17もしくは18に記載の組成物。
【請求項21】
前記自己免疫性または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、および移植片対宿主病から選択される、請求項20に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【請求項22】
自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬学的活性量のポリペプチドまたは請求項17もしくは18に記載の組成物を投与することを含む前記方法。
【請求項23】
前記自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、および移植片対宿主病から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための医薬組成物の調製における、請求項1~13のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは請求項17もしくは18に記載の組成物の使用。
【請求項25】
前記自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、移植片対宿主病から選択される、請求項24に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 本技術の分野
本技術は、TNFαおよびOX40Lを標的とするポリペプチドに関する。また、本技術は、ポリペプチドをコードする核酸分子および核酸を含むベクターに、ならびにポリペプチド、核酸、またはベクターを含む組成物に関する。本技術は、自己免疫性または炎症性疾患に罹患している対象を治療するための方法で使用するためのこうした産物にさらに関する。さらに、本技術は、こうした産物を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2 技術的背景
自己免疫性または炎症性疾患は、身体が自身の組織に対して引き起こす免疫応答の結果である。自己免疫性または炎症性疾患は、慢性であることが多く、生命を脅かす可能性さえある。自己免疫性または炎症性疾患としては、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、ならびに化膿性汗腺炎が挙げられる。クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、腸炎症およびそれに付随する上皮外傷を伴う慢性炎症性疾患である。乾癬、乾癬性関節炎、および化膿性汗腺炎などの他の慢性自己免疫性疾患は、皮膚の赤班、皮膚の乾燥、皮膚のかゆみ、もしくは鱗屑性皮膚、関節の疼痛性炎症、または炎症を起こし腫れた皮膚のしこりにより特徴付けられる。乾癬を罹患している患者は、糖尿病、およびクローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、およびがんを含むある特定の併存疾患を有する可能性が高いことが見出されている。
【0003】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、主に単球およびマクロファージにより産生されるホモ三量体サイトカインであるが、CD4およびCD8末梢血Tリンパ球により分泌されることも知られている。TNFαは、可溶型タンパク質または膜貫通型タンパク質として存在することができる。TNFαの主要な役割は、免疫細胞の調節である。TNFαは、内因性パイロジェンとして作用し、その産生の調節不全は、関節リウマチ(RA)、乾癬(Pso)、化膿性汗腺炎(HS)、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)などの炎症性腸疾患(IBD)、ならびに移植片対宿主病(GVHD)を含む、様々なヒト疾患に関与することが示唆されている。
【0004】
RAおよびIBD炎症性腸疾患に対してFDAにより現在承認されている治療としては、抗TNFαバイオ医薬品(Simponi(登録商標)[ゴリムマブ]、Enbrel(登録商標)[エタネルセプト]、Remicade(登録商標)[インフリキシマブ]、Humira(登録商標)[アダリムマブ]など)が挙げられる。しかしながら、RAに対する現行の抗TNFα治療は、少数の患者において完全な疾患寛解を示すに過ぎず、非応答者のかなりの部分が依然としてとり残されている。同様に、炎症性腸疾患に対する現行の抗TNFα治療は、患者の大部分が、現在利用可能な治療に対して非応答性であることに直面しており、抗TNFα治療に対する応答の喪失は、12か月間治療した後の患者に高い割合で生じる。乾癬および乾癬性関節炎の場合、Remicade(登録商標)[インフリキシマブ]およびHumira(登録商標)[アダリムマブ]を含むバイオ医薬品で治療される患者は、ほんの少数である。現行の治療は、少なくとも患者のサブセットにおいて、乾癬治療にある程度の効能を有することが示されている。
【0005】
このように、例えば、関節リウマチまたは乾癬性関節炎などの自己免疫性疾患の場合、これまでのところ、疾患寛解に関してかなりの割合の患者において十分な効能を呈するバイオ医薬品は存在しておらず、応答の欠如または喪失は依然として問題である。
【0006】
OX40L(CD252またはTNFSF4としても知られている)は、TNFスーパーファミリーのメンバーであり、OX40受容体(CD134またはTNFRSF4としても知られている)の誘導性共刺激リガンドである。OX40Lは、樹状細胞、マクロファージ、およびB細胞を含む、活性化抗原提示細胞(APC)で主に発現される。その一方で、OX40は、活性化T細胞およびナチュラルキラーT細胞で多くが発現される。OX40Lは、膜結合分子として発現されることがほとんどであるが、切断可溶型で検出される場合もある。OX40L/OX40は、免疫応答を組織化する活性化T細胞により特徴付けられる少なからぬ疾患における免疫共刺激調節因子として認識されている。それにより、OX40を介したシグナル伝達が誘発され、炎症性サイトカインの産生および放出、エフェクターT細胞(例えば、TH1、TH2、TH17)および細胞傷害性T細胞の拡大増殖および蓄積、ならびにTreg細胞の抑制効能の減少を含む、一連の活性がもたらされる。幾つかの研究は、共刺激性OX40L/OX40軸が、RA、Pso、またはIBDなどの自己免疫性疾患に関与することを示唆しているが、現在、それらの治療に関してFDAが承認したOX-40Lバイオ医薬品は存在しない。
【0007】
複数疾患因子の標的化は、例えば、2つの別々のバイオ医薬品、例えば、異なる療法標的に結合する抗体の同時投与または組合せ使用により達成することができる。しかしながら、別々のバイオ医薬品の同時投与または組合せ使用は、実用的観点および商業的観点の両方で困難であり得る。例えば、別々の製品を2回注射することにより、治療レジメンが、患者にとってより不便でより苦痛を伴うものになり、服薬遵守に否定的な影響を及ぼす可能性がある。2つの別々の製品の単回注射に関しては、両製品が、必要とされる濃度および好適な安定性で許容可能な粘度であることを可能にする製剤を提供することは困難であるかまたは不可能である可能性がある。加えて、同時投与および同時製剤化には、2つの別々の薬物の生産が必要であり、そのため全体コストが増加する可能性がある。
【0008】
抗体などの別々のバイオ医薬品の同時投与または組合せ使用に関連するそのような制限に対処するための1つの戦略として、2つの異なる抗原に結合することができる二重特異性抗体が提案されている。
【0009】
複数の形式の二重特異性抗体構築物が提案されている。例えば、二重特異性抗体形式は、2つの抗体またはそれらの断片の化学的コンジュゲーションを含んでいてもよい(非特許文献1;非特許文献2)。
【0010】
しかしながら、そのような二重特異性抗体形式の不利な点としては、高濃度では高粘度であり、それにより例えば皮下投与が困難になること、ならびに各結合ユニットは、特異的高親和性結合のために2つの可変ドメインの相互作用を必要とし、そのためポリペプチドの安定性および産生効率に影響が及ぶことが挙げられる。そのような二重特異性抗体形式は、軽鎖の誤対合または重鎖の誤対合に関する化学、製造、および品質管理(CMC)の問題に結び付く可能性もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Brennan,Mら、Science、1985年 229巻(4708号):81~83頁
【非特許文献2】Glennie,M.J.ら、J Immunol、1987年 139巻(7号):2367~2375頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
3 本技術の概要
一部の実施形態では、本技術は、TNFαおよびOX40Lを同時に特異的に標的とし、単一特異性抗TNFαまたは抗OX40Lポリペプチドと比較して炎症応答の調節効率の増加に結び付くポリペプチド(またはISVD構築物)に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一部の実施形態では、本技術のポリペプチドは、効率的に産生され(例えば、微生物宿主にて)、皮下投与に有利で便利な高濃度において低粘度を有する。さらに、一部の実施形態では、本技術のポリペプチドは、治療しようとする対象の既存抗体(つまり、抗体構築物による最初の治療前に対象に存在する抗体)に対して反応性が限定的である。好ましい実施形態では、そのようなポリペプチドは、治療しようとする対象において、連続治療を都合良く離間させることができるような十分に長い半減期を呈する。
【0014】
本技術のポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはからなり、少なくとも2つのISVDはTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDはOX40Lに特異的に結合する。好ましくは、TNFαに結合する少なくとも2つのISVDは、ヒトTNFαに特異的に結合し、OX40Lに結合する少なくとも2つのISVDは、ヒトOX40Lに特異的に結合する。
【0015】
ポリペプチドは、好ましくは、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットをさらに含み、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットを有していない対応するポリペプチドと比較して半減期の増加をポリペプチドに提供する。例えば、結合ユニットは、血清タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンなどのヒト血清タンパク質に結合するISVDであってもよい。
【0016】
本技術のポリペプチドを発現することが可能な核酸分子、核酸または核酸を含むベクター、およびポリペプチド、核酸、またはベクターを含む組成物も提供される。組成物は、好ましくは医薬組成物である。
【0017】
本技術によるポリペプチドをコードする核酸またはベクターを含む宿主または宿主細胞も提供される。
【0018】
本技術によるポリペプチドを産生するための方法であって、
a.場合により、好適な宿主細胞もしくは宿主生物にてまたは別の好適な発現系にて、本技術によるポリペプチドをコードする核酸配列を発現させる工程、場合により、続いて:
b.本技術によるポリペプチドを単離および/または精製する工程
を少なくとも含む方法がさらに提供される。
【0019】
さらに、本技術は、薬剤として使用するための、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸もしくはベクターを含む組成物を提供する。好ましくは、ポリペプチドまたは組成物は、自己免疫性または炎症性疾患の治療に使用するためのものであり、好ましくは、自己免疫性または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、移植片対宿主病から選択される。
【0020】
加えて、自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、本技術による薬学的活性量のポリペプチドまたは組成物を投与することを含む方法が提供される。自己免疫性疾患または炎症性疾患は、好ましくは、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、ならびに化膿性汗腺炎から選択される。好ましい実施形態では、この方法は、メトトレキサートなどの1つまたはそれ以上の追加の療法剤を投与することをさらに含む。
【0021】
自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための医薬組成物の調製における、本技術のポリペプチドまたは組成物の使用であって、自己免疫性疾患または炎症性疾患は、好ましくは、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、移植片対宿主病から選択される、使用がさらに提供される。
【0022】
特に、本技術は、以下の実施形態を提供する:
実施形態1:薬剤として使用するための、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であって、ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはからなり、ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a.第1のISVDおよび第2のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号13と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み;
b.第3のISVDおよび第4のISVDは、
iv.配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号14と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から始めた順序である、ポリペプチド、ポリペプチドを含む組成物、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物。
【0023】
実施形態2:少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤、および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、実施形態1に記載の使用のための組成物。
【0024】
実施形態3:
a.第1のISVDおよび第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;
b.第3のISVDおよび第4のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、実施形態1または2に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0025】
実施形態4:
a.第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%よりも高い配列同一性を含み;
b.第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%よりも高い配列同一性を含み;
c.第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%よりも高い配列同一性を含み;
d.第4のISVDのアミノ酸配列は、配列番号6と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態1~3のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0026】
実施形態5:
a.第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b.第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列を含み;
c.第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列を含み;
d.第4のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態1~4のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0027】
実施形態6:ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットをさらに含み、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットを有していない対応するポリペプチドと比較して半減期の増加をポリペプチドに提供する、実施形態1~5のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0028】
実施形態7:半減期の増加をポリペプチドに提供する1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合ユニット、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小型タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態6に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0029】
実施形態8:半減期の増加をポリペプチドに提供する1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)または血清免疫グロブリン(IgGなど)に結合することができる結合ユニットからなる群から選択される、実施形態6または7に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0030】
実施形態9:半減期の増加をポリペプチドに提供する結合ユニットは、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、実施形態8に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0031】
実施形態10:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号15と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含む、実施形態9に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0032】
実施形態11:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、実施形態9または10に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0033】
実施形態12:ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態9~11のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0034】
実施形態13:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態9~12のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0035】
実施形態14:ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態1~13のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0036】
実施形態15:ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはからなる、実施形態1~14のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0037】
実施形態16:自己免疫性または炎症性疾患の治療に使用するための、実施形態1~15のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0038】
実施形態17:自己免疫性または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、ならびに移植片対宿主病から選択される、実施形態16に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0039】
実施形態18:ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むポリペプチドであって、ポリペプチドは、少なくとも4つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)を含むかまたはからなり、ISVDの各々は、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)を含み;
a.第1のISVDおよび第2のISVDは、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号13と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み;
b.第3のISVDおよび第4のISVDは、
iv.配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
v.配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
vi.配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号14と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、
ISVDは、N末端から始めた順序である、ポリペプチド。
【0040】
実施形態19:
a.第1のISVDおよび第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を含み;
b.第3のISVDおよび第4のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、実施形態18に記載のポリペプチド。
【0041】
実施形態20:
a.第1のISVDのアミノ酸配列は、配列番号2と90%よりも高い配列同一性を含み;
b.第2のISVDのアミノ酸配列は、配列番号3と90%よりも高い配列同一性を含み;
c.第3のISVDのアミノ酸配列は、配列番号4と90%よりも高い配列同一性を含み;
d.第4のISVDのアミノ酸配列は、配列番号6と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態18または19に記載のポリペプチド。
