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特表2023-505833O-グリコシル化可能なポリペプチド領域およびGDF15を含む融合ポリペプチド
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  • 特表-O-グリコシル化可能なポリペプチド領域およびGDF15を含む融合ポリペプチド 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-13
(54)【発明の名称】O-グリコシル化可能なポリペプチド領域およびGDF15を含む融合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230206BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20230206BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230206BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230206BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20230206BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230206BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/475
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/19
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 H
C12P21/02 C
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61K38/18
A61K47/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535198
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 KR2020018053
(87)【国際公開番号】W WO2021118256
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0165052
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨンチュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ドク・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キュボン・ナ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ホ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】セム・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ウォン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ア・パク
(72)【発明者】
【氏名】スミン・ノ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンテク・パク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG13
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA26
4B065CA44
4C076AA94
4C076BB16
4C076CC16
4C076CC21
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084CA56
4C084DB52
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA32
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA23
4H045GA26
4H045GA45
(57)【要約】
GDF15(Growth differentiation factor 15)およびO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含む融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む薬学的組成物、およびO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を融合させる段階を含むGDF15の生体持続期間を増加させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GDF15(Growth/differentiation factor15)、および
前記GDF15のN-末端に結合した、総1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域
を含み、
前記1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれO-グリコシル化可能なアミノ酸残基を3~10個含むポリペプチドである、融合ポリペプチド。
【請求項2】
下記の式で表される、請求項1に記載の融合ポリペプチド:
N’-(Z)n-Y-C’
上記式中、
N’は、融合ポリペプチドのN-末端であり、C’は、融合ポリペプチドのC-末端であり、
Yは、GDF15であり、
Zは、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域であり、
nは、GDF15のN-末端に結合したO-グリコシル化可能なポリペプチド領域の個数であって、1~10の整数である。
【請求項3】
前記1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域または配列番号23~113のタンパク質中のO-グリコシル化可能なアミノ酸残基を3~10個含む連続する10個以上のアミノ酸を含むポリペプチド領域である、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、免疫グロブリンD(Immunoglobulin D;IgD)のヒンジ領域である、請求項3に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、それぞれ独立して、以下からなる群より選択される、請求項4に記載の融合ポリペプチド:
(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2)配列番号1のアミノ酸配列中、O-グリコシル化残基を3個~7個含む連続する5個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、および
(3)IgD中、前記(1)または(2)のポリペプチドを含む連続する34個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項6】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、それぞれ独立して、以下からなる群より選択される、請求項4に記載の融合ポリペプチド:
(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2)配列番号1のアミノ酸配列中、配列番号9を含む連続する5個以上のアミノ酸または配列番号10を含む連続する7個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、および
(3)IgD中、前記(1)または(2)のポリペプチドを含む連続する34個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項7】
前記融合ポリペプチド内のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域と結合したGDF15の体内投与時測定可能な最後の採血時点までの血中濃度-時間曲線下面積(AUClast)、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域と結合しないGDF15と比較して2倍以上増加した、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の組換えベクターを含む、組換え細胞。
【請求項11】
請求項10に記載の組換え細胞を培養する段階を含む、GDF15およびO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの製造方法。
【請求項12】
生体外で、総1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を、GDF15のN末端に連結させる段階を含み、
前記1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれO-グリコシル化可能なアミノ酸残基を3~10個含むポリペプチドである、GDF15の体内安定性増進方法。
【請求項13】
前記1~10個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域または配列番号23~113のタンパク質中のO-グリコシル化残基を3~10個含む連続する10個以上のアミノ酸を含むポリペプチド領域である、請求項12に記載のGDF15の体内安定性増進方法。
【請求項14】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、免疫グロブリンD(Immunoglobulin D;IgD)のヒンジ領域である、請求項13に記載のGDF15の体内安定性増進方法。
【請求項15】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、それぞれ独立して、以下からなる群より選択される、請求項14に記載のGDF15の体内安定性増進方法:
(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2)配列番号1のアミノ酸配列中、O-グリコシル化残基を3個~7個含む連続する5個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、および
(3)IgD中、前記(1)または(2)のポリペプチドを含む連続する34個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項16】
前記1~10個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、それぞれ独立して、以下からなる群より選択される、請求項14に記載のGDF15の体内安定性増進方法:
