(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】化合物、これを含む抗菌消臭組成物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 211/22 20060101AFI20230220BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230220BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230220BHJP
A01N 47/16 20060101ALI20230220BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20230220BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230220BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
C07D211/22
A01P1/00
A01P3/00
A01N47/16 A
A61K31/445
A61P31/04
A61P39/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532847
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2021012668
(87)【国際公開番号】W WO2022060116
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119287
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0122917
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0123311
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒェラン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ビュングク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】サンゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA05
4C086NA09
4C086ZB35
4H011AA02
4H011AA03
4H011BB13
(57)【要約】
本明細書は、化学式1の化合物、これを含む抗菌消臭組成物、およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rは、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数6~30のアリール基である。
【請求項2】
前記R
1およびR
2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Lは、炭素数1~5のアルキレン基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物を下記方法1で抗菌評価した際、前記化合物の菌増殖抑制率が50%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物:
[方法1]
バクテリア3000±300CFU/mlを接種した栄養培地の培養液25mlに前記化合物を1mg~200mg入れた後、振とう培養器で35℃、16時間培養して試験培養液を調製し、前記試験培養液において、前記化合物を入れないことを除き、同様に製造して対照培養液を製造した後、前記試験培養液及び対照培養液に対して紫外線可視分光光度計を用いて600nm波長の吸光度を測定し、測定した吸光度値を用いて下記数式1に基づき菌増殖抑制率(%)を計算する。
【数1】
(A
S:試験培養液の吸光度、A
0:対照培養液の吸光度)
【請求項5】
前記バクテリアは、グラム陽性菌もしくはグラム陰性菌のいずれかである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物を下記方法2で消臭評価した際、イソバレルアルデヒドに対する前記化合物の消臭率が50%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物:
[方法2]
高吸水性樹脂及び前記化合物の総重量80mgに対して前記化合物を1phr~20phr含む試験溶液に臭気溶液20mLを入れ、固相微量抽出法の方式でイソバレルアルデヒドを吸着し、GC/MS分析によって吸着されたイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積を分析し、前記試験溶液において、前記化合物を入れないことを除き、同様に製造した対照溶液に対しても前記のようにイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積を分析し、前記試験溶液と対照溶液のGC/MSピーク面積値を用いて下記数式2に基づき消臭率を計算する。
【数2】
(C
S:試験溶液のイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積、C
0:対照溶液のイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積)
【請求項7】
前記臭気溶液は、イソバレルアルデヒド、ジアセチル、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、およびp-クレゾールのうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、ジアセチルに対する前記化合物の消臭率が50%以上であり、ジメチルジスルフィドに対する前記化合物の消臭率が50%以上である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む、抗菌消臭組成物。
【請求項10】
前記抗菌消臭組成物は、高吸収性樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリ塩化ビニル;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン;およびポリアクリル酸のうちの1つ以上をさらに含む、請求項9に記載の抗菌消臭組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、下記化学式2及び3の化合物を反応させる段階(a)を含む、化合物の製造方法:
【化2】
前記化学式2および3において、
Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rは、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R’は、-Cl;-OR’’;または-OC(=O)(CR’’=CH
2)であり、
R’’は、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~30のアリール基である。
【請求項12】
反応物を抽出する段階(b);前記反応物を洗浄する段階(c);前記反応物を乾燥する段階(d);前記反応物を精製する段階(e)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項11に記載の化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、化合物、これを含む抗菌消臭組成物、およびその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年9月16日にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0119287の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0003】
本出願は、2021年9月15日にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0122917の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【0004】
本出願は、2021年9月15日にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0123311の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0005】
日常生活において、バクテリア、カビなどの、人体に有害で、かつ臭いを引き起こす微生物による被害が増加することにつれて、このような微生物の増殖を抑制もしくは死滅するための様々な抗菌物質または消臭物質が開発されている。その一つとして、一般的に人々が多く利用する製品に用いられる高分子材料に抗菌能もしくは消臭能を与えることが求められている。
【0006】
従来は、高分子に抗菌性能を導入するために、抗菌物質を高分子に単純に混合する方法を主に用いた。これは、抗菌物質の流出の可能性が存在するので、用いられる抗菌物質の安全性が確かに保証されなければならない。抗菌物質の流出による問題を根本的に解決するために、抗菌物質を高分子に共重合することによって、抗菌物質が流出しない抗菌高分子の開発に関する研究も盛んに行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、化合物、これを含む抗菌消臭組成物、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施形態は、下記化学式1の化合物を提供する。
【0009】
【0010】
前記化学式1において、
Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rは、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数6~30のアリール基である。
【0011】
本明細書のまた他の実施形態は、前記化合物を含む抗菌消臭組成物を提供する。
【0012】
本明細書のまた他の実施形態は、前記化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に係る化合物は、改善された抗菌能および消臭能を提供することができる。
【0014】
本明細書に係る化合物は、高分子に共重合することによって、化合物が流出せず、高分子に優れた抗菌及び消臭効果を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0016】
本明細書において、アルキル基は直鎖もしくは分岐鎖であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本明細書において、アルキレン基は、二価のアルキル基を意味し、直鎖もしくは分岐鎖であってもよい。
【0018】
本明細書において、アリール基は単環もしくは多環であってもよく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本明細書において、CFU(Colony-forming unit)はコロニー形成単位を意味し、CFU/mlは1ml当たりのCFU数を意味する。
【0020】
以下、本明細書について、より詳しく説明する。
【0021】
本明細書の一実施形態は、下記化学式1の化合物を提供する。
【0022】
【0023】
前記化学式1において、
Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rは、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数6~30のアリール基である。
【0024】
従来は、高分子に抗菌性能を導入するために、高分子と抗菌物質を単純に混合したが、これは抗菌物質の流出の可能性が存在するという問題がある。そこで、本発明者らは、抗菌物質が流出しないようにするために、抗菌物質が共重合できるようにアクリレート官能基を導入した化合物を開発した。具体的には、殺虫剤(蚊退治剤)として開発され、世界各国から安定性が認められて用いられていたイカリジン(icaridin)にアクリレート官能基を導入した。
【0025】
本明細書の一実施形態において、前記化学式1は、下記化学式1-1~1-4のうちの1以上を含んでもよい。
【0026】
【0027】
前記化学式1-1~1-4において、各置換基の定義は化学式1と同様である。
【0028】
本明細書の一実施形態において、前記化学式1は、前記化学式1-1~1-4のうちの1以上が混合されて構成されてもよい。
【0029】
本明細書の一実施形態において、Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0030】
本明細書の一実施形態において、Lは、炭素数1~10のアルキレン基であってもよい。
【0031】
本明細書の一実施形態において、Lは、炭素数1~5の直鎖のアルキレン基であってもよい。
【0032】
本明細書の一実施形態において、Lは、炭素数1~3の直鎖のアルキレン基であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施形態において、Lは、エチレン基であってもよい。
【0034】
