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特表2023-505564エスケタミン製剤並びにその調製方法及び保管方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(54)【発明の名称】エスケタミン製剤並びにその調製方法及び保管方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230202BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230202BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/02
A61P25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535487
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2020086039
(87)【国際公開番号】W WO2021116498
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/947,387
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】エアーツ,キャロライン アン
(72)【発明者】
【氏名】カイエンス,クリス
(72)【発明者】
【氏名】スクリジェメーカース,コーエン マリア ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ジミダール,モハメディリアス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076BB25
4C076CC01
4C076DD30
4C076DD43
4C076DD51
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA08
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA03
4C206ZA12
(57)【要約】
本開示は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、酸化分解物とを含む医薬組成物に関する。特定の態様において、酸化分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩である。エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における酸化分解物の形成を制限するための方法も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、酸化分解物と、を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記酸化分解物が、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(i)前記エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(ii)前記エスケタミンの重量に対して、0.2w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、任意選択的に光の非存在下で保管した後、(i)エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(ii)前記エスケタミンの重量に対して0.2w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項5】
少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、任意選択的に光の非存在下で保管した後、エスケタミンの量に対して0.1%(HPLC面積)以下又は0.1%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間、任意選択的に光の非存在下で保管した後、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記保管が、約20℃~約75℃の範囲の温度である、請求項4、5又は7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記保管が、約25%~約80%の相対湿度を有する雰囲気中における、請求項4、5、7又は8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が密閉容器内にあり、好ましくは前記密閉容器が密封ガラスバイアルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記密閉容器が光に対して実質的に不透明であり、好ましくは、前記密閉容器が、不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記密閉容器が、光に対して実質的に不透明である第2の容器内にあり、好ましくは、前記第2の容器が、不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、請求項10~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
20℃~約75℃の範囲の温度で、約25%~約80%の相対湿度を有する雰囲気中で、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する前記密閉容器で、6ヶ月間保管した後、エスケタミンの量/重量に対して、それぞれ0.2%(HPLC面積)以下又は0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記条件下で12ヶ月間、18ヶ月間又は24ヶ月間保管した後、エスケタミンの量/重量に対して、それぞれ0.2%(HPLC面積)以下又は0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
鼻腔内医薬組成物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び水のうちの1つ以上を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における酸化分解物の形成を防止するための方法であって、
(e)前記医薬組成物を光の非存在下で調製すること、
(f)前記医薬組成物を光の非存在下で保管すること、
(g)前記医薬組成物を約6時間以下の光に曝露すること、又は
(h)光の非存在下で容器に前記医薬組成物を充填すること、のうちの1つ以上を含む、方法。
【請求項18】
前記組成物の調製及び容器への前記組成物の充填中に、前記医薬組成物を6時間以下の光に曝露することと、次いで、不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する容器内で前記医薬組成物を保管することと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物の調製及び容器への前記組成物の充填中に、前記医薬組成物を1時間以下の光、好ましくは30分以下の光に曝露することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、前記医薬組成物を保管するための容器を選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
a)前記医薬組成物を、前記組成物の調製中に6時間以下の光に曝露することと、
b)不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する容器を選択することと、
c)前記容器に前記医薬組成物を、好ましくは光の非存在下で充填することと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記容器内の前記医薬組成物を光の非存在下で保管することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの量/重量に対して、それぞれ0.2%(HPLC面積)以下又は0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む医薬組成物の調製プロセスであって、前記エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、前記エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス。
【請求項24】
エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む医薬組成物の調製プロセスであって、前記エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、前記エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス。
【請求項25】
前記混合が、光に対して実質的に不透明である混合基材を用いて行われ、好ましくは、前記混合基材が、不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、請求項23又は24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記混合基材が光保護箔を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
容器に前記医薬組成物を充填することを更に含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
前記充填が、光に対して実質的に不透明である充填基材を用いて行われ、好ましくは、前記充填基材が、不透明度計を使用して測定した場合、前記容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記充填基材が、ブラックシリコーンシート又はステンレス鋼を含む、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
光に対して実質的に不透明である第2の容器で前記容器を覆うことを更に含み、好ましくは、前記第2の容器がアルミニウムバッグである、請求項28又は29に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年12月12日に出願された米国仮特許出願第62/947,387号の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、エスケタミンを含む医薬組成物並びにその調製方法及び保管方法に関するものである。
【0003】
(背景)
大うつ病性障害(Major Depressive Disorder、MDD)は、一般集団の約7~15%に影響を及ぼす。MDDは、有意な罹患率及び死亡率を伴い、世界中で、人を無力にする主な原因である。患者の約3分の1は、複数の抗うつ薬による治療にもかかわらず寛解を達成することができず、治療抵抗性うつ病(Treatment Resistant Depression、TRD)を有すると考えられる。経口抗うつ薬の恩恵を受けるそのような患者は、治療を継続しても高い再発率を有する。
【0004】
患者の生活に対するTRDの影響は、適切に説明することが困難である。多くの患者は、何年も続くうつ病性エピソードを有する。重度のうつ病患者は、彼らの人生を続ける意志を失い、自殺未遂が7倍増加する。平均余命は、10年短縮する。極端な場合では、彼らは、入浴若しくは食事、又は自分の世話などの基本的な身の回りの管理さえできず、それらのケアを、親、配偶者などに任せきりにする。これは、患者自身だけでなく、家族及び彼らに依存する者にも影響を及ぼす。彼らはまた、以前楽しんでいたことをすることに喜びを感じる能力を失い、これは、人生の本質及びその原動力となるものを人々から奪う。実際には、彼らの人生は、TRDによって彼らから取り去られる。
【0005】
現在、エスケタミンを含む医薬組成物は、TRD用の治療に承認されている。このような組成物は、ヒトに投与するために設計されており、それによって、安全かつ効果的な治療を保証するために正確な量のエスケタミンを必要とする。
【0006】
そのため、不純物及び/又は分解産物の制限を受けながら、製剤化中や製剤化後に、そのような正確なエスケタミンの量を確保する必要性が残されている。
【0007】
(概要)
いくつかの実施形態において、本開示は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、酸化分解物とを含む医薬組成物を提供する。特定の態様において、酸化分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩である。他の態様では、医薬組成物は、(i)エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含む。いくつかの実施形態において、エスケタミンが塩の形態、例えば、ケタミンの(S)-エナンチオマーの塩である場合、及び酸化分解物、特に6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸の量が、エスケタミンの量に対して定義される場合、これは、絶対ベースでケタミンの(S)-エナンチオマーの塩の総量に対する酸化分解物の量(すなわち、ケタミンの(S)-エナンチオマーの塩の総量に対する分解剤の量)を指すと解釈することが意図される。
【0008】
他の実施形態において、本開示は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における酸化分解物の形成を防止するための方法であって、医薬組成物を光の非存在下で調製すること、医薬組成物を光の非存在下で保管すること、医薬組成物を約6時間以下の光に曝露すること、又は、医薬組成物を光の非存在下で容器に充填すること、のうちの1つ以上を含む、方法、を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、組成物の調製期間及び保管期間を合わせた期間中に、約6時間以下の光に曝露される。より好ましくは、医薬組成物は、組成物の調製期間及び保管期間を合わせた期間中に、約1時間以下の光、更により好ましくは約30分以下の光に曝露される。
【0009】
更なる実施形態において、本開示は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、(i)エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含む医薬組成物を調製するためのプロセスであって、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】全波長クロマトグラム(210~500nm;μAU対時間)を重ね合わせたものであり、同じバッチ(バッチ1)(D)からの変色した(C)及び変色していないバイアルと比較した、光/熱ストレス(A)及び熱ストレス(B)サンプルの結果を示したものである。
図2】D50光に連続曝露した異なるエスケタミンバッチのバイアルで観察された色調変化を比較した棒グラフである(ストッパーなしのバイアルとバッチ6では、同じエスケタミン塩酸塩バッチを使用した)。括弧内の数値は、平均値を算出するために使用したバイアルの本数を示す。
図3】D50光に連続曝露した場合と、D50光に15日間曝露した場合、及びICH2回(16時間)曝露後、バッチ7で室温で暗所に保管された、ストッパー付きのバイアルの色調変化を比較した折れ線グラフである。
図4】2回ICH光に曝露し、その後室温又は70℃の暗所で保管した場合の、バッチ5(上)及びバッチ1(下)のストッパー付きのバイアルの色調変化を比較した折れ線グラフである。
図5】バッチ6のバイアルの向きが異なる場合を示す折れ線グラフ(上)と、ストッパー付きとストッパーなし(両方とも上向き)の同じエスケタミン塩酸塩バッチのバイアルの比較を示す折れ線グラフ(下)を示している。
【0011】
(実施態様の詳細な記述)
本明細書で与えられる量的表現の一部は、用語「約」で修飾されていない。用語「約」が明示的に用いられている/いないに関わらず、本明細書において与えられる全ての量は実際の所与の値を指すことを意味し、またこのような所与の値の実験及び/又は測定条件による近似値を含む、当該技術分野における通常の技量に基づいて合理的に推測されるこのような所与の値の近似値を指すことも意味することが理解される。
【0012】
本発明者らは、不純物を含まないエスケタミン製剤を提供しようとしたところ、エスケタミンを含む溶液が特定の条件下で分解されることを見出した。いくつかの実施形態において、エスケタミン溶液により、色調変化、固形物が生じ、かつ/又は、これまで認識されていなかった副産物が生成された。このような変化は、現在、とりわけ、分解産物であることなどが確定している。したがって、本開示は、これらの分解産物の識別、及び患者への投与に同様の許容できる量を含有する製品の必要性に対処するものである。
