(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(54)【発明の名称】ジエステル系物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20230216BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/82 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514796
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2021011082
(87)【国際公開番号】W WO2022108049
(87)【国際公開日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153934
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チュー、イェオン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ソン フーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヒョウン
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ、ユン ゴン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006BB14
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD20
4H006BD30
4H006BD33
4H006BD60
4H006KA06
(57)【要約】
本発明は、ジエステル系物質の製造方法に関し、より詳しくは、第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含むジエステル系物質の連続式製造工程で行われ、前記反応ユニットはジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器を含み、前記第1反応ユニットの反応器によりジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは下部排出ラインを介して後段反応ユニットに供給するステップと、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインに連結される液相供給ラインを介して液相物質を供給するステップとを含む、ジエステル系物質の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含むジエステル系物質の連続式製造工程で行われ、
前記反応ユニットはジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器を含み、
前記第1反応ユニットの反応器によりジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは下部排出ラインを介して後段反応ユニットに供給するステップと、
前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインに連結される液相供給ラインを介して液相物質を供給するステップとを含む、ジエステル系物質の製造方法。
【請求項2】
前記第1反応ユニットにおける前記ジカルボン酸の投入量および前記アルコールの総投入量のモル比は1:2~1:5である、請求項1に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項3】
前記液相物質は、前記アルコールまたは第2反応ユニット~第n反応ユニットのうち何れか1つ以上の反応ユニットの反応器の下部排出ストリームである、請求項1または2に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項4】
前記液相物質は、前記アルコールまたは最後段反応ユニットの反応器の下部排出ストリームである、請求項3に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項5】
前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインの任意の領域にはポンプが備えられ、
前記液相供給ラインは前記ポンプの前段に連結される、請求項1から4のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項6】
前記液相供給ラインに供給される液相物質の流量は、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの流量の0.1%~15%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項7】
前記液相供給ラインに供給される液相物質の流量は、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの流量の1%~8%である、請求項6に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項8】
前記第1反応ユニットの反応器での転換率は10%~80%である、請求項1から7のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項9】
前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量は3体積%~20体積%である、請求項1から8のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項10】
前記第1反応ユニットの反応器の運転温度は130℃~250℃である、請求項1から9のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項11】