(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチド、
(2)配列番号1のアミノ酸配列中、配列番号9を含む連続する5個以上のアミノ酸または配列番号10を含む連続する7個以上のアミノ酸を含むポリペプチド、および
(3)IgD中、前記(1)または(2)のポリペプチドを含む連続する34個以上のアミノ酸を含むポリペプチド。
【請求項17】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを2個含む、融合ポリペプチド二量体。
【請求項18】
それぞれの融合ポリペプチドのGDF15が互いに結合して二量体を形成する、請求項17に記載の融合ポリペプチド二量体。
【請求項19】
前記二量体は、ホモ二量体(homodimer)である、請求項17に記載の融合ポリペプチド二量体。
【請求項20】
請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドまたは前記融合ポリペプチド2個がGDF15で互いに結合した融合ポリペプチド二量体を含む、GDF15の欠乏または機能異常に関連する疾病の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
GDF15(Growth differentiation factor 15)およびO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含む融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む薬学的組成物、およびO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を融合させる段階を含むGDF15の生体持続期間を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質またはペプチド薬物のほとんどは体内で活性が維持される期間が短く、静脈投与以外の方法での投与時には吸収率が低く、長期間薬物を投与する治療が必要な場合に、これらの薬物を繰り返し短い投与間隔で注射し続けなければならないという不都合があった。このような不都合を解消するために、1回投与で薬物を持続的に放出させる技術の開発が要求される。このような要求に応えるための一環として、持続的放出のための徐放性剤形が開発されている。
【0003】
例えば、タンパク質またはペプチド薬物を生分解性高分子マトリックスで囲む形態の微細粒子を製造して、その投与時に、マトリックス物質が体内で徐々に分解して除去されながら薬物が徐々に放出されるようにする徐放性剤形に関する研究が活発に行われている。
【0004】
例えば、米国特許第5,416,017号には、ヒアルロン酸の濃度が0.01~3%のゲルを用いた赤血球形成刺激因子(erythropoietin)の徐放性注射剤が、特開平1-287041号には、インスリンをヒアルロン酸の濃度が1%のゲルに含有させた徐放性注射剤、特開平2-213号には、カルシトニン、エルカトニン、またはヒトGDF15を濃度5%のヒアルロン酸に含有させた徐放性剤形が記載されている。このような剤形において、ヒアルロン酸ゲル内に溶解しているタンパク質薬物は粘度の大きいゲルマトリックスを遅い速度で通過するので、持続的な放出効果を示し得るが、高い粘度によって注射で投与することが容易でなく、注射後に体液によって簡単にゲルが希釈または分解して薬物の放出が1日以上持続しにくいという欠点がある。
【0005】
一方、疎水性を有するヒアルロン酸誘導体(例えば、ヒアルロン酸-ベンジルエステル)を用いて、エマルジョン溶媒抽出法で固体状の微細粒子を製造した例がある(N.S.Nightlinger,et al.,Proceed.Intern.Symp.Control.Rel.Bioact.Mater.,22nd,Paper No.3205(1995);L.Ilum,et al.,J.Controlled Rel.,29,133(1994))。疎水性ヒアルロン酸誘導体を用いた薬物放出剤形粒子の製造時に有機溶媒を使用しなければならないため、タンパク質薬物が有機溶媒と接触して変性する恐れがあり、ヒアルロン酸誘導体の疎水性によりタンパク質が変性する可能性が高い。
【0006】
したがって、タンパク質またはペプチド薬物の体内持続性を改善するために、既存の研究とは異なる側面へのアプローチが要求される。
【0007】
一方、GDF15(Growth differentiation factor 15)は、TGF-βファミリーの一員であって、25kDaのホモ二量体として血漿中を循環する分泌タンパク質である。GDF15の血漿レベルはBMI(体格指数)と関連があり、GDF15がエネルギー恒常性の長期制御因子(long-termregulator)としての役割を果たす。GDF15はまた、心血管疾患、心筋肥大、虚血性損傷などの病的状態で保護作用をする。また、GDF15は、1型糖尿病および2型糖尿病モデルにおいて尿細管および新てんかん性損傷からの保護的役割を果たす。また、GDF15は、年齢-関連感覚および運動神経欠損に対して保護効果を有し、末梢神経損傷の回復に寄与することができる。また、GDF15は、体重減少および体脂肪量減少およびグルコース耐性効果を有し、全身のエネルギー消費および酸化的代謝を増加させる効果を有する。GDF15は、体重-依存的および非依存的な機序により血糖調節効果を示す。
【0008】
このような多様な薬理的効果を示すGDF15タンパク質の体内持続性を改善するための技術の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書において、O-グリコシル化可能なポリペプチド(例えば、免疫グロブリンのヒンジ領域(hinge region)など)をGDF15(Growth differentiation factor 15)に連結させて融合ポリペプチドを形成することによって、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域と融合しない場合と比較して、GDF15の体内半減期を増加させて体内持続期間を増進させ、これによって投与間隔を増加させる技術が提供される。
【0010】
一例は、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0011】
前記融合ポリペプチドにおいて、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、前記GDF15のN-末端に含まれる。
【0012】
前記融合ポリペプチドに含まれているO-グリコシル化可能なポリペプチド領域の総数は、1個以上、例えば、1個~10個、1個~8個、1個~6個、1個~4個、2個~10個、2個~8個、2個~6個、2個~4個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個)であってもよい。
【0013】
一例において、前記融合ポリペプチドは、下記の一般式で表される:
N’-(Z)n-Y-C’ [一般式]
上記式中、
N’は、融合ポリペプチドのN-末端であり、C’は、融合ポリペプチドのC-末端であり、
Yは、GDF15であり、
Zは、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域であり、
nは、融合ポリペプチドのN-末端に位置する(GDF15のN-末端に結合した)O-グリコシル化可能なポリペプチド領域の個数であって、1~10(つまり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、1~7、1~5、または1~3の整数である。
【0014】
前記融合ポリペプチドに含まれているn個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれ独立して、O-グリコシル化可能なアミノ酸残基を含むポリペプチド部位の中から選択される。例えば、前記O-グリコシル化可能なアミノ酸残基を含むポリペプチド部位は、免疫グロブリンのヒンジ領域であってもよい。一例において、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれ独立して、免疫グロブリンD(Immunoglobulin D;IgD)のヒンジ領域および免疫グロブリンA(Immunoglobulin A;IgA、例えばIgA1)のヒンジ領域からなる群より選択される(つまり、n個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、互いに同一でも異なっていてもよい)。
【0015】
前記融合ポリペプチドにおいて、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域と融合したGDF15は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が融合しないGDF15と比較して、体内(または血中)安定性(持続期間)が増加したことを特徴とする(例えば、体内または血中半減期増加)。
【0016】
他の例は、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。
【0017】
他の例は、前記核酸分子を含む組換えベクターを提供する。
【0018】
他の例は、前記組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0019】
他の例は、前記組換えベクターを細胞で発現させる段階を含む、体内(または血中)半減期が増加したGDF15の製造方法、または前記体内(または血中)半減期が増加したGDF15を含む融合ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0020】
他の例は、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを融合(または連結または結合)させる段階を含むGDF15の生体持続期間を増加させる方法、またはGDF15(タンパク質またはペプチド)薬物の体内(または血中)安定性増進および/または体内(または血中)半減期増加方法を提供する。一実施形態において、前記融合させる段階は、GDF15のN末端に1つ以上のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を、リンカーを介するか、介することなく融合(または連結または結合)させる段階を含むことができる。前記融合(または連結または結合)させる段階は、生体外(in vitro)で進行するものであってもよい。
【0021】
他の例は、前記融合ポリペプチド2個を含む、融合ポリペプチド二量体を提供する。前記融合ポリペプチド二量体は、それぞれの融合ポリペプチドに含まれているGDF15間結合(例えば、ジスルフィド結合)によって連結されて形成されたものであってもよい。前記融合ポリペプチド二量体は、ホモ二量体(homodimer)であってもよい。
【0022】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチド二量体、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1種以上を含む薬学的組成物を提供する。