【0013】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「エスケタミン」は、ケタミンの(S)-エナンチオマー、すなわち式(I):
【0014】
【化1】
の化合物を意味するものとし、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノンとしても知られている。「エスケタミン」はまた、塩、例えば、ケタミンの(S)-エナンチオマーの塩酸塩などの塩化物塩、すなわち、式(II):
【0015】
【化2】
の化合物を意味するものとし、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン塩酸塩としても知られている。好ましくは、エスケタミンは、(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサノン塩酸塩の形態である。
【0016】
いくつかの実施形態では、エスケタミンは、ケタミンの(R)-エナンチオマー、すなわち、式(III):
【0017】
【化3】
の化合物を実質的に含まない。
【0018】
他の実施形態では、エスケタミンは、エスケタミンサンプルの重量に基づいて、約10重量%未満のケタミンの(R)-エナンチオマーを含有する。更なる実施形態において、エスケタミンは、エスケタミンサンプルの重量に基づいて、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、約0.005重量%未満、又は約0.001重量%未満のケタミンの(R)-エナンチオマーを含有する。更に他の実施形態では、エスケタミンは、エスケタミンサンプルの重量に基づいて、約0.001~約10重量%のケタミンの(R)-エナンチオマーを含有する。なおも更なる実施形態において、エスケタミンは、エスケタミンサンプルの重量に基づいて、約0.001~約10重量%、約0.001~約5重量%、約0.001~約1重量%、約0.001~約0.5重量%、約0.001~約0.1重量%、約0.1~約5重量%、約0.1~約1重量%、約0.1~約5重量%、又は約0.5~約5重量%のケタミンの(R)-エナンチオマーを含有する。好ましくは、医薬組成物は、医薬組成物中のケタミンの(S)-エナンチオマーの総重量に基づいて、約10重量%未満、より好ましくは約1重量%未満、更により好ましくは約0.1重量%未満のケタミンの(R)-エナンチオマーを含有する。
【0019】
用語「エスケタミン」はまた、当業者によって容易に選択され得る他の医薬的に許容されるその塩も含み得る。「医薬的に許容される塩」は、無毒であり、生物学的に忍容性であるか、又は別の点で対象への投与に生物学的に好適である、エスケタミンの塩を意味することが意図される。一般的には、G.S.Paulekuhn,「Trends in Active Pharmaceutical Ingredient Salt Selection based on Analysis of the Orange Book Database」,J.Med.Chem.,2007,50:6665-72、S.M.Berge,「Pharmaceutical Salts」,J Pharm Sci.,1977,66:1-19、及びHandbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection,and Use,Stahl and Wermuth,Eds.,Wiley-VCH and VHCA,Zurich,2002を参照されたい。医薬的に許容される塩の例は、薬理学的に有効であり、かつ過度の毒性、刺激、又はアレルギー反応を伴わずに患者に投与するのに好適な塩である。
【0020】
他の医薬的に許容される塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素-リン酸塩、二水素-リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、臭化物(臭化水素酸塩など)、ヨウ化物(ヨウ化水素酸塩など)、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオ酸塩、ヘキシン-1,6-ジオ酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。特に、エスケタミンの塩は、塩酸塩である。
【0021】
エスケタミン組成物
本開示は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、酸化分解物とを含む医薬組成物を提供する。本明細書で使用するとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、並びに、直接的又は間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物を包含するものとする。
【0022】
本明細書で使用される「酸化分解物」という用語は、エスケタミンの酸化の結果として形成され、それによってエスケタミンの分解をもたらす化合物を指す。エスケタミンの酸化は、組成物の成分とは無関係の外的要因によるものと考えられている。このような外的要因としては、可視光、紫外線、又はこれらの組み合わせなどの光への曝露を挙げることができるが、これらに限定されない。したがって、酸化分解物は、光酸化分解物であり得る。また、本発明者らは、酸素、熱などの他の外的要因が、エスケタミンの酸化を促進させるのに役立ち得ることを見出した。酸化分解物の供給源にかかわらず、酸化分解物の形成は、自己触媒サイクルを介して行われる場合がある。したがって、エスケタミンをそのような外的要因に曝露することを防止又は最小限に抑えることが望ましい。
【0023】
したがって、いくつかの実施形態において、酸化分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩である。他の実施形態において、酸化分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸である。更なる実施形態において、酸化分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸の塩である。
【0024】
「6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸」とは、下記の構造を有する化合物を指す。
【0025】
【化4】
【0026】
医薬組成物中に存在する酸化分解物の存在及び量は、当業者によって決定され得る。酸化分解物を検出するために使用され得る適切な分析手順としては、限定されないが、薄層クロマトグラフィー(TLC)、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量スペクトル(MS)分析、LC-MS;核磁気共鳴分光法(NMR;H及び13C)、若しくは元素分析、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、酸化分解物は、HPLC又はLC-MSを用いて検出及び測定される。当業者には理解されるように、医薬組成物のHPLC分析では、混合物中の各成分について1つのピークを有するスペクトルが得られる。各成分の比率は、各ピークの面積、各ピークの高さ、又はこれらの組み合わせの比率に比例する。好ましくは、医薬組成物中の成分の比率は、ピーク面積により算出される。したがって、HPLCは、エスケタミンを含む医薬組成物などの、あらゆる医薬組成物の純度を測定する際に特に有用である。
【0027】
エスケタミンを含む医薬組成物の場合、酸化分解物の存在及び量は、医薬組成物中に存在するエスケタミンの量に対して測定し、重量パーセントとして表すことができる。
【0028】
他の実施形態において、酸化分解物の存在及び量は、酸化分解物を含むエスケタミン組成物のLCピーク(HPLCピークなど)を比較することによって測定することができる。このように、酸化分解物に対応するピークと、医薬組成物中に存在するエスケタミンに対応するピークを比較し、その比率を算出する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、エスケタミン塩基を含み、酸化分解物に対応するHPLCピークの面積の、エスケタミン塩基に対応するHPLCピークの面積に対する比が算出される。他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミン塩を含み、酸化分解物に対応するHPLCピークの面積の、エスケタミン塩に対応するHPLCピークの面積に対する比が算出される。このように、医薬組成物中のエスケタミンの形態にかかわらず、HPLCを用いて酸化分解物の量を算出することができる。
【0029】
更なる実施形態において、酸化分解物の量は、どんなに少量であっても、測定及び定量され得る。典型的には、酸化分解物の量は百万分率(ppm)濃度で測定される。このような濃度は、当該技術分野で知られている従来の技術を使用して測定することができる。酸化分解物の濃度は、1リットルあたりミリグラム単位で計算されている。したがって、医薬組成物中の酸化分解物のppmは、溶液1リットルあたりの酸化分解物のmgであり、医薬組成物の容量に基づいて調整することができる。
【0030】
本明細書に記載のエスケタミンの医薬組成物は、望ましくは、不純物を含有しない。しかし、医薬組成物中の不純物含有率を0%に維持する能力は、特にそのような組成物を一定期間保管した後では、現実的でないことが多い。したがって、望ましくは、存在する及び/又は保管中に形成される可能性のある不純物は最小限である。いくつかの実施形態において、本開示のエスケタミン医薬組成物は、エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下(NMT)の、酸化分解物などの不純物を含有する。好ましくは、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。より好ましくは、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、0.1%(HPLC面積)以下、更により好ましくは0.05%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下の、酸化分解物などの不純物を含有する。好ましくは、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。より好ましくは、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、0.1%w/w以下、更により好ましくは0.05%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。更なる実施形態において、医薬組成物は、約120ppm以下の、酸化分解物などの不純物を含有する。好ましくは、医薬組成物は、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。より好ましくは、医薬組成物は、約60ppm以下、更により好ましくは約30ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、約0.001%、0.0015%、0.002%、0.0025%、0.003%、0.0035%、0.0040%、0.0045%、0.0050%、0.0055%、0.0060%、0.0065%、0.0070%、0.0075%、0.0080%、0.0085%、0.0090%、0.0095%、0.010%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.040%、0.045%、0.050%、0.055%、0.060%、0.065%、0.070%、0.075%、0.080%、0.085%、0.090%、0.095%、0.1%、又は0.15%(HPLC面積)以下の酸化分解物を含有する。他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、約0.001%~約0.2%(HPLC面積)の酸化分解物を含有する。更なる実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、約0.001%~約0.2%、0.0015%~約0.2%、0.002%~約0.2%、0.0025%~約0.2%、0.003%~約0.2%、0.0035%~約0.2%、0.0040%~約0.2%、0.0045%~約0.2%、0.0050%~約0.2%、0.0055%~約0.2%、0.0060%~約0.2%、0.0065%~約0.2%、0.0070%~約0.2%、0.0075%~約0.2%、0.0080%~約0.2%、0.0085%~約0.2%、0.0090%~約0.2%、0.0095%~約0.2%、0.010%~約0.2%、0.015%~約0.2%、0.02%~約0.2%、0.025%~約0.2%、0.03%~約0.2%、0.035%~約0.2%、0.040%~約0.2%、0.045%~約0.2%、0.050%、0.055%~約0.2%、0.060%~約0.2%、0.065%~約0.2%、0.070%~約0.2%、0.075%~約0.2%、0.080%~約0.2%、0.085%~約0.2%、0.090%~約0.2%、0.095%~約0.2%、0.1%~約0.2%、又は0.15%~約0.2%(HPLC面積)の酸化分解物を含有する。更に他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して、約0.001%~約0.15%、約0.001%~約0.1%、約0.001%~約0.095%、約0.001%~約0.090%、約0.001%~約0.085%、約0.001%~約0.080%、約0.001%~約0.075%、約0.001%~約0.070%、約0.001%~約0.065%、約0.001%~約0.060%、約0.001%~約0.055%、約0.001%~約0.050%、約0.001%~約0.045%、約0.001%~約0.040%、約0.001%~約0.035%、約0.001%~約0.03%、約0.001%~約0.025%、約0.001%~約0.02%、約0.001%~約0.015%、約0.001%~約0.010%、約0.001%~約0.0095%、約0.001%~約0.0090%、約0.001%~約0.0085%、約0.001%~約0.0080%、約0.001%~約0.0075%、約0.001%~約0.0070%、約0.001%~約0.0065%、約0.001%~約0.0060%、約0.001%~約0.0055%、約0.001%~約0.0050%、約0.001%~約0.0045%、約0.001%~約0.0040%、約0.001%~約0.0035%、約0.001%~約0.003%、約0.001%~約0.0025%、約0.001%~約0.002%、約0.001%~約0.0015%(HPLC面積)の酸化分解物を含有する。
【0032】
他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、約0.001%、0.0015%、0.002%、0.0025%、0.003%、0.0035%、0.0040%、0.0045%、0.0050%、0.0055%、0.0060%、0.0065%、0.0070%、0.0075%、0.0080%、0.0085%、0.0090%、0.0095%、0.010%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.035%、0.040%、0.045%、0.050%、0.055%、0.060%、0.065%、0.070%、0.075%、0.080%、0.085%、0.090%、0.095%、0.1%、又は0.15%w/w以下の酸化分解物を含有する。他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、約0.001%~約0.2%w/wの酸化分解物を含有する。更なる実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、約0.001%~約0.2%、0.0015%~約0.2%、0.002%~約0.2%、0.0025%~約0.2%、0.003%~約0.2%、0.0035%~約0.2%、0.0040%~約0.2%、0.0045%~約0.2%、0.0050%~約0.2%、0.0055%~約0.2%、0.0060%~約0.2%、0.0065%~約0.2%、0.0070%~約0.2%、0.0075%~約0.2%、0.0080%~約0.2%、0.0085%~約0.2%、0.0090%~約0.2%、0.0095%~約0.2%、0.010%~約0.2%、0.015%~約0.2%、0.02%~約0.2%、0.025%~約0.2%、0.03%~約0.2%、0.035%~約0.2%、0.040%~約0.2%、0.045%~約0.2%、0.050%、0.055%~約0.2%、0.060%~約0.2%、0.065%~約0.2%、0.070%~約0.2%、0.075%~約0.2%、0.080%~約0.2%、0.085%~約0.2%、0.090%~約0.2%、0.095%~約0.2%、0.1%~約0.2%、又は0.15%~約0.2%w/wの酸化分解物を含有する。更に他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの重量に対して、約0.001%~約0.15%、約0.001%~約0.1%、約0.001%~約0.095%、約0.001%~約0.090%、約0.001%~約0.085%、約0.001%~約0.080%、約0.001%~約0.075%、約0.001%~約0.070%、約0.001%~約0.065%、約0.001%~約0.060%、約0.001%~約0.055%、約0.001%~約0.050%、約0.001%~約0.045%、約0.001%~約0.040%、約0.001%~約0.035%、約0.001%~約0.03%、約0.001%~約0.025%、約0.001%~約0.02%、約0.001%~約0.015%、約0.001%~約0.010%、約0.001%~約0.0095%、約0.001%~約0.0090%、約0.001%~約0.0085%、約0.001%~約0.0080%、約0.001%~約0.0075%、約0.001%~約0.0070%、約0.001%~約0.0065%、約0.001%~約0.0060%、約0.001%~約0.0055%、約0.001%~約0.0050%、約0.001%~約0.0045%、約0.001%~約0.0040%、約0.001%~約0.0035%、約0.001%~約0.003%、約0.001%~約0.0025%、約0.001%~約0.002%、又は約0.001%~約0.0015%w/wの酸化分解物を含有する。