前記反応ユニットは、前記反応器からエステル化反応中に気化した前記アルコールおよび水を含む反応器の上部排出ストリームの供給を受けて気液分離を行い、気相は前記上部排出ストリームとして凝縮器を通過させて層分離器に供給し、液相は下部排出ストリームとして前記反応器に供給するカラムと
水層とアルコール層に分離させ、前記アルコールのみを前記カラムに還流させ、前記水は除去する層分離器とをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項12】
前記nは2~8である、請求項1から11のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【請求項13】
前記ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、前記アルコールは2-エチルヘキシルアルコールを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のジエステル系物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月17日付けの韓国特許出願第10-2020-0153934号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ジエステル系物質の製造方法に関し、より詳しくは、連続式によりジエステル系物質を製造する際、反応生成物を含む反応器の下部排出ストリーム中に未反応物が累積して配管およびポンプなどが詰まるのを防止することができる、ジエステル系物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フタレート系可塑剤は、20世紀まで世界の可塑剤市場の92%を占めており、主にポリ塩化ビニル(PVC)に柔軟性、耐久性、耐寒性などを付与し、溶融粘度を下げて加工性を改善するために用いられる添加物であって、PVCに多様な含量で投入され、硬いパイプのような硬質製品から、柔らかくてよく伸長する食品包装材、血液バッグ、および床材などに使用可能な軟質製品に至るまで、その如何なる材料よりも実生活と密接な関わりを有しており、人体との直接的な接触が不可避な用途として広く用いられている。
【0004】
しかしながら、フタレート系可塑剤のPVCとの相溶性および優れた軟質付与性にもかかわらず、最近、フタレート系可塑剤が含有されたPVC製品の実生活での使用時、製品の外部に少しずつ流出され、内分泌系障害(環境ホルモン)推定物質および重金属水準の発癌物質として作用し得るという有害性の論難が提起されている。特に、1960年代、米国で、フタレート系可塑剤のうちその使用量が最も多いジ(2-エチルヘキシル)フタレート(di-(2-ethylhexyl)phthalate、DEHP)が、PVC製品の外部に流出されるという報告が発表されて以来、1990年代に入ってからは環境ホルモンに対する関心がさらに増し、フタレート系可塑剤の人体有害性に対する多様な研究が行われ始めた。
【0005】
そこで、多くの研究者らは、ジエステルベースのフタレート系可塑剤、特に、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートの流出による環境ホルモン問題および環境規制に対応するために、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートから代替可能な、環境に優しい可塑剤の開発および工程を改善するために研究を進行しつつある。
【0006】
一方、前記ジエステルベースの可塑剤を製造する工程は、大部分の産業現場で回分式工程が適用されており、回分式工程として、反応器内の未反応物の還流および副反応物の効率的な除去のためのシステムが開発された。しかし、前記回分式工程によりジエステルベースの可塑剤を製造することは、還流量やスチーム量の改善に限界があり、生産性が非常に低く、問題を改善するために適用可能な技術的限界がある状態である。
【0007】
また、上述した問題を有する回分式工程の問題を解決するために、ジエステルベースの可塑剤の製造時、2器以上の反応器を直列に連結して反応部を構成している工程が開発された。しかし、この場合、反応の完了後に生成物だけが移送されていた回分式工程とは異なり、連続式工程は、複数の反応器を直列または並列に連結して用いることで、次の反応器に移送する際、生成物だけでなく、未反応物もともに混ざってスラリー状で移送されるため、前記1番目の反応器での反応生成物中には未反応物の含量が高い。これにより、1番目の反応器から排出される反応生成物を移送する配管およびポンプに、スラリー流れ中に固体の未反応物が累積して後段の反応器に移送するのに流れ性が低下し、このため、配管が詰まりやすくて運転周期が短くなるという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、前記発明の背景となる技術において言及した問題を解決するために、可塑剤として環境に優しいジエステル系物質を連続式工程により製造するが、第1反応ユニットの反応器から排出される反応生成物を後段の反応器に移送するのに流れ性を改善させ、これにより、配管およびポンプのメンテナンス期間を延長することができる、ジエステル系物質の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含むジエステル系物質の連続式製造工程で行われ、前記反応ユニットはジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器を含み、前記第1反応ユニットの反応器によりジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは下部排出ラインを介して後段反応ユニットに供給するステップと、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインに連結される液相供給ラインを介して液相物質を供給するステップとを含む、ジエステル系物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ジエステル系物質を連続式工程により製造する際、第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインに液相供給ラインを連結して液相物質を供給することで、反応器に供給されるスチーム量の増加なしに、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの線速度を限界速度以上に増加させて流れ性を改善することができる。
