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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】半導体ウエハを分割する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H01L21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534681
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 IB2020001039
(87)【国際公開番号】W WO2021116768
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】16/707,579
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】サントス ロドリゲス, フランシスコ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ハンス-ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】スワボダ, マルコ デーヴィッド
(57)【要約】
【課題】 半導体ウエハを分割する方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウエハを分割する方法は、半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層を有する半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、キャリアは、複数の装置構造を保護し、且つ半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ウエハの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及び半導体ウエハが2つの別個の断片に分割するように、半導体ウエハに外部力を印加するステップであって、断片の1つは、複数の装置構造を保持する、ステップとを含む。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを分割する方法であって、
前記半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、
前記1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、
前記複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、
前記1つ又は複数のエピタキシャル層を有する前記半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、前記キャリアは、前記複数の装置構造を保護し、且つ前記半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、
前記半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップであって、前記分離領域は、前記半導体ウエハの残りの部分に対して前記分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、
少なくとも1つのクラックが前記分離領域に沿って伝播し、かつ前記半導体ウエハが2つの別個の断片に分割するように、前記半導体ウエハに外部力を印加するステップであって、前記断片の1つは、前記複数の装置構造を保持する、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記半導体ウエハ内に前記分離領域を形成するステップは、前記半導体ウエハ内のターゲット位置で前記半導体ウエハの材料を損傷させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置で前記半導体ウエハの前記材料を損傷させるステップは、前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置において前記材料内にプラズマを生成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置において前記材料内に前記プラズマを生成するステップは、前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置でレーザー放射を合焦するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置で前記半導体ウエハの前記材料を損傷させるステップは、前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置に対応する深さで前記半導体ウエハ内にイオンを注入するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンは、窒素イオン、リンイオン、水素イオン及びヘリウムイオンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンの注入ドーズは、前記注入されたイオンによって損傷された前記半導体ウエハの前記材料が非晶質であるか、又は空洞が生成されるように選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置で前記半導体ウエハの前記材料を損傷させるステップは、
前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置に対応する深さで前記半導体ウエハ内にイオンを注入するステップと、
前記イオンが注入された後、前記半導体ウエハ内の前記ターゲット位置でレーザー放射を合焦するステップと
を含み、前記注入されたイオンは、前記レーザー放射の波長で前記分離領域内において吸収係数を増大させる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記分離領域又はその下方における深さまで、前記半導体ウエハの面取りされたエッジを薄化するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分離領域まで横方向に延在する、前記半導体ウエハの面取りされたエッジ内にスロットを形成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記半導体ウエハに前記外部力を印加するステップは、超音波振動を前記半導体ウエハに印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体ウエハに前記外部力を印加するステップは、
前記半導体ウエハ及び/又は前記キャリアにポリマーを適用するステップであって、前記ポリマーは、前記半導体ウエハのCTE(熱膨張係数)と異なるCTEを有する、ステップと、
前記ポリマー及び前記半導体ウエハを、前記ポリマーが機械的応力を前記半導体ウエハに付与する温度プロセスに供するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記温度プロセスは、前記ポリマーが前記温度プロセス中に部分的なガラス遷移及び部分的な結晶化を受けるように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度プロセスは、前記ポリマー及び前記半導体ウエハが開始温度から下方に室温までの温度勾配を受ける第1フェーズであって、前記開始温度は、300℃以下であるが、室温超である、第1フェーズと、前記ポリマー及び前記半導体ウエハが前記ポリマーのガラス遷移温度未満の温度まで更に冷却される第2フェーズとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記温度プロセス前に、前記ポリマーの熱伝導率を増大させ、且つ前記ポリマーの貯蔵弾性率の傾きを低減する1つ又は複数のフィラーを前記ポリマーに追加するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は複数のフィラーは、ZnO及び/又はカーボンブラックを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーを適用する前に、前記ポリマーの表面、及び/又は前記半導体ウエハの表面、及び/又は前記キャリアの表面を化学的及び/又は物理的に処理するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのクラックは、前記温度プロセス中に発生する前記ポリマーの部分的な結晶化中に伝播する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記半導体ウエハに前記外部力を印加するステップは、前記2つの別個の断片への前記半導体ウエハの前記分割中に前記半導体ウエハに圧力を印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体ウエハが前記2つの別個の断片に分割された後、前記半導体ウエハの両方の断片の分離表面の表面粗度を低減するステップであって、それぞれの分離表面は、前記少なくとも1つのクラックが前記分離領域に沿って伝播するにつれて形成される表面である、ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記分離領域の前記少なくとも1つの変更された物理的特性は、前記分離領域内で相互に少なくとも部分的に切断されている複数の微細なクラックを含み、前記複数の微細なクラックは、前記分離領域に沿って伝播する前記少なくとも1つのクラックを形成するために、前記外部力に応答して相互に接続する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記半導体ウエハは、SiCウエハであり、前記外部力に応答して前記複数の微細なクラックの前記接続によって形成された前記少なくとも1つのクラックは、鋸歯パターンを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
