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特表2023-507345寸法安定性、ワイプオン、半結晶性ポリエステルベースの接着剤化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】寸法安定性、ワイプオン、半結晶性ポリエステルベースの接着剤化合物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
C09J175/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536867
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2020084842
(87)【国際公開番号】W WO2021122091
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19216370.7
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】クックス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,カースティン
(72)【発明者】
【氏名】ローア,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンガー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴィヒ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】シュリーファース,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】カウリシュ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ジェニファー
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DA002
4J040EF111
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA09
4J040MA14
4J040MB02
(57)【要約】
本発明は、大部分が水および無溶剤であるように配合され、薄い接着剤フィルムの形態でワイプオンされることによって結合される基材と接触させることができ、特に植物繊維から得られる接着材料に適している、寸法安定性の接着剤化合物に関する。本発明による接着剤化合物の有機成分は、ポリエステルポリウレタンを主成分とし、そのポリエステルポリウレタンの少なくとも一部が半結晶性ポリエステルポリオールをベースとする。本発明はまた、接着剤化合物を基材との接触点にワイプすることによって、粘着性フィルムを平面基材、好ましくは紙に付与する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機成分が主にポリエステルポリウレタンからなり、そのポリエステルポリウレタンの少なくとも一部が半結晶性ポリエステルポリオールをベースとする寸法安定性の接着剤化合物であって、該ポリエステルポリウレタンは、飽和直鎖脂肪族である少なくとも8個の偶数メチレン基を有する末端ジカルボン酸から選択される1つ以上のジカルボン酸と、飽和直鎖脂肪族であり少なくとも1つのエーテル官能基を含む末端ジオールから選択される1つ以上のジオールを含んでなる反応混合物の重縮合によって得ることができるものである、接着剤化合物。
【請求項2】
ポリエステルポリウレタンは、ポリエステルポリオール、好ましくは半結晶性ポリエステルポリオールに少なくとも三官能性イソシアネートを添加し、少なくとも1つの一価アルコール、好ましくは少なくとも1つの脂肪族アルコール、特に好ましくは少なくとも1つの直鎖脂肪族アルコールでエンドキャップすることによって得ることができ、これらの各々は好ましくは主鎖中に24個以下の炭素原子を有するが、好ましくは主鎖中に少なくとも4個の炭素原子を有していることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤化合物。
【請求項3】
エンドキャッピングは、少なくとも4個だが10個未満、好ましくは8個以下の炭素原子を有する一価脂肪族、好ましくは直鎖脂肪族アルコールと、少なくとも10個、好ましくは12個、特に好ましくは少なくとも14個だが、24個以下の炭素原子を有する一価脂肪族、好ましくは直鎖脂肪族アルコールとの両方で行われることを特徴とする、請求項2に記載の接着剤化合物。
【請求項4】
前記少なくとも三官能性イソシアネートは脂肪族であり、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはペンタメチレンジイソシアネートの三量体から選択されることを特徴とする、請求項2および3のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項5】
半結晶性ポリエステルポリオール、好ましくはポリエステルポリウレタンが由来する全てのポリエステルポリオールは、5,000g/モル未満、好ましくは2,000g/モル未満だが、少なくとも500g/モルの数平均モル質量を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項6】
半結晶性ポリエステルポリオール、好ましくはポリエステルポリウレタンが由来する全てのポリエステルポリオールは、いずれの場合にもそれぞれのポリエステルポリオールの量に基づいて、少なくとも30mg/gKOH、好ましくは少なくとも60mg/gKOH、特に好ましくは少なくとも80mg/gKOHの水酸基価だが、好ましくは200mg/KOH未満、特に好ましくは140mg/gKOH未満、より特に好ましくは120mg/gKOH未満の水酸基価を有する、請求項1~5のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項7】