【0011】
また、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームを移送する配管およびポンプに未反応物が累積するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図6】比較例に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【
図7】比較例に係るジエステル系物質の製造方法に対する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「上部」は、容器内の装置の全体高さから50%以上の高さに該当する部分を意味し、「下部」は、容器内の装置の全体高さから50%未満の高さに該当する部分を意味し得る。
【0015】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程中の流体(fluid)の流れを意味し得るし、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記ストリームは、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)および液体(liquid)などを意味し得る。前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0016】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明について
図1~
図5を参照してより詳細に説明する。
本発明によると、ジエステル(Diester)系物質の製造方法が提供される。前記製造方法は、
図1を参照すると、第1反応ユニット10から第n反応ユニットn0までの総n個の反応ユニット10、20、n0が直列に連結された反応部を含むジエステル系物質の連続式製造工程で行われ、前記反応ユニットはジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器11、21、n1を含み、前記第1反応ユニット10の反応器11によりジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは下部排出ライン11aを介して後段反応ユニットに供給するステップと、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ライン11aに連結される液相供給ラインL1を介して液相物質を供給するステップとを含むことができる。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記ジエステル系物質は、第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式製造工程で行われることができる。
【0018】
具体的に、従来は、ジエステル系物質を製造するにおいて、回分式製造工程が適用された。しかし、前記回分式工程によりジエステル系物質を製造することは、還流量やスチーム量の改善に限界があり、生産性が非常に低く、問題を改善するために適用可能な技術的限界がある。
【0019】
また、上述した問題を有する回分式工程の問題を解決するために、ジエステル系物質の製造時、2器以上の反応器を直列に連結して反応部を構成している連続式製造工程が開発された。しかし、この場合、反応の完了後に生成物だけが移送されていた回分式工程とは異なり、連続式工程は、複数の反応器を直列または並列に連結して用いることで、次の反応器に移送する際、生成物だけでなく、未反応物もともに混ざってスラリー状で移送されるため、第1反応ユニットの反応器から排出される反応生成物および未反応物を後段の反応器に移送するのに流れ性が低下し、このため、配管が詰まりやすくて運転周期が短くなるという問題があった。
【0020】
これに対し、本発明においては、前記ジエステル系物質を製造するにおいて、連続式製造工程を適用し、反応器に供給されるスチーム量を節減し、目的とする転換率に容易に達するとともに、従来の連続式製造工程の問題である、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームを移送する配管およびポンプに未反応物が累積して発生する流れ性の問題および運転周期の短縮の問題を解決した。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記反応ユニットは、ジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器を含むことができる。
前記エステル化反応は、ジカルボン酸、アルコールを反応器に供給し、触媒の存在下でジカルボン酸とアルコールが直接エステル化反応することができる。このように、ジカルボン酸とアルコールのエステル化反応により、ジエステル系物質および副産物として水が発生することになる。前記直接エステル化反応を行うことができる運転温度、運転圧力、時間、触媒の種類、および含量は、当業界に適用される一般的な条件をそのまま適用するか、または、場合によっては、工程の運営に適切に調節して適用することができる。
【0022】
前記ジカルボン酸およびアルコールは、反応器に供給する前にプレミキサーを介して混合して混合物として一括投入するか、またはそれぞれの別のラインを備えて反応器に一括投入することができる。
【0023】
前記ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;およびアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸からなる群から選択された1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記ジカルボン酸は、固体であってもよく、より具体的な例として、テレフタル酸であってもよい。