【0042】
実施形態21:
a.第1のISVDは、配列番号2のアミノ酸配列を含み;
b.第2のISVDは、配列番号3のアミノ酸配列を含み;
c.第3のISVDは、配列番号4のアミノ酸配列を含み;
d.第4のISVDは、配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態18~20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0043】
実施形態22:ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットをさらに含み、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットを有していない対応するポリペプチドと比較して半減期の増加をポリペプチドに提供する、実施形態18~21のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0044】
実施形態23:半減期の増加をポリペプチドに提供する1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合ユニット、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小型タンパク質またはペプチドからなる群から選択される、実施形態22に記載のポリペプチド。
【0045】
実施形態24:半減期の増加をポリペプチドに提供する1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、血清アルブミン(ヒト血清アルブミンなど)または血清免疫グロブリン(IgGなど)に結合することができる結合ユニットからなる群から選択される、実施形態22または23に記載のポリペプチド。
【0046】
実施形態25:半減期の増加をポリペプチドに提供する結合ユニットは、ヒト血清アルブミンに結合することができるISVDである、実施形態24に記載のポリペプチド。
【0047】
実施形態26:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号15と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含む、実施形態25に記載のポリペプチド。
【0048】
実施形態27:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む、実施形態25または26に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0049】
実施形態28:ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態25~27のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0050】
実施形態29:ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号5のアミノ酸配列を含む、実施形態25~28のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0051】
実施形態30:ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1と90%よりも高い配列同一性を含む、実施形態18~29のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【0052】
実施形態31:ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはからなる、実施形態18~30のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチドまたは組成物。
【0053】
実施形態32:実施形態18~31のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【0054】
実施形態33:実施形態32に記載の核酸を含む宿主または宿主細胞。
【0055】
実施形態34:実施形態18~31のいずれか1項に記載のポリペプチドを産生するための方法であって、
a.好適な宿主細胞もしくは宿主生物にてまたは別の好適な発現系にて、実施形態32に記載の核酸を発現させる工程;場合により、続いて:
b.実施形態18~31のいずれか1項に記載のポリペプチドを単離および/または精製する工程
を少なくとも含む方法。
【0056】
実施形態35:実施形態18~31のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチドまたは実施形態32に記載の核酸を含む組成物。
【0057】
実施形態36:少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤、および/またはアジュバントをさらに含み、場合により1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含む医薬組成物である、実施形態35に記載の組成物。
【0058】
実施形態37:自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に、実施形態18~31のいずれか1項に記載の薬学的活性量のポリペプチドまたは実施形態35もしくは36に記載の組成物を投与することを含む方法。
【0059】
実施形態38:自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、移植片対宿主病から選択される、実施形態37に記載の方法。
【0060】
実施形態39:1つまたはそれ以上の追加の療法剤を投与することをさらに含む、実施形態37または38に記載の方法。
【0061】
実施形態40:追加の療法剤は、メトトレキサートである、実施形態39に記載の方法。
【0062】
実施形態41:自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための医薬組成物の調製における、実施形態18~31のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは実施形態35もしくは36に記載の組成物の使用。
【0063】
実施形態42:自己免疫性疾患または炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、化膿性汗腺炎、移植片対宿主病から選択される、実施形態41に記載のポリペプチドまたは組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】HSAにより捕捉されたISVD構築物F027300252に対する組換え可溶性hTNFαおよびhOX40Lの同時結合を示すセンサーグラムを示す図である。
図2】ヒトOX40Lを発現するCHO-Ki細胞に対するフローサイトメトリーにより示された、ISVD構築物F027300252に対する可溶性TNFαおよび膜結合hOX40Lの同時結合を示す図である。IRR00096は、陰性対照VHHである。
図3】Glo response(商標)HEK293_NFκB-NLucPレポーターアッセイにおける、ISVD構築物F0275000252および参照化合物抗hTNFα参照mAbによる可溶性ヒトおよびカニクイザルTNFαの阻害を示す図である。IRR00096は、陰性対照VHHである。
図4】PBMC活性アッセイで測定された、ISVD構築物F0275000252および参照化合物抗hOX40L mAbによる膜結合OX40Lの阻害を示す図である。
図5】5ng/mlの組換えヒトTNFαまたは100ng/mlのヒトOX40Lまたは両者の組合せによるルシフェラーゼ活性[RLU]の誘導、および0.5μg/ml~5μg/mlの様々な濃度の抗TNFα抗体(PB03017;Sanofiから)、抗OX40L抗体(カタログ番号AB00536、Absolute Antibodyから)、または両抗体の組合せによる誘導ルシフェラーゼ活性の阻害を示す図である。
図6】組換えヒトTNFαおよびヒトOX40Lの組合せによるルシフェラーゼ活性[RLU]の誘導(図5で説明した通り)、ならびに単一特異性抗OX40L VHH ALX-0632または単一特異性抗TNF VHH ATN-103、または抗TNF/抗OX40L二重特異性ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199による誘導ルシフェラーゼ活性の阻害を示す図である。二重特異性または単一特異性ISVD構築物/VHHにより達成されたNFκBルシフェラーゼ活性の最大阻害%が示されている。
図7】組換えヒトTNFαおよびヒトOX40Lの組合せによるルシフェラーゼ活性の誘導(図5で説明の通り)、ならびに抗TNF/抗OX40L二重特異性ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199による誘導ルシフェラーゼ活性の阻害を示す図である。少なくとも3回の独立実験の平均IC50値(pM)±SDである。
図8】成熟の1、2、および3日目におけるヒト単球由来樹状細胞でのOX40Lの表面発現を示す図である。OX40Lの発現をフローサイトメトリーにより測定した。結果は、5人の同種異系ドナーに由来するPBMCに対して試験した3人の異なるヒトmDCドナーの平均±SEMに対応する。
図9】5日目のMLRアッセイにおけるGM-CSF発現を示す図である。GM-CSFの分泌は、抗TNFa抗体単独[10μg/ml]または抗OX40L抗体単独[10μg/ml]または抗TNF[10μg/ml]抗体+抗OX40L[10μg/ml]抗体の組合せとのインキュベーション後、MLRアッセイの上清にて測定した。3人の同種異系DCドナーに由来するDCに対して試験した5人のPBMCドナーの結果。**p<0.0016、****p<0.0001。
図10】対照ISVD構築物F027301099およびF027301186と比較した、ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、およびF027301197に対する、96個のヒト血清試料に存在する既存抗体の結合を示すボックスプロットを示す図である。
図11】ISVD構築物F027300028、F027300252、F027301097、およびF027301186に対する、96個のヒト血清試料に存在する既存抗体の結合を示すボックスプロットを示す図である。
図12】異なる治療群(n=8マウス/群)での経時的関節炎スコア示す図である。動物は、6週齢から開始して週2回、標記化合物の腹腔内注射を受けた。週平均関節炎スコア±SEMが示されている。統計は、二元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。ns(有意ではない)p>0.05、p<0.05、**p<0.01。***p<0.001、****p<0.0001。
図13】経時的関節炎スコアの曲線下面積を示す図である。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)が示されている。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。ns(有意ではない)p>0.05、p<0.05、**p<0.01。***p<0.001、****p<0.0001。
図14】組織学スコアを示す図である。個々の値(記号)および平均±SEM(バー)が示されている。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図15】TNFαヒト化マウスコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)モデルにおける、抗TNFa-OX40L ISVD構築物F027300252(nAbと呼ぶ)の効能を試験するための研究設計を示す図である。抗hTNFα参照mAbは、ISVD構築物と同時に投薬し、1回目の用量はLPSの6時間後、2回目の用量はLPSの3日後である4日目だった。
図16】CAIAのマウスモデルにおける実験の経時的関節炎スコア進展を示す図である(ビヒクルを除いてn=8マウス/群:2つの独立実験からのn=16/群)。動物は、図10のスキームに従って、ビヒクル、参照化合物抗hTNFα参照mAb、または半減期延長抗TNFa-OX40L ISVD構築物F027300252のいずれかの腹腔内注射を2回受けた。統計は、二元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図17】CAIAのマウスモデルにおける実験の関節炎スコアのAUCを示す図である(ビヒクルを除いてn=8マウス/群:2つの独立実験からのn=16/群)。
図18】TDAR-DTH組合せモデルの研究スキームを示す図である。日単位の時間経過の上部にある薄灰色ボックスは、研究のTDAR部分のKLH投与を示す。濃灰色ボックスは、研究のDTH部分の水酸化アルミニウム(ALU)による第2の抗原テタノイド毒素(TTx)の筋肉内注射を標記する。時間経過の上部にある白色ボックスは、31日目および56日目でのTTx/ALUおよびKLHによる皮膚負荷を標記し、DTHモデルは暗色矢印である。組織病理学および免疫組織化学について評価した皮膚生検は34日目に、剖検は59日目に示されている。TTx/ALUおよびKLH負荷後、皮膚領域を、各DTH負荷ごとに24/48/72時間経過観察して、表15に記載のように生存中変化を評価した。
図19】1日目および29日目に3、10、30、100(mg/kg/adm)で雌サルに対して皮下投与した後のF027300252の平均血清濃度(ng/mL)を示す図である(片対数目盛りプロット)。
図20】抗KLH IgG応答に焦点を当てた、カニクイザルTDARの抗KLH応答を示す図である。各群に4匹のカニクイザルを使用した。データは平均±SDとして図示されている。D3(3日目)およびd31(31日目)は、KLH刺激の時点を標記する。一次応答は、BL(-12D)~30日目(30D)の時間枠にわたり、二次応答は31日目(31D)~研究終了の59日目(59D)の時間枠にわたる。F027300252を、週1回の皮下注射により3mg/kg~100mg/kgの用量依存的様式で投与した。治療は、29日目の5回目の注射で中止した。統計は、二元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定であり、二次応答に適用した。一次応答中は、すべて治療群でビヒクルとの有意差はない。
図21】4mg/kgの抗hTNFα参照mAbおよび8mg/kgの抗hOX40L参照mAbのビヒクル(予備研究)からの、ならびにTDARサル研究でのF027300252の異なる用量レベル(3、10、30、および100mg/kg)からの、34日目~59日目におけるTDARの二次応答中の抗KLH IgG AUCのパーセンテージによる平均低減を示す図である。用量は1kg当たりのnmolで表した。
図22】ELISPOTアッセイにより決定した、59日目における、PBMCのKLH再刺激後のIFN-γスポット形成細胞/百万個細胞を示す図である。バーは平均値±SDを表す。個々の動物は、黒丸(ビヒクル対照)または白丸(F027300252治療群)のいずれかで図示されている。F027300252の場合、それぞれの用量は、mg/kgで提供されている。1匹の動物に30mg/kgを投与した群では、アッセイは、品質管理基準を満たさなかったため、4匹中3匹のみが示されている。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図23】ELISPOTアッセイにより決定した、59日目における、PBMCのKLH再刺激後のIL-4スポット形成細胞/百万個細胞を示す図である。バーは平均値±SDを表す。個々の動物は、黒丸(ビヒクル対照)または白丸(F027300252治療群)のいずれかで図示されている。F027300252の場合、それぞれの用量は、mg/kgで提供されている。1匹の動物に30mg/kgを投与した群では、アッセイは、品質管理基準を満たさなかったため、4匹中3匹のみが示されている。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図24】ポンチ絵の左側のTDAR(薄灰色)およびDTH(暗灰色)のいずれかに関する様々な免疫処置の概略図である。DTHの場合、31日目または59日目のいずれかにて、それぞれTTX/ALUおよびKLHを動物に負荷した。中央のポンチ絵に図示されているように、異なる皮内注射部位を使用した。直径8mmの生検を、34日目および59日目の研究終了時に採取し、組織病理学および免疫組織化学により評価した(ポンチ絵の右側部分)。
図25】異種GVHDマウスモデルにおける経時的なGVHDスコア進展を示す図である。データは平均±SEMとして図示されている。N=7、2人の異なるhPBMCドナー。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図26】異種GVHDマウスモデルにおける経時的生存率を示す図である。データは、カプランマイヤー生存曲線として図示されている。n=7、2人の異なるhPBMCドナー。生存率データは、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用して分析した。P値は、多重比較のために補正した。
図27】レシピエントNSGマウスにおけるhPBMCの生着を示す図である。データは平均±SEMとして図示されている。n=7、2人の異なるhPBMCドナー。カプラン生着データは、混合効果分析およびボンフェローニ多重比較検定を使用して分析した。
図28】異種GVHDマウスモデルにおける経時的GVHDスコア進展を示す図である。データは平均±SEMとして図示されている。結果は、2つの独立研究からプールしたものである。n=7~12、3人の異なるhPBMCドナー。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
図29】異種GVHDマウスモデルにおける経時的生存率を示す図である。データは、カプランマイヤー生存曲線として図示されている。結果は、2つの独立研究からプールしたものである。n=7~12、3人の異なるhPBMCドナー。生存率データは、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用して分析した。P値は、多重比較のために補正した。
図30】宿主NSGマウスにおけるhPBMCの生着を示す図である。データは平均±SEMとして図示されている。結果は、2つの独立研究からプールしたものである。n=7~12、3人の異なるhPBMCドナー。生着データは、混合効果分析およびボンフェローニ多重比較検定を使用して分析した。
図31】単一特異性抗TNFモノクローナル抗体RA14956298、および二重特異性抗TNFα/抗OX40L ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199による、ヒト全血でのPHA誘導性IL-8放出の阻害を示す図である。値は、平均IC50[nM]±SEMに対応し、各々三重重複測定による3人の異なるドナーの結果を表す。
図32】9GSリンカーを介して接続された一価構築単位/ISVD 1E07/1、1C02/1、およびALB23002がN末端からC末端へと示されているISVD構築物F027300252の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
5.本技術の詳細な説明
本技術の目的は、自己免疫性または炎症性疾患を治療するための新規タイプの薬物を提供することである。
【0066】
本発明者らは、驚くべきことに、少なくとも4つのISVDを含むポリペプチドであって、少なくとも2つのISVDは、TNFα、好ましくはヒトTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDは、OX40L、好ましくはヒトOX40Lに特異的に結合する、ポリペプチドを、単一特異性抗TNFαまたは抗OX40Lポリペプチドと比較して、自己免疫性または炎症性疾患のより効率的な治療のために使用することができることを見出した。一部の実施形態では、本技術のポリペプチドは、効率的に産生され(例えば、微生物宿主にて)、皮下投与に有利で便利な高濃度において低粘度を示した。さらに、そのようなポリペプチドは、治療しようとする対象の既存抗体(つまり、抗体構築物による最初の治療前に対象に存在する抗体)に対して反応性が限定的である。好ましい実施形態では、そのようなポリペプチドは、治療しようとする対象において、連続治療を都合良く離間させることができるような十分に長い半減期を呈する。
【0067】
ポリペプチドは、少なくとも二重特異性であるが、例えば、三重特異性、四重特異性、または五重特異性であってもよい。さらに、ポリペプチドは、少なくとも4価であるが、例えば。5価または6価などであってもよい。
【0068】
「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」、または「五重特異性」という用語はすべて「多重特異性」という用語のうちに入り、それぞれ、2、3、4、または5つの異なる標的分子に結合することを指す。「二価」、「三価」、「四価」、「五価」、または「六価」という用語はすべて「多価」という用語のうちに入り、それぞれ、2、3、4、または5つの結合ユニット(ISVDなど)の存在を示す。例えば、ポリペプチドは、2つのISVDがヒトTNFαに結合し、2つのISVDがヒトOX40Lに結合し、1つのISVDがヒト血清アルブミンに結合する5つのISVDを含むかまたはからなるポリペプチド(ISVD構築物F027300252など)など、三重特異性五価であってもよい。そのようなポリペプチドは、例えば、2つのISVDがヒトTNFαまたはヒトOX40Lにある2つの異なるエピトープに結合する場合、同時に二重パラトープ性であり得る。「二重パラトープ性」という用語は、同じ標的分子の2つの異なる部分(例えば、エピトープ)に結合することを指す。
【0069】
「第1のISVD」、「第2のISVD」、「第3のISVD」などの用語は、本明細書で使用される場合、ISVDの互いに対する相対位置を示すに過ぎず、付番は、本技術のポリペプチドのN末端から始まる。したがって、「第1のISVD」は、「第2のISVD」よりもN末端に近く、「第2のISVD」は、「第3のISVD」よりもN末端に近いなどである。したがって、ISVD配置は、C末端からであるとみなす場合、逆になる。付番は絶対的ではなく、少なくとも3つのISVDの相対位置を示すに過ぎないため、TNFαもしくはOX40Lに結合する追加のISVDまたは別の標的に結合するISVDなどの他の結合ユニット/構築単位がポリペプチドに存在してもよいことを除外しない。さらに、ISVDなどの他の結合ユニット/構築単位を間に配置することができる可能性を排除しない。例えば、下記でさらに記載されているように(特に、セクション5.3「(in vivo)半減期延長」を参照)、ポリペプチドは、例えば、「第2のISVD」と「第3のISVD」との間に位置することが可能でさえある、ヒト血清アルブミンに結合する別のISVDをさらに含んでいてもよい。