半導体ウエハを分割する方法であって、
前記半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、
前記1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、
前記複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、
前記1つ又は複数のエピタキシャル層を有する前記半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、前記キャリアは、前記複数の装置構造を保護し、且つ前記半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、
分離領域が前記半導体ウエハの残りの部分に対して増大した熱-機械応力を有し、かつ少なくとも1つのクラックが前記分離領域に沿って伝播するように、前記半導体ウエハ内の前記分離領域にレーザー放射を印加するステップと、
前記少なくとも1つのクラックに沿って前記半導体ウエハを2つの別個の断片に分割するステップであって、前記断片の1つは、前記複数の装置構造を保持する、ステップと
を含む方法。
【請求項24】
半導体ブールから半導体ウエハを分割する方法であって、
前記半導体ブール内に分離領域を形成するステップであって、前記分離領域は、前記半導体ブールの残りの部分に対して前記分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、
少なくとも1つのクラックが前記分離領域に沿って伝播し、かつウエハが前記半導体ブールから分割するように、前記半導体ブールに外部力を印加するステップと
を含む方法。
【請求項25】
前記半導体ブールに前記外部力を印加するステップは、
ポリマーを前記半導体ブールに適用するステップであって、前記ポリマーは、前記半導体ブールのCTE(熱膨張係数)と異なるCTEを有する、ステップと、
前記ポリマー及び前記半導体ブールを、前記ポリマーが機械的応力を前記半導体ブールに付与する温度プロセスに供するステップと
を含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ウエハは、炭化ケイ素(SiC)半導体装置の製造費用全体の大きい比率を構成する。この費用を低減することにより、競争上の優位性が得られる。ウエハ費用を低減するための1つの方法は、少なくとも2回にわたって標準ウエハを使用することであり、即ち装置構造を生成した後、SiCウエハは、分割され、装置構造を含まないより薄い再生されたウエハの部分は、更なる装置構造を形成するために再使用される。標準SiC製造プロセスにSiCウエハの分割を統合することが必要とされ、これは、複雑であり、且つ効率的な製造をもたらすために製造プロセスに対する変更/変形を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従って、効率的であり且つ費用重視の方式におけるSiCウエハの分割及びSiC生成プロセスの統合に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
当然のことながら、本発明は、上述の特徴及び利点に限定されない。実際に、当業者は、以下の詳細な説明を参照し、且つ添付の図面を観察することで更なる特徴及び利点を認識するであろう。
【0004】
半導体ウエハを分割する方法の一実施形態によれば、方法は、半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層を有する半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、キャリアは、複数の装置構造を保護し、且つ半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ウエハの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及び半導体ウエハが2つの別個の断片に分割するように、半導体ウエハに外部力を印加するステップであって、断片の1つは、複数の装置構造を保持する、ステップとを含む。
【0005】
半導体ウエハを分割する方法の別の実施形態によれば、方法は、半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層を有する半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、キャリアは、複数の装置構造を保護し、且つ半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、分離領域が半導体ウエハの残りの部分に対して熱-機械応力を増大させており、及び少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播するように、半導体ウエハ内の分離領域にレーザー放射を印加するステップと、少なくとも1つのクラックに沿って半導体ウエハを2つの別個の断片に分割するステップであって、断片の1つは、複数の装置構造を保持する、ステップとを含む。
【0006】
半導体ブールから半導体ウエハを分割する方法の一実施形態によれば、方法は、半導体ブール内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ブールの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及びウエハが半導体ブールから分割するように、半導体ブールに外部力を印加するステップとを含む。
【0007】
当業者は、以下の詳細な説明を参照し、且つ添付の図面を観察することで更なる特徴及び利点を認識するであろう。
【0008】
図面の要素は、必ずしも相互に対して縮尺が正確ではない。同一の参照符号は、対応する類似の部分を表記する。様々な図示の実施形態の特徴は、相互に排除しない限り、組み合わせることができる。実施形態は、図面に描かれ、且つ以下の説明で詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】一実施形態によるウエハ分割プロセスの異なるステージにおける半導体ウエハの断面図を示す。
図1B】一実施形態によるウエハ分割プロセスの異なるステージにおける半導体ウエハの断面図を示す。
図1C】一実施形態によるウエハ分割プロセスの異なるステージにおける半導体ウエハの断面図を示す。
図1D】一実施形態によるウエハ分割プロセスの異なるステージにおける半導体ウエハの断面図を示す。
図1E】一実施形態によるウエハ分割プロセスの異なるステージにおける半導体ウエハの断面図を示す。
図2】ウエハ分割プロセスで使用されるキャリアの別の実施形態の断面図を示す。
図3】半導体基材内に形成された分離領域の一部分を示し、これは、分離領域内で少なくとも部分的に相互に切断される微細なクラックを含む。
図4A】ウエハ分割プロセスで使用され、且つフィラーを含まないポリマーにおける貯蔵弾性率対温度のプロットを示す。
図4B図4Aにおける、しかし1つ又は複数のフィラーを含むポリマーにおける貯蔵弾性率対温度のプロットを示す。
図5A】異なる実施形態による半導体ウエハの面取りされたエッジの断面図を示す。
図5B】異なる実施形態による半導体ウエハの面取りされたエッジの断面図を示す。
図5C】異なる実施形態による半導体ウエハの面取りされたエッジの断面図を示す。
図5D】異なる実施形態による半導体ウエハの面取りされたエッジの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に以上の説明及び関連する図面に提示される教示の利益を有する当業者には、開示される本発明の変更形態及び他の実施形態が想起されるであろう。従って、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、且つ変更形態及び他の実施形態も本開示の範囲に含まれることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で利用され得るが、これらは、限定を目的とするものではなく、一般的且つ記述的な意味でのみ使用される。
