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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(54)【発明の名称】2液型(2K)硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20230207BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230207BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535921
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020083136
(87)【国際公開番号】W WO2021115774
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】19216096.8
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】シュタップフ,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ブルンシュテット,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】メラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス ディアス,ホルダン
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040HA136
4J040HA196
4J040HA256
4J040HA306
4J040HC04
4J040HC05
4J040JA13
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA32
4J040KA38
4J040KA42
4J040MA02
4J040MB03
4J040PA00
4J040PA42
(57)【要約】
本発明は、i)a)エポキシ樹脂;b)電解質;c)任意に可溶化剤;を含む第1成分、および、ii)a)1分子当たり少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する少なくとも1つの化合物からなる硬化剤;および、b)促進剤;を含む第2成分を含み、前記組成物がさらに電気的非導電性フィラーおよび、任意に強化剤を含む、硬化性かつ剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)エポキシ樹脂;
b)電解質;
c)任意に、可溶化剤;
を含む第1成分、ならびに
a)1分子あたり少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する少なくとも1つの化合物からなる硬化剤;および
b)促進剤;
を含む第2成分
を含み、
電気的非導電性フィラーおよび、任意に強化剤をさらに含む、硬化性かつ剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との混合物、脂環式エポキシ樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは前記エポキシ樹脂はビスフェノールAエポキシ樹脂である、請求項1に記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂は、組成物の30~70重量%、好ましくは35~60重量%、より好ましくは40~60重量%、さらにより好ましくは47~57重量%の量で存在する、請求項1または2に記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項4】
前記電解質は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチル-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェートおよびそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項5】
前記電解質は、前記組成物の全重量に対して、2~25重量%、好ましくは4~23重量%、より好ましくは5~20重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項6】
前記電気的非導電性フィラーは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルカム、ヒュームドシリカ、シリカ、ウォラストナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項7】
前記フィラーは、組成物の全重量に対して、1~50重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項8】
可溶化剤を、組成物の全重量に対して、0.5~15重量%、好ましくは1.5~10重量%、より好ましくは3~7重量%の量で含む、請求項1~7のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項9】
前記可溶化剤は、ポリホスファゼン;ポリメチレンスルフィド;ポリオキシアルキレングリコール;ポリエチレンイミン;シリコーン界面活性剤およびフッ素化シリコーン界面活性剤;官能化ポリアルキルシロキサンとエポキシ樹脂とのコポリマー;多価アルコール;および、糖から選択される、請求項8に記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項10】
カーボンブラック、銀およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性粒子をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項11】
導電性粒子を、組成物の全重量に対して、0.05~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.5~4重量%、さらにより好ましくは1~3重量%の量で含む、請求項1~10のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項12】
前記硬化剤は、エポキシド基に対して反応する少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンを含み、前記ポリアミンはさらに、第1級アミン基および/または第2級アミン基を含み、第1級アミン基または第2アミン基あたり150g/eq以下の当量を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項13】
前記促進剤は、第三級アミン、第四級アンモニウム塩、アミジン、グアニジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、前記促進剤は、好ましくは、イミダゾール、メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~12のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項14】
前記促進剤は、組成物の全重量に対して0.1~15重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%の量で存在する、請求項1~13のいずれかに記載の硬化性かつ剥離可能な2液型接着剤組成物。
【請求項15】
導電性表面を有する第1材料層;
導電性表面を有する第2材料層;
を含み、
前記第1材料層と第2材料層との間に、請求項1~14のいずれかに記載の硬化した剥離可能な2液型接着剤組成物が配置される、接着構造体。
【請求項16】
1)両表面にわたり電圧を印加し、陽極界面および陰極界面を形成する工程、
および
2)前記両表面を剥離する工程
を含み、
工程1において印加される電圧は好ましくは0.5~200Vであり、かつ、該電圧は好ましくは1秒~120分間、より好ましくは1秒~60分間印加される、請求項15に記載の接着構造体を剥離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物が塗布された特定の基材から剥離できる接着剤組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、硬化性であり剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着結合およびポリマーコーティングは、一般的に製造品の組み立てや仕上げに使用される。これらは、ネジ、ボルト、リベットなどのメカニカルファスナーの代わりとして使用され、機械加工コストを削減し、製造工程におけるより高い適応性を有する結合を提供する。接着剤による結合は、応力を均等に分散し、疲労の可能性を低減し、腐食種から接合部を遮断する。
【0003】
このように接着剤はメカニカルファスナーよりも多くの利点を提供するが、実用上必要とされる場合、接着で結合された物品を分解することが難しくなる傾向がある。サンドブラストやワイヤーブラシなどの機械的な処理による接着剤の除去は、ひとつには接着剤が基材の間に配置されているため、基材表面を破壊することなくアクセスできないかまたは研磨し難いために、しばしば除外される。米国特許第4,171,240号(Wong)および米国特許第4,729,797号(Linde等)に開示されているような化学物質及び/又は高温の適用による分解は、効果的かもしれないが、実施に時間がかかり、複雑になり得る。さらに、必要とされる攻撃的な化学物質や過酷な条件が、分離される基材を損傷し、その後の適用に適さないものになり得る。
【0004】
このような問題に留意して、特定の著者は、硬化した組成物を電流が流れることで、接着剤と基材の界面での接着を破壊するように作用する、剥離可能な接着剤組成物を開発しようとしてきた。
【0005】
米国特許第7,465,492号(Gilbert)は、アクリル、メタクリルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含むマトリックス官能性;フリーラジカル開始剤;および、電解質を含み、前記電解質が、組成物と導電性表面との間に形成される結合においてファラデー反応を補助するために、十分なイオン伝導性を前記組成物に与え、それにより前記組成物を表面から剥離できる、剥離可能な組成物を記載する。
【0006】
米国特許出願公開2007/0269659(Gilbert)は、2つの界面で剥離可能な接着剤組成物であって、(i)ポリマーと電解質を含み;(ii)2つの表面の接合を容易にし;並びに(iii)陽極界面と陰極界面を形成するように両表面にわたり印加された電圧に応じて、陽極界面と陰極界面の両方から剥離する組成物を記載する。
【0007】
米国特許出願公開2008/0196828(Gilbert)は、熱可塑性成分;および、電解質、を含み、前記電解質が、前記組成物に十分なイオン伝導性を提供し、前記組成物と導電性表面との間に形成される結合におけるファラデー反応を可能にして、前記組成物を前記表面から剥離することを可能とするホットメルト接着剤組成物を記載する。
【0008】
国際出願公開2017/133864(Henkel AG & Co.KGaA)は、第1および第2基材を可逆的に接合する方法であって、少なくとも第1基材が電気的に非導電性の基材であり、a)電気的に非導電性の基材の表面を導電性インクでコーティングすること;b)電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物を、導電性インクでコーティングされた第1基材及び/又は第2基材の表面に塗布すること;c)電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物が前記2つの基材の間に介在するように、第1基材と第2基材とを接触させること;d)2つの基材間に接着結合を形成して、接合基板を提供すること;およびe)前記接着基材に電圧を印加し、それにより、電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物と基材表面との間の1つの界面の接着を実質的に弱めること、を含む方法を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,171,240号明細書
【特許文献2】米国特許第4,729,797号明細書
【特許文献3】米国特許第7,465,492号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2007/0269659号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開2008/0196828号明細書
【特許文献6】国際出願公開2017/133864号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
接着されるべき基材の表面に簡便に塗布することができ、その硬化時に前記基材を含む複合構造内に効果的な結合を提供できるが、硬化した接着剤に電位を容易に印加することにより、それらの基材から効果的に剥離できる接着剤組成物を提供するという技術上の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、
a)エポキシ樹脂;
b)電解質;
c)任意に、可溶化剤;
を含む第1成分、ならびに
a)1分子あたり少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する少なくとも1つの化合物からなる硬化剤;および
b)促進剤;
を含む第2成分