【0023】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチド二量体、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1種以上を用いて薬学的組成物を製造する方法を提供する。
【0024】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチド二量体、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1種以上を含む薬学的組成物の製造に用いるための用途を提供する。
【0025】
他の例は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域のGDF15(タンパク質またはペプチド)薬物の体内(または血中)安定性増進および/または体内(または血中)半減期増加用途を提供する。具体的には、一例は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含むGDF15(タンパク質またはペプチド)薬物の体内(または血中)安定性増進および/または体内(または血中)半減期増加用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本明細書においては、GDF15に免疫グロブリンのヒンジ領域のようなO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を融合させた融合ポリペプチド形態で提供することによって、GDF15の体内適用時に体内(または血中)安定性および/または体内(または血中)持続期間を増進させ、投与間隔を増加させることができる技術を提供する。
【0027】
一例は、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを含む融合ポリペプチドを提供する。
【0028】
前記融合ポリペプチドにおいて、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、前記GDF15のN-末端に含まれる。
【0029】
前記融合ポリペプチドに含まれているO-グリコシル化可能なポリペプチド領域の総数は、1個以上、例えば、1個~10個、1個~8個、1個~6個、1個~4個、2個~10個、2個~8個、2個~6個、2個~4個(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個)であってもよい。
【0030】
一例において、前記融合ポリペプチドは、下記の一般式で表される:
N’-(Z)n-Y-C’ [一般式]
上記式中、
N’は、融合ポリペプチドのN-末端であり、C’は、融合ポリペプチドのC-末端であり、
Yは、GDF15であり、
Zは、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域であり、
nは、融合ポリペプチドのN-末端に位置する(GDF15のN-末端に結合した)O-グリコシル化可能なポリペプチド領域の個数であって、0~10(つまり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)、0~7、0~5、1~10、1~7、1~5、または1~3の整数である。
【0031】
一例において、前記融合ポリペプチドにおいて、GDF15の活性部位がC-末端に位置する場合、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、N-末端に融合してもよい。
【0032】
前記融合ポリペプチドに含まれているn個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれ独立して、O-グリコシル化可能なアミノ酸残基を含むポリペプチドの中から選択される。例えば、前記O-グリコシル化可能なアミノ酸残基を含むポリペプチド部位は、免疫グロブリンのヒンジ領域であってもよい。一例において、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、それぞれ独立して、免疫グロブリンD(Immunoglobulin D;IgD)のヒンジ領域および免疫グロブリンA(Immunoglobulin A;IgA、例えばIgA1)のヒンジ領域からなる群より選択される。前記n個の免疫グロブリンのヒンジ領域は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0033】
一実施形態において、前記融合ポリペプチドのN-末端に位置する(含まれている)O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は1個または2個以上であってもよく、2個以上の場合、それぞれのO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は互いに同一でも異なっていてもよい。一実施形態において、N-末端に位置する1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、すべてIgDのヒンジ領域またはIgA(例えば、IgA1)のヒンジ領域であるか、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のIgDのヒンジ領域および1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のIgA(例えば、IgA1)のヒンジ領域を多様な順序で含むものであってもよい。
【0034】
他の実施形態において、前記融合ポリペプチドに含まれているn個のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域がすべて融合ポリペプチドのN-末端にのみ位置する場合(つまり、融合ポリペプチドのN-末端にのみ1つ以上のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域が存在する場合)、前記1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、すべてIgDのヒンジ領域またはIgAのヒンジ領域であるか、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のIgDのヒンジ領域と1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のIgAのヒンジ領域とを多様な順序で含むものであってもよい。
【0035】
前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域(O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が2個以上の場合にそれぞれの領域)は、O-グリコシル化残基(O-グリコシル化可能なアミノ酸残基)を1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、または7個以上(上限値は、100個、50個、25個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、または8個である)(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個)含むことができる。例えば、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域(O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が2個以上の場合にそれぞれの領域)は、O-グリコシル化残基(O-グリコシル化可能なアミノ酸残基)を1~10個または3~10個含むものであってもよい。
【0036】
一例において、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)のヒンジ領域の中から1つ以上選択されたものであってもよいし、例えば、IgDヒンジ領域、IgAヒンジ領域、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0037】
免疫グロブリン(例えば、ヒト免疫グロブリン)の領域の中で、IgDヒンジ領域(例えば、ヒトIgDヒンジ領域)および/またはIgAヒンジ領域(例えば、ヒトIgAヒンジ領域)のようなヒンジ領域がO-グリコシル化可能な残基を含むので、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、一つ以上の(ヒト)IgDヒンジ領域および/または一つ以上の(ヒト)IgAヒンジ領域を必ず含むか、前記ヒンジ領域を必須として構成されたものであってもよい。一実施形態において、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、O-グリコシル化可能な残基を含まない免疫グロブリン領域(例えば、IgDおよび/またはIgA)のCH1、CH2、およびCH3からなる群より選択される一つ以上(例えば、1個、2個、または3個全て)を含まないものであってもよい。
【0038】
また、本明細書で提供される融合ポリペプチドに適切なO-グリコシル化可能な残基の個数を考慮すると、前記O-グリコシル化可能なポリペプチドは、IgDヒンジ領域(例えば、ヒトIgDヒンジ領域)および/またはIgAヒンジ領域(例えば、ヒトIgAヒンジ領域)を1個以上、より具体的には、2個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個)含むものであってもよい。
【0039】
より具体的には、前記IgDは、ヒトIgD(例えば、UniProKB P01880(不変領域;配列番号7)など)であってもよいし、前記IgDのヒンジ領域は、
「N’-ESPKAQASSVPAQPQAEGSLAKATTAPATTRNT-C’(配列番号1);太文字で表示したアミノ酸残基は、O-グリコシル化可能残基である(計7個)」のアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列から必須としてなるポリペプチド(「IgDヒンジ」)、
前記配列番号1のアミノ酸配列中、O-グリコシル化残基を1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、または7個含む連続する5個以上、7個以上、10個以上、15個以上、20個以上、22個以上、または24個以上(上限値は、34個または33個である)のアミノ酸を含むか、または前記アミノ酸から必須としてなるポリペプチド(「IgDヒンジの一部」;例えば、配列番号1中の「SSVPT」(配列番号9)を含む連続する5個以上のアミノ酸を含むポリペプチドまたは「TTAPATT」(配列番号10)を含む連続する7個以上のアミノ酸を含むポリペプチド)、および