【0011】
本明細書に記述される実施形態は、半導体装置の製造に関連する製造費用を低減する半導体ウエハの分割プロセスを対象とする。SiCウエハ及びSiCウエハを使用して生成されるSiC装置に重点が置かれているが、本明細書に記述される実施形態は、SiCウエハに限定されることを意図せず、且つケイ素(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、サファイアなどの他の半導体ウエハ技術と共に使用することができる。装置構造は、ベース(厚い)半導体ウエハ内で生成され、及びベースウエハは、後に、装置構造を含むより薄い装置ウエハと、より薄い再生されたウエハとに分割される。再生されたウエハは、加工することができると共に、再生されたウエハ内で更なる装置を製造することができる。
【0012】
本明細書に記述されるウエハ分割技法は、(i)半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ウエハの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、(ii)少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及び半導体ウエハが2つの別個の断片に分割するように、半導体ウエハに外部力を印加するステップとの少なくとも2つの主なステップを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、分離領域を形成するステップは、分離領域内において、少なくとも部分的に相互に切断されている微細なクラックを形成するステップを含む。微細なクラックは、半導体ウエハに印加された外部力に応答して相互に接続し、これにより、分離領域に沿って伝播し、且つ半導体ウエハを2つの別個の断片に分割する少なくとも1つのクラックを形成する。接続したクラックを単一ステップ/プロセスで生成するのとは対照的に、まず微細クラックを生成し、且つその後、微細クラックを接続することにより、材料の浪費/損失を低減することができる。
【0014】
半導体ウエハに印加される外部力は、例えば、超音波振動又はポリマー層の適用を伴い得る。分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する分離領域を最初に生成することなく、超音波振動又はポリマー層のみを使用する半導体ウエハの分割は、少なくとも1つのクラックの進展として発生する分割中の音響反射の現象に起因して、ウォルナーライン、リバーラインなど、制御されない分割及び望ましくない表面構造をもたらし得る。
【0015】
以下では、半導体ウエハ分割プロセスの様々な実施形態について説明する。
【0016】
図1A図1Eは、一実施形態による分割プロセスの様々なステージにおける半導体ウエハ100の断面図を示す。上述のように、半導体ウエハ100は、半導体装置を生成するために使用される任意のタイプのウエハであり得る。例えば、半導体ウエハは、4H-SiCなどのSiCウエハであり得、且つウエハ直径に応じて変化し得る厚さ(T_wafer)を有し得る。通常、4インチ及び6インチSiCウエハは、例えば、最大で±40μm又は最大で±25μmの精度により、350μm(ミクロン)の厚さを有する。更に大きいSiCウエハ直径の場合、厚さも更に大きくなり得る。また、本明細書に記述されるウエハ分割プロセスは、上述のように、プロセスパラメータの対応した適合を伴って、他のSiCポリタイプ及び/又は他の半導体材料(例えば、Si、GaAs、GaN、サファイアなど)と共に使用することができる。
【0017】
図1Aは、1つ又は複数のエピタキシャル層102が半導体ウエハ100上に形成され、装置構造104が1つ又は複数のエピタキシャル層102内に形成され、金属化層及び/又はパッシベーション層106(例えば、少なくとも1つのパッシベーション層)が装置構造104上に形成され、及びキャリア108が1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に装着された後の半導体ウエハ100を示す。層106は、連続的な層として断面で示されるが、これは、代わりに不連続であり得る。例えば、パッシベーション層の場合、層106は、装置構造104の上方にのみ存在し得る。金属化層の場合、層106は、パターン化することができる。キャリア108は、分割プロセスにおいて及び/又はその後、装置構造104を損傷から保護し、且つ半導体ウエハ100を機械的に安定化させる。
【0018】
装置構造104のドーピング領域110、112、114は、後続のアニーリングステップを有する注入又はエピタキシャルプロセスにおけるドーピングにより生成される。例えば、第1堆積エピタキシャル層114は、例えば、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又はパワーダイオード装置の10μm~50μmなどの範囲の厚さを有するnドープ型ドレイン若しくはエミッタ層又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)装置のpドープ型エミッタ層であり得る。第2エピタキシャル堆積層(図示されていない)は、エミッタ/ドレイン層114に向かう空間電荷層のパンチスルーを防止するためのバッファ層として堆積することができる。バッファ層の厚さは、通常、1~40μm又は2μm~30μmである。次いで、n型ドリフトゾーン層112をエピタキシャル技法によって堆積することができる。ドリフトゾーン層112の厚さは、ターゲットブレークダウン電圧に依存する(1200V装置の場合、通常、8μm~12μmの範囲であり、及び3.3kV装置の場合、25μm~35μmの範囲である)。また、ドリフトゾーン層112のドーピングレベルは、望ましいブレークダウン電圧に従って調節することができる(1200V装置の場合、通常、約1016cm-3であり、及び3.3kV装置の場合、1015cm-3の数倍である)。パワーMOSFET又はIGBTのpボディ及びソース領域又はパワーダイオードのpエミッタなどの前面装置構造110は、後続のアニーリングステップを伴ってマスキングされたイオン注入によって形成することができる。また、スイッチング可能な装置の場合、ゲート構造は、平坦な又はトレンチに基づくゲートの形態で実現される。
【0019】
装置形成後、半導体ウエハ100は、装置構造104並びに前面金属化層及び/又はパッシベーション層106を有する前面を有する。装置構造104は、例えば、MEMS(微小電子機械システム)及び/若しくはMOEMS(微小光電気機械システム)装置などの半導体装置並びにMPS(マージドpinショットキー)ダイオード、ショットキーダイオード、MOSゲート型ダイオードなどのダイオード若しくはMOSFET、JFET(接合型FET)、IGBT、フィンFET、サイリスタなどのトランジスタ装置又はこれらの組合せの構造であり得る。装置構造104がショットキー接点を含む場合、前面金属化層106は、ショットキー接点金属を含み得る。加えて又はショットキー接点を有しない場合の代替として、前面金属化層106は、オーム接点金属を含むこともできる。
【0020】
図1Bは、半導体ウエハ100内に分離領域116を形成した後の半導体ウエハ100を示す。分離領域116は、半導体ウエハ100の残りの部分に対して分離領域116内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する。分離領域116を形成する前又は後に、装置構造104を損傷から保護し、且つ分割プロセスにおいて及び/又はその後、半導体ウエハ100を機械的に安定化させるキャリア108を、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に装着することができる。キャリア108は、材料の単一片又は複数の層及び/又は複雑な構造を含むキャリアシステムであり得る。
【0021】
キャリア108の形状は、半導体ウエハ100の形状と類似したものであり得るか、又は場合により同一であり得る。半導体ウエハ100は、ウエハ100の結晶面を示すための1つ又は複数の面内に切削された平らな面を有し得る一方、キャリア108は、このような平らな面を有しなくてもよい。キャリア108は、例えば、少なくとも0.1%だけ大きいものなど、半導体ウエハ100よりも大きい直径を有し得る。キャリア108の直径は、例えば、半導体ウエハ100の直径の最大で3倍、又は最大で2倍、又は最大で1.5倍であり得る。キャリア108の機械的に安定化させる部分及び/又はキャリア108の任意選択の固定層は、例えば、図1A図1Eに示されるように、半導体ウエハ100の前面を完全にカバーし得る。代わりに、機械的に安定化させる部分及び/又はキャリア108の任意選択の固定層は、図2に示されるように、ウエハ100の表面に沿って半導体ウエハ100の前部(活性を有する)面を複数のセクションに分割する。この実施形態によれば、キャリア108の機械的に安定化させる部分及び/又は任意選択の固定層は、リング、グリッドの形状を有し得、且つ/又は例えばウエハ100の外側/周辺部分における交差したリングなどのように、半導体ウエハ100の周辺領域内にのみ存在し得る。それぞれの場合、装置構造104のトポグラフィは、例えば、キャリア108と、1つ又は複数のエピタキシャル層102及び前面金属化106を有する半導体ウエハ100との間のポッティング材料並びに/又は接着層及び/若しくは非接着層118により、キャリア108内に埋め込むことができる。