【0070】
上記に照らして、本技術は、少なくとも4つのISVDを含むかまたはからなるポリペプチドであって、少なくとも2つのISVDはTNFαに特異的に結合し、少なくとも2つのISVDはOX40Lに特異的に結合し、TNFαおよびOX40Lは、好ましくはヒトTNFαおよびヒトOX40Lである、ポリペプチドを提供する。
【0071】
ポリペプチドの成分、好ましくはISVDは、ペプチドリンカーなどの1つまたはそれ以上の好適なリンカーにより互いに連結されていてもよい。
【0072】
2つまたはそれ以上の(ポリ)ペプチドを接続するためのリンカーの使用は、当技術分野で周知である。例示的なペプチドリンカーは、表A-5に示されている。ペプチドリンカーの1つのよく使用されるクラスは、「Gly-Ser」または「GS」リンカーとして知られている。これらは、グリシン(G)およびセリン(S)残基から本質的になるリンカーであり、通常は、GGGGS(配列番号60)モチーフなどのペプチドモチーフの1つまたはそれ以上の繰り返しを含む(例えば、式(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)を含み、式中nは、1、2、3、4、5、6、7、またはそれよりも大きい)。そのようなGSリンカーの一部のよく使用される例は、9GSリンカー(GGGGSGGGS、配列番号63)、15GSリンカー(n=3)、および35GSリンカー(n=7)である。例えば、Chenら、Adv.Drug Deliv.Rev.2013年10月15日;65巻(10号):1357~1369頁;およびKleinら、Protein Eng.Des.Sel.(2014年)27巻(10号):325~330頁を参照されたい。本技術のポリペプチドでは、ポリペプチドの成分を互いに連結するための9GSリンカーの使用が好ましい。
【0073】
好ましい実施形態では、TNFαに特異的に結合する少なくとも2つのISVDのうちの2つは、ポリペプチドのC末端に位置決めされている。本発明者らは、驚くべきことに、そのような構成がポリペプチドの産生収量を増加させることができることを見出した。
【0074】
また、好ましい実施形態では、OX40Lに特異的に結合する少なくとも2つのISVDのうちの2つは、ポリペプチドのN末端に位置決めされている。
【0075】
したがって、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から始まる順序で、OX40Lに特異的に結合する第1のISVD、OX40Lに特異的に結合する第2のISVD、TNFαに特異的に結合する第1のISVD、本明細書で規定の通りの、半減期の増加をポリペプチドに提供する任意選択の結合ユニット、およびTNFαに特異的に結合する第2のISVDを含むかまたはからなることが好ましい。半減期の増加をポリペプチドに提供する結合ユニットは、好ましくはISVDである。
【0076】
ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端から始まる順序で、以下のもの:OX40Lに特異的に結合するISVD、リンカー、OX40Lに特異的に結合する第2のISVD、リンカー、TNFαに特異的に結合する第1のISVD、リンカー、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するISVD、リンカー、およびTNFαに特異的に結合する第2のISVDを含むかまたはからなり、各リンカーは、好ましくは9GSリンカーであることがさらに好ましい。
【0077】
ポリペプチドのそのような構成は、産生収量の増加、良好なCMC特徴、ならびに免疫応答の調節に関する機能性の最適化およびより強力な効力を提供することができる。
【0078】
好ましくは、本技術のポリペプチドは、ヒト血清中の既存抗体による結合の低減を呈する。この目的のため、一実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVDにおいて、しかしながら好ましくは各ISVDにおいて、アミノ酸11位にバリン(V)およびアミノ酸89位にロイシン(L)を含む(カバット付番による)。別の実施形態では、ポリペプチドは、C末端ISVDのC末端に、単一アラニン(A)伸長など、1~5つの(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長を含む。ISVDのC末端は、通常、VTVSS(配列番号125)である。別の実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つのISVDの110位(カバット付番による)にリジン(K)またはグルタミン(Q)を含む。別の実施形態では、ISVDは、少なくとも1つのISVDの112位(カバット付番による)にリジン(K)またはグルタミン(Q)を含む。こうした実施形態では、ISVDのC末端は、VKVSS(配列番号126)、VQVSS(配列番号127)、VTVKS(配列番号131)、VTVQS(配列番号132)、VKVKS(配列番号133)、VKVQS(配列番号134)、VQVKS(配列番号135)、またはVQVQS(配列番号136)であり、したがって単一アラニンを付加した後のポリペプチドのC末端は、例えば、配列VTVSSA(配列番号128)、VKVSSA(配列番号129)、VQVSSA(配列番号130)、VTVKSA(配列番号137)、VTVQSA(配列番号138)、VKVKSA(配列番号139)、VKVQSA(配列番号140)、VQVKSA(配列番号141)、またはVQVQSA(配列番号142)、好ましくはVKVSSA(配列番号129)を含む。
別の実施形態では、ポリペプチドは、各ISVDのアミノ酸11位にバリン(V)およびアミノ酸89位にロイシン(L)(カバット付番による)、場合により少なくとも1つのISVDの110位(カバット付番による)にリジン(K)またはグルタミン(Q)を含み、C末端ISVDのC末端に、単一アラニン(A)伸長など、1~5つの(好ましくは天然に存在する)アミノ酸の伸長を含む(したがって、ポリペプチドのC末端は、例えば、配列VTVSSA(配列番号128)、VKVSSA(配列番号129)、またはVQVSSA(配列番号130)、好ましくはVKVSSA(配列番号129)を含む)。この点に関するさらなる情報については、例えば、国際公開第2012/175741号パンフレットおよび国際公開第2015/173325号パンフレットを参照されたい。
【0079】
好ましい実施形態では、本技術のポリペプチドは、配列番号1と、95%よりも高いまたは99%よりも高いなど、90%よりも高い配列同一性を含むアミノ酸配列を含むかまたはからなり、場合により、5つのISVDのCDRは、それぞれ、下記の「5.1 免疫グロブリン単一可変ドメイン」および「5.3 (in vivo)半減期延長」のセクションに示されている項目A~C(またはカバット規定を使用する場合はA’~C’)に規定されている通りであり、特に、
・ OX40Lに特異的に結合する第1のおよび第2のISVDは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を有し;
・ TNFαに特異的に結合する第3のおよび第4のISVDは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を有し;
・ ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含むか、
またはその代わりに、カバット規定を使用する場合は、
・ OX40Lに特異的に結合する第1のおよび第2のISVDは、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を有し;
・ TNFαに特異的に結合する第3のおよび第4のISVDは、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を有し;
・ ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含む。
【0080】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはからなる。最も好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなる。
【0081】
本技術のポリペプチドは、ヒトTNFαおよびヒトOX40Lに対して、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較して、好ましくは少なくとも半分の結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、親和性は、Sierra SPR-32(SPR)など、同じ方法を使用して測定される。
【0082】
5.1 免疫グロブリン単一可変ドメイン
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」(ISVD)という用語は、「単一可変ドメイン」と同義的に使用され、抗原結合部位が、単一の免疫グロブリンドメインに存在し、それにより形成される、免疫グロブリン分子を規定する。これにより、免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン(モノクローナル抗体など)またはそれらの断片(Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、di-scFvなど)とは別に設定される。典型的には、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(V)および軽鎖可変ドメイン(V)が相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合、VおよびVの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与することになり、つまり、合計6つのCDRが抗原結合部位形成に関与することになる。
【0083】
上記の規定に照らして、従来の4本鎖抗体(IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE分子など;当技術分野で公知である)、またはFab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド連結FvもしくはscFv断片などのFv断片、またはそのような従来の4本鎖抗体に由来するダイアボディ(すべて当技術分野で公知である)の抗原結合性ドメインは、通常、免疫グロブリン単一可変ドメインとはみなされないだろう。というのは、こうした場合、抗原の対応するエピトープに対する結合は、通常、1つの(単一の)免疫グロブリンドメインによってではなく、軽鎖および重鎖可変ドメインなどの(関連する)免疫グロブリンドメインの対によって、つまり、対応する抗原のエピトープに一緒に結合する、免疫グロブリンドメインのV-Vによって生じることになるからである。
【0084】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、追加の免疫グロブリン可変ドメインと対合することなく、抗原のエピトープに特異的に結合することが可能である。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のV、単一のVHH、または単一のVドメインにより形成される。
【0085】
したがって、単一可変ドメインは、それが、単一の抗原結合性ドメイン(つまり、単一抗原結合性ドメインが、機能性抗原結合ユニットを形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がないように単一可変ドメインから本質的になる機能性抗原結合ユニット)を形成することが可能である限り、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)もしくはその好適な断片であってもよく;または重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列もしくはVHH配列)もしくはその好適な断片であってもよい。
【0086】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、例えば、ラクダ科動物化Vまたはヒト化VHHを含む、V、VHHなどの重鎖ISVDであってもよい。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISVD)は、ラクダ科動物化Vまたはヒト化VHHを含む、VHHである。重鎖ISVDは、従来の4本鎖抗体または重鎖抗体に由来してもよい。
【0087】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、単一ドメイン抗体(もしくは単一ドメイン抗体としての使用に好適なアミノ酸配列)、「dAb」もしくはdAb(もしくはdAbとしての使用に好適なアミノ酸配列)、またはNanobody(登録商標)(本明細書で規定の通りであり、VHHを含むがそれに限定されない);他の単一可変ドメイン、またはそれらのいずれかの1つの任意の好適な断片であってもよい。
【0088】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、Nanobody(登録商標)(ヒト化VHHまたはラクダ科動物化Vを含むVHHなど)またはその好適な断片であってもよい。Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)、およびNanoclone(登録商標)は、登録商標である。
【0089】
HH、VHH抗体断片、およびVHH抗体としても知られている「VHHドメイン」は、当初は、「重鎖抗体」の(つまり、「軽鎖を欠く抗体」の;Hamers-Castermanら、Nature 363巻:446~448頁、1993年)抗原結合性免疫グロブリン可変ドメインとして記載されていた。「VHHドメイン」という用語は、こうした可変ドメインを、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)および従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本明細書では「Vドメイン」と呼ばれる)と区別するために選択されている。VHHのさらなる説明は、Muyldermansによる総説論文(Reviews in Molecular Biotechnology 74巻:277~302頁、2001年)を参照されたい。
【0090】
典型的には、免疫グロブリンの生成は、実験動物を免疫処置すること、免疫グロブリン産生細胞を融合してハイブリドーマを作出すること、および所望の特異性についてスクリーニングすることを含む。その代わりに、免疫グロブリンは、例えば、ファージディスプレイにより、ナイーブまたは合成ライブラリーをスクリーニングすることにより生成することができる。
【0091】
Nanobodies(登録商標)などの免疫グロブリン配列の生成は、種々の文献に広範に記載されており、なかでも国際公開第94/04678号パンフレット、Hamers-Castermanら、1993年、およびMuyldermansら、2001年(Reviews in Molecular Biotechnology 74巻:277~302頁、2001年)を例示することができる。こうした方法では、標的抗原に対する免疫応答を誘導するために、その標的抗原でラクダ科動物を免疫処置する。免疫処置から得られたNanobodiesのレパートリーを、標的抗原に結合するNanobodiesについてさらにスクリーニングする。
【0092】
こうした場合では、抗体の生成には、免疫処置および/またはスクリーニングのための精製抗原が必要である。抗原は、天然供給源から精製してもよく、または組換え産生の過程で精製してもよい。
【0093】
免疫グロブリン配列の免疫処置および/またはスクリーニングは、そのような抗原のペプチド断片を使用して実施することができる。
【0094】
本技術では、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト、およびラクダ科動物の免疫グロブリン配列を含む、起源が異なる免疫グロブリン配列を使用することができる。また、本技術は、完全ヒト、ヒト化、またはキメラ配列を含む。例えば、本技術は、ラクダ科動物免疫グロブリン配列およびヒト化ラクダ科動物免疫グロブリン配列、またはラクダ科動物化ドメイン抗体、例えば、Wardらに記載のラクダ科動物化dAbを含む(例えば、国際公開第94/04678号パンフレットおよびRiechmann、Febs Lett.、339巻:285~290頁、1994年およびProt.Eng.、9巻:531~537頁、1996年を参照されたい)。さらに、本技術では、例えば、多価および/または多重特異性構築物を形成する融合免疫グロブリン配列(1つまたはそれ以上のVHHドメインを含む多価および多重特異性ポリペプチドおよびそれらの調製については、Conrathら、J.Biol.Chem.、276巻、10号、7346~7350頁、2001年、ならびに例えば国際公開第96/34103号パンフレットおよび国際公開第99/23221号パンフレットも参照)、ならびに本技術の免疫グロブリン配列から誘導可能な、タグまたは他の機能性部分、例えば、毒素、標識、放射性化学物質などを含む免疫グロブリン配列も使用される。
【0095】
「ヒト化VHH」は、天然に存在するVHHドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ヒト化」されている、つまり、天然に存在するVHH配列のアミノ酸配列(および特にフレームワーク配列)の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、ヒト由来の従来の4本鎖抗体(例えば、上記に示されているもの)に由来するVドメインの対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つまたはそれ以上で置換することによるアミノ酸配列を含む。これは、それ自体が公知の様式で実施することができ、当業者であれば、例えば、本明細書のさらなる説明および先行技術(例えば、国際公開第2008/020079号パンフレット)に基づき明らかであろう。この場合も、そのようなヒト化VHHは、それ自体が公知の任意の適切な様式で得ることができ、したがって、天然に存在するVHHドメインを含むポリペプチドを出発物質として使用して得られているポリペプチドに厳密に限定されるものではないことに留意されたい。
【0096】
「ラクダ科動物化V」は、天然に存在するVドメインのアミノ酸配列に対応するが、「ラクダ科動物化」されている、つまり、従来の4本鎖抗体に由来する天然に存在するV配列のアミノ酸配列の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVドメインの対応する位置に存在するアミノ酸残基の1つまたはそれ以上で置換することによるアミノ酸配列を含む。これは、それ自体が公知の様式で実施することができ、当業者であれば、例えば、本明細書のさらなる説明および先行技術(例えば、国際公開第2008/020079号パンフレット)に基づき、明らかであろう。そのような「ラクダ科動物化」置換は、好ましくは、V-V界面、および/または本明細書で規定のような、いわゆるラクダ科動物特徴的残基を形成するかおよび/またはそこに存在するアミノ酸位置に挿入される(例えば、国際公開第94/04678号パンフレットおよびDaviesおよびRiechmann(1994年および1996年)、前出を参照)。好ましくは、ラクダ科動物化Vを生成または設計するための出発物質または出発点として使用されるV配列は、好ましくは、V3配列などの、哺乳動物に由来するV配列、より好ましくはヒトのV配列である。しかしながら、そのようなラクダ科動物化Vは、それ自体が公知の任意の適切な様式で得ることができ、したがって、天然に存在するVドメインを含むポリペプチドを出発物質として使用して得られているポリペプチドに厳密に限定されるものではないことに留意されたい。
【0097】
1つまたはそれ以上の免疫グロブリン配列を、互いにおよび/または他のアミノ酸配列に連結して(例えば、ジスルフィド架橋により)、本技術においても有用であり得るペプチド構築物(例えば、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv構築物、「ダイアボディ」、および他の多重特異性構築物)を提供することができることに留意されたい。例えば、HolligerおよびHudson、Nat Biotechnol.2005年9月;23巻(9号):1126~36頁による総説を参照されたい。一般に、ポリペプチドが対象に投与するためのものである場合(例えば、予防的、療法的、および/または診断的目的のために)、ポリペプチドは、好ましくは、その対象では天然に生じない免疫グロブリン配列を含む。
【0098】
免疫グロブリン単一可変ドメイン配列の好ましい構造は、当技術分野および本明細書ではそれぞれ「フレームワーク領域1」(「FR1」);「フレームワーク領域2」(「FR2」);「フレームワーク領域3」(「FR3」);および「フレームワーク領域4」(「FR4」)と呼ばれる4つのフレームワーク領域(「FR」)であって、当技術分野および本明細書ではそれぞれ「相補性決定領域1」(「CDR1」);「相補性決定領域2」(「CDR2」);および「相補性決定領域3」(「CDR3」)と呼ばれる3つの相補性決定領域(「CDR」)により中断されているフレームワーク領域で構成されているとみなすことができる。
【0099】
国際公開第08/020079号パンフレットの58および59頁の段落q)でさらに説明されているように、免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸残基は、RiechmannおよびMuyldermans、2000年(J.Immunol.Methods 240巻(1~2号):185~195頁;例えば、この文献の図2を参照)の論文にて、ラクダ科動物に由来するVHHドメインに適用されているように、Kabatら(「Sequence of proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda、MD、Publication No.91)により示されるVドメインの基本付番に従って付番することができる。VドメインおよびVHHドメインに関して当技術分野で周知であるように、CDRの各々におけるアミノ酸残基の総数は様々であってもよく、カバット付番により示されるアミノ酸残基の総数に対応しない場合があることに留意されたい(つまり、カバット付番による1つまたはそれ以上の位置が、実際の配列では占有されていない場合があるか、実際の配列には、カバット付番で許容される数よりも多くのアミノ酸残基が含まれている場合がある)。これは、一般に、カバットによる付番が、実際の配列のアミノ酸残基の実際の付番に対応する場合もありまたは対応しない場合もあることを意味する。VドメインおよびVHHドメインのアミノ酸残基の総数は、通常は110~120の範囲、多くの場合は112~115の範囲であろう。しかしながら、より小さい配列およびより長い配列もまた、本明細書に記載の目的に好適であり得ることに留意されたい。