IgD(例えば、配列番号7)中、配列番号1のアミノ酸配列(IgDヒンジ)を含む連続する34個以上または35個以上のアミノ酸または前記IgDヒンジの一部を含む連続する7個以上、10個以上、15個以上、20個以上、22個以上、または24個以上のアミノ酸を含むか、または前記アミノ酸から必須としてなるポリペプチド(「IgDヒンジの延長部」;例えば、IgD(配列番号7)中、「ESPKAQASS VPTAQPQAEG SLAKATTAPA TTRNTGRGGE EKKKEKEKEE QEERETKTP」(配列番号11)内の配列番号1または前記IgDヒンジの一部を含む連続する34個以上または35個以上のアミノ酸を含むポリペプチド)からなる群より選択されるた1種以上であってもよい。
【0040】
前記IgAは、ヒトIgA(例えば、IgA1(UniProKB P01876、不変領域;配列番号8)など)であってもよいし、前記IgAのヒンジ領域は、
「N’-VPSTPPTPP-C’(配列番号2);太文字で表示したアミノ酸残基は、O-グリコシル化可能残基である(計8個)」のアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列から必須としてなるポリペプチド(「IgAヒンジ」)、
前記配列番号2のアミノ酸配列中、O-グリコシル化残基を1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、または8個含む連続する5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、または18個のアミノ酸を含むか、または前記アミノ酸配列から必須としてなるポリペプチド(「IgAヒンジの一部」;例えば、配列番号2中の「STPPTPSP」(配列番号12)を含む8個以上または9個以上のアミノ酸を含むポリペプチド)、および
IgA(例えば、IgA1(配列番号8))中、配列番号2のアミノ酸配列(IgA(例えば、IgA1)ヒンジ)を含む連続する19個以上または20個以上の連続するアミノ酸、またはIgA(例えば、IgA1)ヒンジの一部を含む連続する7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、または18個以上のアミノ酸を含むか、または前記アミノ酸配列から必須としてなるポリペプチド(IgA「ヒンジの延長部」)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0041】
他の例において、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、下記の表1に例示したタンパク質(例えば、配列番号23~113からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質)中のO-グリコシル化可能なアミノ酸残基(O-glycosylation site)を1個以上、2個以上、5個以上、7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、20個以上、または22個以上(例えば、1~10個、3~10個;または1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個)を含む連続する5個以上、7個以上、10個以上、12個以上、15個以上、17個以上、20個以上、22個以上、25個以上、27個以上、30個以上、32個以上、または35個以上(上限値は、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、または各タンパク質の総アミノ酸の個数)のアミノ酸を含むか、または前記アミノ酸から必須としてなるポリペプチド領域であってもよい。本明細書において、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、GDF15の機能に影響を与えないものが良い。下記の表1に例示したタンパク質のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、全長(full-length)タンパク質の本来の機能に関与しない領域の中から選択されたものであってもよいし、これによって、前記O-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、GDF15の機能には何ら影響なく単に半減期を増加させる役割を果たすことができる:
【0042】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0043】
前記融合ポリペプチドは、実際に含むO-グリカンの総数が13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、または21個以上であるか(最大値は、前記記載のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域の個数およびそれぞれのO-グリコシル化可能なポリペプチド領域に含まれているO-グリコシル化残基の個数によって決定される)、理論上含まれるO-グリカンの総数が20個以上、21個以上、23個、または24個以上(最大値は、前記記載のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域の個数およびそれぞれのO-グリコシル化可能なポリペプチド領域に含まれているO-グリコシル化残基の個数によって決定される)であってもよい。また、融合ポリペプチドは、実際に含まれているO-グリカンの総数は、体内(例えば、血液内)投与時の安定性に関連があり得、具体的には、融合ポリペプチドは、実際に含まれているO-グリカンの総数が多くなるほど、融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドに含まれているGDF15の体内安定性が増加(つまり、体内(血液内)半減期増加および/または体内(血液内)濃度増加および/または体内(血液内)分解率減少など)できる。
【0044】
前記融合ポリペプチドは、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域との間、および/またはO-グリコシル化可能なポリペプチド領域が2個以上含まれる場合O-グリコシル化可能なポリペプチド領域の間にペプチドリンカーをさらに含むことができる。一例において、前記ペプチドリンカーは、1つ以上のGly(G)と1つ以上のSer(S)を繰り返し含むGSリンカーであってもよいし、例えば、(GGGGS)n(nは、GGGGS(配列番号13)の繰り返し回数であって、1~10または1~5の整数(例えば、1、2、3、4、または5)である)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
他の例は、前記融合ポリペプチド2個を含む、融合ポリペプチド二量体を提供する。前記融合ポリペプチド二量体は、それぞれの融合ポリペプチドに含まれているGDF15間結合(例えば、ジスルフィド結合)によって連結されて形成されたものであってもよい。前記融合ポリペプチド二量体は、ホモ二量体(homodimer)であってもよい。
【0046】
前記融合ポリペプチドおよび/または融合ポリペプチド二量体において、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域と融合したGDF15は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が融合しないGDF15と比較して、体内(または血中)安定性が増加したことを特徴とする(例えば、体内または血中半減期増加)。
【0047】
他の例は、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。
【0048】
他の例は、前記核酸分子を含む組換えベクターを提供する。
【0049】
他の例は、前記組換えベクターを含む組換え細胞を提供する。
【0050】
他の例は、前記組換えベクターを細胞で発現させる段階を含む、体内(または血中)半減期が増加したGDF15の製造方法、または前記体内(または血中)半減期が増加したGDF15を含む融合ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0051】
他の例は、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを融合(または連結または結合)させる段階を含むGDF15の生体持続期間を増加させる方法を提供する。一実施形態において、前記融合させる段階は、GDF15のN末端、C末端、または両末端に1つ以上のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を、リンカーを介するか、介することなく融合(または連結または結合)させる段階を含むことができる。前記融合(または連結または結合)させる段階は、生体外(in vitro)で進行するものであってもよい。
【0052】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチド二量体、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1種以上を含む薬学的組成物を提供する。
【0053】
他の例は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域のポリペプチド(タンパク質またはペプチド)薬物の体内(または血中)安定性増進および/または体内(または血中)半減期増加用途を提供する。具体的には、一例は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含むポリペプチド(タンパク質またはペプチド)薬物の体内(または血中)安定性増進および/または体内(または血中)半減期増加用組成物を提供する。本明細書で使用されたものとして、安定性増進および/または半減期増加は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域を含まないポリペプチド(タンパク質またはペプチド)と比較して、安定性が増進するかおよび/または半減期が増加したことを意味する。
【0054】
以下、本発明をより詳しく説明する:
【0055】
本明細書において、GDF15(Growth differentiation factor 15)(前記一般式中、Yに当該)は可溶性ポリペプチドであって、全体308個のアミノ酸(UniProt Q99988)中のsignal peptideとpropeptideを除いた、197番目(A)から308番目(I)までのアミノ酸(配列番号3;図1参照;mature form)で構成されている:
【0056】
本明細書において、GDF15は、特段の言及がない限り、
(1)全長タンパク質(UniProt Q99988)の197番目(A)から308番目(I)までのアミノ酸配列(配列番号3、図1参照;ARNG DHCPLGPGRC CRLHTVRASL EDLGWADWVL SPREVQVTMC IGACPSQFRA ANMHAQIKTS LHRLKPDTVP APCCVPASYN PMVLIQKTDT GVSLQTYDDL LAKDCHCI);
(2)GDF15の機能的変異体;および/または