【0024】
前記アルコールは、例えば、炭素数4~13、5~12、または6~10の1価アルコールであってもよい。例えば、前記1価アルコールは、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、第2級ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、iso-オクチルアルコール、iso-ノニルアルコール、n-ノニルアルコール、iso-デシルアルコール、n-デシルアルコール、ウンデシルアルコール、トリデシルアルコールなどの直鎖または分岐鎖アルコールを含むことができる。具体的な例として、前記アルコールは、2-エチルヘキシルアルコールであってもよい。
【0025】
前記アルコールは、前記ジカルボン酸と反応するのに必要な化学量論量と対比して過剰量で反応器に供給されることができる。例えば、前記エステル化反応において、前記ジカルボン酸とアルコールのモル比は、1:2~1:5または1:2~1:4.5であってもよい。前記反応器に反応物としてジカルボン酸とアルコールを前記範囲のモル比で供給することで、スチーム使用量を最小化しつつエステル化反応の定反応速度を増大させ、目的とする転換率に容易に達することができる。
【0026】
前記触媒は、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの酸触媒;テトライソプロピルチタン酸塩、テトラブチルチタン酸塩、テトラ-2-エチルヘキシルチタネートなどのアルキルチタネート触媒;およびジブチル酸化スズ、ブチルスズマレートなどの有機金属触媒からなる群から選択された1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記触媒としては、アルキルチタネートに代表される有機チタン化合物を用いることができ、これにより、エステル化反応速度を増加させ、反応時間を短縮させることができる。
【0027】
前記反応器の運転温度は、例えば、130℃~250℃、160℃~240℃、または190℃~230℃であってもよい。この際、前記反応器の運転温度は、第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器を個別的に意味し得る。より具体的に、前記第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器は、前記温度範囲内で同一にまたは個別的に制御することができる。
【0028】
前記反応器の運転圧力は、0kg/cm2G~5.5kg/cm2G、0kg/cm2G~3kg/cm2G、または0kg/cm2G~2kg/cm2Gであってもよい。この際、前記反応器の運転圧力は、第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器を個別的に意味し得る。より具体的に、前記第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器は、前記圧力範囲内で同一にまたは個別的に制御することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記ジカルボン酸はテレフタル酸であり、前記アルコールは2-エチルヘキシルアルコールであってもよい。このように、テレフタル酸と2-エチルヘキシルアルコールを触媒の存在下で反応器に投入してエステル化反応させる場合、ジエステル系としてジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)が製造されることができる。前記ジオクチルテレフタレートは、環境に優しく、無毒性の可塑剤として広く用いられている物質であって、PVCなどの高分子材料との相溶性に優れ、低揮発性および電気特性に優れた特徴を有することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記反応部は、総n個の反応ユニットが直列に連結されて構成されたものであって、反応の転換率の制御および各ユニット反応での滞留時間などを考慮し、達成しようとする製品の組成を考慮して設計されることができる。例えば、前記nは、2~8、3~7、または4~6、すなわち、前記反応部は、2個~8個、3個~7個、または4個~6個の反応ユニットを含むことができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記反応ユニット10、20、30、40、n0は、前記反応器11、21、31、41、n1から、エステル化反応中に気化したアルコールおよび水を含む反応器の上部排出ストリームの供給を受けて気液分離を行い、気相は上部排出ストリームとして凝縮器13、23、33、43、n3を通過させて層分離器14、24、34、44、n4に供給し、液相は下部排出ストリームとして反応器11、21、31、41、n1に供給するカラム12、22、32、42、n2と、水層とアルコール層に分離させ、アルコールのみをカラムに還流させ、水は除去する層分離器14、24、34、44、n4とをさらに含むことができる。
【0032】
前記反応器においては、ジカルボン酸とアルコールのエステル化反応により、反応生成物であるジエステル系物質と、エステル反応に伴う副産物として水が生成されることができる。例えば、前記エステル化反応の反応生成物は、ジエステル系物質、水、および未反応物を含むことができる。
【0033】
前記エステル化反応の正反応速度を増加させるためには、副産物である水を効果的に除去させ、水による逆反応および触媒の不活性化を防止しなければならない。これに対し、前記副産物である水を除去させる方法として、水を気化させて排出する方法がある。この際、前記水の気化時、水と沸点が類似したアルコールもともに気化することになるが、気化するアルコールは回収して再び反応器に還流させて反応器内の反応物の濃度を高く維持し、水は除去することができる。
【0034】
具体的に、前記反応器においては、エステル化反応が行われるにつれ、アルコールが反応に参加するが、反応に参加せずに、アルコールの沸点以上にエステル化反応が起こることにより気化するアルコールが必然的に存在し得るとともに、反応生成物であるジエステル系物質の他に副産物として水が発生し、水はアルコールとともに気化して反応器の上部排出ストリームとして排出されることができる。前記気化した水およびアルコールは、反応器の上部排出ストリームとして排出され、カラムに供給することができる。