ポリエステルポリウレタンは、80℃における動的ブルックフィールド粘度(スピンドル27)が、少なくとも2,000mPas、好ましくは少なくとも3,000mPas、特に好ましくは少なくとも5,000mPasであるが、好ましくは140,000mPas未満、特に好ましくは60,000mPas未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項8】
半結晶性ポリエステルポリオールから得られるポリエステルポリウレタンの割合は、ポリエステルポリウレタンの全割合を基準として、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項9】
接着剤の有機成分を基準としたポリエステルポリウレタンの割合は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項10】
ポリエステルポリオール、好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコールに少なくとも三官能性イソシアネートを添加し、その後少なくとも1つの一価アルコール、好ましくは少なくとも1つの脂肪族一価アルコール、特に好ましくは少なくとも1つの直鎖脂肪族アルコールでエンドキャッピングすることによって好ましく得ることができる追加のポリエステルポリウレタンを含有し、そのそれぞれが好ましくは主鎖に24個以下の炭素原子だが、好ましくは主鎖に少なくとも4個の炭素原子を有する、請求項1~9のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項11】
接着剤化合物の有機成分に基づいて、ポリエーテルポリウレタンの割合は40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、極めて特に好ましくは15重量%以下だが、好ましくは2重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項12】
有機成分の割合は、接着剤化合物を基準として、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項13】
5重量%未満、好ましくは1重量%未満の水を含有することを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項14】
a)少なくとも50重量%のポリエステルポリウレタンであって、その少なくとも一部は半結晶性ポリエステルポリオールに由来し、このポリエステルポリウレタンは、順に、少なくとも8個の偶数メチレン基を有する飽和直線脂肪族末端ジカルボン酸から選択される1以上のジカルボン酸と少なくとも1個のエーテル官能基を含む直線脂肪族末端ジオールから選択される1以上のジオールを含んでなる反応混合物の重縮合によって得ることができる;
b)最大50重量%、好ましくは5~30重量%のポリエーテルポリウレタン;
c)最大20重量%、好ましくは1~10重量%のポリオレフィンワックス;
d)最大5重量%の粘着剤;および
e)最大5重量%のポリアルコキシル化C12-C22脂肪アルコール、
を含有し、
いずれの場合も、有機成分に基づいており、有機成分の割合は、接着剤化合物に基づいて少なくとも80重量%を超えず、顔料、充填剤および塩から選択される無機成分の割合は、接着剤化合物に基づいて20重量%を超えない、好ましくは15重量%を超えない、および
ここで、接着剤化合物に基づいて、5重量%未満、好ましくは1重量%未満の水が含まれる、請求項1~13のいずれかに記載の接着剤化合物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の寸法安定性接着剤化合物を平面基材に押し付け、続いて基材の表面法線に垂直に接触圧力を維持しながら相対位置を変化させることによる、粘着性フィルムを平面基材に、好ましくは紙に塗布する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大部分が水および無溶剤であるように配合され、薄い接着フィルムの形態でワイプオンする(摺り付ける、wiped on)ことによって結合される基材と接触させることができ、特に植物繊維から得られる接着材料に適している、寸法安定性の接着剤化合物(接着剤コンパウンド、adhesive compound)に関する。本発明による接着剤化合物の有機成分は、主に、その少なくとも一部が半結晶性ポリエステルポリオールをベースとするポリエステルポリウレタンからなる。本発明はまた、接着剤化合物を基材との接触点にワイプすることによって、粘着性フィルムを平面基材、好ましくは紙に付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤化合物の薄膜が接触点にワイプオンされることによって基材に転写されるように使用される寸法的に安定な接着剤化合物は、先行技術で知られており、例えば接着紙用スティックのりにおいて、長い間実施されてきた。WO99/51699A1は、滑らかにワイプオンすることができるが寸法的に安定であり、接着剤成分としてのデンプンエーテルおよびスクロースの水性調製物、および成形ビルダー物質としての石鹸ゲル、および必要に応じてさらなる助剤からなるスティックのりを記載している。薄膜がワイプオンされた後、そのような接着剤化合物は、水の損失によってのみ、したがって純粋に物理的な方法で硬化する。そのような接着剤化合物の長期間にわたる適用性(塗布性)を確実にするために、接着剤化合物が乾燥するのを防ぐ必要があり、これは、適切な、主に水蒸気不透過性の包装手段の選択によって可能になる。包装手段は、しばしば同時に、接着剤化合物が充填される剛性構造として、寸法的に安定しているアプリケーターであり、その結果、寸法的に安定な接着剤化合物の調製物においてより大きな自由度もある。DE10047069A1は、水ベースの寸法安定性スティックのり用のこのようなアプリケーターについて説明している。
