(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(54)【発明の名称】アクリロニトリル二量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 253/34 20060101AFI20230220BHJP
C07C 255/09 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
C07C253/34
C07C255/09
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538340
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2021008657
(87)【国際公開番号】W WO2022092484
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0141435
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウォンソク
(72)【発明者】
【氏名】アン、ユチン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、セ-フム
(72)【発明者】
【氏名】オ、ワン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、トンミン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、キョン-ファン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006BA53
4H006BB11
4H006BD33
4H006BD35
4H006BD36
4H006BD40
4H006BD41
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD60
4H006BD84
4H006QN32
(57)【要約】
本発明によるアクリロニトリル二量体の製造方法は、工程の負荷を低減しながらもアクリロニトリル二量化触媒を効率的に回収できるという特徴がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アクリロニトリル、反応溶媒および触媒を反応器に供給する段階;
2)前記反応器に供給された物質の反応を進行させて、反応生成物を第1蒸留塔に供給する段階;
3)第1蒸留塔に供給された物質を蒸留して、前記第1蒸留塔の上部でアクリロニトリル、および反応溶媒を回収して前記反応器に供給し、前記第1蒸留塔の下部で残りの物質を回収して抽出塔に供給する段階;
4)前記抽出塔に供給された物質に抽出溶媒を混合して層分離し、触媒および抽出溶媒を含む上層液を回収して第2蒸留塔に供給し、残りの物質を含む下層液を回収して第3蒸留塔に供給する段階;
5)第2蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第2蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第2蒸留塔の下部で触媒を回収して前記反応器に供給する段階;および
6)第3蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第3蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第3蒸留塔の下部でアクリロニトリル二量体を含む組成物を回収する段階を含む、
アクリロニトリル二量体の製造方法。
【請求項2】
前記反応溶媒は、トルエンを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記段階2の反応温度は、30~90℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記段階2の反応時間は、10分~10時間である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1蒸留塔の下部温度は、60℃~200℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1蒸留塔の下部温度は、100~120℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を70wt%以上回収する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を75wt%以上回収する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記抽出溶媒は、1-ヘキセンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記回収したアクリロニトリル二量体を含む組成物から、アクリロニトリル二量体を分離および/または精製する段階を追加的に含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2020年10月28日付の韓国特許出願第10-2020-0141435号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、工程の負荷を低減しながらもアクリロニトリル二量化触媒を効率的に回収できる、アクリロニトリル二量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル二量体(acrylonitrile dimer)は、アクリロニトリルの二量化で製造される炭素数6の直鎖化合物である1,4-ジシアノブテン(1,4-dicyanobutene、DCB)、1,4-ジシアノブタジエン(1,4-dicyanobutadiene)、およびアジポニトリル(adiponitrile)などを通称する。アクリロニトリル二量体は、ナイロン66の主要単量体であるヘキサメチレンジアミンを製造するための中間体として有用に使用される。
【0004】
アクリロニトリル二量体は、ルテニウムまたはリン系触媒の存在下、プロトンを提供できる溶媒の中でアクリロニトリルを反応させて製造される。前記二量化反応の主生成物は1,4-ジシアノブテン(DCB)であり、副生成物としてメチレングルタロニトリル(MGN)が少量製造される。反応後の反応混合物には、主生成物のDCBとともに、MGN、未反応アクリロニトリル、触媒、反応溶媒などの成分が混合されており、精製過程により純粋なアクリロニトリル二量体を得ることができる。
【0005】
前記アクリロニトリル二量体の製造に使用される触媒は高価な化合物で製造単価に大きく影響するので、反応後、触媒を回収して再使用しようとする試みがある。そこで、アクリロニトリル二量化反応後、反応混合物の精製方法として、アクリロニトリル二量体を蒸留させて触媒と分離するか、抽出溶媒を用いて反応混合物から触媒を抽出する方法が提案された。
【0006】
しかし、蒸留方法の場合、アクリロニトリル二量体の沸点が約254℃と高いため、高温で蒸留が避けられず副反応が起こる問題がある。また、抽出法の場合、アクリロニトリル二量体と触媒との親和度が高くて分離が難しく、アクリロニトリルの反応溶媒が相当量存在するため、工程の負荷が高くなる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、副反応を最小化しながら、工程の負荷を低減しながらもアクリロニトリル二量化触媒を効率的に回収できる、アクリロニトリル二量体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の段階を含むアクリロニトリル二量体の製造方法を提供する:
1)アクリロニトリル、反応溶媒および触媒を反応器に供給する段階;
2)前記反応器に供給された物質の反応を進行させて、反応生成物を第1蒸留塔に供給する段階;
3)第1蒸留塔に供給された物質を蒸留して、前記第1蒸留塔の上部でアクリロニトリル、トルエン、およびイソプロピルアルコールを回収して前記反応器に供給し、前記第1蒸留塔の下部で残りの物質を回収して抽出塔に供給する段階;
4)前記抽出塔に供給された物質に抽出溶媒を混合して層分離し、触媒および抽出溶媒を含む上層液を回収して第2蒸留塔に供給し、残りの物質を含む下層液を回収して第3蒸留塔に供給する段階;
5)第2蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第2蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第2蒸留塔の下部で触媒を回収して前記反応器に供給する段階;および
6)第3蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第3蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第3蒸留塔の下部でアクリロニトリル二量体を含む組成物を回収する段階。
【0009】
以下、各段階別に本発明を詳しく説明し、説明の便宜のために、
図1を参照して説明する。
【0010】
(段階1)
本発明の段階1は、アクリロニトリル、反応溶媒および触媒を反応器100に供給する段階であって、アクリロニトリルの二量化反応を準備する段階である。
【0011】
