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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-27
(54)【発明の名称】農業用組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/00 20060101AFI20230217BHJP
   A01N 35/10 20060101ALI20230217BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N35/10
A01P13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537083
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 US2020065185
(87)【国際公開番号】W WO2021126893
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/949,604
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ ダ シウヴァ,エドゥアルド チャガス
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AB01
4H011BA02
4H011BB05
4H011BC08
(57)【要約】
本発明は、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤、1つまたは複数の糖アルコール、および任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を含む農業用組成物に関する。本発明はさらに、ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコール、ならびに任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を、雑草または雑草防除を必要とする領域に、同時にまたは連続して適用することを含む雑草を防除する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤および1つまたは複数の糖アルコールを含む農業用組成物。
【請求項2】
ACCアーゼ阻害剤が、クレトジム、フルアジホップ-P-ブチルおよびハロキシホップ-R-メチルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ACCアーゼ阻害剤が、クレトジムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
1つまたは複数の糖アルコールが、D-マンニトール、D-ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、L-アラビトール、キシリトール、1D-カイロ-イノシトール、イノシトール、ミオイノシトール、ガラクチノール、L-ケブラチトール、D-ピニトール、D-オノニトール、D-ミオ-イノシトール-1,3-二リン酸塩およびガラクチノールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の糖アルコールが、D-ソルビトールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
クレトジムおよびD-ソルビトールを含む農業用組成物。
【請求項7】
ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコールを、雑草または雑草防除を必要とする領域に、同時にまたは連続して適用することを含む雑草を防除する方法。
【請求項8】
ACCアーゼ阻害剤が、約1~約100グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ACCアーゼ阻害剤が、約30~約70グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ACCアーゼ阻害剤が、55.4グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の糖アルコールが、約100~約100,000グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数の糖アルコールが、約1,000~約30,000グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の糖アルコールが、約6,800グラム/ヘクタールの量で適用される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤、1つまたは複数の糖アルコール、および任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を含む農業用組成物に関する。本発明はさらに、ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコール、ならびに任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を、雑草または雑草防除を必要とする領域に、同時にまたは連続して適用することを含む雑草を防除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雑草などの不要な植物は、作物に利用することができる資源の量を減少させ、作物の収量および品質に悪影響を及ぼす可能性がある。たとえば、報告によれば、雑草蔓延は、ダイズの収量を80%減少させる原因となった。Bruce, J.A.、およびJ.J. Kells、植え付け前および発芽前除草剤を使用した不耕起ダイズ(Glycine max)におけるヒメムカシヨモギ(Conyza Canadensis)の防除、Weed Technol、1990、4、642-647。作物植物環境における不要な植物には、広葉雑草、イネ科植物およびスゲが含まれる。時間、お金および資源を節約するために、イネ科植物の除草剤を広葉雑草の除草剤と混合して、さまざまな雑草を防除することが多い。
【0003】