【0003】
対照的に、水を含まない、寸法的に安定な接着剤化合物も知られており、これらは同様にワイプオンすることができるように配合されている。WO96/37566A1は、ポリエステルおよび/またはポリウレタンに基づく半結晶性で寸法的に安定な接着剤化合物を記載しており、その半結晶性構造は、基材面で摩擦により放出される熱によって破壊され、その結果、薄い接着剤フィルムを適用できる。しばらくすると、再び半結晶領域を形成し、このようにして基材を設定して結合できる。前記文書では、結晶化度を変更するかまたは粘着性を高める、または顔料、充填剤、可塑剤、染料、抗酸化剤および防腐剤である様々な添加剤が、特性プロファイルを改善するためにそのような接着剤化合物に添加される。原則として、WO刊行物に開示されている接着剤化合物は、主に包装せずに市場に出すのに、そして特別なアプリケーターなしに手動で基材、特に紙に塗布するのにすでに適している。
【0004】
ただし、このようなほとんど水や溶剤を含まない、寸法的に安定した接着剤化合物は、アプリケーション固有、消費者固有、および環境衛生の側面を含む複雑な要件プロファイルを満たす必要がある。この目的のために、摩擦によって活性化できる寸法的に安定した接着剤化合物の特性プロファイルは、消費者市場で包装のない販売単位を確立できるようにするためにさらに改善されなければならない。この文脈では、フラット基材上の粘着性フィルムの形で簡単にワイプオンすることができ、フラット基材が接着剤フィルムを介して互いに対して相対的な位置に固定できる十分な初期粘着性を有する調製物を見つけることが重要であり、そして正確に配置された方法で短時間で硬化し、その過程で可能な限り長持ちする凝集結合(cohesive bond)を形成する。理想的には、接着剤化合物は、植物繊維から得られる材料の接着に適している。この特性プロファイルは、接着剤化合物が取引で慣習的で一般的な使用方法で保管された後でも保持されることも意図されている。
【0005】
消費者の側では、アプリケーターなしに手で直接基材にワイプオンすることができる寸法的に安定した接着剤化合物は粘着性がないこと、皮膚が接着剤化合物で汚れないこと、および皮膚適合性が確保されることも期待される。消費者はまた、スティックの形のそのような接着剤化合物が、使用時にワックスクレヨンのように基材上を案内され得、そしてその過程で連続接着剤フィルムが塗布され得ることを期待する。フラット基材上の接着剤化合物は、わずかな労力でワイプオンできる必要がある。これにより、接着剤を塗布したときに紙などの柔軟な薄い基材が歪んだり破れたりすることがなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/51699号
【特許文献2】独国特許出願公開第10047069号明細書
【特許文献3】国際公開第96/37566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、全体として、本発明は、水および溶媒を含まず、皮膚に優しいように配合でき、しかも別個のアプリケーターなしで容易に塗布できる、寸法的に安定なワイプオン接着剤化合物を提供するという問題に対処する。この目的は特にワイピング耐性が低く、接着剤化合物が30℃で恒久的に粘着性がなく、理想的には半透明であることを目的としている。保管および輸送には、最大70℃の温度安定性も必要である。とりわけ、接着剤化合物は、植物繊維から得られる材料、特に紙や板紙に対して高い接着強度を有することを意図している。さらに、接着剤でワイプオンされた接着性フィルムは、十分な初期接着力を生み出すことを意図しているため、ユーザーは、十分な接着を実現するために、硬化するまで基材を押して接着させる必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、この範囲の問題は、有機成分がポリエステルポリウレタンを含んでなり、その少なくとも一部が半結晶性ポリエステルポリオールをベースとする接着剤化合物を配合することにより解決される。
【0009】
したがって、本発明は、有機成分が主にポリエステルポリウレタンからなり、その少なくとも一部が半結晶性ポリエステルポリオールをベースとする寸法安定性接着剤化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明でいう半結晶性ポリエステルポリオールとは、飽和直鎖状かつ脂肪族で少なくとも8個の偶数メチレン基を有する末端ジカルボン酸から選択される1つ以上のジカルボン酸(以下「成分A」という)と、飽和直鎖状かつ脂肪族で少なくとも1個のエーテル官能基を含む末端ジオールから選択される1つ以上のジオール(以下「成分B」という)を含む反応混合物を重縮合して得ることができるものである。
【0011】
半結晶性ポリエステルポリオールに関連して、ジカルボン酸またはジオールは、酸素原子を除けば、炭素原子と水素原子のみで構成されている場合、脂肪族とみなされる。「ジカルボン酸」という用語には、対応する単一または二重のメチルエステルおよび/またはエチルエステル、ならびに対応する単一または二重の酸クロリドも含まれる。この文脈では、末端ジカルボン酸または末端ジオールの場合、2つのカルボキシル基とヒドロキシル基がそれぞれ末端にあることも適用される。
【0012】
脂肪族化合物は、第3級および第4級炭素原子を含まない直鎖状であり、1つの炭素原子が他の4つの炭素原子と共有結合していれば第4級、第3級炭素原子は他の3つの炭素原子と共有結合している。
【0013】
半結晶性ポリエステルポリポールをベースとする本発明に従って必ず含まれるポリエステルポリウレタンは、DIN EN 1238:2011に従って測定されるその環球軟化点より低い結晶相を有し、その相は、軟化点に達する前に吸熱融解ピークとして毎分10ケルビン以下の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)によって検知される。