【0033】
更なる実施形態において、医薬組成物は、約120ppm、約110ppm、約100ppm、約90ppm、約80ppm、約70ppm、約60ppm、約50ppm、約40ppm、約30ppm、約20ppm、約10ppm、約5ppm、又は約1ppm以下の、酸化分解物などの不純物を含有する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約1~約120ppm、約10~約110ppm、約10~約100ppm、約10~約90ppm、約10~約80ppm、約10~約70ppm、約10~約60ppm、約10~約50ppm、約10~約40ppm、約10~約30ppm、又は約10~約20ppmの酸化分解物を含有する。他の実施形態において、医薬組成物は、約5~約120ppm、約10~約120ppm、約20~約120ppm、約30~約120ppm、約40~約120ppm、約50~約120ppm、約60~約120ppm、約70~約120ppm、約80~約120ppm、約90~約120ppm、約100~約120ppm、又は約110~約120ppm以下の酸化分解物を含有する。
【0034】
また、溶液中に存在する酸化性不純物の量は、医薬組成物の色に応じて測定することができる。例えば、医薬組成物の目視検査を行い、その色を判定することができる。典型的には、医薬組成物の黄色の色相を判定する。いくつかの実施形態において、分解の度合を判断するためにカラースケールを利用することができる。例えば、1~9までのカラースケールを使用でき、1=無色、9=黄色/茶色である。それらの間の値は、例えば、2=非常にわずかな黄色、3=わずかな黄色、4=明るい黄色、5=黄色、6=やや暗い黄色、7=暗い黄色、8=非常に暗い黄色のように、段階的に増大する黄色の強度に対応する。溶液の着色又は黄変の程度は、欧州薬局方、第7版、第2章、第2.2.1節、及び第2.2.1節、21~24ページに記載されているように判定することができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。例えば、着色の度合は、次の手順で判定できる。(i)底面が平らで内径15mm~25mmの無色透明な中性ガラス製の管を用い、(ii)一方の管に被検液を加え、(iii)他方の管に水を加えるか、又はエスケタミンを含まないがpH4のEDTA、クエン酸及び水を含む溶液を加え、(iv)拡散昼光下で白を背景に垂直視してそれぞれの管の色を比較する。
【0035】
酸化分解物は、医薬組成物の調製中又は保管中のいずれかの時点で形成され得る。いくつかの実施形態において、酸化分解物は、医薬組成物の調製中に形成される。いくつかの実施形態において、酸化分解物は、医薬組成物の保管中に形成される。他の実施形態において、酸化分解物は、調製中に形成され、光の非存在下で保管された後も増加し続ける。
【0036】
当業者には理解されるように、一旦調製されると、医薬組成物は、当業者によって決定される期間に、包装され、任意選択的に保管され得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも約1週間保管される。他の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、又は少なくとも約24ヶ月間保管される。しかし、望ましくは、医薬組成物は、保管前、保管中、及び/又は保管後に、(i)エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含有する。好ましくは、医薬組成物が、保管容器に充填された時点で、(i)エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下、より好ましくは0.1%(HPLC面積)以下、更により好ましくは0.05%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下、より好ましくは0.1%w/w以下、更により好ましくは0.05%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下、より好ましくは約60ppm以下、更により好ましくは約30ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、を含有する。
【0037】
本開示によれば、医薬組成物は、酸化分解を防止又は最小化するために、光の非存在下で保管又は調製されることが望ましい。本明細書で使用される「光」という用語は、可視光又は約380nm~約750nmの波長を有する光を指す。「光」という用語はまた、この範囲外の波長を有する光を含み得る。例えば、光は紫外線であり得る。
【0038】
光の非存在下での保管は、好ましくは、不透明度計を用いて測定した場合、容器を通過する光の約10%以下、より好ましくは光の約5%以下、更により好ましくは容器を通過する光の約1%未満を許容する不透明度を有する容器内での医薬組成物の保管を指す。更に、医薬組成物を収容した容器は、周囲光量が約10ルクス未満、より好ましくは約1ルクス未満、更により好ましくは約0.1ルクス未満、最も好ましくは0.01ルクス未満の条件で保管することが好ましい。
【0039】
光への曝露は、好ましくは少なくとも0.1ルクス、より好ましくは少なくとも1ルクスの強度を有する光への医薬組成物の曝露を指す。
【0040】
典型的には、酸化分解を防止又は最小化するために、医薬組成物の光への曝露時間は制限される。いくつかの実施形態において、医薬組成物の光への曝露は、約1時間未満である。いくつかの実施形態において、医薬組成物の光への曝露は、約30分未満、約25分未満、約20分未満、約15分未満、約10分未満、約5分未満、約1分未満、約30秒未満、約15秒未満、又は約5秒未満である。他の実施形態において、医薬組成物の光への曝露は、約1秒~約1時間、約10秒~約1時間、約15秒~約1時間、約30秒~約1時間、約1分~約1時間、約5分~約1時間、約10分~約1時間、約15分~約1時間、約20分~約1時間、約25分~約1時間、約30分~約1時間、又は約45分~約1時間である。更なる実施形態において、医薬組成物の光への曝露は、約1秒~約45分、約1秒~約30分、約1秒~約15分、約1秒~約10分、約1秒~約5分、約1秒~約1分、約10秒~約45分、約10秒~約30分、約10秒~約15分、約10秒~約10分、約10秒~約5分、約10秒~約1分、約30秒~約45分、約30秒~約30分、約30秒~約15分、約3秒~約10分、約30秒~約5分、約30秒~約1分、約1分~約45分、約1分~約30分、約1分~約15分、約1分~約10分、又は約1分~約5分である。また、調製中又は保管中の医薬組成物の光への曝露はゼロであり得る。調製中の医薬組成物の光への曝露は、好ましくは約1時間未満、より好ましくは約30分未満、更により好ましくは約5分未満である。保管中の医薬組成物の光への曝露は、約1時間未満、より好ましくは約30分未満、更により好ましくは約5分未満であり得る。好ましくは、調製中及び保管中の医薬組成物の光への総曝露は、約1時間未満、より好ましくは約30分未満、更により好ましくは約5分未満である。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で保管した後、エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下、より好ましくは0.1%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。他の好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下、より好ましくは0.1%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩とを含む。更なる好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で保管した後、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下、より好ましくは0.1%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。更に他の好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下、より好ましくは0.1%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩とを含む。更に好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で保管した後、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。更に好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、約120ppm以下、より好ましくは60ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。更に他の好ましい実施形態において、医薬組成物は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩とを含む。好ましくは、医薬組成物は、約25%~約80%の相対湿度を有する雰囲気中、約20℃~約75℃の範囲の温度で、より好ましくは、約25%~約30%の相対湿度を有する雰囲気中、約20℃~約30℃の範囲の温度で保管される。
【0042】
医薬組成物を光の非存在下で保管する(例えば、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する実質的に不透明な容器内で医薬組成物を保管する)ことにより、そのような条件で保管しなかった同じ医薬組成物と比較して、酸化分解物、特に6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩の濃度がより低くなる。同様に、光の非存在下で医薬組成物の調製及び容器への充填を行う(例えば、組成物の調製及び組成物を容器に充填する際に、医薬組成物を合計1時間以下の光、好ましくは30分以下の光に曝露する)ことにより、調製及び充填プロセス中により多くの光に曝露される同じ医薬組成物と比較して、酸化分解物の濃度が低くなる。
【0043】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、光の非存在下で6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下又は0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩とを含む。より好ましくは、医薬組成物は、光の非存在下で6ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して0.1%(HPLC面積)以下又は0.1%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む。好ましくは、医薬組成物は、光の非存在下で12ヶ月、18ヶ月又は24ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下又は0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。より好ましくは、医薬組成物は、光の非存在下で12ヶ月、18ヶ月又は24ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して、0.1%(HPLC面積)以下又は0.1%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む。
【0044】
好ましくは、医薬組成物は、実質的に不透明な容器内で保管される。好ましくは、実質的に不透明な容器は、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する。
【0045】
医薬組成物は、成分又は医薬組成物の完全性を損なわない任意の条件で保管することができる。したがって、医薬組成物は、約20℃~約75℃の範囲の温度で保管することができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約20℃~約70℃、約20℃~約65℃、約20℃~約60℃、約20℃~約55℃、約20℃~約50℃、約20℃~約45℃、約20℃~約40℃、約20℃~約35℃、約20℃~約30℃、約25℃~約75℃、約30℃~約75℃、約35℃~約75℃、約40℃~約75℃、約45℃~約75℃、約50℃~約75℃、約55℃~約75℃、約60℃~約75℃、又は約65℃~約75℃の範囲の温度で保管される。他の実施形態において、医薬組成物は、約20℃~約40℃、約20℃~約35℃、約20℃~約30℃、約20℃~約25℃、約25℃~約40℃、約25℃~約35℃、約25℃~約30℃、又は約30℃~約40℃の範囲の温度で保管される。好ましくは、医薬組成物は、室温などの周囲条件で保管される。好ましくは、室温は約20℃~約30℃の温度に相当する。
【0046】
また、医薬組成物は、相対湿度が約80%未満の条件で施設で保管されることが望ましい。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約25~約80%、約30~約80%、約35~約80%、約40~約80%、約45~約80%、約50~約80%、約55~約80%、約60~約80%、約65~約80%、約70~約80%、約75~約80%、約25~約75%、約25~約70%、約25~約65%、約25~約60%、約25~約55%、約25~約50%、約25~約45%、約25~約40%、約25~約35%、又は約25~約30%の相対湿度を有する施設で保管される。好ましくは、医薬組成物は、約25~約30%の相対湿度を有する条件で施設に保管される。
【0047】
医薬組成物の最適な性能及びその成分の完全性を維持するために、医薬組成物は密閉容器に封入又は収容される。容器は、医薬組成物の1つ以上の成分と反応しない任意の材料で構成することができ、これは当業者によって決定され得る。容器として使用するのに適した材料の例としては、限定されないが、ガラス、プラスチック、又は金属が挙げられる。好ましくは、密閉容器はガラスであり、例えば、ガラスバイアルである。望ましくは、容器は、上記のように、光に対して実質的に不透明である。いくつかの実施形態において、容器は琥珀色の容器である。
【0048】
本明細書で使用される「実質的に不透明」という用語は、透明でない、すなわち、その中を光が通過することを許容しない物体を指す。したがって、実質的に不透明とは、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する物体を指す。不透明度は、不透明度計を用いて、望ましくはコントラスト比法を用いて、物体から反射される光の量を測定することで、当業者によって測定することができる。いくつかの実施形態において、実質的に不透明とは、透過する光の約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%、約0.5%、約0.1%以下、又は約0%の光を許容することを指す。好ましくは、「実質的に不透明」とは、容器を通過する光の約5%以下を許容する不透明度を有し、より好ましくは、容器を通過する光の約1%以下を許容する不透明度を有する物体を指す。したがって、実質的に不透明とは、光の約90%以上を反射する、本明細書で使用される容器などの物体を指す。いくつかの実施形態において、本明細書で使用される容器などの実質的に不透明な物体は、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上、又は約100%の光を反射する。