【0035】
前記カラムにおいては、反応器から流入された気相のアルコールおよび水が層分離器からカラムの上部に供給される低温の液相アルコールにより液化することができ、大部分の気相アルコールが選択的に液化してカラムの下部排出ストリームとして排出され、前記液相アルコールを含むカラムの下部排出ストリームは再び反応器の上部に投入され、前記液相アルコールはエステル化反応に再び参加することができる。
【0036】
このように、前記反応器の上部排出ストリームをカラムに通過させることにより、反応器の上部排出ストリームに含まれた水が凝縮された後に再び反応器に投入されるのを防止することで、正反応速度を向上させることができる。
【0037】
また、前記反応器から気化していたアルコールを反応器に再び還流させることで、反応器内でアルコールの過量率を維持することができ、エステル化反応の副産物である水を反応システムの外部に排出させて除去することで、反応器内に水が還流されるのを防止し、反応器内での反応速度の低下および触媒の性能低下を防止することができる。
【0038】
一方、前記カラムにおいて気相の水および液化していない気相のアルコールは、カラムの上部排出ストリームとして排出され、前記カラムの上部排出ストリームは、凝縮器を通過して層分離器に供給されることができる。具体的に、前記層分離器は、液相のアルコールおよび水が層分離される設備であり、このことから、層分離器においてまたは層分離器に投入前に、気相のアルコールおよび水は液化する必要がある。これにより、前記カラムの上部排出ストリームが層分離器に移送されるラインの任意の領域に凝縮器が設けられ、気相のアルコールおよび水の熱を凝縮器を介して除去することで、層分離器に投入前に液化させることができる。
【0039】
前記層分離器内の層分離は、アルコールおよび水の密度差により行われることができる。具体的な例として、前記アルコールの密度は水よりも低いため、層分離器の上部にはアルコール層が形成され、下部には水層が形成されることができる。このように、前記層分離器において水層とアルコール層を分離した後、前記アルコール層からカラムの上部に連結されたラインを介してアルコールのみを選択的に分離し、カラムに還流させることができる。この際、場合によっては、前記層分離器のアルコール層からカラムの上部に連結されたラインから分岐したラインを介してアルコールの一部を除去することができる。また、水層から外部に排出される排出ラインを介して水を除去するか、または多様なルートで再活用することができる。
【0040】
前記カラムにおいて凝縮されて温度が下がったアルコールが反応器に還流されることで、反応器の内部温度が減少するため、反応器の内部温度を維持するために、高圧スチームまたは高温スチームなどのエネルギー供給により反応器内に熱量を別に供給しなければならない。前記高圧スチームは、高い圧力による平衡温度(高温)を有するため、高圧スチームの供給により反応器内に熱量を供給することができる。
【0041】
前記反応器での反応生成物は反応器の下部排出ストリームを介して分離され、前記第1反応ユニット~第n-1反応ユニットの反応器それぞれの下部排出ストリームはそれぞれの反応ユニットの後段反応ユニットの反応器に供給することができ、最後段反応ユニットの反応器の下部排出ストリームは分離精製して製品化することができる。例えば、4個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含んでジエステル系物質を製造する際、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームは第2反応ユニット20の反応器21に、第2反応ユニット20の反応器21の下部排出ストリームは第3反応ユニット30の反応器31に、第3反応ユニット30の反応器31の下部排出ストリームは第4反応ユニット40の反応器41に供給し、第4反応ユニット40の反応器41の下部排出ストリームは分離精製して製品化することができる。
【0042】
前記反応ユニット10、20、30、40、n0それぞれの反応器の下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に移送するか、または後続の分離精製工程に移送するために、それぞれの反応器の下部排出ライン11a、21a、31a、41a、n1aにはポンプ15、25、35、45、n5が備えられることができる。
【0043】
前記最後段反応ユニットの反応器の下部排出ストリームに含まれたジエステル系物質は、公知の方法により精製することができる。例えば、有機チタン化合物を触媒としてエステル化を行った場合には、得られたジエステル系物質に水を加えて触媒を不活性化させた後に水蒸気で蒸留し、残留している未反応アルコールを蒸発除去することができる。また、アルカリ性物質で処理して残留ジカルボン酸を中和することができる。また、濾過により固形物を除去することで、高純度のジエステル系物質を得ることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記ジエステル系物質の連続式製造工程において、第1反応ユニットの反応器によりジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは、下部排出ラインを介して後段反応ユニットに供給することができる。
【0045】
具体的に、前記第1反応ユニット10の反応器11での転換率は10%~80%、10%~70%、または10%~60%であり、反応生成物を含む反応器の下部排出ストリーム中の未反応物であるジカルボン酸の含量は、後段反応ユニットと比べて高い。この際、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量は、転換率に応じて異なるが、例えば、3体積%~20体積%、3体積%~18体積%、または3体積%~15体積%であってもよい。このように、前記反応器の下部排出ストリーム中の未反応物の含量が高い場合、反応器の下部排出ストリームが移送される配管およびポンプに未反応物が累積し得るし、累積した物質による流れ性の低下により移送に問題が生じ、停滞時間が長くなることによって配管およびポンプなどが詰まりやすいという問題がある。前記配管およびポンプが詰まる場合には、運転を停止(シャットダウン、shut down)し、配管およびポンプを解体して洗浄しなければならない。この場合、洗浄のための時間が長くかかり、臨時使用のポンプおよび配管の使用が難しい場合には、運転が停止する時間が増加することになり、経済的損失および生成される製品に対する単価上昇の問題につながる。