【0014】
特定の実施形態では、溶融時に再結晶する半結晶性ポリエステルポリオールをベースとし、1つまたは複数のジカルボン酸と1つまたは複数のジオールを含む反応混合物の重縮合によって得ることができるポリエステルポリウレタンが配合される。
a)ジカルボン酸の少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に好ましくは少なくとも70モル%は、飽和直鎖脂肪族である少なくとも8個の偶数メチレン基を有する末端ジカルボン酸から選択される(以下「成分A」);および
b)ジオールの少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも60モル%、特に好ましくは少なくとも70モル%は、飽和直鎖脂肪族でありかつ少なくとも1つのエーテル官能基を有する末端ジオールから選択される(以下「成分B」)。
【0015】
このような溶融時に再結晶する半結晶性ポリエステルポリオールは、軟化点に達する前の吸熱溶融過程、すなわち液相への転移前に発熱性再結晶が起こることにより区別されるため、軟化点に達する前に毎分10ケルビン以下の加熱速度で示差走査熱量計(DSC)により吸熱溶融ピークに重畳する発熱性結晶化ピークも検出され得る。溶融時に再結晶化する対応する半結晶性ポリエステルポリオールは、WO2019/011529A1に詳細に記載されている。本発明の文脈において、本発明による接着剤化合物の成分として、溶融時に再結晶化するこれらの半結晶性ポリエステルポリオールに基づいて製造されたポリエステルポリウレタンは、高温安定性とともに優れたワイピング挙動を与える。したがって、接着剤の軟化点が大幅に低下することなく、接着すべき基材への接着剤薄膜の塗布が容易になり、包装のない、寸法的に安定した接着剤が、最終消費者によって使用に粘着性があると認識される。
【0016】
ポリエステルポリウレタンに60℃を超える軟化点を与え、したがって接着剤のワイピングを向上させるために添加剤の添加を必要とする半結晶性ポリエステルポリオールを使用しないために、成分Aによるジカルボン酸は24個を超えるメチレン基、特に好ましくはから18個以下のメチレン基、より特に好ましくは16個以下のメチレン基を有さないことが好ましく、これとは独立して、成分Aによるジカルボン酸は、再結晶する顕著な傾向のために、接着剤化合物のポリエステルポリウレタンの基礎として優れたワイピング特性を与えるそれらの半結晶性ポリエステルポリオールを提供するために、好ましくは少なくとも10個のメチレン基を含む必要がある。したがって、成分Aによるジカルボン酸の好ましい代表例は、1,10-デカメチレンジカルボン酸、1,12-ドデカメチレンジカルボン酸、1,14-テトラデカメチレンジカルボン酸および1,16-ヘキサデカメチレンジカルボン酸である。
【0017】
接着剤化合物のタック性(粘着性)を改善するためには、芳香族ジカルボン酸または9個未満の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸と、好ましくは少なくとも1つのエーテル官能基を有するが、第3級および第4級炭素原子を有しない脂肪族ジオールとの重縮合から得られるポリエステルポリオールに基づくそれらのポリエステルポリウレタンが含まれていると有利であり得る。芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、フランジカルボン酸、特に2,5-フランジカルボン酸を特に挙げることができ、炭素原子数9個未満の不飽和ジカルボン酸としては、ポリエステルポリウレタンのポリエステルポリオール成分として接着剤化合物に含まれることもあるイタコン酸、フマル酸及び/又はマレイン酸を挙げることができる。
【0018】
しかしながら、全体として、半結晶性ポリエステルポリオールに基づくポリエステルポリウレタンの割合がポリエステルポリウレタンの全体に基づいて優勢であると、本発明による接着剤化合物のワイピング挙動および温度安定性のために有利である。本発明によれば、本発明による接着剤化合物に含まれる全てのポリエステルポリウレタンのポリエステルポリオール割合を基準にして、成分Aに従ってエステル官能基の加水分解によってポリエステルポリウレタンから形式的に分離できるジカルボン酸および成分Bに従って分離できるジオールの割合は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である場合である。
【0019】
いずれの場合も成分AおよびBを含んでなる反応混合物1グラム当たり、好ましくは50mgKOH/g未満、特に好ましくは10mgKOH/g未満、より特に好ましくは5mgKOH/g未満、非常に特に好ましくは2mgKOH/g未満の酸価を有し、成分AおよびBの反応混合物から得られる半結晶性ポリエステルポリオール(ここで、ジオールはジカルボン酸に基づいてモル過剰で含まれるが1.2:1のモル過剰を超えない)は、上記のポリエステルポリウレタンの出発材料として、本発明による接着剤化合物の再結晶化挙動の点で理想的であることが証明されている。
【0020】
酸価は、本発明によれば、実験的に決定可能な測定変数であり、例えば反応混合物1グラム当たりの、関連する定義された基準量における遊離酸基の数に対する指標である。酸価は、基準量の秤量試料をメタノールと蒸留水の体積比3:1の混合溶媒に溶解し、当該試料をメタノール中の0.05mol/l KOHで電位差滴定することにより決定される。電位差測定は,複合電極(Methrom製LL-Solvotrode(登録商標),参照電解質:0.4mol/l エチレングリコール中の臭化テトラエチルアンモニウム)を用いて電位差測定を行う。この場合の酸価は、電位差滴定曲線の変曲点における基準量1gあたりのKOHの添加量に相当する。
【0021】