【0100】
本出願では、別様に示されていない限り、CDR配列は、KontermannおよびDubel(編 2010年、Antibody Engineering、2巻、Springer Verlag Heidelberg Berlin、Martin、第3章、33~51頁)に記載の通りのAbM付番に従って決定した。本方法によると、FR1は1~25位のアミノ酸残基を含み、CDR1は26~35位のアミノ酸残基を含み、FR2は36~49位のアミノ酸を含み、CDR2は50~58位のアミノ酸残基を含み、FR3は59~94位のアミノ酸残基を含み、CDR3は95~102位のアミノ酸残基を含み、FR4は103~113位のアミノ酸残基を含む。
【0101】
CDR領域の決定は、異なる方法によっても行うことができる。カバットによるCDR決定では、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR1は、1~30位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1は、31~35位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR2は、36~49位のアミノ酸を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR2は、50~65位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR3は、66~94位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR3は、95~102位のアミノ酸残基を含み、免疫グロブリン単一可変ドメインのFR4は、103~113位のアミノ酸残基を含む。
【0102】
そのような免疫グロブリン配列では、フレームワーク配列は、任意の好適なフレームワーク配列であってもよく、好適なフレームワーク配列の例は、当業者であれば、例えば、標準的なハンドブックならびに本明細書で言及されるさらなる開示および先行技術に基づき、明らかであろう。
【0103】
フレームワーク配列は、好ましくは、免疫グロブリンフレームワーク配列または免疫グロブリンフレームワーク配列に由来している(例えば、ヒト化またはラクダ科動物化により)フレームワーク配列(の好適な組合せ)である。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えば、V配列)および/または重鎖可変ドメイン(例えば、V配列またはVHH配列)に由来するフレームワーク配列であってもよい。1つの特に好ましい態様では、フレームワーク配列は、VHH配列に由来しているフレームワーク配列(フレームワーク配列は、場合により部分的にまたは完全にヒト化されていてもよい)、またはラクダ科動物化されている従来のV配列(本明細書で規定の通り)のいずれかである。
【0104】
特に、本技術で使用されるISVD配列に存在するフレームワーク配列は、ISVD配列が、ヒト化VHHまたはラクダ科動物化Vを含むVHHなどの、Nanobody(登録商標)であるように、1つまたはそれ以上の特徴的残基(本明細書で規定の通りの)を含んでいてもよい。そのようなフレームワーク配列(の好適な組合せ)の一部の好ましいが非限定的な例は、本明細書のさらなる開示から明らかになるであろう。
【0105】
その場合も、免疫グロブリン配列関して本明細書にて一般に記載されているように、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列により好適にフランキングおよび/または連結された1つまたはそれ以上のCDR配列を含む(例えば、こうしたCDRおよびフレームワーク配列が、断片がそれに由来する完全なサイズの免疫グロブリン配列で生じ得る同じ順序で)断片など、前述のもののいずれかの好適な断片(または断片の組合せ)を使用することも可能である。
【0106】
しかしながら、本技術は、ISVD配列(またはそれを発現するために使用されるヌクレオチド配列)の起源に関しても、ISVD配列もしくはヌクレオチド配列が生成もしくは得られる(または生成もしくは得られている)方法に関しても、限定されないことに留意されたい。したがって、ISVD配列は、天然に存在する配列(任意の好適な種に由来する)であってもよく、または合成もしくは半合成配列であってもよい。特定の、しかし非限定的な態様では、ISVD配列は、天然に存在する配列(任意の好適な種に由来する)、または「ヒト化」(本明細書で規定の通りの)免疫グロブリン配列(部分的または完全にヒト化されたマウスまたはウサギ免疫グロブリン配列、および特に部分的または完全にヒト化されたVHH配列など)、「ラクダ科動物化」(本明細書に記載の通りの)免疫グロブリン配列、ならびに親和性成熟(例えば、合成の、ランダムな、または天然に存在する免疫グロブリン配列から開始して)、CDR移植、ベニアリング(veneering)、異なる免疫グロブリン配列に由来する断片の組合せ、重複プライマーを使用したPCRアセンブリー、および当業者に周知である免疫グロブリン配列を遺伝子操作するための類似技法;もしくは上述のもののいずれかの任意の好適な組合せなどの技法により得られた免疫グロブリン配列を含むが、それらに限定されない、合成もしくは半合成配列である。
【0107】
同様に、ヌクレオチド配列は、天然に存在するヌクレオチド配列であってもよくまたは合成もしくは半合成配列であってもよく、例えば、好適な天然に存在する鋳型(例えば、細胞から単離されたDNAまたはRNA)からPCRにより単離されている配列、ライブラリー(特に発現ライブラリー)から単離されているヌクレオチド配列、天然に存在するヌクレオチド配列に突然変異を導入することにより(ミスマッチPCRなど、それ自体が公知の任意の好適な技法を使用して)調製されているヌクレオチド配列、重複プライマーを使用したPCRにより調製されているヌクレオチド配列、またはそれ自体が公知のDNA合成の技法を使用して調製されているヌクレオチド配列であってもよい。
【0108】
上記に記載のように、ISVDは、Nanobody(登録商標)またはその好適な断片であってもよい。Nanobodiesの基本的な説明については、下記のさらなる説明、および本明細書で引用されている先行技術を参照されたい。しかしながら、この点に関して、本明細書および先行技術では、主に、いわゆる「V3クラス」のNanobodies(つまり、DP-47、DP-51、またはDP-29などのV3クラスのヒト生殖系列配列と高度な配列相同性を有するNanobodies)が記載されていることに留意されたい。しかしながら、本技術では、その最も広い意味で、一般に任意のタイプのNanobodyを使用することができ、例えば、国際公開第2007/118670号パンフレットに記載のように、例えば、いわゆる「V4クラス」に属するNanobodies(つまり、DP-78などのV4クラスのヒト生殖系列配列と高度な配列相同性を有するNanobodies)も使用することができることに留意されたい。
【0109】
一般に、Nanobodies(特に、(部分的)ヒト化VHH配列およびラクダ科動物化V配列を含むVHH配列)は、フレームワーク配列(この場合も本明細書でさらに記載の通り)の1つまたはそれ以上に、1つまたはそれ以上の「特徴的残基」(本明細書に記載の通り)が存在することにより特徴付けることができる。したがって、一般に、Nanobodyは、(基本)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であると規定することができ、構造中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し、特徴的残基の1つまたはそれ以上は、本明細書でさらに規定されている通りである。
【0110】
特に、Nanobodyは、(基本)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であってもよく、構造中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し、フレームワーク配列は、本明細書でさらに規定されている通りである。
【0111】
より特には、Nanobodyは、(基本)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
を有する免疫グロブリン配列であってもよく、構造中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、それぞれ相補性決定領域1~3を指し、カバット付番による11、37、44、45、47、83、84、103、104、および108位のアミノ酸残基の1つまたはそれ以上は、下記の表1で言及されている特徴的残基から選択される。
【0112】
【表1】
【0113】
本技術では、とりわけ、TNFαまたはOX40Lに特異的に結合することができるISVDが使用される。本技術の状況では、ある特定の標的分子に「結合する」は、抗体およびそれらの対応する抗原の状況で理解される通りの、当技術分野における通常の意味を有する。
【0114】
本技術のポリペプチドは、TNFαに特異的に結合する2つまたはそれ以上のISVD、およびOX40Lに特異的に結合する2つまたはそれ以上のISVDを含んでいてもよい。例えば、ポリペプチドは、TNFαに特異的に結合する2つのISVD、およびOX40Lに特異的に結合する2つのISVDを含んでいてもよい。
【0115】
一部の実施形態では、少なくとも1つのISVDは、その標的分子を機能的に遮断することができる。例えば、ISVDは、TNFαとTNFR(TNF受容体)との相互作用を遮断することができるか、またはOX40LとOX40(受容体)との相互作用を遮断することができ、好ましくはT細胞からのOX40L誘導性IL2放出を阻害することができる。したがって、好ましい実施形態では、本技術のポリペプチドは、TNFαに特異的に結合し、TNFRとの相互作用を機能的に遮断する少なくとも2つのISVD、およびOX40Lに特異的に結合し、OX40との相互作用を機能的に遮断する2つのISVDを含む。
【0116】
本技術で使用されるISVDは、本技術のポリペプチドの一部を形成し、本技術のポリペプチドは、ポリペプチドがTNFαおよびOX40Lに特異的に結合できるように、少なくとも4つのISVDを含むかまたはからなる。
【0117】
したがって、本技術のポリペプチドで使用される少なくとも4つのISVDの標的分子は、TNFαおよびOX40Lである。例は、哺乳動物TNFαおよびOX40Lである。ヒトTNFα(Uniprot受入番号P01375)およびヒトOX40L(Uniprot受入番号P23510)が好ましいが、他の種に由来する型のもの、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、カニクイザル(本明細書では「cyno」とも呼ばれる)などの非ヒト霊長類、またはラマもしくはアルパカなどのラクダ科動物に由来するTNFαおよびヒトOX40Lも、本技術に適合させることができる。
【0118】
本技術で使用することができるTNFαまたはOX40Lに特異的に結合するISVDの具体例は、以下の項目AおよびBに記載の通りである:
A.ヒトOX40Lに特異的に結合し、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号7と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号10と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号13と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0119】
ヒトOX40Lに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2の構築物1E07/1について示されている通りの(前述の項目Aで規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上(好ましくはすべて)のフレームワーク領域を有する。構築物1E07/1の完全なアミノ酸配列(配列番号2または3、表A-1およびA-2を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0120】
また、好ましい実施形態では、ヒトOX40Lに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号2または3と、95%よりも高いまたは99%よりも高いなど、90%よりも高い配列同一性を有していてもよく、場合により、CDRは、前述の項目Aに規定されている通りである。特に、OX40Lに特異的に結合するISVDは、好ましくは、配列番号2または3のアミノ酸配列を含む。
【0121】
OX40Lに特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目A)と比べて、少なくとも1つのCDRに2つまたは1つのアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、好ましくは、配列番号2または3に示されている構築物1E07/1の少なくとも半分のヒトOX40Lに対する結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなど、同じ方法を使用して測定される。
【0122】
B.ヒトTNFαに特異的に結合し、
i.配列番号8のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号8と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号11のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号11と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号14と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR2は、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0123】
ヒトTNFαに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2の構築物1C02/1について示されている通りの(前述の項目Bで規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上(好ましくはすべて)のフレームワーク領域を有する。構築物1C02/1の完全なアミノ酸配列(配列番号4または6、表A-1およびA-2を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0124】
また、好ましい実施形態では、ヒトTNFαに特異的に結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号4または6と、95%よりも高いまたは99%よりも高いなど、90%よりも高い配列同一性を有していてもよく、場合により、CDRは、前述の項目Bで規定されている通りである。特に、TNFαに特異的に結合するISVDは、好ましくは、配列番号4または6のアミノ酸配列を含む。
【0125】
TNFαに特異的に結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目B)と比べて、少なくとも1つのCDRに2つまたは1つのアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、好ましくは、配列番号4または6に示されている構築物1C02/1の少なくとも半分のヒトTNFαに対する結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなど、同じ方法を使用して測定される。
【0126】
好ましくは、上記の項目AおよびBで規定の通りのISVDの各々が、本技術のポリペプチドに含まれる。
【0127】
上記の項目AおよびBで規定の通りのISVDの各々を含む本技術のそのようなポリペプチドは、ヒトTNFαおよびヒトOX40Lに対して、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドの好ましくは少なくとも半分の結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、親和性は、SPRなど、同じ方法を使用して測定される。
【0128】
上記の項目AおよびBで参照されている配列番号は、AbM規定によるCDR規定に基づく(表A-2を参照)。なお、カバット規定に従って同じCDRを規定する配列番号(表A-2.1を参照)も同様に、上記の項目AおよびBで使用することができる。
【0129】
したがって、本技術で使用することができる、TNFαまたはOX40Lに特異的に結合するISVDの具体例は、AbM規定を使用して上記に記載されている通りであり、以下の項目A’~B’に示されている通りカバット規定を使用して記載することもできる:
A’.ヒトOX40Lに特異的に結合し、
i.配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号28と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号31と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号13のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号13と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0130】
ヒトOX40Lに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2-1の構築物1E07/1について示されている通りの(前述の項目A’で規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上(好ましくはすべて)のフレームワーク領域を有する。構築物1E07/1の完全なアミノ酸配列(配列番号2または3、表A-1およびA-2-1を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0131】
B’.ヒトTNFαに特異的に結合し、
i.配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号29と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号32と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号14のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号14と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0132】
ヒトTNFαに特異的に結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2-1の構築物1C02/1について示されている通りの(前述の項目B’で規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上(好ましくはすべて)のフレームワーク領域を有する。構築物1C02/1の完全なアミノ酸配列(配列番号4または6、表A-1およびA-2-1を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0133】
第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との「配列同一性」のパーセンテージは、[第2のアミノ酸配列の対応する位置にあるアミノ酸残基と同一である、第1のアミノ酸配列のアミノ酸残基の数]を、[第1のアミノ酸配列のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]をかけることにより算出することができ、その場合、第1のアミノ酸配列と比較した、第2のアミノ酸のアミノ酸残基における欠失、挿入、置換、または追加は各々、単一のアミノ酸残基(つまり単一の位置)における差異であるとみなされる。
【0134】
通常、2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを上記で概説されている計算方法に従って決定するためには、アミノ酸残基数が最も多いアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸とみなすことになり、他方のアミノ酸配列を、「第2の」アミノ酸配列とみなすことになる。
【0135】
「アミノ酸差異」は、本明細書で使用される場合、参照配列に対する単一アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を指し、好ましくは置換である。
【0136】
アミノ酸置換は、好ましくは保存的置換である。そのような保存的置換は、好ましくは、以下の群(a)~(e)内の1つのアミノ酸が、同じ群内の別のアミノ酸残基で置換されている置換である:(a)小型脂肪族の非極性かまたはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、およびGly;(b)極性負電荷残基およびそれらの(非電荷)アミド:Asp、Asn、Glu、およびGln;(c)極性正電荷残基:His、Arg、およびLys;(d)大型脂肪族非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、およびCys;ならびに(e)芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp。
【0137】
特に好ましい保存的置換は以下の通りである:AlaをGlyもしくはSerに:ArgをLysに;AsnをGlnもしくはHisに;AspをGluに;CysをSerに;GlnをAsnに;GluをAspに;GlyをAlaもしくはProに;HisをAsnもしくはGlnに;IleをLeuもしくはValに;LeuをIleもしくはValに;LysをArg、Gln、もしくはGluに;MetをLeu、Tyr、もしくはIleに;PheをMet、Leu、もしくはTyrに;SerをThrに;ThrをSerに;TrpをTyrに;TyrをTrpに;および/またはPheをVal、Ile、もしくはLeuに。
【0138】
5.2 特異性
「特異性」、「特異的に結合する」、または「特異的結合」という用語は、ISVDなどの特定の結合ユニットが十分に高い親和性で結合することができる、同じ生物に由来する、抗原などの異なる標的分子の数を指す(下記を参照)。「特異性」、「特異的に結合する」、または「特異的結合」は、本明細書では、「選択性」、「選択的に結合する」、または「選択的結合」と同義的に使用される。ISVDなどの結合ユニットは、好ましくは、指定の標的に特異的に結合する。
【0139】