上述のように、複数の雑草を防除する1つの方法は、複数の除草剤を連続的または同時に適用することである。しかしながら、複数の除草剤を適用する場合、製剤、タンクミックス、または適用後のいずれかで組み合わせた場合に、それらの組成物中で除草剤のそれぞれが安定し、有効であることを確実にするために注意を払う必要がある。
【0004】
アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤は、主にイネ科植物を防除する除草剤である。これらの除草剤は、作物中のイネ科植物を防除するために40年以上にわたって成功裏に使用されてきた。ACCアーゼ阻害剤は、広葉雑草に対して効果的ではない。
【0005】
オーキシン除草剤は、主に広葉雑草を防除する。これらの除草剤は、穀物中の広葉雑草を防除するために60年以上にわたって成功裏に使用されてきた。オーキシン除草剤は、イネ科植物に対して効果的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、時間、お金および資源を節約するために、オーキシン除草剤と組み合わせると有効である、ACCアーゼ阻害剤を含む組成物が当技術分野で必要とされている。この組成物は、適用時に安定かつ効果的でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概略
本発明は、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)阻害剤、1つまたは複数の糖アルコール、および任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を含む農業用組成物に関する。
【0008】
本発明はさらに、ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコール、ならびに任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を、雑草または雑草防除を必要とする領域に、同時にまたは連続して適用することを含む雑草を防除する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な記載
出願人は、アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ阻害剤(ACCアーゼ阻害剤)を含む農業用組成物への1つまたは複数の糖アルコールの添加が、オーキシン除草剤と組み合わせた場合に、安定した組成物および効果的な適用を提供することを予期せず発見した。
【0010】
1つの実施形態では、本発明は、ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコールを含む農業用組成物に関する。
【0011】
本明細書で使用される「アセチル補酵素Aカルボキシラーゼ阻害剤」または「ACCアーゼ阻害剤」という用語は、スピロジクロフェン、スピロメシフェンおよびスピロテトラマトなどのテトロン酸およびテトラミン酸誘導体;シハロホップ-ブチル、ジクロホップ-メチル、フェノキサプロップ-P-エチル、フルアジホップ-P-ブチル、キザロホップ、クロジナホップ-プロパルギル、メタミホップおよびハロキシホップ-R-メチルなどのアリールオキシフェノキシプロピオネート(FOP);クレトジム、セトキシジム、プロホキシジムおよびトラルコキシジムなどのシクロヘキサンジオン(DIM);ならびにピノキサデンなどのフェニルピラゾリンを意味するが、これらに限定されない。
【0012】
好ましい実施形態では、ACCアーゼ阻害剤は、クレトジム、フルアジホップ-P-ブチルおよびハロキシホップ-R-メチルからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、ACCアーゼ阻害剤は、クレトジムである。
【0013】
別の好ましい実施形態では、ACCアーゼ阻害剤は、約0.1%~約99.9% w/v、より好ましくは約1%~約99% w/vの濃度で本発明の組成物中に存在しうる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の糖アルコールは、D-マンニトール、D-ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、L-アラビトール、キシリトール、1D-カイロ-イノシトール、イノシトール、ミオイノシトール、ガラクチノール、L-ケブラチトール、D-ピニトール、D-オノニトール、D-ミオ-イノシトール-1,3-二リン酸塩およびガラクチノールからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、1つまたは複数の糖アルコールは、D-ソルビトールである。
【0015】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の糖アルコールは、約0.1%~約99.9% w/v、より好ましくは約1%~約99% w/vの濃度で本発明の組成物中に存在しうる。
【0016】
別の実施形態では、本発明の組成物はさらに、1つまたは複数のオーキシン除草剤を含む。
【0017】
好ましい実施形態では、1つまたは複数のオーキシンは、ジカンバ、2,4-D、ジクロロプロップ、(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)酢酸(MCPA)、4-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)ブタン酸(MCPB)、メコプロップ、ピクロラム、キンクロラック、トリクロピル、フルロキシピル、ピクロラム、アミノピラリド、クロピラリドおよびアミノシクロピラクロルならびにそれらの農業上許容される塩およびエステルからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、1つまたは複数のオーキシンは、ジカンバの塩である。さらにより好ましい実施形態では、ジカンバの塩は、ジカンバ-ビプロアミン、ジカンバ-ジグリコールアミン、およびジカンバ-テトラブチルアミンからなる群から選択される。
【0018】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数のオーキシンは、約0.1%~約99.9% w/v、より好ましくは約1%~約99% w/vの濃度で本発明の組成物中に存在しうる。
【0019】
本発明の組成物はさらに、溶媒、固化防止剤、安定剤、消泡剤、スリップ剤、保湿剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、乳化剤、不凍剤および防腐剤からなる群から選択される1つまたは複数の賦形剤を含みうる。これらの成分の生物活性を増強する他の成分が任意選択で含まれうる。
