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  • 特表-α-メチルスチレンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】α-メチルスチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20230308BHJP
   C07C 15/46 20060101ALI20230308BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C15/46
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517146
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2021011611
(87)【国際公開番号】W WO2022139117
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179516
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジェクォン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スンファン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ジン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA66
4H006BC11
4H006BC19
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD81
4H006BD84
4H039CG10
(57)【要約】
【要約】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、酸(acid)触媒下に、反応器内でジメチルベンジルアルコール溶液を脱水反応させてα-メチルスチレンを製造するステップを含み、上記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を含み、上記脱水反応時の反応器内部の温度は、135℃以上であり、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量は、100ppm~1,500ppmであり、上記第2の反応生成物を前記反応器から分離させた後、上記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させて上記反応器に再循環させるステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸(acid)触媒下に、反応器内でジメチルベンジルアルコール溶液を脱水反応させてα-メチルスチレンを製造するステップを含み、
前記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を含み、
前記脱水反応時の前記反応器内部の温度は、135℃以上であり、
前記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、前記酸触媒の含量は、100ppm~1,500ppmであり、
前記第2の反応生成物を前記反応器から分離させた後、前記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させて、前記反応器に再循環させるステップを含む、α-メチルスチレンの製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒は、塩酸、硫酸又は硝酸である、請求項1に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【請求項3】
前記ジメチルベンジルアルコール溶液中のジメチルベンジルアルコールの含量は、8重量%~90重量%である、請求項1または2に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【請求項4】
前記脱水反応時の前記反応器内部の圧力は、400torr~700torrである、請求項1から3のいずれか一項に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【請求項5】
前記反応器は、連続撹拌タンク反応器(Continuous Stirred Tank Reactor, CSTR)であり、
前記脱水反応は、15分~60分間行われるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【請求項6】
前記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させる方法は、
前記水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を前記反応器から分離させた後、蒸留塔及び凝縮器(condenser)に順次投入させる工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【請求項7】
前記第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物と前記再循環された第2のα-メチルスチレン及び未反応物を前記反応器から分離させるステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のα-メチルスチレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年12月21日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0179516号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、α-メチルスチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