【0049】
エスケタミンの医薬組成物が入っている容器は、そのような目的に適した任意のデバイスを用いて密閉又は密封することができる。このようなデバイスの例としては、限定されるものではないが、蓋、キャップ、ストッパーなどを挙げることができる。デバイスは、望ましくは、医薬組成物の成分と反応又は相互作用しない材料で構成される。容器を密閉するのにあまり適さない材料の例としては、ゴム、シリコーン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、容器及び/又は容器を密閉又は密封するためのデバイスは、ゴム又はシリコーンを含まない。より好ましくは、容器及び/又は容器を密閉又は密封するためのデバイスは、シリコーンを含まない。このように、容器を密閉するためのデバイスは、とりわけ、プラスチック、ガラス、又はこれらの組み合わせ、例えば、プラスチック製の蓋、ガラス製の蓋、プラスチック製のストッパー、ガラス製のストッパー、プラスチック製のキャップ、又はガラス製のキャップなどであり得る。好ましくは、デバイスはプラスチックである。あるいは、熱を用いて容器を密閉することができ、その結果、密封ガラスバイアル、すなわち、容易に開くことができるように任意で刻み目が付けられたアンプルが得られる。
【0050】
エスケタミンの医薬組成物を収容する密閉容器は、第2の容器、望ましくは、光に対して実質的に不透明である容器に入れることができる。そうすることで、エスケタミン組成物が光に曝露される可能性を更に防ぐ。いくつかの実施形態において、第2の容器は、ボックス、バッグ、サックなどである。好適には、第2の容器は、輸送に適している。第2の容器は、エスケタミンの組成物が入っている単一の容器を保持するように設計され得るか、又はエスケタミンの組成物のいくつかの容器を保持するように設計され得る。いくつかの実施形態において、第2の容器は琥珀色の低密度ポリエチレン(LDPE)バッグであり、任意選択的にカートンボックスなどの第3の容器内に、又はジッパー付きアルミニウムバッグ内に収容される。
【0051】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、実質的に不透明な密閉容器内で、約20℃~約75℃の温度及び80%未満の相対湿度、より好ましくは約20℃~約30℃の温度及び約25℃~約30℃の相対湿度で保管される。好ましくは、実質的に不透明な容器は、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する。
【0052】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、密閉容器内で約20℃~約75℃の温度及び80%未満の相対湿度で、6ヶ月間光の非存在下で保管した後、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。好ましくは、密閉容器は、容器を通過する光の約10%以下、より好ましくは5%以下を許容する不透明度を有する。より好ましくは、医薬組成物は、当該条件下で12ヶ月、18ヶ月又は24ヶ月間保管した後、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。
【0053】
また、医薬組成物は、酸化分解物以外の他の不純物を含み得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ノルエスケタミンなどの1つ以上のエスケタミン代謝物を含み得る。他の実施形態において、医薬組成物は、エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下のノルエスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含み得る。
【0054】
好ましい医薬組成物において、エスケタミン遊離塩基又はエスケタミン塩酸塩などのエスケタミン塩は、従来の医薬配合技術に従って、医薬担体、好ましくは水と共に十分に混合されるが、この担体は、投与に望まれる調剤の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。医薬的に許容される好適な担体は、当該技術分野において周知である。これらの医薬的に許容される担体のいくつかの説明は、米国薬剤師会及び英国薬剤師会によって出版されたThe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに見出すことができる。
【0055】
エスケタミンの好適な水性製剤は、水、エスケタミン、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む。そのような組成物において、エスケタミンは、医薬組成物の総体積に基づいて、約100mg/mL~約250mg/mLの範囲の濃度、又はその範囲内の任意の濃度若しくは範囲で存在する。好ましくは、エスケタミンは、約125mg/ml~約180mg/mLの範囲の濃度、又はその範囲内の任意の濃度又は範囲で存在する。より好ましくは、エスケタミンは、約140mg/mL~約160mg/mLの範囲の濃度、又はその範囲内の任意の濃度若しくは範囲、例えば、約140mg/mLの濃度で存在する。濃度は、エスケタミン塩基の当量濃度を指す。
【0056】
本明細書で使用するのに好適な医薬組成物は、好ましくは水性製剤である。本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「水性」は、製剤の主要液体成分が水であることを意味するものとする。好ましくは、水は、医薬組成物の液体成分の約80重量%超、より好ましくは約90重量%超、より好ましくは約95重量%超、より好ましくは約98重量%を構成する。本明細書で使用するのに好適な医薬組成物において、組成物の含水量は、組成物の総重量に基づいて、85±14重量%、より好ましくは85±12重量%、更により好ましくは85±10重量%、最も好ましくは85±7.5重量%、特に85±5重量%の範囲内である。本明細書で使用するための他の医薬組成物において、好ましくは、組成物の含水量は、組成物の総重量に基づいて、90±14重量%、より好ましくは90±12重量%、更により好ましくは90±10重量%、最も好ましくは80±7.5重量%、特に90±5重量%の範囲内である。本明細書で使用するための更なる医薬組成物において、組成物の含水量は、組成物の総重量に基づいて、95±4.75重量%、より好ましくは95±4.5重量%、更により好ましくは95±4重量%、なおもより好ましくは95±3.5重量%、最も好ましくは95±3重量%、特に95±2.5重量%の範囲内である。本明細書で使用するための更に他の医薬組成物において、組成物の含水量は、組成物の総重量に基づいて、75~99.99重量%、より好ましくは80~99.98重量%、更により好ましくは85~99.95重量%、更により好ましくは90~99.9重量%、最も好ましくは95~99.7重量%、特に96.5~99.5重量%の範囲内である。
【0057】
好ましい実施形態において、水性製剤は、密閉容器中、約20℃~約75℃の温度及び80%未満の相対湿度で、光の非存在下で6ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有することが望ましい。好ましくは、密閉容器は、容器を通過する光の約10%以下、より好ましくは5%以下を許容する不透明度を有する。より好ましくは、水性製剤は、当該条件下で12ヶ月、18ヶ月又は24ヶ月保管した後、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含有する。
【0058】
本明細書で使用するための他の医薬組成物では、組成物は、1以上の緩衝剤及び/又は緩衝系(すなわち、共役酸-塩基対)を更に含む。本明細書で使用するとき、用語「緩衝剤」は、水性製剤に添加されるとき、当該製剤のpHを調整する任意の固体又は液体組成物(好ましくは水性液体組成物)を意味するものとする。当業者であれば、緩衝剤が、水性製剤のpHを任意の方向(より酸性、より塩基性、又はより中性のpHに向かって)調整し得ることを認識するであろう。好ましくは、緩衝剤は医薬的に許容されるものである。水性製剤に使用され得る緩衝剤の好適な例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、緩衝剤又は緩衝系は、NaOH、クエン酸、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸水素二ナトリウムからなる群から選択される。ある実施形態では、緩衝剤は、エスケタミン医薬組成物(例えば、本明細書に記載される水性製剤)のpHを、約pH3.5~約pH6.5の範囲のpH、又はその中の任意の量若しくは範囲に調整するように選択される。好ましくは、緩衝剤は、エスケタミン組成物のpHを、約pH4.0~約pH5.5の範囲、又はその中の任意の量若しくは範囲、より好ましくは約pH4.5~約pH5.0の範囲、又はその中の任意の量若しくは範囲に調整するように選択される。好ましくは、緩衝剤及び緩衝系、好ましくはNaOHの濃度は、それぞれ、十分な緩衝能を提供するように調整される。
【0059】
いくつかの実施形態において、本開示は、エスケタミン、水、緩衝剤又は緩衝系、好ましくはNaOH、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む医薬組成物に関する。そのような組成物において、緩衝剤又は緩衝系は、pHが約pH4.0~約pH6.0の範囲、又はその中の任意の量若しくは範囲のpHを有する製剤を得るのに十分な量で存在する。他の実施形態において、本開示は、1以上のクエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び水、並びに(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物、(ii)エスケタミンの重量に対して、約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含有する医薬組成物に関する。
【0060】
任意選択で、医薬組成物は、防腐剤を含有していてもよい。本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、用語「抗菌防腐剤」及び「防腐剤」は、微生物の分解又は微生物の増殖に対して医薬組成物を保護するために、通常医薬組成物に添加される任意の物質を指す。この点に関して、微生物の増殖は、典型的には必須の役割を果たす。すなわち、防腐剤は、微生物の汚染を回避するという主目的に役立つ。一態様では、それぞれ有効成分及び賦形剤に対する微生物のいかなる影響も回避すること、すなわち微生物の分解を回避することが望ましい場合もある。防腐剤の代表的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、セチルピリジニウムクロリド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、プロピオン酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、ソルビン酸、及びソルビン酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
その防腐剤特性により、所望の貯蔵寿命又は使用時の安定性が薬物自体の存在によって達成され得るようにエスケタミンの含有量が十分に高い場合、本明細書で使用される医薬組成物中の防腐剤は完全に存在しないことが好ましい。好ましくは、これらの状況下で、エスケタミンの濃度は、少なくとも120mg/mL、好ましくは約120mg/mL~約175mg/mLの範囲、又はその任意の濃度若しくは範囲、より好ましくは約125mg/mL~約150mg/mLの範囲、又はその任意の濃度若しくは範囲、例えば約126mg/mL又は約140mg/mLで濃度である。濃度は、エスケタミン塩基の当量濃度を意味する。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「浸透剤(penetration agent)」、「浸透促進剤」、及び「浸透剤(penetrant)」は、医薬組成物の有効成分(例えば、エスケタミン)の吸収及び/又は生物学的利用能を増加又は促進する任意の物質を指す。好ましくは、浸透剤は、鼻腔投与後に、医薬組成物の有効成分(例えば、エスケタミン)の吸収及び/又は生物学的利用能を増加又は促進する(すなわち、粘膜を通じた有効成分の吸収及び/又は生物学的利用能を増加又は促進する)。好適な例としては、テトラデシルマルトシド、グリコルコール酸ナトリウム、タウロウルソデオキシコール酸(tauroursodeoxycholic acid、TUDCA)、レシチンなど;及びキトサン(及び塩)、並びに塩化ベンザルコニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル酸ナトリウム、ポリソルベート、ラウレス-9、オキシトキシノール、デオキシコール酸ナトリウム、ポリアルギニンなどの表面有効成分が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、浸透剤は、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)である。浸透剤は、例えば、膜流動性を増加させること、上皮細胞内に一過性の親水性細孔を形成すること、粘液層の粘度を低下させるか、又は密着接合部を開くことを含む、任意の機序を介して作用し得る。いくつかの浸透剤(例えば、胆汁塩及びフシジン酸誘導体)はまた、膜における酵素活性を阻害し、それによって有効成分の生物学的利用能を向上させることができる。好ましくは、浸透剤は、以下の一般的な要件のうちの1つ以上、より好ましくは全てを満たすように選択される。
(a)有効成分の吸収(好ましくは鼻吸収)を、好ましくは一時的及び/又は可逆的な様式で増加させることにおいて有効である。
(b)薬理学的に不活性である。
(c)非アレルギー性、非毒性、及び/又は非刺激性である。
(d)非常に強力(少量で有効)である。
(e)医薬組成物の他の成分と適合性がある。
(f)無臭、無色、及び/又は無味である。
(g)規制当局によって容認されている。
(h)安価であり、高純度で入手可能である。
【0063】
一実施形態では、浸透剤は、鼻内刺激を伴わずに浸透(エスケタミンの吸収及び/又は生物学的利用能)を増加させるように選択される。別の実施形態では、浸透剤は、エスケタミンの吸収及び/又は生物学的利用能を改善するように選択され、更に、均一な投薬有効性を増強するように選択される。
【0064】
一実施形態において、本開示は、エスケタミン、水、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む医薬組成物であって、医薬組成物が抗菌防腐剤を含有せず、医薬組成物が浸透促進剤、好ましくはTUDCAを更に含有する、医薬組成物、に関する。
【0065】
別の実施形態において、本開示は、エスケタミン、水、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む医薬組成物であって、医薬組成物が抗菌防腐剤を含まず、医薬組成物がタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)を更に含み、TUDCAが、約1.0mg/mL~約25.0mg/mLの範囲、又はその任意の範囲の濃度、好ましくは約2.5mg/mL~約15mg/mLの範囲、又はその任意の範囲の濃度、好ましくは約5mg/mL~約10mg/mLの範囲、又はその任意の範囲の濃度で存在する、医薬組成物、に関する。別の実施形態において、本開示は、TUDCAが約5mg/mLの濃度で存在する、医薬組成物に関する。別の実施形態において、本開示は、TUDCAが約10mg/mLの濃度で存在する、医薬組成物に関する。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0117591号に開示されている医薬組成物を参照されたい。
【0066】
本明細書で使用するための医薬組成物は、1以上の追加の賦形剤、例えば、湿潤剤、界面活性剤成分、可溶化剤、増粘剤、着色剤、酸化防止剤成分などを更に含有していてもよい。
【0067】