【0020】
本発明の組成物は、任意の便利な手段によって適用することができる。当業者は、噴霧などの葉面散布、ケミゲーション(灌漑システムを通して混合物を適用する方法)、粒剤散布、または混合物を肥料に含浸させることを含む適用モードに精通している。
【0021】
本発明の組成物は、濃縮製剤として、即時使用可能(ready-to-use)製剤として、またはタンクミックスとして調製することができる。
【0022】
別の実施形態では、本発明はさらに、ACCアーゼ阻害剤および1つまたは複数の糖アルコール、ならびに任意選択で1つまたは複数のオーキシン除草剤を、雑草または雑草防除を必要とする領域に、同時にまたは連続して適用することを含む雑草を防除する方法に関する。
【0023】
好ましい実施形態では、ACCアーゼ阻害剤は、ヘクタールあたり約1~約1,000グラム(g/HA)、より好ましくは約1~約100g/HA、さらにより好ましくは約30~約70g/HA、さらにより好ましくは約40~約60g/HA、および最も好ましくは約55.4g/HAの量で適用することができる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の糖アルコールは、約100~約100,000g/HA、より好ましくは約1,000~約30,000g/HA、さらにより好ましくは約1,700~約27,200g/HA、さらにより好ましくは約1,700、約3,400、約6,800、約13,600および約27,200g/HA、ならびに最も好ましくは約6,800g/HAの量で適用することができる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、1つまたは複数のオーキシン除草剤は、約1~約1,000 g/HA、より好ましくは約10~約100 g/HAの量で適用することができる。
【0026】
別の実施形態では、本発明の組成物によって防除される雑草は、ヒユモドキ(Amaranthus tuberculatus)、ヒメムカシヨモギ(Conyza Canadensis)、アメリカアサガオ(Ipomoea hederacea)、マメアサガオ(Ipomoea lacunose)、ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)、オオブタクサ(Ambrosia trifida)、オニメヒシバ(Digitaria sanguinalis)、オオホナガアオゲイトウ(Amaranthus palmeri)、ブロードリーフシグナルグラス(Brachiaria platyhylla)、イヌビエ(Echinochloa crus-galli)、ショクヨウガヤツリ(Cyperus esculentus)、タカサブロウ(Eclipta prostrate)、シロザ(Chenopodium species)、イチビ(Abutilon theophrasti)、エノコログサ(Setaria species)、アキノエノコログサ(Setaria faberi)および一年草のうちの少なくとも1つである。本明細書で使用される場合、一年草には、トウモロコシ、ソルガム、コムギ、ライムギ、オオムギ、およびオーツムギが含まれる。
【0027】
別の実施形態では、雑草防除を必要とする領域には、雑草の数を減少させるか、または雑草をなくすことが望まれる地域を含めることができる。たとえば、本発明の組成物は、野外の果樹園、またはブドウ園などの作物植物を栽培するために使用される領域に適用することができる。本発明の混合物はまた、芝生、ゴルフコース、または公園などの雑草防除を必要とする非農業領域に適用することができる。
【0028】
本明細書で使用される、量、重量パーセントなどに関連するすべての数値は、特定の値それぞれのプラスまたはマイナス10%である、「約」または「およそ」として定義される。たとえば、「少なくとも5.0重量%」という語句は、「少なくとも4.5重量%~5.5重量%」として理解されるべきである。したがって、特許請求の範囲に記載された値の10%以内の量は、特許請求の範囲に含まれる。
【0029】
本出願を通して、文脈が明確に別の指示をしない限り、単数形「a」「an」および「the」は、複数への言及を包含する。
【0030】
これらの代表的な実施態様は決して限定的なものではなく、本発明のいくつかの態様を例示するためにのみ記載される。
【0031】
これらの代表的な実施態様は決して限定的なものではなく、本発明のいくつかの態様を例示するためにのみ記載される。
【0032】
さらに、以下の実施例は、限定するためのものではなく、例示のみを目的として提供される。
【実施例
【0033】
Agridex(登録商標)は、作物油濃縮物であって、Bayer CropScienceの登録商標であり、Bayer CropScienceから入手可能である。
【0034】
Induce(登録商標)は、アルキルアリールポリオキシルカンエーテルおよび遊離脂肪酸であり、Helena Chemical Companyの登録商標であって、Helena Chemical Companyから入手可能である。
【0035】
Select Max(登録商標)は、クレトジムの供給源として使用され、Valent U.S.A., LLCの登録商標であって、Valent U.S.A., LLCから入手可能である。Select Max(登録商標)は、12.6重量%のクレトジムを含む。
【0036】
実施例1-マンニトールとソルビトールはトウモロコシにおけるクレトジムの効能を向上させる
マンニトールまたはソルビトールの有無にかかわらず、クレトジムの有効性について4つの試験を実施した。具体的には、4プロットのトウモロコシを高さ12インチになるまで栽培した。これらのプロットを、処理のために噴霧室内に配置した。すべての組成物は、1% v/vのAgridex(登録商標)および0.25% v/vのInduce(登録商標)を含んだ。処理および結果を以下の表1に記載する。
表1
【表1】
【0037】
上記の表1に見られるように、処理後の日数(DAT)14では、クレトジム単独(20.8%)と比較して、クレトジム+マンニトールによるトウモロコシの防除(30%)は、ほぼ10%増加し、クレトジム+ソルビトールによる防除(92.2%)は、ほぼ71%増加した。活性の増加は、輪生体のより効率的で迅速な枯死、ならびに植物全体のより完全な枯死、およびトウモロコシ植物のより少ない再成長として観察された。
【国際調査報告】