を含む、硬化性かつ剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物が提供され、
前記組成物はさらに、電気的非導電性フィラー、および任意に強化剤を含む。
【0012】
本発明の重要な実施形態では、2液型(2K)接着剤組成物は、組成物の重量に基づいて、
・30~70重量%、好ましくは35~60重量%の前記エポキシ樹脂;
・2~25重量%、好ましくは5~20重量%の前記電解質;
・0~15重量%、好ましくは1.5~10重量%の可溶化剤;
・0.1~15重量%、好ましくは1~15重量%の促進剤;
・1~50重量%,好ましくは2~25重量%の電気的非導電性フィラー;および
・0~10重量%、好ましくは0.1~5重量%の電気的導電性フィラー
を含む。
【0013】
接着剤組成物の第1成分において、前記電解質は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチル-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレートおよびそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェートの少なくとも1つを使用することが特に好ましいと言える。
【0014】
この第1成分における電解質の選択の上記言及とは別に、またはこれに加えて、前記組成物は、ポリホスファゼン;ポリメチレンスルフィド;ポリオキシアルキレングリコール;ポリエチレンイミン;シリコーン界面活性剤およびフッ化シリコーン界面活性剤;官能化ポリアルキルシシロキサンとエポキシ樹脂とのコポリマー;多価アルコール;および、糖から選択される可溶化剤を含むことが好ましい。
【0015】
組成物の第2成分において、前記硬化剤は、エポキシ基に対して反応する少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンを含み、前記ポリアミンはさらに、第1級アミン基及び/又は第2級アミン基を含み、第1級アミン基または第2級アミン基あたり150g/eq以下の当量を有することを特徴とすることが好ましい。この点に関して、エーテル基含有脂肪族1級ポリアミンの使用が特に好ましいといえる。
【0016】
組成物の第2成分の硬化剤の選択の上記言及とは別に、またはこれに加えて、前記促進剤が、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、アミジン、グアニジンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。特に好ましいのは、イミダゾール、メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エンおよび1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンから選択される少なくとも1つの促進剤を採用することであると留意される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、
・導電性表面を有する第1材料層;および
・導電性表面を有する第2材料層
を含み、本明細書中および添付の請求の範囲において定義される硬化した剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物が、前記第1材料層および第2材料層との間に配置される、接着構造体が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、本明細書中および添付の請求の範囲において定義された前記接着構造体を剥離する方法であって、
i)両表面にわたって電圧を印加して、陽極界面および陰極界面を形成する工程;および、
ii)前記両表面を剥離する工程
を含む方法が提供される。
この方法の工程i)は、好ましくは、
a)0.5~200Vの印加電圧;および、
b)1秒~120分間、好ましくは1秒~60分間印加される電圧
の少なくとも1つを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a図1aは、本発明の第1の実施形態に係る接着構造体を示す。
図1b図1bは、本発明の第2の実施形態に係る接着構造体を示す。
図2a図2aは、第1の実施形態の構造体を横切る電流の通過に伴う、その構造体の初期の剥離を示す。
図2b図2bは、第2の実施形態の構造体を横断する電流の通過に伴う、その構造体の初期の剥離を示す。
図3a図3aは本発明の実施形態に従って硬化した接着剤組成物により接着されたアルミニウム基材のラップせん断強度試験の結果を示す。
図3b図3bは本発明の実施形態に従って硬化した接着剤組成物により接着されたアルミニウム基材のラップせん断強度試験の結果を示す。
図4図4は、アルミニウムおよび鋼に対する接着特性および剥離効果を示す。
図5図5はヒュームドシリカを使用することで、初期強度および剥離効果が向上することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<定義>
本明細書では、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形の参照語を含む。
【0021】
本明細書で用いられる用語「含む」(「comprising」、「comprises」及び「comprised of」)は、「含む」(「including」、「includes」、「containing」又は「contains」)と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、引用されていない部材(members)、要素又は方法工程を除外しない。
【0022】
本明細書で用いられる場合、用語「からなる」(「consisting of」)は、特定されていない要素、成分、部材または方法工程を除外する。
【0023】
量、濃度、寸法およびその他のパラメーターが、範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値および制限値の形で表現されている場合、得られた範囲が文脈上明確に言及されているかどうかにかかわらず、任意の上限値または好ましい値と任意の下限値または好ましい値との組み合わせにより得られる任意の範囲も具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0024】
さらに、標準的な理解に従って、「0~x」であると表される重量範囲は、具体的には0重量%を含む。前記範囲により定義される成分は、組成物に存在しなくてもよく、または組成物中にx重量%までの量で存在してもよい。
【0025】
用語「好ましい」、「好ましくは」、「望ましい」及び「特に」は、特定の状況下で、特定の利点を与え得る本開示の実施形態を言及するために、本明細書で頻繁に使用されている。しかしながら、1つ以上の好ましい、好ましい、望ましい、または特定の実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0026】
本出願において、「may」という単語は、義務的な意味ではなく、許容的な意味(つまり、可能性があるという意味)で使われる。
【0027】
本明細書で用いられる場合、室温は23℃プラスまたはマイナス2℃である。本明細書で使用する場合、「周囲条件」とは、組成物が配置される、またはコーティング層若しくは前記コーティング層の基材が配置される周囲の温度および圧力を意味する。
【0028】
本発明の文脈における「2液型(2K)組成物」は、第1成分(A)および第2成分(B)が、その(高い)反応性のために別々の容器に保存されなければならない組成物であると理解される。2つの成分は、塗布の直前にのみ混合され、その後、典型的には追加の活性化なしに反応し、結合を形成し、それによってポリマーネットワークが形成される。ここで、架橋反応を促進させるために、より高い温度を適用し得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、「剥離可能」という用語は、接着剤の硬化後、10V~75Vの電圧を1秒~60分間印加することにより、接着強度が少なくとも50%弱くなることを意味する。硬化性接着剤は、接着剤接着線を通って電流が流れるように前記接着剤により接着される2つの基材の間に塗布される。接着強度は、室温で実施されるEN1465:2009(ドイツ語版)に基づく、接着剤-接着された組立品の引張ラップせん断強度の測定-に準拠する引張ラップせん断(TLS)試験により測定される。接着剤の重なり部分は25mm×10mmで、接着剤の厚さは約150μmである。
【0030】
本明細書で用いられる場合、用語「モノマー」は、重合反応を受けてポリマーの化学構造に構成単位を寄与することができる物質を意味する。本明細書で用いられる場合、用語「単官能性」は、1つの重合可能な部位を有することを意味する。本明細書で使用する「多官能性」という用語は、2つ以上の重合可能な部位を有することを意味する。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「当量(eq.)」は、化学表記において通常であるように、反応中に存在する反応性基の相対数に関するものである。
【0032】
「電解質」という用語は、本明細書では、当該技術分野における標準的な意味に従って、帯電した荷電キャリア種の移動によって電気を通すことができる遊離イオンを含む物質として、用いられる。この用語は、少なくとも1つの電解質構造のカチオン性成分またはアニオン性成分が本質的に自由に移動し、したがって電荷キャリアとして作用する、溶融電解質、液体電解質、半固体電解質および固体電解質を包含することが意図される。
【0033】
本発明の硬化性接着剤組成物およびそれから得られる硬化接着剤は、接着剤物質がイオン、アニオンまたはカチオン、もしくはその両方の伝導を可能にするという点で「電解質機能性」を有している。電解質機能性は、少なくとも1つの極性のイオンを溶媒和する組成物および硬化接着剤の能力に由来するものと理解される。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す略記語である。したがって、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドをまとめて指す。
【0035】
本明細書において、使用される場合、「C1-アルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基であって、アルカンの基であり、直鎖状及び分岐状の有機基を含むものを指す。このように、「C1-30アルキル」基とは、1~30個の炭素原子を含む一価の基であって、アルカンの基であり、直鎖状および分岐状の有機基を含むものをいう。アルキル基の例としては、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および、2-エチルヘキシルなどが挙げられるが、それだけに限定されるものではない。本発明において、このようなアルキル基は非置換であってもよいし、またはハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシといった1以上の置換基で置換されてもよい。該当する場合、所定の置換基に対する選択が、本明細書に記載される。しかしながら、一般に、1~18個の炭素原子を含むアルキル基(C1-18アルキル)-例えば1~12個の炭素原子を含むアルキル基(C1-12アルキル)または1~6個の炭素原子を含むアルキル基(C1-アルキル)-に対する選択が留意されるべきである。
【0036】
本明細書で用いられる用語「C1-18ヒドロキシアルキル」は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指し、置換基の結合点は酸素原子を介しており、アルキル基は上記定義のとおりである。
【0037】
「アルコキシ基」は、Aがアルキル基である-OAで表される一価の基を指し、その非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基、およびイソプロピルオキシ基である。本明細書で用いられる用語「C1-18アルコキシアルキル」は、上記で定義されるアルコキシ置換基を有し、(アルキル-O-アルキル)アルキル基を指す部分が合計で1~18個の炭素原子を含む。そのような基には、メトキシメチル(-CHOCH)、2-メトキシエチル(-CHCHOCH)および2-エトキシエチル等が挙げられる。
【0038】
本明細書で用いられる用語「C2-アルキレン」は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素基と定義される。
【0039】
用語「C3-30シクロアルキル」は、3~30の炭素原子を有する、任意に置換された、飽和炭化水素基、単環式炭化水素基、二環式炭化水素基または三環式炭化水素基を意味すると理解される。一般に、3~18個の炭素原子を含むシクロアルキル基(C3-18シクロアルキル基)の選択が留意されるべきである。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;および、ノルボルナンが挙げられる。
【0040】