結合ユニットの特異性/選択性は、親和性に基づいて決定することができる。親和性は、分子相互作用の強度または安定性を表す。親和性は、一般的に、モル/リットル(またはM)の単位を含む、KDまたは解離定数により与えられる。親和性は、1/KDに等しく、(モル/リットル)-1(またはM-1)の単位を有する、結合定数KAとして表すこともできる。
【0140】
親和性は、部分と標的分子上の結合部位との結合強度の尺度であり:KDの値が小さいほど、標的分子と標的指向性部分との結合強度が強くなる。
【0141】
典型的には、本技術で使用される結合ユニット(ISVDなど)は、10-5~10-12モル/リットルまたはそれよりも低い、好ましくは10-7~10-12モル/リットルまたはそれよりも低い、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(KD)で(つまり、10~1012リットル/モルまたはそれよりも大きな、好ましくは10~1012リットル/モルまたはそれよりも大きな、より好ましくは10~1012リットル/モルの結合定数(KA)で)標的に結合することになる。
【0142】
10-4モル/リットルよりも大きな任意のKD値(または10リットル/モル未満の任意のKA値)は、一般に非特異的結合を示すとみなされる。
【0143】
抗原に対する免疫グロブリン配列の結合など、特異的であるとみなされる生物学的相互作用のKDは、典型的には、10-5モル/リットル(10000nMまたは10μM)~10-12モル/リットル(0.001nMまたは1pM)の範囲であるかまたはそれよりも低い。
【0144】
したがって、特異的/選択的結合は、同じ測定方法、例えば、SPRを使用して、結合ユニット(またはそれを含むポリペプチド)が、10-5~10-12モル/リットルまたはそれよりも低いKD値でTNFαおよび/またはOX40Lに結合し、10-4モル/リットルよりも大きなKD値で関連サイトカインに結合することを意味することができる。OX40L関連標識の例は、ヒトTRAIL、CD30L、CD40L、およびRANKLである。TNFαの関連サイトカインの例は、TNFスーパーファミリーメンバーであるFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLである。したがって、本技術の実施形態では、ポリペプチドに含まれている少なくとも2つのISVDは、10-5~10-12モル/リットルまたはそれよりも低いKD値でTNFαに結合し、10-4モル/リットルよりも大きなKD値で、同じ種のFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLに結合し、ポリペプチドに含まれている少なくとも2つのISVDは、10-5~10-12モル/リットルまたはそれよりも低いKD値でOX40Lに結合し、10-4モル/リットルよりも大きなKD値で、同じ種のヒトTRAIL、CD30L、CD40L、およびRANKLに結合する。
【0145】
したがって、本技術のポリペプチドは、ヒトTNFαおよびヒトOX40Lに対して、配列番号1のアミノ酸からなるポリペプチドと比較して、好ましくは少なくとも半分の結合親和性、より好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなど、同じ方法を使用して測定される。
【0146】
ある特定の種に由来するある特定の標的に対する特異的結合は、結合ユニットが、異なる種に由来する類似の標的にも特異的に結合することができることを排除しない。例えば、ヒトTNFαに対する特異的結合は、結合ユニット(またはそれを含むポリペプチド)が、カニクイザルに由来するTNFαに対しても特異的に結合することができることを排除しない。同様に、例えば、ヒトOX40Lに対する特異的結合は、結合ユニット(またはそれを含むポリペプチド)が、カニクイザル(「cyno」)に由来するOX40Lに対しても特異的に結合することができることを排除しない。
【0147】
指定の標的に対する結合ユニットの特異的結合は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイなどのスキャッチャード分析および/または競合結合アッセイ、ならびに当技術分野でそれ自体が公知であるそれらの異なる変法;ならびに本明細書で言及されている他の技法を含む、それ自体が公知の任意の好適な様式で決定することができる。
【0148】
解離定数は、当業者であれば明らかであるように、実際の解離定数であってもよくまたは見かけの解離定数であってもよい。解離定数を決定するための方法は、当業者であれば明らかであり、例えば、下記で言及されている技法を含む。この点で、10-4モル/リットルまたは10-3モル/リットルよりも大きな(例えば、10-2モル/リットルの)解離定数を測定することができない場合があることも明らかであろう。場合により、当業者であれば明らかであるように、(実際のまたは見かけの)解離定数は、[KD=1/KA]という関係性により(実際のまたは見かけの)結合定数(KA)に基づいて算出することができる。
【0149】
2分子間の分子相互作用の親和性は、周知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサー技法など、それ自体が公知の様々な技法により測定することができる(例えば、Oberら、2001年、Intern.Immunology 13巻:1551~1559頁を参照)。「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で使用される場合、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによりリアルタイムで生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指し、一方の分子をバイオセンサーチップに固定化し、他方の分子を、流動条件下で固定化分子に対して通過させて、kon、koff測定値、およびしたがってK(またはK)値が得られる。これは、例えば、周知のBIAcore(登録商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare company、ウプサラ、スウェーデン、およびピスカタウェイ、ニュージャージー州)を使用して実施することができる。さらなる説明は、Jonssonら(1993年、Ann.Biol.Clin.51巻:19~26頁)、Jonssonら(1991年 Biotechniques 11巻:620~627頁)、Johnssonら(1995年、J.Mol.Recognit.8巻:125~131頁)、およびJohnnsonら(1991年、Anal.Biochem.198巻:268~277頁)を参照されたい。
【0150】
生体分子相互作用の親和性を決定するための別の周知のバイオセンサー技法は、バイオレイヤー干渉法(BLI)である(例えば、Abdicheら、2008年、Anal.Biochem.377巻:209~217頁を参照)。「バイオレイヤー干渉法」または「BLI」という用語は、本明細書で使用される場合、2つの表面:内部参照層(参照ビーム)およびバイオセンサーチップの固定化タンパク質の層(シグナルビーム)から反射される光の干渉パターンが分析される無標識光学技法を指す。バイオセンサーのチップに結合した分子の数の変化は、波長シフト(nm)として報告される、干渉パターンのシフトを引き起こし、その大きさは、バイオセンサーチップ表面に結合した分子の数の直接的尺度である。相互作用はリアルタイムで測定することができるため、結合速度および解離速度ならびに親和性を決定することができる。BLIは、例えば、周知のOctet(登録商標)システム(ForteBio、Pall Life Sciencesの一部門、メンロパーク、米国)を使用して実施することができる。
【0151】
その代わりに、親和性は、KinExA(登録商標)プラットフォーム(Sapidyne Instruments Inc、ボイシ、米国)を使用して、結合平衡除外法(KinExA、Kinetic Exclusion Assay)で測定することができる(例えば、Drakeら、2004年、Anal.Biochem.、328巻:35~43頁を参照)。「KinExA」という用語は、本明細書で使用される場合、未修飾分子の真の平衡結合親和性および動力学を測定するための溶液ベース法を指す。抗体/抗原複合体の平衡化溶液を、抗原(または抗体)で事前コーティングしたビーズを有するカラムに通し、コーティングされた分子に対する遊離抗体(または抗原)の結合を可能にする。このようにして捕捉された抗体(または抗原)の検出は、抗体(または抗原)に結合する蛍光標識タンパク質を用いて達成される。
【0152】
GYROLAB(登録商標)イムノアッセイシステムは、自動化バイオ分析および迅速な試料転換のためのプラットフォームを提供する(Fraleyら、2013年、Bioanalysis 5巻:1765~74頁)。
【0153】
5.3 (in vivo)半減期延長
ポリペプチドは、場合により1つまたはそれ以上のペプチドリンカーを介して連結されている1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットをさらに含んでいてもよく、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットを有していない対応するポリペプチドと比較して(in vivo)半減期の増加をポリペプチドに提供する。in vivo半減期延長は、例えば、ポリペプチドが、投与後、ヒト対象などの哺乳動物において半減期の増加を示すことを意味する。半減期は、例えば、t1/2betaとして表すことができる。
【0154】
基、残基、部分、または結合ユニットのタイプは、一般に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール分子、血清タンパク質またはそれらの断片、血清タンパク質に結合することができる結合ユニット、Fc部分、および血清タンパク質に結合することができる小型タンパク質またはペプチドからなる群から選択することができる。
【0155】
より具体的には、半減期の増加をポリペプチドに提供する1つまたはそれ以上の他の基、残基、部分、または結合ユニットは、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンに結合することができる結合ユニット、またはIgGなどの血清免疫グロブリンからなる群から選択することができ、好ましくは、ヒト血清アルブミンに結合することができる結合ユニットである。結合ユニットは、好ましくはISVDである。
【0156】
例えば、国際公開第04/041865号パンフレットには、タンパク質の半減期を増加させるために、他のタンパク質(所望の標的に結合する1つまたはそれ以上の他のNanobodiesなど)に連結することができる血清アルブミンに(特にヒト血清アルブミンに対して)結合するNanobodies(登録商標)が記載されている。
【0157】
国際公開第06/122787号パンフレットには、(ヒト)血清アルブミンに対する少なからぬNanobodies(登録商標)が記載されている。こうしたNanobodies(登録商標)としては、Alb-1(国際公開第06/122787号パンフレットの配列番号52)と呼ばれるNanobody(登録商標)およびAlb-8(国際公開第06/122787号パンフレットの配列番号62)などのそのヒト化バリアントが挙げられる。この場合も、それらを使用して、療法用タンパク質およびポリペプチドならびに他の療法実体または部分の半減期を延長することができる。
【0158】
さらに、国際公開第2012/175400号パンフレットには、Alb-23と呼ばれる、Alb-1のさらなる改良型が記載されている。
【0159】
好ましい実施形態では、ポリペプチドは、国際公開第2012/175400号パンフレットの7~9ページに示されている通りの、Alb-1、Alb-3、Alb-4、Alb-5、Alb-6、Alb-7、Alb-8、Alb-9、Alb-10、およびAlb-23、好ましくはAlb-8もしくはAlb-23またはそのバリアント、ならびに国際公開第2012/175741号パンフレット、国際公開第2015/173325号パンフレット、国際公開第2017/080850号パンフレット、国際公開第2017/085172号パンフレット、国際公開第2018/104444号パンフレット、国際公開第2018/134235号パンフレット、国際公開第2018/134234号パンフレットに記載の血清アルブミン結合剤から選択される血清アルブミン結合部分を含む。一部の好ましい血清アルブミン結合剤は、表A-4にも示されている。本技術のポリペプチドの特に好ましいさらなる成分は、項目Cに記載の通りである:
C.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号9のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号9と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号12のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号12と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号15と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0160】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2の構築物ALB23002について示されている通りの(前述の項目Cで規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上(好ましくはすべて)のフレームワーク領域を有する。構築物ALB23002の完全なアミノ酸配列(配列番号5、表A-1およびA-2を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0161】
項目Cは、カバット規定を使用すると以下のようにも記載することができる:
C’.ヒト血清アルブミンに結合し、
i.配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号30と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR1;
ii.配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号33と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2;および
iii.配列番号15のアミノ酸配列を含むかまたは配列番号15と2つもしくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3
を含み、好ましくは、配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR2、および配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR3を含むISVD。
【0162】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDの好ましい例は、表A-2.1の構築物ALB23002について示されている通りの(前述の項目C’で規定の通りのCDRに加えて)1つまたはそれ以上の、好ましくはすべてのフレームワーク領域を有する。構築物ALB23002の完全なアミノ酸配列(配列番号5、表A-1およびA-2.1を参照)を含むISVDが最も好ましい。
【0163】
また、好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミンに結合するISVDのアミノ酸配列は、配列番号5と、95%よりも高いまたは99%よりも高いなど、90%よりも高い配列同一性を有していてもよく、場合により、CDRは、前述の項目Cで規定されている通りである。特に、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0164】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDが、対応する参照CDR配列(上記の項目C)と比べて、少なくとも1つのCDRに2つまたは1つのアミノ酸差異を有する場合、ISVDは、ヒト血清アルブミンに対して、配列番号5に示されている構築物ALB23002の少なくとも半分の結合親和性、好ましくは少なくとも同じ結合親和性を有し、結合親和性は、SPRなど、同じ方法を使用して測定される。
【0165】
ヒト血清アルブミンに結合するそのようなISVDは、C末端位置を占める場合、C末端アラニン(A)またはグリシン(G)伸長を呈し、好ましくは、配列番号46、47、49、51、52、53、54、55、56、および58から選択される(下記の表A-4を参照)。好ましい実施形態では、ヒト血清アルブミンに結合するISVDは、C末端位置以外の別の位置を占め(つまり、本技術のポリペプチドのC末端ISVDではない)、配列番号5、44、45、48、および50から選択される(下記の表A-4を参照)。
【0166】
5.4 核酸分子
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子も提供される。
【0167】
「核酸分子」(「核酸」と同義的に使用される)は、リン酸骨格を介して互いに連結してヌクレオチド配列を形成するヌクレオチドモノマーの鎖である。核酸を使用して、例えば、ポリペプチドの発現および/または産生のために、宿主細胞または宿主生物を形質転換/トランスフェクトすることができる。産生目的のために好適な宿主または宿主細胞は、当業者であれば明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核、もしくは真核細胞もしくは細胞株、または任意の好適な真菌、原核、または真核生物であってもよい。本技術のポリペプチドをコードする核酸を含む宿主または宿主細胞も、本技術に包含される。
【0168】
核酸は、例えば、DNA、RNA、またはそれらのハイブリッドであってもよく、また、PNAのような(例えば、化学的に)改変されたヌクレオチドを含んでいてもよい。核酸は、一本鎖であってもよくまたは二本鎖であってもよく、好ましくは、二本鎖DNAの形態である。例えば、本技術のヌクレオチド配列は、ゲノムDNA、cDNAであってもよい。
【0169】
本技術の核酸は、それ自体が公知の様式で調製または得ることができ、および/または好適な天然供給源から単離することができる。天然に存在する(ポリ)ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば、配列変異を有するポリペプチドをコードする核酸分子を提供するために、部位特異的突然変異誘発に供することができる。また、当業者であれば明らかになるように、核酸を調製するために、標的指向性部分をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および例えば1つまたはそれ以上のリンカーをコードする核酸などの、幾つかのヌクレオチド配列を、好適な様式で一緒に連結してもよい。
【0170】
核酸を生成するための技法は、当業者であれば明らかであり、例えば、これらに限定されないが、以下のものを挙げることができる:自動化DNA合成;部位指定突然変異誘発;2つもしくはそれ以上の天然に存在するおよび/もしくは合成の配列(もしくはそれらの2つもしくはそれ以上の部分)を組み合わせること、短縮発現産物の発現に結び付く突然変異の導入;1つもしくはそれ以上の制限部位の導入(例えば、好適な制限酵素を使用して容易に消化および/もしくはライゲーションすることできるカセットおよび/もしくは領域を作成するために)、ならびに/または1つもしくはそれ以上の「ミスマッチ」プライマーを使用したPCR反応による突然変異の導入。
【0171】
5.5 ベクター
本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターも提供される。ベクターは、本明細書で使用される場合、遺伝物質を細胞へと運搬するのに好適なビヒクルである。ベクターとしては、プラスミドもしくはmRNAなどのネイキッド核酸、またはリポソームもしくはウイルスベクターなどのより大きな構造に埋め込まれる核酸が挙げられる。
【0172】
ベクターは、一般に、場合により例えば1つまたはそれ以上の好適なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの、1つまたはそれ以上の調節エレメントに作動可能に連結している少なくとも1つの核酸を含む。ベクターは、好ましくは、発現ベクター、つまり、例えばベクターが(例えば、ヒト)細胞内に導入されている場合、好適な条件下でコードポリペプチドまたは構築物を発現するのに好適なベクターである。DNAベースベクターの場合、これには、通常、転写(例えば、プロモーターおよびポリAシグナル)および翻訳(例えば、コザック配列)のためのエレメントの存在が挙げられる。
【0173】
好ましくは、ベクターにおいて、少なくとも1つの核酸および調節エレメントは、互いに「作動可能に連結」しており、これは、一般にそれらが互いに機能的関係性にあることを意味する。例えば、プロモーターが、コード配列の転写および/または発現を開始またはそうでなければ制御/調節することができる場合、プロモーターは、コード配列に「作動可能に連結」しているとみなされる(この場合、このコード配列は、このプロモーターの「制御下」にあると理解されるべきである)。一般に、2つのヌクレオチド配列は、作動可能に連結している場合、方向が同じであり、また通常は同じリーディングフレームに存在することになる。また、それらは、通常は本質的に隣接しているが、これも必要ではない場合がある。
【0174】
好ましくは、ベクターの任意の調節エレメントは、意図されている宿主細胞または宿主生物において、それらの意図されている生物学的機能を提供することが可能なものである。
【0175】
例えば、プロモーター、エンハンサー、またはターミネーターは、意図されている宿主細胞または宿主生物において「作動可能」でなければならず、これは、例えば、プロモーターは、それが作動可能に連結しているヌクレオチド配列、例えばコード配列の転写および/または発現を開始またはそうでなければ制御/調節することが可能でなければならないことを意味する。
【0176】
5.6 組成物
また、本技術は、本技術の少なくとも1つのポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子、またはそのような核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを含む組成物を提供する。組成物は、好ましくは医薬組成物である。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤もしくは賦形剤、および/またはアジュバントをさらに含んでいてもよく、場合により、1つまたはそれ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含んでいてもよい。