このような半結晶性ポリエステルポリオールへの単官能または多官能イソシアネートの付加を介してポリエステルポリウレタンを提供するために、ポリエステルポリオールの水酸基価は、いずれの場合も成分AおよびBを含んでなる反応混合物1グラム当たり、少なくとも30mg/gKOH、特に好ましくは少なくとも60mg/gKOH、より特に好ましくは少なくとも80mg/gKOHだが、好ましくは200mg/gKOH未満、とりわけ好ましくは140mg/gKOH未満、より特に好ましくは120mg/gKOH未満であれば、好ましい。
【0022】
酸価と同様に、水酸基価は、例えば反応混合物1グラムあたりの、関連する定義された基準量における遊離水酸基の数の尺度として、電位差滴定法により実験的に決定することが可能である。このため、基準量の秤量試料をピリジン中0.1mol/l無水フタル酸の反応溶液中で130℃、45分間加熱し、脱イオン水(κ<1μScm-1)の反応溶液の1.5倍量と混合する。この混合物中のフタル酸の放出量を1M水酸化ナトリウム溶液で滴定する。電位差測定は、複合電極(Methrom製LL-Solvotrode(登録商標);参照電解質:0.4mol/l エチレングリコール中の臭化テトラエチルアンモニウム)を用いて電位差測定を行う。この場合の水酸基価は、電位差滴定曲線の変曲点における基準量1gあたりのNaOHの添加量に相当する。
【0023】
上記で定義した成分A及びBを含む反応混合物から得ることができる半結晶性ポリエステルポリオールは、好ましくは5,000g/mol未満、特に好ましくは2,000g/mol未満だが、より好ましくは少なくとも500g/molの数平均モル質量を有し、多分散性が好ましくは2.5未満である。このモル質量範囲で、好ましい多分散性を有するポリエステルポリウレタンは、このようなポリエステルポリウレタンの少なくとも50重量%からなる本発明による接着剤化合物を容易にワイプオンすることができ、前記化合物に良好な粘着性とともに十分な温度安定性を与えることができる。数平均モル質量は、反応混合物のサンプルを用いて、ポリスチレン標準物質で校正した後、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定できる。このため、カラムオーブン温度40℃において、テトラヒドロフランで溶出するクロマトグラフィーが行われ、溶出液中の屈折率を連続的に測定する濃度依存型RI検出器によって、同様に40℃の温度で分布曲線が記録される。
【0024】
本発明による接着剤化合物のポリエステルポリウレタンは、ポリエステルポリオールとの単官能性または多官能性イソシアネートの付加生成物であり、付加生成物はエンドキャップされており、したがって遊離イソシアネート基を有さない。本発明によれば、ポリエステルポリオールのヒドロキシル基に対するイソシアネート基のモル比が2より大きい、好ましくはが2.5より大きいが、好ましくはが4未満、特に好ましくは3.5未満となるように付加が行われる場合が好ましい。エンドキャッピングは一価アルコールで行われることが好ましい。本発明の意味において、ポリエステルポリウレタンは、ポリエステルポリウレタンの総量に基づいて、それが0.1重量%未満のNCOを含む場合、遊離のイソシアネート基を含まない。遊離イソシアネート基の割合を決定するために、キシレン中の0.5Mジブチルアミン溶液4ミリリットルを1グラムのポリエステルポリウレタンに添加し、その後、50ミリリットルのキシレンと混合し、完全に均質化するまで20℃の温度で攪拌した。ブロモフェノールブルー3滴とイソプロパノール50ミリリットルを加えた後、色が青から黄色に変わるまで0.5M塩酸で滴定を行う。ブランク値溶液の滴定のための塩酸の消費量の差、すなわち、ポリエステルポリウレタンを添加しない場合、値2.1を掛け、ポリエステルポリウレタンの正確な重量で割ると、イソシアネート基の重量パーセントが得られる。
【0025】
本発明によれば、ポリエステルポリウレタンは、少なくとも三官能、特に脂肪族のイソシアナート、特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはペンタメチレンジイソシアネートのトリマーから選択されたものを、ポリエステルポリオールに、好ましくは半結晶性ポリエステルに添加することにより得られることが好ましく、付加反応で形成された遊離イソシアネート基は、好ましくは少なくとも1つの一価アルコールと反応し、特に好ましくは少なくとも1つの脂肪族アルコールと反応し、より特に好ましくは少なくとも1つの線状脂肪族アルコールと反応し(以下「エンドキャッピング」)、それぞれが好ましくは主鎖に24個以下の炭素原子を有するが、好ましくは主鎖に少なくとも4個の炭素原子を有する。粘着性を高めるためには、主鎖に少なくとも4個の炭素原子だが8個未満の炭素原子を有する一価の脂肪族アルコールでエンドキャッピングを行うと有利であり、一方、主鎖に少なくとも12個の炭素原子だが24個未満の炭素原子を有する一価の、好ましくは線状の脂肪族アルコールでエンドキャッピングを行うと接着剤化合物の温度安定性が増加する。長鎖と短鎖のエンドキャップ型ポリエステルポリウレタンの相対的な比率によって、特定の用途に必要な粘着性と温度安定性を、特定の更なる添加剤に応じて、またこれらの存在によって、設定できる。本発明による接着剤化合物の好ましい実施形態では、ポリエステルポリウレタンは、少なくとも4個だが、10個未満、好ましくは8個以下の炭素原子を有する一価脂肪族、好ましくは線状脂肪族アルコールと、少なくとも10個、好ましくは少なくとも12個、特に好ましくは少なくとも14個だが、24個以下の炭素原子を有する一価脂肪族、好ましくは線状脂肪族アルコールの両方でエンドキャップされる。
【0026】