本明細書において、-「アラルキル基」などで-単独でまたはより大きな部分の一部として用いられる「C6-18アリール」基は、単環式環系が芳香族であるか、または二環式環系もしくは三環式環系の環の少なくとも1つが芳香族である、任意に置換された、単環式環系、二環式環系および三環式環系を意味する。二環式環系および三環式環系には、ベンゾ縮合した2~3員の炭素環が含まれる。例示的なアリール基としては、フェニル;(C1-)アルキルフェニル、例えばトリルおよびエチルフェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;および、アントラセニルが挙げられる。フェニル基の選択が留意され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「C2-20アルケニル」は、2~20個の炭素原子および少なくとも1単位のエチレン性不飽和を有するヒドロカルビル基を意味する。アルケニル基は、直鎖、分岐、または環状であり得、任意に置換されていてもよい。用語「アルケニル」はまた、当業者に理解されるように、「シス」及び「トランス」構成、又は代替的に、「E」及び「Z」構成を有する基を包含する。しかしながら、一般に、2~10(C2-10)または2~8(C2-8)の炭素原子を含む非置換アルケニル基の選択が留意されるべきである。前記C2-12アルケニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、-CH=CH; -CH=CHCH; -CHCH=CH; -C(=CH)(CH); -CH=CHCHCH; -CHCH=CHCH; -CHCHCH=CH; -CH=C(CH; -CHC(=CH)(CH); -C(=CH)CHCH; -C(CH)=CHCH; -C(CH)CH=CH; -CH=CHCHCHCH; -CHCH=CHCHCH; -CHCHCH=CHCH; -CHCHCHCH=CH; -C(=CH)CHCHCH; -C(CH)=CHCHCH; -CH(CH)CH=CHCH; -CH(CH)CHCH=CH; -CHCH=C(CH;1-シクロペント-1-エニル;1-シクロペント-2-エニル;1-シクロペント-3-エニル;1-シクロヘキス-1-エニル;1-シクロヘキス-2-エニル;および、1-シクロヘキス-3-エニルが挙げられる。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を意味し、「置換アルキルアリール」は、上記に規定される1以上の置換基をさらに有するアルキルアリール基を意味する。さらに、本明細書で使用される「アラルキル」は、上記で定義されたアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0043】
本明細書で用いられる用語「ヘテロ」は、N、O、SiおよびSなどの1以上のヘテロ原子を含む基または部位を指す。したがって、例えば「ヘテロ環」は、例えば、N、O、SiまたはSを環構造の一部として有する環状基を指す。「ヘテロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」および「ヘテロアリール」部位は、それぞれ、それら構造の一部としてN、O、SiまたはSを含む、本明細書で定義されたアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる場合、用語「エポキシド」は、少なくとも1つの環状エーテル基、すなわちエーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成している基の存在によって特徴づけられる化合物を表す。この用語は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物(2つ以上のエポキシ基を有する)およびエポキシド末端プレポリマーを包含することを意図している。用語「モノエポキシド化合物」は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意図している。用語「ポリエポキシド化合物」は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。用語「ジエポキシド化合物」は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。
【0045】
エポキシドは非置換であってもよいが、不活性置換であってもよい。例示的な不活性置換基には、塩素、臭素、フッ素およびフェニルが含まれる。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「第1級アミノ基」は、有機基に結合したNH基を指し、「第2級アミノ基」は、2つの有機基に結合したNH基を指し、これらはまた共に環の一部であってもよい。したがって、用語「第三級アミン」は、窒素原子が水素原子に結合していない部位を有する窒素を指す。ここで用いられる場合、用語「アミン水素」は、第1級および第2級アミノ基の水素原子を指す。
【0047】
本明細書で用いられる「当量」という用語は、分子量を当該関数の数で割ったものを意味する。そのため、「エポキシ当量」(EEW)とは、1当量のエポキシを含む樹脂の重量をグラム単位で表したものである。
【0048】
「アミン当量」は、アミン価から求められる計算値(g/eq.)である。そのアミン価は、アミン酢酸イオンを希薄な、典型的には1Nの塩酸溶液で滴定することによって決定される。純物質の場合、アミン価は純化合物とKOHの分子量(56.1g/mol)を用いて算出することができる。
【0049】
本明細書で用いられる「ルイス酸」という用語は、第2の分子またはイオンからの2個の電子により共有結合を形成することで、他の分子またはイオンと結合できる分子またはイオン-求電子剤と呼ばれることが多い-を示す。したがってルイス酸は電子受容体である。
【0050】
本明細書で言及されている分子量は、ASTM3536に準拠した、ポリスチレン校正標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0051】
本明細書に記載された組成物の粘度は、特に規定がない限り、25℃および50%の相対湿度(RH)の標準条件において、Anton Paar粘度計、モデルMCR301を使用して測定されたものである。粘度計は年に1回校正され、サービスにより検査される。校正は、5,000cps~50,000cps(平行板PP25、23℃、せん断速度1(1/s))まで変化する既知の粘度の特定のオイルを使用して行われる。本発明による組成物の測定は、平行板PP20を用いて、1.5(1/s)~100(1/s)までの異なるせん断速度で行われる。
【0052】
<発明の詳細な説明>
<2液型(2K)組成物の第1成分>
2液型(2K)組成物の第1成分は、エポキシ樹脂;および、電解質;可溶化剤;ならびに、フィラーを含む。
【0053】
<エポキシ樹脂>
組成物の第1成分は、前記組成物の重量に基づいて、典型的には30~70重量%の量で存在するエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は前記組成物の35~60重量%、例えば40~60重量%または47~57重量%を構成することが好ましい。
【0054】
エポキシ樹脂の量は70%より多いとラップせん断強度や剥離効果に不利になることがあり、一方、主に30%より少ないと接着性が低下することがあるため、上記のエポキシ樹脂の量が好ましい。
【0055】
本明細書で使用されるエポキシ樹脂は、単官能エポキシ樹脂、多官能(マルチ、またはポリ)エポキシ樹脂、およびそれらの組合せを含んでもよい。エポキシ樹脂は、純粋な化合物であってもよいが、同様に、1分子当たり異なる数のエポキシ基を有する化合物の混合物を含む、エポキシ官能性化合物の混合物であってもよい。エポキシ樹脂は、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってもよく、置換されていてもよい。さらに、エポキシ樹脂は、単量体であっても重合体であってもよい。
【0056】
本発明を限定する意図はないが、例示的なモノエポキシド化合物には以下のものが含まれる。アルキレンオキシド;エポキシ置換脂環式炭化水素、例えばシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、(+)-シス-リモネンオキシド、(+)-シス,トランス-リモネンオキシド、(-)-シス,トランス-リモネンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシドおよびα-ピネンオキシド;エポキシ置換芳香族炭化水素;脂肪族、脂環式および芳香族アルコールのグリシジルエーテルなどの、一価アルコールまたはフェノールのモノエポキシ置換アルキルエーテル;脂肪族、脂環式および芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステルなどの、モノカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;他のカルボキシ基がアルカノールでエステル化されている、ポリカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;エポキシ置換モノカルボン酸のアルキルおよびアルケニルエステル;他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている、多価アルコールのエポキシアルキルエーテル;および、他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている、多価アルコールとエポキシモノカルボン酸とのモノエステル。
【0057】
例として、以下のグリシジルエーテルが、本明細書での使用に特に適したモノエポキシド化合物として言及され得る。メチルグリシジルエーテル;エチルグリシジルエーテル;プロピルグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;ペンチルグリシジルエーテル;ヘキシルグリシジルエーテル;シクロヘキシルグリシジルエーテル;オクチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリールグリシジルエーテル;ベンジルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;4-tert-ブチルフェニル グリシジルエーテル;1-ナフチルグリシジルエーテル;2-ナフチルグリシジルエーテル;2-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-ブロモフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリクロロフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリブロモフェニルグリシジルエーテル;ペンタフルオロフェニルグリシジルエーテル;o-クレジルグリシジルエーテル;m-クレジルグリシジルエーテル;および、p-クレジルグリシジルエーテル。
【0058】
一実施形態において、モノエポキシド化合物は、以下の式(I):

[式中、R、R、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、独立して、水素、ハロゲン原子、C1-アルキル基、C3-10シクロアルキル基、C2-12アルケニル基、C6-18アリール基またはC7-18アラルキル基から選択され、但しRおよびRの少なくとも1つは水素ではない]
に準拠する。
【0059】
、RおよびRは水素であり、Rはフェニル基またはC1-アルキル基であることが好ましく、より好ましくは、C1-アルキル基である。
【0060】
この実施形態に関して、例示的なモノエポキシドは:エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド(プロピレンオキシド);1,2-ブチレンオキシド;シス-2,3-エポキシブタン;トランス-2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシペンタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-へプチレンオキシド;デセンオキシド;ブタジエンオキシド;イソプレンオキシド;および、スチレンオキシドが挙げられる。
【0061】
本発明では、エチレンオキシド;プロピレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;(+)-シス-リモネンオキシド;(+)-シス,トランスリモネンオキシド;(-)-シス,トランス-リモネンオキシド;シクロオクテンオキシド;および、シクロドデセンオキシドからなる群から選択される少なくとも1つのモノエポキシド化合物を用いることに言及される。
【0062】
ここにおいても、本発明を限定する意図はないが、好適なポリエポキシド化合物は、液体、固体、または溶媒中の溶液であってもよい。さらに、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシ当量を有するべきである。さらに、一般的に、500g/eq未満、さらには400g/eq未満のエポキシ当量を有するジエポキシド化合物が好ましい。これは、それらの製造において、低分子量のエポキシ樹脂が精製においてより限られた処理を必要とするため、主にコストの観点からのものである。
【0063】
本発明で重合され得るポリエポキシド化合物の種類または群の例として:多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素、エステル、エーテルおよびアミドについて言及することができる。
【0064】
適切なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族または脂環式であってよく、そのようなものとしては二価フェノールおよび二価アルコールから誘導可能である。そして、そのようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは、脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオール;ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;o-フタル酸ジグリシジル、イソフタル酸ジグリシジルおよびテレフタル酸ジグリシジル;ポリアルキレングリコール系ジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;ならびにポリカーボネートジオール系グリシジルエーテルである。言及され得る他の適切なジエポキシドとしては、二重不飽和脂肪酸C1-18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;および、リモネンジエポキシドが挙げられる。