好適な酸化防止剤成分の例としては、使用される場合、以下のもの、すなわち、亜硫酸塩;アスコルビン酸;アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、又はアスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸塩;パルミチン酸アスコルビル;フマル酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はそのナトリウム若しくはカルシウム塩;トコフェロール;没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、又は没食子酸ドデシルなどの没食子酸塩;ビタミンE;及びそれらの混合物のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤成分は、液体組成物に長期安定性を提供する。酸化防止剤成分の添加は、組成物の安定性を強化及び保証する助けとなり得、40℃で6ヶ月後であっても組成物を安定させる。酸化防止剤成分の好適な量は、存在する場合、組成物の総重量の約0.01重量%~約3重量%、好ましくは約0.05重量%~約2重量%である。
【0068】
可溶化剤及び乳化剤は、液体担体に概ね可溶性ではない有効成分又は他の賦形剤のより均一な分散を促進するために含まれ得る。好適な乳化剤の例としては、使用される場合、例えば、ゼラチン、コレステロール、アカシア、トラガカント、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な可溶化剤の例としては、ポリエチレングリコール、グリセリン、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリサミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0069】
好ましくは、可溶化剤は、グリセリンを含む。可溶化剤又は乳化剤は、一般に、担体中の有効成分、すなわちエスケタミンを溶解又は分散させるのに十分な量で存在する。可溶化又は乳化剤が含まれる場合の典型的な量は、組成物の総重量の約1重量%~約80重量%、好ましくは約20重量%~約65重量%、より好ましくは約25重量%~約55重量%である。
【0070】
好適な等張化剤としては、使用される場合、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、グルコース、及びそれらの混合物が挙げられる。含まれる場合、等張化剤の好適な量は、典型的には、組成物の総重量の約0.01重量%~約15重量%、より好ましくは約0.3重量%~約4重量%、より好ましくは約0.5重量%~約3重量%である。
【0071】
例えば、鼻内の滞留時間を増加させるために、懸濁剤又は増粘剤を医薬組成物に添加してもよい。好適な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、微結晶セルロース、カルボマー、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、キトサン塩、ジェランガム、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
医薬組成物を製剤化する方法は、Marcel Dekker,Inc.によって発行されたLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Second Edition,Revised and Expanded,Volumes 1-3;Avisら編のPharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Volumes 1-2;及びLiebermanら編のPharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Volumes 1-2などの多くの刊行物に記載されている。
【0073】
調製方法
酸化分解物の形成は、医薬組成物の調製、医薬組成物の容器への充填、医薬組成物の入った容器の包装、医薬組成物の保管、投与前の患者による医薬組成物の取り扱い、又はこれらの組み合わせの際に適切な措置をとることにより低減又は排除することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、本開示は、エスケタミンを含む医薬組成物を調製する際に、酸化分解物の形成を低減又は防止するための方法を提供する。そうすることで、エスケタミンを含む医薬組成物の曝露が最小限に抑えられる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載されるように光の非存在下で調製される。調製中の1つ以上の工程は、エスケタミン組成物の成分の1つ以上と接触する光の量を低減又は排除するように変更することができる。反応工程には、混合工程、移送工程、濾過工程、若しくは精製工程、又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。望ましくは、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、(i)エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、とを含む医薬組成物は、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合し、エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することによって、調製することができる。より好ましくは、エスケタミンは、組成物の調製中に約1時間以下の光、更により好ましくは約30分以下の光に曝露される。調製中の光の存在を回避又は最小化するために、限定されないが、不透明な機器カバー、ガラス容器の代わりに金属又はセラミック容器、又はこれらの組み合わせの使用など、当業者に既知の技術を適用することができる。例えば、光保護箔などの、光に対して実質的に不透明な混合基材を用いて混合を行ってもよい。但し、その調製直後のエスケタミン医薬組成物への光曝露を最小限にすることが特に望ましい。したがって、エスケタミン医薬組成物の曝露は、その調製時点から最終包装工程までモニタリングされることが企図されている。望ましくは、モニタリングは連続的に行われるが、そのようなモニタリングの修正は、当業者によって行われ得る。記録することで、適切な光曝露の測定が可能である。好ましい実施形態において、医薬組成物の調製は、光保護箔で囲まれた容器、又は不透明な機器カバーで保護された容器内で、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することを含む。別の好ましい実施形態において、混合は、金属製又はセラミック製の容器内で行うことができる。組成物の調製中の周囲光量は、約10ルクス未満、より好ましくは約1ルクス未満、更により好ましくは約0.1ルクス未満、最も好ましくは約0.01ルクス未満であることが好ましい。より好ましくは、組成物の調製中の周囲光量は、約10ルクス未満、更により好ましくは約1ルクス未満又は約0.1ルクス未満又は約0.01ルクス未満であり、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩が1以上の医薬的に許容される賦形剤と混合される容器は、例えば光保護箔で容器を囲んだり不透明な機器カバーを用いて容器を保護するなどして光への曝露から保護される。
【0075】
他の実施形態において、本開示は、医薬組成物を容器に充填する際に酸化分解物が形成されるのを低減又は防止するための方法を提供する。このように、容器は、光の非存在下で医薬組成物で充填される。容器は、漏斗、マニホールドなどの器具を用いて充填される。光遮断技術を用いることができ、これには、限定するものではないが、充填ステーションを覆う不透明シールド、停止ステーションを覆う不透明シールド、金属又はセラミック充填基材、あるいはこれらの組み合わせが含まれる。例えば、充填基材は、ステンレス鋼マニホールドであり得、かつ/又はブラックシリコーンシートは、充填ユニットの全部又は一部を覆うために使用され得る。医薬組成物を容器に充填する際の周囲光量は、約10ルクス以下、より好ましくは約1ルクス以下、更により好ましくは約0.1ルクス以下、最も好ましくは0.01ルクス以下であることが好ましい。
【0076】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下、より好ましくは光の約5%以下、又は更により好ましくは容器を通過する光の約1%以下を許容する不透明度を有する容器に充填される。
【0077】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、組成物の調製中及び組成物を容器に充填する間に、約6時間以下の光に曝露される。
【0078】
組成物を保管するための容器として、光に対して実質的に不透明なものを選択することにより、酸化分解物、特に6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩の形成を防止できることが判明している。したがって、一実施形態において、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における、酸化分解物、特に6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩の形成を防止するための方法であって、不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する、医薬組成物を保管するための容器の選択を含む、方法、が提供される。
【0079】
好ましい実施形態において、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における酸化分解物の形成を防止するための方法は、
a)医薬組成物を、組成物の調製中に6時間以下の光に曝露することと、
b)不透明度計を使用して測定した場合、容器を通過する光の約10%以下を許容する不透明度を有する容器を選択することと、
c)当該容器に医薬組成物を、好ましくは光の非存在下で充填することと、を含む。
【0080】
好ましくは、当該方法は、光の非存在下で当該容器に医薬組成物を保管することを更に含む。
【0081】
更なる実施形態において、本開示は、医薬組成物の入った容器を包装する際に、酸化分解物の形成を低減又は防止するための方法を提供する。望ましくは、充填され栓をされた容器は、それ自体が光に対して不透明である第2の容器に包装される。第2の容器は、箔などで適宜コーティング又は裏打ちされていてもよく、かつ/又は、光に対して不透明な材料で作られていてもよい。いくつかの態様において、第2の容器は、アルミニウムバッグである。
【0082】
更に他の実施形態において、本開示は、医薬組成物を保管する際に酸化分解物の形成を低減又は防止するための方法を提供する。このように、容器単体又は第2の容器内に包装された容器は、本明細書に記載されているように、光の非存在下で保管される。
【0083】
なおも更なる実施形態において、本開示は、投与前に医薬組成物を取り扱う際に酸化分解物の形成を低減又は防止するための方法を提供する。
【0084】
使用方法
特に明記されていない限り、本明細書に記載のエスケタミンの量は、通常、エスケタミン遊離塩基に基づいて示されている。すなわち、量は、例えば対イオン(医薬的に許容される塩など)を除いた、投与されたエスケタミン分子の量を示す。
【0085】
特定の実施形態では、エスケタミンは、鼻腔内投与される。更なる実施形態では、エスケタミンは、その対応する塩酸塩として鼻腔内投与される。他の実施形態では、エスケタミンは、16.14%重量/体積溶液の対応する塩酸塩(14%重量/体積のエスケタミン塩基に相当)として鼻腔内投与される。
【0086】
更に他の実施形態において、エスケタミンは、161.4mg/mLのエスケタミン塩酸塩(140mg/mLのエスケタミン塩基に相当)、0.12mg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1.5mg/mLのクエン酸(水中でpH4.5)、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む溶液として鼻腔内投与される。なおも更なる実施形態において、エスケタミンは鼻腔内投与され、鼻腔内送達は、161.4mg/mLのエスケタミン塩酸塩(140mg/mLのエスケタミン塩基に相当)、0.12mg/mLのEDTA、1.5mg/mLのクエン酸(水中でpH4.5)、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む100μLの溶液を投与する。他の実施形態において、エスケタミンは点鼻スプレーポンプを用いて鼻腔内に送達され、ポンプは、161.4mg/mLのエスケタミン塩酸塩(140mg/mLのエスケタミン塩基に相当)、0.12mg/mLのEDTA、1.5mg/mLのクエン酸(水中でpH4.5)、及び(i)エスケタミンの量に対して約0.2%(HPLC面積)以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、(ii)エスケタミンの重量に対して約0.2%w/w以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、又は(iii)約120ppm以下の酸化分解物又はその医薬的に許容される塩、を含む100μLの溶液を送達する。
【0087】
一般に、点鼻スプレーデバイスからの1回のポンプは、約50μL~約200μL(約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、約110μL、約120μL、約130μL、約140μL、約150μL、約160μL、約170μL、約180μL、及び約200μLを含む)のエスケタミン溶液を対象の鼻孔に送達するように構成されてもよい。したがって、2回のポンプは、約100μL~約400μLを対象に送達する。
【0088】
本発明は、うつ病、好ましくは抵抗性うつ病又は治療難治性うつ病の治療のための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物のいずれかを投与することを含む方法において、本明細書に記載の医薬組成物を利用することに更に関する。好ましくは、投与は鼻腔内投与である。
【0089】
実施形態において、本発明は、うつ病、好ましくは抵抗性うつ病又は治療難治性うつ病の治療のための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に記載される本発明による医薬組成物を鼻腔内投与することを含む、方法、に関する。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「うつ病」は、大うつ病性障害、単極性うつ病、治療難治性うつ病、治療抵抗性うつ病、不安性うつ病、双極性うつ病及び(気分変調性障害とも称する)気分変調を含むように定義されるものとする。好ましくは、うつ病は、大うつ病性障害、単極性うつ病、治療難治性うつ病、抵抗性うつ病、不安性うつ病、又は双極性うつ病である。
【0091】
本明細書で使用されるとき、用語「難治性又は治療抵抗性うつ病」及びその省略形である「TRD」は、適切な一連の、少なくとも2種類の抗うつ薬、好ましくは2種類以上の抗うつ薬、より好ましくは2~3種類の抗うつ薬に応答しない大うつ病性障害と定義されるものとする。
【0092】
本明細書で使用するとき、用語「双極性うつ病」は、双極性障害の特性又は症状に関連したうつ病を意味するものとする。したがって、双極性うつ病を治療する本発明の方法は、うつ病及び/又は双極性障害のうつ病相を処置する方法を目的とする。
【0093】
適切な一連の所与の抗うつ薬に対する無応答は、遡及的又は予期的に決定され得ることを、当業者は認識するであろう。実施形態では、適切な一連の抗うつ薬に対する無応答の少なくとも1つは、予期的に決定される。別の実施形態では、適切な一連の抗うつ薬に対する無応答の少なくとも2つは、予期的に決定される。別の実施形態では、適切な一連の抗うつ薬に対する無応答の少なくとも1つは、遡及的に決定される。別の実施形態では、適切な一連の抗うつ薬に対する無応答の少なくとも2つは、遡及的に決定される。
【0094】
一実施形態では、本発明は、自殺傾向のある患者におけるうつ病の治療の方法に関する。用語「自殺傾向のある患者におけるうつ病」は、自殺傾向の少なくとも1つの症状、例えば、自殺念慮及び/又は自殺行動(例えば、意図、企図など)もまた示すことを患者において診断されたとき、本明細書において定義したとおり、任意の種類のうつ病を含むものとすることを当業者は理解するであろう。したがって、「自殺傾向のある患者におけるうつ病」には、自殺傾向のある患者における大うつ病性障害、自殺傾向のある患者における単極性うつ病、自殺傾向のある患者における治療抵抗性うつ病、自殺傾向のある患者における不安苦痛を伴ううつ病、自殺傾向のある患者における双極性うつ病、及び自殺傾向のある患者における気分変調が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、「自殺傾向のある患者におけるうつ病」は、自殺傾向のある患者における大うつ病性障害、自殺傾向のある患者における単極性うつ病、及び自殺傾向のある患者における治療抵抗性うつ病からなる群より選択される。より好ましくは、「自殺傾向のある患者におけるうつ病」は、自殺傾向のある患者における治療抵抗性うつ病である。