【0177】
5.7 宿主生物
また、本技術は、本技術のポリペプチド、本技術のポリペプチドをコードする核酸、および/または本技術のポリペプチドをコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞または宿主生物に関する。
【0178】
好適な宿主細胞または宿主生物は、当業者にとって明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核、もしくは真核細胞もしくは細胞株、または任意の好適な真菌、原核、または真核生物である。具体例としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌(Escherichia coli)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)が挙げられる。最も好ましい宿主は、ピキア・パストリスである。
【0179】
5.8 ポリペプチドの方法および使用
また、本技術は、本技術のポリペプチドを産生するための方法を提供する。この方法は、宿主細胞または宿主生物を、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換/トランスフェクトする工程、ポリペプチドを宿主にて発現させる工程、場合により続けて1つまたはそれ以上の単離および/または精製工程を含んでいてもよい。具体的には、この方法は、
a.好適な宿主細胞もしくは宿主生物にてまたは別の好適な発現系にて、ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させること;場合により、続いて:
b)ポリペプチドを単離および/または精製すること
を含んでいてもよい。
【0180】
産生目的のために好適な宿主または宿主細胞は、当業者であれば明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核、もしくは真核細胞もしくは細胞株、または任意の好適な真菌、原核、もしくは真核生物であってもよい。具体例としては、HEK293細胞、CHO細胞、大腸菌、ピキア・パストリスが挙げられる。最も好ましい宿主は、ピキア・パストリスである。
【0181】
本技術のポリペプチド、本記載の通りの核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物、好ましくはポリペプチドまたはそれを含む組成物は、薬剤として有用である。
【0182】
したがって、本技術は、薬剤として使用するための、本技術のポリペプチド、本記載の通りの核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物を提供する。
【0183】
自己免疫性または炎症性疾患の(予防的または療法的)治療に使用するための、本技術のポリペプチド、本記載の通りの核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物も提供される。
【0184】
自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための(予防的および/または療法的)方法であって、それを必要とする対象に、薬学的活性量の本技術のポリペプチド、本記載の通りの分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物を投与することを含む方法がさらに提供される。
【0185】
好ましくは自己免疫性疾患または炎症性疾患を治療するための医薬組成物の調製における、本技術のポリペプチド、本記載の通りの核酸分子もしくはベクター、または本技術のポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物の使用がさらに提供される。
【0186】
自己免疫性または炎症性疾患は、例えば、関節リウマチ;クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;乾癬、化膿性汗腺炎;および移植片対宿主病である。
【0187】
「対象」は、本技術の状況で参照される場合、任意の動物であってもよく、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物の中でも、ヒトと非ヒト哺乳動物とを区別することができる。非ヒト動物は、例えば、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、またはブタ動物)、または一般に研究目的および/または抗体産生のために使用される動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、カニクイザルなどの非ヒト霊長類、またはラマもしくはアルパカなどのラクダ科動物)であってもよい。
【0188】
予防的および/または療法的目的の状況では、対象は、任意の動物、より具体的には任意の哺乳動物であってもよいが、好ましくは、ヒト対象である。
【0189】
物質(ポリペプチド、核酸分子、およびベクターを含む)または組成物は、任意の好適な投与経路により、例えば、経腸(経口または直腸など)投与または非経口(皮膚上、舌下、頬側、鼻腔、関節内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経皮、または経粘膜など)投与により、対象に投与することができる。筋肉内、皮下、または皮内投与などの非経口投与が好ましい。皮下投与が最も好ましい。
【0190】
意図されている治療結果を提供するために、有効量のポリペプチド、本記載の通りの核酸分子もしくはベクター、またはポリペプチド、核酸分子、もしくはベクターを含む組成物を対象に投与することができる。
【0191】
1回またはそれ以上の用量を投与することができる。1回よりも多くの用量が投与される場合、用量は、ポリペプチド、組成物、核酸分子、またはベクターの効果を最大化するために、好適な間隔で投与することができる。
【0192】
【表2】
【0193】
【表3】
【0194】
【表4】
【0195】
【表5】
【0196】
【表6】
【0197】
【表7】
【0198】
6 実施例
6.1 実施例1:多重特異性ISVD構築物生成
抗TNFα VHH構築単位(TNF06C11(国際公開第2017081320号パンフレット)、TNF01C02(国際公開第2015173325号パンフレット、配列番号327)、およびVHH#3(国際公開第2004041862号パンフレット))、抗OX40L VHH構築単位(OX40L1E07、OX40L1B11、およびOX40L15B07、国際公開第2011073180号パンフレットを参照))、および抗HSA VHH構築単位ALB23002(国際公開第2017134234号パンフレット、配列番号10/国際公開第2018131234号パンフレットを参照)が含まれていた、TNFαおよびOX40Lに結合するISVD含有ポリペプチドF027300252(配列番号1)の識別は、データ主導型多重特異性エンジニアリングおよびフォーマッティングキャンペーン(data-driven multispecific engineering and formatting campaign)からもたらされた。構築単位の様々な位置/方向および様々なリンカー長(9GS、20GS、対35GS)を適用し、それらが様々なパラメーター(効力、交差反応性、発現など)にとって重要であることを証明した。この状況における効力とは、実施例7および9にてアッセイされているように、in vitroにおけるTNFα誘導性NFκB活性化の阻害およびOX40L誘導性T細胞共刺激の阻害を指す。
【0199】
84個の構築物を含むパネル(表2)を、小規模産生のためにピキア・パストリスに形質転換した。ISVD構築物発現の誘導は、メタノールの段階的添加により生じた。分泌されたISVD構築物を有する清澄化培地を、プロテインA親和性クロマトグラフィー、続いて脱塩による精製の出発物質として使用した。精製した試料を、機能的特徴付けおよび発現評価に使用した。
【0200】
【表8-1】
【表8-2】
【0201】
一部の構築物は、価数、リンカー長、およびISVD構築単位の相対位置に応じて、効力の損失を示した。例えば、6つの二重特異性ISVD構築物では、OX40LおよびTNFαを標的とする同じ構築単位を含んでいたにもかかわらず、OX40L効力にかなりの違いが観察された。正確な組成(価数、構築単位の方向、およびリンカー長の用法)が、効力にとって重要であることが見出された。表3に示されている通りの列挙されているOX40Lの遮断効力は、抗OX40L 1E07/1構築単位の二価性およびN末端位置が重要であることを実証している。
【0202】
【表9】
【0203】
その後、この大きなパネルを、ISVD構築物F027300252、F027301140、F027301189、F027301197、およびF027301199からなる、標的(ヒトおよびカニクイザル)の両方に対して強力であることが判明し、予備的収量推定に基づき高発現レベルの可能性を含む5つの多重特異性構築物のパネルへと縮小した。
【0204】
発現収量の決定、生物物理学的特性の評価、および既存反応性のために、5つのISVD構築物を含むパネルの大規模2Lおよび5L産生をピキア・パストリスにおいて行った。ピキア・パストリスにて高発現収量ならびに十分な溶解性および生物物理学的安定性を得るには、抗OX40L構築単位および抗TNFα構築単位の特定の組合せが必要であることが実証された。ISVD構築物F027300252およびF07301199が比較されている表5ですでに例示されているように、抗TNF構築単位の使用は、大きく異なるCMCプロファイルをもたらした。5L発酵の場合、ISVD構築物F027300252は、ISVD構築物F07301199よりも3倍高い6g/lの力価に到達しただけでなく、優れた保管特性および粘度も呈した。
【0205】
【表10】
【0206】
【表11】
【0207】
さらに、表6および実施例12では、既存抗体反応性は、それぞれのISVD構築物の組成、価数、およびリンカー長により駆動されることが実証されている。
【0208】
【表12】
【0209】
最後に、効力、既存抗体に対する結合の低減、優れた発現レベルおよびCMC特性、ならびに既存抗体に対する結合の低減に基づき、ISVD構築物F027300252を選択した。
【0210】
6.2 実施例2:TNFα、OX40L、および血清アルブミンに対する多重特異性ISVD構築物の結合親和性
ヒト、カニクイザル、モルモット、およびマウスTNFα、ヒトおよびカニクイザルOX40L、ならびにヒトおよびカニクイザル血清アルブミンに対するF027300252の、平衡解離定数(K)として表されている親和性は、Gyrolab xPワークステーション(Gyros)での溶液中親和性測定により定量化した。
【0211】
制御測定では、TNFαもしくはOX40L(1μM~0.1pMの範囲)または血清アルブミン(10μM~1pMの範囲)の系列希釈物、および一定量のF027300252(TNFαの場合は20pM、OX40Lの場合は30pM、および血清アルブミンの場合は300pM)を混合して相互作用を可能にし、平衡に到達するまで、24時間もしくは48時間のいずれか(OX40LおよびTNFαの場合)または2時間(血清アルブミンの場合)インキュベートした。
【0212】
受容体制御測定では、TNFαまたはOX40Lの系列希釈物(1μM~0.1pMの範囲)および一定量のF027300252(TNFαの場合は5nM、OX40Lの場合は5nM)を混合して相互作用を可能にし、平衡に到達するまで24時間または48時間いずれかでインキュベートした。
【0213】
ビオチン化ヒトTNFα/OX40L/血清アルブミンを、ビーズのカラムを含み、平衡化溶液から遊離F027300252を捕捉するための分子プローブとして使用されるGyrolab Bioaffy 1000CDの微細構造で捕捉した。TNFα/OX40L/血清アルブミンおよびF027300252の混合物(遊離TNFα/OX40L/血清アルブミン、遊離F027300252、およびTNFα/OX40L/血清アルブミン-F027300252複合体を含む)が、ビーズを流動することを可能にし、遊離ISVD構築物濃度に比例するわずかなパーセンテージの遊離F027300252が捕捉された。次いで、蛍光標識抗vHH抗体ABH0086-Alexa647を注入して、捕捉したF027300252をすべて標識し、過剰な蛍光プローブを洗い流した後、蛍光の変化を測定した。Gyrolab Analysisソフトウェアを使用して希釈系列物のフィッティングを行い、K制御曲線および受容体制御曲線を分析してK値を決定した。
【0214】
結果(表7)は、多重特異性ISVD構築物が、ヒト/カニクイザルOX40Lおよびヒト/カニクイザルTNFαと高い親和性で結合することを実証している。
【0215】
【表13】
【0216】
6.3 実施例3:膜結合TNFαに対する多重特異性ISVD構築物結合
膜結合TNFαに対するF027300252の結合を、ヒト膜TNFα発現HEK293H細胞に対する、ならびにPBMCから単離し、PMAおよびイオノマイシンで刺激した活性化CD4+細胞に対するフローサイトメトリーを使用して実証した(TNFα発現HEK293H細胞についてのデータが示されている)。簡単に説明すると、細胞を1×10細胞/ウェルの密度で播種し、100nMから始めて0.5pMまでの、F027300252または参照化合物抗hTNFα mAbの希釈系列物と共に4℃で1時間インキュベートした。並行して、細胞を、PBS中の4%パラホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒドで固定してから播種し(膜結合TNFαの検出を増加させるため)、ISVD構築物または参照化合物の希釈系列物と共に、4℃で1時間または室温で24時間インキュベートした。細胞を3回洗浄し、その後、抗vHH mAb(ABH00119)と共に4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄し、ヤギ抗マウスまたは抗ヒトPE標識抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。試料を洗浄し、FACS緩衝液(5nM TOPRO3で補完された10%FBSおよび0.05%アジ化ナトリウムを有するD-PBS)に再懸濁した。次いで、細胞懸濁物をiQuescreenerで分析した。EC50値を、GraphPad Prismを使用して算出した。F027300252および抗hTNFα参照mAbのEC50値は、1時間のインキュベーション後では、生存細胞と固定細胞とで同じ範囲にあったが、細胞を固定すると、膜にてより高レベルのTNFαの存在がもたらされた(表8)。24時間のインキュベーション後、結合平衡に到達した。F027300252および抗hTNFα参照mAbの親和性は同等であった。
【0217】
【表14】
【0218】
6.4 実施例4:膜結合OX40Lに対する多重特異性ISVD構築物結合
膜結合ヒトおよびカニクイザルOX40Lに対するF027300252の結合を、ヒトまたはカニクイザルOX40Lを発現するCHO-KI細胞に対するフローサイトメトリーを使用して実証した。簡単に説明すると、細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒドおよび0.1%グルタルアルデヒドで固定し、1×10細胞/ウェルの密度で播種し、100nMから始めて0.5pMまでの、ISVD構築物F027300252または参照化合物抗hTNFα mAbの希釈系列物と共に室温で48時間インキュベートした。細胞を3回洗浄し、その後、抗VHH mAbと共に4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄し、ヤギ抗マウスPEまたはFITC標識抗体と共に4℃で30分間インキュベートした。試料を洗浄し、FACS緩衝液(5nM TOPRO3で補完された10%FBSおよび0.05%アジ化ナトリウムを有するD-PBS)に再懸濁した。次いで、細胞懸濁物をiQuescreenerで分析した。EC50値を、GraphPad Prismを使用して算出した。F0273000252は、膜結合OX40Lに対する結合が、10倍よりも大きな倍数で、参照化合物抗hOX40L参照mAbよりも良好であることを示す(表9)。
【0219】
【表15】
【0220】
6.5 実施例5:多重特異性ISVD構築物は、TNFαおよびOX40Lと選択的に結合する
TNFαおよびOX40L関連ヒト標的に対する結合の不在を、SPR(Proteon XPR36)で評価した。OX40L関連標的として、ヒトTRAIL、CD30L、CD40L、およびRANKLを評価した。TNFスーパーファミリーメンバーであるヒトFASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、RANKLを、TNFαの関連サイトカインとして試験した。
【0221】
この目的のため、TNF関連サイトカインを、200秒間アミンカップリングを使用してproteon GLCセンサーチップに25μg/mLで固定化し、活性化のためにEDC/NHSを80秒間注入し、不活化のために1MエタノールアミンHClを150秒間注入した(ProteOnアミンカップリングキット、カタログ番号176-2410)。活性化、不活化、およびリガンド注入中の流速は、30μl/分に設定した。10mM酢酸塩固定化緩衝液のpHは、各リガンドのpIから約1.5を引くことにより選択した。
【0222】
次に、10nMまたは300nMのF027300252を2分間注入し、45μL/分の流速で900秒間の解離を可能にした。ランニング緩衝液として、PBS(pH7.4)+0.005%Tween20を使用した。陽性対照として、0.3μM α-hFASL Ab、0.3μM α-hTNFβ Ab、0.5μM α-hLIGHT Ab、および0.3μM α-hTL-1A Abを注入した。F027300252および陽性対照と固定化標的との相互作用は、結合時のチップの質量変化の結果として生じる屈折率の増加を検出することにより測定した。
【0223】
OX40L関連標的の場合、ISVD構築物F027500252または陽性対照抗体α-hTRAIL、α-hCD30L、α-hCD40L、およびα-hRANKL VHHをセンサーチップに10μg/mlで固定化した。
【0224】
次に、1μMのヒトTRAIL、CD30L、CD40L、およびRANKLを2分間注入し、45μL/分の流速で900秒間の解離を可能にした。
【0225】
陽性対照はすべて、対応する標的に結合した。ヒトTRAIL、CD30L、CD40L、FASL、TNFβ、LIGHT、TL-1A、およびRANKLに対するISVD構築物F027300252の結合は検出されなかった。
【0226】
6.6 実施例6:hOX40L、hTNFα、およびHSAに対する多重特異性ISVD構築物の同時結合
Biacore T200機器を使用して、ISVD構築物F0273000252が、組換え可溶性hTNFαおよびhOX40Lに同時に結合することができるか否かを決定した。この目的のため、HSAを、6000RUのレベルになるようにアミンカップリングによりCM5センサーチップに固定化した。ALB23002構築単位を介してISVD構築物を捕捉するために、100nM F0273000252を10μl/分でHSA表面に2分間注入した。その後、100nMのhOX40L、hTNFα、もしくはhIL13、または100nMのOX40L+100nMのTNFα、100nMのIL13+100nMのOX40L、もしくは100nMのTNFα+100nMのIL13の混合物のいずれかを45μl/分の流速で2分間注入し、続いてその後の600秒間の解離工程を行った。HCl(100mM)を2分間45μl/分で注入することによりHSA表面を再生した。センサーグラム(図1)は、HSAでの捕捉後の応答単位の増加:hTNFαのみから約1770RUの増加、hOX40Lのみから約800RUの増加が、OX40LおよびTNFαの混合物の場合は約2300RUの増加により示されるように、ISVD構築物F027300252が、hOX40LおよびhTNFαに同時に結合することができることを実証している。
【0227】
フローサイトメトリーを使用して、ISVD構築物F0273000252が、組換え可溶性hTNFαおよび細胞膜結合hOX40Lに同時に結合することができるか否かを決定した。この目的のため、ヒトOX40Lを発現するCHO-KI細胞を、5×10細胞/ウェルの密度で播種し、100nMのISVD構築物F027300252と共に4℃で90分間インキュベートした。その後、混合物を、500nMから始めて7.6pMまでのビオチン化TNFαの希釈系列物と共にインキュベートし、30μM HSAの存在下で30分間4℃にてインキュベートした。細胞を3回洗浄し、その後PE標識抗ストレプトアビジンと共に4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄した。試料を洗浄し、FACS緩衝液(5nM TOPRO3で補完された10%FBSおよび0.05%アジ化ナトリウムを有するD-PBS)に再懸濁した。次いで、細胞懸濁物をiQuescreenerで分析した。用量反応曲線(図2)は、ISVD構築物F027300252が、HASの存在下で膜結合hOX40Lおよび可溶性hTNFαに同時に結合することができるのに対し、陰性対照VHHであるIRR0096は結合することができないことを実証した。
【0228】
6.7 実施例7:多重特異性ISVD構築物によるTNFα誘導性NFκB活性化のin vitro阻害
HEK293_NFκB-NLucP細胞は、NFκB依存性プロモーターの制御下のナノルシフェラーゼをコードするレポーター構築物で安定的にトランスフェクトされたTNF受容体発現細胞である。細胞を可溶性ヒトおよびカニクイザルTNFαと共にインキュベートすると、NFκB媒介姓ナノルシフェラーゼ遺伝子発現がもたらされた。ナノルシフェラーゼ発光は、溶解緩衝液と混合したNano-Gloルシフェラーゼ基質を使用し、1:50の比で細胞に添加して測定した。試料を振盪機で5分間混合し、完全溶菌を得た。
【0229】
Glo response(商標)HEK293_NFκB-NLucP細胞を、底部が透明な白色組織培養(TC)処理96ウェルプレートの通常増殖培地に20000細胞/ウェルで播種した。F0273000252または参照化合物(抗hTNFα mAb)の希釈系列物を、25pMヒトまたは70pMカニクイザルTNFαに添加し、30μM HSAの存在下で5時間37℃にて細胞と共にインキュベートした。
【0230】
F027300252は、濃度依存的様式でヒトおよびカニクイザルTNFα誘導性NFκB活性化を阻害し、IC50は、参照化合物抗hTNFα mAbと同等の31pM(ヒトTNFαの場合)および91pM(カニクイザルTNFαの場合)だった(表10、図3)。陰性対照VHHであるIRR00096は、阻害を示さなかった。
【0231】
【表16】
【0232】
6.8 実施例8:多重特異性ISVD構築物によるTNFαの阻害は、安定NFκBルシフェラーゼレポーター細胞株においてルシフェラーゼ発現を低減する