また、80℃における動的ブルックフィールド粘度(スピンドル27)が、少なくとも2,000mPas、特に好ましくは少なくとも3,000mPas、より特に好ましくは少なくとも5,000mPasだが、好ましくは140,000mPas未満、特に好ましくは60,000mPas未満のポリエステルポリウレタンもまた、好ましく使用される。より低い好ましい範囲の動的粘度を有するポリエステルポリウレタンは、通常、エンドキャップが長鎖一価アルコールで少なくとも部分的に行われるか、半結晶性ポリエステルポリオールに二価イソシアネートが少なくとも部分的に付加されることにより達成される。
【0027】
そして、本発明による接着剤化合物の有機成分は、その割合が接着剤化合物の有機成分を基準にして50重量%超であれば、主にポリエステルポリウレタンからなるものである。接着剤化合物は、通常、接着剤化合物の有機成分に基づいて、上記のようなポリエステルポリウレタンの割合が、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%であると、良好なワイピング挙動とともに特に優れた温度安定性を示すため、かかる接着剤化合物が本発明によれば好ましい。
【0028】
ポリエステルポリウレタンを介して本発明による接着剤化合物に付与される優れたワイピング挙動、ならびに温度安定性および良好な硬化挙動により、添加剤の広範囲な添加はほとんど必要ない。それでも、ワイプオンされたフィルムの初期タック性を大きく損なうことなく、温度安定性をさらに向上させることができる。この目的のために、好ましくはポリエステルポリオール、特に好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコールに少なくとも三官能性イソシアネートを添加し、次に少なくとも1つの一価アルコール、好ましくは少なくとも1つの脂肪族アルコール、特に好ましくは少なくとも1つの直鎖脂肪族一価アルコールであって、それぞれが主鎖に24個以下の炭素原子を持っているが好ましく主鎖に少なくとも4個の炭素原子を有するものでエンドキャップすることによって得ることができるポリエステルポリウレタンは、添加剤で処理することができる。特定の実施形態において、前記少なくとも三官能性イソシアネートは、上記の半結晶性ポリエステルポリオールの混合物に添加でき、この混合物はさらにポリエーテルポリオールをも含む。その結果、ポリエステルポリオールの割合が、付加反応の反応混合物のポリオール割合を基準にして50重量%超であれば、本発明による接着剤化合物の要求プロファイルも満たし、優れた温度安定性とともに良好なワイプ性を付与する混合ポリエステル-ポリエーテルポリウレタンが得られる。
【0029】
本発明による好ましい接着剤化合物における、接着剤化合物の有機成分を基準としたポリエーテルポリウレタンの割合は、40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、非常に特に好ましくは15重量%以下であるが、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%であり、これは、無色半透明な接着剤化合物を得ることができるようにするためである。
【0030】
以下に列挙するのは、以下にさらに規定する特定の要求プロファイルを満たす接着剤化合物を提供するために、本発明による接着剤化合物に有利に添加できる、さらなる添加剤およびその関連の官能基である。本発明による接着剤化合物の利点の一つは、それに応じて、ポリエステルポリウレタンを主成分とする接着剤化合物に添加剤を加えることが容易であることである。
【0031】
接着剤化合物のワイプオンフィルムの初期粘着性を高めるために、例えば、本発明による接着剤化合物を基準として、ポリエステルポリウレタンまたはポリエーテルポリウレタンではない粘着剤を5重量%まで追加的に含有することが有利であり得る。初期接着力を大幅に向上させるためには、接着剤化合物を基準として、少なくとも1重量%の割合の粘着剤が好ましい。このような粘着剤は、好ましくは、当該有機化合物1gあたり100mgKOHを超える水酸基価および酸価の和を有する有機化合物である。粘着剤は、好ましくは樹脂であり、持続的に入手可能であり、環境衛生に関してほぼ無害であることから、化学修飾が可能な天然樹脂であることが好ましい。本発明によれば、DIN 55958による天然樹脂は、動物および植物が分泌する排泄物を含んでなる。この種の樹脂は、当業者には、例えば、ターペンタイン、バルサム、ガムラッカー、ロジン、サンダラックまたはマスチックとして知られている。本発明によれば、天然樹脂には、天然樹脂から例えば水素添加、固有付加反応またはエステル化によって得られる変性天然樹脂も含まれる。本発明による接着剤化合物の成分a)としての天然樹脂は、順に、好ましくは樹脂酸および/または樹脂エステルから、特に好ましくはジ-および/またはトリテルペンに基づく樹脂酸および/または樹脂エステルから選ばれ、これらは好ましくは水素添加されており、および/または内在する付加生成物として存在する。本発明によれば、樹脂エステルとは、樹脂酸のカルボキシル基を介して、縮合反応により1回または数回変性され、エステル基が形成された樹脂酸を指す。ジテルペン系樹脂酸及び/又は樹脂エステルの好ましい代表は、適宜、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、レボピマール酸、ピマール酸、パルストリック酸、アガテン酸、イルル酸及びポドカルピン酸であり、トリテルペン系樹脂酸はエレミック酸、スマレシノール酸及びそのモノ又はポリエステルで、各場合ともエステル基のアルキル基に6以下の炭素原子を有することが望ましい。粘着剤を使用することで、紙面に薄膜で塗布された後に接着剤化合物の初期粘着力が高まり、例えば折り紙(a paper fold)の反対側を接着する際に、接着剤が固まるまで接触圧力をかけずに接着剤フィルムでつながれた紙面がつながれたまま維持される。
【0032】