本明細書の一実施形態において、Rは、水素;または炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0035】
本明細書の一実施形態において、Rは、水素;または炭素数1~3のアルキル基であってもよい。
【0036】
本明細書の一実施形態において、Rは、水素;またはメチル基であってもよい。
【0037】
本明細書の一実施形態において、Rは、水素であってもよい。
【0038】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基;または炭素数6~30のアリール基である。
【0039】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0040】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0041】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖のアルキル基であってもよい。
【0042】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1~3の直鎖のアルキル基であってもよい。
【0043】
本明細書の一実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル基;エチル基;またはプロピル基であってもよい。
【0044】
本明細書の一実施形態において、R1はメチル基であり、R2はエチル基であってもよい。
【0045】
本明細書の一実施形態において、前記化学式1の化合物は、下記構造のいずれかで表されてもよい。
【0046】
【0047】
本明細書の一実施形態による化合物は、抗菌および消臭効果を提供する。
【0048】
本明細書の一実施形態において、前記化合物を下記方法1で抗菌評価を行った際、前記化合物の菌増殖抑制率は50%以上である。
【0049】
[方法1]
バクテリア3000±300CFU/mlを接種した栄養培地(Nutrient broth)の培養液25mlに前記化合物を1mg~200mg入れた後、振とう培養器(shaking incubator)で35℃、16時間培養して試験培養液を調製し、前記試験培養液において、前記化合物を入れないことを除き、同様に製造して対照培養液を製造した後、前記試験培養液及び対照培養液に対して紫外線可視分光光度計(UV-Vis spectrophotometer)を用いて600nm波長の吸光度を測定し、測定した吸光度値を用いて下記数式1に基づき菌増殖抑制率(%)を計算する。
【0050】
【0051】
(AS:試験培養液の吸光度、A0:対照培養液の吸光度)
【0052】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌評価で用いられるバクテリアはグラム陽性菌もしくはグラム陰性菌のいずれかであってもよい。
【0053】
バクテリアは、細胞壁の構造に応じてグラム(gram)染色によってグラム陽性菌とグラム陰性菌に分類される。グラム陽性菌とは、細胞壁におけるペプチドグリカン層の割合が約70~90%のものであって、グラム染色時に紫色系列に染色される。これに反して、グラム陰性菌は、細胞壁におけるペプチドグリカン層の割合が約10~20%である薄い層として存在し、グラム染色時に赤色系列に染色される。具体的には、グラム陽性菌には、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌(Enterococcus faecium)、及び乳酸連鎖球菌(Lactobacillus lactis)などがあり、グラム陰性菌には、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、およびコレラ菌(Vibrio cholerae)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌評価で用いられるバクテリアはグラム陰性菌であってもよい。
【0055】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌評価で用いられるバクテリアは、大腸菌(Escherichia coli)、もしくはミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)であってもよい。
【0056】
本明細書の一実施形態において、前記化合物を前記方法1で抗菌評価した際、前記化合物のミラビリス変形菌に対する菌増殖抑制率は、50%以上、55%以上、または55.6%以上であってもよく、好ましくは70%以上、80%以上、85%以上、89%以上、または89.5%以上であってもよく、より好ましくは90%以上、91%以上、または91.7%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下であってもよい。菌増殖抑制率が高いほど、前記化合物のミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)に対する抗菌性が高いことを意味する。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を前記方法1で抗菌評価した際、前記化合物の大腸菌(Escherichia coli)に対する菌増殖抑制率は50%以上、60%以上、62%以上、または62.9%以上であってもよく、好ましくは70%以上、80%以上、85%以上、88%以上、または88.8%以上であってもよく、より好ましくは90%以上、92%以上、または92.4%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下であってもよい。菌増殖抑制率が高いほど、前記化合物の大腸菌(Escherichia coli)に対する抗菌性が高いことを意味する。
【0058】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌評価の際、前記化合物が10mg~200mg、または15mg~200mgで用いられてもよい。好ましくは、前記化合物を20mg~100mgで用いる場合、50%以上の菌増殖抑制率を有し得、より好ましくは前記化合物を50mg~100mgで用いる場合、80%以上の菌増殖抑制率を有し得る。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を下記方法2で消臭評価した際、イソバレルアルデヒドに対する前記化合物の消臭率が50%以上である。
【0060】
[方法2]