前記アクリロニトリル、反応溶媒および触媒を移送ライン101を通して反応器100に供給し、各物質の供給量は適切に調節可能である。前記反応溶媒は、アクリロニトリルの二量化反応のための溶媒であれば特に制限されない。好ましくは、前記反応溶媒は、トルエンを含む。より好ましくは、前記反応溶媒は、トルエンおよびイソプロピルアルコールを含む。また、前記触媒は、アクリロニトリルの二量化反応のための触媒であって、当業界にて使用される触媒であれば特に制限されない。
【0012】
(段階2)
本発明の段階2は、前記反応器100に供給された物質の反応を進行させて、反応生成物を第1蒸留塔200に供給する段階である。
【0013】
前記段階2の反応温度は、30~90℃が好ましい。前記反応温度が30℃未満の場合には、温度が低すぎて反応が十分に進行せず、前記反応温度が90℃を超える場合には、実質的に反応の効率が増加しない。好ましくは、前記反応温度は、40℃以上、または50℃以上であり、80℃以下、または70℃以下である。
【0014】
前記段階2の反応圧力は、0.5bar~2barが好ましく、より好ましくは、常圧(1bar)で行う。
【0015】
前記段階2の反応時間は、10分~10時間が好ましい。前記反応時間が10分未満の場合は、反応が十分に進行せず、前記反応時間が10時間を超える場合には、実質的に反応がさらに進行しない。好ましくは、前記反応時間は、30分以上、1時間以上、または2時間以上であり、9時間以下、8時間以下、7時間以下、6時間以下、または5時間以下である。
【0016】
一方、前記段階2の反応条件により生成物として不溶性のオリゴマーが発生することがあり、これは移送ライン103で除去することができる。
【0017】
(段階3)
本発明の段階3は、前記第1蒸留塔200に供給された物質を蒸留して、前記第1蒸留塔200の上部でアクリロニトリル、反応溶媒を回収して前記反応器に供給し、前記第1蒸留塔200の下部で残りの物質を回収して抽出塔300に供給する段階である。
【0018】
前記反応器100で、アクリロニトリルの二量化反応の生成物として、アクリロニトリル二量体のほか、アクリロニトリルの三量体、四量体およびオリゴマーが副産物として生成され、さらに、未反応アクリロニトリル、反応溶媒(トルエンおよびイソプロピルアルコール)および触媒が含まれる。
【0019】
本発明の段階3は、前記反応の生成物に含まれている物質の中で、分子量が小さい未反応アクリロニトリルと反応溶媒(トルエンおよびイソプロピルアルコール)を蒸留してこれを分離する段階である。アクリロニトリルの二量化反応工程で触媒を分離して再使用することが重要であり、従来は、アクリロニトリルの二量化反応生成物から触媒を最優先に分離した。しかし、前記方法は、アクリロニトリルの二量化反応生成物に含まれている多量の反応溶媒が存在する状態で触媒を分離するものであるため、工程の負荷が高いという問題がある。
【0020】
そこで、本発明では、従来とは異なり、反応溶媒を優先的に蒸留して除去することによって、触媒分離工程の負荷を低減する効果がある。それだけでなく、前記反応溶媒と未反応アクリロニトリルの沸点が類似しているため、反応溶媒を蒸留すれば未反応アクリロニトリルも共に蒸留することができ、これによって、回収された反応溶媒と未反応アクリロニトリルを前記反応器100に再循環することができる。
【0021】
前記第1蒸留塔200での蒸留により物質を分離し、前記第1蒸留塔200の上部ではアクリロニトリル、反応溶媒を回収して移送ライン201を通して前記反応器100に供給し、前記第1蒸留塔200の下部で残りの物質を回収して移送ライン202を通して抽出塔300に供給する。この時、移送ライン202では、第1蒸留塔200の下端の温度で冷却された後に抽出塔300に供給されることが好ましく、前記冷却された温度は、30~60℃であってもよい。
【0022】
好ましくは、前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を70wt%以上回収する。これによって、後述する触媒分離工程前に反応溶媒を除去するので、工程の負荷を低減することができ、また、反応溶媒を段階1に再循環させることができる。より好ましくは、前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を75wt%以上、80wt%以上、85wt%以上、90wt%以上、または95wt%以上回収する。
【0023】
また、前記第1蒸留塔200の上部で反応溶媒を効果的に回収するために、前記第1蒸留塔200の上部温度は10℃~50℃、下部温度は60℃~200℃を適用することが好ましい。特に、前記第1蒸留塔200の下部温度が重要であり、前記第1蒸留塔200の下部温度が60℃未満であれば、反応溶媒の回収率が低下し、前記第1蒸留塔200の下部温度が200℃超過であれば、アクリロニトリル二量体が触媒と追加的に反応する恐れがある。より好ましくは、前記第1蒸留塔200の下部温度は、90~130℃、または100~120℃である。
【0024】
(段階4)