少量のポリオレフィンワックスは、その大部分が非極性であるため、接着剤化合物の初期接着に好影響を与えることもある。さらに、ポリオレフィンワックスは、結合のより良い長期安定性をもたらすので、本発明に従って、それぞれの場合に接着剤化合物を基準にして、好ましくは20重量%まで、特に好ましくは10重量%までのポリオレフィンワックスを含むことができ、それぞれの場合に接着剤化合物を基準にして、少なくとも1重量%、特に少なくとも2重量%の割合が大きな効果をもたらすのに好ましい。ポリオレフィンワックスをさらに含む本発明による接着剤化合物の好ましい実施形態では、これらは、プロピレンおよびエチレンからなるコポリマーワックスおよび/または4~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの分岐または非分岐1-アルケンから選ばれ、さらに接着剤化合物との適合性を改善するためにカルボキシル基で修飾でき、酸価はポリオレフィンワックスのグラム当たり20mgKOH未満であることが好ましい。また、添加剤処理されたポリオレフィンワックスが非晶質であり、したがって20℃から軟化点までの範囲において結晶性を有しないことも有利な点である。初期接着性に加えて、ポリオレフィンワックスは接着剤化合物の弾性を高めるので、例えば、本発明による対応する添加剤処理された接着剤化合物に基づくグルースティックは、破損しにくいものを提供でき、これは、本発明による接着剤化合物の包装なしの投与および適用形態の場合、特に有利となる。
【0033】
接着剤化合物を包装せずに塗布し、接着剤フィルムを手でワイプオンしたときに粘着性が不快すぎると感じられる本発明による接着剤化合物の場合、発熱性ケイ酸を接着剤化合物に基づいて15重量%の量まで添加することが好適であり得るが、初期接着性、ワイプ性及び硬化挙動などの他のパラメータを維持しながら、寸法的に安定な投与形態の粘着性を低減するために、粘着性の顕著な低減のために少なくとも1重量%の発熱性ケイ酸は、好ましくは添加剤で処理することが必要である。
【0034】
平坦な基材上への接着剤化合物のワイピングを改善するために、接着剤化合物が、好ましくは12~18の範囲のHLB値を有し、特に好ましくはポリアルコキシル化C12~C22脂肪アルコールから、非常に特に好ましくは、好ましくは20超のEO単位を有するポリエトキシル化C12~C22脂肪アルコールから選択される、5重量%までのノニオン性界面活性剤をさらに含むことも有利であり得る。ワイピングを大幅に向上させるためには、接着剤化合物を基準として、非イオン性界面活性剤が少なくとも0.5重量%の割合であることが好ましい。
【0035】
本発明による接着剤化合物は、無溶媒および無水であるように配合でき、接着剤化合物の硬化(setting)により、接着された接続部は、溶媒または水の物理的な損失を必要としない点で区別される。好ましい実施形態では、したがって、本発明による接着剤化合物は、接着剤化合物を基準として、5重量%未満、好ましくは1重量%未満の水を含む。接着剤化合物中の水の割合は、溶媒キシレンを用いたカールフィッシャー法により測定できる。このような本発明による実質的に水を含まない接着剤化合物製剤は、例えば紙などの吸水性材料の薄くて平坦な基材上に接着剤フィルムをワイプオンした後、前記接着剤化合物が硬化した後でも前記材料が反り返らず、その平坦形状を維持するという利点を有する。さらなる好ましい実施形態において、本発明による接着剤化合物は、それぞれの場合に接着剤化合物を基準にして、1013mbarで100℃未満の沸点を有する有機化合物を、5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、含有する。
【0036】
特に好ましい実施形態では、本発明による接着剤化合物は、
a)少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%、より特に好ましくは少なくとも80重量%のポリエステルポリウレタンであって、その少なくとも一部は半結晶性ポリエステルポリオールに由来し、飽和直鎖および脂肪族であって少なくとも8個のメチレン基の偶数を有する末端ジカルボン酸から選択される1つ以上のジカルボン酸と、飽和直鎖および脂肪族であって少なくとも1つのエーテル官能基を含む末端ジオールから選択される1つ以上のジオールを含む反応混合物の重縮合によって得ることができる、
b)50重量%まで、好ましくは5~30重量%のポリエーテルポリウレタン;
c)20重量%まで、好ましくは1~10重量%のポリオレフィンワックス;
d)5重量%までの粘着剤;および
e)5重量%までのポリアルコキシル化C12-C22脂肪アルコール、
を含み、
それぞれの場合において有機成分を基準にし、有機成分の割合は接着剤化合物を基準にして少なくとも80重量%を超えず、および顔料、充填剤および塩から選択される無機成分の割合は接着剤化合物を基準にして20重量%、好ましくは15重量%を超えない、および
接着剤化合物を基準として、5重量%未満、好ましくは1重量%未満の水を含有する。
【0037】
この特に好ましい実施形態に関連して、上に挙げた成分a)~e)およびさらなる添加剤の具体的な構成が類推される。
【0038】
本発明によれば、無機成分は、触媒または他の添加剤を混ぜることなく、900℃のCOフリー酸素気流を供給しながら反応炉で熱分解し、赤外線センサーが反応炉の出口でCOフリーキャリアガスと同一の信号(ブランク値)を与えるまで熱分解した後に残る接着剤化合物の固形分に相当する。これに対応して、接着剤化合物の有機成分は、接着剤化合物から、溶媒キシレン中でカールフィッシャー法により測定した水の量を差し引き、さらに上記で定義した無機成分を差し引いたものである。
【0039】