【0022】
キャリア108は、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に一時的に(反転可能な方式で)又は永久的に装着することができる。一時的な装着の場合、キャリア108は、熱又はUV解放型の接着テープ、透明基材、非透明基材、ポリマー薄膜などの剛性支持部との組合せにおける接着(有機又は無機組成)層、固定された又は可動式の静電チャック、固定された又は可動式の真空チャック、可動式の真空キャリアなどを含み得る。永久装着の場合、キャリア108は、例えば、グリッド、リングなどの形態のホットエンボスガラス、はんだガラスを介して装着されたガラスグリッド及び/又はリング、レーザー溶接プロセスなど介して装着されたガラスグリッド及び/又はリング、1つ又は複数の拡散はんだ付け層を介して1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に結合された半導体、金属、絶縁体(例えば、ガラス)基材などの基材、好気性及び/又は嫌気性接着剤又は他の接合コンポーネントなどを介して1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に結合された基材を含み得る。
【0023】
分離領域116は、画定された位置における半導体ウエハ100の分割を許容する。さもなければ、結晶損傷などによって影響され得るランダムな位置で分割が発生することになるであろう。更に、画定された分離領域116を伴うことなしには、再現可能な製造がより困難となり、なぜなら、装置ウエハ及び/又は再生されたウエハの一部のみが使用可能となるためである。明確に画定された分離領域116は、ウエハの分割における材料損失(カーフ損失とも呼称される)を大幅に低減する。分離領域116の厚さ(t_sep)がカーフ損失を定義し得る。例えば、損失は、微細なクラックの垂直方向の広がりと、化学的、機械的、電気化学的及び/又はプラズマ材料除去に起因した更なる損失とに由来し得る。
【0024】
分離領域116の位置は、装置構造104を画定した後、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100の前面までの距離「d1」が、分割プロセスの結果として得られるより薄い装置ウエハの機械的な取り扱いを許容するために十分に大きくなり、且つ分割プロセスの結果として得られる再生されたウエハが依然として加工され得るように、前面までの距離d1が十分に小さくなり、及び従って背面までの距離「d2」が十分に大きくなるように選択することができる。一実施形態では、分離領域116は、ウエハ100と、第1堆積エピタキシャル層114(パワーMOSFETの基材/ドレイン層又はダイオードの基材/エミッタ層)との間のインターフェイスに近接する。通常、分離領域116と、ウエハ100と第1堆積エピタキシャル層114との間のインターフェイスとの間の距離は、10μm未満であるか、又は場合により4μm未満であるか、又は場合により2μm未満である。
【0025】
一般に、例えば、機械的な力及び熱応力をウエハ100に印加することにより、半導体ウエハ100の残りの部分と比較して熱-機械応力を分離領域116内で増大させ、これにより装置ウエハ及び再生されたウエハへの半導体ウエハ110の分割を単純化することができる。分離領域116内に生成される熱-機械応力は、必ずしも外部力の印加を必要とせずにウエハの分割をもたらすために十分なものであり得る。例えば、分離領域116が半導体ウエハ100の残りの部分に対して増大した熱-機械応力を有し、及び少なくとも1つのクラックが分離領域116に沿って伝播し、且つこれにより外部力の使用を伴うことなしにウエハの分割を可能にするように、レーザー放射を分離領域116に印加することができる。しかし、外部力は、分割されたウエハ断片の1つを持ち上げ、且つ/又はウエハの分割を支援するために依然として適用することができる。
【0026】
一実施形態では、分離領域116は、ターゲット位置で半導体ウエハ100の材料を損傷させることによって形成される。例えば、ウエハ材料としてのSiCの場合、SiC材料を損傷させることができる。いくつかの場合、SiCは、例えば、少なくとも部分的にSiとCとに分解することができる。これは、例えば、半導体ウエハ100内のターゲット位置においてSiC材料内にプラズマを生成することによって実行することができる。プラズマ内の原子の少なくとも一部分は、例えば、非晶質炭素及び/又は非晶質ケイ素の形態で炭素クラスタ及びケイ素材料に変化することができる。加えて又は代替として、原子の少なくとも一部分は、例えば、SiCの少なくとも1つのポリタイプ(例えば、4H-SiC、6H-SiC又は3C-SiC)又は非晶質SiCに再結晶化、半結晶化及び/又は再組織化され得、この場合、Si及びC相の両方が非晶質である。いくつかの例では、分離領域106は、(例えば、微小結晶の形態における)SiC、又はケイ素、又は炭素の少なくとも1つのポリタイプの結晶質部分、SiC、又はケイ素、又は炭素の非晶質部分及び/又はキャビティの少なくとも1つを有することができる。
【0027】
一実施形態では、半導体ウエハ100内のターゲット位置でレーザー放射を合焦することにより、プラズマは、半導体ウエハ100内のターゲット位置において材料内に生成される。半導体ウエハ100は、装置構造104の反対側の背面又は装置構造104を有する前面を通して照射され得、且つウエハ100内でプラズマを点火するためにウエハ100内の明確に画定された領域に合焦され得、この結果、レーザー照射された半導体材料がその構成成分に分解される。例えば、SiCの場合、レーザー照射されたSiCは、SiC→Si+Cに従って分解される。レーザー放射との相互作用は、例えば、上述のように異なる材料相をもたらし得、且つ/又は半導体ウエハ100内に微細なクラックをもたらし得る。前面を通したレーザー放射による半導体ウエハ100の照射は、好ましくは、装置構造104を生成する前又は少なくとも前面の金属化106を生成する前に実行され、なぜなら、レーザー放射が装置構造104を損傷し得、及び金属化106がレーザー放射にとって透明ではないからである。
【0028】
分離領域116が、例えば、以上で簡潔に説明され且つ更に詳細に後述されるように、注入によって既に予め画定されている場合、分離領域116に印加されるレーザー放射は、単一光子プロセス(例えば、単一光子吸収)が支配する、即ち複数光子プロセスの可能性が小さい(例えば、単一光子プロセスの可能性の少なくとも10分の1である)共振領域におけるものであり得る。共振領域内では、分離領域116内の材料のバンドギャップは、例えば、(例えば、レーザーエネルギーに応じてバンドギャップの最大で±5%、又は最大で±1%、又は最大で±0.1%、又は最大で±0.01%の離調を伴って)レーザー放射の光子エネルギーの範囲内であり得る。レーザー放射は、分離領域116で半導体ウエハ100を分割するために機械力及び/又は熱応力が不要となるか又はわずかに必要とされるように、分離領域116内に吸収され得、且つ分離領域116の更なる損傷(例えば、SiCウエハ100の場合にはSiCの分解)をもたらし得る。
【0029】
分離領域116は、画定され得るか、又は予め画定された層の場合、例えば注入によって予め形成され得、更に半導体ウエハ100内において、分離領域116の、例えばターゲット厚さの最大で50%など、最大でターゲット厚さを有する領域などの明確に画定された領域にレーザー照射を合焦することにより画定され得る。この場合、レーザー放射は、分離領域116内の単一光子プロセスの可能性が小さくなり、且つ複数光子プロセス(具体的には複数光子吸収)を主に考慮しなければならなくなり得るようにオフ共振領域にあり得る。例えば、オフ共振領域は、分離領域116のバンドギャップがレーザー放射の光子エネルギー超(例えば、その少なくとも2倍又は少なくとも10倍)である場合に実現することができる。複数光子プロセスの場合、損傷の生成は、レーザー放射の焦点が位置決めされる領域内で吸収を増大させる(例えば、イオン注入によって形成された)予め画定された層により更にサポートすることができる。
【0030】
レーザー放射は、パルス化されたレーザー放射であり得る。パルス持続時間、反復レート、パルスエネルギー、強度、波長、パルス形状、偏光などのレーザー放射のパラメータは、相互に接続され、且つ特定の用途又は要件に従って最適化することができる。例えば、レーザー放射は、100fs~100ns(例えば、50ps~10ns)のパルス持続時間、10kHz~10MHzの反復レート、100nJ~50μJのパルスエネルギー及び400nm~2100nmのピーク波長(例えば、900nm~1200nm)を有することができる。
【0031】
レーザー放射は、相互に基本的に平行に延在するレーザーライン(スクライブラインとも呼称される)に沿って印加することができる。レーザーラインごとに、レーザービームは、ラインに沿ってスキャニングされる。レーザースキャニングの速度は、隣接する単一レーザーショットが例えば重複しないなどのように弁別され得るほど高速であり得る。ここで、単一レーザーショットは、図3に示されるように、レーザー放射の単一パルスによって生成される損傷に対応し得る。