α-メチルスチレン(alpha-methylstyrene, AMS)は、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)のような特定の共重合体及び新規な重合体の製造に おいて添加剤として多様に使用されている。
【0004】
このようなα-メチルスチレンは、フェノール製造工程の副産物として生成されるが、一般にクメンを原料として用いて酸化及び開裂工程などを通じて、フェノールとα-メチルスチレンを製造している。より具体的に、既存のα-メチルスチレンは、酸触媒下にクメン過酸化物の開裂(cleavage)反応の副産物として製造されていた。これはクメン過酸化物反応物に含有されているジメチルベンジルアルコール(DMBA)がα-メチルスチレンと水に転化されることである。
【0005】
しかしながら、従来のα-メチルスチレンの製造方法によれば、α-メチルスチレンがフェノール製造工程の副産物として製造されるので、生成量が少ないだけでなく、生成されるα-メチルスチレンの収率も70%~80%程度に過ぎないという問題点がある。
【0006】
したがって、当該技術分野では、製造されるα-メチルスチレンの収率を増加させることができるα-メチルスチレンの製造方法に関する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、α-メチルスチレンの製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の一実施態様は、
酸(acid)触媒下に、反応器内でジメチルベンジルアルコール溶液を脱水反応させて、α-メチルスチレンを製造するステップを含み、
上記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を含み、
上記脱水反応時の反応器内部の温度は、135℃以上であり、
上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量は、100ppm~1,500ppmであり、
上記第2の反応生成物を上記反応器から分離させた後、上記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させて、上記反応器に再循環させるステップを含む、α-メチルスチレンの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、製造されるα-メチルスチレンの選択度を向上させることができ、製造されるα-メチルスチレンの収率を増加させることができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法の工程図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願についてより詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた別の部材が存在する場合も含む。
【0013】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0014】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、酸(acid)触媒下に、反応器内でジメチルベンジルアルコール溶液を脱水反応させて、α-メチルスチレンを製造するステップを含み、上記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を含み、上記脱水反応時の反応器内部の温度は、 135℃以上であり、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量は、100ppm~1,500ppm であり、上記第2の反応生成物を上記反応器から分離させた後、上記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させて、上記反応器に再循環させるステップを含む。
【0015】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、酸(acid)触媒下に、反応器内でジメチルベンジルアルコール溶液を脱水反応させて、α-メチルスチレンを製造するステップを含む。
【0016】
上述のように、従来は、クメンを原料として用いて酸化及び開裂工程などを通じてフェノールとα-メチルスチレンを製造することにより、フェノール製造工程の副産物としてα-メチルスチレンを製造していた。より具体的に、従来は、出発物質であるクメンを酸化させてクメン過酸化物とクミルアルコールとの混合物を製造し、上記クメン過酸化物とクミルアルコールとの混合物を開裂反応させて、クメン過酸化物からフェノール及びアセトンを製造し、クミルアルコールからα-メチルスチレンを製造していた。しかしながら、かかる従来の技術は、クメンからフェノールを製造することを主な目的とするものであって、上記α-メチルスチレンはフェノール製造工程の副産物として製造されるので、生成量が少ないだけでなく、生成されるα-メチルスチレンの収率も70%~80%程度に過ぎないという問題点がある。
【0017】
しかしながら、本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、上述した従来の技術のようにクメンを酸化させてクメン過酸化物とクミルアルコールとの混合物を製造した後、そこから追加的な反応を通じてα-メチルスチレンを製造する方法とは異なり、ジメチルベンジルアルコール溶液を直接脱水反応させてα-メチルスチレンを製造することにより、α-メチルスチレンの収率を増加させることができるだけでなく、α-メチルスチレンの選択度を向上させることができる。
【0018】
本願の一実施態様において、上記酸触媒は、液体酸触媒又は固体酸触媒であってもよい。上記液体酸触媒は、塩酸、硫酸又は硝酸であってもよく、硫酸であることがより好ましい。また、上記固体酸触媒は、6族金属酸化物によって改質された4族金属酸化物、硫酸化された遷移金属酸化物、酸化セリウムと4族金属酸化物とが混合した金属酸化物、及びこれらの混合物の中から選択されることができる。
【0019】