【0065】
さらに例示的なポリエポキシド化合物には、グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;および、ソルビトールポリグリシジルエーテルが挙げられるが、これだけに限られない。
【0066】
そして、非常に好ましいポリエポキシド化合物の例としては、以下のものが挙げられる。DERTM331、DERTM330およびDERTM383などのビスフェノールAエポキシ樹脂;DERTM354などのビスフェノールFエポキシ樹脂;DERTM353などのビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド;DERTM736などの脂肪族グリシジルエーテル;DERTM732などのポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;DERTM661およびDERTM664UEなどの固形ビスフェノールAエポキシ樹脂;DERTM671-X75などのビスフェノールA固形エポキシ樹脂の溶液、DENTM438などのエポキシノボラック樹脂;DERTM542などの臭素化エポキシ樹脂;ERISYSTMGE-35Hなどのひまし油トリグリシジルエーテル;ERISYSTMGE-38などのポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル;およびERISYSTMGE-60などのソルビトールグリシジルエーテル。
【0067】
上記とは別に、組成物の第1成分は、特定の実施形態において、式:


[式中、
各Rは、独立して、メチルまたはエチルから選択される;および、
nは、1~10である]
を有するグリシドキシアルキルアルコキシシランを含み得る。
【0068】
例示的なシランとしては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;および、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシランが挙げられるが、これに限定されない。存在する場合、エポキシド官能性シランは、エポキシド化合物の全重量に基づき、20重量%未満、好ましくは10重量%未満または5重量%未満を構成することが望ましい。
【0069】
本発明はまた、硬化性組成物の第1成分が、オキセタン;環状カーボネート;環状無水物;および、ラクトンからなる群から選択される1つ以上の環状モノマーをさらに含むことを妨げない。以下の引用文献の開示は、適切な環状カーボネート官能性化合物を開示する上で有益となり得る。米国特許第3,535,342号;米国特許第4,835,289号;米国特許第4,892,954号;英国特許出願公開第1,485,925号;および、欧州特許出願公開第0 119 840号。しかしながら、このような環状コモノマーは、エポキシド化合物の全重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満または5重量%未満を構成することが望ましい。
【0070】
<電解質>
組成物の第1成分は、組成物の重量に基づいて、2~25重量%の電解質を含む。電解質は、好ましくは、前記組成物の4~23重量%、例えば5~20重量%を構成してよい。
【0071】
これらの電解質の量は、25%を超える量は良好な剥離効果をもたらす可能性があるが、硬化が不完全になり初期接着特性に悪影響を与える可能性があり、一方、少量、主に2%未満の量は剥離効果の欠如につながる可能性があるため、上記の電解質の量が好ましい。
【0072】
電解質は、好ましくは、
[式中、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1-18アルキル、C3-18シクロアルキル、C6-18アリール、C7-24アラルキル、C2-20アルケニル、-C(O)R、-C(O)OH、-CNおよび-NOから選択され、RはC1-アルキルである]
からなる群から選択される式を有する少なくとも1つの塩を含む。
【0073】
完全を期すために、C1-18アルキル、C3-18シクロアルキル、C6-18アリール、C7-24アラルキル、C2-20アルケニルという用語は、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されている基(例えば、C1-18ハロアルキル)またはヒドロキシル基で置換されている基(例えば、C1-18ヒドロキシアルキル)を明示的に含む。特に、R、R、R、R、RおよびRは、独立して水素、C1-12アルキル、C1-12ハロアルキル、C1-12ヒドロキシアルキルおよびC3-12シクロアルキルから選択されることが好ましい。例えば、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1-アルキル、C1-ハロアルキルおよびC1-ヒドロキシアルキルから選択されてよい。
【0074】
電解質中に採用され得る対アニオン(X)を限定する意図は特にない。例示的なアニオンは、以下から選択することができる。
・ハロゲン化物;
・式PF 、CFSO 、(CFSO、CFCO およびCClCO の疑似ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物、
・CN、SCNおよびOCN
・フェネート(Phenates);
・一般式SO 2-、HSO 、SO 2-、HSO 、ROSO 、およびRSO のサルフェート、サルファイト、およびスルホネート;
・一般式PO 3-、HPO 2-、HPO 、RPO 2-、HRPO およびRPO のホスフェート;
・一般式RHPO 、RPO およびRPO のホスホネート(phosphonates)およびホスフィナート(phosphinates);
・一般式PO 3-、HPO 2-、HPO 、RPO 2-、RHPO およびRPO のホスファイト;
・一般式RPO 、RHPO 、RPO、およびRHPOのホスホナイト(phosphonites)およびホスフィニット(phosphinites);
・一般式RCOOのカルボン酸アニオン;
・ヒドロキシカルボン酸アニオンおよび糖酸アニオン;
・サッカリネート(o-安息香酸スルフィミドの塩);
・一般式BO 3-、HBO 2-、HBO 、RBO 、RHBO 、RBO 2-、B(OR)(OR)(OR)(OR、B(HSOおよびB(RSOのボレート;
・一般式RBO 2-およびRBOのボロネート;
・一般式HCO 、CO 2-およびRCO のカーボネートおよび炭酸エステル;
・一般式SiO 4-、HSiO 3-、HSiO 2-、HSiO 、RSiO 3-、RSiO 2-、RSiO 、HRSiO 2-、HSiO およびHRSiO のシリケートおよびケイ酸エステル;
・一般式RSiO 3-、RSiO 2-、RSiO、RSiO 、RSiO およびRSiO 2-のアルキルシラノレートおよびアリールシラノレート;
・ピリジネートおよびピリミジネート;
・一般式:
のカルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド;
・一般式

のメチド;
・一般式Rのアルコキシドおよびアリールオキシド;および、
・一般式S2-、HS、[S2-、[HSおよび[RS]のスルフィド、硫化水素、ポリスルフィド、水素ポリスルフィドおよびチオラート
[ここで、一般式
vは2~10の正の整数である。
、R、RおよびRは、独立して、水素、C1-12アルキル、C5-12シクロアルキル、C5-12ヘテロシクロアルキル、C6-18アリールおよびC5-18ヘテロアリールから選択される。]
【0075】
上記リストの定義に基づき、好ましいアニオンは、ハロゲン化物;上記で定義された擬似ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物;カルボン酸アニオン、特にフォーメイト、アセテート、プロピオネート、ブチラートおよびラクテート;ヒドロキシカルボン酸アニオン;ピリジネートおよびピリミジネート;カルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド;サルフェート、特にメチルサルフェートおよびエチルサルフェート;サルファイト;スルホネート、特にメタンスルホネート;ならびにホスフェート、特にジメチル-ホスフェート、ジエチル-ホスフェートおよびジ-(2-エチルヘキシル)-ホスフェートからなる群から選択される。
【0076】
第1成分の電解質は、好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチル-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェートの少なくとも1つを使用することが特に好ましいといえる。
【0077】
上記の電解質は、組成物に良好な安定性、良好な初期接着強度をもたらし、電位処理した際に良好な剥離効果をもたらすため好ましい。
【0078】
2液型(2K)組成物の第1成分は、組成物の重量に基づいて、典型的には0.5~15重量%の量で存在する可溶化剤を含んでよい。好ましくは、可溶化剤は前記組成物の1.5~10重量%、例えば3~10重量%を構成する。
<可溶化剤>
【0079】
可溶化剤の量が15%を超えると接着性や硬化性に悪影響を及ぼすことがあり、一方、主に0.5%未満の少量では、組成物がより粘性/固体となり、したがって成分の混合を阻害することがあるため、これらの可溶化剤の量が好ましい。
【0080】
可溶化剤は、その2つの成分の混合時に形成される接着剤組成物内の電解質の混和性を促進する機能を有する。可溶化剤は、接着剤組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックスの一部を形成してもしなくてもよいが、その中のイオン移動を促進する役割を果たす。可溶化剤は、このように、好ましくは極性化合物であり、望ましくは室温で液体であるべきである。
【0081】
可溶化剤の適切なクラスは、ポリホスファゼン;ポリメチレンスルフィド;ポリオキシアルキレングリコール;ポリエチレンイミン;シリコーン界面活性剤およびフッ素化シリコーン界面活性剤、例えば、フッ素化ポリシラン、ポリアルキルシロキサンおよびポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン;官能化ポリアルキルシロキサンとエポキシ樹脂とのコポリマー、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)とエポキシ樹脂とのコポリマーなど;多価アルコール;および、糖類を含む。
【0082】
エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、フロログルシノール、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ベンゼンの残炭素原子に3つのメチル置換基またはエチル置換基が結合した、トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、グリセロール、シクロヘキサン-1,2,4-トリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、ペンタン-1,2,3-トリオール、ヘキサン-1,3,5-トリオール、エリスリトール、1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼン、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、フルクトース、グルコース、マンノース、ラクトース、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトールアリールエーテルおよびペンタエリスリトールなどの多価アルコールおよび糖類。
【0083】
ポリオキシアルキレングリコールのうち、200~10000g/mol、例えば200~2000g/molの重量平均分子量を有するポリオキシ(C2-)アルキレングリコールの使用が特に好ましいと言及され得る。
【0084】
<2液型(2K)組成物の第2成分>
2液型組成物の第2成分は、硬化剤;および促進剤;を必然的に含む。
【0085】
<硬化剤>
硬化剤は、必然的に1分子あたり少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する少なくとも1つの化合物からなる。硬化剤は、特に、i)エポキシ基に対して反応する少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;ii)エポキシ基に対して反応する少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物;および、iii)少なくとも1つのマンニッヒ塩基の1つ以上を含んでよい。
【0086】
エポキシ基に対して反応する少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンは、特に、第1級アミン基および/または第2級アミン基を含み、第1級アミン基または第2級アミン基あたり150g/eq.以下、より好ましくは125g/eq.以下の当量を有することが望ましい。
【0087】
単独または組み合わせて使用することができる適切なポリアミンとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