【0032】
分離領域116の小さいセクションを示す図3では、「A」というラベルが付与された破線の楕円は、個々の/単一のレーザーショットの場所に対応する。それぞれの単一レーザーショットの場所「A」では、分離領域116の材料が分解され、且つ「B」及び「C」というラベルが付与された更なる微細なクラックによって示されるように、ウエハの材料の結晶面に沿って延在する微細なクラックが出現する。分離領域116内に形成された微細なクラック「A」、「B」、「C」は、少なくとも部分的に相互に切断される。「C」というラベルが付与された微細なクラックは、他の微細なクラック「A」間における張力によって生成され、且つレーザーショットによって直接的に形成されない。4H-SiCの場合、ウエハ100が厚さT_waferを有する垂直方向に対応する半導体ウエハ100の成長方向は、主な結晶軸に対してわずかに傾斜し得、通常、4°だけ傾斜する(オフ軸角度とも呼称される)。従って、結晶面が傾斜する。
【0033】
分離領域116が、平面状であるが、傾斜することになる単一の大きいクラックのみを有することを要する場合、分離領域116は、横方向(即ち垂直方向に対して垂直である方向)に対して4°だけ傾斜することになるであろう。半導体ウエハ100の直径全体に沿って、これは、非常に大きい損失をもたらすことになるであろう。従って、SiCの場合、分離プレーンが、平面状ではなく、且つジグザグ形状/鋸歯形状を有する場合、分割プロセスは、4H-SiCの場合に有用となり得る。微細なクラック「A」、「B」、「C」は、その後、更に詳細に後述するように、半導体ウエハ100の分割を可能にするために接続される。
【0034】
分離領域116を形成るすためにレーザー放射によって半導体ウエハ100を損傷させることに加えて又はその代わりに、分離領域116を生成及び/又は予め画定するためにウエハ100内のターゲット位置に対応する深さで半導体ウエハ100内にイオンを注入することにより、半導体ウエハ100の材料をターゲット位置で損傷させることができる。イオンは、例えば、注入されたイオンの過半が存在する分離領域116内のより大きい吸収レートに起因して、直接的により大きい吸収をもたらし得る。半導体ウエハ100の材料としてのSiCの場合、イオンは、レーザー放射の波長における吸収係数が分離領域116内で増大されるように、例えば異なるポリタイプ(例えば、4H-SiCから3C-SiC)、及び/又は異なる結晶化度、及び/又は非晶質SiC、及び/又はケイ素及び炭素(非晶質又は結晶質)など、異なる材料へのSiCウエハの結晶構造の変換をもたらし得る。また、イオンは、分離領域116内の半導体ウエハ100の材料の分解をもたらし得る。
【0035】
一実施形態では、イオンは、窒素イオン、リンイオン、水素イオン及びヘリウムイオンからなる群から選択され得る。例えば、窒素及び/又はリン原子などの原子は、注入ドーズが非晶質層をもたらし、且つ/又は空洞が生成される状態で分離領域116に注入することができる。加えて又は代わりに、分離領域116内で局所的な損傷層を生成するために、ヘリウムイオン又は陽子を注入することもできる。ヘリウム及び水素などの軽いイオンは、同一のエネルギーにおいて、より重いイオンと比較して半導体ウエハ100内でより深く貫通し、これにより必要に応じて分離領域116の深さを増大させる。ヘリウム及び水素のような軽いイオンは、分割プロセスがこの領域内で促進され得るように、優先的に注入の範囲の末尾で欠陥クラスタ及び損傷層を生成することができる。リン及び/又は窒素は、高度に損傷した層をSiC内で実現するのに適している。リン及び/又は窒素の場合、注入ドーズは、非晶質層及び/又は空洞が分離領域116内で生成されるように選択することができる。任意選択により、注入が実行される表面のより小さい表面損傷をもたらす注入時、チャネリングを活用することができる。イオンは、1つ又は複数のエピタキシャル層102が形成される前に注入することができる。例えば、イオンは、1つ又は複数のエピタキシャル層102の形成を要する半導体ウエハ100の表面を通して注入することができる。
【0036】
イオン注入後、装置構造104を生成することができる。装置構造104を生成した後に又はその前に、焦点が注入層で概略的に位置決めされた状態において、上述のレーザー放射を、半導体ウエハ100を通して照射することができる。イオン及び/又はイオンによって変換された半導体材料は、ウエハ100の残りの部分と比較して増大した吸収を有することになり、従って、これにより、ウエハ100の改善された局所的加熱により、例えば、Si及びCへのSiCの分解を改善する。例えば、半導体ウエハ100の残りの部分に対して分離領域116内の熱-機械応力を増大させるために、複数光子プロセスと単一光子プロセスの組合せは、予め画定されたイオン注入層内で発生し得る。
【0037】
装置構造104が形成される前又は後に分離領域116を形成することができる。いくつかの実施形態では、分離領域116の一部分は、例えば、場合によりエピタキシャル成長前など、装置構造104が形成される前に形成することができ、及び分離領域116の別の部分は、装置構造104が形成された後に形成することができる。
【0038】
一実施形態では、分離領域116は、半導体ウエハ100のレーザー照射及びイオン注入の両方によって形成される。具体的には、半導体ウエハ100の材料は、ウエハ100内のターゲット位置に対応する深さで半導体ウエハ100内にイオンを注入することにより、半導体ウエハ100内のターゲット位置で損傷させることができる。イオンが注入された後、レーザー放射が半導体ウエハ100内のターゲット位置で合焦される。この実施形態によれば、注入されたイオンは、レーザー放射の波長で分離領域116内の吸収係数を増大させ、これにより半導体ウエハ100の残りの部分に対して分離領域116内の熱-機械応力を更に増大させる。
【0039】
分離領域116の形成後、少なくとも1つの大きいクラックが分離領域116に沿って伝播し、及び半導体ウエハ100が2つの別個の断片に分割するように、外部力が半導体ウエハ100に印加される。表面エネルギー、接合力及び(任意選択の)外部圧力の力の均衡状態は、半導体ウエハ100内に依然として存在する内部結合力が分離領域116で克服され、従ってこれによりクラック伝播をもたらすように外部力に有利な方式でシフトする。代わりに、レーザー放射は、半導体ウエハ100を分割するために外部力の印加が必ずしも必要とされないように、分離領域116に沿って十分なクラックを伝播させる。しかし、外部力は、分割されたウエハ断片の持ち上げプロセス及び/又はウエハの分割を支援するために依然として印加することができる。
【0040】
分離領域116は、上述したように、半導体ウエハ100の残りの部分に対して分離領域116内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する。例えば、分離領域116の少なくとも1つの物理的特性を変更するために、レーザー放射及び/又はイオン注入を使用することができる。レーザー放射は、分離領域116内に微細なクラック「A」、「B」、「C」を形成し得る一方、注入されたイオンは、レーザー放射の波長で分離領域116内の吸収係数を増大させることができる。熱-機械応力の局所化された増大は、制御された且つ再生可能な方式により、分離領域116へのクラック伝播を制限する。熱-機械応力の局所化された増大は、半導体ウエハ100を分割するために外部力の印加が必ずしも必要とされないように、分離領域116に沿って十分なクラックを伝播させるために十分なものであり得る。しかし、他の実施形態では、半導体ウエハ100の分割を支援するために力が使用される。
【0041】
一実施形態では、分離領域116に沿ってウエハ100を分割するために半導体ウエハ100に印加される外部力は、超音波振動(音波)を半導体ウエハ100に印加するステップを含む。超音波振動は、例えば、少なくとも20kHzであり、且つ最大で60kHzであるなど(例えば、30~50kHz、例えば35~45kHz)、kHz領域内の周波数を有することができる。半導体ウエハ100は、超音波振動を印加する際、純水、脱イオン水、一般には溶剤、ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール、メタノール及び/又はエタノールなどの流体によって充填されたコンテナ内に配置することができる。例えば、超音波を半導体ウエハ100に印加するために、超音波洗浄装置に類似した装置を使用することができる。
【0042】
図1C図1Eは、分離領域116に沿ってウエハ100を分割するために半導体ウエハ100に外部力を印加する別の実施形態を示す。この実施形態によれば、ポリマー120は、図1Cに示されるように、半導体ウエハ100及び/又はキャリア108に適用される。ポリマー120は、半導体ウエハ100のCTE(熱膨張係数)と異なるCTEを有する。次いで、ポリマー120及び半導体ウエハ100は、ポリマー120が図1Dで破線矢印によって示されるように機械的応力を半導体ウエハ100に付与する温度プロセスに供される。機械的応力は、半導体ウエハ100が、図1Eに示されるように、2つの別個の断片124、126に分割するように、少なくとも1つの大きいクラック122が分離領域116に沿って伝播するようにする。1つの断片124は、装置構造104を保持する。もう1つの断片126は、後続の装置処理のために利用可能である。