本発明において、接着剤化合物は、円柱を形成すように成形され、2cmの底面を有する調製物の質量(a mass)(10g)が、30℃、50%の相対湿度において、円柱の底面に垂直に前記質量に絶えず増加する力が作用するとき、20N/cm超の圧力でのみ不可逆的に変形し、原則として寸法安定である。力の作用と変形の発生の測定は、力測定装置、例えばテクスチャーアナライザーTA-XT HiR(Stable Micro Systems Ltd.)によってモニターできる。寸法安定性の概念は、本発明による接着剤化合物の要求される温度安定性と密接に関連しており、具体的には、DIN EN ISO 4625-1:2006-04に従って測定した環球軟化点が、好ましくは少なくとも40℃、特に好ましくは少なくとも60℃、しかし好ましくは150℃未満、特に好ましくは100℃未満の接着剤化合物が、30℃で寸法安定な接着剤化合物を提供できる程度に温度安定であると見なされる。理想的には、本発明による接着剤化合物の有機成分の少なくとも80重量%は、可能な限り寸法安定性および温度安定性の高い接着剤化合物を提供するために、DIN EN ISO 4625-1:2006-04に従って測定した環球軟化点が、好ましくは少なくとも40℃、特に好ましくは少なくとも60℃である。
【0040】
本発明により提供される寸法安定性接着剤化合物は、30℃におけるタック性が低く、基材へ容易にワイプオンすることができる。ワイピングによる材料の移動は、平坦な基材上に接着剤化合物の薄い粘着性の膜を形成するように行われ、この膜は短時間で硬化するので、基材は接着剤化合物に十分に接着して互いに結合させることが可能である。
【0041】
したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明による寸法的に安定な接着性化合物を平面基板に押し付け、その後、基板の表面法線に垂直な接触圧力を維持しながら相対位置を変えることによって、平面基板、好ましくは紙に粘着性フィルムを塗布する方法に関する。好適な基材は、植物繊維から得られるものが好ましく、平面的で柔軟性があり、特に紙であることが好ましい。
【実施例
【0042】
実用例:

以下では、まず半結晶性ポリエステルポリオールの混合物の調製について概説し、次にそれを対応するポリエステルポリウレタンに変換し、そのようにキャストして本発明による円筒形の寸法的に安定した接着剤化合物を形成し、ワイピング挙動および紙の接着に関して特性評価した。
【0043】
ポリエステルポリオールの混合物の調製:

窒素導入口、サーモスタット、パドルスターラー、蒸留アームを備えた5リットル四つ口フラスコに、原料のイソフタル酸0.369kg、ドデカン二酸1.876kg、ジエチレングリコール1.421kgを入れた。反応混合物を窒素気流中、温度220℃で数時間加熱攪拌した後、反応フラスコ内の圧力を徐々に30mbarまで減圧した。酸価は、本発明の説明で詳細に説明するように、連続的に制御した。反応混合物に対して酸価が3mgKOH/gの値を下回るとすぐに、まず反応混合物を80℃まで冷却し、および冷却し、その後、反応混合物を室温までさらに冷却させた。その後、最終的に20℃で酸価および水酸基価を測定し、その混合物をクロマトグラフィーで特性評価した。水酸基価は102mgKOH/g;酸価は0.3mgKOH/g、および50℃における動的粘度は1,900mPasであった。
【0044】
ポリエステルポリウレタンの混合物Aの調製:

51.8gのn-オクタノールと170gのイソシアネート三量体Desmodur(登録商標)N3300(Covestro AG)を三口フラスコに入れ、80℃に加熱して30分間撹拌した後、165gのポリエステルポリオール混合物と48.7gのヘキサデカノールを加えて、反応混合物を最初は100℃で1時間、次に110℃で約1時間半、最後に300mbarの減圧で更に10分間攪拌した。
【0045】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるクロマトグラフィー特性評価のため、反応混合物のサンプルをテトラヒドロフランで溶解してカラムに適用し、その後テトラヒドロフランでも溶出させた。ポリスチレン標準試料による校正後、RI検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を、カラムオーブン温度40℃、検出器内温度40℃の条件で実施した。モル質量分布曲線から相対的な数平均モル質量値と重量平均モル質量値を求め、そこから多分散度を決定した。
【0046】
ポリエステルポリウレタンの混合物Aは、数平均モル質量が約3,700g/molで、多分散度が3.6であった。
【0047】
ポリエステルポリウレタンの混合物Bの調製:

n-オクタノール51.8g、イソシアネート三量体Desmodur(登録商標)N3300 170gおよびポリエステルポリオール混合物165gを三口フラスコに入れ、100℃に加熱して30分間撹拌した後、ヘキサデカノール48.7gを加え、反応混合物を110℃で2時間撹拌した。ポリエステルポリウレタンの混合物Bは、数平均モル質量が約3700g/molで、多分散度が8.4であった。
【0048】
ポリエステルポリウレタンの混合物AとBを110℃で溶融し、円柱状のスティック状(直径2cm、長さ6~8cm)にキャストして20℃で24時間保存した後、スティック状接着剤化合物の取り扱い挙動とワイプオンされた接着剤フィルムの特性を測定した。
【0049】
円筒形スティックを10°切り込み、切断面を介して、目付80g/m、面圧5N/cmで紙上にワイプした後のワイピングは、混合物Aは値「4」、混合物Bは値「3」(目盛り1:硬くて消しゴム並みのワイピング、5:ヘンケル社製プリット(登録商標)オリジナルスティック並)であった。
【0050】
ワイピング試験により接着剤フィルムを設けたグラム数80g/mの紙シートを接合し、接着のために折り畳み、20℃で1時間後に再び引き離した後に求めた紙破れは、両混合物とも値「5」(1:紙破れなし、2:30%未満、3:60%未満、4:90%未満、5:90%超の接着部に紙破れが見られる)であった。
【0051】
DIN EN ISO 4625-1:2006-04に準拠した環球法を用いて測定した、接着剤化合物、又はポリエステルポリウレタンの混合物A及びBの軟化点は、66℃(混合物A)及び64℃(混合物B)であった。このように、接着剤化合物は十分に温度安定性があり、無包装で提供することが可能であった。
【国際調査報告】