単一または多重特異性抗体またはISVD構築物/VHHによるTNFαの中和を測定するために、NFκBレポーター安定細胞株A549/NFκB-luc(カタログ番号RC002)を使用した。核因子カッパB(NFκB)は、転写因子のrelファミリーのメンバーであり、炎症応答、アポトーシス、または腫瘍形成の調節に重要な役割を果たす。ここで使用した細胞株は、ヒト肺癌細胞A549に由来し、ルシフェラーゼレポーター構築物の染色体組込みはNFκB応答エレメントの6つのコピーにより調節される。この細胞株を使用すると、NFκB経路に沿って生じるあらゆる変化を正確にモニターすることができる。
【0233】
ISVD構築物の効力は、EC90でヒトTNFα(SIGMA #H8916)およびカニクイザルTNFα(Sino 90018-CNAE-5)を中和することにより、10個の系列希釈濃度の用量応答で決定した。ヒトTNFαを[15ng/ml]で使用し、カニクイザルTNFαを[10ng/ml]で使用した。
【0234】
解凍使用A549/NFκB-luc細胞を、1%FCSを含むRPMI培地に再懸濁し、各ウェルに10K細胞10μlを有する384ウェルプレートに播種した。10μlの抗TNF/抗OX40L多重特異性ISVD構築物F027300252、または対応する陽性および陰性対照抗体ならびにVHHを、RPMI培地で希釈し、細胞に添加した。組織内で産生した抗TNFα抗体(抗TNFα mAb2)を陽性対照として使用し、VHH IRR00119および抗体RA11093885を陰性対照として使用した。室温で15分間プレインキュベーションした後、15ng/mlの濃度のTNFα10μlをウェルに添加した。37℃において5%CO2および95%湿度で5時間後に、Bio-Gloルシフェラーゼ検出試薬(Promega E7940)20μlを添加することにより、反応全体を終結させた。発光シグナルを、PheraStar(BMG)で測定した。SpeedのXLfitプログラムを、用量反応曲線のフィッティングおよびIC50値の計算に使用した。
【0235】
【表17】
【0236】
6.9 実施例9:多重特異性ISVD構築物によるOX40L誘導性T細胞共刺激のin vitro阻害
ヒトおよびカニクイザルOX40Lの機能的活性およびISVD構築物F027300252によるその阻害を、細胞ベースアッセイを使用して研究し、OX40L誘導性T細胞共刺激を調査した(PBMC活性アッセイ)。アッセイは、バフィーコート由来PBMC(1×10細胞/ウェルの密度)を、最適未満濃度のPHA-Lの存在下で(OX40発現を誘導するため)、OX40Lを過剰発現するCHO-KI細胞(1×10細胞/ウェルの密度)と共に透明96ウェルプレートで共培養することにより実施した。ISVD構築物F027300252または参照化合物抗hOX40L mAbの希釈系列物を共培養に添加し、加湿インキュベーター内で22時間37℃にて30μM HSAの存在下でインキュベートした。こうした細胞の上清中のIL2レベルを、ELISAを使用して評価することにより読取りを実施した。
【0237】
ISVD構築物F027300252は、濃度依存的様式でヒトおよびカニクイザルOX40L誘導T細胞活性化を阻害し、IC50は、参照化合物抗hOX40L mAbと同等の2.58nM(ヒトOX40Lの場合)および7.22nM(カニクイザルOX40Lの場合)だった(表12、図4)。
【0238】
【表18】
【0239】
6.10 実施例10:多重特異性ISVD構築物F027300252によるTNFαおよびOX40Lの阻害は、安定NFκBルシフェラーゼレポーター細胞株においてルシフェラーゼ発現を低減させる
単一または多重特異性抗体またはISVD構築物/VHHによるTNFαおよびOX40Lの中和を個々にまたは組合せで測定するために、NFκBレポーター安定細胞株ジャーカットNFκB-Luc2/OX40を使用した。核因子カッパB(NFκB)は、転写因子のrelファミリーのメンバーであり、炎症応答、アポトーシス、または腫瘍形成の調節に重要な役割を果たす。ここで使用した細胞株は、ヒト末梢血Tリンパ球に由来し、ヒトOX40受容体およびコドン最適化ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子luc2構築物の染色体への組込みおよび安定発現は、NFκB応答エレメントの6つのコピーにより調節された。この細胞株を使用すると、NFκB経路に沿って生じるあらゆる変化を正確にモニターすることができる。解凍使用ジャーカット/NFκB-Luc2/OX40細胞を、1%FCSを含むRPMI培地に再懸濁し、各ウェルに1×10細胞/mlを有する96ウェルプレートに播種して培養した。
【0240】
アッセイの開始時に、組換えヒトTNFαおよびヒトOX40Lを、最終濃度が5ng/mlおよび100ng/mlになるように、96ウェルEppendorf懸濁培養プレートのウェルに85μl/ウェルで添加し、85μlの事前に希釈した抗TNFα抗体PB03017(Sanofiから)、抗OX40L抗体(カタログ番号AB00536、Absolute Antibodyから)、IgG1アイソタイプ陰性対照抗体(カタログ番号403502、Biolegendから)、陰性対照VHH IRR00119(Sanofiから)、単一特異性抗TNFα VHH ATN-103(Sanofiから)、単一特異性抗OX40L VHH ALX-0632(Sanofiから)、または抗TNF/抗OX40L多重特異性ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199(すべてSanofiから)を添加した。37℃で15分間のプレインキュベーション後、その混合物の75μlを、50μlの1×10細胞/ウェルのウェルに添加し、37℃において5%CO2および湿度95%で6時間インキュベートした。Bio-Gloルシフェラーゼ検出試薬(Promega E7940)125μlを添加して反応を停止させ、発光シグナルを測定した。SpeedのXLfitプログラムを、図7の用量反応曲線のフィッティングおよびIC50値の計算に使用した。
【0241】
個々のアームの効力と比較した抗TNFαおよび抗OX40Lの組合せの相加効果を、0.5μg/ml、1μg/ml、2μg/ml、および5μg/mlの抗体用量で測定した(図5)。組換えヒトTNFα(カタログ番号H8916、Sigmaから)および組換えヒトOX40L(カタログ番号71185、bpsbioscienceから)をそれらのEC90で中和して、各個々の刺激によるものと同等レベルのルシフェラーゼ誘導を達成することにより、単一特異性VHHと比較した多重特異性ISVD構築物のIC50(図7、表13)および阻害%(図6、表13)を、9つの系列希釈濃度の用量応答で測定した(図5を参照)。それぞれ、ヒトTNFαを5ng/mlで使用し、ヒトOX40Lを100ng/mlの最終アッセイ濃度で使用した。
【0242】
組換えヒトTNFα(hTNFα)および組換えヒトOX40L(OX40L)の両方とのインキュベーションは、いずれかの刺激単独による処置と比較して、ルシフェラーゼ活性の非常により強力な誘導(>3倍)に結び付く(図5を参照)。組換えヒトTNFαおよび組換えヒトOX40Lの両方(hTNFα+OX40L)とのインキュベーションを使用して、抗TNFα抗体単独よる阻害、抗OX40L抗体単独よる阻害、または抗TNFα抗体および抗OX40L抗体の組合せの効果を、0.5μg/ml~5μg/mlの範囲の様々な濃度で特徴付けた。(図5)。抗TNFαまたは抗OX40L単独による処置は、hTNFα+OX40Lの組合せにより誘導されるルシフェラーゼ活性の阻害にある程度結び付いたが、刺激無しの対照に対応する非常に低いレベルへとルシフェラーゼ活性を非常に強力に抑えることができたのは、抗TNFα/抗OX40L組合せによる処置のみだった(図5)。このように、抗TNF/抗OX40Lによる組合せ処置は、例えば0.5μg/mlまたは1μg/mlという非常に低い濃度でさえ、5μg/mlという高濃度の抗TNFαまたは抗OX40L単独による処置と比較して、ルシフェラーゼ活性をはるかにより強力に抑制した(図5)。
【0243】
同様に、1pM~20nMの範囲の様々な濃度の単一特異性抗OX40L VHH ALX-0632、または単一特異性抗TNFα VHH ATN-103、または抗TNFα/抗OX40L二重特異性ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199による阻害の効果を特徴付けるために、組換えヒトTNFαおよび組換えヒトOX40Lの組合せ(hTNFα+OX40L)とのインキュベーションを使用した(図6および図7)。抗TNFα VHHまたは抗OX40L VHH単独による処置は、最大で<およそ70%のレベルまで、hTNFα+OX40Lの組合せにより誘導されるルシフェラーゼ活性の阻害にある程度結び付いたが、ルシフェラーゼ活性の誘導を100%のレベルまで完全に抑制することができたのは、二重特異性抗TNFα/抗OX40L ISVD構築物による処置のみだった(図6)。さらに、1pM~20nMの範囲の様々な濃度における抗TNFα/抗OX40L二重特異性ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199のIC50値の計算は、ISVD構築物F027300252およびF027301199が、この特定の一連の実験で最も強力な効力を示した(図7)。
【0244】
【表19】
【0245】
6.11 実施例11:多重特異性ISVD構築物によるOX40LおよびTNFαの阻害は、混合リンパ球反応(MLR)でのGM-CSFレベルを低減させる
T細胞活性化に対するOX40L遮断の生理学的効果を試験するために、混合リンパ球反応アッセイを実施した。簡単に説明すると、健常血液ドナーに由来する単球由来樹状細胞(MoDC)をin vitroで成熟させてOX40Lを発現させ、次いでこうした細胞を、別の無関係な健常ドナーに由来するPBMCと混合した。無関係ドナーを同じウェルで混合すると、アロ反応およびT細胞活性化が誘導された。この同種異系T細胞応答は、細胞混合の5日後に上清中のサイトカインを測定することによりモニターした。下記には、MoDCの調製およびサイトカイン測定によるT細胞応答の評価に関する詳細な説明が示されている。
【0246】
健常血液ドナーのPBMCから単球由来樹状細胞の調製:
PBMCを、勾配遠心分離により全血またはバフィーコートから単離した。細胞を計数し、Glutamax、10%ヒト血清、10mM Hepes、および20μg/mlゲンタマイシンを含む、6ウェルプレートの3ml RPMI1640培地に、1ウェル当たり3×10個の細胞をプレーティングした。1~2時間後、非付着細胞を3ラウンドの洗浄で洗浄し、細胞を、500IU/mlのIL-4および500IU/mlのGM-CSFの存在下で5日間インキュベートした。この5日間のインキュベーションの3日目に、培地を、IL-4およびGM-CSFを含む新鮮な培地と部分的に交換した。5日間のインキュベーション期間の終了時に、分化したが依然として未成熟なDCを収集し、計数した。次いで、DCを、6ウェルプレートまたは24ウェルプレートでさらに成熟させるために再プレーティングした(5×10細胞/ml)。DCにおいてOX40L発現を誘導するために他の刺激の中で最も好適であることが識別された新規サイトカインカクテル[500IU/ml IL-4、500IU/ml GM-CSF、10ng/mL IL-1b、1000IU IL-6、10ng/mL TNFa、1μg/mL PGE2]を含む培地(上記と同じ)で細胞をインキュベートした(図8)。成熟の2、3、および4日目に、DCを収集し、CD86、CD83、CD40、HLA-DR、およびOX40Lなどの成熟マーカーの発現をフローサイトメトリーで評価した。成熟の3~4日後、すべての成熟DCの30~70%が、OX40Lを表面発現した。OX40L発現を確認した後(図8)、DCを、後にMLRアッセイで使用するために、凍結培地(90%ウシ胎児血清+10%DMSO)で凍結した。
【0247】
混合リンパ球反応
PBMCを、勾配遠心分離により全血またはバフィーコートから単離した。細胞をX-Vivo15培地(Lonza)に再懸濁し、計数した。その間に、DCを解凍し、X-Vivo15培地に再懸濁した。1×10個のPBMCおよび5×10個のDCをU底96ウェルプレートの同じウェルで混合した。抗TNFα[10μg/ml]単独、または抗OX40L単独[10μg/ml]、または抗TNFα[10μg/ml]+抗OX40L[10μg/ml]の組合せによる処置の効果を特徴付けるために、抗体をそれぞれの希釈率で添加し、PBMCおよびDCの混合物を5日間インキュベートした。同様に、ISVD構築物による処理の効果を特徴付けるために、様々な濃度のF027300252(400~0.13nM;5倍系列希釈)または対照VHH IRR00119を添加し、PBMCおよびDCの混合物を5日間インキュベートした。対照アイソタイプIgG(Biolegend;クローンQA16A12)とのインキュベーションを、陰性対照として使用した。5日後、上清を収集し、上清中の種々のサイトカインの量を、Luminexベースのマルチプレックスアッセイで評価した(図9)。抗TNFαおよび/または抗OX40L効能を決定するために、3人の異なるヒトドナーに由来するDCを、5人の同種異系ドナーに由来するPBMCに対して試験した。F027300252による阻害GM-CSF産生のIC50値を決定するために、8人のドナーに由来するPBMCを、2人の同種異系ドナーに由来するDCに対して試験した。SpeedのXLfitプログラムを、F027300252の用量反応曲線のフィッティングおよびIC50値の計算に使用した。
【0248】
両方とも10μg/mlの飽和濃度の抗TNFα抗体単独または抗OX40L抗体単独による処置は、アイソタイプによる処置と比較して、GM-CSF分泌のかなりの阻害に結び付いた(図9)。しかしながら、抗TNFα抗体および抗OX40L抗体の組合せによる処置は、個々のTNF遮断(**p<0.0016;図9)またはOX40L遮断(****p<0.0001;図9)と比較して有意により強力にGM-CSF分泌を抑制することができた。これは、TNFαおよびOX40Lの組合せ遮断の効力が優れていることを示唆している(図9)。F027300252によるGM-CSF産生阻害のIC50値を決定するために、8人のドナーに由来するPBMCを、2人の同種異系ドナーに由来するDCに対して試験した。SpeedのXLfitプログラムを、用量反応曲線のフィッティングおよびIC50値の計算に使用した。F027300252は、濃度依存的様式でGM-CSF産生を阻害し、IC50は51.69±19.3nM(SEM)であり、最大阻害は70.32±5.59%である。
【0249】
6.12 実施例12:既存抗体に対する多重特異性ISVD構築物結合
ISVD構築物F027300252に対する、健常志願者に由来する96個の血清試料に存在する既存抗体の結合を、ProteOn XPR36(Bio-Rad Laboratories,Inc.)を使用して決定した。PBS/Tween(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.005%Tween20)をランニング緩衝液として使用し、実験を25℃で実施した。
【0250】
ISVD構築物を、チップに固定化されているHSAに対するALB構築単位の結合を介してチップに捕捉した。HSAの固定化には、ProteOn GLCセンサーチップのリガンドレーンを、EDC/NHS(流速30μl/分)で活性化し、ProteOn酢酸塩緩衝液pH4.5中100μl/mlのHSAを注入して、固定化レベルをおよそ3200RUにした。固定化した後、エタノールアミンHCl(流速30μl/分)で表面を不活化した。
【0251】
その後、ISVD構築物を、HSA表面に45μl/分で2分間注入し、ISVD構築物捕捉レベルをおよそ800RUにした。既存抗体を含む試料を14,000rpmで2分間遠心分離し、上清をPBS-Tween20(0.005%)で1:10に希釈した後、45μl/分で2分間注入し、続いてその後の400秒間の解離工程を行った。各サイクル後(つまり、新しいISVD構築物捕捉および血液試料注入工程の前)、HCl(100mM)を45μl/分で2分間注入することによりHSA表面を再生した。1)ISVD-HSA解離、および2)参照リガンドレーンに対する非特異的結合を差し引くことにより、二重参照後の既存抗体結合を示すセンサーグラムを得た。報告時点を125秒(結合終了の5秒後)に設定することにより既存抗体の結合レベルを決定した。既存抗体結合の低減パーセンテージは、125秒時点での参照ISVD構築物の結合レベルと比べて算出した。
【0252】
各構築単位に突然変異L11VおよびV89LならびにC末端アラニンを導入することにより既存抗体結合を低減するように最適化した5価ISVD構築物F027300252は、対照非最適化5価ISVD構築物F027301186と比較して、既存抗体に対する結合の大幅な低下を示した(表6、表14、図10および図11)。
【0253】
既存抗体結合は、多重特異性構築物の価数および組成に依存する。表6および図10は、5価ISVB構築物F027300252が、4価ISVD構築物F027301104およびF027301099よりも低い既存抗体反応性を示したことを実証している。
【0254】
ISVD構築物F027300252と同じ親構築単位で構成されている4つのISVD構築物は、異なる既存抗体反応性を示した(表14、図11)。ISVD構築物F027300028をISVD構築物F027301186と比較すると、各構築単位における突然変異L11VおよびV89LならびにC末端アラニンの導入は、既存抗体反応性を有意に低減させたことが示される。ISVD構築物F027300028をISVD構築物F027301097と比較すると、C末端構築単位におけるT110K突然変異の導入は、既存抗体反応性をわずかにさらに低減させたことが示される。ISVD構築物F027301097の35GSリンカーを、ISVD構築物F027300252のより短い9GSリンカーに置き換えることにより、既存抗体反応性がさらに有意に低減された。したがって、低既存抗体反応性を得るためには、多価構築物に短い9GSリンカーを使用することが重要だった。
【0255】
【表20】
【0256】
6.13 実施例13:慢性ヒトTNFαトランスジェニックTg197多発性関節炎モデルにおける多重特異性抗TNFα/OX40L ISVD構築物F027300252の評価。
F027300252多重特異性抗TNFα/OX40L ISVD構築物を、TNF駆動性進行性多発性関節炎のTg197マウスモデル(Kefferら、1991年、EMBO J.、10巻:4025~4031頁)においてプロファイリングした。こうしたマウスでは、改変ヒトTNFα遺伝子を導入遺伝子としてマウスに挿入した。ヒト遺伝子は、転写されたmRNAをより安定させるように改変されていたため、100%浸透率で4本の脚すべてにおいてTNFαの過剰発現および自発性進行性関節炎に結び付いた。兆候および症状は、約6週齢で明らかになり、治療せずに放置すると約10週齢以降の有意な瀕死および死亡に結び付くまで絶えず増加した。関節炎重症度を、下記に詳述されている通りのスコア付け方式により臨床的に評価した。
【0257】
【表21】
【0258】
関節炎は、ヒトTNFαの阻害に対して向けられている療法剤による治療に応答性があった(Shealyら、2002年、Arthritis Res.4巻(5号):R7)。
【0259】
用量依存的効能を確立する目的のため、関節炎の明らかな徴候および症状を有する6週齢の動物に、異なる用量のISVD構築物を、週2回の腹腔内注射により療法的様式で投与した(1群当たりn=8匹の動物)。ヒト骨髄腫血清から精製したヒトIgG1(BioXcell #BE0297)を陰性対照として使用し、抗hTNFα参照mAbを、関節炎抑制の陽性対照として使用した。F027300252 ISVD構築物を、それぞれ1mg/kg体重、3mg/kg、10mg/kg、および30mg/kgの4つの異なる用量強度で投与した。治療を11週齢まで継続した。臨床関節炎スコアを、週1回決定した。図12に示されているように、ISVD構築物治療は、臨床関節炎スコアの経時的な用量依存的抑制をもたらした。
【0260】
ヒトIgG1陰性対照抗体で治療した動物は、11週目までに1.58±0.06の平均関節炎スコアを発症した。抗hTNFα参照mAbは、11週目まで関節炎進行を完全に抑制し、平均スコアは0.61±0.06だった。F027300252は、11週目まで関節炎進行を低減させ、平均スコアは、1.30±0.09(1mg/kg)、0.89±0.10(3mg/kg)、0.67±0.08(10mg/kg)、および0.28±0.04(30mg/kg)だった。全体的関節炎抑制を曲線下面積により分析した(AUC、図13)。F027300252のすべての用量は、抗hTNFα参照mAbと同等に、Tg197関節炎モデルにおける関節炎進行を有意に抑制した。
【0261】
治療完了時に、後肢足首関節を組織学検査のために処理し、以下のスコア付け方式を用いて関節炎の構造的兆候について切片を評価した。
【0262】
【表22】
【0263】
組織学的スコア付けの結果は図14に図示されている。F027300252は、より高い用量で、構造的関節炎および関節破壊を有意に抑制した。
【0264】
結論として、こうした結果は、関節炎の徴候および症状の用量依存的抑制、ならびに抗hTNFα参照mAbと同等の程度までのISVD構築物F027300252による構造進行の阻害を実証する。
【0265】
6.14 実施例14:ヒトTNFα駆動性急性関節リウマチマウスモデル(CAIA)における抗TNF/OX40L ISVD構築物の評価。
抗TNF-OX40L ISVD構築物(F027300252)のin vivo効能を、コラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)と呼ばれる急性関節リウマチモデルで評価した。CAIAは、関節リウマチの前臨床モデルであり、薬物開発における抗関節炎薬物効果を評価するために広く使用されている(Nandakumar & Holmdahl(2007年)、Methods Mol Med.;136巻:215~23頁)。これは、モノクローナル抗コラーゲンII抗体およびLPSのカクテルを用いた短期(7日)誘導性関節炎モデルである。この実験では、ヒト化TNFαおよびTNFR1マウス:C57BL/6NTac-Tnfrsf1atm4504.1(TNFRSF1A)TacTnftm4503.1(TNF)Tacを使用した。動物はすべて、ドイツ動物福祉政府機関(German animal welfare government agency)の許可に基づき、Sanofi社実験動物福祉委員会により承認された研究プロトコールに関する施設内動物管理使用委員会のガイドラインに従って投薬およびモニターした。in vivo関節炎スコアは、オペレーター盲検形式で評価した。最低10週齢の雄および雌マウスを、それぞれの治療群に等しく無作為化した。マウスは、0日目に滅菌PBS中のものを腹腔内(ip)注射し、続いて24時間後にPBS中のLPS25μgをIP注射することにより、モノクローナル抗コラーゲン抗体(ArthritoMab、MDbiosciense、CIA-MAB-2C)のカクテル8mgを受け取った。マウスを7日間モニターした。治療は、1日目のLPSの6時間後、アイソタイプ対照(IgG1アイソタイプ 1.0mg/kg i.p.200μl/マウス)、0.03、0.1、0.3、1mg/kg(200μl/マウス)の多重特異性TNFα-OX40L ISVD構築物F027300252を投与し、200μL/マウスで0.1および0.5mg/kgの抗hTNFα参照mAb(従来型抗体)と比較した。適用された用量は、F027300252の場合、0.45、1.5、4.5、および15nmol/kg、ならびに抗hTNFα参照mAbの場合、0.65および3.3nmol/kgで推定されるモル曝露に等しい。抗hTNFα参照mAbの場合、2つの研究を実施し、ビヒクル動物を最終分析のためにプールした。実験の4日目の最初の投薬の3日後に、2回目の用量をすべての動物に適用した。実験の概略的研究設計は図15に図示されている。