本願の一実施態様において、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量は、100ppm~1,500ppmであってもよく、150ppm~500ppmであってもよい。上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量が1,500ppmを超過する場合には、生成されるα-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーの形態に転化されてα-メチルスチレンの収率が低くなるおそれがある。また、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、上記酸触媒の含量が100ppm未満の場合にも、α-メチルスチレンの収率が低くなるおそれがあるので、好ましくない。
【0020】
本願の一実施態様において、上記ジメチルベンジルアルコール溶液中のジメチルベンジルアルコールの含量は、8重量%~90重量%であってもよく、20重量%~35重量%であってもよい。上記ジメチルベンジルアルコール溶液中のジメチルベンジルアルコールの含量が、8重量%未満であるか90重量%を超過する場合には、α-メチルスチレンを製造するための反応時間が増加するようになって、反応物の反応器内での滞留時間が増加する。このように、反応物の反応器内での滞留時間が増加する場合には、α-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーに転化される副反応がより多く行われ、α-メチルスチレンの収率が低くなるおそれがある。 また、上記滞留時間を減らすためには、投入される酸触媒の含量を増加させなければならないという問題点が発生することもある。また、アルコールが存在するとき、α-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーに転化される副反応がさらに加速化し得るので、ジメチルベンジルアルコールの含量が過度に高い場合には、α-メチルスチレンの選択度が減少するという問題点が発生するおそれがある。
【0021】
上記ジメチルベンジルアルコール溶液は、ジメチルベンジルアルコール以外に、アセトフェノン、クミルヒドロペルオキシド、α-メチルスチレン、クメン、ジクミルペルオキシド、α-メチルスチレンダイマー、水などを含むことができる。
【0022】
本願の一実施態様において、上記ジメチルベンジルアルコール溶液の総重量を基準に、ジメチルベンジルアルコール28.6重量%、アセトフェノン0.2重量%、クミルヒドロペルオキシド1.0重量%、α-メチルスチレン0.01重量%、クメン67.0重量%、ジクミルペルオキシド0.2重量%、α-メチルスチレンダイマー0.02重量%、及び水2.97重量%を含むことができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0023】
本願の一実施態様において、上記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を含む。上記ジメチルベンジルアルコールが脱水反応を通じてα-メチルスチレンに転化されるとき、水が生成され、上記反応器内部の温度によって水と一部のα-メチルスチレン及び未反応物が共に蒸発する。すなわち、本願の一実施態様において、上記第2の反応生成物は、上記反応器内部の温度によって水と一部のα-メチルスチレン及び未反応物が共に蒸発したことを示すものである。本願の一実施態様においては、製造されるα-メチルスチレンの収率を向上させるために、上記水と共に蒸発する第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物から水を除去して、上記第2のα-メチルスチレン及び未反応物を上記反応器に再循環させることにした。
【0024】
本願の一実施態様において、上記未反応物は、未反応のジメチルベンジルアルコール溶液、酸触媒などを含むことができる。
【0025】
本願の一実施態様において、上記第2の反応生成物中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物を分離させる方法は、上記水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を上記反応器から分離させた後、蒸留塔及び凝縮器(condenser)に順次投入させる工程を含むことができる。
【0026】
上記蒸留塔は、当該技術分野で使用される蒸留塔を用いることができる。上記蒸留塔は、単蒸留塔を用いることができ、上記単蒸留塔を用いて、後述する凝縮器に第2の反応生成物を移動させることができる。
【0027】
上記凝縮器は、当該技術分野で使用される凝縮器を用いることができる。例えば、水冷式凝縮器、空冷式凝縮器、蒸発式凝縮器などがあるが、これに限定されるものではない。上記凝縮器の内部は0℃~50℃の温度、好ましくは0℃~20℃の温度、0.1kgf/cm~1.0kgf/cmの圧力を満足することができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
上記第2の反応生成物を上記反応器から分離させた後、蒸留塔及び凝縮器(condenser)に順次投入させる工程によって、液化した第2のα-メチルスチレン及び未反応物と水とはトラップ(trap)で2段に分けられる。また、上記水は別に分離させ、上記第2のα-メチルスチレン及び未反応物は、上記反応器に再循環させることができる。
【0029】
本願の一実施態様において、上記脱水反応時の反応器内部の温度は、135℃以上であってもよく、138℃以上であってもよく、150℃以下であってもよい。上記脱水反応時の反応器内部の温度が135℃未満の場合には、吸熱反応である脱水反応が容易に行われることが難しくなるおそれがある。また、上記脱水反応時の反応器内部の温度が150℃を超過する場合には、クメン及びα-メチルスチレンの沸点が、それぞれ152.4℃及び166℃であるので、クメンの蒸発が多くなり、反応器内部の酸触媒の濃度が上がる効果が発生して、α-メチルスチレンの収率が低くなるおそれがある。
【0030】