高吸水性樹脂及び前記化合物の総重量80mgに対して前記化合物を1phr~20phr含む試験溶液に臭気溶液20mLを入れ、固相微量抽出法の方式でイソバレルアルデヒドを吸着し、GC/MS分析によって吸着されたイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積(Peak Area)を分析し、前記試験溶液において、前記化合物を入れないことを除き、同様に製造した対照溶液に対しても前記のようにイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積(Peak Area)を分析し、前記試験溶液と対照溶液のGC/MSピーク面積(Peak Area)値を用いて下記数式2に基づき消臭率を計算する。
【0061】
【0062】
(CS:試験溶液のイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積(Peak Area)、C0:対照溶液のイソバレルアルデヒドのGC/MSピーク面積(Peak Area))
【0063】
本明細書の一実施形態において、消臭評価に用いられる臭気溶液は、尿中に臭気を引き起こすことが知られている物質を含んでもよい。
【0064】
本明細書の一実施形態において、前記消臭評価に用いられる臭気溶液は、ジアセチル(Diacetyl)などのケトン類、ロイシン(Leucine)などのアミノ酸から発生するイソバレルアルデヒド(Isovaleraldehyde)、p-クレゾール(p-Cresol)などのフェノール類、およびジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide,DMDS)、ジメチルトリスルフィド(dimethyl trisulfide,DMTS)などの硫化物を含んでもよい。
【0065】
本明細書の一実施形態において、前記消臭評価に用いられる臭気溶液は、イソバレルアルデヒド、ジアセチル、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、およびp-クレゾールのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0066】
本明細書の一実施形態において、前記消臭評価に用いられる臭気溶液はイソバレルアルデヒドを含み、ジアセチル、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、及びp-クレゾールのうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0067】
本明細書の一実施形態において、消臭評価に用いられる臭気溶液は、イソバレルアルデヒド、ジアセチル、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、およびp-クレゾールを含んでもよい。
【0068】
本明細書の一実施形態において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、イソバレルアルデヒドに対する前記化合物の消臭率が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、または87%以上であり、好ましくは90%以上、または92%以上であり、より好ましくは94%以上である。上限は限定されないが、例えば100%以下である。
【0069】
本明細書の一実施態様において、前記方法2においてイソバレルアルデヒドの代わりにジアセチル、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド又はp-クレゾールを吸着し、GC/MSピーク面積(Peak Area)を分析して各成分に対する消臭評価を進行してもよい。
【0070】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、ジアセチルに対する前記化合物の消臭率が50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、または79%以上であり、好ましくは80%以上、85%以上、または86%以上であり、より好ましくは90%以上、または91%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下である。
【0071】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、ジメチルジスルフィドに対する前記化合物の消臭率が50%以上、60%以上、又は65%以上であり、好ましくは70%。以上、75%以上、または76%以上であり、より好ましくは80%以上、84%以上、または88%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下である。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、ジメチルトリスルフィドに対する前記化合物の消臭率が15%以上、または16%以上であり、好ましくは20%以上、25%以上、または27%以上であり、より好ましくは60%以上、61%以上、または72%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下である。
【0073】
本明細書の一実施態様において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、p-クレゾールに対する前記化合物の消臭率が2%以上、10%以上、または20%以上であり、好ましくは30%以上、35%以上、または37%以上であり、より好ましくは40%以上、46%以上、60%以上、または61%以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば100%以下である。
【0074】
本明細書の一実施形態において、前記化合物を前記方法2で消臭評価した際、ジアセチルに対する前記化合物の消臭率が50%以上であり、ジメチルジスルフィドに対する前記化合物の消臭率が50%以上であってもよい。
【0075】
本明細書の一実施形態において、前記消臭評価の際、前記化合物は、前記化合物と高吸収性樹脂の総重量80mgを基準に1phr~20phrを含んでもよい。好ましくは2phr以上、または5phr以上、より好ましくは8phr以上含んでもよい。前記化合物の含有量が5phr以上含まれる場合、著しく改善された消臭能を得ることができる。
【0076】
本明細書のまた他の実施形態において、前記化合物を含む抗菌消臭組成物を提供する。