【0266】
実験の結果は、図16に示されている。対照に対して試験した異なる抗hTNFα参照mAb濃度による2つの実験のビヒクル処置対照動物をプールした。関節炎スコアの平均ピーク増加6.135は、6日目に達成された。陽性対照抗hTNFα参照mAbは、関節炎スコアに対して顕著な効果を示し、試験したより高い濃度(3.3nmol/kg)では、疾患発症を完全に阻止した。抗TNFα-OX40L ISVD構築物F027300252は、抗hTNFα参照mAbと比較して同様のin vivo効力で用量依存的効果を示した。0.45nmol/kgの最も低い用量のみが、0.65nmol/kgのより低用量の抗hTNFα参照mAbと同等であるおよそ50%効果を示したが、ISVD構築物について試験したすべての他の用量は、疾患発症を完全に阻止した。F027300252に対して1.5nmol/kgで試験した2番目に低い用量は、3.3nmol/kgの抗hTNFα参照mAbよりも効果的ではないにしても、少なくとも同様であると考えられる。
【0267】
ISVD構築物F027300252の顕著な用量依存性効果は、図16の関節炎スコアデータのAUCが図示されている図17においてより明白である。F027300252のすべての用量は、関節炎スコアを有意に低下させ、1.5nmol/kgからそれよりも高い用量で完全な疾患阻害をもたらした。効果は、等モルの曝露/用量の抗hTNFα参照mAbと同等だった。
【0268】
結論として、こうした結果は、抗TNF-OX40L ISVD構築物が、マウスの急性関節リウマチモデルにおける抗hTNFα参照mAbと比較して、ヒトTNFαの標的化に関して同様に良好であったかまたは潜在的に優れていたことを実証し、それにより関節リウマチなどの自己免疫性疾患の治療において免疫抑制能力があることが強調される。統計は、一元配置ANOVAおよびボンフェローニ多重比較検定である。
【0269】
6.15 実施例15:F027300252による、非ヒト霊長類T細胞依存性抗体応答(TDAR)モデルおよび遅延型過敏症(DTH)モデルの組合せにおける機序の証明。
T細胞依存性抗体応答(TDAR)モデルは、抗原の取り込みおよび提示、T細胞支援、B細胞活性化、および抗体産生を含む、複数の免疫プロセスの有効性に依存する免疫機能の尺度である。この研究では、本発明者らは、非ヒト霊長類における抗TNF-OX40L ISVD構築物F027300252の薬力学的効果をin vivoで決定するためにこのモデルを使用した。この研究の目的は、薬力学に加えて、雌カニクイザルに週5回皮下投与し、続いて29日目にF027200252を最終投薬した後30日間治療せずにおいた後で、F027300252のPKおよび安全性を決定することだった。F027300252が免疫系機能性に及ぼす効果を評価するために、体液性応答を、TDARアッセイ(キーホールリンペットヘモシアニン-KLH-免疫処置後)により生存中に評価し、細胞性免疫応答を、TDAR、KLHの場合と同じ抗原を使用してin-vivo遅延型過敏症(DTH)試験およびELISPOT ex vivoアッセイで評価した。
【0270】
この研究では、合計20匹の雌実験用カニクイザル(マカク・ファシクラリス(Macaca fascicularis))を使用した。F027300252はヒト標的に高度に選択的に結合するため、本発明者らは、非ヒト霊長類を種として選択した。カニクイザルに対するF027300252の高い交差反応性に基づき、非ヒト霊長類を選択した。試験項目は、他のげっ歯または非げっ歯種に対する交差反応性ではない。したがって、入手可能なデータに基づき、薬理学および非臨床安全性試験のためにカニクイザルサルを非げっ歯種として選択した。以前の研究の背景データは、本発明者らが働く委託研究機関(CRO)であるCitoxlab Franceにて入手可能である。加えて、TDARおよびDTHアッセイは、本発明者らが働いていたこのCROで以前にカニクイザルで検証されている。
【0271】
F027300252の予備的安全性を、2週間間隔で2回投与した皮下(sc)経路による25mg/kgの反復用量カニクイザル試験で評価した(研究番号DIV1953)このTDAR-DTH組合せ研究で選択した用量は、潜在的な薬理学的用量(3および10mg/kg)およびさらに安全性評価のためのより高い用量(30および100mg/kg)の両方を包含する範囲に及ぶ。用量製剤を、29日間にわたって週1回投与し、合計で5回投与した。1日目は、試験項目および対照項目による治療期間の最初の日に対応する。
【0272】
選択した用量の薬物動態は図19に図示されている。
【0273】
KLH抗原を、1ml中10mg/動物の用量で3日目および31日目に皮下投与した(図18)。本発明者らは、Imject(登録商標)海中養殖キーホールリンペットヘモシアニン(ThermoFisher Scientific、参照番号77600)を使用した。抗KLH IgGの定量化のために、所定の計画スケジュールに従って、静脈血(1mL)を適切な静脈から素チューブに採取した。血液を室温に保って凝固するまで放置し(最大2時間)、遠心分離(約3000g、+4℃で10分間)で、得られた血清を、80μLの3アリコート+残りの容量の1アリコートに分割した。分析までチューブを-20℃で凍結保存した。抗KLH IgGレベルを、Citoxlab Franceで開発および検証された特定のELISA法(抗KLH IgGに関するCitoxlab France/研究番号41106RD)を使用して測定した。2つの期間(3日目[KLH注射前]~31日目[KLH注射前]および31日目[KLH注射前]~59日目)の各々について、曲線下面積(AUC)を、各々の動物について算出した。AUC値を、対数(log10(数値+1))に変換し、ウィルコクソン検定を使用して期間ごとに分析した。
【0274】
予想通り、IgGによるKLHに対する一次応答は軽微だった。KLHへの2回目の曝露後、ビヒクル対照処置群において強力な抗KLH IgG応答が誘発された。F027300252による治療は、試験した最も低い用量からそれよりも高い用量でこの応答の強力な阻害をもたらした(図20)。TNFα(抗hTNFα参照mAb)およびOX40L(抗hOX40L参照mAb)に対するモノクローナル抗体ツールを使用した予備研究のデータと比較して、F027300252研究のAUCをプロットした(図21)。F027300252(図21では「nanobody」と呼ばれる)で試験した最も低い用量(3mg/kg)でさえ、本発明者らは、抗hOX40L参照mAbおよび抗hTNFα参照mAb単独治療と比較して、より顕著なAUCの低減を観察した。
【0275】
剖検時に、本発明者らは、末梢血単核細胞(PBMC)をサルから採取し、同じ抗原(KLH)を使用してex vivoで再刺激し、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイで細胞性免疫応答を測定した。ELISPOTアッセイは、サイトカイン分泌細胞の頻度を単一細胞レベルで測定する高感度イムノアッセイである。このアッセイでは、アッセイされているサイトカイン(この場合はIFN-γおよびIL-4)に特異的な捕捉抗体で事前コーティングされた96ウェルプレートのウェルに細胞を播種した。刺激の存在下(または非存在下)で細胞により分泌されるサイトカインを、分泌細胞の近傍のウェル底の表面にある特異的抗体で捕捉した。適切なインキュベーション時間後、細胞を除去し、ビオチン化検出抗体を使用して、分泌されたサイトカインを視覚化した。数回の洗浄工程の後、ストレプトアビジンとカップリングされた酵素(アルカリホスファターゼ)を添加した。次いで、沈殿基質を使用することにより、固定化されたサイトカインをImmunoSpot(つまり、個々のサイトカイン分泌細胞)として明らかにした。各PBMC試料に対して、KLHによる刺激後のIFN-γおよびIL-4分泌細胞の頻度を分析した。
【0276】
ELISPOTプレートを、Immunospot(登録商標)ELISPOT分析装置を使用して試験施設にて数値的にスキャンした(個々のウェルの画像をこの機器で撮影した)。次いで、スポット計数評価用の専用ソフトウェアで画像を分析した。各ウェルにおけるスポットの存在およびスポットの数を評価し、IFN-γまたはIL-4スポット形成細胞(sfc)の数として表される対応する結果を算出した。sfcの数を、PBMC100万個当たりに正規化した。
【0277】
ビヒクル対照動物に由来する刺激細胞は、IFN-γ(図22)およびIL-4(図23)のいずれも顕著な増加を示した。処置すると、両サイトカインは、F027300252について試験したすべての用量で顕著に減少した(図22および23)。
【0278】
結論として、こうした結果は、抗TNF-OX40L ISVD構築物が、非ヒト霊長類で実施したT細胞依存性抗体応答機序証明モデルにおいて、抗原提示細胞、T細胞、B細胞間の相互作用を強力に阻害したことを実証している。
【0279】
非ヒト霊長類研究の第2の部分では、生存中の細胞性免疫応答を評価するために、皮膚におけるin vivo遅延型過敏症(DTH)の読取りに焦点を当てた。破傷風トキソイド(TTx)および水酸化アルミニウムを抗原として使用した。図18に記載されている通りにDTH負荷を適用した。長さ約21cm×幅3cmのグリッド(つまり、一辺が3cmの正方形)を、背中の各側の皮膚に消えない外科用ペンで区切った(図24)。各正方形の中央の点は注射部位を示す。注射部位をグルコン酸クロルヘキシジン溶液(Antisept(登録商標)スプレー)で消毒した。
【0280】
抗原(TTx/ALUおよびKLH)を、注射日に6つの正方形の中央部に各々注射した。滅菌単回使用29G針を取り付けた単回使用滅菌プラスチック注射器を使用し、皮膚を伸ばし、針を皮膚の厚さに(斜角に)導入することにより、皮内注射を実施した。注射部位にわずかな小胞が現れた。次いで、針を皮膚から素早く引き抜いた。
【0281】
DTHの生存期中、以下のパラメーターを評価し、文書化した(表15)。
【0282】
【表23】
【0283】
上記に列挙されているパラメーターはいずれも、F027300252による治療効果の明確な傾向を示さなかった。これは、組織病理学的評価および免疫組織化学のほうが、このモデルのDTH部分の生存期中の皮膚肉眼的変化と比較して、より高感度に差異を実証する可能性があることを示す。
【0284】
免疫組織化学では、以下のマーカーを評価した:CD3(Tリンパ球)、CD4(Tヘルパー細胞)、CD8(細胞傷害性T細胞)、CD30(Bリンパ球)、CD68(マクロファージ)、Ki67(増殖マーカー)、およびFoxP3(T制御性細胞)。従来のH&E組織病理学および免疫組織化学(IHC)染色の結果は、下記にまとめられている。
【0285】
第1の抗原であるTTx/ALUの場合、34日目では、免疫応答はマクロファージが優勢だった。炎症の重症度にわずかな用量依存性減少が観察され、最も高い用量で最も顕著な効果が観察された。免疫組織化学は、試験した最も高い用量では、すべてのマーカーのスコアが顕著に減少し、主にマクロファージが減少したことを明らかにした。59日目の剖検では、34日目と比較して全体的にわずかにより低い炎症応答が観察された。34日目と同様に、IHCは、増殖マーカーKi67に対して効果が最も顕著であったことを明らかにした。全体として、効果は、F027300252について試験した最も高い用量で最も顕著だった。
【0286】
試験した第2の抗原であるKLHの場合、34日目の観察では、好酸球顆粒球が優勢な免疫応答が示された。全体として、炎症応答は、34日目のTTX/Aluと比較してより低く中程度であった。IHCは、試験した最も高い用量ですべてのマーカーのスコアが顕著に減少し、主にCD8+、CD20、およびKi67が減少したことを明らかにした。59日目では、炎症応答は、この場合も59日目のTTX/Aluと比較してより低く中程度であり、34日目のKLHと比較してより低く最小限だった。これは、観察された炎症の重症度における明らかな用量応答性を伴う最小の減少だった。34日目と同様に、IHCは、CD3、CD8+、CD20、およびFoxP3が主に減少し、それらに対して、試験した最も高いF027300252の用量で効果が最も顕著であったことを明らかにした。
【0287】
全体として、記載のデータは、IFN-γおよびIL4放出を測定するKLH誘導性ex vivo ELISPOTアッセイで確認されたTNFαおよびOX40Lを標的とする新規多重特異性ISVD構築物であるF027300252による非ヒト霊長類T細胞依存性抗体応答(TDAR)モデルおよび遅延型過敏症(DTH)モデルの組合せにおける機序証明を提供する。
【0288】
6.16 実施例16:異種移植片対宿主病モデルにおける抗TNF/OX40L ISVD構築物F027300252の評価。
抗TNFα/OX40L ISVD構築物F027300252のin vivo効能を、異種移植片対宿主病(xeno-GVHD)のモデルで評価した。このモデルでは、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を、放射線照射した免疫不全NOD-scid IL2rgamma(null)(NSG)マウスに注射した(Kingら、(2009年)、Clin Exp Immunol.,157巻(1号):104~118頁)。移植したhPBMCは、主要組織適合遺伝子複合体依存的様式でマウス宿主を攻撃し、急性GVHDの症状に結び付く(Brehmら、(2019年)、FASEB J.、33巻(3号):3137~3151頁)。
【0289】
最低6齢の雌NSGマウスを、それぞれの治療群に等しく無作為化した。2×10個のhPBMCを静脈内(iv)注射する1日前に、マウスを1Gγで放射線照射した。以下のスコア付け方式を使用して、動物を個々にオペレーター盲検形式で週3回スコア付けした(Riesnerら、(2016)年、Bone Marrow Transplant.、51巻(3号):410~417頁):
【0290】
【表24】
【0291】
こうしたパラメーターを合計することによりGVHDスコアを決定した。単一のスコアが2に達するか、または累積スコアが6を超えた場合、動物を安楽死させた。宿主マウスにおけるhPBMC生着の程度は、フローサイトメトリーを使用して宿主マウスの末梢血中の全CD45+細胞からヒトCD45+細胞を決定することにより評価した。二重特異性抗TNF/OX40L Nanobody F027300252(10mg/kg)を1日目から始めて週3回IP投与し、アイソタイプ処置対照動物と比較した。動物はすべて、ドイツ動物福祉政府機関の許可に基づき、Sanofi社の実験動物福祉委員会により承認された研究プロトコールに関する施設内動物管理使用委員会のガイドラインに従って投薬およびモニターした。
【0292】
異種GVHDマウスモデルにおけるISVD構築物の標的としてのTNFおよびOX40Lを検証するために、150nmol/kg抗ヒトTNF ISVD F027500018、150nmol/kg抗ヒトOX40L ISVD F027300044、または二重特異性抗TNF/OX40L ISVD F027300252(150nmol/kg)を、1日目から始めて週3回IP投与し、アイソタイプ処置対照動物と比較した。宿主マウスにおけるGVHDの最初の症状は、hPBMC注射後2週間以内に観察された。アイソタイプ処置対照動物では、GVHDスコアは、この群のすべてのマウスが死亡するかまたは上記に記載の人道的エンドポイントに達して安楽死させたかいずれかであることが見出されるまで、研究の進行と共に継続的に増加した。TNFの遮断は、疾患発症に対して軽度の効果しか及ぼさなかったが、OX40L遮断は、疾患発症を有意に改善することができた(図25)。F027300252での治療による二重標的化は、OX40L遮断単独で観察されたものと同様の疾患発症をもたらした。結果的に、F027500018治療群の生存期間はわずかに延長されたが、F027300044単独またはF027300252との抗TNF/OX40L併用治療は、さらなる生存期間の延長をもたらした(図26)。加えて、F02730044またはF027300252のいずれかを使用したOX40Lの遮断は、宿主マウスにおけるヒトCD45+細胞の生着を阻害する傾向があった(図27)。
【0293】
異種GVHDマウスモデルにおける二重特異性抗TNF/OX40L ISVD F027300252を評価するために、追加のデータを収集し、2つの独立研究の結果をプールした。GVHD発症は、hPBMC移植マウスで数日以内に観察された。アイソタイプISVDのみを受け取った動物の50%は、移植後5週間以内に死亡したかまたは中止基準に達したことが見出された。F027300252治療は疾患発症を予防しなかったが、疾患進行を改善することができ(図28)、結果的に、F027300252治療マウスの生存期間を延長することができた。動物の50%よりも多くが、9週目以降も依然として生きていた(図29)。一部の場合では、F027300252で治療したマウスは、疾患から回復し、研究が終了するまで生存することができた。さらに、F027300252の適用は、宿主NSGマウスにおけるヒトCD45+細胞の生着を阻害することが見出された(図30)。これは、疾患発症の遅延および生存の延長と相関している。
【0294】
まとめると、こうした結果は、異種GVHDマウスモデルにおけるOX40L遮断およびF027300252治療の効能を実証している。
【0295】
6.17 実施例17:抗TNF抗体および二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199による、ヒト全血でのPHA誘導性IL-8放出の阻害。
抗TNFαモノクローナル抗体(mAb)RA14956298(Sanofiから)ならびに二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199(すべてSanofiから)の、ヒト全血でのPHA誘導性IL-8放出の阻害に対する効果を測定するため、健常ヒトドナーに由来する血液を、抗凝固剤としてのNa-ヘパリン[17IU/ml]の存在下でバキュテナー採血管(BD#368480)に採取した。PHA-L(フィトヘマグルチニン-L;Merck Milliporeから;注文番号#M5030)を、ストック溶液[1mg/ml]として滅菌水で再構成し、[50μg/ml]PHA-Lを有する作業溶液を調製した。陰性対照抗体RA11944493(Sanofi;IgG1アイソタイプ対照)、陽性対照抗体RA14956298(Sanofiから、陰性対照VHH IRR00119(Sanofi/Ablynxから)、ならびに二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD構築物F027300252、F027301104、F027301189、F027301197、およびF027301199(すべてSanofi/Ablynxから)の作業溶液を、PBSで500nMに調製した。
【0296】
培地[RPMI-1640(Gibcoから;注文番号61870-010)+10%ヒトAB血清(Sigmaから;注文番号H3667)+1%PenStrep(Gibcoから;注文番号15140-122)]中8pM~25nMの最終濃度の抗体およびISVD構築物の系列希釈物25μLを、96ウェルマイクロプレート(V底、PP;Eppendorfから;注文番号0030601300)に添加した。ヒト血液200μLを各ウェルに添加し、プレートに蓋をして室温で30分間インキュベートした。PHA-Lを、培地[RPMI-1640+10%ヒトAB血清+1%PenStrep]で50μg/mlの濃度に希釈し、培地中のこのPHA-L25μlを、96ウェルプレートのヒト血液と抗体またはISVD構築物とのプレインキュベーション混合物の各ウェルに添加した。試料を穏やかに混合し、プレートを滅菌蓋で密封し(Thermo Scientificプレートシーラーを使用、注文番号236366)、プレートを37℃、5%CO2、95%rHで6時間インキュベートした。インキュベーション後、加速および破壊のために中間勾配を使用して、血液試料を2000×gで12分間遠心分離した。血漿上清を回収し、ELISAによるさらなる分析のために、新しい96ウェルマイクロプレートにて-80℃で保管した。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;Invitrogenから;カタログ番号88-8086)を使用してIL-8のレベルを決定し、製造元が提供するプロトコールに従ってヒトIL-8を定量的に検出した。3人の血液ドナーの結果に基づき、SpeedのXLfitプログラムを、図31の用量反応曲線のフィッティングおよびIC50値の計算に使用した。
【0297】
陰性対照抗体RA11944493または陰性対照VHH IRR00119と共にヒト全血をインキュベーションしても、PHA誘導性IL-8放出の阻害には一切結び付かなかった(データ非表示)。対照的に、単一特異性抗TNFモノクローナル抗体(mAB)RA14956298と共にヒト全血をインキュベーションすると、PHA誘導性IL-8放出の強力な阻害に結び付き、IC50は0.96nM(±0.08SEM)だった(図31)。二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD構築物F027300252と共にヒト全血をインキュベーションすると、PHA誘導性IL-8放出のさらにより強力な阻害に結び付き、IC50は0.33nM(±0.09SEM)だった(図31)。二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD構築物F027301104、F027301197、およびF027301199も、PHA誘導性IL-8放出の強力な阻害に結び付き、IC50値は、それぞれ、0.8233(±0.4SEM)、0.5667(±0.27SEM)、0.3133(±0.08 SEM)だった(図31)。二重特異性抗TNFa/抗OX40L ISVD構築物F027301189は最も低い効力を示し、IC50は2.143(±1.54SEM)だった(図31)。
【産業上の利用可能性】
【0298】
7 産業上の利用可能性
ポリペプチド、それをコードする核酸分子、核酸を含むベクター、および本明細書に記載の組成物は、例えば、自己免疫性または炎症性疾患に罹患している対象の治療に使用することができる。
図1
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図30
図31
図32
【配列表】
2023505490000001.app
【国際調査報告】