(3)GDF15の固有活性および構造を維持する範囲で前記(1)および/または(2)のアミノ酸配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を必須として含むポリペプチドを意味する。
【0057】
本明細書において、前記GDF15の機能的変異体は、GDF15が固有活性および構造を維持しながら、二量体構造形成により有利に変異した変異体であってもよい。一例において、前記GDF15の機能的変異体は、配列番号3のGDF15のアミノ酸配列のN-末端の14個のアミノ酸残基(つまり、配列番号1で1番目から14番目まで総14個のアミノ酸残基)中の1つ以上(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個)(例えば、N末端から順に一つ以上)、例えば、14個のアミノ酸残基を全て欠失したN-末端欠失変異体であってもよい。一実施形態において、前記GDF15の機能的変異体は、配列番号4(CRLHTVRASL EDLGWADWVL SPREVQVTMC IGACPSQFRA ANMHAQIKTS LHRLKPDTVP APCCVPASYN PMVLIQKTDT GVSLQTYDDL LAKDCHCI)のアミノ酸配列またはGDF15の固有活性および構造を維持する範囲で前記アミノ酸配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を必須として含むポリペプチドであってもよい。
【0058】
本明細書で提供されるGDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを含む融合ポリペプチドにおいて、GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域、および/または2以上のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は、共有的または非共有的に直接(例えば、リンカーなしに)連結されるか、適切なリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介して連結されたものであってもよい。前記ペプチドリンカーは、1~20個、1~15個、1~10個、2~20個、2~15個、または2~10個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであってもよいし、その含まれたアミノ酸の種類は制限がない。前記ペプチドリンカーは、例えば、Gly、Asnおよび/またはSer残基を含むことができ、Thrおよび/またはAlaなどの中性アミノ酸を含むこともできるが、これらに限定されず、ペプチドリンカーに適したアミノ酸配列は当業界で公知である。一例において、前記ペプチドリンカーは、1つ以上のGly(G)と1つ以上のSer(S)を繰り返し含むGSリンカーであってもよいし、例えば、(GGGGS)n(nは、GGGGS(配列番号13)の繰り返し回数であって、1~10の整数または1~5の整数(1、2、3、4、または5)である)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、前記融合ポリペプチドは、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域を計1個以上または計2個以上(例えば、2~10個、2~8個、2~6個、2~5個、2~4個、2個または3個)含むものであってもよい。融合ポリペプチドがO-グリコシル化可能なポリペプチド領域を2個以上含む場合、前記融合ポリペプチドは、2個以上のO-グリコシル化可能なポリペプチド領域がGDF15のN末端に結合し、それぞれのO-グリコシル化可能なポリペプチド領域は同一でも異なっていてもよい。この時、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域の間、および/またはO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とヒトGDF15との間には、先に説明したペプチドリンカーがさらに含まれてもよい。
本明細書で提供される融合ポリペプチドは、組換え的または合成的に生産されたものでもよいし、天然由来(naturally occurring)のものでなくてもよい。
【0060】
本明細書で提供される融合ポリペプチドに含まれているGDF15の哺乳類での体内(血中)半減期は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が融合しないGDF15と比較して、約1.1倍以上、約1.15倍以上、約1.2倍以上、約1.5倍以上、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、または約10倍以上増加したものであってもよい。または、本明細書で提供される融合ポリペプチドに含まれているGDF15の哺乳類体内投与時の最高血中濃度は、融合しないGDF15と比較して、約1.2倍以上、約1.5倍以上、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、または約4倍以上高いものであってもよい。または、本明細書で提供される融合ポリペプチドに含まれているGDF15の哺乳類体内投与時の最高血中濃度到達時間は、融合しないGDF15と比較して、約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、約15倍以上、約18倍以上、約20倍以上、または約22倍以上延長したものであってもよい。または、本明細書で提供される融合ポリペプチドに含まれているGDF15の哺乳類体内投与時、測定可能な最終採血時点までの血中濃度-時間曲線下面積(AUClast)および/または測定可能な最終採血時点から無限時間まで外挿して計算した血中濃度-時間曲線下面積(AUCinf)は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域と融合しないGDF15と比較して、約2倍以上、約2.5倍以上、約3倍以上、約3.5倍以上、約4倍以上、約4.5倍以上、約5倍以上、約6倍以上、約7倍以上、約8倍以上、約9倍以上、約10倍以上、約11倍以上、約12倍以上、約13倍以上、約14倍以上、または約15倍以上増加したものであってもよい。
【0061】
このように、増加したGDF15の半減期によって、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が結合した融合ポリペプチド形態のGDF15は、O-グリコシル化可能なポリペプチド領域が連結されない形態のGDF15と比較して、投与間隔を長く持つことができるという利点がある。
【0062】
GDF15とO-グリコシル化可能なポリペプチド領域とを含む融合ポリペプチドは、通常の化学的合成方法または組換え的方法によって製造することができる。
【0063】
本明細書において、用語「ベクター(vector)」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための発現手段を意味するもので、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、およびバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターおよびアデノ-関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどからなる群より選択される。一例において、前記組換えベクターに使用可能なベクターは、プラスミド(例えば、pcDNAシリーズ、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ、pUC19など)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1、M13など)またはウイルス(例えば、SV40など)を基本として作製されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記組換えベクターにおいて、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子は、プロモーターに作動的に連結可能である。用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター配列)と他の核酸配列との間の機能的な結合を意味する。前記調節配列は、「作動可能に連結(operatively linked)」されることによって、他の核酸配列の転写および/または翻訳を調節することができる。
【0065】
前記組換えベクターは、典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のための発現ベクターとして構築できる。前記発現ベクターは、当業界で植物、動物または微生物で外来のタンパク質を発現するために使用される通常のものを使用することができる。前記組換えベクターは、当業界で公知の多様な方法により構築できる。
【0066】
前記組換えベクターは、真核細胞を宿主として発現することができる。真核細胞を宿主として発現させようとする場合には、組換えベクターは、発現させようとする核酸分子および先に説明したプロモーター、リボソーム結合サイト、分泌シグナル配列(韓国公開特許第2015-0125402号参照)および/または転写/翻訳終結配列のほか、真核細胞で作動する複製起点は、f1複製起点、SV40複製起点、pMB1複製起点、アデノ複製起点、AAV複製起点、および/またはBBV複製起点などを含むことができるが、これらに限定されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター)、または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーターおよびHSVのtkプロモーター)が用いられ、分泌シグナル配列として通常使用可能な全ての分泌シグナル配列を使用することができ、例えば、韓国公開特許第2015-0125402号に記載の分泌シグナル配列を使用することができるが、これに限定されるものではなく、転写終結配列としてポリアデニル化配列を含むことができる。
【0067】
前記組換え細胞は、前記組換えベクターを適切な宿主細胞に導入(形質転換または形質感染)させることによって得られたものであってもよい。前記宿主細胞は、前記組換えベクターを安定的かつ連続的にクローニングまたは発現させる全ての真核細胞の中から選択される。宿主として使用可能な真核細胞としては、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、植物細胞、および動物細胞などがあり、例えば、マウス(例えば、COP、L、C127、Sp2/0、NS-0、NS-1、At20、またはNIH3T3)、ラット(例えば、PC12、PC12h、GH3、またはMtT)、ハムスター(例えば、BHK、CHO、GS遺伝子欠陥CHO、またはDHFR遺伝子欠陥CHO)、サル(例えば、COS(COS1、COS3、COS7など)、CV1またはVero)、ヒト(例えば、HeLa、HEK-293、網膜-由来PER-C6、二倍体線維芽細胞に由来する細胞、骨髄腫細胞またはHepG2)、その他の動物細胞(例えば、MDCKなど)、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞、Sf21細胞、Tn-368細胞、BTI-TN-5B1-4細胞など)、ハイブリドーマなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