【0077】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌消臭組成物は、高吸収性樹脂(SAP);ポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリスチレン(PS);ポリアミド(PA);ポリイミド(PI);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリ塩化ビニル(PVC);アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS);およびポリアクリル酸(PA)のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0078】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌消臭組成物は、前記化合物;および高吸収性樹脂を含んでもよい。
【0079】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌消臭組成物は、前記化合物、高吸収性樹脂などが単純に混合されている状態であってもよい。
【0080】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌消臭組成物は、前記化合物が共重合する以前の状態であってもよい。
【0081】
本明細書の一実施形態において、前記抗菌消臭組成物を共重合して抗菌高分子を製造してもよい。
【0082】
本明細書のまた他の実施形態において、下記化学式2および3の化合物を反応させる段階(a)を含む、前述した化合物の製造方法を提供する。
【0083】
【0084】
前記化学式2および3において、
Lは、直接結合;または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Rは、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R’、-Cl;-OR’;または-OC(=O)(CR’’=CH2)であり、
R’’は、水素;または炭素数1~10のアルキル基であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~10のアルキル基、または炭素数6~30のアリール基である。
【0085】
本明細書の一実施形態において、前記化学式2および3の置換基についての具体的な説明は、前記化学式1における説明と同様である。
【0086】
本明細書の一実施形態において、前記R’は-Clであってもよい。
【0087】
本明細書の一実施形態において、前記R’は-OR’’であり、R’’は水素;または炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0088】
本明細書の一実施形態において、前記R’は-OC(=O)(CR’’=CH2)であり、R’’は水素;または炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0089】
本明細書の一実施形態において、前記R’は-OC(=O)(CR’’=CH2)であり、R’’は前記化学式1のRと同様であってもよい。
【0090】
本明細書の一実施形態において、前記R’は-Cl;-OR’’;または-OC(=O)(CR=CH2)であってもよい。
【0091】
本明細書の一実施形態において、前記反応させる段階(a)における反応時間は、反応温度、反応物質に応じて変わり得る。例えば、常温で反応を進行する場合、反応時間は16時間~30時間であってもよく、好ましくは20時間~26時間であってもよい。また、反応温度もしくは反応物質が後述する製造例と相違する場合、反応時間は1分~16時間、1分~10時間、1分~2時間、好ましくは10分~1時間であってもよい。ここで反応物質は、前記化学式3の化合物を意味する場合があり得る。
【0092】
本明細書の一実施形態において、前記反応させる段階(a)は、前記化学式2および3の化合物の混合物を製造する段階(a1);および前記混合物を反応させる段階(a2)を含んでもよい。
【0093】
本明細書の一実施形態において、前記混合物を反応させる段階(a2)における反応時間は前述したとおりである。
【0094】
本明細書の一実施形態において、前記混合物を製造する段階(a1)は、前記化学式2および3の化合物を用意する段階(a1-1);前記化学式2の化合物を溶媒および中和剤と混合して混合物Aを製造する段階(a1-2);および前記混合物Aと前記化学式3の化合物とを混合して混合物Bを製造する段階(a1-3)を含んでもよい。
【0095】
本明細書の一実施形態において、前記溶媒の種類は限定されないが、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、及びジメチルホルムアミドなどを用いてもよい。
【0096】
本明細書の一実施形態において、前記中和剤の種類は、反応中に生成されるHClを中和するものであれば限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、水酸化ナトリウム、及び炭酸カリウムなどを用いてもよい。
【0097】
本明細書の一実施形態において、前記混合物Bを撹拌する段階(a1-4)をさらに含んでもよい。
【0098】
本明細書の一実施形態において、前記攪拌する段階は、100rpm~500rpmで5分~20分間進行してもよく、攪拌された混合物Bは0℃に維持してもよい。
【0099】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、反応物を抽出する段階(b)をさらに含んでもよい。ここで、反応物とは、前記反応させる段階(a)によって生成された物質を意味する。
【0100】
本明細書の一実施形態において、前記反応物を抽出する段階(b)は、前記反応物を濾過する段階(b1)および抽出溶媒を用いて抽出する段階(b2)を含んでもよい。
【0101】
本明細書の一実施形態において、前記濾過する方法は、当該技術分野における公知の方法であれば限定されない。
【0102】
本明細書の一実施形態において、前記抽出溶媒は、塩酸水溶液、塩水(brine)、および水のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0103】
本明細書の一実施形態において、前記抽出溶媒は、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、および酢酸エチルから選択される1つ以上をさらに含んでもよい。
【0104】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、前記反応物を洗浄する段階(c)をさらに含んでもよい。具体的には、前記反応物を水、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、および塩水(brine)を用いて洗浄してもよい。
【0105】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、前記反応物を乾燥する段階(d)をさらに含んでもよい。具体的には、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)および無水硫酸ナトリウム(NaSO4)のうちの1つ以上を用いて前記濾過された反応物中の水分を除去してもよく、減圧して残留溶媒を除去してもよい。