【0046】
これに対し、本発明においては、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ライン11aの任意の領域に液相供給ラインL1が連結され、前記液相供給ラインL1を介して液相物質を供給することで、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの線速度を流体中の固体成分が配管およびポンプに累積する限界速度以上に増加させて流れ性を改善し、配管およびポンプが詰まるのを防止して配管およびポンプのメンテナンス期間を延長することができる。この際、前記限界速度は、流体中の固体成分が累積し始める速度であって、スラリー限界速度と関わる経験式により決定されることができる。具体的に、前記限界速度は、Durand式を用いることができ、Rheologyベースの経験式を参照して計算することができる。この際、前記固体成分の平均粒子大きさおよび密度、体積分率、流体の温度などを変数として適用して計算することができる。
【0047】
前記液相供給ラインL1は、例えば、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ライン11aに設けられたポンプ15の前段に連結されることができる。具体的に、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ライン11aの任意の領域にはポンプが備えられており、前記液相供給ラインL1は、前記ポンプの前段に連結されることができる。この場合、ポンプを通過する前に、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリーム中の未反応物であるジカルボン酸の体積分率を下げ、線速度を増加させ、ポンプを用いて後段反応器への移送が円滑であるとともに、ポンプおよび配管が詰まるのを防止することができる。
【0048】
前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ライン11aにおいて、液相供給ラインL1が連結された地点とポンプが備えられた地点との間の任意の領域には、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームと液相物質をさらに効果的に混合させるための混合装置がさらに備えられることができる。前記混合装置の種類は、特に限定されず、例えば、ラインミキサー(line mixer)などの装置を用いることができる。
【0049】
前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームに液相供給ラインL1を介して供給される液相物質を混合することで、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリーム中の固相の未反応物であるジカルボン酸の含量が下がり、これにより、固体の体積分率が下がることができる。前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの固体分率および流速を制御することで、後段反応ユニットの反応器への流れ性を改善し、配管およびポンプが詰まるのを防止してメンテナンス期間を延長することができる。
【0050】
前記液相供給ラインL1を介して供給される液相物質は、目的とする転換率への到達およびスチーム使用量に影響を及ぼさず、且つ、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの粘度を改善可能なものであってもよい。例えば、前記液相物質は、アルコールまたは第2反応ユニット~第n反応ユニットのうち何れか1つ以上の反応ユニットの反応器の下部排出ストリームであってもよい。より具体的な例として、前記液相物質は、アルコールまたは最後段反応ユニットの反応器の下部排出ストリームであってもよい。この際、アルコールの種類に関する具体的な説明は上述したものと同様であってもよい。
【0051】
前記液相物質として、第2反応ユニット~第n反応ユニットのうち何れか1つ以上の反応ユニットの反応器の下部排出ストリームを供給する場合、当該反応ユニットの反応器の下部排出ライン21a、31a、41a、n1aを分岐し、第1反応ユニットの反応器の下部排出ライン11aに連結する方法により供給することができる。
【0052】
前記液相物質としてアルコールを供給する場合、生成物であるジエステル系物質よりもアルコールの粘度が低いため、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの流速だけでなく、粘度の改善効果まで得ることができる。
【0053】
また、前記液相物質として第2反応ユニット~第n反応ユニットのうち何れか1つ以上の反応ユニットの反応器の下部排出ストリームを供給する場合、アルコールをさらに用いるのにかかる費用を節減させ、且つ、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの固体体積分率を下げ、流速を改善させるという効果がある。特に、最後段反応ユニットの反応器の下部排出ストリームは未反応ジカルボン酸の含量が非常に低い反応生成物であって、それを液相物質として供給する場合、改善効果に優れることができる。
【0054】