【0095】
本明細書で使用するとき、「自殺」は、「自身の命を奪う行為」である。http://en.wikipedia.org/wiki/Suicide-cite_note-7を参照されたい。自殺は、自殺未遂又は非致死性自殺行動を含み、これは自身の命を絶つという願望を伴う自傷であり、死をもたらさない。自殺未遂は、開始時に、一連の行為が自身の死につながるであろうことが予想される個人による自己開始型行動のシーケンスである。
【0096】
本明細書で使用するとき、「自殺念慮」は、自殺についての思考若しくは自殺への異常な執着、又は自身の命を終わらせたい若しくはこれ以上生きていたくないという思考を指すが、必ずしも自殺するために何らかの積極的な試みを行うわけではない。自殺念慮の範囲は、一過性のものから慢性的なもの及び詳細な計画、ロールプレイング、及び失敗した試みへの進展まで多岐にわたり、これらは、失敗するか若しくは発見されるように意図的に構成され得るか、又は死をもたらすように十分に意図され得る。
【0097】
本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、「治療する」、「治療」などの用語は、疾患、病態、又は障害に対抗する目的のためのヒト患者の管理及びケアを含むものとし、1つ以上の症状若しくは合併症の発症の予防、症状若しくは合併症のうちの1つ以上の緩和、又は疾患、病態、若しくは障害の排除のために、本開示の医薬組成物を投与することを含む。
【0098】
用語「治療有効量」とは、本明細書で使用するとき、治療される疾患又は障害の症状のうちの1つ以上の緩和を含む、研究者、医師又は他の臨床家により求められているヒト組織系における生物学的又は医薬的応答を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0099】
投与する最適用量は、当業者により容易に決定することが可能であり、使用される特定の化合物、投与方法、調製物の強度、投与方法、限られた時間内(例えば、最大60分)の連続投与の数、及び病状の進行状態によって様々に異なり得る。加えて、患者の年齢、体重、食事、及び投与回数をはじめとする、治療を受ける特定の患者に関連する因子により、結果として投与量の調整が必要になる。
【0100】
本明細書で使用するとき、用語「同時療法」、「併用療法」、「補助治療」、「補助療法」、「併用治療」、及び「同時投与」は、エスケタミンを1種以上の抗うつ薬と組み合わせて投与することによる、それを必要とする患者の治療を意味するものとし、エスケタミン及び抗うつ薬は、任意の好適な手段によって投与される。いくつかの実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、1~5種の抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。他の実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、1、2、3、4、又は5種の抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。他の実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、1種又は2種の抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。更なる実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、現在患者に投与されている抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。他の実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、異なる抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。なおも更なる実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、以前に患者に投与されていない抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。更に他の実施形態では、エスケタミン医薬組成物は、以前に患者に投与された抗うつ薬を用いたレジメンで投与される。エスケタミン医薬組成物及び抗うつ薬が個別の剤形で投与されるとき、各化合物について1日に投与される投薬回数は、同じでも異なっていてもよく、より典型的には、異なる。抗うつ薬は、主治医によって、及び/又はそのラベルによって処方されるように投与されてもよく、エスケタミン医薬組成物は、本明細書に記載されるように投与される。典型的には、患者は、抗うつ薬及びエスケタミンの両方を併用した同時治療下であり、その両方は、それらの所定の投与レジメンによって投与される。
【0101】
エスケタミン医薬組成物及び抗うつ薬は、同一又は異なる投与経路を介して投与されてもよい。投与の好適な方法の例としては、経口、静脈内(iv)、鼻腔内(in)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、又は直腸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エスケタミンは、鼻腔内投与される。本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「抗うつ薬」は、うつ病の治療に使用することができる任意の医薬品を意味するものとする。好適な例としては、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、三環系抗うつ薬、セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬、又は非定型抗精神病薬が挙げられるが、これらに限定されない。その他の例としては、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミドなどのモノアミン酸化酵素阻害薬;イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、クロミプラミン、アモキサピンなどの三環系抗うつ薬;マプロチリンなどの四環系抗うつ薬;ノミフェンシンなどの非環式;トラゾドンなどのトリアゾロピリジン;フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミンなどのセロトニン再取り込み阻害薬;ネファザドンなどのセロトニン受容体アンタゴニスト;ベンラファキシン、ミルナシプラン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、レボミルナシプランなどのセロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害薬;ミルタザピンなどのノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬;レボキセチン、エディボキセチンなどのノルアドレナリン再取り込み阻害薬;ブプロピオンなどの非定型抗精神病薬;カヴァカヴァ、セイヨウオトギリソウなどの天然物;s-アデノシルメチオニンなどの栄養補助食品、及び甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンなどの神経ペプチド;ニューロキニン受容体アンタゴニストなどの神経ペプチド受容体を標的とした化合物;及びトリヨードサイロニンなどのホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗うつ薬は、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、ノルトリプチリン、ドキセピン、プロトリプチリン、トリミプラミン、マプロチライン、アモキサピン、トラゾドン、ブプロピオン、クロミプラミン、フルオキセチン、デュロキセチン、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチン、フルボキサミン、ネファザドン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、レボキセチン、ミルタザピン、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミド、カヴァカヴァ、セイヨウオトギリソウ、s-アデノシルメチオニン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン受容体アンタゴニスト、又はトリヨードチロニンである。好ましくは、抗うつ薬は、フルオキセチン、イミプラミン、ブプロピオン、ベンラファキシン、及びセルトラリンからなる群から選択される。
【0102】
抗うつ薬(例えば、モノアミン酸化酵素阻害薬、三環系抗うつ薬、セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニンノルアドレナリン作動性再取り込み阻害薬、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性薬、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、天然物、栄養補助食品、神経ペプチド、神経ペプチド受容体を標的とした化合物、ホルモン、及び本明細書に記載の医薬品)の治療有効量/投与量レベル及び投薬レジメンは、当業者によって容易に決定されてもよい。例えば、販売が承認されている医薬品の治療的投与量及びレジメンは、一般的に利用可能であり、例えば包装ラベル、標準的な投薬ガイドライン、Physician’s Desk Reference(Medical Economics Company若しくはhttp:///www.pdrel.comにてオンラインで)のような標準的な投薬参考文献、又は他の出典に列挙されている。
【0103】
治療有効量のエスケタミン及び/又は抗うつ薬は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0338977号及び国際公開第2019/126108号に記載のように、初期段階及び/又は後続段階で投与され得る。いくつかの実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約20~約100mgである。他の実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約30~約90mgである。更なる実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約40~約80mgである。更に他の実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100mgである。更なる実施形態では、治療有効量は、約28mg、約56mg、又は約84mgである。他の実施形態では、治療有効量は、約56mg又は約84mgである。なおも更なる実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約28mgである。他の実施形態では、エスケタミンの治療有効量は、約56mgである。なおも更なる実施形態では、治療有効量は、約84mgのエスケタミンである。
【0104】
略記
SEM:走査型電子顕微鏡法
EDX:エネルギー分散型X線法
IR-ATR:赤外減衰全反射法
LC-MS:液体クロマトグラフィー質量分析法
THF:テトラヒドロフラン
UV-VIS:紫外線-可視
SPE:固相抽出
MS:質量分析
RT:保持時間
STD:標準
CCT:コリジョンセルテクノロジー
ATR:全反射測定法
IR:赤外線
LC-DAD-MS:液体クロマトグラフィー-ダイオードアレイ検出器-質量分析法
ICH:医薬品規制調和国際会議
D50:色温度5000Kの標準光源;近似強度 約210fc
AU:吸光度単位
ICP-MS:誘導結合プラズマ質量分析法
ルクス時間:1時間あたりの照度の単位
【実施例
【0105】
エスケタミン点鼻薬製剤は、水中0.12mg/mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び1.5mg/mLのクエン酸(pH4.5)に配合された161.4mg/mLのエスケタミン塩酸塩(140mgのエスケタミン塩基に相当)からなった。
【0106】
後述の実施例では、以下のサンプルを使用した。
【0107】
サンプル1:エスケタミン点鼻スプレーのバイアル、医薬品バッチ1、黄色/茶色の変色を示す。
(i)「変色が少ない」とラベル付けされたバイアルが入った1つのバッグ。
(ii)「重度の変色」とラベル付けされたバイアルが入った1つのバッグ。
【0108】
サンプル2:エスケタミン点鼻スプレーのバイアル、医薬品バッチ1、変色なし-バイアルは点鼻スプレーデバイスから取り出されたもの。
【0109】
サンプル3:エスケタミン点鼻スプレーのバイアル、医薬品バッチ2、変色なし。
【0110】
サンプル4:エスケタミン点鼻スプレーのバイアル、医薬品バッチ3、変色なし。
【0111】
サンプル5:エスケタミン点鼻スプレーのバイアル、医薬品バッチ4、変色なし。
【0112】
サンプル6:サンプルの保管(保持)に使用した2種類のグリップシールバッグ
(i)グリップシール位置に青色ゾーンがあるグリップシールバッグ。
(ii)グリップシール位置に青色ゾーンがないグリップシールバッグ。
【0113】
定性調査には、同一ロット(バッチ1)の変色したエスケタミンのバイアル(例:サンプル1、両バッグ)及び変色していないバイアル(例:サンプル2)のみを使用した。
【0114】
実施例1:ガラス剥離
変色したサンプルを含むガラスバイアルのガラス剥離の可能性を試験し、変色したサンプルを含まない基準バイアルと比較した。この目的のために、変色を示すバッチ1のバイアル(サンプル1)と、変色を示さない同じバッチのバイアル(サンプル2)から、エスケタミン溶液とプランジャストッパーを抽出した。いずれのバイアルも0.1MのHCl、エタノール、及び純水ですすいだ。バイアルには、剥離したガラスに吸着することが知られている1.25mg/mLのメチレンブルー溶液を満たした。振とうし、5分間インキュベートした後、バイアルを空にして純水ですすぎ、メチレンブルーを全て除去した。バイアルを目視で確認し、メチレンブルーがガラスに吸着し、ガラス剥離が発生していないかどうかを検証した。
【0115】
メチレンブルーで処理したバイアルを目視で確認したところ、変色したサンプルと変色していないサンプルの間に違いは見られなかった。どちらのバイアルも、ストッパーの高さでは非常に小さな輪状物が見られたが、溶液の高さでは見られなかった。
【0116】
ガラス剥離試験では、エスケタミンの変色したサンプルと変色していないサンプルの間に視覚的な違いは見られなかった。そのため、ガラス剥離の程度は同じと考えられる。
【0117】
実施例2:ストッパーの完全性試験
変色したバイアル4本(すなわちサンプル1)のストッパーを針ツールで取り外したが、ストッパーの中央の薄い部分を損傷しないように注意した。ストッパーを顕微鏡で観察し、ストッパーの完全性を確認した。
【0118】
変色したバイアル(すなわちサンプル1)のストッパーを調査したところ、ストッパーに穴が開いたり、何らかの損傷を受けた形跡はなかった。
【0119】
エスケタミンのバッチ1におけるバイアルの実体顕微鏡画像(変色が少ないものと、重度のものの両方)に基づき、多くの茶色の浮遊粒子と、小さな気泡で部分的に形成されたバイアル内壁の堆積物が観察された。また、ゴム製ストッパーは、液体と接触した表面に黄色/茶色の変色が見られた。
【0120】
顕微鏡分析に基づくと、粒子は不規則で、黄色/茶色の程度が異なる薄膜として現れる。
【0121】
IR顕微鏡分析に基づいて、粒子はシリコーン系のものとして識別できた。粒子のスペクトルの追加的な特徴を識別することはできなかったが、特定のスペクトル領域でエスケタミンのスペクトルと若干の類似性が見られた。
【0122】
黄色/茶色の物質は、ジクロロメタンには溶解せず、THFには溶解することが観察された。ジクロロメタンで洗浄した後も、粒子の輪郭は目視できていたが、わずかに薄くなっている。色は変化しなかった。残った黄/茶色の物質のIR分析に基づき、シリコーンバンドは存在しなくなったが、識別することはできなかった。茶色の物質は非常に小さな粒子で構成されていると考えられている。
【0123】
顕微鏡及びIR分析に基づいて、シリコーン粒子は、シリコーン化ゴム製ストッパー表面への親和性が高いため、最も変色しやすいバイアルのストッパー表面に吸着し、エタノールで洗浄することにより部分的に除去できることが示された。
【0124】
実施例3:プラスチック製グリップシールバッグの透過率プロファイル
サンプル6の各バッグから3個ずつ、Unicam UV 500(Thermo Spectronic)UV-Vis分光計を用いてUV-Visスペクトルを記録した。