i)以下の例が言及され得る、脂肪族一級ジアミン、脂環式一級ジアミンまたはアリール脂肪族一級ジアミン:2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン;1,3-ペンタンジアミン(DAMP);1,5-ペンタンジアミン;1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD);2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン);1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミン、HMDA);2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン;2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン;1,7-ヘプタンジアミン;1,8-オクタンジアミン;1,9-ノナンジアミン;1,10-デカンジアミン;1,11-ウンデカンジアミン;1,12-ドデカンジアミン;1,2-,1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA);2-及び/又は4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボランジアミン、NBDA);3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]-デカン(TCD-ジアミン);1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA);1,8-メンタンジアミン;3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;および、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)。
ii)以下の具体例が言及され得る、2つまたは3つの第1級脂肪族アミン基を有する第3級アミン基含有ポリアミン:N,N’-ビス(アミノプロピル)-ピペラジン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)エチルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)プロピルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)-2-エチルヘキシルアミン;トリス(2-アミノエチル)アミン;トリス(2-アミノプロピル)アミン;トリス(3-アミノプロピル)アミン;および、天然脂肪酸由来の脂肪アミンのダブルシアノエチル化およびその後の還元からの生成物、例えば、N,N-ビス(3-アミノプロピル)ドデシルアミンおよびN,N-ビス(3-アミノプロピル)獣脂アルキルアミンなど、Triameen(登録商標)Y12DおよびTriameen(登録商標)YT(Akzo Nobel社製)として市販されている。
iii)以下の具体例が言及され得る、エーテル基含有脂肪族一級ポリアミン:ビス(2-アミノエチル)エーテル;3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン;4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン;5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン;4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンおよびこれらのジアミンの高級オリゴマー;ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフランおよびその他のポリテトラヒドロフランジアミン;1,4-ジメチロールシクロヘキサンのプロポキシル化およびその後のアミノ化から得られる脂環式エーテル基含有ジアミン、例えばJeffamine(登録商標)RFD-270(Huntsman社製)として市販されている材料;ポリオキシアルキレンジオールおよびポリオキシアルキレントリオールのアミノ化からの生成物として得られるポリオキシアルキレンジアミンまたはポリオキシアルキレントリアミン、これはJeffamine(登録商標)(Huntsman社製)の名称、ポリエーテルアミン(BASF社製)の名称またはPC Amines(登録商標)(Nitroil社製)の名称で商業的に入手可能である。Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-600、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000、Jeffamine(登録商標)EDR-104、Jeffamine(登録商標)EDR-148およびJeffamine(登録商標)EDR-176、並びにBASF社またはNitroil社からの対応するアミンの使用が特に好ましいとして言及され得る。
iv)以下の例が言及され得る、第二級アミン基を有する第一級ジアミン:3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(BHMT);ジエチレントリアミン(DETA);トリエチレンテトラミン(TETA);テトラエチレンペンタミン(TEPA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);5~7のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(いわゆる「高級エチレンポリアミン」HEPA)などの線状ポリエチレンアミンの高級同族体;ジプロピレントリアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N3-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(N4-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N3-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミンまたはN,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミンなどの、少なくとも2つの第一級アミン基を有する第一級ジアミンおよび第一級ポリアミンの多重シアノエチル化またはシアノブチル化およびその後の水素化からの生成物。
v)以下の例が言及され得る、1つの第一級および少なくとも1つの第二級アミノ基を有するポリアミン:N-ブチル-1,2-エタンジアミン;N-ヘキシル-1,2-エタンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,2-エタンジアミン;N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン;4-アミノメチル-ピペリジン;N-(2-アミノエチル)ピペラジン;N-メチル-1,3-プロパンジアミン;N-ブチル-1,3-プロパンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,3-プロパンジアミン;N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン;3-メチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-エチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-シクロヘキシルアミノ-1-ペンチルアミン;N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミンなどの脂肪族ジアミン;第一級脂肪族ジアミンとアクリロニトリル、マレイン酸ジエステルまたはフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸アミドおよびメタクリル酸アミド、並びにイタコン酸ジエステルとを1:1のモル比で反応させたMichaelタイプ付加反応からの生成物;アルデヒドまたはケトンによる第一級ポリアミンの部分還元アルキル化からの生成物、特に、2つの第一級アミン基を有する前基記ポリアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミンおよびN4-アミンのN-モノアルキル化生成物、ここで好ましいアルキル基はベンジル、イソブチル、ヘキシルおよび2-エチルヘキシルである;および、Gaskamine(登録商標)240(三菱ガス化学社製)として市販されているような、部分スチレン化ポリアミン。
vi)第二級ジアミンおよび、特に、2つの第一級アミン基を有する前記ポリアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミンまたはN4-アミンのN,N’-ジアルキル化生成物、ここで好ましいアルキル基は2-フェニルエチル基、ベンジル基、イソブチル基、ヘキシル基および2-エチルヘキシル基である。
vii)以下の言及され得る、芳香族ポリアミン:m-およびp-フェニレンジアミン;4,4’-、2,4’および2,2’-ジアミノジフェニルメタン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA);2,4-および2,6-トリレンジアミン;3,5-ジメチルチオ-2,4-トリレンジアミンおよび3,5-ジメチルチオ-2,6-トリレンジアミンの混合物(Albermarle社からEthacure(登録商標)300として入手可能);3,5-ジエチル-2,4-トリレンジアミンおよび3,5-ジエチル-2,6-トリレンジアミンの混合物(DETDA);3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DEA);3,3’,5,5’-テトラエチル-2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-CDEA);3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-MIPA);3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DIPA);4,4’-ジアミノジフェニル-スルホン(DDS);4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンゼンスルホンアミド;5,5’-メチレンジアンスラニル酸;ジメチル-(5,5’-メチレンジアンスラニレート);1,3-プロピレン-ビス(4-アミノベンゾエート);1,4-ブチレン-ビス(4-アミノベンゾエート);ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-アミノベンゾエート)(Air Products社からVersalink(登録商標)として入手可能);1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、2-メチルプロピル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート);並びに、Tert.ブチル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート)。
viii)表示する構成(indicative members)が一価または多価のカルボン酸もしくはそのエステルまたは無水物、(特に二量体脂肪酸)と脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミンまたは芳香族ポリアミン、例えばDETAまたはTETAなどのポリアルキレンアミンとの反応生成物を含む、ポリアミドアミン。市販のポリアミドアミンは、Versamid(登録商標)100、125、140および150(Cognis社製);Aradur(登録商標)223、250および848(Huntsman社製);Euretek(登録商標)3607および530(Huntsman社製);並びに、Beckopox(登録商標)EH651、EH654、EH655、EH661およびEH663(Cytec社製)を含む。
【0088】
少なくとも2つの第一級脂肪族アミン基を有する前記ポリアミンのうち、好ましいものは、イソホロンジアミン(IPDA);ヘキサメチレンジアミン(HMDA);1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;NBDA;および、数平均分子量(Mn)が最大500g/モルのエーテル基含有ポリアミンである。前記エーテル基含有ポリアミンの中で特に好ましいのは、Jeffamine(登録商標)D-230およびD-600(Huntsman社から入手可能)である。
【0089】
上記のように、本発明の組成物は、任意に、1分子当たり少なくとも2つの反応性メルカプト基を有する少なくとも1つの化合物を含んでよい。単独でまたは組み合わせて使用することができる適切なメルカプト基含有化合物には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
・液体メルカプタン末端ポリスルフィドポリマー、その商業的な例としては、Thiokol(登録商標)ポリマー(Morton Thiokol社から入手可能)、特にそのタイプ、LP-3、LP-33、LP-980、LP-23、LP-55、LP-56、LP-12、LP-31、LP-32およびLP-2;および、Thioplast(登録商標)ポリマー(Akzo Nobel社製)、特にそのタイプ、G10、G112、G131、G1、G12、G21、G22、G44およびG4。
・ポリオキシアルキレンジオールおよびポリオキシアルキレントリオールをエピクロロヒドリンまたはアルキレンオキシドと反応させ、続いて硫化水素ナトリウムを反応させることによって得られるメルカプタン末端ポリオキシアルキレンエーテル。