【0043】
微細なクラック「A」、「B」、「C」を含む分離領域116の場合、図3に関連して上述したように、半導体ウエハ100に付与された機械的応力は、微細なクラック「A」、「B」、「C」が、ウエハ100を分割する大きいクラック122を形成するために相互に接続するようにする。即ち、個々の微細なクラック「A」、「B」、「C」は、外部力に応答して相互に対してシフトする。従って、分離領域116は、半導体ウエハ100内の単一層として見なさなくてもよく、むしろ分割時にのみ組み合わされるいくつかの微細なクラック「A」、「B」、「C」の組合せとして見なすことができる。半導体ウエハ100の材料としてのSiCの場合、微細なクラック「A」、「B」、「C」を組み合わせることにより、別個の断片124、126の両方が鋸歯パターンを有する分離表面128、130を有するという結果をもたらす。従って、結果的に得られる装置断片124及び再生された断片126は、SiCの場合、滑らかな平面状の表面を有しない。一実施形態では、半導体ウエハ100が2つの別個の断片124、126に分割された後、大きいクラック122が分離領域116に沿って伝播した結果として得られるそれぞれの分離表面128、130は、スムージングされる。残留する分解した材料は、ウエハ100から分割されたそれぞれの断片124、126の分離表面128、130に存在し得、且つクリーニングプロセスによって除去され得る。
【0044】
キャリア108がウエハ100に既に装着された状態でポリマー120を半導体ウエハ100に装着することができる。ポリマー120は、前面及びキャリア108と対向しない半導体ウエハ100の背面132に装着することができる。ポリマー120は、代わりに、半導体ウエハ100と対向しないキャリア108の外側面134に装着することもできる。この場合、キャリア108は、ポリマー120と半導体ウエハ100との間に配置される。別の実施形態によれば、ポリマー120は、半導体ウエハ100の背面132と、キャリア108の外側面134との両方に装着することができる。例えば、ガラスグリッド又はガラスリングがキャリア108として使用される場合、ポリマー120は、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100の背面132及び更にキャリア108の外側面134に適用することができる。一般には、更なる層(例えば、接着剤などの接合層及び/又はポリマー120の後の除去を単純化する層)を、ポリマー120と、ポリマー120が適用される面との間に適用することができる。
【0045】
ポリマー120は、CTEに基づいてのみならず、複数のパラメータを考慮することにより選択することができる。ポリマー120のCTEは、半導体ウエハ100のCTEと異なることを要する。例えば、ポリマー120のCTEは、好ましくは、半導体ウエハ100のCTEよりも大きい。CTEの差に加えて、広い温度範囲にわたるポリマー120内のCTEの線形コースが分離の成功にとって有利であり得る。
【0046】
更に、ポリマー120は、十分に大きい熱伝導率を有することを要する。一実施形態では、ZnO及び/又はカーボンブラックなどの1つ又は複数のフィラーが温度プロセス前にポリマー120に追加される。1つ又は複数のフィラーは、ポリマー120の熱伝導率を増大させ、且つポリマー120の貯蔵弾性率の傾きを低減し、これにより、より小さい温度範囲にわたってポリマー120内のCTEの線形コースを延在させる。ZnO及び/又はカーボンブラックをポリマー120に追加することにより、形成されるパーコレーションチェーンは、ポリマー120内の熱伝導率を格段に増大させることができる。フィラー材料が使用される場合、ポリマー材料は、フィラー材料がポリマー120の全体を通して容易に均一に分散されるように選択することができる。
【0047】
半導体ウエハ100に対する十分に大きい熱伝導の係数の場合、ポリマーにZnO及び/又はカーボンブラックなどの1つ又は複数のフィラーを追加することにより、分離領域116に沿って半導体ウエハ100を分割するために十分な機械的応力を生成する温度差を実現するのに必要とされる時間が半分未満に低減される。同時に、弾性率の上昇がより大きい温度範囲にわたって分散され、なぜなら、これは、充填されていないポリマーと比較してより高い温度で既に明らかであるからである。この結果、製造プロセスに存在するウエハの破損が減少し、且つより大きい分割効率が得られる。ポリマー120の一例は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)であり、通常、少なくとも1つのフィラーを伴う。PDMSは、表面に対する大きい接着力を生成することができる。従って、装着は、損傷のないポリマー除去を許容するために何らかの前処理又はコンディショニングを必要とし得る。例えば、フォイルを、ポリマーと、ポリマーが装着される表面との間に位置決めすることができる。
【0048】
ポリマー120の装着は、通常、より高い温度(例えば、室温超であるが、300℃未満である)で実行される。全体温度プロセスの全体を通して堅固な接合を許容するために、結合プロセスを適用することができる。例えば、ポリマー120を適用する前に、ポリマー120、及び/又は半導体ウエハ100、及び/又はキャリア108の適用表面は、堅固な接合を許容するために化学的及び/又は物理的な表面処理(例えば、プラズマによるもの)を受け得る。ポリマー120の後続の容易な除去を保証するために、間接的な一時的低温プラズマ活性化プロセスを使用することができる。これは、この場合、構造-特性関係のアンビバレントな特性が実現可能であり、且つ発生する低温で大きい熱拡散プロセスを予測する必要がないという利点を有する。拡散は、例えば、装置構造104の金属層に由来する不純物などの金属性不純物の場合に問題となり得る。ポリマー結合は、分割動作の実行のために十分であるが、後続のステップでのポリマー120の完全な除去ために十分に弱い。
【0049】
別の更なる又は代替の方式は、1つ又は複数のエピタキシャル層102(及び/又は適用可能な場合にはキャリア108)を有する半導体ウエハ100とポリマー120との間に結合(犠牲)層を適用することである。結合層は、例えば、化学物質又は熱処理により、ポリマー120に対する接着力が低減され得るように選択することができる。
【0050】
ポリマー120は、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100上に直接且つ/又はキャリア108上に直接生成されなくてもよい。むしろ、ポリマー120は、予め生成され得、且つ後に1つ又は複数のエピタキシャル層102及び/又はキャリア108を有する半導体ウエハ100に装着され得る。他の実施形態では、ポリマー120は、例えば、噴霧又は被覆を介して、1つ又は複数のエピタキシャル層102及び/又はキャリア108を有する半導体ウエハ100上に直接生成される。
【0051】
1つ又は複数のエピタキシャル層102及び/又はキャリア108を有する半導体ウエハ100にポリマー120を装着した後、温度プロセスが実行される。一実施形態では、温度プロセスは、ポリマー120が温度プロセス中に部分的なガラス遷移及び部分的な結晶化を受けるように選択される。これは、ポリマー120及び半導体ウエハ100が開始温度から下方に室温までの温度勾配を受ける第1フェーズであって、開始温度は、300℃以下であるが、室温超である、第1フェーズと、ポリマー120及び半導体ウエハ100がより低い温度に更に冷却される第2フェーズとを含み得る。例えば、より低い温度は、冷却のために使用される冷却液体(例えば、液体窒素)の沸騰温度の±40℃に対応し得る。より低い温度は、例えば、特にウエハ100全体の場合に-170℃であり得る。いくつかの例では、より低い温度は、冷却条件(例えば、冷却液体)に応じてポリマー120のガラス遷移温度(Tg)未満であり得る。
【0052】
図4A及び図4Bは、フィラー(図4A)を伴わず、且つ1つ又は複数のフィラーを伴う(図4B)同一のポリマー120の、℃を単位とする温度にわたる、MPaを単位とする貯蔵弾性率(弾性率)を示す。温度プロセスの第2フェーズでは、ポリマー120は、図4A及び図4Bに示されるように、部分的なガラス遷移及び部分的な結晶化プロセスを受け得る。ガラス遷移Tgの定義は、標準化されていない。Tgを判定するためのいくつかの方法が存在し、Tgは、一定の材料特性ではなく、むしろTgを定義するために使用される方法及び更にその方法で使用されるパラメータに依存する。例えば、粘弾性率を計測するDMA(動的機械分析)方法を使用する場合、動的なガラス遷移温度と、更に計測に使用されるパラメータ(例えば、外部負荷の周波数、ランピング速度、ランピング方向、計測精度など)とを記述しなければならない。
【0053】