【0125】
サンプルの保管には、2種類のグリップシールバッグを使用する。2つのバッグの透過率プロファイルには、わずかな違いしか認めることができなかった。
【0126】
実施例4:変色の分析
ライカMZ16実体顕微鏡及び/又はライカDMLM顕微鏡で光学写真を撮影した。走査型電子顕微鏡(SEM)撮像及びエネルギー分散型X線(EDX)分析は、Bruker Quantax 70 EDX検出器を搭載した日立TM3000走査型電子顕微鏡を用いて、5kVと15kVの電荷低減モードで行った(EDX報告閾値0.2%を適用)。Quorum SC7620スパッタコーターを使用して、サンプルをAu/Pdでスパッタコーティングした。
【0127】
赤外線(IR)分析は、BrukerHyperion3000赤外線顕微鏡にTensor27分光計を接続して実施した。IRスペクトルの記録には、20倍のATR対物レンズを使用した。
【0128】
A.バイアルの内容物の分析
選択したバイアルの内容物を0.1μmのWhatman Anodiscフィルタを通して真空濾過ユニットを使用して濾過した後、0.1MのHClと水で洗浄した。空にしてすすぎ、乾燥させたエスケタミンの変色したバイアルの内部から、針ツールを用いて物質を収集した。少量の物質をIR分析のために金メッキミラーに移した。
【0129】
サンプル1の変色したバイアルでは、多くの浮遊する茶色の粒子が観察され、バイアル内壁には小さな気泡が部分的に形成された堆積物も観察された。また、ゴム製ストッパーは、接液部にいくらかの黄色/茶色の変色が見られた(「変色が少ない」とされたバイアルのストッパーは少ない)。基準ストッパーに変色や粒子の浮遊は観察できない。
【0130】
フィルタ上で選択され分離された粒子(サンプル1)の顕微鏡画像では、一部の粒子がより滑らかで、茶色が少ないように見えることがわかる。
【0131】
フィルタ上で分離された粒子は、茶色い物質のカールした薄膜のように見える。一部の粒子はより滑らかで、茶色が少ないように見える。
【0132】
選択した粒子のSEM(後方散乱電子)画像を取得した。全ての粒子は不規則な形をしている。粒子は平坦で、縁に若干の凹凸がある。15kVで画像化すると、コントラストが低下する。粒子は「半透明」に見え、これは、Au/Pdのコーティングにもかかわらず、電子ビームが部分的に粒子を通過していることを意味し、非常に薄い粒子であることを示している。
【0133】
変色を示すバイアルの内容物を濾過した後のWhatman Anodiscフィルタ上の分離粒子と、変色を示すバイアルの内側からこすり落とした分離粒子のIR-ATRスペクトルを、識別のために記録した。茶色の粒子はシリコーン系のものとして識別できた。
【0134】
B.ストッパー分析
ストッパーを顕微鏡で調べた。サンプルバッグから基準バイアル(サンプル2)2本と重度の変色したバイアル(サンプル1)2本を選択した。針ツールを用いてバイアルからストッパーを取り外した。各ストッパーを0.1MのHClと無粒子水で洗浄した。更に、基準ストッパー1個と重度の変色したストッパー1個をエタノールで洗浄した。各ストッパーからバイアル内の液体に接触している部分をメスで切り出し、アルミニウム製SEMスタブに取り付けられた粘着性のあるカーボンパッドに貼り付けた。IR分析後、4個のストッパーを備えたSEMサンプルホルダーにスパッタコーターでAu/Pdをコーティングし、SEMで画像化した。
【0135】
変色したストッパー(サンプル1のバイアルから分離)とその断面の画像を取得した。具体的には、バッチ1のエスケタミン点鼻スプレーにおけるバイアルのストッパーの(A)エスケタミン溶液に接触している変色した側、(B)エスケタミン溶液に接触していないストッパーの反対側(通常の色)、(C)分離し変色したストッパー、(D)ストッパーの断面、の画像を取得した。ストッパーへの色の移行は確認できなかった。
【0136】
ストッパーの変色は、バイアル内の医薬品と接触している部分である最初の周辺部まで観察される。断面には明確な変色は見られず、変色は表面効果(ストッパー表面への茶色物質の吸着)のみである可能性が高いことを示している。
【0137】
バッチ1のエスケタミン点鼻スプレーからHCl及び水で洗浄した基準ストッパー及び変色したストッパーの画像を取得した。また、基準ストッパー及び変色したストッパーをエタノールで追加洗浄した画像も取得した。変色したストッパーは、基準ストッパーと比較して、明確な違いが見られた。しかし、エタノール洗浄によってストッパーの材料が一部除去されていることは明らかである。
【0138】
各ストッパーのIR-ATRスペクトルは、異なる3点から収集し、識別のために記録した。ゴム製ストッパー材料を除く全てのスペクトルにおいて、IR顕微鏡による分析に基づいて、シリコーンの寄与が追加的に確認された。シリコーンの存在は、ストッパーのシリコーンコーティングと関連付けることができる。基準ストッパー(HClと水、又はHCl、水、及びエタノールで洗浄)、変色ストッパー(HCl、水、及びエタノールで洗浄)のスペクトルでは、シリコーンの寄与はわずかであった。変色したストッパー(塩酸と水のみで洗浄)からのIRスペクトルは、主にシリコーンに対応し、ストッパーのゴム材料の寄与は限定的であった。しかし、ストッパーをエタノールで追加洗浄すると、シリコーンの寄与が減少し、ゴムがより明確になる。これは、変色を示したバイアルのストッパー表面にシリコーン粒子が吸着していることを示している。スパッタコーティングされたストッパーのSEM分析に基づき、同様に処理された変色したストッパーと基準ストッパーの間に違いは観察されなかった。
【0139】
C.溶解度試験
変色した1本のバイアル(サンプル1)に少量のCHClを加え、同じサンプルの別のバイアルにテトラヒドロフラン(THF)を加えた。両方のバイアルを再栓し、振とうし、目視で観察した。追加の実験として、Whatman Anodiscフィルタで分離した粒子(サンプル1)の一部をジクロロメタン(CHCl)とTHFで洗浄し、溶解度を評価した。
【0140】
変色した溶液(サンプル1)にCHClを添加すると、黄色/茶色がCHCl相に移行したことがわかった。目視及び顕微鏡(実体顕微鏡)で調査したところ、CHCl溶液中に粒子は観察されなかった。THFで同様の試験を繰り返したところ、溶液は黄色/茶色のままであり、ここでも目視及び顕微鏡(実体顕微鏡)で調査したところ、溶液中に粒子は観察されなかった。
【0141】
CHCl洗浄前後の分離粒子(Whatman Anodiscフィルタ上でサンプル1のバイアルから分離)の画像を取得した。CHClで洗浄すると、粒子の外観に若干の違いが見られる(粒子の輪郭は依然として見えるが、わずかに薄くなっている)。茶色の除去は認められない。しかし、(サンプル1のバイアルからの)分離した粒子を含むフィルタをTHFですすいだところ、茶色はほぼ完全に消失した。
【0142】
CHCl洗浄した粒子のIR-ATRスペクトルを記録し、識別を行った。シリコーンバンドはなくなり、追加バンド(最初も存在していた)のみが残っている。粒子のシリコーン部分が除去され、茶色の物質だけが残る。
【0143】
この実験により、粒子のシリコーン部分がCHClに溶解することが示された。茶色の物質はCHClには溶解しないが、THFには溶解する。変色したバイアルにCHClを添加した後、粒子は観察されず、洗浄してもフィルタから茶色は除去されない。
【0144】
D.ストレスを与えたサンプル(ICH光)
変色していないエスケタミンバッチ1の1本のバイアルを、700W/mのICH光を2サイクル8時間(計16時間)曝露した後、70℃のオーブンで3ヶ月間(暗所)保持した。2本目のバイアルは、光に曝露されることなく同じオーブン条件で、基準として保持した。バイアルの写真は、ライカMZ16実体顕微鏡で撮影された。更に、分解産物のパターンを評価するために、サンプルをLC-DAD-MS分析に供した。
【0145】
エスケタミンバッチ1のストレスを与えたバイアルとストレスを与えていないバイアルの両方の画像が、(A)ICH光に曝露されたエスケタミンバッチ1のストレスを与えたバイアルと、(B)光に曝露されなかったバイアル、について取得された。両バイアルとも同じオーブン条件(70℃、3ヶ月)で保持した。
【0146】
光に曝露された(そして70℃で3ヶ月間保管された)エスケタミンのバイアルの溶液は、黄色/茶色に変色し、浮遊粒子が見られる。外観は、先にバッチ1の変色したバイアルで観察されたものと視覚的に類似している。
【0147】
光に曝露されなかった(しかし同じオーブン条件で同じ期間保持された)エスケタミンバイアルの溶液では、変色は観察されず、浮遊粒子も見られなかった。
【0148】
比較として、バッチ1のエスケタミンのバイアル(すなわちサンプル1)の変色の少ないものと激しいものの画像を取得した。更に、4本全てのバイアルの内容物をLC-DAD-MSで分析した。バッチ1の光/熱ストレスバイアル及び熱ストレスバイアルにおけるLC-DAD-MS分析、及び光/熱ストレスバイアルにおける微粒子の外観に基づいて、光照射が観察された黄色/茶色の変色の根本原因である可能性があると結論付けることができる。
【0149】
E.液体クロマトグラフィー-ダイオードアレイ検出-質量分析(LC-DAD-MS)
液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)分析は、希釈後の保持サンプルとストレスを与えたサンプル、及び固相抽出物について実施した。希釈の場合は、サンプルをアセトニトリルで50倍に希釈してから分析した。
【0150】
固相抽出実験では、以下のようにサンプルを準備した。黄色/茶色の変色を示す3つの選択したバイアル(サンプル1)の内容物を、SEP-PAK C18カートリッジ(Waters)を用いた固相抽出に供した。溶媒強度を上げるステップ勾配を使用して、極性の違いに応じて分析物を溶出した。同じ手順を、3本のバイアルに入った基準サンプル(サンプル2)にも実行した。
【0151】
サンプル1の空バイアルを0.1MのHClと水ですすいだ。バイアル内面の着色残渣を少量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた。
【0152】
LC-MS分析は、Thermo Q Exactive Plusオービトラップ質量分析計に接続された、ダイオードアレイ検出器を備えたDionex Ultimate 3000 HPLCシステムを使用して実施した。
【0153】
クロマトグラフィー分離は、150mm×3.0mm ID Waters XBridge C18 3.5μmカラムで行った。カラムヒーターを45℃に保ち、流速は0.6mL/分とした。溶離液Aは10mM酢酸アンモニウムからなり、溶離液Bはアセトニトリルであった。勾配溶出は、12分間で10~100%の溶離液Bの直線勾配で構成され、100%Bで5分間保持した。
【0154】
エレクトロスプレーイオン化源を用いて、正イオンモードと負イオンモードの両方で高分解能の精密質量データを取得した。識別は、スペクトルを手動で解釈し、基準物質のスペクトルと比較することによって行われた。
【0155】
固相抽出後、黄色/茶色の着色種は主に1つの画分に濃縮された。この濃縮画分のLC-DAD-MS分析、及びTHFに溶解した残渣の分析により、380~430nmの吸収帯を示すUV-Visスペクトルを持ついくつかの化合物の存在が実証された。この波長領域の吸収は物質を黄色/茶色にするため、380~430nmの波長を選択したクロマトグラムでは、黄色く着色した分析物が選択的に見えるようになる。
【0156】
濃縮SPE画分のクロマトグラムでは、3.5分~6.5分の間にいくつかのピークが見られる。これらのピークは、着色していない基準サンプルのSPE画分には存在しなかった。残渣のクロマトグラムは、RT9.35分と11.19分に2つのピークを示す。
【0157】
1つを除く着色された分析物の質量スペクトルは、塩素の同位体パターンを示している。また、得られたMS/MSスペクトルのフラグメンテーションパターンを調べることで、不純物の構造情報と医薬品有効成分であるエスケタミンの構造情報を関連付けることができる。
【0158】
変色したサンプルの総不純物プロファイルを評価したところ、保持時間(RT)4.97分のピークが主に存在し、このピークは着色していない基準サンプルのクロマトグラムには存在しない(図1参照)。更に、全波長クロマトグラムから、黄色く着色した分析物は濃縮画分に存在する分析物のごく一部であり、他の着色していない分析物も濃縮されていることがわかる。
【0159】
RT4.97分の不純物は、m/z239.04750Da[M-H]の精密質量が観測され、これは式C1212Clに対応する。この不純物の構造情報を得るために、分子量239.05のプロダクトイオンスキャンを実施した。得られた質量スペクトルのデータから、分析物は6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸であることが示唆された。Rieke Metalsから購入した市販の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸を分析し、保持時間及び質量分析データの両方の一致に基づいて同一性を確認した。
【0160】
過酸化水素存在下、ラジカル開始剤存在下での強制分解試験において、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸の形成は以前から報告されていた。
【0161】
黄色/茶色の光/熱ストレスサンプル(ICH光)及び無色の熱ストレスサンプルのLC/MS分析を行った。光ストレスを与えたサンプルは、変色を示したバッチ1のバイアルと比較して、主に同様の分解プロファイルを示している。光ストレスを与えたサンプルの主要な分解物は、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸であることが示された。その他、いくつかの酸化分解物やノルエスケタミンの存在も確認された。6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸は、光ストレスを与えていないサンプルにも含まれていたが、その量はかなり少なかった。異なるサンプルの重ね合わせ図を図1に示す。
【0162】
黄色/茶色の着色種のほか、主な不純物は6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸であることが識別された。
【0163】
実施例4:定量的調査
ICP-MS定量分析は、Thermo XSeries2四重極ICP-MSで行った。測定器は標準(STD)モードとコリジョンセルテクノロジー(CCT)モードで動作させた。Rh(STDモード測定)又はRh(STDモード測定)とY(CCTモード測定)の組み合わせを内部標準として使用した。校正には、ICP多元素標準Merck IV(Li、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sr、Ag、Cd、In、Ba、Ti、Pb、Bi含有)又は多元素標準Merck IVとSn標準との組み合わせで使用された。校正された元素は、完全定量分析で測定し、残りの元素は半定量分析で測定した。
【0164】
A.医薬品溶液中に存在する金属濃度
観察された黄色/茶色の変色がどの程度元素不純物の存在によるものかを評価するため、変色を示したバッチ(バッチ1すなわちサンプル1)から採取したバイアルの内容物と、変色を示さなかったバッチ(バッチ1/サンプル2、バッチ2/サンプル3、バッチ3/サンプル4、バッチ4/サンプル5)からのバイアルの内容物を、ICP-MSで分析した。各バイアルの内容物は、プラスチック製シリンジに取り付けられたステンレス鋼針(いずれも超純水で予備すすぎ済み)によって収集された。約0.2mLのサンプルを0.1mLの濃HNO(69%)と混合し、50℃で5分間超音波処理を行った。この処理を行った後、サンプルを超純水で5mLに調整し、ICP-MS分析に供した。
【0165】
ICP-MSによる全元素分析を行った。変色を示した(中又は高)バイアル内容物(バッチ1のサンプル)と、変色を示さなかったバイアル内容物(バッチ1~4のサンプル)との間で、金属濃度の違いは確認できなかった。少なくとも1つのバッチで測定された平均濃度が0.01μg/mLを超えたエスケタミンサンプルに存在する金属の概要を表1A~1Bに示す。異なるバッチのバイアルの平均Na濃度は200μg/mL超であったが、測定された平均B濃度は1.5~2.5μg/mLであった。変色を示さないバイアル(0.58~0.82μg/mL)と比較して、変色を示すバイアル(1.1~1.5μg/mL)ではMgの平均濃度がやや高かった。しかし、変色を示さないサンプルと変色を示すサンプルの個々のMg値を比較すると、これらの違いは顕著ではなかった。Alの平均濃度は0.62~0.75μg/mL、Feの平均濃度は0.13~0.32μg/mLであった。Cr、Ni、Zn、Ga、As、Zr、Baの平均濃度は、異なるバッチで0.06μg/mL未満であった。Siについては、半定量分析でのみ測定され、干渉が知られているため、正確な濃度は示されていない。しかし、変色していないサンプルと変色したサンプルでは、Siの濃度は非常に同等であった。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