・Capcure(登録商標)(Cognis社製)の商品名で知られるポリオキシアルキレン誘導体の形態のメルカプタン末端化合物、特にそのタイプ、WR-8、LOFおよび3-800。
・具体的な例、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);グリコールジメルカプトアセテート;および、ポリオキシアルキレンジオールおよびトリオール、エトキシル化トリメチロールプロパンおよびポリエステルジオールとチオグリコール酸および2-または3-メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸とのエステル化生成物、が挙げられるチオカルボン酸のポリエステル。
・2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2,2’-(エチレンジオキシ)-ジエタンチオール(トリエチレングリコールジメルカプタン)及び/又はエタンジチオール。
【0090】
チオカルボン酸のポリエステルの使用、特にペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)およびグリコールジメルカプトアセテートの少なくとも1つの使用が好適であると認められる。
【0091】
上記のように、硬化剤は少なくとも1つのマンニッヒ塩基を含んでいてもよい。そのような化合物は、少なくとも1つのフェナルカミン、および、特に、カルダノール(CAS番号:37330-39-5)、アルデヒドおよびアミンの縮合から得られるフェナルカミンを含むことを特徴とし得る。縮合反応における反応物アミンは、望ましくはエチレンジアミンまたはジエチルトリアミンである。
【0092】
マンニッヒ塩基およびフェナルカミンは当技術分野で知られており、適切な例としては、市販のフェナルカミンのCardolite(登録商標)NC-541、NC-557、NC-558、NC-566、Lite2001およびLite2002(Cardolite社から入手可能)、Aradur(登録商標)3440、3441、3442および3460(Huntsman社から入手可能)およびBeckopox(登録商標)EH614、EH621、EH624、EH628およびEH629(Cytec社から入手可能)が挙げられる。
【0093】
<促進剤>
適切な促進剤は、エポキシ基とエポキシ反応性基との反応、例えばアミン基またはチオール基とエポキシ基との反応を促進する物質である。具体的な例は、存在する反応性チオール基(-SH)の脱プロトン化により、チオラート(-S″)となり、このチオラートが求核開環重合によりエポキシ基と反応することにより機能するアミン促進剤の使用に関する。
【0094】
本発明で使用される促進剤を限定する意図はないが、以下の適切な促進剤について言及することができる。i)酸または酸に加水分解可能な化合物、特にa)有機カルボン酸、例えば酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸および乳酸など;b)有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸および4-ドデシルベンゼンスルホン酸など;c)スルホン酸エステル;d)リン酸などの無機酸;e)ルイス酸化合物、例えば、BFアミン錯体、SbFスルホニウム化合物、ビスアレーン鉄錯体など;f)ペンタフルオロアンチモン酸錯体などのブレンステッド酸化合物;および、e)前記の酸と酸エステルとの混合物;ii)第3級アミン、例えば、2ピペラジン-1-イルエタンアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、イミダゾール(N-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾールおよび1,2-ジメチルイミダゾールを含む)およびそのような第3級アミンの塩;iii)第4級アンモニウム塩、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなど;iv)アミジン、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エンなど;v)グアニジン、例えば、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなど;vi)フェノール、特にビスフェノール;vii)フェノール樹脂;およびviii)ホスファイト、例えば、ジフェニルホスファイトおよびトリフェニルホスファイトなど。
【0095】
当業者は、促進剤の選択は、単に最速の促進剤を添加することだけに関心を持っていないと認識されるであろう。促進剤の選択において決定的な他の要因としては、コスト;毒性;溶解性;作業時間、早期ゲル化、発熱分解、膨張およびガス放出などの加工効果;ガラス転移温度(Tg)、弾性率、強度、破断伸度および耐薬品性などの最終特性;規制に関する事項;および、使いやすさ、が挙げられる。
【0096】
本発明では、少なくとも1つの第3級アミン、少なくとも1つのアミジンまたはそれらの混合物を含む、または、からなる促進剤を採用することが好ましい。より詳細には、促進剤は、イミダゾール、メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック-7-エン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが望ましい。
【0097】
促進剤は、典型的には、組成物の重量に基づいて、0.1~15重量%の量で組成物中に存在することが望ましい。促進剤は、好ましくは、前記組成物の1~10重量%、例えば、5~10重量%を構成してよい。
【0098】
促進剤の量は15%を超えると組成物中の促進剤が過剰となり、硬化過程および接着特性に悪影響を及ぼす可能性がある一方、主に0.1%未満の少量では物理的効果がなくなり得るため、これらの促進剤の量が好ましい。
【0099】
<電気的非導電性フィラー>
本発明の2液型(2K)組成物は、電気的非導電性フィラーが存在することを特徴とする。完全を期すために、これらのフィラーは、組成物の1成分または両成分に用いてもよい。各成分中における電気的非導電性フィラーの組成物は独立して決定されるため、各成分で同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
大まかに、非導電性フィラーとして採用される粒子の形状を特に限定する意図はなく、針状、球状、楕円状、円柱状、ビーズ状、立方体状、または板状などの粒子を単独または組み合わせて使用してよい。さらに、2種類以上の粒子の凝集体を用いてもよいことが想定される。同様に、非導電性フィラーとして採用される粒子の大きさを限定する意図も特にない。ただし従来的には、このような非導電性フィラーは、レーザー回折/散乱法によって測定される0.1~1500μm、例えば1~1000μm、または1~500μmの平均体積粒子径を有する。
【0101】
例示的な非導電性フィラーとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム(石灰粉)、沈殿および/または発熱性ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、ウォラストナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、硫酸バリウム、アルミナ、粘土、タルク、砂、石英、フリント、マイカ、ガラスビーズ、ガラス粉、ヒュームドシリカ、および他の鉱物質があるが、限定されるものではない。また、ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、またはポリエチレン繊維などの短繊維を添加することも可能である。発熱性および/または沈殿ケイ酸は、有利には、10~90m/gのBET表面積を有する。それらが使用される場合、それらは本発明による組成物の粘度のさらなる増加を引き起こさないが、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0102】
疎水性は、電解質が組成物中に溶解し、相分離を回避するために必要とされてもよい。非導電性フィラー、特にヒュームドシリカは、必要な疎水性を組成物に与え、したがって、電解質の溶解性を向上させ、相分離を防止する。さらに技術データにより、非導電性フィラーの存在は組成物の初期接着特性を向上させることが示されている。
【0103】
フィラーとして、より大きいBET表面積、有利には100~250m/gを有する発熱性および/または沈殿ケイ酸を使用することも同様に考えられる。より大きいBET表面積のため、より少ない重量割合のケイ酸で、硬化組成物を強化する効果が達成される。
【0104】
また、非導電性フィラーとして適しているのは、鉱物シェルまたはプラスチックシェルを有する中空球体である。これらは、例えば、Glass Bubbles(登録商標)の商品名で市販されている中空ガラス球でもよい。Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)のようなプラスチック系の中空球を使用してもよく、欧州特許出願公開第0 520 426号明細書に記載されている。これらは無機または有機物質から成り、それぞれ1mm以下、好ましくは500μm以下、好ましくは100~200μmの直径を有する。
【0105】
組成物にチキソトロピーを付与する非導電性フィラーは、多くの用途で好ましい場合がある。このようなフィラーは、レオロジー助剤、例えば、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCのような膨潤性プラスチックとしても記載される。
【0106】
非常に好ましい実施形態において、本発明による組成物は、電気的非導伝性フィラーとしてヒュームドシリカを含む。
【0107】
組成物の各成分の所望の粘度、および2成分を合わせる際に形成される硬化性組成物の所望の粘度は、使用されるフィラーの量を決定することができる。その後者の考察を考慮すると、組成物中に存在するフィラー(電気的導電性および非導電性の両方)の総量は、組成物がチューブなどの適当な吐出装置から容易に押し出されることを妨げるべきではない。従来的に、そのような押し出し可能な硬化性組成物は、3000~150,000mPas、好ましくは40,000~80,000mPas、さらには50,000~60,000mPasの粘度を有することが望ましい。
【0108】
上記の粘度条件とは別に、前記電気的非導電性フィラーは、組成物の全重量に対して1~50重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは3~10重量%の量で存在することが好ましい。
【0109】
電気的非導電性フィラーの量は、50%より多いと接着特性が不十分となる場合があり、一方、主に1%より少ないと接着特性が不十分となり、かつ粘度の問題が生じる場合があるため、上記の電気的非導電性フィラーの量が好ましい。
【0110】
<電気的導電性フィラー>
上述したとおり、本発明の2液型(2K)組成物は、電気的導電性フィラーを含んでもよく、このフィラーは組成物の一方の成分または両成分に用いられてもよい。各成分における電気的導電性フィラーの存在、同一性および量は、独立して決定されるため、各成分について同じであっても異なっていてもよい。
【0111】
大まかには、導電性フィラーとして採用される粒子の形状を限定する意図は特になく、針状、球状、楕円状、円柱状、ビーズ状、立方体状または板状の粒子を単独または組み合わせて使用してもよい。さらに、2種類以上の粒子の凝集体を用いてもよいことが想定される。同様に、導電性フィラーとして採用される粒子の大きさを限定する意図は特にない。ただし従来的には、このような導電性フィラーは、レーザー回折/散乱法によって測定される1~500μm、例えば1~200μmの平均体積粒子径を有する。
【0112】
例示的な導電性フィラーは、銀;銅;金;パラジウム;白金;ニッケル;金被覆ニッケルまたは銀被覆ニッケル;カーボンブラック;炭素繊維;グラファイト;アルミニウム;酸化インジウムスズ;銀被覆銅;銀被覆アルミニウム;金属被覆ガラス球;金属被覆フィラー;金属被覆ポリマー;銀被覆繊維;銀被覆球;アンチモンドープ酸化スズ;導電性ナノ球;ナノ銀;ナノアルミニウム;ナノ銅;ナノニッケル;カーボンナノチューブ;およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。導電性フィラーとして、粒子状の銀および/またはカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0113】
特定の重要な実施形態では、電気的導電性フィラーは、組成物の全重量に基づいて、0.05~10重量%の量で組成物中に含まれるのが望ましい。好ましくは、組成物は、組成物の全重量に基づいて、0.1~5重量%、例えば0.5~4重量%または1~3重量%の電気的導電性フィラーを含む。
【0114】
電気的導電性粒子の量は、10%より多いと導電性は増加するが、同時に接着特性および剥離特性で不利になることがある一方、主に0.05%より少ない量では物理的な効果がなく、電解質の量を低減させることができないため、上記の電気的導電性粒子の量が好ましい。
【0115】
<強化剤>
本発明の組成物の一方の成分または両成分における強化剤の存在は有利であり得る。特に、本発明の組成物の第1成分は、好ましくは、エポキシ-エラストマー付加物;および、エポキシ樹脂マトリックス中に分散されたコア-シェル粒子の形態の強化ゴム;から選択される少なくとも1つの強化剤を含むことが望ましい。
【0116】