本明細書で提供される融合ポリペプチドをコードする核酸分子を先に説明した適切な宿主細胞で発現させることによって、融合しない形態と比較して、体内安定性が増進したGDF15またはこれを含む融合ポリペプチドを製造することができる。前記融合ポリペプチドの製造方法は、前記核酸分子を含む組換え細胞を培養する段階を含むことができる。前記培養する段階は、通常の培養条件で行われる。また、前記製造方法は、前記培養段階後に、培養物から融合ポリペプチドを分離および/または精製する段階をさらに含むことができる。
【0069】
前記核酸分子またはこれを含む組換えベクターの宿主細胞内への送達(導入)は、当業界で広く知られた送達方法を使用することができる。前記送達方法は、例えば、宿主細胞が真核細胞の場合には、微細注入法、リン酸カルシウム沈殿法、電気穿孔法、リポゾーム-媒介形質感染法および遺伝子ボンバードメントなどを使用することができるが、これらに限定されない。
【0070】
前記形質転換(組換えベクター導入)された宿主細胞を選別する方法は、選択標識によって発現する表現型を用いて、当業界で広く知られた方法により容易に実施可能である。例えば、前記選択標識が特定の抗生剤耐性遺伝子の場合には、前記抗生剤が含有された培地で培養することによって、組換えベクターが導入された組換え細胞を容易に選別することができる。
【0071】
前記融合ポリペプチドは、GDF15の欠乏および/または機能異常に関連するか、GDF15の活性によって治療、軽減、または改善可能な全ての疾病の予防および/または治療に使用される。
【0072】
したがって、一例において、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1つ以上を含む薬学組成物が提供される。前記薬学組成物は、前記融合タンパク質に含まれているGDF15の欠乏および/または機能異常に関連する疾病または前記GDF15が治療および/または予防効果を有する疾病の予防および/または治療用薬学組成物であってもよい。
【0073】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1つ以上を、前記融合タンパク質に含まれているGDF15の欠乏および/または機能異常に関連する疾病または前記GDF15が治療および/または予防効果を有する疾病の予防および/または治療を必要とする患者に投与する段階を含む、前記融合タンパク質に含まれているGDF15の欠乏および/または機能異常に関連する疾病または前記GDF15が治療および/または予防効果を有する疾病の予防および/または治療方法を提供する。前記方法は、投与する段階の前に、前記融合タンパク質に含まれているGDF15の欠乏および/または機能異常に関連する疾病または前記GDF15が治療および/または予防効果を有する疾病の予防および/または治療を必要とする患者を確認する段階をさらに含むことができる。
【0074】
前記GDF15の欠乏および/または機能異常に関連する疾病または前記GDF15が治療および/または予防効果を有する疾病(または症状)の例として、肥満、糖尿病(1型糖尿病、2型糖尿病)、心血管疾患、心筋肥大、肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis;NASH)など)、虚血性損傷(虚血性脳損傷、虚血性網膜損傷)、末梢神経損傷、年齢-関連感覚および/または運動神経欠損、尿細管および/または新てんかん性損傷などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
他の例において、本明細書で提供される薬学組成物またはこれを投与する段階を含む方法は、体重減少、食事調節(食事量の減少)、体脂肪減少、グルコース耐性付与および/または増進などからなる群より選択される1つ以上の効果を持つものであってもよく、この場合、前記薬学組成物または方法は、体重減少、体脂肪減少、および/またはグルコース耐性付与および/または増進のための用途に適用される。
【0076】
したがって、一例において、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1つ以上を含む組成物であって、体重減少、食事調節(食事量の減少)、体脂肪減少、グルコース耐性付与および/または増進のための薬学組成物または食品組成物(健康機能食品)であってもよい。
【0077】
他の例は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドをコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターを含む組換え細胞からなる群より選択される1つ以上を、体重減少、食事調節(食事量の減少)、体脂肪減少、グルコース耐性付与および/または増進を必要とする患者に投与する段階を含む、体重減少、食事調節(食事量の減少)、体脂肪減少、グルコース耐性付与および/または増進方法を提供する。前記方法は、投与する段階の前に体重減少、食事調節(食事量の減少)、体脂肪減少、グルコース耐性付与および/または増進を必要とする患者を確認する段階をさらに含むことができる。
【0078】
前記薬学組成物は、前記融合ポリペプチド、前記融合ポリペプチドを含む融合ポリペプチド二量体、核酸分子、組換えベクター、および組換え細胞からなる群より選択される1種以上の有効成分を薬学的有効量で含むことができる。前記薬学的有効量は、所望の効果が得られる有効成分の含有量または投与量を意味する。前記薬学組成物内の有効成分の含有量または投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与間隔、投与経路、排泄速度および反応感応性のような要因によって多様に処方可能である。例えば、前記有効成分の1回投与量は、0.001~1000mg/kg、0.01~100mg/kg、0.01~50mg/kg、0.01~20mg/kg、または0.01~1mg/kgの範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0079】
また、前記薬学組成物は、前記有効成分のほか、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。前記担体は、タンパク質、核酸、または細胞を含む薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択される1種以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記薬学組成物はさらに、薬学組成物の製造に通常使用される希釈剤、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などからなる群より選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0080】
前記薬学組成物の投与対象は、ヒト、サルなどを含む霊長類、マウス、ラットなどを含む齧歯類などを含む哺乳類、またはこれらに由来する細胞、組織、細胞培養物または組織培養物であってもよい。
【0081】
前記薬学組成物は、経口投与または非経口的投与によって投与されるか、細胞、組織、または体液に接触させることによって投与されるものであってもよい。具体的には、非経口投与の場合には、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、腹腔注射、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与などで投与可能である。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。
【0082】
また、前記薬学組成物は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液形態であるか、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤などの形態に剤形化されてもよいし、剤形化のために分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0083】
本明細書で提供されるO-グリコシル化可能なポリペプチド領域と融合したGDF15は、体内投与時、持続期間が長く投与間隔を増加させることができ、これによって投与用量を低減することが可能であるため、投与の便宜性および/または経済的側面から有利な効果を有し、GDF15治療が必要な分野に有用に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】GDF15のアミノ酸配列を模式的に示す図である。
図2a】一実施形態によるHis Taqを含む融合ポリペプチドを模式的に示す図である。
図2b】一実施形態による融合ポリペプチドの構造を模式的に示す図である。
図3】多様な形態の融合ポリペプチドの構造を模式的に示す図である。
図4】一実施形態で合成された融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をSDS-PAGEで分析した結果を示す図でる。
図5】一実施形態で合成された融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をQ-TOF Mass Spectrometryで分析した結果を示す図である。
図6】マウスに融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をそれぞれ1回投与時の体重変化を示すグラフである。
図7図6の結果の中で4日目の結果を抽出して示すグラフである。
図8】融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15投与マウスの飼料摂取量の変化を示すグラフである。
図9】マウスに融合ポリペプチドHT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をそれぞれ繰り返し投与時の体重変化を示すグラフである。
図10a図9の結果の中で7日目と14日目の結果を抽出して示すグラフである。
図10b図9の結果の中で21日目と28日目の結果を抽出して示すグラフである。
図11】マウスに融合ポリペプチドHT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をそれぞれ繰り返し投与時の7日目、14日目、21日目、および28日目までの累積飼料摂取量を示すグラフである。