図4Aでは、ガラス遷移温度Tgは、(少なくともTgを定義するいくつかの方法の場合に)ターニングポイントで見出される。図4Bでは、結晶化は、ガラス遷移(T2未満のより高い傾き)よりも高い温度(T1とT2との間のより低い傾き)で開始し、この場合、T3は、T2未満であり、及びT2は、T1未満である。ターニングポイントと、従ってTgとは、図4Aにおける、しかしフィラーを有しない同一のポリマーと比較してもはや明瞭に判定することができない。
【0054】
1つ又は複数のフィラーをポリマー120に追加することにより、使用されるポリマーにおける自由度は、フィラーを有しないポリマーのものよりも早期に結晶化する。ガラス遷移超の温度では、ポリマー分子は、柔軟であり、且つ例えば柔軟なSi-O-Siシロキサン単一結合([R3Si-O-SiR3]n)を中心とした結合回転を通して異なる配置を採用し得る。増大する温度低減により、既存の自由度の制限と、従ってエラストマ分子のモビリティの低減とが存在し、なぜなら、結合回転のための必要とされる活性化エネルギーは、統計的に低頻度でのみ実現されるからである。ポリマー分子のサイト変化の周波数は、温度の減少に伴って減少する。フィラー粒子とポリマー分子との間の更に発生する分子間相互作用に起因して、ポリマー分子の再配置の力学は、取り囲んでいるチェーン及び分子のグループ振動又は協働的運動が、より小さい自由容積に起因して低減されるのに伴って低減される。非常に大きいフィラー含有量(例えば、>20重量%)では、粒子-粒子相互作用を考慮することを要する。
【0055】
ポリマー120の貯蔵弾性率(弾性率)は、フィラーを有しない図4Aのポリマーと比較して、1つ又は複数のフィラーを有する図4Bのポリマー120の場合、より高い温度について増大を有する。この結果、貯蔵弾性率の増大の傾きがより小さい。分割プロセスにおける力の増大は、貯蔵弾性率に比例する。従って、より小さい傾きは、より小さい力の増大と、より滑らかな力の増大とに変換され、この結果、より滑らかなクラックの伝播がもたらされる。半導体ウエハ100内の張力は、1つ又は複数のフィラーをポリマー120に追加することにより、分離領域116の外側におけるよりわずかなウエハの破損を伴って除去することができる。対照的に、より大きい力の増大の場合、不均質性が分割プロセスに対してより大きい影響を及ぼす。ポリマー結晶化は、より小さい全体的な力をもたらし得るが、これは、例えば、ポリマー120の厚さを増大させることにより補償することができるであろう。温度勾配及び温度プロセスは、好ましくは、半導体ウエハ100内の局所的温度差が低減されるように選択される。過剰な局所的温度差は、過剰な応力の増大と、半導体ウエハ100内の望ましくない破損とをもたらし得る。
【0056】
半導体ウエハ100は、例えば、図5Aに示されるように、面取りされたエッジ136を有することができる。面取りされたエッジ136は、図5Aに示される面取りされた外側面を有する。面取りされたエッジ136の形状は、その位置が図5Aで破線によって示される分離領域116を調製する際に問題をもたらし得る。例えば、面取りされたエッジ136内の厚さの変化は、レーザービームの伝播長の変化をもたらし得る。従って、レーザービームの焦点がウエハの面取り部で変化する。その結果、分離領域116が半導体ウエハ100の外側リム/エッジ面138まで継続しない場合がある。また、半導体ウエハ100の外側リム/エッジ面138における厚さ及び/又は位置の変化は、分離領域116を画定するか又は予め画定するためのイオンの注入を妨げる。
【0057】
外側リム/エッジ面138からの分離領域116へのアクセスを許容し、且つ従って分割プロセスを促進するか又はそれを少なくとも単純化するために、面取り部の形状を、図5B及び図5Cに示されるように変更することができる。これらの実施形態によれば、半導体ウエハ100の面取りされたエッジ136は、その位置が図5B及び図5Cで破線によって示される分離領域116又はその下方で深さT_thinに薄化される。利用される薄化のタイプに応じて、薄化されたエリアは、正方形(図5B)の又は丸い(図5C)コーナーを有することができる。半導体ウエハ100の面取りされたエッジ136は、研摩、切削、レーザーアブレーション、電気(化学)放電機械加工、エッチングなどによる機械的除去によって薄化することができる。
【0058】
図5Dは、別の実施形態を示し、これによれば、スロット500は、半導体ウエハ100の面取りされたエッジ136内に形成され、且つその位置が図5Dで破線によって示される分離領域116まで横方向に延在する。スロット500は、図5B及び図5Cに示される薄化の代わりに又はそれに加えて形成することができる。それぞれの場合、半導体ウエハ100の面取りされたエッジ136は、分離領域116を生成する前又は後に加工することができる。
【0059】
ウエハの分割プロセスでは、圧力を半導体ウエハ100に印加することができる。例えば、ピストンは、1つ又は複数のエピタキシャル層102を有する半導体ウエハ100に圧力を印加することができる。ピストンは、加圧された空気により、ウエハ100の方向に押し込まれ得るか、又はピストンの重量力をウエハ100に印加することもできる。このようなプロセスは、特に冷却プロセスの空間分解能を目的としたポリマー120を有するウエハ100の極低温流体(例えば、窒素)中への(例えば、全体的な又は漸進的な)浸漬よりも良好に制御される。
【0060】
半導体ウエハ100の分割後、装置構造104を保持する断片124は、もう1つの断片126よりも薄くてもよい。例えば、装置構造104を保持する断片124は、最大で100μm(例えば、最大で70μm又は最大で50μm)の厚さ及び上述のドリフトゾーンの少なくとも必要とされる厚さ(又は必要とされる厚さよりも少なくとも10μmだけ大きいもの)を有し得、及びもう1つの断片126は、少なくとも150μm(例えば、少なくとも190μm)の厚さを有し得る。
【0061】
ポリマー120の再使用を許容し、且つ分割されたウエハ断片124、126の破損を回避するためにポリマー除去を利用することができる。例えば、ポリマー120は、化学エッチングを伴うことなく(一般的には化学物質を伴うことなく)、プラズマエッチング又は他の気相スパッタリングプロセスを伴うことなく、装置側分離表面128上(適用可能である場合)及び再生側分離表面130上の両方で機械的手段によって除去することができる。従って、ポリマー120は、本明細書で記述される装着プロセスに起因して、迅速に、及び環境的に優しく且つ残留物が存在しない方式で除去することができる。
【0062】
ウエハの分割後、ウエハ断片124、126の分離表面128、130が加工される。装置構造104を有する断片124の背面の場合、例えば、機械的研磨、及び/又は化学機械的研磨、及び/又はエッチングによる損傷除去を実行することができる。損傷除去後の分離表面128の最終的な粗度は、5μm未満又は場合により2μm未満の二乗平均(rms)値を有することができる。次いで、更なる処理が後続し得る。装置構造104を有しない断片126の場合、分離表面130は、後続のエピタキシャル成長のための準備が完了した状態となるために処理を必要とし得る。この場合、分離表面130のrms値は、500nm未満であり得るか、又は場合により300nm未満であり得る。装置構造104を有しない断片126の厚さは、上述の同一の手順が、厚くなった断片126について複数回にわたって反復され得るように、例えばCVDエピタキシャル技法などの堆積技法を利用してウエハ100のオリジナルの厚さに適合させることができる。
【0063】
上述の実施形態は、ベース半導体ウエハから新しいウエハを分割するステップを伴う。代わりに、本明細書に記述される分割技法は、半導体ブールから半導体ウエハを分割することに適用することもできる。半導体ブールは、ブリッジマン技法、チョクラルスキープロセスなどの合成手段によって生成される単一結晶インゴットである。本明細書に記述される分割技法は、半導体ブール内で分離領域を形成することによる半導体ブールからの半導体ウエハの分割に適用され得、この場合、分離領域は、半導体ブールの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する。例えば、熱-機械応力は、半導体ブール内のターゲット位置でレーザー放射を合焦することにより、分離領域内で増大させることができる。次いで、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及びウエハが半導体ブールから分割するように、外部力が半導体ブールに印加される。一実施形態では、外部力は、ポリマーを半導体ブールに適用することによって半導体ブールに印加され、この場合、ポリマーは、半導体ブールのCTEと異なるCTEを有する。ポリマー及び半導体ブールは、ポリマーが機械的応力を半導体ブールに付与する温度プロセスに供される。また、上述のように、半導体ブールの分離領域内で生成される熱-機械応力は、必ずしも外部力の印加を必要とせずにウエハの分割をもたらすために十分なものであり得る。いずれの場合にも、このプロセスは、単一半導体ブールから複数のウエハをもたらように複数回にわたって適用することができる。
【0064】
以下の付番された例は、本開示の1つ又は複数の態様を示すが、本開示は、これらに限定されない。
【0065】