本発明の段階4は、前記抽出塔300に供給された物質に抽出溶媒を混合して層分離し、触媒および抽出溶媒を含む上層液を回収して第2蒸留塔400に供給し、残りの物質を含む下層液を回収して第3蒸留塔500に供給する段階である。
【0025】
前記抽出塔300に供給された物質にはアクリロニトリル二量化触媒が含まれており、前記段階4により前記アクリロニトリル二量化触媒を分離する。特に、上述のように、段階3により反応溶媒を相当量除去したので、前記段階4の工程負荷が顕著に減少する。
【0026】
前記抽出溶媒は、アクリロニトリル二量化触媒を抽出するために使用されるもので、アクリロニトリル二量化触媒を溶解させながら残りの物質を溶解させないものであれば特に制限されない。好ましくは、前記抽出溶媒は、1-ヘキセンを使用する。
【0027】
前記抽出溶媒は、移送ライン301を通して前記抽出塔300に供給され、後述のように、使用された抽出溶媒は再び回収されて前記抽出塔300に再循環する。前記抽出溶媒によって前記抽出塔301内で層分離が起こり、抽出溶媒およびアクリロニトリル二量化触媒を含む上層部は、移送ライン302を通して第2蒸留塔400に供給し、残りの物質を含む下層液は、移送ライン303を通して第3蒸留塔500に供給する。
【0028】
(段階5)
本発明の段階5は、前記第2蒸留塔400に供給された物質を蒸留して、第2蒸留塔400の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔300に供給し、第2蒸留塔400の下部で触媒を回収して前記反応器100に供給する段階である。
【0029】
前記第2蒸留塔400に供給された物質は、抽出溶媒とアクリロニトリル二量化触媒であるため、これを蒸留して再使用する。具体的には、前記抽出溶媒は、前記第2蒸留塔400の上部で回収して移送ライン401を通して前記抽出塔300に再循環し、アクリロニトリル二量化触媒は、前記第2蒸留塔400の下部で回収して移送ライン402を通して前記反応器100に再循環する。
【0030】
(段階6)
本発明の段階6は、前記第3蒸留塔500に供給された物質を蒸留して、第3蒸留塔500の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔300に供給し、第3蒸留塔500の下部でアクリロニトリル二量体を含む組成物を回収する段階である。
【0031】
前記第3蒸留塔500に供給された物質にも抽出溶媒が含まれているため、これを蒸留して再使用し、残りは最終的に得られるものとしてアクリロニトリル二量体を含む組成物を回収する。具体的には、前記抽出溶媒は、前記第3蒸留塔500の上部で回収して移送ライン501を通して前記抽出塔300に再循環し、アクリロニトリル二量体を含む組成物は、前記第3蒸留塔500の下部で回収して移送ライン502を通して最終的に回収する。
【0032】
一方、必要に応じて、前記回収したアクリロニトリル二量体を含む組成物から、アクリロニトリル二量体を分離および/または精製する段階を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によるアクリロニトリル二量体の製造方法は、工程の負荷を低減しながらもアクリロニトリル二量化触媒を効率的に回収できるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明によるアクリロニトリル二量体の製造方法の工程図を図式的に示したものである。
【
図2】本発明の一実施例による3成分系の相図を示したものである。
【
図3】本発明の一実施例による3成分系の相図を示したものである。
【
図4】
図2および
図3による4成分系の相図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されない。
【0036】
以下、実施例において
図1のような構成の装置を用いて、次のようにアクリロニトリル二量体を製造した。
【0037】
(実施例1:第1蒸留塔の温度設定によるトルエン回収率評価)
アクリロニトリル(2.43g)、トルエン(8.68g)、イソプロピルアルコール(0.78g)および触媒(Ethyl diphenylphosphinite;0.53g)を反応器100に供給し、60℃および1barの条件で3時間反応させた後、反応生成物を第1蒸留塔200に移送した。
【0038】
第1蒸留塔200の上部と下部をそれぞれ60torrおよび100torrにそれぞれ調節し、上部と下部の温度を下記表1のように設定し蒸留した。この時、第1蒸留塔200の下部温度は、第1蒸留塔200の下端に具備された再沸器で調節した。前記第1蒸留塔の上部と下部でそれぞれ物質を回収した後、回収された物質中のトルエンの含有量を分析して下記表1に示した。
【0039】
【0040】