本願の一実施態様において、上記脱水反応時の反応器内部の圧力は、400torr~700torrであってもよく、450torr~650torrであってもよい。上記脱水反応時の反応器内部の圧力が低くなれば、反応物及び生成物の沸点が低くなって、蒸留塔で蒸発するα-メチルスチレン及び未反応物がさらに多くなり得る。これは反応器の内部で酸触媒の濃度が上がる効果が発生して、相対的にα-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーに転化される量が多くなって、α-メチルスチレンの収率が低くなるおそれがある。よって、上述した脱水反応時の反応器内部の圧力を満足する場合に、生成されるα-メチルスチレンの収率を向上させることができる。
【0031】
本願の一実施態様において、上記反応器は、連続撹拌タンク反応器(Continuous Stirred Tank Reactor, CSTR)であり、上記脱水反応は、15分~60分間行われることができ、25分~50分間行われることができる。上記反応器内の滞留時間が長くなる場合には、α-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーに転化される反応がより多く発生して、α-メチルスチレンの収率が低くなり、同一の時間内に生成されるα-メチルスチレンの量が少なくなるおそれがある。よって、上述した脱水反応が行われる時間を満足する場合に、生成されるα-メチルスチレンの収率を向上させることができる。
【0032】
本願の一実施態様において、上記第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物と上記再循環された第2のα-メチルスチレン及び未反応物を上記反応器から分離させるステップをさらに含むことができる。
【0033】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法の工程図を下記図1に概略的に示す。下記図1のように、本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、酸(acid)触媒10下に、反応器30内でジメチルベンジルアルコール溶液20を脱水反応させて、α-メチルスチレンを製造するステップを含み、上記脱水反応後の反応生成物は、第1のα-メチルスチレンを含む第1の反応生成物;並びに水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物50を含み、上記脱水反応時の反応器30内部の温度は135℃以上であり、上記第2の反応生成物50を上記反応器30から分離させた後、上記第2の反応生成物50中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物90を分離させて、上記反応器30に再循環させるステップを含む。また、上記第2の反応生成物50中に含まれた第2のα-メチルスチレン及び未反応物90を分離させる方法は、上記水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物50を上記反応器30から分離させた後、蒸留塔60及び凝縮器(condenser)70に順次投入させる工程を含むことができる。
【0034】
本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、ジメチルベンジルアルコールの転化率を向上させることができ、製造されるα-メチルスチレンの収率を増加させることができるという特徴がある。
【実施例
【0035】
以下、本願を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、 本願に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本願の範囲が、以下に述べる実施例に限定されるものとは解釈されない。本願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0036】
<実施例>
【0037】
<実施例1>
連続撹拌タンク反応器(Continuous Stirred Tank Reactor, CSTR)にジメチルベンジルアルコール溶液300gと硫酸0.0225gを投入した。上記ジメチルベンジルアルコール溶液は、ジメチルベンジルアルコール28.6重量%、アセトフェノン0.2重量%、クミルヒドロペルオキシド1.0重量%、α-メチルスチレン0.01重量%、クメン67.0重量%、ジクミルペルオキシド0.2重量%、α-メチルスチレンダイマー0.02重量%、及び水2.97重量%を含む溶液を用いた。上記硫酸の含量は、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、約262ppmであった。
【0038】
反応器内の滞留時間30分を基準とし、反応物は10g/minで投入し、硫酸は0.00075g/minで投入して、脱水反応を行った。このとき、上記反応器内部の温度は140.4℃であり、反応器内部の圧力は550torrであり、反応器の撹拌速度は450rpmであった。
【0039】
下記図1の工程図のように、水蒸気(HO)、第2のα-メチルスチレン及び未反応物を含む第2の反応生成物を反応器から1.17ml/minで分離して、蒸留塔及び凝縮器に順次投入した。上記蒸留塔の温度は94.5℃、凝縮器の温度は5℃ であった。凝縮器を通じて分離された第2のα-メチルスチレン及び未反応物を上記反応器に0.68ml/minで再循環させた。
【0040】
また、下記図1の工程図の図面符号40のように、上記反応器からα-メチルスチレン及び未反応物を含む反応生成物を9.5g/minで排出した。
【0041】
<実施例2>
上記反応器内部の温度を140.8℃に調節し、反応器内部の圧力を650torrに調節したこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0042】
このとき、反応器から分離される第2の反応生成物の流量は0.95 ml/min、反応器に再循環される第2のα-メチルスチレン及び未反応物の流量は0.55ml/min、最終的な反応生成物の排出量は9.6g/minであった。
【0043】
<比較例1>