エスケタミン溶液のICP-MS分析では、変色を示すバイアルの内容物(バッチ1のサンプル)と、変色を示さないバイアルの内容物(バッチ1~4のサンプル)の間で金属濃度に観察可能な違いは見られなかった。
【0169】
B.バッチ5~7の医薬品に存在する金属濃度
光ストレス下での金属濃度と変色との間に関連性があるかどうかを評価するため、光ストレス試験に使用したサンプルと同じバッチ(バッチ5-7)の金属濃度をICP-MSで分析した。バイアルからのサンプル内容物の収集、サンプル処理、及びサンプル希釈は、前項で説明したのと同じ方法で行った。
【0170】
ICP-MSによる全元素分析を行った。主な注目要素を表2に示す。この表には、バッチ5~7での測定濃度が示されている。スクリーニング結果については、3つの複製サンプル調製物(1本のエスケタミンバイアル/サンプル調製物)と測定に基づいて、平均濃度及び標準偏差を算出した。バッチ7の平均Fe濃度は1μg/mLよりも高かったのに対し、バッチ5及び6では1μg/mLよりも低かった。平均Cr濃度は、バッチ6と7では0.4~0.9μg/mLであったが、バッチ5では0.1μg/mL未満であった。NiとCuの平均濃度は、異なるバッチで0.1μg/mL未満であった。異なるバッチのB、Na,mg、Si、Caの平均測定濃度は、1μg/mL超であった。
【0171】
【表3】
【0172】
C.光ストレス試験
エスケタミン医薬品の異なるバッチの光の影響を比較するために、光ストレス試験を開始した。
【0173】
以下のバッチを試験に含めた。
(i)サンプル2からの医薬品バッチ1。
(ii)医薬品バッチ5(エスケタミン塩酸塩を含む)。
(iii)医薬品バッチ6(エスケタミン塩酸塩を含む)、これはストッパーなしの試験用医薬品溶液の調製にも使用された。
(iv)医薬品バッチバルク7(エスケタミン塩酸塩を含む)、このバッチのバイアルは本試験前に安定状態にあり、異なる温度と湿度で保管されていた。
【0174】
各バッチから、3本のバイアルを使用した。
(i)光キャビネットでは、1つは上向きに(ストッパーが上)、1つは下向きに(ストッパーが下)、1つは横向きに配置した。
(ii)ICH光曝露と70℃保管では、互いに隣接して横向きに配置した。
(iii)ストッパーなしの試験では、全て上向きに配置した(パラフィンを上にして閉じた)。
【0175】
サンプルは、表3に示すように異なる条件で配置した。
【0176】
【表4】
【0177】
一定の時間間隔でバイアルを目視検査し、カラースケール(Janssen Pharmaceutica,Appearance Guide for Solids,yellowish-brown grades,scale from 1 to 9,2015)及びプラセボバイアル(着色なし)と色を比較した。
【0178】
データ評価では、同じ光曝露条件/時間で曝露された同一バッチのバイアルの結果を平均化した。
【0179】
光曝露終了後、横向きでD50光を曝露し続けた4つのバッチ全てのバイアルの内容物を、真空濾過ユニットを使用し、0.1μmのWhatman Anodiscフィルタを通して濾過し、水で洗浄した。
【0180】
光学写真は、ライカMZ16実体顕微鏡とライカDMLM顕微鏡で撮影した。赤外線(IR)分析は、BrukerHyperion3000赤外線顕微鏡にTensor27分光計を接続して実施した。IRスペクトルの記録には、20倍のATR対物レンズを使用した。試験の最後に、選択された数のバイアルに対してLC-DAD-MSが実施された。
【0181】
(i)連続光ストレス
ほとんどのバイアル(ストッパー付き)が変色し、変色を評価するためのカラーカードスケールを超えたため、49日後に光ストレス試験を中止した。一部のバイアルでは、実験開始6週目で既に変色がスケール外であった(バッチ1、5、又は6の横向きのバイアル)。カラーカードスケールから外れているため、図2の表示データは35日目までに制限されている。
【0182】
試験開始前に、バイアルが変色していないかどうかを検査した(0時点)。いずれも変色は見られなかった(プラセボと同程度の色)。図2に示すように、連続光曝露した全てのバッチで、既に1週間後に明確な色調変化が観察された。バッチ1では、更に毎日試験を行い、2日後に既に変色が始まっていることが観察された。また、D50光を連続的に曝露したストッパー付きバイアルでは、2週間後にガラスバイアル表面の濁った帯、ストッパー表面の黄色い変色、及び粒子がはっきりと確認できた。2週間のD50光曝露後、バイアル(ここではバッチ6)内のストッパー表面の黄色い変色と粒子がはっきりと確認できた。
【0183】
粒子は、先に観察されたもの(バッチ1)と視覚的に類似していることが観察された。室温及び70℃で基準として暗所に保管したバイアルでは、色調変化及び粒子は観察されなかった。
【0184】
(ii)初期光曝露とそれに続く暗所での保管の影響
図3に示すように、D50光を15日間曝露したバイアルは、連続的にD50光を曝露したバイアルと同様に変色したが、暗所に置くと色調変化が著しく遅くなった(バッチ6はバッチ7と非常に似た挙動を示した)。
【0185】
ICH光の曝露についても、同様の観察が可能である。ICH光曝露後、バイアルはわずかに変色した(プラセボバイアルより着色しているが、カラーカードのスケール1より小さい)。これらのICHストレスを与えたサンプルは、その後暗所で保管すると、徐々に変色が続いた。
【0186】
(iii)暗所保管の温度の影響
図4に示すように、ICH光を曝露した後、室温で暗所に保管したバイアルはゆっくりとしたペースで変色を続け、70℃で暗所に保管したバイアルは同様に変色を続けたが、その速度はより速くなった。
【0187】
(iv)光強度の影響
結果は、受け取ったルクス時間の量がはるかに多いという事実にもかかわらず、2×ICH後の変色はD50光への7日間の連続曝露後よりも顕著ではないことを示している(2サイクルのICH光(2×8時間)は2×120万ルクス時間に相当するが、7日間のD50光(約210fc)はわずか約400000ルクス時間にしか相当しない)。したがって、光の強度は持続時間よりも重要ではないようである。
【0188】
(v)バイアルの向きとストッパーの存在の影響
その結果、上向き又は下向きに配置されたバイアルと比較して、横向きのバイアルは高い変色を示すことが観察された(図5(最初のグラフ)のバッチ6のグラフ例を参照、他のバッチも同様の挙動を示した)。これは、光に曝露される製品の表面積の違いに関係しているのかもしれない。バイアルを横向きに寝かせると、バイアルの側面全体を露出させることができ、下向きにすると、上部のみが露出する。上向きの場合、ストッパーが下の液体に影を落とし、光を部分的に遮断することができる。
【0189】
ストッパーのないバイアルは変色が遅かった(異なるバッチからのもので、同じエスケタミン塩酸塩バッチから調製された同じ向きのバイアルの図5(2番目のグラフ)の比較を参照)。ストッパーのないバイアルでも粒子は観察されなかった。このことから、粒子の生成はストッパーとバイアル内のエスケタミン溶液との接触に関係していることが強く示唆される。
【0190】
D.変色の識別
全バッチのAnodiscフィルタで分離した粒子の顕微鏡画像を取得した。顕微鏡で評価したところ、ストレスを与えたバッチには小さな茶色い粒子が多数存在していることがわかった。いくつかのより大きい茶色の粒子、又は場合によってはより小さい粒子の凝集体も観察された。これらの粒子の外観は、バッチ1の変色した保持バイアルについて分離された粒子と同様である。
【0191】
更に、粒子をIR顕微鏡で分析した。残念ながら、茶色い粒子を確定的に識別することはできなかった。しかし、今回収集したIRスペクトルは、バッチ1の変色した保持バイアルから見つかった茶色の粒子について以前に得られたIRスペクトルと大きな類似性が観察された。以前の調査と同様に、シリコーン様材料の寄与の可能性と、特定の化合物に割り当てることができなかった多数の追加バンドが、IRスペクトルに存在することが観察された。しかし、光ストレス試験でバイアルから分離した粒子のスペクトルでは、シリコーン様材料の相対的な寄与は、保持バイアルから分離した粒子のスペクトルよりも小さいように見えた(バッチ1)。
【0192】
不純物プロファイルを評価するために、光条件に曝露された異なるエスケタミンのバッチ(1及び5~7)をLC-DAD-MSで分析した。同じ条件で曝露した異なるバッチのクロマトグラムを比較しても、有意な差は認められなかった。
【0193】
E.光ストレス試験の結論
光ストレス試験の結果に基づいて、変色に関して次のような考察ができる。
【0194】
バッチ1を含む異なるエスケタミンの医薬品バッチの挙動は、同じ光ストレス条件下で類似している(試験範囲内の金属濃度には依存しない)。
【0195】
光ストレスを与えたバイアルの外観は、変色したバイアルの外観と類似している(バイアルの外観(茶色の粒子の存在、バイアルの壁やストッパーへの付着物)、及び粒子の外観や化学組成が類似している)。
【0196】
光曝露の持続時間は、光の実際の強度よりも重要であると思われる。
【0197】
初期光曝露(変色につながる)後、光がない場合でも変色はゆっくりと続く。
【0198】
エスケタミン点鼻スプレー1のバイアルの黄色/茶色の変色は、シリコーン粒子と黄色/茶色の物質との組み合わせによって引き起こされることが示されている。黄色/茶色の物質は、シリコーン粒子に吸着しているようで、医薬品有効成分のエスケタミンに関連していると思われる。
【0199】
本発明の態様
1.エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、酸化分解物と、を含む、医薬組成物。
2.酸化分解物が、6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩である、態様1に記載の医薬組成物。
3.エスケタミンの量に対して、0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
4.少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
5.光の非存在下で少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保管した後、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
6.エスケタミンの重量に対して、0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
7.少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保管した後、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
8.光の非存在下で少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、又は少なくとも24ヶ月保管した後、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
9.約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
10.少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保管した後、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
11.光の非存在下で少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、又は少なくとも24ヶ月間保管した後、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩を含む、態様2に記載の医薬組成物。
12.保管が、約20℃~約75℃の範囲の温度である、態様4、5、7、8、10、又は11のいずれか1つに記載の医薬組成物。
13.保管が、約25~約80%の相対湿度を有する雰囲気中における、態様4、5、7、8、10、又は11に記載の医薬組成物。
14.医薬組成物が、約1時間未満、約30分未満、約10分未満、又は約1分未満、光に曝露される、態様3、6、又は9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
15.医薬組成物が密閉容器内にある、態様1~14のいずれか1つに記載の医薬組成物。
16.密閉容器が密封ガラスバイアルである、態様15に記載の医薬組成物。
17.密閉容器が光に対して実質的に不透明である、15又は16に記載の医薬組成物。
18.密閉容器が琥珀色の容器である、態様17に記載の医薬組成物。
19.密閉容器がプラスチック製ストッパーを含む、態様15~18のいずれか1つに記載の医薬組成物。
20.密閉容器が、光に対して実質的に不透明である第2の容器内にある、態様15~19のいずれか1つに記載の医薬組成物。
21.光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む、医薬組成物。
22.光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む、医薬組成物。
23.光の非存在下で少なくとも6ヶ月間保管した後、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む、医薬組成物。
24.鼻腔内医薬組成物である、態様1~23のいずれか1つに記載の医薬組成物。
25.クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、及び水のうちの1つ以上を更に含む、態様1~24のいずれか1つに記載の医薬組成物。
26.エスケタミンの量に対して、約0.2%(HPLC面積)以下のノルエスケタミン又はその医薬的に許容される塩を更に含む、態様1~25のいずれか1つに記載の医薬組成物。
27.エスケタミン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物における酸化分解物の形成を防止するための方法であって、
(a)医薬組成物を光の非存在下で調製すること、
(b)医薬組成物を光の非存在下で保管すること、
(c)医薬組成物を約6時間以下の光に曝露すること、又は
(d)光の非存在下で容器に医薬組成物を充填すること、のうちの1つ以上を含む、方法。
28.エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの量に対して0.2%(HPLC面積)以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む医薬組成物の調製プロセスであって、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス。
29.エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、エスケタミンの重量に対して0.2%w/w以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む医薬組成物の調製プロセスであって、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス。
30.エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と、約120ppm以下の6-(2-クロロフェニル)-6-オキソヘキサン酸又はその医薬的に許容される塩と、を含む医薬組成物の調製プロセスであって、エスケタミン又はその医薬的に許容される塩と1以上の医薬的に許容される賦形剤とを混合することと、エスケタミンを約6時間以下の光に曝露することと、を含む、プロセス。
31.混合が、光に対して実質的に不透明である混合基材を用いて行われる、態様28~30のいずれか1つに記載のプロセス。
32.混合基材が光保護箔を含む、態様28~30のいずれか1つに記載のプロセス。
33.容器に医薬組成物を充填することを更に含む、態様28~32のいずれか1つに記載のプロセス。
34.充填が、光に対して実質的に不透明である充填基材を用いて行われる、態様33に記載のプロセス。
35.充填基材が、ブラックシリコーンシート又はステンレス鋼を含む、態様34に記載のプロセス。
36.光に対して実質的に不透明である第2の容器で容器を覆うことを更に含む、態様34又は35に記載のプロセス。
37.第2の容器がアルミニウムバッグである、態様36に記載のプロセス。
【0200】
上記の明細書は、説明を目的として与えられる実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、本発明の実施には、以下の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に含まれる全ての通常の変形例、適合例及び/又は改変例が包含される点が理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】