前記表1に示されているように、第1蒸留塔の上部温度を200℃に設定した場合(#1-1)には、トルエンを全量回収できることを確認することができ、120℃に設定した場合(#1-2)にも、96wt%回収できることを確認することができた。しかし、60℃に設定した場合には、トルエン回収率が低く、第1蒸留塔の下部で大部分が回収されることを確認することができた。
【0041】
(実施例2:第1蒸留塔の再沸器の温度設定によるダイマー損失率および触媒損失率評価)
前記第1蒸留塔の再沸器の運転温度が上昇し、滞留時間が増加するに伴って未反応アクリロニトリルおよび反応溶媒の回収率が高まるが、同時に副反応も促進される。副反応が進行するとダイマーおよび触媒損失が増加するので、前記実施例1と同様に行いかつ、第1蒸留塔の再沸器の運転温度と滞留時間による副反応の程度を下記表2のように評価した。
【0042】
【0043】
前記#2-1は、トルエンのない条件(ダイマー(MGNなど)および触媒のみ含む)で120℃に運転温度を設定したもので、20分加熱時、ダイマー損失が約7%であり、触媒損失が約4.5%発生した。前記#2-2は、前記実施例1の#1-2のトルエン濃度約14wt%と類似の条件で120℃に運転温度を設定したもので、20分加熱時、ダイマー損失が約0.2%であり、触媒損失が約3.9%発生した。前記#2-1と#2-2の結果を比較すれば、同一の120℃に同一時間加熱した時、トルエンが存在することによって副反応が抑制されることを確認することができた。
【0044】
一方、前記#2-3は、トルエンのない条件(ダイマー(MGNなど)および触媒のみ含む)で60℃に運転温度を設定したもので、30分以上加熱してもダイマーと触媒の損失が観察されなかった。ただし、前記実施例1の#1-3のように、60℃に運転温度を設定すれば、トルエンが後段の触媒工程に多量移動するようになって、負荷が増加する問題がある。したがって、実施例1と実施例2の結果をすべて考慮する時、約120℃に運転温度を設定する場合に、トルエンを効果的に回収し、また、副反応を低減できることを確認することができた。
【0045】
(実施例3:アクリロニトリル二量体を含む組成物の回収)
前記第1蒸留塔の下部で回収された生成物からアクリロニトリル二量体を回収するために、以下の2つの実験を行った。
【0046】
(1)ダイマー-触媒-ヘキセン3成分系LLE実験
前記第1蒸留塔の下部で回収された生成物に含まれている物質であるダイマー(MGNなど)、触媒およびトルエンのうち、ダイマーと触媒(52:48の重量比)とを含む組成物を抽出塔300に投入し、温度条件は50℃に維持した。抽出溶媒1-ヘキセンを抽出塔300に投入し、相分離を確認した後、extract層を採取(raffinate残留)し、再び1-ヘキセンを投入などの順序で抽出溶媒を計5回投入し、これによる組成および分配係数は下記
図2および下記表3の通りであった。
【0047】
【0048】
図1のように、丸1の組成に1-ヘキセンを投入して、黒い点線に沿って全体混合物の組成が移動して、丸2の組成になった。次に、相分離によって、丸3の組成を有するextract層と丸4の組成を有するraffinate層が観察されて、1つのタイライン(Tie Line)を構成することができた。次に、丸4の組成を有するraffinate層に1-ヘキセンを添加して、赤い点線に沿って混合物の組成が移動して、丸5の組成になるようにした。次に、相分離によって、丸6の組成を有するextract層と丸7の組成を有するraffinate層を得ることができた。同様の方法で1-ヘキセンを添加して丸8の組成を有する混合物が相分離されて、丸9の組成を有するextract層と丸10の組成を有するrafiinate層を得ることができた。これを計5回繰り返して5つのTie Lineを確認した。分配係数は2.73~2.76となり、触媒濃度が低くなるほど高くなる傾向を示した。
【0049】
したがって、上記によりアクリロニトリル二量化触媒を効率的に回収できることを確認することができる。
【0050】
(2)ダイマー-トルエン-ヘキセン3成分系LLE実験
前記第1蒸留塔の下部で回収された生成物に含まれている物質であるダイマー(MGNなど)、触媒およびトルエンのうち、ダイマーとトルエンとを含む組成物を抽出塔300に投入し、温度条件は50℃に維持した。抽出溶媒1-ヘキセンを抽出塔300に投入し、相分離を確認した後、extract層を採取(raffinate残留)し、再び1-ヘキセンを投入などの順序で抽出溶媒を計5回投入し、これによる組成および分配係数は下記
図3および下記表4の通りであった。
【0051】
【0052】
(3)4成分系LLE
前記2つの3成分系LLE Dataに基づいてQuaternary Plotを導出すれば(Robert E.Treybalの「Liquid Extraction」)、
図4の左側グラフの通りである。この相図を通して、触媒とトルエンが共に存在する場合の相分離組成も推論することができ、