上記反応器内部の温度を128.5℃に調節したこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0044】
このとき、反応器から分離される第2の反応生成物の流量は0.7ml/min、反応器に再循環される第2のα-メチルスチレン及び未反応物の流量は0.5ml/min、最終的な反応生成物の排出量は9.8g/minであった。
【0045】
<比較例2>
上記反応器内部の温度を133.4℃に調節したこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0046】
このとき、反応器から分離される第2の反応生成物の流量は1.50ml/min、反応器に再循環される第2のα-メチルスチレン及び未反応物の流量は1.17ml/min、最終的な反応生成物の排出量は9.7g/minであった。
【0047】
<比較例3>
上記反応器内部の温度を137.2℃に調節し、硫酸投入量を0.00572g/minに調節したこと以外には、上記実施例1と同様に行った。上記硫酸の含量は、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、約2,000ppmであった。
【0048】
このとき、反応器から分離される第2の反応生成物の流量は1.03ml/min 、反応器に再循環される第2のα-メチルスチレン及び未反応物の流量は0.65ml/min、最終的な反応生成物の排出量は9.6g/minであった。
【0049】
<比較例4>
上記反応器内部の温度を128℃に調節し、硫酸投入量を0.002808g/minに調節し、ジメチルベンジルアルコール溶液(ジメチルベンジルアルコール93.6重量%、クミルヒドロペルオキシド0.84重量%、クメン3.42重量%、ジクミルペルオキシド0.89重量%、α-メチルスチレンダイマー0.39重量%、及び水0.86重量%を含む溶液)を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。上記硫酸の含量は、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、約300ppmであった。
【0050】
このとき、反応器から分離される第2の反応生成物の流量は0.74ml/min、反応器に再循環される第2のα-メチルスチレン及び未反応物の流量は0.41ml/min、最終的な反応生成物の排出量は9.7g/minであった。
【0051】
<比較例5>
上記反応器内部の温度を135℃に調節し、硫酸投入量を0.000858g/minに調節し、第2のα-メチルスチレン及び未反応物の再循環工程を排除したこと以外には、上記実施例1と同様に行った。上記硫酸の含量は、上記ジメチルベンジルアルコール溶液のジメチルベンジルアルコールの総重量を基準に、約300ppmであった。
【0052】
<実験例>
実施例及び比較例で製造されるα-メチルスチレンを含む反応生成物を分析して、下記表1に示す。上記α-メチルスチレンを含む反応生成物の分析は、液体クロマトグラフィー(high-performance liquid chromatography, HPLC)で行った。
【0053】
<HPLC分析条件>
- Column:Lichrosorb RP-18 (4.6m×0.2mm×10μm) 及びGuard Column
- Eluent:移動相A/移動相B = 97/3(v/v, %) 3分まで
移動相A/移動相B = 10/90(v/v, %) 3分から24分まで
移動相A/移動相B = 97/3(v/v, %) 24分から30分まで
- Flow rate:1ml/min
- Column temp.:40℃
- Run time:30min
- Injection Volume:10μl
【0054】
本願において、「収率(%)」は、生成物であるα-メチルスチレンのモル数を、原料であるジメチルベンジルアルコールのモル数で割った値と定義される。例えば、収率は、下記の式で表されることができる。
【0055】
収率(%)=[(生成されたα-メチルスチレンのモル数)/(供給されたジメチルベンジルアルコールのモル数)]×100
【0056】
本願において、「転化率(conversion, %)」とは、反応物が生成物に転化する割合を言い、例えば、ジメチルベンジルアルコールの転化率は、下記の式で定義されることができる。
【0057】
転化率(%)= [(反応したジメチルベンジルアルコールのモル数)/(供給されたジメチルベンジルアルコールのモル数)]×100
【0058】
本願において、「選択度(%)」は、α-メチルスチレンの変化量をジメチルベンジルアルコールの変化量で割った値と定義される。例えば、選択度は、下記の式で表されることができる。
【0059】
選択度(%)=[(生成されたα-メチルスチレンのモル数)/(反応したジメチルベンジルアルコールのモル数)]×100
【0060】
【表1】
【0061】
ジメチルベンジルアルコール溶液中に含まれたクミルヒドロペルオキシドは、硫酸触媒下でジメチルベンジルアルコールと酸素が生成されることができ、上記クミルヒドロペルオキシドによって生成されたジメチルベンジルアルコールが硫酸触媒下でα-メチルスチレンが追加で生成されることができるので、上記α-メチルスチレンの選択度は、実施例2の結果のように100%を超過することもある。
【0062】
上記結果のように、本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法の構成を満足しない場合には、α-メチルスチレンがα-メチルスチレンダイマーに転化される副反応がさらに加速化して、α-メチルスチレンの選択度及び収率が減少することが確認できる。
【0063】
したがって、本願の一実施態様に係るα-メチルスチレンの製造方法は、製造されるα-メチルスチレンの選択度を向上させることができ、製造されるα-メチルスチレンの収率を増加させることができるという特徴がある。
【符号の説明】
【0064】
10:酸(acid)触媒
20:ジメチルベンジルアルコール溶液
30:反応器
40:α-メチルスチレン及び未反応物
50:第2の反応生成物
60:蒸留塔
70:凝縮器
80:トラップ(trap)
90:第2のα-メチルスチレン及び未反応物
100:水(HO)
図1
【国際調査報告】