例1.半導体ウエハを分割する方法であって、半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層を有する半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、キャリアは、複数の装置構造を保護し、且つ半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ウエハの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及び半導体ウエハが2つの別個の断片に分割するように、半導体ウエハに外部力を印加するステップであって、断片の1つは、複数の装置構造を保持する、ステップとを含む方法。
【0066】
例2.半導体ウエハ内に分離領域を形成するステップは、半導体ウエハ内のターゲット位置で半導体ウエハの材料を損傷させるステップを含む、例1の方法。
【0067】
例3.半導体ウエハ内のターゲット位置で半導体ウエハの材料を損傷させるステップは、半導体ウエハ内のターゲット位置において材料内にプラズマを生成するステップを含む、例2の方法。
【0068】
例4.半導体ウエハ内のターゲット位置において材料内にプラズマを生成するステップは、半導体ウエハ内のターゲット位置でレーザー放射を合焦するステップを含む、例3の方法。
【0069】
例5.半導体ウエハ内のターゲット位置で半導体ウエハの材料を損傷させるステップは、半導体ウエハ内のターゲット位置に対応する深さで半導体ウエハ内にイオンを注入するステップを含む、例2の方法。
【0070】
例6.イオンは、窒素イン、リンイオン、水素イオン及びヘリウムイオンからなる群から選択される、例5の方法。
【0071】
例7.イオンの注入ドーズは、注入されたイオンによって損傷された半導体ウエハの材料が非晶質であるか、又は空洞が生成されるように選択される、例5又は6の方法。
【0072】
例8.半導体ウエハ内のターゲット位置で半導体ウエハの材料を損傷させるステップは、半導体ウエハ内のターゲット位置に対応する深さで半導体ウエハ内にイオンを注入するステップと、イオンが注入された後に半導体ウエハ内のターゲット位置でレーザー放射を合焦するステップとを含み、注入されたイオンは、レーザー放射の波長で分離領域内において吸収係数を増大させる、例2の方法。
【0073】
例9.分離領域又はその下方における所定の深さまで、半導体ウエハの面取りされたエッジを薄化するステップを更に含む、例1~8のいずれかの方法。
【0074】
例10.分離領域まで横方向に延在する、半導体ウエハの面取りされたエッジ内のスロットを形成するステップを更に含む、例1~9のいずれかの方法。
【0075】
例11.半導体ウエハに外部力を印加するステップは、超音波振動を半導体ウエハに印加するステップを含む、例1~10のいずれかの方法。
【0076】
例12.半導体ウエハに外部力を印加するステップは、ポリマーを半導体ウエハ及び/又はキャリアに適用するステップであって、ポリマーは、半導体ウエハのCTE(熱膨張係数)と異なるCTEを有する、ステップと、ポリマー及び半導体ウエハを、ポリマーが機械的応力を半導体ウエハに付与する温度プロセスに供するステップとを含む、例1~11のいずれかの方法。
【0077】
例13.温度プロセスは、ポリマーが温度プロセス中に部分的なガラス遷移及び部分的な結晶化を受けるように選択される、例12の方法。
【0078】
例14.温度プロセスは、ポリマー及び半導体ウエハが開始温度から下方に室温までの温度勾配を受ける第1フェーズであって、開始温度は、300℃以下であるが、室温超である、第1フェーズと、ポリマー及び半導体ウエハがポリマーのガラス遷移温度未満の温度まで更に冷却される第2フェーズとを含む、例12又は13の方法。
【0079】
例15.温度プロセス前に、ポリマーの熱伝導率を増大させ、且つポリマーの貯蔵弾性率の傾きを低減する1つ又は複数のフィラーをポリマーに追加するステップを更に含む、例12~14のいずれかの方法。
【0080】
例16.1つ又は複数のフィラーは、ZnO及び/又はカーボンブラックを含む、例15の方法。
【0081】
例17.ポリマーを適用する前に、ポリマーの表面、及び/又は半導体ウエハの表面、及び/又はキャリアの表面を化学的及び/又は物理的に処理するステップを更に含む、例12~16のいずれかの方法。
【0082】
例18.少なくとも1つのクラックは、温度プロセス中に発生するポリマーの部分的な結晶化中に伝播する、例12~17のいずれかの方法。
【0083】
例19.半導体ウエハに外部力を印加するステップは、2つの別個の断片への半導体ウエハの分割中に半導体ウエハに圧力を印加するステップを含む、例1~18のいずれかの方法。
【0084】
例20.半導体ウエハが2つの別個の断片に分割された後、半導体ウエハの両方の断片の分離表面の表面粗度を低減するステップであって、それぞれの分離表面は、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播するにつれて形成される表面である、ステップを更に含む、例1~19のいずれかの方法。
【0085】
例21.分離領域の少なくとも1つの変更された物理的特性は、分離領域内で少なくとも部分的に相互に切断されている複数の微細なクラックを含み、複数の微細なクラックは、分離領域に沿って伝播する少なくとも1つのクラックを形成するために、外部力に応答して相互に接続する、例1~20のいずれかの方法。
【0086】
例22.半導体ウエハは、SiCウエハであり、外部力に応答して複数の微細なクラックの接続によって形成された少なくとも1つのクラックは、鋸歯パターンを有する、例21の方法。
【0087】
例23.半導体ウエハを分割する方法であって、半導体ウエハ上に1つ又は複数のエピタキシャル層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層内に複数の装置構造を形成するステップと、複数の装置構造上に金属化層及び/又はパッシベーション層を形成するステップと、1つ又は複数のエピタキシャル層を有する半導体ウエハにキャリアを装着するステップであって、キャリアは、複数の装置構造を保護し、且つ半導体ウエハを機械的に安定化させる、ステップと、分離領域が半導体ウエハの残りの部分に対して増大した熱-機械応力を有し、及び少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播するように、半導体ウエハ内の分離領域にレーザー放射を印加するステップと、少なくとも1つのクラックに沿って半導体ウエハを2つの別個の断片に分割するステップであって、断片の1つは、複数の装置構造を保持する、ステップとを含む方法。
【0088】
例24.半導体ブールから半導体ウエハを分割する方法であって、半導体ブール内に分離領域を形成するステップであって、分離領域は、半導体ブールの残りの部分に対して分離領域内の熱-機械応力を増大させる少なくとも1つの変更された物理的特性を有する、ステップと、少なくとも1つのクラックが分離領域に沿って伝播し、及びウエハが半導体ブールから分割するように、半導体ブールに外部力を印加するステップとを含む方法。
【0089】
例25.半導体ブールに外部力を印加するステップは、ポリマーを半導体ブールに適用するステップであって、ポリマーは、半導体ブールのCTE(熱膨張係数)と異なるCTEを有する、ステップと、ポリマー及び半導体ブールを、ポリマーが機械的応力を半導体ブールに付与する温度プロセスに供するステップとを含む、例24の方法。
【0090】
「第1」、「第2」などの用語及びこれらに類似したものは、様々な要素、領域、セクションなどを記述するために使用され、且つ限定を意図したものではない。同一の用語は、本説明の全体を通して同一の要素を意味する。
【0091】
本明細書で使用される「有する」、「含有する」、「包含する」、「含む」という用語及びこれらに類似したものは、記述される要素又は特徴の存在を示すが、更なる要素又は特徴を排除しないオープンエンド型の用語である。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」という冠詞は、文脈がそうでないことを明瞭に示さない限り、単数形のみならず、複数形も含むことが意図される。
【0092】
本明細書に記述される様々な実施形態の特徴は、そうでないことが具体的に記述されない限り、相互に組み合わされ得ることを理解されたい。
【0093】
特定の実施形態が以上で図示及び記述されているが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、図示及び記述される特定の実施形態を様々な代替の及び/又は均等な実装形態によって置換し得ることを理解するであろう。本出願は、本明細書に記述される特定の実施形態の任意の適合形態又は変形形態を包含することを意図する。従って、本発明は、請求項及びその均等物によってのみ限定されるものと解釈されたい。
【符号の説明】
【0094】
100 半導体ウエハ
102 エピタキシャル層
104 装置構造
106 前面金属化層及び/又はパッシベーション層
108 キャリア
110、112、114 ドーピング領域
116 分離領域
120 ポリマー
124、126 断片
128、130 分離表面
132 背面
134 外側面
136 面取りされたエッジ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
【国際調査報告】