図4の右側グラフの青緑色の平面上に現れる。
【符号の説明】
【0053】
100:反応器
200:第1蒸留塔
300:抽出塔
400:第2蒸留塔
500:第3蒸留塔
101、102、103、201、202、301、302、303、401、402、501、502:移送ライン
【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アクリロニトリル、反応溶媒および触媒を反応器に供給する段階;
2)前記反応器に供給された物質の反応を進行させて、反応生成物を第1蒸留塔に供給する段階;
3)第1蒸留塔に供給された物質を蒸留して、前記第1蒸留塔の上部でアクリロニトリル、および反応溶媒を回収して前記反応器に供給し、前記第1蒸留塔の下部で残りの物質を回収して抽出塔に供給する段階;
4)前記抽出塔に供給された物質に抽出溶媒を混合して層分離し、触媒および抽出溶媒を含む上層液を回収して第2蒸留塔に供給し、残りの物質を含む下層液を回収して第3蒸留塔に供給する段階;
5)第2蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第2蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第2蒸留塔の下部で触媒を回収して前記反応器に供給する段階;および
6)第3蒸留塔に供給された物質を蒸留して、第3蒸留塔の上部で抽出溶媒を回収して前記抽出塔に供給し、第3蒸留塔の下部でアクリロニトリル二量体を含む組成物を回収する段階を含む、
アクリロニトリル二量体の製造方法。
【請求項2】
前記反応溶媒は、トルエンを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記段階2の反応温度は、30~90℃である、請求項1
または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記段階2の反応時間は、10分~10時間である、請求項1
~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1蒸留塔の下部温度は、60℃~200℃である、請求項1
~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1蒸留塔の下部温度は、100~120℃である、請求項1
~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を70wt%以上回収する、請求項1
~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1蒸留塔の上部で、前記段階1で使用した反応溶媒を75wt%以上回収する、請求項1
~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記抽出溶媒は、1-ヘキセンである、請求項1
~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記回収したアクリロニトリル二量体を含む組成物から、アクリロニトリル二量体を分離および/または精製する段階を追加的に含む、請求項1
~9のいずれかに記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
前記表1に示されているように、第1蒸留塔の下部温度を200℃に設定した場合(#1-1)には、トルエンを全量回収できることを確認することができ、120℃に設定した場合(#1-2)にも、96wt%回収できることを確認することができた。しかし、60℃に設定した場合には、トルエン回収率が低く、第1蒸留塔の下部で大部分が回収されることを確認することができた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
図2のように、丸1の組成に1-ヘキセンを投入して、黒い点線に沿って全体混合物の組成が移動して、丸2の組成になった。次に、相分離によって、丸3の組成を有するextract層と丸4の組成を有するraffinate層が観察されて、1つのタイライン(Tie Line)を構成することができた。次に、丸4の組成を有するraffinate層に1-ヘキセンを添加して、赤い点線に沿って混合物の組成が移動して、丸5の組成になるようにした。次に、相分離によって、丸6の組成を有するextract層と丸7の組成を有するraffinate層を得ることができた。同様の方法で1-ヘキセンを添加して丸8の組成を有する混合物が相分離されて、丸9の組成を有するextract層と丸10の組成を有するrafiinate層を得ることができた。これを計5回繰り返して5つのTie Lineを確認した。分配係数は2.73~2.76となり、触媒濃度が低くなるほど高くなる傾向を示した。
【国際調査報告】