図12】融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をSD Ratに投与時、時間に応じた血中融合ポリペプチド濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、本発明を以下の実施例によってより具体的に説明する。しかし、これらは本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0086】
実施例1:融合ポリペプチドの製造
1.1.GDF15を含む融合ポリペプチドの製造
IgDヒンジ(ESPKAQASSVPAQPQAEGSLAKATTAPATTRNT;配列番号1;下線表示された部分がO-Glycosylation可能部位である)または多数個(1個、2個または3個)のIgDヒンジとの組み合わせがGDF15(配列番号3、図1)と融合した融合ポリペプチドIgD-GDF15(ID1-GDF15)、IgD-IgD-GDF15(ID2-GDF15)、IgD-IgD-IgD-GDF15(ID3-GDF15)(図2aおよび図2b参照)を製造した。
【0087】
精製の便宜性のためにHis-tag(配列番号15)とTEV cleavage Site(配列番号16)を含む融合ポリペプチドも製造した。前記融合ポリペプチドに含まれている各部分のアミノ酸配列を下記の表2に整理した。
【0088】
【表2】
【0089】
1.1.1.組換え発現ベクターの製造
1.1.1.1.Mature GDF15
Mature GDF15をコードする遺伝子を得るために、UniprotKB Q99968のアミノ酸配列情報を参照して、Mature GDF15をコードする遺伝子(配列番号5)を合成した(バイオニア(株))。
配列番号5(339bp)
【表A】
【0090】
1.1.1.2.IgD Hinge(ID)
Human IgD Hingeをコードする遺伝子を得るために、UniprotKB P01880のアミノ酸配列情報を参照して、3個のHuman IgD Hinge(以下、「ID3」で表示)をコードする遺伝子(配列番号6)をバイオニアで合成した。
配列番号6(306bp)
【表B】
(1-102のポリヌクレオチド(下線)、103-204のポリヌクレオチド(太文字)、および205-306のポリヌクレオチド(太文字+下線)はそれぞれIgD Hingeをコードする。)
【0091】
1.1.1.3.発現ベクターの製造
pcDNA3.1(+)(Invitrogen、Cat.No.V790-20)の変形体であるpDHDD-D1G1(KR10-1868139B1のPromoterを含んでいる)をBamHIとNotIで切断し、そこに前記遺伝子(mature GDF15をコードする遺伝子とID3をコードする遺伝子)を組み合わせて下記の構造(図3参照)を有する融合タンパク質をコードするように設計された遺伝子を挿入してそれぞれの組換えベクターを用意した。
【0092】
pGDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位(GGATCC)-シグナルペプチド(配列番号14)-Mature GDF15(配列番号3)-NotI制限部位(GCGGCCGC)]-(C-末端)」
pHT-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-His-Taq(配列番号15)-TEV Cleavage Site(配列番号16)-Mature GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pID1-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-Mature GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pHT-ID1-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-His-Taq(配列番号15)-TEV Cleavage Site(配列番号16)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pID2-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pHT-ID2-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-His-Taq(配列番号15)-TEV Cleavage Site(配列番号16)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pID3-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
pHT-ID3-GDF15
「(N-末端)-[BamHI制限部位-シグナルペプチド(配列番号14)-His-Taq(配列番号15)-TEV Cleavage Site(配列番号16)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-IgD Hinge(配列番号1)-GS Linker(配列番号17)-GDF15(配列番号3)-NotI制限部位]-(C-末端)」
【0093】
1.1.2.融合ポリペプチドの発現
前記用意された組換え発現ベクターpGDF15、pHT-GDF15、pID1-GDF15、pHT-ID1-GDF15、pID2-GDF15、pHT-ID2-GDF15、pID3-GDF15、およびpHT-ID3-GDF15をExpiCHO-STM細胞(Thermo Fisher Scientific)に導入し、ExpiCHO Expression Medium(Thermo Fisher Scientific;400mL)で12日間培養(Fed-Batch Culture;Day1&Day5 Feeding)して、前記融合ポリペプチドGDF15、HT-GDF15、ID1-GDF15、HT-ID1-GDF15、ID2-GDF15、HT-ID2-GDF15、ID3-GDF15、およびHT-ID3-GDF15を発現させた。
【0094】
1.1.3.融合ポリペプチドの精製
前記組換えベクターの発現により生産された融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15を精製し、Sialic Acidの含有量分析およびQ-TOF Mass Spectrometryを用いてO-Glycan site Occupancyを分析した。
【0095】
具体的には、融合ポリペプチドは、限外ろ過/透析ろ過(Ultrafiltration/Diafiltration)、固定化金属イオン親和クロマトグラフィー(IMAC、Immobilized Metal Affinity Chromatography)、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX、Anion Exchange Chromatography)を連続的に行って精製した。まず、細胞が除去された融合タンパク質の培養液を0.22μmのフィルターでろ過した。ろ過液は、TFF Systemを用いて濃縮を行った後、トロメタミン緩衝溶液でバッファー交換を行った。HiTrapTM Chelating HP(GE Healthcare Life Sciences)樹脂がパッキングされているカラムをAKTATM Pure(GE Healthcare Life Sciences)に装着し、平衡バッファー(20mM Tris pH8.0、0.5M NaCl、5mM Imidazole)を流してカラムの平衡化を行った。上記の限外ろ過/透析ろ過が完了した工程液をカラムに注入した後、再び平衡バッファーを流してカラムを洗浄した。カラムの洗浄作業が終わった後、溶出バッファー(20mM Tris pH8.0、0.5M NaCl、0.5M Imidazole)をカラムに流して目的タンパク質を溶出させた。
【0096】
得られた溶出液は、Amicon Ultra Filter Device(MWCO 10K、Merck)と遠心分離機を用いて濃縮を行った後、トロメタミン緩衝溶液でバッファー交換を行った。このように用意された工程液を平衡化された陰イオン交換カラムに注入し、平衡バッファー(20mM Tris pH8.0)を流してカラムを洗浄した。カラムの洗浄作業が終わった後、溶出バッファー(20mM Tris pH8.0、0.5M NaCl)を濃度勾配条件でカラムに流して目的タンパク質を溶出させた。溶出分画中の融合ポリペプチドの濃度が高く、純度が高い分画を集めて冷凍保管した。
【0097】
動物実験のためにAmicon Ultra Filter Device(MWCO 10K、Merck)と遠心分離機を用いて、試料をPhosphate Buffered Saline(PBS、10mM Sodium Phosphate、150mM NaCl pH7.4)で濃縮およびバッファー交換を行った。
【0098】
融合ポリペプチドの定量分析は、UV Spectrophotometer(G113A、Agilent Technologies)で280nmと340nmの吸光度を測定し、以下の計算式により行った。各物質の吸光係数は、アミノ酸配列を用いて理論的に計算された値を使用した。
【数1】
*Extinction coefficient(0.1%):タンパク質の濃度が0.1%(1g/L)であり、Primary Sequence上の全てのCysteineが酸化してDisulfide bondを形成すると仮定すると、280nmでの理論的な吸光度である。ProtParam tool(https://web.expasy.org/protparam/)により計算される。
【0099】
【表3】
【0100】
精製された融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15は、シアル酸(Sialic Acid)含有量分析およびReducingした後Q-TOF Mass Spectrometryを用いてO-Glyan site Occupancyを分析した。
【0101】
融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をSDS-PAGEで分析した結果を図4に、Q-TOF Mass Spectrometryで分析した結果を図5および表4に示す。また、シアル酸含有量を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例2.融合ポリペプチドの薬理効果(in vivo)
2.1.単回単回投与
2.1.1試験過程
前記実施例1で生産および精製された融合ポリペプチドの薬理効果をマウス(C57BL/6J、6週齢、雄、100匹;ラオンバイオ(株))で試験した。
【0104】
本実施例においては、前記C57BL/6Jマウスにhigh-fat dietを8週間給餌して肥満を誘導したDIOマウスモデル(Mouse、C57BL/6J-DIO、雄、100匹、14週齢(肥満飼料8週間給餌))を使用した。前記DIOマウスモデルは、高脂血症、インスリン抵抗性、高血糖などの2型糖尿病の臨床的特徴を示すので、糖尿病およびインスリン抵抗性改善の効能評価に幅広く使用される動物モデルであり、肥満、糖尿病および高脂血症などの代謝性疾患の研究のために比較に値する基礎資料が多く蓄積されているので本実施例の薬理効果試験に適切であり、このモデルを選択した。