【0106】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、前記反応物を精製する段階(e)をさらに含んでもよい。具体的には、前記反応物をカラムクロマトグラフィーによって精製してもよく、カラムクロマトグラフィーの展開溶媒としては、ジクロロメタン、ヘキサン、および酢酸エチルのうちの1つ以上を用いてもよい。
【0107】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、反応物を抽出する段階(b);前記反応物を洗浄する段階(c);前記反応物を乾燥する段階(d);および前記反応物を精製する段階(e)のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0108】
本明細書の一実施形態において、前記化合物の製造方法は、反応させる段階(a);反応物を抽出する段階(b);前記反応物を洗浄する段階(c);前記反応物を乾燥する段階(d);および前記反応物を精製する段階(e)のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0109】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかしながら、本明細書に係る実施例は様々な他の形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に記述する実施例に限定されることと解釈されるべきではない。本明細書の実施例は、当該技術分野における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供される。
【0110】
<製造例1>化合物1の製造
窒素環境を維持できる三口丸底フラスコにイカリジン(icaridin)(Chemscene社)20g、トリエチルアミン13.05g、及びジクロロメタン120mlを投入し、200rpmで10分間攪拌した。次に、0℃に保持されている前記攪拌済み溶液に塩化アクリル15.788gを滴加し、室温で24時間反応させた。前記反応が完了した後、濾過してから、0.5Nの塩酸100mlおよびジクロロメタン100mlを用いて反応物を2回以上抽出した。その後、水、NaHCO3水溶液、塩水(Brine)を用いて順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウム(MgSO4)を用いて水分を除去した。減圧下で溶媒を除去した反応物をジクロロメタンでカラムクロマトグラフィーして下記構造の化合物117.2gを得た。(収率:74%)
【0111】
【0112】
(1H-NMR(500MHz,DMSOd6):0.9(3H,CH),1.3(3H,CH),1.4-1.8(10H,CH),3.3(1H,CH),3.6(2H,N-CH),4.1(2H,0-CH),4.7(1H,CH),5.8-6.5(3H,acryl))
【0113】
<実験例1>抗菌評価
ミラビリス変形菌(Proteus Mirabilis)(ATCC 29906)、もしくは大腸菌(E. coli,ATCC 25922)3000±300CFU/mlを接種した栄養培地(Nutrient broth)の培養液25mlに前記製造例1で製造した化合物1を下記表1に記載されている含有量で入れた後、振とう培養器(shaking incubator)で35℃、16時間培養して試験培養液を調製した。対照群として、前記試験培養液において、前記化合物を入れないことを除き、同様に調製して対照培養液を製造した。前記試験培養液及び対照培養液に対して紫外線可視分光光度計(UV-Vis spectrophotometer)を用いて600nm波長の吸光度を測定した。測定結果を用いて下記数式1に基づき菌増殖抑制率(%)を計算した。
【0114】
【0115】
(AS:試験培養液の吸光度、A0:対照培養液の吸光度)
【0116】
【0117】
前記表1の結果を見ると、本発明の化学式1の化合物を含まない比較例1の場合、ミラビリス変形菌(Proteus Mirabilis)もしくは大腸菌(Escherichia coli)の菌増殖抑制が全くなされていないことに比べて、実施例の場合、ミラビリス変形菌(Proteus Mirabilis)に対して55.6%以上の菌増殖抑制率を示し、大腸菌(Escherichia coli)に対して62.9%以上の菌増殖抑制率を示すことが確認できる。特に、本発明の化学式1の化合物を50mg以上使用した場合、ミラビリス変形菌(Proteus Mirabilis)もしくは大腸菌(Escherichia coli)に対する菌増殖抑制率がそれぞれ89.5%以上、または88.8%以上に高くなることがわかる。
【0118】
<実験例2>消臭評価
バイアルに前記製造例1で製造した化合物1を下記表2に記載されている含有量で入れ、高吸収性樹脂と前記化合物1の総含有量が80mgとなるように高吸収性樹脂(LG化学社、GS-301N)を入れた後、臭気溶液20mLを入れて試験溶液を調製した。前記臭気溶液は、ジアセチル242μg/mL、イソバレルアルデヒド49μg/mL、ジメチルジスルフィド30μg/mL、ジメチルトリスルフィド26μg/mL、およびp-クレゾール2508μg/mLが混合された溶液を0.9重量%塩化ナトリウム水溶液で1/1000希釈して使用した。固相微量抽出法(SPME)の方式で試験溶液中に発生する揮発性物質を吸着し、GC/MS分析によって吸着された臭気物質(ジアセチル、イソバレルアルデヒド、ジメチルジスルフィド、ジメチルトリスルフィド、およびp-クレゾール)のGC/MSピーク面積(Peak Area)をそれぞれ分析した。化合物1を含まないことを除き、同様に製造した対照溶液に対しても前記のように臭気物質のピーク面積(Peak Area)を分析し、下記数式2に基づき各々の消臭率を計算した。
【0119】
【0120】
(CS:試験溶液の臭気物質のGC/MSピーク面積(Peak Area)、C0:対照溶液の臭気物質のGC/MSピーク面積(Peak Area))
【0121】
【0122】
前記表2の結果を見ると、本発明の化学式1の化合物を含む試験溶液に対する臭気物質の消臭率が、ジアセチルの場合は79%以上、イソバレルアルデヒドの場合は87%以上、ジメチルジスルフィドの場合は65%以上、ジメチルトリスルフィドの場合は16%以上、p-クレゾールの場合は2%以上であり、化合物1の含有量が高くなるほど消臭率が向上することが確認できる。以上の結果から、本発明の化学式1の化合物を5phr以上含むことによって、著しく改善された消臭能が得られることが分かる。
【国際調査報告】