前記液相物質の供給流量は、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量および粘度を制御するために適切に調節することができる。例えば、前記液相供給ラインL1を介して供給される液相物質の流量(質量流量)は、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームの流量(質量流量)の0.1%~15%、1%~10%、または1%~8%であってもよい。前記液相供給ラインL1を介して供給される液相物質の流量は、前記範囲内で、第1反応ユニット10の反応器11での転換率を考慮して適切に調節することができる。前記範囲内の流量範囲で液相物質を供給することで、後段反応器でのアルコール過量率を増加させて反応性を増加させることができ、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームの移送中に未反応物が配管やポンプに累積するのを防止することができる。
【0055】
その反面、前記液相物質として、アルコールを第1反応ユニットの反応器に直接供給し正反応を促進させて転換率を増加させ、これにより、反応器の下部排出ストリーム中の未反応ジカルボン酸の含量を下げる方法も考慮することができる。この場合、第1反応ユニットの反応器に注入するジカルボン酸とアルコールの過量率が過度に増加し、反応器内の気化するアルコールの量と気化したアルコールがカラム、層分離器、カラムを経て反応器に再び還流される還流量の増加により反応器の加熱のために必要なスチーム量が増加し、工程全体の運転費用およびエネルギー費用が非効率的に上昇して製品原価競争力を低下させるという問題がある。
【0056】
場合によっては、前記第1反応ユニットは、2個以上の反応ユニットが並列に連結された構造として設けられることができる。前記2個以上の反応ユニットを並列に連結させて第1反応ユニットを構成する場合、ジカルボン酸およびアルコールは並列に連結された反応ユニットの反応器それぞれに供給されることができ、前記それぞれの反応器の下部排出ラインには、液相供給ラインL1が連結されることができる。例えば、前記第1反応ユニットは、求められる生産量に応じて、2個~4個または2個~3個の反応ユニットが並列に連結された構造として設けられることができる。この場合、装置の大きさを減らすことができるという効果がある。
【0057】
本発明の一実施形態によると、ジエステル系物質の製造方法においては、必要な場合、蒸留カラム、コンデンサ、リボイラ、バルブ、ポンプ、分離器、および混合器などの装置を追加的にさらに設けることができる。
【0058】
以上、本発明に係るジエステル系物質の製造方法を記載および図面に図示したが、上記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置の他に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明に係るジエステル系物質の製造方法を実施するために適切に応用して利用することができる。
【0059】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明しようとする。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは通常の技術者にとって明らかであり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0060】
実施例
実施例1~実施例7
図2に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0061】
具体的に、テレフタル酸(TPA)と2-エチルヘキシルアルコール(2-EH)を1:2~4.5のモル比に維持しつつ、200℃の温度で運転される第1反応ユニット10の反応器11に投入し、触媒の存在下で転換率を10%~70%に調節しつつエステル化反応させ、前記反応器11において気化する上部排出ストリームは、カラム12、凝縮器13、および層分離器14を用い、2-エチルヘキシルアルコールは反応器11に還流させ、水は除去した。また、前記反応器11において下部排出ライン11aを介して排出される反応生成物は、液相供給ラインL1を介して供給される2-エチルヘキシルアルコールと混合させた後、ポンプ15を通過して第2反応ユニット20の反応器21に供給した。
【0062】
前記第1反応ユニット10において運転される流れのように、第2反応ユニット20、第3反応ユニット30、および第4反応ユニット40を経て連続式で運転し、最後段の第4反応ユニット40の反応器41の下部排出ストリームを分離精製してジオクチルテレフタレートを得た。
【0063】
この際、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表1に示した。
【0064】
【0065】
表1~表5において、転換率は、第1反応ユニット10の反応器11において達した転換率を意味する。
また、TPAの含量は、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリーム中のテレフタル酸の体積分率を意味する。
【0066】
また、限界速度は、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリーム中にテレフタル酸が累積し始める速度であって、下記Durand式を用い、変数として、テレフタル酸の平均粒子大きさは100μmに、密度は1520kg/m3に設定し、第1反応ユニット10の反応器11の運転温度およびTPAの含量を代入して計算した。
【0067】
また、液相物質追加率は、液相供給ラインL1に供給される2-エチルヘキシルアルコールの流量を、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームの総流量と対比して百分率で示したものである。
【0068】
また、前記線速度は、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームと、液相供給ラインL1に供給される2-エチルヘキシルアルコールとが混合された混合ストリームの線速度を意味する。
【0069】
また、前記固体の累積有無は、線速度と限界速度を比較し、線速度が限界速度以下である場合にはO、線速度が限界速度を超過する場合には×で示した。
【0070】
実施例8~実施例13