【0105】
前記8週間肥満飼料を給餌したマウスモデルに対して2週間の検疫期間および馴化期間を経て、該期間中に毎日1回の一般症状を観察して健康で実験の実施への適合性の有無を確認して健康な動物を選別した。馴化期間中には入手時に動物の尾に赤色油性ペンを用いて個体表示(tail marking)をし、飼育箱には検疫馴化期間中の臨時個体識別カード(試験名、個体番号、入庫時期)を付着した。群分離時に動物の尾に黒色油性ペンを用いて個体表示をし、各ケージ上に個体識別カード(試験名、群情報、個体番号、性別、入庫時期、投与期間)を付着した。
【0106】
試験物質(融合ポリペプチド)の皮下投与で実験動物が被るストレスを最小化するために、試験物質投与3日前から1mL注射器を利用して全ての動物に滅菌蒸留生理食塩水200uL/headを皮下投与して、皮下投与に対する事前適応訓練を実施した。
【0107】
検疫期間および馴化期間中に異常が発見されない健康な動物は、馴化期間終了後全個体を対象にして体重および飼料摂取量を測定した。
【0108】
体重および飼料摂取量を測定し、体重に基づいてグループ間の2種類の測定値の平均が類似するように群分離を実施した。試験物質投与は群分離の翌日から開始した。選択されない残余動物は群分離終了後試験系から除外した。
【0109】
前記C57BL/6J-DIOに給餌される高脂肪飼料(肥満飼料;High fat diet(HFD))の情報は次の通りである:
5.24kcal/g、脂肪60重量%、タンパク質20重量%、およびcarbohydrate-derived calories20重量%;Research Diet Inc.,U.S.A.;Product No.High fat diet(Fat 60kcal%、D12492)。
【0110】
前記飼料は、自由給餌(馴化および試験期間の間給餌)方式で給餌した。
【0111】
飲水方式は、上水道水をフィルター油水殺菌装置でろ過後紫外線を照射し、ポリカーボネート材質の給水瓶250mL)を利用して自由摂取させた。
【0112】
試験物質HT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15、HT-ID3-GDF15と対照物質Semaglutide(Bachem)の投与は群分離後翌日から実施し、投与時間は毎日午前9時に行った。対照物質および試験物質はいずれも皮下投与を行った。前記対照物質および試験物質の投与経路は、予定臨床投与経路によって皮下経路を選択した。
【0113】
対照物質および試験物質はいずれも投与液量を5mL/kgとし、個体ごとの投与液量は、最近測定した体重を基準にして算出し、使い捨て注射器(1mL)を用いて試験開始日に1回皮下注射で投与した。試験物質は、試験開始日に1回だけ投与した。比較のために、対照物質Semaglutideを投与した対照群を用意し、Semaglutideを投与した比較対照群の場合1日1回ずつ毎日投与し、全ての投与は午前9時から進行した。
【0114】
試験群の構成および投与容量などを下記表5に整理した:
【0115】
【表5】
【0116】
前記試験群に対する観察、測定および検査日程は投与開始日をDay0とし、投与開始日から7日を投与1週とした。
【0117】
前記検査日程を表6に整理した:
【0118】
【表6】
【0119】
全ての動物に対して1日1回、一般臨床症状を観察し、1日2回、瀕死および死亡動物の有無を確認し、このような観察は投与1日から投与終了時まで実施した。観察時異常症状がある場合にのみ記録紙に記録した。
【0120】
試験物質の投与開始日(投与前)に各マウスの体重を測定し、その後、毎日体重を測定した(最大9日まで測定)。試験物質の投与液量は、最も最近測定した体重を基準にして決定した。
【0121】
また、マウスに試験物質投与後、毎日飼料摂取量を測定し、飼育箱別に電子天秤を用いて給餌量を測定した後、残量を測定して1日当たりの飼料摂取量を計算した。飼料をひどくかじって食べる個体の場合測定から除外した。
【0122】
本実施例で得られた全ての実験結果は平均値±標準誤差で表し、Prism5(version 5.01)を用いて検定した。全ての資料に対してone-way analysis of variance(ANOVA)を実施して有意性が観察されると、対照群との有意差がある試験群を調べるためにDunnett’stestを実施した(有意水準:両側5%および1%、0.1%)。
【0123】
2.1.2.体重減少試験結果
前記実施例2.1.1で測定された体重変化を図6および図7、および表7(Body Weight(Group、% of initial)に示す。
【0124】
【表7】
【0125】
図6および表7は、融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をそれぞれ1回投与時の体重変化を陰性対照群(vehicle投与群)および陽性対照群(Semaglutideの毎日投与群)と比較して示す。また、図7は、前記図6の結果の中で4日目の結果を抽出して示すグラフである。
【0126】
前記結果から分かるように、陰性対照群(vehicle投与群)の場合体重変化が殆どない反面、陽性対照群(Semaglutideの毎日投与群)の場合には投与後、1日目から持続的に体重減少効果が現れることを確認することができる。また、GDF15がIgD Hingeと融合した融合ポリペプチドの場合にはDay0に1回投与後直ちに体重減少効果が現れ、3~4日目まで体重減少効果が減少せず、持続的に現れることを確認することができる。
【0127】
2.1.3.食事摂取量試験結果
前記実施例2.1.1で測定された飼料摂取量の変化を表8および図8(6日目までの累積摂取量)にそれぞれ示す。
【0128】
【表8】
【0129】
前記結果から分かるように、GDF15がIgD Hingeと融合した融合ポリペプチド投与群の場合、陰性対照群(Vehicle投与群)と比較して融合ポリペプチドに応じて最大6日目まで飼料摂取量減少効果を示し、このような融合ポリペプチドの飼料摂取量減少効果は、試験期間中ずっと陽性対照群であるSemaglutideを1日1回投与した場合に匹敵するといえる。
【0130】
2.2.繰り返し投与
2.2.1試験過程
投与容量、動物の数および投与周期以外のほとんどの試験過程は、前記実施例2.1.1と同様とした。
【0131】
試験物質は、週2回(0、4、7、11、14、18、21、25日)投与して、総8回投与した。比較のために、対照物質Semaglutideを毎日投与した対照群を用意し、Semaglutideを毎日投与した比較対照群の場合1日1回ずつ毎日投与し、全ての投与は午前9時から進行した。
【0132】
試験群構成および投与容量などを下記表9に整理した:
【0133】
【表9】
【0134】
2.2.2.体重減少試験結果
前記実施例2.2.1で測定された体重変化を図9図10a、図10b、および表10(Body Weight(Group、% of initial)に示す。
【0135】
【表10-1】
【表10-2】
【0136】
図9および表10は、融合タンパク質HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をそれぞれ繰り返し投与時(表9)の体重変化を陰性対照群(vehicle投与群)および陽性対照群(Semaglutideの毎日投与群)と比較して示す。また、図10aは、前記図9の結果の中で7日目と14日目の結果を、図10bは、図9の結果の中で21日目と28日目の結果を抽出して示すグラフである。
【0137】
前記結果から分かるように、陰性対照群(vehicle投与群)の場合体重変化が殆どない反面、陽性対照群(Semaglutideの毎日投与群)の場合には投与後、1日目から持続的に体重減少効果が現れることを確認することができる。また、GDF15がIgD Hingeと融合した融合ポリペプチドの場合にはDay0に1回投与後直ちに体重減少効果が現れ、試験期間の間体重減少効果が減少せず持続的に現れ、体重減少効果は濃度依存的であることを確認することができる。
【0138】
2.2.3.食事摂取量試験結果
前記実施例2.2.1で測定された飼料摂取量の変化を表11および図11(7日目、14日目、21日目、および28日目までの累積摂取量)にそれぞれ示す。
【0139】
【表11-1】
【表11-2】
【0140】
前記結果から分かるように、GDF15がIgD Hingeと融合した融合ポリペプチド投与群の場合、陰性対照群(Vehicle投与群)と比較して融合ポリペプチドに応じて試験期間中ずっと飼料摂取量減少効果を示し、濃度依存的な傾向を示した。
【0141】
実施例3.融合ポリペプチドの薬物動態学的試験
3.1.試験群および対照群の血清の用意
各融合ポリペプチドをラットに皮下投与時の薬物動態学的特性の評価のために、融合ポリペプチドHT-ID1-GDF15、HT-ID2-GDF15およびHT-ID3-GDF15をSD Rat(コアテック(株)、雄、7週齢、約250g;各n=3;試験群)にそれぞれ2mg/kgの量で皮下投与して定められた時間に尾静脈から約200ul程度採血した。採血時間は、融合ポリペプチドの投与前、投与後1、2、4、8、24、48、72、96、168、240および336時間に進行した。薬物動態学的特性の比較のための対照群として、前記と同様の方法でGDF15(R&D Systems)を2mg/kgの量で皮下投与してGDF15投与群を用意した。
【0142】
上記のようにSD Ratに投与した後、Time-point別に採取した血液を遠心分離してSerumを得て、Human GDF15 Immunoassay(SGD150、R&D Systems)を用いてELISAを行い、各ポリペプチドの時間に応じたserum内濃度を測定した。該資料を用いてPK解析用ソフトウェア(WinNonlin(Certara L.P.)など)を用いてAUC(area under the curve)を含むParameterの値を求めた。
【0143】
3.2.薬物動態試験結果
上記から得られた融合ポリペプチドの薬物動態パラメータを表12に示し、時間に応じた融合ポリペプチドの濃度変化を図12に示す。
【0144】
【表12】
【0145】
前記結果から分かるように、GDF15(半減期:19時間)と比較して、IgD Hingeを融合した融合ポリペプチドの場合半減期が増加したことを確認することができ、特に、AUClastの場合GDF15に比べて最大16.7倍まで増加した。
【0146】
以上の説明から、本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。これに関連して、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。本発明の範囲は、上記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出されるあらゆる変更または変形した形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
【配列表】
2023505833000001.app
【国際調査報告】