エラストマー含有付加物は、単独で用いてもよいし、2種以上の特定の付加物を組み合わせて用いてもよい。さらに、各付加物は、独立して23℃の温度において固体付加物または液体付加物から選択されてもよい。典型的には、有用な付加物は、エラストマーに対するエポキシの重量比が1:5~5:1、例えば1:3~3:1であることを特徴とする。そして、適当なエポキシ/エラストマー付加物に関する有益な文献は、米国特許出願公開2004/0204551号明細書である。さらに、本明細書で使用するための例示的な市販のエポキシ/エラストマー付加物は、CVC Chemical社から市販されているHYPDX RK8-4;および、Croda Europe Limited社から入手可能なB-Tough A3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
「コアシェルゴム」またはCSRという用語は、エラストマーまたはゴム状ポリマーを主成分として含むポリマーによって形成されるゴム粒子コアおよび、該コアにグラフト重合されるポリマーによって形成されるシェル層とを示すものとして、当技術分野におけるその標準的意味に従って用いられるものである。シェル層は、グラフト重合工程において、ゴム粒子コアの表面を部分的または全体的に覆う。重量で、コアは、コアシェルゴム粒子の少なくとも50重量%を構成することが望ましい。
【0118】
コアの高分子材料は、0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有することが望ましく、好ましくは、-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、さらにより好ましくは、-60℃以下のガラス転移温度(Tg)である。シェルのポリマーは、室温より上、好ましくは30℃より上、より好ましくは50℃より上のガラス転移温度(Tg)を有する非エラストマー、熱可塑性または熱硬化性ポリマーである。
【0119】
本発明を限定する意図はないが、コアは、ジエンホモポリマー、例えばブタジエンまたはイソプレンのホモポリマー;ジエンコポリマー、例えばブタジエンまたはイソプレンと1以上のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリレートなどとのコポリマー;(メタ)アクリル酸エステルモノマーに基づくポリマー、例えばポリブチルアクリレートなど;およびポリシロキサンエラストマー、例えば、ポリジメチルシロキサンおよび架橋ポリジメチルシロキサンなどを含んでよい。
【0120】
同様に本発明を限定する意図はないが、シェルは、(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレートなど;ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンなど;シアン化ビニル、例えばアクリロニトリルなど;不飽和酸および無水物、例えばアクリル酸など;および、(メタ)アクリルアミドから選択される1以上のモノマーのポリマーまたはコポリマーで構成されてよい。シェルに使用されるポリマーまたはコポリマーは、金属カルボキシレート形成、特に2価の金属カチオンの塩を形成することでイオン的に架橋された酸基を有していてよい。また、シェルポリマーまたはコポリマーは、1分子あたり2つ以上の二重結合を有するモノマーによって共有結合的に架橋されてもよい。
【0121】
いくつかの含まれるコアシェルゴム粒子が、10nm~300nm、例えば50nm~250nmの平均粒子径(d50)を有することが好ましい。前記粒子径は、粒子の分布における粒子の直径または最大寸法を表し、動的光散乱を介して測定される。完全を期すために、本出願は、得られる硬化物のせん断強度、剥離強度および樹脂破壊靭性などを含む主要特性のバランスをもたらすために、異なる粒度分布を有する2種類以上のコアシェルゴム(CSR)粒子が組成物中に存在することを排除しない。
【0122】
コア-シェルゴムは、市販の製品から選択することができ、その例としては、Paraloid EXL 2650A、EXL 2655およびEXL2691 A(Dow Chemical Company社製);Clearstrength(登録商標) XT100(Arkema Inc.社製);Kane Ace(登録商標) MXシリーズ、特にMX 120、MX 125、MX 130、MX 136、MX 551、MX553(Kaneka Corporation社製);および、METABLEN SX-006(三菱レイヨン社製)が挙げられる。
【0123】
強化剤は全体で、組成物の全重量に基づいて、0~15重量%の量、例えば1~10重量%の量で、組成物中に含まれることが望ましい。上記のものと相互に排他的であることを意図しない選択の代替表現では、強化剤は全体で、組成物の第1成分の0~20重量%、好ましくは2~15重量%を構成するのが望ましい。
【0124】
強化剤の量は、15%より多いと接着特性が不十分となることがあり、一方、主に1%より少量では剥離効果が不十分となり、かつ組成物がやわらかくなりすぎる場合があるため、上記の強化剤の量が好ましい。
【0125】
<添加剤および補助成分>
本発明で得られる前記組成物は、典型的には、これらの組成物に向上した特性を付与することができる助剤および添加剤をさらに含むであろう。例えば、助剤および添加剤は、向上した弾性特性;向上した弾性回復;より長い有効処理時間;より速い硬化時間;および、より低い残留タックの1つ以上を付与してもよい。このような助剤および添加剤(これらは互いに独立して、2液型(2K)組成物の一方の成分または両成分に含まれてもよい)に含まれるものは:可塑剤;紫外線安定剤を含む安定剤;抗酸化剤;反応性希釈剤;乾燥剤;接着促進剤;殺菌剤;難燃剤;レオロジー助剤;着色顔料または着色ペースト;および/または任意に、少量で非反応性希釈剤である。
【0126】
このような助剤および添加剤は、組成物の性質および本質的な特性に悪影響を及ぼさない限り、所望の組み合わせおよび割合で使用することができる。場合によっては例外も存在するが、これらの助剤および添加剤は、全体で組成物全体の50重量%を超えてはならず、好ましくは組成物の20重量%より多くを含むのは望ましくない。
【0127】
完全を期すために、一般に、反応性基を有する補助材料および添加剤は、それらの保存安定性を確保するために、2液型(2K)組成物の適切な成分に配合されることが留意される。非反応性材料は、2成分のどちらか一方または両方に配合されてよい。
【0128】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがって、その加工性を容易にする物質である。ここで、可塑剤は、組成物の全重量に基づいて、最大10重量%または最大5重量%を構成することができ、好ましくは、ジウレタン;単官能、直鎖または分岐のC4-C16アルコールのエーテル、例えばCetiol OE(Cognis Deutschland GmbH社製、Duesseldorf);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステルおよびクエン酸のエステル;ニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルからなるエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基含有またはエポキシ化脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエーテル可塑剤、例えば末端キャップポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなど;ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;および、これらの混合物からなる群から選択される。原則として、フタル酸エステルを可塑剤として使用することができるが、これらはその毒物学的な潜在性のために好ましくないことが留意される。
【0129】
本発明の目的のための「安定剤」は、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤または加水分解安定剤と理解される。ここで安定剤は、組成物の全重量に基づいて、全体で最大10重量%または最大5重量%を構成してよい。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な市販例としては、立体障害フェノール;チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;および、それらの混合物、が挙げられる。
【0130】
貯蔵寿命をさらに向上させるために、乾燥剤の使用による水分の浸透に関して、本発明の組成物をさらに安定化させることがしばしば推奨される。特定の用途のために本発明による接着剤組成物またはシーラント組成物の粘度を、反応性希釈液の使用により低下させる必要性も時折存在する。存在する反応性希釈液の総量は、典型的には、組成物の全重量に基づいて、0~15重量%、例えば0~5重量%である。
【0131】
本発明の組成物における溶媒および非反応性希釈剤の存在も、これがそれらの粘度を有用に調節し得る場合には、排除されない。例えば、例示に過ぎないが、組成物は1つ以上の以下のものを含むことができる。キシレン;2-メトキシエタノール;ジメトキシエタノール;2-エトキシエタノール;2-プロポキシエタノール;2-イソプロポキシエタノール;2-ブトキシエタノール;2-フェノキシエタノール;2-ベンジルオキシエタノール;ベンジルアルコール;エチレングリコール;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールジフェニルエーテル;ジエチレングリコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ジエチレングリコール-モノエチルエーテル;ジエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジ-n-ブチリルエーテル;プロピレングリコールブチルエーテル;プロピレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコール;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル;N-メチルピロリドン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;石油留分、例えば、Solvesso(登録商標)製品(Exxon社製);アルキルフェノール、例えばtert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールおよび8,11,14-ペンタデカトリエニルフェノールなど;スチレン化フェノール;ビスフェノール;芳香族炭化水素樹脂、特にフェノール基を含有するもの、例えばエトキシル化フェノールまたはプロポキシル化フェノールなど;アジペート;セバケート;フタレート;ベンゾエート;有機リン酸またはスルホン酸エステル;およびスルホンアミドなど。
【0132】
上記とは別に、前記非反応性希釈剤は、組成物の全重量に基づいて、全体で10重量%未満、特に5重量%未満または2重量%未満を構成することが好ましい。
【0133】
<2液型(2K)組成物の例示的な実施形態>
本発明の例示的な実施形態では、2液型(2K)接着剤組成物は、
前記組成物の重量に基づいて、
30~70重量%、好ましくは35~60重量%の前記エポキシ樹脂;
2~25重量%、好ましくは5~20重量%の前記電解質、ここで、前記電解質は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、およびそれらの混合物から選択される;および、
0~15重量%、好ましくは1.5~10重量%の可溶化剤、ここで、前記可溶化剤は、200~10000g/mol、例えば200~2000g/molの重量平均分子量を有するポリオキシ(C2-)アルキレングリコールを含む;
を含む第1成分、並びに、
分子当たり少なくとも2つのエポキシ反応性基を有する少なくとも1つの化合物からなる硬化剤、前記硬化剤は、エポキシ基に対して反応する少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンを含み、前記ポリアミンは、さらに、第1級アミン基および/または第2級アミン基を含み、第1級アミン基および/または第2級アミン基当たりの当量が150g/eq以下であることを特徴とする;
組成物の重量に基づいて、1~15重量%の促進剤、ここで、前記促進剤は、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、アミジン、グアニジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される;
を含む第2成分を含み、
さらに前記組成物は、1~50重量%、好ましくは2~25重量%の電気的非導電性フィラーを含むことを特徴とする。
【0134】
<方法および適用>
定義された2液型(2K)硬化性組成物を形成するために、その硬化を誘発するような方法で反応性成分を一緒にして、混合する。反応性化合物は、均一な混合物を得るために十分なせん断力の下で混合されるのが望ましい。これは、特別な条件や特別な装置なしに達成できると考えられている。そうではあるが、適切な混合装置としては、静的混合装置;磁気撹拌棒装置;ワイヤーウィスク装置;オーガー(augers);スピードミキサー;バッチミキサー;プラネタリーミキサー;C.W.BrabenderまたはBanburry(登録商標)スタイルのミキサー;および高せん断ミキサー、例えばブレードスタイルブレンダーおよび回転インペラなどが挙げられ得る。
【0135】