前記実施例1において、第1反応ユニット10の反応器11の運転温度を200℃の代わりに215℃に制御し、第1反応ユニット10の反応器11での転換率を10%~60%に調節しつつ行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0071】
この際、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表2に示した。
【0072】
【0073】
前記表1および表2を参照すると、本発明に係る方法によりジエステル系物質を製造する際、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームを移送する下部排出ライン11aに液相供給ラインL1を連結して2-エチルヘキシルアルコールを供給する場合、第1反応ユニット10の反応器の下部排出ライン11aにテレフタル酸が累積するのを防止することができた。具体的に、本発明においては、第1反応ユニット10の反応器11の運転温度および転換率に応じて異なる下部排出ストリーム中の未反応物であるテレフタル酸の体積分率に応じて適切な流量の2-エチルヘキシルアルコールを供給することで、第1反応ユニット10の反応器の下部排出ライン11aにテレフタル酸が累積するのを防止して配管およびポンプが詰まるのを防止することができ、これにより、配管およびポンプのメンテナンス期間を延長可能であることが分かる。
【0074】
実施例14~実施例16
実施例14~実施例16は、それぞれ、
図3~
図5に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0075】
具体的に、前記実施例14~実施例16は、実施例1と同様の流れで製造するが、液相供給ラインL1を介して供給される液相物質として、実施例14は第2反応ユニット20の反応器21の下部排出ストリーム、実施例15は第3反応ユニット30の反応器31の下部排出ストリーム、および実施例16は第4反応ユニット40の反応器41の下部排出ストリームをそれぞれ分岐して供給した。
【0076】
この際、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表3に示した。
【0077】
【0078】
前記表3を参照すると、本発明に係る方法によりジエステル系物質を製造する際、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームを移送する下部排出ライン11aに液相供給ラインL1を連結し、液相物質として第2反応ユニット~第n反応ユニットのうち何れか1つ以上の反応ユニットの反応器の下部排出ストリームを供給する場合にも、液相物質として2-エチルヘキシルアルコールを供給する前記実施例1~実施例13と同じ効果を得ることができた。
【0079】
比較例
比較例1~比較例7
図6に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0080】
具体的に、テレフタル酸と2-エチルヘキシルアルコールを1:2~4.5のモル比に維持しつつ、200℃の温度で運転される第1反応ユニット10の反応器11に投入し、触媒の存在下で転換率を10%~70%に調節しつつエステル化反応させ、前記反応器11において気化する上部排出ストリームは、カラム12、凝縮器13、および層分離器14を用い、2-エチルヘキシルアルコールは反応器11に還流させ、水は除去した。また、前記反応器11において下部排出ライン11aを介して排出される反応生成物は、ポンプ15を通過させて第2反応ユニット20の反応器21に供給した。
【0081】
前記第1反応ユニット10において運転される流れのように、第2反応ユニット20、第3反応ユニット30、および第4反応ユニット40を経て連続式で運転し、最後段の第4反応ユニット40の反応器41の下部排出ストリームを分離精製してジオクチルテレフタレートを得た。
【0082】
この際、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表4に示した。
【0083】
【0084】
比較例8~比較例13
前記比較例1において、第1反応ユニット10の反応器11の運転温度を200℃の代わりに215℃に制御し、第1反応ユニット10の反応器11での転換率を10%~60%に調節しつつ行ったことを除いては、前記比較例1と同様の方法で行った。
【0085】
この際、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて、前記99.9%の転換率に達する条件で測定したシミュレーション結果を下記表5に示した。
【0086】
【0087】
前記表4および表5を参照すると、前記実施例と比べて、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームを移送する下部排出ライン11aに液相供給ラインを備えていない比較例1~比較例13は、第1反応ユニット10の反応器の下部排出ライン11aにテレフタル酸が累積して配管およびポンプが詰まり、このため、配管およびポンプのメンテナンス期間が短縮されることが分かる。
【0088】
比較例14
図7に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0089】
具体的に、前記実施例1と同様の流れで製造するが、液相供給ラインL1を第1反応ユニット10の反応器11に連結して2-エチルヘキシルアルコールを供給した。
【0090】
前記実施例と比べて、液相供給ラインL1を第1反応ユニット10の反応器の下部排出ライン11aに連結せずに、反応器11に連結した比較例14は、第1反応ユニット10の反応器11に供給される流量が増加するに伴って、滞留時間が減少し、下部排出ストリームに固体であるテレフタル酸の体積分率を増加させる。また、第1反応ユニット10の反応器11に注入するテレフタル酸および2-エチルヘキシルアルコールの過量率が過度に増加し、反応器内の気化する2-エチルヘキシルアルコールの量および気化した2-エチルヘキシルアルコールがカラム、層分離器、カラムを経て反応器に再び還流される還流量の増加により反応器の加熱のために必要なスチーム量が増加し、工程全体の運転費用およびエネルギー費用が非効率的に上昇して製品原価競争力を低下させるという問題がある。
【国際調査報告】