一般に2リットル未満の容量が使用される小規模用途の場合、2液型(2K)組成物の好ましい包装は、サイドバイサイドのダブルカートリッジまたは同軸カートリッジであり、このカートリッジでは、典型的には等しい容量の2つの管状チャンバ-が互いに並んでまたは互いに内部に配置されて、ピストンによって密封される。これらのピストンの駆動は、カートリッジから成分を押し出すことを可能にし、有利には密接して取り付けられた静的または動的ミキサーを通して押し出すことができる。大容量用途の場合、組成物の2成分は、有利にドラムまたはペール缶に保存される。この場合、2成分は油圧プレス、特にフォロワープレートによって押し出され、パイプラインを介して、2成分の微細かつ高度に均質な混合を保証できる混合装置へ供給される。いずれにせよ、どのようなパッケージであっても、成分が気密および湿気のない密閉状態で配置されることが重要であり、それによって両成分が長期間、理想的には12カ月以上保存できる。
【0136】
本発明に適し得る2液ディスペンシング装置および方法の非限定的な例としては、米国特許第6,129,244号および米国特許第8,313,006号に記載されているものが挙げられる。
【0137】
組成物の第1成分および第2成分は、通常、エポキシ基とエポキシ反応性基との所望の比率を達成する重量比で混合される。例として、前記第1成分と前記第2成分の重量比は、12:1~2:1、好ましくは10:1~2:1、例えば8:1~3:1または7:1~5:1の範囲であってよい。
【0138】
適用可能な場合、2液型(2K)硬化性組成物は、混合直後、例えば混合後2分までに測定される初期粘度が25℃で200000mPa・s未満、例えば100000mPa・s未満を示すように、広く、調製されるのが望ましい。前記粘度特性とは別に、またはこれに加えて、2液型(2K)組成物は、混合およびその後の硬化時に泡(フォーム)を含まないように調製されることが望ましい。
【0139】
本発明の最も広いプロセス態様に従って、上記の組成物は、材料層に塗布され、次にその場で硬化される。組成物を塗布する前に、関連する表面を前処理してそこから異物を除去することがしばしば望ましい。適用する場合、この工程は、そこへの組成物のその後の接着を促進し得る。そのような処理は、当技術分野で知られており、例えば、以下の1つ以上の使用により構成される一段階または多段階の方法で実施できる。基材に適した酸および任意選択で酸化剤を用いたエッチング処理;超音波処理;プラズマ処理、例えば、化学プラズマ処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理および火炎プラズマ処理を含む;水性アルカリ脱脂浴への浸漬;水性洗浄エマルジョンによる処理;四塩化炭素またはトリクロロエチレンなどの洗浄溶剤による処理;および、水、好ましくは脱イオン水または純水によるすすぎ。これらの例のうち、水性アルカリ脱脂浴を使用する場合、表面に残った脱脂剤を、脱イオン水または純水で基材表面をすすぐことにより除去することが望ましい。
【0140】
次に、組成物は、好ましくは前処理された基材表面に、以下のような従来の塗布方法によって塗布される。ブラッシング;例えば、組成物が無溶剤である場合には4塗布ロール装置、または溶媒含有組成物の場合には2塗布ロール装置を用いるロールコーティング;ドクターブレード塗布;印刷方法;および、限定されないが、空気原子化スプレー、空気補助スプレー、空気レススプレーおよび高容量低圧スプレーなどのスプレー方法。
【0141】
上記のように、本発明は、導電性表面を有する第1材料層;および、導電性表面を有する第2材料層を含み、本明細書上および添付の特許請求の範囲に定義される硬化した、かつ剥離可能な2液型(2K)接着剤組成物が、前記第1材料層および第2材料層との間に配置される接着構造体を提供する。このような構造を製造するには、接着剤組成物を第1材料層及び/又は第2材料層の少なくとも1つの内面に塗布し、その後続いて2つの層を場合により圧力下で接触させてよく、そのようにして電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物が2つの層の間に介在される。
【0142】
組成物は、10~500μmの湿潤膜厚で表面に塗布されることが推奨される。この範囲内でより薄い層を塗布することは、より経済的であり、有害な厚い硬化領域が生じる可能性の低減をもたらす。しかし、より薄いコーティングまたは層を塗布する際には、不連続な硬化膜の形成を回避するために、優れた制御を行わなければならない。
【0143】
本発明の塗布組成物の硬化は、典型的には、40℃~200℃、好ましくは50℃~175℃、特に75℃~175℃の範囲の温度で起こる。適切な温度は、存在する特定の化合物および所望の硬化速度に依存し、必要に応じて、簡単な予備試験を用いて、当業者によって個々の場合で決定され得る。もちろん、前記の範囲内のより低い温度での硬化は、混合物を通常一般的な周囲温度から実質的に加熱または冷却する必要性を排除するため、有利である。しかしながら、適用可能な場合には、2液型(2K)組成物の各成分から形成される混合物の温度を、マイクロ波誘導を含む従来の方法を用いて混合温度および/または塗布温度よりも上げてもよい。
【0144】
本発明は、以下の添付図面を参照して説明される。
【0145】
添付の図1aに示すように、硬化した接着剤の層(10)が2つの導電性基材(11)の間に配置された接着構造体が提供される。図1bに描かれるような、より複雑な接着構造体を形成するために、非導電性材料の層(12)が導電性基材(11)上に配置されてもよい。導電性基材(11)の各層は、バッテリーまたは直流(DC)のAC駆動源であってもよい電源(13)と電気的に接触している。その電源(13)の正および負の端子は、1つの固定された位置に示されているが、当業者はもちろん、システムの極性を反転できることを認識するであろう。
【0146】
2つの導電性基材(11)は、特に、金属フィルム;金属メッシュまたはグリッド;蒸着金属粒子;樹脂材料中に配置された導電性要素によって導電化された樹脂材料;または、導電性酸化物層、によって構成され得る層の形態で示されている。例示的な導電性要素としては、銀フィラメント、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブが挙げられる。例示的な導電性酸化物としては、酸化インジウムスズ(ITO)などのドープ酸化インジウム;ドープ酸化亜鉛;酸化アンチモンスズ;スズ酸カドミウム、および、スズ酸亜鉛が挙げられる。導電性材料の選択とは別に、当業者は、導電性基材(11)が、硬化した接着剤の層(10)との接触を制限するグリッドまたはメッシュの形態である場合、剥離操作の有効性が低下し得ることを認識するであろう。
【0147】
図2aおよび図2bに示すように、接着剤組成物(10)と正極と電気的に接触している導電性表面(11)との間の界面である正極界面で剥離が発生する。基材を分離する前に電流の向きを反転させることで、両基材の界面で接着結合が弱められ得る。
【0148】
しかし、接着剤層(10)の組成は、プラスまたはマイナスの界面のいずれか、もしくは両方から同時に剥離が発生するように調節でき得ることが留意される。いくつかの実施形態では、陽極界面および陰極界面を形成するように、両表面にわたって電圧を印加すると、陽極および陰極の接着剤/基材界面の両方で同時に剥離が発生する。別の実施形態では、組成物が両方の界面で直流に反応しない場合、両方の基材/接着剤界面を同時に剥離するために逆極性が使用され得る。電流は、剥離が起こるために各極性での十分な合計時間が許可されていれば、任意の適切な波形を適用することができる。その際、正弦波、矩形波および三角波が適切であり、制御された電圧源または制御された電流源から印加され得る。本発明を限定する意図はないが、以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは両方が起こされる場合に、剥離操作が効果的に行われ得ると考えられる。a)0.5~200Vの印加電圧;および、b)1秒~120分、例えば1秒~60分または1秒~30分の間、印加される電圧。硬化した接着剤からの導電性基材の剥離が、例えば、重りやバネを介した力の適用によって促進される場合、数秒オーダーの電位の適用を必要とするだけであり得る。
【0149】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0150】
実施例では、以下の材料を採用した。
Cab-O-Sil 720:ポリジメチルシロキサン(PDMS)で表面処理されたヒュームドシリカ(Cabot Corporation社から入手可能)。
Casiflux G20:粒子状ウォラストナイト(Sibelco社から入手可能)。
KBM-4803:8-グリシドオキシオクチルトリメトキシシラン(Shinetsu社から入手可能)。
EMIM-MS:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート(TCI America Inc.社から入手可能)。
B-Tough A3:エポキシ-シリコーンエラストマー付加物(Croda Europe Limited社から入手可能)。
DER 330EL:低粘度ビスフェノールAエポキシ樹脂(Olin社から入手可能
)。
DER 337:ビスフェノールAエポキシに基づく中間エポキシ当量半固形樹脂(Olin社から入手可能)。
DER 337-X80:キシレン中のビスフェノールAエポキシに基づく、中間エポキシ当量半固形樹脂(Olin社から入手可能)。
Jeffamine(登録商標)D-230:エーテル基含有脂肪族一級ポリアミン(Huntsman社から入手可能)。
PEG400:ポリエチレングリコール(Sigma Aldrich社から入手可能)。
2-ピペラジン-1-イルエタンアミン:3級アミン(Acros Organics社から入手可能)。
【0151】
<実施例1>
2液型(2K)組成物の(A)成分および(B)成分を、以下の表1に従い、独立して調製した。
【0152】
【表1】
【0153】
個々の成分(A、B)を50gカートリッジの別々の区画内に装填し、両端を密封した。その後カートリッジをカートリッジガンに装填し、前端にミキシングチップを取り付けた。トリガーに一定の圧力をかけることにより、2成分をミキシングチップ内へ押し出し、所定の基材に塗布する前に十分な混合を行った。
【0154】
基材はアルミニウム(AA6016)およびステンレス鋼(1.4301)であり、それぞれアルミニウムが1.25mm、鋼が1.5mm、銅が1mmの厚さであった。基材を、引張試験のために2.5cm×10cm(1インチ×4インチ)の大きさに切断した。引張ラップせん断(TLS)試験は、5ページに記載した試験方法に従い実施した。
【0155】
塗布された2液型(2K)接着剤組成物は、65℃の温度を120分間かけることにより、重なり合う領域で硬化された。その後、25℃、湿度20%の恒温室内にて保管した。
【0156】
各基材について、前記24時間の保管期間後に接着剤層にわたり50Vの定電圧を20分間印加する前と後の両方で、引張ラップせん断強度を調査した。その結果を、以下の表2に記載する。
【0157】
【表2】
【0158】
<実施例2>
接着したアルミニウム基材(AA6016)について、a)重ね合わせ接着領域にわたり定電圧(75V)を120分間印加した場合、およびb)重ね合わせ接着領域にわたり異なる電圧を各印加電圧において一定時間(30分間)印加した場合の2条件でラップせん断強度(MPa)を調査した。これらの調査結果を添付の図3aおよび図3bに示す。
【0159】
<実施例3>
実施例1の組成物について、安定性試験を実施した。この試験のために、通常のラップせん断サンプルを調製し、65℃で120分間硬化した。アルミニウムおよび鋼基材を使用した。その後、サンプルを25℃、湿度20%の恒温室内に保管した。
【0160】
1日後、7日後、14日後、21日後、30日後にラップせん断を測定した。その結果を、以下の表3に記載する。
【0161】
【表3】
【0162】
安定性の結果を図4に示す。図4は、アルミニウムおよび鋼に対する接着特性および剥離効果を示す。試験結果は、本発明による組成物が良好な初期接着特性を有し、経時的にそれを損なわないことを示す。また、本発明による組成物は、良好な初期剥離効果を有し、それを経時的に維持する。
【0163】
<実施例4>
以下の表4に従い、2液型(2K)組成物の(A)成分および(B)成分を独立して調製した。
【0164】
【表4】
【0165】
組成物およびサンプルは、実施例1に記載したように調製した。結果を以下の表5に記載する。
【0166】
【表5】
【0167】
以上の説明と実施例から、当業者には、特許請求の範囲から逸脱することなくこれと同等の改変が可能であることは明らかであろう。
【0168】
<実施例5>
以下の表6に従い、2液型(2K)組成物の(A)成分および(B)成分を独立して調製した。
【0169】
【表6】
【0170】
組成物およびサンプルは、実施例1に記載したように調製した。その結果を以下の表7に記載する。
【0171】
【表7】
【0172】
<実施例6>
以下の表8に従い、2液型(2K)組成物の(A)成分および(B)成分を独立して調製した。
【0173】
【表8】
【0174】
組成物およびサンプルは、実施例1に記載したように調製した。その結果を以下の表9に記載する。
【0175】
【表9】
【0176】
以上の説明と実施例から、当業者には、特許請求の範囲から逸脱することなくこれと同等の改変が可能であることが明らかであろう。
【0177】
<実施例7>
組成物1aが電気的非導電性フィラー(ヒュームドシリカ)を含むのに対し、組成物1bが電気的非導電性フィラーを含まないという相違点を有する2つの2液型(2K)組成物を以下の表10に従い独立して調製した。
【0178】
【表10】
【0179】
組成物およびサンプルは、実施例1に記載したように調製した。結果を以下の表11に記載する。
【0180】
【表11】
【0181】
この結果は、非導電性フィラー、特にヒュームドシリカを使用することで、初期強度および剥離効果が向上することを示す。この結果は、図5にも示される。
【0182】
以上の説明および実施例から、特許請求の範囲から逸脱することなく、これと同等の改変が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
【国際調査報告】